(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009344
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】ナノサイズのフィルタを伴う平面状導波路デバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 21/552 20140101AFI20220106BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N21/552
G01N21/17 N
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021172278
(22)【出願日】2021-10-21
(62)【分割の表示】P 2019547511の分割
【原出願日】2018-02-28
(31)【優先権主張番号】17158711.6
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【弁理士】
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】クレステンスン,アナス
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘダヤティ,メディ・ケシャバーズ
(72)【発明者】
【氏名】レビ,ウリエル
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA03
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB13
2G059DD12
2G059EE01
2G059PP10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】流体と相互作用するための平面状導波路デバイスが開示される。
【解決手段】平面状導波路デバイスPWDは、光閉じ込めを補助する導波路層WGLと、導波路層に入る光のイン結合のため、および導波路層からの光のアウト結合のための結合装置CPAと、流体FLDを収容するための流体ゾーンFZNと、導波路層の相互作用領域IARにおいて流体ゾーンおよび導波路層との間に配置される、フィルタ層FTLとを備える。フィルタ層は、流体が、導波路層によって誘導された光のエバネッセント場と相互作用するのを可能にするよう配置された、フィルタ開口部FOPを備える。フィルタ開口部は、規定のサイズよりも大きい粒子PARがエバネッセント場と相互作用するのを防止するよう適合される。フィルタ開口部は、導波路層によって誘導された光の伝播方向DOPに対して平行である長手方向を有する、線状開口部として配置される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体(FLD)と相互作用するための平面状導波路デバイス(PWD)であって、
光閉じ込めを補助するために導波路層(WGL)と、
前記導波路層(WGL)に入る光のイン結合、および前記導波路(WGL)からの光のアウト結合のための結合装置(CPA)と、
前記流体(FLD)を収容するための流体ゾーン(FZN)と、
前記流体ゾーン(FZN)、および前記導波路層(WGL)の相互作用領域(IAR)における前記導波路層(WGL)との間に配置される、フィルタ層(FTL)と、を備え、
前記フィルタ層(FTL)は、前記流体(FLD)が、前記導波路層(WGL)によって誘導された光のエバネッセント場と相互作用するのを可能にするよう配置された、フィルタ開口部(FOP)を備え、
前記フィルタ開口部(FOP)は、規定のサイズよりも大きい粒子(PAR)が、前記エバネッセント場と相互作用するのを防止するよう適合され、
前記フィルタ開口部(FOP)は、前記導波路層(WGL)によって誘導される光の伝播方向(DOP)に対して平行である長手方向を有する、線状開口部として配置される、平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項2】
前記フィルタ層(FTL)は第1の屈折率を有し、前記導波路層(WGL)は第2の屈折率を有し、前記第1の屈折率は前記第2の屈折率よりも、例えば少なくとも3パーセント低い、請求項1に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項3】
前記フィルタ開口部(FOP)は、10マイクロメートル以下の線間隔、例えば5マイクロメートル以下、例えば1マイクロメートル以下、例えば800ナノメートル以下、例えば200ナノメートル以下、例えば100ナノメートル以下の線間隔で画定される、請求項1または2に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項4】
前記結合装置(CPA)は、前記導波路層(WGL)に入る光をイン接合するためのイン結合要素(ICPA)、および前記導波路層(WGL)からの光をアウト結合するためのアウト結合要素(OCPA)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項5】
前記相互作用領域(IAR)は、前記イン結合要素(ICPA)と前記アウト結合要素(OCPA)との間に延びる、請求項4に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項6】
前記相互作用領域(IAR)は、前記イン結合要素(ICPA)と前記アウト結合要素(OCPA)との間に延び、さらには前記アウト結合要素(OCPA)の上に延びる、請求項4に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項7】
前記結合装置(CPA)は、前記相互作用領域(IAR)の少なくとも一部を越えて延び、例えば前記相互作用領域(IAR)の全体を越えて延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項8】
前記アウト結合要素(OCPA)は、格子などの分散要素を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項9】
光源(LSO)としてレーザデバイスをさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項10】
光源(LSO)として広帯域光源をさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項11】
