(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093591
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】パルプ積繊シート製造装置及びパルプ積繊シート製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/26 20120101AFI20220616BHJP
D04H 1/732 20120101ALI20220616BHJP
【FI】
D04H1/26
D04H1/732
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075346
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2016080604の分割
【原出願日】2016-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】390020019
【氏名又は名称】レック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 菊夫
(57)【要約】
【課題】薄く、かつ、強度の強いパルプ積繊シートを製造するパルプ積繊シート製造装置及びパルプ積繊シート製造方法を提供する。
【解決手段】このパルプ積繊シート製造装置100は、粉砕パルプ又は前記粉砕パルプを主原料とする繊維103が積繊されたパルプ層を搬送する搬送装置109と、搬送中の前記パルプ層の両面を所定値以上の圧力で押圧し、前記パルプ層をシート状に形成する押圧装置112と、を具備する構成を採る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕パルプ又は前記粉砕パルプを主原料とする繊維が積繊されたパルプ層を搬送する搬送装置と、
搬送中の前記パルプ層の両面を所定値以上の圧力で押圧し、前記パルプ層をシート状に形成する押圧装置と、
を具備するパルプ積繊シート製造装置。
【請求項2】
前記押圧装置は、100~160℃に加熱されて、前記パルプ層を押圧する、
請求項1に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項3】
押圧された前記パルプ層にエンボス形状を付与するエンボス付与装置を具備する、
請求項1又は請求項2に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項4】
前記エンボス付与装置は、加熱しながら、前記パルプ層にエンボス形状を付与する、
請求項3に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項5】
エンボス形状の付与された前記パルプ層にバインダーを塗布するバインダー塗布装置と、
バインダーが塗布された前記パルプ層を熱風乾燥及び又は赤外線乾燥によって乾燥させる乾燥装置と、
を具備する請求項3又は請求項4に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項6】
粉砕パルプ又は前記粉砕パルプを主原料とする繊維が積繊されたパルプ層を搬送する搬送工程と、
搬送中の前記パルプ層の両面を所定値以上の圧力で押圧し、前記パルプ層をシート状に形成する押圧工程と、
を具備するパルプ積繊シート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清浄用シートとして利用可能なパルプ積繊シート及びパルプ積繊シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェットティッシュについて、セルロール繊維を含むティッシュウェブからなる第一層と、エアレイド不織布ウェブからなる第二層から構成されるものがある(特許文献1、特許請求の範囲、請求項11参照)。
【0003】
特許文献1に記載のウェットティッシュは、抄紙により得られる第一層と、第一層とは異なる製法のエアレイド法により得られる第二層(パルプ層)と、両者を一体化させるバインダーとを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアレイド法により得られるパルプ層を含むパルプ積繊シートは、構成上、所定量以上の目付量を必要とするため、薄くしたうえで、なおかつ強度を持たせることが困難であった。
【0006】
本発明の目的は、薄く、かつ、強度の強いパルプ積繊シート、及び薄く、かつ、強度の強いパルプ積繊シートを製造するパルプ積繊シート製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係るパルプ積繊シートは、粉砕パルプ又は前記粉砕パルプを主原料とする繊維が積繊され、押圧されたパルプ層と、前記繊維に供給されたミョウバンと、前記パルプ層であって、バインダーが上側から供給された後に前記上側から乾燥された上面と、前記パルプ層であって、前記バインダーが下側から供給された後に前記下側から乾燥された下面と、を備える構成を採る。
【0008】
