IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイアンウッド ファーマシューティカルズ インコーポレイテッドの特許一覧

特開2022-93472リナクロチドの改変放出製剤または遅延放出製剤による過敏性腸症候群の処置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093472
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】リナクロチドの改変放出製剤または遅延放出製剤による過敏性腸症候群の処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20220616BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20220616BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220616BHJP
   C07K 7/00 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K9/30
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/32
A61P1/00
A61P1/10
A61P25/04
C07K7/00 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022073214
(22)【出願日】2022-04-27
(62)【分割の表示】P 2019533167の分割
【原出願日】2017-12-21
(31)【優先権主張番号】62/437,566
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511039371
【氏名又は名称】アイアンウッド ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】アハマド ハシャシュ
(57)【要約】
【課題】リナクロチドの改変放出製剤または遅延放出製剤による過敏性腸症候群の処置方法の提供。
【解決手段】本発明は、リナクロチドを含む遅延放出医薬組成物の治療有効量を投与することによって、障害、例えばGI障害、またはGIもしくは非GI障害と関連する症状を有する患者を処置するための方法を提供する。リナクロチドの遅延放出組成物が必要とされているにもかかわらず、リナクロチドの固有の化学的不安定性に起因して、例えば、湿気誘導性の分解反応、例えば、加水分解、脱アミド、異性化および多量体化によって、かかる製剤を調製するにあたっては困難が存在する。本願は、この課題を解決するための手段を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、胃腸(GI)障害、例えば、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)、およびGIまたは非GI障害と関連する症状、例えば腹部疼痛を含む種々の適応症を処置するための、リナクロチドを含む遅延放出医薬組成物の使用に関する。
配列表
【0002】
優先権の主張
本出願は、2016年12月21日に出願された米国仮特許出願番号第62/437,566号への米国特許法第119条(e)項の下の優先権を主張しており、この仮特許出願の全体の内容は、参考として本明細書によって援用される。
【0003】
配列表
本出願は、2017年12月20日に作成され、本明細書と共に電子的に提出された表題「IW196PCT1_ST25.txt」(4,514バイト)の配列表を、その全体を参照として取り込む。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
米国では、数千万人もの成人が、胃腸(GI)障害、例えば、過敏性腸症候群(IBS)、慢性特発性便秘(CIC)、憩室炎および潰瘍性大腸炎に罹患している。他の多くの人々が、GIまたは非GI障害と関連する腹部の疼痛、不快感および膨満などの症状に罹患している。米国では、推定1300万人の成人が、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)に罹患している。IBS-cは、変更された排便習慣と関連する腹部の疼痛、不快感および膨満によって特徴付けられる慢性の機能性胃腸障害である。これらの障害を処置するための現在利用可能な治療はほとんどなく、そのような治療は不満の率が高い。IBS-cなどのGI障害に罹患している患者は、肉体的、心理的、社会的および経済的に影響され得る。
【0005】
過敏性腸症候群(IBS)のローマIII診断基準は、以下のうち2つまたはそれより多くと関連する、診断の少なくとも6ヶ月前に開始した、診断前の3ヶ月間にわたって1ヶ月に3日よりも多い再発性の腹部の疼痛または不快感を含む:
a.腹部の不快感または疼痛が、排便によって軽減される;
b.症状の開始が、便の頻度における変化と関連する;
c.症状の開始が、便の形態または外観における変化と関連する。
【0006】
ローマIII診断基準は、患者における便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)を、少なくとも25%のBMと共に硬い便または塊状の便(ブリストル便性状スケール1~2)を有し、25%未満のBMと共に軟便または水様便(ブリストル便性状スケール6~7)を有するとしてさらに定義している。
【0007】
IBS-cを有する患者は、(i)便秘と正常便との間での変更、および(ii)摂食によって一般に誘発される、下部腹部の痙攣、痛みまたは不快感を含む症状を報告する場合もある。
【0008】
参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第7,304,036号および同第7,371,727号は、胃腸(GI)障害の処置のための、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体のアゴニストとして作用するペプチドを開示している。開示された1つの特定のペプチドは、リナクロチドであり、これは、以下のアミノ酸配列からなる:Cys Cys Glu Tyr Cys Cys Asn Pro Ala Cys Thr Gly Cys Tyr。リナクロチドは、
【化1】
の化学構造を有する。
【0009】
リナクロチドは、経口投与され、米国では便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)および慢性特発性便秘(CIC)の処置のためにFDAによって承認されている。ヒトでは、リナクロチドは、内臓疼痛を低減させること、膨満を低減させることおよびGI通過を加速させることを含め、GI生理学に影響を与え、これが、便の頻度を増加させ、便の硬さを改善し得ることが示されている。経口投与されたリナクロチドは、腸の管腔表面においてGC-C受容体に結合しそれを活性化することによって、局所的に作用する。GC-C受容体は、哺乳動物における腸機能の重要な調節因子であり、GI管の管腔表面の至る所で見出される。GC-C受容体は、内因性ホルモンであるグアニリンおよびウログアニリンに対して応答し、熱安定性エンテロトキシンファミリー由来の腸内細菌ペプチド(STペプチド)に対して応答する。リナクロチドがGC-C受容体に結合すると、セカンドメッセンジャーであるサイクリックGMP(c-GMP)の細胞内上昇、ならびに塩化物および重炭酸塩の分泌における増加が生じ、それが腸液分泌における増加を生じ、腹部疼痛を低減させる。
【0010】
FDAによる承認においては、リナクロチドは、薬物層状化ビーズをゼラチンカプセル中に充填することによって製造された経口固体即時放出カプセル製剤として投与される。GI管の至る所でのGC-C受容体の高い発現に起因して、即時放出製剤からのリナクロチドは、上部GI管から始まってGC-C受容体を活性化し、顕著な量の腸液を下部GI管にもたらす。この効果を低減または和らげるために、胃腸管の遠位または下部区画におけるリナクロチドの放出を標的化した遅延放出組成物が必要とされる。リナクロチド放出のために下部GIを標的化することは、過剰な腸液分泌を回避することを助けるが、同時にGI障害の腹部および腸症状を処置するためのリナクロチドの有効性を維持または改善することも助け得る。
【0011】
腸溶性コーティングまたはpH応答性ポリマーの使用を含む種々の製剤化技術が、薬学的に活性な薬剤のための遅延放出組成物を開発するために使用されてきた。しかし、これらの組成物の具体的な成分は、大きく変動し、特定の薬学的に活性な薬剤および所望の特性に著しく依存する。例えば、製剤は、薬学的に活性な薬剤と適合性でなければならず、必要な溶解性能および安定性特性も提供しなければならない。
【0012】
リナクロチドは、GI管における内臓疼痛を低減させることが以前に実証されており、これは、cGMPの増加によって媒介されると考えられる。動物研究は、経口投与されたリナクロチドが、結腸過敏症および痛覚過敏を処置できることを示している。しかし、腸管の還元的環境に起因して、経口リナクロチド用量の多くは、遠位結腸に達する前に分解されることが公知である。リナクロチドで処置されたヒトボランティアでは、経口用量の約5%のみが、大便中で見出される。下部GIを標的化するリナクロチドの遅延放出(「DR」)組成物は、結腸へのより高い用量のリナクロチドの送達を可能にすることによって、種々のGI障害と関連する疼痛を軽減することに向けてリナクロチドの有効性を改善し得る。リナクロチドのかかるDR組成物は、下部GIにおいてリナクロチドを優勢に(または完全に)放出する潜在力を有する。結果として、例えば、DR製剤または組成物は、下部GI関連障害を処置する増加した能力を有し得る。驚くべきことに、経口投与されたリナクロチドは、非GI組織における内臓疼痛も低減させることが実証されており、リナクロチドを介した内臓疼痛軽減の機構が、分泌を促進することによってのみ媒介されるわけではないというさらなる証拠を提供している。この結果は、その分布がGIに限定されるcGMPモジュレーターが、疼痛を軽減でき、身体の他の部分において疼痛を軽減するための治療として使用され得ることを示唆している。しかし、非便秘患者について、リナクロチドが、非GI組織における内臓疼痛(例えば、潰瘍性大腸炎、憩室炎、IBS、過活動膀胱症候群、膀胱過敏症または結腸炎誘導性の膀胱求心性活動亢進など)の処置のための有用な治療であるためには、リナクロチドの分泌促進効果を低減または排除することが必要である。このように、一態様では、リナクロチドの、内臓疼痛を軽減する効果から、分泌を促進する効果を少なくとも部分的にまたは完全に分離する手段を開発することが必要である。
【0013】
さらに、例えば、これは、上部GIにおいてGC-C受容体を活性化しないことによって、より低い全体的腸液分泌を引き起こすので、即時放出投薬形態よりも低い発生率で有害事象(例えば、下痢)を引き起こす能力を有し得る。これは、疼痛などのGI障害の症状を処置するためのリナクロチドの有効性を維持しまたはさらには改善しつつ、実現される。
【0014】
リナクロチドの遅延放出組成物が必要とされているにもかかわらず、リナクロチドの固有の化学的不安定性に起因して、例えば、湿気誘導性の分解反応、例えば、加水分解、脱アミド、異性化および多量体化によって、かかる製剤を調製するにあたっては困難が存在する。これらの困難は、より低い投薬量のリナクロチドを有する製剤を産生する場合、深刻になり得る。
したがって、胃腸管の標的化された領域へのリナクロチドの安定かつ信頼性のある送達を提供する遅延放出組成物が必要とされている。リナクロチドの遅延放出組成物を投与することによってIBS-cを処置する方法もまた、必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,304,036号明細書
【特許文献2】米国特許第7,371,727号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の要旨
一般に、本発明は、障害、例えば、胃腸(GI)障害(例えば、IBS-c)、またはGIもしくは非GI障害と関連する症状(例えば、腹部疼痛)を処置する方法に関する。
【0017】
本発明の一態様は、リナクロチドの投与と関連する有害事象の発生率または重症度を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を対象に経口投与するステップを含み、錠剤が、即時放出投薬形態のリナクロチドの等しい用量の投与と比較した場合に対象のより下部のGIにおいてリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングを含み、遅延放出医薬錠剤組成物が、対象において便秘および/または疼痛を処置するための治療有効量のリナクロチドをさらに含む、方法である。
【0018】
本発明の別の態様は、対象においてリナクロチドの投与と関連する有害事象の発生率または重症度を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含み、錠剤が、対象において便秘および/または疼痛を処置するための治療有効量のリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングを含む、方法である。
【0019】
本発明の別の態様は、リナクロチドの腸液分泌促進効果を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を対象に経口投与するステップを含み、錠剤が、対象の下部GIにおいてリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングをさらに含む、方法である。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、非便秘対象において内臓または腹部の疼痛を処置する方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含み、錠剤が、対象の胃において、対象における分泌を誘導するのに有効な量未満の量のリナクロチドを放出する腸溶性コーティングおよびpH感受性ポリマーをさらに含む、方法である。
【0021】
本発明の別の態様は、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)を処置する方法であって、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に経口投与するステップを含む、方法である。
【0022】
本発明のなお別の態様は、腹部疼痛を処置する方法であって、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に経口投与するステップを含む、方法である。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
リナクロチドの投与と関連する有害事象の発生率または重症度を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を対象に経口投与するステップを含み、前記錠剤が、即時放出投薬形態のリナクロチドの等しい用量の投与と比較した場合に前記対象のより下部のGIにおいてリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングを含み、前記遅延放出医薬錠剤組成物が、前記対象において便秘および/または疼痛を処置するための治療有効量のリナクロチドをさらに含む、方法。
(項目2)
対象においてリナクロチドの投与と関連する有害事象の発生率または重症度を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含み、前記錠剤が、pH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングを含み、前記遅延放出医薬錠剤組成物が、前記対象において便秘および/または疼痛を処置するための治療有効量のリナクロチドを放出する、方法。
(項目3)
前記有害事象の発生率または重症度における低減が、即時放出投薬形態のリナクロチドの等しい用量の投与と比較した、前記有害事象の発生率または重症度における低減である、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記有害事象が下痢である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記有害事象の発生率が低減される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記有害事象の重症度が低減される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
リナクロチドの腸液分泌促進効果を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を対象に経口投与するステップを含み、前記錠剤が、前記対象のより下部のGIにおいてリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングをさらに含む、方法。
(項目8)
非便秘対象において内臓または腹部の疼痛を処置する方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含み、前記錠剤が、前記対象の胃において治療有効量未満のリナクロチドを放出する腸溶性コーティングおよびpH感受性ポリマーをさらに含む、方法。
(項目9)
便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)を処置する方法であって、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に経口投与するステップを含む、方法。
(項目10)
腹部疼痛を処置する方法であって、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に経口投与するステップを含む、方法。
(項目11)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、前記対象において疼痛または便秘を低減、予防または軽減するための治療有効量のリナクロチドを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、前記対象において疼痛を低減、予防または軽減するが、排便習慣には影響を与えない治療有効量のリナクロチドを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
前記排便習慣が、CSBM率、SBM率または便の硬さから選択される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、排便習慣に実質的に影響を与えるのに有効な量未満のリナクロチドを提供する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記対象が、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)と診断される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
リナクロチドを含む前記遅延放出医薬錠剤組成物が、胃において前記リナクロチドの50%未満、40%未満、25%未満または10%未満を放出する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記リナクロチドが、30μg~1,000μgの間の量で前記遅延放出医薬錠剤組成物中に存在する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記リナクロチドが、約30μg、約100μg、約300μg、約500μg、約600μgもしくは約1,000μgの量で存在する、または100μg、300μg、500μg、600μgもしくは1,000μgの量で存在する、項目17に記載の方法。(項目19)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、0重量%~2重量%の間の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択されるアミノ酸をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、0重量%~2重量%の間または0.5重量%~1.5重量%の間のヒスチジンをさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、0重量%~3重量%の間の、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、マンガン、クロム、コバルト、ニッケル、バリウム、およびナトリウム、またはそれらの任意の組合せもしくは混合物からなる群から選択されるカチオン塩をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、0重量%~3重量%の間のカルシウム塩をさらに含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、0重量%~2重量%の間または0.2重量%~0.8重量%の間の無水塩化カルシウムをさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、0重量%~5重量%の間、1重量%~3重量%の間または1重量%~1.88重量%の間のポリビニルアルコール(PVA)をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目25)
pH感受性ポリマーが、少なくとも6.0、少なくとも6.5または少なくとも7.0の溶解pHを有する、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目26)
pH感受性ポリマーが、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー(例えば、Eudragit(登録商標))を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目27)
pH感受性ポリマーが、Eudragit S100を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目28)
pH感受性ポリマーが、Eudragit L100を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目29)
pH感受性ポリマーが、Eudragit S100から本質的になる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目30)
pH感受性ポリマーが、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目31)
前記pH感受性ポリマーが、1:1と6:1(S100:L100)との間の重量比、4.5:1と5.5:1(S100:L100)との間の重量比、または4.875:1(S100:L100)との間の重量比で、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、腸溶性コーティングされた錠剤を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目33)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、
Ca2+
ヒスチジン;および
ポリビニルアルコール(PVA)
を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目34)
保護的ポリマーフィルムまたはサブコーティングをさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目35)
前記サブコーティングが、Opadry II(登録商標)を含む、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、1日1回投与される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目37)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、午前中に1日1回投与される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目38)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、朝食の少なくとも30分前に、午前中に1日1回投与される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目39)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、前記患者が少なくとも2時間にわたって絶食した後に投与される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目40)
前記遅延放出医薬錠剤組成物が、少なくとも12週間にわたって投与される、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目41)
前記投与するステップが、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の回数を増加させる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目42)
前記投与するステップが、患者において腹部疼痛を減少させる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目43)
前記投与するステップが、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の回数を、少なくとも1週間当たり1回分増加させる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目44)
前記投与するステップが、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、患者において腹部疼痛を少なくとも30%減少させる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目45)
前記投与するステップが、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の回数を、少なくとも1週間当たり1回分増加させ;前記投与するステップが、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、前記患者において腹部疼痛を少なくとも30%減少させる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目46)
前記投与するステップが、以下のうち1つまたは複数を改善する、前記項目のいずれかに記載の方法:腹部疼痛、CSBM頻度率、SBM頻度率、便の硬さ、しぶり腹、腹部不快感、腹部膨満、腹部症状スコア、便秘重症度、IBS症状重症度、パープロトコールレスキュー薬の使用日数、処置満足度、および適切な軽減の評価。
(項目47)
前記投与するステップが、以下のうち2つまたはそれよりも多くを改善する、項目46に記載の方法:腹部疼痛、CSBM頻度率、SBM頻度率、便の硬さ、しぶり腹、腹部不快感、腹部膨満、腹部症状スコア、便秘重症度、IBS症状重症度、パープロトコールレスキュー薬の使用日数、処置満足度、および適切な軽減の評価。
(項目48)
前記投与するステップが、以下の有効性パラメーターのうち1つまたは複数における改善を生じる、前記項目のいずれかに記載の方法:腹部疼痛におけるベースラインからの週ごとの変化、CSBM頻度におけるベースラインからの週ごとの変化、6/12週のAPC+1レスポンダー、6/12週のCSBM+1レスポンダー、9/12週のCSBM+1レスポンダー、6/12週の腹部疼痛レスポンダー、9/12週の腹部疼痛レスポンダー、週ごとのCSBM+1レスポンダー、週ごとの腹部疼痛レスポンダー、週ごとのAPC+1レスポンダー、12週の腹部疼痛におけるベースラインからの変化、12週のCSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週のSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週の便の硬さにおけるベースラインからの変化、12週のしぶり腹におけるベースラインからの変化、12週の腹部不快感におけるベースラインからの変化、12週の腹部膨満におけるベースラインからの変化、12週の腹部症状スコアにおけるベースラインからの変化、12週の便秘重症度におけるベースラインからの変化、12週のIBS症状重症度におけるベースラインからの変化、パープロトコールレスキュー薬の使用日数の12週のパーセントにおけるベースラインからの変化、処置満足度、および適切な軽減の評価。
(項目49)
前記投与するステップが、以下の有効性パラメーターのうち2つまたはそれよりも多くにおける改善を生じる、項目48に記載の方法:腹部疼痛におけるベースラインからの週ごとの変化、CSBM頻度におけるベースラインからの週ごとの変化、6/12週のAPC+1レスポンダー、6/12週のCSBM+1レスポンダー、9/12週のCSBM+1レスポンダー、6/12週の腹部疼痛レスポンダー、9/12週の腹部疼痛レスポンダー、週ごとのCSBM+1レスポンダー、週ごとの腹部疼痛レスポンダー、週ごとのAPC+1レスポンダー、12週の腹部疼痛におけるベースラインからの変化、12週のCSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週のSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週の便の硬さにおけるベースラインからの変化、12週のしぶり腹におけるベースラインからの変化、12週の腹部不快感におけるベースラインからの変化、12週の腹部膨満におけるベースラインからの変化、12週の腹部症状スコアにおけるベースラインからの変化、12週の便秘重症度におけるベースラインからの変化、12週のIBS症状重症度におけるベースラインからの変化、パープロトコールレスキュー薬の使用日数の12週のパーセントにおけるベースラインからの変化、処置満足度、および適切な軽減の評価。
