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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093868
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】巻線装置及び巻線方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
H02K15/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206582
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000227537
【氏名又は名称】NITTOKU株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121234
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 利明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 進司
(72)【発明者】
【氏名】太田 綾耶
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP12
5H615QQ02
5H615SS04
5H615SS11
(57)【要約】
【課題】被巻線部材の回転中心軸を移行させることなく渡り線で連結された第一及び第二コイルを得るとともに、その渡り線の長さを容易に変更する。
【解決手段】本発明の巻線装置10は、主回転手段11により回転駆動される回転母体12と、回転母体12の回転中心軸Aに平行な軸Bを中心に回転可能に設けられた第一被巻線部材21及び第二被巻線部材31とを備える。第一被巻線部材21は回転母体12の回転中心軸Aから偏倚して回転母体12に設けられ、第二被巻線部材31は回転中心軸が回転母体12の回転中心軸Aに一致しかつ回転母体12と共に回転可能に設けられ、回転母体12と別に第一被巻線部材21を回転させる第一回転手段40が設けられる。第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対して第一被巻線部材21の回転中心軸Bを離接させる離接手段80が設けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回転手段(11)により回転駆動される回転母体(12)と、前記回転母体(12)の回転中心軸(A)に平行な軸(A,B)を中心に回転可能に設けられた第一被巻線部材(21)及び第二被巻線部材(31)とを備えた巻線装置において、
前記第一被巻線部材(21)は前記回転母体(12)の回転中心軸(A)から偏倚して前記回転母体(12)に設けられ、
前記第二被巻線部材(31)は回転中心軸が前記回転母体(12)の回転中心軸(A)に一致しかつ前記回転母体(12)と共に回転可能に設けられ、
前記回転母体(12)と別に前記第一被巻線部材(21)を回転させる第一回転手段(40)が設けられた
ことを特徴とする巻線装置。
【請求項2】
第二被巻線部材(31)の回転中心軸(A)に対して第一被巻線部材(21)の回転中心軸(B)を離接させる離接手段(80)が設けられた請求項1記載の巻線装置。
【請求項3】
第一被巻線部材(21)が回転母体(12)の回転直径方向に移動可能に取付けられ、
離接手段(80)が、前記回転母体(12)に同軸に回転可能に設けられた操作盤(81)と、前記操作盤(81)の周囲と前記第一被巻線部材(21)を連結させるリンク片(82)とを備える請求項2記載の巻線装置。
【請求項4】
回転母体(12)と別に第二被巻線部材(31)を回転させる第二回転手段(50)が設けられた請求項1ないし3いずれか1項に記載の巻線装置。
【請求項5】
第二被巻線部材(31)を回転中心軸(A)方向に移動可能な移動手段(55)が設けられた請求項1ないし4いずれか1項に記載の巻線装置。
【請求項6】
回転する第一被巻線部材(21)に線材(9)を巻回して第一コイル(7)を得る第一巻線工程の後に、前記第一被巻線部材(21)の回転中心軸(A)方向にずれて設けられた第二被巻線部材(31)を前記第一被巻線部材(21)とともに前記第二被巻線部材(31)の回転中心軸(A)を中心に回転させて前記第二被巻線部材(31)に線材(9)を巻回して第二コイル(6)を得る第二巻線工程とを有する巻線方法において、
前記第一巻線工程では、前記第二巻線工程における前記第二被巻線部材(21)の回転中心軸(A)から偏倚しかつその回転中心軸(A)に平行な軸(B)を中心に前記第一被巻線部材(21)を回転させ、
前記第二巻線工程では、前記第二被巻線部材(31)の回転中心軸(A)を中心に前記第二被巻線部材(31)を前記第一被巻線部材(21)とともに回転させる
ことを特徴とする巻線方法。
【請求項7】
第二被巻線部材(31)の回転中心軸(A)に対して第一被巻線部材(21)の回転中心軸(B)を離接させて所定の間隔に維持する間隔調整工程が第一巻線工程の前又は前記第一巻線工程と第二巻線工程の間に行われる請求項6記載の巻線方法。
【請求項8】
第一被巻線部材(21)の回転中心軸(A)方向に第二被巻線部材(31)をずらす第二被巻線部材ずらし工程が第一巻線工程の前又は前記第一巻線工程と第二巻線工程の間に行われる請求項6又は7記載の巻線方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機やモータ等のステータコアのスロットに挿入されるコイルを作製するのに適した巻線装置及び巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発電機やモータの固定子は、放射状に並んで内径方向に突出する複数のティース(磁極)及びその間に開口する複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、そのスロットにコイル辺部を納めることによりそのコアに組み付けられたステータコイルとを備える。このステータコイルの組み付けに関しては、ステータコイルをステータコアと別に予め作製し、その後に、このコイルをコアの各スロットに収容するいわゆるインサータ方法が知られている。
【0003】
このインサータ方法に用いられるコイルにあっては、線材を環状に巻回してトラック状とし、両側における直線部分をステータコアのスロットに納めるようにすることが知られている。そして、このインサータ方法に用いられるコイルを得る為の巻線装置として、渡り線で連結された第一及び第二コイルを得るものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この従来の巻線装置では、回転可能な回転母体と、線材を実際に巻回させる第一及び第二被巻線部材とを備えており、第一被巻線部材を回転母体の回転中心軸に位置させてその回転母体と共に回転させて、その回転する第一被巻線部材に線材を巻回させて第一コイルを得るとし、その後に、回転中心軸方向にずらせた第二被巻線部材の回転中心軸線を第一被巻線部材の回転中心軸線、即ち回転母体の回転中心軸線の位置まで移行させ、その位置で回転母体と共に第二被巻線部材を回転させて、その第二被巻線部材に線材を巻回させて第二コイルを得るとしている。
