(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093742
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】フッ素化有機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/307 20060101AFI20220616BHJP
C07C 69/716 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C07C67/307
C07C69/716 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077124
(22)【出願日】2022-05-09
(62)【分割の表示】P 2020509337の分割
【原出願日】2019-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2018067382
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504209655
【氏名又は名称】国立大学法人佐賀大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
(72)【発明者】
【氏名】北村 二雄
(57)【要約】
【課題】本発明は、ヨードシルベンゼン誘導体を容易に分離及び回収可能なフッ素化有機化合物の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】フッ素化有機化合物の製造方法であって、
有機化合物(1)を、
超原子価ヨード芳香環化合物(2a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(2b)、及び酸化剤(2bo)の存在下で、
フッ素源(3)
[当該フッ素源(3)は、
式:MFn(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)である。]
と反応させてフッ素化する工程A;
前記工程Aの開始後、ヨード芳香環化合物を、反応液から分離する工程B;及び
を含む、
製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化有機化合物の製造方法であって、
有機化合物(1)を、
超原子価ヨード芳香環化合物(2a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(2b)、及び酸化剤(2bo)の存在下で、
フッ素源(3)
[当該フッ素源(3)は、
式:MFn(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)である。]
と反応させてフッ素化する工程A;
前記工程Aの開始後、ヨード芳香環化合物を、反応液から分離する工程B;及び
を含む、
製造方法。
【請求項2】
前記有機化合物(1)が、
水素原子を有するカルボニル化合物、又は
1個以上の不飽和炭素-炭素結合を有する化合物
である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機化合物(1)が、
式 (1a):
【化1】
[式中、
Aは、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
1は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、
R
2は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、及び
Rは、各出現において独立して、水素原子又は有機基である。]
で表される有機化合物;
式(1b):
【化2】
[式中、
R
3は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
4は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
5は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、及び
Rは、各出現において独立して、水素原子又は有機基である。]
で表される有機化合物;又は
式1c):
【化3】
[式中、
Bは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり、
R
6は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、
R
7は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、及び
R
8は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子である。]
で表される有機化合物
である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記超原子価ヨード芳香環化合物(2a)が、式(2a1):
【化4】
[式中、
Arは、芳香環であり、
R
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-O-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
基:-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、
R
p2は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
カルボン酸基、
スルホン酸基、ヒドロキシ基、又は
ホスホリルオキシ基
であるか、或いは、
1個のヨウ素原子に結合している2個のR
p2が一緒になって、=Oを形成していてもよく、
n1は、0以上の数であり、
n2は、1以上の数であり、及び
n1及びn2の和は、1~11の範囲内である。]
で表される有機化合物であり;及び
前記ヨード芳香環化合物(2b)が、式(2b1):
【化5】
[式中、
Arは、芳香環であり、
R
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-O-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
基:-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、
n1は、0以上の数であり、
n2は、1以上の数であり、及び
n1及びn2の和は、1~11の範囲内である。]
で表される有機化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記式(2a1)及び前記式(2b1)におけるRp1が、各出現において独立して、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボン酸基、又はスルホン酸基である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記式(p1)におけるRp2が、各出現において独立して、ハロゲン原子、酢酸基、トリフルオロ酢酸基、トシル酸基、ヒドロキシ基、ホスホリルオキシ基、トリフルオロメタンスルホン酸基、プロピオン酸基、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸基、パーフルオロプロピオン酸基、パーフルオロ酪酸基、又はメタンスルホン酸基である、請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記酸化剤(1bo)が、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、及び過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物からなる群より選択される1種以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程Bにおいて反応液から分離した前記ヨード置換芳香環化合物を、酸化剤(C)で酸化する工程C
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸化剤(C)が、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、及び過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物からなる群より選択される1種以上である、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化有機化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化有機化合物は、機能性材料、医農薬化合物、電子材料等の各種化学製品、その中間体等として極めて重要な化合物である。
従来、フッ素化有機化合物の製造方法が複数提案されており、例えば、
有機化合物を、(1)IF5-ピリジン-HF、及び(2)アミン・フッ化水素塩、XaF(Xaは、水素、カリウム、ナトリウム、又はリチウムを示す。)、酸化剤、及び還元剤からなる群より選択される1種以上の添加剤と接触させて、フッ素化する工程Aを含む製造方法
が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に記載の技術では、ヨードシルベンゼン誘導体が分離及び回収されていない点に、改善の余地を見出した。
本発明は、ヨードシルベンゼン誘導体を容易に分離及び回収可能なフッ素化有機化合物の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
フッ素化有機化合物の製造方法であって、
有機化合物(1)を、
超原子価ヨード芳香環化合物(2a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(2b)、及び酸化剤(2bo)の存在下で、
フッ素源(3)
[当該フッ素源(3)は、
式:MFn(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)である。]
と反応させてフッ素化する工程A;
前記工程Aの開始後、ヨード芳香環化合物を、反応液から分離する工程B;及び
を含む、
製造方法
によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の態様を含む。
【0007】
項1.
フッ素化有機化合物の製造方法であって、
有機化合物(1)を、
超原子価ヨード芳香環化合物(2a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(2b)、及び酸化剤(2bo)の存在下で、
フッ素源(3)
[当該フッ素源(3)は、
式:MF
n(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)である。]
と反応させてフッ素化する工程A;
前記工程Aの開始後、ヨード芳香環化合物を、反応液から分離する工程B;及び
を含む、
製造方法。
項2.
