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特開2022-94015伝導伝熱乾燥機における分散投入装置 並びに分散投入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094015
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】伝導伝熱乾燥機における分散投入装置 並びに分散投入方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/00 20060101AFI20220617BHJP
   F26B 17/20 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
F26B17/00 B
F26B17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206791
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】篠原 吉信
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA06
3L113AA07
3L113AB02
3L113AB05
3L113AC05
3L113AC16
3L113AC40
3L113AC45
3L113AC46
3L113AC48
3L113AC49
3L113AC63
3L113AC68
3L113BA37
3L113CB29
3L113CB32
3L113CB34
3L113DA07
3L113DA30
(57)【要約】
【課題】 伝導伝熱乾燥機において投入口(材料投入口)が比較的自由に選択でき、また設計時に一旦、投入口を決定しても、その後の投入口の位置変更が、比較的高い自由度で行えるようにした新規な分散投入手法の開発を技術課題とする。
【解決手段】 本発明の分散投入装置1は、固定状態に設けられた中空状の本体シェル21と、この内部で回転自在に支持される回転伝熱部22とを具え、被処理物Wを回転伝熱部22の伝熱面に接触させて水分を蒸発させるようにした伝導伝熱乾燥機2の上部に設けられるものであって、本体シェル21の上部に、被処理物Wを本体シェル21内に投入できる分散コンベヤ11を具え、且つこの分散コンベヤ11の排出口14下方に、伝導伝熱乾燥機2の長手方向において複数箇所の落下制御体13が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定状態に設けられた中空状の本体シェルと、この内部で回転自在に支持される回転伝熱部とを具え、被処理物を回転伝熱部の伝熱面に接触させてその水分を蒸発させるようにした伝導伝熱乾燥機の上部に設けられた分散投入装置であって、
この分散投入装置は、前記本体シェルの上部に、被処理物を本体シェル内に投入できる分散コンベヤを具え、且つこの分散コンベヤの排出口下方に、伝導伝熱乾燥機の長手方向において複数箇所の落下制御体が設けられていることを特徴とする、伝導伝熱乾燥機における分散投入装置。
【請求項2】
前記分散コンベヤと本体シェルとの間は、伝導伝熱乾燥機の長手方向において中空状を成すシュートで接続されて成り、前記落下制御体は、このシュートの上方開口部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の、伝導伝熱乾燥機における分散投入装置。
【請求項3】
前記落下制御体は、水平状態に設けられたダンパ板を具えて成り、このダンパ板を水平方向にスライドさせて、分散コンベヤと本体シェルとの間の投入経路を連通または遮断する構成であることを特徴とする請求項1または2記載の、伝導伝熱乾燥機における分散投入装置。
【請求項4】
前記分散コンベヤの排出口下方には、落下制御体の非設置位置に、分散コンベヤと本体シェルとの間の投入経路を常に遮断する固定板が設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の、伝導伝熱乾燥機における分散投入装置。
【請求項5】
前記伝導伝熱乾燥機の複数箇所に設けられる落下制御体は、幅寸法が異なるものを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の、伝導伝熱乾燥機における分散投入装置。

【請求項6】
固定状態に設けられた中空状の本体シェル内で回転する回転伝熱部の伝熱面に、被処理物を接触させて、その水分を蒸発させるようにした伝導伝熱乾燥機に対し、被処理物を投入する方法であって、
