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特開2022-93966ゴム内面用離型剤、ゴム内面用離型剤の製造方法、ゴム内面用離型剤水分散液、ゴム製品の製造方法、タイヤの製造方法、ゴム製品及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093966
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ゴム内面用離型剤、ゴム内面用離型剤の製造方法、ゴム内面用離型剤水分散液、ゴム製品の製造方法、タイヤの製造方法、ゴム製品及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/64 20060101AFI20220617BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20220617BHJP
   B29D 30/06 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B29C33/64
B29C33/02
B29D30/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206724
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】390029458
【氏名又は名称】ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
(72)【発明者】
【氏名】下原 宗一
【テーマコード(参考)】
4F202
4F215
【Fターム(参考)】
4F202AA45
4F202AB03
4F202AC03
4F202AH20
4F202CA21
4F202CB01
4F202CM46
4F202CM62
4F202CM69
4F202CM83
4F215AH20
4F215VL27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】離型性及び滑性が高く、かつ、粉体流動性及びゴム製品の外観に優れたゴム内面用離型剤を提供する。
【解決手段】ゴム内面用離型剤は、下記成分(A)~(D)を含み、(A)~(D)の質量の合計に対して、(D)を0.1~50質量%含むことを特徴とする。
(A)成分(D)以外の無機物質
(B)疎水性シリコーン
(C)界面活性剤
(D)黒鉛
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(D)を含み、
下記成分(A)~(D)の質量の合計に対して、下記成分(D)を0.1~50質量%含むことを特徴とするゴム内面用離型剤。

(A)下記成分(D)以外の無機物質
(B)疎水性シリコーン
(C)界面活性剤
(D)黒鉛
【請求項2】
前記成分(A)として、ガラスビーズを含まない、請求項1記載のゴム内面用離型剤。
【請求項3】
前記成分(D)の全質量が、前記成分(A)の全質量に対して0.1~800質量%である請求項1又は2記載のゴム内面用離型剤。
【請求項4】
前記成分(A)が炭酸カルシウムを含む請求項1から3のいずれか一項に記載のゴム内面用離型剤。
【請求項5】
前記成分(C)の一部及び前記成分(B)を混合して混合物を得る第一混合工程と、
前記第一混合工程で得た前記混合物に、前記成分(C)の残部、前記成分(A)及び前記成分(D)を混合する第二混合工程と、
を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のゴム内面用離型剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のゴム内面用離型剤と、水とを含むことを特徴とするゴム内面用離型剤水分散液。
【請求項7】
ゴム内面に、請求項6記載のゴム内面用離型剤水分散液を直接又は間接的に付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程を含むことを特徴とするゴム製品の製造方法。
【請求項8】
未加硫ゴム製生タイヤの内面及びブラダーの外面の少なくとも一方に、請求項6記載のゴム内面用離型剤水分散液を付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程と、
前記離型用前処理工程後、成形型内で前記生タイヤに収容された前記ブラダーを膨張させることにより、前記成形型内面に前記生タイヤ外面を押し当て、その状態で前記生タイヤを加熱して加硫する加硫工程と、
を含むことを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一項に記載のゴム内面用離型剤における前記成分(A)~(D)がゴム内面に付着していることを特徴とするゴム製品。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載のゴム内面用離型剤における前記成分(A)~(D)がタイヤの内面に付着していることを特徴とするタイヤ。
【請求項11】
請求項1から4のいずれか一項に記載のゴム内面用離型剤を生タイヤの内面に付着させ、加硫してなることを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム内面用離型剤、ゴム内面用離型剤の製造方法、ゴム内面用離型剤水分散液、ゴム製品の製造方法、タイヤの製造方法、ゴム製品及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品の製造には、ゴム内面用離型剤が広く用いれらている。ゴム内面用離型剤としては、例えば、タイヤ内面用離型剤がある(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-019231号公報
【特許文献2】特開2015-189074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ内面用離型剤は、例えば、つぎのように用いられる。すなわち、タイヤの製造工程において、未加硫生タイヤの加硫成型では、ブラダーと呼ばれるゴム製袋を未加硫生タイヤの内側に配置し、前記ブラダーを温風、熱水又は蒸気で膨張させることで、金型内部に前記未加硫生タイヤを押し当て、圧入成型とともに加硫が行われる。この工程を円滑に行うため、生タイヤのインナーライナー面(内面)に、タイヤ内面用離型剤が予めスプレー塗布される(インサイドペイント)。製造工程でのタイヤ不良率を低下させ、製品外観を良好に保つためには、タイヤ内面用離型剤のスプレー塗布面の状態を均一に保つことが重要である。すなわち、タイヤ内面をタイヤ内面用離型剤の皮膜で均一に被覆し、ゴム同士の接触を防止することで、離型性(剥離性能)や滑性(滑り性能)を発現させることができるので、製造工程でのタイヤ不良率を低下させ、製品外観を良好に保つことが可能である。より具体的には、例えば、加硫中のタイヤとブラダーの密着防止のためには、タイヤ内面用離型剤の皮膜が離型性(剥離性能)を有する必要がある。また、例えば、成型不良やブラダー寿命の低下の要因となる加硫機内でのタイヤへのブラダー挿入不良防止のためには、タイヤ内面用離型剤の皮膜が滑性(滑り性能)を有する必要がある。
