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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094012
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】集熱器
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/10 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
G02B5/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206782
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】520492569
【氏名又は名称】福山 貴久
(74)【代理人】
【識別番号】100128521
【弁理士】
【氏名又は名称】岩下 卓司
(72)【発明者】
【氏名】福山 貴久
【テーマコード(参考)】
2H042
【Fターム(参考)】
2H042DD09
(57)【要約】
【課題】本発明の集熱ユニットは、あらゆる方向から照射される遠赤外線を一定の方向に偏向させることができ、前記集熱ユニットを複数使用した集熱器は、熱源から放出された遠赤外線を効率的に吸熱することを目的としている。
【解決手段】そして本発明は上記目的を達成するために、垂直方向に張設された縦長の両面ミラーフィルムを等間隔に複数配置して集熱ユニットとするとともに、前記前記集熱ユニットを円柱状の筐体の内部に複数配設し、その中心部に縦長の吸熱管を設けて集熱器2としたものである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に張設された縦長の両面ミラーフィルムを等間隔に複数配置し、前記複数の両面ミラーフィルムによって、内部が縦スリット状に仕切られた柱状の集熱ユニットであって、前記複数の両面ミラーフィルムの水平断面形状は、複数の円弧を左右対称に設けた形状をなすとともに、各円弧の円弧長が中央部からの距離に応じて長くなり、かつ前記各円弧の曲率半径が中央部からの距離よりも大きくなっていることを特徴とする集熱ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の集熱ユニットを、円柱状の筐体の内部に複数配設するとともに、中心部に縦長の吸熱管を設けた集熱器であって、前記集熱ユニットは、円柱状の筐体内部における半径が異なる複数の同心円周上に、一定の間隔をおいて複数取り付けられていることを特徴とする集熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場や電算室など閉鎖されていて熱の籠りやすい空間において、熱源から放射されている遠赤外線からなる輻射エネルギーを捉える集熱器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱の伝わり方には、物質の内部において熱が直接伝わる熱伝導のほか、対流および輻射という現象がある。このうち対流は、流体の流れによって熱が伝えられる現象で、ヒートポンプを使用したエアコンにも活用されており、室内機と室外機の間を循環する冷媒を通じて温度調整された空気を室内に放出し、対流によって室内の温度をコントロールしている。
【0003】
また輻射は、電磁波が熱を運ぶ現象で、物質の温度が高くなると、その物質の原子や分子を構成する電子のエネルギーが電磁波となり輻射エネルギーとして放射される現象である。特に高温の物質からは可視光よりも波長の長い電磁波である遠赤外線が強く放射される性質があり、この遠赤外線は、被加熱物に吸収されたときに強い熱作用をもたらす性質を有しているため、高温の物質から放射された輻射エネルギーは再度熱に変換されて熱移動現象が生じる。
【0004】
