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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093349
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】全方向高彩度赤構造色
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/26 20060101AFI20220616BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220616BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20220616BHJP
   B32B 15/01 20060101ALN20220616BHJP
   B32B 9/00 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
G02B5/26
B32B7/023
G02B5/28
B32B15/01 K
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059572
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2019183275の分割
【原出願日】2017-04-25
(31)【優先権主張番号】15/144,283
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】デバシシュ バネルジー
(72)【発明者】
【氏名】チン ジョウ リー
(57)【要約】
【課題】層数が少なく、全方向的に高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜の提供。
【解決手段】全方向高彩度赤構造色を反射する多層薄膜。前記多層薄膜は、反射体層と、前記反射体層にわたって延在する少なくとも1つの吸収体層と、前記少なくとも1つの吸収体層にわたって延在する外側誘電体層とを含んでもよい。前記多層薄膜は、白色光に曝された場合に、可視光の単一狭帯域を反射し、前記外側誘電体層は、可視光の前記単一狭帯域の中心波長の2.0四分の一波長(QW)以下の厚さを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射体層と、前記反射体層にわたって延在する少なくとも1つの吸収体層と、前記少なくとも1つの吸収体層にわたって延在する外側誘電体層とを有する多層薄膜を含む、全方向高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜であって、
前記多層薄膜は、白色光に曝された場合に、可視光の単一狭帯域を反射し、前記外側誘電体層は、可視光の前記単一狭帯域の中心波長の2.0QW以下の厚さを有し、
可視光の前記単一狭帯域が、
200nm未満の可視FWHM幅;
Lab色空間で0°~30°の色;及び
前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab色空間で30°未満の色相シフト;
を有し、
前記反射体層が、Al、Ag、Pt、Sn、Au、Cu及び真鍮のうちの少なくとも1種から作られたものであり、
前記少なくとも1つの吸収体層が誘電体吸収体層及び透明吸収体層を含み、
前記誘電体吸収体層が、Fe及びTiNのうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~500nmの厚さを有し、
前記透明吸収体層が、Cr、Ge、Ni、ステンレス鋼、Ti、V、Si、TiN、W、Mo、Nb及びFeのうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~20nmの厚さを有し、
前記外側誘電体層がZnS、TiO及びMgFのうちの少なくとも1種から作られたものである、
全方向高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜。
【請求項2】
前記反射体層が、5~200nmの厚さを有する、請求項1に記載の多層干渉薄膜。
【請求項3】
前記透明吸収体層は、Cr、Ni、ステンレス鋼、Ti、V、TiN、W、Mo、Nb及びFeのうちの少なくとも1種から作られたものである、請求項1又は2に記載の多層干渉薄膜。
【請求項4】
前記外側誘電体層が1.6を超える屈折率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層干渉薄膜。
【請求項5】
反射された可視光の単一狭帯域の中心波長が600~700nmであり、前記外側誘電体層の厚さが175nm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層干渉薄膜。
【請求項6】
前記少なくとも1つの吸収体層が誘電体吸収体層及び透明吸収体層である、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層干渉薄膜。
【請求項7】
前記透明吸収体層が前記誘電体吸収体層にわたって延在し、かつ、前記誘電体吸収体層と前記外側誘電体層の間に配置されている、請求項1に記載の多層干渉薄膜。
【請求項8】
