(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093345
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】狭空間に用いる機能シート
(51)【国際特許分類】
G09F 19/00 20060101AFI20220616BHJP
G09F 21/04 20060101ALI20220616BHJP
A61L 9/12 20060101ALI20220616BHJP
B60R 13/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G09F19/00 Z
G09F21/04 S
A61L9/12
B60R13/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022057750
(22)【出願日】2022-03-30
(62)【分割の表示】P 2019032111の分割
【原出願日】2019-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】519064676
【氏名又は名称】株式会社まつしん
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】松江 慎太郎
(57)【要約】
【課題】広告機能かつ殺菌機能、芳香機能を保有させ、また、
狭空間内での意外性のある個所で広告機能を果たし、
狭空間利用者により快適な利用ができるように構成した
狭空間に用いる機能シートを提供する。
【解決手段】殺菌機能有する広告媒体として
狭空間に用いる機能シートであって、機能シートは紙・布状のシート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に揮発性の殺菌用薬剤を施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成したことを特徴とする
狭空間に用いる機能シート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌機能有する広告媒体として狭空間に用いる機能シートであって、機能シートは紙・布状のシート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に揮発性の殺菌用薬剤を施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成したことを特徴とする狭空間に用いる機能シート。
【請求項2】
機能シートを用いる狭空間は、車両内とすると共に、機能シートの貼着位置は少なくとも車両の後部座席の天井面としたことを特徴とする請求項1に記載の狭空間に用いる機能シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭空間に用いる機能シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、狭空間の典型といわれる営業用車両においては、広告のために外板や内装に広告表示を設けることが行われている。
【0003】
このような狭空間車両用の広告の従来技術としては、例えば、特許文献1~2に示すようなものがある。すなわち、特許文献1の技術は、透明部材中に一定の間隔で棒状の着色部材を並列して設け、着色部材の透明部材との界面に所望の文字、図柄を設けたものである。これにより、見る角度により、複数種類の文字、図柄を視認させ、広告効果を上げるものである。また、特許文献2の技術は、ポスターの表面に広告を表示する液晶表示部を設け、広告の多様化を図ったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2-12878号公報
【特許文献2】実開平4-6022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術では、通常の目線の高さに対応する位置で視認して広告の効果を上げることのみに特化されており、意外性のある広告形態でなく、特に、環境に対しては全く考慮されておらず広告機能の限界を打破することができるものではなかった。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、広告機能は当然のことであり、かつ殺菌機能、芳香機能を保有させ更には狭空間のタクシー等に乗車した際に天井面に広告シートが貼着されてタクシー内での意外性のある個所で広告機能を果たして、利用者に快適なタクシー乗車ができるように構成した天井に機能シートを貼着した車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、狭空間の室内要所に貼着して使用する機能シートであって、紙・布状のシート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の基体、表面、裏面の少なくとも一つに揮発性の殺菌用薬剤を塗布し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成したことを特徴とする機能シートである。