【0005】
ゴム内面用離型剤は、例えば、タルク、マイカ等を配合することにより、離型性や滑性を発現させることができる。しかし、タルク、マイカ等の粒子は、色目が白色であるため、最終製品であるゴム製品の外観を損ねるおそれがある。そのため、ゴム製品の外観を損なうことなく、かつ、高い離型性及び滑性が出せるタイヤ内面用離型剤が必要となる。また、ゴム内面用離型剤は、フィラー(粉体又は粉末ともいう)を多く含むため、ハンドリング性の点から、製品形態としたときの粉体流動性も必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、離型性及び滑性が高く、かつ、粉体流動性及びゴム製品の外観に優れたゴム内面用離型剤、ゴム内面用離型剤の製造方法、ゴム内面用離型剤水分散液、ゴム製品の製造方法、タイヤの製造方法、ゴム製品及びタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のゴム内面用離型剤は、下記成分(A)~(D)を含み、下記成分(A)~(D)の質量の合計に対して、下記成分(D)を0.1~50質量%含むことを特徴とする。

(A)下記成分(D)以外の無機物質
(B)疎水性シリコーン
(C)界面活性剤
(D)黒鉛
【0008】
本発明のゴム内面用離型剤の製造方法は、前記本発明のゴム内面用離型剤を製造する方法であり、
前記成分(C)の一部及び前記成分(B)を混合して混合物を得る第一混合工程と、
前記第一混合工程で得た前記混合物に、前記成分(C)の残部、前記成分(A)及び前記成分(D)を混合する第二混合工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のゴム内面用離型剤水分散液は、前記本発明のゴム内面用離型剤と、水とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のゴム製品の製造方法は、ゴム内面に、前記本発明のゴム内面用離型剤水分散液を直接又は間接的に付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のタイヤの製造方法は、
未加硫ゴム製生タイヤの内面及びブラダーの外面の少なくとも一方に、前記本発明のゴム内面用離型剤水分散液を付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程と、
前記離型用前処理工程後、成形型内で前記生タイヤに収容された前記ブラダーを膨張させることにより、前記成形型内面に前記生タイヤ外面を押し当て、その状態で前記生タイヤを加熱して加硫する加硫工程と、
を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明のゴム製品は、前記本発明のゴム内面用離型剤における前記成分(A)~(D)がゴム内面に付着していることを特徴とする。
【0013】
本発明の第1のタイヤは、前記本発明のゴム内面用離型剤における前記成分(A)~(D)がタイヤの内面に付着していることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2のタイヤは、前記本発明のゴム内面用離型剤を生タイヤの内面に付着させ、加硫してなることを特徴とする。なお、以下において、前記本発明の第1のタイヤと、前記本発明の第2のタイヤとを、まとめて「本発明のタイヤ」ということがある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、離型性及び滑性が高く、かつ、粉体流動性及びゴム製品の外観に優れたゴム内面用離型剤、ゴム内面用離型剤の製造方法、ゴム内面用離型剤水分散液、ゴム製品の製造方法、タイヤの製造方法、ゴム製品及びタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0017】
本発明のゴム内面用離型剤は、例えば、前記成分(A)として、ガラスビーズを含まないゴム内面用離型剤であってもよい。
【0018】
本発明のゴム内面用離型剤は、例えば、前記成分(D)の全質量が、前記成分(A)の全質量に対して0.1~800質量%であってもよい。
【0019】
本発明のゴム内面用離型剤は、例えば、前記成分(A)が炭酸カルシウムを含んでいてもよい。
【0020】
本発明のゴム内面用離型剤は、例えば、タイヤ内面用離型剤であってもよい。なお、以下において、タイヤ内面用離型剤である本発明のゴム内面用離型剤を、「本発明のタイヤ内面用離型剤」ということがある。
【0021】
[1.ゴム内面用離型剤]
本発明のゴム内面用離型剤は、前述のとおり、下記成分(A)~(D)を含み、下記成分(A)~(D)の質量の合計に対して、下記成分(D)を0.1~50質量%含むことを特徴とする。

(A)下記成分(D)以外の無機物質
(B)疎水性シリコーン
(C)界面活性剤
(D)黒鉛
【0022】
前述のとおり、ゴム内面用離型剤に離型性や滑性を付与する成分であるタルク、マイカ等の粒子は、色目が白色であるため、最終製品であるゴム製品の外観を損ねるおそれがある。本発明では、この問題を解決するために、ゴム内面用離型剤の前記成分(D)として黒鉛を用いることを見出した。すなわち、黒鉛は黒色であるため、前記成分(D)として黒鉛を含む本発明のゴム内面用離型剤によれば、塗布後の皮膜の白さが目立ってしまうことによりゴム製品の外観を損なうことを、抑制又は防止できる。それに加え、本発明のゴム内面用離型剤によれば、高い離型性及び滑性と、優れた粉体流動性とを得ることができる。また、本発明によれば、例えば、ハンドリング性の良い、良質で汎用性が高いタイヤ内面用離型剤を提供することができる。
【0023】
本発明のゴム内面用離型剤における各成分は、特に限定されず、例えば、以下のとおりである。
【0024】
[1-1.無機物質(A)]
前記成分(A)は、前述のとおり、前記成分(D)すなわち黒鉛以外の無機物質である。無機物質(A)(成分(A))は、特に限定されず任意であるが、例えば、一般的なゴム内面用離型剤又はタイヤ内面用離型剤に用いられている無機物質であってもよい。無機物質(A)に含まれる無機物質は、一種類のみでもよいし、複数種類併用してもよい。無機物質(A)に含まれる無機物質の例としては、例えば、タルク、クレー、マイカ、水膨潤性粘土鉱物、ヘクトライト、炭酸カルシウム、ゼオライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイト、モンモリロナイトを含有するベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸等が挙げられ、これらは天然物でも良いし合成物でも良い。また、これらの成分は、それぞれ、成分(A)に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0025】
