(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093872
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】PAM波形解析装置及びPAM波形解析方法
(51)【国際特許分類】
G01R 13/20 20060101AFI20220617BHJP
G01R 13/28 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
G01R13/20 X
G01R13/28 B
G01R13/20 S
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206586
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕樹
(57)【要約】
【課題】TDECQの悪化に寄与するサンプルがどのような遷移によって生じたのかをユーザが容易に確認でき、PAM信号の波形の品質を悪化させる要因の解析を手助けすることができるPAM波形解析装置及びPAM波形解析方法を提供する。
【解決手段】PAM信号に対するサンプリングを行い、PAM信号の波形データを取得する波形データ取得部10と、波形データ取得部10により取得された波形データに基づいて、PAM信号のアイパターンを表示部30に表示する表示制御部21と、アイパターンを形成する波形データのサンプルを選択するためのサンプル選択部22と、を備え、表示制御部21は、サンプル選択部22により選択されたサンプルの遷移状態を表示部30に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス振幅変調信号の波形を解析するPAM波形解析装置(100)であって、
前記パルス振幅変調信号に対するサンプリングを行い、前記パルス振幅変調信号の波形データを取得する波形データ取得部(10)と、
前記波形データ取得部により取得された波形データに基づいて、前記パルス振幅変調信号のアイパターンを表示部(30)に表示する表示制御部(21)と、
前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択するためのサンプル選択部(22)と、を備え、
前記表示制御部は、前記サンプル選択部により選択されたサンプルの遷移状態を前記表示部に表示することを特徴とするPAM波形解析装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記サンプル選択部により選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線を、前記アイパターン上に重ねて前記表示部に表示することを特徴とする請求項1に記載のPAM波形解析装置。
【請求項3】
前記サンプル選択部により選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルを判定する論理レベル判定部(24)と、
前記論理レベル判定部の判定結果に基づいて、前記サンプル選択部により選択されたサンプルの遷移状態を判定する遷移状態判定部(25)と、を更に備え、
前記表示制御部は、前記遷移状態判定部により判定された遷移状態を前記表示部に表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のPAM波形解析装置。
【請求項4】
前記アイパターンに基づいて前記パルス振幅変調信号のTDECQを算出するTDECQ算出部(26)を更に備え、
前記表示制御部は、前記TDECQ算出部により算出されたTDECQを前記表示部に表示することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のPAM波形解析装置。
【請求項5】
前記サンプル選択部は、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部(40)により、前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のPAM波形解析装置。
【請求項6】
前記サンプル選択部は、前記TDECQ算出部により算出されたTDECQに寄与する度合いの高いサンプルを検出するサンプル検出部(23)を含み、前記サンプル検出部により検出されたサンプルを選択することを特徴とする請求項1から請求項5に記載のPAM波形解析装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記遷移状態判定部により判定された遷移状態をリスト化して前記表示部に表示することを特徴とする請求項3から請求項6のいずれかに記載のPAM波形解析装置。
【請求項8】
前記遷移状態判定部により判定された遷移状態に基づいて、前記パルス振幅変調信号の品質評価を行う品質評価部(27)を更に備え、
前記表示制御部は、前記品質評価部による品質評価の結果を表示部に表示することを特徴とする請求項3から請求項7のいずれかに記載のPAM波形解析装置。
【請求項9】
パルス振幅変調信号の波形を解析するPAM波形解析方法であって、
前記パルス振幅変調信号に対するサンプリングを行い、前記パルス振幅変調信号の波形データを取得する波形データ取得ステップ(S1)と、
前記波形データ取得ステップにより取得された波形データに基づいて、前記パルス振幅変調信号のアイパターンを表示部(30)に表示する表示制御ステップ(S2)と、
前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択するためのサンプル選択ステップ(S6,S8)と、を含み、
前記表示制御ステップは、前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルの遷移状態を前記表示部に表示することを特徴とするPAM波形解析方法。
