(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093392
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法、及び、ガラスフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 17/32 20060101AFI20220616BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C03C17/32 C
B32B17/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066253
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2018547581の分割
【原出願日】2017-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2016209753
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】細川 和人
(72)【発明者】
【氏名】仲井 宏太
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敏広
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 義徳
(72)【発明者】
【氏名】鑑継 薫
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 直弘
(72)【発明者】
【氏名】森 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】桐畑 洋平
(57)【要約】
【課題】しわによるクラック伸展を未然に防止し、耳部除去工程の負荷を軽減しつつ、ガラスフィルムの中間品である樹脂テープ付きガラスフィルムを安定的に製造することが可能な方法を提供する。
【解決手段】溶融ガラスから長尺且つ幅方向両端部に耳部を有する耳部付きガラスフィルムを連続的に成形する成形工程であって、前記耳部付きガラスフィルムは、前記耳部と、前記耳部付きガラスフィルムの幅方向中央部に形成される有効部とを有する、前記成形工程、前記耳部付きガラスフィルムを徐冷する徐冷工程、前記耳部近傍に、前記耳部からそれぞれ所定の距離だけ離間して、前記耳部付きガラスフィルムの長さ方向に樹脂テープを連続的に形成する樹脂テープ形成工程、及び前記耳部と前記樹脂テープとの間、又は、前記樹脂テープ内の所定の幅方向位置において、前記耳部付きガラスフィルムから前記耳部を連続的に除去して樹脂テープ付きガラスフィルムとする耳部除去工程を含む樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスから長尺且つ幅方向両端部に耳部を有する耳部付きガラスフィルムを連続的に成形する成形工程であって、前記耳部付きガラスフィルムは、前記耳部と、前記耳部付きガラスフィルムの幅方向中央部に形成される有効部とを有する、前記成形工程、
前記耳部付きガラスフィルムを徐冷する徐冷工程、
前記耳部近傍に、前記耳部からそれぞれ所定の距離だけ離間して、前記耳部付きガラスフィルムの長さ方向に樹脂テープを連続的に形成する樹脂テープ形成工程、及び
前記耳部と前記樹脂テープとの間、又は、前記樹脂テープ内の所定の幅方向位置において、前記耳部付きガラスフィルムから前記耳部を連続的に除去して樹脂テープ付きガラスフィルムとする耳部除去工程
を含む樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂テープ形成工程が、樹脂テープロールから前記樹脂テープを連続的に繰り出して前記耳部付きガラスフィルムの表面に付着させる樹脂テープ付着工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂テープ付着工程が、前記樹脂テープと前記耳部付きガラスフィルムとの界面に接着剤を適用することを含むことを特徴とする、請求項2に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂テープ形成工程が、樹脂溶液をテープ状に前記耳部付きガラスフィルムの表面に連続的に塗布する樹脂溶液塗布工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂溶液は、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂の溶液であることを特徴とする、請求項4に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂テープ形成工程では、前記耳部付きガラスフィルムの端辺から前記耳部付きガラスフィルムの幅に対して40%以下離間した位置に、前記樹脂テープを形成することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記成形工程が、フロート法、オーバーフローダウンドロー法、及びスロットダウンドロー法のいずれかの方法を用いることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記有効部の厚みが、20~500μmであることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記樹脂テープ付きガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取工程を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記樹脂テープ形成工程では、前記樹脂テープを前記耳部付きガラスフィルムの一方表面のみに連続的に形成し、
前記巻取工程では、前記樹脂テープ付きガラスフィルムの前記一方表面を外側にして、前記樹脂テープ付きガラスフィルムをロール状に巻き取ることを特徴とする、請求項9に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記巻取工程では、保護シートロールから保護シートを連続的に繰り出して、前記樹脂テープ付きガラスフィルムを前記保護シートと共にロール状に巻き取ることを特徴とする、請求項10に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法を用いて樹脂テープ付きガラスフィルムを得る工程、及び
前記樹脂テープ付きガラスフィルムから前記樹脂テープが形成された幅方向両端部を連続的に除去してガラスフィルムとする樹脂テープ除去工程
を含むことを特徴とするガラスフィルムの製造方法。
【請求項13】
前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取工程を含むことを特徴とする請求項12に記載のガラスフィルムの製造方法。
【請求項14】
前記ガラスフィルムを幅方向に切断する工程を含むことを特徴とする請求項12に記載のガラスフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法及びそれを用いたガラスフィルムの製造方法に関する。特に、本発明は、しわによるクラック伸展を未然に防止し、耳部除去工程の負荷を軽減しつつ、ガラスフィルムの中間品である樹脂テープ付きガラスフィルムを安定的に製造することが可能な、樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法及びそれを用いたガラスフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子や有機ELを用いた表示・照明素子、さらに太陽電池は、搬送性、収納性、デザイン性の観点から軽量、薄型化が進んでおり、またロール・ツー・ロールプロセスによる連続生産に向けた開発も進んでいる。
【0003】
そうした中、これらの素子等に用いられるガラスに可撓性を持たせる方法として、極薄(例えば、厚みが200μm以下)の薄ガラス(以下「ガラスフィルム」ともいう。)の使用が提案されている。ガラスフィルムは可撓性を有しており、ロール状に巻き取ることができるため、ロール・ツー・ロールプロセスでの加工が可能である。これまで、ロール・ツー・ロールプロセスを用いて、ガラスフィルムに偏光板や透明電極などを加工する方法などについての開示がある。
例えば、米国特許第8525405号明細書は、ロール・ツー・ロールプロセスを用いて可撓性ガラス層を備えるディスプレイを作製する方法を開示している。
【0004】
一般的に、ガラスフィルムを含む板ガラス全般は、溶融ガラスを平滑な板状に成形し、徐冷・冷却することにより製造される。溶融ガラスを板状に成形する手法として、液状のスズに溶融ガラスを浮遊させ、水平方向に引っ張りながら板状に成形するフロート法や板状の開口部(スロット)から溶融ガラスを垂直方向に引っ張りながら板状に成形するスロットダウンドロー法、溶融ガラスを一旦桶からオーバーフローさせ、下方に引き出すオーバーフローダウンドロー法等が用いられることが知られている。
これらの手法は、溶融ガラスを板状に成形する手法自体は異なるものの、板状(薄板も含む)にガラスを成形するために、ガラスの端部を機械的に保持する手法が取られる点において共通する。その結果、ガラスの端部に厚肉の耳部が形成されることとなり、ガラスの内部と端部とで厚みに差が生じることとなる。端部に厚肉の耳部を有すると、ガラスフィルムの巻き取り自体が困難となる。従って、特開2010-132531号公報に記載されている通り、厚肉の耳部をガラスフィルムの長手方向に沿ってレーザーで切断除去する工程を経た後に、ガラスフィルムを巻き取ることでガラスロールを製造することが、一般的である。
【0005】