(項目50)
前記投与するステップが、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、以下のうち1つまたは複数を改善する、前記項目のいずれかに記載の方法:腹部疼痛、CSBM頻度率、SBM頻度率、便の硬さ、しぶり腹、腹部不快感、腹部膨満、腹部症状スコア、便秘重症度、IBS症状重症度、パープロトコールレスキュー薬の使用日数、処置満足度、および適切な軽減の評価。
(項目51)
前記投与するステップが、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、以下の有効性パラメーターのうち1つまたは複数における改善を生じる、前記項目のいずれかに記載の方法:腹部疼痛におけるベースラインからの週ごとの変化、CSBM頻度におけるベースラインからの週ごとの変化、6/12週のAP+1レスポンダー、6/12週のCSBM+1レスポンダー、9/12週のCSBM+1レスポンダー、6/12週の腹部疼痛レスポンダー、9/12週の腹部疼痛レスポンダー、週ごとのCSBM+1レスポンダー、週ごとの腹部疼痛レスポンダー、週ごとのAPC+1レスポンダー、12週の腹部疼痛におけるベースラインからの変化、12週のCSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週のSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週の便の硬さにおけるベースラインからの変化、12週のしぶり腹におけるベースラインからの変化、12週の腹部不快感におけるベースラインからの変化、12週の腹部膨満におけるベースラインからの変化、12週の腹部症状スコアにおけるベースラインからの変化、12週の便秘重症度におけるベースラインからの変化、12週のIBS症状重症度におけるベースラインからの変化、パープロトコールレスキュー薬の使用日数の12週のパーセントにおけるベースラインからの変化、処置満足度、および適切な軽減の評価。
(項目52)
前記投与するステップが、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、患者において有害事象のリスクにおける減少を生じる、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目53)
前記投与するステップが、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、前記患者において下痢のリスクにおける減少を生じる、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記投与するステップが、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、前記患者において下痢のリスクにおける少なくとも20%の減少を生じる、項目52に記載の方法。
(項目55)
前記投与するステップが、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、前記患者において重症の下痢のリスクにおける減少を生じる、項目52に記載の方法。
(項目56)
疼痛を処置または軽減する方法であって、治療有効量の前記項目のいずれかに記載の遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法。
(項目57)
前記疼痛が、内臓疼痛;憩室炎疼痛;骨盤疼痛;腹部疼痛;または胃腸障害、性病、膀胱疼痛症候群もしくは間質性膀胱炎と関連する疼痛から選択される、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記疼痛が、腹部全体の疼痛、憩室性疾患、過敏性腸症候群(IBS)と関連する疼痛、慢性または急性放射線直腸障害(放射線直腸炎とも呼ばれる)、直腸疼痛、慢性肛門周囲痛、一過性直腸痛、肛門疼痛、慢性裂肛、術後肛門疼痛、過活動膀胱症候群、腹圧性失禁、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症候群、がんと関連する疼痛、胃腸管新生物と関連する疼痛、骨盤全体の疼痛、子宮内膜症、陰のう痛、慢性前立腺炎、前立腺痛、外陰部痛、尿道症候群、陰茎疼痛、肛門周囲疼痛、および潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎またはクローン病と関連する疼痛から選択される、項目56に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施例18で記載した治験の3つの別個の期間の図である。
【0024】
図2図2は、実施例20で記載したような8つの処置群についての主要有効性パラメーター、6/12週APC+1レスポンダーのプロット図である。
【0025】
図3図3Aおよび3Bは、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、ベースラインを上回る週ごとのSBM頻度のプロット図である。
【0026】
図4図4は、実施例20で記載したような8つの処置群についての主要有効性パラメーター、ベースラインからの週ごとの腹部疼痛変化のプロット図である。
【0027】
図5図5は、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、12週のベースラインを上回るCSBM頻度のプロット図である。
【0028】
図6図6Aおよび6Bは、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、6/12および9/12CSBMレスポンダーのプロット図である。
【0029】
図7図7Aおよび7Bは、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、6/12および9/12腹部疼痛レスポンダーのプロット図である。
【0030】
図8図8は、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、12週のベースラインからの腹部疼痛変化のプロット図である。
【0031】
図9図9は、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、12週のベースラインを上回るSBM頻度のプロット図である。
【0032】
図10図10は、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、週ごとのベースラインを上回るSBM頻度のプロット図である。
【0033】
図11図11は、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、12週のベースラインからの便の硬さ(BSFS)の変化のプロット図である。
【0034】
図12図12は、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、12週のベースラインを上回る腹部症状スコアの変化、12週のベースラインを上回る腹部疼痛の変化、12週のベースラインを上回る腹部不快感の変化、および12週のベースラインを上回る腹部膨満の変化のプロット図である。
【0035】
図13図13は、実施例20で記載したような8つの処置群についての副次的有効性パラメーター、処置満足度のプロット図である。
【0036】
図14図14は、実施例20で記載したような8つの処置群についての全下痢TEAE率のプロット図である。
【0037】
図15図15は、実施例20で記載したような8つの処置群についての全下痢および下痢が引き起こすドロップアウト(ADO)率のプロット図である。
【0038】
図16図16は、実施例20で記載したような8つの処置群についての重症度による下痢TEAEのプロット図である。
【0039】
図17A図17A、17Bおよび17Cは、Linzess(登録商標)の第III相臨床試験のデータと比較したある特定の有効性パラメーターのプロット図である。
図17B】同上
図17C】同上
【0040】
図18図18は、Linzess(登録商標)の第III相臨床試験のデータと比較した下痢TEAE率のプロット図である。
【0041】
図19図19は、Linzess(登録商標)の第III相臨床試験のデータと比較した重症度による下痢TEAEのプロット図である。
【0042】
図20A図20Aは、リナクロチド100μgを含む遅延放出組成物の様々なpHでの放出プロファイルを示す図である。
図20B図20Bは、放出プロファイルに対するpH感受性ポリマーの比の変化の効果を示す図である。
【0043】
図21図21は、DR1組成物、IR組成物およびプラセボについての12週での週ごとの腹部疼痛におけるベースラインからのパーセント変化のプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
発明の詳細な説明
A.処置の方法
【0045】
一態様では、便秘および/または疼痛(例えば、内臓疼痛、腹部疼痛)を含むいくつもの疾患、障害または症状を処置するために使用される、リナクロチドを含む遅延放出組成物を経口投与するステップを含む処置の方法が、本明細書に一般に記載される。例えば、本明細書に記載される、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含む処置の方法は、それを必要とする患者において便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)を処置するために使用される。患者は、ローマ基準(例えば、ローマIII)に従ってIBS-cと診断され得る。別の実施形態では、本明細書に記載される、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含む処置の方法は、それを必要とする患者において腹部疼痛を処置するために使用される。
【0046】
本発明の一態様は、リナクロチドの投与と関連する有害事象の発生率または重症度を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を対象に経口投与するステップを含み、錠剤が、即時放出投薬形態のリナクロチドの等しい用量の投与と比較した場合に対象のより下部のGIにおいてリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングを含み、遅延放出医薬錠剤組成物が、対象において便秘および/または疼痛を処置するための治療有効量のリナクロチドをさらに含む、方法である。
【0047】
本発明の別の態様は、対象においてリナクロチドの投与と関連する有害事象の発生率または重症度を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含み、錠剤が、対象において便秘および/または疼痛を処置するための治療有効量のリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングを含む、方法である。
【0048】
一部の実施形態では、有害事象の発生率または重症度における低減は、即時放出投薬形態のリナクロチドの等しい用量の投与と比較した、有害事象の発生率または重症度における低減である。一部の実施形態では、有害事象は下痢である。一部の実施形態では、有害事象の発生率は低減される。一部の実施形態では、有害事象の重症度は低減される。
【0049】
本発明の別の態様は、リナクロチドの腸液分泌促進効果を低減させる方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を対象に経口投与するステップを含み、錠剤が、対象の下部GIにおいてリナクロチドを放出するpH感受性ポリマーを含む腸溶性コーティングをさらに含む、方法である。
【0050】
本発明のさらに別の態様は、非便秘対象において内臓または腹部の疼痛を処置する方法であって、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を経口投与するステップを含み、錠剤が、対象の胃において、対象における分泌を誘導するのに有効な量未満の量のリナクロチドを放出する腸溶性コーティングおよびpH感受性ポリマーをさらに含む、方法である。
【0051】
本発明の別の態様は、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)を処置する方法であって、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に経口投与するステップを含む、方法である。
【0052】
本発明のなお別の態様は、腹部疼痛を処置する方法であって、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に経口投与するステップを含む、方法である。
【0053】
一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、対象において疼痛または便秘を低減、予防または軽減するための治療有効量のリナクロチドを含む。一部の実施形態では、遅延放出医薬組成物は、対象において疼痛を低減、予防または軽減するが、排便習慣には影響を与えない治療有効量のリナクロチドを含む。一部の実施形態では、遅延放出医薬組成物は、排便習慣に実質的に影響を与えるのに有効な量未満のリナクロチドを提供する。一部の実施形態では、排便習慣は、CSBM率、SBM率または便の硬さから選択される。
【0054】
一部の実施形態では、対象は、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)と診断される。
【0055】
一部の実施形態では、リナクロチドを含む遅延放出医薬錠剤組成物は、胃においてリナクロチドの50%未満、40%未満、25%未満または10%未満を放出する。
【0056】
一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、1日1回投与される。一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、午前中に1日1回投与される。一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、朝食の少なくとも30分前に、午前中に1日1回投与される。一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、患者が少なくとも2時間にわたって絶食した後に投与される。一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、少なくとも12週間にわたって投与される。
【0057】
一部の実施形態では、投与するステップは、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の回数を増加させる。一部の実施形態では、投与するステップは、患者において腹部疼痛を減少させる。一部の実施形態では、投与するステップは、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の回数を、少なくとも1週間当たり1回分増加させる。一部の実施形態では、投与するステップは、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、患者において腹部疼痛を少なくとも30%減少させる。一部の実施形態では、投与するステップが、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の回数を、少なくとも1週間当たり1回分増加させ;投与するステップが、12週間のうち少なくとも6週間の間、ベースラインから、患者において腹部疼痛を少なくとも30%減少させる、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【0058】
一部の実施形態では、投与するステップは、以下のうち1つまたは複数(例えば、2つまたはそれよりも多く)を改善する:腹部疼痛、CSBM頻度率、SBM頻度率、便の硬さ、しぶり腹、腹部不快感、腹部膨満、腹部症状スコア、便秘重症度、IBS症状重症度、パープロトコールレスキュー薬の使用日数、処置満足度、および適切な軽減の評価。
【0059】
一部の実施形態では、投与するステップは、以下の有効性パラメーターのうち1つまたは複数(例えば、2つまたはそれよりも多く)における改善を生じる:腹部疼痛におけるベースラインからの週ごとの変化、CSBM頻度におけるベースラインからの週ごとの変化、6/12週のAPC+1レスポンダー、6/12週のCSBM+1レスポンダー、9/12週のCSBM+1レスポンダー、6/12週の腹部疼痛レスポンダー、9/12週の腹部疼痛レスポンダー、週ごとのCSBM+1レスポンダー、週ごとの腹部疼痛レスポンダー、週ごとのAPC+1レスポンダー、12週の腹部疼痛におけるベースラインからの変化、12週のCSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週のSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週の便の硬さにおけるベースラインからの変化、12週のしぶり腹におけるベースラインからの変化、12週の腹部不快感におけるベースラインからの変化、12週の腹部膨満におけるベースラインからの変化、12週の腹部症状スコアにおけるベースラインからの変化、12週の便秘重症度におけるベースラインからの変化、12週のIBS症状重症度におけるベースラインからの変化、パープロトコールレスキュー薬の使用日数の12週のパーセントにおけるベースラインからの変化、処置満足度、および適切な軽減の評価。
【0060】
一部の実施形態では、投与するステップは、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、以下のうち1つまたは複数を改善する:腹部疼痛、CSBM頻度率、SBM頻度率、便の硬さ、しぶり腹、腹部不快感、腹部膨満、腹部症状スコア、便秘重症度、IBS症状重症度、パープロトコールレスキュー薬の使用日数、処置満足度、および適切な軽減の評価。
【0061】
一部の実施形態では、投与するステップは、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、以下の有効性パラメーターのうち1つまたは複数における改善を生じる:腹部疼痛におけるベースラインからの週ごとの変化、CSBM頻度におけるベースラインからの週ごとの変化、6/12週のAP+1レスポンダー、6/12週のCSBM+1レスポンダー、9/12週のCSBM+1レスポンダー、6/12週の腹部疼痛レスポンダー、9/12週の腹部疼痛レスポンダー、週ごとのCSBM+1レスポンダー、週ごとの腹部疼痛レスポンダー、週ごとのAPC+1レスポンダー、12週の腹部疼痛におけるベースラインからの変化、12週のCSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週のSBM頻度率におけるベースラインからの変化、12週の便の硬さにおけるベースラインからの変化、12週のしぶり腹におけるベースラインからの変化、12週の腹部不快感におけるベースラインからの変化、12週の腹部膨満におけるベースラインからの変化、12週の腹部症状スコアにおけるベースラインからの変化、12週の便秘重症度におけるベースラインからの変化、12週のIBS症状重症度におけるベースラインからの変化、パープロトコールレスキュー薬の使用日数の12週のパーセントにおけるベースラインからの変化、処置満足度、および適切な軽減の評価。
【0062】
一部の実施形態では、投与するステップは、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、患者において有害事象のリスクにおける減少を生じる。一部の実施形態では、投与するステップは、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、患者において下痢のリスクにおける減少を生じる。一部の実施形態では、投与するステップは、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、患者において下痢のリスクにおける少なくとも20%の減少を生じる。一部の実施形態では、投与するステップは、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して、患者において重症の下痢のリスクにおける減少を生じる。
【0063】
本発明の別の態様は、疼痛を処置または軽減する方法であって、治療有効量の本明細書に記載される遅延放出医薬錠剤組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法である。
【0064】
一部の実施形態では、疼痛は、内臓疼痛;憩室炎疼痛;骨盤疼痛;腹部疼痛;または胃腸障害、性病、膀胱疼痛症候群もしくは間質性膀胱炎と関連する疼痛から選択される。一部の実施形態では、疼痛は、腹部全体の疼痛、憩室性疾患、過敏性腸症候群(IBS)と関連する疼痛、慢性または急性放射線直腸障害(放射線直腸炎とも呼ばれる)、直腸疼痛、慢性肛門周囲痛、一過性直腸痛、肛門疼痛、慢性裂肛、術後肛門疼痛、過活動膀胱症候群、腹圧性失禁、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症候群、がんと関連する疼痛、胃腸管新生物と関連する疼痛、骨盤全体の疼痛、子宮内膜症、陰のう痛、慢性前立腺炎、前立腺痛、外陰部痛、尿道症候群、陰茎疼痛、肛門周囲疼痛、および潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎またはクローン病と関連する疼痛から選択される。
【0065】
一部の実施形態では、患者を処置する方法は、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出組成物を1日1回投与するステップを含む。一部の実施形態では、組成物は、午前中に1日1回投与される。一部の実施形態では、組成物は、食物の摂取の少なくとも30分前に1日1回、例えば、朝食の少なくとも30分前に、午前中に1日1回投与される。一部の実施形態では、組成物は、患者が絶食した後に、例えば、患者が、少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも8時間または少なくとも10時間にわたって絶食した後に投与される。
【0066】
本発明の方法のある特定の態様では、組成物は、4週間よりも長い期間(例えば、少なくとも8週間、少なくとも12週間または少なくとも26週間)にわたって投与される。本発明の方法の一部の態様では、リナクロチドは、週の各日に、1週間に少なくとも1回、1週間に少なくとも2回、1週間に少なくとも3回、1週間に少なくとも4回、1週間に少なくとも5回または1週間に少なくとも6回、投与される。
【0067】
一態様では、患者を処置する方法は、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出組成物を経口投与するステップを含み、投与するステップは、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の頻度を増加させる。一部の実施形態では、CSBM頻度率は、1週間に3回またはそれよりも多いCSBMまで増加する。一部の実施形態では、CSBM頻度率は、リナクロチドの遅延放出組成物による処置前のCSBMのベースラインレベルと比較して、1週間に1回または複数のCSBM、増加する。一部の実施形態では、患者によるCSBMの頻度は、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して増加する。一部の態様では、投与するステップは、患者についての自発的排便(SBM)頻度率を増加させる。一部の実施形態では、SBMの頻度は、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して増加する。
【0068】
別の態様では、患者を処置する方法は、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出組成物を投与するステップを含み、投与するステップは、患者において腹部疼痛を減少させる。一部の実施形態では、腹部疼痛は、リナクロチドの遅延放出組成物による処置前の腹部疼痛のベースラインレベルと比較して、少なくとも30%(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%)減少する。一部の実施形態では、患者における腹部疼痛は、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較して減少する。一部の実施形態では、腹部疼痛は、12週間の投与後、12週目に、少なくとも30%(例えば、少なくとも40%、少なくとも50%)減少する。
【0069】
別の態様では、患者を処置する方法は、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出組成物を投与するステップを含み、投与するステップは、患者による残便感のない自発的排便(CSBM)の頻度を増加させ、患者において腹部疼痛を減少させる。
【0070】
別の態様では、患者を処置する方法は、治療有効量のリナクロチドを含む遅延放出組成物を投与するステップを含み、投与するステップは、中程度よりも上の腹部疼痛を有する患者、中程度~重症の腹部疼痛を有する患者、または重症~非常に重症の腹部疼痛を有する患者において、腹部症状(例えば、疼痛、不快感、膨満)および/または腸症状(例えば、1週間当たりのCSBM、1週間当たりのSBM、便の硬さ、しぶり腹)を改善する。
【0071】
重要なことに、本明細書に記載されるリナクロチドを含む遅延放出組成物の投与は、以下の利点:CSBMの回数における増加、腹部の疼痛または不快感における減少、膨満における減少、便秘重症度における減少、便の硬さにおける改善、SBM頻度における増加、BM頻度における増加、排便の間のしぶり腹における減少、腹部症状スコアにおける改善、IBS症状重症度における改善、パープロトコールレスキュー薬の使用における減少、のうち1つまたは複数を提供し得、改善は、生活の質、処置満足度または適切な軽減の患者評価である。改善は、リナクロチドの即時放出組成物による処置と比較した改善であり得る。
【0072】
一部の実施形態では、患者を処置する方法は、それを必要とする患者において、過敏性腸症候群(IBS)、便秘、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)、下痢型過敏性腸症候群(IBS-d)、混合型IBS(IBS-m)、分類不能型IBS(IBS-u)、慢性特発性便秘(CIC)、結腸がん、憩室炎、潰瘍性大腸炎、機能性胃腸障害、胃食道逆流性疾患、機能性胸やけ、ディスペプシア、内臓疼痛、腹部疼痛、胃不全麻痺、慢性偽性腸閉塞症、偽性結腸閉塞症、クローン病、炎症性腸疾患、過活動膀胱症候群、膀胱過敏症または結腸炎誘導性の膀胱求心性活動亢進から選択される障害を処置することを含む。一部の実施形態では、患者を処置する方法は、それを必要とする患者において、障害、例えば、GI障害、またはあるいは非GI障害と関連する症状を処置することを含む。例えば、処置は、腹部の疼痛、不快感もしくは膨満、または障害(GIもしくは非GI)と関連する内臓疼痛に対してであり得る。例えば、患者は、非便秘患者であり得る。
【0073】
さらなる実施形態では、処置される障害または症状は、内臓疼痛;憩室炎疼痛;骨盤疼痛;腹部疼痛;または胃腸障害、性病、膀胱疼痛症候群もしくは間質性膀胱炎と関連する疼痛から選択される。さらなる実施形態では、処置される障害または症状は、腹部全体の疼痛、憩室性疾患、過敏性腸症候群(IBS)と関連する疼痛、慢性または急性放射線直腸障害(proctopathy)(放射線直腸炎とも呼ばれる)、直腸疼痛、慢性肛門周囲痛、一
過性直腸痛、肛門疼痛、慢性裂肛、術後肛門疼痛、過活動膀胱症候群、腹圧性失禁、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症候群、がんと関連する疼痛、胃腸管新生物と関連する疼痛、骨盤全体の疼痛、子宮内膜症、陰のう痛、慢性前立腺炎、前立腺痛、外陰部痛、尿道症候群、陰茎疼痛、肛門周囲疼痛、および潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎またはクローン病と関連する疼痛から選択される疼痛である。さらなる実施形態では、処置される障害または症状は、便秘、例えば、慢性便秘、オピオイド誘導性の便秘、手術後便秘(術後イレウス)、および神経障害性障害と関連する便秘またはその症状の組合せ(例えば、過敏性腸症候群および慢性便秘の組合せ)、神経障害性障害と関連する便秘(例えば、パーキンソン病と関連する便秘)、嚢胞性線維症または甲状腺疾患と関連する便秘、と関連する障害または症状である。
【0074】
一部の実施形態では、処置される障害または症状は、下部GIと関連する障害または症状(例えば、下部GI障害)である。
【0075】
