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特開2022-93467低減された厚さを有する必要に応じて転写可能な光学システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093467
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】低減された厚さを有する必要に応じて転写可能な光学システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/10 20060101AFI20220616BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G02B5/10 A
G02B5/10 C
G02B3/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022073147
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2020143928の分割
【原出願日】2012-08-17
(31)【優先権主張番号】61/525,239
(32)【優先日】2011-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509004480
【氏名又は名称】ビジュアル フィジクス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン グレゴリー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ケープ サミュエル エム.
(72)【発明者】
【氏名】パーム スコット ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴスネル ジョナサン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ケネディ キャロライン ビー.
(57)【要約】
【課題】低減された厚さを有する必要に応じて転写可能な光学システムを提供する。
【解決手段】低減された厚さを有する光学システムであって、凸面反射要素の配列と、前記凸面反射要素の配列の上に位置する画像アイコンの配列と、前記凸面反射要素の配列と前記画像アイコンの配列との間の間隙空間を満たす充填層と、を備え、凸面反射要素の配列の各凸面反射要素は、遠くの光源によって点を生じさせる反射面を備え、画像アイコンの配列の各画像アイコンは、光点の視界を少なくとも部分的に遮る材料の領域を備え、充填層は一方の面において凸面反射要素の配列に当接するとともに他方の面において画像アイコンの配列に当接し、凸面反射要素の配列及び画像アイコンの配列は、遮られた光点と遮られていない光点とのパターンを形成するように、協働し、合成画像を形成する、光学システム。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減された厚さを有する光学システムであって、
凸面反射要素の配列と、
前記凸面反射要素の配列の上に位置する画像アイコンの配列と、
前記凸面反射要素の配列と前記画像アイコンの配列との間の間隙空間を満たす充填層と、
を備え、
前記凸面反射要素の配列の各凸面反射要素は、遠くの光源によって照らされた場合に光点を生じさせるように構成された反射面を備え、
前記画像アイコンの配列の各画像アイコンは、前記光点の視界を少なくとも部分的に遮る材料の領域を備え、
前記充填層は一方の面において前記凸面反射要素の配列に当接するとともに、前記画像アイコンの配列は、前記充填層の他方の面上に位置し、
前記凸面反射要素の配列及び前記画像アイコンの配列は、遮られた光点と遮られていない光点とのパターンを形成するように、協働し、
前記遮られた光点と遮られていない光点とのパターンは、合成画像を形成する、
光学システム。
【請求項2】
前記画像アイコンの配列の上に位置するキャリア基板を更に備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記凸面反射要素の配列の凸面反射要素は、1より小さいf値を有し、ここで、前記f値は、前記凸面反射要素の光軸が前記凸面反射要素と交差する点と前記凸面反射要素の焦点Fとの間の距離の、前記凸面反射要素の有効レンズ直径に対する比率である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記凸面反射要素の配列の凸面反射要素は、0.25~0.50の間のf値を有する、請求項3に記載の光学システム。
【請求項5】
前記光点を生じさせるように構成された反射面は、球面である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
前記光点を生じさせるように構成された反射面は、非球面である、請求項1に記載の光
学システム。
【請求項7】
前記画像アイコンの配列の画像アイコンは、構造化画像アイコンを備える、請求項1に記載の光学システム。
【請求項8】
前記構造化画像アイコンは、第1の材料で形成された実質的に平面的な構造内の第2の材料で充填又はコーティングされた空隙及び実質的に平面的な構造内の隆起領域の少なくとも1つである、請求項7に記載の光学システム。
【請求項9】
光学システムの製造方法であって、
凸面反射要素の配列を提供することと、
画像アイコンの配列を前記凸面反射要素の配列の上に提供することと、
前記凸面反射要素の配列と前記画像アイコンの配列との間の間隙空間を満たす充填層を設けることと、
を備え、
前記凸面反射要素の配列の各凸面反射要素は、遠くの光源によって照らされた場合に光点を生じさせるように構成された反射面を備え、
前記画像アイコンの配列の各画像アイコンは、視線方向の光点の視界を少なくとも部分的に遮る材料の領域を備え、
前記充填層は一方の面において前記凸面反射要素の配列に当接するとともに、前記画像アイコンの配列は、前記充填層の他方の面上に位置し、
前記凸面反射要素の配列及び前記画像アイコンの配列は、遮られた及び遮られていない光点のパターンを形成するように、協働し、
前記遮られた及び遮られていない光点のパターンは、合成画像を形成する、
光学システムの製造方法。
【請求項10】
前記画像アイコンの配列は、キャリア基板の上に形成される、請求項9に記載の光学システムの製造方法。