前記タルクは、結晶質シリカの含有率がなるべく低いことが、摩擦低減の観点から好ましい。前記タルクは、結晶質シリカの含有率が、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。前記タルク中における結晶質シリカの含有率の下限値は、特に限定されないが、例えば、0質量%又は0質量%を超える数値であり、例えば、0.01質量%以上であってもよい。
【0026】
前記タルクの嵩密度(嵩比重)は、特に限定されないが、例えば、0.05g/mL以上、0.1g/mL以上、又は0.15g/mL以上であってもよく、例えば、2.0g/mL以下、1.0g/mL以下、又は0.5g/mL以下であってもよい。摩擦低減の理由からは、前記タルクの嵩密度が高いことが好ましい。粉体流動性の理由からは、前記タルクの嵩密度が低いことが好ましい。前記タルクの重量平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上、0.2μm以上、0.5μm以上、又は1μm以上であってもよく、例えば、100μm以下、80μm以下、60μm以下、又は50μm以下であってもよい。摩擦低減の理由からは、前記タルクの重量平均粒子径が大きいことが好ましい。粉体流動性の理由からは、前記タルクの重量平均粒子径が小さいことが好ましい。
【0027】
前記成分(A)がタルクを含む場合、前記タルクの含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、10質量%以上、15質量%以上、_20質量%以上、又は30質量%以上であってもよく、例えば、96質量%以下、94質量%以下、92質量%以下、又は88質量%以下であってもよい。
【0028】
前記ベントナイトとしては、特に限定されないが、例えば、Na型ベントナイト、Ca型ベントナイト、Mg型ベントナイト、有機ベントナイト、複合ベントナイト等が挙げられる。
【0029】
前記成分(A)がベントナイトを含む場合、前記ベントナイトの含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であってもよく、例えば、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。
【0030】
前記成分(A)は、例えば、ヘクトライトを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記ヘクトライトは、例えば、増粘剤として働く。増粘剤は、例えば、本発明のゴム内面用離型剤を水に分散させて本発明のゴム内面用離型剤水分散液とした場合に、本発明のゴム内面用離型剤水分散液の粘度を増してゴム内面に付着しやすくする働きをする。前記成分(A)がヘクトライトを含む場合、前記ヘクトライトの含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であってもよく、例えば、20質量%以下、10質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。
【0031】
前記成分(A)は、炭酸カルシウムを含んでいても含んでいなくてもよいが、炭酸カルシウムを含むことが好ましい。黒鉛は吸水性が低いため、ゴム内面用離型剤が黒鉛を含むことで、黒鉛を含まない場合よりも粉体流動性が低下する場合がある。しかし、炭酸カルシウムを併用することで、ゴム内面用離型剤が黒鉛を含んでいても、高い粉体流動性を得ることができる。
【0032】
前記成分(A)が炭酸カルシウムを含む場合、前記炭酸カルシウムの含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、又は3質量%以上であってもよく、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0033】
前記成分(A)は、マイカ(雲母)を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記マイカとしては、特に限定されないが、例えば、マスコバイト、セリサイト、白雲母、黒雲母、金雲母、イライト、カラーマイカ等が挙げられる。成分(A)がマイカを含む場合は、前記マイカは一種類のみでもよいし、複数種類併用してもよい。
【0034】
前記成分(A)がマイカを含む場合、前記マイカの含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってもよく、例えば、60質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。
【0035】
本発明のゴム内面用離型剤中における前記成分(A)の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、または50質量%以上であってもよく、例えば、96質量%以下、94質量%以下、92質量%以下、90質量%以下、または88質量%以下であってもよい。
【0036】
[1-2.疎水性シリコーン(B)]
疎水性シリコーン(B)(成分(B))は、例えば、離型性向上を担う成分として機能する。成分(B)は、特に限定されず、例えば、オルガノポリシロキサン類が挙げられる。前記オルガノポリシロキサン類は、シリコーンオイル、シリコーンゴム、及びシリコーン樹脂を含む概念である。前記オルガノポリシロキサン類としては、より具体的には、例えば、[1]ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のアルキルポリシロキサン、[2]メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルポリシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン、[3]メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン、[4]3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等が挙げられる。なかでもジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイルが好ましい。前記シリコーン成分は、一種類のみでもよいし、複数種類併用してもよい。
【0037】
本発明のゴム内面用離型剤中における前記成分(B)の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、または7質量%以上であってもよく、例えば、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、または12質量%以下であってもよい。
【0038】
[1-3.界面活性剤(C)]