一部の実施形態では、本明細書に記載される処置の方法は、腹部全体の疼痛、憩室性疾患、過敏性腸症候群(IBS)と関連する疼痛、慢性または急性放射線直腸障害(放射線直腸炎とも呼ばれる)、直腸疼痛、慢性肛門周囲痛、一過性直腸痛、肛門疼痛、慢性裂肛、術後肛門疼痛、過活動膀胱症候群、腹圧性失禁、間質性膀胱炎、膀胱疼痛症候群、がんと関連する疼痛、胃腸管新生物と関連する疼痛、骨盤全体の疼痛、子宮内膜症、陰のう痛、慢性前立腺炎、前立腺痛、外陰部痛、尿道症候群、陰茎疼痛、肛門周囲疼痛、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎およびクローン病からなる群から選択される内臓疼痛と関連する疾患または症状の処置のために有用である。特定の一実施形態では、本明細書に記載される組成物は、膀胱疼痛症候群処置のために有用である。別の特定の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、過活動膀胱症候群(例えば、膀胱過敏症または結腸炎誘導性の膀胱求心性活動亢進が含まれる)の処置のために有用である。
【0076】
なお別の実施形態では、本明細書に記載される処置の方法は、間質性膀胱炎の処置のために有用である。なお別の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、子宮内膜症の処置のために有用である。別の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、肛門疼痛の処置のために有用である。
【0077】
一部の実施形態では、治療有効量の本明細書に記載される組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、障害を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、障害は、結腸直腸/局所転移した結腸直腸がん、腸ポリープ、バレット食道、胃腸管がん、肺がん、上皮細胞のがんまたはプレがん性成長もしくは転移性成長、ポリープ、乳房、結腸直腸、肺、卵巣、膵臓、前立腺、腎、胃、膀胱、肝臓、食道および精巣癌から選択されるがんである。
【0078】
一部の実施形態では、それを必要とする患者において胃腸管のがんもしくは過形成を予防するための方法または胃腸管のがんもしくは過形成の再発を予防するための方法であって、有効量の組成物または経口投薬形態を患者に投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、がんまたは過形成は、結腸直腸がん、腸ポリープ、または胃腸上皮細胞のプレがん性成長もしくは転移性成長である。一部の実施形態では、組成物または経口投薬形態は、有効量のCOX-2阻害剤と同時にまたは順次投与される。高度に選択的および選択的なCOX-2阻害剤の例には、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、ルミラコキシブ、バルデコキシブ、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、スリンダク、ジクロフェナク、メロキシカムおよびエトドラクが含まれる。COX-2を阻害する非選択的なNSAIDには、ナプロキセン、イブプロフェン、サリチル酸ナトリウムおよびジフルニサルが含まれる。本明細書で使用される場合、用語「予防する(prevent)
」または「予防すること(preventing)」とは、本明細書に記載される組成物で処置されていない患者と比較して、がんもしくは過形成を停止させる、がんもしくは過形成の開始(すなわち、疾患の臨床的顕在化の前の期間)もしくは再発を遅延させる、および/またはがんもしくは過形成を発症するリスクを低減させることを意味する。
【0079】
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物および経口投薬形態を用いて小児患者において胃腸障害を処置するための方法が提供される。一部の実施形態では、1つまたは複数の胃腸障害または状態と診断された小児患者において胃腸障害を処置するための方法であって、有効量の組成物または経口投薬形態を患者に投与するステップを含む方法が提供される。一部の実施形態では、GI運動障害、過敏性腸症候群、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)、混合型過敏性腸症候群(IBS-m)、慢性便秘、慢性特発性便秘、オピオイド誘導性の便秘、手術後便秘(術後イレウス)、神経障害性障害と関連する便秘、嚢胞性線維症または甲状腺疾患と関連する便秘、ディスペプシア(機能性ディスペプシアまたは非潰瘍性ディスペプシアが含まれる)、胃不全麻痺、胃腸運動障害、機能性胃腸障害、胃食道逆流性疾患(GERD)、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、機能性胸やけ、慢性偽性腸閉塞症(または偽性結腸閉塞症)、内臓疼痛、腹部疼痛、骨盤疼痛、裂肛疼痛、外陰部痛と関連する疼痛、子宮内膜症と関連する疼痛、線維筋痛症と関連する疼痛、機能性腹部疼痛、間質性膀胱炎疼痛、憩室炎、憩室炎と関連する疼痛、およびセリアックスプルーと関連する疼痛が含まれるがこれらに限定されない胃腸障害を処置するために組成物および経口投薬形態を使用する方法が提供される。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物および経口投薬形態を用いて、小児患者においてIBS-c、IBS-mまたは慢性便秘(例えば、慢性特発性便秘)を処置するための方法が提供される。一部の実施形態では、それを必要とする小児患者においてIBS-cを処置するための方法が提供される。一部の実施形態では、それを必要とする小児患者において慢性特発性便秘を処置するための方法が提供される。
【0080】
一部の実施形態では、方法は、治療有効量の本明細書に記載される組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、疼痛を処置または軽減するための方法である。一部の実施形態では、疼痛は、内臓疼痛;腹部疼痛;骨盤疼痛;または胃腸障害、性病、膀胱疼痛症候群、憩室炎疼痛、前立腺炎、精巣疼痛、子宮内膜症、外陰部痛、直腸疼痛もしくは間質性膀胱炎と関連する疼痛から選択される。一部の実施形態では、疼痛は、骨盤疼痛、直腸炎と関連する疼痛、裂肛疼痛、外陰部痛と関連する疼痛、子宮内膜症と関連する疼痛、線維筋痛症と関連する疼痛、機能性腹部疼痛、間質性膀胱炎疼痛、性病と関連する疼痛、憩室炎、憩室炎と関連する疼痛、およびセリアックスプルーと関連する疼痛から選択される。
【0081】
一部の実施形態では、ヒト成人のためのリナクロチドの有効用量範囲は、1日当たり経口で25μg~6mgである。
【0082】
一部の実施形態では、用量範囲は、1日当たり経口で15μg~2mgである。一部の実施形態では、ヒト成人のための用量範囲は、1日当たり経口で15μg~1mg(例えば、15μg、30μg、50μg、72μg、100μg、145μg、150μg、200μg、250μg、290μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、579μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μgまたは1mg)である。一部の実施形態では、ヒト成人のための用量範囲は、1日当たり経口で30μg~300μgである。一部の実施形態では、用量範囲は、1日当たり経口で100μg~600μgである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で30μg、100μg、150μg、200μg、300μg、400μg、500μgまたは600μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で50μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で100μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で145μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で200μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で290μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で300μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で500μgのリナクロチドである。一部の実施形態では、用量は、1日当たり経口で600μgのリナクロチドである。
【0083】
一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.05μg~2mgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.05μg~100μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μg~90μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μg~50μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μg~25μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μg~10μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μg~5μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μg~1μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μg~0.5μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.1μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.15μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.25μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で0.5μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で3.5μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で15μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で36μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で45μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で60μgである。一部の実施形態では、リナクロチドの有効小児用量範囲は、1日当たり経口で90μgである。一部の実施形態では、単位投薬形態および1日用量は、等価である。
【0084】
一部の実施形態では、単位投薬形態は、1日のいつでも食物と共に、1日のいつでも食物を伴わずに、一晩の絶食後に食物と共に(例えば、朝食と共に)、投与される。一部の実施形態では、単位投薬形態は、1日1回、1日2回または1日3回投与される。一部の実施形態では、1、2または3つの単位投薬形態が、リナクロチドの1日経口用量を含む。患者に投与される化合物の正確な量は、主治医の責任である。しかし、使用される用量は、患者の年齢および性別、処置される正確な障害、ならびにその重症度を含むいくつかの因子に依存する。
【0085】
一部の実施形態では、組成物は、単独療法として投与される。一部の実施形態では、組成物は、有効量のリナクロチドから本質的になる。一部の実施形態では、組成物は、有効量のリナクロチドからなる。
【0086】
一部の実施形態では、組成物は、例えば、遅延放出錠剤または遅延放出カプセルの形態で、患者に直接投与される。一部の実施形態では、組成物は、患者(例えば、高齢または小児患者)への投与の前に、溶解され、崩壊され、および/または食品もしくは飲料上もしくはその中に混合される。一部の実施形態では、組成物は、患者(例えば、高齢または小児患者)への投与の前に、安定化剤(単数または複数)、防腐剤(単数または複数)、甘味料(単数または複数)などを必要に応じて含む液体、溶液または流体中で、溶解または崩壊される。一部の実施形態では、組成物は、複数用量の組成物、すなわち、2、3、5、7、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90またはそれよりも多くの1日用量のリナクロチドを含む組成物である。
【0087】
他の実施形態では、組成物は、併用療法の一部として投与される。例えば、組成物は、本発明の化合物が有用である疾患または状態の処置、予防、抑制および/または軽快において使用される他の薬物または治療と組み合わせて使用され得る。リナクロチドは、他の薬物療法と共投与または共製剤化され得る。一実施形態では、リナクロチド組成物は、制酸剤、例えば、ヒスタミン-2受容体アゴニスト(H2A)および/またはプロトンポンプ阻害剤(PPI)が含まれるがこれらに限定されない、胃腸障害を処置するために使用される他の薬物療法と共投与され得る。一実施形態では、リナクロチド組成物は、メサラミンなどの5-ASAを含む、胃腸障害を処置するために使用される他の薬物療法と共投与され得る。
【0088】
かかる他の薬物(単数または複数)は、一般に使用される経路によっておよび量で、したがって、本発明の化合物と同時的にまたは順次投与され得る。本発明の化合物が1種または複数の他の薬物と同時的に使用される場合、本発明の化合物に加えてかかる他の薬物を含む医薬品単位投薬形態が使用され得る。したがって、本発明の医薬組成物には、本発明の化合物に加えて1種または複数の他の活性な成分もまた含む医薬組成物が含まれる。
【0089】
イムノアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着検定法)、ラジオイムノアッセイ、免疫放射線測定アッセイ、ゲル電気泳動(例えば、SDS-PAGE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および/または高速キャピラリー電気泳動(HPCE)が含まれるがこれらに限定されないいくつかの方法が、リナクロチド組成物の生理活性を評価するために使用され得る。一部の実施形態では、組成物の生理活性は、リナクロチドを固定するステップ、リナクロチドをグアニル酸シクラーゼC(GCC)と共にインキュベートするステップ、GCCに結合したリナクロチドを、GCCに対する抗体と共にインキュベートするステップ、GCC抗体に結合したリナクロチドを、GCC抗体に対する蛍光標識抗体と共にインキュベートするステップ、およびGCC抗体に結合したリナクロチドを、プレートリーダーを使用して蛍光強度を測定することによって検出するステップを含む方法によって、評価される。次いで、薬物濃度が、溶液の蛍光読み取りに基づいて計算され得る。
【0090】
例えば、リナクロチド組成物の生理活性は、以下の方法を使用して評価および定量化され得るが、他の方法も利用可能である。組成物は、4.5のpHを有するリン酸緩衝剤60mlを含むメスフラスコに添加され、このフラスコが60分間振盪される。次いで、0.2mlの上清が取り出され、GC-C受容体でコーティングされた96ウェルプレートの1つまたは複数のウェル中に添加される。プレートが密封され、37℃で2時間インキュベートされる。インキュベーションの最後に、試料が取り出され、プレートがリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。次いで、結合したリナクロチドが、室温で1時間、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isocyanate)(FITC)で標識した
GC-C(例えば、Sigma-Aldrich Inc.から入手可能)と共に、ブロッキング緩衝剤中でインキュベートされる。インキュベーション後、ウェルがPBSで洗浄される。最終産物の蛍光強度は、例えば、プレートリーダーを使用することによって検出される。次いで、リナクロチド濃度が、溶液の蛍光読み取りに基づいて計算される。
【0091】
B.遅延放出組成物
【0092】
遅延放出経口投薬形態のリナクロチド(集合的に「DR」)が、本明細書に提供される。本発明の遅延放出医薬組成物は、下部胃腸管へのリナクロチドの遅延放出を示す、安定な固体経口投薬形態のリナクロチドに関する。今日まで、リナクロチドの唯一の承認された製剤は、即時放出(「IR」)を示すカプセルである。これらのIR投薬形態は、上部GIにおいて、その中に含まれたリナクロチドのほとんどまたは全てを放出する。これは次に、上部GIにおいて、および下部GIにおいてより低い程度まで、GC-C受容体活性化および腸液分泌を引き起こす。IR投薬形態による上部と下部との間でのGI活性化および腸液分泌の差異は、リナクロチドが、(投薬形態から放出されると)タンパク質分解性消化を受け、特に、下部GI(例えば、回腸、回腸終末部、回盲弁または結腸)にそれが達する時までに、GC-C受容体を活性化する能力の一部または全てを喪失するという事実に、一部起因する。
【0093】
一部の実施形態では、リナクロチドは、30μg~1,000μgの間の量で組成物中に存在する。例えば、一部の実施形態では、リナクロチドは、約30μg、約100μg、約300μg、約500μg、約600μgもしくは約1,000μgの量で存在する、またはリナクロチドは、100μg、300μg、500μg、600μgもしくは1,000μgの量で存在する。
【0094】
一部の実施形態では、組成物は、0重量%~2重量%の間の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリン、またはそれらの任意の混合物からなる群から選択されるアミノ酸をさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、0重量%~2重量%の間または0.5重量%~1.5重量%の間のヒスチジンをさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、0重量%~3重量%の間の、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、マンガン、クロム、コバルト、ニッケル、バリウム、およびナトリウム、またはそれらの任意の組合せもしくは混合物からなる群から選択されるカチオン塩をさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、0重量%~3重量%の間のカルシウム塩をさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、0重量%~2重量%の間または0.2重量%~0.8重量%の間の無水塩化カルシウムをさらに含む。一部の実施形態では、組成物は、0重量%~5重量%の間、1重量%~3重量%の間または1重量%~1.88重量%の間のポリビニルアルコール(PVA)をさらに含む。
【0095】
一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、少なくとも6.0、少なくとも6.5または少なくとも7.0の溶解pHを有する。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー(例えば、Eudragit(登録商標))を含む。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit S100を含む。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit L100を含む。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit S100から本質的になる。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、1:1と6:1(S100:L100)との間の重量比、4.5:1と5.5:1(S100:L100)との間の重量比、または4.875:1(S100:L100)との間の重量比で、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む。
【0096】
一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、腸溶性コーティングされた錠剤を含む。一部の実施形態では、遅延放出医薬錠剤組成物は、
Ca2+
ヒスチジン;および
ポリビニルアルコール(PVA)
を含む。
【0097】
一部の実施形態では、組成物は、保護的ポリマーフィルムまたはサブコーティングをさらに含む。一部の実施形態では、サブコーティングは、Opadry II(登録商標)を含む。
【0098】
本明細書に記載されるDR投薬形態は、下部GI内、例えば、回盲弁に対して近位、または結腸内で、その中に含まれたリナクロチドのほとんどまたは全てを放出する(胃、十二指腸および/または空腸ではあまり放出しないまたは全く放出しない)。したがって、本発明の投薬形態は、障害(例えば、GI障害、例えばIBS-c、または障害と関連する症状、例えば腹部疼痛)を処置するための優れた有効性を改善しまたはなおも維持しつつ、上部GIにおいてIR投薬形態よりも低い全体的腸液分泌を達成する能力を有する。IBS患者は、自身の障害の症状として、左下四半部の腹部疼痛を報告し、したがって、IBSの疼痛は結腸に起源すると考えられている。さらに、DR投薬形態は、下部GI関連の疾患および障害を処置するのに理想的に適していると考えられる。DR投薬形態は、胃および上部GIにおいてそのリナクロチドを全く放出しない(または小さいパーセンテージを放出する)(これは、腸におけるリナクロチドの迅速な消化を引き起こし得る)ので、DR投薬形態の一部の好ましい実施形態は、(承認されたIR形態中の量と比較して)低い用量のリナクロチドを取り込むが、GI症状の処置においてIRと同じ有効性レベルを維持する。遅延放出組成物による処置に適切な障害には、それを必要とする患者における、過敏性腸症候群(IBS)、便秘、便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)、下痢型過敏性腸症候群(IBS-d)、混合型IBS(IBS-m)、分類不能型IBS(IBS-u)、慢性特発性便秘(CIC)、憩室炎、潰瘍性大腸炎、機能性胃腸障害、胃食道逆流性疾患、機能性胸やけ、ディスペプシア、内臓疼痛、腹部疼痛、胃不全麻痺、慢性偽性腸閉塞症、偽性結腸閉塞症、クローン病、炎症性腸疾患、過活動膀胱症候群、膀胱過敏症または結腸炎誘導性の膀胱求心性活動亢進が含まれる。遅延放出組成物による処置に適切な症状には、例えば、非便秘患者における、腹部の疼痛、不快感もしくは膨満、または内臓疼痛が含まれる。
【0099】
一般に、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体は、胃、腸および下部GI中の上皮細胞の頂端表面上に位置する膜貫通受容体である。この受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、一回膜貫通領域およびC末端グアニリルシクラーゼドメインを有する。リガンドがGC-Cの細胞外ドメインに結合すると、細胞内触媒ドメインが、GTPからのcGMPの産生を触媒する。in vivoで、細胞内cGMPにおけるこの増加は、とりわけ、腸管腔中への塩化物および重炭酸塩の増加した分泌、増加した管腔pH、減少した管腔ナトリウム吸収、増加した腸液分泌、ならびに腸通過の加速をもたらす事象のカスケードを開始させる。cGMPは、上皮から粘膜下層および管腔中へと二方向に分泌される。通常、GI管のpHは、胃(pH1.5~3)から回腸終末部(pH7~8)へと次第に増加し、その後結腸でpH5.5~7.0まで低下する。さらに、in vivoでのリナクロチドの強力な鎮痛効果は、リナクロチドによるGC-C/cGMP経路の活性化後にIEC(腸上皮細胞)から粘膜下層中に分泌される細胞外cGMPを、結腸侵害受容器の変更された機能に結び付け、末梢鎮痛を生じる経路によって媒介されるという証拠が増加している。
【0100】
リナクロチドは、腸における腸液および電解質のバランスの調節因子である腸GC-C受容体に結合する。リナクロチドは、アミノ酸配列Cys Cys Glu Tyr Cys Cys Asn Pro Ala Cys10 Thr11 Gly12 Cys13 Tyr14からなるペプチドである。任意の所望の形態のリナクロチドは、例えば、このペプチドの任意の薬学的に許容される塩もしくは水和物、その任意の単離および/もしくは精製された形態、またはその任意のジスルフィド形態で、組成物中で使用され得る。リナクロチドは、CysとCysとの間、CysとCys10との間、およびCysとCys13との間にジスルフィド結合を有する。
【0101】
一部の実施形態では、DR組成物は、即時放出錠剤コアを含み、腸の遠位区画のpH条件下でのみ溶解する単位用量のリナクロチドを含む、腸溶性コーティングされた錠剤を含む。一部の実施形態では、腸溶性または機能的コーティングは、pH感受性ポリマーを含む。
【0102】
pH感受性ポリマーは、放出が所望されるGI管の部分のpHと一致する閾値pH(または溶解pH)に基づいて選択される。したがって、一実施形態では、腸溶性コーティングは、少なくとも6.0のpH、例えば、少なくとも6.2のpH、少なくとも6.4のpH、少なくとも6.5のpH、少なくとも6.6のpH、少なくとも6.8のpH、少なくとも7.0のpH、少なくとも7.2のpH、少なくとも7.4のpH、少なくとも7.6のpHまたはそれよりも高いpHの溶解プロファイルを有するpH感受性ポリマーを含む。
【0103】
別の実施形態では、pH感受性ポリマーは、アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー(例えば、Eudragit(登録商標));セルロースアセテートサクシネート(CAS);ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP);PVA;PVP;PVP-LP、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS);ポリビニルアセテートフタレート(PVAP);メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー;アルギン酸ナトリウムおよびステアリン酸;グアーガム;ならびにカルボマーから選択される。さらなる実施形態では、腸溶性コーティングは、Eudragit(登録商標)FS30D、PlasAcryl(登録商標)、Eudragit(登録商標)S100、Eudragit(登録商標)L100、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)L30D-55、Eudragit(登録商標)S、Eudragit(登録商標)RL30D、Eudragit(登録商標)RS30D、Eudragit(登録商標)RS、Eudragit(登録商標)EC、またはそれらの混合物から選択される。一実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit S100を含む。別の実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit L100を含む。なお別の実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit S100から本質的になる。なお別の実施形態では、pH感受性ポリマーは、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む。なお別の実施形態では、pH感受性ポリマーは、1:1と6:1(S100:L100)との間の重量比で、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む。別の実施形態では、pH感受性ポリマーは、4.5:1と5.5:1(S100:L100)との間の重量比で、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む。特定の一実施形態では、pH感受性ポリマーは、4.875:1(S100:L100)との間の重量比で、Eudragit S100およびEudragit L100の混合物を含む。
【0104】
さらに別の実施形態では、腸溶性コーティングは、平均厚さが少なくとも40ミクロン、例えば、平均厚さが少なくとも45ミクロン、平均厚さが少なくとも50ミクロン、平均厚さが少なくとも55ミクロン、平均厚さが少なくとも60ミクロン、平均厚さが少なくとも65ミクロン、平均厚さが少なくとも70ミクロン、平均厚さが少なくとも75ミクロン、平均厚さが少なくとも80ミクロン、平均厚さが少なくとも85ミクロン、平均厚さが少なくとも90ミクロン、平均厚さが少なくとも95ミクロン、平均厚さが少なくとも100ミクロン、平均厚さが少なくとも105ミクロン、平均厚さが少なくとも110ミクロン、平均厚さが少なくとも115ミクロン、または平均厚さが少なくとも120ミクロンである。別の実施形態では、腸溶性コーティングは、55ミクロンと100ミクロンとの間の平均厚さを有する。なお別の実施形態では、腸溶性コーティングは、65ミクロンと95ミクロンとの間の平均厚さを有する。特定の実施形態では、腸溶性コーティングは、約75ミクロンおよび85ミクロンの平均厚さを有する。
【0105】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、少なくとも1.25%(w/w)のPVA、例えば、少なくとも1.49%(w/w)のPVAを含む。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、少なくとも0.44%(w/w)のCaCl、例えば、少なくとも0.71%(w/w)のCaClを含む。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、少なくとも0.93%(w/w)のヒスチジン、例えば、少なくとも1.49%(w/w)のヒスチジンを含む。
