(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093825
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】タンパク質過剰変性抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20220617BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20220617BHJP
A23C 9/13 20060101ALN20220617BHJP
A23L 13/00 20160101ALN20220617BHJP
A23L 13/40 20160101ALN20220617BHJP
A23L 15/00 20160101ALN20220617BHJP
A23L 17/00 20160101ALN20220617BHJP
A23C 19/076 20060101ALN20220617BHJP
A23L 11/45 20210101ALN20220617BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20220617BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L5/00 M
A23C9/13
A23L13/00 A
A23L13/40
A23L15/00 Z
A23L17/00 101D
A23C19/076
A23L11/00 104Z
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206520
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 健一
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 颯太
【テーマコード(参考)】
4B001
4B020
4B034
4B035
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B001AC05
4B001AC45
4B001AC46
4B001BC01
4B001BC08
4B001BC14
4B001EC04
4B020LB03
4B020LC04
4B020LG05
4B020LK01
4B020LK05
4B020LR02
4B020LR03
4B020LR04
4B020LR05
4B020LR10
4B034LB01
4B034LC05
4B034LK01X
4B034LK13X
4B034LK16X
4B034LK26X
4B034LK29X
4B034LK33X
4B034LK37X
4B034LP01
4B034LP11
4B035LC16
4B035LE20
4B035LG01
4B035LG19
4B035LG26
4B035LG31
4B035LG33
4B035LG35
4B035LG42
4B035LG43
4B035LG44
4B035LG48
4B035LG57
4B035LK19
4B035LP01
4B035LP42
4B035LP59
4B036LF13
4B036LF17
4B036LF19
4B036LH04
4B036LH10
4B036LH11
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH21
4B036LH26
4B036LH38
4B036LH39
4B036LH41
4B036LH50
4B042AC05
4B042AD20
4B042AD21
4B042AD39
4B042AD40
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG07
4B042AH01
4B042AH09
4B042AK01
4B042AK06
4B042AK09
4B042AK11
4B042AK12
4B042AK17
4B042AK20
4B042AP02
(57)【要約】
【課題】特別な技術を要することなく、滑らかで、かつ柔らかい食感を有するが、組織がしっかりしたタンパク質凝固食品を製造するためのタンパク質過剰変性抑制剤、および上記タンパク質過剰変性抑制剤を使用したタンパク質凝固食品の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の方法で作製されたバクテリアセルロース複合化粉末はタンパク質の過度な変性抑制効果が高く、タンパク質を多く含む食材に混合した際においても簡単な撹拌で発酵セルロースを食品中に均一に分散させることから、誰でも容易に滑らかで、かつ柔らかい食感だが、組織がしっかりしたタンパク質凝固食品が製造可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末を添加することを特徴とするタンパク質の過度な変性抑制方法。
【請求項2】
カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を添加することを特徴とするタンパク質の過度な変性抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱、凝固剤、酵素などの影響により生じる食品中のタンパク質の過度な変性を抑制する方法、および加熱、凝固剤、酵素などの影響により生じる食品中のタンパク質の過度な変性を抑制するために使用されるタンパク質過剰変性抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、熱やpH、酵素の働きによりその性質が大きく変化する。タンパク質を含む食品は、加熱調理や凝固剤、酵素によって、タンパク質が変性し、テクスチャーが変化する。タンパク質を含む食材を、上記のタンパク質を変性させる方法によりテクスチャーを調整する食品(以下、タンパク質凝固食品という)は、加熱時間、凝固剤、酵素の添加量などにより、得られるテクスチャーが異なる。タンパク質凝固食品とは、例えば、オムレツ、玉子焼き、スクランブルエッグ、天津、かに玉、カルボナーラ、卵スープ、グラタン、キッシュ、フレンチトースト、茶わん蒸し、プリンなどの卵加工食品や、豆腐、豆乳ヨーグルト、大豆ミートなどの植物性タンパク質加工食品、チーズ、ヨーグルトなどの乳加工食品、ハンバーグ、ハム、ソーセージ、つくねなどの畜肉加工食品、はんぺん、ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ、魚肉ソーセージなどの魚肉加工食品が挙げられる。いずれの加工食品も加熱調理や凝固剤、酵素の働きによってタンパク質を変性させ、テクスチャーの調節を行っている。
【0003】
しかし、タンパク質を変性させ所望のテクスチャーを得る調理方法は、加熱時間や凝固剤、酵素の添加量などの厳密な制御を必要とし、熟練者でなければ、調理ごとに食品のテクスチャーにばらつきが生じてしまうという問題点があった。さらに、特に加熱調理により製造されるタンパク質凝固食品において、滑らかで、かつ柔らかいが、組織がしっかりしたテクスチャーを有する食品を得ようとする場合、加熱不足による、いわゆる生焼けの状態や、過加熱による過度な硬化・凝集を避けつつ、所望のテクスチャーを得ることが熟練者でなければ困難であった。ここでタンパク質の加熱不足による問題点としては、前述の生焼けや凝固不足、凝固ムラ、接着不足、メイラード反応に由来する匂いの不足などが挙げられる。過加熱の問題としては、過剰な凝固、過剰な凝集、過剰な凝固による離水、焦げ臭、味の劣化などが挙げられる。凝固剤に起因する反応では、pH調整剤や乳酸菌などの微生物を使用してのpHの変化を利用したヨーグルト、チーズなどがあり、適正なpHを少し外れただけでも目的とするテクスチャーが得られなくなる。またカルシウム塩などの添加による凝固を利用した豆腐などがあり適正条件でないと分離した凝集物になってしまう。凝固酵素に起因する反応では、レンネットを使用したチーズ、トランスグルタミナーゼを使用した畜肉やかまぼこや等があり、至適pHや至適温度を外れると目的とする製品が作製できない。
【0004】
この改善策として、特許文献1には、発酵セルロースと増粘多糖類とを複合化して得られる複合化物を用い、加熱時の過度な変性が抑制され、滑らかな食感に改善された卵加工食品が記載されている。また、特許文献2には、発酵セルロースと高分子物質とを複合化した発酵セルロース複合体を含有することにより、軽くてソフトな食感に改善された水産練り製品が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載された組成物は、発酵セルロースと増粘多糖類とを複合化した発酵セルロース複合体であるが、水に添加した場合、複合体分子が充分に解けないためセルロース分子は食品中に十分に均一に分散しておらず、タンパク質過剰変性抑制能力に劣る問題がある。また、特許文献1および2に記載された発酵セルロースは塩を含む溶液への溶解が悪く、塩を多く含む食品に対しては十分なタンパク質過剰変性抑制効果が得られない。また、複合体分子が充分に解けていないため、喫食時にざらつきを感じてしまうという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6416856号
【特許文献2】特許第6570826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、加熱、凝固剤、酵素反応に起因するタンパク質の過剰変性抑制剤(以後、タンパク質過剰変性抑制剤又は過剰変性抑制剤と記すことがある)を提供し、誰でも容易に滑らかで、かつ柔らかい食感だが、組織がしっかりしたタンパク質凝固食品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、創意研究を重ねたところ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末、又は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末は、加熱、凝固剤、酵素反応に起因するタンパク質過剰変性抑制効果が高く、食品に添加した際にも簡単な撹拌で均一に分散することから、タンパク質凝固食品におけるタンパク質の過度な変性の抑制に優れた効果があることを見出した。
【0009】
本発明で重要なことは、発酵セルロースと高分子物質とが複合化した発酵セルロース複合化粉末を得る方法として、発酵セルロース培養時に培養液に特定の高分子物質を添加して培養し、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶剤を除去して乾燥する方法、及び発酵時に特定の高分子物質を添加して培養し、この培養液にさらに特定の高分子物質を添加し乾燥する方法のいずれかの方法により得た発酵セルロース複合化粉末は、食品中での分散性が従来の発酵セルロース粉末に比べ著しく向上したことである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る発酵セルロース複合化粉末によれば、タンパク質を多く含む食材に混合した際においても簡単な撹拌で発酵セルロースを食品中に均一に分散させることができる。よってホモジナイザーなどの摩砕機械が無くても容易に様々な種類のタンパク質凝固食品に応用でき、誰でも容易に滑らかで、かつ柔らかい食感だが、組織がしっかりしたタンパク質凝固食品が製造可能である。
