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特開2022-93402ポリヒドロキシアルカン酸及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093402
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカン酸及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/06 20060101AFI20220616BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20220616BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20220616BHJP
   D04H 1/435 20120101ALI20220616BHJP
【FI】
C08G63/06
C08G63/78
D04H1/728
D04H1/435
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066682
(22)【出願日】2022-04-14
(62)【分割の表示】P 2021516295の分割
【原出願日】2020-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2019086889
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302064588
【氏名又は名称】株式会社 フューエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩三
(72)【発明者】
【氏名】シー カナパティ ピライ ケー スデッシュ クマール エー エル
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、溶融流動性が高く、加工性に優れた3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸からなるポリヒドロキシブタン酸(3-PHB-co-3-PHHx)を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシヘキサン酸単位からなるポリヒドロキシアルカン酸であって、160℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレートが、2.5g/10分以上であることを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸を提供する。このポリヒドロキシアルカン酸は、溶融流動性が高く、加工性に優れているため、フィルムや不織布等に成形体の作成を容易に行うことができる。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシヘキサン酸単位からなるポリヒドロキシアルカン酸であって、
160℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレートが、2.5g/10分以上であることを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸。
【請求項2】
前記ポリヒドロキシアルカン酸は、3-ヒドロキシヘキサン酸単位を13.0mol%以上含有し、重量平均分子量が3.0×10~8.0×10g/molであることを特徴とする、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカン酸。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカン酸は、熱重量分析における分解温度が270℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリヒドロキシアルカン酸。
【請求項4】
前記ポリヒドロキシアルカン酸は、DSC分析による融点が70℃以上であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸を含むことを特徴とする、成形体。
【請求項6】
前記成形体は、フィルム又は不織布であることを特徴とする、請求項5に記載の成形体。
【請求項7】
以下のステップを含むことを特徴とする、ポリヒドロキシアルカンの製造方法。
ステップ1:ポリヒドロキシアルカン酸を産生する微生物を準備するステップ。
ステップ2:前記微生物を培地内で増殖するステップ。
ステップ3:増殖した前記微生物を動物に摂取させるステップ。
ステップ4:前記動物の排泄物からポリヒドロキシアルカンを回収するステップ。
【請求項8】
前記微生物は、ポリヒドロキシアルカン酸シンターゼ遺伝子が導入された微生物であることを特徴とする、請求項7に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
【請求項9】
前記ポリヒドロキシアルカン酸シンターゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は、1つ以上のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加された配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項8に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
【請求項10】
前記微生物は、カプリアビダス・ネカトールであることを特徴とする、請求項7~9の何れか1項に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