【0106】
遅延放出組成物は、任意の有効量のリナクロチドを含み得る。一部の実施形態では、例えば、組成物は、0.05μg~6mgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、1μg~2mgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、25μg~2mgのリナクロチド、例えば、50μg~1mgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、0.1μg~90μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、0.1μg~45μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、0.1μg~25μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、30μg~300μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.05μg、0.1μg、0.15μg、0.25μg、0.5μg、0.75μg、1μg、1.5μg、2μg、2.5μg、3μg、3.5μg、4μg、4.5μg、5μg、7.5μg、9μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、36μg、40μg、45μg、50μg、60μg、72μg、75μg、90μg、100μg、145μg、150μg、200μg、250μg、290μg、300μg、350μg、400μg、450μg、500μg、550μg、579μg、600μg、650μg、700μg、750μg、800μg、850μg、900μg、950μgまたは1mgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、100μg~600μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、30μg、50μg、75μg、100μg、150μg、290μg、300μg、400μg、500μgまたは600μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、9μg、10μg、15μg、36μg、72μg、75μg、145μg、290μg、579μgまたは600μgのリナクロチドを含む。
【0107】
一部の実施形態では、組成物は、30μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、50μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、100μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、145μgのリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、300μgのリナクロチドを含む。
【0108】
一部の実施形態では、リナクロチドの遅延放出組成物の安定性は、適切な量の、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)成分、カチオン(例えば、金属カチオン)成分および/またはポリマー成分を組成物中に含めることによって、増加または改善され得ることが見出された。これらの成分は、例えば、組成物内のリナクロチドの分解(例えば、湿気駆動性の分解反応、例えば、加水分解、脱アミドおよび/または多量体化反応に起因する)を防止する、減らすおよび/または減少させることによって、リナクロチドの遅延放出組成物の安定性を増加または増強する。例えば、一部の実施形態では、組成物中の適切な量のカチオン(例えば、Mg2+、Ca2+、Zn2+)の添加または含有は、リナクロチドの酸化的分解に対する組成物の安定性を増加させることが見出された。さらに、一部の実施形態では、組成物中に例えばアミノ酸(例えば、ヒスチジン)の形態で適切な量の、立体障害を受けている一級アミンを含めることは、例えば、スカベンジャーとして作用することによって、および/または組成物を緩衝することによって、例えば、リナクロチドのN末端へのホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド等価物の求核付加に対する組成物の安定性を増加させることが見出された。さらに、一部の実施形態では、組成物中に立体障害を受けている一級アミン(例えば、ヒスチジン)およびカチオン(例えば、Ca2+)の両方を適切な量で含めることは、リナクロチドの加水分解およびホルムアルデヒド(Cys-IMD)産物の形成に対する組成物の安定性を増加させることが見出された。一部の実施形態では、遅延放出組成物中に適切な量のポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコール)を含めることは、例えば、組成物内のリナクロチドの可動性および/または反応性を減少させることによって、例えば、リナクロチドとの複合体もしくはマトリックス(例えば、ガラス状および/または剛性のマトリックス)を(例えば、ガラス化反応によって)形成することによって、リナクロチドと水分子との間の水素結合形成を防止もしくは減らすことによって、および/またはリナクロチドの三次元構造の完全性を増強することによって、組成物の安定性を増加させることもまた見出された。
【0109】
これに関して、一部の実施形態では、遅延放出医薬組成物中のリナクロチドを、特定の濃度またはモル比のカチオンおよび立体障害を受けている一級アミンと組み合わせることで、例えば、カチオンおよび/もしくは立体障害を受けている一級アミンならびに/または同じ濃度のこれらの成分を含まない類似の組成物と比較して、組成物内でのリナクロチドの安定性における相乗的な増強または改善を引き起こすことが見出されている。一部の実施形態では、組成物は、任意の、安定化をもたらす量の、立体障害を受けている一級アミン成分を含み得る。他の実施形態では、組成物は、400:1と1:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。さらなる実施形態では、組成物は、200:1と50:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。他の実施形態では、組成物は、100:1と1:100との間の、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)のリナクロチドに対するモル比を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、100:1と1:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、90:1と2:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、80:1と5:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、70:1と10:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、60:1と20:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、50:1と30:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、40:1と20:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と20:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と25:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と30:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と40:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と50:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と60:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と70:1との間の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも5:1の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも10:1の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも20:1の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも25:1の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも30:1の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも40:1の、立体障害を受けている一級アミンのリナクロチドに対するモル比を含む。
【0110】
遅延放出組成物中に含めるのに適切な立体障害を受けている一級アミンは、例えば、天然に存在するアミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メグルミン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン)、合成アミノ酸(例えば、ランチオニン、テアニンまたは1-アミノシクロヘキサン)、アミノ糖(例えば、キトサンまたはグルコサミン)、またはそれらの組合せもしくは混合物である。一部の実施形態では、組成物は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、システイン、アラニン、セリン、スレオニン、チロシン、プロリン、トリプトファン、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、アラニン、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、イソロイシン、アラニン、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、メチオニン、アラニン、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、メチオニン、またはそれらの混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、イソロイシン、またはそれらの混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシン、アラニン、またはそれらの混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、ロイシンを含む。一部の実施形態では、組成物は、イソロイシンを含む。一部の実施形態では、組成物は、メチオニンを含む。一部の実施形態では、組成物は、アラニンを含む。一部の実施形態では、組成物は、ヒスチジンを含む。
【0111】
遅延放出組成物は、任意の、安定化をもたらす量のカチオン(例えば、金属カチオン)を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、300:1と1:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。さらなる実施形態では、組成物は、250:1と30:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。他の実施形態では、組成物は、100:1と1:100との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、100:1と1:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、90:1と2:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、80:1と5:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、70:1と10:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、60:1と20:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、50:1と30:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、40:1と20:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と20:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と25:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と30:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と40:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と50:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と60:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、100:1と70:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも5:1の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも10:1の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも20:1の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも25:1の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも30:1の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも40:1の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも60:1の、カチオンのリナクロチドに対するモル比を含む。
【0112】
任意の適切なカチオン(単数または複数)、例えば、任意の適切な金属カチオンまたは有機カチオンが、組成物中に含まれ得る。一部の実施形態では、組成物は、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、スズ、マンガン、クロム、コバルト、ニッケル、バリウム、ナトリウム、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、カルシウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、マンガン、クロム、コバルト、ニッケル、バリウム、ナトリウム、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、アルミニウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、二価金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、Al3+、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Mn2+、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される二価金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、Mg2+を含む。一部の実施形態では、組成物は、Ca2+を含む。一部の実施形態では、組成物は、Zn2+を含む。一部の実施形態では、組成物は、アルミニウムを含む。
【0113】
さらに、金属カチオンは、任意の適切な形態、例えば、任意の適切な対イオンとの任意の薬学的に許容される塩で、組成物に添加され得る。適切な金属塩には、例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、またはそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態では、組成物は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸亜鉛、またはそれらの任意の組合せもしくは混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、塩化カルシウムを含む。一部の実施形態では、組成物は、塩化マグネシウムを含む。一部の実施形態では、組成物は、酢酸亜鉛を含む。適切な有機カチオンには、例えば、水酸化アンモニウム、D-アルギニン、L-アルギニン、t-ブチルアミン、酢酸カルシウム水和物、炭酸カルシウム、DL-リンゴ酸カルシウム、水酸化カルシウム、コリン、エタノールアミン、エチレンジアミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-リシン、水酸化マグネシウム、N-メチル-D-グルカミン、L-オルニチン塩酸塩、水酸化カリウム、プロカイン塩酸塩、L-プロリン、ピリドキシン、L-セリン、水酸化ナトリウム、DL-トリプトファン、トロメタミン、L-チロシン、L-バリン、カルニチン、タウリン、リンゴ酸クレアチン、アルファケトグルタル酸アルギニン、アルファケトグルタル酸オルニチン、酢酸スペルミン、塩化スペルミジン、またはそれらの組合せもしくは混合物が含まれる。一部の実施形態では、有機カチオンは、N-メチル D-グルカミン、コリン、アルギニン、リシン、プロカイン、トロメタミン(TRIS)、スペルミン、N-メチル-モルホリン、グルコサミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、ジアザビシクロウンデセン、クレアチン、アルギニンエチルエステル、アマンタジン、リマンタジン、オルニチン、タウリンおよびシトルリン、またはそれらの任意の組合せもしくは混合物からなる群から選択される。
【0114】
組成物は、任意の、安定化をもたらす量のポリマーを含み得る。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、1重量%と25重量%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、1重量%と10重量%との間のポリマーを含む。
【0115】
一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、2重量%と4重量%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と75wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と55wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と35wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と30wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と25wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と25wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、5wt.%と25wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%と25wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、15wt.%と25wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と22wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と22wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、5wt.%と22wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%と22wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と20wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と20wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、5wt.%と20wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%と20wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.01wt.%と15wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.01wt.%と10wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.01wt.%と5wt.%との間のポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と95wt.%との間、例えば、5wt.%と95wt.%との間、15wt.%と95wt.%との間、25wt.%と95wt.%との間、35wt.%と95wt.%との間、45wt.%と95wt.%との間、0.1wt.%と85wt.%との間、1wt.%と85wt.%との間、5wt.%と85wt.%との間、15wt.%と85wt.%との間、25wt.%と85wt.%との間、35wt.%と85wt.%との間、0.1wt.%と80wt.%との間、1wt.%と80wt.%との間、5wt.%と80wt.%との間、15wt.%と80wt.%との間、25wt.%と80wt.%との間、35wt.%と80wt.%との間、0.1wt.%と75wt.%との間、1wt.%と75wt.%との間、5wt.%と75wt.%との間、15wt.%と75wt.%との間、25wt.%と75wt.%との間、35wt.%と75wt.%との間、0.1wt.%と65wt.%との間、1wt.%と65wt.%との間、5wt.%と65wt.%との間、15wt.%と65wt.%との間、25wt.%と65wt.%との間、35wt.%と65wt.%との間、0.1wt.%と60wt.%との間、1wt.%と60wt.%との間、5wt.%と60wt.%との間、15wt.%と60wt.%との間、25wt.%と60wt.%との間または35wt.%と60wt.%との間のポリマーを含む。
【0116】
一部の実施形態では、ポリマーは、遅延放出組成物内で、安定剤、保護的コーティングの両方として、またはフィルム形成剤として作用する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、80:1と300:1との間、例えば、100:1と200:1との間、110:1と190:1との間、またはさらには120:1と180:1との間の、ポリマー(例えば、PVPまたはPVA)のリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、約80:1よりも高い、例えば、約100:1よりも高い、またはさらには約120:1よりも高い、ポリマー(例えば、PVPまたはPVA)のリナクロチドに対するモル比を含む。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、10:1と300:1との間、例えば、80:1と200:1との間、100:1と180:1との間、またはさらには110:1と150:1との間の、ポリマー(例えば、PVPまたはPVA)のリナクロチドに対する重量比を含む。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、100:1と500:1との間、例えば、200:1と400:1との間、250:1と350:1との間、またはさらには300:1と350:1との間の、ポリマー(例えば、PVPまたはPVA)のリナクロチドに対する重量比を含む。
【0117】
遅延放出組成物中に含めるのに適切なポリマーは、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアルコール低過酸化物(PVA-LP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxylpropyl methyl cellulose)
(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxylpropyl cellulose)(HPC
)、メチルセルロース、メタクリレートポリマー、シクロデキストリン、デキストリン、デキストラン、ポリアクリル酸、キトサン、グアーガム、キサンタンガム、ポリ酸化エチレン(例えば、ポリエチレンポリプロピレンオキシド)、ポリ(ビニルスルホン酸ナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリ(アルギニン)、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル、ポロクサマー(例えば、BASFから入手可能なPluronic(登録商標)製品)、アルギネート、トレハロース、スクロース、イヌリン、またはそれらの組合せもしくは混合物である。一部の実施形態では、組成物は、PVP、PVA、メタクリレートポリマー、シクロデキストリン、デキストラン、ポリアクリル酸、キトサン、グアーガム、キサンタンガム、ポリ酸化エチレン、ポリエチレングリコール、ポリ(アルギニン)、ポリカルボフィル、ポリビニルピロリドン-コ-酢酸ビニル、ポロクサマー、またはそれらの組合せもしくは混合物から選択されるポリマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、PVP、PVA、ポリ酸化エチレン、またはそれらの混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、PVP、PVA、またはそれらの混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、PVPを含む。一部の実施形態では、組成物は、PVAを含む。
【0118】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、2種またはそれよりも多くの安定化剤を含む。例えば、組成物は、安定化をもたらす量のポリマーおよび安定化をもたらす量の、立体障害を受けている一級アミンを含み得る。さらに、組成物は、安定化をもたらす量のポリマーおよび安定化をもたらす量のカチオン(例えば、金属カチオン)を含み得る。さらに、組成物は、安定化をもたらす量の、立体障害を受けている一級アミン、および安定化をもたらす量のカチオン(例えば、金属カチオン)を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のポリマー、安定化をもたらす量の、立体障害を受けている一級アミン、および安定化をもたらす量のカチオン(例えば、金属カチオン)を含む。
【0119】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、安定化をもたらす量のPVP、および安定化をもたらす量の、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVP、および安定化をもたらす量の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVP、および安定化をもたらす量の、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、アラニン、またはそれらの組合せもしくは混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVPおよび安定化をもたらす量のヒスチジンを含む。
【0120】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、安定化をもたらす量のPVA、および安定化をもたらす量の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVA、および安定化をもたらす量の、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、またはそれらの混合物から選択されるアミノ酸を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVA、および安定化をもたらす量の、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、アラニン、またはそれらの組合せもしくは混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVAおよび安定化をもたらす量のロイシンを含む。