【請求項11】
前記画像アイコンの配列は、前記キャリア基板に印刷される、請求項10に記載の光学システムの製造方法。
【請求項12】
前記凸面反射要素の配列は、前記画像アイコンの配列の上に形成され、
前記凸面反射要素の配列を提供することは、
材料の層を成形することと、
金属で前記材料の層をコーティングすることと、
を備える、請求項9に記載の光学システムの製造方法。
【請求項13】
前記凸面反射要素の配列の凸面反射要素は、1より小さいf値を有し、ここで、前記f値は、光軸が前記凸面反射要素と交差する点と焦点Fとの間の距離の、前記凸面反射要素の有効レンズ直径に対する比率である請求項9に記載の光学システムの製造方法。
【請求項14】
前記凸面反射要素の配列の凸面反射要素は、0.25~0.50の間のf値を有する、請求項13に記載の光学システムの製造方法。
【請求項15】
前記光点を生じさせるように構成された反射面は、球面である、請求項9に記載の光学システムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2011年8月19日に出願された米国仮特許出願第61/525,239号の優先権を主張するものであり、当該出願はその全体が参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、一般に、1つ以上の合成画像を表示する改良されたシステムに関し、より詳細には、低減された厚さを有する必要に応じて転写可能な光学システムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えばSteenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,333,268号明細書に詳細に記載されているように、マイクロ光学材料内の集光要素の焦点距離は、画像アイコンアレイからの集光要素の光学分離を決定する。言い換えると、これらのマイクロ光学材料内のアレイは、各集光要素の焦点がその関連する画像アイコン(1つ又は複数)と整列するように、光学スペーサの両側上に配置される。焦点が画像アイコンアレイ上又は画像アイコンアレイ内にある場合、合成画像はしっかりと焦点が合っている。しかし、焦点が画像アイコンアレイの上又は下にある場合、合成画像はぼやけており、焦点が合っていない。
【発明の概要】
【0004】
本発明によって、集光要素とそれらの関連する画像アイコン(1つ又は複数)との間の必要な焦点距離を提供するための光学スペーサ(すなわち可撓性透明ポリマーフィルム状材料)の必要がなくなる。結果として、システム全体の厚さが低減され、表面に適用される認証システムとしての好適性が有効となり、耐改竄性が向上する。
【0005】
より具体的には、本発明は、集光要素の1つ以上の配列と実質的に接触するがそれらの中に完全に埋め込まれるわけではない構造化画像アイコンの1つ以上の配列から構成される、合成画像表示システムを基本的に含む、低減された厚さを有する必要に応じて転写可能な光学システムを提供し、ここで、画像アイコンの1つ以上の配列と集光要素の1つ以上の配列とは、画像アイコンの少なくとも一部の、少なくとも1つの合成画像を協働して形成し、ここで、集光要素の1つ以上の配列内の集光要素の間の間隙空間は、少なくとも1つの合成画像の形成に寄与しない。
【0006】
本明細書中で使用される語句「実質的に接触する」は、集光要素の上部又は下部(例えば頂上又はベース)のいずれかが画像アイコンと実質的に接触する又は触れることを意味することが意図される。
【0007】
本発明における使用が企図される集光要素は、屈折、反射(例えば凹面反射、凸面反射)、ハイブリッド屈折/反射、及び回折集光要素を含む。そのような集光要素の例は、Steenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,333,268号明細書、Steenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,468,842号明細書、及びSteenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,738,175号明細書に記載されており、当該特許は本明細書中に完全に記載されたかのように参照によって本明細書中に完全に援用される。本発明のマイクロスケールシステムにおいて使用される配列内の集光要素の間の間隙空間は、一般に、全体の厚さが50ミクロン未満のシステムについて、約5ミクロン以下であり、本発明のマクロスケールシステムにおける間隙空間は、一般に、サイズがより大きく、全体の厚さが1センチメートル以下のシステムについて、好ましくは約5ミリメートル以下である。反射集光要素は入射光を反射するということ、及び高い集光効率を得るために金属化されてもよいということに留意されたい。金属化のために、凹面反射又は凸面反射配列のレンズ構造の外形は、反射金属層(例えば蒸着された金属層)を備えてもよい。完全に不透明な反射金属層の代わりに、半透明の(又は部分的に金属化された)金属層、あるいは高屈折率層を備えてもよい。更に、蒸着された材料の複数の層が、反射率を提供するために使用されてもよく、例えば誘電体層から、又は金属/誘電体/金属などの金属及び誘電体層の組み合わせから形成されたカラーシフト干渉コーティング(color-shifting interference coatings)も、必要な反射率を提供してもよい。
【0008】
本発明における使用が企図される画像アイコンは、構造化画像アイコン(すなわち物理的な起伏を有する画像アイコン)である。一例示的実施形態では、画像アイコンは、必要に応じてコーティング及び/又は充填される空隙又は窪み(例えば実質的に平面的な構造内の空隙であり、この空隙が別の材料を用いて必要に応じて充填又はコーティングされる)であり、別の例示的実施形態では、画像アイコンは、隆起領域又は成形柱(例えば実質的に平面的な構造内の隆起領域)から形成される。構造化画像アイコンの例は、Steenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,333,268号明細書、Steenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,468,842号明細書、及びSteenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,738,175号明細書にも記載されている。