【請求項11】
前記培地は、パーム核油、魚油、廃棄食用油を含有することを特徴とする、請求項7に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。
【請求項12】
前記動物は、甲虫の幼虫であることを特徴とする、請求項7に記載のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシヘキサン酸単位からなるポリヒドロキシアルカン酸及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂はあらゆる生活の場面・産業分野で欠かせない素材であり、年間3億トン以上が生産されており、今後、世界人口の増大により更なる拡大が予想されている。
合成樹脂原料の有機高分子は、石油資源から精製・合成されており、将来的な石油資源の枯渇と、使用済みの製品(廃棄物)の処理、という問題が発生している。
【0003】
使用済みの製品(廃棄物)の処理は、ペレット化などの処理をして資源としてリサイクル使用すること、焼却処理すること、埋め立て処分すること等であるが、プラスチックの量産が始まってから資源としてリサイクルされたものは、わずか9%にすぎず、多くは、焼却処理か、埋め立て処分されているのが現状である。
焼却処理は、COを大量に排出するため、地球温暖化への影響を及ぼすことが非常に重要な問題である。また、埋め立て処分も、石油由来の樹脂は非常に分解されにくいため、土中に長期間残存し、地球環境を汚染し続けることとなる。特に、最近は、海洋でのマイクロプラスチックの汚染が問題となっている。例えば、プラスチックごみが波や紫外線で粉砕されると長さ5ミリメートル以下の「マイクロプラスチック」となり、魚の体内にマイクロプラスチックが蓄積している。50年後には海のプラスチックごみは魚の総重量を超えるとされ、プラスチックごみを削減させることは人類にとって急務の課題である。
【0004】
これら課題の解決法の一つが、生分解性バイオポリマーを使用することである。既に、ポリ乳酸(PLA)やポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、セルロース等のバイオポリマーを用いた樹脂製品の開発も進められているが、実際に海洋環境中でも“生分解性”と言えるのは、PHAとセルロースのみという報告がある。
ポリヒドロキシアルカン酸の開発では、主にポリ-3-ヒドロキシブタン酸(3-PHB)の開発が進められてきた。しかしながら、ポリ-3-ヒドロキシブタン酸は、もろさや硬さ等の物性に問題があり、また、生産・精製のコストがかかることから、実用化が遅れている。
【0005】
近年では、3-PHBの欠点を改良するため、ポリヒドロキシアルカン酸の構成単位として3-ヒドロキシブタン酸と他のヒドロキシアルカン酸からなる共重合体(コポリマー)が開発されている。例えば、3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシバレリアン酸(3-HV)や、3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸(3-HH)との共重合体の開発が進められている。特に3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体(3-PHB-co-3-PHH)は従来の石油資源由来合成樹脂により近い物性が得られる可能性があるため、活発に研究開発が行われている(例えば、特許文献1-5を参照。)。更に、共重合ポリマーを構成するPHBとPHHの構成比を変えて物性の改良を試みる開発も進められている(例えば、特許文献6-7を参照。)。また、非特許文献1には、マングローブメタゲノム由来のポリヒドロキシアルカン酸シンターゼ遺伝子を導入したカプリアビダス・ネカトールを用いるポリヒドロキシアルカン酸の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平09-508423号公報
【特許文献2】特表2002-534981号公報
【特許文献3】特開2006-045366号公報
【特許文献4】国際公開第2011-105379号
【特許文献5】韓国特許登録第10―1720933号公報
【特許文献6】特開2014-144553号公報
【特許文献7】特開2013-510572号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Choon Pin Foong et al, ‘A novel and wide substrate specific polyhydroxyalkanoate (PHA) synthase from unculturable bacteria found in mangrove soil’, Journal of Polymer Reserch, 2017年12月18日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来から開発されている3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体(3-PHB-co-3-PHHx)は、溶融させた際の流動性が低く、加工性が極めて悪いため、広く実用化するには至っていない状況である。
【0009】
