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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093910
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ナット締結治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/48 20060101AFI20220617BHJP
   B25B 13/00 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B25B13/48 D
B25B13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206640
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】399039719
【氏名又は名称】東日本電気エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】石松 孝仁
(57)【要約】
【課題】ボルト(例えば、外周面にネジ山が形成された吊り下げパイプなども含む)にナットを締結する際に、固定対象物(例えば、監視カメラのハウジングなど)の向きがずれることを防止できるナット締結治具を提供する。
【解決手段】監視カメラ3の上板部33(固定対象物)に挿通された吊り下げパイプ2(ボルト)に、上板部33を挟む位置の一方側に設けられる第1ナット41および他方側に設けられる第2ナット42を締結するナット締結治具1において、第1ナット41と監視カメラ3との位置を固定する位置固定具5と、ボルトに第2ナット42を締結する締結具6と、を有し、位置固定具5は、第1ナット41を係止する第1ナット係止部56と、監視カメラ3を係止する監視カメラ係止部60(固定対象物係止部)と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定対象物に挿通されたボルトに、前記固定対象物を挟む位置の一方側に設けられる第1ナットおよび他方側に設けられる第2ナットを締結するナット締結治具において、
前記第1ナットと前記固定対象物との位置を固定する位置固定具と、
前記ボルトに前記第2ナットを締結する締結具と、を有し、
前記位置固定具は、
前記第1ナットを係止する第1ナット係止部と、
前記固定対象物を係止する固定対象物係止部と、を有するナット締結治具。
【請求項2】
前記固定対象物係止部は、
前記固定対象物を挟む第1挟持部および第2挟持部と、
前記第1挟持部および前記第2挟持部を支持する支持部と、を有し、
前記第1挟持部は、前記第2挟持部に対して近接・離反する方向にスライド可能に前記支持部に支持されている請求項1に記載のナット締結治具。
【請求項3】
前記固定対象物係止部は、
前記固定対象物を挟む第1挟持部および第2挟持部と、
前記第1挟持部および前記第2挟持部を支持する支持部と、を有し、
前記第2挟持部は、前記第1挟持部に近接・離反する方向に間隔をあけて複数設けられている請求項1または2に記載のナット締結治具。
【請求項4】
前記締結具は、前記第2ナットが前記第2ナットの軸線方向に直交する方向からはめ込まれる溝部が形成され、前記溝部にはめ込まれた前記第2ナットを係止する第2ナット係止部を有し、
前記第2ナット係止部には、前記溝部が形成される内周側と反対側となる外周面における前記第2ナットの軸線方向の中間部に段部が形成され、
前記第2ナット係止部は、
前記段部よりも前記第2ナットの軸線方向の一方側に位置し前記固定対象物と接触する第1係止部と、
前記段部よりも前記第2ナットの軸線方向の他方側に位置し、前記第1係止部と接続される第2係止部と、を有し、
前記第1係止部は、前記第2係止部よりも外周面が内側に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のナット締結治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナット締結治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルトにナットを締結する際に、ボルトとナットとが供回りをすることを防止するために、ボルトの回転を固定する治具が知られている(例えば、特許文献1-3参照)。
【0003】