【請求項10】
前記表示制御ステップは、前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線を、前記アイパターン上に重ねて前記表示部に表示することを特徴とする請求項9に記載のPAM波形解析方法。
【請求項11】
前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルを判定する論理レベル判定ステップ(S9)と、
前記論理レベル判定ステップの判定結果に基づいて、前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルの遷移状態を判定する遷移状態判定ステップ(S10)と、を更に含み、
前記表示制御ステップは、前記遷移状態判定ステップにより判定された遷移状態を前記表示部に表示することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載のPAM波形解析方法。
【請求項12】
前記アイパターンに基づいて前記パルス振幅変調信号のTDECQを算出するTDECQ算出ステップ(S3)を更に含み、
前記表示制御ステップは、前記TDECQ算出ステップにより算出されたTDECQを前記表示部に表示することを特徴とする請求項9から請求項11のいずれかに記載のPAM波形解析方法。
【請求項13】
前記サンプル選択ステップは、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部(40)により、前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択することを特徴とする請求項9から請求項12のいずれかに記載のPAM波形解析方法。
【請求項14】
前記サンプル選択ステップは、前記TDECQ算出部により算出されたTDECQに寄与する度合いの高いサンプルを検出するサンプル検出ステップ(S7)を含み、前記サンプル検出ステップにより検出されたサンプルを選択することを特徴とする請求項9から請求項13に記載のPAM波形解析方法。
【請求項15】
前記表示制御ステップは、前記遷移状態判定ステップにより判定された遷移状態をリスト化して前記表示部に表示することを特徴とする請求項11から請求項14のいずれかに記載のPAM波形解析方法。
【請求項16】
前記遷移状態判定ステップにより判定された遷移状態に基づいて、前記パルス振幅変調信号の品質評価を行う品質評価ステップ(S12)を更に含み、
前記表示制御ステップは、前記品質評価ステップによる品質評価の結果を表示部に表示することを特徴とする請求項11から請求項15のいずれかに記載のPAM波形解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PAM波形解析装置及びPAM波形解析方法に関し、特に、被試験対象(Device Under Test:DUT)から出力されるパルス振幅変調信号の波形を評価するためのPAM波形解析装置及びPAM波形解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代5Gモバイル通信やクラウド通信サービスの普及により、データ通信トラフィックの更なる増大が予想されている。これに伴い、そのインフラとなるデータセンタなどでは、サーバやネットワーク機器の光インタフェース化が進んでおり、光トランシーバなどの光モジュールの需要が急増している。また、
図9に示すようなPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4)信号などの多値のパルス振幅変調信号(以下、「PAM信号」とも称する)を用いて伝送容量を拡張することが検討されている。PAM4信号は、0(00),1(01),2(10),3(11)の4値の論理レベルのPAM4シンボルからなる。
図10は、PAM4信号をシンボル単位で重ね合わせることによって得られるアイパターンの一例を示している。
【0003】
光トランシーバなどの光モジュールから出力される被測定信号の品質を評価する際には、サンプリングオシロスコープによるアイパターン解析が行われる。サンプリングオシロスコープは、被測定信号に同期したトリガ信号に基づいたタイミングで被測定信号のデータを取得する。
【0004】
PAM4信号の波形の評価には、IEEE802.3cdやbsで定義されるTDECQ(Transmitter and Dispersion Eye Closure Quaternary)という指標が用いられる。しかしながら、サンプリングオシロスコープで観測されたPAM4信号のアイパターンにおいては、TDECQの悪化に明らかに寄与しているアイ開口内に存在するサンプルなどの存在は一見して分かるものの、各サンプルがどのような遷移によって発生したのかが分からないという問題があった。PAM4信号の波形は
図9のように時系列データとして表示することも可能であるが、仮に全ての時系列データに対して遷移を表示しようとすると、遷移の数が多すぎるためにどの遷移がTDECQに寄与しているのかが分からない上に、演算処理量も増えて迅速な測定に支障をきたすという問題が生じてしまう。
【0005】
