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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093388
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】分散体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/06 20060101AFI20220616BHJP
   C08F 255/00 20060101ALI20220616BHJP
   C09D 151/06 20060101ALI20220616BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20220616BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20220616BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C08L51/06
C08F255/00
C09D151/06
C09J151/06
C09D11/106
C09D5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022065886
(22)【出願日】2022-04-12
(62)【分割の表示】P 2021550280の分割
【原出願日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2020100691
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神埜 勝
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩司
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 泰高
(72)【発明者】
【氏名】高本 直輔
(57)【要約】
【課題】本発明は、アクリル変性ポリオレフィン樹脂を含むアルコール系組成物において、高固形分化しても良好な付着力を示し、粘度の上昇が抑制され、分散性、経時安定性等の安定性の良好な組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも、変性ポリオレフィン樹脂が、アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤とを含む分散媒に分散している分散体組成物であって、前記変性ポリオレフィン樹脂が、少なくとも、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステル、及び下記一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルを含む(メタ)アクリル酸系成分で変性されており、分散体組成物中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量が、前記変性ポリオレフィン樹脂と(メタ)アクリル酸系成分重合体の合計量を100重量%として、3重量%~94重量%であり、且つ分散体組成物の固形分率が、30重量%~80重量%であることを満たす、分散体組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
成分(A):変性ポリオレフィン樹脂が、
成分(B):アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤とを含む分散媒に分散している分散体組成物であって、
前記成分(A)が、少なくとも、
成分(C):下記一般式(I):
CH=C(R)COOR・・・(I)
(前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、-C2mOHを示す。但し、mは、1~18の整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル、及び
成分(D):下記一般式(II):
CH=C(R)COOR・・・(II)
(前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素原子数が4~18の直鎖、分枝鎖及び/又は環状のアルキル基を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル
を含む(メタ)アクリル酸系成分で変性されており、
分散体組成物中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量が、前記成分(A)と(メタ)アクリル酸系成分重合体の合計量を100重量%として、3重量%~94重量%であり、且つ
分散体組成物の固形分率が、30重量%~80重量%であることを満たす、分散体組成物。
【請求項2】
前記成分(A)における前記成分(C)由来の構造の含有量が、(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、20mol%以下である、請求項1に記載の分散体組成物。
【請求項3】
前記成分(A)における前記成分(D)由来の構造の含有量が、(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、25mol%以上である、請求項1又は2に記載の分散体組成物。
【請求項4】
前記成分(A)の重量平均分子量が、5,000~400,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の分散体組成物。
【請求項5】
前記成分(A)が、(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分でさらに変性されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の分散体組成物。
【請求項6】
前記成分(A)が、さらに塩素化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の分散体組成物。
【請求項7】
前記成分(A)の塩素化度が、(メタ)アクリル酸系成分由来の重量を除く前記成分(A)の重量を100重量%として、30重量%以下である、請求項6に記載の分散体組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の分散体組成物を含むプライマー。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の分散体組成物を含む接着剤。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の分散体組成物を含む塗料用バインダー。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の分散体組成物を含むインキ用バインダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散体組成物に関し、詳しくは、分散性、経時安定性等の安定性が良好であり、高固形分かつ低粘度であり得る分散体組成物、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性有機化合物(VOC)削減の動きの中、溶剤系インキから水系インキへの移行が推し進められているところ、中程度の環境負荷と位置付けられているアルコール系インキが普及しつつある。例えば、特許文献1には、所定のα-オレフィン系重合体ブロックとアクリル酸エステルブロックを有するブロック共重合体がアルコール系インキの付着成分として利用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6641281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術のアルコール系インキが溶剤系インキ(付着成分:変性ポリオレフィン樹脂)と同程度の付着性を得るためには、付着成分を後者の数倍量程度含む必要がある。そして、付着成分を多量に添加すると、粘度が上昇し、分散性、経時安定性が低下するため実用に供することができないという問題もある。
【0005】
本発明は、アクリル変性ポリオレフィン樹脂を含むアルコール系組成物において、高固形分化しても良好な付着力を示し、粘度の上昇が抑制され、分散性、経時安定性等の安定性の良好な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕少なくとも、
成分(A):変性ポリオレフィン樹脂が、
成分(B):アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤とを含む分散媒に分散している分散体組成物であって、
前記成分(A)が、少なくとも、
成分(C):下記一般式(I):
CH=C(R)COOR・・・(I)
(前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、-C2mOHを示す。但し、mは、1~18の整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル、及び
成分(D):下記一般式(II):
CH=C(R)COOR・・・(II)
(前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素原子数が4~18の直鎖、分枝鎖及び/又は環状のアルキル基を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル
を含む(メタ)アクリル酸系成分でグラフト変性されており、
分散体組成物中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量が、前記成分(A)と(メタ)アクリル酸系成分重合体の合計量を100重量%として、3重量%~94重量%であり、且つ
分散体組成物の固形分率が、30重量%~80重量%であることを満たす、分散体組成物。
〔2〕前記成分(A)における前記成分(C)由来の構造の含有量が、(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、20mol%以下である、〔1〕に記載の分散体組成物。
〔3〕前記成分(A)における前記成分(D)由来の構造の含有量が、(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、25mol%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の分散体組成物。
〔4〕前記成分(A)の重量平均分子量が、5,000~400,000である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の分散体組成物。
〔5〕前記成分(A)が、(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分でさらに変性されている、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の分散体組成物。
〔6〕前記成分(A)が、さらに塩素化されている、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の分散体組成物。
〔7〕前記成分(A)の塩素化度が、(メタ)アクリル酸系成分由来の重量を除く前記成分(A)の重量を100重量%として、30重量%以下である、〔6〕に記載の分散体組成物。
〔1’〕成分(α):ポリオレフィン系樹脂が
成分(β):下記一般式(I):
CH=C(R)COOR・・・(I)
(前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、-C2mOHを示す。但し、mは、1~18の整数である。)
及び下記一般式(II):
CH=C(R)COOR・・・(II)
(前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素原子数が4~18の脂肪族もしくは脂環式アルキル基を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも含む変性成分でグラフト変性されている成分(A):変性ポリオレフィン樹脂が、
アルコール系溶剤と脂肪族系溶剤との混合溶媒に分散しており、
前記成分(α)と(β)の含有比率(成分(α)/(β))が97/3~6/94(但し、成分(α)+成分(β)=100とする)の範囲であり
固形分が30~80%であること
を満たす、分散体組成物。
