(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093707
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】炭酸水素ナトリウムのin situ変換で促進されたアミン薬物の経皮送達
(51)【国際特許分類】
A61K 9/00 20060101AFI20220616BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220616BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220616BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220616BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220616BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220616BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220616BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20220616BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/13 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/18 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/27 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/381 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/4045 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/4458 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/4468 20060101ALI20220616BHJP
A61K 31/485 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20220616BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220616BHJP
A61P 13/08 20060101ALI20220616BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220616BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61K9/00
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/32
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A61K47/04
A61K9/70 401
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A61K31/381
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A61K31/4458
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A61K31/485
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/00
A61P25/14
A61P25/22
A61P25/36
A61P25/04
A61P13/08
A61P13/02
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022076575
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2019504000の分割
【原出願日】2017-07-26
(31)【優先権主張番号】62/367,542
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/367,502
(32)【優先日】2016-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/423,133
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/444,745
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/444,763
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/457,794
(32)【優先日】2017-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/504,408
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/504,391
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503360296
【氏名又は名称】コリウム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ウン ス リ
(72)【発明者】
【氏名】パーミンダー シン
(72)【発明者】
【氏名】アパラ サギ
(72)【発明者】
【氏名】アミット ケー. ジェイン
(57)【要約】
【課題】活性剤の経皮送達を提供すること
【解決手段】
中性形態ではなく、塩形態で提供される活性剤の経皮投与のための、組成物、デバイス、および方法が提供される。一態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、アミン塩形態の活性剤および両性無機塩基化合物を含む薬物リザーバ(粘着剤マトリックスとも呼ばれる)を含み、両性無機塩基化合物のpKaは、アミン塩形態の活性剤のものよりも低い。別の態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、粘着剤、アミン塩形態の活性剤、および両性無機塩基化合物を含み、両性無機塩基化合物のpKaは、アミン塩形態の活性剤のものよりも低い。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本願は、米国仮出願第62/504,408号(2017年5月10日出願);米国仮出願第62/504,391号(2017年5月10日出願);米国仮出願第62/457,794号(2017年2月10日出願);米国仮出願第62/444,763号(2017年1月10日出願);米国仮出願第62/444,745号(2017年1月10日出願);米国仮出願第62/423,133号(2016年11月16日出願);米国仮出願第62/367,542号(2016年7月27日出願);および米国仮出願第62/367,502号(2016年7月27日出願)の利益を主張する。各々は、その全体が本明細書中に参照により援用される。
【0002】
技術分野
本明細書に記載される主題は、中性形態ではなく、塩形態で提供されるアミン活性剤の経皮投与のための、組成物、デバイス、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
アミン薬物は、2つの形態、遊離塩基および塩で存在する。塩形態は、アミン薬物の共役酸塩(すなわち、プロトン化形態)であり、遊離塩基は、アミン薬物の共役塩基(すなわち、脱プロトン化形態)である。概して、塩形態の方が、遊離塩基形態よりも安定であり、水溶性であり、バイオアベイラブルである。したがって、大部分のアミン薬物の経口配合物は、塩形態のアミン薬物を含む。対照的に、経皮配合物は、典型的には遊離塩基形態を使用する。これは、遊離塩基が、塩形態よりもはるかに皮膚透過性であるためである。
【0004】
しかしながら、多くの薬物に関して、経皮配合物において遊離塩基形態を使用することには、いくつかの重大な欠点が存在する。例えば、薬物含有ポリマーマトリックスにおいて十分量の遊離塩基を可溶化することは、困難であることが多い。これは、遊離塩基が、ポリマーマトリックスに対して低い溶解性を有することが多く、加工中または使用前の保管中に、固体結晶へと再結晶する傾向があるためである。さらに、ある特定の液体遊離塩基薬物は揮発性であり、蒸発によって、加工中に有意な量の薬物が失われる可能性がある。追加的に、薬物が皮膚を通じて非常に透過性である場合、薬物フラックスの制御および一定速度での複数日にわたる送達は困難であることが多い。最後に、薬物は、塩形態よりも、遊離塩基形態において不安定であることが多い。
【0005】
複数の研究者が、経皮配合物の薬物含有粘着剤マトリックスにおいてin situで遊離塩基へと変換されるように、塩基性無機塩で塩形態の薬物を配合することを試みてきた。それらの従来の試みでは、塩基性無機塩が共役酸塩形態のアミン薬物よりも高いpKa値を有したため、変換した遊離塩基はマトリックスにおいて溶解性ではなく、固体結晶へと再結晶し、皮膚透過の減少がもたらされた。
【0006】
当該技術分野では、これらの欠点に対処する、アミン薬物の経皮送達のための改善された組成物、デバイス、パッチ、システム、および方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単な要旨
下に記載され例証される、以下の態様およびその実施形態は、例示的かつ例証的であることを意図したものであり、範囲に関して限定的なものではない。
【0008】
一態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、アミン塩形態の活性剤および両性無機塩基化合物を含む薬物リザーバ(粘着剤マトリックスとも呼ばれる)を含み、両性無機塩基化合物のpKaは、アミン塩形態の活性剤のものよりも低い。
【0009】
別の態様では、経皮送達のための組成物が提供される。組成物は、粘着剤、アミン塩形態の活性剤、および両性無機塩基化合物を含み、両性無機塩基化合物のpKaは、アミン塩形態の活性剤のものよりも低い。
【0010】
一実施形態では、両性無機塩基化合物は、炭酸水素ナトリウムである。
【0011】
一実施形態では、活性剤は、ドネペジル、メマンチン、フェンタニル、オキシブチニン、ロチゴチン、ロピニロール、リバスチグミン、タムスロシン、メチルフェニデート、またはブプレノルフィンである。
【0012】
別の実施形態では、薬物リザーバは、約5~35%w/wの活性剤を含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、組成物は、約0.5~35%w/wの炭酸水素ナトリウムを含む。
【0014】
なお別の実施形態では、組成物は、水、アルコール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびN-メチルピロリドンからなる群から選択される塩形態可溶化剤をさらに含む。