ところで、監視カメラなどを建物の天井から吊り下げて設置する場合、天井に固定されて上下方向に延びる吊り下げパイプに監視カメラを固定することがある。このような場合、吊り下げパイプの外周面にネジ山が形成され、吊り下げパイプに締結されるナットによって監視カメラを固定する。具体的には、監視カメラのハウジングに形成された孔部に吊り下げパイプを挿通し、ハウジングの上側および下側それぞれにおいて吊り下げパイプに締結したナットでハウジングを挟むことによって、監視カメラが吊り下げパイプに固定される。吊り下げパイプにナットを締結してハウジングを挟む際に、吊り下げパイプに対するハウジングの向きを設定することで、監視カメラの向きを設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-183069号公報
【特許文献2】特開2006-315167号公報
【特許文献3】特開2004-268174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、吊り下げパイプにナットを締結する際に、ハウジングがナットと供回りしてしまうと、ハウジングの向きがずれてしまい、監視カメラを所望の向きに設置することができない。
【0006】
そこで、本発明は、ボルト(例えば、外周面にネジ山が形成された吊り下げパイプなども含む)にナットを締結する際に、固定対象物(例えば、監視カメラのハウジングなど)の向きがずれることを防止できるナット締結治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るナット締結治具は、固定対象物に挿通されたボルトに、前記固定対象物を挟む位置の一方側に設けられる第1ナットおよび他方側に設けられる第2ナットを締結するナット締結治具において、前記第1ナットと前記固定対象物との位置を固定する位置固定具と、前記ボルトに前記第2ナットを締結する締結具と、を有し、前記位置固定具は、前記第1ナットを係止する第1ナット係止部と、前記固定対象物を係止する固定対象物係止部と、を有する。
【0008】
本発明では、位置固定具が第1ナット係止部と、固定対象物係止部と、を有することにより、位置固定具によって第1ナットと固定対象物との位置が固定された状態で、ボルトに第2ナットを締結することができる。このため、ボルトに第2ナットを締結する際に固定対象物が第2ナットと供回りして、固定対象物の向きがずれることを防止することができる。
【0009】
また、本発明に係るナット締結治具では、前記固定対象物係止部は、前記固定対象物を挟む第1挟持部および第2挟持部と、前記第1挟持部および前記第2挟持部を支持する支持部と、を有し、前記第1挟持部は、前記第2挟持部に対して近接・離反する方向にスライド可能に前記支持部に支持されていてもよい。
【0010】
このような構成とすることにより、固定対象物係止部が固定対象物を挟持して確実に係止することができる。
【0011】
また、本発明に係るナット締結治具では、前記固定対象物係止部は、前記固定対象物を挟む第1挟持部および第2挟持部と、前記第1挟持部および前記第2挟持部を支持する支持部と、を有し、前記第2挟持部は、前記第1挟持部に対して近接・離反する方向に間隔をあけて複数設けられていてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、複数の第2挟持部から固定対象物の寸法に対応する第2挟持部を選択することで、異なる寸法の固定対象物を同一の位置固定具によって係止することができる。
【0013】
また、本発明に係るナット締結治具では、前記締結具は、前記第2ナットが前記第2ナットの軸線方向に直交する方向からはめ込まれる溝部が形成され、前記溝部にはめ込まれた前記第2ナットを係止する第2ナット係止部を有し、前記第2ナット係止部には、前記溝部が形成される内周側と反対側となる外周面における前記第2ナットの軸線方向の中間部に段部が形成され、前記第2ナット係止部は、前記段部よりも前記第2ナットの軸線方向の一方側に位置し前記固定対象物と接触する第1係止部と、前記段部よりも前記第2ナットの軸線方向の他方側に位置し、前記第1係止部と接続される第2係止部と、を有し、前記第1係止部は、前記第2係止部よりも外周面が内側に配置されていてもよい。
【0014】
このような構成とすることにより、締結具が固定対象物と接触する部分(第1係止部)の面積を小さくすることができる。このため、ボルトへの第2ナットを締結する際の締結具と固定対象物との摩擦を小さくすることができ、ボルトへの第2ナットの締結を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボルト(例えば、外周面にネジ山が形成された吊り下げパイプなども含む)にナットを締結する際に、固定対象物(例えば、監視カメラのハウジングなど)の向きがずれることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態によるナット締結治具の斜視図である。
図2】吊り下げパイプに固定されている上板部を示すである。
図3】位置固定具の斜視図である。
図4】(a)は位置固定具の平面図、(b)は位置固定具を側方から見た図、(c)は位置固定具を長さ方向の他方側から見た図、(d)は位置固定具を下方から見た図である。
