IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジョン クレイン ユーケー リミティドの特許一覧

特開2022-93348メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法
<>
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図1
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図2
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図2A
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図3
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図4
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図5A-5B
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図6
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図7A
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図7B
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図8
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図9
  • 特開-メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093348
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】メカニカルシステムの予測診断のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/00 20190101AFI20220616BHJP
【FI】
G01M13/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022059417
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2018545375の分割
【原出願日】2017-02-23
(31)【優先権主張番号】62/298,839
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/298,851
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/298,848
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/298,814
(32)【優先日】2016-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/302,451
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/302,458
(32)【優先日】2016-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518302254
【氏名又は名称】ジョン クレイン ユーケー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】クラウス-ディーター メック
(72)【発明者】
【氏名】アムラト パーマー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アンスワース
(57)【要約】
【課題】本発明はメカニカルシールを監視するための予測診断システムに関する。
【解決手段】システムは、メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に検出する。システムは、1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成された潤滑不良の故障モードロジックモジュールと、1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、メカニカルシールシステム内で発生することが知られている特定の種類の機械的故障に関連する条件を診断するように構成された複数の他の故障モードロジックモジュールとを含む。潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、複数の他の故障モードロジックモジュールのうちのどれが摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件の診断中に起動されるかを決定するように構成されている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に診断する目的でメカニカルシールシステムを監視する方法であって、
前記メカニカルシールの近傍の音響放出データを感知することと、
前記感知された音響放出データのベースライン条件を確立することと、
摺動シール界面の近位の潤滑流体の温度を感知することと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の前記感知された温度のベースライン条件を確立することと、
前記メカニカルシールシステムが前記摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量を診断するように構成されているかどうかを判定することと、
前記感知された音響放出データが前記感知された音響放出データの前記確立されたベースライン条件を超えるかどうかを判定することと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の前記感知された温度が、前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の前記感知された温度の前記確立されたベースライン条件を超えるかどうかを判定することと、
前記メカニカルシールシステムが前記潤滑流体の圧力反転を診断するように構成されているかどうかを判定することと、
前記メカニカルシールシステムが前記摺動シール界面の近傍のキャビテーションを診断するように構成されているかどうかを判定することと、
前記摺動シール界面内の潤滑不良が検出されたという通知をユーザに送信することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記メカニカルシールシステムを評価して、前記メカニカルシールシステムの故障の可能性を、前記メカニカルシールシステムの前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量、前記摺動シール界面の近位の潤滑流体の圧力反転、及び前記摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーションのうちの少なくとも1つに関して判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールシステムの具体的な用途に適合させる目的で、発生の可能性が高いと判定されたメカニカルシールシステム故障に関連する動作条件を診断するように前記メカニカルシールシステムを適応させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記メカニカルシールシステム内の潤滑不良の故障モードロジックモジュールを起動することをさらに含み、前記潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、前記摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
潤滑流体の低流量の故障モードロジックモジュール、潤滑流体の圧力反転の故障モードロジックモジュール、及び前記摺動シール界面の近傍のキャビテーションの故障モードロジックモジュールのうちの少なくとも1つを起動することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザに送信される前記通知は、前記摺動シール界面内の前記潤滑不良の厳しさを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記通知は、トラブルシューティング及び/または適切な措置を行って前記摺動シール界面内の前記潤滑不良を改善するためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ユーザの通知後の経過時間を判定するためにタイマを開始することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記経過時間が所定の時間を超える場合にアラームメッセージを送信することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記所定の時間は、30分以下である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アラームメッセージは、前記メカニカルシールの推定残存耐用年数を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に検出するように構成されたメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転軸との間の摺動シール界面を有するメカニカルシールと、
前記メカニカルシールの近傍の音響放出データ及び前記摺動シール界面の近傍の潤滑流体の温度を感知するように構成された1つ以上のセンサと、
前記1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、前記摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成された潤滑不良の故障モードロジックモジュールと、
前記1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、メカニカルシールシステム内で発生することが知られている特定の種類の機械的故障に関連する条件を診断するように構成された複数の他の故障モードロジックモジュールであって、潤滑流体の低流量の故障モードロジックモジュール、潤滑流体の圧力反転の故障モードロジックモジュール、及び前記摺動シール界面の近傍のキャビテーションの故障モードロジックモジュールのうちの少なくとも1つを含む、複数の他の故障モードロジックモジュールと、を備え、
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの選択された故障モードロジックモジュールが、前記メカニカルシールシステム内の各故障モードロジックモジュールのそれぞれの特定の種類の機械的故障の発生の可能性に基づいて起動され、
前記潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、前記複数の他の故障モードロジックモジュールのうちのどれが前記摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件の前記診断中に起動されるかを判定するように構成されている、メカニカルシールシステム。
【請求項13】
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの前記選択された故障モードロジックモジュールは、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールの具体的な用途に適合するように前記メカニカルシールシステムを適応させる目的で起動される、請求項12に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項14】
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの前記選択された故障モードロジックモジュールが、前記メカニカルシールシステムの評価に基づいて起動され、前記メカニカルシールシステムの故障の可能性を、前記メカニカルシールシステムの前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面内の潤滑流体の低流量、前記摺動シール界面の近位の潤滑流体の圧力反転、及び前記摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーションのうちの少なくとも1つに関して判定する、請求項12に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項15】
前記摺動シール界面内の潤滑不良が検出されたとき、ユーザに通知が送信される、請求項12に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項16】
前記通知は、前記摺動シール界面内の前記潤滑不良の厳しさを示す、請求項15に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項17】
前記通知は、トラブルシューティング及び/または適切な措置を行って前記摺動シール界面内の前記潤滑不良を改善するためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む、請求項15に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項18】
前記潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、前記通知が送信された後の経過時間を決定するように構成されたタイマを含む、請求項12に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項19】
前記経過時間が所定の時間を超える場合にアラームメッセージが送信される、請求項18に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項20】
前記所定の時間は、30分以下である、請求項19に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項21】
前記アラームメッセージは、前記摺動シール界面の推定残存耐用年数を含む、請求項18に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項22】
個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または具体的な用途に適合するように適応されるように構成されたカスタマイズ可能な予測診断サブシステムを有するメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転可能軸との間に設置されたメカニカルシールと、
前記メカニカルシールの近傍の圧力、温度、回転速度、振動、及び音響放出のうちの少なくとも1つを感知するように構成された複数の感知デバイスと、
複数の故障モードロジックモジュールであって、各故障モードロジックモジュールが、メカニカルシール内で発生することが知られている特定の種類の機械的故障に関連する複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを監視し、前記メカニカルシールシステム内の前記特定の種類の機械的故障の実際の発生に関する通知をユーザインターフェースを介してユーザに提供するように構成された、複数の故障モードロジックモジュールと、を備え、
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの特定のものは、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールシステムの具体的な用途に適合するように前記予測診断サブシステムを適応させる目的で、前記ユーザインターフェースを介して選択的に起動される、メカニカルシールシステム。
【請求項23】
前記メカニカルシールは、ポンプに動作可能に結合されている、請求項22に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項24】
前記メカニカルシールが、中に潤滑流体が導入される少なくとも1つの摺動シール界面を含む、請求項23に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項25】
熱交換器、ブラダアキュムレータ、圧力容器、またはそれらの組み合わせのうちの1つを含む潤滑流体調整ユニットをさらに備える、請求項24に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項26】
前記複数の感知デバイスのうちの少なくとも1つは、前記ポンプの音響放出を監視するように構成されたセンサ、前記ポンプの振動及び/または回転速度を監視するように構成されたセンサ、前記ポンプの温度を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面を出る潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面に入る潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面の音響放出を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、前記ブラダアキュムレータの近位の潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、ならびに熱交換器の近位の潤滑流体の温度及び圧力を監視するように構成されたセンサ、のうちの少なくとも1つを含む、請求項25に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項27】
前記特定の種類の機械的故障は、前記メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面内の潤滑流体の低流量、前記潤滑流体の圧力反転、及び前記メカニカルシールの前記摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーション、のうちの少なくとも1つである、請求項22に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項28】
前記メカニカルシールシステムが、API規格01、02、11、12、13、14、21、23、31、32、41、52、53A、53B、53C、54、62、65A、65B、66A、66B、72、74、75、及び76準拠システム、またはそれらの組み合わせのうちの1つである、請求項22に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項29】