従来のサンプリングオシロスコープとしては、例えば、「010」、「101」などのユーザが所望する遷移を含むビット列のみに関するアイパターンやジッタ分析の結果を表示するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された装置は、NRZ信号を被測定信号とするものであり、PAM4信号には対応しておらず、それゆえにTDECQは考慮されていないという問題があった。また、2値のNRZ信号と比較して、4値のPAM4信号は遷移のパターンが増えて複雑になっているが、特許文献1に開示されたような従来の装置では、各PAM4シンボルがどのような遷移によって生じたものなのかを知ることができないという問題もあった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、TDECQの悪化に寄与するサンプルがどのような遷移によって生じたのかをユーザが容易に確認でき、PAM信号の波形の品質を悪化させる要因の解析を手助けすることができるPAM波形解析装置及びPAM波形解析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るPAM波形解析装置は、パルス振幅変調信号の波形を解析するPAM波形解析装置であって、前記パルス振幅変調信号に対するサンプリングを行い、前記パルス振幅変調信号の波形データを取得する波形データ取得部と、前記波形データ取得部により取得された波形データに基づいて、前記パルス振幅変調信号のアイパターンを表示部に表示する表示制御部と、前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択するためのサンプル選択部と、を備え、前記表示制御部は、前記サンプル選択部により選択されたサンプルの遷移状態を前記表示部に表示する構成である。
【0010】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、PAM信号のアイパターンを形成する波形データのサンプルを選択するためのサンプル選択部を備え、サンプル選択部により選択されたサンプルの遷移状態を表示する。特に、本発明に係るPAM波形解析装置は、サンプル選択部によりTDECQの悪化に寄与するサンプルが選択された場合には、そのサンプルがどのような遷移によって生じたのかをユーザが容易に確認できるため、PAM信号の波形の品質を悪化させる要因の解析を手助けすることができる。
【0011】
また、本発明に係るPAM波形解析装置においては、前記表示制御部は、前記サンプル選択部により選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線を、前記アイパターン上に重ねて前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0012】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、サンプル選択部により選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線をアイパターン上に重ねて表示部に表示するため、ユーザが直観的に遷移を確認することができる。また、本発明に係るPAM波形解析装置は、複数のサンプルの遷移状態の表示を行う場合には、遷移状態を示す線の色や種類を変えて各表示を識別しやすくすることもできる。
【0013】
また、本発明に係るPAM波形解析装置は、前記サンプル選択部により選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルを判定する論理レベル判定部と、前記論理レベル判定部の判定結果に基づいて、前記サンプル選択部により選択されたサンプルの遷移状態を判定する遷移状態判定部と、を更に備え、前記表示制御部は、前記遷移状態判定部により判定された遷移状態を前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0014】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、サンプル選択部により選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルに基づいて、サンプル選択部により選択されたサンプルの遷移状態を判定することができる。
【0015】
また、本発明に係るPAM波形解析装置は、前記アイパターンに基づいて前記パルス振幅変調信号のTDECQを算出するTDECQ算出部を更に備え、前記表示制御部は、前記TDECQ算出部により算出されたTDECQを前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、アイパターンに基づいてPAM信号のTDECQを算出し、算出したTDECQを表示部に表示するため、PAM信号の波形の品質が劣化しているか否かをユーザが確認することができる。
【0017】
また、本発明に係るPAM波形解析装置においては、前記サンプル選択部は、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部により、前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択する構成であってもよい。
【0018】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、ユーザが操作部を用いてアイパターンを形成する波形データの所望のサンプルを選択することができる。
【0019】
また、本発明に係るPAM波形解析装置においては、前記サンプル選択部は、前記TDECQ算出部により算出されたTDECQに寄与する度合いの高いサンプルを検出するサンプル検出部を含み、前記サンプル検出部により検出されたサンプルを選択する構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、サンプル検出部により自動的に検出した、TDECQに寄与する度合いの高いサンプルの遷移状態を表示することができる。
【0021】
また、本発明に係るPAM波形解析装置においては、前記表示制御部は、前記遷移状態判定部により判定された遷移状態をリスト化して前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0022】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、サンプルの遷移状態をリスト化して表示部に表示するため、ユーザが容易に遷移を確認することができる。