ところで工場や電算室など、高温の熱源が存在している室内では、熱源に触れた一部の空気が熱伝導によって直接暖められるほか、熱源から輻射の現象によって大量に放出された遠赤外線が、壁などの様々な被加熱物に吸収される熱作用よっても室温の上昇がもたらされる。そのためこうした室内では、作業をする人間に対する健康上の配慮や各種電子装置の熱暴走の防止など、室内空間の冷却への配慮が必要不可欠となるが、一般的には、室内空間の温度制御には、前述のエアコンを用いた対流によって空間中の大気を冷却しようとする場合が多い。しかしながら前記室内の熱源が相当に高温である場合には、部屋全体をエアコンによって冷却しようとすると、かなり強力な冷房設備が必要となるうえ、消費電力も極めて大きくなるため、実用的な冷房効果には限界があるといえる。
【0005】
したがって、こうした高温の熱源が室内に存在している場合には、前述のようなエアコンを用いた対流による熱の移動を目指すよりも、むしろ熱源から発生する電磁波である遠赤外線を直接捉え、熱源の輻射エネルギーを室外に逃がすことができれば、室内の上昇をもたらす熱作用を減少させることができるため、熱源からの熱の移動を直接抑制する手法としてきわめて効率的な室内空間の冷却手法であるといえる。
【0006】
なお、熱源から発生する遠赤外線は、室内のあらゆる方向に向かって放射されているうえに壁等で乱反射を繰り返すため、室内ではランダムな方向から放射されている。したがって、こうした遠赤外線を直接捉えるためには、ランダムな方向から放射される遠赤外線を捉えることが可能な集熱器に係る技術的手段が必要になる。
【0007】
そこで、こうした電磁波を捉える技術的手段として、例えば特許文献1には、集光板で円筒状の集光筒を形成し、全方向からの光線を集光筒の中心にある受光体に集光する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-203522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記先行技術を検討してみると、前記特許文献1に記載のものは、特に太陽光の集光を目的としたものであるが、太陽光は様々な波長を含んだ電磁波であるため、特に室内に設置する遠赤外線用の集熱器の用途に用いることが可能な技術であると認められる。
【0010】
しかしながら前記特許文献1に記載のものは、複雑な形状をした透明体のプリズムからなる整流ユニットを無数に積層したものであるため、その製造コストは相当に高額なものになると考えられる。また個体のプリズムを使用している以上、ある程度の重量は避けらないため、その取扱いにあたっては振動に弱い光学機器に並みの取扱い上の注意を払う必要があるものと考えられ、必要に応じ簡単に室内への設置や移動ができるものとは認められない。
【0011】
本発明は上記課題を解決しようとするものであり、個体のプリズムは使用せずにフィルム状の両面ミラーシートを使用することで、容易かつ安価に製造することができ、重量的にも軽量で運搬時の振動にも強いという特徴を有し、室内の状況に応じて簡単に設置や移動が可能な集熱器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして本発明の集熱器では、上記目的を達成するための第1の課題解決手段として、集熱器に使用する集熱ユニットに関し、垂直方向に張設された縦長の両面ミラーフィルムを等間隔に複数配置し、前記複数の両面ミラーフィルムによって、内部が縦スリット状に仕切られた柱状の集熱ユニットであって、前記複数の両面ミラーフィルムの水平断面形状は、複数の円弧を左右対称に設けた形状をなすとともに、各円弧の円弧長が中央部からの距離に応じて長くなり、かつ前記各円弧の曲率半径が中央部からの距離よりも大きくなっていることを特徴としたものである。
【0013】
また第2の課題解決手段は、請求項1に記載の集熱ユニットを、円柱状の筐体の内部に複数配設するとともに、中心部に縦長の吸熱管を設けた集熱器であって、前記集熱ユニットは、円柱状の筐体内部における半径が異なる複数の同心円周上に、一定の間隔をおいて複数取り付けられていることを特徴としたものである。
【0014】