CMOSセンサ、CCDセンサ、または光ダイオードアレイセンサなど、アレイベースの光センサ(LSE)をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項12】
光センサ(LSE)として光学分光計をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項13】
前記流体(FLD)は血液などの液体である、請求項1から12のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項14】
前記流体ゾーン(FZN)を形成する流体フローチャネルをさらに備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項15】
前記流体フローチャネルはフローセルである、請求項1から14のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項16】
前記フィルタ層(FTL)の反対側における前記導波路層(WGL)と当接するクラッド層をさらに備え、前記クラッド層は第3の屈折率を有し、前記第3の屈折率は、例えば少なくとも3パーセント、第2の屈折率よりも低い、請求項1から15のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【請求項17】
溶血を検出するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)の使用。
【請求項18】
光を流体(FLD)と相互作用させる方法であって、
導波路層(WGL)に入る光を結合させるステップと、
前記導波路層(WGL)の外側のエバネッセント場を形成する前記導波路層(WGL)内で、光を誘導するステップと、
誘導された光のエバネッセント場を前記流体(FLD)と相互作用させるステップと、
前記流体(FLD)が、前記導波路層(WGL)によって誘導された光のエバネッセント場と相互作用するのを可能にするよう配置された、フィルタ開口部(FOP)を備えるフィルタ層(FTL)を使用して、規定のサイズよりも大きい粒子(PAR)が前記エバネッセント場と相互作用するのを防止するよう、前記流体(FLD)を濾過するステップと、
前記導波路層(WGL)から出た相互作用された光を結合するステップと、を含み、
前記フィルタ開口部(FOP)は、前記導波路層(WGL)によって誘導される光の伝播方向(DOP)に対して平行である長手方向を有する線状開口部として配置される、方法。
【請求項19】
アウト結合された光の少なくとも1つの特性を測定するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記流体は、前記規定のサイズよりも大きい粒子(PAR)を備える、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から16のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイスを使用して実行される、請求項18から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
請求項18から21のいずれか一項に記載の方法によって動作可能なように適合される、請求項1から16のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面状導波路、特に小型化されたフィルタを伴う平面状導波路、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
流体と、導波路層からのエバネッセント場との間の相互作用を可能にする、様々な平面状導波路デバイスが当技術分野で知られている。1つの例が、米国特許出願公開第2012/0085894A1号に示されている。
【0003】
米国特許第7,200,311号は、表面感度が強調された内部反射赤外線導波路に関係する。複数のナノチャネルが、多重内部反射結晶の頂部における堆積層に形成され得る。堆積層の屈折率は、多重内部反射結晶の屈折率と実質的に類似し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0085894A1号公報
【特許文献2】米国特許第7,200,311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、既存の平面状導波路デバイスにはいくつかの課題がなお存在し、例えば光を誘導する効率、およびエバネッセント場との相互作用が改善され得る。さらに、広い用途範囲を有する堅牢なデバイスが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体と相互作用するための平面状導波路デバイスに関する。この平面状導波路デバイスは、光閉じ込めを補助するために導波路層と、導波路層に入る光のイン結合、および導波路層からの光のアウト結合のための結合装置と、流体を収容するための流体ゾーンと、流体ゾーン、および導波路層の相互作用領域における導波路層との間に配置されたフィルタ層と、を備え、上記のフィルタ層は、流体が、導波路層によって誘導された光のエバネッセント場と相互作用するのを可能にするよう配置された、フィルタ開口部を備え、上記のフィルタ開口部は、規定のサイズよりも大きい粒子が、上記のエバネッセント場と相互作用するのを防ぐよう適合され、上記のフィルタ開口部は、導波路層によって誘導される光の伝播方向に対して平行である長手方向を有する、線状開口部として配置される。
【0007】
本発明の1つの利点は、フィルタ開口部における流体とのエバネッセント相互作用によって、流体との選択的な相互作用が得られることであり得る。より詳細には、例えば流体と比べて粒子の相互作用の可能性が高い場合、流体内の粒子は相互作用を妨げることが多い。
【0008】
本発明の別の利点は、選択的な相互作用が、早く正確に得られることであり得る。流体との光学的相互作用によって、化学反応、濾過、もしくは分離を含むか、または要求する任意の代替の相互作用が、防止され得る。
【0009】
本発明の別の利点は、固体粒子が予め正確な測定を阻害または妨害している、別の問題を有する流体環境を感知することを含む、様々な用途に使用することができる非常に堅牢なデバイスを提供することである。さらに、光閉じ込めを補助するよう適合された導波路を利用することによって、望ましくない光学的漏洩が最小限に抑えられるか、または防止され得る。これは、特に粒子を含む流体において新たな適用範囲を広げ、本発明は事前に必要な予備濾過なしで、直接的な測定を提供し得る。