【0023】
また、本発明に係るPAM波形解析装置は、前記遷移状態判定部により判定された遷移状態に基づいて、前記パルス振幅変調信号の品質評価を行う品質評価部を更に備え、前記表示制御部は、前記品質評価部による品質評価の結果を表示部に表示する構成であってもよい。
【0024】
この構成により、本発明に係るPAM波形解析装置は、遷移状態判定部により判定された遷移状態に基づいてPAM信号の品質評価を行った結果を表示部に表示することで、PAM信号の波形の品質を悪化させる要因の解析を手助けすることができる。
【0025】
また、本発明に係るPAM波形解析方法は、パルス振幅変調信号の波形を解析するPAM波形解析方法であって、前記パルス振幅変調信号に対するサンプリングを行い、前記パルス振幅変調信号の波形データを取得する波形データ取得ステップと、前記波形データ取得ステップにより取得された波形データに基づいて、前記パルス振幅変調信号のアイパターンを表示部に表示する表示制御ステップと、前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択するためのサンプル選択ステップと、を含み、前記表示制御ステップは、前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルの遷移状態を前記表示部に表示する構成である。
【0026】
また、本発明に係るPAM波形解析方法においては、前記表示制御ステップは、前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線を、前記アイパターン上に重ねて前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0027】
また、本発明に係るPAM波形解析方法は、前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルを判定する論理レベル判定ステップと、前記論理レベル判定ステップの判定結果に基づいて、前記サンプル選択ステップにより選択されたサンプルの遷移状態を判定する遷移状態判定ステップと、を更に含み、前記表示制御ステップは、前記遷移状態判定ステップにより判定された遷移状態を前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0028】
また、本発明に係るPAM波形解析方法は、前記アイパターンに基づいて前記パルス振幅変調信号のTDECQを算出するTDECQ算出ステップを更に含み、前記表示制御ステップは、前記TDECQ算出ステップにより算出されたTDECQを前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0029】
また、本発明に係るPAM波形解析方法においては、前記サンプル選択ステップは、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部により、前記アイパターンを形成する前記波形データのサンプルを選択する構成であってもよい。
【0030】
また、本発明に係るPAM波形解析方法においては、前記サンプル選択ステップは、前記TDECQ算出部により算出されたTDECQに寄与する度合いの高いサンプルを検出するサンプル検出ステップを含み、前記サンプル検出ステップにより検出されたサンプルを選択する構成であってもよい。
【0031】
また、本発明に係るPAM波形解析方法においては、前記表示制御ステップは、前記遷移状態判定ステップにより判定された遷移状態をリスト化して前記表示部に表示する構成であってもよい。
【0032】
また、本発明に係るPAM波形解析方法は、前記遷移状態判定ステップにより判定された遷移状態に基づいて、前記パルス振幅変調信号の品質評価を行う品質評価ステップを更に含み、前記表示制御ステップは、前記品質評価ステップによる品質評価の結果を表示部に表示する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、TDECQの悪化に寄与するサンプルがどのような遷移によって生じたのかをユーザが容易に確認でき、PAM信号の波形の品質を悪化させる要因の解析を手助けすることができるPAM波形解析装置及びPAM波形解析方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施形態に係るPAM波形解析装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1における波形データ取得部の動作を説明するための図である。
【
図3】
図1におけるTDECQ算出部による被測定信号のアイパターンのTDECQの算出処理について説明するための図である。
【
図4】
図1におけるサンプル選択部によりサンプルが選択された状態を示す図である。
【
図5】
図1におけるサンプル選択部により選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線がアイパターン上に重畳表示された状態を示す図である。
【
図6】
図1におけるサンプル選択部により個別に選択された複数のサンプルの遷移状態のリストの一例を示す表である。
【
図7】
図1におけるサンプル検出部により検出された複数のサンプルの遷移状態のリストの一例を示す表である。
【
図8】本発明の実施形態に係るPAM波形解析装置を用いるPAM波形解析方法の処理を示すフローチャートである。
【
図9】PAM4信号の時系列波形の一例を示すグラフである。
【