前記複数の感知デバイスは、前記複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを受信及び処理し、前記複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知された前記データを1つ以上のサーバに伝送するように構成された1つ以上のデータアグリゲータに動作可能に結合されている、請求項22に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項30】
前記複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知された前記データは、前記1つ以上のサーバに無線で伝送される、請求項29に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項31】
前記通知は、略式通知、警報通知、アラーム通知、トリップ通知、ならびにトラブルシューティング及び既存の状態に対する適切な措置を行うためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージのうちの少なくとも1つを含む、請求項22に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項32】
動作状態を検出し、動作中にユーザにリアルタイム健全性評価を提供するように構成されたメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転軸とを含む回転デバイスと、
前記回転デバイスの前記固定ハウジングと前記回転軸との間に摺動シール界面を設けるように構成されたメカニカルシールと、
前記摺動シール界面内に潤滑流体を導入するように構成された潤滑流体調整ユニットと、
前記メカニカルシールシステムの動作状態を感知するように構成された複数のセンサと、
前記感知された動作状態を監視し、前記メカニカルシールシステム内で発生する特定の種類の機械的故障の可能性に関するフィードバックをユーザインターフェースを介したユーザへの通知により提供するように構成された複数の故障モードロジックモジュールと、を備え、
前記複数の故障モードロジックモジュールの各々は、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールシステムの具体的な用途に適合するように起動または停止することができる、メカニカルシールシステム。
【請求項33】
前記潤滑流体調整ユニットは、熱交換器、ブラダアキュムレータ、圧力容器、またはそれらの組み合わせのうちの1つの1つを含む、請求項32に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項34】
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つは、前記ポンプの音響放出の監視、前記ポンプの振動及び/または回転速度の監視、前記ポンプの温度の監視、前記メカニカルシールを出る潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、前記メカニカルシールに入る潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、前記摺動シール界面の音響放出の監視、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、前記ブラダアキュムレータの近位の潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、ならびに前記熱交換器の近位の潤滑流体の温度及び圧力の監視、のうちの少なくとも1つを行うように構成されている、請求項33に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項35】
前記特定の種類の機械的故障のうちの少なくとも1つは、前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面に提供される前記潤滑流体の低流量、前記潤滑流体の圧力反転、及び前記摺動シール界面内で発生する前記潤滑流体の近傍のキャビテーションを含む、請求項32に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項36】
前記メカニカルシールシステムが、API規格01、02、11、12、13、14、21、23、31、32、41、52、53A、53B、53C、54、62、65A、65B、66A、66B 72、74、75、及び76準拠システム、またはそれらの組み合わせのうちの1つである、請求項32に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項37】
前記複数のセンサは、前記感知された動作状態を受信及び処理し、前記感知された動作状態を1つ以上のサーバに伝送するように構成された1つ以上のデータアグリゲータに動作可能に結合されている、請求項32に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項38】
前記感知された動作状態は、前記1つ以上のサーバに無線で伝送される、請求項32に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項39】
前記通知は、略式通知、警報通知、アラーム通知、及びトリップ通知のうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項40】
前記通知は、前記感知された動作状態の厳しさを示す、請求項39に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項41】
前記通知は、トラブルシューティング及び既存の状態に対する適切な措置を行うためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む、請求項40に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項42】
メカニカルシールの被監視条件を、前記メカニカルシールの近位の潜在的に危険な動作環境から遠隔のエリアに無線で通信するように構成された予測診断サブシステムを有するメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転可能軸との間に設置されたメカニカルシールと、
前記メカニカルシールの近傍の圧力、温度、回転速度、振動、及び音響放出のうちの少なくとも1つを感知するように構成された1つ以上の感知デバイスと、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを収集及び分析するように構成された遠隔位置のサーバと、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データを前記遠隔位置のサーバに無線で通信するように構成されたデータアグリゲータであって、
産業環境内に設置するのに適した筐体、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データを受信するように構成された1つ以上のセンサ入力端子、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データをデジタル信号に変換するように構成された信号プロセッサ、及び
前記デジタル信号を前記サーバに無線で伝送するように構成された出力インターフェース、を含むデータアグリゲータと、を備えた、メカニカルシールシステム。
【請求項43】
前記データアグリゲータは、前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータをリアルタイムで受信するように構成されている、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項44】
前記筐体は、危険な環境内での使用に適している、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項45】
前記筐体は耐水性である、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項46】
前記筐体は防爆性である、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項47】
前記データアグリゲータは、前記潜在的に危険な動作環境に流入する電気エネルギーを制限するように構成されたツェナーダイオードを含む、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項48】
前記データアグリゲータは、合計14個以上のセンサ入力端子を含む、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項49】
前記センサ入力端子は、圧力センサ及び/または温度センサの入力端子、振動センサの入力端子、音響放出センサの入力端子、及び回転速度センサの入力端子のうちの少なくとも1つを含む、請求項48に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項50】
前記信号プロセッサは、前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを処理し、前記出力インターフェースによって伝送されるべき前記データの量を低減するように構成されている、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項51】
前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを記憶するように構成されたメモリをさらに備える、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項52】
前記出力インターフェースは、少なくともスケジュールされた時間に、ランダムな時間に、及び前記サーバからの要求に応じて、前記デジタル信号を前記サーバに伝送する、請求項42に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項53】
動作状態を検出し、動作中にユーザにリアルタイム健全性評価を提供するように構成されたメカニカルシールシステムであって、
回転デバイスの固定ハウジングと回転軸との間の摺動シール界面を有するメカニカルシールと、
前記メカニカルシールシステムの動作状態を感知するように構成された複数のセンサと、
前記感知された動作状態を収集及び分析するように構成されたサーバと、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データを前記遠隔位置のサーバに無線で通信するように構成されたデータアグリゲータであって、
産業環境内に設置するのに適した筐体、
前記感知された動作状態を受信するように構成された1つ以上のセンサ入力端子、
前記感知された動作状態をデジタル信号に変換するように構成された信号プロセッサ、及び
前記デジタル信号を前記サーバに無線で伝送するように構成された出力インターフェース、を含むデータアグリゲータと、を備えた、メカニカルシールシステム。
【請求項54】
前記データアグリゲータは、前記感知された動作状態をリアルタイムで受信するように構成されている、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項55】
前記筐体は、危険な環境内での使用に適している、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項56】
前記筐体は耐水性である、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項57】
前記筐体は防爆性である、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項58】
前記データアグリゲータは、前記潜在的に危険な動作環境に流入する電気エネルギーを制限するように構成されたツェナーダイオードを含む、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項59】
前記データアグリゲータは、合計14個以上のセンサ入力端子を含む、請求項35に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項60】
前記センサ入力端子は、圧力センサ及び/または温度センサの入力端子、振動センサの入力端子、音響放出センサの入力端子、及び回転速度センサの入力端子のうちの少なくとも1つを含む、請求項60に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項61】
前記信号プロセッサは、前記感知された動作状態を処理し、前記出力インターフェースによって伝送されるべき前記データの量を低減するように構成されている、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項62】
前記感知された動作状態を記憶するように構成されたメモリをさらに備える、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項63】
前記出力インターフェースは、少なくともスケジュールされた時間に、ランダムな時間に、及び前記サーバからの要求に応じて、前記デジタル信号を前記サーバに伝送する、請求項53に記載のメカニカルシールシステム。
【請求項64】
メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に診断する目的で、中間シール性能シミュレーションアルゴリズムに基づいて予期されるパラメータに関してメカニカルシールシステム内のシールの健全性状態を監視する方法であって、
前記メカニカルシールの近傍の音響放出データを感知することと、
前記感知された音響放出データのベースライン条件を確立することと、
摺動シール界面の近位の潤滑流体の温度を感知することと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の感知された温度のベースライン条件、前記感知された音響放出データのベースライン条件、及び前記潤滑流体の前記感知された温度のベースライン条件を、ベースラインパラメータと合わせて確立することと、
前記ベースラインパラメータを前記予期されるパラメータと比較することと、を含む、方法。
【請求項65】
メカニカルシールシステム内の動作異常を自律的に診断する目的で、統合されたシール性能シミュレーションアルゴリズムに基づいて予期されるパラメータに関してメカニカルシールシステム内の1つ以上のシールの健全性状態を監視する方法であって、
前記メカニカルシールシステムの近傍の動作パラメータデータを感知することと、
前記感知された動作パラメータデータが前記メカニカルシールシステムが定常状態にあることを示すとき、前記感知された動作パラメータデータに基づいてベースライン条件パラメータを確立することと、
前記感知された動作パラメータデータが前記メカニカルシールシステムが定常状態にないことを示すとき、前記予期されるパラメータに基づいてベースライン条件パラメータを確立することと、
前記ベースライン条件パラメータを前記動作パラメータデータと比較することと、を含む、方法。
【請求項66】
前記メカニカルシールシステムの近傍の動作パラメータデータを感知する前記ステップが、前記メカニカルシールシステム内の動作パラメータデータを感知することを含む、請求項65に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年2月23日に出願された米国仮出願第62/298,814号、2016年2月23日に出願された米国仮出願第62/298,839号、2016年2月23日に出願された米国仮出願第62/298,848号、2016年2月23日に出願された米国仮出願第62/298,851号、2016年3月2日に出願された米国仮出願第62/302,458号、及び2016年3月2日に出願された米国仮出願第62/302,451号の利益を主張し、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般にメカニカルシールシステムに関する。より具体的には、本開示は、動作状態を検出し、メカニカルシールシステムのリアルタイム健全性評価及び予測診断を提供するように構成されたシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
メカニカルシールは、デバイス内の流体が漏れること及び/または外部の汚染物質がデバイスに入ることを阻止する目的で、ポンプ、ミキサーなどのデバイスの静的ハウジングと回転軸との間にシール界面を提供するように構成されたデバイスである。メカニカルシールは、回転軸と静的ハウジングとの間の隙間を密封しなければならない広範囲の産業用途、処理媒体、及び動作条件で用いられる。
【0004】
図1を参照すると、従来技術のメカニカルシール100の断面図が示されている。この図では、メカニカルシール100は、固定ハウジング104と回転軸106との間の隙間102を通る流体及び汚染物質の流れを阻止するように構成されている。メカニカルシール100は、一般に、環状固定リング108(一次リングとしても知られている)と環状回転リング110(噛合リングとしても知られている)と、一対のシールまたはグランド112、114(一般にOリングなどのエラストマーシール要素であるが、当然ながらこれには限定されない)と、付勢部材116とを含む。図1に示すメカニカルシール100は、単一対のシールリング108及び110を含むが、当技術分野で公知の様々なメカニカルシールは、例えば、米国特許第8,857,818号(本出願の出願人に譲渡されている)に記載されているダブルシールの実施形態などの追加的なシール界面を含んでもよく、同特許の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
動作中、環状固定リング108は、ハウジング104に対して適所に固定されたままである。グランド112は、環状固定リング108とハウジング104との間に位置決めされ、これらの構成要素間の流体の流れを阻止する。環状回転リング110は、回転軸106と共に回転する。グランド114は、環状回転リング110と回転軸106との間に位置決めされ、これらの構成要素間の流体の流れを阻止する。
【0006】
環状固定リング108と環状回転リング110の両方は、滑らかな接触シール面109、111を含み、それによって摺動シール界面118を形成する。したがって、メカニカルシール100の使用により、流体が通常漏れるところの半径方向の隙間102を、回転軸106に垂直な平坦な摺動シール界面118によってシールすることができ、したがってシールがはるかに容易になる。
【0007】
1つ以上のコイルバネ及び/またはベローズ構成などの付勢部材116を、回転軸106のボス120とグランド114及び/または環状回転リング110との間に位置決めして、浮動環状回転リング110を環状固定リング108に向かって付勢することができる。このようにして、付勢部材116は、小さい軸のたわみ、軸受公差に起因する軸運動、及び製造公差に起因する垂直方向のミスアライメントを受け入れることによって、接触シール面109、111間の接触を維持するのを助ける。
