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特開2022-93752動物患者用薬量計算システム、動物患者用薬量計算プログラムおよび動物患者用薬量計算方法
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  • 特開-動物患者用薬量計算システム、動物患者用薬量計算プログラムおよび動物患者用薬量計算方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093752
(43)【公開日】2022-06-23
(54)【発明の名称】動物患者用薬量計算システム、動物患者用薬量計算プログラムおよび動物患者用薬量計算方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/10 20180101AFI20220616BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077263
(22)【出願日】2022-05-09
(62)【分割の表示】P 2022004154の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】515158272
【氏名又は名称】株式会社PECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 純
(57)【要約】
【課題】獣医療の分野において、薬剤の最適な投与を行うことのできる電子カルテシステムを提供すること。
【解決手段】本発明による動物患者用システムは、動物患者への医薬品の投与量を計算する動物患者用薬量計算システムであって、医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部と、動物患者の体重情報を取得する体重取得部と、体重情報に基づいて、薬品の投与量を計算する計算部と、医薬品と、計算した投与量とを表示する表示部と、を備えている。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物患者への医薬品の投与量を計算する動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部と、
前記動物患者の体重情報を取得する体重取得部と、
前記体重情報に基づいて、前記医薬品の投与量を計算する計算部と、
前記医薬品と、計算した前記投与量とを表示する表示部と、
を備える動物患者用薬量計算システム。
【請求項2】
請求項1に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品データベースは、規格単位情報を更に格納しており、
前記計算部は、前記投与量に基づいて前記規格単位量を計算し、
前記表示部は、計算した前記規格単位量を表示する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項3】
請求項1に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品データベースは、規格単位情報を更に格納しており、
前記計算部は、前記規格単位量に基づいて前記投与量を計算し、
前記表示部は、計算された前記規格単位量及び前記投与量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
表示された前記規格単位量に対する編集操作を受け付ける編集操作部を更に有しており、
前記計算部は、前記編集操作がなされた前記規格単位量に基づいて前記投与量を再計算し、
前記表示部は、前記編集操作がなされた前記規格単位量と、再計算された前記投与量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
表示された前記投与量に対する編集操作を受け付ける編集操作部を更に有しており、
前記計算部は、前記編集操作がなされた前記投与量に基づいて前記規格単位量を再計算し、
前記表示部は、前記編集操作がなされた前記投与量と、再計算された前記規格単位量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品には、複数の材料医薬品を混合してなる医薬品が含まれており、
前記医薬品データベースは、当該医薬品に、複数の前記材料医薬品とその混合基準量とを関連付けて格納しており、
前記計算部は、前記体重情報と、複数の前記混合基準量とに基づいて当該材料医薬品それぞれの混合量を計算し、
前記表示部は、前記混合量を複数の前記材料医薬品毎に表示する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記取得部は、処方情報を更に取得し、