この発明の第1の課題解決手段によれば、両面ミラーフィルムという軽量な素材で熱を反射させる集熱ユニットであるため、容易かつ安価に製造することができ、重量的にも軽量で運搬時の振動にも強くすることができる。また、両面ミラーフィルムを中央からの距離に比例して曲率半径と円弧長が大きくなる複数の円弧を左右対称に設けた水平断面名形状をなすようにしているため、遠赤外線を効率よく誘導することができる。
【0015】
また第2の課題解決手段によれば、請求項1に記載の集熱ユニットを、円柱状の筐体の内部に、半径が異なる複数の同心円の円周上に、一定の間隔をおいて複数取り付けたことにより、遠赤外線を効率よく中心部の授熱体に誘導して集熱することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の集熱器は、個体のプリズムは使用せずにフィルム状の両面ミラーシートを使用することで、容易かつ安価に製造することができ、重量的にも軽量で運搬時の振動にも強いという特徴を有しているので、室内の状況に応じて簡単に設置や移動をすることができるという優れた効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態である集熱ユニットの外観図
図2】同上の集熱ユニットにおける両面ミラーフィルムの配置図
図3】同上の集熱ユニットにおける遠赤外線の反射状況を示す図
図4】本発明の実施形態である集熱器の水平断面図
図5】同上の集熱器の外観図
図6】同上の集熱器を使用した集熱システムの全体構成図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明すると、はじめに図1は、請求項1に記載の発明に対応する集熱ユニット1の外観図であり、平面視で二つの扇形を鋭角部で接合した形状を有する左右対称な形状をした2枚の支持板4が上下に平行に設けられ、その間の空間に複数の両面ミラーフィルム3が垂直方向に張設されている。
【0019】
そして前記集熱ユニット1は、一端面に照射された遠赤外線が両面ミラーフィルム3によって進路方向を調整されて他端面から放出する機能を有している。
【0020】
特に本発明で使用する両面ミラーフィルム3は、表裏ともに遠赤外線を反射させて使用するものであるため、電磁波の反射率が極力高い特性を有するアルミ蒸着加工等が表裏両面に施されているものを使用し、あらかじめ所定の幅で同じ長さのテープ状に裁断しておく必要がある。
【0021】
また前記支持板4は、前記両面ミラーフィルム3を取り付けるとともに円弧状に湾曲させる構造材の機能を有し、上下の支持板4における両面ミラーフィルム3の取り付け面には所定の形状をした円弧状のスリット5が等間隔に設けられている。なお前記円弧状のスリット5の形状は、両面ミラーフィルム3の取り付け位置毎に異なるが、同じ取り付け位置では、上下ともに同じ形状である。
【0022】
そして前記円弧状のスリット5に、前記ミラーフィルムの端部を差し込んだうえで接着剤等を使用して固定することで、全ての両面ミラーフィルム3の両端を上下の支持板4に取り付けて、上下の支持板4を引き離せば、前記両面ミラーフィルム3は、支持板4に設けられた円弧状のスリット5に沿って湾曲し、上下にわたり均一な円弧を描く水平断面形状を維持した状態で張設されることとなる。
【0023】
次に、前記両面ミラーフィルム3の水平断面形状の詳細について説明する。本発明の集熱ユニット1は、前方正面から照射される遠赤外線については、できるだけ進路を邪魔せずにそのまま後方に素通りさせるとともに、前方斜め方向から照射された遠赤外線は、円弧状に湾曲した両面ミラーフィルム3に反射させ、できるだけ進路を後方寄りに変更させるという機能を実現しようとするものである。
【0024】
そこで、上記の機能を実現する両面ミラーフィルム3の具体的な設計手法について図2に基づいて説明する。はじめに図2のAに示すX・Y平面状において、原点Oを中心とする半径αの半円を下向きに描き、次いでX軸上のプラス方向に向け前記αの等間隔をおきながら中心点が移動する複数の半円を描く。その際に各半円の半径は、各半円の中心点のX座標に対して(2αX+1)となるように設定する。
【0025】