【0008】
環状回転リング110が環状固定リング108に対して回転するので、当然ながら動作中にシール面109、111上にある程度の摩耗が生じる。特に、摺動シール界面118の磨耗は、摩擦及び発熱の存在下で加速され得る。シール面109、111の過度の磨耗は、最終的にメカニカルシール100の故障を招く。
【0009】
摩耗速度を遅くするために、しばしば潤滑流体またはバリア流体と呼ばれる潤滑剤が、シール界面118内に導入される。潤滑流体は、密封されるべき流体であってもよいし、シール界面118内に導入される別のバリア流体であってもよい。別の例では、シール界面は、密封された製品の蒸気、空気、または窒素などの乾燥ガスによって潤滑され得る。シール界面118内の潤滑剤の適当な膜厚及び流れを維持することは、シール面109、111の磨耗を最小限に抑える上で重要な側面である。したがって、シール面109、111の形状及び隙間102の幅は、潤滑剤の膜厚及び流れを決定する上で重要な役割を果たすので、これらの種類のメカニカルシールにおいて正確に制御される。
【0010】
より先進的なメカニカルシールシステムは、二重または二重のメカニカルシールなどの複数のメカニカルシールを含むことができる。このようなメカニカルシールシステムには、複数の潤滑流体を設けることができる。例えば、いくつかのダブルシールシステムでは、第1のメカニカルシールは、シールされた製品の蒸気によって潤滑され、第2のメカニカルシールは、シールされた製品と適合する別の液体またはガスで潤滑される。場合によっては、シールされた製品の大気への漏れをさらに最小限に抑えるために、第2のメカニカルシールの潤滑流体をより高い圧力に維持することができる。
【0011】
したがって、メカニカルシールシステムは、メカニカルシール自体だけでなく、外部リザーバ、液体潤滑シール用のブラダまたはピストンアキュムレータ、ガス潤滑シール用のガス調整ユニット(GCU)用ガス処理ユニット(GTU)などのシールサポートシステムも含むことができる。これらのユニットは、潤滑流体の適切な濾過、流れ管理、加熱、冷却、及び他の調整を提供する構成要素を含むことができる。メカニカルシールシステムは、シールを横切る流体の流れを適切に管理するのに必要な配管、管類、及び他の接続ユニット、ならびにそれに対してメカニカルシールが設置されるハウジング及び/またはデバイスも含むことができる。
【0012】
すべての機械システムと同様に、最終的に、環状固定リング108及び年回転リング110は摩耗し、交換する必要がある。場合によっては、メカニカルシール100の構成要素は、単にその耐用年数の終わりに達することになる。他の場合には、他の条件が、メカニカルシール100内の構成要素の摩耗を早めることになる。これらの状態の一部としては、シール構成要素の誤った設置もしくは不適当なシール選択、軸方向のミスアライメントもしくは不適当な荷重の結果としてシール面が動作中に開くこと、フラッシング(脈流漏れ及びシールのびびりを引き起こす液体から蒸気への移行)、キャビテーション、または潤滑剤の薄膜の崩壊を招くことがある環境条件、が挙げられる。
【0013】
生産能力を最大化し、ダウンタイムを最小限に抑えるには、回転機器の効率的な運用と保守が不可欠である。その上、予期しない破局的な機器故障により、人員が怪我をする可能性がある。幸いなことに、多くの場合、メカニカルシールシステムは、破局的な故障に先立って不調の兆候を示し始め、場合によっては、構成要素の残存耐用年数を示す。
【0014】
従来の機器監視は、多くの場合、誰が定期的に機器を訪問し、騒音や漏れの観察を行い、加速度計による振動の示度を読み取るかに影響される。集められた情報は、次いで、メカニカルシール100の全体的な健全性を示すトレンドを検出するために、機器上の履歴データと比較することができる。状態監視及び診断のための様々な方法が、国際標準化機構(ISO)17359:2011、CONDITION MONITORING AND DIAGNOSTICS OF MACHINES-GENERAL GUIDELINES、及びISO 13381-1:2015、CONDITION MONITORING AND DIAGNOSTICS OF MACHINES-PROGNOSTICSで論じられており、これらの内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
この手順の1つの問題は、時間と労力のコストを伴うことである。別の問題は、機器が絶えず監視されているわけではなく、そのためフラッシング、キャビテーション、及び特定の環境条件の悪影響などの深刻な状態が警告なしに発生し得るという事実である。
【0016】
より先進的な監視システムは、機器とメカニカルシール100とのリアルタイム監視を可能にする1つ以上のセンサを用い得る。これらのセンサとしては、例えば、温度センサ、圧力トランスデューサ、及び加速度計が挙げられ得る。このようなセンサは、侵入型であって、固定ハウジング104内にプローブもしくはセンサを永久的もしくは一時的に挿入する必要があってもよく、または非侵入型であって、固定ハウジング104の外部もしくはメカニカルシールシステムの他の構成要素から感知されたデータを検出することができてもよい。このようなシステムは、監視されるべき機器が危険な位置にあるか、またはそのような機器へのアクセスが一般に妨げられる用途で特に有用である。このようなシステムの例は、特許文献1及び特許文献2、並びに特許文献3及び特許文献4(すべて本出願の出願人に譲渡されている)に開示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる特許文献5及び特許文献6(本出願人に譲渡されている)に開示されているものなどの他のシステムは、それに対してメカニカルシールが設置されるポンプ、ミキサーなどのデバイスの監視をさらに提供することができる。このような先進的な監視システムは、被監視条件に応答して、メカニカルシール、シール支持システム、または他の構成要素の限定的な量の制御を提供することができる。例えば、監視システムは、メカニカルシールシステムの特定の動作パラメータを調節することによってメカニカルシール誤動作の影響を自動的に緩和するように構成された制御アルゴリズムを含む。
【0018】
場合によっては、監視システムの様々なセンサは、メカニカルシールシステムが故障する可能性のある先に同定した1つ以上の方法を同定するのを助けるために設置される。メカニカルシールシステムが故障する可能性のある様々な方法は、故障モード・影響解析(FMEA)と呼ばれるプロセスを通じて決定され得る。FMEAは、メカニカルシールシステムの設計において起こり得る故障の全てを同定するための段階的なアプローチである。「故障モード」という用語は、メカニカルシールシステムが故障する可能性のある方法またはモードを意味し、故障は、メカニカルシールシステムの性能及び/または寿命に悪影響を与える可能性があるあらゆる種類のエラーまたは欠陥を意味する。
【0019】
メカニカルシールシステムの起こり得る故障モードが同定されると、同定された故障モードの帰結を理解するために、「影響解析」と呼ばれるプロセスを通じて、故障モードの影響が分析される。影響解析に基づいて、故障モードは、その帰結の厳しさ、発生頻度、及び検出容易性に従って優先順位が決定される。
【0020】
FMEAの全体的な目的は、最優先の故障モードから始めて、故障を排除または低減するための措置をとることである。したがって、FMEAは、典型的には、予想される故障モードから守るために設計段階で使用される。ただし、FMEAは、動作中に使用されてもよい。FMEAは、国際電気標準会議(IEC)規格60812:2006:ANALYSIS TECHNIQUES FOR SYSTEM RELIABILITY-PROCEDURE FOR FAILURE MODE AND EFFECTS ANALYSIS(FMEA)で論じられており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
特定のメカニカルシールシステムのFMEAにより優先順位の高い故障モードが明らかになると、故障モードが発生しているかどうか、または発生しそうであるかどうかを判定するのを助けるために、先進的な監視システムを通じて特定の動作条件を監視することができる。特に、メカニカルシールシステムの分野の専門家、例えば設計者、エンジニア、または技術者は、その経験に基づいて、優先順位の高い故障モードに関連する所定の動作条件に対して特定の閾値または限界を設定することができる。その後、動作中、被監視条件の閾値または限界を超えた場合、オペレータに警報することができる。
【0022】
残念なことに、先進的な監視システムの個々のセンサによって提供される情報は、孤立しては、場合によってはメカニカルシールシステムの全体的な健全性に関する確定的な決定を行うには不十分であることが判明している。例えば、所定の閾値または限界を超える特定の動作条件は、特定の故障モードが発生していることを示し得るが、他の動作条件に基づくと、超過した閾値または限界は、全く異なる種類の故障またはイベントのきざしでもあり得る。複雑なメカニカルシールシステムは、複数の相互に関係する理由で故障を経験することが知られている。したがって、今日までに開発された先進的な監視システムは、故障及びメカニカルシールシステムの全体的な健全性を適当に診断するために、被監視メカニカルシールシステムについて必要レベルの知識を有する人間オペレータを必要とし得る。
【0023】
人間オペレータは、抽象的に推論することができ、潜在的に自らの経験から情報を引き出すことができるという利点があるが、人間オペレータの有効性は、大量のセンサデータを消化できないことによって妨げられる可能性がある。例えば、状況によっては、関連データが人間オペレータによって誤って無視され、不適当な診断が行われることがある。他の状況では、メカニカルシールシステムの健全性に関する意思決定が遅れると、意思決定がもっと早く下されていれば故障を回避するために是正措置をとることができたであろうが、もはや差し迫った故障を回避することができないというシナリオにつながる可能性がある。
【0024】
その上、このようなメカニカルシールシステムを設置及び運用するコストは、非常に高くなる可能性がある。第1に、優先順位の高い故障モードの条件の監視には、監視されるべきメカニカルシールシステムのために特別に設計された、カスタマイズされた先進的な監視システムを必要とする場合がある。このことは、監視されるべき機器が独特もしくは非標準であるとき、またはシステムを特定の用途に適応させることを必要とする特定の環境条件が存在する場合に、特に当てはまる。第2に、先進的な監視システムのオペレータは、潜在的な故障を適当に診断するために必要な知識を持っていなければならず、このことは、典型的により高い賃金を必要とする。
【0025】
したがって、業界で必要とされているものは、適応され、カスタマイズされた先進的な監視メカニカルシールシステムを作製し、改善された信頼性及び向上した速度と共に自律的に運用し、それによってメカニカルシールシステムを動作中に人間オペレータによって絶えず監視する必要性を軽減することを可能にするシステム及び方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第6,082,737号明細書
【特許文献2】米国特許第6,325,377号明細書
【特許文献3】米国特許公開第2013/0275056号明細書
【特許文献4】米国特許公開第2014/0161587号明細書
【特許文献5】米国特許第8,651,801号明細書
【特許文献6】米国特許第9,145,783号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本開示の実施形態は、改良された信頼性及び向上した速度を提供し、それによって、動作中の潜在的な故障を適当に診断するために、メカニカルシールシステムが必要な知識を有する人間オペレータによって絶えず監視される必要性を緩和する、先進的な自律監視メカニカルシールシステム及び方法に対する産業界のニーズを満たす。本開示の一実施形態は、複数の既製の故障モードロジックモジュールを含む。各故障モードロジックモジュールは、複数のセンサによって感知されたデータを監視し、メカニカルシールシステム内で発生することが知られているある特定の種類の機械的故障に関連する条件を診断するように構成することができる。複数の故障モードロジックモジュールの使用を通じて、多数の特定の種類の機械的故障を診断することができる。複数の故障モードロジックモジュールのうちの選択された故障モードロジックモジュールは、メカニカルシールシステムにおいて実際に発生している各特定の種類の機械的故障の発生の可能性に基づいて起動することができる。
【0028】
複数の故障モードロジックモジュールのうちのどれがシステムに対して起動されるべきかを決定するために、メカニカルシールシステムを例えばFMEAによって評価して、どの特定の種類の機械的故障が最も発生する可能性が高いかを決定することができる。その後、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/またはメカニカルシールシステムの具体的な用途に適合するように、複数の既製の故障モードロジックモジュールの各々を起動または停止することができる。その上、故障モードロジックモジュールは、必要に応じて起動することができるように予め作製されているので、そのようなシステムの設置は、ゼロから構築されたシステムの設置費用のほんの一部で行うことができる。
【0029】
起動されている各故障モードロジックモジュールは、特定の種類の故障を予測し、一般にメカニカルシールシステムのリアルタイム健全性評価を提供する目的で、1つ以上の動作状態を検出及び分析するように構成されたロジック及び/または人工知能アルゴリズムを用いることができる。例えば、起動されている故障モードロジックモジュールは、そのモジュールが診断するように設計されている特定の種類の機械的故障に関連する条件の分析において、他の故障モードロジックモジュールのうちのどれが起動されているか(すなわち、どの特定の種類の機械的故障が発生する可能性が最も高いか)の知識を使用することができる。したがって、各故障モードロジックモジュールは、故障及びメカニカルシールシステムの全体的な健全性を適当に診断するために被監視メカニカルシールシステムについて必要レベルの知識を有する人間オペレータを必要とせずに、先進的な監視システムが故障を適当に診断し、メカニカルシールシステムの全体的な健全性に関する確定的な決定を行うことを可能にする一組のルールを含むことができる。したがって、一実施形態では、故障モードロジックモジュールは、一組の複雑なルールを通じて、これまで実行できなかった機能を先進的な監視メカニカルシールシステムによって実行するように構成されている。
【0030】
本開示の一実施形態は、メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に診断する目的でメカニカルシールシステムを監視する方法であって、メカニカルシールの近傍の音響放出データを感知することと、感知された音響放出データのベースライン条件を確立することと、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の温度を感知することと、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の感知された温度のベースライン条件を確立することと、メカニカルシールシステムが摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量を診断するように構成されているかどうかを判定することと、感知された音響放出データが感知された音響放出データの確立されたベースライン条件を超えるかどうかを判定することと、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の感知された温度が、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の感知された温度の確立されたベースライン条件を超えるかどうかを判定することと、メカニカルシールシステムが潤滑流体の圧力反転を診断するように構成されているかどうかを判定することと、メカニカルシールが摺動シール界面の近傍のキャビテーションを診断するように構成されているかどうかを判定することと、摺動シール界面内の潤滑不良が検出されたという通知をユーザに送信することと、を含む方法を提供する。
【0031】
一実施形態では、方法は、メカニカルシールシステムを評価して、メカニカルシールシステムの故障の可能性を、摺動シール界面内の潤滑不良、摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量、摺動シール界面の近位の潤滑流体の圧力反転、及び摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーションのうちの少なくとも1つに関して判定することをさらに含む。一実施形態では、方法は、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/またはメカニカルシールシステムの具体的な用途に適合させる目的で、発生の可能性が高いと決定されたメカニカルシールシステム故障に関連する動作条件を診断するようにメカニカルシールシステムを適応させることをさらに含む。
【0032】
一実施形態では、方法は、メカニカルシールシステム内の潤滑不良の故障モードロジックモジュールを起動することをさらに含み、潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成されている。一実施形態では、方法は、潤滑流体の低流量の故障モードロジックモジュール、潤滑流体の圧力反転の故障モードロジックモジュール、及び摺動シール界面内のキャビテーションの故障モードロジックモジュールのうちの少なくとも1つを起動することをさらに含む。
【0033】
一実施形態では、ユーザに送信される通知は、摺動シール界面内の潤滑不良の厳しさを示す。一実施形態では、通知は、トラブルシューティング及び/または適切な措置を行って摺動シール界面内の潤滑不良を改善するためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む。一実施形態では、方法は、ユーザの通知後の経過時間を決定するためにタイマを開始することをさらに含む。一実施形態では、方法は、経過時間が所定の時間を超える場合にアラームメッセージを送信することをさらに含む。一実施形態では、所定の時間は30分以下である。一実施形態では、アラームメッセージは、メカニカルシールの推定残存耐用年数を含む。
【0034】
