(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093934
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/10 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
G01F1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206672
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 俊範
(72)【発明者】
【氏名】本間 一輝
【テーマコード(参考)】
2F030
【Fターム(参考)】
2F030CA02
2F030CC01
2F030CE03
2F030CE13
2F030CG09
(57)【要約】
【課題】小型化を可能としつつ、且つ、高精度な流量検出を実現し得る流量計を提供すること。
【解決手段】流路11を形成するハウジング10と、流路11の延在方向に沿って回転軸が配されるように、ハウジング10内に回転可能に支持された羽根車20と、羽根車20及びハウジング10を間に挟んで互いに対向する位置に配設された発光部31及び受光部32を有する回転検出センサ30と、を備え、ハウジング10の流路11は、円筒形状をなし、ハウジング10の流路11を形成する側壁の内周面のうち、発光部31が放射するセンサビーム30Lの光軸L2が通過する領域は、光軸L2に対して垂直な平面部10aとなっている、流量計。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を形成するハウジングと、
前記流路の延在方向に沿って回転軸が配されるように、前記ハウジング内に回転可能に支持された羽根車と、
前記羽根車及び前記ハウジングを間に挟んで互いに対向する位置に配設された発光部及び受光部を有する回転検出センサと、
を備え、
前記ハウジングの前記流路は、円筒形状をなし、
前記ハウジングの前記流路を形成する側壁の内周面のうち、前記発光部が放射するセンサビームの光軸が通過する領域は、前記光軸に対して垂直な平面部となっている、
流量計。
【請求項2】
前記ハウジングの前記側壁の外周面のうち前記センサビームの前記光軸が通過する領域は、前記光軸に対して垂直な平面部となっている、
請求項1に記載の流量計。
【請求項3】
前記センサビームの前記光軸は、前記羽根車の前記回転軸からオフセットした位置に設定され、
前記センサビームは、前記羽根車が回転している際、前記羽根車の回転角度が第2回転角度のときには前記羽根車の羽根に遮蔽され、前記羽根車の回転角度が第1回転角度のときには前記羽根車の前記羽根に遮蔽されることなく、前記受光部まで通過する状態となり、前記羽根車の前記羽根によって、前記羽根車の回転速度に応じて断続する光信号に変換される、
請求項1又は2に記載の流量計。
【請求項4】
前記羽根車は、前記センサビームに対して不透過性を有する複数枚の前記羽根を含んで構成され、
複数枚の前記羽根は、前記羽根車の回転角度が所定角度のときに、前記羽根同士の間に、前記センサビームが通過可能な隙間が形成されるように構成されている、
請求項3に記載の流量計。
【請求項5】
前記羽根は、前記センサビームに対して不透過性を有する複数枚の前記羽根を含んで構成され、
複数枚の前記羽根は、前記羽根車の回転角度が所定角度のときに、前記羽根に設けられた切り欠きを介して、前記センサビームが通過可能な領域が形成されるように構成されている、
請求項3に記載の流量計。
【請求項6】
前記羽根車は、表面に親水化処理が施された羽根を有する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の流量計。
【請求項7】
前記親水化処理は、被膜形成処理又はプラズマ処理である、
請求項6に記載の流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、羽根車式流量計が知られている(タービン式流量計とも称される)。
【0003】
この種の流量計においては、流路内に羽根車を配し、羽根車を流体の流れる力で回転させて、そのときの羽根車の回転速度を検出することで、流体の単位時間当たりの体積流量(以下、単に「流量」と称する)を計測する。
【0004】
