(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093801
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】車両用バンパ構造
(51)【国際特許分類】
B60R 19/48 20060101AFI20220617BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20220617BHJP
B60R 19/18 20060101ALN20220617BHJP
【FI】
B60R19/48 L
B60R19/04 A
B60R19/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206467
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】石川 翼
(72)【発明者】
【氏名】小玉 豊久
(57)【要約】
【課題】バンパの意匠設計の自由度を高くしつつ、バンパに衝突した衝突体が車体の内部に過度に進入することを抑制可能な車両用バンパ構造を提供する。
【解決手段】本発明の車両用バンパ構造1は、バンパリンフォース3と、リヤバンパ5と、第1、2スペーサ9a、9bと、ブレーキランプ装置7とを備えている。ブレーキランプ装置7は、リヤバンパ5に設けられており、第1、2スペーサ9a、9bよりも車体100aの上方に位置している。第1、2スペーサ9a、9bは、それぞれスペーサ本体91と、複数のリブ93とを有している。スペーサ本体91には、下面91bと傾斜面91cとが形成されている。各リブ93は下面91bに設けられている。各リブ93は、リヤバンパ5に衝突した衝突体200によって潰されつつ衝突体200に係合することにより、スペーサ本体91が車体100aの上方に向かって移動することを規制する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられて前記車体の幅方向に延びるバンパリンフォースと、
前記バンパリンフォースに対して前記車体の前後方向の一方又は他方に離隔しつつ、前記バンパリンフォースを覆うバンパと、
前記バンパリンフォースと前記バンパとの間に位置するスペーサと、
前記バンパに設けられて前記スペーサよりも前記車体の上方に位置する機能部品とを備えた車両用バンパ構造であって、
前記スペーサは、前記バンパリンフォースに固定されて前記バンパに向かって突出するスペーサ本体と、前記スペーサ本体よりも前記車体の下方に位置する規制体とを有し、
前記スペーサ本体には、前記車体の下方に面しつつ前記バンパリンフォースから前記バンパに向かって延びる下面と、前記下面と接続し、前記車体の上方に向かって傾斜しつつ前記下面から前記バンパに向かって延びる傾斜面とが形成され、
前記規制体は、前記下面に設けられ、前記バンパに衝突した衝突体によって潰されつつ前記衝突体に係合することにより、前記スペーサ本体が前記車体の上方に向かって移動することを規制することを特徴とする車両用バンパ構造。
【請求項2】
前記規制体は、前記下面と一体をなし、前記下面から前記車体の下方に向かって板状に延びる複数のリブである請求項1記載の車両用バンパ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用バンパ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の
図5に従来の車両用バンパ構造が開示されている。この車両用バンパ構造は、バンパリンフォースと、バンパと、スペーサとを備えている。バンパリンフォースは車体に設けられており、車体の幅方向に延びている。同文献では記載がされていないものの、この種の車両用バンパ構造では、バンパリンフォースは、クラッシュボックスを介して車体と接続されていることが一般的である。また、バンパリンフォースは、一般的にはアルミニウム合金製である。バンパは、具体的にはフロントバンパであり、車体の前部に設けられている。バンパは、バンパリンフォースに対して車体の前方に離隔しつつ、バンパリンフォースを覆っている。また、バンパは、下部がバンパリンフォースに近づくように延びている。
【0003】