【0008】
また、本発明の第2の態様は、車両の天井に貼着して使用する機能シートであって、天井に貼布する機能シートは紙・布状のシート部材の表面に、宣伝広告の機能を具備する文字や図形を表示し、裏面には粘着剤を塗布し、シート部材の表面に揮発性の殺菌用薬剤及び消臭剤と芳香剤との何れかを施し、殺菌用薬剤としては水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば次のような効果を奏する。すなわち、従来、無関心で利用空間として殆ど無視されていたタクシー等の「狭空間」において狭空間に本発明の広告媒体のシート部材を用いることにより、室内での空気の流通により狭空間で殺菌等の機能を果たすと共に広告効果を上げ、効果的に抗菌機能を発揮して室内の居住性を向上させることができるという効果を奏する。
【0010】
そして、本発明の第1の態様では、広告媒体のシート部材は機能対象空間となる狭空間の室内要所に裏面塗布の粘着剤を介して貼着して使用されている。
しかも、シート部材の表面に施され、水酸化カルシウムを主剤とし、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成した殺菌用薬剤が室内に揮発し、室内が除菌されて細菌を減少させ、狭空間利用者の健康維持に寄与することができ、更には紙・布状であるシート部材は殺菌用薬剤が含侵して保持しやすく長く殺菌作用を維持することができるという効果を奏する。
【0011】
本発明の第2の態様では、シート部材の基体、表面、裏面の少なくとも一つに施された揮発性の殺菌用薬剤が除菌作用をするとともに、消臭剤であれば車室内の匂いを吸収し、芳香剤であれば快い香りを車室内に発散し、利用者の居心地をよくする。
特に、車室内での空気の流れによってシート部材からの殺菌薬剤成分が車内を循環して、利用者の頭部や口腔部に近い天井面から発散されて利用者の健康維持にも役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る車両天井面に機能シートを貼
着した状態を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るシート部材の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)を説明する。以下の図面において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は、模式的なものであり、各部の寸法の比率等は現実のものとは必ずしも一致しない。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれることは勿論である。また、狭空間とはタクシー等の車室内やトイレ等の空間のことであり、本実施例では狭空間の例としてタクシーの車室内を指称しその利用空間として天井面を特定して本発明に係る機能シートを利用空間たる天井面に貼着した場合について説明する。
【0014】
図1は
狭空間の利用空間としてタクシーTの車内天井面に機能シートを貼
着した状態の説明図である。
機能シート10は大きさを略A4タイプにしており、この大きさ規格は使用する個所に対応して適宜選択することができる。
【0015】
殺菌・除菌・抗菌等の機能を有する機能シート10は、基本的にはCa(OH)2消石灰を主体に漆喰塗料として使用すると共に、これにスサ、海藻糊、水性塗料樹脂を混合して構成している。
【0016】
具体的には、Ca(OH)
2消石灰は0.3kg/m
2の量を使用している。
また、
図2に示すように、機能シート10の裏面に塗布する粘着剤11としてはアクリルゴムを使用する。
図中、11´は粘着剤11に剥着自在に貼着した剥離紙である。
かかる機能シート10は、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、MRSA等の抗菌性を有し、また、ノロウイルス、インフルエンザウイルスを不活性化する抗ウイルス機能を有し、ペット臭やたばこ臭や生ごみ臭等の生活臭やトイレ臭を除去する消臭機能を有する。
【0017】
<消臭性能試験>