【0005】
これにより、この従来の巻線装置では、第一及び第二コイルの渡り線を切断することなく連続してよじれなく巻線することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-54967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この従来の巻線装置では、第一コイルを巻線した後、回転中心軸方向にずらせた第二被巻線部材の回転中心軸線を第一被巻線部材の回転中心軸線、即ち回転母体の回転中心軸線の位置まで移行させるため、その移行させる機構が複雑となり、装置の単価を押し上げる不具合があった。
【0008】
また、この従来の巻線装置により得られる第一及び第二コイルでは、それらを連結させる渡り線の長さは固定されることになる。その一方、例えば3相モータ内のコイルの渡り線は各相で異なる。このため、渡り線の長さを調節できない従来の巻線装置を用いる場合、1つのモータを製造するのに、渡り線の長さが異なるコイルを得るために、3組の巻線装置を必要とする不具合があった。
【0009】
ここで、渡り線の長さを変更できれば、単一の巻線装置であっても可能であるけれども、上記従来の巻線装置において、一対のコイルを連結する渡り線の長さを変更するためには、第一及び第二の被巻線部材間の間隔を変更させるような機械的調整が必要になり、この機械的調整に比較的時間を要する不具合があった。
【0010】
本発明の目的は、第一被巻線部材に線材を巻回して第一コイルを得た後であっても、第二被巻線部材の回転中心軸線を移行させることなく、第一コイルに渡り線で連結された第二コイルを得ることのできる巻線装置及び巻線方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、第一コイルと第二コイルを連結する渡り線の長さを容易に変更し得る巻線装置及び巻線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、主回転手段により回転駆動される回転母体と、その回転母体の回転中心軸に平行な軸を中心に回転可能に設けられた第一被巻線部材及び第二被巻線部材とを備えた巻線装置の改良である。
【0013】
その特徴ある構成は、第一被巻線部材は回転母体の回転中心軸から偏倚して回転母体に設けられ、第二被巻線部材は回転中心軸が回転母体の回転中心軸に一致しかつ回転母体と共に回転可能に設けられ、回転母体と別に第一被巻線部材を回転させる第一回転手段が設けられたところにある。
【0014】
この巻線装置では、第二被巻線部材の回転中心軸に対して第一被巻線部材の回転中心軸を離接させる離接手段が設けられることが好ましく、第一被巻線部材が回転母体の回転直径方向に移動可能に取付けられる場合、離接手段は、回転母体に同軸に回転可能に設けられた操作盤と、操作盤の周囲と第一被巻線部材を連結させるリンク片とを備えることが好ましい。
【0015】
また、回転母体と別に第二被巻線部材を回転させる第二回転手段を設けることもでき、第二被巻線部材を回転中心軸方向に移動可能な移動手段を設けることもできる。
【0016】
別の本発明は、回転する第一被巻線部材に線材を巻回して第一コイルを得る第一巻線工程の後に、第一被巻線部材の回転中心軸方向にずれて設けられた第二被巻線部材を第一被巻線部材とともに第二被巻線部材の回転中心軸を中心に回転させて第二被巻線部材に線材を巻回して第二コイルを得る第二巻線工程とを有する巻線方法の改良である。
【0017】
その特徴ある点は、第一巻線工程では、第二巻線工程における第二被巻線部材の回転中心軸から偏倚しかつその回転中心軸に平行な軸を中心に第一被巻線部材を回転させ、第二巻線工程では、第二被巻線部材の回転中心軸を中心に第二被巻線部材を第一被巻線部材とともに回転させるところにある。
【0018】
この巻線方法では、第二被巻線部材の回転中心軸に対して第一被巻線部材の回転中心軸を離接させて所定の間隔に維持する間隔調整工程を第一巻線工程の前又は第一巻線工程と第二巻線工程の間に行うことが好ましく、第一被巻線部材の回転中心軸方向に第二被巻線部材をずらす第二被巻線部材ずらし工程を第一巻線工程の前又は第一巻線工程と第二巻線工程の間に行うこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の巻線装置及び巻線方法では、第二コイルを得る第二被巻線部材を回転母体の回転中心軸に一致するように設けるけれども、回転母体の回転中心軸から偏倚させて第一コイルを得る第一被巻線部材を回転可能に設け、その回転母体と別に第一被巻線部材を回転させる第一回転手段を設けたので、第一回転手段により第一被巻線部材を回転させて第一コイルを得る第一巻線工程の後に、第二被巻線部材の回転中心軸線を移行させることなく、回転母体と共に第二被巻線部材を回転させて第二コイルを得る第二巻線工程を直ちに行うことが出来る。
【0020】
この結果、第二被巻線部材の回転中心軸線を第一被巻線部材の回転中心軸線の位置まで移行させるための機構は不要となり、その機構の存在に起因して装置の単価が押し上げられる様なことを回避することができる。
【0021】
また、第二被巻線部材に線材を巻回して第二コイルを得ると、この第二コイルは、第一被巻線部材に巻回された線材からなる第一コイルと渡り線を介して接続されることに成る。この渡り線の長さは、第一被巻線部材と第二被巻線部材の間隔により決定されることになる。
【0022】
けれども、本発明の巻線装置は離接手段を備えるので、第二被巻線部材の回転中心軸に対して第一被巻線部材の回転中心軸を離接させて所定の間隔に維持する間隔調整工程を行い、第一被巻線部材と第二被巻線部材の間隔を変更させることにより、容易に渡り線の長さを変更調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明実施形態における巻線装置の正面図である。
図2】その第一及び第二被巻線部材の拡大正面図である。
図3】その第一及び第二被巻線部材における一対の柱状部材の間隔が狭められた状態を示す図2に対応する図である。
図4】その第一及び第二被巻線部材を下方から見た図である。
図5】その離接手段を示す図1のD-D線断面図である。
図6】その離接手段により第一及び第二被巻線部材の間隔が狭められた状態を示す図5に対応する図である。
図7】その巻線装置を図1のA方向から見た上面図である。
図8図10のB-B線断面図である。
図9図1のC-C線断面図である。
図10】本発明実施形態における巻線装置の第一被巻線部材の回転中心軸方向に第二被巻線部材をずらした状態を示す図1に対応する図である。
図11】その第一被巻線部材に線材を巻回させて第一コイルを得た状態を示す図10に対応する図である。
図12】その第二被巻線部材に線材を巻回させて第一コイルに渡り線を介して連続する第二コイルを得た状態を示す図11に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1に、本発明の巻線装置10を示す。ここで、互いに直交するX、Y、Zの三軸を設定し、X軸が水平横方向、Y軸が水平前後方向、Z軸が垂直方向に延びるものとして本発明の巻線装置10について説明する。