スペーサは、バンパリンフォースに固定されており、バンパリンフォースとバンパとの間に位置している。スペーサは、一般的には硬質の樹脂製であり、バンパリンフォースよりも剛性が高くなっている。スペーサは、バンパリンフォースからバンパに向かって突出する形状をなしている。また、スペーサには、下面と傾斜面とが形成されている。下面は、車体の下方に面しつつバンパリンフォースからバンパに向かって延びている。傾斜面は下面と接続している。傾斜面は、下面よりも車体の上方に向かって傾斜しつつ下面からバンパに向かって延びている。
【0004】
この車両用バンパ構造では、バンパに対して前方から衝突体が衝突することにより、スペーサは、バンパを介して衝突体と衝突する。この際の衝突エネルギーによって、スペーサ及びバンパリンフォースは押し潰される。そして、この衝突エネルギーは、クラッシュボックスに伝達されてクラッシュボックスに吸収される。こうして、この車両用バンパ構造は、衝突体がバンパリンフォースに向かって車体の内部に進入することを抑制している。
【0005】
また、この車両用バンパ構造では、スペーサに傾斜面が形成されているため、バンパの下部がバンパリンフォースに近づくように延びる形状でありつつも、スペーサとバンパとが干渉することが防止されている。これにより、この車両用バンパ構造は、バンパの意匠設計を制限し難くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、バンパ、ひいては車両の意匠設計の観点から、バンパにおいてスペーサよりも車体の上方となる位置に、例えばブレーキランプ等の機能部品を設けることが考えられる。一方、上記従来の車両用バンパ構造では、バンパに衝突した衝突体がスペーサの傾斜面に衝突しつつ、スペーサをバンパリンフォースに向けて押すことにより、スペーサ及びバンパリンフォースを押し潰すように設計されている。ここで、衝突体は、スペーサを介してバンパリンフォースに向かって移動するのに対し、傾斜面は、車体の上方に向かって傾斜して延びる形状である。このため、衝突体の形状によっては、スペーサには、当初設計したようなバンパリンフォースを押す荷重が十分作用せず、車体の上方に向かう荷重が作用する。このため、バンパに対して上述の位置に機能部品を設けた場合、自己に作用する荷重によって車体の上方に移動したスペーサが機能部品と衝突することにより、機能部品が破損するおそれがある。
【0008】
そこで、たとえスペーサが車体の上方に移動した場合であっても、スペーサと機能部品とが衝突しないように、スペーサに対して機能部品を車体の上方に大きく離隔させることが考えられる。しかし、この場合には、バンパに機能部品を設ける位置が制限されることから、バンパの意匠設計の自由度が制限される。
【0009】
また、スペーサに対する傾斜面の形成を省略することによって、スペーサが車体の上方に移動することを抑制することも考えられるものの、この場合には、スペーサとバンパとが干渉しないようにバンパの形状を設計することが求められる。このため、やはり、バンパの意匠設計の自由度が制限される。
【0010】
また、スペーサが車体上方に移動することにより、バンパに衝突した衝突体が想定を超えて車体の内部に進入するおそれもある。この場合、バンパリンフォース等に機能部品が衝突することによって、機能部品が破損することが懸念される。
【0011】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、バンパの意匠設計の自由度を高くしつつ、バンパに衝突した衝突体が車体の内部に過度に進入することを抑制可能な車両用バンパ構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車両用バンパ構造は、車体に設けられて前記車体の幅方向に延びるバンパリンフォースと、
前記バンパリンフォースに対して前記車体の前後方向の一方又は他方に離隔しつつ、前記バンパリンフォースを覆うバンパと、
前記バンパリンフォースと前記バンパとの間に位置するスペーサと、
前記バンパに設けられて前記スペーサよりも前記車体の上方に位置する機能部品とを備えた車両用バンパ構造であって、
前記スペーサは、前記バンパリンフォースに固定されて前記バンパに向かって突出するスペーサ本体と、前記スペーサ本体よりも前記車体の下方に位置する規制体とを有し、
前記スペーサ本体には、前記車体の下方に面しつつ前記バンパリンフォースから前記バンパに向かって延びる下面と、前記下面と接続し、前記車体の上方に向かって傾斜しつつ前記下面から前記バンパに向かって延びる傾斜面とが形成され、