【0009】
予期せずに、かつ非常に驚いたことに、本発明者らは、本発明のシステムにおける集光要素の焦点距離を調節することが、光学スペーサの必要をなくすために役立つことを発見した。画像アイコンの配列(1つ又は複数)が、光学スペーサの必要なしに集光要素の配列(1つ又は複数)の焦点深度と交わり得ることが見出され、少なくとも1つの合成画像を表示することが可能な、より薄い、より簡素化されたシステムがもたらされた。その上、以下でより詳細に説明するように、本発明者らは、特定の集光要素設計が使用される場合、本発明のシステムを有価文書又は製品に転写することが、転写されるシステムのいかなる部分もベースフィルム又はキャリア基板が形成することなしに、可能であることも発見した。両方の発見により、断面厚さが減少し、表面に適用されるセキュリティ特徴としての好適性を有し、層間剥離のリスクが低減された、合成画像表示システムがもたらされた。
【0010】
本発明によって実現されるその他の利益は、耐改竄性の増加と、投射される画像のコントラスト及び明瞭性の向上とを含む。容易に理解されるように、集光要素と画像アイコンとの間に頑丈な光学スペーサがない光学システムは、一旦接合されたら、最終基板から無傷で除去することがより困難である。その上、集光要素が画像アイコンにより近ければ、投射される画像のコントラスト及び明瞭性はより高い。集光要素と画像アイコンとの間の光学スペーサフィルム(通常は二軸延伸光学スペーサフィルム)によって課される追加の厚さがないため、光散乱及び複屈折はより少ない。これは、より鮮明に見える、かつより高いコントラストを有する画像をもたらす。
【0011】
上記で触れたように、様々なシステムサイズ範囲が本発明によって企図される。マイクロスケールシステムに加えて、マクロスケールシステムも企図される。そのようなより大規模なシステムは、単体の又は完全なフィルム構造を構成してもよく、あるいは交換可能な画像アイコン配列と共に形成されてもよい。
【0012】
本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び添付の図面から、当業者にとって明らかとなるであろう。
【0013】
特に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で言及される全ての出版物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書中に援用される。矛盾がある場合は、定義を含めて本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0014】
本開示は以下の図面を参照すればよりよく理解されるであろう。図面中の構成要素は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本開示の原理を明確に説明することに重点が置かれている。
【0015】
開示される発明の特定の特徴は、本発明の以下の例示的実施形態の側断面図である添付の図面を参照することによって示される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】屈折光学システム。
図2】転写可能屈折光学システム。
図3】凹面反射光学システム。
図4】凸面反射光学システム。
図5】転写可能凹面反射光学システム。
図6】透過性フレネルレンズを使用する回折光学システム。
図7】反射フレネルレンズを使用する回折光学システム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明のシステムの例示的実施形態を図面と関連して開示する。但し、本明細書中に開示されている実施形態に本開示を限定する意図はない。むしろ、全ての代替、修正、及び等価物を含むことを意図している。例えばSteenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,333,268号明細書、Steenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,468,842号明細書、及びSteenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,738,175号明細書に記載されたものなどの追加の特徴又は機能も、本発明のシステム内に含まれてもよい。そのような追加の特徴又は機能は、更なる層へのより良好な接着のためのテクスチャ表面、接着促進剤などを含んでもよい。本発明のシステムは、従来の印刷技術又はレーザ彫刻システムを使用して形成され得るシリアル番号、バーコード、画像などの形態の、カスタマイズ又はパーソナライズされた情報などの、顕在又は秘密情報も含んでもよい。この追加機能は、合成画像と秘密情報との間の相互関係を可能にする。加えて、情報は、製造の全ての段階において、又は製造後に、様々な層上に重ね刷り又は印刷されてもよい。
【0018】
屈折システム実施形態
図1で最も良く示される第1の例示的実施形態では、本発明のシステムは、支持又はキャリア基板12を更に含む屈折光学システム10である。この実施形態では、合成画像表示システム14が、キャリア基板12の一方の側上に構築される。容易に理解されるように、キャリア基板12はシステムの光学機能に寄与しない。言い換えると、合成画像は、キャリア基板12の存在又は不透明度に関わらず表示される。
【0019】
この第1の例示的実施形態における合成画像表示システム14は、屈折集光要素16を採用し、これらはそれぞれが、表面に対して垂直に見た場合に、そのベースに実質的に接触又は接近して配置された構造化画像アイコンがその焦点深さの部分と交わるような焦点距離を有する。一般に、これらの集光要素は、非常に低いf値(例えば1以下)と、円柱面、球面、又は非球面とを有する。
【0020】
本明細書中で使用される用語「f値」は、集光要素の焦点距離(凸面リフレクタの場合は実又は虚)の、その有効レンズ直径に対する比率を意味することが意図される。
【0021】
合成画像表示システム14は、キャリア基板12に対してキャストされてもよい。キャリア基板12を形成する材料は、プラスチック、セルロース、複合体、ポリアミド(例えばナイロン6)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデンフィルム又はシート、マイラーシート、セロファン、紙、ラグ/綿、これらの組み合わせなどから選択されてもよい。
