(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093429
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】軸受の潤滑構造
(51)【国際特許分類】
F16C 33/66 20060101AFI20220616BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20220616BHJP
F16C 13/02 20060101ALI20220616BHJP
F16N 7/14 20060101ALI20220616BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
F16C33/66 Z
F16C19/06
F16C13/02
F16N7/14
F16N31/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070859
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2019147705の分割
【原出願日】2019-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 光明
(72)【発明者】
【氏名】結城 拓哉
(57)【要約】
【課題】液中で使用する際に、ゴミ等による軸受の回転不良の発生を防止することができる軸受の潤滑構造を提供すること。
【解決手段】軸受支持部材は、液中ロール(ロール)の両側の端面から突出する一対の軸部材を回転可能に軸支するセラミックベアリング(軸受)を支持する。そして、軸受支持部材のうち軸部材の端部側には、軸受支持部材の内部に連通する孔部を有する蓋部が設けられる。孔部からは分岐配管(給液部)によって液体が給液される。孔部から流入した液体は、セラミックベアリングを通過して、軸受支持部材の液中ロール側から貯液槽に排出される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯液槽に貯留した液体の中で使用されるロールの両側の端面から突出する一対の軸部材を軸支する軸受の潤滑構造であって、
前記軸部材を回転可能に軸支する軸受と、
前記軸受を支持する軸受支持部材と、
前記軸受支持部材のうち前記軸部材の端部側に設けられて、前記軸受支持部材の内部に連通する孔部を有する蓋部と、
前記孔部から流入した前記液体が、前記軸受を通過して、前記軸受支持部材の前記ロール側から前記貯液槽に排出されるように前記液体を給液する給液部と、
を備える軸受の潤滑構造。
【請求項2】
前記給液部から給液された前記液体は、前記ロールの両端部とそれぞれ対向する位置に形成された開口部から、前記貯液槽に排出される、
請求項1に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項3】
前記給液部は、前記ロールが回転している状態において、給液された前記液体が、前記貯液槽に排出される圧力で給液する、
請求項1又は請求項2に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項4】
前記給液部は、前記軸部材の両端部側から、少なくとも当該軸部材の軸心位置に給液する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項5】
前記給液部は、更に、前記軸心位置に関して対称な位置に設けられる、
請求項4に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項6】
前記軸部材の端部は、前記給液部から給液された前記液体を、前記貯液槽まで偏りなく導く流束均一化部を備える、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項7】
前記流束均一化部は、前記軸部材の端部を凹状に切り欠いたものである、
請求項6に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項8】
前記流束均一化部は、前記軸部材の端部を凸状に成形したものである、
請求項6に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項9】
前記軸部材の端部と対向する前記蓋部の内面は、前記給液部から給液された前記液体を、前記貯液槽まで偏りなく導く流束均一化部を備える、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項10】
前記流束均一化部は、前記軸部材の端部と対向する前記蓋部の内面を、前記孔部の出口から前記蓋部の周縁に向かって、厚みが増すように円錐状に成形したものである、
請求項9に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項11】
