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特開2022-93919画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093919
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20220617BHJP
   G06T 7/593 20170101ALI20220617BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220617BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G06T7/593
G06T7/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206649
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】有田 真一
(72)【発明者】
【氏名】徳井 圭
(72)【発明者】
【氏名】北浦 竜二
(72)【発明者】
【氏名】吉武 謙二
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065CC14
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF09
2F065FF42
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ08
2F065JJ26
2F065QQ01
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ31
2F065QQ34
5L096CA05
5L096DA02
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】遮蔽物により遮蔽された鉄筋であっても精度よく計測する画像計測装置を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る画像計測装置(10)は、視差を有する2つの撮像画像に基づいて被写体の鉄筋について一方の画像に撮像され、他方の画像には遮蔽されて撮像されていない鉄筋の3次元位置を、遮蔽されていない鉄筋の3次元位置に基づいて算出する画像処理部(102)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層に配置された鉄筋の視差を有する複数の画像から、少なくとも一つの画像に撮像されており、少なくとも一つの他の画像には他の鉄筋に遮蔽されて撮像されていない遮蔽鉄筋を検出する遮蔽鉄筋検出部と、
前記遮蔽鉄筋が含まれる前記層に対応する鉄筋平面に基づいて前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する遮蔽鉄筋計測部と、
を備えていることを特徴とする画像計測装置。
【請求項2】
前記複数の画像から他の鉄筋に遮蔽されていない非遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する非遮蔽鉄筋計測部を備え、
前記遮蔽鉄筋計測部は、前記非遮蔽鉄筋の3次元位置から前記鉄筋平面を特定することを特徴とする請求項1に記載の画像計測装置。
【請求項3】
前記非遮蔽鉄筋計測部による非遮蔽鉄筋の計測結果と、前記遮蔽鉄筋計測部による遮蔽鉄筋の計測結果とを統合した鉄筋計測結果を算出する結果出力部を更に備えていることを特徴とする請求項2に記載の画像計測装置。
【請求項4】
前記遮蔽鉄筋計測部は、前記遮蔽鉄筋検出部が検出した前記遮蔽鉄筋を、前記鉄筋平面に投影することによって、前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像計測装置。
【請求項5】
複数の層に配置された鉄筋の視差を有する複数の画像から、少なくとも一つの画像に撮像されており、少なくとも一つの他の画像には他の鉄筋に遮蔽されて撮像されていない遮蔽鉄筋を検出する遮蔽鉄筋検出工程と、
前記遮蔽鉄筋が含まれる前記層に対応する鉄筋平面に基づいて前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する遮蔽鉄筋計測工程と、
を含むことを特徴とする画像計測方法。