【0015】
一実施形態では、薬物リザーバまたは組成物は、15%w/wまでの塩形態可溶化剤を含む。
【0016】
なお別の実施形態では、組成物は、脂肪酸エステル、ジカルボン酸エステル、グリセロールエステル、ラクテート、脂肪アルコール、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、乳酸ラウリル、プロピレングリコールモノラウレート、コハク酸ジメチル、ラウリルアルコール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される中性形態可溶化剤を含む。
【0017】
一実施形態では、組成物は、20%w/wまでの中性形態可溶化剤を含む。
【0018】
一実施形態では、組成物は、ジカルボン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、トリカルボン酸エステル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセロールエステル、およびトリアセチンからなる群から選択される可塑剤をさらに含む。
【0019】
別の実施形態では、組成物は、20%w/wまでの可塑剤を含む。
【0020】
別の実施形態では、組成物は、クロスポビドンおよびコロイド状二酸化ケイ素からなる群から選択されるマトリックス改質性添加剤をさらに含む。
【0021】
一実施形態では、組成物は、25%w/wまでのマトリックス改質性添加剤を含む。
【0022】
別の実施形態では、組成物は、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤を含む。
【0023】
一実施形態では、粘着剤は、組成物の65%w/wまでを構成する。
【0024】
別の態様では、第1の薬物リザーバとして本明細書に記載されるような組成物と、バッキング層とを含む経皮パッチが提供される。
【0025】
一実施形態では、バッキング層は、閉塞性ポリマーフィルムである。
【0026】
他の実施形態では、経皮パッチは、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤から構成される。
【0027】
なお他の実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、不織タイ層を含む。
【0028】
なお他の実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、速度制御膜を含む。
【0029】
なおも他の実施形態では、経皮パッチは、本明細書に記載されるような組成物または粘着剤マトリックスから構成される第2の薬物リザーバを含む。
【0030】
なおも他の実施形態では、第1の薬物リザーバおよび第2の薬物リザーバは、不織タイ層によって分離されている。
【0031】
他の実施形態では、第1の薬物リザーバおよび第2の薬物リザーバは、速度制御膜によって分離されている。
【0032】
それを必要とする患者に対して活性剤を経皮投与する方法であって、それを必要とする患者に対して、本明細書に記載されるような組成物または経皮パッチを提供することを含む、方法。
【0033】
他の態様では、アルツハイマー病、パーキンソン病、下肢静止不能症候群、注意欠陥多動性障害、ナルコレプシー、うつ病、不安障害、強迫性障害、良性前立腺肥大症、急性尿閉、オピオイド依存、オピオイド非耐性個体における中等度急性疼痛、または中等度慢性疼痛を処置するための方法が提供される。方法は、それを必要とする患者に対して、本明細書に記載されるような組成物または経皮パッチを提供することを含む。
【0034】
方法は、患者の皮膚に対して、組成物または経皮パッチを投与することまたはそれを投与するように指示することをさらに含んでもよい。
【0035】
一部の実施形態では、投与することは、活性剤の治療有効血中濃度を達成する。一部の実施形態では、活性剤の治療有効血中濃度は、少なくとも約3日間、5日間、または7日間の期間にわたって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、炭酸水素ナトリウムが、アミン薬物のin situ変換および経皮送達をどのように促進するかを描写する、化学反応の概略図である。
【0037】
【
図2】
図2~5は、経皮パッチ構成の例示的実施形態の例証である。
【
図3】
図2~5は、経皮パッチ構成の例示的実施形態の例証である。
【
図4】
図2~5は、経皮パッチ構成の例示的実施形態の例証である。
【
図5】
図2~5は、経皮パッチ構成の例示的実施形態の例証である。
【0038】
【
図6】
図6は、実施例1による配合物を有するデバイスに関するin vitro皮膚透過試験における、時間(時間単位)の関数としてのドネペジル経皮送達デバイスのin vitroでの平均皮膚フラックス(μg/cm
2・時間単位)のグラフである。
【0039】
【
図7】
図7は、実施例2(四角)、比較例3(ひし形)、比較例4(丸)および比較例5(三角)による配合物を有するデバイスに関するin vitro皮膚透過試験における、時間(時間単位)の関数としてのメマンチン経皮送達デバイスのin vitroでの平均皮膚フラックス(μg/cm
2・時間単位)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
詳細な説明
I.定義
これより、以下において、様々な態様についてより完全に説明する。しかしながら、そのような態様は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に示される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が網羅的かつ完全であり、当業者にその範囲を完全に伝えることができるように提供されるものである。
【0041】
本明細書に記載される組成物、デバイス、および方法は、本明細書に記載される特定のポリマー、賦形剤、架橋剤、添加剤、製造プロセス、または粘着剤製品に限定されるものではない。本明細書において使用される特定の専門用語は、特定の実施形態について説明することを目的としており、限定的であることを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0042】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のそれぞれの介在値、および明言された範囲内の任意の他の明言された値または介在値が、本開示内に包括されることが意図される。例えば、1μm~8μmの範囲が明言された場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、および7μm、ならびに1μmに等しいまたはそれよりも大きい値の範囲および8μmに等しいまたはそれ未満の値の範囲もまた明示的に開示されていることが意図される。
【0043】
文脈が別途明確に規定しない限り、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、お
よび「その(the)」という単数形は、複数の指示対象を包含する。したがって、例えば
、「ポリマー」に対する言及は、単一のポリマー、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なるポリマーを包含し、「溶媒」に対する言及は、単一の溶媒、および2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なる溶媒を包含する、などである。
【0044】
「第1の」および「第2の」を含む、順序または重要性の用語の使用は、個別の要素を区別および特定するためのものであり、文脈によって明確に示されない限り、特定の順序または重要性を表したり、または暗示したりするものではない。
【0045】
本明細書において使用される場合、「活性剤」という用語は、局所投与または経皮投与にとって好適であり、所望される効果を誘発する化学材料または化合物を指す。これらの用語には、治療的に有効である薬剤、予防的に有効である薬剤、および美容的に有効である薬剤である薬剤が包含される。「活性剤」、「薬物」、および「治療剤」という用語は
、本明細書では交換可能に使用される。
【0046】
本明細書に記載されるような「粘着剤マトリックス」には、一体で作製されたマトリックス、例えば、溶液流延法または押出法を介して作製されたマトリックスだけでなく、2つまたはそれよりも多くの部分で形成され、その後一緒にプレスまたは合体されたマトリックスも包含される。
【0047】
本明細書において使用される場合、「皮膚」という用語は、粘膜内壁を有する体腔の内面を含む、皮膚または粘膜組織を指す。「皮膚」という用語は、「粘膜組織」を包含するものとして解釈されるべきであり、逆もまた同様である。
【0048】
本明細書において使用される場合、「治療有効量」という用語は、無毒性であるが、所望される治療効果をもたらすには十分である活性剤の量を指す。「有効」である量は、当業者には公知であるように、個体の年齢および全身状態、具体的な活性剤(複数可)、ならびに同類のものに応じて、対象毎に異なる。
【0049】
本明細書において使用される場合、「経皮」または「経皮送達」という用語は、薬剤が体表面を通過して(例えば、皮膚を通じて)個体の血流中に入るように、個体の体表面に対して活性剤を投与することを指す。「経皮」という用語は、経粘膜投与、すなわち、薬剤が粘膜組織を通過して個体の血流中に入るように、個体の粘膜(例えば、舌下、口腔、膣、直腸など)表面に対して薬物を投与することを包含することが意図される。
【0050】
II.組成物/デバイス
活性剤の経皮投与のための組成物および/またはデバイスが、提供される。組成物は、1種または複数種の活性剤の経皮送達のためのデバイス、パッチ、および/またはシステムにおいて使用することができる。本明細書に記載される組成物は、本明細書に記載されるような経皮送達システム、デバイス、パッチ、および/または方法における使用のために企図される。
【0051】
概して、本明細書に記載される組成物は、アミン塩としての活性剤、およびその解離定数(pKa)がアミン薬物の共役酸塩のpKaよりも低い両性無機塩基化合物、例えば炭酸水素ナトリウムなどを提供する。炭酸は、2つのpKa値、6.4および10.3を有する。より強い塩基の存在下では、それはプロトンを供与し、炭酸イオンおよび水を形成することによって酸として反応し(式1を参照されたい)、pKaは10.3である。
【化1】
しかし、弱酸の存在下では、炭酸水素ナトリウムは塩基として作用し、炭酸を形成する。この炭酸は不安定であり、二酸化炭素および水へと解離しやすい(式2を参照されたい)。炭酸の解離定数は6.4である。
【化2】
【0052】
大部分の共役酸アミン薬物(本明細書では、「AMNH
+」と描写される)は弱酸であるため、炭酸水素ナトリウムはそれらの存在下では塩基として作用し、炭酸(これは水お
よびCO
