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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093746
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】輸送系統の保守管理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C02F1/00 J
C02F1/00 V
C02F1/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077222
(22)【出願日】2022-05-09
(62)【分割の表示】P 2018062822の分割
【原出願日】2018-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂
(72)【発明者】
【氏名】中野 淳
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の保守管理において、輸送系統の閉塞状態の検知及び予測を可能とする輸送系統の保守管理システムを提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の状態を保守管理するシステムであって、輸送系統本体から発生する状態量を測定する測定部と、測定部の測定結果に基づき、輸送系統内の閉塞状態の有無を判断する判断部を有する輸送系統の保守管理システムを提供する。本発明の輸送系統の保守管理システムは、測定部によって輸送系統本体から発生する状態量を測定し、この測定値に基づき判断部において解析を行うことで、輸送系統内の環境変化を把握し、かつ閉塞状態に係る検知や予測などの判断を行うことができるという効果を奏する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の状態を保守管理するシステムであって、
前記輸送系統本体から発生する状態量を測定する測定部と、
前記測定部の測定結果に基づき、輸送系統内の閉塞状態の有無を判断する判断部を有することを特徴とする、輸送系統の保守管理システム。
【請求項2】
前記輸送系統本体から発生する状態量は、輸送系統本体の振動、音、温度のうち、少なくともいずれか1つに係るものであることを特徴とする、請求項1に記載の輸送系統の保守管理システム。
【請求項3】
前記測定部の測定結果をデータとして記憶する記憶部を設け、
前記判断部は、前記測定部の測定結果と前記記憶部のデータとを比較することを特徴とする、請求項1又は2に記載の輸送系統の保守管理システム。
【請求項4】
前記判断部における比較結果を表示するための表示部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の輸送系統の保守管理システム。
【請求項5】
前記輸送系統内の閉塞状態を解消するための閉塞解消手段を有し、
前記判断部における比較結果により、前記閉塞解消手段の動作を制御するための制御部を設けることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の輸送系統の保守管理システム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送系統の保守管理システムに関するものである。特に、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の保守管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理設備においては、原水や薬液などの流体を各処理槽に供給する輸送系統が設けられている。一般に、輸送系統は流路が狭く、長期間の使用により、流体中に含まれる夾雑物が輸送系統内に付着し、輸送系統が閉塞してしまう。このため、輸送系統の保守管理としては、輸送系統の閉塞状態を検知することが必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、原水の流入配管に設置した流量計及び圧力計によって配管の閉塞状態を検知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-215994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、配管などの輸送系統においては、閉塞状態が緩やかに進行していくような場合、流量や圧力の変動幅が小さく、流量計や圧力計の変化として現れにくい。