【0022】
合成画像表示システム14の構造化画像アイコン及び集光要素の配列は、アクリル樹脂、アクリル化ポリエステル、アクリル化ウレタン、エポキシ、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、ウレタンなどのような、実質的に透明又はクリアな、有色又は無色のポリマーなどの様々な材料から、押出成型(例えば押出エンボス加工、ソフトエンボス加工)、放射線硬化キャスティング、及び射出成型、反応射出成型、及び反応キャスティングなどの方法を使用して形成されてもよい。Hoffmuller(ホフミューラー)らの米国特許出願公開第2010/0109317(A1)号明細書に記載されているものなどの、(589ナノメートル、20°における)1.5、1.6、1.7、又はそれよりも高い屈折率を有する高屈折率の有色又は無色の材料も、本発明の実施において使用されてもよい。
【0023】
製造の一例示的方法は、75ゲージの接着促進PETフィルムなどのベースフィルム(すなわちキャリア基板12)に対してアイコンモールドからキャストされる放射線硬化液晶ポリマー(例えばアクリル化ウレタン)内の空隙としてアイコンを形成し、次に、ポリマーアイコン表面に対するグラビア様のドクターブレーディングによって、サブミクロン粒子の色素性着色剤を用いてアイコン空隙を充填し、次に、好適な手段(例えば溶剤除去、放射線硬化、又は科学反応)によって充填物を凝固させ、次に、ベースフィルムのアイコン側を、放射線硬化性ポリマーで充填されたレンズモールドに接するように導き、紫外線(UV)光又はその他の化学線を適用することによってポリマーを凝固させることによって、充填されたアイコンに対してレンズをキャストするというものである。
【0024】
例えばセキュリティストリップ、スレッド、パッチ、又はオーバレイの形態で使用される、マイクロスケールシステムについて、
(a)集光要素は、約50ミクロン未満(より好ましくは約25ミクロン未満、及び最も好ましくは約5~約15ミクロン)の好ましい幅(円柱状集光要素の場合)及びベース直径(非円柱状集光要素の場合)と、約50ミクロン未満(より好ましくは約25ミクロン未満、及び最も好ましくは約1~約5ミクロン)の好ましい焦点距離と、1以下(より好ましくは0.75以下)の好ましいf値とを有し、
(b)構造化画像アイコンは、全体の深さがそれぞれ好ましくは約50ナノメートル~約8ミクロンの必要に応じてコーティング及び/又は充填された空隙又は窪み、あるいは全体の高さがそれぞれ好ましくは約50ナノメートル~約8ミクロンの隆起領域又は成形柱であり、
(c)キャリア基板は、約10~約50ミクロン、より好ましくは約15~約25ミクロンの範囲の好ましい厚さを有し、
(d)本発明のシステムの全体の厚さは、好ましくは約50ミクロン未満(より好ましくは約45ミクロン未満、及び最も好ましくは約10~約40ミクロン)である。
【0025】
図2で最も良く示される第2の例示的実施形態では、本発明のシステムは、キャリア基板24と「レンズモールド」層26とから構成される微細構造含有剥離ライナー22を更に含む、転写可能屈折光学システム20である。図2は、紙基板28に適用中のシステム20を示す。(1つ以上の接着剤層を有する)屈折光学システム20は、機械的、化学的、熱的、及び光で誘起される分離技術を含む技術を使用して、転写フィルムとして別の表面に転写されてもよい。キャリア基板からの、所望される構成要素の分離の概念は、ホログラフィック箔転写の技術分野において周知であり、これにより、剥離コーティングを有するフィルム(すなわち剥離ライナー)が光学コーティング及び接着剤を備え、熱及び圧力の適用により光学コーティング及び接着剤が最終基板に転写されることが可能になる。この実施形態は、非常に薄い断面厚さを有するフィルムを必要とする適用例において特に有用である。
【0026】
本例示的実施形態によって、発明者らは、合成画像表示光学系が実際にキャリアフィルムから首尾よく分離され得るという驚くべき発見をした。当業者によって容易に理解されるように、本明細書中に記載される集光要素の山及び谷形状は、光学構造が、キャリアフィルムからの分離をより容易にするより小さな表面積及びより低いアスペクト比の微細構造特徴を有する、より平坦なフィルム又は箔(例えばホログラム)と比較して、キャリアフィルムからの剥離に対してより抵抗性があることを意味する。その上、不適切な分離操作は、転写されるシステムに不均一な応力が加えられることを引き起こし、合成画像を投射するこれらのシステムの能力に悪影響を及ぼす。本発明の合成画像表示光学系は、転写される構造の体積内での集光に依拠し、加えられる応力は、構造の体積内に歪みを発生させる可能性がある。本明細書中に記載される技術及び光学構造を利用することによって、これらの困難は克服される。
【0027】
図2を再び参照すると、合成画像表示システム30が、「レンズモールド」層26を介して剥離ライナー22に剥離可能に結合されて示されている。「レンズモールド」層26は、一般に、厚さが3~50ミクロンの間の硬化性樹脂(例えばポリエステルアクリレート)層であり、キャリア基板24は、一般に、15~50ミクロンのUV透過性フィルム(例えばPETフィルム)である。
【0028】
省略可能な強化層32が、合成画像表示システム30の構造化画像アイコンの配列上に示されている。システム30がキャリア基板24及び「レンズモールド」層26より高い剛性又は曲げ抵抗を有するようにすることによって、プロセス性能が向上する。強化層32は、エネルギー硬化性アクリレートから作られてもよく、1~10ミクロンの間の好ましい厚さを有する。強化層32に加えて又はその代わりに、1つ以上のシーリング層が構造化画像アイコンの配列に適用されてもよい。そのようなシーリング層は、エネルギー硬化性アクリレート(例えば、着色又は補強特性を有する有機又は無機充填剤を含むエネルギー硬化性アクリレート)から、あるいはアクリル樹脂、エポキシ、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PAV)などのような、溶剤又は水ベースのコーティングから作られてもよく、そして、1~10ミクロンの間の厚さを有してもよい。
【0029】