〔2’〕前記一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの量が、前記成分)(β)の総量に対し20mol/%以下である、〔1’〕に記載の分散体組成物。
〔3’〕前記一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルの量が、前記成分(β)の総量に対し25mol/%以上である、〔1’〕又は〔2’〕に記載の分散体組成物。
〔4’〕前記成分(A)が、重量平均分子量が5,000~400,000である変性ポリオレフィン樹脂を少なくとも含む、〔1’〕~〔3’〕のいずれか1項に記載の分散体組成物。
〔5’〕前記成分(α)が、酸変性ポリオレフィン樹脂を含む、〔1’〕~〔4’〕のいずれか1項に記載の分散体組成物。
〔6’〕前記成分(α)が、塩素化ポリオレフィン樹脂を含む、〔1’〕~〔5’〕のいずれか1項に記載の分散体組成物。
〔7’〕前記塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素化度が、0重量%超~30重量%以下である、〔6’〕に記載の分散体組成物。
〔8〕〔1〕~〔7〕及び〔1’〕~〔7’〕のいずれか1項に記載の分散体組成物を含むプライマー。
〔9〕〔1〕~〔7〕及び〔1’〕~〔7’〕のいずれか1項に記載の分散体組成物を含む接着剤。
〔10〕〔1〕~〔7〕及び〔1’〕~〔7’〕のいずれか1項に記載の分散体組成物を含む塗料用バインダー。
〔11〕〔1〕~〔7〕及び〔1’〕~〔7’〕のいずれか1項に記載の分散体組成物を含むインキ用バインダー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分散性、経時安定性等の安定性が良好であり、高固形分かつ低粘度の分散体組成物が提供される。分散体組成物は、ポリオレフィン等の基材へ良好な付着性を示すことができ、基材上に形成される塗膜は耐ガソホール性を有し得ることから、塗料用バインダー、インキ用バインダー、接着剤、プライマーとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第一の実施形態において、本発明は、少なくとも、
成分(A):変性ポリオレフィン樹脂が、
成分(B):アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶媒とを含む分散媒に分散している分散体組成物であって、
前記成分(A)が、少なくとも、
成分(C):下記一般式(I):
CH=C(R)COOR・・・(I)
(前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、-C2mOHを示す。但し、mは、1~18の整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル、及び
成分(D):下記一般式(II):
CH=C(R)COOR・・・(II)
(前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素原子数が4~18の直鎖、分枝鎖及び/又は環状のアルキル基を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル
を含む(メタ)アクリル酸系成分で変性されており、
分散体組成物中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量が、前記成分(A)と(メタ)アクリル酸系成分重合体の合計量を100重量%として、3重量%~94重量%であり、且つ
分散体組成物の固形分率が、30重量%~80重量%であることを満たす、分散体組成物を提供する。
【0009】
(1.成分(A)変性ポリオレフィン樹脂)
本発明の分散体組成物は、分散媒中に、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂を含む。成分(A)変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂の変性物である。
【0010】
(1-1.ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、通常、オレフィン(α-オレフィン)重合体である。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテンが挙げられる。
【0011】
ポリオレフィン樹脂は、1種単独のオレフィン(α-オレフィン)の重合体であってもよく、2種以上のオレフィン(α-オレフィン)の共重合体であってもよい。ポリオレフィン樹脂が共重合体である場合、ポリオレフィン樹脂はランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0012】
ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレン基材等の非極性樹脂基材への十分な付着性を発現させるという観点から、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体が好ましい。
【0013】
ここで、「ポリプロピレン」とは、基本単位がプロピレン由来の構成単位である重合体を表す。「エチレン-プロピレン共重合体」とは、基本単位がエチレン及びプロピレン由来の構成単位を含む共重合体を表す。「プロピレン-1-ブテン共重合体」とは、基本単位がプロピレン及びブテン由来の構成単位を含む共重合体を表す。「エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体」とは、基本単位がエチレン、プロピレン及びブテン由来の構成単位を含む共重合体を表す。樹脂本来の性能を著しく損なわない量である限り、これらの(共)重合体は、基本単位以外の他のオレフィン由来の構成単位を少量含有していてもよい。
【0014】
ポリオレフィン樹脂は、構成単位100mol%中、プロピレン由来の構成単位を50mol%以上含むことが好ましい。プロピレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、プロピレン樹脂等の非極性樹脂基材に対する付着性を保持し得る。
【0015】
エチレン-プロピレン共重合体又はプロピレン-1-ブテン共重合体がランダム共重合体である場合、好ましくは、構成単位100mol%中、エチレン由来の構成単位又はブテン由来の構成単位が3~50mol%であり、プロピレン由来の構成単位が50~97mol%である。
【0016】
(1-2.(メタ)アクリル酸系成分による変性)
本発明において成分(A)変性ポリオレフィン樹脂は、(メタ)アクリル酸系成分で変性(グラフト変性)されている。(メタ)アクリル酸系成分とは、(メタ)アクリル酸及びその誘導体を意味し、当該誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0017】
本発明において(メタ)アクリル酸系成分は、
成分(C):下記一般式(I):
CH=C(R)COOR・・・(I)
(前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、-C2mOHを示す。但し、mは、1~18の整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル(水酸基モノマー)を含む。
【0018】
は、水素原子又はメチル基を示し、水素原子が好ましい。mは、1~18の整数であり、1~16、1~14、1~12又は1~10が好ましく、1~8、1~6又は1~4がより好ましく、2~4又は2~3がさらに好ましく、2が特に好ましい。
【0019】
成分(C)水酸基モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシペンチルアクリレート(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチルアクリレート(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、9-ヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における成分(C)水酸基モノマー由来の構造の含有量は、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、好ましくは30mol%以下、好ましくは20mol%以下、より好ましくは15mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下である。下限は、好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは1mol%以上、さらに好ましくは2mol%以上、特に好ましくは3mol%以上である。
【0021】
成分(C)水酸基モノマーは1種単独でもよいし、2以上の組み合わせでもよい。
【0022】
本発明において(メタ)アクリル酸系成分は、
成分(D):下記一般式(II):
CH=C(R)COOR・・・(II)
(前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素原子数が4~18の直鎖、分枝鎖及び/又は環状のアルキル基を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル(低極性モノマー)を含む。
【0023】
は、水素原子又はメチル基を示し、メチル基が好ましい。Rは、炭素原子数が4~18の直鎖、分枝鎖及び/又は環状のアルキル基を示す。炭素原子数は、4~18の整数であり、4~16、4~14、4~12又は4~10が好ましく、4~8又は4~6がより好ましい。
【0024】
成分(D)低極性モノマーとしては、例えば、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート(n-ドデシル(メタ)アクリレート)、n-トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のRが直鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステル;イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、tert-ペンチル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等のRが分枝鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステル;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のRが環状アルキル基である(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらのうち、Rが直鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステル、及びRが環状アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、及びシクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0025】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における成分(D)低極性モノマー由来の構造の含有量は、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、好ましくは25mol%以上、より好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは40mol%以上である。上限は、好ましくは90mol%以下、又は85mol%以下、より好ましくは80mol%以下、又は75mol%以下、さらに好ましくは70mol%以下、又は65mol%以下、特に好ましくは60mol%以下、又は55mol%以下である。
【0026】
成分(D)低極性モノマーは1種単独でもよいし、2以上の組み合わせでもよい。
【0027】
成分(D)低極性モノマーは、Rが直鎖アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルと、Rが環状アルキル基である(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせを含むことが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレートと、シクロヘキシル(メタ)アクリレートとの組み合わせを含むことがより好ましい。
【0028】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における成分(C)水酸基モノマー由来の構造及び成分(D)低極性モノマー由来の構造の含有量のモル比率(成分(C)/成分(D))は、好ましくは1/100~1/1.5、より好ましくは1/50~1/2、さらに好ましくは1/50~1/4である。