一方、ガラスフィルムの成形時に生じる厚肉の端部(耳部)と内部との厚みの差によって、端部と内部とで冷却速度に差が生じることとなり、端部と内部とで温度差を有する状態で板ガラスは冷却されることとなる。この冷却速度の差により端部と内部とで熱収縮に差が生じることとなり、この熱収縮の差がガラス板内部での面積差を生むこととなる。この面積差は、厚さ700μm前後の板ガラスでは特に問題とはならないが、厚さ200μm以下の超薄板の領域ではガラスフィルムが可撓性を有するため、上述の面積差が内部にシワとして観察されることとなる。このシワを有する耳部付きガラスフィルムは、搬送中にシワの状態が常に変化することとなり、シワの変化により切断箇所に生じる応力状態も変化することとなる。その結果、レーザー等により耳部を連続して切断除去するスリット工程を行うことが困難なものとなっている。
【0006】
この問題を解決するために、特開2015-140280号公報では、ガラスフィルムに生じるシワを伸ばしてからレーザーで切断することで、耳部を切断除去することが記載されている。この文献によれば、シワを伸ばした後にレーザーで切断しているため、耳部を安定して除去することができると記載されている。
【0007】
しかしながら、耳部の連続切断(スリット工程)において上述の手法を採用したとしても、しわを完全に除去することは原理的に困難であるため、安定して耳部を連続的に除去することができない。また、上述のシワに起因して、耳部の連続切断時にクラックがガラスフィルムの内部側に伸展することで耳部の連続除去が中断するおそれがあるが、上述の手法ではクラックの伸展自体を止めることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第8525405号明細書
【特許文献2】特開2010-132531号公報
【特許文献3】特開2015-140280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために鑑みたものであり、しわによるクラック伸展を未然に防止し、耳部の連続除去工程の負荷を軽減しつつ、ガラスフィルムの中間品である樹脂テープ付きガラスフィルムを安定的に製造することが可能な樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法及びそれを用いたガラスフィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、長尺の耳部付きガラスフィルムから不要部分(耳部)を除去する際に、耳部付きガラスフィルムの幅方向両端部近傍の所定の位置に樹脂テープを形成したうえで、端部(耳部)の連続的除去を行うことにより、しわによるクラック伸展を未然に防止して、上記課題を解決することができることを見出し、本発明に到ったものである。
【0011】
上記課題を解決するために創案された本発明は、溶融ガラスから長尺且つ幅方向両端部に耳部を有する耳部付きガラスフィルムを連続的に成形する成形工程であって、前記耳部付きガラスフィルムは、前記耳部と、前記耳部付きガラスフィルムの幅方向中央部に形成される有効部とを有する、前記成形工程、前記耳部付きガラスフィルムを徐冷する徐冷工程、前記耳部近傍に、前記耳部からそれぞれ所定の距離だけ離間して、前記耳部付きガラスフィルムの長さ方向に樹脂テープを連続的に形成する樹脂テープ形成工程、及び前記耳部と前記樹脂テープとの間、又は、前記樹脂テープ内の所定の幅方向位置において、前記耳部付きガラスフィルムから前記耳部を連続的に除去して樹脂テープ付きガラスフィルムとする耳部除去工程を含む樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法に関する。
【0012】
上記構成において、前記樹脂テープ形成工程が、樹脂テープロールから前記樹脂テープを連続的に繰り出して前記耳部付きガラスフィルムの表面に付着させる樹脂テープ付着工程を含むことが好ましい。
【0013】
上記構成において、前記樹脂テープ付着工程が、前記樹脂テープと前記耳部付きガラスフィルムとの界面に接着剤を適用することを含むことを特徴とすることが好ましい。
なお、ここで「接着剤」とは、「粘着剤」と呼ばれるようなものも含む。
【0014】
上記構成において、前記樹脂テープ形成工程が、樹脂溶液をテープ状に前記耳部付きガラスフィルムの表面に連続的に塗布する樹脂溶液塗布工程を含むことが好ましい。
【0015】
上記構成において、前記樹脂溶液は、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂の溶液であることが好ましい。
【0016】
上記構成において、前記樹脂テープ形成工程では、前記耳部付きガラスフィルムの端辺から前記耳部付きガラスフィルムの幅に対して40%以下離間した位置に、前記樹脂テープを形成することが好ましい。
【0017】
上記構成において、前記成形工程が、フロート法、オーバーフローダウンドロー法、及びスロットダウンドロー法のいずれかの方法を用いることが好ましい。
【0018】
上記構成において、前記有効部の厚みが、20~500μmであることが好ましい。
【0019】