可視光の前記単一狭帯域が、Lab色空間において5°~25°の色、及び、前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab空間カラーマップにおいて20°未満の色相シフトを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層干渉薄膜。
【請求項9】
可視光の前記単一狭帯域が、Lab色空間において10°~25°の色、及び、前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab空間カラーマップにおいて15°未満の色相シフトを有する、請求項8に記載の多層干渉薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許出願第14/793,117号、第14/793,123号及び第14/793,133号の一部継続出願(CIP)である。米国特許出願第14/793,117号、第14/793,123号及び第14/793,133号は全て2015年7月7日に出願されたもので、2015年1月28日に出願された米国特許出願第14/607,933号のCIPであり、これらの内容は全て引用により援用する。
【0002】
本明細書は、概して、高彩度赤構造色を示すための多層干渉薄膜に関し、より具体的には、全方向的に高彩度赤構造色を示すための多層干渉薄膜に関する。
【背景技術】
【0003】
多層構造体から製造された顔料が知られている。さらに、高彩度全方向構造色を示す又はもたらす顔料も知られている。かかる顔料は、望ましい色特性を得るために39層もの誘電体層を必要とし、多層顔料の製造にかかる費用は薄膜層の数に比例する。そのため、誘電体材料の多層薄膜を使用する高彩度全方向構造色の製造は費用がかかりすぎる。赤色顔料の設計は、例えば青、緑などの他の色の顔料に対してもさらなるハードルとなっている。具体的には、赤色を得るための角度非依存性の制御は、高次高調波設計、すなわち二次及び場合によっては三次の高調波の存在をもたらすより厚い誘電体層が必要とされるために、困難である。また、暗赤色についてのLab色空間における色相空間は非常に狭く、赤色を示す多層薄膜はより高い角度変動を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、層数が少なく、全方向的に高彩度赤構造色を反射する代替的な多層干渉薄膜が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、全方向高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜は、反射体層と、当該反射体層にわたって延在する少なくとも1つの吸収体層と、当該少なくとも1つの吸収体層にわたって延在する外側誘電体層とを有する多層薄膜を含んでもよい。外側誘電体層は、多層薄膜により反射される可視光の単一狭帯域の中心波長の2.0四分の一波長(QW)以下の厚さを有する。可視光の単一狭帯域は、300ナノメートル(nm)未満の可視半値全幅(可視FWHM)幅と、Lab色空間において0°~30°の赤色と、外側誘電体層の外側表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で多層薄膜を観察した場合にLab色空間において30°未満の色相シフトを有する。
【0006】
別の実施形態において、様々な角度で観察された場合に人間の目では外観の変化がない、赤色を反射するための全方向高彩度赤構造色多層薄膜は、反射体層と、当該反射体層にわたって延在する誘電体吸収体層と、当該誘電体吸収体層にわたって延在する透明吸収体層と、当該透明吸収体層にわたって延在する外側誘電体層とを有する多層薄膜を含んでもよい。外側誘電体層は、多層薄膜により反射される可視光の単一狭帯域の中心波長の2.0QW以下の厚さを有する。可視光の単一狭帯域は、200ナノメートルnm未満の可視FWHM幅と、Lab色空間において0°~30°の赤色と、外側誘電体層の外側表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で多層薄膜を観察した場合にLab色空間において30°未満の色相シフトを有する。誘電体吸収体層は、酸化物及び窒化物のうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~500nmの厚さを有する。透明吸収体層は、クロム(Cr)、ゲルマニウム(Ge)、ニッケル(Ni)、ステンレス鋼、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、バナジウム(V)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)及び酸化鉄(Fe)のうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~20nmの厚さを有する。
【0007】
これらの特徴及び以下で説明する実施形態により示すさらなる特徴は、図面と併せて以下の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解されるであろう。
【0008】
図面に記載の実施形態は、事実上、例示的及び例証的なものであり、特許請求の範囲により規定される主題を限定することを意図したものでない。例示的実施形態についての以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読んだ場合に理解することができ、同じ構造は、同じ参照番号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う全方向高彩度赤構造色多層薄膜の設計に使用される反射体層(R)にわたって延在する誘電体層(D)を有する多層薄膜を示す。