【0026】
この実施の形態における巻線装置10は、図示しない三相交流発電機の固定子に使用されるステータコイルを作製するものであって、図12に示す様に、渡り線5で連結された一対のコイル6,7を作製するに適したものである。
【0027】
図1に戻って、本発明の巻線装置10は、基台13における下水平板13aに設けられて主回転手段11により回転駆動される回転母体12と、その回転母体12に設けられた第一被巻線部材21及び第二被巻線部材31とを備え、その第一被巻線部材21及び第二被巻線部材31に線材9を順次巻取って、渡り線5で連結された一対のコイル6,7を作製するものである(図12)。
【0028】
この実施の形態における線材9は被覆導線であって、断面が円形を成すいわゆる丸線が用いられるものとする。なお、この線材9は断面が方形を成すいわゆる角線であっても良い。そして、線材9は線材繰出し部材8(図12)から繰出されるものとする。
【0029】
図示しないが、線材9はスプールに巻回されてそのスプールに貯線され、スプールから引出された線材9は図示しない伸張機により真っ直ぐにされ、その後に線材繰出し部材8にまで案内されるものとする。
【0030】
この実施の形態における線材繰出し部材8は、単一の線材9を通過させる孔が形成された棒状部材であって、この線材繰出し部材8は、この線材繰出し部材8を少なくとも回転母体12の回転中心軸方向に往復移動可能な図示しない線材繰出し部材移動手段を介して本発明の巻線装置10に隣接して取付けられるものとする。
【0031】
図1に詳しく示す様に、この実施の形態において、回転母体12は、基台13の下水平板13aに、その下水平板13aの下方において水平面内で回転するように枢支される。この回転母体12はその中心が円筒状の支軸12aの下端に取付けられ、その支軸12aが下水平板13aに鉛直状態で枢支される。
【0032】
下水平板13aには、その上方に所定の隙間を空けて中水平板13bが支柱13dを介して取付けられ、その中水平板13bには、その上方に所定の隙間を空けて上水平板13cが支柱13dを介して更に取付けられる。
【0033】
この実施の形態において、回転母体12を回転させる主回転手段は回転中心軸11aがその中水平板13bを貫通して下方に突出するように中水平板13bに取付けられた電動モータ11であって、下水平板13aの上方に突出する支軸12aと中水平板13bを貫通して下方に突出する電動モータ11の回転中心軸11aにはそれぞれプーリ14が取付けられ、それらの間にベルト15が架設される。これにより、電動モータ11が駆動して回転中心軸11aを回転させると、その回転がベルト15を介して支軸12aに伝達されてその下端に取付けられた回転母体12を水平面内で回転させるように構成される。
【0034】
第一被巻線部材21はその回転母体12の回転中心軸Aから偏倚しかつその回転中心軸Aに平行な軸Bを中心に回転可能に設けられ、第二被巻線部材31は回転中心軸がその回転母体12の回転中心軸Aに一致するように設けられる。
【0035】
図2図4に示す様に、第一及び第二被巻線部材21,31は同一構造であり、これらの被巻線部材21,31は、回転母体12の回転中心軸Aに平行な基軸22,32の下端に交差するように取付けられた回転台23,33と、それらの回転台23,33に下方に突出するように取付けられた一対の柱状部材24,25,34,35をそれぞれ備える。これら一対の柱状部材24,25,34,35は、これらの回転台23,33の回転中心軸A,Bを挟むようにそれぞれ設けられるけれども、一方の柱状部材24,34は、それらの回転中心軸A,Bを通過する回転直径上に移動可能に立設される。
【0036】
即ち、この実施の形態における回転台23,33はそれぞれ方形状を成し、これらの回転台23,33には、それらの回転中心軸A,Bを通過する回転直径に平行にレール26,36がそれぞれ取付けられる。一対の柱状部材24,25,34,35は回転台23,33の回転中心軸A,Bに平行に設けられ、一方の柱状部材24,34の上部には、レール26,36に係合してレール26,36の長手方向に往復移動可能な移動ブロック27,37(図2及び図3)がそれぞれ取付けられる。これにより、その移動ブロック27,37をレール26,36に移動可能に搭載することにより、一方の柱状部材24,34は、それら回転台23,33の回転中心軸A,Bと交差する直線上に移動可能に立設される。
【0037】
第一及び第二被巻線部材21,31には、一対の柱状部材24,25,34,35の間隔を可変可能であって、かつ変更された間隔を保持する保持手段28,38がそれぞれ備えられる。そして、保持手段28,38により所定の間隔に保持された一対の柱状部材24,25,34,35に線材9(図12)が巻回可能に構成される。
【0038】
この実施の形態における一対の柱状部材24,25,34,35は、それらに巻回される線材9によりコイルが形成されることになるけれども、その得られるコイルの大きさが異なる二種類のコイルが得られるように、比較的大径のコイルを得る為の大径部24a,25a,34a,35aと、その大径部24a,25a,34a,35aに連続する様に軸方向にずれて形成された小径部24b,25b,34b,35bとを有するものを示す。
【0039】
この実施の形態における保持手段28,38は、第一及び第二被巻線部材21,31の回転中心軸A,Bとなる基軸22,32に挿通された操作棒28a,38aと、その操作棒28a,38aと平行に他方の柱状部材25,35に移動可能に設けられて操作棒28a,38aが係止された可動板28b,38bと、その可動板28b,38bに対向するように一方の柱状部材24,34に取付けられた係止片28c,38cとをそれぞれ有する。
【0040】
図2及び図3に示す様に、可動板28b,38bには回転中心軸A,Bに対して傾斜する傾斜長孔28ba,38baが形成され、一方の柱状部材24,34に基端が取付けられた係止片28c,38cの先端が傾斜長孔28ba,38baに移動可能に係止される。
【0041】
これにより、操作棒28a,38aを可動板28b,38bとともに他方の柱状部材25,35に沿って移動させると、傾斜長孔28ba,38baに沿って係止片28c,38cが一方の柱状部材24,34とともに回転台23,33の回転直径方向に移動して、一対の柱状部材24,25,34,35の間隔を変更させることに成る。
【0042】
そして、他方の柱状部材25,35に対する可動板28b,38bの移動を停止させることにより、一対の柱状部材24,25,34,35の変更された間隔を保持するように構成される。この実施の形態では、図2に示す様に可動板38bを上昇させて、互いの間隔を広げた一対の柱状部材34,35に線材9を巻回する場合を示し、間隔を広げた一対の柱状部材34,35が正規の巻線位置とする。
【0043】
ここで、操作棒28a,38aを介して可動板28b,38bを移動させ又は停止させる可動手段60,70(図1)にあっては後述する。
【0044】
