(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093763
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 13/10 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
F16F13/10 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206399
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】前田 直樹
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047AA15
3J047AB01
3J047CA04
3J047CB05
3J047DA02
(57)【要約】
【課題】ダイヤフラムの内容量を確保しながら、限られた収納スペース内で装着位置の制限を生じにくくする。
【解決手段】第1中心軸線O1と同軸に配設された筒状の第1取付部材11、および第2取付部材12と、第1取付部材および第2取付部材を互いに連結し、かつ第1取付部材における軸方向の一端開口部を閉塞する本体ゴム13と、第1取付部材における軸方向の他端開口部を閉塞し、本体ゴムとの間に、液体が封入された液室16を画成するダイヤフラム14と、液室を、本体ゴムを隔壁の一部に有する主液室16aと、ダイヤフラムを隔壁の一部に有する副液室16bと、に仕切る仕切部材26と、を備え、ダイヤフラムは、軸方向に交差する方向に延びる第2中心軸線、若しくは第1中心軸線から径方向に離れ、かつ軸方向に沿って延びる第2中心軸線O2、と同軸に配設されるとともに、伸縮変形可能な蛇腹状に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられ、かつ第1中心軸線と同軸に配設された筒状の第1取付部材、および他方に取付けられる第2取付部材と、
前記第1取付部材および前記第2取付部材を互いに連結し、かつ前記第1取付部材における軸方向の一端開口部を閉塞する本体ゴムと、
前記第1取付部材における軸方向の他端開口部を閉塞し、前記本体ゴムとの間に、液体が封入された液室を画成するダイヤフラムと、
前記液室を、前記本体ゴムを隔壁の一部に有する主液室と、前記ダイヤフラムを隔壁の一部に有する副液室と、に仕切る仕切部材と、を備え、
前記仕切部材に、前記主液室と前記副液室とを連通する制限通路が設けられ、
前記ダイヤフラムは、軸方向に交差する方向に延びる第2中心軸線、若しくは前記第1中心軸線から径方向に離れ、かつ軸方向に沿って延びる第2中心軸線、と同軸に配設されるとともに、前記第2中心軸線に沿って伸縮変形可能な蛇腹状に形成されている、防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられ、かつ第1中心軸線と同軸に配設された筒状の第1取付部材、および他方に取付けられる第2取付部材と、第1取付部材および第2取付部材を互いに連結し、かつ第1取付部材における軸方向の一端開口部を閉塞する本体ゴムと、第1取付部材における軸方向の他端開口部を閉塞し、本体ゴムとの間に、液体が封入された液室を画成するダイヤフラムと、液室を、本体ゴムを隔壁の一部に有する主液室と、ダイヤフラムを隔壁の一部に有する副液室と、に仕切る仕切部材と、を備え、仕切部材に、主液室と副液室とを連通する制限通路が設けられた防振装置が知られている。
ダイヤフラムは一般に、椀状に形成されるとともに、第1中心軸線と同軸に配設され、ダイヤフラムのうち、外周部の外面が、軸方向の他方側に突となり、外周部より径方向の内側に位置する部分の外面が、軸方向の一方側に窪むように屈曲して形成されており、振動の入力時に軸方向に反転変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、ダイヤフラムの内容量を確保しながら、限られた収納スペース内で装着位置の制限を生じにくくすることが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ダイヤフラムの内容量を確保しながら、限られた収納スペース内で装着位置の制限を生じにくくすることができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられ、かつ第1中心軸線と同軸に配設された筒状の第1取付部材、および他方に取付けられる第2取付部材と、前記第1取付部材および前記第2取付部材を互いに連結し、かつ前記第1取付部材における軸方向の一端開口部を閉塞する本体ゴムと、前記第1取付部材における軸方向の他端開口部を閉塞し、前記本体ゴムとの間に、液体が封入された液室を画成するダイヤフラムと、前記液室を、前記本体ゴムを隔壁の一部に有する主液室と、前記ダイヤフラムを隔壁の一部に有する副液室と、に仕切る仕切部材と、を備え、前記仕切部材に、前記主液室と前記副液室とを連通する制限通路が設けられ、前記ダイヤフラムは、軸方向に交差する方向に延びる第2中心軸線、若しくは前記第1中心軸線から径方向に離れ、かつ軸方向に沿って延びる第2中心軸線、と同軸に配設されるとともに、前記第2中心軸線に沿って伸縮変形可能な蛇腹状に形成されている。
【0007】