本開示の一実施形態は、メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に検出するように構成されたメカニカルシールシステムを提供する。メカニカルシールシステムは、メカニカルシール、1つ以上のセンサ、潤滑不良故障モードロジックモジュール、及び複数の他の故障モードロジックモジュールを含むことができる。メカニカルシールは、固定ハウジングと回転軸との間の摺動シール界面を有することができる。1つ以上のセンサは、メカニカルシールの近傍の音響放出データ及び摺動シール界面内またはその近傍の潤滑流体の温度を感知するように構成することができる。潤滑不良故障モードロジックモジュールは、1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成することができる。複数の他の故障モードロジックモジュールは、1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、メカニカルシールシステム内で発生することが知られている特定の種類の機械的故障に関連する条件を診断するように構成することができる。複数の他の故障モードロジックモジュールは、潤滑流体の低流量の故障モードロジックモジュール、潤滑流体の圧力反転の故障モードロジックモジュール、及び/または摺動シール界面の近傍のキャビテーションの故障モードロジックモジュールのうちの少なくとも1つを含むことができる。複数の故障モードロジックモジュールのうちの選択された故障モードロジックモジュールは、メカニカルシールシステム内で実際に発生する各故障モードロジックモジュールのそれぞれの特定の種類の機械的故障の可能性に基づいて起動することができる。潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、複数の他の故障モードロジックモジュールのうちのどれが摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件の診断中に起動されるかを決定するように構成することができる。
【0035】
一実施形態では、複数の故障モードロジックモジュールのうちの選択された故障モードロジックモジュールが、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/またはメカニカルシールの具体的な用途に適合するようにメカニカルシールシステムを適応させる目的で起動される。一実施形態では、複数の故障モードロジックモジュールのうちの選択された故障モードロジックモジュールが、メカニカルシールシステムの評価に基づいて起動され、メカニカルシールシステムの故障の可能性を、メカニカルシールシステムの摺動シール界面内の潤滑不良、摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量、摺動シール界面の近位の潤滑流体の圧力反転、及び/または摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーションのうちの少なくとも1つに関して判定する。
【0036】
本開示の一実施形態は、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または具体的な用途に適合するように適応されたカスタマイズ可能な予測診断サブシステムを有するメカニカルシールシステムを提供する。メカニカルシールシステムは、メカニカルシール、複数の感知デバイス、及び複数の故障モードロジックモジュールを含むことができる。メカニカルシールは、固定ハウジングと回転可能軸との間に設置することができる。複数の感知デバイスは、メカニカルシールの近傍の圧力、温度、回転速度、振動、及び音響放出のうちの少なくとも1つを感知するように構成することができる。複数の故障モードロジックモジュールはそれぞれ、メカニカルシール内で発生することが知られている特定の種類の機械的故障に関連する複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを監視し、メカニカルシールシステム内の特定の種類の機械的故障の実際の発生に関する通知をユーザインターフェースを介してユーザに提供するように構成することができる。複数の故障モードロジックモジュールのうちの特定のものは、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/またはメカニカルシールシステムの具体的な用途に適合するように予測診断システムを適応させる目的で、ユーザインターフェースを介して選択的に起動される。
【0037】
一実施形態では、特定の種類の機械的故障は、メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良、摺動シール界面内の潤滑流体の低流量、摺動シール界面の近位の潤滑流体の圧力反転、及び/または摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーションのうちの少なくとも1つである。
【0038】
一実施形態では、メカニカルシールシステムは、API規格01、02、11、12、13、14、21、23、31、32、41、52、53A、53B、53C、54、62、65A、65B、66A、66B 72、74、75、及び/または76準拠システム、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つである。一実施形態では、メカニカルシールシステムは、ポンプに動作可能に結合されている。一実施形態では、メカニカルシールは、中に潤滑流体が導入される少なくとも1つの摺動シール界面を含む。一実施形態では、メカニカルシールシステムは、熱交換器及びブラダアキュムレータを含む潤滑流体調整ユニットをさらに含む。
【0039】
一実施形態では、複数の感知デバイスのうちの少なくとも1つは、ポンプの音響放出を監視するように構成されたセンサ、ポンプの振動及び/もしくは回転速度を監視するように構成されたセンサ、ポンプの温度を監視するように構成されたセンサ、摺動シール界面を出る潤滑流体の温度及び/もしくは圧力を監視するように構成されたセンサ、摺動シール界面に入る潤滑流体の温度及び/もしくは圧力を監視するように構成されたセンサ、摺動シール界面の音響放出を監視するように構成されたセンサ、摺動シール界面内もしくはその近位の潤滑流体の温度及び/もしくは圧力を監視するように構成されたセンサ、ブラダアキュムレータの近位の潤滑流体の温度及び/もしくは圧力を監視するように構成されたセンサ、ならびに/または熱交換器の近位の潤滑流体の温度及び圧力を監視するように構成されたセンサ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
一実施形態では、複数の感知デバイスは、複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを受信及び処理し、複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを1つ以上のサーバに伝送するように構成された1つ以上のデータアグリゲータに動作可能に結合されている。一実施形態では、複数の感知デバイスは、複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを受信及び処理し、複数の感知デバイスの1つ以上によって感知されたデータを1つ以上のサーバに伝送するように構成された1つ以上のデータアグリゲータに動作可能に結合されており、1つ以上の複数の感知デバイスによって感知されたデータは、1つ以上のサーバに無線で伝送される。
【0041】
一実施形態では、通知は、略式通知、警報通知、アラーム通知、トリップ通知、ならびにトラブルシューティング及び既存の状態に対する適切な措置を行うためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージのうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
本開示の一実施形態は、動作状態を検出し、動作中にユーザにリアルタイム健全性評価を提供するように構成されたメカニカルシールシステムを提供する。メカニカルシールシステムは、回転デバイス、メカニカルシール、潤滑流体調整ユニット、複数のセンサ、及び複数の故障モードロジックモジュールを含むことができる。回転デバイスは、固定ハウジングと回転軸とを含むことができる。メカニカルシールは、回転デバイスの回転軸内の固定ハウジングの間に摺動シール界面を設けるように構成することができる。潤滑流体調整ユニットは、摺動シール界面内に潤滑流体を導入するように構成することができる。複数のセンサは、メカニカルシールの動作状態を感知するように構成することができる。複数の故障モードロジックモジュールは、感知された動作状態を監視し、メカニカルシールシステム内で発生する特定の種類の機械的故障の可能性に関するフィードバックをユーザインターフェースを介したユーザへの通知により提供するように構成することができる。複数の故障モードロジックモジュールの各々は、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/またはメカニカルシールシステムの具体的な用途に適合するように起動または停止することができる。
【0043】
本開示の一実施形態は、メカニカルシールの被監視条件を、メカニカルシールの近位の潜在的に危険な動作環境から遠隔のエリアに無線で通信するように構成された予測診断サブシステムを有するメカニカルシールシステムを提供する。メカニカルシールシステムは、メカニカルシール、1つ以上の感知デバイス、遠隔位置のサーバ、及びデータアグリゲータを含むことができる。メカニカルシールは、回転可能軸の固定ハウジングの間に設置することができる。1つ以上の感知デバイスは、メカニカルシールの近傍の圧力、温度、回転速度、振動、及び/または音響放出のうちの少なくとも1つを感知するように構成することができる。遠隔位置のサーバは、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを収集及び分析するように構成することができる。データアグリゲータは、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを遠隔位置のサーバに無線で通信するように構成することができる。データアグリゲータは、防爆性筐体、1つ以上の感覚入力端子、信号プロセッサ、及び出力インターフェースを含むことができる。1つ以上の感覚入力端子は、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを受信するように構成することができる。信号プロセッサは、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータをデジタル信号に変換するように構成することができる。出力インターフェースは、デジタル信号をサーバに無線で伝送するように構成することができる。
【0044】
一実施形態では、データアグリゲータは、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータをリアルタイムで受信するように構成することができる。一実施形態では、防爆性筐体は、Appareils destines a etre utilises en Atmospheres Explosibles(ATEX)ゾーン1環境内での使用に適したものであってもよい。一実施形態では、筐体は、耐水性であってもよい。一実施形態では、筐体は、アルミニウムで作製することができる。
【0045】
一実施形態では、データアグリゲータは、潜在的に危険な動作環境に流入する電気エネルギーを制限するように構成されたツェナーダイオードを含むことができる。一実施形態では、データアグリゲータは、合計14個の感覚入力端子を含むことができる。一実施形態では、センサ入力端子は、圧力センサ及び/または温度センサの8つの入力、振動センサの3つの入力端子、音響放出センサの2つの入力端子、及び回転速度センサの1つの入力端子を含むことができる。
【0046】
一実施形態では、信号プロセッサは、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを処理し、出力インターフェースによって伝送されるべきデータの量を低減するように構成される。一実施形態では、データアグリゲータは、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを記憶するように構成されたメモリをさらに含む。一実施形態では、出力インターフェースは、少なくともスケジュールされた時間に、ランダムな時間に、及び/またはサーバによる要求に応じて、デジタルデータをサーバに伝送する。
【0047】
本開示の一実施形態は、動作状態を検出し、動作中にユーザにリアルタイム健全性評価を提供するように構成されたメカニカルシールシステムを提供する。メカニカルシールシステムは、メカニカルシール、複数のセンサ、サーバ、及びデータアグリゲータを含むことができる。メカニカルシールは、固定ハウジングと回転デバイスの回転軸との間に摺動シール界面を有することができる。複数のセンサは、メカニカルシールシステムの動作状態を感知するように構成することができる。サーバは、感知された動作状態を収集及び分析するように構成することができる。データアグリゲータは、1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを遠隔位置のサーバに無線で通信するように構成することができる。データアグリゲータは、防爆性筐体、1つ以上のセンサ入力端子、信号プロセッサ、及び出力インターフェースを含むことができる。1つ以上の感覚入力端子は、感知された動作状態を受信するように構成することができる。信号プロセッサは、感知された動作状態をデジタル信号に変換するように構成することができる。出力インターフェースは、デジタル信号をサーバに無線で伝送するように構成することができる。
【0048】
実施形態では、感知された値と比較するための閾値は、機械システムが定常状態にあるときに収集された感知されたデータに少なくとも部分的に基づいて決定される。実施形態では、比較のための閾値は、メカニカルシールシステムの設計及び既知の動作環境によって決定される予期されるパラメータに基づいて調節することができる。実施形態では、比較のための閾値は、統合されたシール性能シミュレーションアルゴリズムに少なくとも部分的に基づいて決定することができる。実施形態では、比較のための閾値は、機械システムが定常状態にあるときに収集された感知されたデータなしに決定することができる。
【0049】
上記の概要は、本開示の例示される各実施形態またはすべての実装を説明することを意図しない。以下の図面及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本開示は、添付図面に関連して、本開示の様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することにより、より完全に理解することができる。
【0051】
図1】従来技術のメカニカルシールを示す部分的な断面図である。
図2】本開示の一実施形態によるメカニカルシールシステムを示す部分断面正面図である。
図2A】本開示の一実施形態による、図2のメカニカルシールシステムの一部を示す部分断面正面詳細図である。
図3】本開示の一実施形態による予測診断サブシステムを示す概略図である。
図4】本開示の一実施形態によるデータアグリゲータを示すブロック図である。
図5A-5B】本開示の一実施形態によるサーバを示すブロック図である。
図6】本開示の一実施形態による潤滑不良の故障モードアルゴリズムを示すフローチャートである。
図7A】本開示の一実施形態によるダッシュボード通知及び推奨事項を示す。
図7B】本開示の一実施形態によるダッシュボード通知及び推奨事項を示す。
図8】本開示の一実施形態による予測診断サーバを動作させる方法を示す。
図9】本開示の一実施形態によるメカニカルシールシステムにおける定常状態条件を検出する方法を示す。
図10】本開示の一実施形態による、メカニカルシールシステムが、定常状態条件が確立される前に過渡モードにおいてクリティカルな状態を監視し、オペレータに警報することを可能にする方法を示す。
【0052】
本開示の実施形態は、様々な修正及び代替形態を受け入れることができるが、その詳細は、例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、本開示は、記載される特定の実施形態に本開示を限定するものではないことを理解されたい。むしろ、添付の請求項によって定義される本開示の趣旨及び範囲内に属するすべての修正、等価物、及び代替物をカバーすることを意図するものである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1を参照すると、従来技術によるメカニカルシール100が示されている。メカニカルシール100の詳細は、背景技術の項で説明されている。他の実施形態では、メカニカルシール100は、米国石油産業(API)規格682準拠シールとすることができる。米国石油産業規格は、環境保護、健全なエンジニアリング及び運転プラクティス、ならびに安全かつ交換可能な機器及び材料に関する石油及び天然ガス業界の集合知を表すものである。API規格プログラムは、米国規格協会(ANSI)の認定を受けており、API規格の多くは州規制及び連邦規制に組み込まれている。
【0054】
図2を参照すると、本開示の一実施形態によるメカニカルシール100を含むメカニカルシールシステム200が示されている。この実施形態では、メカニカルシールシステム200は、米国石油産業(API)規格53B準拠システムとして示されている。他の企図されるメカニカルシールシステム200は、API規格01、02、11、12、13、14、21、23、31、32、41、52、53A、53B、53C、54、62、65A、65B、66A、66B、72、74、75、及び76準拠システム、またはAPI規格11及び52の組み合わせなどのそれらの組み合わせを含む。API規格とメカニカルシールの配管計画の更なる詳細は、JOHN CRANE,MECHANICAL SEAL PIPING PLANS,POCKET GUIDE(4th ed.)(2016)で見出すことができ、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
一実施形態では、メカニカルシールシステムは、遠心ポンプなどの回転機械204を含むことができる。回転機械204は、ハウジング206を含むことができる。ハウジング206は、インペラ210を収納するように構成された内部区画208を画定することができる。内部区画208は、吸引ノズル212及び排出ノズル214と流体連通することができる。インペラ210は、回転軸216に動作可能に結合され得、回転軸216は、駆動機構(図示せず)に動作可能に結合され得る。
【0056】
流体漏れ及び/または内部区画208の流体への汚染物質の導入は、1つ以上のメカニカルシール100によって阻止することができる。図2に示すように、メカニカルシールシステム200は、2つのメカニカルシール100A/100Bを含む。この実施形態では、内側シール100Aは、内部区画208の近位に位置決めされ、外側シール100Bは、潤滑流体入口及び出口の近位に位置決めされ得る。
【0057】