図2図3図5及び図6に示す様に、回転母体12の下面には、その直径と平行なレール16,16がその直径を挟むように一対設けられ、この一対のレール16,16には可動台17が移動可能に設けられ、その一対のレール16,16間の回転母体12には、操作棒28aが遊挿される長孔12bが直径方向に延びて形成される。そして、この可動台17に第一被巻線部材21における基軸22が回転可能に取付けられ、その基軸22に挿通された操作棒28aは、その可動台17及び回転母体12における長孔12bを貫通して設けられる。このようにして、第一被巻線部材21はその回転母体12の回転中心軸Aから偏倚した軸Bを中心に回転可能に設けられる。
【0045】
図1に示す様に、この巻線装置10は、回転母体12と別に第一被巻線部材21を回転させる第一回転手段40が設けられる。この第一回転手段40は、回転母体12における支軸12aに挿通されて第二巻線部材31における基軸32が挿通された円筒部材41と、その円筒部材41を回転させるモータ42(図8)と、その円筒部材41の回転を第一被巻線部材21に伝達して回転させる伝達部材43とを備える。
【0046】
図1図8及び図9に示す様に、モータ42は回転中心軸42aが中水平板13bを貫通して下方に突出するように中水平板13bに取付けられ、下水平板13aの上方に突出する円筒部材41と電動モータ11の回転中心軸11aにはそれぞれプーリ44が取付けられ、それらの間にベルト45が架設される。これにより、電動モータ42が駆動して回転中心軸42aを回転させると、その回転がベルト45を介して円筒部材41に伝達されて、その下端に取付けられた伝達部材43を介して回転母体12と別に第一被巻線部材21を回転させるように構成される。なお、伝達部材43に関しては後述する。
【0047】
一方、第二被巻線部材31における基軸32は、第一回転手段40における円筒部材41を貫通して中水平板13bの上方にまで延びて設けられ、その基軸32に挿通された操作棒38aは、上水平板13cを更に貫通するように設けられて、この第二被巻線部材31は回転中心軸が回転母体12の回転中心軸Aに一致するように設けられる。
【0048】
この実施の形態における巻線装置10は、回転母体12と別に第二被巻線部材31を回転させる第二回転手段50と、その第二被巻線部材31を回転中心軸方向に移動可能な移動手段55が設けられる。
【0049】
第二回転手段50は、図1及び図9に示す様に、中水平板13bに枢支された回転プーリ51と、この回転プーリ51を回転させるモータ52とを備える。この回転プーリ51は第二被巻線部材31における基軸32が回転不能であってかつ長手方向に移動可能に挿通され、モータ52は回転中心軸52aが中水平板13bを貫通して下方に突出するように中水平板13bに取付けられる。
【0050】
中水平板13bを貫通して下方に突出するモータ52の回転中心軸52aにはプーリ53が取付けられ、このプーリ53と基軸32が移動可能に挿通された回転プーリ51の間にベルト54が架設される。これにより、モータ52を駆動させるとベルト54を介して回転プーリ51が回転し、そこに回転不能に挿通された基軸32を回転させて、その基軸32を含む第二被巻線部材31を回転させるように構成される。
【0051】
一方、移動手段55は、図1図7及び図8に示す様に、中水平板13bと上水平板13cの間に、第二被巻線部材31における基軸32を挟むようにその基軸32に平行に設けられた一対のボールネジ56,56と、その一対のボールネジ56,56を等速で回転させるモータ57と、一対のボールネジ56,56に架設されてその一対のボールネジ56,56の回転により昇降する昇降板58とを有し、この昇降板58に第二被巻線部材31における基軸32の上端が回転可能であってかつ昇降不能に係止される。ここで、説明容易のために、図1における一対のボールネジ56,56は、図7及び図8に示す一対のボールネジ56,56に対して90度位置を変えて表している。
【0052】
図1及び図7に示す様に、モータ57は上水平板13cに回転軸57aを貫通させた状態で上水平板13cに取付けられ、その回転軸57aと一対のボールネジ56,56にはそれぞれプーリ59aが取付けられ、これらのプーリ59aにはベルト59bが架設されて連結される。
【0053】
これにより、この移動手段55は、モータ57により一対のボールネジ56,56を回転させると、そこに螺合された昇降板58が昇降し、その昇降板58と共に基軸32が昇降して、図10に示すように、第二被巻線部材31を回転中心軸A方向に移動させるように構成される。
【0054】
図1に戻って、本発明の巻線装置10には、第一被巻線部材21における保持手段28の可動板28bを移動させる第一可動手段60と、第二被巻線部材31における保持手段38の可動板38bを移動させる第二可動手段70と、が設けられる。
【0055】
第一可動手段60を説明すると、回転母体12の上方に突出する第一被巻線部材21における操作棒28aの上端には、回転母体12の支軸12aを包囲するドーナツ状の操作円板61が回転母体12に平行にかつ同軸になるように取付けられる。そして、この操作円板61に操作棒28aの上端が軸方向に移動不能に取付けられる。
【0056】
けれども、その操作棒28aの上端は、操作円板61の直径方向の移動を許容する様に取付けられる。具体的に、操作円板61には、操作円板61の直径方向に延びる図示しない長孔が形成され、この長孔に操作棒28aの上端がその長孔に沿って移動可能であるけれども、軸方向に移動不能に取付けられる。
【0057】
図1及び図9に示す様に、下水平板13aには、操作円板61の周囲に対応して複数のプーリ62(図9では4つのプーリを示す。)が鉛直軸を回転中心軸として回転可能に枢支され、それらのプーリ62の中心には雌ねじ62aが形成される。
【0058】
また、下水平板13aには操作用モータ64が設けられる。この操作用モータ64は、その回転中心軸64aの回転数を調整可能なものであって、その回転中心軸64aに設けられたプーリ64bと雌ねじ62aが形成されたプーリ62との間にはベルト65が架設される。これにより、操作用モータ64は、ベルト65を介して雌ねじ62aが形成された複数のプーリ62を同時に同方向に等速で回転させるように構成される。
【0059】
複数のプーリ62には、その回転中心軸に形成された雌ねじ62aに雄ねじ部材66がそれぞれ螺合され、その雄ねじ部材66の下端に操作円板61の周囲を係止する係止部材67(図1)が設けられる。
【0060】
このため、この第一可動手段60では、操作用モータ64が駆動してプーリ62を回転させると、そのプーリ62の雌ねじ62aに螺合する雄ねじ部材66が鉛直方向(Z軸方向)に昇降して、その下端に設けられた係止部材67とともに操作円板61も昇降して、そこに上端が係止された操作棒28aを雄ねじ部材66の回転数に応じた量だけ昇降させることになる。
【0061】
図2及び図3に示す様に、操作棒28aが昇降するとその下端に係止された可動板28bが移動し、可動板28bの傾斜長孔28baに係止した係止片28cとともに一方の柱状部材24が回転台23の直径方向に移動し、第一被巻線部材21における一対の柱状部材24,25の間隔を変更することになる。そして、その可動板28bの昇降を停止させることにより、変更された一対の柱状部材24,25の間隔を保持するように構成される。
【0062】
また、図1に示す係止部材67はドーナツ状の操作円板61の周囲に係合して、その操作円板61の独立した昇降を禁止するけれども、その操作円板61の回転を許容するように構成され、その操作円板61と共に回転母体12が回転することの障害となるようなことはない。