【請求項6】
請求項1に記載の画像計測装置としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラムであって、前記遮蔽鉄筋検出部および前記遮蔽鉄筋計測部としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラムに関する技術であり、特に、画像処理により鉄筋を計測する場合に、遮蔽の生じた鉄筋においても精度良く計測することが可能な画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート構造物の建設現場では、コンクリートを打設する前に、配筋検査が行われている。配筋検査は、配筋が設計通りに行われているか否か、を検査するものである。この配筋検査を、配筋された鉄筋を撮影した撮影画像を用いて行う画像検査装置がある。従来の画像検査装置として、例えば、特許文献1には、ステレオカメラを用いて、撮影した2つの撮影画像から検査対象となる複数の鉄筋が配列された平面を特定し、検査対象以外の鉄筋が誤って計測対象に含まれないようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-002737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、ステレオ画像を用いて3次元空間上での鉄筋位置情報を取得し、取得した鉄筋位置情報から複数の鉄筋が配列した平面を特定する。しかしながら、2層以上の鉄筋が配列し、2層目またはそれ以上奥側の鉄筋の検査をしたい場合に、手前(カメラ側)の鉄筋などによって遮蔽が生じた場合について記載されていない。通常、鉄筋の位置を取得するためには2つの画像において、同じ鉄筋が撮影されている必要がある。このとき、ステレオ画像のうちいずれかの画像において、遮蔽によって撮像が出来ていない鉄筋があると、その鉄筋の位置が取得できず検査することが困難となる。ステレオ画像は視点位置が異なるため、2層目以上の奥側に位置する鉄筋はいずれかの画像で遮蔽が生じる場合が多く、検査できない場合が多くなる。
【0005】
そこで、本発明の一形態は、前記課題に鑑みてなされたものであり、視点の異なる2つの撮像部から取得された撮影画像において、いずれかの撮影画像で遮蔽が生じている鉄筋であっても、当該鉄筋を精度よく計測することができる画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像計測装置は、複数の層に配置された鉄筋の視差を有する複数の画像から、少なくとも一つの画像に撮像されており、少なくとも一つの他の画像には他の鉄筋に遮蔽されて撮像されていない遮蔽鉄筋を検出する遮蔽鉄筋検出部と、前記遮蔽鉄筋が含まれる前記層に対応する鉄筋平面に基づいて前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する遮蔽鉄筋計測部と、を備えている。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像計測方法は、複数の層に配置された鉄筋の視差を有する複数の画像から、少なくとも一つの画像に撮像されており、少なくとも一つの他の画像には他の鉄筋に遮蔽されて撮像されていない遮蔽鉄筋を検出する遮蔽鉄筋検出工程と、前記遮蔽鉄筋が含まれる前記層に対応する鉄筋平面に基づいて前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する遮蔽鉄筋計測工程と、を含む。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る画像計測プログラムは、前記画像計測装置としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラムであって、前記遮蔽鉄筋検出部および前記遮蔽鉄筋計測部としてコンピュータを機能させるための画像計測プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、遮蔽されている鉄筋であっても、当該鉄筋を精度よく計測することができる画像計測装置、画像計測方法、および、画像計測プログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における画像計測装置の構成例を示す図である。
図2図1に示す画像処理部の構成例を示す図である