本発明の第2の態様に係るパルプ積繊シート製造方法は、粉砕パルプ又は前記粉砕パルプを主原料とする繊維が積繊されたパルプ層を搬送する工程と、前記繊維にミョウバンを供給する工程と、前記パルプ層の上面に上側からバインダーを供給した後に前記上側から乾燥を行う工程と、前記パルプ層の下面に下側から前記バインダーを供給した後に前記下側から乾燥を行う工程と、を含むようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄く、かつ、強度の強いパルプ積繊シートを提供することができる。また、本発明によれば、薄く、かつ、強度の強いパルプ積繊シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るパルプ積繊シート製造装置の構成を示す模式図
【
図2】液体供給装置と、パルプ検出装置を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
(一実施形態) 本発明の一実施形態に係るパルプ積繊シート101は、一層又は二層以上の液透過性のパルプ繊維103からなり、典型的には、清掃用の非水解性の清浄用シート、身体清浄用の水解性の清浄用シート、トイレクリーナーなどの水解性の清浄用シートに適したものである。また、本実施形態にかかるパルプ積繊シート製造方法は、パルプ積繊シート101を合理的且つ適切に製造し得るものである。
【0013】
本実施形態において、水解性とは、シートを構成する繊維間の接着力が、水に著しく浸されていない状態では、シートの成形加工及び拭く等の機能に必要なだけの強度を最低限有するが、水中に投棄された場合のように、水に著しく浸された状態では、その接着力が極端に低下し、何らかの外力を与えると容易に分解または分散することをいう。また、非水解とは、シートを構成する繊維間の接着力が、水に著しく浸されていない状態でも、水に著しく浸されたウエットの状態でも、何らかの外力を与えても容易に分解または分散等をしないことをいう。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るパルプ積繊シート製造装置100の構成を示す模式図である。以下、
図1を用いてパルプ積繊シート製造装置100について説明する。なお、
図1では、図面の複雑化を避けるために、パルプ積繊シート101は製造装置100の最終部分においてのみ符号を付し、それ以外では図示を省略する。同様に、パルプ繊維103の図示も省略する。また、
図1では、紙面右側のMD方向をX方向、紙面奥側のCD方向をY方向、紙面上側をZ方向と定義する。
【0015】
パルプ繊維103は、パルプや粉砕パルプ等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、あるいは天然繊維と再生繊維の混合物等により形成することができる。
【0016】
パルプ以外の天然繊維としては、例えば、ケナフ、竹繊維、藁、綿、繭糸、サトウキビ等を用いることができる。パルプ繊維103は、厚さ方向における繊維の密集する度合いが異なるように構成されていることが好ましい。ここで、粉砕パルプとは、紙材料等の原料となるパルプ材料を粉砕機等によって細かく粉砕して綿状にしたものをいう。粉砕パルプの原料としては、木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ等を挙げることができ、トイレットペーパー材料を用いることもできる。トイレットペーパー材料としては、針葉樹晒クラフトパルプと広葉樹晒クラフトパルプを配合したものを用いることができるが、針葉樹晒クラフトパルプからなる原料パルプを用いることが製造上の観点から好ましい。針葉樹晒クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプに比べて繊維長が長いため、針葉樹晒クラフトパルプより得た粉砕パルプを用いてパルプ繊維103を構成すると、繊維相互の絡み具合が高まり、その結果、強度が向上する。また繊維同士の絡み合いによる繊維間空間容積が、繊維長の短い広葉樹晒クラフトパルプ等を用いた場合より大きくなり、各繊維が動く自由度が大きくなるため、柔軟性も向上する。
【0017】
原料繊維が、粉砕パルプを主原料とする材料の場合には、粉砕パルプの配合割合が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。さらに、望ましくは、粉砕パルプの配合割合が80%以上であることが好ましく、100%が粉砕パルプで形成されていることがより好ましい。粉砕パルプは、パルプ材料を粉砕して綿状に形成したものであるから、繊維が圧縮された状態にある抄紙された紙に比べ、繊維間に無数の空間が形成されている。繊維間に無数の空間が形成されていると、パルプ繊維103を構成する各繊維が動く自由度を大きくすることができる。このため粉砕パルプの配合を上記した割合にすることにより、より少ない目付量でもパルプ繊維103の嵩高形成機能を大きくすることができる。この結果、全体としての柔軟性を向上させたり、製造時の生産効率を向上させたりすることができる。
【0018】
なお、パルプ繊維103の目付量は、80g/m2以下であることが好ましく、また60g/m2以下であることがより好ましい。パルプ繊維103の目付量を上記の範囲にすることで、パルプ積繊シート101の製造及び梱包をしやすくすることができ、使用者が使用しやすく、且つ、梱包しやすい嵩高を有するように構成することができる。また、目付量を上記の範囲とすることで、繊維密度が大きくなりすぎることがなくなる。その結果、繊維間を接合するためのバインダーの量を少なくすることができる。このため、パルプ繊維103の表面に多量のバインダーが付着して、この付着したバインダーがフィルム化してパルプ繊維103の液透過性が低下することも防止でき、パルプ積繊シート101の全体的な吸水性を確保することができる。
