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  • 特開-車両用の内装部材取付構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093899
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】車両用の内装部材取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20220617BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
B60R13/02 B
B60K37/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206625
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 友明
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BD29
3D023BE36
3D344AA01
3D344AA09
3D344AA12
3D344AA14
3D344AB01
3D344AC07
3D344AC13
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で車両衝突時の内装部材の外れを抑制する。
【解決手段】インパネ10にカバー20を取付ける内装部材取付構造100であって、インパネ10に設けられた座板部16、18に設けられた貫通孔17、19と、カバー20の裏面のカバー上側周縁部22に立設されて貫通孔17、19にそれぞれ挿通されるクリップ24、25と、で構成され、クリップ24、25は、座板部16、18に当接する基端部25a、26aと、座板部16、18の貫通孔17、19に係合する係合部25b、26bとを備え、座板部16、18はインパネ10の下側周縁部13に複数列に並べて配置され、座板部16の挿通方向の位置と座板部18の挿通方向の位置とが異なっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の内装パネルに車両用の内装部材を取付ける車両用の内装部材取付構造であって、
前記内装パネルに設けられた複数の座板部にそれぞれ設けられた複数の貫通孔と、
前記内装部材の意匠面と反対側の裏面の周縁部に立設され、複数の前記貫通孔にそれぞれ挿通されて前記内装パネルに前記内装部材を取付ける複数のクリップと、で構成され、
前記クリップは、前記座板部の挿通方向手前側の面の前記貫通孔の周辺に当接する基端部と、前記座板部の挿通方向奥側の面の前記貫通孔の周縁に係合する係合部とを備え、
複数の前記座板部は前記内装パネルの周縁部に複数列に並べて配置され、
一の列の各前記座板部の挿通方向の位置と少なくとも1つの他の列の各前記座板部の挿通方向の位置とが異なっていること、
を特徴とする車両用の内装部材取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用の内装部材取付構造であって、
複数の前記座板部は、一の列の前記座板部の並び方向の位置と少なくとも1つの他の列の並び方向の位置とが異なっていること、
を特徴とする車両用の内装部材取付構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用の内装部材取付構造であって、
前記座板部は、前記内装パネルに設けられた四角形状の開口の一の辺の周縁部と、前記一の辺と対向する他の辺の周縁部とに配置され、
前記内装部材が前記内装パネルに取付けられた際に前記内装部材の重心位置から近い方の辺の周縁部には、前記座板部が一列に並べて配置され、
前記内装部材が前記内装パネルに取付けられた際に前記内装部材の前記重心位置から遠い方の辺の周縁部には、前記座板部が複数列に並べて配置され、一の列の各前記座板部の挿通方向の位置と少なくとも1つの他の列の各前記座板部の挿通方向の位置とが異なっており、且つ、一の列の前記座板部の並び方向の位置と少なくとも1つの他の列の並び方向の位置とが異なっていること、
を特徴とする車両用の内装部材取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内装パネルに車両用の内装部材を取付ける車両用の内装部材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内装パネルであるインストルメントパネルにカバー部材を取付ける取付構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された取付構造では、インストルメントパネルの開口の周縁部に複数の固定孔を配置し、カバー部材に設けられたクリップを固定孔に嵌挿してカバー部材をインストルメントパネルに取付ける構成が開示されている。この構成では、カバー部材をインストルメントパネルに向かって車両前側に押し込むことにより、クリップを固定孔に嵌挿させ、カバー部材をインストルメントパネルに取付ける。
