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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022093984
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】被加工物の切断方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20220617BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20220617BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B24B27/06 D
B24B41/06 Z
H01L21/304 611W
H01L21/304 611A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206749
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】592104944
【氏名又は名称】クアーズテック徳山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】山門 護
(72)【発明者】
【氏名】金子 鉄也
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034BB73
3C158AA05
3C158AB04
3C158AB06
3C158AB09
3C158AC04
3C158CB01
3C158CB05
3C158DA03
5F057AA05
5F057BA02
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB12
5F057BC06
5F057BC09
5F057DA15
5F057EB24
5F057EC03
5F057EC04
5F057EC29
5F057FA15
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】被加工物を切断したスライス板における、欠けやチッピング、クラックの発生を抑制した被加工物の切断方法を提供する。
【解決手段】被加工物1の他の面側から一面に向ってマルチワイヤーソー14で切断し、前記被加工物1及びスライス台2の一部を切断すると共に、前記被加工物1が切断されたスライス板1Aがスライス台2に接着されたままの状態で切断を終了し、前記被加工物1(1A)の一の面側から他の面側に向ってマルチワイヤーソー14を移動させ、前記スライス台2に接着された被加工物(複数のスライス板1A)の前記一の面から、前記一の面と対向する被加工物の他の面までの全長に対する割合で、2/6の位置と4/6の位置の範囲内に、前記マルチワイヤーソー14のワイヤの直径寸法よりも20μm~30μm小さい厚さのスペーサ5を挿入する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の一の面をスライス台に接着剤により接着する接着工程と、前記接着工程の後、研磨剤とクーラントを配合したスラリーを供給しながら、被加工物を降下させ、スライス台に接着された被加工物の前記一の面と対向する被加工物の他の面側から、マルチワイヤーソーで切断する切断工程とを有する被加工物の切断方法において、
前記被加工物の他の面側から一の面に向ってマルチワイヤーソーで切断し、前記被加工物及びスライス台の一部を切断すると共に、
前記被加工物が切断されたスライス板がスライス台に接着されたままの状態で切断を終了し、
前記被加工物の一の面側から他の面側に向ってマルチワイヤーソーを移動させ、前記スライス台に接着された被加工物(複数のスライス板)の前記一の面から、前記一の面と対向する被加工物の他の面までの全長に対する割合で、2/6の位置と4/6の位置の範囲内に、前記マルチワイヤーソーのワイヤの直径寸法よりも20μm~30μm小さい厚さのスペーサを挿入することを特徴とする被加工物の切断方法。
【請求項2】