図5】上板部を挟持する監視カメラ係止部を示す図である。
図6】第1挟持部と第2挟持部との間に配置される上板部を示す図である。
図7】固定部と把持部との角度を変えたナット締結治具を示す平面図である。
図8】締結具の斜視図である。
図9】(a)は締結具の平面図、(b)締結具を長さ方向の一方側から見た図、(c)は締結具を側方から見た図、(d)は締結具を長さ方向の他方側から見た図、(e)は締結具を下方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態によるナット締結治具について、図1乃至図9に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態によるナット締結治具1は、建物の天井に固定されて上下方向に延びる吊り下げパイプ2(ボルト)に監視カメラ3(固定対象物)を固定する際に使用される。吊り下げパイプ2には、下部側の外周面にネジ山21が形成され、ナット41,42を締結することができる。吊り下げパイプ2の内部には、監視カメラ3の配線が挿通される。
【0018】
監視カメラ3は、カメラ本体31と、カメラ本体31を収容するハウジング32と、を有している。ハウジング32は、箱状や筒状に形成され、その内側に配置されたカメラ本体31を支持している。ハウジング32は、カメラ本体31の上方でハウジングの上端部に位置する上板部33を有している。図1および図2に示すように、本実施形態では、図1および図2に示すように、ハウジング32の上板部33が吊り下げパイプ2に固定される。ハウジング32の上板部33が吊り下げパイプ2に所定の角度で固定されることによって、監視カメラ3が所定の角度で吊り下げパイプ2に固定される。この角度とは、吊り下げパイプ2の上下方向に延びる軸線回りの角度となる。
【0019】
上板部33は、平板状に形成され、板面が略水平面となる向きに配置される。上板部33には、吊り下げパイプ2が上下方向に貫通可能な孔部34(図2参照)が形成されている。上板部33は、吊り下げパイプ2に締結された第1ナット41および第2ナット42によって吊り下げパイプ2に固定される。第1ナット41は、上板部33の下方に配置される。第2ナット42は、上板部33の上方に配置される。上板部33は、第1ナット41および第2ナット42が上板部33を挟むように吊り下げパイプ2に締結されることで、吊り下げパイプ2に固定される。監視カメラ3(図1参照)の向きを調整する場合は、第1ナット41および第2ナット42のいずれかまたは両方を緩めて上板部33を吊り下げパイプ2の軸線回りに移動可能な状態とし、監視カメラ3の向きを調整した後にゆるめたナットを再び締結し、上板部33を吊り下げパイプ2に固定する。
【0020】
図1に示すように、ナット締結治具1は、吊り下げパイプ2が挿通された第1ナット41と上板部33(固定対象物)との位置を固定する位置固定具5と、吊り下げパイプ2に第2ナット42を締結する締結具6と、を有している。ナット締結治具1の説明では、位置固定具5が第1ナット41と上板部33との位置を固定し、締結具6が吊り下げパイプ2に第2ナット42を締結している姿勢であるものとする。吊り下げパイプ2、第1ナット41および第2ナット42は、上下方向に延びる軸線上に同軸に配置されている。位置固定具5は、上板部33の下方に配置される。締結具6は、上板部33の上方に配置される。
【0021】
図3および図4に示すように、位置固定具5は、第1ナット41と上板部33との位置を固定する固定部51と、固定部51と接続され作業者が把持する把持部52と、を有している。詳細については後述するが、図1では、固定部51と把持部52とが角部を成すように接続され、図3および図4では、固定部51と把持部52とが直線状に並んで接続されている。
【0022】
図3および図4に示すように、位置固定具5は、外形が長尺の部材である。位置固定具5が延びる方向を長さ方向とし、長さ方向に直交する水平方向を幅方向とする。固定部51と、把持部52とは、長さ方向に並んで配置されている。把持部52に対して固定部51がある側を長さ方向の一方側とし、固定部51に対して把持部52がある側を長さ方向の他方側とする。
【0023】
固定部51は、基部53(支持部)と、基部53にスライド可能に支持された第1挟持部54と、基部53の上面に設けられた第2挟持部55と、を有している。基部53は、板面がU字形の板状に形成され、板面が水平方向となる向きに配置される。基部53におけるU字形の内側の溝部(以下、第1溝部538とする)は、長さ方向の一方側に開口している。基部53は、第1片531と、第2片532と、第3片533と、を有している。第1片531は、平板状に形成されている。第2片532は、第1片531の幅方向の一方側の端部から長さ方向の一方側に突出している。第3片533は、第1片531の幅方向の他方側の端部から長さ方向の一方側に突出している。固定部51は、幅方向に対称となる形状に形成されている。すなわち、基部53も幅方向に対称となる形状に形成されている。第1片531は、幅方向に対称となる形状である。第2片532と第3片533とは、幅方向に対称となる形状である。