図2では、強化されたシステム30上に接着剤層34が示されている。接着剤層34は、アクリル樹脂、シアノアクリレート、エポキシ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ゴム、及びシリコーンを含む、これらの対象面の間の接合を提供するように選択された熱活性型接着剤(すなわちホットメルト又はヒートシール接着剤)、感圧性接着剤、あるいは任意の熱硬化性又は熱可塑性接着剤系から作られてもよい。接着剤層34は、好ましくは、半硬化した熱活性型接着剤から作られ、1~100ミクロンの間の好ましい厚さを有する。熱活性型接着剤の一般的な活性化温度は約70~約170℃の範囲であってもよく、一方、圧力活性型接着剤に対しては、接着剤を活性化するために追加の熱は必要とされない。
【0030】
本発明の転写可能屈折光学システムを製造する一例示的方法は、キャリアフィルム(例えばUV透過性キャリアフィルム)に接着された「レンズモールド」層を含む微細構造含有剥離ライナーを形成することと、
ここで、「レンズモールド」層は、負レンズ形状を有する複数の空隙を有する硬化性樹脂から形成され、負レンズ形状は、正レンズ形状を有する硬質の表面(すなわち正レンズモールド)に対して樹脂をUV硬化させることによって作られ、
微細構造含有剥離ライナーの「レンズモールド」層上に、転写可能屈折光学システムを形成することであって、
微細構造含有剥離ライナーの「レンズモールド」層を硬質のアイコンモールドに対して配置し、「レンズモールド」層及び硬質のアイコンモールドの両方の複数の空隙を光学機能UV硬化性液晶ポリマー(例えばポリエステルアクリレート)が充填し、ニップローラーを用いて圧力をかけて余分な液晶ポリマーを除外し、同時に、UV硬化性ポリマーが硬化され又は固められてアイコンモールドから持ち上げられることが可能なように液晶ポリマーをUV放射に露光し(当業者によって容易に理解されるように、光学機能ポリマーは、「レンズモールド」層と硬質のアイコンモールドとの間で材料が硬化された後の持ち上げのプロセスを乗り越えて、アイコンモールドから持ち上げられるように、剥離ライナーの「レンズモールド」層への十分な付着性を有さなければならない)、
複数の画像アイコンを、光学機能ポリマーとのコントラストを提供する材料(例えばUV硬化性フレキソ印刷インキ)を用いて充填して、充填された画像アイコン層を必要に応じて形成し、
1つ以上のシーリング層、強化層、着色又は染色層、不透明化層、又はこれらの組み合わせを、充填された画像アイコン層に必要に応じて適用し、
1つ以上の接着剤層(例えば、半硬化した熱活性型接着剤層)を、必要に応じてシーリング、強化、着色/染色、及び/又は不透明化された、充填された画像アイコン層に適用することによって、転写可能屈折光学システムを形成することとを含む。
【0031】
作られた後、転写可能屈折光学システム20は、従来の転写箔と同様に取り扱われてもよく、すなわち、この材料はロールへの巻き付け及びロールからの巻き出しが可能であり、更に、セキュリティ印刷及び包装業界において一般的な変換方法によってパッチ、スレッド、又はシートなどの好適な最終形状に変換されることが可能である。合成画像表示システム30を剥離ライナー22から転写するために、システム20の接着剤側が、所望される最終基板(例えば紙基板28)と接触して配置される。熱及び/又は圧力が加えられて、接着剤層34内の接着剤が基板28にしっかりと接合される。次に、「レンズモールド」層26を有する剥離ライナー22が剥がされ、所望される合成画像表示システム30が後に残される。
【0032】
上記の説明から容易に理解されるように、この技術を使用して確実に分離を発生させるためには、相対的な接合強度が以下のように制御されなければならない。
最も強い接合強度
接着剤層34-紙基板28
「レンズモールド」層26-キャリア基板24
中程度の接合強度
硬化した光学機能ポリマー-正レンズモールド
最も弱い接合強度
硬化した光学機能ポリマー-硬質のアイコンモールド
【0033】
プロセス条件及び最終製品要件に応じて接合強度はより高くても低くてもよいが、相対的な界面接合強度は前述のように維持されなければならない。例えば、硬化した光学機能ポリマーが硬質のアイコンモールドに非常に強力に接合する場合、これが最小接合強度値を定め、その他の全ての接合はこれに応じてより強く調節されなければならない。
【0034】
反射システム実施形態
図3で最も良く示される第3の例示的実施形態では、本発明のシステムは、支持又はキャリア基板38を更に含む凹面反射光学システム36である。この実施形態では、合成画像表示システム40が、キャリア基板38の一方の側上に構築される。
【0035】
この例示的実施形態における合成画像表示システム40は、凹面反射集光要素42を採用し、これらはそれぞれが、表面に対して垂直に見た場合に、その頂点又は最高点に実質的に接触又は接近して配置された構造化画像アイコン44がその焦点深さの部分と交わるような焦点距離を有する。これらの反射集光要素は、高い集光効率を得るために反射材料がコーティングされる。例えば、集光要素は、アルミニウム、クロム、銅、金、ニッケル、銀、ステンレス鋼、スズ、チタン、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、二酸化チタン、又は所望されるレベルの反射率を提供するその他の材料などの反射材料がコンフォーマルコーティングされてもよい。この反射材料は、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、又はその他の好適なプロセスを使用して、約50ナノメートル~約2ミクロンの範囲の厚さにおいて適用されてもよい。反射層を保護するために保護コーティングが次に適用されてもよい。保護コーティングは、エネルギー硬化性アクリレート(例えば、着色又は補強特性を有する有機又は無機充填剤を含むエネルギー硬化性アクリレート)から、あるいはアクリル樹脂、エポキシ、EVA、ポリウレタン、PAVなどのような、溶剤又は水ベースのコーティングから作られてもよく、そして、約1~約10ミクロンの範囲の厚さにおいて適用されてもよい。
【0036】
一般に、これらの集光要素は、好ましくは約1未満の、及びより好ましくは約0.25~約0.50の間の非常に低いf値と、円柱面、球面、又は非球面とを有する。上述のように、f値は、集光要素の焦点距離の、その有効レンズ直径に対する比率を意味する。球状凹面リフレクタの場合、焦点距離は曲率半径を2で割った値に等しい。