内側及び外側両方のシール100A/100Bの摺動シール界面118によって生成される熱及び摩擦は、潤滑流体の導入によって冷却及び潤滑することができる。潤滑流体は、潤滑入口218においてメカニカルシール100に入り、潤滑出口220においてメカニカルシール100A/100Bを出ることができる。メカニカルシール100A/100Bを出ると、潤滑流体は、導管222を通過して熱交換器224に至ることができる。一実施形態では、熱交換器224は、水または空気などの冷却流体による熱伝達を通じて潤滑流体を冷却するように構成することができる。導管222は、1つ以上のイベント226及び1つ以上の潤滑ブリード接続部228を含むことができる。
【0058】
流体圧力は、ブラダアキュムレータ230によって熱交換器224の出口で潤滑流体に加えられ得る。外部供給源からの圧力は、ブラダチャージ接続部232を通じてブラダアキュムレータ230に印加することができる。ブラダアキュムレータ230は、例えば、1つ以上のゲージの形で、ブラダチャージ接続部232の近位の圧力及び/または温度インジケータ234を含むことができる。加圧された潤滑流体は、弁236を通って導管238に流入することができる。導管238は、バルブ付き潤滑剤充填接続部240をさらに含むことができる。
【0059】
冷却及び加圧された潤滑流体は、導管242を通って潤滑入口218に流入することができる。導管242は、冷却及び加圧された潤滑流体の状態の視覚的表示を提供するように構成された1つ以上の温度、圧力、及び/または流れインジケータ244をさらに含むことができる。
【0060】
一実施形態では、メカニカルシールシステム200は、リアルタイムでメカニカルシールシステム200を監視することを可能にするように構成された1つ以上のセンサ202を含むことができる。これらのセンサ202は、侵入型でも非侵入型でもよい。例えば、一実施形態では、米国特許第8,651,801号(先に参照により組み込まれている)のドライシール構成に示されているセンサなどの、1つ以上のセンサ202をメカニカルシール100内に埋め込むことができる。図2に示すように、これらのセンサは、回転機械の音響放出を監視するように構成されたセンサ202Aと、回転機械の振動及び/または回転速度を監視するように構成されたセンサ202Bと、回転機械の温度を監視するように構成されたセンサ202Cと、摺動シール界面を出る潤滑流体の温度及び/または圧力(あるいは、流出バリア流体出口温度及び/または圧力と呼ばれる)を監視するように構成されたセンサ202Dと、摺動シール界面に入る潤滑流体の温度及び/または圧力(あるいは、流入バリア流体入口温度及び/または圧力と呼ばれる)を監視するように構成されたセンサ202Eと、摺動シール界面の音響放出を監視するように構成されたセンサ202Fと、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の温度及び/または圧力(あるいは、バリア流体温度及び圧力とも呼ばれる)を監視するように構成されたセンサ202Gと、ブラダアキュムレータの近位の潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ202Hと、熱交換器202Iの近位の潤滑流体の温度及び圧力を監視するように構成されたセンサと、を含む。他のセンサ202及びそれらの組み合わせも企図される。
【0061】
図3を参照すると、メカニカルシールシステム200は、メカニカルシールシステム200の全体的な健全性を監視し、差し迫った故障の表示を提供するように構成された予測診断サブシステム300をさらに含むことができる。1つ以上のセンサ202は、予測診断システム300の構成要素として含めることができる。例えば、予測診断システム300の一実施形態では、1つ以上のセンサ202を1つ以上のデータアグリゲータ302に動作可能に結合することができる。データアグリゲータは、1つ以上のセンサ202によって感知されたデータを受信及び処理し、感知されたデータを1つ以上のサーバ304に伝送するように構成することができる。サーバ304は、感知されたデータを使用して、メカニカルシールシステム200の健全性に関する判定を行い、警報、通知、及び/または推奨メッセージを、プラント分散制御システム(DCS)などの制御システム306及びローカルオペレータまたはユーザ308に提供することができる。一実施形態では、ローカルオペレータ308は、ローカルのハードワイヤード及び/もしくは無線インターフェース、または遠隔及び/もしくはウェブベースのインターフェースとすることができる。一実施形態では、サーバ304は、遠隔ユーザ308にデータを通信するように構成されたネットワーク307と連通していてもよい。予測診断システム300の構成要素間の様々な通信リンクは、有線でも無線でもよい。
【0062】
図4を参照すると、本開示の一実施形態によるデータアグリゲータ302のブロック図が示されている。データアグリゲータ302は、リアルタイムでセンサ202からデータを受信し、感知されたデータをサーバ304に伝送するように構成することができる。一実施形態では、データアグリゲータ302は、筐体402内に収容され、筐体402は、データアグリゲータ302の内部構成要素をその動作環境のしばしば厳しい環境条件から防御するのに役立ち得る。例えば、筐体402は、防爆性、及び/またはAppareils destines a etre utilises en Atmospheres Explosibles(ATEX)ゾーン1環境(すなわち、空気とガス、蒸気、もしくは霧の形の危険な物質との混合物からなる爆発性雰囲気が通常動作中に時折発生する可能性がある場所)内での使用に適したものとすることができる。実施形態では、防爆性筐体402は、内部爆発を封じ込め、周囲の雰囲気に点火することを回避することができる。筐体402は、防水または防火などの環境保護も提供することができる。一実施形態では、筐体402は、アルミニウムで作製することができる。他の実施形態では、十分な環境保護を提供する他の材料を使用することができる。
【0063】
一実施形態では、データアグリゲータ302は、電力入力(図示せず)を含むことができる。一実施形態では、電力入力は、DC24Vを受け取ることができる。他の電力入力も企図される。一実施形態では、データアグリゲータ302は、データアグリゲータ302を通じて危険な環境に流入する電気エネルギーを制限することができるツェナーダイオードなどの安全ダイオード(図示せず)を含むことができる。
【0064】
一実施形態では、センサ入力インターフェース404は、1つ以上のセンサ202に動作可能に結合された有線または無線インターフェースとすることができる。データ取得エンジン406は、高速データ取得ボードを含むことができ、センサ入力インターフェース404から生の信号を受信するように構成することができる。一実施形態では、データ取得エンジン406は、14個のセンサ202と通信するための14個のセンサチャネルをサポートすることができる。例えば、一実施形態では、サポートされるセンサチャネルは、圧力センサまたは温度センサなどの当技術分野で公知の標準的センサのための8つの4~20mAチャネル、振動センサのための3つのチャネル、音響放出センサのための2つのチャネル、及びタコメータまたは回転速度センサのための1つのチャネルを含むことができる。
【0065】
信号処理エンジン408は、データ取得エンジン406によって受信されたアナログデータをデジタル信号に変換することができる。一実施形態では、信号処理エンジン408は、データアグリゲータ302から伝送されるべきデータの容量または量を低減するためにさらなる信号処理を行う。
【0066】
一実施形態では、信号処理エンジン408からのデジタル信号は、出力インターフェース412を介したサーバ304へのバッチ伝送のためにメモリ410で待ち行列に入れられ得る。一実施形態では、出力インターフェース412は、規則的にスケジュールされた時間に、ランダムな時間に、またはサーバ304からの要求に応じて、デジタル信号を提供することができる。一実施形態では、出力インターフェース412は、有線イーサネット(登録商標)接続、WiFiもしくは他の市販の無線を介した無線接続、またはユニバーサルシリアルバス(USB)、パラレル、もしくは他の直接ケーブル接続などの他の直接有線接続を含むことができる。データアグリゲータ302は好ましくない環境に耐えるように物理的に構成されているので、サーバ304及びクライアント306などのシステム300の他の構成要素は、危険な作業環境の内部または外部の安全なエリア内に位置付けることができる。
【0067】
図5Aを参照すると、本開示の一実施形態によるサーバ304の構成要素を示すブロック図が示されている。一実施形態では、サーバ304は、信号入力エンジン502、ユーザインターフェース504、故障モードトラッカーインターフェース506、メモリ508、及び1つ以上の故障モードトラッカー510を含むことができる。
【0068】
信号入力エンジン502は、1つ以上のデータアグリゲータ302によって提供されるデータを受信することができる。一実施形態では、1つ以上のデータアグリゲータ302からのセンサデータは、信号入力エンジン502によって連続的に受信される。他の実施形態では、信号入力エンジン502は、1つ以上のデータアグリゲータ302に定期的に問い合わせる。別の実施形態では、1つ以上のデータアグリゲータ302は、所定の条件の場合にセンサデータを信号入力エンジン502にプッシュする。
【0069】
メモリ508は、信号入力502によって受信されたデータ、及び予測診断システム300内で生成された他のデータ、例えば故障モードトラッカーインターフェース506またはユーザインターフェース504内で生成されたデータを、一時的または永続的に記憶するように構成することができる。
【0070】
ユーザインターフェース504は、サーバ304に直接接続された入力及び出力デバイス、ならびに/またはウェブクライアント、モバイルアプリケーション、もしくはサーバ304とのオペレータ対話を提供する他のインターフェースなどの1つ以上の遠隔クライアントインターフェースを含むことができる。一実施形態では、ユーザインターフェース504は、プログラム制御及び/またはサーバ304との対話を可能にするアプリケーションプログラミングインターフェースを含むことができる。一実施形態では、ユーザインターフェース504は、警報、健全性状態の通知、及び/または推奨事項をプラントDCS306及び/またはローカルもしくは遠隔のユーザ/オペレータ308にプッシュすることができる。
【0071】
故障モードトラッカーインターフェース506は、1つ以上の故障モードトラッカー510の登録及び起動を可能にすると共に、起動された故障モードトラッカー510と通信するように構成することができる。各故障モードトラッカー510は、1つ以上の予想される種類の故障を予測し、一般にメカニカルシールシステム200のリアルタイム健全性評価を提供する目的で、1つ以上の動作状態を検出及び分析するように構成することができる。各予測診断システム300で登録及び起動される具体的な故障モードトラッカー510は、監視されているメカニカルシールシステム200の具体的なシステム要件及び環境条件に依存し得る。
【0072】
図5Aに示すように、一実施形態では、予測診断システム300は、潤滑不良の故障モードトラッカー510A、低/無流量の故障モードトラッカー510B、逆圧の故障モードトラッカー510C、及び/またはキャビテーションの故障モードトラッカー510Dを含むことができる。他の故障モードトラッカー510も企図される。したがって、選択された故障モードトラッカー510の登録及び起動は、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、またはシステム200の具体的な用途に比類なく適合するように、予測診断システム300をメカニカルシールシステム200に対して適応させ、またはカスタマイズすることを可能にする。
【0073】
図5Bを参照すると、各故障モードトラッカー510は、故障モードトラッカーインターフェース506とサーバインターフェース518との間の通信を介してセンサデータを受信するように構成することができる。場合によっては、受信されるセンサデータは、ある期間にわたって受信されるセンサデータを表すように時間的要素を含むことができ、これは、被追跡信号512と呼ぶことができる。一実施形態では、故障モードトラッカー510は、故障モードロジックモジュール516に従って被追跡信号512を1つ以上の所定の閾値514と比較するように構成することができる。警報、通知、推奨事項、及び/または他のデータは、故障モードロジックモジュール516によって生成することができ、次いでサーバインターフェース518を介してサーバ304に伝送し返すことができる。一実施形態では、故障モードトラッカーを1つ以上の別個の位置に配置することができ、それにより、故障モードトラッカーインターフェース506及びサーバインターフェース518は、ネットワークまたは直接通信リンクを介して通信するように構成される。
【0074】
故障モードトラッカー510は、個々の故障モードのロジック及び閾値基準をカプセル化し、所与のメカニカルシールシステム200の適切な故障モードのみを有するようにサーバ304を構成することを可能にする。一実施形態では、故障モードトラッカー510は、メカニカルシールシステム200の設置時または始動中にサーバ304上で起動することができる。一実施形態では、故障モードトラッカー510は、いつでも起動または停止することができる。一実施形態では、構成の詳細は、サーバ304から、またはローカルで記憶されている構成ファイルを介して、または遠隔のネットワーク位置から受信することができる。一実施形態では、サーバ304は、オペレータが構成の詳細を提供、変更、または削除することを可能にするユーザインターフェース要素を提供することができる。一実施形態では、サーバ304は、いつでも1つ以上の故障モードトラッカー510から起動ステータス及び/または状態ステータスを要求することができる。
【0075】
ポンプシステム200などの複雑なシステムは、複数の相互に関連する理由で故障を経験する可能性がある。任意のメカニカルシールシステム200の潜在的な故障は、そのシールシステムの設計及び動作環境に固有であり得る。本開示の実施形態は、潜在的な故障を同定するために、FMEAまたは他の診断または予後分析の結果を使用することができる。加えるに、類似の属性を有するシールシステムに関係する実際の故障または他の事象が分析されるので、任意の所定のシールシステムに関するより良い予測を行うことができる。
【0076】
図6を参照すると、本発明の一実施形態による、潤滑不良の故障モードトラッカー510Aの故障モードロジックモジュール516によって実行されるアルゴリズムを示すフローチャートが示されている。6000では、定常状態センサデータが、故障モードトラッカーインターフェース506によって伝送され、サーバインターフェース518によって受信される。定常状態センサデータを確立することに関する更なる詳細は、図8図9を参照して論じる。
【0077】
潤滑不良の故障モードトラッカー510Aの一実施形態では、受信された定常状態データは、(センサ202Fの)音響放出信号及びバリア流体温度信号(例えば、センサ202D、202E、及び/または202G)を含むことができる。センサデータは、ある期間にわたって受信されるセンサデータを表すように時間的要素をさらに含むことができ、これは、被追跡信号512として集成または保存することができる。被追跡信号512は、故障モードロジックモジュール516に通信することができる。
【0078】
一実施形態では、故障モードトラッカーインターフェース506は、予測診断システム300内の故障モードトラッカー510A~Dの起動ステータスを、起動されている各故障モードトラッカー510にさらに通信する。例えば、潤滑不良の故障モードトラッカー510Aの一実施形態では、故障モードトラッカーインターフェース506は、低/無流量の故障モードトラッカー510B、逆圧の故障モードトラッカー510C、キャビテーションの故障モードトラッカー510Dが起動されているかどうかをサーバインターフェース518に通信する。
【0079】
6002では、低/無流量の故障モードトラッカー510Bが起動されているかどうかについての判定が行われる。低/無流量の故障モードトラッカー510Bが起動されている場合、6004において、受信されたシール音響放出信号の振幅が、確立されたベースラインシール音響放出信号の振幅と比較される。受信されたシール音響放出信号の振幅が確立されたベースラインシール音響放出信号の振幅以下である場合、6006において、インターフェース潤滑不良の故障モードが検出されないと判定され、6000が繰り返される。
【0080】
受信されたシール音響放出信号の振幅が確立されたベースラインシール音響放出信号の振幅よりも大きい場合、6008において、キャビテーションの故障モードトラッカー510Dが起動されているかどうかについての判定が行われる。キャビテーションの故障モードトラッカー510Dが起動されている場合、6010において、インターフェース潤滑不良の故障モードは検出されないと判定され、6000が繰り返される。キャビテーションの故障モードトラッカー510Dが起動されていない場合、6018において、インターフェース潤滑不良の故障モードが検出されたと判定される。
【0081】
6002に戻って、低/無流量の故障モードトラッカー510Bが起動されていない場合、6012において、受信されたシール音響放出信号の振幅が、ベースラインシール音響放出信号の確立された振幅と比較される。受信されたシール音響放出信号の振幅が確立されたベースラインシール音響放出信号の振幅以下である場合、6010において、インターフェース潤滑不良の故障モードが検出されないと判定され、6000が繰り返される。
【0082】
受信されたシール音響放出信号の振幅が確立されたベースラインシール放射信号の振幅よりも大きい場合、6014において、受信されたバリア流体温度が確立されたバリア流体温度ベースラインと比較され、6016において、逆圧のトラッカー510Cが起動されているかどうかについての判定が行われる。一実施形態では、これらの活動は同時に実行される。受信されたバリア流体温度が確立されたバリア流体温度ベースライン以下であるか、または逆圧のトラッカー510Cが起動されていない場合、6010において、インターフェース潤滑不良の故障モードは検出されないと判定され、6000が繰り返される。
【0083】
受信されたバリア流体温度が確立されたバリア流体温度ベースライン(基準値)よりも大きく、逆圧のトラッカー510Cが起動されていない(いる)場合、アルゴリズムは6008に進み、キャビテーションの故障モードトラッカー510Dが起動されているかどうかを判定する。キャビテーションの故障モードトラッカー510Dが起動されている場合、6010において、インターフェース潤滑不良の故障モードは検出されないと判定され、6000が繰り返される。キャビテーションの故障モードトラッカー510Dが起動されていない場合、6018において、インターフェース潤滑不良の故障モードが検出されたと判定される。
【0084】
インターフェース潤滑不良の故障モードが検出されたと判定された場合、6020において、通知及び/または推奨メッセージがユーザに送信される。6022では、タイマが、6020の通知及び/または推奨メッセージの送信以降の経過時間を決定するために開始される。経過時間が所定の時間制限を超え、適切な措置がとられず、かつ/または状態が持続している場合、6024において、アラームメッセージがユーザに送信される。一実施形態では、所定の時間制限は30分とすることができるが、他の所定の時間制限も企図される。一実施形態では、アラームメッセージは、シール面の残存耐用年数を示すことができる。所定の時間制限内に適切な措置がとられ、かつ/またはインターフェース潤滑不良の故障モードの検出のための条件が持続している場合、6000が繰り返される。