貯液槽に貯留した液体の中で使用されるロールの両側の端面から突出する一対の軸部材を軸支する軸受の潤滑構造であって、
前記軸部材を回転可能に軸支する軸受と、
前記軸受を支持する軸受支持部材と、
前記軸受支持部材のうち前記軸部材の端部側に設けられて、前記軸受支持部材を封止する蓋部と、
前記軸受支持部材のうち前記ロール側に設けられて、前記軸受支持部材と前記軸部材との間を密閉する密閉部材と、を備え、
前記蓋部は、前記軸受支持部材の内部と外部とを連通する第1の孔部と第2の孔部と、
を備える軸受の潤滑構造。
【請求項12】
前記第1の孔部は、前記蓋部において、前記軸部材の軸心位置よりも下方に形成されて、
前記第2の孔部は、前記蓋部において、前記軸心位置よりも上方に形成される、
請求項11に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項13】
前記第1の孔部及び前記第2の孔部は、前記液体の中のゴミを捕獲するフィルタを備える、
請求項11又は請求項12に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項14】
前記軸受は、セラミックベアリングである、
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の軸受の潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中で使用するロール等に用いられる軸受の潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックフィルムや紙や金属箔等のウェブ状の柔軟媒体を搬送する手段としてロールが使用されている。ロールは円筒形状をなして、両端を転がり軸受等で回転可能に支持される構造を有する。
【0003】
前記した柔軟媒体に何らかの処理を施すために、液体中にロールを配置して、当該ロールによって柔軟媒体を液体中で走行させる場合がある。このような場合、一般的な軸受鋼製による転がり軸受や、ステンレス製の転がり軸受では、液体によって腐食を起こす場合があるため、例えば特許文献1では、セラミック製の転がり軸受(セラミックベアリング)を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液体中にゴミがあった場合には、セラミックベアリングの内部にゴミが入って回転抵抗が増大する可能性があった。また、ゴミの影響によってセラミックベアリングが回転不良を起こす可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、液中で使用する際に、ゴミ等による軸受の回転不良の発生を防止することができる軸受の潤滑構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る軸受の潤滑構造は、貯液槽に貯留した液体の中で使用されるロールの両側の端面から突出する一対の軸部材を軸支する軸受の潤滑構造であって、前記軸部材を回転可能に軸支する軸受と、前記軸受を支持する軸受支持部材と、前記軸受支持部材のうち前記軸受支持部材の内部に連通する孔部を有する蓋部と、前記孔部から流入した前記液体が、前記軸受を通過して、前記軸受支持部材の前記ロール側から前記貯液槽に排出されるように前記液体を給液する給液部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る軸受の潤滑構造は、貯液槽に貯留した液体の中で使用されるロールの両側の端面から突出する一対の軸部材を軸支する軸受の潤滑構造であって、前記軸部材を回転可能に軸支する軸受と、前記軸受を支持する軸受支持部材と、前記軸受支持部材のうち前記軸部材の端部側に設けられて、前記軸受支持部材を封止する蓋部と、前記軸受支持部材のうち前記ロール側に設けられて、前記軸受支持部材と前記軸部材との間を密閉する密閉部材と、を備え、前記蓋部は、前記軸受支持部材の内部と外部とを連通する第1の孔部と第2の孔部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る軸受の潤滑構造は、液中で使用する際に、ゴミ等による軸受の回転不良の発生を防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造を使用したロールの使用例の一例を示す正面図。
【
図2】第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造を使用したロールの使用例の一例を示す側面図。
【
図3】第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造の一例を示す断面図。
【
図4】第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造の一例を示す正面図。