前記本体シェルの上部には、分散コンベヤを具えた分散投入装置を設け、
且つこの分散コンベヤの排出口下方には、伝導伝熱乾燥機の長手方向において複数箇所の落下制御体を設けるものであり、投入にあたっては、適宜の位置の落下制御体を開閉して、被処理物を分散コンベヤから本体シェル内に分散して投入するようにしたことを特徴とする、伝導伝熱乾燥機における分散投入方法。
【請求項7】
前記落下制御体は、水平状態に設けられたダンパ板を水平方向にスライドさせて、分散コンベヤと本体シェルとの間の投入経路を連通または遮断することを特徴とする請求項6記載の、伝導伝熱乾燥機における分散投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥状・ケーキ状・粉粒状などを呈する被処理物の乾燥を行う装置の一種である伝導伝熱乾燥機に関するものであって、特に乾燥機に被処理物を供給する投入口を変更したい場合、投入口選択の自由度を高め、ほぼ所望通りの位置から被処理物の分散投入が行えるようにした新規な分散投入装置と分散投入方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば下水汚泥など含水率及び粘性が高い被処理物の乾燥機として、ITR:Inner Tube Rotary (インナーチューブロータリー)とも呼ばれている伝導伝熱乾燥機が存在する。本出願人もこの種の乾燥機に関し、種々の特許出願を行い、特許取得に至っている(例えば特許文献1・2参照)。
この伝導伝熱乾燥機2は、例えば図1(a)に示すように、本体シェル21内で回転する回転伝熱部22を具えて成り、この回転伝熱部22には、内部に蒸気を通す複数の加熱管25が円弧状(円周状)に等配される。そして、被処理物Wたる材料の乾燥処理は、蒸気を加熱管25内に流した状態で回転伝熱部22を回転させながら、加熱管25を介して被処理物Wを間接的に加熱するものである。
【0003】
しかしながら、このような乾燥機においても、まだ以下のような点で改善の余地があった。
すなわち伝導伝熱乾燥機2は、上述したように内部の伝熱面積を有効に利用して能力を発揮するため、局部的な高水分領域(例えば50%W.B.)を極力なくす必要があり、また局部的に乾燥が進み過ぎて低水分領域が発生すれば、乾燥機全体として見た場合に乾燥効率が低下することになるため、乾燥機機内への被処理物Wの投入口を多数設けることが行われる。つまり高水分領域とならないためには投入口は分散させ、一方で、低水分領域が想定される箇所には被処理物Wを積極的に供給し、その低水分領域の水分を上昇させることで乾燥機全体としての乾燥効率を向上させることになる。
しかしながら、乾燥効率の最適化を目論んで被処理物Wの供給すべき場所を設定しても、現実には被処理物Wの物性の変動を含めて各種の変化が装置内に起こるため、設計時に設定した位置では目論見通りにならないことがしばしば起こる。実際、乾燥機を設置した後においては、投入位置を変更したいとしても、容易にその位置変更を行い難いのが実情であった。
【0004】
ここで従来の分散投入手法としては、例えば図6(a)に示すように、汚泥ポンプ等のポンプを用い、バルブVの開閉操作によって行う手法があった。また図6(b)に示すように、スクリュータイプのコンベヤCと排出ダンパDを用いた手法もあり、この場合には排出ダンパDの開閉操作により、被処理物Wの供給を行ったり、遮断したりするものであった。そして、これらの手法によって乾燥機2′の長手方向に設けた分散箇所たる投入口29′から被処理物Wを小分け状態に投入していた。
【0005】
以下、このような従来手法の問題点について説明する。
まず汚泥ポンプ等のポンプを用いた手法では、バルブVの大きさとその配置(配管/フランジや内径)だけに左右されるため、比較的自由度が高い状態で投入口を多数設け、被処理物Wを供給するバルブVの選択ができるものの、被処理物Wがポンプによって圧密状態で乾燥機2´内に供給されるため、塊化し易く、塊が機内で分散し難いという問題があり、そもそもポンプによる圧送が可能な汚泥に限られるものであった。
またコンベヤCと排出ダンパDを用いた手法では、圧密が起き難いものの、被処理物Wの分散性をできるだけ損なわずに供給するためには供給の開口を広く取らねばならず、この関係でフランジ等の周辺部材を含めたスペースがバルブVと比べて大きく必要となり、設置箇所数に制約があった。
また、設計段階で、一旦、投入位置を決定してしまうと、その後に変更することは容易ではなかった。すなわち設計時に決定した投入位置を、後から変更する場合には、乾燥機2′の本体シェル21′の改造が必要であり、またコンベヤCの排出口を改造する、あるいはコンベヤCの長さを延長するなど比較的改造範囲が大きくなり、位置変更が容易に行えず、これが問題であった。