【0063】
図2図4に示す様に、この第一被巻線部材21には、可動板28bに連動して線材9(図4)の端部を挟持する挟持具68がその回転台23に設けられ、その挟持具68に対向する可動板28bには、その挟持具68を動作させる傾斜部28bb(図2及び図3)が形成される。
【0064】
図における挟持具68は、その本体68aに固定された固定片68bと、その本体68aから出没する可動片68c(図4)と、可動板28bの傾斜部28bbに先端が当接する操作片68d(図2及び図3)とを有し、図3に示す様に可動板28bが下降して一対の柱状部材24,25の間隔が狭まると、傾斜部28bbに案内されて図4の破線で示す様に操作片68dが本体68aから突出して固定片68bと可動片68cの間隔を拡大させて、その間に線材9を挿脱可能に構成される。
【0065】
また、図2に示す様に可動板28bが上昇して一対の柱状部材24,25の間隔が広がって、正規の巻線位置に達すると、傾斜部28bbに案内されて操作片68dが本体68aに没入して可動片68cを固定片68bに当接させる方向に付勢して、図4に実線で示す様にその間に線材9が挿通されていると、その線材9を挟持可能に構成される。
【0066】
図1及び図7に示す様に、第二被巻線部材31における可動板38bを操作棒38aとともに移動させる第二可動手段70は、操作棒38aの上水平板13cを貫通する上部に設けられたボールネジ71と、そのボールネジ71に螺合するように上水平板13cに枢支された雌ねじ部材72と、その雌ねじ部材72を回転させるモータ73を有する。
【0067】
このモータ73は、その回転中心軸73aの回転数を調整可能なものであって、上水平板13cに取付けられる。その回転中心軸73a及び雌ねじ部材72にはそれぞれプーリ74が同軸に設けられ、それらの間にはベルト75が架設される。このプーリ74及びベルト75を介してモータ73は雌ねじ部材72を回転可能に構成される。
【0068】
そして、操作棒38aは基軸32に軸方向に移動可能であるけれども基軸32に対して回転不能に挿通され、雌ねじ部材72は上水平板13cに回転可能であってかつ昇降不能に枢支されるので、この第二可動手段70は、モータ73により雌ねじ部材72を回転させると、操作棒38aに連続して設けられたボールネジ71が昇降して、この操作棒38aを可動板38bとともに基軸32の軸方向に移動させるように構成される。
【0069】
図2及び図3に示す様に、操作棒38aが可動板38bとともに移動すると、可動板38bの傾斜長孔38baに係止した係止片38cとともに一方の柱状部材34が回転台33の直径方向に移動し、第二被巻線部材31における一対の柱状部材34,35の間隔を変更することになる。そして、その可動板38bの昇降を停止させることにより、一対の柱状部材34,35の変更された間隔を保持するように構成される。
【0070】
図1に示す様に、本発明の巻線装置10は、第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対して第一被巻線部材21の回転中心軸Bを離接させる離接手段80が設けられる。この離接手段80は、回転母体12における支軸12aを中心に回転可能にその支軸12aに嵌入された操作盤81と、その操作盤81の周囲と第一被巻線部材21における基軸22を連結するリンク片82と、その操作盤81を回転させる回転手段85と、その操作盤81の回転母体12に対する回転を禁止する禁止手段90とを有する。
【0071】
ここで、図2図5及び図6に示す様に、前述した第一回転手段40における伝達部材43は、操作盤81のリンク片82における枢支点に同軸に二段に重ねられて設けられた中間プーリ43aと、第一被巻線部材21の基軸22にリンク片82に重なるように設けられた部材側プーリ43bと、円筒部材41の下端に同軸に設けられた操作側プーリ43cと、操作側プーリ43cと中間プーリ43aを連結する第一ベルト43dと、その中間プーリ43aと部材側プーリ43bを連結する第二ベルト43eとを有する。
【0072】
図1図5図6及び図10に示す様に、操作盤81には、先端に突起83aが設けられたアーム83が回転直径方向に延びてその基端が取付けられ、回転手段85は、その突起83aに先端が係止可能な切り込み86aが形成された操作板86と、突起83aに切り込み86aを挿脱させるように操作板86をX軸方向に往復移動させるX軸アクチュエータ87と、このX軸アクチュエータ87を操作板86とともにY軸方向に移動させるY軸アクチュエータ88とを備える。
【0073】
図におけるY軸アクチュエータ88は、サーボモータ88aによって回動駆動されるボールネジ88bと、このボールネジ88bに螺合してボールネジ88bを収納する長いハウジング88dに沿って平行移動する従動子88cを備えるものを示し、基台13における下水平板13aにY軸アクチュエータ88のハウジング88dがY軸方向に向けて取付けられる。
【0074】
図におけるX軸アクチュエータ87は流体圧により本体87aからロッド87bを出没させる流体圧シリンダであって、Y軸アクチュエータ88の従動子88cに平板89が取付けられ、この平板89にロッド87bをX軸方向に向けた状態でその本体87aが平板89に取付けられるものとする。この平板89にはロッド87bに平行にレール89aが設けられ、このレール89aには移動台89bが移動可能に搭載されるものとし、ロッド87bの先端がこの移動台89bに取付けられる場合を示す。そして、この移動台89bに操作板86が取付けられるものとする。
【0075】
そして、Y軸アクチュエータ88により操作板86の切り込み86aをアーム83の突起83aに対向させ、X軸アクチュエータ87のロッド87bを本体87aから突出させて操作板86の切り込み86aをアーム83の突起83aに進入させ(図6)、その状態で、Y軸アクチュエータ88によりX軸アクチュエータ87とともに操作板86をY軸方向に移動させることにより、操作盤81を回転可能に構成される。
【0076】
操作盤81を回転させると、その周囲は円周方向に移動して、図5及び図6に示す様に、その周囲に一端が枢支されたリンク片82は他端に枢支された第一被巻線部材21における基軸22を回転母体12の直径方向に延びて設けられたレール16,16に沿ってその直径方向に移動することになり、回転母体12と同軸に設けられた第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対して第一被巻線部材21の回転中心軸Bを離接させるように構成される。
【0077】
一方、禁止手段90は、アーム83の操作盤81近傍に操作盤81の外周方向に連続して形成された複数の係止孔83bと、回転母体12に設けられてその複数の係止孔83bに係止突起91aを選択的に挿脱させる突起挿脱装置91とを有する。
【0078】
この突起挿脱装置91は、操作片91bを本体91cに出没させることによりその操作片91bに直交する方向に係止突起91aを本体91cから出没させるように構成され、その係止突起91aを係止孔83bに対向させかつ操作片91bを回転母体12の直径方向に向けた状態で、その本体91cがアーム83に対向する回転母体12に取付けられる。
【0079】