上記構成において、前記樹脂テープ付きガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取工程を含むことが好ましい。
【0020】
上記構成において、前記樹脂テープ形成工程では、前記樹脂テープを前記耳部付きガラスフィルムの一方表面のみに形成し、前記巻取工程では、前記樹脂テープ付きガラスフィルムの前記一方表面を外側にして、前記樹脂テープ付きガラスフィルムをロール状に巻き取ることが好ましい。
【0021】
上記構成において、前記巻取工程では、保護シートロールから保護シートを連続的に繰り出して、前記樹脂テープ付きガラスフィルムを前記保護シートと共にロール状に巻き取ることが好ましい。
【0022】
上記構成において、上記樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法を用いて樹脂テープ付きガラスフィルムを得る工程、及び前記樹脂テープ付きガラスフィルムから前記樹脂テープが形成された幅方向両端部を連続的に除去してガラスフィルムとする樹脂テープ除去工程を含むことが好ましい。
【0023】
上記構成において、前記ガラスフィルムをロール状に巻き取る巻取工程を含むことが好ましい。
【0024】
上記構成において、前記ガラスフィルムを幅方向に切断する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法及びガラスフィルムの製造方法によれば、しわによるクラック伸展を未然に防止し、耳部の連続除去工程の負荷を軽減しつつ、ガラスフィルムの中間品である樹脂テープ付きガラスフィルム(代表的には、樹脂テープ付きガラスロール)やガラスフィルム(代表的には、ガラスロールや枚葉式のガラスフィルム)を安定的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法の工程フロー図である。
【
図2】本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法の一形態の全体を示す概念図である。
【
図3】(a)は本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法における成形工程の一形態の詳細を示す概念図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図4】本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法の各工程を示す概念図である。
【
図5】本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法におけるガラスフィルム巻取工程の一形態の詳細を示す概念図である。
【
図6】本発明のガラスフィルムの製造方法の一形態を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法の工程フローである。
図1に示すように、本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法は、(P1)成形工程、(P2)徐冷工程、(P3)樹脂テープ形成工程、及び、(P4)耳部除去工程を含み、(P5)巻取工程をさらに含んでも良い。下記にこれらの実施形態について詳述する。
【0028】
図2は、本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムGaの製造方法の一形態の全体を示す概念図である。
図3は、本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムGaの製造方法における成形工程の一形態の詳細を示す概念図である。
【0029】
(P1)成形工程
成形工程(P1)は、溶融ガラスから長尺且つ幅方向両端部に耳部Gbを有する耳部付きガラスフィルムGcを連続的に成形する工程である。
【0030】
溶融ガラスの原材料は、組成による分類によれば、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。好ましくは、無アルカリガラスが用いられる。強度および化学的耐久性に優れるからである。溶融ガラスは、任意の適切な温度(1400℃~1700℃)で加熱し溶融したものを用いる。
【0031】
上記溶融ガラスをフィルム状に連続的に成形する手法としては、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、フロート法などが挙げられる。いずれの手法を採用したとしても、長尺且つ幅方向両端部に耳部Gbを有する耳部付きガラスフィルムGcを連続的に成形することができる。一方、幅方向両端部に耳部Gbが形成される限り、本発明は上述の成形方法には限定されない。
薄層のガラスフィルムを連続的に成形する手法としては、オーバーフローダウンドロー法が特に好ましい。この手法により得られるガラスフィルムは、ガラス両面の平滑面に優れるという特徴を有するため、面内の欠陥が生じにくく、ガラスフィルムの連続的な成形に適するからである。