図10】PAM4信号のアイパターンを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るPAM波形解析装置及びPAM波形解析方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0036】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るPAM波形解析装置100は、DUT200から出力される被測定信号であるPAM信号の波形を解析するものであって、波形データ取得部10と、演算処理部20と、表示部30と、操作部40と、を備える。なお、以下では、特にPAM信号がPAM4信号である場合を例に挙げて説明する。
【0037】
DUT200が対応する伝送規格の例としては、Ethernet(登録商標)、eCPRI/RoE、CPRI、SDH/SONET、OTN、InfiniBand、Fibre Channelなどが挙げられる。DUT200としては、被測定信号である電気信号又は光信号を出力するものを想定している。被測定信号は、DUT200自身が発生させる場合や、パルスパターン発生器(Pulse Pattern Generator:PPG)などの外部信号源からDUT200に入力された電気信号/光信号がDUT200により光信号/電気信号に変換されて出力される場合などがある。
【0038】
被測定信号の種類としては、例えば、NRZ方式の場合にはPRBS(Pseudo-random bit sequence:擬似ランダム・ビット・シーケンス)パターンなどが挙げられる。また、PAM4方式の場合には、PRBSパターンやSSPRQ(Short Stress Pattern Random Quaternary)パターンなどが挙げられる。その他、固定パターン、任意パターンによるプログラマブルパターン等を被測定信号として用いることも可能である。
【0039】
また、光信号を出力するDUT200としては、例えば、光トランシーバが挙げられる。電気信号を出力するDUT200としては、例えば、PPG、光モジュールの中で使われているDSP(Digital Signal Processor)などが挙げられる。光トランシーバは、電気信号と光信号を相互に変換するためのモジュールであり、例えば、電界吸収型変調器集積レーザ(Electro-absorption Modulator integrated Laser diode:EML)を備えたTOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)や、フォトダイオード(Photodiode)を備えたROSA(Receiver Optical Sub-Assembly)などの光送受信デバイスが搭載されている。光トランシーバの規格には、SFP28、QSFP28、CFP2/4/8、SFP56、QSFP56、OSFP、QSFP-DDなどがある。
【0040】
波形データ取得部10は、被測定信号に対するサンプリングを行い、被測定信号の波形データを取得するようになっており、サンプラ11と、A/D変換器12と、トリガ回路13と、を含む。
【0041】
サンプラ11は、トリガ回路13にて生成されるストローブ信号をサンプリングタイミングとして例えば数百kHzでスイッチング動作し、DUT200から入力される被測定信号をサンプリングする。
図2に示すように、ストローブ信号の周期は、被測定信号のパターン周期の整数倍に時間分解能Δtを加えたものとすることができる。すなわち、被測定信号の周期波形の特定の位置を基準として、トリガイベントの位相がΔtずつ徐々にずれていくため、サンプラ11は被測定信号の波形を時間分解能Δtで復元することができる。なお、
図2は、被測定信号を時系列データ(パルスパターン)として表示しているが、表示形態を変えて被測定信号を2UIで折り返して表示すればアイパターンが得られる。
【0042】
A/D変換器12は、サンプラ11にてサンプリングされたアナログの被測定信号をディジタルの波形データに変換する。
【0043】
トリガ回路13は、被測定信号に同期した外部から供給されるトリガクロック(例えば、矩形波や正弦波)に応じて、サンプラ11のサンプリングタイミングとして用いられるストローブ信号を生成する回路である。なお、トリガクロックは、被測定信号から抽出されたものであってもよい。
【0044】
演算処理部20は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、表示制御部21、サンプル選択部22、論理レベル判定部24、遷移状態判定部25、TDECQ算出部26、及び品質評価部27の機能を実現する。なお、演算処理部20は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、CPUによる所定のプログラムの実行によりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、演算処理部20は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0045】
表示制御部21は、波形データ取得部10により取得された波形データに基づいて被測定信号のアイパターンを表示部30に表示するようになっている。なお、表示制御部21は、ユーザによる操作部40への操作入力に応じて、表示部30に表示されたアイパターンの一部(例えば、注目すべき1つのアイ)を拡大表示できるようになっていてもよい。
【0046】
TDECQ算出部26は、被測定信号のアイパターンに基づいて、被測定信号のTDECQを算出するようになっている。以下、TDECQ算出部26によるTDECQの算出処理について説明する。
図3の左側は、表示制御部21により表示部30に表示された被測定信号のアイパターンを模式的に示している。
【0047】
[測定手順1]
まず、TDECQ算出部26は、
図3のアイパターンにおける交点の位置から、0UI(Unit Interval)と1UIを決定する。次に、TDECQ算出部26は、中央のアイの中心X座標を0.5UIとしたときに、破線の長方形で示す2つの測定領域28L,28Rのうちの左側の測定領域28Lに含まれるサンプルのヒストグラムを測定する。得られるヒストグラムは、