前記成分(C)は、前述のとおり、界面活性剤である。前記成分(C)は、特に限定されず、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及びカチオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記成分(C)は、例えば、アニオン界面活性剤及びノニオン界面活性剤の一方又は両方を含んでいてもよい。
【0039】
前記成分(C)は、アニオン界面活性剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記成分(C)がアニオン界面活性剤を含む場合、前記アニオン界面活性剤の種類は特に限定されず、一種類以上用いても複数種類併用してもよい。
【0040】
前記アニオン界面活性剤は、例えば、硫酸エステル型アニオン界面活性剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記硫酸エステル型アニオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、アルキル硫酸エステル塩、アルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩等が挙げられ、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記アルキル硫酸エステル塩は、特に限定されないが、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等の炭素数10~20又は12~18のアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。前記アルケニル硫酸エステル塩は、特に限定されないが、例えば、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素数10~20又は12~18のアルケニル硫酸エステル塩が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩は、特に限定されないが、例えば、オキシアルキレン基(AO)の平均付加モル数が0~4、好ましくは0.1~3.5、さらに好ましくは0.3~3のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、オキシアルキレン基(EO)の平均付加モル数が0~4、好ましくは0.1~3.5、さらに好ましくは0.3~3のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等が挙げられる。前記ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩は、特に限定されないが、例えば、オキシアルキレン基(AO)の平均付加モル数が0~4、好ましくは0.1~3.5、さらに好ましくは0.3~3のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、オキシアルキレン基(EO)の平均付加モル数が0~4、好ましくは0.1~3.5、さらに好ましくは0.3~3のポリオキシエチレンアルケニルエーテル硫酸塩等が挙げられる。前記アルキル硫酸エステル塩及びポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩のアルキル基の炭素数は、10~20が好ましく、12~18がさらに好ましい。前記アルケニル硫酸エステル塩及びポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩のアルケニル基の炭素数は、10~20が好ましく、12~18がさらに好ましい。
【0041】
前記アニオン界面活性剤は、例えば、スルホン酸型アニオン界面活性剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記スルホン酸型アニオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、及びジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられ、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。前記オレフィンスルホン酸塩は、特に限定されないが、例えば、炭素数12~20、好ましくは14~18のα-オレフィンをスルホン化して中和したα-オレフィンスルホン酸塩、炭素数12~20、好ましくは14~18の内部オレフィンをスルホン化して中和した内部オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。前記α-スルホ脂肪酸エステル塩は、特に限定されないが、例えば、脂肪酸残基の炭素数が10~18、好ましくは14~18であるα-スルホ脂肪酸メチルエステル塩等が挙げられる。前記ジアルキルスルホコハク酸塩は、特に限定されないが、例えば、ジセチルスルホコハク酸塩、ジオクチル(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0042】
前記成分(C)がアニオン界面活性剤を含む場合、前記アニオン界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、または0.3質量%以上であってもよく、例えば、10.0質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、4.0質量%以下、または2.0質量%以下であってもよい。
【0043】
また、前記成分(C)は、ノニオン界面活性剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記成分(C)がノニオン界面活性剤を含む場合、前記ノニオン界面活性剤の種類は特に限定されず、一種類以上用いても複数種類併用してもよい。
【0044】
前記ノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、下記化学式(1)で表されるノニオン界面活性剤を用いることができる。

RO-(AO)-H (1)
【0045】
前記化学式(1)中、Rは、脂肪族炭化水素基であり、例えば、炭素原子数が8~22の脂肪族炭化水素基である。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、前記脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)、不飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。Rの炭素原子数は、疎水成分の分散性の観点から、例えば、8~22、8~18、10~16又は12~14であってもよい。
AOは、炭素原子数2~4のオキシアルキレン基を表し、nは、AOの平均付加モル数である。