【
図6】孔部から給液した液体の流束を均一にする構造の一例を示す断面図。
【
図7】第2の実施形態に係る軸受の潤滑構造の一例を示す断面図と正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下に、本開示に係る軸受の潤滑構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[軸受の概略構成の説明]
図1と
図2を用いて、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造を使用したロールの使用例を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造を使用したロールの使用例の一例を示す正面図である。
図2は、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造を使用したロールの使用例の一例を示す側面図である。
【0013】
図1に示すフィルム処理装置5は、複数の液中ロール18と複数の気中ロール24とに交互に架け渡されたフィルム26を矢印Bの方向、すなわちx軸正方向に搬送する。搬送されたフィルム26は、貯液槽30に貯留した薬液等の液体40に浸漬される。これにより、フィルム26には所定の表面処理がなされる。液中ロール18は、液体40に浸漬された状態で使用されるため、主要な構成要素は、耐腐食性の高い材質、例えばステンレス等で形成される。なお液中ロール18は、本開示におけるロールの一例である。
【0014】
液中ロール18及び気中ロール24は、フリーロールであり、フィルム26の搬送方向の下流側に設置された非図示の巻取軸の回転に応じて搬送されるフィルム26に連れ添って回転する。なお、いずれかの気中ロール24をモータ等で回転駆動することによって、フィルム26を搬送してもよい。
【0015】
気中ロール24は、貯液槽30の上部に設置された軸受支持部材27aに支持された非図示の軸受によって回転可能に軸支されている。詳しくは後述する。
【0016】
図1において、貯液槽30には、配管12から分岐した分岐配管12aによって、液体40が補給される。また、配管12から分岐した分岐配管12bは、バルブ14で流量調整された液体40が、軸受支持部材34aに支持された、液中ロール18を回転可能に軸支する非図示の軸受に給液される。軸受支持部材34aは、貯液槽30の底面に設置された取付部材22aに固定されている。
【0017】
軸受支持部材34aの内部の軸受に給液する液体40の流量は、操作者が流量計16を見ながらバルブ14の開度を変更することによって調整する。もちろん、流量計16が検出した流量が所定の範囲になるように、バルブ14の開度をコンピュータ制御によって自動調整してもよい。なお、軸受支持部材34aの内部に給液された液体40が軸受を潤滑するが、その際の液体40の流れについては後述する。
【0018】
貯液槽30内の液体40には、搬送中のフィルム26の表面に付着したゴミが溜まる。そのため、貯液槽30は、溜まったゴミを除去する循環配管を備える。すなわち、液体40はポンプ32で汲み上げられて、フィルタ33によって濾過される。そして、必要に応じて、熱交換器43によって適温になるまで加熱されて、貯液槽30に戻される。また、貯液槽30は、液体40のオーバーフローを防止するため、所定量を超えた液体40を排液する排出口29を備えている。
【0019】
次に、
図2を用いて、フィルム処理装置5の構造を側面方向から説明する。
図2は、フィルム処理装置5を、
図1の切断位置A-Aで切断してx軸正側から見た側面図である。
【0020】
図2に示すように、気中ロール24は、両側の端面24a,24bから突出する一対の軸部材25a,25bを備える。軸部材25a,25bは、それぞれ軸受支持部材27a,27bに内蔵された非図示の軸受によって、回転可能に軸支される。軸受支持部材27a,27bに内蔵された軸受は、例えば、一般的な転がり軸受に用いられるベアリングである。なお、軸受支持部材27a,27bは、貯液槽30の筐体の上端に設置された取付部材31a,31bに固定されている。なお、軸受支持部材27a,27bにはグリース等の潤滑剤が封入されており、軸受は当該潤滑剤によって潤滑される。
【0021】
一方、液中ロール18は、両側の端面18a,18bからそれぞれ突出する一対の軸部材19a,19bを備える。軸部材19a,19bは、それぞれ軸受支持部材34a,34bに内蔵された非図示の軸受によって、回転可能に軸支される。軸受支持部材34a,34bは、貯液槽30の底面に設置された取付部材22a,22bに固定されている。軸受支持部材34a,34bに内蔵された軸受の構造は後述する。
【0022】
軸受支持部材34a,34bには、それぞれ、前記した分岐配管12bが接続される。そして、当該分岐配管12bを介して、軸受支持部材34a,34bに液体40が給液される。