前記スライス板の間にスペーサが配置された状態で、接着剤を溶解し、前記スライス板をスライス台から剥離することを特徴とする請求項1に記載の被加工物の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被加工物の切断方法に関し、特に、ワイヤーソーを用いて、例えば、大型のLCD用マスク基板に使用される合成石英ガラス板材等の被加工物を切断する、被加工物の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1に示すように、合成石英ガラスブロック等の被被加工物を、ワイヤーソーを用いて、板状の合成石英ガラス基板を切り出すことがなされている。
また、シリコン基板やサファイア基板等のウェハ基板の製造分野においては、特許文献2に示すように、インゴットの被被加工物をスライス台に接着固定し、これをワイヤーソー等の切断機にセットし、切断した後、接着剤を剥離して、板状のウェハ基板を製造することがなされている。
【0003】
このウェハ基板の製造方法について、図7に基づいて説明すると、まず被被加工物であるインゴット10をスライス台11に接着剤12を用いて接着固定する。そして、通常、スライス台11に固定されたインゴット10を、インゴット10が下方に、スライス台11が上方になるように、ワイヤーソー等の切断機13にセットする。
尚、このワイヤーソー14は、3個のローラ15に巻回し、前記ローラ15によって移動するように構成されている。
【0004】
その後、インゴット10を下降させることにより、前記移動するワイヤーソー14で、インゴット10を切断する。
このときワイヤーソー14が撓むため、切断終了が近づくと、スライス台2の一部も切断される。切断終了後、ウェハ基板(スライス板ともいう)10Aはスライス台11に接着12を介してぶら下がった状態となる(図8参照)。
そして、スライス台11にぶら下がったウェハ基板(スライス板)10Aを温水浴や溶剤浴等の容器に漬けて接着剤12を剥離することにより、ウェハ基板(スライス板)10Aを複数枚得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-160080号公報
【特許文献2】特開2014-96561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示すように、インゴット10を切断したスライス板10Aは、スライス台11に接着剤12を介してぶら下がった状態となり、その後、スライス台2の一部を切断した前記ワイヤーソー14は、スライス台11から下方に移動させ、スライス板10Aから取り除かれる。
【0007】
ところで、被加工物をワイヤーソーで切断する際、研磨剤と水溶性や油性のクーラントを配合したスラリーが用いられる。
そのため、ワイヤーソー14を、スライス台11から下方に移動させ、スライス板10Aから取り除いた際、図8に示すように、スライス板10A同士が、スライス板10Aの間に付着したスラリーの表面張力で張り付くという現象が生じる。
このスライス板10A同士の張り付きにより、スライス板10A上端部Sとスライス台11との接着部に応力が生じ、スライス板10Aの上端部Sに、欠けやクラックが発生するという課題があった。
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、被加工物を切断したスライス板における、欠けやチッピング、クラックの発生を抑制した被加工物の切断方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明に係る被加工物の切断方法は、被加工物の一の面をスライス台に接着剤により接着する接着工程と、前記接着工程の後、研磨剤とクーラントを配合したスラリーを供給しながら、被加工物を降下させ、スライス台に接着された被加工物の前記一の面と対向する被加工物の他の面側から、マルチワイヤーソーで切断する切断工程とを有する被加工物の切断方法において、前記被加工物の他の面側から一の面に向ってマルチワイヤーソーで切断し、前記被加工物及びスライス台の一部を切断すると共に、前記被加工物が切断されたスライス板がスライス台に接着されたままの状態で切断を終了し、前記被加工物の一の面側から他の面側に向ってマルチワイヤーソーを移動させ、前記スライス台に接着された被加工物(複数のスライス板)の前記一の面から、前記一の面と対向する被加工物の他の面までの全長に対する割合で、2/6の位置と4/6の位置の範囲内に、前記マルチワイヤーソーのワイヤの直径寸法よりも20μm~30μm小さい厚さのスペーサを挿入することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る被加工物の切断方法にあっては、前記被加工物及びスライス台の一部を切断した後、前記被加工物の一の面側から他の面側に向ってマルチワイヤーソーを移動させ、スライス板の間にスペーサを挿入、配置する。