前記計算部は、前記処方情報と計算した前記投与量とに基づいて前記医薬品の必要な総投与量を計算し、
前記表示部は、前記医薬品と前記総投与量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項8】
請求個6に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記計算部は、前記処方情報と前記総投与量とに基づいて前記医薬品の必要な規格単位量を計算し、
前記表示部は、前記医薬品と前記規格単位量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記基準量は体重1kgあたりの量であり、
前記計算部は、前記体重情報に前記基準量を乗じて前記投与量を計算する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記取得部は、前記動物患者に対して過去に投与された前記医薬品と、計算された前記投与量とを含む投与履歴情報を記憶しており、
前記投与履歴を読み込む読込部を更に備え、
前記計算部は、読み込んだ前記投与履歴情報の医薬品の投与量を現在の前記体重情報に基づいて再計算する、
動物患者用薬量計算システム。
【請求項11】
動物患者への医薬品の投与量を計算するための動物患者用薬量計算プログラムであって、
携帯端末を、
前記医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部、
前記動物患者の体重情報を取得する体重取得部、
前記体重情報に基づいて、前記薬品の投与量を計算する計算部、
前記医薬品と、計算した前記投与量とを表示する表示部、
として機能させる動物患者用薬量計算プログラム。
【請求項12】
医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部を備える携帯端末を利用して、動物患者への前記医薬品の投与量を計算するための動物患者用薬量計算方法であって、
前記動物患者の体重情報を取得する体重取得ステップと、
前記体重情報に基づいて、前記薬品の投与量を計算する計算ステップと、
前記医薬品と、計算した前記投与量とを表示する表示ステップと、
を含む、動物患者用薬量計算方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、動物患者に対して投与及び処方される動物患者用医薬品の最適な投与量を計算するための動物患者用薬量計算システム、動物患者用薬量計算プログラムおよび動物患者用薬量計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の医療に用いられる薬品について、医師が診療中に電子カルテを通じて薬の詳細を容易に調べることが可能な薬参照システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電子カルテ上で医師が処方を行うとき薬名リストを表示し、当該薬の詳しい情報が製薬会社によって登録されている場合にはその情報にアクセスするためのリンクを表示する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、患者の年齢又は体重に基づいて薬剤毎に定められた適正な処方量を自動的に算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-107609号公報
【特許文献2】国際公開2017/135341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、診察の対象が人ではなく動物である場合、その動物種や個体差によって適応できる薬剤が異なり、また体重の変化に応じて適切な量の薬剤を投与する必要がある。特許文献1及び特許文献2に記載の技術はいずれも、動物種による差異が何ら考慮されていない。また、同じ犬という動物種であっても、その中の系統や個体差によって体重はばらつきが激しい。従って、それらを反映した新規な動物患者用薬量計算システムの提供が期待される。
【0007】
本発明は、このような獣医療の分野において、薬剤の最適な投与を行うことのできる動物患者用薬量計算システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、
動物患者への医薬品の投与量を計算する動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部と、
前記動物患者の体重情報を取得する体重取得部と、
前記体重情報に基づいて、前記薬品の投与量を計算する計算部と、