nは、疎水成分の分散性の観点から、例えば、1~50、1~40、1~30、1~25、又は1~10である。
【0046】
炭素原子数2~4のオキシアルキレン基とは、例えば、炭素原子数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる(付加重合により形成される)重合単位である。炭素原子数2~4のオキシアルキレン基としては、具体的には、エチレンオキサイドが付加してなるオキシエチレン基(EO)、プロピレンオキサイドが付加してなるオキシプロピレン基(PO)、及び、ブチレンオキサイドが付加してなるオキシブチレン基(BO)がある。(AO)は、その構造中に、少なくともオキシエチレン基を含む。(AO)が、オキシエチレン基(EO)と、オキシプロピレン基(PO)と、オキシブチレン基(BO)とのうち複数種類を含む場合は、これらの基はブロック状に配列していても、ランダムに配列していてもよい。好ましい(AO)は、親水性、疎水性のバランスに優れる点から、オキシエチレン基(EO)のみからなる。
【0047】
前記ノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、例えば、[1]ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、[2]ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、[3]ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、[4]ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、[5]ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、[6]ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、[7]ポリグリセリン脂肪酸エステル、[8]アルキルグリセリンエーテル、[9]ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、[10]アルキルポリグルコシド、[11]ショ糖脂肪酸エステル、[12]ポリオキシアルキレンアルキルアミン、[13]オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー、等が挙げられる。
【0048】
前記成分(C)がノニオン界面活性剤を含む場合、前記ノニオン界面活性剤の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、または0.5質量%以上であってもよく、例えば、18質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、または10質量%以下であってもよい。
【0049】
本発明のゴム内面用離型剤において、界面活性剤(C)(成分(C))は、例えば、乳化安定性付与を担う成分として機能する。なお、前記「乳化安定性」は、本発明のゴム内面用離型剤水分散液が乳化物である場合における、前記乳化物の安定性をいう。前記乳化物は、前記成分(A)~(D)が、水の中に分散された乳化物であることが好ましい。このような乳化物は、すなわち、水中油滴型の乳化物(エマルジョン)である。なお、本発明のゴム内面用離型剤水分散液は、油中水滴型の乳化物でもよいが、スプレー性、付着性、離型性等の観点から、水中油滴型の乳化物であることが好ましい。
【0050】
本発明のゴム内面用離型剤中における前記成分(C)の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、または1質量%以上であってもよく、例えば、18質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、または10質量%以下であってもよい。
【0051】
[1-4.黒鉛(D)]
前記成分(D)は、前述のとおり、黒鉛(グラファイト)である。前記黒鉛の種類は特に限定されず、一種類のみ用いても複数種類併用してもよい。
【0052】
前記黒鉛は、例えば、人造黒鉛及び天然黒鉛の一方又は両方を含んでいてもよい。前記黒鉛は、汎用性の観点からは天然黒鉛が好ましい。前記天然黒鉛は、特に限定されないが、例えば、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、半鱗状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、膨張化黒鉛、塊状黒鉛、及び膨張黒鉛等が挙げられる。これらのなかでも、本発明のゴム内面用離型剤に用いる黒鉛は、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、半鱗状黒鉛、土状黒鉛が好ましい。このような黒鉛は、その形状及び/又は結晶等の性質から、劈開性、自己潤滑性に優れる傾向にある。そのため、このような黒鉛は、例えば、生タイヤの内側でブラダーを膨張させる際に生じる摩擦を低減し、また、例えば、加硫成型時に皮膜となってタイヤ内面とブラダーの接触を防ぐ作用をする。前記黒鉛は、結晶質シリカの含有率がなるべく低いことが、摩擦低減の観点から好ましい。前記黒鉛は、結晶質シリカの含有率が、例えば、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。前記黒鉛中における結晶質シリカの含有率の下限値は、特に限定されないが、例えば、0質量%又は0質量%を超える数値であり、例えば、0.01質量%以上であってもよい。
【0053】
本発明のゴム内面用離型剤中における前記成分(D)の含有率は、前述のとおり、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、0.1~50質量%である。前記成分(D)の含有率が低すぎると、ゴム製品の外観を改善する効果が得られない。前記成分(D)の含有率が高すぎると、ゴム内面用離型剤製品の粉体流動性が悪化することがある。前記成分(D)の含有率は、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよく、例えば、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0054】
また、前記成分(D)の全質量は、例えば、前述のとおり、前記成分(A)の全質量に対して0.1~800質量%であってもよい。皮膜の白さが目立ってしまうことによりゴム製品の外観を損なうことを抑制又は防止するという理由からは、前記成分(D)の全質量が、前記成分(A)の全質量に対して0.1%質量%以上であることが好ましい。粉体流動性が悪化することを抑制又は防止するという理由からは、前記成分(D)の全質量が、前記成分(A)の全質量に対して800質量%以下であることが好ましい。前記成分(D)の全質量は、前記成分(A)~(D)の全質量に対し、例えば、0.1質量%以上、0.105質量%以上、0.2質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよく、例えば、500質量%以下、200質量%以下、100質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0055】