前記規制体は、前記下面に設けられ、前記バンパに衝突した衝突体によって潰されつつ前記衝突体に係合することにより、前記スペーサ本体が前記車体の上方に向かって移動することを規制することを特徴とする。
【0013】
本発明の車両用バンパ構造では、スペーサがスペーサ本体と規制体とを有している。そして、スペーサ本体には傾斜面が形成されている。これにより、この車両用バンパ構造では、たとえバンパについて、下部がバンパリンフォースに近づくように延びる形状に設計した場合であっても、スペーサ本体とバンパとが干渉し難いことから、バンパの意匠設計の自由度を高くすることができる。
【0014】
ここで、バンパに衝突体が衝突することにより、スペーサの規制体は、衝突体によって潰されつつ衝突体に係合する。これにより、この車両用バンパ構造では、傾斜面に衝突体が衝突し、スペーサ本体を含めスペーサに車体の上方に向かう荷重が作用しても、衝突体に係合した規制体は、スペーサ本体が荷重によって車体の上方に移動することを規制する。こうして、この車両用バンパ構造では、バンパに対し、スペーサよりも車体の上方となる位置に機能部品を設けていても、スペーサ本体と機能部品とが衝突し難く、スペーサが機能部品を破損することを好適に防止できる。これにより、この車両用バンパ構造では、スペーサと機能部品との衝突を防止するに当たって、スペーサと機能部品とを車体の上方に過度に大きく離隔させる必要がなく、バンパにおける機能部品の位置の自由度を高くできる。
【0015】
また、衝突体に係合した規制体によって、スペーサ本体の車体の上方への移動が規制されることにより、この車両用バンパ構造では、バンパに衝突した衝突体が車体の内部に過度に進入し難くなる。このため、この車両用バンパ構造では、バンパリンフォース等に機能部品が衝突することによって機能部品が破損することについても好適に防止できる。
【0016】
したがって、本発明の車両用バンパ構造によれば、バンパの意匠設計の自由度を高くしつつ、バンパに衝突した衝突体が車体の内部に過度に進入することを抑制できる。
【0017】
規制体は、下面と一体をなし、下面から車体の下方に向かって板状に延びる複数のリブであることが好ましい。
【0018】
この場合には、規制体の構成を簡素化できることから、規制体を含め、スペーサの形成を容易化できる。また、規制体が複数のリブとなることにより、各リブは、衝突体によって潰され易くなるとともに、衝突体に係合し易くなる。このため、各リブは、スペーサ本体が車体の上方に移動することを好適に規制できる。これにより、この車両用バンパ構造では、バンパに機能部品を設ける際の位置の自由度をより高くできるとともに、バンパに衝突した衝突体が車体の内部に過度に進入することを好適に抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用バンパ構造によれば、バンパの意匠設計の自由度を高くしつつ、バンパに衝突した衝突体が車体の内部に過度に進入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例の車両用バンパ構造に係り、バンパリンフォース及びスペーサを示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施例の車両用バンパ構造に係り、
図1のA-A断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施例の車両用バンパ構造に係り、スペーサを示す拡大正面図である。
【
図4】
図4は、実施例の車両用バンパ構造に係り、スペーサに衝突体が衝突した際における
図2と同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1及び
図2に示す実施例の車両用バンパ構造1(以下、車両用バンパ構造1という。)は、車両100に採用されている。車両100は、車体100aを有している。車体100aは、バンパリンフォース3と、リヤバンパ5と、ブレーキランプ装置7とを有している。なお、説明を容易にするため、
図1では、リヤバンパ5及びブレーキランプ装置7の図示を省略している。後述する
図3についても同様である。また、詳細な説明及び図示を省略するものの、車体100aは、車両100の走行に必要な公知の動力装置や制御装置の他、フロントバンパ等を有している。