前記医薬品と、計算した前記投与量とを表示する表示部と、
を備える動物患者用薬量計算システムが得られる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、獣医療の分野において、薬剤の最適な投与を行うことのできる動物患者用薬量計算システムを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態による動物患者用薬量計算システムが実行される動物病院端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態による動物患者用薬量計算システムの機能ブロック図である。
図3】動物患者データベースの構成例である。
図4】動物患者用薬量計算システムに含まれる医薬品データベースの一部を示す図である。
図5】動物患者用薬量計算システムによる計算結果の例である。
図6】動物患者用薬量計算システムによる再計算結果の例である。
図7】動物患者用薬量計算システムによる処理の流れを示すフローである。
図8】動物患者用薬量計算システムによる画面表示例である。
図9】動物患者用薬量計算システムによる画面表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、実施形態に示される構成要素のすべてが、本発明の必須の構成要素であるとは限らない。
【0012】
[項目1]
動物患者への医薬品の投与量を計算する動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部と、
前記動物患者の体重情報を取得する体重取得部と、
前記体重情報に基づいて、前記医薬品の投与量を計算する計算部と、
前記医薬品と、計算した前記投与量とを表示する表示部と、
を備える動物患者用薬量計算システム。
[項目2]
項目1に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品データベースは、規格単位情報を更に格納しており、
前記計算部は、前記投与量に基づいて前記規格単位量を計算し、
前記表示部は、計算した前記規格単位量を表示する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目3]
項目1に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品データベースは、規格単位情報を更に格納しており、
前記計算部は、前記規格単位量に基づいて前記投与量を計算し、
前記表示部は、計算された前記規格単位量及び前記投与量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目4]
項目2又は項目3に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
表示された前記規格単位量に対する編集操作を受け付ける編集操作部を更に有しており、
前記計算部は、前記編集操作がなされた前記規格単位量に基づいて前記投与量を再計算し、
前記表示部は、前記編集操作がなされた前記規格単位量と、再計算された前記投与量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目5]
項目2乃至項目4のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
表示された前記投与量に対する編集操作を受け付ける編集操作部を更に有しており、
前記計算部は、前記編集操作がなされた前記投与量に基づいて前記規格単位量を再計算し、
前記表示部は、前記編集操作がなされた前記投与量と、再計算された前記規格単位量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目6]
項目1乃至項目4のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記医薬品には、複数の材料医薬品を混合してなる医薬品が含まれており、
前記医薬品データベースは、当該医薬品に、複数の前記材料医薬品とその混合基準量とを関連付けて格納しており、
前記計算部は、前記体重情報と、複数の前記混合基準量とに基づいて当該材料医薬品それぞれの混合量を計算し、
前記表示部は、前記混合量を複数の前記材料医薬品毎に表示する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目7]
項目1乃至項目5のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記取得部は、処方情報を更に取得し、
前記計算部は、前記処方情報と計算した前記投与量とに基づいて前記医薬品の必要な総投与量を計算し、