【0023】
なお、
図1,
図2の例では、配管12から分岐した分岐配管12aによって、軸受支持部材34a,34bに液体40を給液しているが、給液方法はこの限りではない。すなわち、前記した循環配管を熱交換器43の下流側で分岐して、軸受支持部材34a,34bに給液してもよい。
【0024】
[軸受の潤滑構造の説明]
次に、
図3,
図4を用いて、液中ロール18の軸受の潤滑構造を説明する。
図3は、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造の一例を示す断面図である。
図4は、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造の一例を示す正面図である。
【0025】
図3は、
図2の軸受支持部材34bの周辺のyz断面図である。軸受支持部材34bは、外側ハウジングを形成する蓋部37bと、ベアリングケース35bと、内側ハウジング28bとを備える。ベアリングケース35bは円環状の形状をなして、内側に、軸部材19bを回転可能に軸支するセラミックベアリング36b(本開示における軸受の一例)を支持する。セラミックベアリング36bは、例えばジルコニア(窒化ケイ素)で形成されており、耐腐食性が高く、液中で使用可能である。
【0026】
蓋部37bは、
図4に示すように、4本のボルト41によって、ベアリングケース35b、及び
図3に示す内側ハウジング28bに締結される。
【0027】
また、
図3に示すように、液中ロール18の端面18bから突出する軸部材19bは、セラミックベアリング36bに挿通される。そして、軸部材19bの端部19cは、C字形状の軸止め輪38によって抜け止めされる。
【0028】
軸受支持部材34bは、セラミックベアリング36b(軸受)を支持するとともに、軸部材19bの外周及び端部19cとの間の間隙部44と、当該間隙部44と連通して貯液槽30に貯留された液体40と面する開口部42と、を形成する。
【0029】
蓋部37bの中心、すなわち、セラミックベアリング36bによって軸支される軸部材19bの軸心位置付近には、分岐配管12bが接続される孔部39が形成される。分岐配管12bを通して孔部39から流入した液体40は、セラミックベアリング36b(軸受)を通過して、軸受支持部材34bの液中ロール18側において、軸受支持部材34bと軸部材19bとの間に形成された開口部42から貯液槽30に排出される。なお、分岐配管12bは、本開示における給液部の一例である。
【0030】
分岐配管12bから給液された液体40の流れを、より具体的に説明する。孔部39から給液された液体40(
図3の矢印F1)は、軸部材19bの端部19cに突き当たった後で、端部19cの半径方向に沿って放射状に拡散する(
図3の矢印F2)。その後、給液された液体40は、軸部材19bの外周に沿って開口部42に至る(
図3の矢印F3)。
【0031】
フィルム26の搬送に伴って液中ロール18が回転すると、液中ロール18の回転に伴って貯液槽30に貯留された液体40が撹拌される。そして、攪拌された液体40は、渦を形成して、開口部42から間隙部44の内部に浸入しようとする。このとき、孔部39から給液される液体40は、貯液槽30内の液体40が開口部42から間隙部44に流入するのを阻止する勢い、すなわち、給液された液体40が開口部42から排出される圧力(液圧)で給液される。
【0032】
液中ロール18の回転速度が定まれば、開口部42から間隙部44に浸入する液体40の圧力Pa(液圧)はある程度予測することができる。したがって、開口部42から間隙部44への液体40の浸入を阻止するためには、孔部39から給液する液体40の圧力Pb(液圧)を、Pb>Paになるように設定すればよい。液中ロール18の回転速度は、フィルム26の搬送速度から一意に求めることができるため、フィルム26の搬送速度に応じて、孔部39から給液すべき液体40の圧力Pbの最小値を定めることができる。すなわち、予めフィルム26の搬送速度と圧力Paとの関係、及び流量計16が計測する液体40の流量と圧力Pbとの関係を測定しておくことによって、フィルム26の搬送速度と、Pb>Paになるための液体40の流量との対応表を作成することができる。フィルム処理装置5の操作者は、当該対応表を参照して、フィルム26の搬送速度に応じた流量の液体40を給液するように、流量計16を見ながらバルブ14の開度を変更する。そして、孔部39から圧力Pbで液体40を給液するように設定する。
【0033】
なお、液中ロール18のもう一方の軸部材19a(
図2参照)を軸支する軸受支持部材34aも、前記した軸受支持部材34bと同じ構造を有するため、説明は省略する。すなわち、軸受支持部材34aは、いずれも非図示の蓋部37aと、ベアリングケース35aと、内側ハウジング28aとを備えて、内部にセラミックベアリング36aを支持する。