2へと急速に解離する)およびアミン薬物の遊離塩基(本明細書では、「AMN」と描写される)という反応生成物が生成される。しかしながら、大部分の共役酸アミン薬物は炭酸水素ナトリウムよりも大きいpKa値を有し(すなわち、それらは炭酸水素ナトリウムよりも塩基性である)、このことは、反応の平衡が、共役酸アミン薬物および炭酸水素イオンの反応物質へと傾き、炭酸およびアミン薬物遊離塩基は少量しか形成されないことを意味する。式3が、これらの反応を描写している:
【化3】
【0053】
炭酸と炭酸水素イオンとの間の平衡定数、K
a(炭酸)は、以下である:
【化4】
共役酸アミンAMNH
+と共役遊離アミンAMNとの間の平衡定数は、以下である:
【化5】
【化6】
の比が大きいほど、式3により、より多くのAMNが生成される。この比は、式4および5から計算され、
図5に示されている:
【化7】
【0054】
表1は、水性媒体およびpK
a(炭酸)=6.4と仮定した場合の、いくつかの例示的アミン薬物に関するK
a(酸アミン)/K
a(炭酸)の比を提示している。
【表1】
【0055】
表1に提示される比は、示されている例示的アミン薬物すべてに関して非常に小さい。したがって、表1に列挙されている例示的アミン薬物を伴う式3に従う反応は、反応物質へと傾き、アミン薬物遊離塩基生成物は非常に少量しか形成されない。これにより、共役遊離塩基アミンが結晶として析出することはなく、代わりに、この平衡系において可溶化されたままであり、究極的には、皮膚を通じた拡散および透過によって取り除かれる。共役遊離塩基アミンが皮膚を通じた透過によって取り除かれるため、反応は、平衡を維持するためにより多くのアミン薬物遊離塩基を生成するように、継続的に促進される。
【0056】
図1は、本明細書に記載されるある特定の組成物によって促進される化学反応の概略的表示である。左上のボックスは、ある特定の組成物中の成分、すなわち、活性剤のアミン塩(「AMN.HCl」)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)、塩形態可溶化剤(「親水性可溶化剤」)、および中性形態可溶化剤(「疎水性可溶化剤」)を表している。反応の第1のステップでは、AMN.HClおよび炭酸水素ナトリウムがイオン化して、共役酸アミンイオン(「AMNH
+」)、その対イオン(例えば、塩化物イオンまたは他の単一負電荷のイオン)、炭酸水素イオン(HCO
3
-)、およびその対イオン(Na
+)が形成される(
図1の右上のボックスを参照されたい)。塩形態可溶化剤が、これらのイオン化反応生成物を可溶化および安定化するのに役立つ。
【0057】
図1の右上と右下のボックスを接続する矢印は、イオン化した共役酸アミンイオンおよび炭酸水素イオン(右上)と、共役遊離塩基アミン(「AMN」)および炭酸(H
2CO
3)(右下)との間の平衡について描写している。中性形態可溶化剤が、共役遊離塩基アミンを安定化するのに役立つ。このステップの平衡は、反応物質、AMNH
+および炭酸水素イオン(右上)に傾く。
【0058】
図1は、反応スキームにおける最終フェーズについて描写しており、ここでは、AMNおよび炭酸が、反応系から取り除かれる。AMNは、皮膚への拡散および透過によって取り除かれる。炭酸は、水および二酸化炭素ガスへのその解離によって取り除かれる。反応スキームのこの最終ステップにおける平衡は、AMN、水、および二酸化炭素に傾く。
【0059】
A.活性剤の経皮送達のための組成物
一部の態様では、粘着剤またはポリマー、アミン塩形態の少なくとも1種の活性剤、およびそのpKaがアミン塩薬物のpKaよりも低い少なくとも1種の両性無機塩基化合物、例えば炭酸水素ナトリウムなどを含む組成物が提供される。概して、アミン塩形態の提供される活性剤および両性無機塩基はイオン化し、イオン化した、正に帯電した活性剤は、イオン化した、負に帯電した無機塩基化合物と反応して、塩形態よりも皮膚透過性である、中性形態の活性剤を生成する。
【0060】
一部の態様では、粘着剤、アミン塩形態の少なくとも1種の活性剤、および炭酸水素ナトリウムを含む組成物が提供される。概して、アミン塩形態の提供される活性剤および両性無機塩基はイオン化し、イオン化した、正に帯電した活性剤は、負に帯電した炭酸水素イオンと反応して、塩形態よりも皮膚透過性である、中性形態の活性剤を生成する。
【0061】
一部の実施形態では、粘着剤組成物は、中性形態の活性剤を指定されかつ/または所望される速度で生成させる、1種または複数種の追加的な成分を含んでもよい。一部の実施形態では、そのような組成物は、活性剤の比較的一定の活性をもたらすことができる。一部の実施形態では、組成物は、以下:少なくとも1種の可塑剤、少なくとも1種の塩形態可溶化剤、少なくとも1種の中性形態可溶化剤、粘着剤マトリックス改質性添加剤、および粘着剤ポリマーのうちの1つまたは複数をさらに含んでもよい。
【0062】
本明細書に記載されるすべてのw/w%または重量%は、組成物の湿潤重量を指したり、または乾燥重量を指したりする場合があることが理解されるであろう。
【0063】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックス内に分散された、1種または複数種のアミン含有活性剤の微粒子化粒子から構成される組成物が提供される。一部の実施形態では、粘着剤マトリックスは、約1~70重量%、約1~50重量%、約1~35重量%、約1~25重量%、約2~70重量%、約2~50重量%、約2~35重量%、約5~70重量%、約5~50重量%、約5~35重量%、約5~30重量%、約5~25重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、約10~35重量%、約10~30重量%、約10~25重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、約20~35重量%、約20~30重量%、約20~25重量%、約25~35重量%、約25~30重量%、または約30~35重量%の少なくとも1種の活性剤の塩形態を含む。
【0064】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックス組成物は、塩形態の活性剤に対して限られた溶解度を有する可溶化剤(「塩形態可溶化剤」)をさらに含む。一部の実施形態では、塩形態の活性剤の微粒子化粒子は、塩形態可溶化剤中でイオン化する。一部の実施形態では、微粒子化塩形態粒子は、溶解したイオン化塩形態と、平衡状態で維持される。一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、溶解したイオン化塩形態よりも微粒子化塩粒子に平衡が傾くように、微粒子化塩粒子に対して限られた程度の溶解度しか有しない。
【0065】
一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、塩に対して、少なくとも約0.1%w/w、少なくとも約0.2%w/w、少なくとも約0.3%w/w、少なくとも約0.4%w/w、少なくとも約0.5%w/w、または少なくとも約1.0%w/wの溶解度を有する。一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、塩に対して、30%w/w未満もしくは約25%w/w未満、または20%w/wの溶解度を有する。
【0066】
一部の実施形態では、塩形態可溶化剤は、プロトン性溶媒(例えば、(例えば、ヒドロキシル基のように)酸素に結合した水素原子を有する溶媒もしくは(例えば、アミン基のように)窒素に結合した水素原子を有する溶媒、および/または不安定なプロトンを含有する任意の溶媒)である。例示的な塩形態可溶化剤としては、限定されるものではないが、水、アルコール(例えばエタノール、メタノールなど)、グリセロール、プロピレング
リコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0067】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックス組成物は、約0~50重量%、約0~20重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約1~50重量%、約1~20重量%、約2~50重量%、約2~20重量%、約5~50重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、または約10~15重量%の、少なくとも1種の塩形態可溶化剤を含む。
【0068】
一部の実施形態では、組成物は、中性形態の活性剤のための1種または複数種の可溶化剤(「中性形態可溶化剤」)をさらに含む。一部の実施形態では、中性形態可溶化剤は、中性活性剤がいったん形成されると、皮膚中に拡散するのに十分なほど長く存続し得ることを確実にするのに役立つ。
【0069】
一部の実施形態では、中性形態可溶化剤は、中性形態の活性剤に対して、少なくとも約0.1%w/wの溶解度を有する。一部の実施形態では、中性形態可溶化剤は、中性形態の活性剤に対して、30%w/w未満の溶解度を有する。
【0070】
一部の実施形態では、例示的な中性形態可溶化剤としては、一般に、限定されるものではないが、脂肪酸エステル、乳酸エステル、ジカルボン酸エステル、クエン酸エステル、グリセロールエステル、脂肪アルコール、および/またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、例示的な中性形態可溶化剤としては、限定されるものではないが、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)、プロピレングリコールモノラウレート、乳酸ラウリル、コハク酸ジメチル、クエン酸トリエチル、トリアセチン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0071】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックスは、0~40重量%、約0~30重量%、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約1~40重量%、約1~30重量%、約1~20重量%、約2~40重量%、約2~30重量%、約2~20重量%、約5~20重量%、約1~15重量%、約2~15重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、または約10~15重量%の、少なくとも1種の中性形態可溶化剤を含む。
【0072】
一部の実施形態では、活性剤は、アミン塩薬物を含む。
【0073】
一部の実施形態では、活性剤は、アミン塩薬物である。一部の実施形態では、アミン塩薬物は、粘着剤マトリックスにおいて、少なくとも約0.1mg/g、少なくとも約0.2mg/g、少なくとも約0.3mg/g、少なくとも約0.4mg/g、少なくとも約0.5mg/g、または少なくとも約1.0mg/gの溶解度を有する。一部の実施形態では、アミン塩薬物は、粘着剤マトリックスにおいて、約100mg/g未満の溶解度を有する。例示的なアミン塩薬物としては、限定されるものではないが、ドネペジル、メマンチン、ロチゴチン、ロピニロール、リバスチグミン、タムスロシン、メチルフェニデート、ブプレノルフィン、フェンタニル、フィンゴリモド、およびオキシブチニンが挙げられる。
【0074】