かかる効果を検証するために所定の試料として本発明の機能シート10を用いて、アンモニア、酢酸、メチルメルカブタン、硫化水素、インドールに対する消臭性能を試験した。その試験方法は、繊維評価技術協議会法の消臭性試験、及びSEKマーク繊維製品認証基準用に基づき、20℃、湿度65%環境下で24時間以上調湿された100cm2(インドールのみ50cm2)の試料片を使用し、該試料片を5Lのサンプリングバッグ内に封入し、30分後、2時間後、24時間後の揮発するガス濃度を検知管法又はガスクロマトグラフ法により測定した。それぞれの試料片のガス初期濃度はアンモニア100ppm、酢酸30ppm、メチルメルカブタン8ppm、硫化水素4ppm、インドール33ppmであり、所定時間経過後の濃度は表1~表5に示すとおりである。
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
上記条件下で測定した結果、表1~5に示すように、測定した5成分について24時間後には初期測定値と比較して約90%の減少が確認された。
【0024】
<抗菌性能試験>
また、抗菌加工製品抗菌性試験方法、JISZ2801-2000に従い、シャーレに菌を接種し、無加工状態と抗菌加工した状態で周囲温度35℃、相対湿度90%以上の条件下で24時間培養し、菌液接種直後及び24時間培養後の試験片3個の生菌数を測定することで機能シート10の抗菌性能についても確認した。本試験では、大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、MRSAの4種類について測定した。その測定結果を表6に示す。
【0025】
【0026】
上記条件下で測定した結果、表6に示すように、無加工のシャーレ内においては測定した全ての菌が24時間後には増加したのに対して、本件の機能シート10の試料片を同梱したシャーレ内ではほぼ全ての菌が死滅しており検出されなかった。
【0027】
また、空間内の浮遊ウイルスの除去性能評価試験を参考にトイレを模した畳約6畳分の約25m2(縦4000mm×横2776mm×高2263mm)の室内に大腸菌を散布し、この大腸菌を散布しただけの空間と、機能シート10を貼り合わせてハンガーラックに引掛けたものを4箇所室内に吊下げ、さらに吊下げた機能シート10が揺動する程度にサーキュレーターを使用して空気を対流させた空間と、2時間経過後のそれぞれの室内における生菌数を確認した。その結果を表7に示す。
【0028】
【0029】
上記条件下で測定した結果、表7に示すように、検体未設置の車内ではウイルスが約50%しか減少しなかったのに対して、本件発明の機能シート10を設置した車内では約75%減少した。
【0030】
<抗ウイルス性能試験>
また、抗ウイルスの検証実験として、本件の機能シート10の試料片を内包したシャーレと、何も内包していない空のシャーレを準備し、それぞれのシャーレ内にウイルス液を注入し、60分放置後のそれぞれのシャーレ内におけるウイルスの感染価について実験した。この抗ウイルスの検証実験で使用されるウイルス液はエンベロープウイルスとノンエンベロープウイルスの2種類とし、さらに、エンベロープウイルスはインフルエンザウイルス、水泡性口内炎ウイルス、ウシ丘疹性口炎ウイルスの3種類について確認し、ノンエンベロープウイルスはイヌパルボウイルスについて確認した。その結果はインフルエンザウイルスや水疱性口腔内炎ウイルスや牛丘疹性口炎ウイルスや犬パルボウイルスにおいて接触30分後、接触60分後でもウイルスの減少量はいずれも99%以上となり良好な効果を得た。
【0031】
シャーレ内に本件の機能シート10の試料片とウイルス液を同梱したシャーレではウイルス液のみをシャーレ内に内包した条件と比較して約99%のウイルスの減少が確認された。
【0032】
かかる機能シート10のシート本体12に塗布した薬剤13の機能は次のようなメカニズムによって生成される。
すなわち、薬剤13の塗膜表面や内部には多数の細孔があり、その分表面積が広くウイルス液はかかる広範囲の面積の薬剤13に接触し、ウイルス液が薬剤13に付着するとウイルスの周辺の水分は薬剤13のCa(OH)2消石灰によって強アルカリ性となりウイルス液の強アルカリ性化によってウイルスの構造が破壊され感染価が減少する。
すなわち、ウイルスの周囲環境が強アルカリ性になると脂質やたんぱく質の変性を引き起こしウイルスの構造が破壊される。
【0033】
ウイルスは一般に咳、くしゃみによる飛沫中吐しゃ物など水分と共に存在する。
薬剤13のこのような機能により抗菌、抗ウイルス効果が発揮される。
【0034】
一実施例としてのかかる殺菌等機能を天井に有する車両、特にタクシーTについて機能シート10を用いた実施例を
図1及び