【0011】
以下、本発明に係るバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法について記載する。本発明で使用されるバクテリアセルロース複合化粉末は、特許国際公開番号WO2018/038055、特願2020-021181に記載されたバクテリアセルロース複合化粉末である。
【0012】
具体的な製造方法は、特許国際公開番号WO2018/038055、特願2020-021181に記載された方法による。特許国際公開番号WO2018/038055に示された方法では、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法である。特願2020-021181に示された方法では、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末の製造方法である。
【0013】
特に、特願2020-021181に記載された、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質が添加され乾燥される製造方法で製造されたバクテリアセルロース複合化粉末は、タンパク質過剰変性抑制効果が高く、タンパク質凝固食品におけるタンパク質の過度な変性の抑制に優れた効果を発揮するバクテリアセルロース複合化粉末である。さらに塩を含む溶液への溶解性にも優れているためタンパク質を含有する様々な食品に使用可能である。
【0014】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は、水に加え手撹拌(ホモミキサーやホモジナイザーを使用しない)などの簡単な撹拌で分子がほどけ、バクテリアセルロース分子が均一に食品中に分散する。このようにして食品中に分散したバクテリアセルロース分子は分子間力、水素結合などにより安定し、見かけ上の網目構造をとる。この網目構造により組織がしっかりした食品になる。また、食品中に分散したバクテリアセルロース分子は、凝集しようとするタンパク質分子の間に入り、凝集を物理的に阻害する。このため加熱調理や凝固剤、酵素による調理を行っても、タンパク質の過度な変性が生じず、滑らかで、かつ柔らかい食感のタンパク質凝固食品となる。
【0015】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は、セルロース分子であるため、耐熱性、耐酸性、耐塩性、耐アルカリ性などに優れている。そのため様々なタンパク質凝固食品に使用することができる他、長期安定性にも優れたものとなる。例えば従来の増粘剤を使用したものは、耐熱性や耐酸性、耐アルカリ性に劣るため、加熱調理やpH調整による凝固反応を用いた調理方法では、増粘剤の本来の物性が失われ、調理ごとにテクスチャーが異なるという問題点があった。しかし本発明のバクテリアセルロース粉末、及びバクテリアセルロース複合化粉末を使用すれば、調理によりバクテリアセルロースの物性が失われることはなく、常に安定した品質の製品を提供することができる。
【0016】
本発明のバクテリアセルロース粉末は、水や塩溶液に添加して撹拌することによりセルロース分子がナノサイズレベルで分散することができる。その理由はバクテリアセルロースの培養時にカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシエチルセルロースの少なくとも1以上のセルロース誘導体を添加することにある。バクテリアセルロースは低分子物質からバクテリアセルロース産生菌が発酵によりセルロース分子を作ることにより産生されるが、このセルロース分子伸長過程において前記セルロース誘導体が取り込まれて伸長していく。よって産生されたバクテリアセルロースは複合化物となり、粉末化する時も複合物として乾燥される。このため乾燥しても、分子中にカルボキシル基、ヒドロキシプロピル基、エチル基などの水に親和性を有する官能基を有しているために水や塩溶液に添加して撹拌することで分子が解け、乾燥前のナノレベルのサイズに戻って効果を発揮するのである。これに対し、セルロース誘導体を添加せずバクテリアセルロース単独で粉末化した場合、又は培養時でなく培養終了後にセルロース誘導体を加えた場合は分子内部には親水性の官能基を有していないため、乾燥時においてはセルロース分子が凝集乾燥し、強固な水素結合が生じるため例えばホモジナイザーなどの機械的分散を行っても完全にナノレベルの分子まで解けることができない。このため、タンパク質過剰変性抑制効果に劣るのである。
【0017】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末ではカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末、又はカルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末であるが、さらに好ましいものとして、ヒドロキシプロピルセルロースからなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、及びポリグリコール酸の少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させて製造されたバクテリアセルロース複合化粉末が塩類溶液への分散性が良いことからより好ましい。水分の除去方法は特に限定されず、熱風乾燥、真空凍結乾燥、真空乾燥、ドラムドライ、噴霧乾燥、有機溶剤を添加して分離等があげられる。