【0032】
下記に
図2、
図3を参照しながら、具体的なオーバーフローダウンドロー法の成形過程を述べる。
【0033】
図2に示す成形装置10の成形領域10A内部には、断面楔状の外表面形状を有する成形体11が配設されており、図示しない溶融窯で溶融されたガラス(溶融ガラス)を成形体11に供給することで、当該溶融ガラスが成形体11の頂部から溢れ出るようになっている。そして、溢れ出た溶融ガラスは、成形体11の断面楔状を呈する両側面を伝って下端で合流することで、溶融ガラスからガラスフィルムリボンGdの成形が開始されるようになっている。下端で合流したガラスフィルムリボンGdは、冷却ローラ12によって、ガラスフィルムリボンGdの幅方向両端部を把持することでガラスフィルムリボンGdの幅方向両端部に厚肉の耳部Gb(
図3(b)参照)を形成する構成となっている。耳部Gbの形成により、表面張力による凝集や熱収縮を抑制し、フィルム形態を保持したまま薄膜・硬化させることができ、これにより耳部付きガラスフィルムGcを成形することができる。冷却ローラ12としては、通常、金属製のローラが使用されるが、本発明はこれには限定されない。
【0034】
(P2)徐冷工程
徐冷工程(P2)は、耳部付きガラスフィルムGcを徐冷する工程である。
図2、
図3に示す通り、徐冷領域10Bには、複数のアニーラローラ13と図示しないヒータが配置されている。徐冷領域10Bは、図示しないヒータによって所定の温度勾配となるように設定されており、耳部付きガラスフィルムGcは徐冷領域10Bを流下するに従って徐々に温度を低下させられることで、内部に生じた熱歪が除去される。徐冷領域10B内のアニーラローラ13は、セラミック繊維と結合材を含む無機材料から作製されているが、本発明はこれには限定されない。また、アニーラローラ13は、全てが耳部付きガラスフィルムGcを把持している必要は無く、一部が空転ローラであってもよい。
【0035】
図3(a)及び(b)に示すように、耳部付きガラスフィルムGcにおいて、固定される端部は肉厚な状態(耳部Gb)を保つ一方、内部の薄層化された部分(薄層部Ge)は原理上流れ方向に対し伸長する。その結果、耳部Gbと薄層部Geで寸法の違い(面積差)が生じる為、薄層部GeにシワGfが発生すると推定される。ただし、耳部Gbを除去すれば薄層部GeのシワGfは解放され、樹脂テープ付ガラスフィルム又はガラスフィルムとして連続的に巻取可能となる。
【0036】
(P3)樹脂テープ形成工程
樹脂テープ形成工程は、大きく次の2つの手法に大別される。具体的には、(i)テープ状に成形された樹脂フィルムを連続的に繰り出して耳部付きガラスフィルムの表面に付着させる方法(樹脂テープ付着工程)、(ii)溶液状の樹脂をガラスフィルムの表面に連続的に塗布しテープ状に硬化させる方法(樹脂溶液塗布工程)である。
【0037】
(i)テープ状の樹脂フィルムを耳部付きガラスフィルムに積層させる方法(樹脂テープ付着工程)
積層法としては、テープ状の樹脂フィルム(樹脂テープ)を成形しつつ積層させるもしくは、予めテープ状に成形された樹脂フィルムを積層させる手法が上げられる。テープ状に成形された樹脂フィルムと耳部付きガラスフィルム間に接着性を発現させる手法としては、該樹脂テープと耳部付きガラスフィルムとの界面に接着剤もしくは粘着剤を介在させることが好ましい。また、樹脂テープを積層前後に熱溶融させアンカー効果によりガラスとの接着性を発現させてもよい。
特に好ましい実施形態としては、ロール状に巻き取られた樹脂テープを連続的に繰り出し、接着剤もしくは粘着剤を介在させ積層させる方法である。
樹脂テープの配置は耳部付きガラスフィルムの耳部近傍に、耳部からそれぞれ所定の距離だけ離間して積層させる。
【0038】
樹脂テープの材料としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、ナイロン、セロファン、シリコーン樹脂等を用いることができる。またこれらの混合物や積層体として樹脂フィルムを成形してもよい。好ましくは、工業的な観点からポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
これらの樹脂テープの製法としては、インフレーション法、Tダイ法、溶液流涎法、カレンダー法などを用いることができる。これらの手法により広幅の樹脂フィルムを成形した後、所定の巾にスリット・巻き取ることにより樹脂テープのロールを作製することが工業的には好ましい。
【0039】
接着剤や粘着剤を介して積層された樹脂フィルムは紫外線や電子線などを照射する装置を用いて架橋反応させ固定化させることが好ましい。これにより耳部付きガラスフィルムと樹脂テープが強固に固定されるためガラスのクラック伸展を抑制する効果が高まることが期待できる。