【0023】
本実施例では、
図1に示す実線矢印によって車体100aの上下方向を規定している他、車体100aの幅方向である左右方向を規定している。また、
図2では、
図1に対応して車体100aの上下方向を規定している他、車体100aの前後方向を規定している。そして、
図3以降では、
図1及び
図2に対応して車体100aの上下方向、左右方向及び前後方向を規定している。これらの上下方向、左右方向及び前後方向は互いに直交する関係にある。ここで、車体100aの後方は、本発明における「前後方向の一方」に相当しており、車体100aの前方は、本発明における「前後方向の他方」に相当している。
【0024】
車両用バンパ構造1は、車体100a、ひいては車両100の後部に位置している。車両用バンパ構造1は、
図1に示すバンパリンフォース3と、第1スペーサ9aと、第2スペーサ9bと、
図2に示すリヤバンパ5と、ブレーキランプ装置7とを備えている。第1、2スペーサ9a、9bは、本発明における「スペーサ」の一例である。また、リヤバンパ5は、本発明における「バンパ」の一例である。そして、ブレーキランプ装置7は、本発明における「機能部品」の一例である。
【0025】
バンパリンフォース3はアルミニウム合金製である。バンパリンフォース3は、図示しないクラッシュボックスを介して車体100aの後方下部に固定されており、
図1に示すように、車体100aの幅方向、すなわち左右方向に延びている。また、
図2に示すように、バンパリンフォース3の右側には、取付孔3aが形成されている。なお、図示を省略するものの、バンパリンフォース3の左側についても取付孔が形成されている。
【0026】
リヤバンパ5は樹脂製である。リヤバンパ5は車体100aの後端下部に設けられており、車両100のボデー(図示略)の一部を構成している。
【0027】
リヤバンパ5は、バンパリンフォース3に対して車体100aの後方に離隔している。リヤバンパ5は、車体100aの幅方向に延びており、バンパリンフォース3を後方から覆っている。リヤバンパ5は、第1壁部5aと、第2壁部5bと、第3壁部5cとを有している。第1壁部5aは、リヤバンパ5の後端に位置しており、車体100aの上下方向に延びている。第2壁部5bは、第1壁部5aの下端と接続しており、車体100aの下方に向かって延びている。より具体的には、第2壁部5bは、第1壁部5aから車体100aの下方に離隔するにつれて、徐々に車体100aの前方に向かうように傾斜している。第3壁部5cは、第2壁部5bの下端と接続しており、バンパリンフォース3に向かって、車体100aの前方に延びている。これらの第2壁部5b及び第3壁部5cにより、リヤバンパ5は、下部がバンパリンフォース3に近づくように延びる形状をなしている。
【0028】
図1に示すように、第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bは、車体100aの幅方向に離隔して配置されている。より具体的には、第1スペーサ9aは、バンパリンフォース3の後部右下に固定されている。一方、第1スペーサ9aは、バンパリンフォース3の後部左下に固定されている。こうして、第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bは、車体100aにおいて、バンパリンフォース3の後方かつリヤバンパ5の前方となる位置に配置されている。つまり、第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bは、バンパリンフォース3とリヤバンパ5との間となる位置に配置されている(
図2参照)。なお、バンパリンフォース3に対する第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bの固定については後述する。
【0029】
図1に示す第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bは、ポリプロピレン等の硬質の樹脂によって形成されている。これにより、第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bは、バンパリンフォース3よりも剛性が高くなっている。第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bは、それぞれスペーサ本体91と、複数のリブ93とを有している。ここで、第1スペーサ9aと第2スペーサ9bとは、左右対称の形状である。以下、第1スペーサ9aを基に構成を説明する。