【0018】
本発明の、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、この培養液に有機溶媒を添加した後、培養液から水と有機溶媒を除去して乾燥したバクテリアセルロース複合化粉末は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースを含有する水に分散させることにより溶解し、復元バクテリアセルロース分散液を調整しても良く、さらにこの復元バクテリアセルロース分散液を乾燥して粉末化しても構わない。この場合乾燥方法は特に限定されるものではなく、熱風乾燥、真空凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥、ドラムドライなどがある。
【0019】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末は、加熱調理、凝固剤、酵素など様々な調理方法によるタンパク質凝固食品に対し効果を発現することができる。当然ではあるが本発明のバクテリアナノセルロース複合化粉末の粉末化前の液体、つまり液体状バクテリアセルロース複合化物も同様に、加熱調理、pHの変化などによる凝固剤、酵素など様々な調理方法によるタンパク質凝固食品に対し効果を発現することができる。
【0020】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末のタンパク質含有食品への添加量は、目的とする過剰変性抑制効果が得られれば良く特に限定されるものではない。通常はバクテリアセルロースとして0.03重量%~5.0重量%が好ましい。
【0021】
本発明のバクテリアセルロース複合化粉末が使用できるタンパク質凝固食品としては、特に限定されるものではないが、オムレツ、玉子焼き、スクランブルエッグ、天津、かに玉、カルボナーラ、卵スープ、グラタン、キッシュ、フレンチトースト、茶わん蒸し、プリンなどの卵加工食品や、豆腐、豆乳ヨーグルト、大豆ミートなどの植物性タンパク質加工食品、チーズ、ヨーグルトなどの乳加工食品、ハンバーグ、ハム、ソーセージ、つくねなどの畜肉加工食品、はんぺん、ちくわ、かまぼこ、さつま揚げ、魚肉ソーセージなどの魚肉加工食品が挙げられる。タンパク質を含む食品で加熱調理や酵素処理、凝固剤添加処理を行う食品であればよい。
【実施例0022】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。また、特に指定がない限り%は重量%を示している。
本実施例に記載したタンパク質凝固食品の製造に使用する資材は、以下の通りである。
バクテリアセルロース1:特許国際公開番号WO2018/038055の実施例8 CMC-1使用のもの
バクテリアセルロース2:特許国際公開番号WO2018/038055の実施例8 HEC-2使用のもの
バクテリアセルロース3:特許国際公開番号WO2018/038055の実施例8 HPC-2使用のもの
バクテリアセルロース4:特願2020-021181の試験例1-1 高分子物質としてHPCを使用したもの
バクテリアセルロース5:特願2020-021181の試験例1-1 高分子物質としてHECを使用したもの
バクテリアセルロース6:特願2020-021181の試験例1-1 高分子物質としてキサンタンガムを使用したもの
バクテリアセルロース7:特願2020-021181の試験例1-1 高分子物質としてアルギン酸Naを使用したもの
バクテリアセルロース8:特願2020-021181の試験例1-2 高分子物質としてキサンタンガムを使用したもの
バクテリアセルロース9:サンアーティスト(登録商標)PN
バクテリアセルロース10:サンアーティスト(登録商標)PG
【0023】
タンパク質凝固食品は柔らかさ、滑らかさについて評価される。
<柔らかさ>
製造した製品の柔らかさについて10名のパネラーで官能評価を行った。評価基準は下記の通りで、最も評価の多かった項目について記載した。
◎:非常に柔らかい
○:◎には劣るが柔らかい
△:やや固い
×:固い
<滑らかさ>
製造した製品の滑らかさについて10名のパネラーで官能評価を行った。評価基準は以下の通りで、最も評価の多かった項目について記載した。
◎:非常に滑らか
○:◎には劣るが滑らか
△:凝集や凝集ムラが少しありややざらつく
×:凝集や凝集ムラがありざらつきがある
【0024】
<実験例1>オムレツ
表1及び表2に示した配合にてオムレツを調整した(作製量500g)。具体的には、水に全卵、牛乳、砂糖、粉末コンソメ、表2に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、3分間撹拌し、表面温度を180℃に維持したフライパンで1分間焼成後、オムレツを裏返してさらに1分間焼成し過剰気味の加熱とした。焼成後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表2に示した。
【0025】
【0026】
【0027】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有するオムレツは、無添加のオムレツに比べて、滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0028】
<実験例2>卵焼き
表3及び表4に示した配合にて卵焼きを調整した。具体的には、水に全卵、牛乳、砂糖、薄口しょうゆ、表4に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、3分間撹拌し、表面温度を180℃に維持した玉子焼き用フライパンで1分間焼成後、1/3になるように折り畳み、さらに1分間焼成し過剰気味の加熱とした。焼成後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表4に示した。