【0034】
[給液部の別の構造の説明]
図5は、給液部の他の構造の一例を示す正面図である。
図5に示す蓋部37bは、3箇所の孔部39を備える。孔部39には、それぞれ分岐配管12b,12c,12dを通して、ほぼ同量の液体40が、ほぼ同等の圧力で給液される。
【0035】
図5において、2本の分岐配管12c,12dは、分岐配管12bが接続された蓋部37bの中心位置に関して対称な位置に接続される。これによって、間隙部44には液体40が均一に給液されるため、開口部42に向かう均一な液体40の流れが形成される。
【0036】
[実施形態の変形例]
次に、
図6を用いて、実施形態の変形例を説明する。
図6は、孔部から給液した液体の流束を均一にする構造の一例を示す断面図である。
【0037】
図6(a)は、蓋部37bの内面37cを、孔部39の出口から蓋部37bの周縁に向かって、円錐状に削り取って成形した例である。したがって、蓋部37bの内面37cは、孔部39の出口から蓋部37bの周縁に向かって、徐々に厚みが増している。
図6(a)において、孔部39から給液された液体40(
図6(a)の矢印F1)は、軸部材19bの端部19cに突き当たった後、内面37cに沿って放射状に均一に流れる(
図6(a)の矢印F2)。したがって、液体40は、軸部材19bの外周に沿って、開口部42まで偏りなく導かれる。すなわち、内面37cは、給液された液体40の流れを均一にする流束均一化部を形成する。
【0038】
図6(b)は、軸部材19bの端部19dを、凹状に切り欠いた例である。
図6(b)において、孔部39から流入した液体40(
図6(b)の矢印F1)は、軸部材19bの端部19dに突き当たった後、端部19dの半径方向に向きを変えて放射状に均一に流れる(
図6(b)の矢印F2)。したがって、液体40は、軸部材19bの外周に沿って、開口部42まで偏りなく導かれる。すなわち、軸部材19bの端部19dは、給液された液体40の流れを均一にする流束均一化部を形成する。
【0039】
図6(c)は、軸部材19bの端部19eを、凸状に成形した例である。
図6(c)において、孔部39から流入した液体40(
図6(c)の矢印F1)は、軸部材19bの端部19eに突き当たった後、端部19eの半径方向に向きを変えて放射状に均一に流れる(
図6(c)の矢印F2)。したがって、液体40は、軸部材19bの外周に沿って、開口部42まで偏りなく導かれる。すなわち、軸部材19bの端部19eは、給液された液体40の流れをできるだけ均一にする流束均一化部を形成する。
【0040】
なお、
図6(a)の構成と
図6(b)の構成とを併用してもよい。また、
図6(a)の構成と
図6(c)の構成とを併用してもよい。
【0041】
以上説明したように、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸受支持部材34a,34bは、液中ロール18(ロール)の両側の端面18a,18bから突出する一対の軸部材19a,19bを回転可能に軸支するセラミックベアリング36a,36b(軸受)を支持する。そして、軸受支持部材34a,34bのうち軸部材19a,19bの端部側には、軸受支持部材34a,34bの内部に連通する孔部39を有する蓋部37a,37bが設けられる。孔部39からは分岐配管12b(給液部)によって液体40が給液される。孔部39から流入した液体40は、セラミックベアリング36a,36bを通過して、軸受支持部材34a,34bの液中ロール18側から貯液槽30に排出される。したがって、セラミックベアリング36a,36b(軸受)には、液体40の中のゴミが浸入しないため、軸受の回転不良の発生を防止することができる。これにより、セラミックベアリング36a,36bの交換のための機械停止時間が削減できる。また、液中ロール18の回転抵抗が小さくなるため、液中ロール18とフィルム26との滑りを防止することができ、これによってフィルム26に傷がつかないため、フィルム26の品質を向上させることができる。さらに、セラミックベアリング36a,36bは、グリース等の潤滑剤を使用しないため、貯液槽30に貯留した液体40の汚染を防止することができ、これによってフィルム26の品質の低下を防止することができる。
【0042】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、分岐配管12b(給液部)から給液された液体40は、液中ロール18(ロール)の両側の端面18a,18bとそれぞれ対向する位置に設けられた開口部42から貯液槽30に排出される。したがって、液中ロール18の回転に伴って渦を形成した貯液槽30内の液体40が、開口部42から間隙部44(軸受支持部材34a,34bの内部)へ流入するのを、確実に阻止することができる。