【0003】
また、車両の内装パネルの開口に取付けられるカバーであって、開口から内装パネルの裏面に差し込まれて内装パネルの裏面に当接する差し込み部と、開口に差し込まれてパネルの裏面に係合する係止爪を備える係止部とを備え、差し込み部と係止部とによりカバーを内装パネルに取付ける構成が開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の構造では、弾性体により係止部を内装パネル側に引っ張ってカバーの裏側の周縁部を内装パネルの表面に圧接させて取付け強度の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-147080号公報
【特許文献2】特許第6349152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の後側から車両に衝突する後突が発生する場合がある。この際、クリップ等で車両の内装パネルに取付けられている内装部材には、内装パネルに対して車両後側に向かう慣性力が加わる。このため、特許文献1に記載されたように、カバー部材をインストルメントパネルに向かって車両前側に押し込んでカバー部材をインストルメントパネルに取付ける構造の場合、後突時には、カバー部材をインストルメントパネルから取り外す様に車両後方に向かう慣性力がカバー部材に加わる。このため、慣性力によりクリップが固定孔から抜けてカバー部材が車両後方に向かって外れる場合がある。
【0006】
カバー部材が外れる場合、カバー部材の重心位置から離れた位置の固定孔に嵌合しているクリップを中心にしてカバー部材が回転して重心位置に近い方の固定孔に嵌合しているクリップが外れ、その後、回転中心となった固定孔に嵌合しているクリップが外れる。
【0007】
一方、特許文献2に記載された構成の場合は、特許文献1に記載された構成よりも後突の際にカバーが車両後方に向かって外れにくくなるが、構造が複雑になるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、簡便な構成で車両衝突時の内装部材の外れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両用の内装部材取付構造は、車両の内装パネルに車両用の内装部材を取付ける車両用の内装部材取付構造であって、前記内装パネルに設けられた複数の座板部にそれぞれ設けられた複数の貫通孔と、前記内装部材の意匠面と反対側の裏面の周縁部に立設され、複数の前記貫通孔にそれぞれ挿通されて前記内装パネルに前記内装部材を取付ける複数のクリップと、で構成され、前記クリップは、前記座板部の挿通方向手前側の面の前記貫通孔の周辺に当接する基端部と、前記座板部の挿通方向奥側の面の前記貫通孔の周縁に係合する係合部とを備え、複数の前記座板部は前記内装パネルの周縁部に複数列に並べて配置され、一の列の各前記座板部の挿通方向の位置と少なくとも1つの他の列の各前記座板部の挿通方向の位置とが異なっていること、を特徴とする。
【0010】
この構成により、車両が衝突した際に内装部材に加わる慣性力により、一の列の座板部の貫通孔に挿入されたクリップの係合部を中心とした回転モーメントが発生した場合、他の列の座板部の貫通孔に挿入されたクリップの係合部には、挿通方向に対して傾斜した方向に力が加わる。このため、他の列の座板部に挿入されたクリップは座板部の貫通孔から抜けずに係合部が座板部の挿通方向奥側の面に係合した状態を保持する。このため、一の座板部の貫通孔に挿入されたクリップの係合部を中心にして慣性力によって内装部材に加わる回転モーメントと反対方向の回転モーメントが発生し、内装部材が一の列の座板部の貫通孔に挿入されたクリップの係合部を中心として回転することを抑制でき、内装部材の回転によるクリップの外れを抑制し、車両衝突時の内装部材の外れを抑制することができる。このように、本発明の車両用の内装部材取付構造は、座板部の挿通方向の位置を異ならせるという簡便な構成により、車両の衝突時の内装部材の外れを抑制することができる。
【0011】
本発明の車両用の内装部材取付構造において、複数の前記座板部は、一の列の前記座板部の並び方向の位置と少なくとも1つの他の列の並び方向の位置とが異なるようにしてもよい。
【0012】
これにより、一の列の座板部と他の列の座板部とが千鳥配列となるので、一の列の座板部と他の列の座板部とを容易に配置することができる。
【0013】