図1B図1Bは、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う全方向高彩度赤構造色多層薄膜の設計に使用される反射体層(R)にわたって延在する半導体吸収体層(SA)を有する多層薄膜を示す。
図1C図1Cは、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う全方向高彩度赤構造色多層薄膜の設計に使用される反射体層(R)にわたって延在する誘電体吸収体層(DA)を有する多層薄膜を示す。
図2図2は、図1A~1Cに示した多層薄膜についてのLab色空間における反射特性を示す。
図3A図3Aは、図1Aに示した多層薄膜についての誘電体層(D)の厚さの関数としての彩度及び色相の値をグラフで示す。
図3B図3Bは、図1Bに示した多層薄膜についての半導体吸収体層(SA)の厚さの関数としての彩度及び色相の値をグラフで示す。
図3C図3Cは、図1Cに示した多層薄膜についての誘電体吸収体層(DA)の厚さの関数としての彩度及び色相の値をグラフで示す。
図4図4は、基材層にわたって延在する誘電体層を有し、誘電体層の外側表面に垂直な方向に対して角度θで電磁線に曝された多層薄膜を示す。
図5図5は、波長550nmの光に曝された2つの多層薄膜についての層厚の関数としての電場の値(|電場|)をグラフで示す。多層薄膜のうちの一方は、反射体層にわたって延在する誘電体吸収体層と、当該誘電体吸収体層にわたって延在する透明吸収体層と、当該透明吸収体層にわたって延在する誘電体層とを有し(R/DA/TA/D)、もう一方の多層薄膜は、反射体層にわたって延在する誘電体吸収体層と、当該誘電体吸収体層にわたって延在する誘電体層とを有する(R/DA/D)。
図6図6は、波長550nm~650nmの光に曝された場合の(R/DA/TA/D)多層薄膜についての層厚の関数としての電場(|電場|)をグラフで示す。
図7図7は、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う多層薄膜を示す。
図8図8は、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う多層薄膜を示す。
図9図9は、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う多層薄膜についての、白色光を当て、多層薄膜の外側表面に垂直な方向に対して0°及び45°で観察した場合の、波長の関数としての反射率(%)をグラフで示す。
図10図10は、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う多層薄膜についての、白色光を当て、多層薄膜の外側表面に垂直な方向に対して0°及び45°で観察した場合の、波長の関数としての反射率(%)をグラフで示す。
図11図11は、本明細書で示し説明する1又は2つ以上の実施形態に従う多層薄膜についての、白色光を当て、多層薄膜の外側表面に垂直な方向に対して様々な角度で観察した場合の、Lab色空間における色をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図7は、概して、高彩度赤構造色を反射するための全方向反射体であることができる多層薄膜の一実施形態を示す。多層薄膜は、概して、反射体層と、当該反射体層にわたって延在する少なくとも1つの吸収体層と、当該少なくとも1つの反射体層にわたって延在する外側誘電体層とを有する。上記少なくとも1つの吸収体層は、誘電体層が赤色スペクトル内の波長を有する光の反射をもたらす厚さを有する場合に、概して550nm未満の波長を有する光を吸収する。高彩度赤構造色を得るための全方向反射性を有する様々な多層薄膜の構造及び特性、多層薄膜構造体を設計する方法、当該構造体を使用できる用途を、本明細書中でより詳しく説明する。
【0011】
本明細書に記載の多層薄膜構造体は、入射又は観察角度範囲にわたって、可視光の赤色スペクトル内の波長を全方向反射するために使用してもよい。用語「電磁波」、「電磁線」及び「光」は、本明細書において、互換的に、多層薄膜構造体に入射した様々な波長の光を意味すること、及び、かかる光は、電磁スペクトルの紫外(UV)、赤外(IR)及び可視部分内の波長を有しても良いことが理解されるであろう。
【0012】
図1A~1C及び図2には、Lab色空間でプロット又は示した場合の可視光スペクトルの赤領域において所望の色相レベルを達成するにあたっての、反射体層にわたって延在する様々なタイプの層の有効性が示されている。図1Aは、反射体層にわたって延在するZnS誘電体層を示し、図1Bは、反射体層にわたって延在するSi半導体吸収体層を示し、図1Cは、反射体層にわたって延在するFe誘電体吸収体層を示す。誘電体層、半導体吸収体層及び誘電体吸収体層についての様々な厚さの関数として、図1A~1Cに示した各多層薄膜からの反射のシミュレーションを行った。シミュレーションの結果を、aカラーマップとしても知られているLab色空間でプロットし、図2に示した。図2に示した各データ点は、図1Aに示した多層薄膜の場合の誘電体層、図1Bに示した多層薄膜の場合の半導体吸収体層又は図1Cに示した多層薄膜の場合の誘電体吸収体層の特定の厚さに応じて彩度及び色相を与える。
【0013】
【数1】
【0014】