そして前記のように描かれた複数の半円に対し、特にX軸のマイナス方向側に描かれた部分を、原点Oを中心に下方に向けて扇形状に切り取ると、上端がX軸と垂直に交差する複数の円弧がαの間隔をおいて等間隔に並んだ図形が得られる。この扇形状に切り取られた図形の特徴としては、前記各円弧の円弧長は原点Oからの距離に応じて長くなるとともに、前記各円弧の曲率半径は、前段の説明のとおり(2αX+1)となるため、原点Oからの距離よりも大きいものとなっている。
【0026】
そしてさらに前記扇形状に切り取られた図形を、右回りに5~10度程度回転させるとともに、Y軸に対して軸対象に複写すれば、図2のBに示すような二つの扇形の頂角部を中央部の原点Oで接合した外形状をなす、複数の円弧が配列する左右対称の図形を得ることができる。そして当該図形が本発明の集熱ユニット1における両面ミラーフィルム3の水平断面図であり、上方側にある前縁から下方側にある後縁に向けて遠赤外線を入射させるものとなる。なお、最も中心に近い位置にある円弧については効果が乏しいため省略している。
【0027】
以上のような水平断面形状を有する両面ミラーフィルム3では、図2のBに示すように、各ミラーフィルム3の前縁は各ミラーフィルム3の前縁端を結ぶ直線と垂直に交わるように等間隔に配列しているのに対し、各ミラーフィルム3の後縁は後縁に近づくほど間隔が次第に広がる末広がり状に配列しているという特徴を有している。また各両面ミラーフィルム3の前縁端は中央部から離れるに従い前方へと位置するとともに、後縁端は中央部から離れるに従い後方へと位置している。またさらに各両面ミラーフィルム3の前縁側の傾きはやや内向きに傾斜しているが、後縁側の傾きはY軸とほぼ平行になっている。
【0028】
本発明の集熱ユニット1は、前記のように設計される水平断面形状を有する両面ミラーフィルム3を、図1に示すように垂直方向に張設したものであり、その基本構造は、垂直方向に張設された縦長の両面ミラーフィルム3を等間隔に複数配置し、前記複数の両面ミラーフィルム3によって、内部が縦スリット状に仕切られた柱状の集熱ユニット1であって、前記複数の両面ミラーフィルム3の水平断面形状は、複数の円弧を左右対称に設けた形状をなすとともに、各円弧の円弧長が中央部からの距離に応じて長くなり、かつ前記各円弧の曲率半径が中央部からの距離よりも大きくなっていることを特徴とするものである
【0029】
次に、本発明の集熱ユニット1における両面ミラーフィルム3により、遠赤外線がどのように反射されるのかについて図3に基づいて説明する。
【0030】
まず図3のAに示すように、前縁に向かって真正面から遠赤外線が入射された場合には、大半の遠赤外線は、図3のAの(イ)に示すようにそのまま後縁側に素通りすることができるが、特に中央部付近には両面ミラーフィルム3が無いか、またあったとしても両面ミラーフィルム3の円弧長が短いため、遮るものが殆どなくほぼ全ての遠赤外線が後縁側に素通りする。
【0031】
また図3のAの(ロ)に示すように、中央部から離れた外方位置にある両面ミラーフィルム3は円弧長が長くなるため、遠赤外線が両面ミラーフィルム3の外曲面で反射し易くなるが、中央部から離れた位置の両面ミラーフィルム3は、円弧の曲率半径が大きくなるため、その進行方向は僅かに外方に偏向するに留まり、やはり大半の遠赤外線を後縁側に向かって直進させることができる。
【0032】
次に図3のBに示すように、遠赤外線が一定の角度をもって両面ミラーフィルム3の内曲面側に向けて入射された場合には、図3のBの(イ)に示すように、中央部付近では一部の遠赤外線が両面ミラーフィルム3の間を通過して外方へと素通りするものの、大半の遠赤外線は両面ミラーフィルム3の内曲面に反射し、その進路が中央部方向へと偏向される。そしてその際の反射角は、両面ミラーフィルム3の前縁側が僅かに内向きに傾斜しているため、前記入射の角度より僅かに小さくなる。
【0033】
また図3のBの(ロ)に示すように、前記入射の角度が著しく大きい場合には、ほぼすべての遠赤外線が両面ミラーフィルム3の内曲面で反射し、特に中央部付近の両面ミラーフィルム3では反射した遠赤外線はそのまま中央部方向へと偏向される。さらに中央部から離れた外方位置にある両面ミラーフィルム3では、内曲面に反射した遠赤外線の一部は、隣り合う両面ミラーフィルム3の外曲面との間で反射を繰り返し、最終的に外方へと偏向される遠赤外線が一部あるものの、両面ミラーフィルム3の後縁端は、中央部から離れるに従い後方へと位置しており、また両面ミラーフィルム3の間隔が末広がり状をなしていることから、最終的には前記入射の角度より僅かに小さくなった反射角で中央部方向へと偏向される確率が高く、全体としても中央部後方に向かう遠赤外線の量の方が多くなる。