【0029】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における成分(C)水酸基モノマー由来の構造及び成分(D)低極性モノマー由来の構造の合計含有量は、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、好ましくは30mol%以上、より好ましくは40mol%以上、さらに好ましくは45mol%以上である。上限は、好ましくは95mol%以下、より好ましくは90mol%以下、さらに好ましくは85mol%以下である。
【0030】
本発明の一実施形態において(メタ)アクリル酸系成分は、任意の成分としてさらに、
成分(E):下記一般式(III):
CH=C(R)COOR・・・(III)
(前記一般式(III)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、-C2aOC2b+1を示す。但し、a及びbは、それぞれ独立して、1~18の整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル(アルコキシ基モノマー)を含むことが好ましい。
【0031】
は、水素原子又はメチル基を示し、水素原子が好ましい。aは、1~18の整数であり、1~16、1~14、1~12又は1~10が好ましく、1~8、1~6又は1~4がより好ましく、2~4又は2~3がさらに好ましく、2が特に好ましい。bは、1~18の整数であり、1~16、1~14、1~12又は1~10が好ましく、1~8、1~6又は1~4がより好ましく、1~4又は1~3がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0032】
成分(E)アルコキシ基モノマーとしては、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-(1-メチルエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(1-メチルエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-エトキシプロピル(メタ)アクリレート、3-プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(1-メチルエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-プロポキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-(1-メチルエトキシ)-1-メチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうち、2-メトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における成分(E)アルコキシ基モノマー由来の構造の含有量は、一実施形態において、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、好ましくは、50mol%以下、より好ましくは40mol%以下である。下限は、好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは1mol%以上である。
【0034】
成分(E)アルコキシ基モノマーは1種単独でもよいし、2以上の組み合わせでもよい。
【0035】
本発明の一実施形態において(メタ)アクリル酸系成分は、任意の成分としてさらに、
成分(F):下記一般式(IV):
CH=C(R)COOR・・・(IV)
(前記一般式(IV)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素原子数が1~3の直鎖又は分枝鎖のアルキル基を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル(低級モノマー)を含むことが好ましい。
【0036】
は、水素原子又はメチル基を示し、メチル基が好ましい。Rは、炭素原子数が1~3の直鎖、分枝鎖及び/又は環状のアルキル基を示す。炭素原子数は、1~3の整数であり、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0037】
成分(F)低級モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、及びイソプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、メチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0038】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における成分(F)低級モノマー由来の構造の含有量は、一実施形態において、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、好ましくは1mol%以上、より好ましくは5mol%以上である。上限は、好ましくは70mol%以下、より好ましくは60mol%以下である。
【0039】
成分(F)低級モノマーは1種単独でもよいし、2以上の組み合わせでもよい。
【0040】
本発明の一実施形態において(メタ)アクリル酸系成分は、任意の成分としてさらに、成分(G)(メタ)アクリル酸を含むことが好ましい。成分(G)(メタ)アクリル酸は、メタクリル酸であることが好ましい。成分(G)(メタ)アクリル酸は、遊離酸の形態であっても、或いは、塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)の形態であってもよい。
【0041】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における成分(G)(メタ)アクリル酸由来の構造の含有量は、一実施形態において、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量100mol%に対し、好ましくは1mol%以上、より好ましくは5mol%以上である。上限は、好ましくは70mol%以下、より好ましくは50mol%以下である。
【0042】
本発明の一実施形態において(メタ)アクリル酸系成分は、任意の成分としてさらに、成分(C)~成分(G)以外の(メタ)アクリル酸系成分を含んでいてもよい。
【0043】
成分(C)~成分(G)以外の(メタ)アクリル酸系成分としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレートグリセロールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
分散体組成物中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量は、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂と(メタ)アクリル酸系成分重合体の合計量を100重量%として、3重量%以上であり、好ましくは5質量%以上である。上限は、94重量%以下であり、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下である。分散体組成物中の(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量は、一実施形態において、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂と(メタ)アクリル酸系成分重合体の合計量を100重量%として、3重量%~94重量%であり、付着力をより向上させる観点から、好ましくは5重量%~90重量%である。なお、「(メタ)アクリル酸系成分重合体」とは、(メタ)アクリル酸系成分由来の構造を構成単位とするポリマーを意味し、分散体組成物中に含まれ得る任意の成分であり、一実施形態において、ポリオレフィン系樹脂の変性時にポリオレフィン系樹脂と反応しなかった(メタ)アクリル酸系成分同士が重合してできる副生成物であり得る。
【0045】
(1-3.(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分による変性)
本発明において成分(A)変性ポリオレフィン樹脂は、(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分で変性されていてもよい。(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸系成分以外のα,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体が挙げられる。当該誘導体としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸無水物、α,β-不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル酸系成分以外のα,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸等が挙げられる。中でも、ポリオレフィンへのグラフト性を考慮して、無水マレイン酸が好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分による変性に用いられる酸成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0048】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂における(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分の総グラフト重量(変性度)は、(メタ)アクリル酸系成分由来の重量を除く成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の重量を100重量%として、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。これにより、未反応物の発生を抑制することができる。下限は、例えば、0重量%以上であり得る。グラフト重量(重量%)は、例えば、アルカリ滴定法又はフーリエ変換赤外分光法により求めることができる。
【0049】
(1-4.塩素化)
本発明において成分(A)変性ポリオレフィン樹脂は、塩素化されていてもよい。
【0050】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の塩素化度(塩素含有率)は、(メタ)アクリル酸系成分由来の重量を除く前記成分(A)の重量を100重量%として、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、25重量%以下が特に好ましい。これにより、耐ガソホール性が向上し得る。下限は、例えば0重量%以上であり、好ましくは0重量%超、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、さらにより好ましくは14重量%以上である。これにより、良好な溶剤溶解性が得られる。塩素化度は、一実施形態において、5重量%~30重量%が好ましく、より好ましくは10重量%~25重量%である。これにより、極性を一定以下に抑えることができ、ポリオレフィン基材などの非極性基材に対し充分な接着性を得ることができる。塩素化度はJIS-K7229に準じて測定し得る。すなわち、塩素含有樹脂を酸素雰囲気下で燃焼させ、発生した気体塩素を水で吸収し、滴定により定量する「酸素フラスコ燃焼法」を用いて測定できる。
【0051】
(1-5.成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の特性)
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは7,000以上、さらに好ましくは9,000以上、特に好ましくは10,000以上である。上限は、好ましくは400,000以下、より好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、一実施形態において、好ましくは5,000~400,000、より好ましくは7,000~350,000、さらに好ましくは10,000~300,000である。重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として用いるGPCにより測定できる。