【0037】
約1より大きいf値を有する反射集光要素の場合、画像アイコン層上への集光のために必要とされる光学分離は、大きすぎて、光学スペーサを使用しなければ実際的ではない。約0.25未満のf値の場合、リフレクタの焦点はリフレクタの体積内(すなわち、リフレクタの山及び谷によって囲まれる領域内)にあり、そのベースにおいて形成される画像アイコン層に対して焦点が合わない。従って、光学スペーサを使用せずに焦点の合った合成画像を表示するために、約1~約0.25の間のf値が本発明では好ましい。
【0038】
合成画像表示システム40は、エネルギー硬化性ポリマーを使用したキャスティング及び微細構造モールドからの剥離の方法による、構造化画像アイコン及び集光要素の形成の間に、キャリア基板38に対して形成されてもよい。好適なキャリア基板は、第1の例示的実施形態で説明したものを含む。同様に、合成画像表示システム40の構造化画像アイコン及び集光要素の配列は、第1の例示的実施形態に関して上記で識別された材料から形成されてもよい。
【0039】
マイクロスケールシステムの好ましい寸法も、第1の例示的実施形態について識別されたものと同じである。例えば看板のために、あるいは自動車のステッカー又は全面広告の形態で使用される、マクロスケールシステムについては、
(a)集光要素は、約250ミクロン~約1ミリメートル(mm)の範囲の、及び約50~約250ミクロンの範囲の幅/ベース直径を含む(但しこれに限定されない)、約1~約10mmの範囲の好ましい幅/ベース直径と、約25ミクロン~約5mm(より好ましくは約250ミクロン~約1mm)の範囲の好ましい焦点距離と、約1以下(より好ましくは約0.5以下)の好ましいf値とを有し、
(b)構造化画像アイコンは、全体の深さがそれぞれ好ましくは約5センチメートル(cm)~約1ミクロンの必要に応じてコーティング及び/又は充填された空隙又は窪み、あるいは全体の高さがそれぞれ好ましくは約5cm~約1ミクロンの隆起領域又は成形柱であり、
(c)キャリア基板は、約25ミクロン~約5mm、より好ましくは約250ミクロン~約1mmの範囲の好ましい厚さを有し、
(d)本発明の屈折光学システムの全体の厚さは、好ましくは約1cm以下であり、約250ミクロン~約1cmの範囲、約50~約250ミクロンの範囲、及び約50ミクロン未満の厚さを含む(但しこれらに限定されない)。
【0040】
本発明によって企図されるマクロスケール反射光学システムは、従来の印刷技術(例えば従来のインクジェット又はレーザ印刷)を使用して形成される画像アイコンを採用してもよい。これらのシステムは、上述の寸法(例えば約1~約10ミリメートルの範囲の幅/ベース直径)を有する反射集光要素(例えば凹面反射、凸面反射、反射回折)の1つ以上の配列と、集光要素の1つ以上の配列と実質的に接触するがそれらの中に完全に埋め込まれるわけではない、印刷された画像アイコンとから構成される。印刷された画像アイコンは、約1ミリメートル以下の線幅を有する。当業者によって容易に理解されるように、より細い線幅が使用される場合、これらの比較的大きな集光要素によって提供されるデザイン空間内に、より詳細なデザインが適用され得る。
【0041】
図4で最も良く示される第4の例示的実施形態では、本発明のシステムは、支持又はキャリア基板48を更に含む凸面反射光学システム46である。各凸面反射集光要素50の表面は、観察者に向かってこれが「膨れ出る」ようなものである。これらの集光要素は、遠くの光源によって照らされた場合に表面上に明るい光点52が現れるという意味において「光沢がある」。明るい光点52は「鏡面ハイライト」と呼ばれる。
【0042】
表示システム46の画像アイコンが凸面反射集光要素の上に位置する場合、観察者は、鏡面ハイライトが画像アイコンによって遮られること、又はそれらが画像アイコンによって遮られないことのいずれかを見る。言い換えると、凸面反射集光要素50の配列は、構造化画像アイコン54の配列と結合された場合、遮られた及び遮られていない鏡面ハイライトのパターンを形成する。このパターンが合成画像を形成する。
【0043】
一般に、これらの集光要素は、好ましくは約1未満の、より好ましくは約0.25~約0.50の間の非常に低いf値と、球面又は非球面とを更に有する。
【0044】
本明細書(並びに、Steenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,333,268号明細書、Steenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,468,842号明細書、及びSteenblik(スティーンブリック)らの米国特許第7,738,175号明細書)に記載された方法によって作られる集光要素に加えて、凸面又は凹面タイプのマクロスケール反射集光要素は、別個の離散的構造を構成してもよく、又はこれらの離散的構造からのキャスティングによって形成されてもよい。例えば、金属製のボールベアリングが、平面上の規則的な密充填配列にまとめられて、凸面リフレクタの配列を形成してもよい。透明フィルムをボールベアリング配列の上に配置することによって(透明フィルムは、同じ充填配列を有する画像アイコンの配列をその表面上に有し、画像アイコンの配列は、ボールベアリング配列のピッチを基準にしてスケーリングされたピッチを有する)、マクロスケール合成画像表示システムが次に形成されてもよい。
【0045】
凸面リフレクタのこのようなシステムは、ディスプレー又は広告板設置において有用な可能性があり、この場合、ボールベアリング(例えば直径3.18mmの高度に研磨されたステンレス鋼)は、例えばエポキシを用いて、又は本溶接によって、硬質の平坦なバッキング面に永久的に接合される。このタイプの設置では、画像アイコンは、(例えば大判インクジェット広告板印刷装置による)従来のインクジェット又はレーザ印刷によって、好適な透明の印刷可能フィルム又はプラスチックシート(例えば厚肉透明広告板ビニル)上に印刷され、印刷された側をボールベアリング配列に向けて、ボールベアリングに対してオーバレイされてもよい。印刷された配列はフレームによってボールベアリングから保護されてもよく、又は、印刷が半永久的接着剤によって覆われ、次にボールベアリングの配列に接着されてもよい。従来の広告板設置で一般的なように、印刷されたオーバーレイは、その後、必要に応じて除去されて新たなグラフィックスに置き換えられてもよい。