【0029】
【0030】
【0031】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有する卵焼きは、無添加の卵焼きに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0032】
<実験例3>茶わん蒸し
表5及び表6に示した配合にて茶わん蒸しを調整した。具体的には、水に全卵、粉末出汁、酒、みりん、食塩、薄口しょうゆ、表6に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、3分間撹拌し、内部温度が100℃の蒸し器にて20分蒸しあげ過剰気味の加熱とした。蒸し上げ後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表6に示した。
【0033】
【0034】
【0035】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有する茶わん蒸しは、無添加の茶わん蒸しに比べて、滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0036】
<実験例4>蒸しプリン
表7及び表8に示した配合にて蒸しプリンを調整した。具体的には、水に全卵、牛乳、生クリーム、砂糖、表8に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、1分間撹拌し、内部温度が100℃の蒸し器で15分間蒸しあげ過剰気味の加熱とした。蒸し上げ後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表8に示した。
【0037】
【0038】
【0039】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有する蒸しプリンは、無添加の蒸しプリンに比べて、滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0040】
<実験例5>ハンバーグ
表9及び表10に示した配合にてハンバーグを調整した。具体的には、牛ひき肉に、ローストして粗熱を取った玉ねぎ、卵白、パン粉、食塩、表10に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、ミキサーで1分間撹拌し、表面温度を180℃に維持したフライパンでハンバーグの表面を2分間焼成後、ハンバーグを裏返してさらに2分間焼成し過剰気味の加熱とした。焼成後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表10に示した。
【0041】
【0042】
【0043】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有するハンバーグは、無添加のハンバーグに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0044】
<実験例6>鶏つくね
表11及び表12に示した配合にて鶏つくねを調整した。具体的には、水に鶏ひき肉に食塩、酒、水、表12に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、3分間撹拌し、表面温度を180℃に維持したフライパンで2分間焼成後、裏返してさらに2分間焼成し過剰気味の加熱とした。焼成後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表12に示した。
【0045】
【0046】
【0047】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有する鶏つくねは、無添加の鶏つくねに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0048】
<実験例7>鶏のテリーヌ
表13及び表14に示した配合にて鶏のテリーヌを調整した。具体的には、水に鶏ひき肉、表14に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、ビーターで1分間混錬したのち、片栗粉、食塩、粉末コンソメを加え、さらに3分間混錬し、内部温度が100℃の蒸し器で15分間蒸しあげ過剰気味の加熱とした。蒸し上げ後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表14に示した。
【0049】
【0050】
【0051】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有する鶏のテリーヌは、無添加の鶏のテリーヌに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0052】
<実験例8>ミートボール
表15及び表16に示した配合にてミートボールを調整した。具体的には、豚ひき肉にパン粉、食塩、サラダ油、表16に示したタンパク質過剰変性抑制剤、水を加え、ビーターで3分間混錬したのち、90℃のお湯で10分間茹で上げ、過剰気味の加熱とした。加熱後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表16に示した。
【0053】
【0054】