【0024】
第1片531よりも長さ方向の一方側における第2片532と第3片533との間に第1溝部538が形成されている。第1片531における第1溝部538の縁部を形成する長さ方向の一方側で第2片532と第3片533との間の縁部は、幅方向の両側から幅方向の中央に向かって漸次長さ方向の他方側(第2片532および第3片533が突出する側と反対側)に凹んだ凹部534が形成されている。この凹部534と、第2片532および第3片533それぞれの互いに対向する縁部で形成する第1溝部538は、第1ナット41の外形に対応している。凹部534の角度は、120度であり、第2片532および第3片533それぞれの互いに対向する縁部は平行である。図5に示すように、第1溝部538には、長さ方向の一方側から第1ナット41を挿入することができる。第1溝部538に第1ナット41が挿入されると、第1ナット41が回転不可能となる。基部53における第1溝部538は、第1ナット41を係止する第1ナット係止部56である。
【0025】
第1片531の上側には、第1挟持部54が支持部材57を介して取り付けられている。第1挟持部54および支持部材57は、第1片531の幅方向の一方側の端部近傍と他方側の端部近傍とにそれぞれ1つずつ設けられている。第1挟持部54は、支持部材57よりも長さ方向の一方側に配置されている。第1挟持部54は、ブロック状の部材である。第1挟持部54は、長さ方向の一方側の面に段部541が形成されている。第1挟持部54における長さ方向の一方側の面を段部形成面542とする。段部541は、段部形成面542における上下方向の中間部に形成されている。段部形成面542は、上側の方が下側よりも長さ方向の一方側に突出している。第1挟持部54の段部形成面542における段部541よりも下側の面を第1挟持面543とする。第1挟持面543は、長さ方向の一方側を向いている。
【0026】
支持部材57は、ネジ部571と、ネジ部571を支持するネジ支持部572と、を有している。ネジ部571は、雄ねじである。ネジ支持部572は、例えばナットなどのように、めねじが形成されている。ネジ支持部572は、軸線が長さ方向となる姿勢で第1片531における長さ方向の他方側の端部近傍の上面に接合されている。ネジ部571は、ネジ支持部572に長さ方向の他方側から挿入されている。ネジ部571の長さ方向の一方側の端部は、第1挟持部54と接続されている。ネジ部571の長さ方向の他方側の端部には、使用者がつまんでネジ部571を回転させることができるツマミ573が設けられている。使用者がツマミ573をつまんでネジ部571を回転させることで、ネジ部571に接続された第1挟持部54が第1片531の上面に沿って長さ方向に移動する。
【0027】
図4および図5に示すように、第1片531には、上下方向に貫通し、第1挟持部54が移動する範囲において長さ方向延びる長孔535が形成されている。第1挟持部54には、下方に突出するピン544が取り付けられている。このピン544は、長孔535に挿入されている。第1挟持部54が長さ方向に変位すると、ピン544が長孔535に沿って移動する。長孔535およびピン544は、第1挟持部54が幅方向に移動せずに長さ方向に移動するためのガイドとして設けられている。
【0028】
図5に示すように、第2片532および第3片533は、それぞれ長さ方向の一方側の部分の上面に第1段部581、第2段部582および第3段部583の3つの段部が形成されている。第1段部581、第2段部582、第3段部583の順に長さ方向の方側から一方側に向かって配置され、この順に下側から上側に向かって形成されている。基部53における段部が形成されている部分を段部形成部536とし、段部形成部536よりも長さ方向の他方側の部分を平板部537とする。
【0029】
第1段部581は、平板部537の上面と、平板部537の上面における長さ方向の一方側の縁部から上側に突出し長さ方向の他方側を向く第1面591と、が形成している。第2段部582は、第1面591の上縁部から長さ方向の一方側に突出し上方を向く第2面592と、第2面592の長さ方向の一方側の縁部から上方に突出し長さ方向の他方側を向く第3面593と、が形成している。第3段部583は、第3面593の上縁部から長さ方向の一方側に突出し上方を向く第4面594と、第4面594の長さ方向の縁部から上方に突出し長さ方向の他方側を向く第5面595と、が形成している。第1面591、第3面593および第5面595は、それぞれ長さ方向の他方側を向いている。第1面591、第3面593および第5面595は、それぞれ基部53(支持部)に支持された第2挟持部55を構成している。