【0121】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、安定化をもたらす量のPVPおよび安定化をもたらす量のカチオン(例えば、金属カチオン)を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVPおよび安定化をもたらす量の二価金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVPおよび安定化をもたらす量のMg2+、Ca2+、Zn2+もしくはそれらの塩またはそれらの組合せもしくは混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVPおよび安定化をもたらす量のCa2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVPおよび安定化をもたらす量のMg2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVPおよび安定化をもたらす量のZn2+またはその塩を含む。
【0122】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、安定化をもたらす量のPVAおよび安定化をもたらす量のカチオン(例えば、金属カチオン)を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVAおよび安定化をもたらす量の二価金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVAおよび安定化をもたらす量のMg2+、Ca2+、Zn2+もしくはそれらの塩またはそれらの組合せもしくは混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVAおよび安定化をもたらす量のCa2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVAおよび安定化をもたらす量のMg2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVAおよび安定化をもたらす量のZn2+またはその塩を含む。
【0123】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、安定化をもたらす量の、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、アラニンから選択されるアミノ酸;および安定化をもたらす量の、Mg2+、Ca2+、Zn2+もしくはそれらの塩またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される二価金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量の、ロイシンおよびイソロイシンから選択されるアミノ酸;ならびに安定化をもたらす量の、Mg2+、Ca2+もしくはそれらの塩またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される二価金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量の、ロイシンまたはメチオニンから選択されるアミノ酸;および安定化をもたらす量の、Ca2+、Zn2+もしくはそれらの塩またはそれらの組合せもしくは混合物から選択される二価金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のロイシンおよび安定化をもたらす量のCa2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のカチオン、および安定化をもたらす量の、立体障害を受けている一級アミンを含む。一部の実施形態では、組成物は、少なくとも1.5:1、例えば、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、またはさらには少なくとも5:1の、カチオン:立体障害を受けている一級アミン(例えば、Ca2+:ロイシン)のモル比(例えば、1.5:1と5:1との間、例えば、2:1と4:1との間のモル比)で、カチオンおよび立体障害を受けている一級アミンを含む。
【0124】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、(i)安定化をもたらす量のPVPまたはPVA、(ii)安定化をもたらす量のロイシン、イソロイシン、メチオニン、アラニン、および(iii)安定化をもたらす量のMg2+、Ca2+、Zn2+もしくはそれらの塩またはそれらの組合せもしくは混合物を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVP、安定化をもたらす量のロイシン、および安定化をもたらす量の金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVA、安定化をもたらす量のヒスチジン、および安定化をもたらす量のCa2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVP、安定化をもたらす量のロイシン、および安定化をもたらす量のMg2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVP、安定化をもたらす量のロイシン、および安定化をもたらす量のZn2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVA、安定化をもたらす量のロイシン、および安定化をもたらす量のCa2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVA、安定化をもたらす量のロイシン、および安定化をもたらす量のMg2+またはその塩を含む。一部の実施形態では、組成物は、安定化をもたらす量のPVA、安定化をもたらす量のロイシン、および安定化をもたらす量のZn2+またはその塩を含む。
【0125】
一部の実施形態では、組成物は、(i)0.1wt.%と30wt.%との間のポリマー、(ii)100:1と10:1との間の、一級アミンのリナクロチドに対するモル比の、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)、および(iii)100:1と40:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、カチオン(例えば、金属カチオン)を含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)5wt.%と25wt.%との間のポリマー、(ii)100:1と30:1との間(例えば、60:1と30:1との間またはさらには50:1と30:1との間)の、一級アミンのリナクロチドに対するモル比の、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)、および(iii)100:1と60:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、カチオン(例えば、金属カチオン)を含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)0.1wt.%と30wt.%との間の、PVPおよびPVAから選択されるポリマー、(ii)100:1と10:1との間の、アミノ酸のリナクロチドに対するモル比の、ロイシン、イソロイシン、アラニンおよびメチオニンから選択されるアミノ酸、ならびに(iii)100:1と40:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、Ca2+、Mg2+およびZn2+から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)5wt.%と25wt.%との間の、PVPおよびPVAから選択されるポリマー、(ii)100:1と30:1との間(例えば、60:1と30:1との間)の、アミノ酸のリナクロチドに対するモル比の、ロイシン、イソロイシン、アラニンおよびメチオニンから選択されるアミノ酸、ならびに(iii)100:1と60:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、Ca2+、Mg2+およびZn2+から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)0.1wt.%と30wt.%との間(例えば、5wt.%と25wt.%との間)のPVPまたはPVA、(ii)100:1と30:1との間(例えば、60:1と30:1との間またはさらには50:1と30:1との間)の、ロイシンのリナクロチドに対するモル比のロイシン、および(iii)100:1と60:1との間の、Ca2+のリナクロチドに対するモル比のCa2+を含む。
【0126】
一部の実施形態では、組成物は、(i)45wt.%と99wt.%との間のポリマー、(ii)100:1と10:1との間の、一級アミンのリナクロチドに対するモル比の、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)、および(iii)100:1と40:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、カチオン(例えば、金属カチオン)を含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)45wt.%と70wt.%との間のポリマー、(ii)100:1と30:1との間(例えば、60:1と30:1との間またはさらには50:1と30:1との間)の、一級アミンのリナクロチドに対するモル比の、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)、および(iii)100:1と60:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、カチオン(例えば、金属カチオン)を含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)45wt.%と99wt.%との間の、PVPおよびPVAから選択されるポリマー、(ii)100:1と10:1との間の、アミノ酸のリナクロチドに対するモル比の、ロイシン、イソロイシン、アラニンおよびメチオニンから選択されるアミノ酸、ならびに(iii)100:1と40:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、Ca2+、Mg2+およびZn2+から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)45wt.%と70wt.%との間の、PVPおよびPVAから選択されるポリマー、(ii)100:1と30:1との間(例えば、60:1と30:1との間)の、アミノ酸のリナクロチドに対するモル比の、ロイシン、イソロイシン、アラニンおよびメチオニンから選択されるアミノ酸、ならびに(iii)100:1と60:1との間の、カチオンのリナクロチドに対するモル比の、Ca2+、Mg2+およびZn2+から選択される金属カチオンを含む。一部の実施形態では、組成物は、(i)45wt.%と99wt.%との間(例えば、45wt.%と70wt.%との間)のPVPまたはPVA、(ii)100:1と30:1との間(例えば、60:1と30:1との間またはさらには50:1と30:1との間)の、ロイシンのリナクロチドに対するモル比のロイシン、および(iii)100:1と60:1との間の、Ca2+のリナクロチドに対するモル比のCa2+を含む。
【0127】
遅延放出組成物(例えば、遅延放出錠剤)は、任意の1種または複数の充填剤もまた含み得る。適切な充填剤には、デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フルクトース、メチルセルロース、デキストレート(dextrate)、デキストロース、デキストラン、ラクチトール、マルトース、スクロース、ソルビトール、イソマルト、アルファ化デンプン、リン酸二カルシウム、微結晶セルロース、マンニトール、ゼラチン、トレハロース、エリスリトール、マルチトール、ラクトース、グルコース、またはそれらの組合せ、またはそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、充填剤は、イソマルトである。一部の実施形態では、充填剤は、ゼラチンである。一部の実施形態では、充填剤は、マンニトールである。一部の実施形態では、充填剤は、アルファ化デンプンである。一部の実施形態では、充填剤は、微結晶セルロースである。
【0128】
遅延放出組成物(例えば、遅延放出錠剤)は、任意の適切な濃度の充填剤を含み得る。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、0.1~99重量%の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、1~95wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、10~90wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、20~90wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、25~85wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、30~80wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、40~70wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、10~60wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、20~50wt.%の充填剤(単数または複数)の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。一部の実施形態では、組成物は、組成物の総重量に対して、少なくとも20wt.%、例えば、少なくとも40wt.%、少なくとも60wt.%、少なくとも70wt.%、少なくとも80wt.%または少なくとも90wt.%の濃度で、1種または複数の充填剤を含む。
【0129】
一部の実施形態では、遅延放出組成物(例えば、遅延放出フィルム)は、1種または複数の可塑剤を含む。適切な可塑剤には、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、グリセロール、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、トリエチルチトレート(triethyl titrate)、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン
酸トリエチル、ヒマシ油、アセチル化モノグリセリド、ソルビトールまたはそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。例示的な実施形態では、製剤中の可塑剤の濃度は、約0~約30wt.%、例えば、約1~約20wt.%、約0~約10wt.%、約1~約5wt.%、またはさらには0~約4wt.%であり得る。
【0130】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、フィルム形成剤、水溶性ポリマー、pH感受性ポリマー、生分解性ポリマー、またはそれらの組合せを含む。本発明の経口溶解性製剤において使用され得る水溶性、pH感受性または生分解性のポリマーには、セルロース誘導体、合成ポリマーポリアクリレートおよび天然ガムが含まれるがこれらに限定されない。例えば、本発明の経口溶解性製剤において使用される水溶性ポリマーには、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートブチレート、アミロース、デキストラン、カゼイン、プルラン、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラゲナン、キサンタンガム、トラガント、グアーガム、アカシアゴム、アラビアゴム、ポリエチレングリコール、ポリ酸化エチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートまたはそれらの混合物が含まれ得るがこれらに限定されない。例示的な実施形態では、製剤中の水溶性ポリマーの濃度は、約20%~約90%(重量)、好ましくは約40%~約80%(重量)の間であり得る。
【0131】
一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、6.0の閾値pH(溶解pHとも呼ばれる)を有するEudagrit(登録商標)L100である。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、7.0の閾値pHを有するEudagrit(登録商標)S100である。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、5.6の閾値pHを有するEudagrit(登録商標)L-30Dである。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、6.8の閾値pHを有するEudagrit(登録商標)FS 30Dである。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、5.5の閾値pHを有するEudagrit(登録商標)L100-55である。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、5.0の閾値pHを有するポリビニルアセテートフタレートである。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、4.5~4.8の閾値pHを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートである。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、5.2の閾値pHを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート50である。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、5.4の閾値pHを有するヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート55である。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、4.8の閾値pHを有するセルロースアセテートトリメリテート(Cellulose acetate trimelliate)で
ある。一部の実施形態では、pH感受性ポリマーは、5.0の閾値pHを有するセルロースアセテートフタレートである。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、上述のpH感受性ポリマーの組合せを含む。
【0132】
当業者は、本開示を利用して、他の成分が、遅延放出組成物の1つまたは複数の特性を増強するために含まれ得ることを理解する。一部の実施形態では、例えば、遅延放出組成物は、1種または複数の錠剤分解物質、滑沢剤、アンチケーキング添加物、抗菌剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、緩衝化剤および/または着色剤を含み得る。
【0133】
適切な錠剤分解物質には、例えば、寒天-寒天、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、他のデンプン、アルファ化デンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム、およびそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態では、錠剤分解物質は、クロスポビドンである。一部の実施形態では、錠剤分解物質は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0134】
適切な滑沢剤には、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱物油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、シロイドシリカゲル(syloid silica gel)(AEROSIL(登録商標)200、W.R.Grace C
o.、Baltimore、MD USA)、合成シリカの凝固エアロゾル(Evonik Degussa Co.、Plano、TX USA)、発熱性二酸化ケイ素(CAB-O-SIL、Cabot Co.、Boston、MA USA)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0135】
適切なアンチケーキング添加物には、例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、タルク、グリセリル、およびそれらの混合物が含まれる。
【0136】
例えば、リナクロチド組成物のための防腐剤として使用され得る適切な抗菌添加物には、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クレゾール、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、エチルパラベン、メチルパラベン、フェノール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール(thimersol)、チモール、およびそれらの混合物が含まれる
【0137】
組成物は、任意の適切な薬学的に許容される担体または媒体もまた含み得る。適切な薬学的に許容される担体には、例えば、任意の溶媒、分散剤、pH緩衝化剤、コーティング、吸収促進剤、制御放出剤、および1種または複数の不活性賦形剤(例えば、充填剤、デンプン、ポリオール、造粒剤、微結晶セルロース、希釈剤、滑沢剤、バインダー、崩壊剤)などが含まれる。さらに、組成物は、任意の所望のさらなる成分、添加物および/または種、例えば、表面活性添加物、分散添加物、保水剤、懸濁剤、可溶化剤、緩衝化剤、錠剤分解物質、防腐剤、着色料、香料(flavorant)などを含み得る。一部の実施形態では
、組成物は、リナクロチドと相互作用する1つまたは複数のイオン種を含む。
【0138】
組成物は、任意の適切なpH緩衝化剤もまた含み得る。一部の実施形態では、pH緩衝化剤は、リナクロチドの等電点を達成するのに十分な量で、組成物中に存在する。これに関して、組成物は、任意の所望のpHを有し得る。一部の実施形態では、組成物は、2~5のpH(例えば、2~4.5のpH、2~4のpH、2.5~4のpH、2.5~3.5のpH、2.5~3のpH、またはさらには3のpH)を有する、
【0139】
一部の実施形態では、組成物は、リナクロチドおよび加水分解産物、例えば、
【化2】
の構造を含むまたは有する加水分解産物を含む。組成物は、任意の所望の濃度の加水分解産物を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、7wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、6wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、5wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、4wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、3wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、2wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%未満の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.01wt.%と10wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と7wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と4wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と4wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と4wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と3wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と3wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と3wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と2.5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と2.5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と2.5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と2wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と2wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と2wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と1.5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1.5wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と1wt.%との間の加水分解産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1wt.%との間の加水分解産物を含む。
【0140】
一部の実施形態では、組成物は、リナクロチドおよび酸化産物、例えば、
【化3】
の構造を含むまたは有する酸化産物を含む。あるいは、またはさらに、組成物は、リナクロチドおよび示された構造を有する酸化産物を含むが、酸化は、6つの示されたシステイニル硫黄のうち任意の1つまたは複数において生じる。組成物は、任意の所望の濃度の酸化産物を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、7wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、6wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、5wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、4wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、3wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、2wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%未満の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.01wt.%と10wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と7wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と4wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と4wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と4wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と3wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と3wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と3wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と2.5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と2.5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と2.5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と2wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と2wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と2wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と1.5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1.5wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と1wt.%との間の酸化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1wt.%との間の酸化産物を含む。