【0055】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有するミートボールは、無添加のミートボールに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0056】
<実験例9>木綿豆腐
表17及び表18に示した配合にて木綿豆腐を調整した。具体的には、無調整豆乳に表18に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加えた後、75℃まで加熱し、にがりを過剰量添加し、さらに75℃で15分間加熱した。加熱後、さらしを通して濾過し、おぼろ豆腐を得た。おぼろ豆腐を縦30cm×横20cm×高さ15cmの型に摺り切りになるように充填し、500gの重りで30分間プレス脱水して木綿豆腐を得た。評価結果は表18に示した。
【0057】
【0058】
【0059】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有する木綿豆腐は、にがりが過剰な条件であっても無添加の木綿豆腐に比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0060】
<実験例10>豆乳プリン
表19及び表20に示した配合にて豆乳プリンを調整した。具体的には、未調整豆乳に全卵、砂糖、バニラエッセンス、表20に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、1分間撹拌し、内部温度が100℃の蒸し器で10分間蒸しあげ過剰気味の加熱とした。加熱後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表20に示した。
【0061】
【0062】
【0063】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有する豆乳プリンは、無添加の豆乳プリンに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0064】
<実験例11>かまぼこ
表21及び表22に示した配合にてかまぼこを調整した。具体的には、すり身に食塩を添加し、ビーターで3分間混錬した。その後、みりん、片栗粉、卵白、表22に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加えた後、90℃のお湯で30分間ボイルし過剰気味の加熱としたかまぼこを得た。評価結果は表22に示した。
【0065】
【0066】
【0067】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有するかまぼこは、無添加のかまぼこに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0068】
<実験例12>はんぺん
表23及び表24に示した配合にてかまぼこを調整した。具体的には、すり身に摺った山芋、卵白、砂糖、みりん、表24に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加え、均一になるまで摺り上げたのち90℃のお湯で10分間ゆで上げ過剰気味の加熱とした。加熱後は室温にて粗熱を除去した後、評価を行った。評価結果は表24に示した。
【0069】
【0070】
【0071】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有するはんぺんは、無添加のはんぺんに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0072】
<実験例13>カッテージチーズ
表25及び表26に示した配合にてかまぼこを調整した。具体的には、牛乳に表26に示したタンパク質過剰変性抑制剤を加えた後、80℃まで加熱し、食酢の過剰量を加えて、ゆっくりと撹拌した。室温にて2時間静置し、ガーゼで濾して、さらに一晩水気を切った後に凝集物を回収してカッテージチーズを得た。評価結果は表26に示した。食酢を通常量加えたものはpH4.2であり、過剰に加えたものはpH3.5であった。
【0073】
【0074】
【0075】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有するカッテージチーズは、食酢が過剰に添加されても無添加のカッテージチーズに比べて、組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。
【0076】
<実験例14>ヨーグルト
表27及び表28に示した配合にてかまぼこを調整した。具体的には、牛乳にヨーグルトと表28に示したタンパク質過剰変性抑制剤を添加し、3分間撹拌したのち、密閉容器に移し、45℃で15時間発酵させ、通常より過発酵させた。発酵後は4℃の冷蔵庫で一晩冷却してから評価を行った。評価結果は表28に示した。
【0077】
【0078】
【0079】
以上のように、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースの少なくとも1以上からなる第1の高分子物質の存在下でバクテリアセルロースが培養され、培養後この培養液に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、及びアルギン酸ナトリウムの少なくとも1以上からなる第2の高分子物質を添加し分散液とした後、さらにこの分散液から水を除去して乾燥させたバクテリアセルロース複合化粉末を含有するヨーグルトは、無添加のヨーグルトに比べて、発酵条件が厳しくても組織がしっかりしているが滑らかであり、かつ柔らかい食感となることが分かった。