図3図1に示す画像計測装置の検査対象である鉄筋の例を示す図である。
図4図1に示す画像計測装置の検査対象である鉄筋の例を示す図である。
図5図1に示す画像計測装置の検査対象である遮蔽された鉄筋の例を示す図である。
図6図1に示す画像計測装置の検査対象である遮蔽された鉄筋の例を示す図である。
図7図1に示す画像計測装置の検査対象である遮蔽された鉄筋の例を示す図である。
図8図1の画像計測装置による計測のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像計測装置10の概略構成例を示す機能ブロック図である。図2は、画像計測装置10に具備される画像処理部102の構成例を示す機能ブロック図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の画像計測装置10は、撮像部101と、画像処理部102と、記録部103とを備える。画像計測装置10から出力された画像や検査結果などは、図1に示す表示装置104に表示される。
【0014】
撮像部101は、第1撮像部101aと、第2撮像部101bとを有している。第1および第2撮像部101a、101bは、レンズおよびCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子から構成され、設定されたフォーカスや露出、ゲインなどにより撮影画像を取得する。取得された2つの撮影画像は画像処理部102または記録部103に出力される。
【0015】
画像処理部102は、撮影された画像から検査対象となる鉄筋を位置検出し、鉄筋径または鉄筋規格の判定や、鉄筋間隔の計測など検査結果を出力する。画像処理部102は、図2に示すように、鉄筋計測部201(非遮蔽鉄筋計測部)、遮蔽鉄筋検出部202、遮蔽鉄筋計測部203、および結果出力部204を備えている。詳細については後で説明する。
【0016】
記録部103は、撮像部101や画像処理部102から受け取った撮影画像または各種画像処理を施された画像および検査結果などを記録デバイスに記録する。記録デバイスとしては、例えば、ハードディスク、光ディスクおよびフラッシュメモリなどが挙げられる。また、記録部103は、無線または有線により、遠隔地のサーバーまたはPCに画像および検査結果の少なくとも一方を転送し、記録するようにしてもよい。なお、記録デバイスは、システムに搭載されてもよいし、着脱可能であってもよい。
【0017】
表示装置104は、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどで構成され、画像計測装置から出力された画像、検査結果など視認可能な状態で表示する。例えば、検査対象の鉄筋に対して分かりやすくするよう、色を変えて表示したり、鉄筋径や鉄筋間隔など計測した箇所が分かるように計測箇所にマーキングして表示したりする。
【0018】
ここで、図3および図4の鉄筋を対象とした配筋検査を例に、画像計測装置10の動作について説明する。図3は、縦の鉄筋(以下、縦筋と称する)301vと横の鉄筋(以下、横筋と称する)301hとが格子状に組み合わされた配筋を格子となっている状態が見える方向から見た図である。図3は換言すれば、各鉄筋の長手方向に対して垂直方向に配筋を見た状態である。一方、図4は、縦筋301vの長手方向(図3の上方向)から、図3と同じ格子状の配筋を見た図である。図3および図4は、格子状に組まれた配筋の層(以下、各層を鉄筋平面と称する)が2つ並んだ様子を示す。要するに図3は、鉄筋平面に対して正面方向から見た場合を示し、図4は、鉄筋平面に沿って見た図である。図3および図4に示す配筋は、手前側の鉄筋平面301と、奥側の鉄筋平面302とが、当該平面に垂直な方向に沿って所定の間隔をあけて配置されている。
【0019】
なお、本実施形態では、撮像部101に近い側に手前側の鉄筋平面301、遠い側に奥側の鉄筋平面302が配置し、各鉄筋平面に含まれる縦筋301v、302vが鉛直方向に長手方向を有し、横筋301h、302hが水平方向に長手方向を有している。また、手前側の鉄筋平面301に含まれる鉄筋と、奥側の鉄筋平面302に含まれる鉄筋は、鉄筋平面に垂直方向に対して同じ位置に縦筋301vと縦筋302vとが配置され、且つ横筋301hと横筋302hとが配置されているものとして説明する。しかしながら、鉄筋平面に対して垂直方向における異なる平面同士での鉄筋位置については制限されないものとする。