また、流量計や圧力計の変化を検知した段階では閉塞状態がかなり進行しており、閉塞状態の解消のためには配管を分解し、内部清掃が必要となってくるなど、保守管理に係る作業に要する時間がかかり、作業者への負担も大きいという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の保守管理において、輸送系統の閉塞状態の検知及び予測を可能とする輸送系統の保守管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の保守管理において、閉塞状態に起因する状態量変化の直接検知を行い、輸送系統の閉塞状態の検知及び予測を可能とする輸送系統の保守管理システムが可能になることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の輸送系統の保守管理システムである。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の輸送系統の保守管理システムは、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の状態を保守管理するシステムであって、輸送系統本体から発生する状態量を測定する測定部と、測定部の測定結果に基づき、輸送系統内の閉塞状態の有無を判断する判断部を有するという特徴を有する。
本発明の輸送系統の保守管理システムは、測定部によって輸送系統本体から発生する状態量を測定し、この測定値に基づき判断部において解析を行うことで、輸送系統内の環境変化を把握し、かつ閉塞状態に係る検知や予測などの判断を行うことができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明の輸送系統の保守管理システムの一実施態様としては、輸送系統本体から発生する状態量は、輸送系統本体の振動、音、温度のうち、少なくともいずれか1つに係るものであるという特徴を有する。
この特徴によれば、輸送系統内における環境変化を数値化して把握することが可能となる。また、振動、音、温度に関しては、輸送系統本体の外側に検出器を設けて測定を行うことができる。このため、輸送系統内の環境に影響を与えることなく測定が可能となる。
【0010】
また、本発明の輸送系統の保守管理システムの一実施態様としては、測定部の測定結果をデータとして記憶する記憶部を設け、判断部は、測定部の測定結果と記憶部のデータとを比較するという特徴を有する。
この特徴によれば、測定部の測定結果を記憶部に記憶し、判断部において、記憶部のデータを用い、測定部の測定結果との比較による解析を行うことにより、輸送系統内の環境変化の傾向をより精度高く把握することが可能となる。
【0011】
また、本発明の輸送系統の保守管理システムの一実施態様としては、判断部における比較結果を表示するための表示部を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、判断部における判断結果を数値あるいは画像として表示させることで、輸送系統の閉塞状態をオペレーターが判別することができ、これにより、保守管理として必要な対応をとることが可能となる。
【0012】
また、本発明の輸送系統の保守管理システムの一実施態様としては、輸送系統内の閉塞状態を解消するための閉塞解消手段を有し、判断部における比較結果により、閉塞解消手段の動作を制御するための制御部を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、判断部における判断結果に基づき、閉塞解消手段を作動させることができる。これにより、輸送系統の閉塞状態が進行する前に適切な保守管理を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の保守管理において、輸送系統の閉塞状態の検知及び予測を可能とする輸送系統の保守管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施態様に係る輸送系統の保守管理システムの概略説明図である。
図2】本発明の第2の実施態様に係る輸送系統の保守管理システムの概略説明図である。
図3】本発明の第3の実施態様に係る輸送系統の保守管理システムの概略説明図である。
図4】本発明の第4の実施態様に係る輸送系統の保守管理システムの概略説明図である。
図5】本発明の第4の実施態様に係る輸送系統の保守管理システムの他の態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、夾雑物を含む排水を輸送するための輸送系統の保守管理システムに係るものである。
【0016】
本発明における夾雑物を含む排水とは、工場等から排出される工業排水、家庭から排出される下水、水処理設備における処理途中の被処理水などを指すものである。これらの排水には、夾雑物として固形物が含まれる。例えば、糸状の物質(繊維、髪の毛など)や目の粗いプレフィルターなどを通過するような微細な固形物が含まれるものを対象とすることができる。この夾雑物が輸送系統内において蓄積又は滞留することにより、閉塞状態が進行する。
なお、輸送系統内の閉塞状態を生じさせる閉塞要因は、排水中にもともと含まれる夾雑物に限らない。輸送途中で排水中から析出するようなものも含まれる。また、輸送系統そのものの劣化などにより輸送系統内部表面が剥離したものなども含まれる。
【0017】