一部の実施形態では、活性剤を経皮送達するための組成物は、1種または複数の可塑剤をさらに含む。一部の実施形態では、組成物中に既に存在している塩形態可溶化剤および/または中性形態可溶化剤もまた、可塑剤として働くことができる。そのような実施形態
では、追加的な可塑剤を含むことが必要ではない場合がある。一部の実施形態では、塩形態および/または中性形態可溶化剤としても働くわけではない可塑剤が、組成物中に含まれる。例示的な可塑剤としては、限定されるものではないが、ジカルボン酸エステル(例えば、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステルなど)、トリカルボン酸エステル(例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチルなど)、グリセロールのエステル(例えば、トリアセチンなど)、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0075】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックスは、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、または約15~20重量%の、少なくとも1種の可塑剤を含む。
【0076】
一部の実施形態では、活性剤を経皮送達するための組成物は、マトリックス改質性添加剤とも呼ばれる、少なくとも1種の粘着剤改質性添加剤をさらに含む。一部の実施形態では、マトリックス改質性添加剤は、記載される活性剤組成物の凝集力および/または拡散率を変更する。一部の実施形態では、マトリックス改質性添加剤は、粘着剤マトリックス中の活性剤の溶解度を変更する。一部の実施形態では、マトリックス改質性添加剤は、閉塞された皮膚から発散される湿分および/または水を吸収することができ、これにより、皮膚への粘着性が改善される。一部の実施形態では、マトリックス改質性添加剤は、粘着剤マトリックスの均質化を助長する。例示的なマトリックス改質性添加剤としては、限定されるものではないが、クロスポビドン(KOLLIDON(登録商標)CL-Mなど)、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)、可溶性ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒュームドシリカ、コロイド状二酸化ケイ素、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、クレイ(例えば、カオリン、ベントナイトなど)、および/またはそれらの組合せが挙げられる。例示的な市販のヒュームドシリカ製品は、非晶質無水コロイド状二酸化ケイ素である、AEROSIL(登録商標)200P(Evonik Industries)である。別の例示的なヒュームドシリカ製品は、Cab-O-Sil(登録商標)(Cabot Corporation、Boston、Mass.)である。
【0077】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックスは、約0~25重量%、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、約5~25重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、約10~25重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、約15~25重量%、約15~20重量%、または約20~25重量%の、少なくとも1種の粘着剤マトリックス改質性添加剤を含む。
【0078】
一部の実施形態では、活性剤を経皮送達するための組成物は、少なくとも1種の粘着剤または粘着剤ポリマーをさらに含む。例示的な粘着剤としては、限定されるものではないが、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、スチレンブロックコポリマー系粘着剤、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0079】
一部の実施形態では、粘着剤マトリックスは、約0~65重量%、約0~60重量%、約0~55重量%、約0~50重量%、約0~45重量%、約0~40重量%、約0~35重量%、約0~30重量%、約0~25重量%、約0~20重量%、約0~15重量%、約0~10重量%、約0~5重量%、5~65重量%、約5~60重量%、約5~55重量%、約5~50重量%、約5~45重量%、約5~40重量%、約5~35重量%、約5~30重量%、約5~25重量%、約5~20重量%、約5~15重量%、約5~10重量%、10~65重量%、約10~60重量%、約10~55重量%、約10~50
重量%、約10~45重量%、約10~40重量%、約10~35重量%、約10~30重量%、約10~25重量%、約10~20重量%、約10~15重量%、15~65重量%、約15~60重量%、約15~55重量%、約15~50重量%、約15~45重量%、約15~40重量%、約15~35重量%、約15~30重量%、約15~25重量%、約15~20重量%、20~65重量%、約20~60重量%、約20~55重量%、約20~50重量%、約20~45重量%、約20~40重量%、約20~35重量%、約20~30重量%、約20~25重量%、25~65重量%、約25~60重量%、約25~55重量%、約25~50重量%、約25~45重量%、約25~40重量%、約25~35重量%、約25~30重量%、30~65重量%、約30~60重量%、約30~55重量%、約30~50重量%、約30~45重量%、約30~40重量%、約30~35重量%、35~65重量%、約35~60重量%、約35~55重量%、約35~50重量%、約35~45重量%、約35~40重量%、40~65重量%、約40~60重量%、約40~55重量%、約40~50重量%、約40~45重量%、45~65重量%、約45~60重量%、約45~55重量%、約45~50重量%、50~65重量%、約50~60重量%、約50~55重量%、55~65重量%、約55~60重量%、または約60~65重量%の、少なくとも1種の粘着剤ポリマーを含む。
【0080】
組成物はまた、当該技術分野において公知であるような、他の従来の添加剤、例えば粘着剤、抗酸化剤、架橋剤、硬化剤、pH調節剤、顔料、染料、屈折粒子、伝導性種、抗微生物剤、乳白剤、ゲル化剤、粘度調整剤、増粘剤、安定化剤、透過促進剤、および同類のものなどを含んでもよい。また、接着性を低減するまたは除く必要があるような実施形態では、従来の減粘剤を使用することもできる。一部の実施形態では、保管中の変質を防止するため、例えば、酵母菌およびカビなどの微生物の増殖を阻害するために、抗微生物剤などの薬剤が含まれる。好適な抗微生物剤は、典型的には、p-ヒドロキシ安息香酸のメチルエステルおよびプロピルエステル(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベン)、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、イミド尿素、ならびに/またはそれらの組合せからなる群から選択される。これらの添加剤およびそれらの量については、それらが粘着剤および/または活性剤の所望される化学的特性および物理的特性に対して有意に干渉しないようなやり方で選択される。
【0081】
また、組成物は、活性剤、プロトン受容体、塩形態可溶化剤、中性形態可溶化剤、可塑剤、マトリックス改質性添加剤、粘着剤、および/または組成物の他の構成成分に起因する皮膚刺激および/または皮膚損傷の可能性を最小化または排除するために、刺激軽減添加剤を含有してもよい。好適な刺激軽減添加剤としては、例えば、コルチコステロイド、α-トコフェロール、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、特に2-フェニル-1-エタノールなどのフェニルアルコール、グリセリン、サリチル酸およびサリチレート、アスコルビン酸およびアスコルベート、モネンシンなどのイオノフォア、両親媒性アミン、塩化アンモニウム、N-アセチルシステイン、シス-ウロカニン酸、カプサイシン、およびクロロキン、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0082】
また、活性剤組成物を調製または製造するための方法も提供される。例示的な方法は、実施例のセクションにおいて示される。活性剤組成物を調製するための方法は、一般に、活性剤を、炭酸水素ナトリウムと、必要に応じて、塩形態可溶化剤、中性形態可溶化剤、マトリックス改質性添加剤、可塑剤、粘着剤ポリマー、および/またはそれらの組合せとともに混合することを伴う。
【0083】
B.経皮デバイス
ある特定の態様では、組成物は、経皮デバイス(例えば、パッチ)において提供される。概して、経皮パッチは、バッキング層、少なくとも1つの薬物リザーバ、および接触用粘着剤層を含む。一部の実施形態では、経皮パッチは、1つまたは複数の、剥離ライナー
、タイ層、速度制御膜、および/または前述のものの様々な組合せをさらに含む。
【0084】
一部の実施形態では、経皮パッチは、以下の構成成分:バッキング層、薬物リザーバ、接触用粘着剤層、剥離ライナー、タイ層、速度制御膜、および/または前述のものの様々な組合せのうちの1つまたは複数を含む。
【0085】
例示的な経皮パッチを、
図2~5に示す。
図2は、バッキング層12、不織タイ層18または速度制御膜20によって分離された複数の薬物リザーバ14、16、接触用粘着剤層22、および剥離ライナー24を含む、例示的経皮パッチ10を示している。この特定の例では、タイ層によって分離された複数の薬物リザーバが提示されているが、一部の実施形態では、複数の粘着剤薬物リザーバ層が、タイ層を伴わずに、互いと直接接触していてもよい。経皮パッチが複数の薬物リザーバを含んでいるような実施形態では、それぞれの薬物リザーバは、同じ活性剤を含んでいてもよく、または異なる活性剤を含んでいてもよい。経皮パッチが複数の薬物リザーバを含んでいるような実施形態では、それぞれの薬物リザーバは、異なる濃度の同じ活性剤を含んでいてもよい。この特定の例では、薬物リザーバと剥離ライナーとの間に速度制御膜が提示されているが、一部の実施形態では、速度制御膜は存在しない。
図3はそのような実施形態を提示しており、ここでは、経皮システム30は、バッキング層32、不織タイ層36によって分離された複数の薬物リザーバ34、35、接触用粘着剤層38、および剥離ライナー39を含むが、薬物リザーバと接触用粘着剤との間に速度制御膜は含まない。
【0086】
図4は、バッキング層42、薬物リザーバ44、タイ層または速度制御膜46、接触用粘着剤層48、および剥離ライナー49を含む、例示的経皮パッチ40を示している。一部の実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、不織タイ層を含む。一部の実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、速度制御膜を含む。一部の実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、不織タイ層および速度制御膜を両方とも含む。一部の実施形態では、経皮パッチは、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に、不織タイ層も速度制御膜も、どちらも含まない。