【0046】
最終ディスプレーにおける離散的反射要素の使用のコスト及び重量を低減させるための代替のアプローチは、上述のように、離散的凸面反射要素の1つの永久的配列を最初に形成することである。次に、エポキシ又は離型剤を用いて所望されるレベルまで配列の間隙空間を充填することによって焦点距離が調整されてもよく、続いてこの配列からポリマーレプリカがキャストされる。マクロスケールモールド形成の技術分野において周知の技術(例えば真空形成、熱成型、樹脂キャスティングなど)を使用することによって、凹面レンズ形状を有する硬質のシートが形成され、永久的モールドから除去されてもよい。除去されたら、硬質のシートは(例えば物理蒸着法、溶液堆積法、電気めっき法などによる)反射コーティングを用いて金属化されてもよく、その結果、凹面反射合成画像表示システムとしての設置のための準備が整う。(上述のような)印刷されたグラフィック配列をリフレクタ配列と接触して配置することによって、合成画像が形成されてもよく、大判ディスプレーシステムがもたらされる。
【0047】
これらの配列の寸法は、必要とされる視距離に合わせて必要に応じて修正されてもよい。例えば、約90メートルの視距離は、約8mm~約1cmの個々のリフレクタ直径を必要とすると見積もられる。
【0048】
前述のシステム実施形態と同様に、合成画像表示システム56は、第3の例示的実施形態について識別されたものと同じ使用材料及びシステム寸法を用いて、キャリア基板48に対してキャストされてもよい。
【0049】
図5で最も良く示される第5の例示的実施形態では、本発明のシステムは、特に、キャリア基板62と剥離コーティング64とから構成される剥離ライナー60を更に含む、転写可能凹面反射光学システム58である。図5は転写可能凹面反射光学システムに関するが、上述の凸面反射光学システムも転写可能である。
【0050】
図5は、合成画像表示システム68が剥離ライナー60に剥離可能に結合された、紙基板66に適用中のシステム58を示す。一般に、剥離コーティング64は、周囲条件における接合を可能にし、次に機械的、化学的、熱的、及び光で誘起される分離技術を使用して転写時に剥離される、1~10ミクロンの間の厚さにおいて適用される機能性剥離コーティングである。例えば、熱及び圧力活性型の剥離が望ましい場合、キャリア基板62(例えば15~50ミクロンの間の厚さを有するUV透過性PETフィルム層)は、周囲温度において良好な付着性を有するコーティングであって、しかし、例えば連続ウェブプロセスにおいて熱及び圧力を適用するデスクトップドキュメントラミネータ内又は工業用箔押し機上での、ラミネート時の熱及び圧力の適用で軟化及び剥離する、コーティングを含む。好適な機能性剥離コーティングの例は、以下に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、又は炭化水素蝋などの、低表面エネルギー材料を含む。所望される温度における剥離を提供するための、適切なガラス転移温度(Tg)を有する粘着付与樹脂及びモノマーを用いて配合された、高温において接合強度が大幅に弱まる感圧性接着剤も好適である。
【0051】
反射層(例えば蒸着された金属層)70、省略可能な保護コーティング72、及び接着剤層74が、集光要素76の配列上に示されている。反射層は、アルミニウム、クロム、銅、金、ニッケル、銀、ステンレス鋼、スズ、チタン、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、二酸化チタン、又は所望されるレベルの反射率を提供するその他の材料を使用して作られる、コンフォーマルコーティングされる反射層である。この層は、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、又はその他の好適なプロセスを使用して、約50ナノメートル~約2ミクロンの範囲の厚さにおいて適用されてもよい。反射層を保護する働きをする省略可能な保護コーティング72は、エネルギー硬化性アクリレート(例えば、着色又は補強特性を有する有機又は無機充填剤を含むエネルギー硬化性アクリレート)から、あるいはアクリル樹脂、エポキシ、EVA、ポリウレタン、PAVなどのような、溶剤又は水ベースのコーティングから作られてもよく、約1~約10ミクロンの範囲の厚さにおいて適用されてもよく、一方、接着剤層は、アクリル樹脂、シアノアクリレート、エポキシ、ポリイミド、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、ゴム、及びシリコーンを含む、これらの対象面の間の接合を提供するように選択された熱活性型接着剤(すなわちホットメルト又はヒートシール接着剤)、感圧性接着剤、あるいは任意の熱硬化性又は熱可塑性接着剤系から作られてもよく、好ましくは、半硬化した熱活性型接着剤(例えば水ベースのポリウレタン)から作られ、約1~約10ミクロンの範囲の厚さにおいて適用される。
【0052】
本発明の転写可能反射光学システムを製造する一例示的方法は、
硬化性樹脂材料を剥離ライナー(例えば、機能性剥離コーティングを有する滑らかな又は非構造化キャリア基板)の表面に適用し、表面を硬質のアイコンモールドに対して硬化させて、硬化性樹脂材料の表面内に、空隙の形態での画像アイコンの1つ以上の配列を形成し、
硬化性樹脂材料とのコントラストを提供する材料を用いて空隙を充填して、充填された画像アイコン層を形成し、充填された画像アイコン層の表面に硬化性樹脂材料を適用し、負レンズ形状を有する硬質の表面(すなわち負レンズモールド)に対して樹脂を硬化させて、硬化性樹脂材料の表面上に集光要素の1つ以上の配列を形成し、
金属又はその他の反射材料のコンフォーマルコーティングを集光要素に適用して、反射集光要素の1つ以上の配列を形成し、
必要に応じて、1つ以上の保護コーティング層を反射集光要素の1つ以上の配列に適用し、
1つ以上の接着剤層(例えば、半硬化した熱活性型接着剤層)を、反射集光要素の、1つ以上の必要に応じて保護コーティングされた配列に適用することを含む。
【0053】
もたらされるフィルム状構造は、従来の転写フィルムと同様に処理/変換/転写されてもよい。言い換えると、この構造は対象基板(例えば紙幣、ID文書、又は製品パッケージ)と接触させられてもよく、そして、熱及び圧力が加えられたら、剥離ライナーが完全に剥がされて、合成画像表示システムのみが最終基板上に残されてもよい。
【0054】