またコンベヤCを用いて被処理物Wを投入する手法では、コンベヤCは、必ず乾燥機2′の上部に設置する必要があり、他の構成要素としてシュート12′と排出ダンパDも必要になるため、設備全体の高さ寸法が嵩んでしまう傾向があり、これが問題であった。
なお、乾燥機2′への分散投入場所が限られた場合には、乾燥機2′内で局部的な水分上昇を招き、運転不能になる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6000739号公報
【特許文献2】特開2006-17335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、伝導伝熱乾燥機において投入口(材料投入口)が比較的自由に選択でき、また設計時に一旦、投入口を決定しても、その後の投入口の位置変更が、比較的自由度が高い状態で行えるようにした新規な分散投入手法の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず請求項1記載の伝導伝熱乾燥機における分散投入装置は、
固定状態に設けられた中空状の本体シェルと、この内部で回転自在に支持される回転伝熱部とを具え、被処理物を回転伝熱部の伝熱面に接触させてその水分を蒸発させるようにした伝導伝熱乾燥機の上部に設けられた分散投入装置であって、
この分散投入装置は、前記本体シェルの上部に、被処理物を本体シェル内に投入できる分散コンベヤを具え、且つこの分散コンベヤの排出口下方に、伝導伝熱乾燥機の長手方向において複数箇所の落下制御体が設けられていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項2記載の伝導伝熱乾燥機における分散投入装置は、請求項1記載の要件に加え、
前記分散コンベヤと本体シェルとの間は、伝導伝熱乾燥機の長手方向において中空状を成すシュートで接続されて成り、前記落下制御体は、このシュートの上方開口部に設けられていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項3記載の伝導伝熱乾燥機における分散投入装置は、請求項1または2記載の要件に加え、
前記落下制御体は、水平状態に設けられたダンパ板を具えて成り、このダンパ板を水平方向にスライドさせて、分散コンベヤと本体シェルとの間の投入経路を連通または遮断する構成であることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項4記載の伝導伝熱乾燥機における分散投入装置は、請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記分散コンベヤの排出口下方には、落下制御体の非設置位置に、分散コンベヤと本体シェルとの間の投入経路を常に遮断する固定板が設けられることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項5記載の伝導伝熱乾燥機における分散投入装置は、請求項1から4のいずれか1項記載の要件に加え、
前記伝導伝熱乾燥機の複数箇所に設けられる落下制御体は、幅寸法が異なるものを含むことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項6記載の伝導伝熱乾燥機における分散投入方法は、
固定状態に設けられた中空状の本体シェル内で回転する回転伝熱部の伝熱面に、被処理物を接触させて、その水分を蒸発させるようにした伝導伝熱乾燥機に対し、被処理物を投入する方法であって、
前記本体シェルの上部には、分散コンベヤを具えた分散投入装置を設け、
且つこの分散コンベヤの排出口下方には、伝導伝熱乾燥機の長手方向において複数箇所の落下制御体を設けるものであり、投入にあたっては、適宜の位置の落下制御体を開閉して、被処理物を分散コンベヤから本体シェル内に分散して投入するようにしたことを特徴として成るものである。
【0014】
また請求項7記載の伝導伝熱乾燥機における分散投入方法は、請求項6記載の要件に加え、
前記落下制御体は、水平状態に設けられたダンパ板を水平方向にスライドさせて、分散コンベヤと本体シェルとの間の投入経路を連通または遮断することを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0015】