【0085】
本教示の方法で使用される個々のステップは、本教示が動作可能にとどまる限り、任意の順序で、かつ/または同時に実行され得ることを理解されたい。一実施形態では、他の比較を使用することができる。例えば、比較されるべき値が妥当な公差値内で等しい場合、値は、第1の値が第2の値より小さいか(上述のように)、または第2の値より大きいかのように扱うことができる。
【0086】
一実施形態では、通知は、情報通知、警報通知、アラーム通知、トリップ通知、ならびに/またはトラブルシューティング及び既存の状態に対する適切な措置を行うためにユーザもしくはオペレータガイダンスを提供し得る推奨メッセージを含むことができる。通知は、レポートされる状態及び/または故障の厳しさをさらに示し得る。一実施形態では、通知は、携帯電話、携帯電子デバイス、電子メール、または他の方法などの様々なシステムによって、プラントDCS306及び/またはローカルもしくは遠隔のオペレータ308に配信することができる。一実施形態では、通知の配信方法は、通知の厳しさに基づいて変更することができる。
【0087】
一実施形態では、ユーザインターフェース504は、1人以上のユーザが好ましい通知位置及びスタイルを構成することを可能にすることができる。ユーザインターフェース504は、それぞれテキスト、グラフィックス、メニュー、ウィンドウ、ユーザ入力フィールド及び/または他のユーザインターフェース要素を含む1つ以上の視覚的要素を含む、1つ以上の画面を含むことができる。
【0088】
図7A~Bを参照すると、本開示の一実施形態によるダッシュボード通知及び推奨事項702が、示されている。一の実施形態では、ダッシュボード702は、ユーザによってカスタマイズすることができる。ユーザ選択領域704は、今現在ログインしているユーザを表示し、異なるユーザを選択することを可能にすることができる。ダッシュボード702は、1つの以上の画面702間のナビゲーションを可能にするメニュー706をさらに含むことができる。
【0089】
図7Aに示されているのは、複数のシールシステムの状態監視情報の概観を提供するダッシュボード画面である。ナビゲーションペイン708は、位置及び関連付けられたデバイスによってグループ化された複数のシールシステムを表示するツリービューを含む。一実施形態では、他の組織化の仕組みを使用することができ、ユーザが選択可能であってもよい。一実施形態では、アクティブな警報をレポートしているシールシステムのみがナビゲーションペイン708に表示される。図7Aに示すように、あるデバイスを選択すると、概要画面710を表示することができ、概要画面710は、選択されたデバイスに関連付けられた各シールシステムの状態の概観を提供することができる。概要領域712は、被監視シールシステム(または他のアセット)に関する概要情報を表示することができる。レポート領域714は、ユーザが、Microsoft Wordまたはポータブルドキュメントフォーマット(PDF)などのユーザ選択形式でレポートをダウンロードすることを可能にすることができる。他の形式も企図される。フィルタ領域716は、表示を単純化するために、ユーザが表示されるアセットをフィルタリングすることを可能にすることができる。
【0090】
詳細領域718は、概要画面710によって表示されるアセットのシール詳細720を表示することができる。シール詳細720は、稼動時間などのシールメトリクス及び位置を含むことができる。シール詳細720は、もしあれば、各シールについての通知722も含むことができる。詳細領域718は、各シールのステータスインジケータ724をさらに含むことができる。図7Aに示すように、ステータスインジケータ724は、ストップライト要素を提示することができ、緑は問題が存在しないことを示し、黄色及び/または赤は様々な厳しさの通知の存在を示す。ステータスインジケータ724は、緑のチェックマーク及び赤の厳しさレベルを示す「X」などの、ステータスレベルの区別のためのアイコンも含むことができる。
【0091】
図7Bは、本開示の一実施形態による選択されたシールシステムの健全性評価ビュー726を示す。一実施形態では、概要画面710またはナビゲーションペイン708上でシールシステムを選択することによって健全性評価ビュー726にアクセスすることができる。健全性評価ビュー726は、ステータスインジケータ724を含むことができる。健全性評価ビュー726は、健全性評価概観728も含むことができ、健全性評価概観728は、今現在の通知の簡単な概要を含むことができる。健全性評価ビュー726は、予後情報が利用可能であれば、予後730と、アクティブな通知に基づく推奨措置732とを含むことができる。健全性評価ビュー726は、1つ以上の故障モードトラッカー510によって提供されるステータスインジケータを提示する、1つ以上のステータスインジケータ734をさらに含むことができる。一実施形態では、非アクティブな故障モードトラッカーは、734cのようにグレー表示されてもよい。一実施形態では、健全性トレンド736を提供することができ、健全性トレンド736は、ある期間にわたる健全性指標及び通知を含むことができる。
【0092】
図8を参照すると、本開示の一実施形態による予測診断サーバ304を動作させる方法が示されている。8002において、予測診断システム300の構成が、例えばユーザインターフェース504またはメモリ508から受信される。予測診断システム300の構成情報は、例えば、メカニカルシール100の種類及び位置ならびに様々なセンサ202の種類及び位置を含めて、監視及び追跡されるべきメカニカルシールシステム200の環境条件及び他の属性を含むことができる。予測診断システム300の構成情報は、各メカニカルシールシステム200に対する1つ以上の故障モードトラッカー510の割り当て及び/または登録、ならびに各故障モードトラッカー510によって監視または追跡されるべき個々のセンサ202のマッピング及び/または指定をさらに含むことができる。
【0093】
8004では、1つ以上のセンサ202が、各それぞれのセンサ202によって測定される条件が所定の正常動作許容範囲内にとどまる定常状態条件を得るために監視される。8004における定常状態条件を得るための監視に関するさらなる詳細は、図9及び付随するテキストに開示されている。8008では、8004で確立された定常状態条件を使用して一組の閾値を確立することができる。一実施形態では、確立されたベースライン及び閾値は、メモリ514内の故障モードトラッカー510内に格納され得る。
【0094】
8010では、1つ以上のセンサ202からのデータを、1つ以上の割り当てられた及び/または登録された故障モードトラッカー510に通信することができる。1つ以上の故障モードトラッカー510は、センサデータを確立された一組の閾値と比較することができる。8012では、該当する場合、1つ以上の故障モードトラッカー510は、特定の閾値を超えたという警報または通知を出すことができる。
【0095】
故障モードトラッカー510は、通知を故障モードトラッカーインターフェース506にプッシュすることができる。8014では、通知をユーザに通信することができ、かつ/または8016では、メカニカルシールシステム200を調節するための推奨事項をユーザに通信することができる。一実施形態では、メカニカルシールシステム200を調節するための通知及び/または推奨事項は、ユーザインターフェース504を介してユーザに通信することができる。例えば、一実施形態では、警報、通知及び/または推奨事項は、ダッシュボード702によって通信することができる(図7A~Bに示すように)。
【0096】
8012、8014、及び/または8016に示される条件に基づいて、1つ以上の割り当て及び/または登録された故障モードトラッカー510は、センサデータを比較してベースライン条件を確立し、8018において、定常状態の被監視センサ条件に中断があったかどうかを判定することができる。被監視センサ条件が定常状態にとどまっている場合、8010が繰り返され得る。定常状態が継続している間、8010において無期限に故障モードトラッカー510にデータを伝送することができる。あるいは、被監視センサ条件がもはや定常状態にない場合、一組の新しいベースライン及び/または一組の新しい閾値を確立する目的で8004が繰り返され得る。
【0097】
図9を参照すると、定常状態8004のセンサデータを監視するステップが、本開示の一実施形態に従って示されている。9002では、信号データが所定の監視期間にわたって監視される。一実施形態では、監視期間は30分である。他の実施形態では、監視期間は30分よりも長くても短くてもよい。9004、9006、9008、9010、及び9012では、1つ以上のセンサ202によって感知される様々な被監視条件を評価し、監視期間中にそれらが逸脱したかどうかを判定する。一実施形態では、被監視信号は、回転軸の回転速度(測定されるセンサ202B)、チャンバ圧力(すなわち、摺動シール界面の両側の潤滑流体の圧力)(センサ202D及び202Eを介して測定される)、バリア圧力(すなわち、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の圧力)(センサ202Gを介して測定される)、及びフラッシュ温度(すなわち、メカニカルシールを出る潤滑流体の温度)(センサ202Dを介して測定される)、音響放出(センサ202Fを介して測定される)とすることができる。必要に応じて、代替信号を監視してもよい。
【0098】
一実施形態では、信号9004、9006、9008、9010、及び9012の各々の定常状態は、被監視条件が監視期間中の被監視条件の計算された移動平均の10パーセント以内にとどまるかどうかをチェックすることによって決定することができる。他の実施形態では、被監視条件が所定の正常動作許容範囲内にとどまるかどうかを判定する他の方法を用いることができる。
【0099】
信号9004、9006、9008、9010、及び9012のいずれかが安定していない場合、9016において、定常状態は監視期間中に達成されていないとみなされ、9002を再開することができる。あるいは、信号9004、9006、9008、9010、及び9012の全てが安定している場合、9014において、メカニカルシールシステム200は定常状態にあると考えることができる。
【0100】
したがって、定常状態において、メカニカルシールシステム200は、感知される条件が「整定」されて、メカニカルシールが動作しているデューティ条件に固有のベースラインデータを取るのを待つ。次いで、ベースラインデータを使用して、メカニカルシールシステム200の健全性評価を行うのに必要な閾値を確立または調節する。
【0101】
実施形態では、閾値は、当技術分野で知られているような中間(または統合)シール性能シミュレーションアルゴリズムに少なくとも部分的に基づいて決定することができる。シール性能シミュレーションアルゴリズムは、1組以上の予期されるパラメータを生成することができる。実施形態では、故障モードモジュールは、閾値を決定するために、予期されるパラメータを利用可能であればベースラインデータと比較することができる。この統合により、シール性能シミュレーションアルゴリズムによってモデル化された理論上の理想的なシステムからの検出された偏差、及びシステムの実際の運転条件を考慮した閾値の決定が可能になる。
【0102】
図10を参照すると、本発明の一実施形態による、システム200が、定常状態条件に達する前に、または新しい定常状態条件を確立することができる前のデューティサイクルの変化中に、過渡モードにおいてクリティカルな状態を監視し、オペレータに警報することを可能にする方法が示されている。いくつかの故障モードロジックモジュールは閾値の存在とは独立して動作するが、他の故障モードロジックモジュールは確立された閾値に依存して安全動作限界外の動作を運転者に警報する。過渡モードでは、ベースラインデータは、閾値を調節するために利用可能ではない。代わりに、メカニカルシールシステム200は、メカニカルシールの健全性の推定値を提供するために、所定の閾値を利用する。
【0103】
9050では、信号データが所定の監視期間にわたって監視される。9052では、メカニカルシール及びポンプが定常状態にあるかどうかの判定が行われる。メカニカルシール及びポンプが定常状態にある場合、9054において、メカニカルシールシステム200は定常状態診断モードに入る。9056では、健全性評価を、取得されたデータ及びデューティ調節された閾値に基づいて行うことができ、閾値は、例えば、図9に示すプロセスを通じて確立することができる。その後、9058において、システム評価出力をユーザに配信することができる。
【0104】
あるいは、メカニカルシール及びポンプが定常状態にない場合、9060において、メカニカルシールシステム200は過渡診断モードに入る。9062では、所定の閾値に基づいて健全性評価を行うことができる。その後、9058において、システム評価出力をユーザに配信することができる。
【0105】
本教示の方法で使用される個々のステップは、本教示が動作可能にとどまる限り、任意の順序で、かつ/または同時に実行され得ることを理解されたい。さらに、本教示の装置及び方法は、本教示が動作可能にとどまる限り、任意の数または全ての記載された実施形態を含むことができることを理解されたい。
【0106】
一実施形態では、予測診断システム300及び/またはその構成要素もしくはサブシステムは、コンピューティングデバイス、マイクロプロセッサ、モジュール、及び他のコンピュータまたはコンピューティングデバイスを含むことができ、これらは、デジタルデータを入力として受け入れ、入力を命令またはアルゴリズムに従って処理するように構成され、結果を出力として提供する任意のプログラマブルデバイスであり得る。一実施形態では、本明細書で論じるコンピューティングデバイス及び他のこのようなデバイスは、コンピュータプログラムの命令を実行するように構成された中央処理装置(CPU)であってもよく、それを含んでもよく、それを収容してもよく、またはそれに結合されていてもよい。したがって、本明細書で論じるコンピューティングデバイス及び他のこのようなデバイスは、基本的な算術演算、論理演算、及び入出力操作を実行するように構成される。
【0107】
本明細書で説明するコンピューティングデバイス及び他のデバイスは、メモリを含むことができる。メモリとしては、命令またはアルゴリズムを実行するための空間を提供するだけでなく、命令自体を記憶するための空間を提供するために、結合されるコンピューティングデバイスまたはプロセッサによって要求される揮発性または不揮発性メモリが挙げられ得る。一実施形態では、揮発性メモリとして、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、またはスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)が挙げられ得る。一実施形態では、不揮発性メモリとしては、例えば、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ、強誘電体RAM、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、または光ディスクストレージが挙げられ得る。これらの実施形態は例としてのみ与えられているものであり、本開示の範囲を限定することを意図しないため、前述のリストは、使用することができるメモリの種類を決して限定するものではない。
【0108】
一実施形態では、システムまたはその構成要素は、様々なモジュールまたはエンジンを備え、または含むことができ、様々なモジュールまたはエンジンの各々は、機能または一組の機能を自律的に実行するように作製され、プログラムされ、構成され、または他の方法で変更される。本明細書で使用される「エンジン」という用語は、ハードウェアを使用して、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)もしくはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などにより実装された実世界のデバイス、構成要素、もしくは構成要素の配置として、またはマイクロプロセッサシステム及び特定の機能を実装するようにエンジンを変更し、(実行されている間)マイクロプロセッサシステムを特定目的デバイスに変換する一組のプログラム命令などによるハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして、定義される。エンジンはまた、この2つの組み合わせとして実装されてもよく、特定の機能はハードウェアのみにより容易にされ、他の機能はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって容易にされる。いくつかの実装形態では、エンジンの少なくとも一部、場合によっては全ては、オペレーティング・システム、システム・プログラム、及びアプリケーション・プログラムを実行するハードウェア(例えば、1つ以上のプロセッサ、メモリもしくはドライブ・ストレージなどのデータ記憶デバイス、ネットワーク・インターフェース・デバイス、ビデオ・デバイス、キーボード、マウス、もしくはタッチ・スクリーン・デバイスなどの入出力機能)で構成された1つ以上のコンピューティングプラットフォームのプロセッサ(複数可)上で、適切な場合にはさらにマルチタスキング、マルチスレッディング、分散(例えば、クラスタ、ピア-ピア、クラウドなどの)処理、または他のこのような技術を使用してエンジンを実装しながら、実行されてもよい。したがって、各エンジンは、物理的に実現可能な様々な構成で実現することができ、そのような制限が明示的に出されない限り、本明細書に例示される特定の実装に一般に限定されるべきではない。加えるに、エンジンそのものは複数のサブエンジンで構成することができ、各サブエンジンはそれぞれ独自のエンジンとみなすことができる。その上、本明細書で説明する実施形態では、様々なエンジンの各々は、定義された自律的機能に対応する。しかしながら、他の企図される実施形態では、各機能を複数のエンジンに分散することができることを理解されたい。同様に、他の企図される実施形態では、複数の定義された機能は、これらの複数の機能を、場合によっては他の機能と並行して、実行する単一のエンジンによって実装されてもよく、または本明細書中の例に具体的に例示される一組のエンジン間で異なって分散されてもよい。
【0109】
システム、デバイス、及び方法の様々な実施形態は、本明細書に記載されている。これらの実施形態は、例としてのみ与えられ、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することを意図するものではない。その上、記載された実施形態の様々な特徴を様々な方法で組み合わせて、多数の追加的な実施形態を生み出し得ることを理解されたい。その上、開示された実施形態と共に使用するために様々な材料、寸法、形状、構成、及び位置などが記載されているが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を超えることなく、開示されたもの以外の他のものが利用されてもよい。