【0010】
本発明の顕著な利点は、様々な異なる環境のための多目的センサおよび相互作用デバイスが得られることである。有利には、導波路層は光閉じ込めを補助し、それによって光が、結合装置を介する以外で、導波路層から漏れるのを効果的に防ぎ、したがって同時に、フィルタ開口部以外で周囲の流体と相互作用するのを防止する。本発明によるフィルタ開口部の配置により、光と流体との間の相互作用は、フィルタ開口部に入るには大きすぎる粒子が除外される相互作用のみを可能にするよう、フィルタ開口部内に選択的に制限される。これは、高い度合いの選択性を促進させ、例えば、粒子が流体との相互作用を阻害し得る環境のためのセンサ、および相互作用デバイスを作る場合に有利であり、それによってより正確なデバイスをもたらす。詳細には、部分的にフィルタ開口部の向きにより、すなわち長手方向が導波路層に誘導される光の伝播方向と平行となる線状開口部として配置されたフィルタ開口部によって、および部分的に、例えば十分に低い屈折率を伴うフィルタ層を有することよる光閉じ込めによって、フィルタ層への光の結合が効果的に最小限に抑えられるか、または排除されることは有利である。したがって、エバネッセント場は、導波路層自体から、および/または、もし存在するなら導波路層とフィルタ層との間の中間層から延びるべきであるが、フィルタ層から、特にフィルタ開口部の外側のフィルタ層の部分からは延びなくてもよい。なぜならそれは、エバネッセント場と、フィルタ開口部に入るには大きすぎる粒子との間の相互作用を可能にすることになるからである。したがって本発明は、エバネッセント場と、フィルタ開口部に入るには大きすぎる流体内の粒子との間の相互作用を、有利に防止する。
【0011】
本発明の別の利点は、流体の組成に対して比較的小さい影響で、非破壊で選択的な相互作用が得られることであり得る。より詳細には、平面状導波路デバイスの対象となる流体は、その作用を受けた後に実質的に影響を受けず、流体の事前濾過が避けられ得る。
【0012】
別の利点は、規定のサイズよりも小さいいくらかの粒子が相互作用されるが、規定のサイズよりも大きい粒子が光との相互作用から効果的に除外される場合に、粒子との選択的な相互作用が成され得る、ということであり得る。
【0013】
流体との考えられる相互作用は、フィルタ開口部におけるエバネッセント場を介した、流体による光の吸収と、フィルタ開口部におけるエバネッセント場を介した、光による流体の励起と、アウト結合における流体とのエバネッセント場相互作用を介した、流体の屈折率測定と、を含む。さらに、光は可視光だけではなく、近赤外線を含む赤外線ならびに紫外線も含むことを広く理解されたい。
【0014】
さらに上記の利点は、本発明のフィルタ層を使用することによって比較的簡単な方法で得られる場合がある。
【0015】
この文脈において、光閉じ込めは、隣接する層すなわち上部の当接層および下方の当接層に向けた、導波路層内の光閉じ込めを示す。当然ながら、光閉じ込めは結合装置では働かない。なぜなら結合装置は、導波路層への光のイン結合、および導波路層からの光のアウト結合を効果的に実施するからである。例えば上部の当接フィルタ層(あるいは導波路層とフィルタ層との間に介在する別の当接層)、および下方の当接支持層などの隣接する層の材料の選択は、3層全ての屈折率が光閉じ込めを補助するものでなければならない。当接層における十分に低い屈折率は、光閉じ込めを保証する。光閉じ込めは、好ましくは少なくとも1つの光学モードが、導波路層内で補助されるようであるべきである。
【0016】
本明細書で使用する用語「平面状導波路デバイス」は、流体と相互作用するデバイスを意味するよう意図され、このデバイスは、相互作用光、すなわち流体と相互作用するための光を誘導するための、導波路層を組み込んでいる。導波路層を使用することによって、導波路デバイスは平面状の構成を得て、スラブ導波路デバイスと称されてもよい。
【0017】
本明細書で使用する用語「流体」は、液体または気体を意味するよう意図される。流体は、例えば血液、オイル、下水、もしくは流動食材料などの様々な液体、または様々な排気ガスなどの気体に使用され得る。
【0018】
本明細書で使用する用語「導波路層」は、適用可能な光の周波数のための導波路を形成する層を意味するよう意図される。通常、導波路層は、一方の側で上部クラッド層、および他方の側で下部クラッド層によって覆われる。クラッド層は、導波路層の屈折率よりも低い屈折率を有し、導波路層における光の誘導、すなわち光閉じ込めを促進させる。当然ながら、ここでの屈折率は、使用される光源に依拠した関連する波長を指す。
【0019】
本明細書で使用する用語「結合装置」は、導波路層に入る光、および出る光を結合する装置を意味するよう意図される。結合要素は、単一の結合要素であってよく、または例えば2つの結合要素である、導波路層に入る光を結合するためのイン結合要素、および導波路層から出る光を結合するためのアウト結合要素から構成され得る。結合装置は、導波路層に入る光の結合、および導波路層から出る光の結合に使用するのに好適な、任意のカプラを含み得る。
【0020】
本明細書で使用する用語「イン結合要素」は、導波路層の中に入る光を結合する、結合装置の部分を意味するよう意図される。イン結合要素は、導波路層の中に入る光を結合する際に使用するのに好適な、任意のインカプラを含み得る。
【0021】
本明細書で使用する用語「アウト結合要素」は、導波路層から出る光を結合する、結合装置の部分を意味するよう意図される。アウト結合要素は、導波路層から出る光を結合する際に使用するのに好適な、任意のアウトカプラを含み得る。
【0022】
本明細書で使用する用語「流体ゾーン」は、流体を収容するゾーンを意味するよう意図される。流体ゾーンは、流体フローチャネルまたは流体貯蔵器を備えるか、または流体フローチャネルまたは流体貯蔵器であってよい。このような装置は、いくつかの異なる方法で実現され得る。しかし重要なのは、相互作用されることになる流体が、フィルタ開口部においてエバネッセント場と相互作用できるよう、フィルタ層と接触可能となることである。
【0023】
本明細書で使用する用語「相互作用領域」は、流体が、導波路層を通過する光のエバネッセント場と相互作用することを可能とする領域を意味するよう意図される。したがって相互作用領域は、フィルタ開口部がこの相互作用を可能にする領域に相当する。
【0024】