色相は、所与のデータ点の正のa軸に対する角度として言及されることもある。色相値(hue value)は、物体が示す色、例えば赤色、緑色、青色などの度合いを与え、彩度値(chroma value)は、色の「明度」の度合いを与える。図2に示されているように、図1Aに示した多層薄膜は、図1B~1Cに示した多層薄膜と比べて低い彩度を与える。したがって、図1A~1C及び図2は、高彩度の色が望ましい場合には、吸収体層、例えば半導体層又は誘電体吸収体層が、反射体層にわたって延在する第1の層として誘電体層よりも好ましいことを実証している。
【0015】
図3A~3Cには、彩度及び色相が、層厚の関数として示されている。具体的には、図3Aは、図1Aに示したAl反射体層にわたって延在するZnS誘電体層の厚さの関数として彩度及び色相をグラフで示している。図3Bは、図1Bに示したAl反射体層にわたって延在するSi半導体吸収体層の厚さの関数として彩度及び色相を示している。図3Cは、図1Cに示したAl反射体層にわたって延在するFe誘電体吸収体層の厚さの関数として彩度及び色相の値を示している。図3A~3C中の点線は、Lab色空間における10~30°の所望の色相値に対応する。図3A~3Cは、10~30°の色相範囲内でより高い彩度値は、半導体吸収体層又は誘電体吸収体層が反射体層にわたって延在する多層薄膜の場合に達成されることを示している。複数の実施形態において、外側誘電体層が吸収体層、例えば半導体吸収体層又は誘電体吸収体層にわたって延在している。
【0016】
複数の実施形態において、さらなる透明吸収体層が吸収体層と外側誘電体層の間に延在する。透明吸収体層の位置は、550nm以下の波長の光の吸収を増進するが約650nmの波長の光を反射するように選択される。
【0017】
【数2】
【0018】
複数の実施形態において、図4及び以下の議論は、光の所定の波長でゼロ又はゼロ近傍(near-zero)の電場の地点の厚さの計算方法を与える。本明細書の目的上、用語「ゼロ近傍」は、
【0019】
【数3】
【0020】
と定義される。図4は、屈折率nを有する基材層2上に、全厚「D」、インクリメンタル厚さ(incremental thickness)「d」及び屈折率「n」を有する誘電体層4を備えた多層薄膜を示す。基材層2は、多層薄膜のコア層又は反射体層であることができる。入射光は、誘電体層4の外側表面5に、外側表面5に対して垂直である線6に対して角度θで当り、同じ角度θで外側表面5から反射される。入射光は外側表面5を透過して誘電体層4中に、線6に対して角度θで入り、基材層2の表面3に角度θで当たる。単一誘電体層の場合、θ=θであり、エネルギー/電場(E)は、z=dの場合にE(z)として表することができる。
【0021】
【数4】
【0022】
誘電体層4のZ方向に沿う電場の変動は、未知のパラメータu(z)及びv(z)の計算によって推定できることは分かっており、ここで、以下のように示すことができる:
【0023】
【数5】
【0024】
【数6】
【0025】
【数7】
【0026】
図5には、X軸上で200nmのわずかに右側に位置する垂直線により示されている透明吸収体層と外側誘電体層の間の界面での電場がゼロ又はゼロ近傍である多層薄膜の実施形態の場合の層厚の関数としての電場が実線で示されている。図5に実線で表されている電場をもたらす多層薄膜は、厚さ100nmのAl反射体層(R)と、Al反射体層Rにわたって延在する厚さ199nmのFe誘電体吸収体層(DA)と、Fe誘電体吸収体層DAにわたって延在する厚さ14nmのCr透明吸収体層(TA)と、透明吸収体層にわたって延在する厚さ30nmの外側ZnS誘電体層(D)とを有する。図5に実線で表されている電場をもたらす多層薄膜の構造は、図に示されているようにD/DA/TA/Dとして記載することができる。用語「透明吸収体層」は、当該層を光が透過するような厚さを有する吸収体層を指す。比較のために、図5において点線により表されている電場をもたらす多層薄膜は、厚さ100nmのAl反射体層(R)と、Al反射体層Rにわたって延在する厚さ200nmの誘電体吸収体層DAと、誘電体吸収体層DAにわたって延在する厚さ30nmの外側ZnS誘電体層(D)とを有する(R/DA/D)。図5に示されているように、R/DA/TA/D多層薄膜の場合の誘電体吸収体層と透明吸収体層の間の界面に存在する電場よりも高い電場がR/DA/T多層薄膜の場合の誘電体吸収体層と外側誘電体層の間の界面に存在する。したがって、R/DA/T多層薄膜の場合よりもR/DA/TA/D多層薄膜の場合に、より多量の波長550nmの光が誘電体吸収体層に到達し(反射されない)、吸収される。また、R/DA/T多層薄膜の場合の外側誘電体層と空気の間の界面における電場よりもR/DA/TA/D多層薄膜の場合の外側誘電体層と空気の間の界面における電場の方が低い。したがって、波長550nmの光は、R/DA/T多層薄膜の外側誘電体層の外側表面で反射される量よりもR/DA/TA/D多層薄膜の外側誘電多層の外側表面で反射される量のほうが少ない。
【0027】
図6には、波長550nmの光及び波長650nmの光に曝されたR/DA/TA/D多層薄膜についての層厚の関数としての電場が示されている。当該多層薄膜は、図5に関して上で述べたR/DA/TA/D多層薄膜と同じ構造及び材料、すなわち、厚さ100nmのAl反射体層(R)と、Al反射体層Rにわたって延在する厚さ199nmのFe誘電体吸収体層(DA)と、Fe誘電体吸収体層DAにわたって延在する厚さ14nmのCr透明吸収体層(TA)と、透明吸収体層にわたって延在する厚さ30nmの外側ZnS誘電体層(D)とを有する。図6に示されているように、X軸上で200nmをほんのわずかに下回る位置に存在する垂直線により示されている誘電体吸収体層と透明吸収体層の間の界面での電場は、波長650nmの光(点線)の場合よりも波長550nmの光(実線)の場合の方がかなり小さい。したがって、誘電体吸収体層は、波長650nmの光よりもかなり多く波長550nmの光を吸収し、波長550nmの光よりもかなり多く波長650nmの光を反射する。