接着剤や粘着剤を介在させる手法としては、樹脂テープもしくは耳部付きガラスフィルムのどちらかあるいはその両者に液状の接着剤・粘着剤を滴下あるいは連続的に塗布する、もしくはシート状の接着フィルム・粘着フィルムを樹脂テープもしくは耳部付きガラスフィルムに遂次もしくは同時に積層させることができる。また、樹脂テープに予め接着剤、粘着剤を塗布し、離型フィルム(セパレータ)を積層した状態でロール状に巻き取ったものを用いてもよい。
【0040】
図4は、本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法の各工程を示す概念図である。具体的には、(a)は
図2のB-B線断面図、(b)は
図2のC-C線断面図、(c)は
図2のD-D線断面図である。
図2、
図4を参照して、特に好ましい実施形態について、説明する。樹脂テープロール20から樹脂テープ21を連続的に繰り出し接着剤(図示せず)を塗布した後、耳部付きガラスフィルムGcの耳部Gb近傍に、耳部Gbからそれぞれ所定の距離だけ離間して、樹脂テープ21を積層させ、紫外線照射装置22により紫外線を照射することで、耳部付きガラスフィルムGcの長さ方向に樹脂テープ21を連続的に形成するものである。
図4(b)に示す通り、耳部付きガラスフィルムGcは、通常、厚肉の耳部Gbと、耳部付きガラスフィルムGcの幅方向中央部に形成される有効部Ggとを有する。こで、ここで、有効部Ggは、耳部付きガラスフィルムGcのうち樹脂テープ21間に形成される部分のことである。有効部Ggの中には、所望の厚さが保証されており、製品として出荷可能な部分が含まれる。有効部Ggの厚さは、製品として使用される部分が含まれるため、取り扱い性と可撓性の観点から、20μm~500μmであることが好ましく、20μm~300μmであることがより好ましく、20μm~150μmであることが更に好ましい。
一方、非有効部Ghは、耳部付きガラスフィルムGcのうち、樹脂テープ21及び樹脂テープの外側に形成される部分のことである。非有効部Ghの中には、耳部Gbや、耳部Gbから有効部Ggの方向に向かって厚さが減少している部分が含まれる、すなわち厚さを製品として保証することができず、製品として出荷することができない部分が含まれる。また、有効部Ggとして比較的幅狭のものを必要とする場合については、非有効部Ghに一部製品として保証できる部分が含まれていても良い。
続いて、本実施形態における所定の距離は、
図4(b)に示すように、樹脂テープ21の耳部Gb側の端部21aと、耳部Gbの樹脂テープ21側の端部Gb1との距離h1のことである。本実施形態では、耳部付きガラスフィルムGcの端辺Gc1から樹脂テープ21の端部21aとの距離h2が、有効部Ggを広く確保する観点から、耳部付きガラスフィルムGcの幅w1の40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
さらに、後述の(P4)耳部除去工程において耳部Gbと樹脂テープ21との間の所定の幅方向位置で耳部Gbを連続的に除去する場合、樹脂テープ21の幅w2は、クラックの伸展を効果的に防止する観点から、3mm以上であることが好ましく、10mm以上であることがより好ましい。なお、(P4)耳部除去工程において樹脂テープ21内の所定の幅方向位置で耳部Gbを連続的に除去する場合には、樹脂テープ付きガラスフィルムGaに残存させる樹脂テープの幅が3mm以上であることが好ましく、10mm以上となるように、樹脂テープ21の幅w2を選択することが好ましい。一方、有効部Ggの幅を確保する観点から、幅w2は、100mm以下であることが好ましく、50mm以下であることがより好ましい。
また、樹脂テープ21の厚さt1は、クラックの伸展を防止する観点から、25μm~500μmであることが好ましく、50μm~200μmであることがより好ましい。尚、樹脂テープ21の厚さt1は、図示しない接着剤層を使用する場合は、接着剤層を除外した厚さのことである。
本手法であれば、樹脂テープとガラスフィルムが積層された際、接着剤が液状であればテープのガラスへの濡れ広がりが良いためガラスと樹脂テープ間の気泡のかみ込などは生じにくい。また、接着剤が硬化する前であれば、樹脂テープがガラス面を滑る自由度が設けられるため、積層の際に不定期に生じる軽微なシワや蛇行は接着剤の硬化前に自己修正される利点を有する。
【0041】
接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤やゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤やそれらの混合物などが挙げられる。接着剤層の厚さは、クラックが伸展することを防止する観点から、1μm~100μmであることが好ましく、1μm~40μmであることがより好ましい。
【0042】
(ii)溶液状の樹脂をガラスフィルムの表面に連続的に塗布する方法(樹脂溶液塗布工程)
樹脂材料としては、溶媒溶解性の樹脂や熱・光硬化性の樹脂を用いることができる。
溶媒溶解性の樹脂としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、トリアセチルセルロース、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、ナイロン、セロファン、シリコーン樹脂等やそれらの混合物を特定の溶媒に溶解させ用いることができる。