【0030】
図2に示すように、スペーサ本体91は、バンパリンフォース3側からリヤバンパ5側に向かって突出する略矩形の箱状に形成されている。また、スペーサ本体91は、前方側、すなわちバンパリンフォース3側が開口している。
図3に示すように、スペーサ本体91には、上面91a、下面91b、傾斜面91c、先端面91d、第1側面91e及び第2側面91fが形成されている他、固定クリップ91gが形成されている。
【0031】
図2に示すように、上面91aは、スペーサ本体91の上端に位置している。上面91aは、車体100aの上方に面しつつ、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かって略水平に延びている。下面91bは、スペーサ本体91の下端に位置している。下面91bは、車体100aの下方に面しているとともに、リヤバンパ5の第3壁部5cと対向している。下面91bは、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かって延びている。ここで、下面91bは、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かうにつれて、車体100aの上方にやや上り傾斜となるように形成されている。なお、上面91aと同様、下面91bについても、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かって略水平に延びる形状であっても良い。
【0032】
傾斜面91cは、上面91a及び下面91bよりも車体100aの後方に位置している。傾斜面91cは、下面91bの後端、すなわち、下面91bにおけるリヤバンパ5側と接続しており、リヤバンパ5の第2壁部5bと対向しつつ、下面91bからリヤバンパ5に向かって延びている。ここで、傾斜面91cは、下面91bからリヤバンパ5に向かうにつれて、車体100aの上方に向かって下面91bよりも大きく傾斜している。
【0033】
先端面91dは、傾斜面91cの上部に位置しており、リヤバンパ5の第1壁部5aと対向している。先端面91dは、スペーサ本体91において最も後方に位置している。先端面91dは、傾斜面91cの上端と接続しつつ、車体100aの上方に向かって第1壁部5aと略平行に延びており、上面91aと接続している。
【0034】
図3に示すように、第1側面91eは、スペーサ本体91の右端であって、上面91aと下面91bとの間に位置している。第1側面91eは、車体100aの上下方向に延びるとともに、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かって延びている。より詳細には、第1側面91eは、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かって延びるにつれて、車体100aの左方に傾斜している。こうして、第1側面91eは、上面91a、下面91b、傾斜面91c及び先端面91dと接続している。また、第1側面91eには、位置決め部910が一体で形成されている。位置決め部910は、第1側面91eの後端に位置しており、第1側面91eよりも車体100aの右方に突出しつつ、バンパリンフォース3に向かって延びている。
【0035】
第2側面91fは、スペーサ本体91の左端であって、上面91aと下面91bとの間に位置している。第1側面91eは、車体100aの上下方向に延びるとともに、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かって延びている。より詳細には、第2側面91fは、バンパリンフォース3からリヤバンパ5に向かって延びるにつれて、車体100aの右方に傾斜している。こうして、第2側面91fは、第1側面91eとは反対側で上面91a、下面91b、傾斜面91c及び先端面91dと接続している。
【0036】
固定クリップ91gは、傾斜面91cと先端面91dとに跨って配置されている。より具体的には、スペーサ本体91には、傾斜面91cと先端面91dとに跨りつつ、バンパリンフォース3に向かって凹む凹部900が形成されており、固定クリップ91gは、この凹部900内に一体に設けられている。固定クリップ91gは、凹部900からバンパリンフォース3に向かって延びている。固定クリップ91gは、弾性変形可能に形成されている。なお、固定クリップ91gの形状や個数は適宜設計可能である。