【0028】
図7には、本明細書に開示する実施形態に従う全方向高彩度赤構造色を反射する多層薄膜10が示されている。多層薄膜10は、反射体層110と、反射体層110にわたって延在する少なくとも1つの吸収体層120と、少なくとも1つの吸収体層120にわたって延在する外側誘電体層130とを含む。複数の実施形態において、「外側誘電体層」は、外側自由表面、すなわち、吸収体層や保護コーティングの一部でない他の誘電体層に接触していない外側表面を有する。反射体層110が一対の吸収体層と一対の外側誘電体層の間に挟まれたコア層であるように、第2の少なくとも1つの吸収体層及び第2の外側誘電体層を反射体層110のもう一方の側に配置できる。一対の吸収体層と一対の外側誘電体層の間に挟まれたコア層を備えたかかる多層薄膜は、5層多層薄膜と呼ぶことができる。反射体層は、5~200nmの厚さを有することができ、例えばAl、Ag、Pt、Snなどの「灰色金属(gray metallic)」材料のうちの少なくとも1種、例えばAu、Cu、真鍮などの「有彩色金属(colorful metallic)」材料のうちの少なくとも1種、例えばFe、TiNなどの有彩色誘電体材料のうちの少なくとも1種、又はこれらの組み合わせから製造されたものであることができる。少なくとも1つの吸収体層120は、5~500nmの厚さを有することができ、例えばCr、Cu、Au、真鍮などの少なくとも1種の吸収体金属材料、例えばFe、TiNなどの少なくとも1種の有彩色誘電体材料、例えばアモルファスのSi、Geなどの少なくとも1種の半導体吸収体材料、又はこれらの組み合わせから製造されたものであることができる。外側誘電体層は、多層薄膜により反射される可視光の狭帯域の中心波長(例えば650nm)の2QW未満の厚さを有することができる。外側誘電体層は、例えばZnS、MgFなどの1.6を超える屈折率を有する誘電体材料から製造されたものであることができる。
【0029】
図8には、本明細書に開示する実施形態に従う全方向高彩度赤構造色を反射する多層薄膜10が示されている。多層薄膜10は、反射体層110と、反射体層110にわたって延在する吸収体層122と、吸収体層122にわたって延在する透明吸収体層124と、透明吸収体層124にわたって延在する外側誘電体層130とを含む。吸収体層122は、金属吸収体層、誘電体吸収体層又は半導体吸収体層であることができる。反射体層110が一対の吸収体層と一対の透明吸収体層及び一対の外側誘電体層の間に挟まれたコア層であるように、第2の吸収体層、第2の透明吸収体層及び第2の外側誘電体層を反射体層110のもう一方の側に配置できることが分かる。一対の吸収体層、一対の透明吸収体層及び一対の外側誘電体層の間に挟まれたコア層を備えたかかる多層薄膜は、7層多層薄膜と呼ぶことができる。反射体層は、5~200nmの厚さを有することができ、例えばAl、Ag、Pt、Snなどの「灰色金属」材料のうちの少なくとも1種、例えばAu、Cu、真鍮などの「有彩色金属」材料のうちの少なくとも1種、例えばFe、TiNなどの有彩色誘電体材料のうちの少なくとも1種、又はこれらの組み合わせから製造されたものであることができる。吸収体層120は、5~500nmの厚さを有することができ、例えばCr、Cu、Au、真鍮などの少なくとも1種の吸収体金属材料、例えばFe、TiNなどの誘電体吸収体材料、例えばアモルファスのSi、Geなどの少なくとも1種の半導体吸収体材料、又はこれらの組み合わせから製造されたものであることができる。透明吸収体層は、5~20nmの厚さを有することができ、例えばCr、Ge、Ni、ステンレス鋼、Ti、Si、V、TiN、W、Mo、Nb及びFeのうちの少なくとも1種から製造されたものであることができる。外側誘電体層は、多層薄膜により反射される可視光の狭帯域の中心波長(例えば650nm)の2QW未満の厚さを有することができ、外側誘電体層は、例えばZnS、MgFなどの1.6を超える屈折率を有する誘電体材料から製造されたものであることができる。
【0030】
図9には、多層薄膜の外側表面に垂直な方向に対して0°及び45°の角度で白色光が当たった場合の、本明細書に開示する1又は2以上の実施形態によりもたらされる反射光波長に対する反射率(%)の形式で代表的な反射率スペクトルが示されている。反射率スペクトルにより示されているように、550nmの波長に対して、0°及び45°の曲線は両方とも非常に低い反射率、例えば10%未満を示している。しかし、560~570nmの波長における反射率の急激な増加は700nmで約90%の最大値に達することが観察された。曲線の右手側(IR側)のグラフの部分又は領域が実施形態によりもたらされる反射帯域のIR領域を表す。反射率の急激な増加は、550nm未満の波長における低反射率部分から高反射率部分、例えば70%超、好ましくは80%超、より好ましくは90%超まで延びる0°曲線(SUV(0°))及び45°曲線(SUV(45°))のUV側端により特徴付けられる。複数の実施形態によりもたらされる全方向性の程度の尺度は、可視FWHM位置におけるSUV(0°)端とSUV(45°)端の間のシフトであることができる。SUV(0°)端とSUV(45°)端の間でゼロシフトであると、すなわちシフトがないと、完全に全方向性の多層薄膜と特徴づけられる。