まず請求項1または6記載の発明によれば、伝導伝熱乾燥機に被処理物を投入する際、分散コンベヤの排出口下方に設けられた落下制御体を開閉させることで被処理物の落下投入を行うことができる。また、被処理物の投入が落下制御体の開閉操作によるものであるから、落下制御体を設置した位置であれば、比較的高い自由度を持って、被処理物を分散投入することができ、更には投入位置を変更したい場合でも、ほぼ自由に投入位置を変更することができる。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、分散コンベヤと本体シェルとの間が中空状のシュートで接続され、このシュート内に複数の落下制御体が、回転伝熱部に沿って収容されるため、コンパクトな装置構成でありながらも、乾燥機の長手方向での被処理物の投入が、従来装置の様な離散的な投入ではなく、長手方向に連続的に任意で且つ投入したい位置から正確に投入することができる。
【0017】
また請求項3または7記載の発明によれば、落下制御体は、水平状態に設けられたダンパ板を水平方向にスライドさせて、被処理物の落下投入を制御する構成であるから、設備全体の重心を低い高さに抑えることができる(設備全体の重心安定化)。言い換えれば、ダンパ作用を担う落下制御体としては、例えば水平なダンパ板を上下方向に回動させて被処理物の落下投入を制御するフラップタイプもあるが、このようなフラップタイプではダンパ板を上下方向にあおる分、設備全体の高さ寸法が高くなってしまうことは避けられないが、本発明ではこのようなことを防止することができる。
【0018】
また請求項4記載の発明によれば、落下制御体の非設置位置に固定板が設けられるため、投入を行わない位置には、この固定板を設けることによって、装置構造をシンプル化することができる。
また落下制御体と固定板とを交換自在に形成しておけば、より一層、分散投入位置の変更・選択が行い易くなる。
【0019】
また請求項5記載の発明によれば、伝導伝熱乾燥機の複数箇所に設けられる落下制御体は、幅寸法が異なるものを含むため、全ての落下制御体の幅寸法を同一で形成した場合よりも、多くの投入口を形成することができ、より多くの位置から被処理物を分散投入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の分散投入装置を具えた伝導伝熱乾燥機の一例を示す正面図(a)、並びに側面図(b)である。
図2】主に分散投入装置を示す平面図(a)、並びに正面図(b)である。
図3】主に分散投入装置を示す分解斜視図である。
図4】ダンパ板を円滑に開閉させるためにレールやコロ、あるいは当該レール上に溜まった被処理物を除去するために掻き落し体を設けた構成例の説明図(a)、並びに開閉自在の落下制御体に、固定板を併設した構成例を示す説明図(b)である。
図5】複数基の落下制御体を同じ幅寸法(乾燥機の長手方向寸法)とした構成例を示す説明図(a)、並びに落下制御体の幅寸法(長手方向寸法)を異ならせた構成例を示す説明図(b)である。
図6】従来の投入手法を二種示す平面図、並びに断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【実施例0022】
本発明の伝導伝熱乾燥機における分散投入装置1(以下、単に「分散投入装置1」とする)は、伝導伝熱乾燥機2(以下、単に「乾燥機2」とする)の上部を覆う蓋のように設けられるものであり、まず乾燥機2の基本構造から説明する。
乾燥機2は、下水汚泥などの被処理物(材料)Wを乾燥処理するものであり、その基本構造は、一例として図1に示すように、固定状態(非回転状態)に設けられた中空状の本体シェル21と、その内部で回転自在に支持される回転伝熱部22とを具えて成るものである。
回転伝熱部22は、回転軸23を有した一対のエンドプレート24の間に、複数の加熱管25が円弧状(回転軸23を中心とする円周状)等に等配され、管束状に形成される。そして、本乾燥機2によって被処理物Wを乾燥するには、加熱管25内に蒸気を流しながら回転伝熱部22(管束)を回転させることにより、本体シェル21内に受け入れた被処理物Wに、間接的に熱を加え(加熱管25を通して熱を加え)、被処理物Wを所望の含水率まで乾燥させるものである。
このように本発明に係る乾燥機2は、間接加熱タイプの連続式伝導伝熱乾燥機であり、ITR:Inner Tube Rotary (インナーチューブロータリー)とも呼ばれている。
【0023】
なお、回転軸23及びエンドプレート24には、内部に蒸気を流す通路が形成されており、蒸気は一方の回転軸23及びエンドプレート24から加熱管25内へと分散して流入し、ここで熱交換を行って自身は凝縮してドレンとなる。ドレンとなった蒸気は、その後、他方のエンドプレート24及び回転軸23を経由して乾燥機2外に移送されるものである。