本発明の車両用の内装部材取付構造において、前記座板部は、前記内装パネルに設けられた四角形状の開口の一の辺の周縁部と、前記一の辺と対向する他の辺の周縁部とに配置され、前記内装部材が前記内装パネルに取付けられた際に前記内装部材の重心位置から近い方の辺の周縁部には、前記座板部が一列に並べて配置され、前記内装部材が前記内装パネルに取付けられた際に前記内装部材の前記重心位置から遠い方の辺の周縁部には、前記座板部が複数列に並べて配置され、一の列の各前記座板部の挿通方向の位置と少なくとも1つの他の列の各前記座板部の挿通方向の位置とが異なっており、且つ、一の列の前記座板部の並び方向の位置と少なくとも1つの他の列の並び方向の位置とが異なってもよい。
【0014】
このように、内装部材を内装パネルに取付けた際に内装部材の重心位置から遠い辺の周縁部に挿通方向の位置の異なる座板部を2列に配置することにより、車両の衝突の際に内装部材が重心位置から遠い方の辺の周縁部に配置されているクリップの係合部を中心に回転することが抑制され、重心位置に近い側の辺の周縁部に1列に配置されているクリップの係合部が座板部の貫通孔から外れることを抑制する。これにより、車両が衝突した際の内装部材の外れを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、簡便な構成で車両衝突時の内装部材の外れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態における車両用の内装部材取付構造の貫通孔を備えるインパネを示す斜視図である。
図2】実施形態における車両用の内装部材取付構造のクリップを備えるカバーを示す斜視図である。
図3図1に示すインパネに図2に示すカバーを取り付けた状態の断面図であり、図1に示すA-A断面を示す図である。
図4】後突の場合の慣性力と慣性力による回転モーメントとクリップに加わる荷重とを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら実施形態の車両用の内装部材取付構造100について説明する。尚、各位に示す矢印FR、矢印UP、矢印LHは、車両の前方向(進行方向)、上方向、左方向をそれぞれ示している。また、各矢印FR、UP、LHの反対方向は、車両後方向、下方向、左方向を示す。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0018】
実施形態の内装部材取付構造100は、図1に示すインストルメントパネル(以下、インパネ10という)に設けられた貫通孔15、17、19と、図2に示すインパネ10に取付けられるカバー20に設けられて各貫通孔15、17、19に挿通されるクリップ24、25、26とで構成される。尚、以下の説明では、図3、4に示すように、クリップ24、25、26を各貫通孔15、17、19に挿通する方向を挿通方向として説明する。
【0019】
図1に示すインパネ10は、車室の前端に取付けられて、速度計、温度計等の計器が取付けられる車両の内装パネルである。
【0020】
図1に示す様に、インパネ10は、樹脂製のパネル部材であって、四角形状の開口10aが設けられている。開口10aの上側周縁部12と、上側周縁部12に対向する下側の下側周縁部13とにはそれぞれ上側座板部14と下側第1座板部16、下側第2座板部18とが設けられている。上側座板部14と下側第1座板部16と下側第2座板部18の中央にはそれぞれ貫通孔15、17、19が設けられている。
【0021】
図1図3に示す様に、上側周縁部12は、インパネ10の意匠面である表面11の上端部11aから車両前方に向かって凹んだ板状の段部であり、下端が開口10aの上側の辺を構成する。従って、上側周縁部12は開口10aの上側の辺の周縁部分である。上側座板部14は、板状の段部である上側周縁部12の一部分であり、後で説明する上側クリップ24の基端部24aが当接する部分である。尚、上側座板部14は、上側周縁部12の表面から少し凹んでいてもよいし、逆に少し凸となっていてもよい。上側座板部14は、開口10aの上側周縁部12に車両幅方向に向かって一列に並んで複数配置されている。図1では、2つの上側座板部14を示すが、上側座板部14は、複数で車両幅方向に一列に並んで配置されていれば、3つ以上でもよい。
【0022】
下側周縁部13は、インパネ10の下端部11bから車両前方に向かって凹んだ板状の段部である下側第1周縁部13aと、下側第1周縁部13aの上端部から車両前方に向かって更に凹んだ板状の段部である下側第2周縁部13bとを含んでいる。下側第2周縁部13bの上端は開口10aの下側の辺を構成する。従って、下側周縁部13は開口10aの下側の辺の周縁部分である。下側第1周縁部13aと下側第2周縁部13bとは、車両幅方向に向かって上下に並んで略平行に配置されている。また、下側第1周縁部13aと下側第2周縁部13bとは、車両前後方向又は、クリップ24、25、26の挿通方向の位置が異なっている。
【0023】