本明細書に開示する実施形態についてのSUV(0°)端とSUV(45°)端の間のシフトが100nm未満、好ましくは75nm未満、より好ましくは50nm未満、さらに好ましくは25nm未満である場合には、0~45°の角度で人間の視点から観察した場合に、人間の目には、多層薄膜の表面は色が変化しないが、多層薄膜が全方向性であるかのように見えうる。UV側端の直線上部分200はX軸に対して60°を超える角度(β)で傾いており、反射率の軸上でおよそ40の長さLを有し、1.4の傾きを有する。複数の実施形態において、直線状部分は、x軸に対して70°を超える角度で傾いている。他の実施形態において、直線状部分は、75°を超える角度で傾いている。反射帯域は、300nm未満、好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満、さらに好ましくは100nm未満の可視FWHMを有する。図9に示されている可視反射帯域の中心波長λは、可視FWHMにおいて反射帯域のUV側端とIRスペクトルのIR端とから等距離である波長として定義される。用語「可視FWHM」は、この曲線のUV側端と、これを超えると全方向反射体によりもたらされる反射は人間の目に見えなくなるIRスペクトル範囲の端部との間の反射帯域の幅を意味する。本明細書に開示する実施形態はシャープな色又は構造色をもたらすために電磁放射線スペクトルの非可視IR部分を用いる、すなわち本明細書に開示する実施形態は狭帯域の反射可視光をもたらすために電磁放射線の非可視IR部分を利用するが、電磁放射線のかなり広い帯域がIR領域に広がっていてもよいことが理解されるべきである。
【0031】
次に図10を参照すると、本明細書に開示する実施形態に従う多層薄膜の反射スペクトルは、可視スペクトルにピークがある狭い可視光帯域を示している。このピークは、極大反射率の波長であり、多層薄膜の外側表面に垂直に観察した場合(λ(0°))に多層薄膜が示す反射率曲線の中心波長、及び多層薄膜の外側表面に対して45°の角度で観察した場合に多層薄膜が示す反射率曲線の中心波長λ(45°))を規定することができる。0°の角度から表面を観察した場合(λ(0°))、すなわち表面に対して垂直に観察した場合と比較して、多層薄膜の外側表面を角度45°から観察した場合、例えば当該外側表面をその表面を見る人間の目に対して45°傾けた場合の、そのλ(λ(45°))のシフト又は変位が図10に示されている。λのシフト(Δλ)は、全方向反射体の全方向性の尺度である。λのゼロシフト、すなわち、
【0032】
【数8】
【0033】
は、完全に全方向性の多層薄膜からの反射を表す。しかし、開示する実施形態は、100nm未満、好ましくは75nm未満、より好ましくは50nm未満、さらに好ましくは25nm未満のΔλをもたらし、これは、0~45°の角度で人間の視点から観察した場合に、人間の目には、反射体の表面は色が変化しないが、多層薄膜が全方向性であるかのように見えうる。Δλのシフトは、白色光に曝された多層薄膜から求められた反射率対波長プロットにより、又は、多層薄膜のモデリングにより決定することができる。図10に示されている反射された可視光の狭帯域が、赤色をもたらすこと、及び、多層薄膜を0~45°の角度で観察した場合の中心波長の小さいシフト又は変位が全方向赤構造色をもたらすこと、すなわち、0~45°の角度で観察した場合に人間の目に色が変化するようには見えない明赤色を多層薄膜が反射することが分かる。
【0034】
図10における0°及び45°の曲線は両方とも、550nm未満の波長の場合に、非常に低い反射率、例えば10%未満の反射率を示している。しかし、700nmで約90%の最大値に達する560~570nmの波長での反射率の鋭い増加が観察される。曲線の右側(IR側)のグラフの部分は、複数の実施形態によりもたらされる反射帯域のIR部分を表すことが分かる。反射率のこの鋭い増加は、波長550nm未満での低反射率部分から高反射率部分、例えば反射率が70%を超える、好ましくは80%を超える、より好ましくは90%を超える高反射率部分まで広がる0°曲線(SUV(0°))及び45°曲線(SUV(45°))のUV側端により特徴付けられる。反射帯域は、300nm未満、好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満、さらに好ましくは100nm未満の可視FWHMを有する。図10に示されている反射された可視光の狭帯域が、赤色をもたらすこと、及び、多層薄膜を0~45°の角度で観察した場合の中心波長の小さいシフト又は変位が全方向赤構造色をもたらすこと、すなわち、0~45°の角度で観察した場合に人間の目に色が変化するようには見えない明赤色を多層薄膜が反射することが分かる。
【0035】
図11を参照し、本明細書に開示する実施形態に従う多層薄膜の反射特性をLab色空間において説明することもできる。Lab色空間は、aのX座標とbのY座標を有する。図11は、0~45°の角度で観察した場合の従来の塗料の反射特性を示し、色相シフトがΔθとして示されている。比較すると、本明細書に開示される実施形態に従う多層薄膜は、0~45°で観察した場合に、小さな色相シフト(Δθ)をもたらす。図11でΔθにより表される色相シフトは30°未満、好ましくは25°未満、より好ましくは20°未満、さらに好ましくは15°未満である。図11は、本明細書に開示される実施形態に従う多層薄膜が赤色に対応する色相、すなわちθ1L~θ1Hの色相をもたらすことも示している。複数の実施形態において、多層薄膜は、Lab色空間において0~30°、好ましくはLab色空間において5~25°、より好ましくはLab色空間において10~22°の色相もたらす。複数の実施形態において、本明細書に開示される実施形態に従う多層薄膜は0及び45°で観察された場合に、多層薄膜構造体が呈する観察される色がθ1L~θ1Hにより示される領域内の色相を有するような色相シフトを有する。本明細書に開示される複数の実施形態に従う多層薄膜についての彩度は従来の塗料よりもかなり高い。複数の実施形態において、多層薄膜についての彩度は、60~120、好ましくは80~110、より好ましくは85~105に及ぶことができる。