【0020】
撮像部101は、図4に示す撮影方向101sから撮影する構成となっている。ここで、図1に示す第1撮像部101aと第2撮像部101bとは水平方向に所定の距離離れている。そのため、図4に示す撮影方向101sから撮影する第1撮像部101aと第2撮像部101b(図1)とがそれぞれ生成する画像には、視差が生じる構成となっている。
【0021】
第1撮像部101aと第2撮像部101bによって撮影された配筋群の画像は、画像処理部102に入力される。
【0022】
画像処理部102では、図2に示す鉄筋計測部201が、先の画像から鉄筋位置の算出や鉄筋径および鉄筋間隔などの計測を行う。先述のように第1撮像部101aと第2撮像部101bのぞれぞれの画像は視差を有し、視差は距離によって異なる。そのため、鉄筋計測部201は、2つの画像の視差を用いることで距離を算出し、算出した距離から3次元位置を算出する。詳細には、距離Zと視差Dの関係は、撮像部の焦点距離をf、2つの撮像部の距離をBとするとZ=f×B/Dで算出することができる。また、画像上の座標(x、y)に対する3次元位置(X、Y、Z)はそれぞれ、X=x×Z/f、Y=y×Z/fにより算出することができる(Z=f×B/D)。
【0023】
ここで、例えば、視差値算出の方法としては、ブロックマッチング法などがある。ブロックマッチング法による視差値算出は、ブロック単位での類似度により2つの画像間で同じ被写体の特徴点位置を検出し、そのずれ量(視差量)を検出する。この特徴点に係る2つの画像中の共通の点を対応点と呼ぶ。
【0024】
対応点の探索を行うための評価関数としてSAD(Sum of Absolute Difference)などがある。SADを用いれば、第1撮像部101aの画像と、第2撮像部101bの画像とのそれぞれで注目画素を中心にウィンドウを設定し、設定したウィンドウ間の各画素の輝度の差を求め、その各画素間から得られた輝度の差の総和を算出する。同様な処理を第2撮像部101bの画像側の注目画素を変えながら行い、値が最も小さい注目画素が対応点であるとする。
【0025】
そこで、鉄筋計測部201では、第1撮像部101aによって撮影した画像において鉄筋領域を検出し、先の方法により第2撮像部101bによって撮影した画像から対応点を取り、鉄筋領域上の各画素に対して3次元位置を算出する。対応点がとれない鉄筋領域上の画素については3次元位置の算出はしない。
【0026】
更に鉄筋計測部201は、3次元位置が算出できた鉄筋領域の3次元情報の分布から手前側の鉄筋平面301と奥側の鉄筋平面302を判定(特定)する。なお、本実施形態における「鉄筋平面」とは、互いに交差する縦筋と横筋を含み、縦筋と横筋のそれぞれの長手方向を縦方向と横方向とする二次元的な領域のことをいう。
【0027】
更に鉄筋計測部201は、3次元位置が算出できた鉄筋のどの鉄筋が手前側の鉄筋平面301(または奥側の鉄筋平面302)に含まれる鉄筋であるかを判定(特定)する。
【0028】
鉄筋計測部201が以上の方法によって特定した鉄筋に関し、その後、同一の鉄筋平面に含まれる鉄筋に対して鉄筋間隔の計測や各鉄筋径の算出を行うことが可能である。しかしながら、視差算出は2つの撮影画像上での対応点を検出するため、一方の撮影画像の鉄筋が遮蔽されているなどで撮影されていない場合にはその部分の鉄筋を計測することができない。以下、鉄筋の遮蔽について図5から図7を用いて説明した後に、本実施形態の構成について再び説明する。
【0029】
図5は、図3および図4に示す鉄筋を第1撮像部101aで撮影した様子を示している。手前側の鉄筋平面301と奥側の鉄筋平面302とは、異なる奥行を有しており、第1撮像部101aからの距離が異なっている。そのため、場所によって手前側の鉄筋平面301に含まれる鉄筋と、奥側の鉄筋平面302に含まれる鉄筋との見え方が異なる。例えば、手前側の鉄筋平面301に含まれる第1縦筋301v1および第2縦筋301v2と、奥側の鉄筋平面302に含まれる第1縦筋302v1および第2縦筋302v2とは、実空間内ではそれぞれ鉄筋平面に対して垂直方向に同じ位置に配置されている。しかしながら、第1縦筋301v1と第1縦筋302v1とは重なって見えるのに対して、第2縦筋301v2と第2縦筋302v2とは離れた位置に見える。また配筋群に対して撮像距離が異なる際には、このように同じ位置から見ても、鉄筋の場所によって位置関係が異なって見える。同様に、視点位置が異なる場合にも、手前側の鉄筋平面301に含まれる鉄筋と奥側の鉄筋平面302に含まれる鉄筋の位置関係が異なって見える。そのため、視点位置の異なる第1撮像部101aと第2撮像部101bとでは、手前側の鉄筋平面301に含まれる鉄筋と、奥側の鉄筋平面302に含まれる鉄筋との見え方が異なる。