この種の流量計において、羽根車の回転速度を検出する方式としては、一般に、磁気検出方式が用いられている。磁気検出方式は、羽根車の羽根にマグネットを設け、羽根車が回転した際の磁束変化を流路の外に設置した磁気検出素子で検出して羽根車の回転速度を検出する方式である。但し、磁気検出方式の流量計では、羽根車とは別の接液材料となるマグネットが必要となることから、化学薬品や血液等、汚染が許されない現場での使用には適さない。又、このような現場では、様々な化学薬品に対して耐性を有するマグネットを選定する必要が生じ、その素材の選定に困難さが伴う。
【0005】
このような背景から、化学薬品や血液等、汚染が許されない現場では、羽根車の回転速度を検出する方式として、光透過方式が注目されている。光透過方式は、羽根車のシャフトにセンサビーム通過用の貫通孔を設けると共に、羽根車を挟んで互いに対向する位置に発光部と受光部とを有する回転検出センサを設け、羽根車が回転しているときに観察されるセンサビーム(発光部から受光部に向けて放射される放射光を表す。以下同じ)の通過状態/遮断状態を検出することで、羽根車の回転速度を検出する方式である(例えば、特許文献1を参照)。光透過方式の流量計は、羽根車とは別の接液材料を必要としないため、汚染が許されない現場においても好適に使用可能である。
【0006】
尚、同じ光検出式でも、羽根車に反射板を取り付けて、当該反射板からの反射光を用いて、羽根車の回転速度を検出する光反射方式も存在するが、かかる光反射方式の流量計では、磁気検出方式の流量計と同様に、羽根車とは別の接液材料が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、この種の光透過方式の流量計においては、微小流量の流体が通流する配管内への設置を可能とするため、小型化要請がある。但し、本願の発明者らの鋭意検討の結果、流量計の小型化は、種々の要因で、羽根車の回転速度の検出精度の悪化(即ち、流量の検出精度の悪化)を招くことが分かってきた。
【0009】
例えば、羽根車を回転可能に支持するハウジングを小型化した場合、ハウジング内の流路の径が小さくなり、ハウジングの流路を形成する側壁の曲率が大きくなる。ハウジングの側壁の曲率が大きくなると、発光部から受光部に向けて放射されるセンサビームを、ハウジングの外部から流路内に進行させる際、及び、ハウジングの流路から外部に進行させる際に、屈折の程度が大きくなり、迷光が発生しやすくなる。そして、これに起因して、羽根車の回転速度の検出精度の悪化を招くことになる。
【0010】
又、羽根車を小型化した場合、羽根車のシャフトに形成するビーム通過用の貫通孔の径も、小さくなる。羽根車のシャフトに形成したビーム通過用の貫通孔の径を小さくすると、当該貫通孔を通過し得る回転検出センサのセンサビームの光量も減少するため、これに起因して、羽根車の回転速度の検出精度の悪化を招くことになる。加えて、ビーム通過用の貫通孔の径が小さくなると、流体中に含まれる気泡の影響を受けやすくなり、例えば、ビーム通過用の貫通孔内に付着した気泡によって、回転検出センサのセンサビームが遮蔽され、羽根車の回転速度の検出精度の悪化を招くことになる。
【0011】
本開示は、上記問題点に鑑みてなされたもので、小型化を可能としつつ、且つ、高精度な流量検出を実現し得る流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
流路を形成するハウジングと、
前記流路の延在方向に沿って回転軸が配されるように、前記ハウジング内に回転可能に支持された羽根車と、
前記羽根車及び前記ハウジングを間に挟んで互いに対向する位置に配設された発光部及び受光部を有する回転検出センサと、
を備え、
前記ハウジングの前記流路は、円筒形状をなし、
前記ハウジングの前記流路を形成する側壁の内周面のうち、前記発光部が放射するセンサビームの光軸が通過する領域は、前記光軸に対して垂直な平面部となっている、
流量計である。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る流量計によれば、小型化を可能としつつ、且つ、高精度な流量検出を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流量計の外観を示す図
【
図2】本発明の一実施形態に係る流量計の分解斜視図
【
図3】本発明の一実施形態に係る流量計の側面断面図
【
図4】本発明の一実施形態に係る流量計のハウジングの内部構造を示す図
【
図5】本発明の一実施形態に係る流量計の羽根車の回転角度が第1角度のときの、羽根車の羽根部とセンサビームの光軸の位置関係を示す図
【
図6A】本発明の一実施形態に係る流量計の羽根車の構成を示す正面図(羽根車の回転角度が第1回転角度の状態のとき)