【0043】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、分岐配管12b(給液部)は、孔部39に、液中ロール18が回転している状態において、給液された液体40が、貯液槽30に排出される圧力で給液する。したがって、貯液槽30に貯留した液体40が間隙部44に流入しないため、液体40の中のゴミが、軸受支持部材34a,34bの内部へ浸入するのを阻止することができ、セラミックベアリング36a,36bの回転抵抗の増大と、回転不良とを防止することができる。
【0044】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、分岐配管12b(給液部)は、孔部39を通して、軸部材19a,19bの端部19c側から、少なくとも軸部材19a,19bの軸心位置に液体40を給液する。したがって、給液された液体40は、軸部材19a,19bの軸心位置に突き当たった後で、軸部材19a,19bの端部19c及び外周部に沿って均一に進行するため、孔部39から開口部42に至る液体40の均一な流れを作り出すことができ、これによって、貯液槽30に貯留した液体40が、開口部42から流入するのを阻止することができる。
【0045】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、分岐配管12c,12d(給液部)は、軸部材19a,19bの軸心位置に関して対称な位置にそれぞれ設置される。したがって、孔部39から開口部42に至る液体40の均一な流れを作り出すことができ、これによって、開口部42からの液体40の流入を阻止することができる。
【0046】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸部材19bの端部19d,19eは、分岐配管12b(給液部)から給液された液体40を、貯液槽30まで偏りなく導く流束均一化部を形成する。したがって、貯液槽30から軸受支持部材34a,34bの内部への液体40の流入を確実に阻止することができる。
【0047】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸部材19bの端部19dは、凹状に切り欠かれることによって流束均一化部を形成する。したがって、分岐配管12b(給液部)から給液された液体40を、軸部材19bの外周に沿って、開口部42まで偏りなく導くことができる。
【0048】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸部材19bの端部19eは、凸状に成形されることによって流束均一化部を形成する。したがって、分岐配管12b(給液部)から給液された液体40を、軸部材19bの外周に沿って、開口部42まで偏りなく導くことができる。
【0049】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、蓋部37bの、軸部材19bの端部19cと対向する内面37cは、分岐配管12b(給液部)から給液された液体40を、貯液槽30まで偏りなく導く流束均一化部を形成する。したがって、貯液槽30から軸受支持部材34a,34bの内部への液体40の流入を確実に阻止することができる。
【0050】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸部材19bの端部19cと対向する蓋部37bの内面37cは、孔部39の出口から蓋部37bの周縁に向かって、厚みが増すように円錐状に成形されることによって流束均一化部を形成する。したがって、分岐配管12b(給液部)から給液された液体40を、軸部材19bの外周に沿って、開口部42まで偏りなく導くことができる。
【0051】
また、第1の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸受にはセラミックベアリング36a,36bが使用される。したがって、液中で使用する際に、高い耐久性を発揮させることができる。
【0052】
(第2の実施形態)
以下に、本開示に係る軸受の潤滑構造の第2の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態で説明した分岐配管12b(給液部)を備えない軸受の潤滑構造の例である。
【0053】
図7は、第2の実施形態に係る軸受の潤滑構造の一例を示す断面図と正面図である。すなわち、
図7(a)は、軸受支持部材45bのyz断面図である。
図7(b)は、軸受支持部材45bをy軸負側から見た正面図である。軸受支持部材45bは、外側ハウジングを形成する蓋部50bと、ベアリングケース35bと、内側ハウジング28bとを備える。ベアリングケース35bは円環状の形状をなして、内側に、軸部材19bを回転可能に軸支するセラミックベアリング36b(本開示における軸受の一例)を支持する。セラミックベアリング36bは、例えばジルコニア(窒化ケイ素)で形成されており、耐腐食性が高く、液中で使用可能である。