熱・光硬化性の樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂やゴム系樹脂やそれらの混合物などが挙げられる。
好ましい実施形態は、耳部付きガラスフィルムの耳部近傍に、耳部からそれぞれ所定の距離だけ離間して、溶液状の溶媒溶解性樹脂や熱・光硬化性の樹脂をガラスフィルムの表面に連続的に塗布し、熱や光、電子線を照射することで樹脂を硬化させて、ガラスフィルムの長さ方向に樹脂テープを連続的に形成するものである。
尚、本方法による樹脂テープの形成幅、形成位置の好適な実施形態は、上述の樹脂テープ付着工程と同様である。
【0043】
(P4)耳部除去工程
耳部除去工程(P4)は、耳部Gbと樹脂テープ21との間、又は、樹脂テープ21内の所定の幅方向位置において、耳部付きガラスフィルムGcから耳部Gbを連続的に除去して樹脂テープ付きガラスフィルムGaとする工程である。
耳部Gbを除去する手法としては、機械的にガラスを切削する方法やガラス表面に傷(スクライブ)を設け熱や曲げ応力により亀裂を成長(ブレイク)させる方法やガラスの化学結合を光により揮発・分断させる方法を用いることができる。再び
図2を参照して、連続的に耳部Gbを除去する手法としては、エネルギー源に光、特にコリメート且つコヒーレントな光源であるレーザー光を照射することのできるレーザー光源30を用いることが好ましい。レーザー光の波長はガラスに対し光吸収が著しい帯域を選択することが好ましく、照射エネルギーを高めるためレンズなどの光学系を用い、レーザーをガラス内部に集光させると効果的である。レーザー光源30としては、CO
2レーザーやYAGレーザー等を使用することができる。
図4(c)に示すように、樹脂テープ21の端部21aからのレーザー光源30による切断距離h3は、耳部除去工程P4を良好に行うために、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。
図4(c)に示すように、このようにして、耳部付きガラスフィルムGcの耳部Gbと樹脂テープ21との間(又は、樹脂テープ21内)の所定の位置において、耳部付きガラスフィルムGcからその耳部Gbを連続的に除去することで、樹脂テープ付きガラスフィルムGaを製造することができる。耳部Gbの切断除去により、耳部付きガラスフィルムGcに発生していたシワGfが解消されることとなる。なお、耳部の連続的除去をより簡便に行う観点からは、
図4(c)に示すように、耳部Gbと樹脂テープ21との間の所定の幅方向位置において、耳部付きガラスフィルムGcから耳部Gbを連続的に除去することが好ましい。
【0044】
本発明は、更に巻取工程(P5)を有することで、樹脂テープ付きガラスフィルムGaのロール体(以下、樹脂テープ付きガラスロールGiという)を作製してもよい。
【0045】
(P5)巻取工程
図1に示す巻取工程(P5)は、樹脂テープ付きガラスフィルムGaをロール状に巻き取り、樹脂テープ付きガラスロールGiを作製する工程である。
図2及び
図5に示す通り、樹脂テープ付きガラスフィルムGaの一方表面(上面Gj)のみに樹脂テープ21が形成されている場合、樹脂テープ21が形成されている樹脂テープ付きガラスフィルムGaの上面Gjを外側にして、巻き芯40の周りに樹脂テープ付きガラスフィルムGaを巻き取るのが好ましい。
これにより巻き取り時に樹脂テープ付きガラスフィルムGaに対し曲率が発生しても、樹脂テープ付きガラスフィルムGaのエッジ部分からの引き裂き方向の亀裂の成長を樹脂テープ21により効果的に留めることができる。
【0046】
また、樹脂テープ付きガラスフィルムGaを巻き取る際、保護シートロール50から保護シート51を連続的に繰り出して、樹脂テープ付きガラスフィルムGaを保護シート51と共にロール状に巻き取ることが好ましい。これにより、ガラスフィルム表面を保護することができると共に、ガラスフィルム表面の平滑性に伴うブロッキングにより、巻ズレが固定化されることを防止することができる。保護シート51としては、特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、セロファン、シリコーン等の樹脂シートの他、発泡性樹脂シートや紙などが挙げられる。
【0047】
巻きズレ無く良好な巻き取りを継続する観点から、保護シート51を樹脂テープ21間に配置することが好ましい。これにより、保護シート51と樹脂テープ21とが干渉することを防止することができる。この場合、先に巻き取られた樹脂テープ付きガラスフィルムGaの樹脂テープ21が、後に巻き取られる樹脂テープ付きガラスフィルムGaのガラスフィルムと接触するのを防止するため、樹脂テープ21の厚さ(接着層を使用する場合は、樹脂テープ基材と接着層との厚さの総和)よりも、保護シート51の厚さのほうが、厚いほうが好ましい。これにより、樹脂テープ21を耳部付きガラスフィルムGcに接着させる際に接着層に厚さムラが生じたとしても、樹脂テープ21とガラスフィルムとが接触しないため、樹脂テープ付きガラスロールGiを作製する際に上述の接着層の厚さムラに起因する巻きズレが生じるのを防止することができる。