【0052】
(1-6.成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の製造方法)
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂を変性することにより製造することができる。
【0053】
したがって、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の製造方法は、
工程(a):ポリオレフィン樹脂を準備する工程、
工程(b):(メタ)アクリル酸系成分で変性する工程
をこの順で含み得る。
【0054】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂が、(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分で変性されている場合には、工程(a)後に、
工程(c):(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分で変性する工程
を含み得る。
【0055】
工程(c)は、工程(b)と異なる時点で行ってもよく、また、工程(b)と同時に行ってもよい。工程(c)は、工程(b)と異なる時点で行うことが好ましい。工程(c)は、工程(a)後任意の時点で行うことができるが、工程(b)よりも先に行うことが好ましい。
【0056】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂が、塩素化されている場合には、工程(a)後に、
工程(d):塩素化する工程
を含み得る。
【0057】
工程(d)は、工程(a)後任意の時点で行うことができるが、工程(b)よりも先に行うことが好ましく、工程(c)を含む場合は、工程(b)よりも先且つ工程(c)よりも後に行うことがより好ましい。
【0058】
成分(A)変性ポリオレフィン樹脂の製造方法は、一実施形態において、工程(a)・(b)の順、工程(a)・(c)・(b)の順、工程(a)・(d)・(b)の順、工程(a)・(c)・(d)・(b)の順、又は工程(a)・(d)・(c)・(b)の順で各工程を含むことが好ましく、工程(a)・(b)の順、工程(a)・(c)・(b)の順、工程(a)・(d)・(b)の順、又は工程(a)・(c)・(d)・(b)の順で各工程を含むことが好ましい。
【0059】
工程(a)は、ポリオレフィン樹脂を準備する工程である。
【0060】
工程(a)で準備するポリオレフィン樹脂の融点の下限は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。工程(a)で準備するポリオレフィン樹脂の融点が50℃以上であると、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、十分な塗膜強度を発現し得る。そのため、基材との付着性が十分に発揮され得る。また、インキとして用いる際、印刷中のブロッキングを抑制し得る。
【0061】
工程(a)で準備するポリオレフィン樹脂の融点の上限は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。工程(a)で準備するポリオレフィン樹脂の融点が120℃以下であると、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂をインキ、塗料等の用途に用いる際、塗膜が固くなりすぎることを抑制し得る。そのため、塗膜が適度な柔軟性を発揮し得る。
【0062】
工程(a)で準備するポリオレフィン樹脂の融点の一実施形態としては、50℃~120℃が好ましく、60℃~110℃がより好ましく、60℃~100℃がさらに好ましい。
【0063】
工程(b)は、(メタ)アクリル酸系成分で変性する工程であり、工程(c)は、(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分(以下「酸成分」と略す場合がある)で変性する工程である。
【0064】
工程(b)及び(c)は、それぞれ、例えば、ポリオレフィン樹脂に(メタ)アクリル酸系成分又は酸成分をグラフト共重合により導入する方法により行うことができる。グラフト共重合の方法は、特に限定されるものではなく、溶融法、溶液法などの公知の方法を用いることができる。溶融法による場合、操作が簡単である上、短時間で反応できる。溶液法による場合、副反応が少なく均一なグラフト重合物が得られる。
【0065】
工程(b)は、一実施形態において、溶液法により行うことが好ましい。工程(c)は、一実施形態において、溶融法により行うことが好ましい。
【0066】
工程(b)又は(c)を溶融法により行う場合、例えば、ラジカル反応開始剤の存在下でポリオレフィンを加熱融解(加熱溶融)して反応させる。加熱融解の温度は、融点以上であればよく、融点以上300℃以下であることが好ましい。加熱融解の際には、バンバリーミキサー、ニーダー、押し出し機などの機器を使用することができる。
【0067】
ラジカル反応開始剤としては、例えば、加熱時にフリーラジカルを発生させる熱重合反応開始剤であり得、例えば、有機過酸化物系化合物及びアゾニトリル類が挙げられる。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルm-トリルパーオキサイド、ジ(m-トリル)ベンゾイル、ジラウリルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエートなどが挙げられる。アゾニトリル類としては、例えば、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)が挙げられる。
【0068】
工程(b)又は(c)を溶融法により行う場合、工程(c)は、押出機を用いて行うこと(押出変性で行うこと)が好ましい。押出変性の方法としては、例えば、原料を配合し、押出機(例えば、同方向多軸押出機、二軸押出機)の供給部に供給し押出機内で原料混合、溶融混練、反応、及び脱揮冷却の各工程を順次行い、先端ダイスから出てくる樹脂を冷却(例えば水槽に浸漬)して、(メタ)アクリル酸系成分又は酸成分で変性されたポリオレフィン樹脂を得る方法が挙げられる。反応の進行は、バレルの各部位の温度、スクリュー回転数を調整して調整できる。
【0069】
工程(b)又は(c)を溶液法により行う場合、例えば、ポリオレフィンを有機溶剤に溶解させた後、ラジカル反応開始剤の存在下に加熱撹拌して反応させる。反応の際の温度は、100~180℃が好ましい。工程(b)又は(c)後、系内の有機溶剤は、減圧下で留去してもよいし、押出機を用いて有機溶剤を取り除いてもよい。
【0070】
工程(b)又は(c)を溶液法により行う場合に使用する有機溶剤としては、好ましくは、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;又はn-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、n-オクタン、エチルシクロヘキサン、n-ノナン、n-デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤等の炭化水素系溶剤を用いることができる。
【0071】
工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分における成分(C)水酸基モノマーの含有量は、工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分100mol%に対し、好ましくは、20mol%以下、より好ましくは15mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下である。下限は、好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは1mol%以上、さらに好ましくは3mol%以上である。
【0072】
工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分における成分(D)低極性モノマーの含有量は、工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分100mol%に対し、好ましくは25mol%以上、より好ましくは30mol%以上、さらに好ましくは40mol%以上である。上限は、好ましくは90mol%以下、又は85mol%以下、より好ましくは80mol%以下、又は75mol%以下、さらに好ましくは70mol%以下、又は65mol%以下、特に好ましくは60mol%以下、又は55mol%以下である。
【0073】
工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分における成分(E)アルコキシ基モノマーの含有量は、一実施形態において、工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分100mol%に対し、好ましくは、50mol%以下、より好ましくは40mol%以下である。下限は、好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは1mol%以上である。
【0074】
工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分における成分(F)低級モノマーの含有量は、一実施形態において、工程(b)で使用する(メタ)アクリル酸系成分100mol%に対し、好ましくは1mol%以上、より好ましくは5mol%以上である。上限は、好ましくは70mol%以下、より好ましくは50mol%以下である。
【0075】
工程(b)直前段階の変性又は未変性のポリオレフィン樹脂(ポリオレフィン系樹脂)の重量平均分子量は、200,000以下が好ましく、150,000以下がより好ましく、120,000以下が更に好ましい。下限は、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、40,000以上が更に好ましい。
【0076】
工程(b)直前段階のポリオレフィン系樹脂の塩素化度(塩素含有率)は、ポリオレフィン系樹脂の重量を100重量%として、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましく、25重量%以下が特に好ましい。下限は、例えば0重量%以上であり、好ましくは0重量%超、より好ましくは5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上、さらにより好ましくは14重量%以上、特に好ましくは16重量%以上である。
【0077】
工程(b)直前段階のポリオレフィン系樹脂の(メタ)アクリル酸系成分以外の酸成分の総グラフト重量(変性度)は、ポリオレフィン系樹脂を100重量%として、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。下限は、例えば、0重量%以上であり得る。
【0078】
工程(b)直前段階のポリオレフィン系樹脂は、1種単独の樹脂であってもよいし、2種以上の樹脂の混合物であってもよい。
【0079】
工程(b)における工程(b)直前段階のポリオレフィン系樹脂と(メタ)アクリル酸系成分の反応比率(質量比)(ポリオレフィン系樹脂/(メタ)アクリル酸系成分)は、97/3~6/94であり、好ましくは95/5~10/90である。
【0080】
工程(d)は、塩素化する工程である。
【0081】
塩素化は、原料の樹脂を予めクロロホルムなどの塩素系溶媒に溶解してから行ってもよい。塩素化は、例えば、反応系への塩素ガスの吹き込みにより行う。塩素ガスの吹き込みは、紫外線の照射下で行ってもよいし、ラジカル反応開始剤の存在下で行ってもよい。塩素ガスの吹き込みの際の圧力は制限されず、常圧でも加圧下でもよい。塩素ガスの吹き込みの際の温度は特に制限されないが、例えば、50~140℃である。
【0082】
(2.成分(B)分散媒)
本発明の分散体組成物は、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂を分散する分散媒として、アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤とを含む。これにより、分散体組成物の粘度の上昇が抑えられ、かつ良好な分散性、安定性を示すことができる。そのメカニズムは以下のように推測される。未変性原料由来のポリオレフィン構造が低極性基を内包し、その周囲を(メタ)アクリル酸系成分由来の構造が覆う分散粒子が溶媒中に分散する構成を取ることができる。そのため、分散粒子が組成物中で安定して存在できる。また、(メタ)アクリル酸系成分に由来する水酸基がアルコール系溶剤の側へ、低極性基がポリオレフィン構造の側へ、それぞれ配向することができるので、分散粒子が組成物中で安定な構造を取ることができる。