【0141】
一部の実施形態では、組成物は、リナクロチドおよびアセチル化産物、例えば、
【化4】
を含むまたは有するアセチル化産物を含む。組成物は、任意の所望の濃度のアセチル化産物を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、7wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、6wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、5wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、4wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、3wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、2wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%未満のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.01wt.%と10wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と7wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と4wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と4wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と4wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と3wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と3wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と3wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と2.5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と2.5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と2.5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と2wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と2wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、1wt.%と2wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と1.5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1.5wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.1wt.%と1wt.%との間のアセチル化産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1wt.%との間のアセチル化産物を含む。
【0142】
一部の実施形態では、リナクロチドおよび以下から選択される1種または複数のペプチドを含む医薬組成物が提供される:
i.ペプチド(「Cys-IMD」)もしくはその薬学的に許容される塩であって、このペプチドは、
【化5】
のアミノ酸構造を含む;
ii.加水分解ペプチド(「Asp」)もしくはその薬学的に許容される塩であって、このペプチドは、
【化6】
のアミノ酸構造を含む;
iii.アセチル化ペプチド(「Cys-N-アセチル」)もしくはその薬学的に許容される塩であって、このペプチドは、
【化7】
のアミノ酸構造を含む;
iv.リナクロチド三硫化物ペプチドもしくはその薬学的に許容される塩であって、このペプチドは、Cys Cys Glu Tyr Cys Cys Asn Pro Ala Cys Thr Gly Cys Tyrのアミノ酸配列を含み、さらなる硫黄原子が、6つのシステイニル硫黄のうちいずれか1つに結合され得る;
v.ペプチド(「Des-Tyr14」)もしくはその薬学的に許容される塩であって、このペプチドは、
【化8】
のアミノ酸構造を含む;または
vi.ペプチド(Cys-α-ケトン)もしくはその薬学的に許容される塩であって、このペプチドは、
【化9】
のアミノ酸構造を含む。
【0143】
一部の実施形態では、Cys-α-ケトンペプチドは、その水和形態またはその薬学的に許容される塩で存在し得、このペプチドは、
【化10】
のアミノ酸構造を含む。当業者は、Cys-α-ケトンペプチドが、その水和物とケトン形態との間で容易に変換することを認識する。
【0144】
一部の実施形態では、Cys-α-ケトンペプチドは、組成物の約15重量%未満、組成物の約10重量%未満、組成物の約7重量%未満、組成物の約5重量%未満、組成物の約4重量%未満、組成物の約3重量%未満、組成物の約2重量%未満、組成物の約1.5重量%未満、または組成物の約1重量%未満を構成する。他の例示的な実施形態では、Cys-α-ケトンペプチドは、組成物の約0.01重量%~約15重量%、組成物の約0.05重量%~約10重量%、組成物の約0.05重量%~約7重量%または組成物の約0.05重量%~約5重量%を構成する。
【0145】
一部の実施形態では、Cys-IMDペプチドは、組成物の約15重量%未満、組成物の約10重量%未満、組成物の約7重量%未満、組成物の約5重量%未満、組成物の約4重量%未満、組成物の約3.5重量%未満、組成物の約3重量%未満、組成物の約2重量%未満、または組成物の約1重量%未満を構成する。他の例示的な実施形態では、Cys-IMDペプチドは、組成物の約0.01重量%~約15重量%、組成物の約0.05重量%~約10重量%、組成物の約0.05重量%~約7重量%または組成物の約0.05重量%~約5重量%を構成する。
【0146】
一部の実施形態では、加水分解ペプチド(「Asp」)は、組成物の約15重量%未満、組成物の約10重量%未満、組成物の約7重量%未満、組成物の約5重量%未満、組成物の約4重量%未満、組成物の約3.5重量%未満、組成物の約3重量%未満、組成物の約2重量%未満、または組成物の約1重量%未満を構成する。他の例示的な実施形態では、加水分解ペプチド(「Asp」)は、組成物の約0.01重量%~約15重量%、組成物の約0.05重量%~約10重量%、組成物の約0.05重量%~約7重量%または組成物の約0.05重量%~約5重量%を構成する。
【0147】
一部の実施形態では、アセチル化ペプチド(「Cys-N-アセチル」)は、組成物の約15重量%未満、組成物の約10重量%未満、組成物の約7重量%未満、組成物の約5重量%未満、組成物の約4重量%未満、組成物の約3.5重量%未満、組成物の約3重量%未満、組成物の約2重量%未満、または組成物の約1重量%未満を構成する。他の例示的な実施形態では、アセチル化ペプチド(「Cys-N-アセチル」)は、組成物の約0.01重量%~約15重量%、組成物の約0.05重量%~約10重量%、組成物の約0.05重量%~約7重量%または組成物の約0.05重量%~約5重量%を構成する。
【0148】
一部の実施形態では、リナクロチド三硫化物ペプチドは、組成物の約15重量%未満、組成物の約10重量%未満、組成物の約7重量%未満、組成物の約5重量%未満、組成物の約4重量%未満、組成物の約3.5重量%未満、組成物の約3重量%未満、組成物の約2重量%未満、または組成物の約1重量%未満を構成する。他の例示的な実施形態では、リナクロチド三硫化物ペプチドは、組成物の約0.01重量%~約15重量%、組成物の約0.05重量%~約10重量%、組成物の約0.05重量%~約7重量%または組成物の約0.05重量%~約5重量%を構成する。
【0149】
一部の実施形態では、Des-Tyr14ペプチドは、組成物の約15重量%未満、組成物の約10重量%未満、組成物の約7重量%未満、組成物の約5重量%未満、組成物の約4重量%未満、組成物の約3.5重量%未満、組成物の約3重量%未満、組成物の約2重量%未満、または組成物の約1重量%未満を構成する。他の例示的な実施形態では、Des-Tyr14ペプチドは、組成物の約0.01重量%~約15重量%、組成物の約0.05重量%~約10重量%、組成物の約0.05重量%~約7重量%または組成物の約0.05重量%~約5重量%を構成する。
【0150】
一部の実施形態では、組成物は、リナクロチドおよび任意の所望の濃度のマルチマーを含む。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%未満のマルチマー(単数または複数)を含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1wt.%との間のマルチマー(単数または複数)を含む。
【0151】
一部の実施形態では、組成物は、有効量のリナクロチドおよび任意の所望の量の還元形態のリナクロチドを含む。本明細書で使用される場合、用語「還元形態のリナクロチド」とは、システインアミノ酸間にジスルフィド結合を有さないリナクロチドを指す。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%未満の還元形態のリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1wt.%との間の還元形態のリナクロチドを含む。
【0152】
一部の実施形態では、組成物は、有効量のリナクロチドおよび任意の所望の量のスクランブル形態のリナクロチドを含む。本明細書で使用される場合、用語「スクランブル形態のリナクロチド」とは、CysとCys10との間、CysとCys13との間、CysとCysとの間、CysとCysとの間、CysとCysとの間、CysとCys13との間、CysとCysとの間、CysとCysとの間および/またはCysとCys10との間にジスルフィド結合を有するリナクロチドを指す。一部の実施形態では、組成物は、0.5wt.%と1wt.%との間のスクランブル形態のリナクロチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、10wt.%未満のスクランブル形態のリナクロチドを含む。
【0153】
一部の実施形態では、組成物は、約10wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約8wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約7wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約6.5wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約6wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約5.5wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約5wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約4wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約3wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約2.5wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約2wt.%未満の総分解物濃度を含む。一部の実施形態では、組成物は、約1wt.%未満の総分解物濃度を含む。
【0154】
一部の実施形態では、組成物は、薬物の微粒子(例えば、マイクロカプセルまたはミクロスフェア)を調製するために使用される技術であるスプレー乾燥によって調製され得る。スプレー乾燥されたペプチドは一般に、溶解の際にそれらの生物活性を保持し、均一な粒子サイズおよび球状形状を含む、有用な物理的特徴を有し得る。さらに、スプレー乾燥によって調製された微粒子は、自由流動性である場合が多く、これは、錠剤を形成するおよびカプセルを充填するなどの医薬品製造プロセスに有益である。スプレー乾燥プロセスはまた、臨床的および商業用の製造のために容易にスケールアップ可能であるので、有用である。一実施形態では、スプレー緩衝剤は、HCl、ヒスチジン、1.5%PVAおよび0.6%タルクを含む。この製剤は、36~290μgの間のより低い投薬範囲を生じるために使用され得る。
【0155】
組成物は、投与されると、胃腸管の標的化された領域において溶解して、リナクロチドを放出する。製剤は、いくつかの異なる因子によって決定される期間にわたって、リナクロチドを放出し得る。これらの因子には、製剤の寸法、リナクロチドの濃度、およびリナクロチドが製剤中にどのように分散されているかが含まれる。例えば、製剤の厚さおよび表面積を変動させることによって、溶解の速度が調整され得る。厚い製剤は、他の点では類似の薄い製剤よりも緩徐に溶解し、高い投薬量のリナクロチドを投与するために望まれ得る。
【0156】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化されたpH条件において、約60分未満の崩壊速度を有する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化されたpH条件において、約30分未満の崩壊速度を有する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、約25分未満の崩壊速度を有する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、約20分未満の崩壊速度を有する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、約15分未満の崩壊速度を有する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、約10分未満の崩壊速度を有する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入した後、約30分未満で崩壊する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入した後、約25分未満で崩壊する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入した後、約20分未満で崩壊する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入した後、約15分未満で崩壊する。
【0157】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して60分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約75%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約75%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約80%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約85%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約90%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約95%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約99%を放出する。
【0158】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約40%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約50%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約60%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約70%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約80%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約85%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約90%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して15分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約95%を放出する。
【0159】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、標的化された環境に進入して約2~約2時間との間に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約80%を放出する。
【0160】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、5よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約75%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、5よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約80%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、5よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約85%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、5よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約90%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、5よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約95%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、5よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約99%を放出する。
【0161】
一部の実施形態では、遅延放出組成物は、7よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約75%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、7よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約80%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、7よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約85%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、7よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約90%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、7よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約95%を放出する。一部の実施形態では、遅延放出組成物は、7よりも高いpHと接触して30分以内に、その中に含まれたリナクロチドの少なくとも約99%を放出する。
【0162】
一部の実施形態では、リナクロチドDR組成物は、回腸、下部回腸(late ileum)ま
たは結腸へのリナクロチドの送達のために製剤化される。一部の実施形態では、リナクロチドDR組成物は、回腸または回腸領域へのリナクロチドの送達のために製剤化される。一部の実施形態では、リナクロチドDR組成物は、下部回腸内から上行結腸(例えば、回盲接合部またはその近傍)までのリナクロチドの送達のために製剤化される。
【0163】
一部の実施形態では、組成物または経口投薬形態は、錠剤、カプセルまたはサシェとして、それを必要とする小児患者に投与される。一部の実施形態では、組成物を含むサシェが開封され、内容物が、アップルソースなどの食品上に散布されもしくはその中に撹拌され、または水などの飲料中に撹拌される。一部の実施形態では、カプセルは、水などの流体と共に丸ごと嚥下され、または開封され、食品もしくは飲料上に散布されもしくはその中に撹拌される。錠剤は、丸ごと嚥下され得、粉砕されて、食品もしくは飲料中に撹拌され得、または咀嚼錠剤として製剤化され得る。
【0164】
医薬組成物の投与が疾患または障害に対する有効な治療レジメンである対象または患者は、好ましくはヒトであるが、臨床試験またはスクリーニングまたは活性実験に関する実験動物を含む任意の動物であり得る。したがって、当業者によって容易に理解できるように、本明細書に記載される方法、化合物および組成物は、例えば、獣医学的使用のための、特に哺乳動物であるが、ヒト、げっ歯類および非げっ歯類、例えば、ネコまたはイヌ対象、例えばウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジおよびブタ対象であるがこれらに限定されない家畜、野生動物(野生状態にあるか動物園にいるかを問わない)、研究動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなど、鳥種、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、鳴鳥などが含まれるがこれらに限定されない任意の動物への投与に特に適している。
【0165】
一部の実施形態では、リナクロチド組成物は、直腸投与のための直腸投薬形態として製剤化され得る。直腸投薬形態には、直腸坐剤、直腸フォームまたはエアロゾル、浣腸、直腸ゲルおよび直腸軟膏が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、直腸投薬形態は、それを必要とする患者に投与され得る。一部の実施形態では、直腸投薬形態は、小児または老年患者に投与され得る。
【0166】
本発明の別の態様は、遅延放出組成物を作製する方法であって、リナクロチド基剤、事前に造粒された充填剤およびプラセボ基剤を調製するステップ;ならびにリナクロチド基剤、事前に造粒された充填剤およびプラセボ基剤をブレンドし、それを錠剤へと圧縮するステップを含む方法である。一部の実施形態では、事前に造粒された充填剤は、湿式造粒を介して調製され、乾燥され、その後ブレンドされて錠剤へと圧縮される。一部の実施形態では、この方法は、サブコートを錠剤に適用するステップをさらに含む。一部の実施形態では、この方法は、腸溶性または機能的コーティングを錠剤に適用するステップをさらに含む。
【0167】
本発明の別の態様は、遅延放出組成物を作製する方法であって、リナクロチドまたはその薬学的に許容される塩を含む水溶液を調製するステップ;およびこの水溶液を薬学的に許容される担体に適用するステップを含む方法である。
定義
【0168】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「遅延放出」とは、リナクロチドの実質的に全てが製剤、組成物または投薬形態中にそれ以上残存しないように、組成物が、胃腸管の標的化された領域において、溶解、融解、崩壊、液化などすることを意味する。遅延放出組成物には、徐放性組成物、胃保持性組成物、標的化放出組成物(例えば、結腸放出組成物、または回盲弁を標的化する組成物など)、延長放出組成物および/またはそれらの組合せが含まれる。
【0169】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「遅延放出組成物」(「DR」)とは、その組成物が、経口投与の直後以外の時点でリナクロチドを放出する投薬形態であることを意味する。
【0170】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「延長放出組成物」とは、その組成物が、投与後延長された期間にわたってリナクロチドを放出する投薬形態であることを意味する。これにより、即時放出組成物と比較して、投薬頻度における低減が可能になる。
【0171】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、「崩壊」および「放出」は、リナクロチドの実質的に全てが、例えば、5もしくは7よりも高いpHで、またはリン酸緩衝液中で37±1℃で維持される場合に、製剤形態中にそれ以上残存しないように、リナクロチドを含むカプセル、フィルム、ビーズまたは錠剤が、口腔の環境において、溶解、融解、崩壊、液化などすることを意味するために、本明細書で使用される。
【0172】
用語「~から放出される」は、組成物からのリナクロチドの放出に関して、特記しない限り、リナクロチドが組成物形態中にそれ以上残存しないことを意味するために、本明細書で使用される。
【0173】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「標的化された環境中への進入」とは、標的化された臓器もしくはその区画における、またはリナクロチド放出が意図される、例えば、5または7よりも高いpHを有するGIの区画内での、患者内での組成物の接触を意味する。
【0174】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「下部胃腸(GI)」とは、胃腸管の遠位区画、例えば、回腸、回腸終末部、回盲弁または結腸を意味する。
【0175】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「上部胃腸(GI)」とは、胃腸管の近位区画、例えば、胃、十二指腸および/または空腸を意味する。
【0176】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、「安定化剤」とは、安定化をもたらす量で組成物中に含まれる、組成物のポリマー、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)またはカチオン(例えば、金属カチオン)成分を指す。例えば、ポリマー性安定化剤は、安定化をもたらす量で組成物中に含まれるポリマーである。同様に、立体障害を受けている一級アミン安定化剤は、安定化をもたらす量で組成物中に含まれる立体障害を受けている一級アミンである。さらに、カチオン性安定化剤は、安定化をもたらす量で組成物中に含まれるカチオンである。
【0177】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、「安定化をもたらす量」とは、安定化をもたらす量の同じ成分を有さない類似の組成物と比較して、組成物中のリナクロチドの安定性を成分が増加させる、組成物内のポリマー、立体障害を受けている一級アミン(例えば、アミノ酸)または金属カチオン成分の濃度を指す。
【0178】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「実質的に全て」とは、少なくとも約90%、例えば、少なくとも約95%またはさらには少なくとも約99%を意味する。
【0179】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「単離および精製された」とは、例えば、HPLCを使用してクロマトグラフィー純度によって測定した場合に、少なくとも95パーセント純粋(例えば、少なくとも96%純粋、少なくとも97%純粋、少なくとも98%純粋、またはさらには少なくとも99%純粋)であることを意味する。
【0180】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、「治療有効量」とは、状況、障害または状態を処置するために哺乳動物に投与した場合に、処置(以下で定義される)をもたらすのに十分な、リナクロチドまたはその薬学的に許容される塩の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに処置される哺乳動物の年齢、性別、体重、健康状態および応答性に依存して変動する。例えば、リナクロチドまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物の治療有効量は、便秘型過敏性腸症候群を含む胃腸障害を処置するために有効な量であり得る。
【0181】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、「薬学的に許容される」とは、動物またはヒトにおけるin vivo使用のために生物学的または薬理学的に適合性であることを意味し、好ましくは、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されたこと、または動物における、より特にはヒトにおける使用のために米国薬局方もしくは他の一般に認識された薬局方に列挙されていることを意味する。