そこで、本発明の課題は、溶融流動性が高く、加工性に優れた3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸からなるポリヒドロキシアルカン酸(3-PHB-co-3-PHHx)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決するために、3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸からなるポリヒドロキシアルカン酸において、微生物を用いてポリヒドロキシアルカン酸を産生することにより、3-ヒドロキシヘキサン酸の含有量を高めることで、新規の物性を有するポリヒドロキシアルカン酸が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のポリヒドロキシアルカン酸、その成形体、及びその製造方法である。
【0011】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸は、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシヘキサン酸単位からなるポリヒドロキシアルカン酸であって、160℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレートが、2.5g/10分以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、溶融流動性に優れ、加工性に優れた3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸の共重合体であるため、生分解性に優れたポリヒドロキシアルカン酸を、樹脂成形等に広く用いることができる。
【0012】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、3-ヒドロキシヘキサン酸単位を13.0mol%以上含有し、重量平均分子量が3.0×10~8.0×10g/molであることを特徴とする。
この特徴によれば、溶融流動性、及び、樹脂成形体とした際の耐熱性や耐久性を両立することができるポリヒドロキシアルカン酸を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、熱重量分析における分解温度が270℃以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、耐熱性に優れたポリヒドロキシアルカン酸を提供することができる。
【0014】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、DSC分析による融点が70℃以上であることを特徴とする。
この特徴によれば、室温での結晶性に優れたポリヒドロキシアルカン酸とすることができる。
【0015】
本発明の成形体は、前述の本発明のポリヒドロキシアルカン酸を含むことを特徴とする。
この特徴によれば、生分解性に優れた成形体を得ることができることから、海洋汚染やマイクロプラスチック問題等を解消することができる。また、廃棄処分において生分解処理が可能となるため、焼却処理を減らし、環境への負荷を低減するという効果も奏する。
【0016】
さらに、本発明の成形体の一実施態様としては、フィルム又は不織布であることを特徴とする。
この特徴によれば、生分解性に優れたフィルム又は不織布を得ることができることから、海洋汚染やマイクロプラスチック問題等を解消することができる。また、廃棄処分において生分解処理が可能となるため、焼却処理を減らし、環境への負荷を低減するという効果も奏する。
【0017】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法の一実施態様としては、以下のステップを含むことを特徴とする。
ステップ1:ポリヒドロキシアルカン酸を産生する微生物を準備するステップ。
ステップ2:前記微生物を培地内で増殖するステップ。
ステップ3:増殖した前記微生物を動物に摂取させるステップ。
ステップ4:前記動物の排泄物からポリヒドロキシアルカンを回収するステップ。
この特徴によれば、溶融加工性に優れたポリヒドロキシアルカン酸を提供することができるため、生分解性に優れた成形体の原料をより効率的に提供することができる。
【0018】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法の一実施態様としては、微生物は、ポリヒドロキシアルカン酸シンターゼ遺伝子が導入された微生物であることを特徴とする。
この特徴によれば、より効率的に溶融加工性に優れたポリヒドロキシアルカン酸を提供することができる。
【0019】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法の一実施態様としては、ポリヒドロキシアルカン酸シンターゼは、配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は、1つ以上のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加された配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
この特徴によれば、より効率的に溶融加工性に優れたポリヒドロキシアルカン酸を提供することができる。
【0020】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法の一実施態様としては、微生物は、カプリアビダス・ネカトールであることを特徴とする。
この特徴によれば、より効率的に溶融加工性に優れたポリヒドロキシアルカン酸を提供することができる。
【0021】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法の一実施態様としては、培地は、パーム核油、魚油、廃棄食用油等を含有することを特徴とする。
この特徴によれば、より効率的に溶融加工性に優れたポリヒドロキシアルカン酸を提供することができる。