【0037】
また、
図2に示すように、スペーサ本体91の内部には、第1補強リブ911と第2補強リブ912とが形成されている。第1補強リブ911は、車体100aの上下方向に板状に延びており、上面91aと下面91bとに接続している。第2補強リブ912は、第1補強リブ911と一体をなしつつ車体100aの左右方向に板状に延びており、第1側面91eと第2側面91fとに接続している。なお、第1補強リブ911及び第2補強リブ912の形状や個数は、スペーサ本体91の形状の他、スペーサ本体91に要求される剛性に応じて適宜設計可能である。
【0038】
スペーサ本体91をバンパリンフォース3に固定するに当たっては、
図3に示す位置決め部910をバンパリンフォース3の左端に当接させることにより、バンパリンフォース3に対するスペーサ本体91の位置決めを行う。そして、この状態で固定クリップ91gを弾性変形させつつ、バンパリンフォース3の取付孔3aに挿通する。この後、
図2に示すように、弾性変形した固定クリップ91gが初期の形状に復元し、固定クリップ91gがバンパリンフォース3における取付孔3aの周縁部分に係合することにより、取付孔3aからの固定クリップ91gの抜け止めが行われる。こうして、スペーサ本体91、ひいては、第1スペーサ9aはバンパリンフォース3に固定されている。なお、固定クリップ91gに換えて、ボルト等によってスペーサ本体91をバンパリンフォース3に固定しても良い。
【0039】
各リブ93は、スペーサ本体91の下面91bに一体に形成されている。各リブ93は同一形状に形成されている。各リブ93は、板状に形成されており、下面91bから車体100aの下方に向かって延びている。つまり、各リブ93は、スペーサ本体91から車体100aの下方に離隔するように延びている。また、各リブ93は、車体100aの前後方向に延びている。より具体的には、各リブ93は、下面91bのほぼ後端となる位置から、下面91bの前端、つまり、下面91bと傾斜面91cとが接続する個所まで延びている。さらに、
図3に示すように、各リブ93の下端は、車体100aの左右方向に延びる連結部93aと接続されている。これにより、各リブ93は互いに連結されており、一体化されている。このように各リブ93は板状をなしていることから、各リブ93自体の剛性は、スペーサ本体91に比べて低くなっている。なお、リブ93の個数は適宜設計可能である。また、リブ93が車体100aの下方に向かって延びる長さの他、車体100aの前後方向に延びる長さは、スペーサ本体91及びリヤバンパ5の形状等に応じて適宜設計可能である。
【0040】
図2に示すように、ブレーキランプ装置7はリヤバンパ5に設けられている。より具体的には、ブレーキランプ装置7は、リヤバンパ5において、第1、2スペーサ9a、9bよりも車体100aの上方となる位置に設けられている。
【0041】
ブレーキランプ装置7は、装置本体7aと、ランプカバー7bとを有している。装置本体7aは、バンパリンフォース3とリヤバンパ5との間であって、第1、2スペーサ9a、9bの上方となる位置に配置されている。装置本体7aはLED等の発光部を有している。装置本体7aは、車体100aに設けられた制御装置(図示略)と電気的に接続されており、車両100の操作に応じて発光部を発光させる。ランプカバー7bは、装置本体7aを車体100aの後方から覆っている。なお、
図2及び
図4では、説明を容易にするため、ブレーキランプ装置7の形状を簡略化して図示している。
【0042】
このように、ブレーキランプ装置7がリヤバンパ5に設けられることにより、この車両用バンパ構造1では、ブレーキランプ装置7、特に装置本体7aは、第1、2スペーサ9a、9bの上方において、スペーサ本体91の上面91aに接近した状態で配置されている。
【0043】
以上のように構成されたこの車両用バンパ構造1では、
図4に示すように、リヤバンパ5の右下部に対して車体100aの後方から衝突体200が衝突すれば、衝突体200は、リヤバンパ5の第1壁部5a及び第2壁部5bを押し潰しつつ、車体100aの前方に向かって移動する。これにより、衝突体200は、第1壁部5a及び第2壁部5b、すなわちリヤバンパ5を介して第1スペーサ9aや第2スペーサ9bと衝突する。ここで、衝突体200としては、例えば、路上設置物の他、車両100以外の車両等が挙げられる。なお、