【
図6B】本発明の一実施形態に係る流量計の羽根車の構成を示す正面図(羽根車の回転角度が第2回転角度の状態のとき)
【
図7A】変形例に係る流量計の羽根車の構成を示す図
【
図7B】変形例に係る流量計の羽根車の構成を示す図
【
図7C】変形例に係る流量計の羽根車の構成を示す図
【
図8A】他の変形例に係る流量計の羽根車の構成を示す図
【
図8B】他の変形例に係る流量計の羽根車の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0016】
図1乃至
図6Bは、本発明の一実施形態に係る流量計1の構成を示す図である。
【0017】
図1は、流量計1の外観を示す図である。
図2は、流量計1の分解斜視図である。
図3は、流量計1の側面断面図である。
【0018】
図4は、流量計1のハウジング10の内部構造を示す図である。
【0019】
図5は、流量計1の羽根車20の回転角度が第1角度のときの、羽根車20の羽根部22とセンサビーム30Lの光軸L2との位置関係を示す図である。
【0020】
図6A、
図6Bは、流量計1の羽根車20の構成を示す正面図であり、
図6Aは、羽根車20の回転角度が第1角度のときの、羽根車20の羽根部22の状態を表し、
図6Bは、羽根車20の回転角度が第2角度のときの、羽根車20の羽根部22の状態を表している。
【0021】
各図には、各構成の位置関係を明確にするため、共通の直交座標系(X、Y、Z)を示している。以下では、X軸のプラス方向は計測対象の流体の通流方向を表し、Y軸のプラス方向は流量計1の回転検出センサ30の発光部31がセンサビーム30Lを放射する方向を表し、Z軸のプラス方向はX軸とY軸と直交する方向で、流量計1の上方向を表すものとして説明する。
【0022】
尚、以下の説明で、各構成の位置関係を説明する際、「平行」又は「垂直」と称する場合、2つ構成間のなす角度が完全に0度又は90度である態様に加えて、当該角度が製品製作上の公差の範囲(例えば、±1度)で0度又は90度から角度ずれを有している態様も含む。
【0023】
流量計1は、計測対象の流体を通流させる流路11を形成するハウジング10と、ハウジング10内に回転可能に支持された羽根車20と、羽根車20及びハウジング10を間に挟んで互いに対向する位置に配設された発光部31及び受光部32を有し、これらにより羽根車20の回転速度を検出する回転検出センサ30と、を備えている。
【0024】
尚、本実施形態に係る流量計1は、光透過方式の流量計である。本実施形態に係る流量計1の計測対象の流体は、典型的には、水、化学薬品又は血液等の液体である。
【0025】
ハウジング10は、流入口11a及び流出口11bを有し、ハウジング10の内部には計測対象の流体を流通させる流路11が形成される。流入口11a、流路11及び流出口11bは連通しており、流量計1の外部から流入口11aを通じてハウジング10内部に流入した流体は、流路11を通って流出口11bから外部に流出する。尚、ハウジング10は、例えば、流入口11aには一次側の配管(図示せず)が接続され、流出口11bには二次側の配管(図示せず)が接続された状態で配設される。
【0026】
ハウジング10は、回転検出センサ30のセンサビーム30Lが透過し得るように、センサビーム30L(例えば、赤外光)に対して透過性を有する材料(例えば、ポリカーボネート樹脂)によって、形成されている。
【0027】
流路11は、流路11内を通流する流体が、羽根車20が有する複数枚の羽根22a、22bそれぞれの領域を均一(即ち、流速ムラなく)に通過し得るように、円筒形状を呈している。換言すると、ハウジング10は、羽根車20の回転軸L1に沿って延在する円筒形状を呈する。
【0028】
但し、本実施形態に係るハウジング10においては、流路11を形成する側壁の内周面のうち、回転検出センサ30のセンサビーム30Lの光軸L2が通過する領域は、光軸L2に対して略垂直な平面部10a(以下、「内側平面部10a」と称する)となっている(
図4を参照)。又、流路11を形成する側壁の外周面のうち、回転検出センサ30のセンサビーム30Lの光軸L2が通過する領域は、光軸L2に対して略垂直な平面部10b(以下、「外側平面部10b」と称する)となっている。ここでは、内側平面部10a及び外側平面部10bは、XZ面に略平行な平面部となっている。ここで、センサビーム30Lの光軸L2が通過する領域は、ハウジング10の外部の発光部31からハウジング10の内部に進行する位置と、ハウジング10の内部からハウジング10の外部の受光部32に進行する位置と、に存在するため、ハウジング10の内周面には、内側平面部10aが2箇所に向かい合わせて形成され、ハウジング10の外周面には、外側平面部10bが2箇所にハウジング10の反対側に形成されることになる。