【0054】
蓋部50bは、
図7(b)に示すように、4本のボルト41によって、ベアリングケース35b及び内側ハウジング28bに締結される。
【0055】
液中ロール18の端面18bから突出する軸部材19bは、セラミックベアリング36bに挿通される。そして、軸部材19bの端部19cは、C字形状の軸止め輪38によって抜け止めされる。
【0056】
内側ハウジング28bと軸部材19bとの間隙には、オイルシール60(密閉部材の一例)が装着される。オイルシール60は、内側ハウジング28bと軸部材19bとの間隙、すなわち、第1の実施形態における開口部42(
図3参照)を密閉する。なお、オイルシール60は、貯液槽30の液体40が、オイルシール60を押圧する方向の力を作用させた際に、オイルシール60自身が撓むことによって、軸部材19bに押し付けられる方向の力を発生させる向きに装着される。これによって、オイルシール60は、内側ハウジング28bと軸部材19bとの間隙を確実に密閉する。
【0057】
すなわち、軸受支持部材45bの内部には、蓋部50bと、ベアリングケース35bと、内側ハウジング28bと、オイルシール60と、によって密閉された空間、すなわち間隙部44が形成される。
【0058】
なお、蓋部50bにおいて、軸部材19bの軸心位置よりも下方(Z軸負側)、すなわち、軸受支持部材45a,45bを貯液槽30に浸漬した際に、液体40の液面から遠い位置には、
図7(b)に示すように、導入口54(本開示における第1の孔部の一例)が形成される。導入口54は、軸受支持部材45bの内部と外部、すなわち、間隙部44と貯液槽30とを連通させる。導入口54は、貯液槽30から間隙部44に液体40を導入する。なお、導入口54には、例えばステンレス等の多孔質金属の粉体を焼結したフィルタ53を内蔵したフィルタケース51が装着される。フィルタ53は、液体40とともに間隙部44に導入される、例えば10μm以上のゴミを捕獲する。
【0059】
また、蓋部50bにおいて、軸部材19bの軸心位置よりも上方(Z軸正側)、すなわち、軸受支持部材45a,45bを貯液槽30に浸漬した際に、液体40の液面から近い位置には、
図7(b)に示すように、排出口56(本開示における第2の孔部の一例)が形成される。排出口56は、軸受支持部材45bの内部と外部、すなわち、間隙部44と貯液槽30とを連通させる。排出口56は、間隙部44から貯液槽30に空気を排出する。なお、排出口56には、例えばステンレス等の多孔質金属の粉体を焼結したフィルタ53を内蔵したフィルタケース52が装着される。フィルタ53は、間隙部44から貯液槽30に排出される、例えば10μm以上のゴミを捕獲する。
【0060】
導入口54と排出口56との作用によって、液中ロール18を貯液槽30に浸漬した際に、軸受支持部材45bの間隙部44は液体40で満たされる。そして、セラミックベアリング36bは、液体40によって潤滑される。
【0061】
このとき、間隙部44に10μm以上のゴミは流入しないため、セラミックベアリング36bが回転不良を起こすことがない。さらに、蓋部50bの内側にグリース等の潤滑油は封入されないため、液体40を汚染することもない。
【0062】
なお、導入口54及び排出口56の設置箇所は、それぞれ1箇所に限定されるものではない。すなわち、複数の導入口54及び複数の排出口56を設置してもよい。
【0063】
液中ロール18のもう一方の軸部材19a(
図2参照)を軸支する軸受支持部材45aも、前記した軸受支持部材45bと同じ構造を有するため、説明は省略する。すなわち、軸受支持部材45aは、いずれも非図示の蓋部50aと、ベアリングケース35aと、内側ハウジング28aと、オイルシール60とを備えて、内部にセラミックベアリング36aを支持する。そして、蓋部50aは、蓋部50bと同様に、導入口54と排出口56を備える。
【0064】
以上説明したように、第2の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸受支持部材45a,45bは、液中ロール18(ロール)の両側の端面18a,18bから突出する一対の軸部材19a,19bを回転可能に軸支するセラミックベアリング36a,36b(軸受)を支持する。そして、軸受支持部材45a,45bのうち、軸部材19a,19bの端部側は蓋部50a,50bで封止されるとともに、液中ロール18側は、軸受支持部材45a,45bと軸部材19a,19bとの間がオイルシール60(密閉部材)で密閉される。そして、蓋部50a,50bは、軸受支持部材45a,45bの内部と外部とを連通する導入口54(第1の孔部)と排出口56(第2の孔部)とを備える。これによって、軸受支持部材45a,45bを貯液槽30に浸漬した際に、貯液槽30に貯留した液体40が導入口54から軸受支持部材45a,45bの内部に導入されて、軸受支持部材45a,45bの内部に溜まった空気が排出口56から排出される。