【0030】
図6および図7は、図5の領域303の部分について、それぞれ第1撮像部101aと第2撮像部101bで撮影した場合の様子を示す。図6に示すように第1撮像部101aで撮影された画像では、手前と奥で第1縦筋301v1と第1縦筋302v1は異なる位置に撮影されている。一方で、図7に示すように、第2撮像部101bで撮影された画像では、手前と奥で第1縦筋301v1と第1縦筋302v1が重なっており、奥側の第1縦筋302v1が手前側の第1縦筋301v1によって遮蔽されて撮影される。このような場合、2つの画像から手前の第1縦筋301v1の対応点は取れるものの、奥の第1縦筋302v1の対応点が取れない。そのため、このままでは奥の第1縦筋302v1を計測(検査)することができない。また、鉄筋の遮蔽については、上記とは反対に、第1撮像部101aの撮像画像上では遮蔽されているが、第2撮像部101bの撮影画像上では遮蔽されていない場合もある。そのため、奥側の鉄筋平面302に含まれる鉄筋を計測する場合には、遮蔽された鉄筋が生じる場合があり、遮蔽された鉄筋に関して異なる計測方法が必要となる。
【0031】
そこで、画像処理部102は、このような遮蔽された鉄筋の検出を行う遮蔽鉄筋検出部202(図2)を備える。
【0032】
遮蔽鉄筋検出部202は、鉄筋計測部201の結果を用いて、第1撮像部101aの画像から鉄筋領域を検出し、そのうち遮蔽されていない鉄筋(非遮蔽鉄筋)領域を除くことで遮蔽された鉄筋領域を検出する。また、遮蔽鉄筋検出部202は、第2撮像部101bの画像から鉄筋領域を検出し、鉄筋計測部201の結果を用いて、遮蔽されていない鉄筋(非遮蔽鉄筋)領域を除くことで遮蔽された鉄筋領域を検出する。
【0033】
なお、鉄筋計測部201では第1撮像部101aの画像から鉄筋領域を検出し、遮蔽鉄筋検出部202において、第2撮像部101bの画像から鉄筋領域を検出する構成で説明したが、これに制限されない。すなわち、鉄筋計測部201において、各画像(第1撮像部101aおよび第2撮像部101bの画像)に含まれる全ての鉄筋領域(2つの画像で対応点が取れているか否かに関わらず画像に含まれる全ての鉄筋領域)を検出し、遮蔽鉄筋検出部202は各画像の鉄筋領域の情報を、鉄筋計測部201から取得してもよい。この場合、遮蔽鉄筋検出部202は、鉄筋計測部201が検出した第1撮像部101aおよび第2撮像部101bの画像に含まれる全ての鉄筋領域から、鉄筋計測部201が特定した3次元位置が算出できた鉄筋領域を除く。
【0034】
遮蔽鉄筋計測部203は、遮蔽鉄筋検出部202によってそれぞれの画像で検出された遮蔽された鉄筋領域が、どの鉄筋平面に含まれる鉄筋に対応するかを特定する。具体的には、遮蔽鉄筋計測部203は、鉄筋平面位置を用いて、対応する鉄筋の位置を算出する。より具体的には、遮蔽鉄筋計測部203は、鉄筋計測部201によって検出されている遮蔽の生じていない鉄筋(非遮蔽鉄筋)領域の位置との関係を用いて、遮蔽鉄筋が配置される鉄筋平面位置を判定する。
【0035】
通常、鉄筋は等間隔また一定の鉄筋間間隔のパターンに応じて配置される。そのため、鉄筋計測部201で計測できていない鉄筋位置について推定することができる。このとき、遮蔽鉄筋計測部203は、鉄筋計測部201で計測された鉄筋(非遮蔽鉄筋)において、手前側の鉄筋平面301と奥側の鉄筋平面302それぞれでの鉄筋位置に分解する。そして、遮蔽鉄筋計測部203は、それぞれの鉄筋平面での鉄筋位置と遮蔽された鉄筋領域との関係をみて、それぞれの鉄筋平面での計測できていないと推定される領域に近い遮蔽鉄筋領域を各鉄筋平面上の鉄筋であると判定する。各鉄筋平面の3次元位置が分かっているため、ある遮蔽鉄筋について、遮蔽鉄筋が撮影されている画像の鉄筋位置と鉄筋平面の3次元位置から視差を算出し、他方の画像での対応する位置を算出できる。このとき、例えば、2層目に位置していると仮定して算出した鉄筋位置に対して、撮像部101側に位置する1層目の鉄筋によって遮蔽されているか、または2層目の鉄筋平面で検出された非遮蔽鉄筋と等間隔の位置に位置しているかによって、遮蔽鉄筋が2層目の鉄筋平面上に位置しているか判定することができる。