本発明における輸送系統とは、夾雑物を含む排水を供給元から供給先へと移動するための輸送に係るものである。例えば、工業排水や下水のような原水を水処理設備に供給するための配管や、水処理設備内の処理槽間を被処理水が移動する際の供給ライン及び排出ラインを指すものである。
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る輸送系統の保守管理システムの実施態様を詳細に説明する。
なお、実施態様に記載する輸送系統の保守管理システムについては、本発明に係る輸送系統の保守管理システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0019】
[第1の実施態様]
図1は、本発明の第1の実施態様における輸送系統の保守管理システムを示す概略説明図である。図1(A)は、水処理装置も含めた全体説明図である。図1(B)は、輸送系統周辺に係る概略説明図である。
本実施態様に係る輸送系統の保守管理システム1aは、図1(A)に示すように、各種の水処理装置100に係る輸送系統10の保守管理を行うものであり、測定部2、判断部3を有するものである。また、本実施態様における輸送系統10は、夾雑物を含む排水Wを水処理装置100の処理槽110に供給するための配管11である。なお、図1において、破線で示された矢印は、制御又は入力可能に接続されていることを示す。
【0020】
本発明における輸送系統の保守管理システム1aは、各種の水処理装置100に用いることができる。水処理装置100としては、水処理に係る公知の装置であれば特に種類は問わない。例えば、下水処理場、廃水処理場、食品工場、製薬工場等の有機性排水処理設備、メッキ工場等の無機性排水処理設備、浄水場等の上水処理設備等に利用される装置である。
【0021】
測定部2は、輸送系統10本体から発生する状態量を測定するものである。ここで、本発明における状態量とは、輸送系統10において排水を輸送する際の送水エネルギーの一部で、送水そのものに用いられているエネルギー以外のエネルギー量を指すものである。これにより、輸送系統10内における環境変化(状態変化)を検知することが可能となる。
【0022】
測定部2における測定対象である状態量としては、具体的には、輸送系統10本体から発生する振動、音、温度に係るものとすることができる。これにより、輸送系統10内における環境変化(状態変化)を数値化して把握することが可能となる。
【0023】
測定部2は、図1(B)に示すように、状態量を計測する検出器21を備えるものである。検出器21としては、例えば、振動計、加速度計、温度計などが挙げられる。なお、検出器21は、状態量である振動、音、温度のうち、いずれか1つを検出可能なものを用いることとしてもよく、複数の状態量を測定するために複数の種類の検出器を用いるものとしてもよい。
【0024】
検出器21は、輸送系統10本体に直接設置して測定を行うものであってもよく、輸送系統10本体とは離れた場所から間接的に計測を行うものであってもよい。図1(B)に示すような輸送系統10本体の外周に接触型の圧電型加速度センサを直接配設するもの以外に、非接触型の渦電流型振動計、光学型振動計、赤外線サーモグラフィカメラなどが挙げられる。なお、測定部2における測定の間隔は特に限定されない。所定の間隔で自動的に測定するようにしてもよく、オペレーターの操作により測定されるものであってもよい。また、検出器21の性能に応じて設定するものであってもよい。
【0025】
測定部2によって、輸送系統10本体から発生する状態量を測定することで、輸送系統10内で閉塞要因となる物体が蓄積又は滞留した場合、輸送系統10本体から発生する状態量に生じた変化を検知することが可能となる。
【0026】
なお、従来の流量計や圧力計による測定では、輸送系統の内部に検出器を配置するため、輸送系統のように空間が比較的狭い箇所では、検出器そのものに閉塞要因が蓄積又は滞留してしまうことや、検出器を配置することにより検出する対象(流量、圧力)に影響を与えてしまうという問題があった。
さらに、管内の閉塞状態が進行すると、ポンプなどの流体を送る機器の特性に従って、流量、圧力の両方が変化する場合が多く、流量計や圧力計の単独の変化としては現れにくい。特に、閉塞要因が糸状の夾雑物であった場合、閉塞状態が緩やかに進行していくため、輸送系統内の流量や圧力の変動幅が小さく、流量計や圧力計の変化として現れにくい。
一方、本実施態様における測定部で得られる状態量は、輸送系統本体から発生するものであって、輸送系統内の環境変化(状態変化)に起因して変化する値である。また、輸送系統外部から測定を行うことにより、検出器そのものが輸送系統内の環境に影響することがなく、より精度の高い測定を行うことができる。
【0027】
判断部3は、測定部2で得られた測定値に基づき、輸送系統10内の閉塞状態の有無の判断を行うものである。また、図1(B)に示すように、判断部3は、演算部31及び表示部32を備える。
【0028】