【0029】
尚、ハウジング10は、羽根車20の上流側に入口案内羽根12を有し、流路11内を通流する流体が、羽根車20が有する複数枚の羽根22a、22bそれぞれの領域を均一に通過し得るように、ハウジング10内に流入する流体を案内する構造となっている。又、ハウジング10は、羽根車20の上流側及び下流側それぞれに、羽根車20を回転可能に支持するベアリングを有している(図示せず)。ここでは、羽根車20を上流側で支持するベアリングは、入口案内羽根12の位置に形成されている。
【0030】
羽根車20は、回転軸L1が流路11の延在方向に沿って配されるように(即ち、X軸方向)、ハウジング10内に回転可能に支持されている。換言すると、羽根車20の回転面は、ハウジング10の流路11内を通流する流体の流れ方向に対して略垂直となっている。
【0031】
羽根車20は、シャフト21と、羽根部22と、を有している。シャフト21は、羽根車20の回転軸L1を構成しており、ハウジング10内の羽根車20の上流側に設けられたベアリング(図示せず)、及びハウジング10内の羽根車20の下流側に設けられたベアリング(図示せず)に、回転可能に軸支されている。シャフト21は、軸方向の略中央部にボス部を有し、当該ボス部の外周面上に羽根部22を取り付け可能に構成されている。
【0032】
羽根部22は、ハウジング10内の流路11を通流する流体からの動力を受けて、当該動力を、羽根車20の回転動力に変換する。羽根部22は、シャフト21の外周面(より詳細には、シャフト21のボス部)に放射状に配設された複数枚(ここでは、2枚)の羽根22a、22bによって構成されている。複数枚の羽根22a、22bは、例えば、ハウジング10内の流路11を通流する流体からの動力を受けて、羽根車20を所定方向へ回転するようなタービン翼形状を呈する。複数枚の羽根22a、22bは、例えば、回転検出センサ30のセンサビーム30L(例えば、赤外光)に対して不透過な材料(例えば、ポリアセタール樹脂)で構成されている。
【0033】
但し、本実施形態に係る羽根部22は、羽根車20が回転している際に、発光部31が放射するセンサビーム30Lを、羽根車20の回転角度に応じて、間欠的に通過状態とし、又は、間欠的に遮蔽状態とするシャッターとしても機能する。即ち、羽根部22は、羽根車20の回転角度に応じて、センサビーム30Lを通過させる状態と、センサビーム30Lを遮断する状態とを切り替え、センサビーム30Lを、羽根車20の回転速度に応じて断続する光信号に変換する(
図5、
図6A、
図6Bを参照)。
【0034】
より具体的には、羽根22aと羽根22bとは、所定間隔だけX軸方向に離間して配設され、羽根22aと羽根22bとの間には、側面視で(ここでは、Y軸方向から見たとき)、発光部31側から受光部32側まで連通する窓となる隙間Q1が形成される構造となっている。そして、この隙間Q1が、羽根車20が第1回転角度の時には、側面視で(ここでは、Y軸方向から見たとき)、センサビーム30Lの光軸L2の位置と重なる構成となっている(
図6Aを参照)。一方、この隙間Q1は、羽根車20が第2回転角度の時には(例えば、360度のうち、第1回転角度を除くすべての回転角度のとき)、センサビーム30Lの光軸L2の位置と重ならない(
図6Bを参照)。
【0035】
つまり、本実施形態に係る流量計1においては、発光部31から放射されたセンサビーム30Lは、羽根車20が第1回転角度のときには、隙間Q1を介して、受光部32側に通過可能となり(
図6Aを参照)、羽根車20が第2回転角度のときには(例えば、360度のうち、第1回転角度を除くすべての回転角度のとき)、羽根22a又は羽根22bのいずれかが、センサビーム30Lを遮蔽する(
図6Bを参照)。これによって、羽根部22は、羽根車20の回転角度に応じて、センサビーム30Lを、羽根車20の回転速度に応じて断続する光信号に変換する。
【0036】
尚、隙間Q1のサイズは、センサビーム30Lのビーム径、及びビーム通過可能時間等を考慮して、適宜に設定されるのが好ましい。
【0037】
又、本実施形態に係る羽根部22の表面は、より好ましくは、親水化処理が施された状態となっているのが好ましい。これによって、羽根部22の表面に、気泡が滞留する状態をより効果的に抑制することが可能である。かかる親水化処理としては、樹脂材料を親水化するための従来公知の処理が用いられてよく、例えば、被膜形成処理(例えば、シリカ被膜を形成する処理)や、又は、プラズマ処理(例えば、酸素プラズマ処理)が挙げられる。