この発明によれば、ダイヤフラムが蛇腹状に形成されているので、従来のように椀状に形成されたダイヤフラムと比べて、外形寸法を抑えつつ内容積を確保することが可能になり、ダイヤフラムの内容積を確保しつつ、限られた収納スペース内で防振装置の装着位置に制限を生じさせにくくすることができる。
ダイヤフラムが蛇腹状に形成されていて、振動の入力時に、従来のダイヤフラムのように軸方向に反転変形しないので、振動の入力時に、弾性復元力の発生を抑えて、ダイヤフラムを容易に拡縮変形させることが可能になり、所望の減衰性能を発揮させやすくすることができるとともに、ダイヤフラムの耐久性を向上させること、およびダイヤフラムの変形に起因した異音の発生を防ぐこと等が可能になる。
ダイヤフラムが、軸方向に交差する方向に延びる第2中心軸線、若しくは前記第1中心軸線から径方向に離れ、かつ軸方向に沿って延びる第2中心軸線、と同軸に配設されていて、前記第1中心軸線と同軸に配設されていないので、収納スペースに占めるダイヤフラムの位置の自由度を増やすことが可能になり、ダイヤフラムの内容積を確保しつつ、限られた収納スペース内で防振装置の装着位置に制限が生ずるのを確実に抑制することができる。
【0008】
ダイヤフラムが、前記第1中心軸線から径方向に離れ、かつ軸方向に沿って延びる第2中心軸線と同軸に配設されている場合、振動の入力時に、応答性よくダイヤフラムを拡縮変形させることが可能になり、所望の減衰性能をより一層発揮させやすくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、ダイヤフラムの内容量を確保しながら、限られた収納スペース内で防振装置の装着位置に制限を生じさせにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る一実施形態として示した防振装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る防振装置の一実施形態を、
図1を参照しながら説明する。
この防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に取付けられる筒状の第1取付部材11、および他方に取付けられる第2取付部材12と、第1取付部材11および第2取付部材12を互いに連結した本体ゴム13と、本体ゴム13との間に、液体が封入された液室16を画成するダイヤフラム14と、液室16を、本体ゴム13を壁面の一部に有する主液室16aとダイヤフラム14を隔壁の一部に有する副液室16bとに仕切る仕切部材26と、を備えている。
【0012】
液室16に封入された液体としては、例えばエチレングリコール、水、シリコーンオイル等が挙げられる。
防振装置1は、例えば自動車等に装着され、エンジンの振動が車体に伝達するのを抑える。防振装置1では、第2取付部材12が振動発生部としての図示されないエンジンに取付けられ、第1取付部材11が図示されないブラケットを介して振動受部としての車体に取付けられる。なお、第1取付部材11が振動発生部に、第2取付部材12が振動受部にそれぞれ取付けられてもよい。
【0013】
筒状の第1取付部材11は、第1中心軸線O1と同軸に配設され、液室16は、第1取付部材11の内側に設けられ、仕切部材26は、液室16を、第1中心軸線O1に沿う軸方向に仕切っている。
以下、軸方向に沿って主液室16a側を上側といい、副液室16b側を下側という。軸方向から見て、第1中心軸線O1に交差する方向を径方向といい、第1中心軸線O1回りに周回する方向を周方向という。
【0014】
第1取付部材11は、第1筒部11aと、第1筒部11aの下方に位置する第2筒部11bと、第1筒部11aと第2筒部11bとを連結する段部11cと、を備えている。第1筒部11a、第2筒部11bおよび段部11cは、第1中心軸線O1と同軸に配設されて一体に形成されている。第1筒部11aの直径は、第2筒部11bの直径より大きくなっている。第1取付部材11の上端開口部(軸方向の一端開口部)が、本体ゴム13により液密に閉塞され、第1取付部材11の下端開口部(軸方向の他端開口部)が、ダイヤフラム14により液密に閉塞されることにより、第1取付部材11の内側に液体が封入されている。
第2取付部材12は、第1筒部11aよりも上方に配置されている。
【0015】
本体ゴム13は、第1取付部材11の上端部から上方に突出し、かつ上方に向かうに従い径方向の内側に向けて延びる円錐台状に形成されている。
第1取付部材11の内周面は、全域にわたって被覆ゴム13aに覆われている。被覆ゴム13aは、本体ゴム13と一体に形成されている。
【0016】
仕切部材26は、例えばアルミニウム合金若しくは合成樹脂材料等により形成されている。仕切部材26は、円盤状に形成され、第1取付部材11内に嵌合されている。仕切部材26の上面は、本体ゴム13に直接、軸方向で対向しており、仕切部材26は主液室16aの隔壁の一部を構成している。仕切部材26の下面は、ダイヤフラム14に直接、軸方向で対向しており、仕切部材26は副液室16bの隔壁の一部を構成している。
【0017】
仕切部材26には、収容室17と、制限通路18と、が設けられている。収容室17および制限通路18は、仕切部材26の内部で非連通状態とされ互いに独立している。
制限通路18は、主液室16aと副液室16bとを連通する。制限通路18は、仕切部材26の外周面に形成され周方向に延びている。制限通路18は、例えば周波数が10Hz前後のエンジンシェイク振動の入力時に共振(液柱共振)が発生するようにチューニングされてもよい。制限通路18は、軸方向に延びてもよい。