【0019】
製造装置100は、大きく分けて、粉砕前処理装置、粉砕装置106、積繊装置107、押圧装置、バインダー塗布装置、及び、乾燥装置を有する。
【0020】
粉砕前処理装置は、液体供給装置104と、パルプ検出装置105とを有する。液体供給装置104は、パルプ繊維103に対して液体を供給する。また、パルプ検出装置105は、パルプ繊維103が製造装置100に供給されているかどうかを検出する。なお、パルプ繊維103の幅(Y方向の長さ)は、900mm~1800mm程度であり、その幅に合わせて製造装置100が設計及び製造される。
【0021】
図2は、液体供給装置104と、パルプ検出装置105を説明するための図である。
図2に示すように、液体供給装置104は、搬送されてきたパルプ繊維103の中央領域104aに液体を供給する。後述するように、パルプ繊維103は、メッシュに積繊されて搬送されるため、静電気が帯電する虞がある。また、この製造装置100により製造されたパルプ積繊シート101は、排泄物を吸収する吸収体として使用される場合がある。このため、液体供給装置104が供給する液体としては、静電気の帯電防止用として、エタノール、メタノール、2-プロパノール(IPA)などの溶液、または水を用いてもよい。
【0022】
また、液体供給装置104が供給する液体としては、排泄物の消臭用として、活性炭、ゼオライト、シリカ、セラミック、大谷石、木炭高分子、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、クエン酸及びコハク酸等の有機酸、ミョウバン(カリウムミョウバン)等を用いることができる。
【0023】
なお、
図1では、液体供給装置104を1つのユニットとして示しているが、静電気の帯電防止用、または消臭用など、用途に合わせて複数設けてもよい。また、中央領域104aではなく、
図1のY方向にずらした領域を液体供給領域としてもよい。本実施形態においては、パルプ繊維103のY方向全体ではなく、中央領域104aといった部分領域を液体供給領域としている。これは、パルプ繊維103は、後述の粉砕装置106において綿状に粉砕されるため、上述した液体が粉砕されたパルプ繊維103のほぼ全体に供給されるからである。これにより、液体供給装置104による過度な液体供給を防ぐことができ、パルプ積繊シート101の製造コストを抑制することができる。一例として、中央領域104aのY方向の長さはパルプ繊維103の幅の10%から50%程度とし、X方向の長さはY方向の長さと同じでもよく、Y方向の長さより短くてもよい(25%~75%程度)。なお、
図2では、中央領域104aは矩形状としているが円形でもよく、楕円形でもよい。
【0024】
また、液体供給装置104は、製造装置100の湿度に応じて静電気の帯電防止用の液体の供給量を調整してもよい。具体的には、液体供給装置104は、製造装置100が設置されている室内が乾燥している場合(例えば湿度50%以下の場合)には、製造装置100が設置されている室内が乾燥していない場合(例えば湿度65%以上の場合)に比べて、帯電防止用の液体の供給量を増やせばよい。すなわち、液体供給装置104は、湿度が低下するに従って、帯電防止用の液体の供給量を増やし、湿度が上昇するに従って、帯電防止用の液体の供給量を減らせばよい。
【0025】
同様に、液体供給装置104は、パルプ積繊シート101の用途に応じて、消臭用液体の供給量を変えてもよい。具体的には、液体供給装置104は、パルプ積繊シート101を前述の吸収体に用いる場合、消臭用液体の供給量を多くし、パルプ積繊シート101を外装体に用いる場合、消臭用液体の供給量を少なくすればよい。なお、消臭用液体は、金属を溶解した液体を用いることがある。このため、液体供給装置104は、パルプ積繊シート101が肌面となる場合(肌に接触する場合)、消臭用液体の供給を停止する。
【0026】
パルプ検出装置105は、パルプ繊維103が搬送されているか否かを検出する。すなわち、パルプ検出装置105は、ロール状のパルプ繊維103がすべて供給されてしまい、パルプ繊維103が供給されていない状態を検出する。具体的には、パルプ検出装置105は、検出光105aを下方に照射し、パルプ繊維103からの反射光を不図示の検出部で検出した場合、パルプ繊維103が供給されていると検出する。パルプ検出装置105は、前述の反射光を不図示の検出部で検出できない場合、パルプ繊維103が供給されていないとし、音、光などにより警告を行うものとする。
【0027】
製造装置100では、粉砕前処理装置に引き続き、粉砕装置106がパルプ繊維103を粉砕する。粉砕装置106は、一次粉砕部と、二次粉砕部とを有し、一次粉砕部がパルプ繊維103をチップ状に粉砕し、二次粉砕部がチップ状に粉砕されたパルプ繊維103を綿状に粉砕する。なお、粉砕装置106は、粉砕されたパルプ繊維103の散乱を避けるため、一次粉砕部と二次粉砕部ともケースなどにより収納されている。また、本実施形態においては、粉砕パルプを100%とすることが望ましいが、複合繊維(ES繊維)を混ぜ合わせても構わない。
【0028】
