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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093824
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】食品中の気泡保持安定剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20220617BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220617BHJP
A23L 29/262 20160101ALI20220617BHJP
C12P 19/04 20060101ALI20220617BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20220617BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20220617BHJP
A23C 9/152 20060101ALN20220617BHJP
A23F 3/16 20060101ALN20220617BHJP
A23F 5/24 20060101ALN20220617BHJP
A23L 27/00 20160101ALN20220617BHJP
A23L 27/20 20160101ALN20220617BHJP
【ＦＩ】
A23L29/00
A23L5/00 N
A23L29/262
C12P19/04 C
A23L2/00 S
A23L2/52
A23C9/152
A23F3/16
A23F5/24
A23L27/00 D
A23L27/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2020206519
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 颯太
【テーマコード（参考）】
4B001
4B027
4B035
4B041
4B047
4B064
4B117
【Ｆターム（参考）】
4B001AC03
4B001BC01
4B001EC99
4B027FB13
4B027FB24
4B027FC10
4B027FK04
4B027FP85
4B027FP90
4B027FQ19
4B027FQ20
4B035LC16
4B035LG50
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE04
4B041LH11
4B041LK42
4B041LP25
4B047LB07
4B047LB09
4B047LE01
4B047LG09
4B047LG23
4B047LG29
4B047LG60
4B047LP02
4B047LP20
4B064AF12
4B064CA02
4B064CC03
4B064CD19
4B064DA10
4B117LC08
4B117LK13
4B117LK23
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】起泡剤又は気泡安定剤として、飲料、乳製品、ゼリー類等の飲食品に直接添加又は製造過程において添加した後起泡させる、又は起泡させた飲食品に添加して混ぜ合わせるなどの工程により、飲食品の気泡を安定化する方法及びその起泡剤、この起泡剤により気泡された食品を提供することを目的とする。
【解決手段】カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、起泡効果及び気泡安定効果が高く、様々な食品の起泡、気泡安定に効果がある。
【選択図】なし
【解決手段】カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、起泡効果及び気泡安定効果が高く、様々な食品の起泡、気泡安定に効果がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末を添加することを特徴とする飲食品の起泡化及び気泡安定化方法。
【請求項2】
カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を添加することを特徴とする飲食品の起泡及び気泡安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバクテリアセルロース複合化粉末を使用した、食品中の気泡保持安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食物が多様化し、気泡を含む商品が増えている。例えばコーヒー類ではカプチーノ、ミルクシェイクなどのシェイク飲料、抹茶ムースなどのムース、飲料上層や内部にある泡やホイップ状ミルク、ホイップクリームなどがある。従来の飲料やデザートに泡を加えることによって食感が多様化し様々な商品が開発されている。しかし、共通の問題として泡は経時的に抜けてしまったり、合一して泡が大きくなり食感が悪くなってしまう。起泡させるのには技術が必要なため、容易には気泡が安定しないなどの問題がある。このため消費期限のごく短い商品になったり、ゲル化剤で泡を固定した商品になり食感が限られてしまう。
【0003】
これらの問題を解決するためにいくつかの技術が用いられてきた。例えば、特許文献１に数種類の乳化剤を組み合わせる方法が記載されている。特許文献２には乳ペプチドと水溶性セルロースを用いて振とうする方法が記載されている。特許文献３には醗酵セルロースを使用した乳成分入り飲料の気泡保持機能強化方法が記載されている。特許文献４には発酵セルロースを使用した気泡を安定的に保持した乳成分入り起泡性抹茶飲料が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献１には記載された乳化剤を使用したものは緻密な気泡を飲料中で長期にわたり安定的に保持される効果は十分なものではなかった。また、乳化剤を使用した場合、高い温度や低ｐＨでの起泡や気泡安定に劣る問題がある。特許文献２に記載された方法も同様に起泡や気泡安定に劣る問題がある。特許文献３、４に記載された発酵セルロースは水や塩水、低ｐＨ溶液、高糖度溶液への分散性が充分なものではなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平１０－２９５３３９