図3の中央に示すようなものとなる。ここで、左側の測定領域28Lは0.45UIを中心に0.04UI幅であり、右側の測定領域28Lは0.55UIを中心に0.04UI幅である。
【0048】
[測定手順2]
次に、TDECQ算出部26は、PAM4の各論理レベルを識別するためのしきい値となる電圧レベルを決める。各しきい値を電圧レベルの高い方から順に、Upper、Middle、Lowerと呼ぶことにすると、各しきい値は
図3のアイパターンの横方向の破線の位置に下記の式(1)~(3)のように与えられる。ここで、Averageは、測定領域28Lに含まれる全サンプルのパワーの平均値から求まる平均電圧レベルである。また、Outer OMAは、PAM4信号の光変調振幅であって、論理レベル「3」と論理レベル「0」の電圧差である。
【0049】
【0050】
[測定手順3]
次に、TDECQ算出部26は、測定領域28Lに含まれる全サンプルにガウス雑音を付加していく。すると、
図3の中央のヒストグラムから右側のヒストグラムの変化に示すように、ヒストグラムの裾が広がっていく。ここで、例えばUpperのしきい値に注目すると、しきい値の上側は論理レベル「3」からの飛び込みサンプル、下側は論理レベル「2」からの飛び込みサンプルが雑音の付加に伴って発生する。これらの飛び込みサンプルはSER(Symbol Error Rate)に寄与する。そして、TDECQ算出部26は、IEEE802.3cdで規定されたSER=4.8E-4となる付加雑音を求める。他のしきい値Middle、Lowerについても、同様に付加雑音を求めることができる。
【0051】
[測定手順4]
TDECQ算出部26は、右側の測定領域28Rについても同様に測定手順1~3を実行し、付加雑音を求める。
【0052】
[測定手順5]
TDECQ算出部26は、左右の測定領域28L,28Rで得られた6つの付加雑音の値のうち、最も小さい値を付加雑音NAとして選択する。
【0053】
[測定手順6]
TDECQ算出部26は、下記の式(4)に従ってTDECQを計算する。式(4)において、Qtは、IEEE802.3cdで規定されたSER=4.8E-4では3.414となる。また、下記の式(5)に示すように、Rは、測定手順5で求めた付加雑音NAの2乗と、PAM波形解析装置100自身が持つ雑音NSの2乗との和の平方根である。
【0054】
【0055】
以上の測定手順1~6により、TDECQ算出部26は、被測定信号のTDECQを算出することができる。なお、本実施形態のTDECQ算出部26の処理は、上記の測定手順1~6の記載に限定されず、Upper、Middle、Lowerの各しきい値に対応するアイ開口ごとにTDECQを算出するものであってもよい。この場合は、測定手順5において、左右の測定領域28L,28Rでしきい値ごとに得られる2つの付加雑音の値のうち、小さい値の付加雑音NAをしきい値ごとに選択することになる。
【0056】
表示制御部21は、TDECQ算出部26により算出されたTDECQを表示部30に表示するようになっていてもよい。
【0057】
サンプル選択部22は、例えば、ユーザによる操作部40への操作入力により、被測定信号のアイパターンを形成する波形データの所望のサンプルを表示部30の画面上で選択するためのものである。例えば、ユーザによりアイ開口内に存在するサンプルが選択されたり、それ以外の任意のサンプルが選択されたりすることが想定される。あるいは、サンプル選択部22は、被測定信号のアイパターンを形成する波形データのサンプルのうち、後述するTDECQ算出部26により算出されたTDECQに寄与する度合いの高いサンプルを自動的に選択するものであってもよい。あるいは、サンプル選択部22は、アイパターンの所定の領域に存在する全てのサンプルを選択するものであってもよい。
【0058】
論理レベル判定部24は、被測定信号の時系列の波形データについて、サンプル選択部22により選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルを判定するようになっている。ここで、選択されたサンプルとその時間的に前後のサンプルとの時間間隔は、1UI以下であるとする。
【0059】
例えば、論理レベル判定部24は、電圧レベルがUpper以上であるサンプルの論理レベルを「3」と判定する。また、論理レベル判定部24は、電圧レベルがUpper未満かつMiddle以上であるサンプルの論理レベルを「2」と判定する。また、論理レベル判定部24は、電圧レベルがMiddle未満かつLower以上であるサンプルの論理レベルを「1」と判定する。また、論理レベル判定部24は、電圧レベルがLower未満であるサンプルの論理レベルを「0」と判定する。
【0060】
遷移状態判定部25は、論理レベル判定部24の判定結果に基づいて、サンプル選択部22により選択されたサンプルの遷移状態を判定するようになっている。ここで、「遷移状態」とは、サンプル選択部22により選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルがどのように遷移したかを示すものである。
【0061】
表示制御部21は、サンプル選択部22により選択されたサンプルの遷移状態を表示部30に表示するようになっている。例えば、サンプル選択部22が、
図4において三角形で囲まれた位置に存在するサンプルを選択する場合、表示制御部21は、
図5に示すように、サンプル選択部22により選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線を、アイパターン上に重ねて表示部30に表示する。また、表示制御部21は、
図9に示すようなパルスパターンにおいて、サンプル選択部22により選択されたサンプルの位置を表示部30に表示するようになっていてもよい。