積繊装置107は、綿状のパルプ繊維103を積繊する。具体的には、次の通りである。綿状のパルプ繊維103は、高圧エアなどにより配管108を通過して、3つのタンク107a、107b、107cに蓄えられる。ただし、タンクの数は3つに限定されるものではない。なお、積繊装置107も綿状のパルプ繊維103の散乱(拡散)を防止するため、散乱防止用カバーが設けられている。これにより、製造装置100の作業者がパルプ繊維103を吸い込むことが低減される。また、本実施形態において、粉砕されたパルプ繊維103の平均繊維長は、一例として1mm~3mm程度であるものとする。
【0029】
3つのタンク107a、107b、107cに蓄えられた綿状のパルプ繊維103は、下側搬送用メッシュ109上に積繊される。下側搬送用メッシュ109は、網目形状であり、その材料として高分子化合物を用いることができ、ポリテトラフルオロエチレンなどの合成樹脂(熱可塑性樹脂)、ナイロン、PETなどの合成繊維を用いることができる。下側搬送用メッシュ109としては、1インチ×1インチにメッシュが30~50ある30番手~50番手を用いることができ、本実施形態では、40番手(例えば0.5mm×0.5mm)のメッシュとする。
【0030】
下側搬送用メッシュ109(搬送装置に相当)は、不図示の駆動源からの駆動力により積繊した綿状のパルプ繊維103を図中のX方向に搬送する。なお、下側搬送用メッシュ109は、4つのロール110のうち少なくとも1つが駆動することにより所定の駆動範囲で綿状のパルプ繊維103を繰り返し搬送する。
【0031】
下側搬送用メッシュ109の上面と下面の間には、真空装置111が配置されている。真空装置111は、上面に位置する網目形状の下側搬送用メッシュ109を介して綿状のパルプ繊維103を吸着する。
【0032】
図3は、積繊される綿状のパルプ繊維103を示す概要図である。
図3(a)に示すように、タンク107aから下側搬送用メッシュ109に積繊される綿状のパルプ繊維103は、積繊時間の長い右側で多くなり(高くなり)、左側に行くに従って、積繊時間が短くなるため、少なくなる(低くなる)。
【0033】
しかしながら、積繊量が多くなるに従って、真空装置111による吸着力が弱くなる(図中Vac小)。逆に言えば、積繊量が少ない部分では、真空装置111による吸着力が弱くなりにくい(図中Vac大)。
【0034】
このため、
図3(b)に示すように、タンク107bから下側搬送用メッシュ109に積繊される綿状のパルプ繊維103の積繊量は、下側搬送用メッシュ109の位置によらず、その差が少なくなる。そして、
図3(c)に示すように、タンク107cから下側搬送用メッシュ109に積繊される綿状のパルプ繊維103の積繊量は、下側搬送用メッシュ109の位置によらずほぼ均等になる。このように、パルプ繊維103の積繊量に応じて変化する真空装置111の吸着力の変化を利用することにより、下側搬送用メッシュ109に積繊される綿状のパルプ繊維103の積繊量をほぼ均一にすることができる。なお、綿状のパルプ繊維103の積繊量に場所によるムラが生じる場合には、不図示の真空吸着ポートの位置をずらしたり、この真空吸着ポートの数を変えたりして調整すればよい。
【0035】
また、下側搬送用メッシュ109の上面では、真空装置111に近いため、強い吸着力が作用し、綿状のパルプ繊維103が密に積繊される。一方、下側搬送用メッシュ109から離れるに従って(Z方向に離れるに従って)真空装置111による吸着力が弱くなり、綿状のパルプ繊維103の密度が疎となる。製造装置100で製造されたパルプ積繊シート101を製品にする際に、フローリングシート、トイレクリーナーなどの清掃製品であれば、綿状のパルプ繊維103が密の面を主に用いるようにすることにより、汚れをしっかりと落とすことができる。一方、ボディシート、フェイスシートなどの肌に使用する製品であれば、綿状のパルプ繊維103が疎の面を主に用いるようにすることにより、肌触りのよい肌用製品を提供することができる。
【0036】
製造装置100では、複数の押圧装置が積繊された綿状のパルプ繊維103を押圧する。本実施形態において、押圧装置は、後述の第1バインダー塗布装置121までに押圧を行う第1押圧装置と、後述の第1乾燥装置124の処理後と後述の第2バインダー塗布装置130までに押圧を行う第2押圧装置とを有する。
【0037】
平ロール112は、一対のロール部材を有し、積繊された綿状のパルプ繊維103を押圧して、その嵩高を調整する。本実施形態において、平ロール112には、4Kgf/cm2の圧力がかけられる。これにより、パルプ繊維103の下面(下側搬送用メッシュ109と接する面)には、下側搬送用メッシュ109のメッシュ形状の凹凸が形成される。平ロール112の圧力は、例えば、2Kgf/cm2以上であればよく、平ロールの寿命を考慮すると、例えば、8Kgf/cm2以下に設定すればよい。
【0038】
このように、平ロール112がパルプ繊維103を圧縮することにより、パルプ繊維103がシート状になる。すなわち、大量の水を必要とする抄紙工程、及び、バインダー塗布工程を経ることなく、紙のようなシート状のパルプ繊維103を得ることができる。ここで、シート状とは、一定の厚みを有するものの、非常に薄く、かつ、一定の引張強度を有する構成をいう。
【0039】
なお、平ロール112は、下側搬送用メッシュ109に載置して搬送されるパルプ繊維103を、下側搬送用メッシュ109を含めて押圧するものに限らず、メッシュではないベルトに載置して搬送されるパルプ繊維103を、ベルトを含めて押圧してもよい。ただし、この場合、パルプ繊維103にメッシュ形状の凹凸が形成されないのは言うまでもない。また、メッシュもベルトも含めないでパルプ繊維103を押圧してもよい。
【0040】