【0022】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法の一実施態様としては、動物は、甲虫の幼虫であることを特徴とする。
この特徴によれば、より不純物の少ないポリヒドロキシアルカン酸をより低価格で提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、溶融流動性が高く、加工性に優れた3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸からなるポリヒドロキシアルカン酸(3-PHB-co-3-PHH)をより低価格で提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例のカプリアビダス・ネカトールに導入したポリヒドロキシアルカン酸シンターゼ遺伝子が発現するポリヒドロキシアルカン酸シンターゼのアミノ酸配列である。
図2】微生物に導入するエノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子により発現するエノイル-CoAヒドラターゼのアミノ酸配列の一例である。
図3】ミールワームに対して、ポリヒドロキシアルカン酸を含む乾燥微生物を給餌した様子を示す図である。
図4】ポリヒドロキシアルカン酸を含む乾燥微生物を摂取したミールワームの糞便ペレットを示す図である。
図5】実施例のポリヒドロキシアルカン酸(3HHx30モル%含有)を用いて得られたフィルムを示す図である。
図6】実施例のポリヒドロキシアルカン酸(3HHx20モル%含有)を用いて得られた不織布を示す図である。図6(A)は、不織布を撮影した写真であり、図6(B)は、不織布のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明を実施するための最良の形態を含めて説明する。
[ポリヒドロキシアルカン酸]
ポリヒドロキシアルカン酸とは、下記化学式(1)で示されることを特徴とする、生分解性の重合体である。
【化1】
(式中、Rはアルキレン基を表す。)
【0026】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸は、下記化学式(2)で表される3-ヒドロキシブタン酸単位(3HB)と、下記化学式(3)で表される3-ヒドロキシヘキサン酸単位(3HHx)からなる共重合体である。
【化2】
【0027】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸は、160℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレート(MFR)が、2.5g/10分以上である。
160℃、2.16kg/fにおけるMFRの下限値としては、好ましくは5.0g/10分以上であり、より好ましくは10.0g/10分以上であり、更に好ましくは20.0g/10分以上であり、特に好ましくは25.0g/10分以上である。
160℃、2.16kg/fにおけるMFRを2.5g/10分以上とすることで、溶融流動性に優れ、加工性に優れたポリヒドロキシアルカン酸とすることができるため、樹脂成形等に広く用いることができる。
本発明におけるMFR測定は、メルトインデクサ装置(東洋精機社製インデクサ2A-C)を用いて、メルトインデクサ法で行った。
【0028】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、130℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレート(MFR)が、1.0g/10分以上である。
130℃、2.16kg/fにおけるMFRの下限値としては、好ましくは2.0g/10分以上であり、より好ましくは6.0g/10分以上であり、更に好ましくは8.0g/10分以上であり、特に好ましくは25.0g/10分以上である。
【0029】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、140℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレート(MFR)が、1.5g/10分以上である。
140℃、2.16kg/fにおけるMFRの下限値としては、好ましくは4.0g/10分以上であり、より好ましくは8.0g/10分以上であり、更に好ましくは15.0g/10分以上であり、特に好ましくは25.0g/10分以上である。
【0030】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、150℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレート(MFR)が、4.0g/10分以上である。
150℃、2.16kg/fにおけるMFRの下限値としては、好ましくは10.0g/10分以上であり、より好ましくは15.0g/10分以上であり、更に好ましくは20.0g/10分以上であり、特に好ましくは25.0g/10分以上である。
【0031】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、170℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレート(MFR)が、5.0g/10分以上である。
170℃、2.16kg/fにおけるMFRの下限値としては、好ましくは10.0g/10分以上であり、より好ましくは20.0g/10分以上であり、更に好ましくは30.0g/10分以上であり、特に好ましくは35.0g/10分以上である。
【0032】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、上記化学式(3)で示される3-ヒドロキシヘキサン酸単位を、13.0mol%以上含有することが好ましい。