下側第1座板部16は、板状の段部である下側第1周縁部13aの一部分であり、後で説明する下側第1クリップ25の基端部25aが当接する部分である。また、下側第2座板部18は、板状の段部である下側第2周縁部13bの一部分であり、後で説明する下側第2クリップ26の基端部26aが当接する部分である。尚、下側第1座板部16、下側第2座板部18は、下側第1周縁部13a、下側第2周縁部13bの表面から少し凹んでいてもよいし、逆に少し凸となっていてもよい。
【0024】
下側第1座板部16は、下側第1周縁部13aに車両幅方向に向かって一列に並んで複数配置されている。また、下側第2座板部18は、下側第2周縁部13bに車両幅方向に向かって一列に並んで配置されている。図1では、下側第1座板部16は、車両幅方向に向かって4つ並べて配置されており、下側第2座板部18は、車両幅方向に向かって2つ並べて配置されているが、各座板部16、18の数はそれぞれ一列に並んで配置されていれば、いくつでもかまわない。
【0025】
下側第1座板部16の並び方向の位置である車両幅方向の位置と下側第2座板部18の並び方向の位置である車両幅方向の位置とは互いに異なっており、車両幅方向に向かって、下側第1座板部16と下側第2座板部18とが交互に並べて配置されている。このように、下側第1座板部16と下側第2座板部18とは車両幅方向に向かって千鳥配置となっている。
【0026】
以上説明したように、インパネ10の下側周縁部13には、下側第1座板部16と下側第2座板部18が上下方向に2列に車両幅方向に並べて配置されている。また、下側第2座板部18の前後方向の位置或いは挿通方向の位置は、下側第1座板部16の前後方向の位置又は挿通方向の位置と異なっており、下側第2座板部18は下側第1座板部16よりも車両前方又は挿通方向奥側に配置されている。また、下側第1座板部16と下側第2座板部18とは車両幅方向に交互に並ぶよう千鳥配置となっている。
【0027】
図2に示すカバー20は、図3に示すようにインパネ10の開口10aを覆うようにインパネ10に取付けられる車両用の内装部材である。カバー20は、四角形状の開口10aを覆う四角形状の樹脂製の板部材の本体21と、本体21の意匠面21aと反対側の裏面21bに立設された上側クリップ24と、下側第1クリップ25と、下側第2クリップ26とで構成されている。
【0028】
図1、3に示すように、上側クリップ24は、上側座板部14に設けられた貫通孔15に挿入される係合部材であり、本体21の上辺22aを含むカバー上側周縁部22の裏面21bの上側座板部14に対向する位置に車両幅方向に並んで2つ設けられている。上側クリップ24は、裏面21bから突出して先端面が上側座板部14の挿通方向手前側の面に当接する基端部24aと、貫通孔15を貫通して上側座板部14の挿通方向奥側の面の貫通孔15の周縁に係合する係合部24bとを備えている。
【0029】
下側第1クリップ25と下側第2クリップ26とは、下側第1座板部16、下側第2座板部18に設けられた貫通孔17、19にそれぞれ挿入される係合部材であり、本体21のカバー下側周縁部23の裏面21bに下側第1座板部16と下側第2座板部18とにそれぞれ対向するように、上下方向に2列に車両幅方向に並べて配置されており、且つ、車両幅方向に交互に並ぶよう千鳥に配置されている。
【0030】
下側第1クリップ25と下側第2クリップ26とは、それぞれ下辺23aを含むカバー下側周縁部23の裏面21bから突出して先端面が下側第1座板部16、下側第2座板部18の挿通方向手前側の面に当接する基端部25a、26aと、貫通孔17、19を貫通して下側第1座板部16、下側第2座板部18の挿通方向奥側の面の貫通孔17、19の周縁に係合する係合部25b、26bとを備えている。下側第2座板部18は下側第1座板部16よりも車両前方又は挿通方向奥側に配置されているので、裏面21bから下側第2座板部18までの挿通方向の距離は、裏面21bから下側第1座板部16までの距離よりも長くなっている。このため、下側第2クリップ26の基端部26aの挿通方向の長さは、下側第1クリップ25の基端部25aの長さよりも長くなっている。
【0031】
図3に示すように、カバー20の各クリップ24、25、26の各係合部24b、25b、26bを車両前方に向かって各貫通孔15、17、19に挿通すると、各基端部24a、25a、26aは各座板部14、16、18の挿通方向手前側の面に当接し、各係合部24b、25b、26bが挿通方向奥側の貫通孔15、17、19の周縁に当接することにより、各クリップ24、25、26は各座板部14、16、18に嵌合し、カバー20はインパネ10の表面11に取付けられる。
【0032】
次に図4を参照しながら、インパネ10にカバー20が取付けられた車両の後突の場合の慣性力Fと各部の荷重について説明する。尚、図4において、符号gは、カバー20の重心位置を示す。図4に示す例では、重心位置gと上側クリップ24との上下方向の距離はL1で、重心位置gと下側第1クリップ25との上下方向との距離はL2で、L2>L1である。従って、下側第1クリップ25が挿通する貫通孔17が設けられる下側第1座板部16が配置されているカバー下側周縁部23は、カバー20の重心位置gから遠い方の下辺23aの周縁部であり、上側クリップ24が挿通する貫通孔15が設けられる上側座板部14が配置されているカバー上側周縁部22は、カバー20の重心位置gから近い方の上辺22aの周縁部である。