【0083】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-エチル-ヘキサノール、1-ペンタノール等の脂肪族アルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールモノエーテル類等が挙げられ、特に限定はされないが、炭素原子数4以下のアルコールが好ましい。炭素原子数4以下のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の脂肪族アルコール類が挙げられる。炭素原子数が4以下であると、アルコールが高極性であるため、樹脂成分のアルコール中への溶解が抑制され、樹脂粒子として安定して分散させやすくなる。
【0084】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、n-ペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、メチルシクロヘキサン、n-オクタン、エチルシクロヘキサン、n-ノナン、n-デカン等が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、より好ましくはメチルシクロヘキサンである。
【0085】
アルコール系溶剤及び脂肪族炭化水素系溶剤は、それぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0086】
アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤の含有比率(質量比)(アルコール系溶剤/脂肪族炭化水素系溶剤)は、好ましくは99/1~10/90、より好ましくは95/5~50/50、さらに好ましくは90/10~70/30である。
【0087】
分散媒に含まれるアルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤の合計含有量は、分散媒100重量%に対し、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上である。
【0088】
本発明の分散体組成物は、分散媒として、アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤とに加えて、さらに他の溶剤を含んでいてもよい。他の溶剤としては、インキ及び/又は塗料に通常用いられる溶媒を幅広く用いることができ、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンなどのケトン系溶剤;エチレングリコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコール系溶剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
本発明の分散体組成物における分散媒は、水を含んでもよい。水の含有割合は、分散媒の総量100重量%に対し、好ましくは10重量%以下であり得る。
【0090】
(3.分散体組成物)
本発明の分散体組成物は、少なくとも成分(A)変性ポリオレフィン樹脂が、成分(B)アルコール系溶剤と脂肪族炭化水素系溶剤とを含む分散媒に分散している分散体組成物である。
【0091】
本発明の分散体組成物の固形分率は、30重量%以上であり、好ましくは35重量%である。これにより、組成物中の分散粒子の間に適度な相互作用が生まれ、分散性を向上させることができる。分散体組成物の固形分率の上限は、80重量%以下であり、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。一実施形態において、分散体組成物の固形分率は、好ましくは30重量%~70重量%、より好ましくは30重量%~60重量%、さらに好ましくは35重量%~50重量%である。これにより、経時安定性が良好となり得る。固形分率は、分散媒の使用量を変更することにより調整できる。
【0092】
本発明の分散体組成物は、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂及び成分(B)分散媒に加え、本発明の目的及び効果を阻害しない限りにおいて、他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸系成分由来の構造のみを構成単位とするポリマー、(メタ)アクリル酸系成分(モノマー)等の(メタ)アクリル酸系の樹脂成分;安定化剤、塩基性物質、乳化剤、架橋剤、希釈剤、硬化剤等が挙げられ、少なくとも安定化剤を含むことが好ましい。
【0093】
安定化剤としては、例えば、エポキシ系安定化剤等のエポキシ環を含む化合物が挙げられる。エポキシ系安定化剤としては、例えば、エポキシ当量が100から500程度であり、1分子中にエポキシ基を1個以上含むエポキシ化合物が挙げられる。より詳細には、以下の化合物が挙げられる:天然の不飽和基を有する植物油を過酢酸等の過酸でエポキシ化したエポキシ化大豆油やエポキシ化アマニ油;オレイン酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸等の不飽和脂肪酸をエポキシ化したエポキシ化脂肪酸エステル類;エポキシ化テトラヒドロフタレートに代表されるエポキシ化脂環式化合物;ビスフェノールAや多価アルコールとエピクロルヒドリンとを縮合した、例えば、ビスフェノールAグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル;ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェノールポリエチレンオキサイドグリシジルエーテル等に代表されるモノエポキシ化合物類。安定化剤は、エポキシ環を含まない化合物でもよく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂の安定化剤として使用されている、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の金属石鹸類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチルマレート等の有機金属化合物類;ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。
【0094】
また、安定化剤として、エポキシ環を含まない安定化剤を用いてもよく、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂の安定化剤として使用されている、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等の金属石鹸類;ジブチル錫ジラウレート、ジブチルマレート等の有機金属化合物類;ハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。
【0095】
安定化剤の含有量は、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂100重量%に対し、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは2重量%以上である。これにより、安定化効果が良好に発現し得る。安定化剤の含有量の上限は、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。これにより、ポリオレフィン等の基材に対する接着性を良好に発現させることができる。
【0096】
塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、モルホリン、ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。使用する塩基性物質は、1種類でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0097】
乳化剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤等の界面活性剤が挙げられる。
【0098】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0099】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
【0100】
本発明の分散体組成物のB型粘度は、25℃において、好ましくは1200mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下である。
【0101】
本発明の分散体組成物は、分散性、経時安定性等の安定性が良好であり、高固形分かつ低粘度であるので、プライマー、接着剤、塗料用バインダー又はインキ用バインダーとして利用し得る。本発明の分散体組成物がこれらの用途に用いられる場合、必要に応じて、防腐剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、金属塩、酸類等の、各種用途において通常含まれる成分を含んでいてもよい。
【0102】
分散体組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂に、アルコール系溶剤及び脂肪族炭化水素系溶剤並びに必要に応じて任意成分を添加して分散させる方法、脂肪族炭化水素系溶剤の存在下、成分(A)変性ポリオレフィン樹脂に、アルコール系溶剤及び必要に応じて任意成分を添加し、分散させる方法が挙げられる。分散は、撹拌によればよく、必要に応じて加熱等による温度調整を行ってもよい。
【0103】
第二の実施形態において、本発明は、
成分(α):ポリオレフィン系樹脂が
成分(β):下記一般式(I):
CH=C(R)COOR・・・(I)
(前記一般式(I)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、-C2mOHを示す。但し、mは、1~18の整数である。)
及び下記一般式(II):
CH=C(R)COOR・・・(II)
(前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、炭素原子数が4~18の脂肪族もしくは脂環式アルキル基(直鎖、分枝鎖及び/又は環状のアルキル基)を示す。)
で表される(メタ)アクリル酸エステルを少なくとも含む変性成分でグラフト変性されている成分(A):変性ポリオレフィン樹脂が、
アルコール系溶剤と脂肪族系溶剤(脂肪族炭化水素系溶剤)との混合溶媒(分散媒)に分散しており、
前記成分(α)と(β)の含有比率(重量比)(成分(α)/(β))が97/3~6/94(但し、成分(α)+成分(β)=100とする)の範囲であり
固形分が30~80%であること
を満たす、分散体組成物を提供する。
【0104】
成分(α)ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、酸変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化酸変性ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0105】
酸変性ポリオレフィン樹脂は、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体で変性されているポリオレフィン樹脂である。α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、無水ハイミック酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(ただし一般式(I)及び(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルを除く)などが挙げられる。中でも、ポリオレフィンへのグラフト性を考慮すると、無水マレイン酸が好ましい。α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体による変性度(グラフト重量)は、0~20重量%が好ましく、0~10重量%がより好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂の製造方法としては、上記工程(c)と同様の方法を用いることができる。
【0106】