【0034】
さらに図3のCに示すように、遠赤外線が一定の角度をもって両面ミラーフィルム3の外曲面に入射された場合には、図3のCの(イ)に示すように、中央部付近では一部の遠赤外線が両面ミラーフィルム3の間を通過して中央部方向へと素通りするものの、両面ミラーフィルム3の前縁端は、中央部から離れるに従い前方へと位置しているため、大半の遠赤外線は両面ミラーフィルム3の外曲面に反射する。そしてそのまま反射角を僅かに増して外方へと偏向される遠赤外線があるものの、両面ミラーフィルム3の後縁端は、中央部から離れるに従い後方へと位置していることから、再度隣の両面ミラーフィルム3の内曲面に反射して中央部方向へと偏向される確率が高くなる。この場合の反射角は、前記入射の角度とほぼ同じ程度の大きさとなるが、全体としては中央部後方に向かう遠赤外線の量の方が多くなる。
【0035】
またさらに図3のCの(ロ)に示すように、前記入射の角度が著しく大きい場合には、ほぼすべての遠赤外線が両面ミラーフィルム3の外曲面で反射し、その後も大半の遠赤外線が隣り合う両面ミラーフィルム3の内曲面との間で反射を繰り返すが、両面ミラーフィルム3の後縁端は、中央部から離れるに従い後方へと位置しており、また両面ミラーフィルム3の間隔が末広がり状をなしていることから、反射を繰り返すことで最終的には前記入射の角度より僅かに小さくなった反射角で中央部方向へと偏向される確率が高く、全体としても中央部後方に向かう遠赤外線の量の方が多くなる。
【0036】
以上のように、本発明の集熱ユニット1によれば、遠赤外線の入射角によって性能は変わるものの、集熱ユニット1を通過させることにより、あらゆる角度から入射した遠赤外線を集熱ユニット1の中央部に向けて偏向させつつ、直進に近い角度に近づけながら後方へと誘導することができるのである。但し前述の説明のように、前記集熱ユニット1は、単体では十分な効果を奏することはできないため、集熱器2として使用する際には複数使用して相乗効果をあげる必要がある。
【0037】
そこで次に、本発明の第2の課題解決手段である、請求項2に記載の集熱器2について説明する。
【0038】
本発明の集熱器2は、円筒状の筐体6の内部に前記集熱ユニット1を複数配置するものであるが、その基本構造を図5に示している。前記筐体6は、円筒を縦にした状態で使用し、その外周は遠赤外線を通過させることができる薄い円筒部7で取り囲まれている。なお前記円筒部7の素材としてはガラスのほか、アクリル樹脂等の透明で電磁波の透過率が極力高い素材を使用することが望ましい。また前記筐体6の中心部には、前記円筒部7より直径が小さく縦長で円筒状をした吸熱管9が縦通しており、その内部に充填された水やオイル等の熱を移動させる液体の熱媒体10によって吸収した熱を外部に移動させる。
【0039】
前記吸熱管9は、遠赤外線が照射された際には熱作用によって熱を発生し、内部の液体に熱を伝導する役割を担うものであるため、素材としては、熱伝導率が高いアルミや銅などの金属製の素材が望ましく、その表面には黒色の艶消し塗装や黒鉛の粉末を塗布するなどして遠赤外線の反射を抑え、熱作用による発熱効果を極力高めておくことが必要である。また円筒部7と吸熱管9の間は、集熱ユニット1が配置される空間となるが、この空間を魔法瓶のように真空状態にしておくことも効果的である。
【0040】
さらに前記円筒状の筐体6の上下端には、ドーナツ状の封止板8を前記筐体6の上下の開口部を塞ぐように取り付け、中心部に前記吸熱管9を挿通させる。また前記封止板8は、集熱ユニット1を取り付ける部材としても機能し、図1に記載の集熱ユニット1における上下の支持板4を各々上下の封止板8に取り付けることで、前記筐体6の内部には垂直方向に両面ミラーフィルム3が張設される。
【0041】