演算部31は、測定部2で得られた測定値を基に解析を行うものである。例えば、測定部2で得られたデータ形式に応じ、数値、波形グラフや画像の解析に必要なプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置である。
【0029】
演算部31で用いる解析プログラムの内容は、測定部2で得られた測定値を用いて輸送系統内の環境変化に基づく閉塞状態を判断できるものであればよく、特に限定されない。例えば、測定部2で測定された測定値が所定のデータ範囲にない場合に、閉塞状態が始まっていると判断する解析プログラムを用いた解析処理を行うものとしてもよい。また、閉塞状態が始まったと判断されたときから、輸送系統10内における閉塞の進行に係る時間予測を行う解析プログラムを用いた解析を行うものとしてもよい。
【0030】
表示部32は、演算部31における判断結果を数値あるいは画像として表示させるものである。表示部32に表示された判断結果に基づいて、オペレーターが輸送系統10内の閉塞状態を把握し、それに基づき保守管理に対する対応を行うことが可能となる。
【0031】
本実施態様における輸送系統の保守管理システム1aは、測定部2によって輸送系統10本体から発生する状態量を測定し、この判断部3において測定値を基に解析を行うことで、輸送系統10内の環境変化を把握し、かつ閉塞状態に係る検知や予測などの判断を行うことができる。また、この判断結果を表示部32に表示させることで、オペレーターによる保守管理作業をスムーズに進めることが可能となる。
【0032】
[第2の実施態様]
図2は、本発明の第2の実施態様における輸送系統の保守管理システムを示す全体概略説明図である。
本実施態様に係る輸送系統の保守管理システム1bは、図2に示すように、第1の実施態様における輸送系統の保守管理システム1aに、測定部2の測定結果をデータとして記憶する記憶部4を設けたものである。また、本実施態様における判断部3は、測定部2の測定結果に加えて、記憶部4に係るデータを用いた解析を行うものである。なお、第1の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0033】
記憶部4は、測定部2の測定結果を記憶させるものであり、測定部2で得られた測定結果を入力可能に接続されている。
記憶部4で記憶させるデータは、測定部2で用いた検出器に応じた形式で記憶させることが好ましい。例えば、数値、波形グラフまたは画像など、いずれのデータ形式でもよい。
また、記憶部4において記憶させるデータとしては、測定部2による直前の測定結果のほかに、判断部3で用いるデータとして、輸送系統10に係る仕様(管径、管厚など)に関するデータや、輸送系統10が閉塞状態にないことが明確であるときの測定データについても記憶させることが好ましい。
【0034】
また、記憶部4には、測定部2の測定結果以外の情報を入力するための入力手段41を設けることが好ましい。これにより、輸送系統10に係る仕様に関するデータや輸送系統10に供給される排水Wの供給量に関するデータなどを記憶部4に記憶させ、判断部3で用いるデータとすることが可能となる。
【0035】
本実施態様における判断部3は、測定部2で得られた測定値と記憶部4に記憶されているデータを比較し、輸送系統10内の閉塞状態の有無の判断を行うものである。以下、第1の実施態様との違いについて説明する。
【0036】
本実施態様における演算部31は、測定部2で得られた測定値と記憶部4に記憶されているデータとを比較し、比較した結果を基に解析を行うものである。例えば、単純な数値比較や、波形グラフや画像データの比較に必要なプログラムをCPU等のプロセッサにより実行する計算装置である。
【0037】
演算部31は、記憶部4に記憶されているデータとして、前回の測定結果又は閉塞状態にないときの測定データを用い、測定部2で得られた測定値と比較する。記憶部4に記憶されているデータとして、前回の測定結果を用いることにより、輸送系統10内の環境変化に係る傾向を把握する。また、記憶部4に記憶されているデータとして、閉塞状態にないときの測定データを用いることにより、輸送系統10内で閉塞が進行しているか否かを判断することができる。
したがって、演算部31では、記憶部4に記憶されているデータのうち、前回の測定結果又は閉塞状態にないときの測定データのいずれか片方を用いて解析を行ってもよいが、両方のデータそれぞれと、測定部2で得られた測定値を比較することで、輸送系統10内の閉塞状態に係る判断の精度を上げることが可能となる。
【0038】
また、演算部31において、記憶部4に記憶されているデータとして輸送系統10の仕様に関するデータや排水Wの供給量に関するデータを用い、輸送系統10内の環境変化に係る傾向と併せることで、輸送系統10内で閉塞が進行する時間予測を行うものとしてもよい。
【0039】
また、本実施態様における表示部32は、第1の実施態様と同様に、演算部31における判断結果を数値あるいは画像として表示させるものである。表示部32に表示された判断結果に基づいて、オペレーターが輸送系統内の閉塞状態を把握し、それに基づき保守管理に対する対応を行うことが可能となる。