塩素化ポリオレフィン樹脂は、塩素が導入されたポリオレフィン樹脂であり、塩素のほかにα,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体が導入されたポリオレフィン樹脂(酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂)でもよい。塩素の導入は、上記工程(d)と同様の方法を用いることができる。酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂の製造にあたっては、酸変性及び塩素化の両方を行えばよい。酸変性と塩素化の順序は特に限定されないが、好ましくは、酸変性後に塩素化を行う。塩素化ポリオレフィン樹脂の塩素化度は、30重量%以下が好ましく、25重量%以下がより好ましい。下限は、例えば0重量%超、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上である。塩素化度は、5~30重量%が好ましく、より好ましくは10~25重量%である。
【0107】
成分(α)ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量は、200,000以下が好ましく、90,000以下がより好ましく、70,000以下が更に好ましい。下限は、例えば10,000以上、より好ましくは、20,000以上である。
【0108】
成分(α)ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂1種単独でもよいし、2以上の組み合わせでもよいが、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂を少なくとも1種類含むことが好ましい。
【0109】
成分(β)変性成分は、一般式(I)及び(II)のそれぞれで表される(メタ)アクリル酸エステル(成分(C)水酸基モノマー及び成分(D)低極性モノマー)を含む。成分(β)変性成分が含んでもよい他の変性成分としては、例えば、α,β-不飽和カルボン酸及びその誘導体、成分(C)及び(D)以外の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。これらの例は、酸変性ポリオレフィン樹脂の説明において挙げたものと同様である。中でも、(メタ)アクリル酸、成分(C)及び(D)以外の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0110】
一般式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、成分(β)変性成分の総量に対し、例えば20mol%以下、好ましくは15mol%以下、より好ましくは10mol%以下である。下限は、例えば0.1mol%以上、好ましくは1mol%以上、より好ましくは3mol%以上である。一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、成分(β)変性成分の総量に対し、例えば25mol%以上、好ましくは30mol%以上、より好ましくは40mol%以上である。上限は、例えば90mol/%以下、好ましくは85mol%以下である。
【0111】
成分(β)変性成分の含有量に占める一般式(I)及び(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルの含有量のモル比率は、例えば30mol%以上、好ましくは40mol%以上、より好ましくは45mol%以上である。上限は、95mol%以下、好ましくは90mol%以下、より好ましくは85mol%以下である。
【0112】
成分(α)ポリオレフィン系樹脂と成分(β)変性成分の含有比率(成分(α)/成分(β))は、97/3~6/94であり、好ましくは95/5~10/90、より好ましくは95/5~50/50、更に好ましくは95/5~60/40である。これにより、付着力を向上させることができる。上記値は、成分(α)+成分(β)=100としたときの値である。
【実施例0113】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において用いられる単位「部」は「質量部」を意味する。下記の説明における温度条件は、特に温度の指定が無い場合、常温(25℃)下であり、圧力条件は、特に圧力の指定が無い場合、常圧(1atm)下である。
【0114】
[製造例1:酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリオレフィン樹脂(プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン構成単位含有率:96重量%、エチレン構成単位含有率:4重量%)100部、及び無水マレイン酸(α,β-不飽和カルボン酸無水物)4部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(ラジカル反応開始剤)2部を、均一に混合し、二軸押出機(L/D=60、直径=15mm、第1バレル~第14バレル)に供給した。
【0115】
滞留時間が10分、回転数200rpm、バレル温度が100℃(第1、2バレル)、200℃(第3~8バレル)、90℃(第9、10バレル)、110℃(第11~14バレル)の条件で反応を行った。その後、減圧処理を行って未反応の無水マレイン酸を除去し、無水マレイン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0116】
該酸変性ポリオレフィン樹脂100部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。クロロホルムを加え、2kgf/cmの圧力下、温度110℃で樹脂を十分に溶解した後、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル反応開始剤)2部を加え、上記釜内圧力を2kgf/cmに制御しながら塩素ガスを吹き込み、塩素化を行った。
【0117】
反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW-100EL、DIC(株)社製)を6部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給し、脱溶剤し、固形化し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)を得た。得られた酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)は、重量平均分子量が60,000であり、無水マレイン酸による変性度が2.5重量%であり、塩素含有率が15重量%であった。
【0118】
[製造例2:塩素化ポリオレフィン樹脂(A-2)の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリオレフィン樹脂(プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン構成単位含有率:96重量%、エチレン構成単位含有率:4重量%)100部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。クロロホルムを加え、2kgf/cmの圧力下、温度110℃で樹脂を十分に溶解した後、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル反応開始剤)2部を加え、上記釜内圧力を2kgf/cmに制御しながら塩素ガスを吹き込み、塩素化を行った。
【0119】
反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW-100EL、DIC(株)製)を6部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給し、脱溶剤し、固形化し、塩素化ポリオレフィン樹脂(A-2)を得た。得られた塩素化ポリオレフィン樹脂(A-2)は、重量平均分子量が60,000であり、塩素含有率が15重量%であった。
【0120】
[製造例3:酸変性ポリオレフィン樹脂(A-3)の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリオレフィン樹脂(プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン構成単位含有率:96重量%、エチレン構成単位含有率:4重量%)100部、及び無水マレイン酸(α,β-不飽和カルボン酸無水物)4部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(ラジカル反応開始剤)2部を、均一に混合し、二軸押出機(L/D=60、直径=15mm、第1バレル~第14バレル)に供給した。
【0121】
滞留時間が10分、回転数200rpm、バレル温度が100℃(第1、2バレル)、200℃(第3~8バレル)、90℃(第9、10バレル)、110℃(第11~14バレル)の条件で反応を行った。その後、減圧処理を行って未反応の無水マレイン酸を除去し、無水マレイン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂(A-3)を得た。
【0122】
得られた酸変性ポリオレフィン樹脂(A-3)は、重量平均分子量が60,000であり、無水マレイン酸による変性度が2.5重量%であった。
【0123】
[製造例4:酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-4)の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリオレフィン樹脂(プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン構成単位含有率:96重量%、エチレン構成単位含有率:4重量%)100部、及び無水マレイン酸(α,β-不飽和カルボン酸無水物)4部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(ラジカル反応開始剤)2部を、均一に混合し、二軸押出機(L/D=60、直径=15mm、第1バレル~第14バレル)に供給した。
【0124】
滞留時間が10分、回転数200rpm、バレル温度が100℃(第1、2バレル)、200℃(第3~8バレル)、90℃(第9、10バレル)、110℃(第11~14バレル)の条件で反応を行った。その後、減圧処理を行って未反応の無水マレイン酸を除去し、無水マレイン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0125】
該酸変性ポリオレフィン樹脂100部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。クロロホルムを加え、2kgf/cmの圧力下、温度110℃で樹脂を十分に溶解した後、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル反応開始剤)2部を加え、上記釜内圧力を3kgf/cmに制御しながら塩素ガスを吹き込み、塩素化を行った。
【0126】
反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW-100EL、DIC(株)製)を6部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給し、脱溶剤し、固形化し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-4)を得た。得られた酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-4)は、重量平均分子量が60,000であり、無水マレイン酸による変性度が2.5重量%であり、塩素含有率が25重量%であった。
【0127】
[製造例5:酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-5)の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリオレフィン樹脂(プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン構成単位含有率:96重量%、エチレン構成単位含有率:4重量%)100部、及び無水マレイン酸(α,β-不飽和カルボン酸無水物)4部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(ラジカル反応開始剤)2部を、均一に混合し、二軸押出機(L/D=60、直径=15mm、第1バレル~第14バレル)に供給した。
【0128】
滞留時間が10分、回転数200rpm、バレル温度が100℃(第1、2バレル)、200℃(第3~8バレル)、90℃(第9、10バレル)、110℃(第11~14バレル)の条件で反応を行った。その後、減圧処理を行って未反応の無水マレイン酸を除去し、無水マレイン酸で変性した酸変性ポリプロピレン樹脂を得た。
【0129】