【0018】
収容室17に、例えばゴム材料等で形成された可動部材19が、変位可能に収容されている。仕切部材26には、収容室17内を通して主液室16aと副液室16bとを連通する、図示されない連通孔が形成されている。連通孔は、可動部材19の上下面に向けて開口している。可動部材19の上面に向けて開口する連通孔、および可動部材19の下面に向けて開口する連通孔はそれぞれ、複数ずつ設けられている。
なお、仕切部材26に収容室17および可動部材19を設けなくてもよい。
【0019】
そして本実施形態では、ダイヤフラム14が、筒状に形成されるとともに、第1中心軸線O1から径方向に離れ、かつ第1中心軸線O1に沿う軸方向に沿って延びる第2中心軸線O2と同軸に配設されている。ダイヤフラム14は、第2中心軸線O2に沿って伸縮変形可能な蛇腹状に形成されている。
【0020】
ここで、防振装置1の収納スペースRの内面に、収納スペースRを狭めるように、上方から下方に向かうに従い径方向のうちの一方向に向けて延びる張出面Wが含まれている場合に、防振装置1を張出面Wに近接させて設ける場合、収納スペースRに対する防振装置1の、第1中心軸線O1回りの向きを、第2中心軸線O2が第1中心軸線O1から前記一方向に離れて位置する向きに合わせる。
【0021】
ダイヤフラム14は、例えばゴム材料等で形成されている。ダイヤフラム14の上端部に、例えば金属材料若しくは合成樹脂材料等により形成されたダイヤフラムリング14aが固定されている。ダイヤフラムリング14aは、第1中心軸線O1と同軸に配設され、第1取付部材11の下端部内に嵌合されている。
振動の入力に伴い、液室16の液体が、制限通路18および連通孔を通して主液室16aおよび副液室16bを往来することで、ダイヤフラム14は、第2中心軸線O2に沿って拡縮変形する。
【0022】
以上説明したように、本実施形態による防振装置1によれば、ダイヤフラム14が蛇腹状に形成されているので、従来のように椀状に形成されたダイヤフラムと比べて、外形寸法を抑えつつ内容積を確保することが可能になり、ダイヤフラム14の内容積を確保しつつ、限られた収納スペースR内で防振装置1の装着位置に制限を生じさせにくくすることができる。
【0023】
ダイヤフラム14が蛇腹状に形成されていて、振動の入力時に、従来のダイヤフラムのように軸方向に反転変形しないので、振動の入力時に、弾性復元力の発生を抑えて、ダイヤフラム14を容易に拡縮変形させることが可能になり、所望の減衰性能を発揮させやすくすることができるとともに、ダイヤフラム14の耐久性を向上させること、およびダイヤフラム14の変形に起因した異音の発生を防ぐこと等が可能になる。
【0024】
ダイヤフラム14が、第1中心軸線O1から径方向に離れ、かつ軸方向に沿って延びる第2中心軸線O2と同軸に配設されていて、第1中心軸線O1と同軸に配設されていないので、収納スペースRに占めるダイヤフラム14の位置の自由度を増やすことが可能になり、ダイヤフラム14の内容積を確保しつつ、限られた収納スペースR内で防振装置1の装着位置に制限が生ずるのを確実に抑制することができる。
【0025】
ダイヤフラム14が、軸方向に沿って延びる第2中心軸線O2と同軸に配設されているので、振動の入力時に、応答性よくダイヤフラム14を拡縮変形させることが可能になり、所望の減衰性能をより一層発揮させやすくすることができる。
【0026】
なお、本発明の技術範囲は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0027】
例えば、前記実施形態では、ダイヤフラム14の第2中心軸線O2が、第1中心軸線O1から径方向に離れ、かつ第1中心軸線O1に沿う軸方向に沿って延びる構成を示したが、ダイヤフラム14の第2中心軸線O2は、軸方向に交差する方向に延びてもよい。
この構成においても、前記実施形態と同様に、収納スペースRに占めるダイヤフラム14の位置の自由度を増やすことが可能になり、ダイヤフラム14の内容積を確保しつつ、限られた収納スペースR内で防振装置1の装着位置に制限が生ずるのを確実に抑制すること等ができる。
【0028】
前記実施形態では、支持荷重が作用することで主液室16aに正圧が作用する圧縮式の防振装置1について説明したが、主液室16aが下側に位置し、かつ副液室16bが上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室16aに負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
また、本発明に係る防振装置1は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、車両用のキャビンマウント若しくはブッシュ、または建設機械に搭載された発電機のマウントに適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントに適用することも可能である。
【0029】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 防振装置
11 第1取付部材
12 第2取付部材
13 本体ゴム
14 ダイヤフラム
16 液室
16a 主液室
16b 副液室
18 制限通路
26 仕切部材
O1 第1中心軸線
O2 第2中心軸線