一方、巻き取られた樹脂テープ付きガラスロールGiの端面を保護する観点から、保護シート51の幅が、樹脂テープ付きガラスフィルムGaの幅よりも、広いことが好ましい。
【0048】
図2はこれまで述べてきた工程要素(P1~P5)の好ましい例を選択し組み合わせたものでありこれに限定されるものではない。また、概念図ではオーバーフローダウンドロー法を用い縦方向に耳部付きガラスフィルムGcを成形・固化させた後、更に送りローラ60で搬送した後、方向変換ローラ70で横方向に耳部付きガラスフィルムGcの方向を変換した後に巻き取る工程を示しているが、耳部付きガラスフィルムGcの搬送方向は、方向変換ローラ70を省略して縦方向のみでもよく、フロート法を用いた場合には、逆に横方向のみでもよい。これらの工程P1~P5は生産性並びに原理的な制約の中で最適な配置であればよく、本図に限定されるものではない。
【0049】
樹脂テープ形成工程(P3)は、
図2では、耳部付きガラスフィルムGcの上面Gj側にのみ樹脂テープ21が形成されているが、これには限定されず、耳部付きガラスフィルムGcの下面側にのみ樹脂テープ21が形成されていてもよく、また、上面と下面の両方に樹脂テープ21が形成されていてもよい。
【0050】
図6は、本発明に係るガラスフィルムの製造方法の一形態を示した図である。
【0051】
本発明のガラスフィルムGkは、例えば、
図6に示す通り、樹脂テープ付きガラスロールGiから樹脂テープ付きガラスフィルムGaを巻き解き、レーザー光源31等の切断手段によって樹脂テープ付きガラスフィルムGaの樹脂テープが形成された幅方向両端部Glを連続的に除去する樹脂テープ除去工程を行うことにより作製される。ガラスフィルムGkは、
図6に示す通り、更に巻き取ってガラスフィルムGkのロール体(ガラスロールGm)としてもよく、図示しない幅方向切断装置によって幅方向に切断することで枚葉式のガラスフィルムGkを作製してもよい。また、巻き出し側も樹脂テープ付きガラスロールGiには限定されず、ロール状態ではない樹脂テープ付きガラスフィルムGaでもよい。樹脂テープ付きガラスフィルムGaは、前述の通りシワGfがないため、樹脂テープ21を更に形成していなくても、好適にレーザー光源31により幅方向両端部Glを連続的に除去することができる。
【実施例0052】
以下、本発明の樹脂テープ付きガラスフィルムの製造方法を、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
(実施例)
図2に示す方法を使用して、樹脂テープ付きガラスフィルムを製造した。具体的には、耳部付きガラスフィルムの幅が1500mmとなるようにオーバーフローダウンドロー法で耳部付きガラスフィルムを成形した。耳部の厚さは1mmであり、有効部の厚さは100μmである。耳部付きガラスフィルムを徐冷した後、横方向に方向変換を行った。方向変換後の耳部付きガラスフィルムの上面に、ポリエチレンテレフタレート(PET)の幅25mmの樹脂テープを、紫外線硬化樹脂を20μmの厚みになるように介在させつつ、貼り合わせを行った。貼り合わせ後に樹脂テープに紫外線を照射することで、耳部付きガラスフィルムの上面に樹脂テープを接着した。尚、樹脂テープの貼り付け位置は、
図4(b)のh1が130mmとなる位置に行った。その後、波長10.6μmのCO
2レーザーを耳部付きガラスフィルムの上面から照射することで、耳部の連続的除去を行った。CO
2レーザーの照射位置は、
図4(c)のh3が5mmとなる位置である。切断除去後の樹脂テープ付きガラスフィルムを保護シートを介して巻き芯に巻き取ることで樹脂テープ付きガラスロールを製造したところ、1kmの長さの樹脂テープ付きガラスロールを破損することなく10回巻き取ることができた。つまり、10km連続して耳部のレーザー切断を行ったとしても、破損することが無かった。
【0054】
更に、上記で得られた1kmの長さの樹脂テープ付きガラスロールの巻き戻しを行い、波長10.6μmのCO2レーザーで切断することで、樹脂テープが形成された幅方向両端部を連続的に除去してガラスフィルムを作製した。CO2レーザーの照射位置は、樹脂テープ付きガラスフィルムの端から35mm内側(樹脂テープの端から5mm内側)である。作製されたガラスフィルムを保護シートを介して更に巻き取りを行うことで、ガラスロールとした。上記で得られた10本の樹脂テープ付きガラスロールを巻き戻してガラスロールの作製を試みたところ、10本とも破損無く巻き取ることができた。
【0055】
(比較例)
樹脂テープを使用しなかったこと以外は、上述の実施例と同様の方法でガラスロールの製造を試みたところ、1kmの長さのガラスロールを製造することができなかった。累積10kmの長さで耳部のレーザー切断を試みたが、53回破損した。