【0062】
なお、
図5の例では、論理レベル判定部24は、サンプル選択部22により選択されたサンプルの論理レベルを「2」、サンプル選択部22により選択されたサンプルの前のサンプルの論理レベルを「2」、サンプル選択部22により選択されたサンプルの後のサンプルの論理レベルを「3」と判定する。この場合、遷移状態判定部25は、サンプル選択部22により選択されたサンプルの遷移状態が「2」から「3」に遷移した(2 to 3)と判定する。
【0063】
また、表示制御部21は、サンプル選択部22により選択された複数のサンプルの遷移状態を表示部30に表示するようになっていてもよい。例えば、表示制御部21は、複数のサンプルの遷移状態をアイパターン上に重畳表示する場合には、サンプル選択部22により選択されたサンプルごとに遷移状態を示す線の色や種類を変えることができる。あるいは、
図6に示すように、表示制御部21は、ユーザによる操作部40への操作入力に応じてサンプル選択部22により個別に選択された複数のサンプルについて、遷移状態判定部25により判定された当該複数のサンプルの遷移状態をリスト化して表示部30に表示するようになっていてもよい。
図6の例では、ユーザが操作部40を介してチェックマークを付けたサンプルの遷移状態のみが、アイパターン上に重畳表示されるようになっている。
【0064】
さらに、サンプル選択部22は、TDECQ算出部26により算出されたTDECQに寄与する度合いの高いサンプルを検出するサンプル検出部23を含み、サンプル検出部23により検出されたサンプルを選択するものであってもよい。TDECQに寄与する度合いの高いサンプルとは、例えば、TDECQの測定領域28L,28R内におけるアイ開口の中に存在するサンプルである。
【0065】
表示制御部21は、
図7に示すように、サンプル検出部23により検出された複数のサンプルについて、遷移状態判定部25により判定された当該複数のサンプルの遷移状態をリスト化して表示部30に表示することも可能である。
図7のリストには、立ち上がり遷移(図中の「Rising」)の出現数、立ち下がり遷移(図中の「Falling」)の出現数、遷移のない状態(図中の「Flat」)の出現数が表示される。なお、操作部40により個別に選択されたサンプルの遷移状態を示す
図6の個別表示のリストと、サンプル検出部23により検出されたサンプルの遷移状態を示す
図7の一覧表示のリストのいずれか又は両方を採用するかについては、ユーザによる操作部40への操作入力により指定できるようになっているとよい。
【0066】
なお、TDECQ算出部26は、サンプル選択部22により選択されたサンプルを削除した状態で、TDECQを算出する機能を備えていてもよい。この機能により、例えば、TDECQの悪化に寄与していると考えられるサンプルを除外したときに、TDECQがどれだけ改善するかを確認することができる。
【0067】
品質評価部27は、例えば、サンプル検出部23により検出されたサンプルについて遷移状態判定部25により判定された遷移状態と、波形データ取得部10により取得された被測定信号の波形データとを人工知能により分析し、その分析結果に基づいて被測定信号の品質評価を行うようになっている。また、表示制御部21は、
図7の"Suggestion"の欄において、品質評価部27による品質評価の結果を表示部30に表示するようになっている。表示部30に表示される品質評価の結果は、例えば、「0レベルから3レベルへの立ち上がり遷移が緩やかであり、ここから○○であることがいえる」、「2レベルから1レベルへの立ち上がり遷移ばかりが含まれているので、ここから△△であることがいえる」、「被測定信号に不要な周波数成分が含まれていることによりノイズが大きくなっている」などのようなものである。
【0068】
操作部40は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部30の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。操作部40は、ユーザが表示画面に表示されている特定の項目の位置を指やスタイラス等で触れた際に、タッチセンサが表示画面上で検出した位置と項目の位置との一致を認識することにより、各項目に割り当てられた機能を実行するための信号を演算処理部20に出力する。あるいは、操作部40は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。
【0069】
表示部30は、液晶ディスプレイやCRT等の表示機器で構成され、表示制御部21による表示制御に基づき、各種表示内容を表示するようになっている。さらに、表示部30は、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0070】
以下、本実施形態に係るPAM波形解析装置100を用いるPAM波形解析方法について、
図8のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0071】
まず、波形データ取得部10は、被測定信号であるPAM信号に対するサンプリングを行い、被測定信号の波形データを取得する(波形データ取得ステップS1)。
【0072】
次に、表示制御部21は、波形データ取得ステップS1により取得された波形データに基づいて、被測定信号のアイパターンを表示部30に表示する(表示制御ステップS2)。
【0073】
次に、TDECQ算出部26は、表示制御ステップS2により表示制御されたアイパターンに基づいて、被測定信号のTDECQを算出する(TDECQ算出ステップS3)。
【0074】
次に、表示制御部21は、TDECQ算出ステップS3により算出されたTDECQを表示部30に表示する(表示制御ステップS4)。
【0075】