本明細書で使用する用語「フィルタ開口部」は、流体が通ることができるが、規定のサイズよりも大きい粒子が通るのを防止または抑制する、フィルタ層の開口部を意味するよう意図される。フィルタ開口部は、格子を形成する、線状開口部すなわち溝として配置される。フィルタ開口部の寸法、およびフィルタ開口部同士の間の間隔は、実質的に同一か、または、さらに大きい粒子が導波路層を通過する光のエバネッセント場と相互作用するのを可能にするよう、フィルタ開口部の幅を徐々に増加させることによって、変化し得る。
【0025】
本明細書で使用する用語「粒子」は、特定の使用による様々な異なる粒子を指し得る。いくつかの実施形態において、流体内の粒子は、ある程度均一のサイズを有してよく、そのため全てはエバネッセント場との相互作用が防がれ、その一方で他の実施形態において、粒子は異なるサイズを有してよく、そのため規定のサイズよりも小さいいくらかの粒子は、エバネッセント場と相互作用可能になり得る。
【0026】
本明細書で使用する用語「伝播方向」は、導波路層内で誘導される光の方向を指すよう意図される。例えば、結合装置が、導波路層への光のイン結合、および導波路層からの光のアウト結合それぞれのための、2つの別個の結合要素を備える場合、伝播方向はイン結合要素からアウト結合要素へ向かうものとなる。
【0027】
本明細書で使用する用語「下部クラッド層」は、フィルタ層としての導波路層の反対側において、導波路層に隣接するクラッド層を意味するよう意図される。通常、下部クラッド層は、導波路層内の光の誘導を補助するため、導波路層の屈折率よりも低い屈折率を有する。
【0028】
本明細書で使用する用語「上部クラッド層」は、フィルタ層としての導波路層と同じ側において、導波路層に隣接するクラッド層を意味するよう意図される。通常、上部クラッド層は、導波路層内の光の誘導を補助するため、導波路層の屈折率よりも低い屈折率を有する。いくつかの実施形態において、上部クラッド層およびフィルタ層は同じ材料から作られる。例えば、フィルタ層は、フィルタ開口部を相互作用領域に作り出すために、導波路層の全てを覆う当初の上部クラッドの一部を取り除くことによって、形成され得る。
【0029】
本明細書で使用する用語「格子」は、回折格子、すなわち導波路層に入る光を結合できる格子、および導波路層から出る光を結合できる格子を意味するよう意図される。通常の格子は、実質的に同一、平行で、細長い要素の、任意の規則的な間隔の集積を含む。格子の間隔は、使用される光の特定の波長に適合され得る。
【0030】
本明細書で使用する用語「光閉じ込め」は、少なくとも1つの光学モードを補助するよう、導波路層を適合させることを指す。通常、光閉じ込めは、例えば一方の側で上部クラッド層、および他方の側で下部クラッド層である、隣接した層を有することによって提供され得る。これらの層は、導波路層の屈折率よりも低い屈折率を有し、導波路層における光の誘導を促進させ、それによって光閉じ込めを提供する。
【0031】
本発明の有利な実施形態によると、フィルタ開口部は、10マイクロメートル以下の線間隔、例えば5マイクロメートル以下、例えば1マイクロメートル以下、例えば800ナノメートル以下、例えば200ナノメートル以下、例えば100ナノメートル以下などの線間隔で画定される。すなわちフィルタ層は、小型化されたフィルタ層またはナノサイズのフィルタ層として理解され得る。
【0032】
本発明の実施形態によると、フィルタ開口部は、10ナノメートル~10マイクロメートルの線間隔、例えば50ナノメートル~5マイクロメートル、例えば100ナノメートル~1マイクロメートルなどの線間隔によって画定される。線間隔は、フィルタ開口部の幅と称してもよい。
【0033】
本発明の実施形態によると、フィルタ開口部は実質的に同じ寸法を有する。換言すると、線間隔は、フィルタ開口部の全体にわたって実質的に等しい。
【0034】
本発明の有利な実施形態によると、フィルタ層は第1の屈折率を有し、導波路層は第2の屈折率を有する。第1の屈折率は、第2の屈折率より、例えば少なくとも3パーセント低い。
【0035】
他の実施形態において、フィルタ開口部は異なる寸法を有し得る。例えば、フィルタ開口部の複数の幅が、異なる粒子サイズを濾過するために利用され得る。アウト結合された光は、例えばCCDまたはCMOSセンサなどの二次元センサによって検出され得る。一方の方向はスペクトルを解像し、他方の方向はフィルタ開口部の幅の差を解像する。
【0036】
本発明の有利な実施形態によると、上記の結合装置は、導波路層に入る光をイン結合するためのイン結合要素、および導波路層からの光をアウト結合するためのアウト結合要素を備える。
【0037】
上記の実施形態の1つの利点は、光がかなりの距離にわたって導波路層を通過可能にされ、それによって、フィルタ開口部におけるエバネッセント場を介して、吸収または励起などの流体との相互作用を可能にすることであり得る。
【0038】
本発明の有利な実施形態によると、相互作用領域は、イン結合要素とアウト結合要素との間に延びる。
【0039】
上記の実施形態の1つの利点は、光がかなりの距離にわたって導波路層を通過可能にされ、それによって、フィルタ開口部におけるエバネッセント場を介して、吸収または励起などの流体との相互作用を可能にすることであり得る。
【0040】
本発明の有利な実施形態によると、相互作用領域は、イン結合要素とアウト結合要素との間に延び、さらにアウト結合要素の上に延びる。
【0041】
上記の実施形態の1つの利点は、導波路層内を移動する光が、アウト結合要素にある間に、流体の屈折率による影響を受けることであり得る。換言すると、導波路層からの光のアウト結合は、流体の屈折率によって影響を受ける。流体の屈折率によって生じるこの影響を測定することによって、例えばアウト結合した光の屈曲の変化として、および/または固定位置における光の波長の変化として、屈折率の測定値が有利に得られる場合がある。この実施形態は、流体の屈折率の測定値を得るのと同時に、光の吸収または光の励起によって、エバネッセント場と流体との間の相互作用を有利に可能にする。
【0042】
格子をアウト結合要素として使用することで、流体の屈折率の測定を容易にする光の散乱を提供する。
【0043】
本発明の有利な実施形態によると、上記の結合装置は、例えば相互作用領域の全体の上など、相互作用領域の少なくとも一部の上に延びる。
【0044】
上記の実施形態の1つの利点は、流体の屈折率が得られることであり得る。流体が結合装置において、すなわち光のアウト結合の位置において、光のエバネッセント場との相互作用を可能にすることによって、導波路層からの光のアウト結合は、流体の屈折率によって影響を受ける。流体の屈折率によって生じるこの影響を、例えばアウト結合した光の屈曲の変化として、および/または固定位置における光の波長の変化として測定することによって、屈折率の測定値が有利に得られる。
【0045】