また図4には、筐体6の水平断面形状を示しており、円柱状の筐体6の内側には複数の集熱ユニット1が配列された状況が描かれている。同図では、半径が異なる複数の同心円周上に、一定の間隔をおいて複数の集熱ユニット1が取り付けられ、各集熱ユニット1はすべて前縁側が外方向を向くように配列されている。また各集熱ユニット1の大きさは、各半径位置に応じて変化し、中心部に向かうほど小さいものとなっている。
【0042】
前述のように本発明の集熱ユニット1は、単体の効果は小さいものであるが、上記のように複数の集熱ユニット1を多数配列することによって、十分な効果を発揮することができる。すなわち最も外側にある集熱ユニット1に照射された遠赤外線が集熱ユニット1を通過したのち、さらに内側にある次の集熱ユニット1を次々と通過していくことで、あらゆる方向から集熱器2に照射された遠赤外線は、複数の集熱ユニット1を通過するたびに、その進行方向が次第に円筒状の筐体6の中心に向かって補正され、最終的には、吸熱管9の表面に対して水平方向では
垂直に近い角度で照射されていくことになるのである。
【0043】
こうして集熱器2に照射した遠赤外線の大半は、集熱器2の外部に漏洩することなく吸熱管9へと誘導されることとなり、当該吸熱管9に照射された遠赤外線は熱作用により発熱して吸熱管9内部の液体の温度を効率的に上昇させる。
【0044】
次に図6には、本発明の集熱器2を使用した集熱システムの全体構成を示しており、本発明の集熱器2を円筒状の筐体6を縦にした状態で所望の場所に設置し、吸熱管9の上端と下端に十分な断熱を施した配管11を取り付けるとともに、各々の配管11を室外に設置したラジエター等の熱交換器を使用した排熱器12に接続している。
【0045】
配管11の内部には、吸熱管9と同じく液体の熱媒体10が充填されており、配管11を通じて循環することにより、集熱器2で暖められた前記熱媒体10の蓄熱は、前記排熱器12によって室外に排出される。前記熱媒体10の循環にあたっては、ポンプを用いて循環させることも可能であるが、図6に示すように、排熱器12を集熱器2より十分高い位置に設置することができれば、吸熱管9で暖められて比重の小さくなった熱媒体10が吸熱管9の上端から排熱器12に向けて上昇するとともに、排熱器12で冷却されて比重の大きくなった熱媒体10が吸熱管9の下端へと下降していくため、ポンプなしに自然循環させることも可能である。
【0046】
また集熱器2の室内における設置場所は、極力熱源の近くに設置することが望ましいが、直列若しくは並列による接続方法により、ひとつの配管11で複数の集熱器2を設置することも可能である。また重量的にも軽量で運搬時の振動にも強いため、配管11にフレキシブルな素材を採用すれば、室内の状況に応じて容易に移動させることもできる。また排熱器12については、風通しのよい涼しい場所に設置することが望ましく、状況によっては送風機を使用して強制的に冷却することも可能である。
【0047】
以上のように、本発明の集熱ユニット1は、あらゆる方向から照射される遠赤外線を一定の方向に偏向させることができ、また前記集熱ユニット1を複数配設した集熱器2によれば、工場や電算室など高温の熱源が存在している室内において、熱源から輻射の現象によって大量に放出された遠赤外線を効率的に吸熱し、室外に排出することにより室温を低下させることができるのである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の集熱ユニット1は、遠赤外線ばかりでなく、あらゆる波長の電磁波に対してその進行方向を偏向することができるものであるため、太陽光発電や照明器具等に対しても使用することが可能である。また本発明の集熱器2は、熱源から輻射される遠赤外線を効率的に吸収するものであるから、工場等の産業用途のほか、ビルや家庭用の空調設備としても有効に活用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 集熱ユニット、2 集熱器、3 両面ミラーフィルム、4 支持板、5 円弧状のスリット、6 筐体、7 円筒部、8 封止板、9 吸熱管、10 熱媒体、11 配管、12 排熱器
図1
図2
図3
図4
図5
図6