次に、サンプル選択部22は、ユーザによる操作部40への操作入力に応じて、アイパターンを形成する波形データのサンプルを選択するための選択方法を決定する(ステップS5)。ここで、サンプルの選択方法は、ユーザによる操作部40への操作入力による「手動選択」と、サンプル検出部23による「自動選択」とを含む。
【0076】
ステップS5においてユーザにより手動選択が設定された場合、サンプル選択部22は、ユーザによる操作部40への操作入力により、アイパターンを形成する波形データのサンプルを選択する(サンプル選択ステップS6)。
【0077】
また、ステップS5においてユーザにより自動選択が設定された場合、サンプル選択部22のサンプル検出部23は、TDECQ算出ステップS3により算出されたTDECQに寄与する度合いの高いサンプルを検出する(サンプル検出ステップS7)。
【0078】
次に、サンプル選択部22は、サンプル検出ステップS7により検出されたサンプルを選択する(サンプル選択ステップS8)。
【0079】
次に、論理レベル判定部24は、サンプル選択ステップS6,S8により選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルを判定する(論理レベル判定ステップS9)。
【0080】
次に、遷移状態判定部25は、論理レベル判定ステップS9の判定結果に基づいて、サンプル選択ステップS6,S8により選択されたサンプルの遷移状態を判定する(遷移状態判定ステップS10)。
【0081】
次に、表示制御部21は、遷移状態判定ステップS10により判定された遷移状態を表示部30に表示する(表示制御ステップS11)。例えば、表示制御ステップS11は、サンプル選択ステップS6により選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線を、アイパターン上に重ねて表示部30に表示する。あるいは、表示制御ステップS11は、遷移状態判定ステップS10により判定された遷移状態をリスト化して表示部30に表示する。
【0082】
次に、品質評価部27は、遷移状態判定ステップS10により判定された遷移状態に基づいて、被測定信号の品質評価を行う(品質評価ステップS12)。
【0083】
次に、表示制御部21は、品質評価ステップS12による品質評価の結果を表示部30に表示する(表示制御ステップS13)。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、被測定信号であるPAM信号のアイパターンを形成する波形データのサンプルを選択するためのサンプル選択部22を備え、サンプル選択部22により選択されたサンプルの遷移状態を表示部30に表示するようになっている。特に、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、サンプル選択部22によりTDECQの悪化に寄与するサンプルが選択された場合には、そのサンプルがどのような遷移によって生じたのかをユーザが容易に確認できるため、PAM信号の波形の品質を悪化させる要因の解析を手助けすることができる。
【0085】
また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、サンプル選択部22により選択されたサンプルと、当該サンプルの時間的に前後のサンプルとを補間する線をアイパターン上に重ねて表示部30に表示するため、ユーザが直観的に遷移を確認することができる。また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、複数のサンプルの遷移状態の表示を行う場合には、遷移状態を示す線の色や種類を変えて各表示を識別しやすくすることもできる。
【0086】
また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、サンプル選択部22により選択されたサンプルの時間的に前後のサンプルの論理レベルに基づいて、サンプル選択部22により選択されたサンプルの遷移状態を判定することができる。
【0087】
また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、アイパターンに基づいてPAM信号のTDECQを算出し、算出したTDECQを表示部30に表示するため、PAM信号の波形の品質が劣化しているか否かをユーザが確認することができる。
【0088】
また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、ユーザが操作部40を用いてアイパターンを形成する波形データの所望のサンプルを選択することができる。
【0089】
また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、TDECQに寄与する度合いの高いサンプルを自動的に検出することができる。
【0090】
また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、サンプルの遷移状態をリスト化して表示部30に表示するため、ユーザが容易に遷移を確認することができる。
【0091】
また、本実施形態に係るPAM波形解析装置100は、遷移状態判定部25により判定された遷移状態に基づいてPAM信号の品質評価を行った結果を表示部30に表示することで、PAM信号の波形の品質を悪化させる要因の解析を手助けすることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 波形データ取得部
11 サンプラ
12 A/D変換器
13 トリガ回路
20 演算処理部
21 表示制御部
22 サンプル選択部
23 サンプル検出部
24 論理レベル判定部
25 遷移状態判定部
26 TDECQ算出部
27 品質評価部
30 表示部
40 操作部
100 PAM波形解析装置
200 DUT