前記有機化合物(1)が、
水素原子を有するカルボニル化合物、又は
1個以上の不飽和炭素-炭素結合を有する化合物
である項1に記載の製造方法。
項3.
前記有機化合物(1)が、
式 (1a):
【化1】
[式中、
Aは、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
1は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、
R
2は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、及び
Rは、各出現において独立して、水素原子又は有機基である。]
で表される有機化合物;
式(1b):
【化2】
[式中、
R
3は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
4は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
5は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、及び
Rは、各出現において独立して、水素原子又は有機基である。]
で表される有機化合物;又は
式1c):
【化3】
[式中、
Bは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり、
R
6は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、
R
7は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、及び
R
8は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子である。]
で表される有機化合物
である、項1又は2に記載の製造方法。
項4.
前記超原子価ヨード芳香環化合物(2a)が、式(2a1):
【化4】
[式中、
Arは、芳香環であり、
R
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-O-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
基:-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、
R
p2は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
カルボン酸基、
スルホン酸基、ヒドロキシ基、又は
ホスホリルオキシ基
であるか、或いは、
1個のヨウ素原子に結合している2個のR
p2が一緒になって、=Oを形成していてもよく、
n1は、0以上の数であり、
n2は、1以上の数であり、及び
n1及びn2の和は、1~11の範囲内である。]
で表される有機化合物であり;及び
前記ヨード芳香環化合物(2b)が、式(2b1):
【化5】
[式中、
Arは、芳香環であり、
R
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-O-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
基:-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、
n1は、0以上の数であり、
n2は、1以上の数であり、及び
n1及びn2の和は、1~11の範囲内である。]
で表される有機化合物である、項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5.
前記式(2a1)及び前記式(2b1)におけるR
p1が、各出現において独立して、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボン酸基、又はスルホン酸基である、項4に記載の方法。
項6.
前記式(p1)におけるR
p2が、各出現において独立して、ハロゲン原子、酢酸基、トリフルオロ酢酸基、トシル酸基、ヒドロキシ基、ホスホリルオキシ基、トリフルオロメタンスルホン酸基、プロピオン酸基、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸基、パーフルオロプロピオン酸基、パーフルオロ酪酸基、又はメタンスルホン酸基である、項4又は5に記載の製造方法。
項7.
前記酸化剤(1bo)が、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、及び過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物からなる群より選択される1種以上である、項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
項8.
前記工程Bにおいて反応液から分離した前記ヨード置換芳香環化合物を、酸化剤(C)で酸化する工程C
を含む、項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
項9.
前記酸化剤(C)が、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、及び過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物からなる群より選択される1種以上である、項8に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フッ素化有機化合物の新たな製造方法が提供される。
本発明の製造方法では、ヨード芳香環化合物が回収される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn-Cm」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
本明細書中、「金属原子」の例は、
周期表第1族金属(例:リチウム、ナトリウム、及びカリウム)、
周期表第2族金属(例:マグネシウム、及びカルシウム)、
第4周期遷移金属(例:スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅)、
第12族金属(例:亜鉛、カドミウム、水銀)、及び
第13族金属(例:アルミニウム、ガリウム、インジウム)
を包含する。
【0010】
本明細書中、「有機化合物」とは、通常の意味に理解され、1個以上の炭素原子及び1個以上の水素原子を有する化合物であることができる。
【0011】
本明細書中、フッ素化有機化合物は、有機化合物がフッ素化されて生じることができる化合物を意味し、水素原子を含有しなくてもよい。
【0012】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ハロ(基)」の例は、フルオロ(基)、クロロ(基)、ブロモ(基)、及びヨード(基)を包含できる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「ハロゲン(原子)」の例は、フッ素(原子)、塩素(原子)、臭素(原子)、及びヨウ素(原子)を包含できる。
【0013】
本明細書中、「芳香環」の例は、芳香族炭素環、及び芳香族複素環を包含する。
本明細書中、「芳香環化合物」とは、1個以上の芳香環を有する化合物を意味する。
【0014】
本明細書中、特に限定の無い限り、「芳香族炭素環」の例は、炭素数6~14の芳香族炭化水素環を包含し、及びその具体例は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、及びビフェニルを包含する。
【0015】
本明細書中、特に限定の無い限り、「芳香族複素環」の例は、5又は6員芳香族複素環を包含し、及びその具体例は、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、1,2,3-オキサジアゾール環、1,2,4-オキサジアゾール環、1,3,4-オキサジアゾール環、フラザン環、1,2,3-チアジアゾール環、1,2,4-チアジアゾール環、1,3,4-チアジアゾール環、1,2,3-トリアゾール環、1,2,4-トリアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、及びトリアジン環を包含する。
【0016】