このように、スライス板の間にスペーサが配置されるため、スライス板の間に付着したスラリーの表面張力による、スライス板同士の張り付きが抑制され、スライス板とスライス台との接着部に生じる応力が抑制される。
その結果、スライス台に接着されていたスライス板上端部における、欠けやチッピング、クラックを抑制できる。
【0011】
また、スペーサとしては、マルチワイヤーソーのワイヤの直径寸法よりも20μm~30μm小さい厚さのスペーサが用いられる。スペーサがスライス板間に挟持(保持)されることにより、スライス板の欠け、チッピング、クラックを抑制できる。
【0012】
これに対して、スペーサの厚さが、マルチワイヤーソーのワイヤの直径寸法よりも30μmを超える小さな寸法である場合には、スペーサはスライス板間に挟持(保持)されず、脱落する不具合が生じる。
一方、スペーサの厚さが、マルチワイヤーソーのワイヤの直径寸法よりも20μmに満たない小さな寸法である場合には、挿入配置されたスペーサがスライス板の表面を傷つける不具合が生じる。
【0013】
更に、前記スペーサは、前記スライス台に接着された被加工物(複数のスライス板)の前記一の面から、前記一の面と対向する被加工物の他の面までの全長に対する割合で、2/6の位置と4/6の位置の範囲内に、挿入、配置される。
前記スペーサが前記2/6の位置と4/6の位置の範囲内に挿入、配置されることにより、前記スペーサを前記1か所に挿入、配置することにより、スラリーの表面張力による、スライス板同士の張り付きが抑制され、スライス板とスライス台との接着部に生じる応力が抑制される。
【0014】
ここで、前記スライス板の間にスペーサが配置された状態で、接着剤を溶解し、前記スライス板をスライス台から剥離することが望ましい。
スライス板の間にスペーサが配置された状態で、前記スライス板がスライス台から剥離されるため、スライス板の欠け、チッピング、クラックを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、被加工物を切断したスライス板における、欠け、チッピング、クラックの発生を抑制した被加工物の切断方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る被加工物の切断方法の一実施形態における、被加工物をスライス台に接着する接着工程を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明に係る被加工物の切断方法の一実施形態における、被加工物を切断する切断工程を示す概略斜視図である。
図3図3は、被加工物を切断した状態を示す断面図である。
図4図4は、被加工物を切断した後、スライス板の間にスペーサを挿入、配置した状態を示す断面図である。
図5図5は、スペーサの概略構成図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図6図6は、スペーサの挿入位置を説明するための概略斜視図である
図7図7は、被加工物を切断する切断装置を示す斜視図である。
図8図8は、スライス板の間に付着したスラリーの表面張力によって、スライス板同志が張り付いた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明にかかる被加工物の切断方法の一実施形態について図1乃至図6に基づいて説明する。
この本発明にかかる切断方法を適用することができる被加工物としては、例えば、合成石英ガラスブロック、LED用のサファイアインゴット、パワー半導体用のSiCやGaNなどのインゴット、太陽電池用のシリコンインゴットブロック等、マルチワイヤーソーを用いて切断できる被加工物に広く適用することができる。
【0018】
この実施形態では、合成石英ガラスブロックを被加工物とした場合を例にとって、説明する。この切断方法にあっては、接着工程、切断工程、剥離工程を経て、合成石英ガラスブロックからガラス板(スライス板)を製造する。
【0019】
(接着工程)
まず、前記接着工程について説明する。図1に示すように、ワークテーブル4とカーボン材のスライス台2との間に、例えば、アクリル系接着剤3を介在させ、ワークテーブル4とカーボン材のスライス台2とを接着する。
そして、カーボン材のスライス台2と合成石英ガラスブロック(インゴット)1との間に、例えば、アクリル系接着剤3を介在させ、インゴット1をスライス台2に接着する。