【0030】
図5および図6に示すように、基部53の上側における第1挟持部54の第1挟持面543と第1面591(第2挟持部55)との間、第1挟持部54の第1挟持面543と第3面593(第2挟持部55)との間、および第1挟持部54の第1挟持面543と第5面595(第2挟持部55)との間には、上板部33を配置可能である。上板部33の寸法に合わせて第1面591、第3面593および第5面595のいずれかを選択し、選択された面と第1挟持面543との間に上板部33を配置する。第1挟持部54と第2挟持部55との間に配置された上板部33は、ネジ部571を回して第1挟持部54が第2挟持部55側に移動することによって、第1挟持部54と第2挟持部55とに挟持される。これにより、上板部33の位置が固定される。固定部51の基部53、第1挟持部54および第2挟持部55は、上板部33を係止して監視カメラ3(図1参照)を固定する監視カメラ係止部60(固定対象物係止部)を構成している。
【0031】
位置固定具5で、第1ナット係止部56による第1ナット41の回転を拘束するとともに、第1挟持部54および第2挟持部55による上板部33の固定とを行うことで、第1ナット41と上板部33との位置が固定される。
【0032】
本実施形態による位置固定具5は、固定部51と把持部52との角度を変更可能に構成されている。固定部51と把持部52とは、別部材であり、ネジ521および蝶ナット522とによって固定されている。固定部51および把持部52には、ネジ521が挿通される上下方向に貫通する孔部511,523が形成されている。ネジ521は、軸線が上下方向に延びる向きで孔部511,523に挿通される。固定部51と把持部52とは、ネジ521および蝶ナット522がゆるめられた状態でネジ521の軸線回りに相対的に回転可能である。図4では、棒状の把持部52が延びる方向と固定部51の第1溝部538が開口する方向とが同じである。固定部51と把持部52との角度を変更することにより、図7に示すように、把持部52が延びる方向と固定部51の第1溝部538が開口する方向とを異なる向きとすることができる。例えば、監視カメラ3の近傍に壁や他の機材などが設けられて位置固定具5を設置するスペースが狭い場合に、位置固定具5を図1および図7に示すような折れ曲がった形状とすることにより、位置固定具5を設置することができる。
【0033】
図1に示すように、締結具6は、第2ナット42を係止する第2ナット係止部61と、第2ナット係止部61と接続され作業者が把持する把持部62と、を有している。本実施形態では、第2ナット係止部61と、把持部62とは一体に形成されている。
【0034】
図8および図9に示すように、第2ナット係止部61は、U字形状に形成されている。第2ナット係止部61におけるU字形の内側の溝部(以下、第2溝部63とする)に第2ナット42(図1参照)が嵌め込まれる。第2ナット係止部61は、第2溝部63を形成する内周面64と反対側となる外周面65に、段部66が形成されている。段部66は、締結具6の上下方向の中間部に形成されている。第2ナット係止部61における段部66よりも下側の部分を第1係止部67とし、段部66よりも上側の部分を第2係止部68とすると、第1係止部67の外周面671は、第2係止部68の外周面681よりも内側に配置されている。第2ナット係止部61の内周面64には、上下方向に凹凸となる段部は形成されていない。
【0035】
本実施形態のナット締結治具1を使用した吊り下げパイプ2への監視カメラ3の固定方法を説明する。まず、吊り下げパイプ2が挿通された第1ナット41と第2ナット42との間にハウジング32の上板部33を配置した状態とする。このとき、吊り下げパイプ2は、上板部33の孔部34を貫通している。
【0036】
続いて、位置固定具5の固定部51を上板部33の下側に配置し、第1溝部538で第1ナット41を係止するとともに、第1挟持部54と第2挟持部55との間に上板部33を配置する。このとき、第2挟持部55の第1面591、第3面593および第5面595のいずれかと、第1挟持部54の第1挟持面543との間に上板部33を配置する。支持部材57のネジ部571を回転させて第1挟持部54を第2挟持部55側に移動させ、第1挟持部54と第2挟持部55とで上板部33を挟持する。これにより、第1ナット41および上板部33の位置が固定される。使用者は把持部52を把持して上記の状態を維持する。
【0037】
続いて、締結具6で第2ナット42を締結する。使用者は、一方の片手で位置固定具5の把持部52を把持し、他方の片手で締結具6の把持部62を把持する。吊り下げパイプ2に第2ナット42が締結され、第1ナット41と第2ナット42とで上板部33を上下から挟持した状態となったら、第2ナット42から締結具6を外す。位置固定具5のネジ部571を回して第1挟持部54を移動させ、位置固定具5を上板部33およい第1ナット41から外す。このようにして監視カメラ3が固定される。