図5はそのような実施形態を提示しており、ここでは、パッチ50は、バッキング層52、薬物リザーバ54、接触用粘着剤層56、および剥離ライナー58を含むが、薬物リザーバと接触用粘着剤層との間にタイ層も速度制御膜も含まない。
【0087】
一部の実施形態では、バッキング層は、粘着剤層を保持または支持するための構造要素を提供する。バッキング層は、当該技術分野において公知であるような任意の好適な材料で形成されていてもよい。一部の実施形態では、バッキング層は、閉塞性である。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、湿分に対して不透過性または実質的に不透過性である。例示的な一実施形態では、バリア層は、約50g/m2・日未満のMVTR(水蒸気通気率)を有する。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、不活性であり、かつ/または活性剤を含めた、粘着剤層の構成成分を吸収しない。一部の実施形態では、バッキング層は、好ましくは、バッキング層を通じた粘着剤層の構成成分の放出を防止する。バッキング層は、可撓性であってもよく、または非可撓性であってもよい。バッキング層は、好ましくは、パッチが適用される皮膚の形状に対してバッキング層が少なくとも部分的に適合することができるように、少なくとも部分的に可撓性である。一部の実施形態では、バッキング層は、パッチが適用される皮膚の形状に対してバッキング層が適合するように、可撓性である。一部の実施形態では、バッキング層は、運動、例えば皮膚の運動を伴う適用部位において接触を維持するのに十分なほど可撓性である。典型的には、バッキング層のために使用される材料は、デバイスが、皮膚または他の適用部位の外形をなぞり、かつ関節または他の屈曲点などの、機械的歪みに通常供される皮膚の領域において快適に着用することができ、皮膚とデバイスとの可撓性または弾力性における差異に起因してデバイスが皮膚から脱落する可能性がほとんどないか、またはまったくない
ようなものであるべきである。
【0088】
一部の実施形態では、バッキング層は、フィルム、不織布、織布、積層体、およびそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、フィルムは、1種または複数種のポリマーから構成されるポリマーフィルムである。好適なポリマーは、当該技術分野において公知であり、限定されるものではないが、エラストマー、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、および/またはそれらの組合せが挙げられる。一部の実施形態では、バッキング層は、ポリエチレンテレフタレート、様々なナイロン、ポリプロピレン、金属化ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデン、アルミニウム箔、および/またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、バッキング層は、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、および/またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される布である。特定の、非限定的な一実施形態では、バッキング層は、ポリエステルフィルム積層体で形成される。例示的な特定のポリエステルフィルム積層体としては、限定されるものではないが、ポリエチレンおよび/またはポリエステル積層体、例えばScotchpak(商標)#9723、Scotchpak(商標)#1012の名称で販売されているようなもの、および同類のものが挙げられる。
【0089】
一部の実施形態では、薬物リザーバは、一般に、塩形態の活性成分(複数可)(合計で5~35%w/w)、少なくとも1種の塩形態可溶化剤(合計で0~15%w/w)、少なくとも1種の中性形態可溶化剤(合計で0~15%w/w)、少なくとも1種のプロトン受容体(合計で0.5~30%w/w)、マトリックス改質性添加剤(合計で0~25%w/w)、ならびに必要に応じて、粘着剤ポリマー(合計で0~65%w/w)を含む。一部の実施形態では、薬物リザーバは、本明細書、例えば実施例およびセクションII.Aに記載される経皮送達のための組成物のうちのいずれかを含む。
【0090】
概して、タイ層は、不織布、多孔質ポリエチレンフィルム、および/または速度制御ポリマー膜を含む。
【0091】
一部の実施形態では、デバイスは、粘着剤層の内部またはその間に、1つまたは複数の布またはタイ層をさらに含む。タイ層が、粘着剤マトリックス層のうちの1つ、一部、またはすべての間に含まれてもよいことが理解されるであろう。一部の実施形態では、タイ層は、デバイスの層間における結合を増加させるのに有用である。タイ層は、ポリマーが結合するための化学基を提供することによって、結合を増加させることができる。一部の実施形態では、タイ層は、粘着剤マトリックス層のためのセパレーションとして有用である。
【0092】
一部の実施形態では、タイ層は、粘着剤層からの活性剤の放出速度に影響を及ぼさない。一部の実施形態では、タイ層は、不織フィルムを含んでもよく、この不織フィルムとしては、限定されるものではないが、ナイロン、綿、多孔質ポリエチレン、および同類のもの、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0093】
一部の実施形態では、タイ層は、速度制御ポリマー膜を含んでもよい。例示的な速度制御ポリマー膜としては、限定されるものではないが、微多孔質ポリマーフィルム、例えばCELGARD(登録商標)2400(微多孔質ポリプロピレン)、ポリエチレン(例えば、微多孔質ポリエチレン)、ポリエステル(例えば、REEMAY(登録商標))、酢酸ビニルポリマーおよびコポリマー、ならびに同類のもの、ならびに/またはそれらの組合せが挙げられる。概して、速度制御ポリマー膜は、薬物リザーバ層からの薬物の速度制御放出を可能にさせる。
【0094】
一部の実施形態では、タイ層は、不織布を含み、速度制御ポリマー膜を含まない。一部の実施形態では、タイ層は、速度制御ポリマー膜を含み、不織布を含まない。一部の実施形態では、タイ層は、不織布および速度制御ポリマー膜を両方とも含む。例を1つだけ挙げると、不織布18および速度制御ポリマー膜20は、薬物リザーバ(14、16)の凝集力を改善するのに役立つようにタイ層が薬物リザーバ内に埋め込まれている場合に、両方とも使用され得る(例えば、
図2を参照されたい)。
【0095】
デバイスは、少なくとも1つの粘着剤層を含む。複数の実施形態では、粘着剤層のうちの少なくとも1つは、下に記載されるように、1種または複数種の活性剤を含む粘着剤マトリックスである。粘着剤層は、薬物リザーバ、隣接する粘着剤層、タイ層、剥離ライナー、および/または投与部位の皮膚に対して接着する。一部の実施形態では、粘着剤層は、皮膚に対して活性剤を放出するように働く。一部の実施形態では、薬物リザーバ粘着剤および/または接触層粘着剤のうちの1つまたは複数が、粘着剤マトリックスで形成される。例示的な粘着剤としては、限定されるものではないが、アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、スチレンブロックコポリマー系粘着剤、もしくは同類のもの、および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0096】
一部の実施形態では、送達システムは、少なくとも約2日間の期間にわたって、約0.5~100μg/cm2・時間の、活性剤のin vitro皮膚フラックスを提供する。別の実施形態では、送達システムは、少なくとも約1日間、約2日間、約3日間、または約4日間の期間にわたって、約0.5~80μg/cm2・時間、1~80μg/cm2・時間、2~80μg/cm2・時間、2~50μg/cm2・時間、4~50μg/cm2・時間、4~30μg/cm2・時間、0.5~15μg/cm2・時間、1~15μg/cm2・時間、または4~15μg/cm2・時間の、活性剤のin vitro皮膚フラックスを提供する。
【0097】
複数の実施形態では、剥離ライナーが、適用前に粘着剤層(複数可)を保護するために、粘着剤層のうちの少なくとも1つと少なくとも部分的に接触する。剥離ライナーは、典型的には、処置部位に対してデバイスを適用する前に取り外される、使い捨ての層である。一部の実施形態では、剥離ライナーは、活性剤を含めた、粘着剤層(複数可)の構成成分を吸収しない。一部の実施形態では、剥離ライナーは、粘着剤層(複数可)の構成成分(活性剤を含む)に対して不透過性であり、粘着剤層(複数可)の構成成分が剥離ライナーを通じて放出されることを防止する。一部の実施形態では、剥離ライナーは、フィルム、不織布、織布、積層体、および/またはそれらの組合せのうちの1つまたは複数で形成される。一部の実施形態では、剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリマーフィルムまたは紙である。一部の非限定的実施形態では、剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フルオロカーボンフィルム、フルオロカーボンでコーティングされたPETフィルム、および/またはそれらの組合せである。
【0098】
経皮デバイスおよびシステム(例えばパッチ)は、当該技術分野において公知であるような、任意の好適な方法によって調製することができる。一部の一般的実施形態では、経皮デバイスは、適当な量の粘着剤ポリマー組成物(活性剤を伴うまたは伴わない)を、剥離ライナーまたはバッキング層などの基材上にコーティングすることによって調製される。一部の実施形態では、粘着剤ポリマー組成物は、剥離ライナー上にコーティングされる。一部の実施形態では、粘着剤ポリマー組成物は、所望される厚さまで、基材またはライナー上にコーティングされる。デバイスおよび/または粘着剤マトリックスの厚さおよび/またはサイズは、当業者であれば、少なくとも着用性および/または必要とされる用量の検討に基づいて決定することができる。デバイスの投与部位が、その投与部位の利用可
能なサイズおよび投与部位の使用(例えば、運動を支持するための可撓性の必要性)に起因して、着用性の検討に影響を及ぼすことが理解されるであろう。一部の実施形態では、デバイスおよび/または粘着剤マトリックスは、約25~500μmの間の厚さを有する。粘着剤ポリマー組成物および基材は、あらゆる溶媒を除去するために、少なくとも部分的に乾燥される。剥離ライナーまたはバッキング層が、基材の反対側に適用される。基材が剥離ライナーでもバッキング層でもない場合、基材は、適当な剥離ライナーまたは基材と置き換えられる。複数の粘着剤ポリマー層を含む実施形態では、第1の粘着剤ポリマー組成物が、基材上に適用またはコーティングされ、タイ層材料が、その配合物に対して適用され、第2の粘着剤ポリマー組成物が、タイ層材料に対して適用される。粘着剤ポリマー組成物およびタイ層は、当該技術分野において公知である任意の好適な方法を使用して積層される。一部の実施形態では、粘着剤層を別個の基材またはライナー上にコーティングした後、それらを合体させて、経皮送達デバイスが形成される。送達デバイスがリザーバ粘着剤層および接触用粘着剤層を含む場合、粘着剤ポリマー組成物は、基材またはライナー上にコーティングされ、積層され得る。粘着剤ポリマー組成物層のいずれかまたはすべてが、それらの層を積層する前に乾燥されてもよいことが理解されるであろう。