【0040】
表示部32は、判断結果の検索や表示の条件設定などを行うための入力手段33が接続されていることが好ましい。また、併せて、入力手段33によって保守管理の対応結果を入力するものとし、この入力した対応結果と判断結果を合わせて記憶部4に記憶させ、その後表示部32において表示可能とするものとしてもよい。これにより、過去の保守管理作業に係るデータ閲覧が容易となり、このデータを用いてオペレーターが保守管理作業を進めることが可能となる。
【0041】
本実施態様における輸送系統の保守管理システム1bは、測定部2によって輸送系統10本体から発生する状態量を測定し、この測定値及び記憶部4に記憶されているデータを判断部3において比較解析を行うことで、輸送系統10内の環境変化を把握し、かつ閉塞状態に係る検知や予測などの判断を行うことができる。また、この判断結果を表示部32に表示させ、入力手段33を用いて保守管理に係る対応結果について入力・検索を可能とすることで、オペレーターによる保守管理作業をよりスムーズに進めることが可能となる。
【0042】
[第3の実施態様]
図3は、本発明の第3の実施態様の輸送系統の保守管理システムを示す全体概略説明図である。
本実施態様に係る輸送系統の保守管理システム1cは、第1の実施態様における輸送系統の保守管理システム1a又は第2の実施態様における輸送系統の保守管理システム1bに、閉塞状態を解消するための閉塞解消手段5と、閉塞解消手段5の動作を制御する制御部6を設けたものである。なお、第1又は第2の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0043】
閉塞解消手段5は、輸送系統10内の閉塞状態を解消するためのものである。
閉塞解消手段5としては、図3に示すように、輸送系統10に設けられている流量調節手段51としてのバルブB1などが挙げられる。これにより、輸送系統10内の流量を増やすことで、輸送系統10内に蓄積又は滞留している閉塞要因を押し流すことが可能となる。また、輸送系統10が耐薬品性を有する材質である場合や、閉塞要因がスケールである場合、閉塞解消手段5として薬品添加装置及び薬剤添加量制御装置を設けるものとしてもよい。これにより、閉塞要因を薬品により処理することが可能となる。
【0044】
また、制御部6は、閉塞解消手段5の動作を制御可能に接続されているとともに、判断部3における閉塞状態の判断結果が入力されるように接続されている。
制御部6は、判断部3から入力された判断結果のうち、輸送系統10内に閉塞要因が蓄積又は滞留している傾向にあると判断された結果が入力された場合、閉塞解消手段5を稼働させるものである。また、判断部3から入力された判断結果のうち、閉塞状態の程度に係る情報に対して閾値を設け、設けられた閾値を超えた場合に制御部6によって閉塞解消手段を稼働させるようにすることが好ましい。なお、設けられた閾値は、判断部3からの判断結果の一部として制御部6に入力されるものとしてもよい。これにより、閉塞解消手段5を過度に高い頻度で動作させることを抑制することが可能となる。
【0045】
本実施態様における輸送系統の保守管理システム1cは、判断部から入力された判断結果において、輸送系統10内の閉塞状態が進行している傾向にある場合、制御部を介して閉塞解消手段を稼働させることで、輸送系統10の閉塞状態を解消し、保守管理を行うことができる。また、制御部において、判断部の判断結果に基づき制御部を介して閉塞解消手段の動作を制御することにより、閉塞状態が進行する前に的確かつ迅速な対応が可能となる。
なお、本実施態様における輸送系統の保守管理システム1cにおいては、制御部による閉塞状態解消手段の制御によらず、表示部32に示された内容に基づき、オペレーターが手動で流量調節手段51を操作し、閉塞状態を解消するものであってもよい。
【0046】
[第4の実施態様]
図4は、本発明の第4の実施態様の輸送系統の保守管理システムを示す概略説明図である。
本実施態様に係る輸送系統の保守管理システム1dは、第1~3の実施態様における輸送系統の保守管理システム1a~1cにおいて、輸送系統10に振動や衝撃を付与する振動付与装置7を設けたものである。なお、第1~3の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0047】
振動付与装置7は、輸送系統10に外部から振動又は衝撃を加えるものである。また、振動付与装置7による振動又は衝撃は、定期的あるいはランダムに加えるものとする。振動付与装置7としては、輸送系統10の外周面から直接加振するものを用いることができる。図4に示すように、例えば、超音波振動子、水晶振動子などの発振器、電磁パルス発生装置、加振ハンマーを用いた微加振装置などの発振装置71が挙げられる。なお、発振装置71は、輸送系統10の外周面のどの位置に配設するものであってもよく、1又は複数台設けるものであってもよい。
【0048】