また、下側搬送用メッシュ109の耐圧性があれば、8kgf/cm2以上の圧力をかけてパルプ繊維103にメッシュ形状を形成しても構わない。なお、この平ロール112の前後に液体供給装置104を設けて、静電気の帯電防止用と消臭用との少なくとも一方の液体を供給してもよい。
【0041】
下側搬送用メッシュ109は、上側搬送用メッシュ113との境界までパルプ繊維103を搬送する。下側搬送用メッシュ109と上側搬送用メッシュ113との境界から平ロール116までは、上側搬送用メッシュ113及び真空装置115を利用してパルプ繊維103が搬送される。具体的には、上側搬送用メッシュ113の上面と下面の間に設けられた真空装置115が、上側搬送用メッシュ113の下面と接触するパルプ繊維103の上面を真空吸着する。この状態で、不図示の駆動源からの駆動力によりパルプ繊維103を図中のX方向に搬送する。なお、上側搬送用メッシュ113は、4つのロール114のうち少なくとも1つが駆動することにより所定の範囲でパルプ繊維103を繰り返し搬送する。
【0042】
平ロール116は、一対のロール部材を有し、平ロール112を通過したパルプ繊維103を押圧して、その嵩高を調整したり、上側搬送用メッシュ113のメッシュ形状をパルプ繊維103の上面(上側搬送用メッシュ113と接する面)に形成したりする。上側搬送用メッシュ113も下側搬送用メッシュ109と同じ40番手のメッシュとする。なお、平ロール116の圧力も2Kgf/cm2~8Kgf/cm2の間で設定される。
【0043】
エンボスロール117(エンボス付与装置に相当)は、ロール周面に多数の突起を有し、平ロール116を通過したシート状のパルプ繊維103にエンボス加工(凹凸加工)を施す。これにより、突起と突起とがかみ合って、シート状のパルプ繊維103の表面と裏面にそれぞれ凹凸部が形成されるため、嵩高なシートを形成することができる。ただし、エンボスの形状は、ロール周面に多数の突起を有する形状に限らず、どのような形でもよい。例えば、パルプ繊維103をメッシュに押圧(この過程もエンボスに含む)して形成されるメッシュ形状であってもよい。また、エンボスロール117を複数設けて、エンボス加工を複数回行ってもよい。この場合、同じ形状のエンボスでもよく、異なる形状のエンボスでもよい。また、
図1から明らかなように、エンボスロール117において、エンボス加工時にパルプ繊維103は搬送メッシュを介在させていない。
【0044】
このとき、パルプ繊維103は、非湿潤状態であり、エンボス加工は、非湿潤状態にあるパルプ繊維103に対して施される。ここにおいて、非湿潤状態とは、パルプ繊維103に水を吹き付けるなどして水分を供給した態様を含まないという意味である。通常、紙材料は、気温、湿度条件に相応した湿気(水分)を含んでいるが、この湿気は外部から積極的に供給した水分ではないから、このような湿気を含んでいても非湿潤状態に相当する。したがって、気温、湿度条件によって積繊層に含まれる水分の含有率も変化するが、その含有率がどのような数値であろうとも、非湿潤状態に相当するものといえる。
【0045】
このように、パルプ繊維103に外部から水分を供給することなく、大気下において通常の乾燥した状態でパルプ繊維103にエンボス加工を施すものである。よって、バインダーが含浸されている状態でエンボス加工を施すものではないから、パルプ繊維103がエンボスロールに付着するおそれはない。従って、エンボスロール117またはパルプ繊維103に剥離剤を塗布する必要はない。エンボス加工の際、エンボスロール117を加熱しなくてもよいが、エンボスロール117を所定温度に加熱してエンボス加工を行ってもよい。後者の場合、エンボスロール117の加熱温度は、60℃~150℃が好ましい。
【0046】
なお、パルプ積繊シート101を用いた製品の用途、または、水解性の製品か非水解の製品かに応じて、エンボス加工を行う回数を設定してもよく、エンボス加工を行わなくてもよい。エンボス加工を行わない場合には、一対のロール部材の間隔をパルプ積繊シート101のZ方向の厚さよりも大きくしておけばよい。なお、
図1から明らかなように、エンボス加工時にパルプ繊維103は搬送メッシュを介在させない。これは、エンボス加工により搬送メッシュが破損するのを避けるためである。
【0047】
本実施形態においては、液体供給装置104によりパルプ繊維103に液体を供給するが、平ロール112までにパルプ繊維103が非湿潤であればよい。例えば、平ロール112の押圧時にパルプ繊維103の水分含有量15%未満程度であればよく、メッシュによる搬送にて静電気の影響を受けない程度であればよい。このため、本実施形態においては、平ロール112の押圧時にパルプ繊維103の水分含有量15%未満程度であれば、非湿潤状態に相当するといえる。
【0048】
平ロール112のロール面(パルプ繊維103との接触面)を100℃から160℃程度の範囲で接触して加熱することにより、パルプ繊維103を柔らかくして押圧することができるので、パルプ繊維103をより薄く圧縮することができる。また、平ロール112の一対のロールのうち、両方を上記温度に加熱してもよいし、いずれか一方のロールのみを上記温度に加熱してもよい。
【0049】