格子をアウト結合要素として使用することで、流体の屈折率の測定を容易にする光の散乱を提供する。
【0046】
本発明の有利な実施形態によると、アウト結合要素は格子などの分散要素を備える。
【0047】
上記の実施形態の1つの利点は、例えば格子などの分散要素が光の回折屈曲を生じさせ、それによって導波路からの光をアウト結合させることであり得る。回析屈曲は、波長に依拠して得られ、すなわち異なる波長は異なる角度で屈曲する。特に、相互作用領域が少なくとも部分的にアウト結合要素の上に延びるのを可能にする実施形態が組み合わされる場合、この利点は流体の屈折率の測定を可能にする。なぜなら分散作用すなわちアウト結合の角度が流体の屈折率によって影響を受けるからである。したがって、流体の屈折率によって生じるこの影響を、例えばアウト結合した光の屈曲の変化として、および/または固定位置における光の波長の変化として測定することによって、屈折率の測定値が有利に得られ得る。
【0048】
上記で示したように、結合装置はいくつかの実施形態において、別個のイン結合要素およびアウト結合要素を備えてよい。他の実施形態において、結合装置は、導波路層に入る光を結合すること、および導波路層から出る光を結合することの両方、すなわちイン結合要素およびアウト結合要素の両方として働く。
【0049】
代替として、アウト結合要素は、プリズムベースのアウト結合要素、または光ファイバへの直接結合であってもよい。
【0050】
本発明の実施形態によると、イン結合要素は、格子、プリズム、または光ファイバへの直接結合を備える。
【0051】
本発明の実施形態によると、平面状導波路層は、上部クラッド層をさらに備える。上部クラッド層は、フィルタ層の外側の導波路層を覆い得る。いくつかの実施形態において、フィルタ層は上部クラッド層と同じ層であってもよく、フィルタ層は上部層の開口部を作り出すことによって形成され、それによって相互作用領域を形成する。通常、上部クラッド層は、導波路層よりも低い屈折率、例えば0.2単位低い屈折率を有し得る。
【0052】
本発明の実施形態によると、導波路層は、例えば少なくとも0.2単位低い屈折率など、より低い屈折率を有する下部クラッド層に堆積される。
【0053】
平面状導波路デバイスは光源を備えてよく、または外部光源から光を受け取ってもよいことを理解されたい。
【0054】
本発明の有利な実施形態によると、平面状導波路層デバイスは、光源としてレーザデバイスをさらに備える。
【0055】
上記の実施形態の1つの利点は、導波路層からのアウト結合における流体の屈折率による影響など、光に対する影響についての情報を得るための、アレイベースの光センサによって光の検出を可能にすることであり得る。
【0056】
本発明の有利な実施形態によると、平面状導波路層デバイスは、光源として広帯域光源をさらに備える。
【0057】
上記の実施形態の1つの利点は、導波路層からのアウト結合における流体の屈折率による影響など、光に対する影響についての情報を得るための、固定位置における波長の分光測定検出を可能にすることであり得る。
【0058】
例えば、広帯域光源は、例えば400~700ナノメートル、すなわち白光源から成る光など、可視スペクトルの全てにわたって延びる幅を有し得る。
【0059】
本発明の有利な実施形態によると、平面状導波路デバイスは、CMOSセンサ、CCDセンサ、または光ダイオードアレイセンサなど、アレイベースの光センサをさらに備える。
【0060】
上記の実施形態の1つの利点は、アレイベースの光センサによる、レーザデバイスからの光の検出が、導波路層からのアウト結合における流体の屈折率による影響など、光に対する影響についての情報を与え得ることであり得る。
【0061】
この文脈において、CMOSセンサおよびCCDセンサは各々、いくつかのピクセルを備えるアレイであると考慮される。
【0062】
格子などの分散要素を使用することによって、アウト結合した光はその波長成分に分離される。
【0063】
アレイベースの光線がレーザ光源と共に使用され、格子などの分散要素をアウト結合要素として使用する場合、アウト結合要素の少なくとも部分的、例えば全体を覆う相互作用領域、または全ての結合装置によって促進される、アウト結合を伴う流体の相互作用は、光のアウト結合角度を検出することによって検出することができる。
【0064】
アレイベースの光センサが広帯域光源と共に使用される場合、流体とアウト結合との間の相互作用は、光センサの特定の固定位置においてアウト結合された光の異なる波長をもたらす。したがって、光学分光計を光センサとして使用することで、アウト結合された光の検出された波長は、流体との相互作用の示度、すなわち流体の屈折率をもたらす。
【0065】
本発明の実施形態によると、平面状導波路層デバイスは、光センサとして光ダイオードをさらに備える。
【0066】
本発明の有利な実施形態によると、平面状導波路層デバイスは、光センサとして光学分光計をさらに備える。
【0067】
上記の実施形態の1つの利点は、導波路層からのアウト結合における流体の屈折率による影響など、光に対する影響についての情報を得るための、固定位置における光の波長の分光測定検出であり得る。広帯域光源を使用することで、利用可能な十分な範囲の波長により、十分な範囲の屈折率を有する流体のための光学分光計によって、光の検出を可能にする。
【0068】
本発明の有利な実施形態によると、流体は血液などの液体である。
【0069】
液体が血液である実施形態において、粒子は赤血球であってよく、特にそのとき平面状導波路デバイスは、溶血センサとして機能する。
【0070】
上記の実施形態の1つの利点は、溶血レベルの示度が、ヘモグロビンによって吸収された波長を用いる吸収測定によって得られることであり得る。
【0071】
様々な実施形態によると、さらに考えられる液体として、例えば廃水、エンジンオイル、食材料などが挙げられる。
【0072】
本発明の有利な実施形態によると、平面状導波路層デバイスは、流体ゾーンを形成する流体フローチャネルをさらに備える。
【0073】
本発明の有利な実施形態によると、流体フローチャネルはフローセルである。
【0074】
本発明の有利な実施形態によると、平面状導波路デバイスは、フィルタ層の反対側における導波路層と当接するクラッド層をさらに備える。クラッド層は、第3の屈折率を有し、この第3の屈折率は、例えば少なくとも3パーセント、第2の屈折率よりも低い。
【0075】