【0182】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「処置する」は、その全ての動詞形態で、対象における障害、例えば、胃腸障害、例えば便秘型過敏性腸症候群を含む障害の少なくとも1つの症状を軽減、緩和、予防および/または管理することを意味するために、本明細書で使用される。本発明の意味の範囲内では、用語「処置する」はまた、疾患を停止させる、開始(すなわち、疾患の臨床的顕在化の前の期間)を遅延させる、および/または疾患を発症するもしくは悪化させるリスクを低減させることを示す。用語「処置」とは、上で定義した「処置する」という行為を意味する。
【0183】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「予防する」とは、対象がその状態を発症する確率における減少を生じる、ある状態(例えば、ストレス関連障害)を発症するリスクがある対象の予防的処置を指す。
【0184】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「有害事象」とは、処置との因果関係を必ずしも有さない、医薬品製品が投与された患者または臨床調査対象における任意の望ましくない医学的出来事を指す。例えば、1つの有害事象は下痢である。
【0185】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「添加物」とは、薬学的に許容される添加物を指す。薬学的に許容される添加物には、バインダー、錠剤分解物質、分散添加物、滑沢剤、流動促進剤、抗酸化剤、コーティング添加物、希釈剤、界面活性剤、風味付け添加物、保水剤、吸収促進性添加物、制御放出添加物、アンチケーキング添加物、抗菌剤(例えば、防腐剤)、着色料、乾燥剤、可塑剤および色素が含まれるがこれらに限定されない。
【0186】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、「賦形剤」は、任意の薬学的に許容される添加物、充填剤、バインダーまたは薬剤である。
【0187】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、「ストレス条件」とは、40℃および75%相対湿度(RH)を指す。
【0188】
本明細書で使用される場合、特記しない限り、用語「約」および「およそ」とは、その値がどのように測定または決定されたか、すなわち、測定システムの限界に一部依存する、当業者によって決定される特定の値についての許容される誤差範囲内であることを意味する。例えば、「約」とは、当技術分野での実務に従って、1標準偏差以内または1標準偏差超以内を意味し得る。あるいは、「約」とは、組成物に関して、プラスまたはマイナス最大で20%、好ましくは最大で10%の範囲であることを意味し得る。あるいは、特に、生物システムまたはプロセスに関して、この用語は、あるオーダーの大きさ以内、好ましくは、ある値の5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味する。特定の値が本出願および特許請求の範囲で記載される場合、特記しない限り、用語「約」とは、その特定の値についての許容される誤差範囲内であることを意味する。
【0189】
本明細書で言及される全ての重量パーセンテージ(すなわち、「重量%」および「wt.%」およびw/w)は、特記しない限り、医薬組成物の総重量と比較して測定される。
【0190】
用語「~から本質的になる」およびそのバリアントは、組成物に言及して使用される場合、その組成物が、リナクロチドならびに他の所望の薬学的に不活性な添加物、賦形剤および/または成分(例えば、ポリマー、立体障害を受けている一級アミン、カチオン、充填剤、バインダー、担体、賦形剤、希釈剤、崩壊性添加物、滑沢剤、溶媒、分散剤、コーティング添加物、吸収促進性添加物、加水分解産物、ホルムアルデヒドイミン産物、酸化産物、アセチル化産物、脱アミド産物、マルチマー、制御放出添加物、アンチケーキング添加物、抗菌添加物、防腐剤、甘味添加物、着色料、香料、乾燥剤、可塑剤、色素など)を含み、他の活性な医薬品成分(単数または複数)を含まないことを意味するために、本明細書で使用される。
【実施例0191】
以下の実施例は本発明を例示しているに過ぎず、本開示を読めば、本発明に包含される多くの変形形態および等価物が当業者には明らかになるので、けっして本発明の範囲を制限するものではない。
【0192】
単位用量のリナクロチドを含有するコア即時放出錠剤を含む腸溶性コーティングされた錠剤は、リナクロチドが下部GI管中に放出されるように、腸の遠位区画のpH条件下でのみ溶解するコーティングでコーティングされ得る。
【0193】
リナクロチドまたはその薬学的に許容される塩は、当業界で公知の標準的技術、例えば、標準的技術を使用する化学合成または組換え発現、それに続く精製を使用して生成し、精製することができる。
【0194】
ビーズ用のリナクロチドコーティング溶液の調製:pHが1.5から2.0の間の溶液を作製するために、約32gから42gの精製水を塩酸と混合する。カチオンは、使用するならば、所望する濃度をもたらす量でこの溶液に添加され、溶液は透明な溶液が生じるのに十分な時間混合される。立体障害を受けている一級アミンは、使用するならば、所望する濃度をもたらす量でこの溶液に添加され、溶液は透明な溶液が生じるのに十分な時間混合される。所望するならば、次に、抗酸化剤などの他の添加物が添加される。溶液のpHを試験して、pHが1.5から2.0の間の溶液を生成するために、必要ならば塩酸が添加される。次に結合剤が溶液に添加され、次に、透明な溶液を実現するのに十分な時間、混合物は撹拌される。所望する量のリナクロチドが溶液に添加され、30~100分間混合してコーティング溶液をもたらす。
【0195】
一実施形態では、コーティング溶液は、リナクロチド、ヒスチジン、1.5%PVAおよび0.6%タルクを含む。この配合は、30~300μgの範囲の投薬範囲を生じるために使用され得る。
【0196】
活性ビーズの調製:乾燥微結晶セルロースビーズ約30~36gはミニカラム流動床コーターに添加される。微結晶セルロースビーズは流動化され、加熱してから積層される。次に、コーティング溶液をビーズに積層される。噴霧温度は、入口温度、噴霧速度、微粒化圧および空気体積を制御することによって24℃から55℃の間で制御する。全コーティング溶液がビーズに積層された後、ビーズを乾燥させる。このプロセスの生成物を活性ビーズと称する。
(実施例1)
遅延放出リナクロチド錠剤
【0197】
リナクロチドは、遅延薬物放出のために錠剤に製剤化され得る。等しい体積のビーズと比較して錠剤ははるかに小さい比表面積を有し、それにより、これらが湿度、酸化、アミド分解などの環境的要因によって誘発される分解を受ける傾向が少なくなる可能性がある。さらに、錠剤のより小さい表面積は、腸溶性コーティングが必要とされる場合、剤形の表面を覆うために必要とされるコーティング材料がはるかに少ないため、有利となり得る。
【0198】
腸溶性コーティングは、錠剤コーティングパン中に適用されてもよく、遅延放出ビーズに使用されるコーティングは、遅延放出錠剤を形成するために錠剤に使用され得る。錠剤上のコーティングポリマーの量は、錠剤の大きさ、形状および表面特性に応じて5から60%(重量増加)で変化し得る。サブコートは、リナクロチドを腸溶性または機能性コートから分離するために錠剤に適用され得る。
(実施例2)
腸溶性コーティングされた錠剤
【表1】
製造プロセス:
A.錠剤
【0199】
造粒溶液は、PVP、ヒスチジンおよび塩化カルシウムを水中に溶解し、溶液のpHを2に調節し、リナクロチドを溶解することによって調製され得る。造粒は、造粒溶液を流動床で充填剤イソマルト上に噴霧することによって実施される。造粒の最後に、顆粒を30分間乾燥させる。次いで、この顆粒は、イソマルト、クロスポビドン、ステアリン酸Mgおよびタルクを含む錠剤成分と均一になるまでブレンドされ、錠剤に圧縮される。
B.腸溶性コーティング
【0200】
錠剤コーティングのために、リナクロチドコア錠剤をパンコーター中に入れ、35℃まで加温する。Eudragit(登録商標)FS 30 D懸濁液で錠剤コーティングを開始し、生成物の温度を28℃から32℃、微粒化空気圧力を3バールに維持する。コーティングの最後に、錠剤を排出し、それらを空気循環オーブン中に入れ、40℃で2時間乾燥させる。同様に、Eudragit(登録商標)L、S、エチルセルロース、HPMCAS、PVAP、CAP、CASなどの他の腸溶性コーティングも、様々な重量増加で遅延放出錠剤を形成するために適用され得る。
(実施例3)
リナクロチドを含む遅延放出組成物
【0201】
リナクロチドを含む遅延放出カプセル剤は、回腸または結腸(例えば、回腸、下部回腸および/または上行結腸)を標的とするために製剤化され得る。この組成物は、リナクロチド錠剤、カプセル剤または硬ゼラチンカプセル剤に含有されるリナクロチドコーティングビーズの腸溶性コーティングに基づいて、pH誘起放出を含むように製剤化され得る。組成物は、2価カチオンおよびアミノ酸などの安定化添加剤をさらに含むように製剤化され得る。PVAは、リナクロチドと腸溶性コーティングとの間の結合剤ならびに保護層として使用され得る。リナクロチドまたは(ビーズ、カプセル、または錠剤として)PVAオーバーコートを備えるリナクロチドは、GI管の回腸において適切なpH7で放出するために、pH依存性様式で溶解する追加の腸溶性コーティング(例えば、Eudragit(登録商標)FS30D、Eudragit(登録商標)S100、Eudragit(登録商標)L100、Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)L30D-55)でコーティングされ得る。腸溶性コーティングは、異なる種類のEudragit(登録商標)を組み合わせるブレンド-異なる比(例えば、50/50比)のEudragit(登録商標)S100/Eudragit(登録商標)L100;様々な比のEudragit(登録商標)S100/Eudragit(登録商標)L100-55;様々な比のEudragit(登録商標)FS30D/Eudragit(登録商標)L30D-55、Eudragit(登録商標)FS30D Eudragit(登録商標)S/Eudragit(登録商標)RSまたはECからなり得る。組成物はさらに、クエン酸トリエチルなどの可塑剤を含む他の賦形剤を含んでいてもよい。コーティングはさらに、適当なpH誘起放出を促進するための懸濁固形物として錠剤分解物質を含んでもよく、クロスカルメロースナトリウム/Eudragit(登録商標)Sのような混合系を生じる。加工を容易にするために、粘着防止剤(例えば、タルク、Aerosil(登録商標)200またはPlasAcryl(商標))が、ビーズの粘着を予防するために使用され得る。
【0202】
さらに、部分的に中和されたコーティング系を含め、2種のEudragit(登録商標)コーティングを適用して、GI管の所望pH領域に到達したら確実に迅速に放出することができる。リン酸水素カリウムなどの緩衝化剤が、2つのEudragit(登録商標)フィルムのうちの1つに含まれていてもよい。代替となる非Eudragit(登録商標)pH依存性フィルムコーティングには、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS、例えば、Aqoat(登録商標)AS-HF)、セルロースアセテートフタレート(CAP、例えば、Aquateric(登録商標))またはシェラックが含まれる。
(実施例4)
例示的ペプチドの含量および純度の測定
【0203】
リナクロチド、イミダゾリジノン分解生成物(「Cys-IMD」)およびα-ケトン分解生成物(「Cys-α-ケトン」)は、本明細書に参照により組み込まれるUS2010/0048489、US2013/0190238およびUS2015/0094272に記載されたように測定し、精製することができる。全般的に、リナクロチドの含量および純度は、Chemstation Rev A.09.03ソフトウェアまたは同等物を用いたAgilent Series 1100 LC Systemを使用して逆相勾配液体クロマトグラフィーによって決定され得る。YMC Pro(商標)C18カラム(寸法:3.0×150mm、3.5um、120Å;Waters Corp.、Milford、MA)または同等物が使用され、40℃で維持される。移動相A(MPA)は、0.1%トリフルオロ酢酸を含む水からなり、一方、移動相B(MPB)は、0.1%トリフルオロ酢酸を含む95%アセトニトリル:5%水からなる。リナクロチドの溶出は、MPB 0%から47%の勾配で28分間、次いでMPB 100%までの4分間の傾斜、MPB 100%で5分間保持してカラムを洗浄することにより達成される。1分でMPB 0%に戻し、次いでMPA 100%で10分間保持することによってカラムの再平衡化を実施する。流速は0.6mL/分であり、検出は220nmのUVによって達成される。
(実施例5)
in vitro薬物放出試験
【0204】
コーティングされた錠剤からのリナクロチド放出は、USP XXIV II型パドル溶解装置(モデルPTWS、Pharma Test、Hainburg、Germany)を使用して溶解試験によって評価することができる。試験は、37.0±0.5℃で維持される900mlの溶解媒体中において100rpmのパドル速度で、3連で行われる。錠剤は、まず胃空間を模倣するために0.1N塩酸(pH1.2)中で30分間または2時間、次いで、小腸のpH条件と類似する様々なpHおよびイオン組成物の緩衝媒体中で6時間、試験される。リナクロチド放出は、2つの公定緩衝媒体:0.067Mの混合リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム(セーレンセン)緩衝剤ならびに0.05Mのリン酸カリウム緩衝剤中でpH6.8~7.4で、ならびにイオン組成に関して腸液に類似するpH7.4の多電解質塩溶液(ハンクス)緩衝剤中で、評価され得る。緩衝剤は全て、使用する前に脱イオン水を用いて新たに調製され、ヘリウムをスパージングすることによって脱気される。剤形から放出されるリナクロチドの量は、実施例4に記載したように逆相勾配液体クロマトグラフィーによって決定され得る。
(実施例6)
リナクロチド錠剤放出プロファイル
【0205】
リナクロチド錠剤放出プロファイルは、様々なpHで3つの遅延放出製剤について試験された。試料181-64Bは、100μg用量のリナクロチド、Opadry(登録商標)IIのサブコート、ならびにEudragit(登録商標)FS 30Dおよびタルクの機能性コートを含有する。試料181-64Cは、100μg用量のリナクロチド、Opadry IIのサブコート、ならびにEudragit(登録商標)FS30DおよびEudragit(登録商標)PlasAcryl(商標)の機能性コートを含有する。ロット181-64Bおよびロット181-64Cの放出プロファイルは、図20上部に提供される。さらに、様々な製剤は、様々な比のEudagrit L100およびEudagrit S100を使用して試験され、Physiolution(登録商標)溶解デバイス(Physioloution GmbH、Greifswald、Germany)を使用して試験された。簡単に説明すると、様々な錠剤は、溶解の位置を決定するために、生理学的緩衝剤中において、胃腸経路を模倣する様々なpHの条件下での薬物溶解について試験された。図20Bに示したように、薬物放出の率は、デバイスが表40に従ってpHを変化させる間の時間に対してプロットされる。
【表40-1】
【表40-2】
図20Bでは、本明細書に記載したように調製したリナクロチドの同一コア錠剤は、異なる比のEudagrit L100(pH6.0を上回ると分解する)およびEudragit S100(pH7.0を上回ると分解する)でコーティングされた。比を40:60(S100:L100)から95:5(S100:L100)に変化させることによって、薬物の放出は、十二指腸/空腸(40:60、50:50)、回腸(60:40、80:20および85:15)の条件における実質的な放出から下部回腸/結腸(90:10および95:5)まで劇的に変化させ得る。これらの研究に基づいて、下部GIの上部(83:17 S100:L100)および下部(100% S100)での放出をもたらす比が、遅延放出製剤のために選択された。
(実施例7)
リナクロチド錠剤の調製
【0206】
遅延放出錠剤は、まず以下のコア錠剤成分:プラセボ基剤、リナクロチド750μg/225mg基剤および前造粒充填剤を調製することによって調製され得る。
造粒物製造プロセス:
【0207】
錠剤成分は、錠剤圧縮前にブレンドするために別々の造粒物に調製され得る。プラセボ基剤および前造粒充填剤基剤などの別々の錠剤成分を使用することは、とりわけ、錠剤の安定性および放出プロファイルに有利な特性をもたらした。例えば、表2に列記される全錠剤成分は、湿式造粒によって別々に調製して圧縮前にブレンドされるか、または一緒にブレンドして湿式造粒のための混合物として加工され得る。別のプロセスでは、表2に列記される錠剤成分は、乾燥造粒によって別々に調製して圧縮前にブレンドされるか、または一緒にブレンドして乾燥造粒のための混合物として加工され得る。別のプロセスでは、錠剤成分は、圧縮のために直接ブレンドされる。好ましいプロセスでは、前造粒充填剤基剤および/またはプラセボ基剤は、湿式造粒によって調製されて、乾燥させてから750μg/225mgのリナクロチド基剤と混合する。リナクロチド基剤は、湿式造粒プロセスによって、またはWursterコーティングプロセスによって調製され得る。この好ましいプロセスは、加工中のリナクロチドの水分曝露を低減し、錠剤コア中の残留水分を最小限に抑えることにより、錠剤の安定性のさらなる増加を示した。
【表2】
【0208】
次いで、上記のブレンドを適切な錠剤プレス上で225mgの標的コア錠剤重量に圧縮する。有孔パンコーター内で、サブコート(OPADRY(登録商標)II)を4%w/wの重量増加で添加する。コーティング条件は、コーティング中の水分取込みが最小に維持されるように設定されてモニターされなければならない。乾燥減量法(LOD)によって測定される場合、サブコーティングされた錠剤は、1.5%以下のLODを有するべきである。有孔パンコーター内で、サブコーティングされた錠剤上に機能性コートを添加する。機能性コートは、Eudragit(登録商標)FS30D、Eudragit(登録商標)S100またはEudragit(登録商標)L100のいずれかである。機能性コートを5mgポリマー重量/cmの錠剤表面で適用する。これは、機能性コーティング中の約4.5%の総ポリマーの重量増加になる。コーティング条件は、コーティング中の水分取込みが最小に維持されるように設定されてモニターされなければならない。乾燥減量法で測定する場合、機能的にコーティングされた錠剤は、2.0%以下のLODを有するべきである。
プラセボ基剤の調製:
【0209】
表3は、プラセボ基剤造粒物のための配合を表す:
【表3】
【0210】
プラセボ基剤調製物は、まず表4の原材料を分配することによって調製され得る。
【表4】
【0211】
混合容器の重量を計量し、2682.1±5.0gの処理水を容器中に添加する。ミキサーを設置し、水の撹拌を開始する。撹拌しながらEMPROVE(登録商標)をこの水に添加し、タイマーを起動する。撹拌しながら、溶液を覆って70℃に加熱し、材料が視覚的に溶解するまで温度を維持する。
【0212】
溶液のpHを塩酸で1.5に調節する。撹拌しながら塩化カルシウム2水和物を溶液に添加する。溶解するまで混合する。撹拌しながらL-ヒスチジンを溶液に添加する。約15分間撹拌する。初期pHを記録する。溶液のpHを塩酸で5.0に調節する。溶液の最終pHおよび塩酸の添加を記録する。全ての材料が溶解するまで混合する。混合しながら、溶液のpHを塩酸で2.5に調節する。溶液の最終pHおよび塩酸の添加を記録する。25Lのボウル、混合羽根およびチョッパを備える高剪断造粒機を、造粒のために確実に正しく設置する。微結晶セルロースを、16メッシュスクリーンを通して造粒機のボウルに通過させる。造粒溶液の正味重量を計算し、添加する。造粒溶液を、以下のパラメーター:羽根車速度1(290rpm、5.5m/秒の先端速度)、チョッパ速度1(1760rpm)で混合しながら、約300g/分の速度で造粒機内にポンプで吸い上げる。造粒機を停止し、ボウルの側部および底部をこすり下ろす。以下のパラメーター:羽根車速度1(290rpm、5.5m/秒の先端速度)、チョッパ速度1(1760rpm)に従って、さらに3分間混合する。ポリ袋の重量を計量して、完成した湿式造粒物をその中に排出する。造粒物を秤量する。この湿式造粒物を乾燥のためにFLM-3流動床に移す。以下のおよその設定を使用して、造粒物を乾燥させる。造粒物のLODが、1.2%水分以下になるまで乾燥させる。乾燥させた造粒物を、重量を計量したポリ袋の中に排出する。
【表A】
設定は推奨設定に過ぎず、最適な乾燥のために調節してもよい。
【0213】
乾燥させた造粒物を、#30メッシュシーブを通して篩い分けする。ポリ袋の重量を計量して、乾燥させた造粒物をその中に排出する。造粒物を秤量する。乾燥させた造粒物を、乾燥剤とともにホイルの密封袋に包装する。
リナクロチド基剤調製物(すなわち、750μg/225mg):
【0214】
表5は、750μg/225mgの基剤造粒物の配合を表す。
【表5】
【0215】
750μg/225mgの基剤造粒物は、まず、表6の原材料を分配することによって調製され得る。
【表6】
【0216】
混合しながら、リナクロチドを造粒溶液に添加する。溶解するまで混合する。25Lのボウル、混合羽根、およびチョッパを備える高剪断造粒機を、造粒のために確実に正しく設置する。微結晶セルロースを、16メッシュスクリーンを通して造粒機のボウル内に通過させる。造粒溶液を、以下のパラメーター:羽根車速度1(290rpm、5.5m/秒の先端速度)、チョッパ速度1(1760rpm)で混合しながら、約300g/分の速度で造粒機内にポンプで吸い上げる。ポリ袋の重量を計量して、完成した湿式造粒物をその中に排出する。造粒物を秤量する。湿式造粒物を乾燥のために流動床に移す。以下のおよその設定を使用して、造粒物を乾燥させる。造粒物のLODが、1.2%水分以下になるまで乾燥させる。乾燥させた造粒物を、重量を計量したポリ袋の中に排出する。
【表B】
【0217】
乾燥させた造粒物を、#30メッシュシーブを通して篩い分けする。ポリ袋の重量を計量して、乾燥させた造粒物をその中に排出する。造粒物を秤量する。乾燥させた造粒物を、乾燥剤とともにホイルの密封袋に包装する。
前造粒充填剤調製物:
【0218】
表7は、前造粒充填剤のための配合を表す。
【表7】
【0219】
充填剤調製物は、まず表8の原材料を分配することによって調製され得る。
【表8】
【0220】
次いで、ステンレス鋼容器の風袋重量を記録する。容器の重量を計量し、容器中に処理水の所要量を秤量する。水を二重釜中に移す。ミキサーを設置し、釜内で水の撹拌を開始する。撹拌しながらEMPROVE(登録商標)(ポリビニルアルコール)を水に添加し、タイマーを起動する。撹拌しながら溶液を覆って70℃に加熱し、材料が視覚的に溶解するまで温度を維持する。加熱中の蒸発による水分損失の重量を計算する。この量の処理水を溶液に添加する。微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、およびマンニトールそれぞれを、高剪断造粒機のボウルに添加する。以下のパラメーター:羽根車速度1(290rpm、5.5m/秒の先端速度)、チョッパ速度1(1760rpm)に従って、約2分間混合する。2217±5gの造粒溶液を、以下のパラメーター:羽根車速度1(290rpm、5.5m/秒の先端速度)、チョッパ速度1(1760rpm)で混合しながら、約300g/分の速度で造粒機内にポンプで吸い上げる。造粒機を停止し、ボウルの側部および底部をこすり下ろす。以下のパラメーター:羽根車速度1(290rpm、5.5m/秒の先端速度)、チョッパ速度1(1760rpm)に従って、さらに30秒から1分間混合する。ポリ袋の重量を計量して、完成した湿式造粒物をその中に排出する。造粒物を秤量する。湿式造粒物を、5~10%の力で2A375Q03763スクリーンを備えるComilを通して通過させる。湿式造粒物を乾燥のためにFLM-3流動床に移す。以下のおよその設定を使用して、造粒物を乾燥させる。この造粒物のLODが、1.0%水分以下になるまで乾燥させる。乾燥させた造粒物を、重量を計量したポリ袋の中に排出する。
【表C】
【0221】
Comil、円形の羽根車、2A045R03137スクリーンを用いて、造粒物を製粉する。ポリ袋の重量を計量して、乾燥させて製粉した造粒物をその中に排出する。造粒物を秤量する。乾燥させた造粒物を、乾燥剤とともにホイルの密封袋に包装する。
(実施例8)
25μg錠剤のブレンドおよび圧縮
【0222】
実施例7の手順に従って、リナクロチドの25μg用量錠剤は、表9の配合を用いて調製され得る。
【表9】
【0223】
まず、表10の原材料を分配する。
【表10】
【0224】
プレブレンド:8qtのブレンダーを設置し、750μg/225mgの基剤およびプラセボ基剤を添加する。蓋を閉じて、10分間ブレンドする。ポリ袋の重量を計量して、その中にプレブレンドを排出する。
【0225】
サブブレンドA:650gのプレブレンドを16qt v-ブレンダーに添加する。サブブレンドAのための前造粒充填剤を16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、10分間ブレンドする。サブブレンドAのためのステアリン酸マグネシウムを、40メッシュスクリーンを通して通過させる。16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、3分間ブレンドする。ポリ袋の重量を計量して、その中にブレンドを排出する。
【0226】
サブブレンドB:プレブレンド650gを16qt v-ブレンダーに添加する。サブブレンドBのための前造粒充填剤を16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、10分間ブレンドする。サブブレンドBのためのステアリン酸マグネシウムを、40メッシュスクリーンを通して通過させる。16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、3分間ブレンドする。ポリ袋の重量を計量して、その中にブレンドを排出する。
【0227】
圧縮:0.32インチのsc工具を備えるKorsch XL100錠剤プレス機を0.32インチの円凹形状の工具(10個のステーションが望ましい)、パドルフィーダーとともに確実に設置し、その上他の全ての部品を正しく固定する。適正な取り付けを確実にするために、ダイテーブルを少なくとも1回、手動で全回転させる。全てのダイおよびパンチの存在と、ダイがダイテーブルと同一平面にあることを目視確認する。錠剤の仕様が、表11のインプロセス錠剤の仕様を満たすことを確認する。
【表11】
【0228】
ブレンドをホッパー内に投入する。タレット速度を適切な速度に設定する。ダイ充填量および圧縮パラメーターを、225mgの標的重量および8~12kPの標的硬度を有する錠剤を得られるように調節する。廃棄物は全て、錠剤化廃棄物ポリ袋内に収集されなければならない。タイマーを起動して錠剤を圧縮する。
(実施例9)
100μg錠剤のブレンドおよび圧縮
【0229】
実施例7の手順に従って、リナクロチドの100μg用量錠剤は、表12の配合を用いて調製され得る。
【表12】
【0230】
まず、表13の原材料を分配する。
【表13】
【0231】
プレブレンド:16qtのブレンダーを設置し、750μg/225mgの基剤およびプラセボ基剤を添加する。蓋を閉じて、10分間ブレンドする。ポリ袋の重量を計量して、その中にプレブレンドを排出する。
【0232】
プレブレンド2500gを1立体フィート v-ブレンダーに添加する。前造粒充填剤をこの1立体フィート v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、10分間ブレンドする。ステアリン酸マグネシウムを、40メッシュスクリーンを通して通過させる。1立体フィート v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、3分間ブレンドする。ポリ袋の重量を計量して、その中にブレンドを排出する。
【0233】
圧縮:0.32インチのsc工具を備えるKorsch XL100錠剤プレス機を0.32インチの円凹形状の工具(10個のステーションが望ましい)、パドルフィーダーとともに確実に設置し、その上他の全ての部品を正しく固定する。適正な取り付けを確実にするために、ダイテーブルを少なくとも1回、手動で全回転させる。全てのダイおよびパンチの存在と、ダイがダイテーブルと同一平面にあることを目視確認する。錠剤の仕様が、表14のインプロセス錠剤の仕様を満たすことを確認する。
【表14】
【0234】
ブレンドをホッパー内に投入する。タレット速度を適切な速度に設定する。ダイ充填量および圧縮パラメーターを、225mgの標的重量および8~12kPの標的硬度を有する錠剤を得られるように調節する。廃棄物は全て、錠剤化廃棄物ポリ袋内に収集されなければならない。タイマーを起動して錠剤を圧縮する。
(実施例10)
290μg錠剤のブレンドおよび圧縮
【0235】
実施例7の手順に従って、リナクロチドの290μg用量錠剤は、表15の配合を用いて調製され得る。
【表15】
【0236】
まず、表16の原材料を分配する。
【表16】
【0237】
サブブレンドA:サブブレンドAのための前造粒充填剤およびリナクロチド基剤を16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、10分間ブレンドする。サブブレンドAのためのステアリン酸マグネシウムを、40メッシュスクリーンを通して通過させる。16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、3分間ブレンドする。ポリ袋の重量を計量して、その中にブレンド排出する。