また、平ロール116、エンボスロール117のロール面を60℃から150℃程度の範囲で加熱し、パルプ繊維103の温度を40℃から70℃程度にすることにより、後述のバインダー塗布装置において、バインダーがパルプ繊維103に浸透しやすくなり、バインダーの塗布量を低減でき、製造コストを安くすることができる。なお、パルプ繊維103の温度がバインダーの溶解温度(例えば、40℃~60℃)と同じ温度になるように、平ロール116、エンボスロール117を加熱してもよい。また、平ロール116及びエンボスロール117の温度は、平ロール112の温度より低くてもよく、この場合、電力の消費を抑えることができる。また、エンボスロール117の温度は、平ロール112の温度より高くてもよく、この場合、エンボスを明瞭に形成することができる。
【0050】
製造装置100では、バインダー塗布装置がパルプ繊維103にバインダーを塗布する。本実施形態においては、バインダー塗布装置は、第1バインダー塗布装置121と第2バインダー塗布装置130とを有し、第1バインダー塗布装置121と第2バインダー塗布装置130との間に後述の第1乾燥装置124が配置される。ここでは、第1バインダー塗布装置121について説明する。
【0051】
第1バインダー塗布装置121は、パルプ繊維103の上方においてパルプ繊維103に対向する複数のノズルを有し、パルプ繊維103の上面にバインダーを塗布する。バインダーの供給は、典型的には、噴霧装置のノズルからバインダーを噴霧して行われる。噴霧に用いるノズルは、従来公知のものを任意に選択して用いてよい。なお、バインダーの供給は、噴霧に限定されるものではなく、グラビア印刷機を用いるなど、他の公知の方法を用いてもよい。架橋剤は、バインダーと同時に供給してもよいが、製造工程中の任意の箇所で供給してもよい。
【0052】
また、第1バインダー塗布装置121では、パルプ繊維103は、網目形状の下側搬送用メッシュ118上に載置され、かつ、下側搬送用メッシュ118の上面と下面の間に設けられた真空装置120により-Z方向に吸着された状態で、X方向に搬送される。下側搬送用メッシュ118のメッシュは、下側搬送用メッシュ109、上側搬送用メッシュ113よりも粗いメッシュでよく、10番手~30番手を用いることができ、本実施形態では、16番手(例えば1.0mm×1.0mm)のメッシュとする。
【0053】
なお、下側搬送用メッシュ118は、4つのロール119のうち少なくとも1つが駆動することにより所定の駆動範囲でパルプ繊維103を繰り返し搬送する。
【0054】
このように、第1バインダー塗布装置121は、パルプ繊維103の上面に対して、上側(+Z方向)から下側(-Z方向)に向けてバインダーを塗布し、かつ、真空装置120によりパルプ繊維103の下面に対して下側(-Z方向)に吸着す。
【0055】
パルプ繊維103の上面に塗布(噴霧)されるバインダーとしては、種々のものを用いることができる。本発明で用いることができるバインダーとしては、多糖誘導体、天然多糖類、合成高分子などが挙げられる。多糖誘導体としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンプン又はその塩、デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース等が挙げられる。天然多糖類としては、グアーガム、トラントガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、アラビアゴム、ゼラチン、カゼイン等が挙げられる。また、合成高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリビニルアルコール誘導体、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体、その塩等が挙げられ、不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。上記したもののうち、特にカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールが、好ましい。
【0056】
上記バインダーが架橋されたものであると、パルプ積繊シート101の物理強度が向上されるため好ましい。バインダーを架橋する架橋剤は、バインダーと架橋反応を起こしてバインダーを架橋構造とし、それにより物理的強度を向上させるものである。
【0057】
架橋剤としては、カルボキシメチルセルロース等のカルボキシル基を有するバインダーを用いる場合には、多価金属イオンを用いることが好ましく、この多価金属イオンとしては、亜鉛、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅等の金属イオンが挙げられる。中でも、亜鉛、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅等のイオンが好適に用いられる。これらは十分な湿潤強度を付与する点において好ましい。上記の架橋剤としての多価金属イオンは、硫酸塩、塩化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等の水溶性金属塩の形で用いられる。また、水溶性バインダーとしてポリビニルアルコールを用いる場合、架橋剤としてはチタン化合物、ホウ素化合物、ジルコニウム化合物、ケイ素を含む化合物等を用いることができ、これらの化合物のうち、1種又は複数を混合して架橋剤として用いることもできる。チタン化合物としては、例えば、乳酸チタン、チタントリエタノールアミネート等が挙げられ、ホウ素化合物としては、例えば、ホウ砂、ホウ酸等が挙げられる。また、ジルコニウム化合物としては、例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム等が挙げられ、ケイ素を含む化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム等が挙げられる。