本明細書中、特に限定の無い限り、前記「芳香族複素環」の更なる例は、前記5又は6員芳香族複素環の1個以上と芳香族炭素環の1個以上との縮合環を包含する。
【0017】
本明細書中、「有機基」とは、1個以上の炭素原子を含有する基(又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基)を意味する。
【0018】
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
アルデヒド基、
RrO-、
RrCO-、
RrSO2-、
RrOCO-、及び
RrOSO2-
(これらの式中、Rrは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基である)
を包含できる。
【0019】
本明細書中、「有機基」は、例えば、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基[当該炭化水素基には、-NRo-、=N-、-N=、-O-、-S-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-C(=O)-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-S(=O)2-NRo-、-NRo-S(=O)2-、-S(=O)-NRo-、及び-NRo-S(=O)-(これらの式中、Roは、独立して、水素原子、又は有機基である。)からなる群より選択される1個以上の部分が挿入されていてもよい。]であることができる。
【0020】
化学分野の常識に基づいて通常理解される通り、このようにヘテロ原子が挿入された炭化水素基の例は、非芳香族複素環基、及びヘテロアリール基を包含できる。
【0021】
本明細書中、「1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」の炭素数は、例えば、1~100、1~80、1~60、1~40、1~30、1~20、又は1~10(例:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)であることができる。
【0022】
本明細書中、
「1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基」、
「1個以上の置換基を有していてもよいアリール基」、及び
「1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基」
における「置換基」の例は、それぞれ、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基を包含できる。
当該置換基の数は、1個から置換可能な最大個数の範囲内(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)であることができる。
【0023】
本明細書中、「炭化水素基」の例は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、及びこれらの組合せである基を包含できる。
【0024】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキル基」の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C1-C10アルキル基を包含できる。
【0025】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例:1~3個、1~6個、1~12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
【0026】
当業者が通常理解する通り、接尾語「パーハロゲノ」は全ての水素原子がハロ基に置換されていることを意味する。
当業者が通常理解する通り、接尾語「パーフルオロ」は全ての水素原子がフルオロ基に置換されていることを意味する。
【0027】
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。
【0028】
「パーフルオロアルキル基」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。当該パーフルオロアルキル基の具体例は、トリフルオロメチル基(CF3-)、及びペンタフルオロエチル基(C2F5-)を包含する。
【0029】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~20、炭素数1~12、炭素数1~6、炭素数1~4、炭素数1~3、炭素数6、炭素数5、炭素数4、炭素数3、炭素数2、又は炭素数1のフルオロアルキル基であることができる。
【0030】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」として、具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基(CF3-)、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基(C2F5-)、テトラフルオロプロピル基(例:HCF2CF2CH2-)、ヘキサフルオロプロピル基(例:(CF3)2CH-)、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基(例:HCF2CF2CF2CF2CH2-)、トリデカフルオロヘキシル基、及び3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル基(CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2-)等が挙げられる。
【0031】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルケニル基」の例は、ビニル、1-プロペン-1-イル、2-プロペン-1-イル、イソプロペニル、2-ブテン-1-イル、4-ペンテン-1-イル、及び5-へキセン-1-イル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C2-10アルケニル基を包含できる。
【0032】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アルキニル基」の例は、エチニル、1-プロピン-1-イル、2-プロピン-1-イル、4-ペンチン-1-イル、5-へキシン-1-イル等の、直鎖状又は分枝鎖状の、C2-C10アルキニル基を包含できる。
【0033】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルキル基」の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等のC3-C7シクロアルキル基を包含できる。
【0034】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルケニル基」の例は、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等のC3-C7シクロアルケニル基を包含できる。
【0035】
本明細書中、特に限定の無い限り、「シクロアルカジエニル基」の例は、シクロブタジエニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル、シクロノナジエニル、シクロデカジエニル等のC4-C10シクロアルカジエニル基を包含できる。
本明細書中、特に限定の無い限り、芳香族基は、「アリール基」、及び「ヘテロアリール基」を包含する。
【0036】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」は、C6-C18アリール基であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「アリール基」の例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニル、3-ビフェニル、4-ビフェニル、及び2-アンスリルを包含できる。
【0037】