【0036】
本明細書に開示される複数の実施形態に従う多層薄膜は、顔料、例えば物体を塗装するために使用される塗料用の塗料顔料として、又は物体に適用される連続薄膜として使用することができる。顔料として使用される場合、全方向高彩度赤構造色を呈する塗料を提供するために、塗料バインダー、充填剤などを使用し、当該顔料と混合することができる。用語「実質的」及び「約」は、本明細書において、任意の定量的な比較、値、測定又は他の表現に帰属しうる不確定性の固有の程度を表すために用いられることがあることに留意されたい。これらの用語は、定量的な表現が、問題になっている主題の基本的な機能に変化をもたらさずに、記載した基準値から変わりうる程度を表すためにも用いられる。
【0037】
特定の実施形態を本明細書で例示及び説明したが、特許請求する主題の精神及び範囲から離れずに様々な他の変更及び修飾を行ってもよいことが理解されるべきである。さらに、特許請求する主題の様々な態様を本明細書で説明したが、かかる態様は組み合わせて利用される必要はない。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求する主題の範囲内にあるかかる変更及び修飾を全て包含することを意図する。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
反射体層と、前記反射体層にわたって延在する少なくとも1つの吸収体層と、前記少なくとも1つの吸収体層にわたって延在する外側誘電体層とを有する多層薄膜を含む、全方向高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜であって、
前記多層薄膜は、白色光に曝された場合に、可視光の単一狭帯域を反射し、前記外側誘電体層は、可視光の前記単一狭帯域の中心波長の2.0QW以下の厚さを有し、
可視光の前記単一狭帯域が、
200nm未満の可視FWHM幅;
Lab色空間で0°~30°の色;及び
前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab色空間で30°未満の色相シフト;
を有する、全方向高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜。
[態様2]
前記反射体層が、5~200nmの厚さを有し、Al、Ag、Pt及びSnのうちの少なくとも1種から作られたものである、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様3]
前記少なくとも1つの吸収体層が、前記反射体層と前記外側誘電体層の間に延在する少なくとも1つの誘電体吸収体層である、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様4]
前記少なくとも1つの誘電体吸収体層が酸化物及び窒化物のうちの少なくとも1種から作られたものである、態様3に記載の多層干渉薄膜。
[態様5]
前記少なくとも1つの誘電体吸収体層が、Fe及びTiNのうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~500nmの厚さを有する、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様6]
前記外側誘電体層が1.6を超える屈折率を有する、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様7]
前記外側誘電体層がMgF、ZnS及びTiOのうちの少なくとも1種から作られたものであり、態様6に記載の多層干渉薄膜。
[態様8]
反射された可視光の単一狭帯域の中心波長が600~700nmであり、前記外側誘電体層の厚さが175nm未満である、態様7に記載の多層干渉薄膜。
[態様9]
前記少なくとも1つの吸収体層が誘電体吸収体層及び透明吸収体層である、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様10]
前記透明吸収体層が前記誘電体吸収体層にわたって延在し、かつ、前記誘電体吸収体層と前記外側誘電体層の間に配置されている、態様9に記載の多層干渉薄膜。
[態様11]
前記誘電体吸収体層がFe及びTiNのうちの少なくとも1種から作られたものである、態様9に記載の多層干渉薄膜。
[態様12]
前記誘電体吸収体層が5~500nmの厚さを有する、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様13]
前記透明吸収体層がCr、Ge、Ni、ステンレス鋼、Ti、Si、V、TiN、W、Mo、Nb及びFeのうちの少なくとも1種から作られたものである、態様9に記載の多層干渉薄膜。
[態様14]
前記透明吸収体層が5~20nmの厚さを有する、態様13に記載の多層干渉薄膜。
[態様15]