【0099】
アミン塩形態の活性剤および両性無機塩基化合物から配合される経皮送達デバイスを、活性剤の送達を実証するように調製した。モデルとなるアミン塩形態の活性剤は、ドネペジル塩酸塩(実施例1)またはメマンチン塩酸塩(実施例2)であり、モデルとなる両性無機塩基化合物は、炭酸水素ナトリウムであった。両性無機塩基化合物の他の好適な例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、シュウ酸ナトリウム(sodium oxylate)、コハク酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、およびサリチル酸ナトリウムが挙げられる。実施例1に記載されているように、ドネペジル塩基の経皮送達のためのドネペジル経皮送達システムを、粘着剤マトリックス(ポリアクリレート)においてドネペジル塩酸塩および炭酸水素ナトリウムを使用して、薬物リザーバを形成することで調製した。薬物リザーバを、
図4に描写されているように、皮膚と接触させるための、薬物を含まない接触用粘着剤層、および薬物リザーバと接触用粘着剤層との間に位置する速度制御膜を有するように、経皮送達システムへと製作した。バッキング層および剥離ライナーで、経皮システムを完成させた。ドネペジル経皮システムは、実施例1に詳述されているように、システムからヒトの皮膚を通って放出されるドネペジルを測定することによって、in vitroで評価した。ドネペジル皮膚フラックス速度は、
図6に示されている。皮膚に対する経皮システムの適用から約20時間後に、約4.8~6.4μg/cm
2・時間の定常状態フラックス速度が達成された。このフラックス速度は、減少するまで、約5.5日間にわたって定常なままであった。したがって、一実施形態では、塩基形態の活性剤を送達するための経皮送達システムが、アミン塩形態の活性剤および炭酸水素ナトリウムから調製されて、少なくとも約3日間、または5日間、または7日間(または3~7日間)の期間にわたって治療的である、皮膚フラックス速度または透過速度を提供する。一実施形態では、定常状態のin vitro皮膚フラックス速度は、少なくとも約3日間、または5日間、または7日間(または3~7日間)の期間にわたって、15%、20%、25%、または30%以内に留まる。すなわち、時間点yにおいて測定したin vitro皮膚フラックスは、より早い隣接する時間点xにおいて測定したin vitro皮膚フラックスと、約20%、25%、または30%未満しか異ならない(xおよびyはそれぞれ、3日間、5日間、または7日間の測定期間内の時間点である)。
【0100】
実施例2に記載されているように、メマンチン経皮システムを調製した。メマンチン経皮システムは、システムからヒトの皮膚を通って放出されるメマンチンを測定することによってin vitroで評価し、その結果を
図7に示す(四角)。皮膚に対する経皮システムの適用から約18時間後に、約12~15μg/cm
2・時間の定常状態フラックス速度が達成された。このフラックス速度は、減少するまで、約6.5日間にわたって定
常なままであった。したがって、一実施形態では、塩基形態の活性剤を送達するための経皮送達システムが、アミン塩形態の活性剤および炭酸水素ナトリウムから調製されて、少なくとも約3日間、または5日間、または7日間(または3~7日間)の期間にわたって治療的である、皮膚フラックス速度または透過速度を提供する。一実施形態では、定常状態のin vitro皮膚フラックス速度は、少なくとも約3日間、または5日間、または7日間(または3~7日間)の期間にわたって、15%、20%、25%、または30%以内に留まる。すなわち、時間点yにおいて測定したin vitro皮膚フラックスは、より早い隣接する時間点xにおいて測定したin vitro皮膚フラックスと、15%、20%、25%、または30%未満しか異ならない(xおよびyはそれぞれ、3日間、5日間、または7日間の測定期間内の時間点である)。
【0101】
また、本明細書に記載される本発明の組成物、システム、および方法について例証するために、比較例も実行した。比較例3~5に関するデータが
図7に含まれており、遊離塩基形態の薬物で調製された粘着剤組成物(経皮システム)(比較例3)、アミン塩形態の薬物で調製されているが、炭酸水素ナトリウムを伴わない粘着剤組成物(比較例4)、または塩形態のアミン薬物および両性無機塩基化合物で調製されているが、両性無機塩基化合物のpKaがアミン塩形態の活性剤のものよりも低くなく、それよりも高い、粘着剤組成物(比較例5)が例証されている。これらの比較例では、薬物のin vitro皮膚フラックスは、療法にとって不十分である(
図7、ひし形、丸、三角はそれぞれ、比較例3、4、および5に対応している)。
【0102】
III.処置の方法
他の態様では、本明細書に記載される経皮組成物、デバイス、および/またはシステムにより、少なくとも1種の活性剤を経皮投与することによって、疾患、状態、および/または障害を処置する方法である。
【0103】
一部の実施形態では、活性剤としてドネペジル(ARICEPT(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるドネペジルの投与を通じて、アルツハイマー病を処置するために使用される。企図されるドネペジルの日用量は、5mg、10mg、および23mgであり、日用量の範囲は、約1~30mg、および約2.5~25mg、および約5~23mgである。
【0104】
一部の実施形態では、活性剤としてメマンチン(NAMENDA(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるメマンチンの投与を通じて、アルツハイマー病、強迫性障害、不安障害、ADHD、およびオピオイド依存を処置するために使用される。企図されるメマンチンの日用量は、2mg、5mg、7mg、10mg、14mg、21mg、および28mgであり、日用量の範囲は、約1~30mgおよび約1~28mgである。
【0105】
一部の実施形態では、活性剤としてロチゴチン(NEUPRO(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるロチゴチンの投与を通じて、パーキンソン病および下肢静止不能症候群を処置するために使用される。企図されるロチゴチンの日用量は、1mg、2mg、3mg、4mg、6mg、および8mgであり、日用量の範囲は、約0.5~10mgおよび約1~8mgである。
【0106】
一部の実施形態では、活性剤としてロピニロール(REQUIP(登録商標)、REPREVE(登録商標)、RONIROL(登録商標)、ADARTREL(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるロピニロールの投与を通じて、パーキンソン病および下肢静止不能症候群を処置するために使用される。企図されるロピニロールの日用量は、0.25mg、0.5mg、1mg、2mg、3m
g、4mg、5mg、6mg、8mg、および12mgであり、日用量の範囲は、約0.1~15mgおよび約0.25~15mgである。
【0107】
一部の実施形態では、活性剤としてリバスチグミン(Exelon(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるリバスチグミンの投与を通じて、アルツハイマー病および/またはパーキンソン病認知症を処置するために使用される。企図されるリバスチグミンの日用量は、1.5mg、2.0mg、3.0mg、4.5mg、4.6mg、6.0mg、9.0mg、9.5mg、および13.3mgであり、日用量の範囲は、約0.5~18mg、約1~15mg、および約1.5~13.3mgである。
【0108】
一部の実施形態では、活性剤としてタムスロシン(FLOMAX(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるタムスロシンの投与を通じて、良性前立腺肥大症、急性尿閉、腎結石の通行を処置するために使用される。企図されるタムスロシンの日用量は、0.4mgおよび0.5mgであり、日用量の範囲は、約0.1~1.0mg、約0.2~0.8mg、および約0.4~0.5mgである。
【0109】
一部の実施形態では、活性剤としてメチルフェニデート(RITALIN(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるメチルフェニデートの投与を通じて、注意欠陥多動性障害(ADHD)、ナルコレプシー、および/またはうつ病を処置するために使用される。企図されるメチルフェニデートの日用量は、2.5mg、5mg、10mg、15mg、18mg、20mg、27mg、30mg、36mg、40mg、50mg、54mg、および60mgであり、日用量の範囲は、約1~75mg、約2~65mg、および約2.5~60mgである。
【0110】
一部の実施形態では、活性剤としてブプレノルフィン(CIZDOL(登録商標)、SUBUTEX(登録商標)、TEMGESIC(登録商標)、BUPRENEX(登録商標)、NORSPAN(登録商標)、BUTRANS(登録商標))を含む、本明細書に記載されるような組成物が、例えば経皮パッチによるブプレノルフィンの投与を通じて、オピオイド中毒、オピオイド非耐性個体における中等度急性疼痛、および中等度慢性疼痛を処置するために使用される。企図されるブプレノルフィンの用量は、5μg/時間、7.5μg/時間、10μg/時間、15μg/時間、20μg/時間、0.075mg、0.15mg、0.3mg、0.36mg、0.45mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.71mg、0.75mg、0.9mg、1mg、1.4mg、2mg、2.1mg、2.9mg、3mg、4mg、4.2mg、5.7mg、6.3mg、8mg、8.6mg、11.4mg、12mg、80mgであり、日用量の範囲は、約0.01~100mg、約0.1~100mg、約0.075~80mg、および約0.075~15mgである。
【0111】
他の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物は、活性剤としてフェンタニル(DURAGESIC(登録商標))を含み、慢性疼痛を軽減するため、および重度慢性疼痛を管理するため、および中等度または重度慢性疼痛を軽減するために使用される。企図されるフェンタニルの用量は、12.5μg/時間、25μg/時間、37.5μg/時間、50μg/時間、62.5μg/時間、75μg/時間、87.5μg/時間、ならびに0.3mg、0.6mg、0.9mg、1.2mg、1.5mg、1.8mg、および2.1mgの日用量であり、日用量の範囲は、約0.1~5mg、約0.1~2.5mg、約0.2~2.5、および約0.3~2.1mgである。