また、本実施態様における振動付与装置7としては、輸送系統10に振動又は衝撃を加えるためのものであればよく、図4のような発振装置71に限定されない。
図5は、本実施態様における輸送系統の保守管理システムの振動付与装置についての他の態様を示す概略説明図である。図5に示すように、振動付与装置7として、ラインL1及びバルブB2を介して空気又は水(蒸気含む)などの流体Fを輸送系統10内に供給する流体供給口72を設けるものとしてもよい。また、流体Fは、ポンプ(不図示)などにより高圧状態としたものを輸送系統10内に供給することが特に好ましい。これにより、輸送系統10内の圧力が急激に変化することで、輸送系統10に振動又は衝撃を与えることが可能となる。なお、流体供給口72は、輸送系統10の外周面のどの位置に配設するものであってもよく、1又は複数台設けるものであってもよい。
また、流体Fは輸送系統10の洗浄用流体として機能させるものであってもよい。このとき、振動付与装置7と閉塞解消手段5とを兼用させるものであってもよい。これにより、部品点数を減らすことが可能となる。
【0049】
振動付与装置7によって、輸送系統10に与えられた振動又は衝撃に起因する輸送系統10本来からの振動に係るデータ(振幅、周波数など)を測定部2により計測する。測定部2で測定されたデータは、第1~3の実施態様と同様に、判断部3、記憶部4において解析処理が行われる。
なお、振動付与装置7として発振装置71を設ける場合、輸送系統10は、外部からの振動又は衝撃を伝えやすい材質にすることが好ましく、例えば金属とすることが好ましい。
【0050】
これにより、本実施態様における輸送系統の保守管理システム1dは、輸送系統10内の環境変化に係る情報として、外部からの振動又は衝撃に対する状態量変化に係る情報を加えることができ、より高い精度で輸送系統10内の閉塞状態の有無に関する検知及び推測が可能となる。
【0051】
なお、上述した実施態様は輸送系統の保守管理システムの一例を示すものである。本発明に係る輸送系統の保守管理システムは、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る輸送系統の保守管理システムを変形してもよい。
【0052】
本実施態様における測定部、判断部、記憶部、閉塞解消手段の制御部に係る操作を、全てコンピューターによる制御下において自動化して行うものとしてもよい。また、表示部は、保守管理対象である輸送系統から離れたところに設置し、表示部の入力手段により保守管理システムに係る操作について遠隔操作を可能とするようにしてもよい。これにより、オペレーターが常に現場を見回る必要はなく、輸送系統の保守管理に係るコスト低減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の輸送系統の保守管理システムは、水処理装置に設けられる輸送系統の保守管理において好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0054】
1a,1b,1c,1d 輸送系統の保守管理システム、10 輸送系統、11 配管、2 測定部、21 検出器、3 判断部、31 演算部、32 表示部、33 入力手段、4 記憶部、5 閉塞解消手段、51 流量調節手段、6 制御部、7 振動付与装置、71 発振装置、72 流体供給口、100 水処理装置、110 処理槽、B1,B2 バルブ、F 流体、L1 ライン、W 排水
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
夾雑物を含む排水を輸送するための配管の状態を保守管理するシステムであって、
前記配管本体から発生する状態量を測定する測定部と、
配管内の閉塞状態を予測する判断部と、を備え、
前記判断部では、少なくとも前記測定部の測定結果と、過去の測定結果に基づいて解析することで、配管内の閉塞状態を予測することを特徴とする、配管の保守管理システム。
【請求項2】
前記配管本体から発生する状態量は、配管本体の振動、音、温度のうち、少なくともいずれか1つに係るものであることを特徴とする、請求項1に記載の配管の保守管理システム。
【請求項3】
前記判断部は、前記測定部の測定結果と、前回の測定結果とを比較解析することで、閉塞状態を予測することを特徴とする、請求項1又は2に記載の配管の保守管理システム。
【請求項4】
前記判断部の判断結果を表示する示部を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の配管の保守管理システム。
【請求項5】
前記表示部は、保守管理対象である配管から離れたところに設置され、前記表示部の入力手段により保守管理システムを遠隔操作することを特徴とする、請求項4に記載の配管の保守管理システム。
【請求項6】
前記配管内の閉塞状態を解消する閉塞解消手段を有し、
前記判断部の判断結果により、前記閉塞解消手段の動作を制御する御部を設けることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の配管の保守管理システム。