因みに図中符号26は、加熱管25に外接して突出状態に設けられたリフタであり、これは回転伝熱部22(管束)の回転に伴い、本体シェル21内に投入された被処理物Wを掻き上げるためのものである。
また図中符号28は、乾燥を終えた被処理物W、つまり乾燥品を排出するための排出口である。
【0024】
また、特に図示しないが、乾燥中は、被処理物Wから水分(水蒸気)、臭気成分、その他の揮発成分、粉塵など(乾燥排ガス)が分離・放出されるため、これを乾燥機2外に効率的に排出するため本体シェル21には、加熱された外気(加熱外気)を取り込むためのキャリアガス導入口と、排出用のキャリアガス排出口とが形成される。すなわち、キャリアガス導入口から導入された加熱外気は、本体シェル21内を通過してキャリアガス排出口から出て行く間に、被処理物Wからの水分、臭気成分、その他の揮発成分、粉塵などを同伴することになる。
【0025】
また乾燥機2は、一例として図3に示すように、本体シェル21の上部において、回転伝熱部22に並行する長手方向に矩形の開口が設けられるもので、例えばこの開口は乾燥機2の長手方向側の両端面の近傍にまで開口される。
そして、この開口から垂直に立ち上げられた四面から成る壁面により、分散投入装置1のシュート12が形成され、このシュート12の上方開口部が乾燥機2の受入口部(材料受入口部)29となる。そして、ここに上述した分散投入装置1が載置状態に取り付けられる。
なお、前記開口は、乾燥機2の長手方向側において被処理物Wを供給する必要のないことが明らかであれば、当該範囲においてまでシュート12を設ける必要はない。例えば、乾燥機2の長手方向側の両端面の近傍にまで開口される必要のない場合もある。
【0026】
次に、分散投入装置1について説明する。
分散投入装置1は、上述したように乾燥機2の上部を塞ぐ蓋のように設けられるものであり、一例として図1図3に示すように、乾燥機2の上方において被処理物Wを乾燥機2の長手方向に沿って移送するコンベヤ11と、コンベヤ11と本体シェル21との間を接続する上記シュート12と、コンベヤ11とシュート12との間に設けられ、乾燥機2への被処理物Wの投入(供給)を制御する落下制御体13とを具えて成る。
なお本明細書では、上記「コンベヤ11」は、被処理物Wを乾燥機2に分散して投入するコンベヤであることから、このものを特に「分散コンベヤ11」と称することがある。
またここで方向について説明しておく。乾燥機2の長手方向は、分散コンベヤ11の送り方向を意味し、左右方向と称することがある。ただし、落下制御体13として観た場合には、この左右方向は幅方向と称するものであり、また分散コンベヤ11の送り方向に直交する水平方向を前後方向と称するものであり、特に後述するダンパ板131は、この前後方向にスライドさせるものである。
【0027】
以下、分散投入装置1を構成する各部材について説明する。
分散コンベヤ11は、一例としてスクリューコンベヤが適用され、このものは回転軸111の外周側に、螺旋状の羽根112が取り付けられて成るものである。
また分散コンベヤ11には、シュート113が設けられるものであり、このシュート113への被処理物Wの搬送は、別途ベルトコンベヤ等を介して行われる。
ここで図中符号14は、分散コンベヤ11の下方に形成された被処理物Wの排出口(材料出口)である。因みに分散コンベヤ11の排出口14は、乾燥機2からすると被処理物Wの受入口部(材料受入口部)29と直結するものである。
なお、分散コンベヤ11としては、必ずしも図3に示したスクリューコンベヤに限定されるものではなく、シャフトレススクリューコンベヤを適用することも可能である。
【0028】
次にシュート12について説明する。
シュート12は、分散コンベヤ11から排出される被処理物Wを乾燥機2内に案内するものであり、乾燥機2の上部において、分散コンベヤ11すなわち乾燥機2の長手方向に沿って設けられる。特に、本実施例では一例として図1(b)に示すように、シュート12は、乾燥機2内で掻き上げられる被処理物Wの上方位置に設けられる。
また、シュート12は、例えば図3に示すように、分散コンベヤ11の長手方向においてほぼ全域が中空状を成す略直方体の筒状に形成される。このため分散コンベヤ11から落下した被処理物Wは、シュート12を経て乾燥機2内に落下するものであり、換言すれば分散コンベヤ11から乾燥機2までを接続するシュート12が、被処理物Wを乾燥機2へと落下・導入する投入経路15となるものである。