3-ヒドロキシヘキサン酸単位の含有量の下限値としては、好ましくは20.0mol%以上、より好ましくは20.0mol%以上、更に好ましくは25.0mol%以上である。なお、3-ヒドロキシヘキサン酸単位の含有量は、H-NMRにより算出する。
3-ヒドロキシヘキサン酸単位の含有量を上記範囲内とすることで、ポリヒドロキシアルカン酸の溶融流動性を向上させることができ、より樹脂加工性を向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、重量平均分子量が3.0×10~8.0×10g/molであることが好ましい。重量平均分子量の上限値として好ましくは、6.0×10以下であり、より好ましくは5.0×10以下であり、更に好ましくは4.0×10以下である。
本発明のポリヒドロキシアルカン酸の重量平均分子量を上記範囲内とすることで、溶融流動性、及び、樹脂成形体とした際の耐熱性や耐久性を両立することができるポリヒドロキシアルカン酸とすることができる。
【0034】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、数平均分子量が2.0×10~4.0×10g/molであることが好ましい。数平均分子量の上限値としては、3.5×10以下であり、より好ましくは3.0×10以下である。
【0035】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、分子量分布が1~20であることが好ましい。分子量分布の下限値としては、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは7以上である。上限値としては、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
本発明のポリヒドロキシアルカン酸の分子量分布を上記範囲内とすることで、均一な品質のポリヒドロキシアルカン酸とすることができる。
また、本発明において、分子量及び分子量分布の測定は、GPC測定装置(Shodex K-806Mカラムを備えたAgilent 1200シリーズGPC)を用いて測定した。
【0036】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、熱重量分析における分解温度が270℃以上であることが好ましい。下限値としては、好ましくは275℃以上であり、より好ましくは280℃以上である。熱重量分析における分解温度が270℃以上とすることで、耐熱性に優れたポリヒドロキシアルカン酸とすることができる。
【0037】
さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の一実施態様としては、DSC分析による融点が70℃以上であることが好ましい。下限値としては、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。DSC分析による融点が70℃以上とすることで、室温での結晶性に優れたポリヒドロキシアルカン酸とすることができる。
【0038】
[ポリヒドロキシアルカン酸を含む樹脂組成物]
本発明のポリヒドロキシアルカン酸は、その性能が低下しない限り、その他の添加剤と混合して樹脂組成物とすることもできる。その他の添加剤としては、本発明のポリヒドロキシアルカン酸以外のその他の樹脂、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、無機充填剤、結晶核剤等を用いることができる。
【0039】
その他の樹脂組成物としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられ、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ乳酸、フェノール樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸、ノルボルネン系樹脂等が挙げられる。
【0040】
[ポリヒドロキシアルカン酸を含む成形体]
本発明のポリヒドロキシアルカン酸は成形体として用いることが好ましい。成形体としての形態は、特に限定されないが、繊維、糸、フィルム、シート、不織布、ストロー等が挙げられ、フィルムや不織布とすることがより好ましい。さらに、本発明のポリヒドロキシアルカン酸を含む成形体は、ポリヒドロキシアルカン酸を含んでいればよく、ポリヒドロキシアルカン酸に添加剤を含有させた上記樹脂組成物を含む成形体であってもよい。
【0041】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸をフィルムに成形する方法は特に限定されないが、例えば、Tダイ押出し成形、カレンダー成形、ロール成形、インフレーション成形が挙げられる。フィルム成形時の成形温度は、特に限定されないが、130~190℃が好ましい。
【0042】

本発明のポリヒドロキシアルカン酸を不織布に成形する方法は特に限定されないが、エレクトロスプレーデポジション(ESD)法、メルトブローン法、又はその他の不織布を製造する方法であればよく、ESD法又はメルトブローン法がより好ましい。
【0043】
メルトブローン法において、本発明のポリヒドロキシアルカン酸を溶融するための温度は、好ましくは80℃以上、250℃以下である。ノズルブロックの温度の下限値は、より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは150℃以上であり、特に好ましくは170℃以上である。ノズルブロックの温度の上限値は、より好ましくは210℃以下であり、更に好ましくは200℃以下であり、特に好ましくは190℃以下である。