また、通常、1層目の鉄筋平面に位置する鉄筋と2層目の鉄筋平面に位置する鉄筋は同じ鉄筋間隔で配置されているため、1層目の鉄筋平面の鉄筋位置を2層目の鉄筋平面位置に投影し、2層目の平面上のどの位置に鉄筋が位置するか算出する。そして、前記遮蔽鉄筋が撮影されている画像の鉄筋位置と鉄筋平面の3次元位置から算出した遮蔽鉄筋の位置関係から、位置が重複する場合はその鉄筋平面上に位置している鉄筋、位置が異なる場合は他の鉄筋平面上の鉄筋と判定することができる。このように、撮像部101側の鉄筋平面から順番に遮蔽鉄筋の位置を判定し、どの鉄筋平面上に位置するか検出する。鉄筋平面は3次元平面として計測できるため、各遮蔽鉄筋上の画素は判定された鉄筋平面上の3次元平面上に投影することで、3次元位置を算出することができる。それにより、遮蔽鉄筋の3次元位置や鉄筋径を算出することができる。得られた結果は結果出力部204(図2)に出力する。
【0036】
結果出力部204では、鉄筋計測部201で計測された結果と遮蔽鉄筋計測部203で計測された結果を統合した計測結果を算出する。例えば、鉄筋計測部201で算出された鉄筋間隔は計測できない遮蔽鉄筋部分に抜けの生じた結果となるが、遮蔽鉄筋計測部203の結果の位置を合わせて統合することで、抜けのない結果を取得することができる。
【0037】
このようにして、遮蔽の生じた鉄筋が生じる場合においても、精度よく計測することができる。
【0038】
(処理フロー)
図8に、本実施形態の画像計測装置10を用いた画像計測方法の処理フローを示す。以下の処理フローは、画像処理部102において行われる。詳細は以下の通りである。
【0039】
撮像部101が生成した画像が画像処理部102に入力されると、鉄筋計測部201が撮像画像から鉄筋領域を算出する(ステップS1)。
【0040】
次に、鉄筋計測部201が、鉄筋領域のうち視差が取得可能な遮蔽されていない鉄筋(非遮蔽領域)の3次元位置を算出する(ステップS2)。
【0041】
次に、鉄筋計測部201が、非遮蔽鉄筋の3次元位置情報を用いて、鉄筋平面を判定する(ステップS3)。
【0042】
次に、先述のように2つの撮像画像内の鉄筋領域のうち、対応点が取れなかった鉄筋領域を検出する(ステップS4、遮蔽鉄筋検出工程)。ここで検出される鉄筋領域が、遮蔽された鉄筋領域に相当する。この検出は、遮蔽鉄筋検出部202が行う。
【0043】
次に、ステップS4において検出した遮蔽された鉄筋領域が、どの鉄筋平面に含まれる鉄筋に対応するか判定する(ステップS5)。
【0044】
次に、ステップS5において判定した鉄筋平面と、非遮蔽鉄筋の位置とに基づいて、遮蔽鉄筋の位置を推定し、推定した位置において鉄筋平面の3次元平面上に、各遮蔽鉄筋上の画素を投影することによって、遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する(ステップS6、遮蔽鉄筋計測工程)。
【0045】
ステップS5において算出した非遮蔽鉄筋の3次元位置と、ステップS6において算出した遮蔽鉄筋の3次元位置とを統合した結果を生成し、各鉄筋径の算出や、同じ鉄筋平面に位置する鉄筋の間隔などを算出して、計測結果を出力する(ステップS7)。
【0046】
以上のように本実施形態によれば、遮蔽された鉄筋であっても、画像処理による鉄筋位置や鉄筋径の計測を精度良く行うことが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、撮像部101は、2つの撮像部を有した構成であるが、これに限定されるものではなく、3つ以上の撮像部を有した構成であってもよい。例えば、3眼レンズによって撮像部101を構成してもよい。
【0048】
〔ソフトウェアによる実現例〕
画像計測装置10の画像処理部102(鉄筋計測部201、遮蔽鉄筋検出部202、遮蔽鉄筋計測部203、および結果出力部204)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0049】