この接着工程を得ることで、被加工物である合成石英ガラスブロック(インゴット)1とスライス台2とワークテーブル4とを一体化する。
【0020】
尚、スライス台として、カーボン材のスライス台を例にとって説明したが、本発明はカーボン材のスライス台に限定されるものではなく、例えば、ガラス板、セラミック材等用いることができる。
また、接着剤として、アクリル系接着剤を例にとって説明したが、本発明はアクリル系接着剤に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂系の接着剤を用いることができる。
【0021】
(切断工程)
次に、切断工程について説明する。
この切断工程では、図2に示すように、スライス台2に固定された合成石英ガラスブロック(インゴット)1を、合成石英ガラスブロック1が下方に、スライス台2が上方になるように、切断機13にセットする。
この切断機13としては、図7にも示すように、一般的に用いられている、複数本のローラ15に一定ピッチで極細のワイヤ14を巻き付けたマルチワイヤーソーを用いることができるが、本発明では、特にこれに限定されるものではない。
【0022】
そして、図2の矢印で示すように、合成石英ガラスブロック(インゴット)1を下降させることにより、移動するマルチワイヤーソー14で合成石英ガラスブロック(インゴット)1を切断する。その切断には、研磨剤と水溶性や油性のクーラントを配合したスラリーが用いられる。
このとき、合成石英ガラスブロック(インゴット)1を降下させ、合成石英ガラスブロック(インゴット)1を完全に通過して、スライス台2の一部まで切断する(図3参照)。これは、ワイヤーソー14が撓むため、合成石英ガラスブロック(インゴット)1を完全に切断するために、スライス台2の一部が切断される。
そして、切断終了後、複数枚のスライス板1Aが、 図3に示すようにスライス台2に接着剤3を介してぶら下がった状態となる。
【0023】
その後、図3の矢印に示すように、ワイヤーソー14を、スライス台11から下方に移動させ、スライス板1Aの下端から取り除く。
このとき、図8に示したように、切断後のスライス板同士が、スライス板の間に付着したスラリーの表面張力で張り付き、スライス板のスライス台との接着部に応力が生じ、スライス板の上端部に、欠けやクラックが発生する虞がある。
そのため、図4に示すように、ワイヤーソー14を、スライス板10Aの下端から取り除く際に、スライス板1Aの間にスペーサ5を挿入、配置し、スライス板1A同士の張り付きを抑制する。
【0024】
前記スペーサ5は、スライス板1Aの間に挿入、配置できるものであれば良いが、厚みの精度が保たれ(磨耗し難く)、挿入が容易な硬さを有し、且つ、繰り返し使用できるものが望ましく、SUS、鉄、アルミニウム、チタンもしくは樹脂製の薄板が適している。中でも、厚み精度が良く、耐摩耗性に優れ、安価なSUSが最も好ましい。
例えば、図5に示すように、厚さt、長さLの長尺板状のスペーサ5を用いることができる。
具体的には、長さLは、スライス板1Aの間に挿入される長さを考慮して決められ、スペーサがスライス板1Aの間に挿入配置された際、スライス板1Aからスペーサが突出しない長さであれば良い。また厚さtは、ワイヤの線径により切断代(切断後のスライス板隙間)が変わるため、ワイヤ線径に合わせ決定するが好ましく、マルチワイヤーソーのワイヤの直径寸法よりも、20μm~30μm、小さい寸法であって、40mm~100mmであることが好ましい。
【0025】
このスペーサ5の厚さtが厚過ぎると、スペーサ5の挿入の際に、スライス板の隙間を広げ、接着面に応力が発生し、欠けやクラックを発生させる虞がある。また、スライス板の表面にキズが生じる不具合が生じる。
一方、このスペーサ5の厚さtが薄い場合には、スペーサを定位置に保持できない(スライス板によって挟持されない)不具合が生じる。
【0026】
また、前記スペーサ5は、図6に示しように、スライス台2に接着された合成石英ガラスブロック(インゴット)1の一の面から、一の面と対向する他の面までの全長Tに対する割合で、2/6の位置と4/6の位置の範囲内に挿入、配置する。
スライス板同士1Aの隙間に、スペーサ5を複数箇所挿入、配置しても良いが、スライス板5の枚数が多い場合には、スペーサ5の挿入、配置に時間が掛かるため作業性が悪く、好ましくない。
前記スペーサ5が2/6の位置と4/6の位置の範囲内に挿入、配置した場合には、この一か所で、スライス板1A同士の張り付きを抑制できるため、挿入、配置作業上、好ましい。