一方、回転手段85における移動台89bには操作板86に平行に作業板92が取付けられ、図6に示す様に、移動台89bが移動して操作板86の切り込み86aをアーム83の突起83aに進入させた状態で、作業板92が突起挿脱装置91の操作片91bをその本体91cに没入させて、突起91aを係止孔83bから離脱させ、移動台89bが逆方向に移動して、図5に示す様に、操作板86の切り込み86aがアーム83の突起83aから離脱すると、作業板92が突起挿脱装置91の操作片91bから離間してその操作片91bを本体91cから突出させるように構成される。
【0080】
そして、操作片91bを本体91cから突出させた突起挿脱装置91では、その係止突起91aが係止孔83bに進入して、操作盤81の回転母体12に対する回転を禁止するように構成される。これにより、第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対する第一被巻線部材21の回転中心軸Bの間隔を維持することになる。
【0081】
次に、本発明の巻線方法について説明する。
【0082】
本発明の巻線方法は、回転する第一被巻線部材21に線材9を巻回して第一コイル7を得る第一巻線工程の後に、その第一被巻線部材21の回転中心軸B方向にずれて設けられた第二被巻線部材31をその第一被巻線部材21とともに第二被巻線部材31の回転中心軸Aを中心に回転させてその第二被巻線部材31に線材9を巻回して第二コイル6を得る第二巻線工程を行う方法である。
【0083】
その特徴ある点は、第一巻線工程では、第二巻線工程における第二被巻線部材21の回転中心軸Aから偏倚しかつその回転中心軸Aに平行な軸Bを中心に第一被巻線部材21を回転させて線材9を巻回し、第二巻線工程では、第二被巻線部材31の回転中心軸Aを中心に第二被巻線部材31を第一被巻線部材21とともに回転させて線材9を巻回するところにある。
【0084】
そして、第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対して第一被巻線部材21の回転中心軸Bを離接させて、第一コイル7と第二コイル6を接続する線材9の長さを所望の長さにする間隔調整工程を第一巻線工程の前又は第一巻線工程と第二巻線工程の間に行うことが好ましく、第一被巻線部材21の回転中心軸B方向に第二被巻線部材31をずらす第二被巻線部材ずらし工程を第一巻線工程の前又は第一巻線工程と第二巻線工程の間に行うこともできる。
【0085】
この巻線方法は、第一被巻線部材21と、その第一被巻線部材21の回転中心軸B方向にずれて設けられた第二被巻線部材31を備えることを前提とするので、この実施の形態では上述した巻線装置10を用い、その離接手段80を用いた間隔調整工程及び移動手段55を用いた第二被巻線部材ずらし工程を第一巻線工程の前にそれぞれ行い、第一コイル7と第二コイル6が渡り線5で連結されたステータコイル12を得るものとする。そして、その動作は、図示しないコントローラによって自動制御されるものとし、以下に各工程を詳説する。
【0086】
<準備工程>
上記巻線装置10を用いるため、第一巻線工程の前に準備工程として、以下の工程が先ず行われる。
【0087】
≪線材準備工程≫
この工程では、線材9を線材繰出し部材8から繰出させる。具体的には、図示しないスプールに巻回されて貯線された線材9を準備し、そのスプールから線材9を引出し、図示しない伸張機により真っ直ぐにさせた線材9を線材繰出し部材8に挿通させ、挟持具68に挟持させる。
【0088】
挟持具68に依る線材9の挟持にあっては、先ず、主回転手段である電動モータ11により回転母体12を回転させ、図4に示す様に第一被巻線部材21を線材繰出し部材8に対向させる。その第一被巻線部材21にあっては、第一可動手段60により可動板28bを下降させて一対の柱状部材24,25を図3に示す様に狭める。これにより、その被巻線部材21に設けられた挟持具68では、可動板28bの傾斜部28bbに案内されて操作片68dが本体68aから突出し、図4の破線で示す様に固定片68bと可動片68cの間隔は拡大することになる。
【0089】
この状態で線材繰出し部材8を移動させ、そこから突出する線材9の端部を固定片68bと可動片68cの間に進入させる。その後、図2に示す様に、可動板28bを上昇させて一対の柱状部材24,25の間隔を広げて正規の巻線位置にさせる。それにより挟持具68の操作片68dを本体68aに没入させて、図4の実線で示す様に可動片68cを固定片68bに当接させる方向に付勢して、その間に挿通された線材9を挟持させる。
【0090】
≪第二被巻線部材ずらし工程≫
この工程では、図10に示す様に、第二被巻線部材31を第一被巻線部材21の回転中心軸B方向にずらして設ける。第二被巻線部材31の軸方向の移動は、図1に示す移動手段55及び第二可動手段70により行われ、移動手段55では、モータ57により一対のボールネジ56,56を回転させて昇降板58と共に基軸32を昇降させる。それ基軸32の昇降と同期して、第二可動手段70は、そのモータ73により雌ねじ部材72を回転させてボールネジ71を昇降させ、その下端に設けられた操作棒38aを基軸32と共に軸方向に移動させる。
【0091】
これにより、図10に示す様に、第二被巻線部材31は回転中心軸A方向に移動し、所望の位置に達した状態で,それらの移動を停止させることにより、第二被巻線部材31を第一被巻線部材21の回転中心軸B方向にずらして設ける。
【0092】
なお、第二被巻線部材31を第一被巻線部材21の回転中心軸B方向にずらして設けた後に、第二被巻線部材31における可動板38bが回転台33に対して下降しており、図3に示す様に一対の柱状部材34,35の間隔が狭められていた状態であれば、第二可動手段70は、可動板38bを上昇させて、図2に示す様に一対の柱状部材34,35の間隔を広げて正規の巻線位置にさせておく。
【0093】
≪間隔調整工程≫
この工程では、第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対して第一被巻線部材21の回転中心軸Bを離接させて所定の間隔に維持する。上記巻線装置10を用いるので、この間隔の調整は図1に示す離接手段80により行われ、その間隔の維持は禁止手段90により行われる。
【0094】
ここで、所定の間隔とは、図12に示す様に、第一被巻線部材21に巻回された線材9から成る第一コイル7と、第二被巻線部材31に巻回された線材9から成る第二コイル6とを接続する渡り線5となる線材9の長さを所望の長さにする為のものであり、予め算出された間隔である。
【0095】
そして、上記巻線装置10の離接手段80は、回転手段85が操作盤81を回転させ、図5及び図6に示す様に、リンク片82を介して第一被巻線部材21を回転母体12の直径方向に延びて設けられたレール16,16に沿ってその直径方向に移動させることにより、第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対して第一被巻線部材21の回転中心軸Bを離接させることになる。
【0096】