前記表示部は、前記医薬品と前記総投与量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目8]
請求個6に記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記計算部は、前記処方情報と前記総投与量とに基づいて前記医薬品の必要な規格単位量を計算し、
前記表示部は、前記医薬品と前記規格単位量とを表示する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目9]
項目1乃至項目6のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記基準量は体重1kgあたりの量であり、
前記計算部は、前記体重情報に前記基準量を乗じて前記投与量を計算する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目10]
項目1乃至項目9のいずれかに記載の動物患者用薬量計算システムであって、
前記取得部は、前記動物患者に対して過去に投与された前記医薬品と、計算された前記投与量とを含む投与履歴情報を記憶しており、
前記投与履歴を読み込む読込部を更に備え、
前記計算部は、読み込んだ前記投与履歴情報の医薬品の投与量を現在の前記体重情報に基づいて再計算する、
動物患者用薬量計算システム。
[項目11]
動物患者への医薬品の投与量を計算するための動物患者用薬量計算プログラムであって、
携帯端末を、
前記医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部、
前記動物患者の体重情報を取得する体重取得部、
前記体重情報に基づいて、前記薬品の投与量を計算する計算部、
前記医薬品と、計算した前記投与量とを表示する表示部、
として機能させる動物患者用薬量計算プログラム。
[項目12]
医薬品と、動物種毎の所定体重あたりに定められた基準量とが関連付けられて格納されている医薬品データベースを記憶する記憶部を備える携帯端末を利用して、動物患者への前記医薬品の投与量を計算するための動物患者用薬量計算方法であって、
前記動物患者の体重情報を取得する体重取得ステップと、
前記体重情報に基づいて、前記薬品の投与量を計算する計算ステップと、
前記医薬品と、計算した前記投与量とを表示する表示ステップと、
を含む、動物患者用薬量計算方法。
【0013】
<概略>
本発明の実施の形態による動物患者用薬量計算システム(以下「システム」という。)は、特に、動物病院内において獣医師等の獣医療従事者その他の作業者によって操作可能な携帯端末による操作を受け付けて、動物患者用薬量計算プログラムが実行されるように構成されている。
【0014】
システムは、主として、動物病院において行われる投薬及び処方時の適切な薬量の計算を行うためのものでする。動物の場合、体重1kgあたりに投与してもよい量が決められている。この時、種や体重、個体差によって投与すべき薬量が終わることがあり、従来は手作業で薬量の計算を行っていた。特に点滴のように混合薬では内訳の薬剤それぞれの分量も変わってくるため、煩雑な手計算によって投与量を間違えてしまうと動物患者が死に至る場合もあり得る。
【0015】
本発明の実施の形態によるシステムは、特に体重が変化した場合であっても、投与すべき適切な量の薬剤がわかるものとなっている。
【0016】
<構成>
図1は、本発明の実施の形態に係るシステムが実行される動物病院端末300の機能ブロック図である。このシステムは、一又は複数の動物病院端末のディスプレイ等を介して表示される。
【0017】
動物病院端末300は、動物病院が管理し、上述したユーザが利用する、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末等の情報処理装置であるが、スマートフォンや携帯電話、PDA等により構成しても良い。特に、院内において簡易に携行可能であることや、動物患者等の毛等が触れる環境を考慮すると、所謂タブレット端末であることが好ましい。
【0018】
また、衛生面の観点からも、音声認識機能によって入力操作が可能とされていることがなお好ましい。この場合、当該音声認識機能にあっては、特に獣医療分野における専門用語や略語等の認識に特化されていることが好ましい。
【0019】
なお、本実施の形態によるシステムは、動物病院端末300のみでその機能が完結するものを説明するが、一部の機能をサーバ装置又は動物患者の飼い主の端末において実行することとしてもよい。この場合、動物病院端末300において実行されるプログラムの一部を、サーバ端末又は飼い主の端末にインストールすることで、システム全体を複数の端末によって論理的に構成及び実行することとしてもよい。