【0033】
車両が後方から衝突される後突の場合、衝突の衝撃力により車両のボデーに取付けられているインパネ10は、車両前方に移動する。このインパネ10に前方への移動の結果、インパネ10ら取付けられているカバー20には車両後方に向かう慣性力Fが加わる。図4に示すように、慣性力Fは、カバー20の重心位置gで車両後方に向かう水平荷重として表される。
【0034】
この慣性力Fは、下側第1クリップ25の係合部25bと貫通孔17との挿通方向奥側の周縁に接する第1点28を中心とする時計周りの回転モーメントM1を発生させる。
M1=L2×F ・・・ (式1)
である。
【0035】
この時計周りの回転モーメントM1により、下側第2クリップ26の係合部26bには、一点鎖線の矢印91で示す下側第2クリップ26の挿通方向から角度θだけ傾斜した方向に向かって荷重G1が加わる。ここで、下側第2クリップ26の係合部26bと貫通孔19との挿通方向奥側の周縁に接する点を第2点29とすると、角度θは第1点28と第2点29との上下方向の距離L3と、第1点28と第2点29の車両前後方向の距離D1から、
θ=tan-1(D1/L3) ・・・ (式2)
となる。
【0036】
このように、回転モーメントM1により、カバー20が下側の第1点28を中心に回転しようとすると、第2点29には、挿通方向に対して角度θだけ傾斜した方向に荷重G1が加わる。荷重G1は、挿通方向に対して角度θだけ傾斜しているので、下側第2クリップ26の係合部26bが貫通孔19の周縁に引っかかった状態となり、係合部26bが貫通孔19から抜けない。このため、下側第2クリップ26は下側第2座板部18から角度θの方向に向かってG1と反対方向に向かう荷重G2を受ける。このG2により第1点28の回りに回転モーメントM1と方向が逆で大きさが同一の回転モーメントM2が発生する。これにより、カバー20が第1点28の回りに回転することが抑制される。
【0037】
また、慣性力Fにより上記の第2点29を中心にカバー20が回転しようとした場合には、先に説明したのと同様、第1点28には、挿通方向に対して角度θだけ傾斜した方向に荷重が加わるので、下側第1クリップ25の係合部25bが貫通孔17の周縁に引っかかった状態となり、係合部25bが貫通孔17から抜けない。
【0038】
このように、慣性力Fにより発生する下側の第1点28を中心にした回転モーメントM1を、第2点29に加わる挿通方向に対して角度θだけ傾斜した方向に向かう荷重G1によって受け止めるので、上側クリップ24には挿通方向と反対方向の引き抜き方向に荷重が加わらない。このため、上側クリップ24の係合部24bが上側座板部14の貫通孔15から抜けず、上側クリップ24が外れない。同様に、慣性力Fにより発生する第2点29を中心とした回転モーメントは、第1点28に加わる挿通方向に対して角度θだけ傾斜した方向に向かう荷重によって受け止められるので、上側クリップ24が外れない。
【0039】
以上、説明したように、実施形態の内装部材取付構造100は、重心位置gより遠い方の下側周縁部13に設けられている下側第1座板部16と下側第2座板部18との挿通方向の位置を異ならせるという簡便な構成により、車両の衝突時にカバー20が重心位置gよりも遠い方の下側周縁部13の貫通孔17,19に挿通されている各クリップ25、26の各係合部25b,26bを中心に回転することを抑制できる。これにより、重心位置gに近い側の上側周縁部12の貫通孔15に係合されている上側クリップ24が貫通孔15から抜けることを抑制し、衝突の際のカバー20の外れを抑制することができる。
【0040】
以上の説明では、下側周縁部13には、下側第1座板部16と下側第2座板部18が上下に二列に配置されるとして説明したがこれに限らず、複数列に配置されるなら三列以上に配置してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 インパネ、10a 開口、11 表面、11a 上端部、11b 下端部、12 上側周縁部、13 下側周縁部、13a 下側第1周縁部、13b 下側第2周縁部、14 上側座板部、15、17、19 貫通孔、16 下側第1座板部、18 下側第2座板部、20 カバー、21 本体、21a 意匠面、21b 裏面、22 カバー上側周縁部、22a 上辺、23 カバー下側周縁部、23a 下辺、24 上側クリップ、24a、25a、26a 基端部、24b、25b、26b 係合部、25 下側第1クリップ、26 下側第2クリップ、100 内装部材取付構造。
図1
図2
図3
図4