図4では、説明を容易にするため、衝突体200によって押し潰されたリヤバンパ5の一部を仮想線で示している。また、この車両用バンパ構造1では、衝突体200によってリヤバンパ5の一部又は全部が破壊されることにより、衝突体200と第1、2スペーサ9a、9bとが直接的に衝突する場合もあり得る。
【0044】
そして、リヤバンパ5に衝突体200が衝突した際の衝突エネルギーによって、第スペーサ9aや第2スペーサ9bは、バンパリンフォース3に向けて押し潰されるとともに、バンパリンフォース3も押し潰される。そして、この衝突エネルギーは、クラッシュボックスに伝達されてクラッシュボックスに吸収される。
【0045】
また、この車両用バンパ構造1では、第1、2スペーサ9a、9bのスペーサ本体91には、傾斜面91cが形成されている。これにより、この車両用バンパ構造1では、リヤバンパ5は、第2壁部5b及び第3壁部5cによって、下部がバンパリンフォース3に近づくように延びる形状をなしているものの、スペーサ本体91とリヤバンパ5との干渉が防止されている。
【0046】
これにより、この車両用バンパ構造1では、スペーサ本体91とリヤバンパ5との干渉を防止するに当たって、リヤバンパ5の意匠設計の自由度が制限され難くなっている。
【0047】
さらに、この車両用バンパ構造1では、ブレーキランプ装置7がリヤバンパ5に設けられることにより、ブレーキランプ装置7が第1、2スペーサ9a、9bの上方に接近した状態で配置されているものの、第1スペーサ9aや第2スペーサ9bは、ブレーキランプ装置7を破損させ難くなっている。以下、この作用について、衝突体200が第1スペーサ9aに衝突した場合を例に説明する。
【0048】
車体100aの後方から衝突体200がリヤバンパ5、ひいては第1スペーサ9aと衝突した際には、衝突体200は、スペーサ本体91の傾斜面91cと衝突することになる。ここで、衝突体200は、傾斜面91cと衝突しつつ、バンパリンフォース3に向かって車体100aの後方から前方に移動するのに対し、傾斜面91cは、リヤバンパ5に向かうにつれて車体100aの上方に向かって傾斜する形状である。このため、衝突体200が傾斜面91cに衝突することにより、スペーサ本体91を含め、第1スペーサ9aには、
図4の黒色矢印で示すように、車体100aの上方に向かう荷重Fが作用する。このため、第1スペーサ9aは、衝突体200によって押し潰されつつ、荷重Fによって、車体100aの上方に移動しようとする。つまり、第1スペーサ9aには、バンパリンフォース3に対する車体100aの上方への滑りが生じる。
【0049】
この点、第1スペーサ9aは、複数のリブ93を有しているため、衝突体200が第1スペーサ9aと衝突することによって、衝突体200は、傾斜面91cだけでなく、各リブ93にも衝突する。特に、この車両用バンパ構造1では、各リブ93が下面91bと傾斜面91cとが接続している個所まで延びているため、各リブ93に対して衝突体200は、傾斜面91cとほぼ同時、又は、傾斜面91cに衝突するよりも先に衝突する。このため、衝突体200が各リブ93に衝突することにより、各リブ93は、衝突体200によって潰されつつ衝突体200に係合する。ここで、各リブ93は板状に形成されており、剛性が低くなっている。このため、各リブ93は、衝突体200によって潰され易く、衝突体200を自己の内部に深く進入させた状態で衝突体200と係合する。
【0050】
これにより、この車両用バンパ構造1では、衝突体200が傾斜面91cに衝突し、第1スペーサ9aに上記の荷重Fが作用しても、衝突体200に係合した各リブ93は、荷重Fによって、スペーサ本体91が車体100aの上方に移動することを規制する。こうして、この車両用バンパ構造1では、荷重Fによって、
図4の白色矢印で示すように、第1スペーサ9aが僅かに車体100aの上方に移動するものの、第1スペーサ9aが車体100aの上方に大きく移動することはない。こうして、この車両用バンパ構造1では、スペーサ本体91がブレーキランプ装置7、より具体的には、装置本体7aに衝突することが防止されている。衝突体200が第2スペーサ9bに衝突する場合も同様である。
【0051】