【特許文献2】特開２０００－１５７２３２
【特許文献3】特開２００９－２７８９０５
【特許文献4】特開２０１０－４８２７
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は起泡剤又は気泡安定剤として、コーヒー、紅茶、ココア、抹茶などの飲料、ホイップクリーム、ヨーグルトなどの乳製品、ゼリー類などの飲食品に直接添加又は製造過程において添加した後起泡させる、又は起泡させた飲食品に添加して混ぜ合わせるなどの工程により、飲食品の気泡を安定化する方法、及びその起泡剤、この起泡剤により気泡された食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、創意研究を重ねたところ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、起泡効果及び気泡安定効果が高く、塩分濃度の高い液体や低ｐＨの液体であっても簡単な撹拌で溶解することから、様々な食品の起泡、気泡安定に効果があることを見出した。
【0008】
本発明で重要なことは、発酵セルロースと高分子物質とが複合化した発酵セルロース複合化粉末を得る方法として、発酵セルロース培養時に培養液に特定の高分子物質を添加して培養し、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶剤を除去して乾燥する方法、及び発酵時に特定の高分子物質を添加して培養し、この培養液にさらに特定の高分子物質を添加し乾燥する方法のいずれかの方法により得た発酵セルロース複合化粉末は、水や塩水への分散性が従来の発酵セルロース粉末に比べ著しく向上したことである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末によれば、水または塩濃度が高い溶液においても簡単な撹拌でバクテリアセルロースを液体中に均一に分散させることができ、さらに耐熱性、耐酸性を有しているため、様々な飲食品の起泡が可能であり、さらに長期間にわたり飲食品中の起泡安定に効果がある。ホモジナイザーなどの摩砕機械が無くても容易に様々の種類の飲食品に応用でき、気泡を安定的に含む付加価値のある商品の開発ができる。更には安全性の高い素材であるため、液体食品以外にも、化粧品、医薬品、医薬部外品、化成品などの分野に応用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法について記載する。本発明で使用されるバクテリアセルロース複合化粉末は、特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５、特願２０２０－０２１１８１に記載されたバクテリアセルロース複合化粉末である。
【0011】
具体的な製造方法は、特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５、特願２０２０－０２１１８１に記載された方法による。特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５に示された方法では、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法である。特願２０２０－０２１１８１に示された方法では、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法である。
【0012】
特に、特願２０２０－０２１１８１に記載された、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質が添加され乾燥される製造方法で製造されたバクテリアセルロース複合化粉末は、気泡安定効果が高く、さらに塩分濃度の高い液体であっても十分効果を発揮するバクテリアセルロース複合化粉末である。
【0013】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は、水や飲食品に加え手撹拌などの簡単な撹拌で分子がほどけ、バクテリアセルロース分子が均一に溶液中に分散することにより、見かけ上の網目構造をとる。この網目構造はバクテリアセルロース分子どおしの分子間力、水素結合などにより安定しており気泡を均一に分散させることができる。増粘多糖類のような高分子構造粘性とは異なるため粘性はなくニュートン流体に近い液性となる。このためすっきりとした食感の気泡含有食品となる。
【0014】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は、セルロース分子であるため、耐熱性、耐酸性、耐塩性、耐アルカリ性などに優れている。そのため様々な飲食品に使用することができる他、長期安定性にも優れたものとなる。例えば従来の乳化剤などを使用したものは、耐酸性や耐塩性に劣るため、賞味期限が短いものとなっていた。しかし本発明のバクテリアセルロース複合化粉末を使用すれば気泡が安定するため賞味期限を延ばすことができる。よって食品の廃棄ロス問題、更には労働条件の改善にも役立つことができる。
【0015】