本明細書中、特に限定の無い限り、「アラルキル基」の例は、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチル、2-ビフェニリルメチル、3-ビフェニリルメチル、及び4-ビフェニリルメチルを包含できる。
【0038】
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、単環性、2環性、3環性、又は4環性であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、例えば、環構成原子として、炭素原子に加えて酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子から選ばれる1~4個のヘテロ原子を含有する非芳香族複素環基であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」は、飽和、又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に限定の無い限り、「非芳香族複素環基」の例は、テトラヒドロフリル、オキサゾリジニル、イミダゾリニル(例:1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル)、アジリジニル(例:1-アジリジニル、2-アジリジニル)、アゼチジニル(例:1-アゼチジニル、2-アゼチジニル)、ピロリジニル(例:1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル)、ピペリジニル(例:1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル)、アゼパニル(例:1-アゼパニル、2-アゼパニル、3-アゼパニル、4-アゼパニル)、アゾカニル(例:1-アゾカニル、2-アゾカニル、3-アゾカニル、4-アゾカニル)、ピペラジニル(例:1,4-ピペラジン-1-イル、1,4-ピペラジン-2-イル)、ジアゼピニル(例:1,4-ジアゼピン-1-イル、1,4-ジアゼピン-2-イル、1,4-ジアゼピン-5-イル、1,4-ジアゼピン-6-イル)、ジアゾカニル(例:1,4-ジアゾカン-1-イル、1,4-ジアゾカン-2-イル、1,4-ジアゾカン-5-イル、1,4-ジアゾカン-6-イル、1,5-ジアゾカン-1-イル、1,5-ジアゾカン-2-イル、1,5-ジアゾカン-3-イル)、テトラヒドロピラニル(例:テトラヒドロピラン-4-イル)、モルホリニル(例:4-モルホリニル)、チオモルホリニル(例:4-チオモルホリニル)、2-オキサゾリジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、及びジヒドロキノリル等を包含できる。
【0039】
本明細書中、特に限定の無い限り、「ヘテロアリール基」の例は、単環性芳香族複素環基(例:5又は6員の単環性芳香族複素環基)、及び芳香族縮合複素環基(例:5~18員の芳香族縮合複素環基)を包含できる。
【0040】
本明細書中、特に限定の無い限り、「5又は6員の単環性芳香族複素環基」の例は、ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例:3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル)、テトラゾリル、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、ピラジニル等を包含できる。
【0041】
本明細書中、特に限定の無い限り、「5~18員の芳香族縮合複素環基」の例は、イソインドリル(例:1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル)、インドリル(例:1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル)、ベンゾ[b]フラニル(例:2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル、4-ベンゾ[b]フラニル、5-ベンゾ[b]フラニル、6-ベンゾ[b]フラニル、7-ベンゾ[b]フラニル)、ベンゾ[c]フラニル(例:1-ベンゾ[c]フラニル、4-ベンゾ[c]フラニル、5-ベンゾ[c]フラニル)、ベンゾ[b]チエニル、(例:2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル、4-ベンゾ[b]チエニル、5-ベンゾ[b]チエニル、6-ベンゾ[b]チエニル、7-ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[c]チエニル(例:1-ベンゾ[c]チエニル、4-ベンゾ[c]チエニル、5-ベンゾ[c]チエニル)、インダゾリル(例:1-インダゾリル、2-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル)、ベンゾイミダゾリル(例:1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル)、1,2-ベンゾイソオキサゾリル(例:1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソオキサゾール-7-イル)、ベンゾオキサゾリル(例:2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル)、1,2-ベンゾイソチアゾリル(例:1,2-ベンゾイソチアゾール-3-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-4-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-5-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-6-イル、1,2-ベンゾイソチアゾール-7-イル)、ベンゾチアゾリル(例:2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル)、イソキノリル(例:1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル)、キノリル(例:2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル)、シンノリニル(例:3-シンノリニル、4-シンノリニル、5-シンノリニル、6-シンノリニル、7-シンノリニル、8-シンノリニル)、フタラジニル(例:1-フタラジニル、4-フタラジニル、5-フタラジニル、6-フタラジニル、7-フタラジニル、8-フタラジニル)、キナゾリニル(例:2-キナゾリニル、4-キナゾリニル、5-キナゾリニル、6-キナゾリニル、7-キナゾリニル、8-キナゾリニル)、キノキサリニル(例:2-キノキサリニル、3-キノキサリニル、5-キノキサリニル、6-キノキサリニル、7-キノキサリニル、8-キノキサリニル)、ピラゾロ[1,5-a]ピリジル(例:ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-2-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-3-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-4-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-5-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-6-イル、ピラゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イル)、イミダゾ[1,2-a]ピリジル(例:イミダゾ[1,2-a]ピリジン-2-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-5-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-6-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-7-イル、イミダゾ[1,2-a]ピリジン-8-イル)等を包含できる。
【0042】
本明細書中、特に限定の無い限り、
「1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基」、及び