前記成分(D)すなわち黒鉛は、前述のとおり、黒色成分であるため、ゴム製品の外観を改善する効果がある。さらに、黒鉛は、ゴム内面用離型剤の離型性の向上にも寄与し得る。具体的には、黒鉛は、例えば、マイカ、タルク等と比較して(1)層間にはたらく力が弱くへき開しやすい、(2)同じ厚みの粒子で比較した場合にへき開可能な層数が多い、という特性を有する。黒鉛は、例えば、前記(1)(2)の特性により、マイカ、タルク等よりも優れた離型成分として、ゴム内面用離型剤の離型性の向上に寄与し得る。ただし、ゴム内面用離型剤中の黒鉛の含有率が高すぎると、前述のとおり、ゴム内面用離型剤の粉体流動性が悪化することがある。
【0056】
[1-5.任意成分]
本発明のゴム内面用離型剤は、成分(A)~(D)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、例えば、保水剤、増粘剤、ゴム内面用離型剤皮膜の透明性向上に寄与し得る多価アルコール、水、シリコーン系消泡剤、鉱物油系消泡剤等の各種消泡剤、各種防腐剤等が挙げられる。
【0057】
前記多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、[1]ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、[2]ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール類、[3]ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、ペンタブチレングリコール、ヘキサブチレングリコール等のポリブチレングリコール類、[4]エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ジメチルペンタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1、5-ペンタンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロへプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、及びこれらの二種類以上の共重合体等が挙げられる。これらの多価アルコールは、一種類のみでもよいし、複数種類併用してもよい。
【0058】
また、前記保水剤としては、特に限定されないが、例えば、前記多価アルコール、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリアミド等が挙げられ、一種類のみでもよいし、複数種類併用してもよい。前記多価アルコールは、例えば、前記保水剤としての役割と、ゴム内面用離型剤皮膜の透明性向上に寄与する役割とを兼ねていてもよい。
【0059】
本発明のゴム内面用離型剤が前記成分(A)~(D)以外の任意成分を含む場合、前記任意成分の含有率は、特に限定されないが、前記成分(A)~(D)の全質量の合計に対し、例えば、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上であってもよく、例えば、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0060】
[2.ゴム内面用離型剤の製造方法]
本発明のゴム内面用離型剤の製造方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、本発明のゴム内面用離型剤の全成分を単に混合するのみでもよい。また、本発明のゴム内面用離型剤は、例えば、前述した本発明のゴム内面用離型剤の製造方法により製造してもよい。
【0061】
前述した本発明のゴム内面用離型剤の製造方法は、より具体的には、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0062】
まず、前記成分(C)の一部及び前記成分(B)を混合して混合物を得る第一混合工程(以下、「予備混合工程」ともいう場合がある。)を行う。この第一混合工程を行うことで、例えば、前記成分(B)(疎水性シリコーン)と前記成分(A)(無機成分)との親和性が高まり、オイルスポットの抑制又は防止効果がさらに高まる。前記第一混合工程で用いる前記成分(C)の一部としては、特に限定されないが、例えば、前記スルホン酸型アニオン界面活性剤のうち一部又は全部でもよい。前記第一混合工程において、前記成分(C)の一部及び前記成分(B)を混合する方法は、特に限定されず、例えば、乳化機等を用いて撹拌し混合してもよい。前記乳化機は、特に限定されず、一般的な乳化機でもよく、例えば、ホモミキサー、ホモディスパー(いずれも商品名)等が挙げられる。前記撹拌の速度及び時間も特に限定されないが、例えば、500~16000rpm(例えば、5000rpm)で0.5~20分間(例えば、10分間)撹拌してもよい。前記第一混合工程で得た混合物は、例えば、シリコーン乳化物である。
【0063】
つぎに、前記第一混合工程で得た前記混合物に、前記成分(C)の残部、前記成分(A)及び前記成分(D)を混合する第二混合工程を行う。このとき、さらに、前記成分(A)~(D)以外の任意成分を混合してもよい。前記任意成分は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。前記第二混合工程を行う方法は、特に限定されないが、例えば、以下のようにしてもよい。すなわち、まず、前記第一混合工程で得た前記混合物と、前記成分(A)とを、ヘンシェルミキサーに入れ、50~4000rpm(例えば、200rpm)で3~50分間(例えば、3分間)撹拌して混合する。さらに、前記ヘンシェルミキサーに、前記成分(C)の残部、前記成分(D)、及び、必要に応じて前記成分(A)~(D)以外の任意成分を添加し、100~4000rpm(例えば、600rpm)で10~30分間(例えば、10分間)撹拌して混合する。前記成分(C)の残部、前記成分(D)、及び、前記成分(A)~(D)以外の任意成分の添加順序に、特に制限はない。前記ヘンシェルミキサーのように高速回転可能な撹拌装置を用いることで、例えば、嵩密度の高いゴム内面用離型剤を得ることができる。高速回転可能な撹拌装置として、前記ヘンシェルミキサーに代えて、例えば、レーディゲミキサー、ハイスピードミキサー、ナウターミキサー、ニューグラマシン、シュギミキサー、プロシェアミキサー、スパルタンミキサー、パグミキサー、タービュライザー、水平円筒型混合機、混練押出機、横型連続式のニーダー、密閉式の圧密化処理装置等を用いてもよい。以上のようにして、本発明のゴム内面用離型剤を製造できる。