【0038】
回転検出センサ30は、羽根車20及びハウジング10を間に挟んで互いに対向する位置に配設された発光部31及び受光部32と、コントロールユニット(図示せず)とを有する。
【0039】
発光部31は、例えば、レーザダイオードや発光ダイオードである。発光部31は、例えば、1μm以下のビーム径の赤外光を、センサビーム30Lとして放射する。又、受光部32は、例えば、フォトダイオードやフォトトランジスタである。受光部32は、センサビーム30Lの受光量に応じた起電力の検出信号を出力する。尚、発光部31及び受光部32は、回路基板34に実装された状態で、ケース33内に収納されている。
【0040】
発光部31と受光部32とは、センサビーム30Lの光軸L2が、羽根車20の回転軸L1に対して略垂直になるように配設されている。即ち、発光部31から放射されたセンサビーム30Lは、まず、ハウジング10の発光部31側の側壁(ここでは、ハウジング10の発光部31側の側壁のうち、内側平面部10a及び外側平面部10bの領域)に略垂直に入射し、ハウジング10内に進行する。そして、ハウジング10内に進行したセンサビーム30Lは、羽根車20に設けられたビーム通過ポイント(ここでは、羽根部22の位置)を通過した後、ハウジング10の受光部32側の側壁(ここでは、ハウジング10の受光部32側の側壁のうち、内側平面部10a及び外側平面部10bの領域)に略垂直に入射し、受光部32に到達する。
【0041】
但し、本実施形態に係る発光部31及び受光部32は、センサビーム30Lの光軸L2が、羽根車20の回転軸L1(即ち、ハウジング10の中心軸)から、当該回転軸L1に直交する方向(図中では、プラスZ方向)(即ち、ハウジング10の外側方向)にオフセットした位置に設定されるように、配設されている(
図5、
図6A、
図6Bを参照)。センサビーム30Lの光軸L2の羽根車20の回転軸L1からのオフセット量は、羽根車20の回転軸L1から羽根部22の隙間Q1の位置までの距離に相当する。つまり、羽根車20におけるビーム通過ポイントは、羽根部22の位置に存在し、羽根車20が第1回転角度の時には、隙間Q1と重なり(
図6Aを参照)、センサビーム30Lが通過可能な状態となり、羽根車20が第2回転角度(例えば、360度のうち、第1回転角度を除くすべての回転角度)の時には、羽根部22(羽根22a又は羽根22b)と重なり、センサビーム30Lが通過不可能な状態となる(
図6Bを参照)。
【0042】
尚、回転検出センサ30にて、羽根車20の回転速度を検出する手法は、従来公知の手法と同様である。羽根車20がハウジング10内の流路11を通流する流体からの動力を受けて回転した際、羽根車20の羽根部22は、発光部31から放射されるセンサビーム30Lを、断続した光信号に変換し、これが受光部32に提供される。受光部32は、自身に到来するセンサビーム30Lの光量に応じた起電力の検出信号を生成する。そして、受光部32は、当該検出信号を増幅整形して矩形波のパルス信号(即ち、羽根部22におけるセンサビーム30Lの通過状態を示すオン/オフ信号)に変換して、コントロールユニットに送出する。コントロールユニットは、受光部32から取得したパルス信号のパルス列(例えば、単位時間当たりのパルス信号の数)から、羽根車20の回転速度を検出し、この羽根車20の回転速度からハウジング10内の流路11を流れる流体の単位時間当たりの流量を算出する。
【0043】
[効果]
一般に、流量計1の小型化を図る場合、ハウジング10の側壁の曲率は、大きくならざるを得ない。通常、計測対象の流体(例えば、水)とハウジング10の材料(例えば、樹脂材料)とは屈折率差が大きいため、仮に、従来技術に係る流量計のように、回転検出センサ30のセンサビーム30Lを、ハウジング10の側壁の曲率が大きい領域を通過させる場合には、センサビーム30Lは、ハウジング10の側壁を通過する際に、大きく屈折し、多方向に拡散するおそれがある。そして、これにより、迷光が発生したり、受光部32に到達するセンサビーム30Lの光量が減少して、羽根車20の回転速度の検出精度の悪化を招くことになる。
【0044】
この点、本実施形態に係る流量計1では、センサビーム30Lは、ハウジング10の側壁を通過する際には、センサビーム30Lの光軸L2に対して略垂直に形成された内側平面部10aの領域を通過する構成を取る。従って、本実施形態に係る流量計1によれば、回転検出センサ30のセンサビーム30Lが、ハウジング10の側壁からハウジング10内を通流する流体中に進行する際、及び/又は、ハウジング10内を通流する流体中からハウジング10の側壁に進行する際に、屈折し、多方向に拡散することを抑制することが可能である。