実施形態によると、フィルタ層は、UV硬化性ポリマー(OrmoComp)を備えるか、またはUV硬化性ポリマーから構成される。他のORMOCERポリマーも使用されてよい。さらに、SU8などのエポキシポリマー、もしくはアクリルUVレジストなど他のUV硬化性レジスト、または任意の他のナノインプリントレジストを使用してもよい。重要なことは、この材料は比較的安価で、様々な方法で形づけることができ、硬質かつ耐久性があることである。そのため材料は粒子による影響に抵抗し、流体の化学的性質に抵抗することになる。導波路層は、例えばシリコンを備えるか、またはシリコンで構成され得る。
【0076】
例えば、UVナノインプリント処理、熱インプリント処理、およびUV熱ハイブリッドインプリント処理などの様々な好適なインプリント処理など、様々な公知の方法を用いてフィルタ層を作り出してよい。
【0077】
本発明の実施形態によると、中間層が、導波路層とフィルタ層との間に介在する。中間層は、流体に対する導波路層の保護層として機能し、および/または、中間層は、流体内の特定の分子または物質の選択的な結束を促進させて、エバネッセント場との相互作用を増加させる。
【0078】
本発明はさらに、本発明による平面状導波路デバイスの使用、および溶血を検出するための、任意の使用の実施形態に関する。
【0079】
溶血の示度は、血漿中の遊離ヘモグロビンの存在である。この遊離ヘモグロビンは、赤血球の破壊から生じる。この破壊は溶血として知られており、患者の状態の示度となり得る。しかし、ヘモグロビンが赤血球中にも存在するので、血漿中の残りのヘモグロビンを測定するために、赤血球は一般に、血漿から分離させる必要がある。さらに、例えば濾過中の、血液の取り扱い自体が、さらなる溶血、およびさらなる遊離ヘモグロビンをもたらし得る。測定したヘモグロビンが、患者の状態によって誘発された溶血からのヘモグロビンと、患者の状態とは無関係である別の溶血からのヘモグロビンとの両方から成るため、結果が不正確になるか、または使用に適さないことさえある。
【0080】
しかし、本発明の平面状導波路デバイスによって、遊離ヘモグロビンは、赤血球の事前濾過をすることなく、測定され得る。なぜなら赤血球はフィルタ層による相互作用から除外され、そのためより正確な結果が得られ得る。
【0081】
本発明の平面状導波路デバイスの様々な他の使用、および任意の使用の実施形態は、吸収測定、流体の屈折率の測定、および流体および/またはそれらの構成要素の励起を含み得る。
【0082】
本発明は、光を流体と相互作用させる方法にさらに関する。本方法は、導波路層に入る光を結合させるステップと、導波路層の外側のエバネッセント場を形成する導波路層内の光を誘導するステップと、誘導された光のエバネッセント場を流体と相互作用させるステップと、流体が、導波路層によって誘導された光のエバネッセント場と相互作用するのを可能にするよう配置されたフィルタ開口部を備えるフィルタ層を使用して、規定のサイズよりも大きい粒子が上記のエバネッセント場と相互作用するのを防ぐよう、流体を濾過するステップと、導波路層から出た相互作用された光を結合するステップと、を含み、上記のフィルタ開口部は、導波路層によって誘導される光の伝播方向に対して平行である長手方向を有する、線状開口部として配置されたものである。
【0083】
本発明の有利な実施形態によると、上記の方法は、アウト結合された光の少なくとも1つの特性を測定するステップをさらに含む。
【0084】
本発明の有利な実施形態によると、流体は上記の規定のサイズよりも大きい粒子を備える。
【0085】
本発明の有利な実施形態によると、上記の方法は、本発明の平面状導波路デバイスまたは任意の方法の実施形態を用いて実施される。
【0086】
本発明の有利な実施形態によると、平面状導波路デバイスは、本発明の方法または任意の方法の実施形態を用いて動作可能なように適合される。
【0087】
次に本発明を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】本発明の実施形態による一般的な平面状導波路デバイスの図である。
【
図2】本発明の実施形態による平面状導波路デバイスの側断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による平面状導波路デバイスの側断面図である。
【
図4】本発明の実施形態による平面状導波路デバイスの側断面図である。
【
図5】本発明の実施形態による平面状導波路デバイスの斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態による平面状導波路デバイスの斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態による平面状導波路デバイスの図である。
【
図8】本発明の実施形態による平面状導波路デバイスの図である。
【
図9】本発明の平面状導波路デバイスを用いて得られた実験データを示す図である。
【
図10】本発明の平面状導波路デバイスを用いて得られた実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1を参照すると、本発明の実施形態による、平面状導波路デバイスPWDの概略図が示される。平面状導波路デバイスPWDは、流体FLDと光ビームLTGとの間の相互作用を可能にするよう適合される。これは、以下でより詳細に説明するように、フィルタ層FTLによって成される。
【0090】
別の実施形態が
図2~
図6により詳細に示される。これらの実施形態の全ては、
図1および以下のこれらの説明に照らして理解され得る。
【0091】
図1に戻ると、平面状導波路デバイスPWDは、光閉じ込めを補助するための導波路層WGL、結合装置CPA、流体FLDを収容する流体ゾーンFZN、およびフィルタ層FTLを備える。
【0092】
フィルタ層FTLは、フィルタ開口部FOPの幅が通常は10マイクロメートル以下、例えば5マイクロメートル以下、例えば1マイクロメートル以下、例えば800ナノメートル以下、例えば200ナノメートル以下、例えば100ナノメートル以下であり得るという意味では、ナノサイズである。
【0093】
平面状導波路デバイスPWDは、光源LSOおよび光センサLSEをさらに備えてよい。光源LSOは、例えばレーザデバイスからのレーザビーム、または広帯域光源からの広帯域光ビームなど、光ビームLTBを放出する。
【0094】
結合装置CPAは、導波路層WGLに入る光ビームの光のイン結合、および導波路層WGLからの光ビームの光のアウト結合のために適合される。
図1において、結合装置CPAは別個のイン結合要素ICPAおよび別個のアウト結合要素OCPAを備える。しかし他の実施形態において、結合装置CPAは、導波路層WGLに入る光のイン結合、および導波路層WGLからの光のアウト結合の両方を実施する、単一の結合要素CPAで形成され得る。結合装置CPAは、格子、プリズム、または光ファイバへの直接結合を備える。