また、この投入経路15は、乾燥機2の長手方向において複数の経路に区画されて成り、この区画された各経路を分割投入経路15aとする。そして、少なくとも複数つまり二区画以上の分割投入経路15aに、上記落下制御体13が設けられ、この落下制御体13によって当該分割投入経路15aを連通または遮断するようにしたものである。
このような構造によって、本発明では、被処理物Wの乾燥機2への投入口、換言すれば中空状のシュート12によって構成される投入経路15を分割(分散)するようにしたものであり、また一旦、投入口を決定した後でも、投入口(分散投入口)の位置変更が、比較的高い自由度を持って行えるものである。
なお図中符号16は、投入経路15を保守点検する際に開閉する点検蓋(点検口)である。
【0029】
次に、落下制御体13について更に詳細に説明する。
落下制御体13は、細かく仕切られた各投入口である各分割投入経路15aにおいて、被処理物Wの落下投入を制御するものであり、一例として図1図3に示すように、分割投入経路15aを実質的に連通または遮断するダンパ板131と、このダンパ板131を前後方向に移動させ、分割投入経路15aを開放または閉鎖するための駆動シフタ132とを具えて成る。
また本実施例では、特にダンパ板131の開閉操作は、ダンパ板131を水平方向に移動させて行うため、例えば図3図4に示すように、落下制御体13は、ダンパ板131を摺動自在に支持するレール133を具える。
更にダンパ板131を前後方向に水平移動させる構造であることから、設備全体の高さ寸法が抑えられ、設備の重心位置を低い高さに抑えることができる。もちろん、設備の高さ寸法に、格別な制限がない場合等には、ダンパ板131を上下方向に回動させて、分割投入経路15aを開閉させるフラップタイプも適用することができる。
また、本実施例では、上記図1図3に示すように、投入経路15は三つの分割投入経路15aに区画されることから、落下制御体13も三基、直列状に設けられる。ここでこの三基の落下制御体13を区別する場合には、便宜上、図1(a)の左側の落下制御体13から「13A」、「13B」、「13C」・・とするものである。
【0030】
以下、落下制御体13を構成する各部材について説明する。
まずダンパ板131は、一例として図1(b)に示すように、水平なプレート部131aの後部に、垂直なプレート部131bを垂下状態に連設して成るものであり、全体として側面視L字状を成すように形成され、後部の垂直なプレート部131bに前記駆動シフタ132が取り付けられる。
プレート部131aの上面は、例えば図1(b)に示すように、詳しくは後述する閉鎖時において、羽根112の下端に近接した状態となる。すなわちプレート部131aと羽根112との両者は、被処理物Wを搬送している状態や、被処理物Wのない状態で分散コンベヤ11を動かしたときに、プレート部131aと羽根112の下端が接触しない距離であれば、できるだけこれら両者を近づける距離で設置される。
【0031】
ダンパ板131は、駆動シフタ132の摺動子が伸長した状態で、水平なプレート部131aが、分割投入経路15aを遮るように構成されており、被処理物Wの落下投入時には、駆動シフタ132の摺動子を収縮させることにより、分割投入経路15aを塞いでいた水平なプレート部131aを後退させ、開放した分割投入経路15aを介して、被処理物Wを落下投入させるものである。
なお、側面視L字状を成すダンパ板131を補強したい場合等には、ダンパ板131の両端部の近傍に、詳しくは後述するレール133と接触しない位置に、立壁状のプレート部131cを設けることが可能である。
因みに駆動シフタ132としては、油圧シリンダ、エアシリンダ、モーターシリンダ等が適用される。
【0032】
次にレール133について説明する。
レール133は、ダンパ板131を安定して保持しながら、開放時及び閉鎖時において当該ダンパ板131を円滑に摺動させるためのものであり、例えば図4に示すように、プレート部131aの下面とメタルタッチで摺動させたり、当該下面に低摩擦係数の樹脂板を設けて摺動させるものであるが、ダンパ板131を、より一層円滑に摺動させるには、例えば図4(a)の上側拡大図に示すように、ダンパ板131の下部に回転自在のコロ(車輪)134を設けておき、このコロ134をレール133上で転動させながらダンパ板131を摺動させることが好ましく、これにより、より一層スムーズにダンパ板131を開閉させることができる。もちろん、このようなコロ134の他にも、リニアスライダーやローラ等を用いることもできる。
また車輪134を用いた別機構としては、例えば図4(a)の下側拡大図に示すように、後述する境界板136から水平張り出し状態に車輪134を設置し、この車輪134の回転可能な外輪で、プレート部131aの下面を支えて摺動させる構成を採ることもできる。