【0045】
又、本実施形態に係る流量計1では、更に、センサビーム30Lは、ハウジング10の側壁から大気中に進行する際、及び/又は、大気中からハウジング10の側壁に進行する際には、センサビーム30Lの光軸L2に対して略垂直に形成された外側平面部10bの領域を通過する構成となっている。従って、本実施形態に係る流量計1によれば、センサビーム30Lが、ハウジング10の側壁から大気中に進行する際、及び/又は、大気中からハウジング10の側壁に進行する際に、屈折し、多方向に拡散することも抑制することが可能である。
【0046】
このように、本実施形態に係る流量計1によれば、ハウジング10の構造の工夫によって、羽根車20の回転速度の検出精度の高精度化、即ち、流量検出の検出精度の向上を図ることができる。
【0047】
又、一般に、流量計1の小型化を図る場合、羽根車20のシャフト21も小型化(即ち、細径化)する。そのため、従来技術に係る流量計のように、シャフト21中に形成された貫通孔を、羽根車20におけるビーム通過ポイントとする構成では、貫通孔の孔径の制約から、十分な光量のセンサビーム30Lを受光部32に到達させることが困難となる。
【0048】
この点、本実施形態に係る流量計1では、センサビーム30Lの光軸L2は、羽根車20の回転軸L1からオフセットした位置に設定され、羽根車20の羽根部22の位置(上記実施形態では、隙間Q1の位置)に、羽根車20におけるビーム通過ポイントが設定される。従って、本実施形態に係る流量計1によれば、羽根車20におけるビーム通過領域を十分に確保することが可能であり、十分な光量のセンサビーム30Lを受光部32に到達させることが可能となる。加えて、かかる構成によって、従来技術に係る流量計のように、ハウジング10内を通流する流体中の気泡がセンサビーム30Lの通過領域に滞留することを抑制することもできる。これによって、流体中の気泡によって、センサビーム30Lの通過が阻害されることも抑制することができる。
【0049】
このように、本実施形態に係る流量計1によれば、センサビーム30Lの光軸L2の位置の適正化によって、羽根車20の回転速度の検出精度の高精度化、即ち、流量検出の検出精度の向上を図ることができる。
【0050】
(変形例)
上記実施形態では、羽根車20の羽根部22の羽根同士の間の隙間Q1にビーム通過ポイントを形成する態様を示したが、本発明の一態様における流量計1においては、ビーム通過ポイントは、羽根車20が有する複数枚(ここでは、3枚)の羽根22c、22d、22eの少なくとも一つに設けられた切り欠きQ2によって形成されてもよい。
【0051】
図7A、
図7B、
図7Cは、変形例に係る流量計1の羽根車20の構成を示す図である。
図7Aは、羽根車20の構成を示す斜視図により示しており、
図7B、
図7Cは、羽根車20の構成を示す正面図により示している。尚、
図7A、
図7Bは、羽根車20の回転角度が第1回転角度のときの、羽根車20の羽根部22とセンシングビームの光軸L2との位置関係を示しており、
図7Cは、羽根車20の回転角度が第2回転角度の状態のときの、羽根車20の羽根部22とセンシングビームの光軸L2との位置関係を示している。
【0052】
変形例に係る流量計1では、切り欠きQ2は、羽根22dの端部に設けられている(
図7Bを参照)。即ち、変形例に係る流量計1では、羽根22dが、羽根22c及び羽根22eと比較して、短くなるように形成されている。そして、変形例に係る流量計1では、羽根車20の回転角度が第1回転角度のときには、センシングビーム30Lの光軸L2が羽根22dの切り欠きQ2の位置と重なり、センシングビーム30Lは、通過可能な状態となる(
図7Bを参照)。一方、羽根車20の回転角度が第1回転角度以外の角度のときには、センシングビーム30Lの光軸L2が切り欠きQ2の位置から外れ、羽根22d又は羽根22eの位置と重なり、センシングビーム30Lは、羽根22d又は羽根22eに遮蔽された状態となる(
図7Cを参照)。
【0053】
上記実施形態に係る流量計1では、羽根車20の羽根部22の羽根同士の間(上記実施形態では、羽根22aと羽根22bの間)の隙間Q1にビーム通過ポイントを形成するため、羽根車20に設ける羽根の枚数や形状に制約が生じる場合がある。この点、変形例に係る流量計1では、複数枚(ここでは、3枚)の羽根22c、22d、22eの少なくとも一つに設けられた切り欠きQ2によって、ビーム通過ポイントが形成される構成となるため、羽根車20に設ける羽根の枚数や形状に対する制約を小さくすることができる点で、有用である。