本発明のバクテリアセルロース粉末は、水や塩溶液に添加して撹拌することによりセルロース分子がナノサイズレベルで分散することができる。その理由はバクテリアセルロースの培養時にカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルセルロースの少なくとも１以上のセルロース誘導体を添加することにある。バクテリアセルロースは低分子物質からバクテリアセルロース産生菌が発酵によりセルロース分子を作ることにより産生されるが、このセルロース分子伸長過程において前記セルロース誘導体が取り込まれて伸長していく。よって産生されたバクテリアセルロースは複合化物となり、粉末化する時も複合物として乾燥される。このため乾燥しても、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシプロピル基、エチル基などの水に親和性を有する官能基を有しているために水や塩溶液に添加して撹拌することで分子が解け、乾燥前のナノレベルのサイズに戻って効果を発揮するのである。これに対し、セルロース誘導体を添加せずバクテリアセルロース単独で粉末化した場合、又は培養時でなく培養終了後にセルロース誘導体を加えた場合は分子内部には親水性の官能基を有していないため、乾燥時においてはセルロース分子が凝集乾燥し、強固な水素結合が生じるため例えばホモジナイザーなどの機械的分散を行っても完全にナノレベルの分子まで解けることができない。このため、気泡安定効果に劣るのである。
【0016】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末ではカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末であるが、さらに好ましいものとして、ヒドロキシプロピルセルロースからなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させて製造されたバクテリアセルロース複合化粉末が塩類溶液への分散性が良いことからより好ましい。水分の除去方法は特に限定されず、熱風乾燥、真空凍結乾燥、真空乾燥、ドラムドライ、噴霧乾燥、有機溶剤を添加して分離等があげられる。
【0017】
本発明のカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースを含有する水に分散させることにより溶解し、復元バクテリアセルロース分散液を調整しても良く、さらにこの復元バクテリアセルロース分散液を乾燥して粉末化しても構わない。この場合乾燥方法は特に限定されるものではなく、熱風乾燥、真空凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、ドラムドライなどがある。
【0018】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は、塩度の高い溶液、低ｐＨの溶液、高ｐＨの溶液、高糖度の溶液など様々な溶液に溶解し効果を発現することができる。当然ではあるが本発明のバクテリアナノセルロース複合化粉末の粉末化前の液体、つまり液体状バクテリアセルロース複合化物も同様に、塩度の高い溶液、低ｐＨの溶液、高ｐＨの溶液、高糖度の溶液など様々な溶液に溶解し効果を発現することができる。
【0019】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末の飲食品への添加量は、目的とする気泡安定化効果が得られれば良く、特に限定されるものではない。通常はバクテリアセルロースとして０．０３重量％～５．０重量％が好ましい。
【0020】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は飲食品を気泡させる際、一般的に使用されている起泡剤を併用しても構わない。本発明のバクテリアセルロース複合化粉末の品質はナノセルロースであるため電気的に中性の分子となる。そのため飲食品中に分散した場合、イオン基を有する食品と併用しても反応することなく効果を発揮する。起泡剤としては、乳化剤、タンパク、ペプチド、増粘剤などが挙げられる。起泡剤を併用することにより、より容易に気泡させることができ、且つ気泡は長期間安定したものになる。
【0021】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末が使用できる飲食品としては、気泡を含む飲食品であれば特に限定されるものではないが、例えばコーヒー類ではカプチーノ、ミルクシェイクなどのシェイク飲料、抹茶ムースなどのムース、チョコレートムース、ヨーグルトムースやホイップクリームなどの乳製品、調味料を気泡した泡調味料などがある。泡調味料は塩分が高く、乳化剤や増粘剤、タンパクなどの通常の起泡剤では溶解性や安定性が悪く気泡安定が難しかった。しかし本発明の気泡安定剤は高塩分に容易に溶解し安定していることから醤油などの高塩分調味料に添加して起泡させることにより長期にわたり気泡が安定した気泡調味料を作製することができる。醤油などの調味料を気泡させることにより、口中に長くとどまり、増粘剤などを使用した時のような糊状感が無いため、すっきりとしており、しかも少量の使用で充分塩味を感じる調味料になる。これは塩分を控えるのに有効であり健康上好ましいものとなる。この商品は醤油に限らず、ソース、焼き肉のたれ、そばつゆなど様々な調味料に応用できる。さらに炭酸入りゼリーでは、重曹や炭酸塩と酸を反応させて発生する炭酸ガスを含有するゼリーの泡の安定化にも有効である。炭酸ガスは経時的にゼリーから抜けてしまうがこの抜けを遅くすることができる。
【0022】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は飲食品に以外にも、医薬品、化粧品、化成品など様々な分野に応用できる。ムース状化粧品、用時調整のムース状石鹸、洗剤などに応用できる。天然物由来なので安全性が高く、乳化剤フリーの製品に応用できる。
【実施例0023】
以下、本開示の実施例を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。また、特に指定がない限り％は重量％を示している。
本実施例で使用した物質を示す。