【0020】
<動物病院端末300のハードウェア構成>
図1に示されるように、動物病院端末300は、通信部310と、表示操作部320と、記憶部330と、制御部340とを備えている。なお、当該構成は一例であり、その他の構成を備えていてもよい。
【0021】
通信部310は、ネットワークを介して他の端末と通信を行うための通信インタフェースであり、種々の通信プロトコルを採用することが可能である。
【0022】
表示操作部320は、ユーザが指示を入力し、制御部340からの入力データに応じてテキスト、画像等を表示するために用いられるユーザインターフェースであり、動物病院端末300がタブレット端末で構成されている場合はタッチパネル等から構成される。この表示操作部320は、記憶部330に記憶されている制御プログラムにより起動されてコンピュータ(電子計算機)である動物病院端末300により実行される。
【0023】
記憶部330は、各種制御処理や制御部340内の各機能を実行するためのプログラム、入力データ等を記憶するものであり、RAMやROM、その他ストレージ等から構成される。また、記憶部330は、他の端末との通信内容を一時的に記憶する。
【0024】
制御部340は、記憶部330に記憶されているプログラムを実行することにより、動物病院端末300の全体の動作を制御するものであり、CPUやGPU等から構成される。
【0025】
<計算モジュール>
図2は、本実施の形態による制御部340と表示操作部320とが共同して実現される機能のブロック図である。
【0026】
図示されるように、計算モジュール200は、動物患者データベース204と、医薬品データベース206を含む記憶部202を有している。なお、記憶部202には、システムを構成する他の情報が格納されていてもよい。
【0027】
動物患者データベース204は、本実施の形態によるシステムが管理している動物患者の現在及び過去の情報を格納している。動物患者データベース204に格納されている動物患者情報には、当該動物病院のみならずグループ経営やグループ管理がされている他の動物病院の動物患者の情報が含まれていてもよい。
【0028】
一方、医薬品データベース206は、医薬品情報2061と、規格単位情報2062と、動物種情報と、当該医薬品夫々において1kgあたりに定められた基準量情報と、を含んでいる。これにより、医薬品データベースを参照すれば、ある医薬品をある動物種に投与する際に1kgあたりどの程度まで投与できるのかということがわかる(詳しくは後述する)。
【0029】
体重取得部208は、薬量計算の対象となる動物患者の体重を取得する。体重取得部は、例えば外部の体重計と連携していたり、単に体重の数値情報を入力させることによって取得することとしてもよい。現在の体重の取得の方法についてはどのような方法を利用してもよい。
【0030】
計算部210は、医薬品の薬量を求める薬量計算指示として、薬品の名称等が入力されると、取得した体重情報と、医薬品データベースの情報に基づいて、医薬品の投与量を計算する。また、この際、計算部は、計算された投与量(例えば、薬Aを「20mg」)に基づいて規格単位量を計算し、投与量と共に(又は別に)投与すべき規格単位量(10mg/錠を「2錠」)を表示することもできる(詳しくは後述する)。
【0031】
表示部212は、図1における表示操作部320の一部を構成するものであり、本実施の形態においてはタッチパネルが採用されている。表示手段210は、計算された投与量等を表示する。なお、本実施の形態におけるシステムは、例えば、動物病院内における手術室や検査室等様々な場所において利用される可能性があることから、提示する情報は視覚的な表示だけではなく音声や警告音等の聴覚的な提供方法としてもよい。この場合、音声等の提示は、視覚的な提示と同時にはまたは別に行うこととしてもよい。
【0032】
編集操作部220は、計算され表示された規格単位量に対する編集操作を受け付けるものである。例えば、錠剤であるにもかかわらず小数点以下を含むような規格単位量(例えば、「2.1錠」)が計算されてしまった場合に、この規格単位量をキリの良い錠数(例えば「2錠」)に変更し、当該変更された規格単位量に基づいて投与量を再計算させることができる(詳しくは後述する)。
【0033】
<動物患者データベースの詳細>
本実施の形態による動物患者データベース204に含まれる各動物患者情報は、例えば、図3に示されるような情報が含まれている。本実施の形態における動物患者データベース204は、動物患者に動物患者IDと飼い主IDとが関連付けて管理される。ここで、同一の飼い主IDに対して複数の動物患者IDが関連付けられることも起こり得る。
【0034】