【0044】
メルトブローン法において、本発明のポリヒドロキシアルカン酸を繊維化するためのノズルブロックの温度は、好ましくは80℃以上、250℃以下である。ノズルブロックの温度の下限値は、より好ましくは120℃以上であり、更に好ましくは150℃以上であり、特に好ましくは180℃以上である。ノズルブロックの温度の上限値は、より好ましくは220℃以下であり、更に好ましくは210℃以下であり、特に好ましくは200℃以下である。なお、本発明のポリヒドロキシアルカン酸は、ノズルブロックの温度が上記範囲外である場合では繊維化することができない。
【0045】
メルトブローン法において、熱風の温度は、好ましくは100℃以上、250℃以下である。熱風の温度の下限値は、より好ましくは150℃以上であり、更に好ましくは180℃以上であり、特に好ましくは190℃以上である。ノズルブロックの温度の上限値は、より好ましくは230℃以下であり、更に好ましくは220℃以下であり、特に好ましくは210℃以下である。
【0046】
メルトブローン法における溶融温度、ノズルブロックの温度、熱風の温度を上記範囲とすることにより、良好な繊維状態となり、不織布の作成に適した繊維となる。
【0047】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸を繊維化する場合には、3-ヒドロキシヘキサン酸単位の含有量は、好ましくは13.0mol%以上、30.0mol%以下である。下限値は、より好ましくは15.0mol%以上である。上限値は、より好ましくは25mol%以下である。この範囲とすることにより、良好な繊維状態となり、不織布の作成に適した繊維となる。
【0048】
[ポリヒドロキシアルカン酸の製造方法]
本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法は、160℃、2.16kg/fにおけるメルトフローレート(MFR)が、2.5g/10分以上となるポリヒドロキシアルカン酸が得られるのであれば、どのような製造方法でもよい。
【0049】
例えば、本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法の一実施態様としては、以下のステップを含むことを特徴とする。
ステップ1:ポリヒドロキシアルカン酸を産生する微生物を準備するステップ。
ステップ2:前記微生物を培地内で増殖するステップ。
ステップ3:増殖した前記微生物を動物に摂取させるステップ。
ステップ4:前記動物の排泄物からポリヒドロキシアルカンを回収するステップ。
【0050】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸は、微生物を用いて製造することが好ましい。例えば、微生物としてはバチルス・ベガテリウム(Bacillus megaterium)、カプリアビダス・ネカトール(Cupriavidus necator)、ラルストニア・ユートロフア(Ralstonia eutropha)、アルカリゲネス・ラタス(Alcaligenes latus)等のポリヒドロキシアルカン酸産生能を有する微生物が挙げられる。カプリアビダス・ネカトールが特に好ましい。
【0051】
微生物としては、ポリヒドロキシアルカン酸の合成に関与する遺伝子が欠失又は導入された微生物であることが好ましい。例えば、アセトアセチル-CoAレダクターゼ遺伝子を欠失させた微生物を用いることが好ましい。また、ヒドロキシアルカン酸シンターゼ遺伝子や、エノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子を導入することが好ましい。これにより、ポリヒドロキシアルカン酸に含まれる3-ヒドロキシヘキサン酸単位の含有量を高めることができる。
【0052】
ヒドロキシアルカン酸シンターゼ遺伝子により発現するヒドロキシアルカン酸シンターゼの一例としては、例えば、図1に示す配列番号1に記載のアミノ酸配列、又は、1つ以上のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加された配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むものである。
また、エノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子により発現するエノイル-CoAヒドラターゼの一例としては、例えば、図2に示す配列番号2に記載のアミノ酸配列、又は、1つ以上のアミノ酸が置換、欠失若しくは付加された配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むものである。
【0053】
配列1に記載のヒドロキシアルカン酸シンターゼ及び/又は配列2に記載のエノイル-CoAヒドラターゼを発現する遺伝子が導入された微生物を用いることで、溶融流動性が高く、加工性に優れた3-ヒドロキシブタン酸と3-ヒドロキシヘキサン酸からなるポリヒドロキシアルカン酸(3HB-co-3HHx)を製造することができる。
【0054】
微生物の培養に使用する培地は、微生物が増殖するものであれば、特に制限されない。例えば、炭素源として、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等の飽和・不飽和脂肪酸などの脂肪酸類、グルコース、フルクトース等の糖類、乳酸等の有機酸類、炭素数が10以上である飽和・不飽和脂肪酸を多く含む油脂類を含有する培地である。油脂類としては、例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パームオレイン、菜種油、大豆油、米油、ゴマ油等の植物油脂、ラード、牛脂等の動物油脂、魚油等が挙げられる。なお、油脂類は精製前のものや、廃棄食用油等も使用することができる。培地に炭素源として添加する油脂類としては、ラウリン酸を含有するパーム核油ま又はヤシ油が好ましい。パーム核油又はヤシ油を含有することにより、ポリヒドロキシアルカン酸の含有量を高めることができる。