【0064】
前述した本発明のゴム内面用離型剤の製造方法において、全成分添加後の撹拌における撹拌フルード数は、例えば、0.5~25、又は0.9~20であってもよい。前記撹拌フルード数を0.5以上とすると、水分散液安定性及びスプレー性の悪化を抑制できる。また、前記撹拌フルード数を25以下とすると、設備のコスト高を抑制できる。前記撹拌フルード数(Fr)は、例えば、下記式(1)で定義されるものである。前記撹拌フルード数と撹拌時間(単位:分)との積P(すなわち、P=撹拌フルード数×撹拌時間(分))は、例えば、5~200、又は10~150であってもよい。

Fr=V/[(R×g)0.5] (1)
V:撹拌翼の先端の周速(m/s)
R:撹拌翼の回転半径(m)
g:重力加速度(m/s
【0065】
製造されたゴム内面用離型剤の平均粒子径は、例えば、0.1~10mm、又は0.2~8mmであってもよい。前記平均粒子径を0.1mm以上とすると、水分散液安定性及びスプレー性の悪化を抑制できる。また、前記平均粒子径を10mm以下とすると、溶解性の悪化を抑制できる。前記平均粒子径は、例えば、ふるい(篩)法を用いて測定される質量基準の積算分率における50%径である。具体的には、前記平均粒子径は、例えば、目開き16000μm(16mm)、9500μm(9.5mm)、5000μm(5.0mm)、1000μm、500μm及び100μm(0.10mm)の6段の篩と、受け皿を用いた分級操作により測定する。前記分級操作では、前記受け皿に、目開きの小さい篩から目開きの大きな篩の順に積み重ね、最上部の篩の上から100g/回の試料(ゴム内面用離型剤)を入れ、蓋をしてロータップ型篩振盪機(株式会社飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させた後、それぞれの篩上及び受け皿上に残留した試料(分級サンプル)を篩目ごとに回収する。各粒子径の分級サンプルの質量を測定し、質量頻度(%)を算出する。前記平均粒子径を求める際には、積算の質量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きを「a(μm)」、a(μm)よりも一段大きい篩の目開きを「b(μm)」とし、また、受け皿から目開きa(μm)の篩までの質量頻度の積算値を「c(%)」、目開きa(μm)の篩上の質量頻度を「d(%)」とし、下記式(2)により求められる平均粒子径(50質量%粒径)を、前記平均粒子径とする。

平均粒子径(50質量%粒径)
=10[50-{c-d/(logb-loga)×logb}]/{d/(logb-loga)} (2)

製造されたゴム内面用離型剤は、目開き9.5mmの篩を通過しない粒子の割合が50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましい。また、製造されたゴム内面用離型剤は、目開き0.10mmの篩を通過する粒子の割合が50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましい。
【0066】
[3.ゴム内面用離型剤水分散液等]
本発明のゴム内面用離型剤の使用方法は特に限定されないが、例えば、水に分散させて、本発明のゴム内面用離型剤水分散液として使用することができる。本発明のゴム内面用離型剤水分散液の形態は、特に限定されないが、例えば、本発明のゴム内面用離型剤が、水の中に分散された乳化物(水分散液)であることが好ましい。
【0067】
本発明のゴム内面用離型剤水分散液の製造(調製)方法も、特に限定されず、例えば、水に前記本発明のゴム内面用離型剤を混合して分散させるのみで良い。本発明のゴム内面用離型剤水分散液において、前記本発明のゴム内面用離型剤の濃度は、特に限定されず、例えば、20~75質量%、30~70質量%、又は30~65質量%であってもよい。
【0068】
本発明のゴム内面用離型剤の使用方法も、特に限定されず、例えば、一般的なゴム内面用離型剤と同様でよい。具体的には、例えば、本発明のゴム内面用離型剤水分散液を、スプレーを用いて、ゴム(例えば、未加硫ゴム製生ゴム)の内面及びブラダー外面の少なくとも一方に塗布して用いればよい。
【0069】
本発明のゴム内面用離型剤水分散液は、前述のとおり、乳化物(エマルジョン)であってもよい。前記乳化物の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、50~2000nm、100~1500nm、又は150~1300nmであってもよい。界面活性剤の必要配合量が増大することによる付着性低下及び離型性低下防止の観点、並びに、貼り合せ部に離型剤が入り込んだ際の接着阻害防止の観点から、前記乳化物の平均粒子径は、50nm以上が好ましい。また、乳化粒子のクリーミング及び合一防止の観点、並びに、水溶成分と油溶成分が分離し製品安定性が不良となることを防止し得る観点から、前記乳化物の平均粒子径は、2000nm以下が好ましい。なお、本発明において、前記乳化物の平均粒子径は、例えば、BECKMAN社製のサブミクロン粒子アナライザー(レーザー回折/散乱法)を用いて乳化粒子の体積分布を測定し、測定した前記乳化粒子の体積分布に基づいて、前記平均粒子径を算出することができる。ただし、この測定方法は、例示であり、本発明は、この測定方法により限定されない。
【0070】
[4.ゴム製品の製造方法、タイヤの製造方法、ゴム製品及びタイヤ]
本発明のゴム製品の製造方法、タイヤの製造方法、ゴム製品及びタイヤについては、前述のとおりである。これらについても、特に限定はない。例えば、本発明のゴム製品の製造方法は、一般的なゴム内面用離型剤又はゴム内面用離型剤水分散液に代えて、本発明のゴム内面用離型剤又はゴム内面用離型剤水分散液を用いること以外は、一般的なゴム製品の製造方法と同様にして行うことができる。また、本発明のタイヤの製造方法は、例えば、一般的なタイヤ内面用離型剤又はタイヤ内面用離型剤水分散液に代えて、本発明のタイヤ内面用離型剤又はタイヤ内面用離型剤水分散液を用いること以外は、一般的なタイヤの製造方法と同様にして行うことができる。本発明のタイヤの製造方法において、前記成形型としては、例えば、金型等が挙げられる。本発明のタイヤの製造方法は、前述の剥離用前処理工程及び加硫工程に加えて、加硫タイヤと前記ブラダーとの間、及び、加硫タイヤと前記成形型との間を離型処理する離型処理工程を有してもよい。
【実施例0071】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0072】
[実施例1~9及び比較例1~5]
以下のようにして実施例1~9及び比較例1~5のゴム内面用離型剤及びゴム内面用離型剤水分散液を製造し、その特性を評価した。
【0073】
[ゴム内面用離型剤の製造方法]