可視光の前記単一狭帯域が、200nm未満の可視FWHM幅、Lab色空間において5°~25°の色、及び、前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab空間カラーマップにおいて20°未満の色相シフトを有する、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様16]
可視光の前記単一狭帯域が、200nm未満の可視FWHM幅、Lab色空間において10°~25°の色、及び、前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab空間カラーマップにおいて15°未満の色相シフトを有する、態様1に記載の多層干渉薄膜。
[態様17]
反射体層と、前記反射体層にわたって延在する誘電体吸収体層と、前記誘電体吸収体層にわたって延在する外側誘電体層と、前記誘電体吸収体層と前記外側誘電体層の間に延在する透明吸収体層とを有する多層薄膜を含む全方向高彩度赤構造色多層薄膜であって、
前記多層薄膜は、白色光に曝された場合に、可視光の単一狭帯域を反射し、前記外側誘電体層は、可視光の前記単一狭帯域の中心波長の2.0QW以下の厚さを有し、可視光の前記単一狭帯域が、
200nm未満の可視FWHM幅;
Lab色空間において0°~30°の色;及び
前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab色空間において30°未満の色相シフト;
を有する、全方向高彩度赤構造色多層薄膜。
[態様18]
前記誘電体吸収体層が酸化物及び窒化物のうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~500nmの厚さを有する、態様17に記載の全方向高彩度赤構造色多層薄膜。
[態様19]
前記誘電体吸収体層がFe及びTiNのうちの少なくとも1種から作られたものである、態様18に記載の全方向高彩度赤構造色多層薄膜。
[態様20]
前記透明吸収体層が、Cr、Ge、Ni、ステンレス鋼、Ti、Si、V、TiN、W、Mo、Nb及びFeのうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~20nmの厚さを有する、態様17に記載の全方向高彩度赤構造色多層薄膜。
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射体層と、前記反射体層にわたって延在する少なくとも1つの吸収体層と、前記少なくとも1つの吸収体層にわたって延在する外側誘電体層とを有する多層薄膜を含む、全方向高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜であって、
前記多層薄膜は、白色光に曝された場合に、可視光の単一狭帯域を反射し、前記外側誘電体層は、可視光の前記単一狭帯域の中心波長の2.0QW以下の厚さを有し、
可視光の前記単一狭帯域が、
200nm未満の可視FWHM幅;
Lab色空間で0°~30°の色;及び
前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab色空間で30°未満の色相シフト;
を有し、
前記反射体層が、Al、Ag、Pt、Sn、Au、Cu及び真鍮のうちの少なくとも1種から作られたものであり、
前記少なくとも1つの吸収体層が金属吸収体層及び透明吸収体層を含み、
前記金属吸収体層が、Cr、W、Cu、Au及び真鍮のうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~500nmの厚さを有し、
前記透明吸収体層が、Cr、Ge、Ni、ステンレス鋼、Ti、V、Si、TiN、W、Mo、Nb及びFeのうちの少なくとも1種から作られたものであり、5~20nmの厚さを有し、
前記外側誘電体層がZnS、TiO及びMgFのうちの少なくとも1種から作られたものである、
全方向高彩度赤構造色を反射する多層干渉薄膜。
【請求項2】
前記反射体層が、5~200nmの厚さを有する、請求項1に記載の多層干渉薄膜。
【請求項3】
前記透明吸収体層は、Cr、Ni、ステンレス鋼、Ti、V、TiN、W、Mo、Nb及びFeのうちの少なくとも1種から作られたものである、請求項1又は2に記載の多層干渉薄膜。
【請求項4】
前記外側誘電体層が1.6を超える屈折率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層干渉薄膜。
【請求項5】
反射された可視光の単一狭帯域の中心波長が600~700nmであり、前記外側誘電体層の厚さが175nm未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層干渉薄膜。
【請求項6】
前記透明吸収体層が前記金属吸収体層にわたって延在し、かつ、前記金属吸収体層と前記外側誘電体層の間に配置されている、請求項1に記載の多層干渉薄膜。
【請求項7】
可視光の前記単一狭帯域が、Lab色空間において5°~25°の色、及び、前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab空間カラーマップにおいて20°未満の色相シフトを有する、請求項1~のいずれか一項に記載の多層干渉薄膜。
【請求項8】
可視光の前記単一狭帯域が、Lab色空間において10°~25°の色、及び、前記外側誘電体層の外表面に垂直な方向に対して0~45°の角度で前記多層薄膜を観察した場合にLab空間カラーマップにおいて15°未満の色相シフトを有する、請求項に記載の多層干渉薄膜。