【0055】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸の生産条件としては、好気性条件下であることが好ましい。また、必要であれば、窒素源や無機物を添加してもよい。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。無機物としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
培養温度は20℃~40℃が好ましく、より好ましくは25℃~35℃である。培養時間は特に限定されないが、好ましくは48~72時間である。
【0056】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸の製造方法において、上記のアセトアセチル-CoAレダクターゼ遺伝子と、エノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子の発現量を制御することで、3HHxの含有量を制御することができる。
また、炭素源の残存量の制御や、培養液における無機成分濃度の調整、酸素の通気量及び培養時間を調整することでも3HHxの含有量を制御することが可能である。
【0057】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸の精製方法は特に限定されないが、培地から遠心分離によって回収し、溶媒等で抽出する方法や、上記微生物を動物により消化・吸収させ、排泄物として回収する方法などが挙げられる。ポリヒドロキシアルカン酸の濃度を簡易的に濃縮できるという観点から、動物により微生物を消化・吸収させ、排泄物に含まれる顆粒状のポリヒドロキシアルカン酸として回収する方法が好ましい。
上記動物としては、げっ歯類、ヤギ、ヒツジ、ウシ、トリ等の動物、水生生物、甲虫、虫等が挙げられる。ミールワーム等の甲虫の幼虫が好ましく、35日齢のイエバエの虫食い(ダニカムシの幼虫、Tenebrio molitor)がより好ましい。
上記微生物にミールワーム等の幼虫に餌として与えた後に、糞便ペレットを回収し、
メッシュを用いて篩い分けした後、水、水酸化ナトリウム等の塩基で洗浄、乾燥を行うことで、本発明のポリヒドロキシアルカン酸を回収することができる。
【実施例0058】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
<実施例1>
[3-ヒドロキシブタン酸単位(3HB)と3-ヒドロキシヘキサン酸単位(3HHx)からなるポリヒドロキシアルカン酸の製造]
・P(3HB-co-3HHx)製造のためのミネラル培地調製
P(3HB-co-3HHx)製造のためのミネラル培地は、4.0g/LのNaHPO、4.6g/LのNaHPO、0.45g/LのKSO、0.39g/LのMgSO、62mg/LのCaCl、1mL/Lの微量元素溶液(微量元素溶液は0.1MのHClに溶解した15g/LのFeSO・7HO、2.4g/LのMnSO・HO、2.4g/LのZnSO・7HOおよび0.48g/LのCuSO・5HOを含む。)からなり、オートクレーブにより滅菌する前に、培地のpHを7.0に調整した。
【0059】
・13L発酵槽を用いたP(3HB-co-3HHx)の生合成
P(3HB-co-3HHx)の生合成は、ポリヒドロキシアルカン酸シンターゼ遺伝子を導入したカプリアビダス・ネカトールを用いて行った。
まず、配列番号1に記載のポリヒドロキシアルカン酸シンターゼをコードする遺伝子を導入したカプリアビダス・ネカトールを寒天プレート上に画線し、30℃で24時間培養した。次に、前培養として、50mLの培養液に白金耳を用いて2回前記カプリアビダス・ネカトールを接種し、30℃のインキュベーターシェーカーで、培養液のOD600nmが4になるまで8時間振とうした。尿素0.54g/L、MgSO0.39g/L、CaCl62mg/L、微量元素溶液1mL/L及び粗パーム核油1質量%となるように添加されたミネラル培地100mLに対して、前記培養液約3mLを接種した。粗パーム核油はミネラル培地へ添加する前に、オートクレーブ処理を行った。さらに、このミネラル培地を、18時間培養して、6Lの発酵槽に接種した。接種された前記カプリアビダス・ネカトールの形態を、発酵槽に移す前にチェックした(10%v/v)。培養培地の温度は30℃に維持しつつ、培地のpHについては3MのNaOH及び3MのHPOの添加により7.0±0.1に設定した。攪拌は、Rushtonタービンを用いて200~900rpm攪拌速度で攪拌を行った。フィルターカートリッジ(Sartorius stedim、Germany)を通して、1vvm(空気体積/発酵槽の作業体積/分)で空気を供給し、溶存酸素濃度を40%以上に維持した。MgSO・7HOは培養後18時間目に、尿素は6時間ごとに添加した。微量元素は植え付けの間及び培養の18時間目に1mLを添加した。粗パーム核油は、微生物による油の消費に応じて、6時間ごとに10g/L~20g/Lの濃度で供給した。細菌培養物の残留油分、湿潤細胞重量および光学密度を決定するために、サンプリングを6時間ごとに行った。培養時間は、細菌の増殖に応じて48時間から72時間の範囲であった。
【0060】
・P(3HB-co-3HHx)の生物学的回収