【0058】
バインダーのパルプ繊維103に対する含有量は、1~20重量%であることが好ましい。この含有量が1重量%未満であるとパルプ積繊シート101の強度が不足し、一方、20重量%超であるとパルプ積繊シート101の柔軟性が低下する。
【0059】
なお、本実施形態においては、パルプ繊維103を水解性の製品に用いる場合、バインダーとしてはCMCを塗布し、パルプ繊維103を非水解の製品に用いる場合、バインダーとしてはEVAを塗布するものとする。前述したように、パルプ繊維103の上面側は、パルプ繊維103の下面側に比べて綿状のパルプ繊維103が疎であるため、バインダーが浸透しやすい。このため、パルプ繊維103の上面に塗布(噴霧)されるバインダーがパルプ繊維103の上面に残留するおそれを低減することができる。
【0060】
第1乾燥装置124は、網目形状の下側搬送用メッシュ122上に載置されたパルプ繊維103に対して、矢印で示すように、パルプ繊維103の上面側から熱風乾燥(通気乾燥)または赤外線乾燥などの非接触の乾燥を行う。このときの温度は、例えば、120℃から180℃の範囲が望ましく、160℃から180℃の範囲がより望ましい。ただし、この温度は、熱風乾燥では、熱風の温度であり、赤外線乾燥では、乾燥の対象の表面温度である。平ロール112によって薄くなったパルプ繊維103は、熱風乾燥または赤外線乾燥によって乾燥されることにより、パルプ繊維103を柔らかくすることができる。なお、第1乾燥装置124は、熱風乾燥と赤外線乾燥とを両方行ってもよい。
【0061】
また、下側搬送用メッシュ122は、上面と下面の間に位置する真空装置125によりパルプ繊維103を吸着した状態で、4つのロール123(2つのみ図示)のうち少なくとも1つが駆動することにより所定の駆動範囲でパルプ繊維103を繰り返し搬送する。下側搬送用メッシュ122は、10番手~30番手を用いることができ、本実施形態では、22番手(例えば、0.7mm×0.7mm)のメッシュとする。
【0062】
エンボスロール117によるエンボス加工に引き続き、第1バインダー塗布装置121及び第1乾燥装置124による処理を行うことにより、パルプ繊維103に形成されたエンボス形状が保たれやすくなる。
【0063】
エンボスロール126は、一対のロール部材を有し、エンボスロール117と同様にロール周面に多数の突起を有している。なお、エンボス形状は、これに限るものではなく、どのような形でもよい。また、エンボスロール126を複数設けて、エンボス加工を複数回行ってもよい。この場合、同じ形状のエンボスでもよく、異なる形状のエンボスでもよい。また、エンボスロール126の圧力もエンボスロール117と同様に設定することができる。また、
図1から明らかなように、エンボスロール126においても、エンボス加工時にパルプ繊維103は搬送メッシュを介在させていない。なお、エンボスロール126は、製造装置100に設けなくてもよいし、一対のロール部材の間隔をパルプ積繊シート101のZ方向の厚さより大きくしてもよい。
【0064】
エンボスロール126の一対のエンボスは、前述したように加熱しておくことが望ましい。なお、エンボスロール126によるエンボス加工も、後述の第2バインダー塗布装置130及び第2乾燥装置133の処理に先立って行われるので、パルプ繊維103に形成されたエンボス形状が保たれやすくなる。
【0065】
第2バインダー塗布装置130は、パルプ繊維103の下方においてパルプ繊維103に対向する複数のノズルを有し、パルプ繊維103の下面にバインダーを塗布する。バインダーの供給方法は、第1バインダー塗布装置121と同様である。パルプ繊維103は、網目形状の上側搬送用メッシュ127を介して真空装置129により+Z方向に吸着された状態で、X方向に搬送される。上側搬送用メッシュ127は、4つのロール128のうち少なくとも1つが駆動することにより所定の駆動範囲でパルプ繊維103を繰り返し搬送する。上側搬送用メッシュ127の番手は、下側搬送用メッシュ118の番手と同じ番手にすればよい。
【0066】
このように、第2バインダー塗布装置130は、パルプ繊維103の下面に対して、下側(-Z方向)から上側(+Z方向)に向けてバインダーを塗布し、かつ、真空装置129によりパルプ繊維103の上面に対して上側(+Z方向)に吸着する。
【0067】
第2バインダー塗布装置130が塗布するバインダーは、第1バインダー塗布装置121が塗布するバインダーと同じである。第2バインダー塗布装置130では、パルプ繊維103の下面に対して、パルプ繊維103の下方に位置する複数のノズルからバインダーを塗布するので、パルプ繊維103に浸透しなかったバインダーはパルプ繊維103に残留することなく落ちていくので、バインダー塗布ムラが生じることがない。このため、後述の第2乾燥装置133を経た後のパルプ積繊シート101の強度ムラまたは乾燥ムラを低減することができる。
【0068】
また、第1、第2バインダー塗布装置121、130では、パルプ繊維103を反転することなく、パルプ繊維103の上面及び下面にバインダーを塗布する。このため、製造装置100の複雑化を避けることができ、かつ、パルプ繊維103の搬送を高速化することができる。