そして、第二被巻線部材31の回転中心軸Aと第一被巻線部材21の回転中心軸Bの間隔が所定の間隔に成ったところで、禁止手段90は、操作片91bを本体91cから突出させ、その係止突起91aを係止孔83bに進入させることにより、操作盤81の回転母体12に対する回転を禁止させる。これにより、第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対する第一被巻線部材21の回転中心軸Bの間隔を維持させる。
【0097】
<第一巻線工程>
この工程では、第一被巻線部材21を回転させて、その一対の柱状部材24,25の周囲に線材9を巻取る。この実施の形態では、上記巻線装置10を用いるので、この巻線工程は、第一回転手段40により第一被巻線部材21を回転させることにより行われる。具体的には、図11に示す様に、その電動モータ42(図8)を駆動させて円筒部材41を回転させ、その下端に取付けられた伝達部材43を介して第一被巻線部材21を回転させる。
【0098】
この実施の形態において、一対の柱状部材24,25は大径部24a,25aと小径部24b,25bを有するけれども、図では小径部24b,25bに線材9を巻回して比較的小径のコイル7を得る場合を示す。このため、線材繰出し部材8をその小径部24b,25bに対向させた状態で第一被巻線部材21を回転させることになる。
【0099】
この時、小径部24b,25bに対向させた状態で線材繰出し部材8を第一被巻線部材21の回転中心軸B方向に移動させて、線材繰出し部材8から繰出される線材9を、その小径部24b,25bの周囲に螺旋状に巻回させて、隣接する線材9が互いに平行にかつ密着するような整列巻きされた比較的小径の第一コイル7を得ることが好ましい。
【0100】
<第二巻線工程>
この工程では、第二被巻線部材31を第一被巻線部材21とともに回転させて、第二被巻線部材31における一対の柱状部材34,35の周囲に線材9を巻取る。この第二巻線工程では、第一被巻線部材21とともに第二被巻線部材31を回転させるけれども、第二被巻線部材31は第一被巻線部材21の軸方向にずれているので、第一被巻線部材21が第二被巻線部材31の周囲にその第二被巻線部材31を中心に回転したとしても、第二被巻線部材31が線材9を巻き取ることに支障を生じさせない。
【0101】
この実施の形態では、上記巻線装置10を用いるので、第二被巻線部材31の回転は第二回転手段50により行われ、その第二被巻線部材31を中心とした第一被巻線部材21の回転は、主回転手段11により回転母体12を回転させることにより行われる。
【0102】
具体的に、図12に示す様に、第二回転手段50は、モータ52(図8)を駆動させて回転プーリ51に回転不能に挿通された基軸32を回転させることにより第二被巻線部材31を回転させる。
【0103】
一方、主回転手段である電動モータ11は、駆動することにより支軸12aを回転させて、その下端に取付けられた回転母体12を水平面内で回転させることにより、その回転母体12に偏倚して設けられた第一被巻線部材21を第二被巻線部材31の周囲において、その第二被巻線部材31を中心に回転させる。この回転母体12の回転は、第二回転手段50による第二被巻線部材31の回転と同期して同速度で行われる。
【0104】
支軸12aを回転させて回転母体12を回転させる際に、第一回転手段40では、その電動モータ42を駆動させて、その支軸12aの回転と同期して円筒部材41を同速度で同方向に回転させ、第二被巻線部材31に対する第一被巻線部材21の相対的な位置関係を維持させる。これにより、これらの相対的な位置関係が変化することに起因する渡り線5の長さが異なることを防止しつつ、図12に示す様に、第二被巻線部材31における一対の柱状部材34,35の周囲に線材9を巻取る。
【0105】
第二被巻線部材31における一対の柱状部材34,35にあっても大径部34a,35aと小径部34b,35bを有するけれども、図では小径部34b,35bに線材9を巻回して比較的小径のコイル6を得る場合を示す。このため、線材繰出し部材8をその小径部34b,35bに対向させた状態で第二被巻線部材31を第一被巻線部材21とともに回転させることになる。
【0106】
この時、小径部34b,35bに対向させた状態で線材繰出し部材8を第二被巻線部材31の回転中心軸A方向に移動させて、線材繰出し部材8から繰出される線材9を、その小径部34b,35bの周囲に螺旋状に巻回させて、隣接する線材9が互いに平行にかつ密着するような整列巻きされた比較的小径の第二コイル6を得ることが好ましい。
【0107】
図12に示す様に、第一巻線工程の後に第二巻線工程を行って、第二被巻線部材31に線材9を巻回して第二コイル6を得ると、この第二コイル6は、第一被巻線部材21に巻回された線材9からなる第一コイル7と渡り線5を介して接続されたものと成り、本発明では、渡り線5を介して接続された第一及び第二コイル6,7から成るステータコイルを作製し得るものとなる。
【0108】
ここで、上記巻線装置10を用いた本発明の巻線方法であると、第一回転手段40により第一被巻線部材21を回転させて第一コイル7を得る第一巻線工程の後に、第二被巻線部材31の回転中心軸線を移行させることなく、回転母体12と共に第二被巻線部材31を回転させて第二コイル6を得る第二巻線工程を直ちに行うことが出来る。この結果、従来の巻線装置では必要とされた第二被巻線部材の回転中心軸線を第一被巻線部材の回転中心軸線の位置まで移行させるための機構は不要となり、その機構の存在に起因して装置の単価が押し上げられる様なことを回避することができる。
【0109】
また、第一及び第二コイル6,7を連結させる渡り線5の長さは、第一被巻線部材21と第二被巻線部材31の間隔により決定されることになる。その一方で、第一及び第二コイル6,7を連結させる渡り線5の長さは、得ようとする3相モータ内のコイルにおいて各相で異なることになり、例え、第一及び第二コイル6,7の巻線仕様が同一であったとしても、渡り線5の長さだけ異ならせる要望もある。
【0110】
一方、本発明の巻線方法では、第二被巻線部材31の回転中心軸Aに対して第一被巻線部材21の回転中心軸Bを離接させて所定の間隔に維持する間隔調整工程を第一巻線工程の前に行ったので、その間隔調整工程において、第一被巻線部材21と第二被巻線部材31の間隔を変更させることにより、容易に渡り線5の長さを変更調整することが出来るものとなる。
【0111】
そして、回転母体12と別に第二被巻線部材31を回転させる第二回転手段50を設けた上記巻線装置10では、その第二回転手段50により、第一被巻線部材21に対する第二被巻線部材31の回転位置を調整することが可能となり、第二被巻線部材31と第一被巻線部材21との間に延びる渡り線5の長さを微妙に調節することも可能となる。
【0112】
第一コイル7と渡り線5を介して接続された第二コイル6を得た後には、これらを第一及び第二被巻線部材21,31から離脱させて搬送し、その後の工程において、従来から用いられているインサータ方法を用いて、渡り線5を介して接続された状態で第一及び第二コイル6,7を図示しないコアのスロットに挿入することになる。
【0113】
ここで、第一コイル7と第二コイル6を第一及び第二被巻線部材21,31から離脱させる手順を説明すると、先ず、第一及び第二被巻線部材21,31に形成された第一コイル7と第二コイル6を図示しない形状維持具により把持して、それらの形状を維持させる。その後、線材繰出し部材8から新たに線材9が繰出されることを禁止した上で、線材繰出し部材8から第二コイル6に延びる線材9を切断装置等により切断する。これにより第一コイル7と第二コイル6を線材繰出し部材8から独立させる。