【0238】
サブブレンドB:サブブレンドBのための前造粒充填剤およびリナクロチド基剤を16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、10分間ブレンドする。サブブレンドBのためのステアリン酸マグネシウムを、40メッシュスクリーンを通して通過させる。16qt v-ブレンダーに添加する。蓋を閉じて、3分間ブレンドする。ポリ袋の重量を計量して、その中にブレンド排出する。
【0239】
圧縮:0.32インチのsc工具を備えるKorsch XL100錠剤プレス機を0.32インチの円凹形状の工具(10個のステーションが望ましい)、パドルフィーダーとともに確実に設置し、その上他の全ての部品を正しく固定する。適正な取り付けを確実にするために、ダイテーブルを少なくとも1回、手動で全回転させる。全てのダイおよびパンチの存在と、ダイがダイテーブルと同一平面にあることを目視確認する。錠剤の仕様が、表17のインプロセス錠剤の仕様を満たすことを確認する。
【表17】
【0240】
ブレンドをホッパー内に投入する。タレット速度を適切な速度に設定する。ダイ充填量および圧縮パラメーターを、225mgの標的重量および8~12kPの標的硬度を有する錠剤を得られるように調節する。廃棄物は全て、錠剤化廃棄物ポリ袋内に収集されなければならない。タイマーを起動して錠剤を圧縮する。
(実施例11)
リナクロチド25μg錠剤のサブコーティング
【0241】
実施例8の25μg錠剤は、Opadry(登録商標)IIのサブコーティングでサブコーティングされてもよい。表18の処方は、コーティングプロセスにおける損失に対処するために過剰に調製されるコーティング材料を調製するのに必要な量を表す。
【表18】
【0242】
精製水1600gを適切な大きさの容器中に分配する。Opadry(登録商標)II
400gを適切な大きさの容器中に分配する。Opadry(登録商標)を水に添加する。85%の理論効率で、4.0%の重量増加を適用するために必要とされる溶液の理論量を計算する。コーティングプロセス中に収集される廃棄錠剤のためのポリ袋を用意する。Compu-Labは、19インチのパンおよびプレナムアセンブリを備えて確実に設定された。液体供給ラインが、Tygon17チューブであることを確認する。ガンアセンブリが、パンに取り付けられていることを確認する。噴霧ガンアセンブリは、40100AB液体噴霧ノズルおよびマッチングエアキャップが搭載された1×1/4JAU噴霧ガンで構成されるべきである。ガンアセンブリは、錠剤床から可能な限り離して、床の上部3分の1に垂直な噴霧角度で取り付けられるべきである。100個のコーティングされていない錠剤を秤量することによって、初期錠剤重量を確認する。錠剤の重量を100で除して、単一錠剤の平均重量を計算する。約1グラムの錠剤を粉砕し、105℃で10分間LODを行うことによって、初期錠剤水分を調べる。液体流速が約10g/分になるようにポンプを調節する。ガンを通してラインを準備し、ラインまたはガンに漏出がないことを確認する。錠剤をコーティングパン中に投入し、50℃の入口温度および350 CFMの気流で20分間の加温を開始する。予熱の間、時折揺り動かす。
【0243】
一旦標的の床温度に達したら、以下の表19に概説される標的プロセスパラメーターに従って、コーティング懸濁液の噴霧を開始する。所望に応じて、定期的に錠剤の水分含量を調べて報告する。一旦理論量の溶液が適用されたら、錠剤の重量増加を検査する。4%の重量増加が実現されたとき、噴霧を停止し、パン速度を最低または微動に低減させて、50℃の入口温度で錠剤を30分間乾燥させる。錠剤を排出し、コーティングされた錠剤の新たな重量を決定する。
【表19】
(実施例12)
100μgリナクロチド錠剤のサブコーティング
【0244】
実施例9の100μg錠剤は、Opadry(登録商標)IIコーティングでサブコーティングされてもよい。表20の処方は、コーティングプロセスにおける損失に対処するために過剰に調製されるコーティング材料を調製するのに必要な量を表す。
【表20】
【0245】
精製水4000gを適切な大きさの容器中に分配する。Opadry(登録商標)II
1000gを適切な大きさの容器中に分配する。Opadry(登録商標)を水に添加する。85%の理論効率で、4.0%の重量増加を適用するために必要とされる溶液の理論量を計算する。Compu-Labは、24インチのパンおよびプレナムアセンブリを備えて確実に設定された。液体供給ラインが、Tygon17チューブであることを確認する。ガンアセンブリが、パンに取り付けられていることを確認する。噴霧ガンアセンブリは、40100 AB液体噴霧ノズルおよびマッチングエアキャップを搭載した2×1/4JAU噴霧ガンで構成されるべきである。ガンアセンブリは、錠剤床から可能な限り離して、床の上部3分の1に垂直な噴霧角度で取り付けられるべきである。100個のコーティングされていない錠剤を秤量することによって、初期錠剤重量を確認する。錠剤の重量を100で除して、単一錠剤の平均重量を計算する。約1グラムの錠剤を粉砕し、105℃で10分間LODを行うことによって、初期錠剤水分を調べる。液体流速が約20g/分になるようにポンプを調節する。ガンを通してラインを準備し、ラインまたはガンに漏出がないことを確認する。錠剤をコーティングパン中に投入し、50℃の入口温度および400 CFMの気流で20分間の加温を開始する。予熱の間、時折揺り動かす。
【0246】
一旦標的の床温度に達したら、以下の表21に概説される標的プロセスパラメーターに従って、コーティング懸濁液の噴霧を開始する。所望に応じて、定期的に錠剤の水分含量を調べて報告する。一旦理論量の溶液が適用されたら、錠剤の重量増加を検査する。4%の重量増加が実現されたとき、噴霧を停止し、パン速度を最低または微動に低減させて、50℃の入口温度で錠剤を30分間乾燥させる。錠剤を排出し、コーティングされた錠剤の新たな重量を決定する。
【表21】
(実施例13)
290μgリナクロチド錠剤のサブコーティング
【0247】
実施例10の290μg錠剤は、Opadry(登録商標)IIコーティングでサブコーティングされてもよい。表22の処方は、コーティングプロセスにおける損失に対処するために過剰に調製されるコーティング材料を調製するのに必要な量を表す。
【表22】
【0248】
精製水1600gを適切な大きさの容器中に分配する。Opadry(登録商標)II
400gを適切な大きさの容器中に分配する。Opadry(登録商標)を水に添加する。85%の理論効率で、4.0%の重量増加を適用するために必要とされる溶液の理論量を計算する。Compu-Labは、19インチのパンおよびプレナムアセンブリを備えて確実に設定された。液体供給ラインが、Tygon17チューブであることを確認する。ガンアセンブリが、パンに取り付けられていることを確認する。噴霧ガンアセンブリは、40100 AB液体噴霧ノズルおよびマッチングエアキャップを搭載した1×1/4JAU噴霧ガンで構成されるべきである。ガンアセンブリは、錠剤床から可能な限り離して、床の上部3分の1に垂直の噴霧角度で取り付けられるべきである。100個のコーティングされていない錠剤を秤量することによって、初期錠剤重量を確認する。錠剤の重量を100で除して、単一錠剤の平均重量を計算する。約1グラムの錠剤を粉砕し、105℃で10分間LODを行うことによって、初期錠剤水分を調べる。液体流速が約10g/分になるようにポンプを調節する。ガンを通してラインを準備し、ラインまたはガンに漏出がないことを確認する。錠剤をコーティングパン中に投入し、50℃の入口温度および350 CFMの気流で20分間の加温を開始する。予熱の間、時折揺り動かす。
【0249】
一旦標的の床温度に達したら、以下の表23に概説される標的プロセスパラメーターに従って、コーティング懸濁液の噴霧を開始する。所望に応じて、定期的に錠剤の水分含量を調べて報告する。一旦理論量の溶液が適用されたら、錠剤の重量増加を検査する。4%の重量増加が実現されたとき、噴霧を停止し、パン速度を最低または微動に低減させて、50℃の入口温度で錠剤を30分間乾燥させる。錠剤を排出し、コーティングされた錠剤の新たな重量を決定する。
【表23】
(実施例14)
リナクロチド錠剤の機能性または腸溶性コーティング(「DR1」)
【0250】
以前の実施例の錠剤は、機能性コーティングを備えて調製されてもよい。表24の配合は、コーティングプロセスにおける損失に対処するために過剰に調製されるコーティング材料を調製するのに必要な量を表す:
【表24】
【0251】
機能性コーティングを調製するために、所要量のEudragit(登録商標)S100およびEudragit(登録商標)L100を適切な大きさの容器中に分配する。所要量の2/3の精製水を適切な大きさの容器中に分配する。ボルテックスが実現されるまで、水の撹拌を開始する。Eudragit(登録商標)S100およびEudragit(登録商標)L100を水にゆっくり添加し、粉末が完全に湿って、塊または泡の形成が消散するまで混合する(約5分)。
【0252】
所要量の1N NH3を、適切な大きさの容器に分配する。1N NH3をEudragit(登録商標)懸濁液にゆっくり添加し、最短でも60分間混合する。所要量のクエン酸トリエチルを、適切な大きさの容器に分配する。クエン酸トリエチルをEudragit(登録商標)懸濁液に添加し、最短でも60分間混合する。所要量のタルクを、適切な大きさの容器も分配する。Silverson Homogenizerを使用して、残り1/3の精製水中においてタルクを10分間(または均質になるまで)均質化する。タルク懸濁液を、Eudragit(登録商標)懸濁液に混合しながら注ぐ。5分以下混合する。コーティング懸濁液を、#30メッシュスクリーンを通して篩い分けする。
【0253】
90%の理論効率で、9.0%の重量増加を適用するために必要とされる溶液の理論量を計算する。Compu-Labは、19インチのパンおよびプレナムアセンブリを備えて確実に設定された。液体供給ラインが、Tygon17チューブであることを確認する。ガンアセンブリが、パンに取り付けられていることを確認する。噴霧ガンアセンブリは、40100 AB液体噴霧ノズルおよびマッチングエアキャップを搭載した1×1/4JAU噴霧ガンで構成されるべきである。ガンアセンブリは、錠剤床から可能な限り離して、床の上部3分の1に垂直の噴霧角度で取り付けられるべきである。錠剤をコーティングパンに投入する。30度の入口温度で錠剤を加温する。次のステップに進む前に床温度が確実に約30度に達するようにする。液体流速が約12g/分になるようにポンプを調節する。ガンを通してラインを準備し、ラインまたはガンに漏出がないことを確認する。約2グラムの錠剤を粉砕し、105℃で10分間LODを行うことによって、開始錠剤水分を調べる。
【0254】
一旦標的の床温度に達したら、以下の表25に概説される標的プロセスパラメーターに従って、コーティング懸濁液の噴霧を開始する。所望に応じて、定期的に錠剤の水分含量を調べて報告する。一旦理論量の溶液が適用されたら、錠剤の重量増加を検査する。9%の重量増加が実現されたとき、噴霧を停止し、パン速度を最低または微動に低減させて、40℃の入口温度で錠剤を5~10分間乾燥させる。
【表25】
【0255】
約2グラムの錠剤を粉砕し、105℃で10分間LODを行うことによって、最終錠剤水分を調べる。水分は、≦初期錠剤水分のはずである。錠剤を排出し、コーティングされた錠剤の新たな重量を決定する。温度を40℃に設定された機械式対流式オーブン内で、少なくとも2時間錠剤を乾燥させる。錠剤を、乾燥剤とともにホイル袋内にバルク包装し、5℃で保存する。この実施例14のコーティングは、本明細書で述べたDR1遅延放出組成物のコーティングとして使用される。
(実施例15)
リナクロチド錠剤の代替の機能性または腸溶性コーティング(「DR2」)
【0256】
代替のコーティングは、実施例14の方法に従って調製することができるが、表26の配合を有する。この実施例15のコーティングは、本明細書で述べたDR2遅延放出組成物のコーティングとして使用される。
【表26】
(実施例16)
リナクロチド錠剤の有機コーティング
【0257】
有機コーティングは、上記の実施例のリナクロチド錠剤のために提供され得る。100μg錠剤のコーティングのために、表27の処方を使用した。
【表27】
【0258】
所要量の精製水を適切な大きさの容器中に分配する。所要量のアセトンを適切な大きさの容器中に分配する。アセトンの混合を開始し、水を添加する。所要量のイソプロパノールを適切な大きさの容器中に分配する。イソプロパノールをこの水およびアセトンに添加し、希釈混合物を作製する。希釈混合物の約半分を第2の容器に注ぎ、希釈混合物の第1の半分の混合を再開する。所要量のEudragit S100を適切な大きさの容器中に分配する。希釈混合物の第2の半分の混合を開始し、Eudragit S100を添加する。所要量のEudragit L100を適切な大きさの容器中に分配する。
【0259】
Eudragit S100を含有する希釈混合物にEudragit L100を添加し、タイマーを起動する。ポリマーが完全に溶解するまで撹拌する。高剪断ミキサーで混合しながら、クエン酸トリエチルを希釈混合物の第1の半分に添加する。所要量のタルクを、適切な大きさの容器に分配する。高剪断ミキサーで混合しながら、タルクを希釈混合物の第1の半分に添加して、賦形剤懸濁液を作製する。タイマーを起動し、少なくとも10分間混合する。Eudragit溶液の混合時間を記録する。Eudragit溶液の混合を継続しながら、賦形剤懸濁液をEudragit溶液にゆっくり注ぐ。一旦、コーティング懸濁液が均一になったら、それを35メッシュスクリーンに通す。混合を再開する。88%の理論効率で、8.5%の重量増加を適用するために必要とされる溶液の理論量を計算する。
【0260】
コーティングプロセス中に収集される廃棄錠剤のためのポリ袋を用意する。Compu-Labは、15インチのパンおよびプレナムアセンブリを備えて確実に設定された。液体供給ラインが、溶媒耐性17チューブであることを確認する。ガンアセンブリが、パンに取り付けられていることを確認する。噴霧ガンアセンブリは、40100 AB液体噴霧ノズルおよびマッチングエアキャップを搭載した1×1/4JAU噴霧ガンで構成されるべきである。ガンアセンブリは、錠剤床から可能な限り離して、床の上部3分の1に垂直の噴霧角度で取り付けられるべきである。液体流速が約28g/分になるようにポンプを調節する。ガンを通してラインを準備し、ラインまたはガンに漏出がないことを確認する。錠剤をコーティングパン中に投入し、38℃の入口温度および200 CFMの気流で加温を開始する。予熱の間、時折揺り動かす。一旦生成物温度が約27℃に達したら、以下に概説される標的プロセスパラメーターに従って、コーティング懸濁液の噴霧を開始する。8.5%の重量増加が実現されたとき、噴霧を停止し、パン速度を最低または微動に低減させて、40℃の入口温度で錠剤を10分間乾燥させる。
【表D】
【0261】
錠剤をトレイに置き、温度が45℃に設定された機械式対流式オーブン内で、少なくとも24時間乾燥させる。
(実施例17)
代替のリナクロチド錠剤の調製
【0262】
遅延放出錠剤は、以下のコア錠剤成分:プラセボ基剤、リナクロチド1000μg/225mg基剤および前造粒充填剤をまず調製することによって調製された。
造粒製造プロセス:
【0263】
錠剤成分は、本質的に実施例7に前述されたように調製されたが、以下に記載したように少し変更した。表28で記載したようなプラセボ基剤を使用して、表28に列挙した成分を有するコア錠剤を提供した。プラセボおよび活性基剤造粒物のために最終pH2.25を使用した。
【表28】
プラセボ基剤の調製:
【0264】
表29は、プラセボ基剤造粒物のための配合を表す:
【表29】
【0265】
プラセボ基剤調製物は、まず表30の原材料を分配することによって調製された。
【表30】
【0266】
混合容器の重量を計量し、2200±5.0gの処理水(2682.1±5.0gではなく)を容器中に添加する。
リナクロチド基剤調製物(1000μg/225mg):
【0267】
表31は、1000μg/225mgの基剤造粒物のための配合を表す。
【表31】
【0268】
1000μg/225mgの基剤造粒物は、まず、表32の原材料を分配することによって調製され得る。
【表32】
前造粒充填剤調製物:
【0269】
表33は、前造粒充填剤のための配合を表す。
【表33】
【0270】
充填剤調製物は、まず表34の原材料を分配することによって調製される。
【表34-1】
(実施例18)
代替の225mgリナクロチド錠剤の配合
【0271】
遅延放出225mg錠剤は、表34および表35に示したような賦形剤の割合で調製され得る。この実施例18の225mg錠剤は、30μg、100μgまたは300μgの有効成分含量で調製され得る。賦形剤の割合の2つの例示的実施形態、AおよびBは、各有効成分含量について提供される。表34における実施形態A(各投薬量で)は、実施例20におけるDR1製剤に対応し、表35における実施形態A(各投薬量で)は実施例20におけるDR2製剤に対応する。この錠剤は、錠剤コア、バリアコート、機能性コートおよび場合によって、審美コートを含む。
【0272】
【表34-2】
【0273】
【表35】
(実施例19)
代替の450mgリナクロチド錠剤の配合
【0274】
遅延放出450mg錠剤は、表36および表37に示したような賦形剤の割合で調製され得る。この実施例19の450mg錠剤は、300μgまたは600μgの有効成分含量で調製され得る。錠剤は、錠剤コア、バリアコート、機能性コートおよび審美コートを含む。
【0275】
【表36】
【0276】
【表37】
(実施例20)
便秘型過敏性腸症候群(IBS-c)の処置のためのリナクロチドの投与
【0277】
IBS-cの患者に対して12週間経口投与したリナクロチドの2つの遅延放出製剤(「DR1」および「DR2」)の無作為化二重盲検ダブルダミープラセボ対照併行群用量範囲設定後期第2相試験において遅延放出リナクロチド錠剤を投与した(「治験」)。
【0278】
治験の方法
【0279】
治験は、3つの異なる期間:スクリーニング期間、前処置期間および処置期間からなる多施設複数用量試験であった(図1参照のこと)。試験にはRomeIII基準を使用してIBS-cと診断された患者が参加した。適格と判断された患者を等しい割合で、8つの処置:リナクロチドDR1製剤の30μg、100μgまたは300μg;リナクロチドDR2製剤の30μg、100μgまたは300μg;リナクロチドの即時放出(IR)製剤の290μg;またはプラセボの1つに無作為化した。リナクロチドIRは、安全性および有効性を比較するために陽性対照として含まれた。DR1遅延放出組成物は、リナクロチドコア錠剤を回腸領域に放出するように設計された。DR2遅延放出組成物は、リナクロチドコア錠剤を下部回腸内から上行結腸まで(すなわち、回盲部接合またはその近くに)放出するように設計された。
【0280】
前処置期間:
【0281】
(患者の適格性を決定するための)スクリーニング期間後、前処置期間が開始した。前処置期間は、処置期間の開始直前の14から21暦日と定義された。前処置期間中、患者は、腸の動きに関する毎日の症状の重症度、毎日の腹部症状重症度、週ごとの便秘重症度、週ごとのIBS症状重症度、週ごとの十分な軽減およびパープロコントロールレスキュー薬もしくは他の緩下剤、坐剤または浣腸の使用に関する情報を、事象が生じた場合に提供することを原則として、提供した。参加基準の全てを満たす患者を処置期間に入れた。前処置期間の患者情報は、表38に集計したベースラインの特徴のデータのために使用した。疼痛、膨満および不快感は、11点のNRS(0=無し、;10=非常に悪い)であった。しぶり腹は5点のスコア(1=全く無し、5=極めて大きい)であった。
【表38】
【0282】
処置期間:
【0283】
処置期間は、処置の割当(無作為化)で開始し、12週間続けた。患者を、リナクロチドによる8つの処置:リナクロチドDR1製剤の30μg、100μgまたは300μg;リナクロチドDR2製剤の30μg、100μgまたは300μg;IR製剤の290μg;またはプラセボの1つに無作為に割り当てた。患者は、毎日1回朝に、朝食の少なくとも30分前に試験薬を摂取するように指示された。患者は、毎日の腸の動きに関する症状の重症度、毎日の腹部症状重症度、週ごとの便秘重症度、週ごとのIBS症状重症度、週ごとの十分な軽減およびパープロコントロールレスキュー薬もしくは他の緩下剤、坐剤または浣腸の使用に関する評価を、事象が生じた場合に提供することを原則として、提供し続けた。
【0284】
この治験において、各処置群の患者についての毎日および週ごとの評価データを集計し、IBS-cの有効性の試験について米国および欧州の規制当局によって定義されている、以下の主要および副次的処置有効性パラメーターを与えた。
【0285】
主要有効性パラメーター:
【0286】
腹部疼痛におけるベースラインからの週ごとの変化、
【0287】
CSBM頻度におけるベースラインからの週ごとの変化、および
【0288】
6/12週の腹部疼痛および便秘(APC)+1レスポンダー。患者は、処置期間の12週間のうち≧6週間にわたって週ごとのAPC+1レスポンダーであった場合、6/12週の腹部疼痛および便秘(APC)+1レスポンダーとして分類された。週ごとのAPC+1レスポンダーは、所与の週における週ごとのCSBM+1レスポンダーおよび週ごとの腹部疼痛レスポンダーの両基準を満たす患者として定義された。
【0289】
副次的有効性パラメーター:
【0290】
6/12週のCSBM+1レスポンダー;患者は、処置期間の12週間のうち≧6週間にわたって週ごとのCSBM+1レスポンダーであった場合、6/12週のCSBM+1レスポンダーとして分類された。週ごとのCSBM+1レスポンダーは、所与の週についてCSBMの週ごとの率においてベースラインから少なくとも1の増加を有する患者として定義された。
【0291】
6/12週の腹部疼痛レスポンダー;患者は、処置期間の12週間のうち≧6週間にわたって週ごとの腹部疼痛レスポンダーであった場合、6/12週の腹部疼痛レスポンダーとして分類された。週ごとの腹部疼痛レスポンダーは、所与の週について平均腹部疼痛スコアにおいてベースラインから少なくとも30%の減少を有する患者として定義された。
【0292】
12週(全処置期間)の腹部疼痛におけるベースラインからの変化;
【0293】
12週(全処置期間)のCSBM頻度率におけるベースラインからの変化;
【0294】
12週(全処置期間)のSBM頻度率におけるベースラインからの変化;
【0295】
12週(全処置期間)の便の硬さ(BSFS)におけるベースラインからの変化;
【0296】
12週(全処置期間)のしぶり腹におけるベースラインからの変化;
【0297】
12週(全処置期間)の腹部不快感におけるベースラインからの変化;
【0298】
12週(全処置期間)の腹部膨満におけるベースラインからの変化;
【0299】
12週(全処置期間)の便秘重症度におけるベースラインからの変化;
【0300】
12週(全処置期間)の腹部症状スコアにおけるベースラインからの変化;および
【0301】
12週(全処置期間)のIBS症状重症度におけるベースラインからの変化;
【0302】
12週(全処置期間)のパープロコントロールレスキュー薬の使用日数のパーセントにおけるベースラインからの変化;
【0303】
処置満足度;および
【0304】
適当な軽減の評価。
【0305】
治験の結果:
【0306】
治験の有効性パラメーターの結果を図2~13、17および21に示す。これらの図のデータは、プラセボ群および即時放出リナクロチド群と比較して、遅延放出リナクロチド組成物で処置されたIBS-c患者について、臨床的に意味があり、かつ統計的に有意な改善が実現されたことを明らかに示している。改善は、主要有効性パラメーター、副次的有効性パラメーターおよび有害事象の発生率の3つ全てにわたって示された。
【0307】
治験の結果は、DR1組成物の投与が主要および副次的有効性パラメーターにわたる有効性を有することを実証する。治験の結果はまた、DR2組成物の投与はCSBMおよびBSFSデータによって示されたように(例えば、図5および11)便秘に対して効果を有さないが、DR2組成物の投与は患者における腹部疼痛の症状を改善した(有害事象の発生率は非常に低い)ことを実証し、DR2組成物は便秘ではない患者における腹部症状(疼痛、不快感、膨満)の低減に有用であることを示唆する。
【0308】
図2は、6/12週のAPC+1パラメーターの結果を示す。DR1組成物300μgは、同程度のIR組成物を上回る改善を示した(38.8%対31.8%)。他のDR1およびDR2組成物はプラセボを上回る改善を示した。
【0309】
図3は、SBM頻度におけるベースラインからの週ごとの変化を示す。
【0310】
図4は、12週の処置期間にわたる各週についての腹部疼痛におけるベースラインからの週ごとの変化を示す。再度、DR1組成物300μgは同程度のIR組成物よりも性能が優れており、他のDR組成物はプラセボよりも性能が優れていた。さらに、DR2組成物30μgは、IR組成物と同程度の腹部疼痛レベルの変化を示した。
【0311】
図5~13は、副次的有効性パラメーターについての治験結果を示し、遅延放出組成物は患者の成績において全体的な改善を実証した。過去の研究において、ブリストル便性状スケールは、IBS-c治験における有効性の基準として最も信頼のおける安定した評価項目の1つであることが見出された。図11に示したように、DR1はBSFSスコアにおいて用量に依存した改善を示すようである。
【0312】
図17は、治験のDR1組成物300μg、IR組成物290μg、プラセボおよびLinzess(登録商標)の第III相治験のIR組成物290μgおよびLinzess(登録商標)第III相治験のプラセボの間を比較して選択された有効性パラメーターの結果を示す。DR1組成物の結果は、Linzess(登録商標)第III相治験のIR組成物の結果と比べて遜色ない。
【0313】
図21は、DR1組成物、IR組成物およびプラセボについての12週での週ごとの腹部疼痛におけるベースラインからのパーセント変化のプロット図である。
【0314】
早期臨床試験は、リナクロチド72mcgから579mcgの即時放出用量を検査し、腹部疼痛の改善を検査した。週ごとの腹部疼痛スコアにおいて290mcgと579mcg用量との間には差は認められなかった。これに鑑みて、DR1(図21ではCR1と称する)の300mcg用量における優れた疼痛軽減は驚くべきことであり、予想外である。
【0315】
有害事象:
【0316】
有害事象の発生率も、治験中モニターされた。治験の処置下で発現した有害事象(TEAE)の概要を表39に挙げる。SAEは重篤な有害事象を意味する。ADOは、脱落(すなわち、処置の中止)を引き起こす下痢を意味する。
【表39】
【0317】
有害事象のさらなるデータは図14~16、18および19に示す。図14~16は、DR1およびDR2遅延放出組成物の試験した投与量は全てIR組成物群と比較して、下痢(全体およびADO)の比率はより低く、中程度から重症の下痢のより低い比率が含まれる(図16)。図18および19は、Linzess(登録商標)第III相治と比較した下痢の比率を示し、Linzess(登録商標)第III相の結果と比較してDR1組成物300μgの有害な下痢事象の改善も示した。
(実施例19)
食物の効果の研究
【0318】
空の胃(絶食後)と比較して(食物で)満腹の胃に対する遅延放出組成物の摂取の効果を決定するために、本発明の遅延放出組成物による食物の効果の研究を行った。患者を2つの群に分離した。群1の患者は、摂食状態下で300μg用量のリナクロチドのDR1またはDR2遅延放出組成物を与えられた。具体的には、群1の患者は、高脂肪、高カロリーの朝食を水8オンスとともに開始して30分後に組成物を与えられた。群2の患者は、同じ組成物(DR1またはDR2)は与えられたが、絶食状態下で食物は与えられなかった。具体的には、群2の患者は、一晩少なくとも10時間の絶食後に水約8オンスとともに組成物を与えられた。両群において、治療薬を摂取後4時間食物は消費されなかった。7日間の洗出し期間の後、群1の患者は次に絶食状態下で組成物を与えられ、群2の患者は摂食状態下で組成物を与えられた。
【0319】
研究の結果は、絶食状態下での患者へのDR1組成物の投与は下痢を発生させなかったことを実証した。摂食状態下でDR1組成物を摂取した一部の患者には下痢が発生した。DR2組成物を摂取した患者は、摂食および絶食状態下で下痢は発生しなかった。これらの結果は、健康な対象においてリナクロチドの即時放出剤形を使用し、それぞれ、290μg用量の投与が摂食対象では下痢を100%の割合で引き起こし、絶食対象では94.7%の割合で引き起こした以前の研究とは対照的である。したがって、下部GIにおいて放出するように設計されているDR1およびDR2製剤は、即時放出製剤における上部GI放出と比較して、DR1製剤の場合、下痢が摂食対象においてのみ認められ、DR2では、どちらの対象群においても下痢は認められない程度まで、下痢の発生率を有意に低減させる。したがって、薬物放出の部位は、下痢などの有害事象のモジュレートにおいて非常に効果的な役割を担う。
他の実施形態
【0320】
本発明は、本明細書で記載した特定の実施形態によって範囲を制限されない。実際に、上記の説明および添付の図面から、当業者には、本明細書に記載したものに加えて本発明の様々な変更が明らとなるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲内であるものとする。値は全ておよそであり、説明のために提供されていることもさらに理解されたい。
【0321】
特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコールは全て本出願を通じて引用され、その開示は全体としてあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20A
図20B
図21
【配列表】
2022093472000001.app
【外国語明細書】