【0095】
フィルタ層FTLは、流体FLDが、導波路層WGLによって誘導された光のエバネッセント場と相互作用するのを可能にするよう配置された、フィルタ開口部FOPを備える。
【0096】
フィルタ層FTLは、流体ゾーンFZNと、導波路層WGLの相互作用領域IARにおける導波路層WGLとの間に配置される。したがって、フィルタ開口部FOPは、規定のサイズよりも大きい粒子PARが、上記のエバネッセント場と相互作用するのを防ぐことができる。規定のサイズは通常、例えば10マイクロメートル以下のナノスケール領域にある、フィルタ開口部FOPの幅によって決定される。換言すると、フィルタFTL層は、流体ゾーンFZNと導波路層WGLとの間の材料の通路を制御するという意味で、流体ゾーンFZNを導波路層WGLから分離する。平面状導波路デバイスPWDは、例えば導波路層WGLの防護をもたらすため、または抗体、ポリマー、アプタマー、もしくは流体内の検体を束ねるための他のレセプタに、選択的な結束をもたらすために、フィルタ層FTLと導波路層WGLとの間に別の層を備えることもある。しかし、この別の層は、エバネッセント場が流体の中に延びることができるよう配置しなければならない。
【0097】
上記に加え、上記のエバネッセント場相互作用との相互作用は、フィルタ開口部FOPにおけるものであることを、理解されたい。すなわち、流体FLDがフィルタ開口部FOPの中に入るようにすることによって、流体FLDはエバネッセント場との相互作用を可能にされ、規定のサイズよりも大きい粒子PARがフィルタ開口部FOPに入るのを防ぐことによって、粒子PARが、上記のエバネッセント場と相互作用することが防止される。
【0098】
フィルタ開口部FOPは、導波路層WGLによって誘導される光の伝播方向DOPに対して平行である長手方向を有する、線状開口部として配置される。これは、例えば以下の
図5および
図6などにおいて、より明確に示される。それによって、フィルタ層FTLは、導波路層によって誘導された光へのフィルタ自体による影響が最小限に抑えられるか、実質的に防がれるという意味で、導波路から光学的に分離される。長手方向が、導波路層WGLによって誘導された光の伝播方向DOPと平行である線状開口部は、ここでは、光が導波路層WGLに誘導されるときに、平面状導波路デバイスPWDが動作中であることを理解されたい。
【0099】
次に
図2および
図5を参照すると、本発明の別の実施形態による平面状導波路デバイスPWDが、
図2では側断面図、および
図5では斜視図で示される。
【0100】
図1に示されるものに加えて、イン結合装置CPAは、ここではイン結合要素ICPAおよびアウト結合要素OCPAの2つの結合要素によって作られていることが確認される。
【0101】
図2および
図5において、イン結合要素ICPAおよびアウト結合要素OCPAは、両方とも格子として示される。しかし他の実施形態において、結合要素は
図1を用いて説明したように、異なる手段によって提供されてよく、同じである必要はない。例えば、プリズムをイン結合要素ICPAとして、および格子をアウト結合要素OCPAとして使用され得る。
【0102】
光ビームLTBは、イン結合要素ICPAによって導波路層WGLの中へ結合され、次に伝播方向DOPに導波路層WGLを通って誘導され、相互作用領域IARにおいてフィルタ層FTLを通過してアウト結合要素OCPAに向かい、そこで光ビームLTBは導波路層WGLから結合されて出る。
【0103】
光源LSOおよび光センサLSEは、
図2または
図5に示されないが、
図1におけるように利用され得る。
【0104】
図2および
図5の両方から判るように、フィルタ層FTLの範囲によって画定される相互作用領域IARは、イン結合要素ICPAとアウト結合要素OCPAとの間に延びるが、これらの上には延びない。したがって、
図2および
図5に示される実施形態は、例えば流体とフィルタ開口部FOPにおけるエバネッセント場との間の、吸収および励起の相互作用のために非常に好適である。フィルタ層FTLが延びない区域は、上部クラッド層UCLによって覆われ、導波路層WGLにおける誘導を促進させる。類似して、下部クラッド層LCLは、導波路層WGLの下方に位置付けられる。通常、上部および下部クラッド層UCL、LCLの屈折率は、導波路層WGLの屈折率よりも低い。
【0105】
図5において、フィルタ開口部FOPの中に入れず、したがってエバネッセント場との相互作用を妨げられた粒子PARは、溶血センサ設定において赤血球を表わし得る。しかしそれらは、フィルタ開口部FOPの幅によって画定される規定のサイズよりも大きいサイズ、例えば径を有する粒子が、フィルタ開口部FOPに入ること、およびエバネッセント場と相互作用することが防止されるという、より一般的な原則も示す。
【0106】
図5は、示された平面状導波路デバイスPWDの様々な要素の組成を理解する助けとなるよう、部分的にシースルーにされていることに留意されたい。
【0107】
図3において、わずかに変更した実施形態が側断面図に示される。ここで、フィルタ層FTLは、アウト結合要素OCPAの上にさらに延び、アウト結合中に、流体と、誘導された光のエバネッセント場との間の相互作用を可能にする。
図3に示された平面状導波路デバイスPWDは、フィルタ層FTLに沿って誘導された距離を有し(すなわちイン結合要素ICPAおよびアウト結合要素OCPAは、ある距離だけ離される)、ここで流体FLDがエバネッセント場と相互作用するのを可能にして、流体との吸収および励起の相互作用に好適となる。フィルタ層FTLおよび相互作用領域IARも、アウト結合要素OCPAの上に延びるため、示された平面状導波路デバイスPWDは、流体FLDの屈折率に関する情報を提供するためにも好適である。
【0108】
次に
図4および
図6を参照すると、2つの類似の実施形態が示される。
図4は側断面図を、一方で
図6は斜視図を示す。
図6は相互作用領域IARのみを示すが、
図4は相互作用領域IARを少し越えて延びる導波路層WGLも示す。両実施形態において、結合装置CPAは単一の結合要素によって構成され、そのため導波路層WGLに入る光のイン結合と、導波路層WGLからのアウト結合との両方を提供する。アウト結合は相互作用領域IAR内で実施されるため、アウト結合は流体FLDの屈折率による影響を受ける。そのため、示された平面状導波路デバイスPWDは、流体FLDの屈折率の測定に好適である。
【0109】
図6は、示された平面状導波路デバイスPWDの様々な要素の組成を理解する助けとなるよう、部分的にシースルーにされていることに留意されたい。