そのため、軸受支持部材45a,45bの内部は、導入口54から導入された液体40で満たされて、セラミックベアリング36a,36b(軸受)は液体40によって潤滑される。したがって、セラミックベアリング36a,36b(軸受)の回転不良の発生を防止することができる。これにより、セラミックベアリング36a,36bの交換のための機械停止時間が削減できる。また、液中ロール18の回転抵抗が小さくなるため、液中ロール18とフィルム26との滑りを防止することができ、これによってフィルム26に傷がつかないため、フィルム26の品質を向上させることができる。さらに、セラミックベアリング36a,36bは、グリース等の潤滑剤を使用しないため、液体40の汚染を防止することができ、これによってフィルム26の品質の低下を防止することができる。
【0065】
また、第2の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、導入口54(第1の孔部)は、蓋部50bにおいて、軸部材19bの軸心位置よりも下方に形成されて、排出口56(第2の孔部)は、蓋部50bにおいて、軸部材19bの軸心位置よりも上方に形成される。これによって、軸受支持部材45a,45bを液体40の中に浸漬した際に、間隙部44には導入口54から液体40が導入されて、排出口56からは間隙部44の内部の空気が排出されるため、間隙部44の内部を液体40で確実に満たすことができる。
【0066】
また、第2の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、導入口54及び排出口56は、液体40の中のゴミを捕獲するフィルタ53を備える。したがって、間隙部44にゴミが浸入しないため、セラミックベアリング36a,36b(軸受)の回転不良の発生を防止することができる。
【0067】
また、第2の実施形態に係る軸受の潤滑構造において、軸受にはセラミックベアリング36a,36bが使用される。したがって、液中で使用する際に、高い耐久性を発揮させることができる。
【符号の説明】
【0068】
5…フィルム処理装置、12b,12c,12d…分岐配管(給液部)、18…液中ロール(ロール)、19a,19b,25a,25b…軸部材、19c…端部、19d,19e…端部(流束均一化部)、24…気中ロール、26…フィルム、27a,27b,34a,34b,45a,45b…軸受支持部材、28a,28b…内側ハウジング、36a,36b…セラミックベアリング(軸受)、37a,37b,50a,50b…蓋部、37c…内面(流束均一化部)、39…孔部、40…液体、42…開口部、44…間隙部、51,52…フィルタケース、53…フィルタ、54…導入口(第1の孔部)、56…排出口(第2の孔部)、60…オイルシール(密閉部材)
【手続補正書】
【提出日】2022-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る軸受の潤滑構造は、貯液槽に貯留した液体の中で使用されるロールの両側の端面から突出する一対の軸部材を軸支する軸受の潤滑構造であって、前記軸部材を回転可能に軸支する軸受と、前記軸受を支持する軸受支持部材と、前記軸受支持部材のうち前記軸部材の端部側に設けられて、前記軸受支持部材を封止する蓋部と、前記軸受支持部材のうち前記ロール側に設けられて、前記軸受支持部材と前記軸部材との間を密閉する密閉部材と、を備え、前記蓋部は、前記軸受支持部材の内部と外部とを連通する第1の孔部と第2の孔部と、を備えることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯液槽に貯留した液体の中で使用されるロールの両側の端面から突出する一対の軸部材を軸支する軸受の潤滑構造であって、
前記軸部材を回転可能に軸支する軸受と、
前記軸受を支持する軸受支持部材と、
前記軸受支持部材のうち前記軸部材の端部側に設けられて、前記軸受支持部材を封止する蓋部と、
前記軸受支持部材のうち前記ロール側に設けられて、前記軸受支持部材と前記軸部材との間を密閉する密閉部材と、を備え、
前記蓋部は、前記軸受支持部材の内部と外部とを連通する第1の孔部と第2の孔部と、
を備える軸受の潤滑構造。
【請求項2】
前記第1の孔部は、前記蓋部において、前記軸部材の軸心位置よりも下方に形成されて、
前記第2の孔部は、前記蓋部において、前記軸心位置よりも上方に形成される、
請求項1に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項3】
前記第1の孔部及び前記第2の孔部は、前記液体の中のゴミを捕獲するフィルタを備える、
請求項1又は請求項2に記載の軸受の潤滑構造。
【請求項4】
前記軸受は、セラミックベアリングである、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の軸受の潤滑構造。