【0027】
(剥離工程)
切断工程の後、スライス板1Aをスライス台2から剥離し、スライス板とする。
この剥離工程では、スライス台2に接着剤5を介してぶら下がったスライス板1Aをホルダーに入れ、このホルダーを温水浴や溶剤浴等の容器に漬ける。
そして、接着剤を溶解等し、スライス板1Aをスライス台2から剥離する。そして、接着剤を剥離し、容器からホルダーを引き上げることにより、 スライス板を複数枚得る。
【実施例0028】
本発明にかかる被加工物の切断方法について、更に実施例、比較例に基づいて説明する。
(実施例1)
被加工物である合成成石英ガラスブロックを、マルチワイヤーソーにて 、炭化ケイ素砥粒及びクーラントを含むスラリーを用いて、線径0.32mmの鉄ワイヤで、線速80m/秒、切断速度20.0mm/時間の条件で切断し、厚さ10.30mm、縦525mm、横805mmの板状合成石英ガラス基板(スライス板)を、10枚を得た。
切断後にマルチワイヤーソーを抜き、厚さ0.295mm、幅13mm、長さ75mmのスペーサを、各スライス板の切断長さ中間点(3/6の位置)の1カ所に、約50mmの深さまで挿入、配置した。そして、スライス板の欠け、クラックの発生率を評価した。その結果を表1に示す。
【0029】
(実施例2)
スペーサの厚さを0.290mm、スペーサの挿入、配置する位置を各スライス板の切断長さの2/6とした点以外は上記実施例1と同様に実施し評価を行った。スライス板の欠け、クラックの発生率を評価した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
スペーサの厚さを0.300mm、スペーサの挿入、配置する位置を各スライス板の切断長さの4/6とした点以外は上記実施例1と同様に実施し評価を行った。スライス板の欠け、クラックの発生率を評価した。その結果を表1に示す。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同様に、マルチワイヤーソーにて、切断し、厚さ10.30mm、縦525mm、横805mmの板状合成石英ガラス基板(スライス板)を、10枚を得た。
その後、実施例1と異なり、スペーサを挿入しなかった。そして欠け、クラックの発生率を評価した。その結果を表1に示す。
【0031】
表1に示すように、スペーサを挿入しない場合の欠け、クラックの発生率が8.1%であったのに対し、スペーサを挿入した場合は3.7%となり、欠け、クラック発生率の減少が確認された。
【0032】
(比較例2)、(比較例3)
スペーザの挿入位置を、図6に示すように、1/6の位置(比較例2)、5/6の位置(比較例3)に変えて、スライス板の欠け、クラックの発生率を評価した。その結果を表1に示す。表1に示すように、1/6位置と5/6位置では、スライス板の欠け、クラック防止効果が得られなかった。
【0033】
【表1】
【0034】
(比較例4)
次に、実施例1と同様に、合成成石英ガラスブロックを切断し、板状合成石英ガラス基板(スライス板)を、10枚を得た後、マルチワイヤーソーをj抜き、厚さ0.31mm、幅13mm、長さ75mmのスペーサを、各スライス板の切断長さ中間点(3/6の位置)の1カ所に約50mmの深さまで挿入、配置した。そして、スライス板の欠け、クラックの発生率を評価した。
即ち、スペーサの厚みを、ワイヤ線径よりも10μm小さい0.31mmの厚みとした。しかしながら、このスペーサはスライス板間に挿入可能であったが、挿入の際にきつい状態で、挿入による欠け、クラックおよびキズの発生リスクがあると考え、実験を中止した。
【0035】
(比較例5)
次に、実施例1と同様に、合成成石英ガラスブロックを切断し、板状合成石英ガラス基板(スライス板)を、10枚を得た後、マルチワイヤーソーを抜き、厚さ0.28mm、幅13mm、長さ75mmのスペーサを、各スライス板の切断長さ中間点(3/6の位置)の1カ所に約50mmの深さまで挿入、配置した。そして、スライス板の欠け、クラックの発生率を評価した。
即ち、スペーサの厚みを、ワイヤ線径よりも40μm小さい0.28mmの厚みとした。しかしながら、このスペーサが滑り落ち、3/6の位置に保持できす、実験を中止した。
【符号の説明】
【0036】
1 合成成石英ガラスブロック(被加工物)
1A スライス板
2 スライス台
3 接着剤
4 ワークテーブル
5 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8