「1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基」
における各「置換基」の例は、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基、ハロ基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基、チオキソ基、スルホ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、及びスルフェナモイル基を包含できる。
当該置換基の数は、1個から置換可能な最大個数の範囲内(例:1個、2個、3個、4個、5個、6個)であることができる。
【0043】
2.フッ素化有機化合物の製造方法
本発明のフッ素化有機化合物の製造方法は、
有機化合物(1)を、
超原子価ヨード芳香環化合物(2a)の存在下、又は
ヨード芳香環化合物(2b)、及び酸化剤(2bo)の存在下で
フッ素源(3)
と反応させてフッ素化する工程A;及び
前記工程Aの開始後、ヨード芳香環化合物(2b)を、反応液から分離する工程B
を含む。
【0044】
2.1.基質
本発明の製造方法の基質である前記有機化合物(1)は、好適に、
水素原子を有するカルボニル化合物、又は
1個以上の不飽和炭素-炭素結合を有する化合物
であることができる。
【0045】
念のために述べるに過ぎないが、有機化合物(1)は、1個以上のフッ素原子を有していてもよい。
【0046】
前記有機化合物(1)の好適な例は、
式 (1a):
【化6】
[式中、
Aは、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
1は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、
R
2は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、及び
Rは、各出現において独立して、水素原子又は有機基である。]
で表される有機化合物;
式(1b):
【化7】
[式中、
R
3は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
4は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、
R
5は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、ハロゲン原子、-OR、又は-NR
2であり、及び
Rは、各出現において独立して、水素原子又は有機基である。]
で表される有機化合物;又は
式(1c):
【化8】
[式中、
Bは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基であり、
R
6は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、
R
7は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子であり、及び
R
8は、水素原子、有機基、又はハロゲン原子である。]
で表される有機化合物
を包含する。
【0047】
前記有機化合物(1a)において、好ましく、例えば、
Aは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基であり、
R1は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいC1-C5アルキル基であり、及び
R2は、水素原子、1個以上の置換基を有していてもよいC1-C5アルキル基である。
【0048】
前記有機化合物(1b)において、好ましくは、例えば、
R3は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、-OR、又は-NR2であり、
R4は、水素原子、ハロゲン原子、-OR、又は-NR2であり、
R5は、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、-OR、又は-NR2であり、及び
Rは、各出現において独立して、水素原子又は有機基である。
【0049】
前記有機化合物(1c)において、好ましくは、例えば、
Bは、1個以上の置換基を有していてもよい芳香族基であり、
R6は、水素原子、又はC1-C5アルキル基であり、
R7は、水素原子、又はC1-C5アルキル基であり、及び
R8は、水素原子、又はC1-C5アルキル基である。
【0050】
2.2.目的物(フッ素化化合物)
本発明の製造方法により、有機化合物(1a)に対応して、次式のフッ素化化合物(1af)が得られる。
【化9】
[当該式中の記号は、前記式(1a)における記号と同じである。]
【0051】
本発明の製造方法により、有機化合物(1b)に対応して、次式のフッ素化化合物(1bf)が得られる。
【化10】
[当該式中の記号は、前記式(1b)における記号と同じである。]
【0052】
本発明の製造方法により、有機化合物(1b)に対応して、次式のフッ素化化合物(1bf)が得られる。
【化11】
[当該式中の記号は、前記式(1c)における記号と同じである。]
【0053】
2.3.工程A
2.3.1.超原子価ヨード芳香環化合物(2a)、ヨード芳香環化合物(2b)、及び酸化剤[酸化剤(2bo)]
工程Aでは、
超原子価ヨード芳香環化合物(2a)、又は
ヨード芳香環化合物(2b)を用いる。
超原子価ヨード芳香環化合物(2a)の具体例は、
ヨードシルベンゼン、2-ヨードシルトルエン、3-ヨードシルトルエン、4-ヨードシルトルエン、2,4,6-トリメチルヨードシルベンゼン、2-エチルヨードシルベンゼン、3-エチルヨードシルベンゼン、4-エチルヨードシルベンゼン、2-ヨードシルアニソール、3-ヨードシルアニソール、4-ヨードシルアニソール、1-クロロ-2-ヨードシルベンゼン、1-クロロ-3-ヨードシルベンゼン、1-クロロ-4-ヨードシルベンゼン、1,2-ジヨードシルベンゼン、1,3-ジヨードシルベンゼン、1,4-ジヨードシルベンゼン、1-ヨードシル-2-ニトロベンゼン、1-ヨードシル-3-ニトロベンゼン、1-ヨードシル-4-ニトロベンゼン、1-ヨードシル-2-シアノベンゼン、1-ヨードシル-3-シアノベンゼン、及び1-ヨードシル-4-シアノベンゼン
を包含する。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0054】
ヨード芳香環化合物(2b)の例は、
ヨードベンゼン、2-ヨードトルエン、3-ヨードトルエン、4-ヨードトルエン,2,4,6-トリメチルヨードベンゼン、2-エチルヨードベンゼン、3-エチルヨードベンゼン、4-エチルヨードベンゼン、2-ヨードアニソール、3-ヨードアニソール、4-ヨードアニソール、1-クロロ-2-ヨードベンゼン、1-クロロ-3-ヨードベンゼン、1-クロロ-4-ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンベン、1,4-ジヨードベンゼン、1-ヨード-2-ニトロベンゼン、1-ヨード-3-ニトロベンゼン、1-ヨード-4-ニトロベンゼン、1-ヨード-2-シアノベンゼン、1-ヨード-3-シアノベンゼン、1-ヨード-4-シアノベンゼン、1-ヨード-4-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)ベンゼン、p-ヨード安息香酸、2-ヨードピリジン、3-ヨードピリジン、4-ヨードピリジン、3-ヨードピラゾール、及び4-ヨードピラゾール
を包含する。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
工程Aにおいて、超原子価ヨード芳香環化合物(2a)は、好適に、酸化剤の不存在下で用いられる。
ここで、酸化剤の不存在下とは、前記有機化合物(1)の1モルに対して、工程Aの反応系における酸化剤の量が0.1モル以下であることを意味することができる。
【0056】
工程Aにおいて、ヨード芳香環化合物(2b)は、酸化剤と共に用いられる。
工程Aで用いることができる当該酸化剤[酸化剤(2bo)]の例は、メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、及び過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物からなる群より選択される1種以上である。