バクテリアセルロース１：特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５の実施例８ ＣＭＣ－１使用のもの
バクテリアセルロース２：特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５の実施例８ ＨＥＣ－２使用のもの
バクテリアセルロース３：特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５の実施例８ ＨＰＣ－２使用のもの
バクテリアセルロース４：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてＨＰＣを使用したもの
バクテリアセルロース５：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてＨＥＣを使用したもの
バクテリアセルロース６：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてキサンタンガムを使用したもの
バクテリアセルロース７：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてアルギン酸Ｎａを使用したもの
バクテリアセルロース８：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－２ 高分子物質としてキサンタンガムを使用したもの
バクテリアセルロース９：サンアーティスト（登録商標）ＰＮ
乳化剤：ソルビタンモノ飽和脂肪酸エステル
キサンタンガム：イナゲルＶ－１０Ｔ（伊那食品工業製）
本実施例で使用した物質を示す。
バクテリアセルロース１：特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５の実施例８ ＣＭＣ－１使用のもの
バクテリアセルロース２：特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５の実施例８ ＨＥＣ－２使用のもの
バクテリアセルロース３：特許国際公開番号ＷＯ２０１８／０３８０５５の実施例８ ＨＰＣ－２使用のもの
バクテリアセルロース４：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてＨＰＣを使用したもの
バクテリアセルロース５：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてＨＥＣを使用したもの
バクテリアセルロース６：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてキサンタンガムを使用したもの
バクテリアセルロース７：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－１ 高分子物質としてアルギン酸Ｎａを使用したもの
バクテリアセルロース８：特願２０２０－０２１１８１の試験例１－２ 高分子物質としてキサンタンガムを使用したもの
バクテリアセルロース９：サンアーティスト（登録商標）ＰＮ
乳化剤：ソルビタンモノ飽和脂肪酸エステル
キサンタンガム：イナゲルＶ－１０Ｔ（伊那食品工業製）
【0024】
<実験例１> 泡調味料の作製
表１及び表２に示した配合にて泡調味料を作製した（作製量５００ｇ）。具体的には水に各種素材を加えハンドミキサーを使用し、２５℃で５分間撹拌混合した。２５℃にて７日保管後、泡の状態を比較した。また、泡調味料の味を比較した。評価は下記の指標で行い表３に示した。
泡の状態
◎：きめ細かい泡状態であり作製時と同様な状態である
〇：◎より劣るがきめの細かいあわである
△：一部泡の合一が確認される
×：泡が合一して大きな泡状となり一部液化している
味の評価
◎：糊状感がなくすっきりしているが塩味又は素材の味を充分感じる
〇：◎の状態より劣るが塩味又は素材の味を感じる
△：過度の塩味を感じる又は素材の味が直ぐに消える
×：糊状感を感じ醤油の風味が劣る又は素材の味が抑えられる
表１及び表２に示した配合にて泡調味料を作製した（作製量５００ｇ）。具体的には水に各種素材を加えハンドミキサーを使用し、２５℃で５分間撹拌混合した。２５℃にて７日保管後、泡の状態を比較した。また、泡調味料の味を比較した。評価は下記の指標で行い表３に示した。
泡の状態
◎：きめ細かい泡状態であり作製時と同様な状態である
〇：◎より劣るがきめの細かいあわである
△：一部泡の合一が確認される
×：泡が合一して大きな泡状となり一部液化している
味の評価
◎：糊状感がなくすっきりしているが塩味又は素材の味を充分感じる
〇：◎の状態より劣るが塩味又は素材の味を感じる
△：過度の塩味を感じる又は素材の味が直ぐに消える
×：糊状感を感じ醤油の風味が劣る又は素材の味が抑えられる
【0025】
表１
【0026】
表２
【0027】
表３
【0028】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、気泡安定効果が高く、塩分濃度の高い液体や低ｐＨの液体であっても簡単な撹拌で溶解することから、液体状食品の起泡及び起泡安定に優れた効果があった。
【0029】
<実験例２> コーヒー飲料
市販のコーヒー飲料（糖度１５）に表４に示した起泡剤を０．２ｇ加え、ハンドミキサーにて撹拌し起泡させた。起泡させてない同じコーヒー飲料と混ぜ（１０ｖ／ｖ％）容器に充填し、９０℃にて６０分加熱処理した。１０℃に７日間放置して、泡の状態を調べ、結果を表４に記載した。
市販のコーヒー飲料（糖度１５）に表４に示した起泡剤を０．２ｇ加え、ハンドミキサーにて撹拌し起泡させた。起泡させてない同じコーヒー飲料と混ぜ（１０ｖ／ｖ％）容器に充填し、９０℃にて６０分加熱処理した。１０℃に７日間放置して、泡の状態を調べ、結果を表４に記載した。
【0030】
表４
【0031】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、気泡安定効果が高く、コーヒー飲料に添加し、簡単な撹拌で溶解することから、加熱に対し安定な気泡を作製するのに優れた効果があった。