【0033】
なおダンパ板131を開放させると、前記レール133上に汚泥などの被処理物Wが溜まるため、一例として図4(a)の部分斜視図に示すように、ダンパ板131の両端部、より詳細にはプレート部131a及び131cの先端下方には、下端がレール133の上部に近接して張り出す掻き落し体137を傾斜状態に設けることが好ましく、これによりダンパ板131の閉鎖時の動作で、この掻き落し体137がレール133上に溜まった被処理物Wを効率的に掻き落とすことができる。すなわち、ダンパ板131の閉鎖時の動作、つまり掻き落し体137の移動によって、レール133上に溜まった被処理物Wを払い除けるようにするものであり、はね除けられた被処理物Wは、下方の本体シェル21内に落下するものである。因みに、図3の拡大斜視図においても、掻き落し体137を想像線で図示している。
【0034】
また図中符号136は、分散投入口となる各分割投入経路15aを仕切るように設けた境界板であり、このような境界板136を設けることで、乾燥機2の長手方向にわたって中空状に形成されたシュート12、つまり投入経路15を複数の細かい投入口たる分散投入経路15aに隣接させながら、仕切ることができる。
境界板136の上端は、ダンパ板131の閉鎖時に、プレート部131aの上面と同一の高さ位置となるように設定され、下端は、本体シェル21の上部または回転伝熱部22に接触しない範囲で本体シェル21の内部に突出するように設けられるもので、本体シェル21の上部の曲面と同様な湾曲状、または円弧状に形成される。
落下制御体13は、複数が連続状態に設置され得るものであるが、この境界板136によって、開放動作した落下制御体13の直下の回転伝熱部22に被処理物Wを正確に落下させることができるものである。
【0035】
本発明の分散投入装置1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、この分散投入装置1を適用して、被処理物Wを乾燥機2内に分散投入する作動態様について説明しながら、併せて分散投入方法について運転の一例を説明する。
なお落下制御体13は、三基設けられているものとし、各落下制御体13を図1(a)に示すように、13A・13B・13Cとする。
また分散投入を開始する前は、全ての落下制御体13A~13Cにおいて各分割投入経路15aが閉鎖しているものとする。すなわち全ての落下制御体13A~13Cにおいて駆動シフタ132の摺動子が伸長し、ダンパ板131によって各分割投入経路15aが遮断された閉鎖状態とする。
【0036】
(1)落下制御体13Aのダンパ板131の開放・閉鎖
まず落下制御体13Aのダンパ板131を開放して、この投入口すなわち図1(a)の左側に位置する分割投入経路15aから乾燥機2内に被処理物Wを投入する。なおダンパ板131を開放する操作は、駆動シフタ132の摺動子を収縮させ、落下制御体13Aのダンパ板131を分割投入経路15aから退去させて、分割投入経路15aを受入口部29と連通させるものである。
そして、落下制御体13Aのダンパ板131を適宜の時間、開放させたら、今度は落下制御体13Aのダンパ板131を閉鎖して、この位置からの材料投入を終了する。なおダンパ板131を閉鎖する操作は、駆動シフタ132の摺動子を伸長させ、落下制御体13Aのダンパ板131によって分割投入経路15aを遮断するものである。
因みに、落下制御体13Aのダンパ板131の開放時間(開放継続時間)及び閉鎖時間(閉鎖維持時間)は、図示を省略した制御盤内に設置されるプログラマブルコントローラ(PLC)等を用いて設定することができる。
【0037】
(2)落下制御体13Bのダンパ板131の開放・閉鎖
このようにして落下制御体13Aのダンパ板131を閉鎖した後、今度は落下制御体13Bのダンパ板131を適宜の時間、開放させ、その後、閉鎖するものである。なお、この際のダンパ板131の開閉操作は、落下制御体13Aのダンパ板131の開閉操作と同様である。
【0038】
(3)落下制御体13Cのダンパ板131の開放・閉鎖
また上記のようにして落下制御体13Bのダンパ板131を閉鎖したら、今度は落下制御体13Cのダンパ板131を適宜の時間、開放させ、その後、閉鎖するものである。なお、この際のダンパ板131の開閉操作も、落下制御体13Aのダンパ板131の開閉操作と同様である。
【0039】
(4)落下制御体13Aのダンパ板131の開放・閉鎖
以上のようにして落下制御体13Cのダンパ板131を閉鎖したら、今度は最初に戻り、落下制御体13Aのダンパ板131を再度、適宜の時間、開放させ、その後、閉鎖する。