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
工程Aで用いられる酸化剤の量は、前記有機化合物(1)の1モルに対して、通常0.1~20モルの範囲内であることができる。
【0057】
前記超原子価ヨード芳香環化合物(2a)は、好ましくは、
式(p1):
【化12】
[式中、
Arは、芳香環であり、
R
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-O-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子(好ましくは、ナトリウム)、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基(好ましくは、メチル又はエチル)である。)、
基:-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子(好ましくは、ナトリウム)、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基(好ましくは、メチル又はエチル)である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、
R
p2は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
カルボン酸基、
スルホン酸基、ヒドロキシ基、又は
ホスホリルオキシ基
であるか、或いは、
1個のヨウ素原子に結合している2個のR
p2が一緒になって、=Oを形成していてもよく、
n1は、0以上の数であり、
n2は、1以上の数であり、及び
n1及びn2の和は、1~11の範囲内である。]
で表される化合物である。
【0058】
前記ヨード芳香環化合物(1b)は、好ましくは、
式(p1’):
【化13】
[式中、
Arは、芳香環であり、
R
p1は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X[当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。]、
基:-(CH
2)
q-NR
3X[当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。]、
基:-O-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子(好ましくは、ナトリウム)、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基(好ましくは、メチル又はエチル)である。)、
基:-(CH
2)
q-A(当該式中、Aは、-SO
3Y、又は-COOYであり;Yは、各出現において独立して、H、金属原子(好ましくは、ナトリウム)、又はNR
5
4であり;及びR
5は、各出現において独立して、H、又は有機基(好ましくは、メチル又はエチル)である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、カルボン酸基、又は
スルホン酸基であり、
R
p2は、各出現において独立して、
アルキル基、
アルコキシ基、
基:-O-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
基:-(CH
2)
q-NR
3X(当該式中、qは1以上の数であり;Rは、H、又はC
1-C
20アルキル基であり;及びXは、ハロゲン原子、アリールスルホニルオキシ基、又はアルキルスルホニルオキシ基である。)、
ハロゲン原子、
シアノ基、
ニトロ基、
カルボン酸基、
スルホン酸基、ヒドロキシ基、又は
ホスホリルオキシ基
であるか、或いは、
1個のヨウ素原子に結合している2個のR
p2が一緒になって、=Oを形成していてもよく、及びn1は、0~5の数である。]
で表される化合物である。
【0059】
構造式(p1)において、Rp1は、好ましくは、各出現において独立して、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、
ハロゲン原子、
カルボン酸基、又は
スルホン酸基
である。
構造式(p1’)において、Rp1は、好ましくは、各出現において独立して、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルキル基、
1個以上のフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基、
ハロゲン原子、
カルボン酸基、又は
スルホン酸基
である。
これらの置換基としてのフッ素原子の数は、1個から置換可能な最大数までであることができる。その具体例は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、及び9個を包含する。
【0060】
構造式(p1)において、Rp2は、好ましくは、各出現において独立して、ハロゲン原子、酢酸基、トリフルオロ酢酸基、トシル酸基、ヒドロキシ基、ホスホリルオキシ基、トリフルオロメタンスルホン酸基、プロピオン酸基、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸基、パーフルオロプロピオン酸基、パーフルオロ酪酸基、又はメタンスルホン酸基である。
【0061】
本明細書中、用語「酸基」は、有機又は無機の酸の分子から,水素イオンとして電離し得る水素原子を一個除いた残りの原子又は原子団を意味することができる。
具体的に例えば、本明細書中、「カルボン酸基」は「酢酸基」を包含でき、及び「酢酸基」は、-OCOCH3(アセチルオキシ基)であることができる。
【0062】
2.3.2.フッ素源(3)
工程Aで用いられるフッ素源(3)は、
式:MFn(当該式中、Mは、H、周期表第一族金属、又は周期表第二族金属であり;及びnは、1又は2である。)で表されるフッ素源(3a)、又は
前記ポリマー(2cp)、或いは
これらの組合せ
であることができる。
すなわち、前記IF2置換芳香環含有ポリマー(2cp)を使用する場合、当該ポリマー(2cp)は、フッ素源(3)を兼ねることができる。
【0063】
Mは、
好適に、H、Li、Na、K、Ca、又はCsであることができ、
より好適に、H、Na、K、又はCaであることができ、及び
更に好適に、Hであることができる。
【0064】
当該フッ素源は、好適に、フッ化水素源であることができる。
【0065】
前記フッ素源の例は、
無水フッ化水素酸、
フッ化水素酸水溶液(例:濃度10~70重量%のフッ化水素酸水溶液)、
フッ化水素酸、有機塩基、及び無機塩基の混合物
を包含する。
当該混合物中、フッ化水素酸及び有機塩基は、具体的には、例えば、
フッ化水素-トリエチルアミン塩[Et3N・nHF(n=1~5)]、
フッ化水素-ピリジン塩[Py・nHF(n=1~10)]、及び
フッ化水素-テトラエチルアンモニウムフルオリド塩[Et4NF・nHF(n=1~10)]
などの塩であるか、又はこれに由来できる。
当該混合物中、フッ化水素酸及び無機塩基は、具体的には、例えば、
HF-KF(KHF2)
などであるか、又はこれに由来できる。
当該フッ素源は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0066】
当該フッ素源の使用量は、例えば、
本発明の製造方法の基質である有機化合物(1)の1モルに対して、フッ化水素として、通常0.5~100モルの範囲内
好ましくは1~80モルの範囲内、
より好ましくは2~60モルの範囲内、及び
より更に好ましくは3~50モルの範囲内
であることができる。
【0067】
工程Aの基質は、工程Aの反応系に、一度に投入されてもよく、数回に分けて投入されてもよく、又は連続的に投入されてもよい。
【0068】
2.3.3.工程Aの条件
工程Aの反応は、溶媒の存在下又は不存在下で実施できる。
当該溶媒は、非極性溶媒、又は極性溶媒のいずれでもよく、
その具体例は、
当該溶媒は、非極性溶媒、又は極性溶媒のいずれでもよい。
当該溶媒は、エステル、ケトン、芳香族化合物、アルコール、エーテル、アミン、含窒素極性有機化合物、ニトリル、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、フッ素系溶剤、カーボネイト、又はその他の溶媒、或いはこれらの組合せであることができる。