図2を参照して説明する。本実施例では車両を閉塞して機能シート10による殺菌等を行う。すなわち、車両のドアを閉めた状態において車内の空気の流通、特に車内のエアコンからの風の流通により機能シート10は流通風に対して対面状態で接することになり車内で飛散するウイルス等の菌を機能シート10で吸着し殺菌する。
【0035】
すなわち、通常タクシーTに乗車すると、多種の人々が利用する前提であるため、車内には各種ウイルスや殺菌が充満していると考えなければならない。車内には空中にウイルス、殺菌等が巻き散らかされ、しかも空中にまかれたウイルスの潜伏期間が90分以上もあるため次に乗車する乗者への二次感染を引き起こしてしまう恐れがある。
【0036】
このような二次感染を防止するためには車内に各種の感染防止手段が考えられる。しかし、いずれも車内のエアコン吹き出し口aに殺菌用の精油蒸散機構を装着する手段が殆どであり、高価につくと共にエアコン吹き出し口はダッシュボード近傍にあり、タクシーTの様に後部座席に利用者が乗車着座する形態が多いため、精油蒸散の機能効果が及ばない、或いは有効性が減殺されている。
【0037】
本発明はかかる現況を改善するための技術であり、まず(1)性状をシート状の機能シートにしたこと、(2)機能シートは接触空気の流れによって自然蒸散するような機能性の薬剤を塗布していること、(3)貼着する位置はタクシーの後部座席から前部座席の鏡位置、或いはやや後部座席に片寄った位置、或いは後部座席の位置などの各天井面に限定すること、(4)数か月毎に貼り替えることにより機能シートの有効性を維持すること、(5)天井面に貼着することにより機能シート表面に広告機能や情報伝達機能を果たし、広告収入はタクシー会社に増収益をもたらし、機能シートの普及に貢献すること、特に利用者は天井面の広告に興味を抱いて注視するために広告情報伝達効果が高いと共に、利用者は頭を後方に傾動して見上げることにより通常活動しない首筋の筋肉を鍛錬することができ、健康維持に貢献することができる。
【0038】
かかる各種技術の総合的な相乗機能を発揮するメカニズムについて詳説する。
すなわち、タクシーTの天井面に機能シート10を貼着することにより、利用者が搭乗して後部座席に着座すると、頭部から約20cm~30cmに天井面が位置することになる。
このシート部材は狭空間の車両に着座した際に狭空間内の利用空間としての天井面のうち目線の範囲に入る箇所に主体的に貼着されるため乗車する人に良く見えるので、表示された文字や図形により宣伝広告の作用をする。
すなわち、車両用広告媒体のシート部材は狭空間の車両の車室等の天井に貼付されるその裏面に粘着剤を貼着すると共に、シート部材の表面には文字や図形が表示されて狭空間内では良く見えて目につきやすく良好な宣伝広告の効果を得ることができる。
このシート部材の大きさはA3判が程よいが要所に応じて大小し、形状も楕円形等自由度を有してよい。その貼着場所としては、車両、特にタクシーの天井があげられる。また、粘着剤は薬剤の効果が切れたとき剥がしやすく貼着跡が残らないものが望ましい。
狭空間における利用空間としての天井面には機能シート10が配設されており、ひとえには車内における空気流通、例えばエアコン吹き出し口からの空気循環流通や車内の搭乗者の動きにともなう空気の動きや窓の開放による外気流入かく乱等の空気の流動により車内には機能シート10から薬剤が拡散して車中空気に漂う浮遊ウイルスの除去殺菌機能を果たす。
【0039】
特に、エアコンからの空気の吹き出しと共に、後部座席の下方には空気循環用の吸気孔bが設けられており、エアコン吹き出し口aからの吹き出し空気Aは後部座席の天井面方向に流通して、座席下部の吸気孔bから吸引されて車両のボディと内層部との間に配設した外気流通路を経て車両外に排気される。
【0040】
すなわち、機能シート10により殺菌、消臭された空気は狭空間としての車両の後部座席下部に至って車両外気に排出されることになり、例えばタクシーTの後部座席に着座した利用者は殺菌、滅菌された空間を呼吸することができ、タクシーTの利用者に多大な健康維持の利得を与えることができる。
しかも、殺菌機能だけではなく消臭機能も果たすことができ、これらの機能シート10の殺菌、消臭機能により狭空間としてのタクシーT内の環境を改善して利用者への多大なサービスを提供でき、同時にシート形状の特性を利用した広告宣伝機能を発揮することができることになり、かかる機能対象空間としてタクシー車両等の狭空間を選択したこと、及び対象空間への機能発現源として従来注視されたことのなかった狭空間における利用空間としての例えば、タクシーTの天井面に限定したこと、更には機能発現源を機能シート10としてその特性により情報発信の印刷を可能として容易に宣伝広告機能を果たすことができるようにしたのが本件発明である。
【符号の説明】
【0041】
10 機能シート
11 粘着剤
12 シート本体
13 薬剤
A 吹き出し空気
T タクシー