【0054】
尚、羽根車20の羽根に設ける切り欠きQ2の位置は、
図7A、
図7B、
図7Cのように、羽根の端部の位置に限らない。
【0055】
図8A、
図8Bは、他の変形例に係る流量計1の羽根車20の構成を示す図である。
図8A、
図8Bは、他の変形例に係る流量計1の羽根車20の構成を示す正面図である。
図8Aは、羽根車20の回転角度が第1回転角度のときの、羽根車20の羽根部22とセンシングビームの光軸L2との位置関係を示しており、
図8Bは、羽根車20の回転角度が第2回転角度の状態のときの、羽根車20の羽根部22とセンシングビームの光軸L2との位置関係を示している。
【0056】
図8A、
図8Bでは、切り欠きQ2は、羽根22fの中間位置に形成されている。そして、他の変形例に係る流量計1では、羽根車20の回転角度が第1回転角度のときには、センシングビーム30Lの光軸L2が羽根22fの切り欠きQ2の位置と重なり、センシングビーム30Lは、通過可能な状態となる(
図8Aを参照)。一方、羽根車20の回転角度が第1回転角度以外の角度のときには、センシングビーム30Lの光軸L2が切り欠きQ2の位置から外れ、羽根22f又は羽根22gの位置と重なり、センシングビーム30Lは、羽根22f又は羽根22gに遮蔽された状態となる(
図8Bを参照)。
【0057】
切り欠きQ2は、
図7A、
図7B、
図7Cに示す態様に限らず、
図8A、
図8Bに示す態様のように形成されてもよく、いずれの態様であっても、羽根車20に設ける羽根の枚数や形状に対する制約を小さくすることが可能である。
【0058】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0059】
例えば、上記実施形態では、羽根車20の羽根同士の隙間Q1や、羽根車20の羽根22a、22bに設けた切り欠きQ2により、羽根車20が回転している際のビーム遮断状態とビーム通過状態と、を変化させる態様を示した。しかしながら、本発明の流量計1において、羽根車20が回転している際のビーム遮断状態とビーム通過状態と、を変化させるための構成としては、羽根車20の羽根22の一部の領域を、光透過性の材料で形成する態様を採用してもよい。
【0060】
又、上記実施形態では、羽根車20に設ける隙間Q1や切り欠きQ2を一箇所のみとして、羽根車20が回転している際に、羽根車20が一回転する毎に、回転検出センサ30のセンサビーム30Lを一回だけ通過させる態様を示した。しかしながら、本発明の流量計1においては、羽根車20が所定角度(例えば、90度)回転する毎に、回転検出センサ30のセンサビーム30Lを一回通過させる構成としてもよい。これによって、回転検出センサ30にて、単位時間当たりの羽根車20の回転速度に加えて、単位時間当たりの羽根車20の回転角度まで検出することが可能となる。
【0061】
又、上記実施形態では、センサビーム30Lの通過ポイントにおける光量の問題、及び、ハウジング10の側壁を通過する際のセンサビーム30Lの屈折の問題等を複合的に解消し得る流量計1の態様を示した。しかしながら、これらのいずれか一つの問題のみを懸念する場合、上記実施形態で説明した流量計1の一部については、従来技術と同様の構成が採用されてもよい。例えば、ハウジング10の側壁を通過する際のセンサビーム30Lの屈折のみを懸念する場合、羽根車20の位置におけるビーム通過ポイントについては、従来技術と同様に、羽根車20のシャフト21に設けた貫通孔を、ビーム通過ポイントとして設定してもよい。
【0062】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示に係る流量計によれば、小型化を可能としつつ、高精度な流量検出を実現することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 流量計
10 ハウジング
10a 内側平面部
10b 外側平面部
11 流路
11a 流入口
11b 流出口
12 入口案内羽根
20 羽根車
21 シャフト
22(22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g) 羽根部
30 回転検出センサ
30L センサビーム
31 発光部
32 受光部
33 ケース
34 回路基板
L1 羽根車の回転軸
L2 センサビームの光軸
Q1 隙間
Q2 切り欠き