以下、このようなダンパ板131の開閉操作を三基の落下制御体13A~13Cにおいて順次、繰り返して行くものであり、これはPLC等により設定されるものである。これにより乾燥機2への被処理材Wの投入位置も、図1(a)における左側→中央→右側→・・と順次変更して行くものである。
なお、各落下制御体13A~13Cのダンパ板131の開放時間は、全て同じ時間に設定する必要はなく、例えば各投入位置で変更することが可能である。
そして、全ての乾燥作業が終了したら、各落下制御体13A~13Cのダンパ板131を全て閉鎖して、乾燥品となった被処理物Wを乾燥機2の排出口28から排出するものである。
【0040】
因みに上記説明では三基の落下制御体13を順繰りに開閉して行くように説明したが、投入態様としては必ずしもこれに限定されるものではなく、PLC等に設定により種々の態様が採り得る。具体的には、例えば図1(a)において中央の投入口(分割投入経路15a)から材料投入を行わない場合には、中央の落下制御体13Bは、終始、閉鎖状態に維持(設定)しておき、左右両サイドの落下制御体13A・13Cのみを交互に開閉させる投入態様が採り得る。あるいは乾燥機2内において被処理物Wの水分が低下している領域の上方の落下制御体13A、13Bまたは13Cを優先的に長時間開放する投入態様が採り得るし、または上記とは逆に、乾燥機2内における被処理物Wの水分が高い領域の上方の落下制御体13A、13Bまたは13Cを長時間閉鎖させておく投入態様を採ることもできる。
また分散コンベヤ11におけるシュート113を、分散コンベヤ11の中央に設け、回転軸111(羽根112)の正転動作及び逆転動作と、落下制御体13A、13Bまたは13Cの開放・閉鎖の動作を組み合わせて、被処理物Wを乾燥機2の最適な位置に供給する投入態様を採ることもできる。
【0041】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。
まず、上述した基本の実施例では、全ての分割投入経路15aに開閉自在のダンパ板131を設けた。しかしながら、被処理物Wの投入を行わない位置(分割投入経路15a)があらかじめ決定している場合等には、例えば図4に示すように、スライド自在のダンパ板131ではなく、固定板135を設けることが可能である。因みに、本図4の構成例では、中央の分割投入経路15aに固定板135を設け、ここからの材料投入を行わないようにしたものである。
もちろん、適宜の位置で材料投入を行わないようにするには、上述したようにスライド自在のダンパ板131を開放せず、閉鎖状態に維持しておくことでも対応できる。
なお固定板135は、ダンパ板131のように移動しないため、この上部に被処理物Wが滞留・固着することも考えられるが、その場合には、乾燥作業の終了後に、シュート12に設けた点検口(点検蓋16)などから除去清掃を行うなどして処置することができる。
【0042】
また、上述した基本の実施例では、基本的に落下制御体13を三基設けたが、落下制御体13は二基以上であれば、何基でも構わない。具体的には、例えば図5(a)に示すように、四基の落下制御体13を設けることが可能である。もちろん落下制御体13の数を増やせば、それだけ投入口が増え、より被処理物Wを分散させながら投入することができる。
また複数設けられる落下制御体13は、必ずしも同じ幅寸法に形成される必要はなく、複数の落下制御体13のなかに、幅寸法が異なるものがあっても構わない。すなわち図5(b)は、図5(a)に対し、幾つかの落下制御体13の幅寸法を狭くし、落下制御体13の数、つまり投入口の数を増やした構成例である。
【符号の説明】
【0043】
1 分散投入装置(伝導伝熱乾燥機における分散投入装置)
2 乾燥機(伝導伝熱乾燥機)

11 分散コンベヤ(コンベヤ)
12 シュート
13 落下制御体(13A、13B、13C・・)
14 排出口
15 投入経路
15a 分割投入経路
16 点検蓋

21 本体シェル
22 回転伝熱部(管束)
23 回転軸
24 エンドプレート
25 加熱管
26 リフタ
28 排出口
29 受入口部(材料受入口部)

111 回転軸
112 羽根
113 シュート

131 ダンパ板
131a プレート部(水平なプレート部)
131b プレート部(垂直なプレート部)
131c プレート部(立壁状のプレート部)
132 駆動シフタ
133 レール
134 コロ(車輪)
135 固定板
136 境界板
137 掻き落し体

C コンベヤ
D 排出ダンパ
V バルブ
W 被処理物(材料)
図1
図2
図3
図4
図5
図6