動物患者毎のカルテデータは、受診日毎に管理される。例えば、動物患者ID1000で識別されるユーザの電子カルテデータとして、名前、性別、種別、サイズ等の動物患者基本情報502、問診情報503、身体所見情報504、現病歴情報505、検査履歴情報506、診断履歴情報507、処置履歴情報508、投薬履歴情報509、処方履歴情報510、メモ512、及び動物患者の動画/画像等の情報513が含まれる。ここで、動物患者基本情報502、問診情報503及びペットの動画/画像等の情報513の入力内容は、携帯端末から受信されたデータで構成されていてもよい。一方、身体所見情報等それ以外の動物患者情報は動物病院端末300から受信されたデータで構成することができ、また、獣医師等の担当者が、動物患者の飼い主から取得した情報に基づいて動物病院端末300に入力することで受信されたデータで構成することができる。
【0035】
特に、上述した動物患者基本情報502は、当該動物患者が該当する動物種情報を含んでいる。動物種情報の例としては、イヌ、キツネ、タヌキ、フェネック、ネコ、ハムスター、モルモット、ハツカネズミ、シマリス、タイワンリス、プレーリードッグ、モモンガ、ウサギ、サル、ミニブタ、フェレット、スカンク、ロバ、ウマ(ミニチュアホース、ファラベラ)、九官鳥、ジュウシマツ、セキセイインコ、オカメインコ、ワカケホンセイインコ、文鳥、鳩、ミズガメ、リクガメ、ヤモリ、トカゲ、ヘビ、ワニ、カエル、サンショウウオ、金魚、錦鯉、熱帯魚、エビ、カブトムシ、クワガタムシ、スズムシ、水生昆虫、カマキリ、クモ、サソリ、サソリモドキ、ウデムシ、ヒヨケムシ、ムカデ、ヤスデなどが例示されるがこの限りではない。更に、イヌにおいても、犬種(犬の品種)等の下位概念が存在し得る。
【0036】
問診情報503は、飼い主から取得する主観的な情報(主訴)である。例えば、「ご飯をあまり食べていない」「足に擦り傷ができている」「太ってきた」「元気がない」「鼻水が出ている」等であり、飼い主が所有する動物を見たときに観察される症状である。問診情報503は、動物病院に来院した際に問診表や問診用端末等を利用して飼い主から取得することとしてもよいし、飼い主が所有する携帯端末等で事前に入力してもらい取得することとしてもよい。
【0037】
身体所見情報504は、動物病院等において獣医師等が調べることができ、客観的な数値で表せる身体情報である。例えば「体重」「体温」「心拍」「呼吸数」等であり、以下に説明する現病歴情報505とともに必要な検査を抽出するために必要な情報である。
【0038】
現病歴情報505は、獣医師等が聴取した主観的な情報である。現病歴情報505は、上述した問診情報503と同一になる場合も多いが、例えば「喉が赤い」というように飼い主だけでは実際に確認するのが困難な項目も含まれている。また、問診情報503では「血尿が出ている」という情報が取得されたとしても、獣医師等によって診察したところ「肛門から出血している」という現病歴が聴取されることもある。
【0039】
検査履歴情報506は、少なくとも当該動物患者が過去に受けた検査の履歴を含んでいる。検査履歴には、過去の通院において受けたことのある検査や、検診において受けたことのある検査などを含めることができる。その際に、検査に対する反応(嫌がったかどうか等、検査自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。当該情報は、検査をレコメンドする際の重要な指標になり得るからである。検査候補は、炎症検査、生化学検査、心機能検査、内分泌機能検査、アレルギー検査、感染症検査、微生物検査、形態学的検査と言ったように目的別にカテゴリ化されていてもよいし、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、細胞診検査、内視鏡検査(胃カメラ、直腸鏡)、CT検査(画像検査)、病理検査のように検査の特性に応じてカテゴリ化されていることとしてもよい。
【0040】
診断履歴情報507は、少なくとも当該動物患者が過去に受けた診断の履歴を含んでいる。過去に罹患した具体的な疾患名や怪我等の情報を含めることができる。診断履歴には、過去の通院において疑われた診断に関する情報を含めてもよい。
【0041】
処置履歴情報508及び投薬履歴情報509は、当該動物患者が過去に受けた処置履歴/投薬履歴情報を含んでいる。この場合においても、当該対応に対する反応(嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報)を関連付けて記憶することとしてもよい。項目としては、肛門腺処置、爪切処置、足裏処置、耳処置、毛抜き、眼科処置、歯科処置、エリザベスカラー・腹帯など、鍼灸処置、留置、便出し、抜糸、消毒、酸素処置、催吐処置、緊急蘇生処置、水抜き、強制給餌、洗浄、圧排、マッサージ、マイクロチップ、トリミング、カテーテル、リハビリ、手術、麻酔、入院、注射、輸血、点滴、検査、放射線治療、各種ドック、介護、衛生処置、シャンプー、しつけ、サプリメント、おやつ、避妊、去勢、ノミダニ駆除、狂犬病薬、ワクチン、フード、内用薬、点耳薬、点鼻薬、点眼薬、外用薬(軟膏・クリーム)、外用薬(消毒薬・スプレー)、外用薬、フィラリア予防などが例示できるがこの限りではない。