【0110】
当業者であれば、実施形態は、上記の個々の実施形態に例示されたものよりも少ない特徴を含むことができることを認識するであろう。本明細書に記載された実施形態は、様々な特徴が組み合わされ得る方法の網羅的な提示を意図するものではない。したがって、実施形態は、相互に排他的な特徴の組み合わせではない。むしろ、実施形態は、当業者によって理解されるように、異なる個々の実施形態から選択された異なる個々の特徴の組み合わせを含むことができる。その上、一実施形態に関して説明された要素は、別段の記載がない限り、そのような実施形態で説明されていない場合でも、他の実施形態で実装することができる。従属請求項は、特許請求の範囲において1つ以上の他の請求項との特定の組み合わせを指すことができるが、他の実施形態は、従属請求項と他の各従属請求項の主題との組み合わせ、または1つ以上の特徴と他の従属請求項もしくは独立請求項との組み合わせも含むことができる。特定の組み合わせが意図されていないと述べられていない限り、そのような組み合わせが本明細書において提案される。さらに、請求項が独立請求項に直接依存しない場合でも、請求項の特徴を任意の他の独立請求項に含めることも意図される。
【0111】
その上、本明細書において、「一実施形態」、「実施形態」、または「いくつかの実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明した特定の特徴、構造、または特性が、本教示の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。本明細書の様々な場所における「一実施形態では」という表現の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているとは限らない。
【0112】
上記の文献を参照することによるいかなる取り込みも、本明細書の明示的開示に反する主題が組み込まれないように限定される。上記の文献を参照することによるいかなる取り込みも、その文献に含まれる請求項が参照により本明細書に組み込まれないようにさらに限定される。上記の文献を参照することによるいかなる取り込みも、本明細書に明示的に含まれていない限り、その文献に提供された定義が参照により本明細書に組み込まれないようにさらに限定される。
【0113】
特許請求の範囲の解釈において、特定の用語「手段」または「ステップ」が請求項に記載されていない限り、米国特許法第112条第6項の規定は援用されないことが明示的に意図されている。
図1
図2
図2A
図3
図4
図5A-5B】
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
特許請求の範囲の解釈において、特定の用語「手段」または「ステップ」が請求項に記載されていない限り、米国特許法第112条第6項の規定は援用されないことが明示的に意図されている。
なお、参考態様として以下に示すものがある。
[参考態様1]
メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に診断する目的でメカニカルシールシステムを監視する方法であって、
前記メカニカルシールの近傍の音響放出データを感知することと、
前記感知された音響放出データのベースライン条件を確立することと、
摺動シール界面の近位の潤滑流体の温度を感知することと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の前記感知された温度のベースライン条件を確立することと、
前記メカニカルシールシステムが前記摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量を診断するように構成されているかどうかを判定することと、
前記感知された音響放出データが前記感知された音響放出データの前記確立されたベースライン条件を超えるかどうかを判定することと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の前記感知された温度が、前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の前記感知された温度の前記確立されたベースライン条件を超えるかどうかを判定することと、
前記メカニカルシールシステムが前記潤滑流体の圧力反転を診断するように構成されているかどうかを判定することと、
前記メカニカルシールシステムが前記摺動シール界面の近傍のキャビテーションを診断するように構成されているかどうかを判定することと、
前記摺動シール界面内の潤滑不良が検出されたという通知をユーザに送信することと、を含む、方法。
[参考態様2]
前記メカニカルシールシステムを評価して、前記メカニカルシールシステムの故障の可能性を、前記メカニカルシールシステムの前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量、前記摺動シール界面の近位の潤滑流体の圧力反転、及び前記摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーションのうちの少なくとも1つに関して判定することをさらに含む、参考態様1に記載の方法。
[参考態様3]
個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールシステムの具体的な用途に適合させる目的で、発生の可能性が高いと判定されたメカニカルシールシステム故障に関連する動作条件を診断するように前記メカニカルシールシステムを適応させることをさらに含む、参考態様2に記載の方法。
[参考態様4]
前記メカニカルシールシステム内の潤滑不良の故障モードロジックモジュールを起動することをさらに含み、前記潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、前記摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成されている、参考態様2に記載の方法。
[参考態様5]
潤滑流体の低流量の故障モードロジックモジュール、潤滑流体の圧力反転の故障モードロジックモジュール、及び前記摺動シール界面の近傍のキャビテーションの故障モードロジックモジュールのうちの少なくとも1つを起動することをさらに含む、参考態様2に記載の方法。
[参考態様6]
前記ユーザに送信される前記通知は、前記摺動シール界面内の前記潤滑不良の厳しさを示す、参考態様1に記載の方法。
[参考態様7]
前記通知は、トラブルシューティング及び/または適切な措置を行って前記摺動シール界面内の前記潤滑不良を改善するためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む、参考態様6に記載の方法。
[参考態様8]
前記ユーザの通知後の経過時間を判定するためにタイマを開始することをさらに含む、参考態様6に記載の方法。
[参考態様9]
前記経過時間が所定の時間を超える場合にアラームメッセージを送信することをさらに含む、参考態様8に記載の方法。
[参考態様10]
前記所定の時間は、30分以下である、参考態様9に記載の方法。
[参考態様11]
前記アラームメッセージは、前記メカニカルシールの推定残存耐用年数を含む、参考態様9に記載の方法。
[参考態様12]
メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に検出するように構成されたメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転軸との間の摺動シール界面を有するメカニカルシールと、
前記メカニカルシールの近傍の音響放出データ及び前記摺動シール界面の近傍の潤滑流体の温度を感知するように構成された1つ以上のセンサと、
前記1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、前記摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成された潤滑不良の故障モードロジックモジュールと、
前記1つ以上のセンサによって感知されたデータを監視し、メカニカルシールシステム内で発生することが知られている特定の種類の機械的故障に関連する条件を診断するように構成された複数の他の故障モードロジックモジュールであって、潤滑流体の低流量の故障モードロジックモジュール、潤滑流体の圧力反転の故障モードロジックモジュール、及び前記摺動シール界面の近傍のキャビテーションの故障モードロジックモジュールのうちの少なくとも1つを含む、複数の他の故障モードロジックモジュールと、を備え、
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの選択された故障モードロジックモジュールが、前記メカニカルシールシステム内の各故障モードロジックモジュールのそれぞれの特定の種類の機械的故障の発生の可能性に基づいて起動され、
前記潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、前記複数の他の故障モードロジックモジュールのうちのどれが前記摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件の前記診断中に起動されるかを判定するように構成されている、メカニカルシールシステム。
[参考態様13]
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの前記選択された故障モードロジックモジュールは、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールの具体的な用途に適合するように前記メカニカルシールシステムを適応させる目的で起動される、参考態様12に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様14]
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの前記選択された故障モードロジックモジュールが、前記メカニカルシールシステムの評価に基づいて起動され、前記メカニカルシールシステムの故障の可能性を、前記メカニカルシールシステムの前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面内の潤滑流体の低流量、前記摺動シール界面の近位の潤滑流体の圧力反転、及び前記摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーションのうちの少なくとも1つに関して判定する、参考態様12に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様15]
前記摺動シール界面内の潤滑不良が検出されたとき、ユーザに通知が送信される、参考態様12に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様16]
前記通知は、前記摺動シール界面内の前記潤滑不良の厳しさを示す、参考態様15に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様17]
前記通知は、トラブルシューティング及び/または適切な措置を行って前記摺動シール界面内の前記潤滑不良を改善するためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む、参考態様15に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様18]
前記潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、前記通知が送信された後の経過時間を決定するように構成されたタイマを含む、参考態様12に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様19]
前記経過時間が所定の時間を超える場合にアラームメッセージが送信される、参考態様18に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様20]
前記所定の時間は、30分以下である、参考態様19に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様21]
前記アラームメッセージは、前記摺動シール界面の推定残存耐用年数を含む、参考態様18に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様22]
個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または具体的な用途に適合するように適応されるように構成されたカスタマイズ可能な予測診断サブシステムを有するメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転可能軸との間に設置されたメカニカルシールと、
前記メカニカルシールの近傍の圧力、温度、回転速度、振動、及び音響放出のうちの少なくとも1つを感知するように構成された複数の感知デバイスと、
複数の故障モードロジックモジュールであって、各故障モードロジックモジュールが、メカニカルシール内で発生することが知られている特定の種類の機械的故障に関連する複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを監視し、前記メカニカルシールシステム内の前記特定の種類の機械的故障の実際の発生に関する通知をユーザインターフェースを介してユーザに提供するように構成された、複数の故障モードロジックモジュールと、を備え、
前記複数の故障モードロジックモジュールのうちの特定のものは、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールシステムの具体的な用途に適合するように前記予測診断サブシステムを適応させる目的で、前記ユーザインターフェースを介して選択的に起動される、メカニカルシールシステム。
[参考態様23]
前記メカニカルシールは、ポンプに動作可能に結合されている、参考態様22に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様24]
前記メカニカルシールが、中に潤滑流体が導入される少なくとも1つの摺動シール界面を含む、参考態様23に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様25]
熱交換器、ブラダアキュムレータ、圧力容器、またはそれらの組み合わせのうちの1つを含む潤滑流体調整ユニットをさらに備える、参考態様24に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様26]
前記複数の感知デバイスのうちの少なくとも1つは、前記ポンプの音響放出を監視するように構成されたセンサ、前記ポンプの振動及び/または回転速度を監視するように構成されたセンサ、前記ポンプの温度を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面を出る潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面に入る潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面の音響放出を監視するように構成されたセンサ、前記摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、前記ブラダアキュムレータの近位の潤滑流体の温度及び/または圧力を監視するように構成されたセンサ、ならびに熱交換器の近位の潤滑流体の温度及び圧力を監視するように構成されたセンサ、のうちの少なくとも1つを含む、参考態様25に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様27]
前記特定の種類の機械的故障は、前記メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面内の潤滑流体の低流量、前記潤滑流体の圧力反転、及び前記メカニカルシールの前記摺動シール界面の近傍で発生するキャビテーション、のうちの少なくとも1つである、参考態様22に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様28]
前記メカニカルシールシステムが、API規格01、02、11、12、13、14、21、23、31、32、41、52、53A、53B、53C、54、62、65A、65B、66A、66B、72、74、75、及び76準拠システム、またはそれらの組み合わせのうちの1つである、参考態様22に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様29]
前記複数の感知デバイスは、前記複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知されたデータを受信及び処理し、前記複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知された前記データを1つ以上のサーバに伝送するように構成された1つ以上のデータアグリゲータに動作可能に結合されている、参考態様22に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様30]
前記複数の感知デバイスのうちの1つ以上によって感知された前記データは、前記1つ以上のサーバに無線で伝送される、参考態様29に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様31]
前記通知は、略式通知、警報通知、アラーム通知、トリップ通知、ならびにトラブルシューティング及び既存の状態に対する適切な措置を行うためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージのうちの少なくとも1つを含む、参考態様22に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様32]
動作状態を検出し、動作中にユーザにリアルタイム健全性評価を提供するように構成されたメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転軸とを含む回転デバイスと、
前記回転デバイスの前記固定ハウジングと前記回転軸との間に摺動シール界面を設けるように構成されたメカニカルシールと、
前記摺動シール界面内に潤滑流体を導入するように構成された潤滑流体調整ユニットと、
前記メカニカルシールシステムの動作状態を感知するように構成された複数のセンサと、
前記感知された動作状態を監視し、前記メカニカルシールシステム内で発生する特定の種類の機械的故障の可能性に関するフィードバックをユーザインターフェースを介したユーザへの通知により提供するように構成された複数の故障モードロジックモジュールと、を備え、
前記複数の故障モードロジックモジュールの各々は、個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールシステムの具体的な用途に適合するように起動または停止することができる、メカニカルシールシステム。