【0069】
前記溶媒としてのエステルの例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを包含し、及びその好適な例は、酢酸エチルを包含する。
【0070】
前記溶媒としてのケトンの例は、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルヘキサノン、及びアセトフェノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールを包含し、及びその好適な例は、アセトンを包含する。
【0071】
前記溶媒としての芳香族化合物の例は、アニソール、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンを包含し、及びその好適な例は、ベンゼン、及びトルエンを包含する。
【0072】
前記溶媒としてのアルコールの例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、及びヘキサントリオールを包含し、及びその好適な例は、メタノール、及びエタノールを包含する。
【0073】
前記溶媒としてのエーテルの例は、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;別名1-メトキシ-2-プロパノール)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、及びテトラエチレングリコールジエチルエーテルを包含し、及びその好適な例は、ジエチルエーテル、及びテトラヒドロフランを包含する。
【0074】
前記溶媒としてのアミンの例は、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンを包含する。
【0075】
前記溶媒としての含窒素極性有機化合物の例は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、及び1,3―ジメチル-2-イミダゾリジノンを包含し、及びその好適な例は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチル-2-ピロリドンを包含する。
【0076】
前記溶媒としてのニトリルの例は、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル、及びアジポニトリルを包含し、及びその好適な例はアセトニトリルを包含する。
【0077】
前記溶媒としてのハロゲン化炭化水素の例は、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びクロロトルエンを包含し、及びその好適な例はジクロロメタン、及びクロロホルムを包含する。
【0078】
前記溶媒としての脂肪族炭化水素の例は、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、及びミネラルスピリットを包含し、及びその好適な例はシクロヘキサン、ヘプタンを包含する。
【0079】
前記フッ素系溶剤の例は、パーフルオロベンゼン、トリフルオロトルエン、ジトリフルオロベンゼン、トリフルオロエタノールを包含し、及びその好適な例は、パーフルオロベンゼン、及びトリフルオロエタノールを包含する。
【0080】
前記溶媒としてのカーボネイトの例は、テトラリンジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートを包含し、及びその好適な例は、エチレンカーボネート、及びプロピレンカーボネートを包含する。
【0081】
前記その他の溶媒の例は、酢酸、ピリジン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、及び水を包含する。
当該溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0082】
溶媒の使用量は、例えば、
本発明の製造方法の基質である有機化合物(1)の1質量部に対して、
通常0~200質量部の範囲内
好ましくは、0~100質量部の範囲内、及び
より好ましくは0~50質量部の範囲内
であることができる。
【0083】
工程Aの温度は、
通常-78~200℃の範囲内
好ましくは、-10~100℃の範囲内、及び
より好ましくは0~100℃の範囲内
であることができる。
【0084】
工程Aの時間は、
通常0.1~72時間の範囲内
好ましくは、0.1~48時間の範囲内、及び
より好ましくは0.1~36時間の範囲内
であることができる。
【0085】
2.4.工程B
本発明の方法は、前記工程Aの開始後、前記ヨード芳香環化合物(2b)を、反応液から分離する工程Bを含む。
当該ヨード芳香環化合物(2b)は、前記工程Aにおいて前記超原子価ヨード芳香環化合物(2a)から生じたヨード芳香環化合物であることができる。
【0086】
当該分離は、通常、前記工程Aの開始後に実施されればよく、必ずしも工程Aの反応が完全に完了した後に実施されることは必要とされない。
【0087】
当該分離は、前記ヨード芳香環化合物(2b)の性質等に応じて、適当な手段を選択して実施すればよい。
具体的には、例えば、工程Aの反応液に塩基性水溶液(例:NaOH水)を添加し、及び分液にて水層を分取し、これに酸性水溶液(例:HCl水)を添加し、及び分液にて有機層を分取し、次いで溶媒濃縮することで、当該回収を実施できる。
具体的には、また例えば、前記ヨード芳香環化合物(2b)を適当な溶媒(例:フルオラス溶媒)に抽出させることで当該回収を実施できる。
当該分離の手段としては、例えば、分液、濾過等の慣用の方法を採用し得る。
【0088】
工程Bの条件は、技術常識に基づき、適宜設定すればよい。
【0089】
2.5.工程C
本発明の方法は、好ましくは、反応液から分離した前記ヨード芳香環化合物(2b)を、酸化剤(C)で酸化する工程Cを含む。
工程Cの再酸化で生成した、超原子価化合物は、工程Aに再度使用できる。
【0090】
前記酸化剤(C)は、好ましくは、例えば、
式:RXCOOOM
(当該式中、
RXは、1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、及び
Mは、水素原子、又は金属原子
る。)、
で表される化合物、
式:RXOOM
(当該式中、
RXは、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよい炭化水素基であり、及び
Mは、水素原子、又は金属原子である。)
で表される化合物、及び
金属酸化物
からなる群より選択される1種以上であるであることができる。
【0091】
前記酸化剤(C)の例は、
メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物、
過マンガン酸、ニクロム酸、酸化タングステン、酸化ルテニウム、酸化アンチモン、酸化オスミウム、及び三酸化硫黄
を包含する。
前記酸化剤(C)の好適な例は、
メタクロロ過安息香酸、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルキシド、過硫酸カリウム、及び過硫酸水素カリウム-硫酸水素カリウム-硫酸カリウム混合物
を包含する。
【0092】
前記酸化剤(C)のより7好適な例は、m-クロロ過安息香酸を包含する。
【0093】
これらは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0094】
工程Cで用いられる酸化剤の量は、
前記化合物の1質量部に対して、
通常0.1~20質量部の範囲内
好ましくは、0.5~20質量部の範囲内、及び
より好ましくは0.6~10質量部の範囲内
であることができる。
【0095】
前記酸化剤は、好ましくはm-クロロ過安息香酸である。
【0096】
工程Cの条件は、技術常識に基づき、適宜設定すればよい。
【0097】
このようにして得られた目的のフッ素化有機化合物は、所望により、濾過、抽出、溶解、濃縮、析出、脱水、吸着、又はクロマトグラフィー等の慣用の方法、或いはこれらの組合せにより、単離、又は精製できる。
【0098】
本発明によれば、好ましくは5~100、及びより好ましくは10~100の収率で、目的物を得られる。