【0069】
第1バインダー塗布装置121及び第2バインダー塗布装置130にバインダー拡散防止用のカバーを取り付けて閉鎖空間を形成し、パルプ繊維103に塗布されなかったバインダーをポンプなどにより回収し、再度、第1バインダー塗布装置121、第2バインダー塗布装置130に供給することにより、バインダーの使用量を低減でき、パルプ積繊シート101の製造コストを低減することができる。なお、第2バインダー塗布装置130は必ずしも設けなくてもよい。
【0070】
第2乾燥装置133は、上側搬送用メッシュ131の上面と下面の間に配置された真空装置132により、下面に位置する網目形状の上側搬送用メッシュ131を介して、パルプ繊維103を+Z方向に吸着した状態でX方向に搬送する。第2乾燥装置133は、矢印で示すように、パルプ繊維103の下面側から熱風乾燥(通気乾燥)または赤外線乾燥などの非接触の乾燥を行う。このときの温度は、例えば、120℃から180℃の範囲が望ましく、160℃から180℃の範囲がより望ましい。ただし、この温度は、熱風乾燥では、熱風の温度であり、赤外線乾燥では、乾燥の対象の表面温度である。なお、第2乾燥装置133は、熱風乾燥と赤外線乾燥とを両方行ってもよい。
【0071】
なお、上側搬送用メッシュ131は、前述したように真空装置132によりパルプ繊維103を吸着した状態で、4つのロール134(2つのみ図示)のうち少なくとも1つが駆動することにより所定の駆動範囲でパルプ繊維103を繰り返し搬送する。上側搬送用メッシュ131の番手は、下側搬送用メッシュ122の番手と同じ番手にすればよい。また、第2乾燥装置133の処理後にエンボス加工を行うようにしてもよい。
【0072】
製造装置100では、第2乾燥装置133を経てパルプ積繊シート101が得られる。このパルプ積繊シート101は、搬送ロール135により搬送され、2つの巻取りロール136、137により巻き取られる。または、パルプ積繊シート101は、必要に応じて、切断及び又は折り畳みが施され、薬液が含浸されて、乳幼児の身体拭き、トイレクリーナー、その他の清浄用物品として利用可能なものとされる。
【0073】
パルプ積繊シート101は、エンボス加工後にバインダーが塗布されることにより、エンボス形状を記憶しており、製造工程中にパルプ積繊シート101の嵩高がつぶれたとしても、薬液が含浸されると、嵩高を戻すことができる。
【0074】
また、薬液含浸後、複数回のエンボス加工を施してもよい。例えば、MD(Machine Direction)方向に平行な複数の凸部をロール周面に有する一対のエンボスロールと、CD(Cross Direction)方向に平行な複数の凸部をロール周面に有する一対のエンボスロールとによってエンボス加工を施してもよい。これらのエンボス加工の順番はどちらかが先でもよい。
【0075】
このように、本実施形態のパルプ積繊シート製造装置は、綿状のパルプ繊維103を積繊し、積繊したパルプ繊維103を加熱された平ロール112が所定値以上の圧力で押圧することにより、抄紙工程を経ることなく薄いシート状のパルプ繊維103を得ることができる。
【0076】
また、シート状に押圧したパルプ繊維103にバインダーを塗布し、熱風乾燥または赤外線乾燥によって乾燥することにより、薄いうえに強度が強く、かつ、柔らかいパルプ繊維103を得ることができる。
【符号の説明】
【0077】
106 粉砕装置
107 積繊装置
112 平ロール
117 エンボスロール
121 第1バインダー塗布装置
124 第1乾燥装置
130 第2バインダー塗布装置
133 第2乾燥装置
【手続補正書】
【提出日】2022-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕パルプが積繊されたバインダーを含まないパルプ層を搬送する搬送装置と、
搬送中の前記パルプ層の両面を所定値以上の圧力で押圧し、前記パルプ層をシート状に形成する押圧装置と、
を有し、
前記押圧装置は、100~160℃に加熱された状態で、前記搬送装置上に積載された未押圧状態の綿上の前記粉砕パルプを押圧する、
パルプ積繊シート製造装置。
【請求項2】
前記パルプ積繊装置は単層のパルプ層を製造する、請求項1に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項3】
押圧された前記パルプ層にエンボス形状を付与するエンボス付与装置を具備する、請求項1又は請求項2に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項4】
前記エンボス付与装置は、加熱しながら、前記パルプ層にエンボス形状を付与する、請求項3に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項5】
エンボス形状の付与された前記パルプ層にバインダーを塗布するバインダー塗布装置と、
バインダーが塗布された前記パルプ層を熱乾燥及び赤外線乾燥またはその両方の手段によって乾燥させる乾燥装置と、
を具備する請求項1~4のいずれか一項に記載のパルプ積繊シート製造装置。
【請求項6】
粉砕パルプが積繊されたバインダーを含まないパルプ層を製造するパルプ積繊工程と、
前記パルプ層を搬送装置により搬送する搬送工程と
搬送中の前記パルプ層の両面を加熱された状態で所定値以上の圧力で押圧し、前記パルプ層をシート状に形成する押圧工程と、
を具備するパルプ積繊シート製造方法。