[参考態様33]
前記潤滑流体調整ユニットは、熱交換器、ブラダアキュムレータ、圧力容器、またはそれらの組み合わせのうちの1つの1つを含む、参考態様32に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様34]
前記複数のセンサのうちの少なくとも1つは、前記ポンプの音響放出の監視、前記ポンプの振動及び/または回転速度の監視、前記ポンプの温度の監視、前記メカニカルシールを出る潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、前記メカニカルシールに入る潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、前記摺動シール界面の音響放出の監視、摺動シール界面内またはその近位の潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、前記ブラダアキュムレータの近位の潤滑流体の温度及び/または圧力の監視、ならびに前記熱交換器の近位の潤滑流体の温度及び圧力の監視、のうちの少なくとも1つを行うように構成されている、参考態様33に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様35]
前記特定の種類の機械的故障のうちの少なくとも1つは、前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面に提供される前記潤滑流体の低流量、前記潤滑流体の圧力反転、及び前記摺動シール界面内で発生する前記潤滑流体の近傍のキャビテーションを含む、参考態様32に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様36]
前記メカニカルシールシステムが、API規格01、02、11、12、13、14、21、23、31、32、41、52、53A、53B、53C、54、62、65A、65B、66A、66B 72、74、75、及び76準拠システム、またはそれらの組み合わせのうちの1つである、参考態様32に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様37]
前記複数のセンサは、前記感知された動作状態を受信及び処理し、前記感知された動作状態を1つ以上のサーバに伝送するように構成された1つ以上のデータアグリゲータに動作可能に結合されている、参考態様32に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様38]
前記感知された動作状態は、前記1つ以上のサーバに無線で伝送される、参考態様32に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様39]
前記通知は、略式通知、警報通知、アラーム通知、及びトリップ通知のうちの少なくとも1つを含む、参考態様32に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様40]
前記通知は、前記感知された動作状態の厳しさを示す、参考態様39に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様41]
前記通知は、トラブルシューティング及び既存の状態に対する適切な措置を行うためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む、参考態様40に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様42]
メカニカルシールの被監視条件を、前記メカニカルシールの近位の潜在的に危険な動作環境から遠隔のエリアに無線で通信するように構成された予測診断サブシステムを有するメカニカルシールシステムであって、
固定ハウジングと回転可能軸との間に設置されたメカニカルシールと、
前記メカニカルシールの近傍の圧力、温度、回転速度、振動、及び音響放出のうちの少なくとも1つを感知するように構成された1つ以上の感知デバイスと、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを収集及び分析するように構成された遠隔位置のサーバと、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データを前記遠隔位置のサーバに無線で通信するように構成されたデータアグリゲータであって、
産業環境内に設置するのに適した筐体、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データを受信するように構成された1つ以上のセンサ入力端子、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データをデジタル信号に変換するように構成された信号プロセッサ、及び
前記デジタル信号を前記サーバに無線で伝送するように構成された出力インターフェース、を含むデータアグリゲータと、を備えた、メカニカルシールシステム。
[参考態様43]
前記データアグリゲータは、前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータをリアルタイムで受信するように構成されている、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様44]
前記筐体は、危険な環境内での使用に適している、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様45]
前記筐体は耐水性である、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様46]
前記筐体は防爆性である、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様47]
前記データアグリゲータは、前記潜在的に危険な動作環境に流入する電気エネルギーを制限するように構成されたツェナーダイオードを含む、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様48]
前記データアグリゲータは、合計14個以上のセンサ入力端子を含む、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様49]
前記センサ入力端子は、圧力センサ及び/または温度センサの入力端子、振動センサの入力端子、音響放出センサの入力端子、及び回転速度センサの入力端子のうちの少なくとも1つを含む、参考態様48に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様50]
前記信号プロセッサは、前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを処理し、前記出力インターフェースによって伝送されるべき前記データの量を低減するように構成されている、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様51]
前記1つ以上の感知デバイスによって感知されたデータを記憶するように構成されたメモリをさらに備える、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様52]
前記出力インターフェースは、少なくともスケジュールされた時間に、ランダムな時間に、及び前記サーバからの要求に応じて、前記デジタル信号を前記サーバに伝送する、参考態様42に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様53]
動作状態を検出し、動作中にユーザにリアルタイム健全性評価を提供するように構成されたメカニカルシールシステムであって、
回転デバイスの固定ハウジングと回転軸との間の摺動シール界面を有するメカニカルシールと、
前記メカニカルシールシステムの動作状態を感知するように構成された複数のセンサと、
前記感知された動作状態を収集及び分析するように構成されたサーバと、
前記1つ以上の感知デバイスによって感知された前記データを前記遠隔位置のサーバに無線で通信するように構成されたデータアグリゲータであって、
産業環境内に設置するのに適した筐体、
前記感知された動作状態を受信するように構成された1つ以上のセンサ入力端子、
前記感知された動作状態をデジタル信号に変換するように構成された信号プロセッサ、及び
前記デジタル信号を前記サーバに無線で伝送するように構成された出力インターフェース、を含むデータアグリゲータと、を備えた、メカニカルシールシステム。
[参考態様54]
前記データアグリゲータは、前記感知された動作状態をリアルタイムで受信するように構成されている、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様55]
前記筐体は、危険な環境内での使用に適している、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様56]
前記筐体は耐水性である、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様57]
前記筐体は防爆性である、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様58]
前記データアグリゲータは、前記潜在的に危険な動作環境に流入する電気エネルギーを制限するように構成されたツェナーダイオードを含む、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様59]
前記データアグリゲータは、合計14個以上のセンサ入力端子を含む、参考態様35に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様60]
前記センサ入力端子は、圧力センサ及び/または温度センサの入力端子、振動センサの入力端子、音響放出センサの入力端子、及び回転速度センサの入力端子のうちの少なくとも1つを含む、参考態様60に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様61]
前記信号プロセッサは、前記感知された動作状態を処理し、前記出力インターフェースによって伝送されるべき前記データの量を低減するように構成されている、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様62]
前記感知された動作状態を記憶するように構成されたメモリをさらに備える、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様63]
前記出力インターフェースは、少なくともスケジュールされた時間に、ランダムな時間に、及び前記サーバからの要求に応じて、前記デジタル信号を前記サーバに伝送する、参考態様53に記載のメカニカルシールシステム。
[参考態様64]
メカニカルシールの摺動シール界面内の潤滑不良を自律的に診断する目的で、中間シール性能シミュレーションアルゴリズムに基づいて予期されるパラメータに関してメカニカルシールシステム内のシールの健全性状態を監視する方法であって、
前記メカニカルシールの近傍の音響放出データを感知することと、
前記感知された音響放出データのベースライン条件を確立することと、
摺動シール界面の近位の潤滑流体の温度を感知することと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の感知された温度のベースライン条件、前記感知された音響放出データのベースライン条件、及び前記潤滑流体の前記感知された温度のベースライン条件を、ベースラインパラメータと合わせて確立することと、
前記ベースラインパラメータを前記予期されるパラメータと比較することと、を含む、方法。
[参考態様65]
メカニカルシールシステム内の動作異常を自律的に診断する目的で、統合されたシール性能シミュレーションアルゴリズムに基づいて予期されるパラメータに関してメカニカルシールシステム内の1つ以上のシールの健全性状態を監視する方法であって、
前記メカニカルシールシステムの近傍の動作パラメータデータを感知することと、
前記感知された動作パラメータデータが前記メカニカルシールシステムが定常状態にあることを示すとき、前記感知された動作パラメータデータに基づいてベースライン条件パラメータを確立することと、
前記感知された動作パラメータデータが前記メカニカルシールシステムが定常状態にないことを示すとき、前記予期されるパラメータに基づいてベースライン条件パラメータを確立することと、
前記ベースライン条件パラメータを前記動作パラメータデータと比較することと、を含む、方法。
[参考態様66]
前記メカニカルシールシステムの近傍の動作パラメータデータを感知する前記ステップが、前記メカニカルシールシステム内の動作パラメータデータを感知することを含む、参考態様65に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニカルシールシステムを監視する方法であって、
音響センサーで前記メカニカルシールの近傍の音響放出データを感知するステップと、
知された前記音響放出データのベースライン条件を確立するステップと、
感知された前記音響放出データが、感知された前記音響放出データの確立された前記ベースライン条件を超えるかどうかを判定するステップと、
摺動シール界面の近位の潤滑流体の温度を感知するステップと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の知された前記温度のベースライン条件を確立するステップと、
前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の感知された前記温度が、前記摺動シール界面の近位の前記潤滑流体の感知された前記温度の確立された前記ベースライン条件を超えるかどうかを判定するステップと、
前記メカニカルシールシステムの故障の可能性を、前記メカニカルシールシステムの前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量のうちの少なくとも1つに関して判定するために、前記メカニカルシールシステムを評価するステップと、を含み
前記メカニカルシールシステムを評価することは、前記感知された温度及び前記感知された音響放出データを調べることを含む、方法。
【請求項2】
個々の顧客のニーズ、特定の環境条件、及び/または前記メカニカルシールシステムの具体的な用途に適合させる目的で、発生の可能性が高いと判定されたメカニカルシールシステム故障に関連する動作条件を診断するように前記メカニカルシールシステムを適応させることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記メカニカルシールシステム内の潤滑不良の故障モードロジックモジュールを起動することをさらに含み、前記潤滑不良の故障モードロジックモジュールは、前記摺動シール界面内の潤滑不良に関連する条件を診断するように構成されている、請求項に記載の方法。
【請求項4】
ユーザに通知を送信することを更に含み、前記ユーザに送信される前記通知は前記摺動シール界面内の前記潤滑不良の厳しさを示す、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記通知は、トラブルシューティング及び/または適切な措置を行って前記摺動シール界面内の前記潤滑不良を改善するためにユーザガイダンスを提供するように構成された推奨メッセージを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ユーザの通知後の経過時間を判定するためにタイマを開始することをさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記経過時間が所定の時間を超える場合にアラームメッセージを送信することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の時間は30分以下である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記アラームメッセージは前記メカニカルシールの推定残存耐用年数を含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
合されたシール性能シミュレーションアルゴリズムに基づいて予期されるパラメータに関してメカニカルシールシステム内の1つ以上のシールの健全性状態を監視する方法であって、
前記メカニカルシールシステムに関して動作パラメータデータを感知するステップであって、感知された前記動作パラメータデータは前記メカニカルシール内の潤滑流体の温度及び感知された音響放出データを含む、ステップと
知された前記動作パラメータデータが前記メカニカルシールシステムが定常状態にあることを示すとき、知された前記動作パラメータデータに基づいてベースライン条件パラメータを確立するステップと、
知された前記動作パラメータデータが前記メカニカルシールシステムが定常状態にないことを示すとき、前記統合されたシール性能シミュレーションアルゴリズムから前記予期されるパラメータに基づいてベースライン条件パラメータを確立するステップと、
前記ベースライン条件パラメータを前記動作パラメータデータと比較するステップと、を含む、方法。
【請求項11】
前記メカニカルシールシステムの近傍の動作パラメータデータを感知するテップが、前記メカニカルシールシステム内の動作パラメータデータを感知することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上のシールは摺動シール界面を有する第1のシールを含み、前記潤滑流体の温度は前記摺動シール界面近傍のセンサーによって感知される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記メカニカルシールシステムの故障の可能性を、前記摺動シール界面内の潤滑不良、前記摺動シール界面に提供される潤滑流体の低流量のうちの少なくとも1つに関して判定するために、前記メカニカルシールシステムを評価することを更に含み、
前記メカニカルシールシステムを評価することは、前記潤滑流体の前記感知された温度及び前記音響放出データを調べることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記摺動シール界面内の潤滑不良の可能性があると判断されるとき、ユーザに通知を送信することを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ユーザに送信した通知は前記摺動シール界面内の潤滑不良の厳しさを示す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ユーザの通知後の経過時間を判定するためにタイマを起動することをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記経過時間が所定の時間を超える場合にアラームメッセージを送信することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記所定の時間は30分以下である、請求項17に記載の方法。
【外国語明細書】