【0032】
<実験例３> 抹茶ムース
市販の抹茶を、糖度４０の砂糖溶液に３％添加した。これに、表５に示した気泡安定剤を０．３％と大豆ペプチドを０．２％添加して、ハンドミキサーにて３分間撹拌しムース状とした。これを５℃にて１カ月間保管し泡の状態と味を確認し結果を表５に記載した。
市販の抹茶を、糖度４０の砂糖溶液に３％添加した。これに、表５に示した気泡安定剤を０．３％と大豆ペプチドを０．２％添加して、ハンドミキサーにて３分間撹拌しムース状とした。これを５℃にて１カ月間保管し泡の状態と味を確認し結果を表５に記載した。
【0033】
表５
【0034】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、気泡安定効果が高く、糖濃度の高い液体であっても簡単な撹拌で溶解することから、抹茶を含有する食品の気泡安定に優れた効果があった。
【0035】
<実験例４> ヨーグルト飲料
市販の飲むヨーグルト（ブルガリア）に表６で示した気泡安定剤を０．１ｇ添加しハンドミキサーで５分間撹拌した。これを５℃、２０日間保管後、泡の状態と味を確認し結果を表６に示した。
市販の飲むヨーグルト（ブルガリア）に表６で示した気泡安定剤を０．１ｇ添加しハンドミキサーで５分間撹拌した。これを５℃、２０日間保管後、泡の状態と味を確認し結果を表６に示した。
【0036】
表６
【0037】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、カルシウムなどの塩類が多いヨーグルトに対しても気泡安定効果が高く、ヨーグルト飲料の気泡安定に優れた効果がありヨーグルト風味も良好なヨーグルトムースとなった。
【0038】
<実験例５> 高塩分高糖度調味料
団子のたれとして醤油含有物調味料（塩度５％，糖度５０，みりん５％）に、表７に示した気泡安定剤を０．４％添加し、ハンドミキサーで５分間撹拌し起泡させた。これを２０℃で３カ月保管し、泡と味を確認し、結果を表７に示した。
団子のたれとして醤油含有物調味料（塩度５％，糖度５０，みりん５％）に、表７に示した気泡安定剤を０．４％添加し、ハンドミキサーで５分間撹拌し起泡させた。これを２０℃で３カ月保管し、泡と味を確認し、結果を表７に示した。
【0039】
表７
【0040】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、高塩分、高糖度の液体に対しても気泡安定効果が高く、味も良好であった。
【0041】
<実験例６> メレンゲ
卵白に砂糖を１０％と表８に示した起泡剤を０．２％添加し、ハンドミキサーで５分間撹拌し起泡した。５℃にて２日保管後の泡の状態と味を確認し、結果を表８に示した。
卵白に砂糖を１０％と表８に示した起泡剤を０．２％添加し、ハンドミキサーで５分間撹拌し起泡した。５℃にて２日保管後の泡の状態と味を確認し、結果を表８に示した。
【0042】
表８
【0043】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、卵白に対しても気泡安定効果が高く、味も良好であった。
【0044】
＜実験例７＞ 液体状バクテリアセルロースを使用
バクテリアセルロース４の粉末化前の液体を使用し、実験例１～６の液体状食品を製造し同様にして評価を行った。ただし、バクテリアセルロース４の粉末化前の液体の添加量はバクテリアセルロース４の添加量の１００倍量とした。実験例１に関しては増えた水の量は使用する水から減らし対応した。他の実験例に関しては、バクテリアセルロース４の粉末化前の液体の塩分濃度、糖度、ｐＨを、使用する商品に合わせ使用した。その結果はバクテリアセルロース４を使用した実施例と同様であった。
バクテリアセルロース４の粉末化前の液体を使用し、実験例１～６の液体状食品を製造し同様にして評価を行った。ただし、バクテリアセルロース４の粉末化前の液体の添加量はバクテリアセルロース４の添加量の１００倍量とした。実験例１に関しては増えた水の量は使用する水から減らし対応した。他の実験例に関しては、バクテリアセルロース４の粉末化前の液体の塩分濃度、糖度、ｐＨを、使用する商品に合わせ使用した。その結果はバクテリアセルロース４を使用した実施例と同様であった。
【0045】
表９及び表１０に示した配合にて発泡ゼリーを作製した（作製量３００ｇ）。具体的には水に各種素材を加えハンドミキサーを使用し１０℃で３分間撹拌混合した。１０℃にて２日保管後、泡の状態を比較した。また、発泡ゼリーの味を比較した。評価は表１０に示した。
【0046】
表９
【0047】
表１０
【0048】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも１以上からなる第１の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも１以上からなる第２の高分子物質を添加し分散液とした後、さらに、この分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、発泡ゼリーに関して気泡安定効果が高く味も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末は、冷水、熱水、高塩類、低ｐＨなどの条件においても、簡単な撹拌でバクテリアセルロースを液体中に均一に分散させることができる。これにより、気泡を含有する飲食品を製造する際に、ホモジナイザーなどの摩砕機械が無くても容易に気泡を含む様々な飲食品の製造が可能となる。さらに気泡を長期にわたり合一することなく安定に均一に維持させることができ、賞味期限を従来品より延ばすことができる。本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末は、食品に限らず、気泡が含まれる商品に応用でき、気泡を安定化した付加価値のある商品を提供することができる。