35日齢のミールワーム(ダニカムシの幼虫、Tenebrio molitor)を周囲温度(約25℃)でプラスチック容器で飼育した。前記飼育したミールワーム100gに対して、上記P(3HB-co-3HHx)を含む乾燥微生物を給餌した(図3)。給餌された微生物の量は、ミールワームの体重に基づいて供給した(体重の1日あたり5%)。新しいバッチの微生物を供給する前に、ミールワームの糞便ペレット(図4)を回収し、0.50mmおよび0.25mmのサイズのメッシュを用いて篩い分けした。二重ふるい分けを行うことにより、他の不純物を取り除き、その後の洗浄工程を容易にすることができた。
【0061】
・蒸留水を用いたP(3HB-co-3HHx)の精製
約10%(w/v)の糞便ペレットを水道水に加え、100g/Lの濃度とした。糞便ペレット懸濁液を数回すすぎ、上清を捨てる前に沈降させた。上清を除去し、回収したP(3HB-co-3HHx)を一定質量になるまで50℃のオーブンで乾燥させた。
さらに、前記乾燥させたP(3HB-co-3HHx)を0.25M NaOH中で1時間すすぎ、混合物を沈降させ、上清を除去し、回収したペレットをpHが9.5未満に低下するまで水道水中でさらに1時間撹拌した。次いで、回収されたP(3HB-co-3HHx)顆粒を50℃のオーブンで一定質量になるまで乾燥させ、目的とするP(3HB-co-3HHx)を回収した。
【0062】
<実施例2~5>
実施例2~5は、以下の表1に記載の微生物及び培地を使用してP(3HB-co-3HHx)を産生し、表1に記載の精製法でP(3HB-co-3HHx)を回収した。
【0063】
・平均分子量及び分子量分布の測定
上記で得られたポリヒドロキシアルカン酸について、平均分子量(数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw))の測定を行い、分子量分布D(Mw/Mn)を算出した。
平均分子量の測定は、GPC測定装置(Shodex K-806Mカラムを備えたAgilent 1200シリーズGPC)を用いて測定した。ポリマー試料は、1.0mg/mLの濃度でクロロホルムに溶解した。溶離液は、クロロホルムを用い、流速は、0.8mL/minとした。また、ポリマー試料の注入量は、50μLとした。標準試料としては、標準ポリスチレンを使用した。
【0064】
【表1】
【0065】
・分解温度の測定
上記で得られたポリヒドロキシアルカン酸について、分解温度の測定を行った。
分解温度の測定は、示差熱天秤装置(リガク社製TG-DTA8122)を用い、示差熱-熱重量同時分析(TG-DTA)法で行った。測定条件としては、空気中にて室温から300℃まで毎分5℃で昇温させて測定した。
実施例1~5のいずれの試料とも、分解温度は270-280℃であり、3HHxの含有割合と分解温度についての相関性はみられなかった。
【0066】
・溶融温度の測定
上記で得られたポリヒドロキシアルカン酸について、溶融温度の測定を行った。
溶融温度の測定は、示差走査熱量測定装置(リガク社製DSCvesta)を用い、示差走査熱量測定(DSC)法で行った。測定条件としては、空気中にて室温から230℃まで毎分5℃で昇温させた(1st)。その後、室温まで毎分20℃で降温し、室温にて24時間静置後、再び230℃まで毎分5℃で昇温して(2nd)測定を行った。それぞれの溶融温度は、116.3℃(実施例1)、104.7℃(実施例2)、71.5℃(実施例4)であり、PHHxの割合が高くなるにつれ、溶融温度は低くなる傾向となることがわかった。
【0067】
・メルトフローレートの測定
上記で得られたポリヒドロキシアルカン酸について、メルトフローレートの測定を行った。測定装置として、メルトインデクサ装置(東洋精機社製インデクサ2A-C)を用い、メルトインデクサ法で行った。使用した重りは1835g、試料は5g、予熱時間は330秒、ホールド時間は30秒、1回のカット時間(t)20秒、切り取り片の重量(m)は3つの切り取り片の重量の平均値とし、得られた結果を下記数式(1)に入れメルトフローレート(MFR)を得た。結果を表2に示す。
【0068】
【数1】
【0069】
【表2】
【0070】
表2の結果より、3HHxの含有割合が大きくなるにつれて、メルトフローレートは大きくなることがわかった。さらに、3HHxの含有割合が20モル%であるポリヒドロキシアルカン酸は、加工可能温度域が最も広く、加工環境の向上がより期待できる。
【0071】
・フィルムの作成
上記で得られた実施例4のポリヒドロキシアルカン酸(3HHx30モル%含有)を用いてフィルムを作成した(図5)。
フィルムの作成方法はTダイ押出シート成形機(プラスチック工学研究所製)を用いて、下記の条件で成形を行った。
成形温度 120℃
ロール設定温度 30℃
スクリュ回転数 20rpm
引取速度 0.3m/min
【0072】
成形されたフィルムは、直後にはかなり強い接着性を示したが暫くした後に、自立フィルムとなった。このフィルムの溶融温度を上記溶融温度の測定と同一条件で測定したところ、101.1℃であった。この結果より、加工前に比べ溶融温度が約30℃高くなることがわかった。
【0073】
・不織布の作成
上記で得られた実施例2のポリヒドロキシアルカン酸(3HHx20モル%含有)を用いて不織布を作成した(図6)。図6(A)は、不織布を撮影した写真であり、図6(B)は、不織布のSEM写真である。
不織布の作成方法は小型メルトブロー試験装置「MB-T100SW」(新和工業株式会社製)を用いて、下記の条件で作成した。
ポリマー配管温度:185℃
ノズルブロック温度:195℃
熱風温度:200℃
風量:633L/min
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸は、溶融流動性が高く、加工性に優れているため、フィルムや不織布等に成形体の作成を容易に行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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