【0112】
他の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物は、オキシブチニンを含み、膀胱および尿路の筋けいれんの低減において使用するため、頻尿症または尿しぶり、失禁、
および夜間排尿の増加を含めた、過活動性膀胱の症状を処置するためのものである。企図されるオキシブチニンの日用量は、3.9mg、5mg、10mg、15mg、および20mg、および30mgであり、投薬量の範囲は、約1~35mg、約2~35mg、約3~30mg、および約3.9~30mgである。
【0113】
他の実施形態では、本明細書に記載されるような組成物は、フィンゴリモドを含み、多発性硬化症または再発寛解型多発性硬化症の処置において使用するためのものである。
【0114】
本明細書に記載される経皮組成物、デバイス、および/またはシステムは、長期の使用および/または少なくとも1種の活性剤の継続投与のために設計することができる。経皮デバイス当たりの活性剤の総用量は、活性剤(複数可)の性質、デバイスのサイズ、および/または粘着剤マトリックス内の活性剤の装填量によって決定されることが理解されるであろう。一部の実施形態では、経皮デバイスの適用期間は、約1~10日、1~7日、1~5日、1~2日、1~3日、1~4日、3~10日、3~7日、3~5日、5~10日、および5~7日の間(両端を含む)である。一部の実施形態では、活性剤は、適用期間にわたって、粘着剤マトリックスから継続放出および/または持続放出として放出される。
【実施例0115】
IV.実施例
以下の実施例は、本質的に例証的なものであり、決して限定的であることを意図するものではない。
【0116】
別途指定されない限り、以下の材料を下に記載される実施例において使用した。バッキング層は、SCOTCHPAK(商標)9723であった。剥離ライナーは、シリコーンでコーティングされたポリエステル(PET)フィルムであった。不織タイ層は、REEMAY(登録商標)2250であった。速度制御膜は、CELGARD(登録商標)2400微多孔質ポリプロピレンであった。接触用粘着剤層は、アクリレート、ポリイソブテン(PIB)、および/またはシリコーン粘着剤であった。
【0117】
(実施例1)
炭酸水素ナトリウムを伴うドネペジル塩経皮配合物
薬物含有粘着剤の調製
1.20gの量のSPAN(登録商標)20を、6.00gのクエン酸トリエチルに溶解し、この溶液を、1.80gの乳酸ラウリルおよび89.69gの酢酸エチルと混合した。この溶液に対して、6.00gのグリセリンを添加し、よく混合した。この混合物に、9.00gのドネペジル塩酸塩および1.82gの炭酸水素ナトリウムを分散させた。この薬物が分散された溶液に対して、12.00gのKOLLIDON(登録商標)CL-Mを添加した後、混合物を、Silversonミキサーホモジナイザーによって均質化した。この均質化された薬物分散体に対して、43.93gのDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、Werner Mathisラボコーターを使用することで乾燥させて、12mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0118】
接触用粘着剤の調製
0.60gの量のソルビタンモノラウレート(SPAN(登録商標)20)を、3.00gのクエン酸トリエチルに溶解し、0.9gの乳酸ラウリル、25.45gの酢酸エチル、および1.34グラムのイソプロピルアルコールと混合した。6.00gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加した後、混合物を、Silversonホモジナイザーによって均質化した。この均質化された混合物に対し
て、38.61gの量のDURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、Werner Mathisラボコーターを使用することで乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0119】
積層およびダイカット
微多孔質ポリプロピレン膜(CELGARD(登録商標)2400)を、薬物含有粘着剤層と接触用粘着剤層との間に積層した。薬物リザーバ上の剥離ライナーを、バッキングフィルム、3M SCOTCHPAK(登録商標)1012で置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
図4は、実施例1に記載されているパッチの設計を描写している。
【0120】
in vitro皮膚フラックスの評価
デルマトーム処理されたヒト死体皮膚を、皮膚バンクから入手し、使用の準備ができるまで凍結しておいた。解凍した後、この皮膚を60℃の水中に1~2分間入れ、表皮を真皮から慎重に分離した。表皮は、直ぐに使用したか、または後で使用するために包装し、凍結しておいた。
【0121】
in vitro皮膚フラックス研究を、0.64cm2の有効拡散面積を有するFranz型拡散セルを使用することで実施した。表皮を、拡散セルのドナー区画とレセプター区画との間に固定した。経皮送達システムを皮膚の上に置き、2つの区画を一緒にきつく締め付けた。
【0122】
レセプター区画には、0.01%のゲンタマイシンを含有する、0.01Mのリン酸緩衝液、pH6.5を充填した。レセプター区画内の溶液は、レセプター区画内の磁気撹拌子を使用することで絶えず撹拌した。温度は、32±0.5℃に維持した。定期的な間隔を置いて、レセプター溶液から試料を抜き取り、レセプター溶液を新鮮なリン酸緩衝溶液で置き換えた。試料中の薬物含有量を、ドネペジルに関してHPLCを使用することで分析した。フラックスプロファイルの結果を
図6に示す。この実施例におけるフラックスは比較的高く、7日間にわたって比較的一定のままであった。
【0123】
(実施例2)
炭酸水素ナトリウムを伴うメマンチン塩経皮配合物
薬物含有粘着剤の調製
2.0gの量のグリセリンおよび2.0gのオクチルドデカノールを、29.35gの酢酸エチルおよび1.86gのイソプロピルアルコールの混合物と混合した。溶液中で、5.0gのメマンチン塩酸塩および1.95gの炭酸水素ナトリウムを、撹拌することによって分散させた。この分散体に対して、3.0gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、Silversonミキサーホモジナイザーを使用することで均質化した。この均質化された薬物分散体に対して、11.99gのアクリレートコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287、固形分含量50.5%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、Werner Mathisコーターを使用することで乾燥させて、15mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0124】
接触用粘着剤の調製
2.0gの量のオクチルドデカノールを、20.67gのn-ヘプタンと混合した。この溶液に対して、4.00gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加した後、混合物を、Silversonミキサーホモジナイザーを使用することで均質化した。この均質化された混合物に対して、23.33gの量のポリイ
ソブチレン粘着剤溶液(固形分含量60%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0125】
積層およびダイカット
微多孔質ポリプロピレン膜(CELGARD(登録商標)2400)を、薬物含有粘着剤層と接触用粘着剤層との間に積層した。薬物含有粘着剤側の剥離ライナーを、バッキング、3M SCOTCHPAK(登録商標)1012で置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
図4は、パッチの設計を描写している。
【0126】
in vitro皮膚フラックスの評価
経皮システムからのメマンチンのin vitro皮膚フラックスを、実施例1に記載されているように測定した。ここでは、レセプター溶液から抜き取った試料中のメマンチン含有量を、メマンチンに関して、液体クロマトグラフィー質量分析法(LCMS)を使用することで分析した。フラックスプロファイルの結果を
図7に示す(四角)。この実施例におけるフラックスは比較的高く、7日間にわたって比較的一定のままであった。
【0127】
(比較例3)
メマンチン遊離塩基経皮配合物
薬物含有粘着剤の調製
3.20gの量のメマンチン遊離塩基を、5.48gの酢酸エチルおよび8.23gのn-ヘプタンの混合物中で混合した。この混合物に、4.00グラムの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を分散させ、Silversonミキサーホモジナイザーによって均質化した。この均質化された分散体に対して、29.09gのポリイソブチレン(PIB)粘着剤溶液(固形分含量44%)を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、Werner Mathisラボコーターを使用することで乾燥させて、9mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0128】
積層およびダイカット
2つの薬物含有粘着剤層の間に、不織ポリエチレンテレフタレート布、REEMAY(登録商標)2250を挿入した。1つの剥離ライナーを、バッキング、SCOTCHPAK(登録商標)1012フィルムで置き換えた。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
図4は、比較例に記載されているパッチの設計を描写している。
【0129】
in vitro皮膚フラックスの評価
経皮システムからのメマンチンのin vitro皮膚フラックスを、実施例1に記載されているように測定した。ここでは、レセプター溶液から抜き取った試料中のメマンチン含有量を、メマンチンに関してLCMSを使用することで分析した。フラックスプロファイルの結果を
図7に示す(ひし形)。メマンチン遊離塩基は、マトリックスおよび皮膚を通じて非常に迅速に拡散し、比較的短時間で枯渇する。このフラックスは、制御すること、および複数日にわたって一定速度で維持することが困難である。
【0130】
(比較例4)
炭酸水素ナトリウムを伴わないメマンチン塩経皮配合物
薬物含有粘着剤の調製
7.5gの量のメマンチンHClおよび7.5gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を、46.46gの酢酸エチル中で、Silversonミキサーホモジナイザーを用いて均質化した。この均質化された分散体を、81.4gのアクリレートコポリマー(DURO-TAK(登録商標)87-900Aアクリレー
ト粘着剤溶液(固形分43%))とよく混合した。この溶液をコーティングし、Werner Mathisラボコーターを使用することで乾燥させて、9mg/cm2の塗工重量を得た。2つの薬物含有粘着剤層の間に、多孔質ポリエチレンフィルム、DELNET(登録商標)X540NATを挿入した。粘着剤剥離ライナーのうちの一方を、バッキング、3M SCOTCHPAK(登録商標)1012で置き換えた。