後者の場合、画像計測装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば少なくとも1つのプロセッサ(制御装置)を備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な少なくとも1つの記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0050】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る画像計測装置10は、複数の層に配置された鉄筋の視差を有する複数の画像から、少なくとも一つの画像に撮像されており、少なくとも一つの他の画像には他の鉄筋に遮蔽されて撮像されていない遮蔽鉄筋を検出する遮蔽鉄筋検出部202と、前記遮蔽鉄筋が含まれる前記層に対応する鉄筋平面に基づいて前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する遮蔽鉄筋計測部203と、を備えている。
前記の構成によれば、遮蔽されている鉄筋であっても、当該鉄筋を精度よく計測することができる画像計測装置を実現できる。
【0051】
本発明の態様2に係る画像計測装置10は、上記態様1において、前記複数の画像から他の鉄筋に遮蔽されていない非遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する非遮蔽鉄筋計測部(鉄筋計測部201)を備え、前記遮蔽鉄筋計測部203は、前記非遮蔽鉄筋の3次元位置から前記鉄筋平面を特定してもよい。
前記の構成によれば、各層に対応する鉄筋平面を特定することができるため、遮蔽鉄筋の3次元位置を、当該鉄筋平面に基づいて算出することができる。
【0052】
本発明の態様3に係る画像計測装置10は、上記態様2において、前記非遮蔽鉄筋計測部(鉄筋計測部201)による非遮蔽鉄筋の計測結果と、前記遮蔽鉄筋計測部203による遮蔽鉄筋の計測結果とを統合した鉄筋計測結果を算出する結果出力部204を更に備えていてもよい。
前記の構成によれば、遮蔽鉄筋を含めて、抜けのない計測結果を得ることができる。
【0053】
本発明の態様4に係る画像計測装置10は、上記態様1から3において、前記遮蔽鉄筋計測部203は、前記遮蔽鉄筋検出部202が検出した前記遮蔽鉄筋を、前記鉄筋平面に投影することによって、前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出してもよい。
前記の構成によれば、非遮蔽鉄筋の3次元位置から特定されている鉄筋平面に遮蔽鉄筋を投影することにより、遮蔽鉄筋の3次元位置を算出することができる。
【0054】
本発明の態様5に係る画像計測方法は、複数の層に配置された鉄筋の視差を有する複数の画像から、少なくとも一つの画像に撮像されており、少なくとも一つの他の画像には他の鉄筋に遮蔽されて撮像されていない遮蔽鉄筋を検出する遮蔽鉄筋検出工程(ステップS4)と、前記遮蔽鉄筋が含まれる前記層に対応する鉄筋平面に基づいて前記遮蔽鉄筋の3次元位置を算出する遮蔽鉄筋計測工程(ステップS6)と、を含む。
前記の構成によれば、遮蔽されている鉄筋であっても、当該鉄筋を精度よく計測することができる画像計測方法を実現できる。
【0055】
本発明の各態様に係る画像計測装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記画像計測装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記画像計測装置をコンピュータにて実現させる画像計測装置の画像計測プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それにより得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
10 画像計測装置
101 撮像部
101a 第1撮像部
101b 第2撮像部
101s 撮影方向
102 画像処理部
103 記録部
104 表示装置
201 鉄筋計測部(非遮蔽鉄筋計測部)
202 遮蔽鉄筋検出部
203 遮蔽鉄筋計測部
204 結果出力部
301 (手前側の)鉄筋平面
301h (手前側の鉄筋平面に含まれる)横筋(非遮蔽鉄筋)
301v (手前側の鉄筋平面に含まれる)縦筋(非遮蔽鉄筋)
301v1 第1縦筋(非遮蔽鉄筋)
301v2 第2縦筋(非遮蔽鉄筋)
302 (奥側の)鉄筋平面
302h (奥側の鉄筋平面に含まれる)横筋
302v (奥側の鉄筋平面に含まれる)縦筋
302v1 第1縦筋
302v2 第2縦筋(遮蔽鉄筋)
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