該酸変性ポリプロピレン樹脂100部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。クロロホルムを加え、2kgf/cmの圧力下、温度110℃で樹脂を十分に溶解した後、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル反応開始剤)2部を加え、上記釜内圧力を2kgf/cmに制御しながら塩素ガスを吹き込み、塩素化を行った。
【0130】
反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW-100EL、DIC(株)製)を6部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給し、脱溶剤し、固形化し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-5)を得た。得られた酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-5)は、重量平均分子量が110,000であり、無水マレイン酸による変性度が2.0重量%であり、塩素含有率が17重量%であった。
【0131】
[製造例6:酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-6)の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリオレフィン樹脂(プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン構成単位含有率:96重量%、エチレン構成単位含有率:4重量%)100部、及び無水マレイン酸(α,β-不飽和カルボン酸無水物)4部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド(ラジカル反応開始剤)2部を、均一に混合し、二軸押出機(L/D=60、直径=15mm、第1バレル~第14バレル)に供給した。
【0132】
滞留時間が10分、回転数200rpm、バレル温度が100℃(第1、2バレル)、200℃(第3~8バレル)、90℃(第9、10バレル)、110℃(第11~14バレル)の条件で反応を行った。その後、減圧処理を行って未反応の無水マレイン酸を除去し、無水マレイン酸で変性した酸変性ポリプロピレン樹脂を得た。
【0133】
該酸変性ポリプロピレン樹脂100部を、グラスライニングされた反応釜に投入した。クロロホルムを加え、2kgf/cmの圧力下、温度110℃で樹脂を十分に溶解した後、2,2-アゾビスイソブチロニトリル(ラジカル反応開始剤)2部を加え、上記釜内圧力を2kgf/cmに制御しながら塩素ガスを吹き込み、塩素化を行った。
【0134】
反応終了後、安定剤としてエポキシ化合物(エポサイザーW-100EL、DIC(株)製)を6部添加し、スクリューシャフト部に脱溶剤用吸引部を備えたベント付き押出機に供給し、脱溶剤し、固形化し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-6)を得た。得られた酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-6)は、重量平均分子量が60,000であり、無水マレイン酸による変性度が2.5重量%であり、塩素含有率が24.5重量%であった。
【0135】
[実施例1:分散体組成物(B-1)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部を、メチルシクロヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)264.1部に溶解し、エポキシ化合物(エポサイザーW-131、DIC(株)製)を1.0部(酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)に対して1.0重量%)を加えた。
【0136】
窒素雰囲気中、85℃で撹拌下、ナイパーBMT-K40(日油(株)製)(ラジカル反応開始剤)を、5.0部(下記(メタ)アクリル酸系成分添加量に対して3.2重量%)加え、1時間保持後、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル28.1部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル46.9部、アクリル酸2-メトキシエチル35.6部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル7.5部の混合液((メタ)アクリル酸系成分)を3時間かけて連続添加し、85℃にて6時間保持し、分子量80,000の変性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0137】
反応終了後の反応溶液100部を、90℃で撹拌下、減圧留去にて、メチルシクロヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)37.6部を取り除いて濃縮し、70℃で撹拌下、イソプロパノール(アルコール系溶剤)57.6部を約2時間かけて添加し、変性ポリオレフィン樹脂の分散体組成物(B-1)を得た。
【0138】
[実施例2:分散体組成物(B-2)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル13.1部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル46.9部、アクリル酸2-メトキシエチル35.6部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル22.5部の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-2)を得た。
【0139】
[実施例3:分散体組成物(B-3)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル33.6部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル46.9部、アクリル酸2-メトキシエチル35.6部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル2.0部の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-3)を得た。
【0140】
[実施例4:分散体組成物(B-4)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル13.1部、メタクリル酸シクロヘキシル73.1部、メタクリル酸n-ブチル46.9部、アクリル酸2-メトキシエチル5.6部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル7.5部の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-4)を得た。
【0141】
[実施例5:分散体組成物(B-5)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル58.1部、メタクリル酸シクロヘキシル8.1部、メタクリル酸n-ブチル36.9部、アクリル酸2-メトキシエチル35.6部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル7.5部の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-5)を得た。
【0142】
[実施例6:分散体組成物(B-6)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル13.1部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル46.9部、アクリル酸2-メトキシエチル20.6部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル22.5部の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-6)を得た。
【0143】
[実施例7:分散体組成物(B-7)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分の量を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)/(メタ)アクリル酸系成分=95/5(質量比)となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-7)を得た。
【0144】
[実施例8:分散体組成物(B-8)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分の量を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)/(メタ)アクリル酸系成分=10/90(質量比)となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-8)を得た。
【0145】
[実施例9:分散体組成物(B-9)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分の量を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)/(メタ)アクリル酸系成分=80/20(質量比)となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-9)を得た。
【0146】
[実施例10:分散体組成物(B-10)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分の量を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)/(メタ)アクリル酸系成分=60/40(質量比)となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-10)を得た。
【0147】
[実施例11:分散体組成物(B-11)の製造]
反応終了後の反応溶液100部に対して減圧留去するメチルシクロヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)ならびに添加するイソプロパノール(アルコール系溶剤)の量を、最終的な溶剤比率はそのままに、最終固形分が30重量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-11)を得た。
【0148】
[実施例12:分散体組成物(B-12)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の代わりに塩素化ポリオレフィン樹脂(A-2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-12)を得た。
【0149】
[実施例13:分散体組成物(B-13)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の代わりに酸変性ポリオレフィン樹脂(A-3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-13)を得た。
【0150】
[実施例14:分散体組成物(B-14)の製造]:
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の代わりに酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-14)を得た。
【0151】
[実施例15:分散体組成物(B-15)の製造]
ラジカル反応開始剤(ナイパーBMT-K40(日油(株)製))の添加量を、(メタ)アクリル酸系成分添加量に対して0.5重量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-15)を得た。
【0152】
[実施例16:分散体組成物(B-16)の製造]
ラジカル反応開始剤(ナイパーBMT-K40(日油(株)製))の添加量を、(メタ)アクリル酸系成分添加量に対して6.4重量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-16)を得た。
【0153】