【0038】
上述した本発明の実施形態によるナット締結治具1では、位置固定具5が第1ナット係止部56と、監視カメラ係止部60と、を有することにより、位置固定具5によって第1ナット41と監視カメラ3(上板部33)との位置が固定された状態で、吊り下げパイプ2に第2ナット42を締結することができる。このため、吊り下げパイプ2に第2ナット42を締結する際に監視カメラ3が第2ナット42と供回りして、監視カメラ3の向きがずれることを防止することができる。
【0039】
また、上記の実施形態によるナット締結治具1では、第1挟持部54は、第2挟持部55に対して近接・離反する方向(長さ方向)にスライド可能に基部53に支持されている。このような構成とすることにより、監視カメラ係止部60が監視カメラ3の上板部33を挟持して確実に係止することができる。
【0040】
また、上記の実施形態によるナット締結治具1では、監視カメラ係止部60は、監視カメラ3を挟む第1挟持部54および第2挟持部55と、第1挟持部54および第2挟持部55を支持する基部53と、を有し、第2挟持部55は、第1挟持部54に対して近接・離反する方向(長さ方向)に間隔をあけて3つ設けられている。このような構成とすることにより、3つの第2挟持部55から上板部33の寸法に対応する第2挟持部55を選択することで、異なる寸法の上板部33を同一の位置固定具5によって係止することができる。
【0041】
また、上記の実施形態によるナット締結治具1では、締結具6の第1係止部67は、第2係止部68よりも外周面が内側に配置されている。このような構成とすることにより、締結具6が上板部33と接触する部分(第1係止部67)の面積を小さくすることができる。このため、吊り下げパイプ2への第2ナット42を締結する際の締結具6と上板部33との摩擦を小さくすることができ、吊り下げパイプ2への第2ナット42の締結を容易に行うことができる。
【0042】
以上、本発明によるナット締結治具の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、ナット締結治具1は、監視カメラ3を吊り下げパイプ2に固定する際に使用されている。これに対し、外周面にネジ山が形成された部材(ボルト)に第1ナット41および第2ナット42を用いて監視カメラ3以外の固定対象物を固定する際にナット締結治具1を使用してもよい。
【0043】
また、ボルト、第1ナット41および第2ナット42の軸線方向は、上下方向以外であってもよい。すなわち、水平方向に延びるパイプ(ボルト)に固定対象物を固定する際にナット締結治具1を使用してもよい。また、位置固定具5が固定対象物の上側にあるナットと、固定対象物との位置を固定し、固定対象物の下側にあるナットを締結具6で締結してもよい。
【0044】
上記の実施形態では、監視カメラ係止部60は、監視カメラ3のケーシングの上板部33を長さ方向から挟持して係止しているが、挟持する方向は上下方向など長さ方向以外であってもよい。また、固定対象物係止部は、挟持以外の固定によって固定対象物を係止するようにしてもよい。
【0045】
上記の実施形態では、監視カメラ係止部60の第1挟持部54は、第2挟持部55に対して近接・離反する方向(長さ方向)にスライド可能であるが、スライドしない構成であってもよい。第2挟持部55が第1挟持部54に対して近接・離反する方向にスライドする構成であってもよいし、第1挟持部54および第2挟持部55のそれぞれが互いに近接・離反する方向にスライドする構成であってもよい。
【0046】
上記の実施形態では、監視カメラ係止部60の第2挟持部55は、第1挟持部54に対して近接・離反する方向(長さ方向)に間隔をあけて3つ設けられている。これに対し第2挟持部55の数は3つ以外であってもよい。第1挟持部54についても第2挟持部55に対してスライドせずに、複数設けられていてもよい。
【0047】
また、上記の実施形態によるナット締結治具1では、締結具6の第1係止部67は、第2係止部68よりも外周面が内側に配置されているがこのような構成でなくてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ナット締結治具
5 位置固定具
6 締結具
33 上板部(固定対象物)
41 第1ナット(ナット)
42 第2ナット(ナット)
54 第1挟持部
55 第2挟持部
56 第1ナット係止部
60 監視カメラ係止部(固定対象物係止部)
61 第2ナット係止部
65 外周面
66 段部
67 第1係止部
68 第2係止部
541 段部
671 外周面
681 外周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9