【0110】
図7を参照すると、本発明の実施形態による、平面状導波路デバイスPWDが示される。平面状導波路デバイスPWDは、例えば
図1および
図5に関して説明したように、フィルタ層FTLおよび導波路層WGLを備える。流体ゾーンFZNは、フィルタ層FTLと接触することになる流体のフローを容易にするよう延びる、流体チャネルとして形成される。
図7において、流体のフローの方向は、光の伝播方向に対して概ね垂直であり、その一方で他の実施形態において、相対角度は、例えば概ね45°か、または0°すなわち平行な構成であってよい。
図7において、測定されることになる流体は、流体ゾーンFZNに供給され、好適な管によって、そこから再び抽出される。これは
図7の文脈において、流体は、平面状導波路デバイスPWDに連続的に提供され、例えば環境状況(すなわち実験室ではない)に埋没した平面状導波路デバイスPWDを使用する場合、または流体のフローが概ねゼロである場合の、周囲によって左右される流体のフローとは対照的に、好ましくは比較的安定した流量で、流体は連続的に提供されることを示している。
【0111】
図8を参照すると、本発明の実施形態による、平面状導波路デバイスPWDが示される。
図8は、示された平面状導波路デバイスPWDの様々な要素の組成を理解する助けとなるよう、部分的にシースルーにされていることに留意されたい。
【0112】
この実施形態において、平面状導波路デバイスPWDは、光のための2つの経路を備える。上部左の経路は、
図1および
図5に関して説明した経路と類似し、下部右の経路は、フィルタ層FTLにフィルタ開口部が存在しないという点のみ同じである。
【0113】
これは、光が上部左の経路における流体と相互作用するが、下部左においては相互作用しないという違いを伴い、光が2つの実質的に同一の経路によって送られるのを可能にする。
【0114】
1つの実施形態において、同じ光源が、例えば元の光を2つに分割するための二重スリットを利用して、各経路に使用される。2つの経路の各々からの光ビームのアウト結合後に、アウト結合された2つの光ビームは、例えば干渉によって相互作用され得る。例えばこれは、干渉パターンを作り出す別の二重スリットを用いるか、または例えば改変した格子カプラ装置など、改変したアウト結合装置を用いることによって成され得る。この設定によって、流体の屈折率の変化が測定され得る。
【実施例0115】
平面状導波路デバイスは、格子カプラを通した532ナノメートルのレーザを用いて励起させた。フローチャネルの形態である流体ゾーンの画像は、顕微鏡対物レンズを通してCMOSカメラを用いて捕捉される。蛍光発光フィルタを間に使用して、励起波長を除去した。導波路デバイスは、200~220ナノメートルの幅で400ナノメートルの周期性を有するフィルタ開口部を伴う、本発明によるフィルタ層を備える。
【0116】
自己蛍光パターンが、導波路ポリマーの自己蛍光によって生成され、光は、画像を垂直に貫通する方向に移動し、流体のフローは、光の伝播に対して直角である。自己蛍光の結果は、
図9Aに示される。
【0117】
水性懸濁液内で、異なる径(100ナノメートルおよび2マイクロメートル)を有する2つのタイプのポリスチレンの赤色蛍光ビーズが使用され、サイズ排除機能を特徴付けた。両方が赤色蛍光であり、0.1%の固体濃度で使用された。結果が
図9B(2マイクロメートルのビーズ)および
図9C(100ナノメートルのビーズ)に示される。さらに、
図9A~
図9Cの結果は、
図9Dにおいて比較として示される。
図9Dは、導波路にわたる距離(マイクロメートル)の関数として、3つの測定値の各々の正規化蛍光強度を示す。
【0118】
これらの結果は、100nmのビーズから応答する、より強い蛍光性を実証した。すなわち100nmのビーズは、導波路のエバネッセント場によって励起される。2μmのビードは、導波路からの散乱光によってのみ励起され得る。
【0119】
したがって、
図9A~
図9Cおよび対応する
図9Dは、平面状導波路デバイスと粒子との間の選択的な相互作用を実証し、規定のサイズよりも大きい径を有する粒子は、導波路デバイスの光との相互作用が防止される。
【0120】
図10において、全血液(WB)および血漿の、異なるヘモグロビン(Hb)濃度の測定値が示される。分光光度計の基準スペクトルが、縮尺を定められ、背後においてロットされる。より詳細には、
図10は全血液試料(中間の線)、およびそれらの血漿の同等物(下部の線)、ならびに1cmのキュベットを用いた分光光度計の基準測定値(上部の灰色の点線)を示し、分光光度計の基準測定値は、比較のために大きく縮尺を定められる。使用された最大Hb濃度は200mg/dLであり、これは約0.7%の溶血に相当する。各データポイントは、3つの測定値に基づく。0および100mg/dLのHb濃度において、変動係数(Cov)は、それぞれ1.65%および0.86%であり、センサの優れた再現性を示す。他方で、全血液および血漿の測定値を比較すると、濾過が非常に効果的であることを示す、非常に良好な重複を認めた。全血液試料の吸光度は、血漿の吸光度よりもわずかに高いが、それは、大半が赤血球によって吸収され得る光の、定まらない散乱に起因し得る。
前記フィルタ開口部(FOP)は、10マイクロメートル以下の線間隔、例えば5マイクロメートル以下、例えば1マイクロメートル以下、例えば800ナノメートル以下、例えば200ナノメートル以下、例えば100ナノメートル以下の線間隔で画定される、請求項1に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
前記結合装置(CPA)は、前記導波路層(WGL)に入る光をイン接合するためのイン結合要素(ICPA)、および前記導波路層(WGL)からの光をアウト結合するためのアウト結合要素(OCPA)を備える、請求項1または2に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
前記相互作用領域(IAR)は、前記イン結合要素(ICPA)と前記アウト結合要素(OCPA)との間に延び、さらには前記アウト結合要素(OCPA)の上に延びる、請求項3に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。
前記フィルタ層(FTL)の反対側における前記導波路層(WGL)と当接するクラッド層をさらに備え、前記クラッド層は第3の屈折率を有し、前記第3の屈折率は、例えば少なくとも3パーセント、第2の屈折率よりも低い、請求項1から14のいずれか一項に記載の平面状導波路デバイス(PWD)。