【0042】
処方履歴情報510は、当該動物患者が過去に処方された薬剤等の情報を含んでいる。この場合、自宅にて処方された薬剤を服用できたか否か、嫌がったかどうか、体調に影響を来たしたか等、処置又は投薬自体の受容性・許容性に関する情報をユーザの携帯端末を介して取得することとしてもよい。
【0043】
<医薬品データベースの詳細>
【0044】
図4乃至図6に示されるように、医薬品データベースは、動物種、薬品、基準量及び企規格単位に関する情報が登録されている。例えば、図4に示されるように、犬に対して薬Aを投与する選択がされた場合、1回量としての体重1kgあたり投与する基準量は2mg又は4mgの両方が選択可能なものとして表示される。この場合、例えば獣医師は、動物患者の発作の強度などの事情を勘案していずれかの量を選択することができる。図5に戻り、対象となる動物患者の体重が10kgであるとすると、1回投与量は10mgであり、処方回数として21回(朝昼晩3回×7日分)とすると、総投与量は420mgとなる。これを規格単位量に換算すると、1.68錠と計算される。従って1.68錠分のイーケプラ錠剤を粉薬等にし、21包分用意すればよいことが計算でわかる。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、カルテの動物患者情報から動物種の情報と体重の情報を取得して、薬の名称を選択すると、体重1kg当たりの基準量から1頭あたりの1回量を計算して表示し(図7参照)、更に、規格単位情報を参照して規格単位量を表示することも可能となる。
【0046】
また、図4において点滴Bは、6mgの薬aと、20mlの薬bと、5mgの薬cと、200mlの薬dとを調合することにより作ることが可能な薬品である。薬a~薬dのそれぞれには規格単位が関連付けられている。図6に示されるように、例えば、体重情報として10kgの犬に点滴Bを投与する場合、基準量と体重とから投与量が計算され、規格単位に基づいて投与単位が計算される。即ち、複数の薬(材料医薬品)を混合してなる医薬品でもその複数の薬毎に投与量を計算して表示することができる。この情報に基づいて点滴が作られる。この時、図6の上図のように、薬aの投与単位が1.2本のように端数が出てしまっている。この場合例えば2本分を開封して1.2本分を調合すると、0.8本分が廃棄されることになる。そこで、上述した編集操作部によって、薬aの投与単位の1.2本を1.0本に編集する。すると、図6の下図のように、変更された投与単位と規格単位の情報から基準量の数値が変更され5mlと表示される。ここで、獣医師等はこの再計算された基準量を確認して許容範囲内であると判断すればよい。
【0047】
このように、万一投与量に端数が生じてしまった場合であっても、端数を排除して取り扱いに都合のよい数字に編集してから基準量を再計算させ、その結果を評価することによって薬の無駄がなくなる。また、特に錠剤の場合には、1.2錠という量を測るよりも、より正確に調合することが可能となる。
【0048】
<画面表示例>
図7乃至図10を参照して、上述した計算モジュールへの入力と出力を行うユーザインターフェースとしての画面表示例を説明する。なお、画面表示例のデザインや構成配置などは適宜変更することが可能である。
【0049】
図7に示されるように、計算対象となる動物患者のカルテ画面のうち、領域Aには投与すべき薬の名称(錠剤A)が表示される。また、領域Bには薬の形状の選択の余地がある場合にはいずれかを選択できることとしている(錠剤、粉末、シロップ)。図示される例では錠剤が選択されていることから当該剤型に関連付けられている投与経路として経口投与(PO)が選択される。また、服用のタイミングや、1日当たりの容量(1日に投与する回数)、処方された期間(日数)等の入力が可能である。領域Cには薬品名(イーケプラ)が表示され、体重1kgあたりの1回量として2mg又は4mgが選択可能に表示されている。ここで、上述した図5を参照して説明したように、2mgを選択すると、体重10kgの1頭への1回量として10mgが表示され、それが0.5錠分であることが表示される。
【0050】