このように、この車両用バンパ構造1では、第1、2スペーサ9a、9bとブレーキランプ装置7との衝突を防止するに当たって、第1、2スペーサ9a、9bに対してブレーキランプ装置7を車体100a上方に過度に大きく離隔させる必要がない。この結果、この車両用バンパ構造1では、リヤバンパ5におけるブレーキランプ装置7の位置の自由度を高くすることが可能となっている。
【0052】
ところで、このような荷重Fによって第1、2スペーサ9a、9bが車体100aの上方に移動することを抑制するに当たっては、各リブ93に依らずに、スペーサ本体91を車体の上下方向により大型化させてスペーサ本体91の剛性をより大きくすることも考えられる。しかし、上記のように、ブレーキランプ装置7が第1、2スペーサ9a、9bの上方に接近した状態で配置されれば、スペーサ本体91を車体の上下方向に大型化させるためのスペースを確保することが困難となる。しかし、このような場合であっても、この車両用バンパ構造1では、荷重Fによって第1、2スペーサ9a、9bが車体100aの上方に移動することを抑制することができる。
【0053】
また、衝突体200に係合した各リブ93によって、スペーサ本体91が車体100aの上方に移動することが規制されることにより、この車両用バンパ構造では、リヤバンパ5に衝突した衝突体200が車体100aの内部に過度に進入し難くなっている。これにより、この車両用バンパ構造では、リヤバンパ5に衝突体200が衝突した際にブレーキランプ装置7がバンパリンフォース3の他、ボデーにおけるリヤバンパ5以外の個所に衝突し難くなっている。この点においても、この車両用バンパ構造では、ブレーキランプ装置7が破損し難くなっている。
【0054】
したがって、実施例の車両用バンパ構造1によれば、リヤバンパ5の意匠設計の自由度を高くしつつ、リヤバンパ5に衝突した衝突体200が車体100aの内部に過度に進入することを抑制できる。
【0055】
特に、この車両用バンパ構造1では、本発明における「規制体」として複数のリブ93を採用しているため、規制体の構成を簡素化することが可能であり、規制体を含め、第1、2スペーサ9a、9bの形成を容易化することが可能となっている。また、規制体が各リブ93であることから、各リブ93は、衝突体200によって潰され易くなっているとともに、衝突体200に係合し易くなる。また、各リブ93の板厚を調整することにより、各リブ93の剛性を調整し易くなっている。
【0056】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0057】
例えば、実施例の車両用バンパ構造1は、車体100aの後部に位置しているが、これに限らず、車体100aの前部に設けられても良い。この場合、車体100aに設けられたフロントバンパが本発明における「バンパ」に相当する。
【0058】
また、第1、2スペーサ9a、9bは、スペーサ本体91及び各リブ93に加えて、他の構成を有していても良い。
【0059】
さらに、第1スペーサ9aと第2スペーサ9bとは、異なる形状であっても良い。
【0060】
また、実施例の車両用バンパ構造1では、本発明における「規制体」として複数のリブ93を採用しているが、これに限らず、規制体として他の構成を採用しても良い。
【0061】
さらに、実施例の車両用バンパ構造1では、本発明における「機能部品」としてブレーキランプ装置7を採用しているが、これに限らず、例えばカメラ等を機能部品として採用しても良い。
【0062】
また、実施例の車両用バンパ構造1では、第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bを樹脂製としているが、これに限らず、第1スペーサ9a及び第2スペーサ9bを金属等で形成しても良い。また、スペーサ本体91を金属製とし、各リブ93を樹脂製としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は乗用自動車や産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…車両用バンパ構造
3…バンパリンフォース
5…リヤバンパ(バンパ)
7…ブレーキランプ装置(機能部品)
9a…第1スペーサ(スペーサ)
9b…第2スペーサ(スペーサ)
91…スペーサ本体
91b…下面
91c…傾斜面
93…リブ(規制体)
100a…車体
200…衝突体