本発明によれば、好ましくは10~100、及びより好ましくは20~100の回収率で、前記超原子価ヨード芳香環化合物又は前記ヨード芳香環化合物を回収できる。
【実施例0099】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0100】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
Py:ピリジン
【0101】
実施例1(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成1)
ベンゾイル酢酸エチル(1.0mmol)、p-ヨード安息香酸(0.2eq.)、ジクロロメタン(4ml)、Py・HF(20eq.HF)、mCPBA(1.3eq.)を加え、室温で24時間撹拌する。反応液をF-NMRで分析し収率18%で標題の目的物が得られることを確認した。
一方、反応液にNaOH水を添加し、及び分液にて水層を分取し、これにHCl水を添加し、及び」分液にて有機層を分取し、次いで溶媒濃縮することで、p-ヨード安息香酸を88%回収した。
【0102】
実施例1-1(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成1)
p-ヨード安息香酸を実施例1で回収したものに変更した点を除いて、実施例1と同様の方法で、目的物を収率16%で得られることを確認した。またp-ヨード安息香酸を84%回収した
【0103】
実施例2(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成2)
ベンゾイル酢酸エチル(1.0mmol)、p-ヨード安息香酸(0.2eq.)、ジクロロメタン(4ml)、Py・HF(40eq.HF)、mCPBA(1.3eq.)を加え、室温で24時間撹拌する。反応液をF-NMRで分析し収率43%で標題の目的物が得られることを確認した。
一方、反応液にNaOH水を添加し、及び分液にて水層を分取し、これにHCl水を添加し、及び」分液にて有機層を分取し、次いで溶媒濃縮することで、p-ヨード安息香酸を89%回収した
【0104】
実施例2-1(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成2)
p-ヨード安息香酸を実施例2で回収したものに変更した点を除いて、実施例2と同様の方法で、目的物を収率40%で得られることを確認した。またp-ヨード安息香酸を88%回収した
【0105】
実施例3(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成3)
ベンゾイル酢酸エチル(1.0mmol)、N,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミン(0.2eq.)、ジクロロメタン(4ml)、Py・HF(20eq.HF)、mCPBA(1.5eq.)を加え、40℃で24時間撹拌する。反応液をF-NMRで分析し収率70%で標題の目的物が得られることを確認した。
一方、反応液に酢酸エチルと水を加えたのちに分液して有機層を分取する。そこにHCl水を加えて分液したのちに水層を分取する。そこにNaOH水と酢酸エチルを加えて分液したのちに有機層を分取し、次いで溶媒濃縮することで、N,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミンを23%回収した。
実施例3-1(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成3)
N,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミンを実施例3で回収したものに変更した点を除いて、実施例3と同様の方法で、目的物を収率65%で得られることを確認した。またN,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミンを20%回収した
【0106】
実施例4(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成4)
ベンゾイル酢酸エチル(1.0mmol)、N,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミン(0.2eq.)、ジクロロメタン(4ml)、55%HF水(28eq.HF)、mCPBA(1.5eq.)を加え、40℃で24時間撹拌する。反応液をF-NMRで分析し収率79%で標題の目的物が得られることを確認した。
一方、反応液に酢酸エチルと水を加えたのちに分液して水層を分取する。そこにNaOH水と酢酸エチルを加えて分液したのちに有機層を分取し、次いで溶媒濃縮することで、N,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミンを20%回収した。
【0107】
実施例4-1(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成4)
N,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミンを実施例4で回収したものに変更した点を除いて、実施例4と同様の方法で、目的物を収率75%で得られることを確認した。またN,N-ジエチル-2-(3-ヨードフェノキシ)エタン-1-アミンを20%回収した
【0108】
実施例5(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成5)
ベンゾイル酢酸エチル(1.0mmol)、3-(3-ヨードフェノキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(0.2eq.)、ジクロロメタン(4ml)、Py・HF(20eq.HF)、mCPBA(1.5eq.)を加え、40℃で24時間撹拌する。反応液をF-NMRで分析し収率60%で標題の目的物が得られることを確認した。
一方、反応液に酢酸エチルと水を加えたのちに分液して有機層を分取する。そこにHCl水を加えて分液したのちに水層を分取する。そこにNaOH水と酢酸エチルを加えて分液したのちに有機層を分取し、次いで溶媒濃縮することで、3-(3-ヨードフェノキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミンを21%回収した。
【0109】
実施例5-1(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成5)
3-(3-ヨードフェノキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミンを実施例5で回収したものに変更した点を除いて、実施例3と同様の方法で、目的物を収率55%で得られることを確認した。また3-(3-ヨードフェノキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミンを20%回収した
【0110】
実施例6(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成6)
ベンゾイル酢酸エチル(1.0mmol)、m-ヨードシルフェニル酢酸(1.3eq.)、ジクロロメタン(4ml)、55%HF水(14eq.HF)を加え、45℃で17時間撹拌する。反応液をF-NMRで分析し収率43%で標題の目的物が得られることを確認した。
一方、反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液とジクロロメタンを加えたのちに分液して水層を分取する。そこにHCl水とジクロロメタンを加えて分液したのちに有機層を分取する。溶媒濃縮することで、m-ヨードフェニル酢酸を97%回収した。
【0111】
実施例6-1(モノフルオロベンゾイル酢酸エチルの合成6)
ベンゾイル酢酸エチル(1.0mmol)、実施例6で回収したm-ヨードフェニル酢酸(0.2eq.)、ジクロロメタン(2ml)、Py・HF(20eq.HF)、mCPBA(1.5eq.)を加え、40℃で24時間撹拌する。反応液をF-NMRで分析し収率50%で標題の目的物が得られることを確認した。
一方、反応液に炭酸水素ナトリウム水溶液とジクロロメタンを加えたのちに分液して水層を分取する。そこにHCl水とジクロロメタンを加えて分液したのちに有機層を分取する。溶媒濃縮することで、m-ヨードフェニル酢酸を95%回収した。