【0131】
接触用粘着剤の調製
7.5gの量の架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を、36.52gの酢酸エチル中で、Silversonミキサーホモジナイザーを用いて均質化した。この均質化された分散体を、98.84gのDURO-TAK(登録商標)87-900A(固形分含量43%)アクリレート粘着剤溶液とよく混合した。
【0132】
積層およびダイカット
薬物含有粘着剤層の剥離ライナーを取り外し、接触用粘着剤層を、薬物含有粘着剤層に対して直接積層した。6層積層体を、パッチへとダイカットした。
図3は、比較例に記載されているパッチの設計を描写している。
in vitro皮膚フラックスの評価
【0133】
経皮システムからのメマンチンのin vitro皮膚フラックスを、実施例1に記載されているように測定した。ここでは、レセプター溶液から抜き取った試料中のメマンチン含有量を、メマンチンに関してLCMSを使用することで分析した。フラックスプロファイルの結果を
図7に示す(丸)。この実施例におけるメマンチン塩の皮膚フラックスはわずかなものである。共役酸塩形態のメマンチンは、in vitroヒト皮膚に対してほとんど透過性ではない。
【0134】
(比較例5)
炭酸ナトリウムを伴うメマンチン塩経皮配合物
薬物含有粘着剤の調製
2.0gの量のグリセリンおよび2.0gのクエン酸トリエチルを、26.44gの酢酸エチルおよび1.70gのイソプロピルアルコールの混合物と混合した。溶液中で、5.0gのメマンチン塩酸塩および1.96gの炭酸ナトリウムを、撹拌することによって分散させた。この分散体に対して、3.0gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加し、Silversonミキサーホモジナイザーを使用することで均質化した。この均質化された薬物分散体に対して、11.95gのアクリレートコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287(固形分含量50.5%))を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、Werner Mathisコーターを使用することで乾燥させて、15mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0135】
接触用粘着剤の調製
2.0gの量のクエン酸トリエチルを、14.78gの酢酸エチルおよび1.50gのイソプロピルアルコールの混合物と混合した。この溶液に対して、4.00gの架橋ポリビニルピロリドン(KOLLIDON(登録商標)CL-M)を添加した後、混合物を、Silversonミキサーホモジナイザーによって均質化した。この均質化された混合物に対して、27.72gの量のアクリレートコポリマー(DURO-TAK(登録商標)387-2287アクリル系粘着剤溶液(固形分含量50.5%))を添加し、よく混合した。この湿潤粘着剤配合物を剥離ライナー上にコーティングし、乾燥させて、5mg/cm2の乾燥塗工重量を得た。
【0136】
積層およびダイカット
微多孔質ポリプロピレン膜(CELGARD(登録商標)2400)を、薬物含有粘着剤層と接触用粘着剤層との間に積層した。薬物含有粘着剤側の剥離ライナーを、バッキング、3M SCOTCHPAK(登録商標)1012で置き換えて積層した。最終的な5層積層体を、パッチへとダイカットした。
図4は、この比較例に記載されているパッチの設計を描写している。
【0137】
in vitro皮膚フラックスの評価
経皮システムからのメマンチンのin vitro皮膚フラックスを、実施例1に記載されているように測定した。ここでは、レセプター溶液から抜き取った試料中のメマンチン含有量を、メマンチンに関してLCMSを使用することで分析した。フラックスプロファイルの結果を
図7に示す(三角)。フラックスプロファイルは、実施例3の遊離塩基配合物のものと類似している。炭酸ナトリウムは10.3のpKaを有し、これは炭酸水素ナトリウムのものよりもはるかに高く、共役酸メマンチン塩(pKa10.27)のものと類似している。したがって、炭酸ナトリウムとメマンチンHClとの間のpKa比は1に近く、ここでは、メマンチン塩に対してほぼ同じ分率のメマンチン遊離塩基が生成される。したがって、このパッチは、遊離塩基配合物と同様に挙動する。遊離塩基が固体形態であった場合、この反応が進行するにつれて遊離塩基は再結晶することになり、薬物含有粘着剤において結晶が形成されるにつれて、皮膚フラックスは急速にゼロへと降下する。
【0138】
等価物
多くの例示的態様および実施形態について上で考察してきたが、当業者であれば、ある特定の修正、並べ替え、追加、およびそれらの部分的組合せを認識するであろう。したがって、以下に添付される特許請求の範囲および下文にて導入される請求項は、すべてのそのような修正、並べ替え、追加、および部分的組合せを、それらの本来の趣旨および範囲内にあるものとして包含するように解釈されることが意図される。
【0139】
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願、特許公開、および他の刊行物は、それらの全体がここに参照により援用される。特許、出願、または刊行物が特別な定義を含んでいる場合、別途指示のない限り、それらの定義は、それらが見出される援用される特許、出願、または刊行物に対して当てはまるものであり、本出願に対して当てはまるものではないことが理解されるべきである。
【0140】
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
アミン塩形態の活性剤および両性無機塩基化合物を含む薬物リザーバを含む、経皮送達のための組成物であって、
前記両性無機塩基化合物のpKaが、前記アミン塩形態の前記活性剤のものよりも低い、組成物。
(項2)
粘着剤、アミン塩形態の活性剤、および両性無機塩基化合物を含む、経皮送達のための組成物であって、
前記両性無機塩基化合物のpKaが、前記アミン塩形態の前記活性剤のものよりも低い、組成物。
(項3)
前記両性無機塩基化合物が、炭酸水素ナトリウムである、上記項1または上記項2に記載の組成物。
(項4)
前記活性剤が、ドネペジル、メマンチン、フェンタニル、オキシブチニン、ロチゴチン、ロピニロール、リバスチグミン、タムスロシン、メチルフェニデート、またはブプレノルフィンである、上記項1から3のいずれかに記載の組成物。
(項5)
前記粘着剤マトリックスが、約5~35%w/wの前記活性剤を含む、先行する上記項のいずれかに記載の組成物。
(項6)
約0.5~35%w/wの前記炭酸水素ナトリウムを含む、先行する上記項のいずれかに記載の組成物。
(項7)
水、アルコール、グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジメチルスルホキシド、およびN-メチルピロリドンからなる群から選択される塩形態可溶化剤をさらに含む、先行する上記項のいずれかに記載の組成物。
(項8)
15%w/wまでの前記塩形態可溶化剤を含む、上記項7に記載の組成物。
(項9)
脂肪酸エステル、ジカルボン酸エステル、グリセロールエステル、ラクテート、脂肪アルコール、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、乳酸ラウリル、プロピレングリコールモノラウレート、コハク酸ジメチル、ラウリルアルコール、およびオレイルアルコールからなる群から選択される中性形態可溶化剤をさらに含む、先行する上記項のいずれかに記載の組成物。
(項10)
20%w/wまでの前記中性形態可溶化剤を含む、上記項9に記載の組成物。
(項11)
ジカルボン酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、マレイン酸エステル、トリカルボン酸エステル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、グリセロールエステル、およびトリアセチンからなる群から選択される可塑剤をさらに含む、先行する上記項のいずれかに記載の組成物。
(項12)
20%w/wまでの前記可塑剤を含む、上記項11に記載の組成物。
(項13)
クロスポビドンおよびコロイド状二酸化ケイ素からなる群から選択される添加剤をさらに含む、先行する上記項のいずれかに記載の組成物。
(項14)
前記組成物が、25%w/wまでの前記添加剤を含む、上記項13に記載の組成物。
(項15)
アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤を含む、先行する上記項のいずれかに記載の組成物。
(項16)
前記粘着剤が、前記組成物の65%w/wまでを構成する、上記項15に記載の組成物。
(項17)
第1の薬物リザーバとしての先行する上記項のいずれか一項に記載の組成物と、バッキング層とを含む経皮パッチ。
(項18)
前記バッキング層が、閉塞性ポリマーフィルムである、上記項17に記載の経皮パッチ。
(項19)
アクリレート、ポリイソブチレン、シリコーン粘着剤、およびスチレンブロックコポリマー系粘着剤からなる群から選択される粘着剤から構成される接触用粘着剤層をさらに含む、上記項17または上記項18に記載の経皮パッチ。
(項20)
前記薬物リザーバと前記接触用粘着剤層との間に、不織タイ層をさらに含む、上記項17から19のいずれかに記載の経皮パッチ。
(項21)
前記薬物リザーバと前記接触用粘着剤層との間に、速度制御膜をさらに含む、上記項17から20のいずれかに記載の経皮パッチ。
(項22)
前記パッチが、上記項1から15のいずれかに記載の組成物から構成される第2の薬物リザーバを含む、上記項17から21のいずれかに記載の経皮パッチ。
(項23)
前記第1の薬物リザーバおよび第2の薬物リザーバが、不織タイ層によって分離されている、上記項22に記載の経皮パッチ。
(項24)
前記第1の薬物リザーバおよび第2の薬物リザーバが、速度制御膜によって分離されている、上記項22または上記項23に記載の経皮パッチ。
(項25)
活性剤を経皮投与することを必要とする患者に対して活性剤を経皮投与する方法であって、それを必要とする患者に対して、上記項1から16のいずれかに記載の組成物または上記項17から24のいずれかに記載の経皮パッチを提供することを含む、方法。
(項26)
アルツハイマー病、パーキンソン病、下肢静止不能症候群、注意欠陥多動性障害、ナルコレプシー、うつ病、不安障害、強迫性障害、良性前立腺肥大症、急性尿閉、オピオイド依存、オピオイド非耐性個体における中等度急性疼痛、または中等度慢性疼痛を処置するための方法であって、それを必要とする患者に対して、上記項1から16のいずれかに記載の組成物または上記項17から24のいずれかに記載の経皮パッチを提供することを含む、方法。
(項27)
前記患者の皮膚に対して、前記組成物または経皮パッチを投与することまたはそれを投与するように指示することをさらに含む、上記項25または26に記載の方法。
(項28)
前記投与することが、前記活性剤の治療有効血中濃度を達成する、上記項25から27のいずれかに記載の方法。