下記表1及び表2に示す各成分(原料)を、下記表1及び表2に示す質量比(重量比)で用いて、実施例1~9及び比較例1~5のゴム内面用離型剤を製造した。下記表1及び表2に示す各成分(原料)の製品名(商品名)、メーカー及び特徴(特性)は、下記表3に示す。下記表1及び表2中の原料記号と、下記表3中の原料記号は対応している。なお、比較例3~5で用いたフラーレン(原料記号D-5)、カーボンナノチューブ(原料記号D-6)及びグラフェン(原料記号D-7)は、黒鉛(グラファイト)ではないため、本発明のゴム内面用離型剤の成分(D)に該当しない。これらは、下記表2(比較例の表)中において成分(D’)と記載している。
【0074】
実施例1~9及び比較例1~5のゴム内面用離型剤の製造は、具体的には、以下のようにして行った。まず、下記表1又は2に記載の成分(B)と、下記表1又は2に「予備混合工程」と記載のアニオン界面活性剤(成分(C)の一部)とを、ホモミキサー(商品名)にて5000rpmで10分間攪拌し混合して第一の混合工程(予備混合工程)を行った。これにより、このようにして、前記成分(C)の一部と前記成分(B)との混合物であるシリコーンエマルジョン(シリコーン乳化物)を得た。つぎに、第二の混合工程を行った。すなわち、まず、前記第一の混合工程(予備混合工程)により得たシリコーンエマルジョンと成分(A)、成分(D)とをヘンシェルミキサーに入れ、200rpmで3分間撹拌し、混合した。さらに、前記ヘンシェルミキサーに、成分(C)及びその他の成分(任意成分)を順次撹拌しながら添加した後、さらに、600rpmで10分間撹拌し、混合した。以上のようにして、実施例1~9及び比較例1~5の粉末状のゴム内面用離型剤(タイヤ内面用離型剤)を製造した。さらに、このようにして製造した実施例1~9及び比較例1~5のゴム内面用離型剤に対し、下記の方法で粉体流動性を評価した。
【0075】
(粉体流動性の評価方法)
前記各実施例及び比較例の粉末状のゴム内面用離型剤(タイヤ内面用離型剤)を、それぞれ、300mLの樹脂ビーカーに200g入れた後、蓋をし、10000rpmの振動を5分間加えた。5分間振動を加えた後、前記ゴム内面用離型剤の粉末をふるい分け、長径が10mm以上の粒子が10粒未満のものを◎、10粒以上20粒未満のものを○、20粒以上30粒未満のものを△、30粒以上発生した場合を×と評価した。
【0076】
[ゴム内面用離型剤水分散液の製造方法]
2Lガラスビーカーに水道水450gを仕込んだ後、直径5cmの3枚のプロペラ羽を備えた攪拌機で20rpmの速度で撹拌した。前記水中に、撹拌しながら、各実施例又は比較例で製造した粉末状のゴム内面用離型剤(タイヤ内面用離型剤)550gを投入し、30分間撹拌して分散させることで、各実施例又は比較例のゴム内面用離型剤水分散液(タイヤ内面用離型剤水分散液)を製造した。
【0077】
[ゴム(未加硫ゴム)の離型処理及びゴム内面用離型剤の特性評価]
前記各実施例及び比較例のゴム内面用離型剤水分散液(タイヤ内面用離型剤水分散液)を用いて、以下のとおり、ゴム(未加硫ゴム)の離型処理を行うとともに、前記各ゴム内面用離型剤水分散液(タイヤ内面用離型剤水分散液)の特性を評価した。
【0078】
(塗布面外観の評価方法)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液(タイヤ内面離型剤処理液)に市販のカーボンブラック分散液(御国色素株式会社製、固形分40質量%)0.5質量%を配合したものを、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した。つぎに、この未加硫ゴムシートの前記スプレー塗布面に、同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、金型温度180℃、圧力20kg/cmで20分間加圧し、加硫した。その後、加硫済みの前記ゴムシートを引き剥がした。前記条件で加硫した後の前記ゴムシートの前記スプレー塗布面の外観を目視により評価した。外観が黒色の濃いものを◎、黒色のものを〇、白色のものを×と評価した。
【0079】
(離型性の評価方法)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液(タイヤ内面離型剤処理液)を、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した。つぎに、この未加硫ゴムシートの前記スプレー塗布面に、同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、金型温度180℃、圧力20kg/cmで20分間加圧し、加硫した。その後、加硫済みの前記ゴムシートを引き剥がした(離型した)。剥離性(離型性)は、密着無く容易に離型できたものを5級、離型できたものを4級、剥離抗力が大きいが離型できたものを3級、一部密着し離型しがたいものを2級、全面密着し離型不可能なものを1級と評価した。
【0080】
(滑性の評価方法)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液(タイヤ内面離型剤処理液)を、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した。つぎに、この未加硫ゴムシートの前記スプレー塗布面に、加硫ブラダーゴムシート(3cm×3cm×0.1cm)を重ね合わせ、2kgを重量を掛けて20cm引っ張った際の滑り状態を評価した。この時の引張り荷重が大きいほど滑性が悪いと判断した。15N以下を〇、15N以上20N以下を△、20N以上を×と評価した。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
前記表1に示すとおり、実施例1~9のゴム内面用離型剤は、成分(A)~(D)を全て含んでいた。これに対し、前記表2に示すとおり、比較例1~5は、いずれも、成分(D)(黒鉛)を含んでいなかった。より具体的には、比較例1及び2は、炭素同素体自体を含んでおらず、比較例3~5は、炭素同素体であるフラーレン、カーボンナノチューブ又はグラフェンを含むが、黒鉛(グラファイト)を含んでいなかった。
【0085】
前記表1に示すとおり、実施例1~9のゴム内面用離型剤は、いずれも、離型性及び滑性が高く、かつ、粉体流動性及びゴム製品の外観に優れていた。これに対し、成分(D)(黒鉛)を含まない比較例1~5は、いずれも、実施例と比較して離型性が劣っていた。すなわち、比較例1~5は、いずれも、「離型性及び滑性が高く、かつ、粉体流動性及びゴム製品の外観に優れている」という本発明の効果を奏しなかった。また、比較例1は粉体流動性及びゴム製品の外観が不良であり、比較例3及び4は滑性が不良であった。なお、黒鉛は、例えば、前述のとおり、マイカ、タルク等と比較して(1)層間にはたらく力が弱くへき開しやすい、(2)同じ厚みの粒子で比較した場合にへき開可能な層数が多い、という特性を有する。このため、成分(D)(黒鉛)を含む実施例は、成分(D)を含まない比較例1~5よりも離型性が優れていたと推測される。特に、実施例1は、成分(D)の含有率が、成分(A)~(D)の全質量の合計に対しわずか0.1質量%であっても、優れた離型性を示した。