[実施例17:分散体組成物(B-17)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の代わりに酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-5)を使用し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-5)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル30.0部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル47.0部、アクリル酸2-メトキシエチル35.7部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5.6部の混合液に変更し、イソプロパノール(アルコール系溶剤)の代わりにn-ブチルアルコール(アルコール系溶剤)を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-17)を得た。
【0154】
[実施例18:分散体組成物(B-18)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の代わりに酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-6)を使用し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-6)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル30.0部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル47.0部、アクリル酸2-メトキシエチル35.7部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5.6部の混合液に変更し、イソプロパノール(アルコール系溶剤)の代わりにn-ブチルアルコール(アルコール系溶剤)を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-18)を得た。
【0155】
[実施例19:分散体組成物(B-19)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の代わりに酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-5)を使用し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-5)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル30.0部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル47.0部、アクリル酸2-メトキシエチル35.7部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5.6部の混合液に変更し、イソプロパノール(アルコール系溶剤)の代わりにネオエタノールPIP(エタノール、イソプロピルアルコール及びn-プロピルアルコールの混合液)(アルコール系溶剤)を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-19)を得た。
【0156】
[実施例20:分散体組成物(B-20)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)の代わりに酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-6)を使用し、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-6)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル30.0部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル47.0部、アクリル酸2-メトキシエチル35.7部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5.6部の混合液に変更し、イソプロパノール(アルコール系溶剤)の代わりにネオエタノールPIP(アルコール系溶剤)を使用した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-20)を得た。
【0157】
[比較例1:分散体組成物(B-1’)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部を、メチルシクロヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)108部に溶解し、エポキシ化合物(エポサイザーW-131、DIC(株)製)を、ポリオレフィン系樹脂(A)に対して1.0重量%となるように1.0部を加えた。
【0158】
上記の樹脂溶液100部を、90℃で撹拌下、減圧留去にて、メチルシクロヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)37.6部を取り除いて濃縮し、70℃で撹拌下、イソプロパノール(アルコール系溶剤)57.6部を約2時間かけて添加したが、樹脂成分が分散せず、分散体組成物(B-1’)は得られなかった。
【0159】
[比較例2:分散体組成物(B-2’)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル35.6部、メタクリル酸シクロヘキシル28.1部、メタクリル酸n-ブチル46.9部、アクリル酸2-メトキシエチル35.6部の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行ったが、樹脂成分が分散せず、分散体組成物(B-2’)は得られなかった。
【0160】
[比較例3:分散体組成物(B-3’)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、メタクリル酸3.8部、メタクリル酸メチル56.2部、アクリル酸2-メトキシエチル82.5部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル7.5部の混合液に変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行ったが、樹脂成分が分散せず、分散体組成物(B-3’)は得られなかった。
【0161】
[比較例4:分散体組成物(B-4’)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入する(メタ)アクリル酸系成分を、酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)/(メタ)アクリル酸系成分=5/95(質量比)となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-4’)を得た。
【0162】
[比較例5:分散体組成物(B-5’)の製造]
実施例1と同様にして(メタ)アクリル酸系成分で変性した後の樹脂溶液を、押出機にて固形化し、固形樹脂100部に対し、90℃で撹拌下、イソプロパノール(アルコール系溶剤)150部を2時間かけて添加したが、樹脂成分が分散せず、分散体組成物(B-5’)は得られなかった。
【0163】
[比較例6:分散体組成物(B-6’)の製造]
酸変性塩素化ポリオレフィン樹脂(A-1)100部に対して投入するメチルシクロヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)を、酢酸n-ブチルに変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行ったが、いったん分散した樹脂成分が沈降し、分散体組成物(B-6’)は得られなかった。
【0164】
[比較例7:分散体組成物(B-7’)の製造]
反応終了後の反応溶液100部に対して減圧留去するメチルシクロヘキサン(脂肪族炭化水素系溶剤)ならびに添加するイソプロパノール(アルコール系溶剤)の量を、最終的な溶剤比率はそのままに、最終固形分が29重量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、変性および分散を行い、分散体組成物(B-7’)を得た。
【0165】
[評価方法]
(重量平均分子量(Mw))
GPCにより、下記条件に従い測定した。
装置:HLC-8320GPC(東ソー(株)社製)
カラム:TSK-gel G-6000 HXL,G-5000 HXL,G-4000 HXL,G-3000 HXL,G-2000 HXL(東ソー(株)社製)
溶離液:THF
流速:1mL/min
温度:ポンプオーブン、カラムオーブン40℃
注入量:100μL
標準物質:ポリスチレン EasiCal PS-1(Agilent Technology社製)
【0166】
(無水マレイン酸のグラフト重量(変性度)(重量%))
アルカリ滴定法を用いて、JIS K 0070に準じた方法で測定を行った。
【0167】
(塩素化度(塩素含有率)(重量%))
JIS-K7229に基づいて測定した。
【0168】
(分散性)
分散体の作製時における粘度ならびに溶液外観より評価した。なお、粘度については、ガラス瓶に入れた分散体を25℃の恒温槽に6時間以上浸漬して調温した後、B型粘度計にて粘度測定を行った。
A:分散液が均一な乳白色であり、分散体のB型粘度が400mPa・s以下である。
B:分散液が均一な乳白色であり、分散体のB型粘度が400mPa・s超700mPa・s以下の範囲内である。
C:分散液が均一な乳白色であり、分散体のB型粘度が700mPa・s超1200mPa・s以下の範囲内である。
D:分散体を作製直後に沈殿物が生じる、もしくは分散媒に樹脂成分が分散しない、もしくは得られた分散体の分散体のB型粘度が1200mPa・s超である。
【0169】
(経時安定性)
樹脂分散体150gを250ml容ガラス容器に入れ、室温にて所定期間静置後、目視にて樹脂分散体の安定性を評価した。
A:3ヶ月以上静置しても、沈殿物がなく、安定性に優れる。
B:3ヶ月以上静置しても、沈殿物がなく、若干増粘するものの、実用の範囲内である。
C:1~2ヶ月で若干の沈殿物がみられるものの、実用の範囲内である。
D:1ヶ月以内に沈殿物がみられ、実用に適さない。
【0170】
(付着性試験)
試験片の塗膜に1mm間隔で素地に達する線状の刻みを縦横に入れて、100個の区画(碁盤目)を作り、その上にセロハン粘着テープを密着させて180°方向に引き剥がした。セロハン粘着テープを密着させて引き剥がす操作を同一の100個の区画につき10回行い、付着性(接着性)を以下に示す基準で評価した。剥離した塗膜の区画が50個以下(評価A~C)であれば、通常は実用上問題ない。
A:塗膜の剥離がない。
B:剥離した塗膜の区画が1個以上10個以下である。
C:剥離した塗膜の区画が10個より多く50個以下である。
D:剥離した塗膜の区画が50個より多い。
【0171】
(耐ガソホール性試験)
試験片を、レギュラーガソリン/エタノール=9/1(v/v)に120分浸漬し、塗膜の状態を観察し、耐ガソホール性を以下に示す基準で評価した。塗膜表面に剥離が生じていなければ(評価A~C)、通常は実用上問題ない。
A:塗膜表面に変化がない。
B:塗膜表面にわずかに変化がみられるが剥離はみられない。
C:塗膜表面に変化がみられるが剥離は生じていない。
D:塗膜表面に剥離が生じている。
【0172】
実施例及び比較例について、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量、分散媒に含まれる溶剤、(メタ)アクリル酸系成分由来の構造の総含有量、固形分率、並びに各試験の評価結果及び粘度を、以下の表1にまとめる。
【0173】
【表1】
【0174】
(表1の脚注)
IPA:イソプロピルアルコール
PIP:ネオエタノールPIP
MCH:メチルシクロヘキサン
BuOH:n-ブチルアルコール
BuOAc:酢酸n-ブチル
【0175】
上記の結果より以下のことがわかる。分散媒として脂肪族炭化水素系溶剤を用いたものの、アルコール系溶剤を添加しなかった比較例5では樹脂成分が分散せず分散体組成物が得られなかった。また、脂肪族炭化水素系溶剤の代わりに酢酸ブチルを用いた比較例6では、一旦分散した樹脂成分が沈降しアルコール分散体が得られなかった。その一方で、溶媒として脂肪族炭化水素系溶剤及びアルコール系溶剤を用いて、所定の変性ポリオレフィン樹脂を所定の固形分率に調整した実施例1~20では、各比較例と比較してバランスの良い評価結果の分散体組成物が得られた。上記の結果により、本発明の分散体組成物が、高固形分としても適度な粘度を示し、良好な安定性、接着性を発揮できることが明らかとなった。