また、図8に示されるように、領域Dには、皮下注射という処置の名称と、混合される薬剤の名称及び混合量とが表示される。なお、Eに示されるように過去の投与履歴から同一の薬剤を呼び出す(読みだす)こととしてもよい。また、その際に現在の体重で混合すべき量を再計算することとしてもよい。これにより、過去の投与と同一の薬剤を現在の体重に見合った適切な分量に再計算して表示することができる。
【0051】
図9に示されるように、例えば、粉薬のような場合にも、領域Fのように混合する薬の内訳としてg単位で表示をすることとしてもよい。また、g単位で表示されている部分を規格単位量(錠等)で表示することとしてもよい。
【0052】
なお、図10を参照して、本発明による医薬品の単位及び計算方法の考え方と、画面に表示される情報について補足する。
【0053】
医薬品データベース(薬剤マスタとも言う)では、薬剤ごとに次の値が関連付けられて記憶される。カッコ内のギリシア文字は後述する計算式で用いられる。
・製剤量単位:錠、cap、g、P、A、V、袋 など
・含有量(α):500, 1000 など
・含有量の単位:mg、μg、UI、単位 など
・製剤基本量(β):10など
・製剤基本量の単位:mg、cap、mL、g など
【0054】
本実施の形態において、薬量を計算する際に入力(又は取得)を要する変数としては次のものが挙げられる。カッコ内のアルファベット文字は後述する計算式で用いられる。
・単位あたり1回量(x)
・体重(w)
・薬剤回数or個数(y)
【0055】
ここで、図10に表示される項目の定義は以下のとおりである。なお、図中において参照用の矢印のアイコンと説明文をウインドウFに重畳して示した。なお、図において互いに逆向きに表された2本の矢印は、単位量の換算を意味する。カッコ内(ver)は表示された数値の単位である(以下同様)
・単位あたり1回量
・1頭あたり1回量(含有量の単位ver)
・1頭あたり1回量(製剤量単位ver)
・1頭あたり1回量(製剤基本量の単位ver)
・全量(製剤量単位ver)
・全量(製剤基本量の単位ver)
【0056】
また、薬剤の計算は、上述したアルファベット及びギリシア文字を利用すると下記の計算式によって行われる。
[式1]
x×w=1頭あたり1回量(含有量の単位ver)
[式2]
1頭あたり1回量(含有量の単位ver)/α=1頭あたり1回量(製剤量単位ver)
[式3]
1頭あたり1回量(製剤量単位ver)×β=1頭あたり1回量(製剤基本量の単位ver)
[式4]
1頭あたり1回量(製剤量単位ver)×y=全量(製剤量単位ver)
[式5]
1頭あたり1回量(製剤基本量の単位ver)×y=全量(製剤基本量の単位ver)
【0057】
ここで、単位あたり1回量の単位(図中の2及び4の表示)は、薬剤あたり含有量の単位と同値である。また、体重(w)が入力(取得)されている前提であれば、単位当たり1回量(x)は入力されなくても以下入力値A乃至入力値Cのいずれかが入力されれば自動計算される。
入力値A:1頭あたり1回量(薬剤あたり含有量の単位ver)
入力値B:1頭あたり1回量(薬剤の単位ver)
入力値C:1頭あたり1回量(薬剤あたり基本量の単位ver)。
【0058】
また、上記の入力値A乃至入力値Cについては、薬剤マスタ上で単位を保持している項目のみを自動計算することとし、含有量の単位を保持していない場合は、単位あたり1回量を入力しないよう非表示とし、1頭あたり1回量(薬剤の単位ver)を入力させることとすればよい。なお、製剤量単位はすべての薬剤が持つパラメータである。
【0059】
以上のようなユーザインターフェースを含むシステムを提供することにより、動物病院の医師等の担当者は、これまで手計算等で行っていた薬量計算を自動化することが可能となる。また、一度計算した投与量を再計算することによって、より柔軟な処方オーダーを出すことが可能となる。特に動物を患者とする診療の場合、人間の診療とは異なり、動物種や個体差によって適応できる投薬及び処方が根本的に異なることから、それらを反映したシステムを提供することができる。これにより、より簡易で精度が高く合わせて獣医療という分野特有の課題を解決することのできるシステムを提供することができる。
【0060】
以上、開示に係る実施形態について説明したが、これらはその他の様々な形態で実施することが可能であり、種々の省略、置換および変更を行なって実施することが出来る。これらの実施形態および変形例ならびに省略、置換および変更を行なったものは、特許請求の範囲の技術的範囲とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
200 計算モジュール
202 記憶部
204 動物患者データベース
206 医薬品データベース
208 体重取得部
210 計算部
212 表示部
300 編集操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9