本発明のシステムを対象基板に転写する連続転写プロセスの一例では、Leonard Kurz Stiftung & Co.KG(レオナード・クルツ・シュティフトゥンク・ウント・コー・カーゲー)から入手可能なホットスタンピングマシン(モデル番号MHA840)を採用する。このプロセスでは、最大6つのフィルム状構造の形態のシステムが、原紙上に(横方向(CD)で)正しく位置合わせして配置され、ホットスタンピングマシン上のカウンターホイールペア(counter wheel pairs)がフィルム状構造に圧力(550ニュートン(N)/ホイール)を加え、これにより、半硬化した熱活性型接着剤層の活性化が引き起こされる。次に、剥離ライナーが基本構造から分離されて、共通シリンダー上に巻き戻される。一般的なマシン設定は、速度(100~120メートル/分)、温度(135~160℃)である。
【0055】
一般的に言えば、反射システムが最終基板(例えば紙)に確実に転写されるためには、基板と反射システムとの間の接着剤接合強度が、反射システムを剥離ライナーに保持する接合より大きくなければならない。そのような配列のための一般的な接合強度は、反射システムと基板との間の接合について10~100ニュートン毎平方インチ(N/in)(1.55~15.5N/cm)の範囲内、及び反射システムと剥離ライナーとの間の接合について0.1~10N/in(0.0155~1.55N/cm)の範囲内であってもよい。
【0056】
回折システム実施形態
第6の例示的実施形態では、本発明のシステムは、必要に応じて転写可能な回折光学システムである。回折集光要素も入射光の集束を提供し、これらの集光要素を使用して作られたシステムは、同程度のf値を有する上述の屈折及び反射システムより薄く、回折光学システムの全体の厚さは約3~約50ミクロン(好ましくは約5~約10ミクロン)の範囲である。
【0057】
本発明の回折光学システムでは、上述の屈折及び反射システムで使用された集光要素について識別されたものと同じ材料を使用して作られた回折集光要素を採用する。これらの回折集光要素は、約100ミクロン未満(より好ましくは約75ミクロン未満、及び最も好ましくは約15~約50ミクロン)の好ましい幅/ベース直径を有する。
【0058】
これらの回折集光要素は、回折フレネルレンズ、フレネルゾーンプレートレンズ、ハイブリッド屈折/回折レンズ、及びこれらの組み合わせの群から選択される。一例示的実施形態では、回折フレネルレンズが使用され、そのようなレンズのそれぞれは、共通の焦点を有する一連の同心環状リングを有する。同心リングは共通平面内にあるため、各レンズは同様のf値を有する屈折レンズと比較して極めて平坦となる。相次ぐリングは、連続した曲率を最大効率のために有してもよく、あるいは、曲率は任意の数のステップ又は位相レベルによって近似されてもよい。最も単純な回折フレネルレンズ近似は、2つのみのステップを有し、フレネルゾーンプレート又はバイナリフレネルレンズとして知られている。より複雑な近似は、複雑さが増す順に、クォータナリ(quaternary)、8レベル、16レベル、及びアナログである。好ましい実施形態では、回折フレネルレンズはアナログプロファイルレンズである。
【0059】
本発明の回折光学システムで使用される構造化画像アイコンは、上述の屈折及び反射システムで使用されるものと同様である。
【0060】
回折集光要素は、波長の変化に影響されやすく、強い色収差を受けることが知られている。しかし、本発明のシステムでは、回折集光要素は、透過性(図6の回折光学システム78を参照)又は反射性(図7の回折光学システム80を参照)のいずれかである。どちらのシステムでも、構造化画像アイコンは、関連する回折集光要素(例えばフレネルレンズ)の焦点深さと交わり、これは光学スペーサを使用せずに達成される。
【0061】
必要に応じて転写可能な透過性回折光学システム78は、屈折レンズモールドの形状が、回折レンズを生成するのに好適な形状に置き換えられることを除き、第1の例示的実施形態と同じ方法及び材料構成を使用して生成される。この光学システムは、また、第2の例示的実施形態で詳述した技術を使用して、そのキャリア基板から転写されてもよい。
【0062】
必要に応じて転写可能な反射モード回折光学システム80は、反射レンズモールドの形状が、反射スタイルの回折レンズを生成するのに好適な形状に置き換えられ、続いてこれが金属化されることを除き、第3の例示的実施形態と同じ方法及び材料構成を使用して生成される。この光学システムは、第5の例示的実施形態で詳述した反射性転写のための技術を使用して、そのキャリア基板から同様に転写されてもよい。
【0063】
本発明は、本発明のシステムから作られた、又は本発明のシステムを使用した繊維質及び非繊維質のシート材料、並びに、これらの材料から作られた文書を更に提供する。本明細書中で使用される用語「文書」は、紙幣又は貨幣、債券、小切手、トラベラーズチェック、宝くじ券、郵便切手、株券、権利証書などの経済的価値を有する任意の種類の文書、あるいはパスポート、IDカード、運転免許証などの身分証明書、あるいはラベルなどの非セキュア文書を示す。本発明の光学システムは、また、物品(消費者向け又は非消費者向け物品)、及び、これらの物品と共に使用されるバッグ、パッケージ、又はラベルと共に使用することが企図される。
【0064】
本発明のシステムの、その他の企図される最終使用適用例は、広告及びマルチメディアディスプレー(例えば広告板、交通及び工業安全標識、マーケティング又は展示会の目的のための商業ディスプレー)、車両の外観を向上させるための製品(例えばステッカー、全面広告)、装飾ラップ及び壁紙、シャワーカーテン、芸術ディスプレーなどのような、より大きな寸法の画像を投射する製品を含む。
【0065】
本発明のその他の特徴及び利点は、詳細な説明及び添付の図面から、当業者にとって明らかとなるであろう。特に定義しない限り、本明細書中で使用される全ての技術及び科学用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中で言及される全ての出版物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、それらの全体が参照によって本明細書中に援用される。矛盾がある場合は、定義を含めて本明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7