【0114】
この際、必要に応じて第一コイル7と第二コイル6を構成する線材9を粘着テープ等を用いて束ねることが好ましい。この粘着テープによる線材9の束ねにあっては、線材9が巻回された一対の柱状部材24,25,34,35の間において浮遊する線材9を束ねることが可能となる。
【0115】
その後、第一及び第二被巻線部材21,31において、一対の柱状部材24,25,34,35に巻回された線材9から成る第一コイル7と第二コイル6をそれらから取り出すことになるけれども、第二コイル6が得られた状態で、その第二コイル6は第一コイル7の軸方向にずれており、これらを並べて取り出す場合には、第二コイル7が得られた第二被巻線部材31を回転中心軸A方向にずらして、その第二被巻線部材31を第二コイル7とともに第一コイル7が得られた第一被巻線部材21に並べることが好ましい。
【0116】
この第二被巻線部材31の軸方向の移動は、図1に示す移動手段55及び第二可動手段70により行われ、移動手段55では基軸32を昇降させ、それ基軸32の昇降と同期して、第二可動手段70は操作棒38aを基軸32と共に軸方向に移動させる。これにより、第二被巻線部材31は回転中心軸A方向に移動し、図12に示す状態から図1に示す様に、第二被巻線部材31を第一被巻線部材21に並べることができる。
【0117】
一方、第一及び第二被巻線部材21,31においては、一対の柱状部材24,25,34,35に巻回された線材9から成る第一コイル7と第二コイル6をそれらから取り出すために、線材9が巻回された一対の柱状部材24,25,34,35の間隔を狭める。
【0118】
具体的に、第一被巻線部材21における一対の柱状部材24,25は、図3に示す様に第一可動手段60(図1)により可動板38bを下降させることにより一対の柱状部材24,25の間隔を狭め、第二被巻線部材31における一対の柱状部材34,35では、第二可動手段70(図1)により可動板38bを下降させて、一対の柱状部材34,35の間隔を狭める。
【0119】
これにより、一対の柱状部材24,25,34,35に掛け回された線材9から成る図12に示す第一コイル7と第二コイル6は緩み、渡り線5で連結された第一コイル7と第二コイル6を一対の柱状部材24,25,34,35からそれぞれ離脱させる。
【0120】
この離脱にあっては、図示しない形状維持具により把持され、必要に応じて粘着テープにより束ねられて形状が維持された第一コイル7と第二コイル6を、図示しない形状維持具と共に下方に移動して、一対の柱状部材24,25,34,35の解放された下端面より下方に抜き出す。
【0121】
そして、第一コイル7と第二コイル6を一対の柱状部材24,25,34,35から離脱させた後には、新たな巻線を再開することができる。この新たな巻線の間隔調整工程において、第一被巻線部材21と第二被巻線部材31の間隔を変更させることにより、第一コイル7に長さが異なる渡り線5を介して連結された第二コイル6を得ることが可能となる。
【0122】
なお、上述した実施の形態では、線材繰出し部材8が単一の線材9を通過させるようなものである場合を説明したけれども、この線材繰出し部材8は、複数の線材9を並列に密着させた状態で通過させるものであっても良い。線材繰出し部材8が複数の線材9を繰出すようなものである場合には、複数の線材9を通過させるような長穴が形成された棒状部材を用いることが好ましい。
【0123】
また、上述した実施の形態では、間隔調整工程が第一巻線工程の前の準備段階において行われる場合を説明した。けれども、この間隔調整工程は第一コイルを得た後に第二コイルを得る前、即ち、第一巻線工程と第二巻線工程の間に行うようにしても良い。このようにしても第一コイル7と第二コイル6を連結する渡り線5の長さを変更調整することが可能となる。
【0124】
また、上述した実施の形態では、一対の柱状部材24,25,34,35における小径部24b,25b,34b,35bに線材9を巻回して比較的小径のコイル6,7を得る場合を説明したけれども、一対の柱状部材24,25,34,35における大径部24a,25a,34a,35aに線材9を巻回して比較的大径のコイル6,7を得るようにしても良い。また、複数種類のコイルを得る必要が無い場合には、一対の柱状部材24,25,34,35に小径部24b,25b,34b,35bと大径部24a,25a,34a,35aを形成し無くても良い。
【0125】
また、上述した実施の形態では、第二被巻線部材31を第一被巻線部材21の回転中心軸B方向にずらして設ける第二被巻線部材ずらし工程が第一巻線工程の前の準備段階において行われる場合を説明した。けれども、この第二被巻線部材ずらし工程は第一コイル7を得た後に第二コイル6を得る前、即ち、第一巻線工程と第二巻線工程の間に行うようにしても良い。このようにしても、第二巻線工程において、第一被巻線部材21が第二被巻線部材31の周囲にその第二被巻線部材31を中心に回転したとしても、第二被巻線部材31が線材9を巻き取ることに支障を生じさせない。
【0126】
また、上述した実施の形態では、一対の柱状部材24,25,34,35に巻回された線材9から成る第一コイル7と第二コイル6をそれらから取り出す際に、第二被巻線部材31を第二コイル7とともに第一コイル7が得られた第一被巻線部材21に並べ、その後に、線材9が巻回された一対の柱状部材24,25,34,35の間隔を狭めて取り出す場合を説明した。
【0127】
けれども、第二被巻線部材31を第一被巻線部材21に並べることなく、一対の柱状部材24,25,34,35の間隔を狭めて、第一コイル7と第二コイル6をそれらから取り出すようにしても良い。この場合、第二被巻線部材31を軸方向に移動させる必要がなくなるので、第二被巻線部材31を軸方向に移動させる移動手段55を不要にすることが出来る。
【0128】
更に、上述した実施の形態では、回転母体12と別に第二被巻線部材31を回転させる第二回転手段50を設け、第二巻線工程において、その第二回転手段50により第二被巻線部材31を回転させつつ、主回転手段11により回転母体12を回転させることにより第二被巻線部材31を中心として第一被巻線部材21を回転させる場合を説明した。
【0129】
けれども、第一被巻線部材21に対する第二被巻線部材31の回転位置を調整することが不要であれば、回転母体12に第二被巻線部材31を同軸に直接取付けて、主回転手段11により第二被巻線部材31を第一被巻線部材21とともに回転させるようにしても良い。この場合、回転母体12と別に第二被巻線部材31を回転させる第二回転手段50を不要にすることが出来る。
【符号の説明】
【0130】
6 第二コイル
7 第一コイル
9 線材
10 巻線装置
11 モータ(主回転手段)
12 回転母体
21 第一被巻線部材
31 第二被巻線部材
40 第一回転手段
50 第二回転手段
55 移動手段
80 離接手段
81 操作盤
82 リンク片
A 回転母体(第二被巻線部材)の回転中心軸
B 第一被巻線部材の回転中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12