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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094032
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ウィッグのヘアカット方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/00 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
A45D44/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206819
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】520492606
【氏名又は名称】株式会社willbesoin
(74)【代理人】
【識別番号】100126620
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 豪
(72)【発明者】
【氏名】舩田 皓
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ウィッグ表面の毛髪の劣化を防止するとともに、見映えをキープすることが可能なウィッグのヘアカット方法を提供する。
【解決手段】ウィッグの毛髪を束ねて構成された髪束Sを、下面SBにおける根元S1から毛先S4方向に第1の長さD1離れた第1カット開始位置S3から、下面から上面SFまでの長さよりも短い第2の長さD2離れかつ髪束の毛先方向に第3の長さD3離れた第1カット終了位置S5に至るまでカットする第1のカット方法と、ウィッグの毛髪を束ねて構成された髪束のうち毛先から第4の長さを除いた部分について、根元から毛先に向けてかつ上面から下面に向けて次第に毛髪の量が少なくなるようにカットする第2のカット方法と、を設ける。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィッグのベース部に植えられた複数本の毛髪を束ねて構成され、前記ベース部から離れる方向に引っ張った状態の髪束を、当該髪束の下面における根元から毛先方向に第1の長さ離れた第1カット開始位置から、前記髪束の上面方向に、下面から上面までの長さよりも短い第2の長さ離れ、かつ、前記髪束の毛先方向に第3の長さ離れた第1カット終了位置に至るまでカットする第1のカット方法と、
ウィッグのベース部に植えられた複数本の毛髪を束ねて構成され、前記ベース部から離れる方向に引っ張った状態の髪束のうち、当該髪束の毛先から第4の長さを除いた部分について、当該髪束の根元から毛先に向けて、かつ、当該髪束の上面から下面に向けて次第に毛髪の量が少なくなるようにカットする第2のカット方法と、を備えたことを特徴とするウィッグのカット方法。
【請求項2】
ウィッグのベース部に植えられた複数本の毛髪を束ねて構成され、前記ベース部から離れる方向に引っ張った状態の髪束を、当該髪束の下面における根元から毛先方向に第1の長さ離れた第1カット開始位置から、前記髪束の上面方向に、下面から上面までの長さよりも短い第2の長さ離れ、かつ、前記髪束の毛先方向に第3の長さ離れた第1カット終了位置に至るまでカットすることを特徴とするウィッグのカット方法。
【請求項3】
ウィッグのベース部に植えられた複数本の毛髪を束ねて構成され、前記ベース部から離れる方向に引っ張った状態の髪束のうち、当該髪束の毛先から第4の長さを除いた部分について、当該髪束の根元から毛先に向けて、かつ、当該髪束の上面から下面に向けて次第に毛髪の量が少なくなるようにカットすることを特徴とするウィッグのカット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッグのヘアカット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィッグ(かつら)としては、オーダーメイドで製造されるものが知られており、オーダーメイドで製造されたウィッグは、使用する者の好みや地毛の状態等に応じた毛髪の長さや髪型に仕上げられる。そのため、一般的には、このようなウィッグの毛髪(ウィッグに植えられた毛髪)自体をカットすることは少ないものの、ウィッグを着用した際の全体のバランスを調整する場合や多少のアレンジを加えたい場合には、ウィッグの毛髪をカットするケースがある。
【0003】
そして、ウィッグの毛髪をカットする場合には、植えられた毛髪の表面(上面)側をカットするという、従来の地毛(人間の頭皮から生えている毛髪、いわゆる人毛)のヘアカット方法が用いられることが一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-33896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ウィッグに植えられる毛髪には人工毛が用いられることが多く、人工毛は人毛に比べて劣化しやすい。特に、人工毛をカットした場合には、カットした断面からの劣化が進行しやすい。そのため、従来の地毛のヘアカット方法によりウィッグの毛髪の表面(上面)側をカットすると、ウィッグを着用した際に人目に触れる表面(上面)側が劣化してしまい、毛髪が痛んでいるような悪い見映えとなるおそれが生じていた。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情によりなされたものであり、ウィッグ表面(上面)の毛髪の劣化を防止するとともに、見映えをキープすることが可能なウィッグのヘアカット方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的と達成するために、本発明は次のように構成されている。
以下、本発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて説明する。なお、下記のカッコ内における符号及び記載は、本発明の構成に相当する発明の実施の形態における構成の符号及び名称を示したものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0008】
(1)本発明に係るウィッグ(フルウィッグW1、部分ウィッグW2)のカット方法は、ウィッグのベース部1に植えられた複数本の毛髪2を束ねて構成され、前記ベース部1から離れる方向に引っ張った状態の髪束Sを、当該髪束Sの下面SBにおける根元S1から毛先S4方向に第1の長さD1離れた第1カット開始位置S3から、前記髪束Sの上面SF方向に、下面SBから上面SFまでの長さよりも短い第2の長さD2離れ、かつ、前記髪束Sの毛先S4方向に第3の長さD3離れた第1カット終了位置S5に至るまでカットする第1のカット方法と、ウィッグのベース部1に植えられた複数本の毛髪2を束ねて構成され、前記ベース部1から離れる方向に引っ張った状態の髪束Sのうち、当該髪束Sの毛先S4から第4の長さD4を除いた部分について、当該髪束Sの根元S1から毛先S4に向けて、かつ、当該髪束Sの上面SFから下面SBに向けて次第に毛髪2の量が少なくなるようにカットする第2のカット方法と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、ウィッグの表面側(上面側)に位置する毛髪2についてはカットされないことから、ウィッグの表面側(上面側)に位置する毛髪2の劣化を防止することができるとともに、カットした断面がウィッグの表面側(上面側)に表出しないため、見映えをキープすることができる。
【0009】
(2)また、本発明に係るウィッグのカット方法は、ウィッグのベース部1に植えられた複数本の毛髪2を束ねて構成され、前記ベース部1から離れる方向に引っ張った状態の髪束Sを、当該髪束Sの下面SBにおける根元S1から毛先S4方向に第1の長さD1離れた第1カット開始位置S3から、前記髪束Sの上面SF方向に、下面SBから上面SFまでの長さよりも短い第2の長さD2離れ、かつ、前記髪束Sの毛先S4方向に第3の長さD3離れた第1カット終了位置S5に至るまでカットすることを特徴としてもよい。
(2)また、本発明に係るウィッグのカット方法は、ウィッグのベース部1に植えられた複数本の毛髪2を束ねて構成され、前記ベース部1から離れる方向に引っ張った状態の髪束Sのうち、当該髪束Sの毛先S4から第4の長さD4を除いた部分について、当該髪束Sの根元S1から毛先S4に向けて、かつ、当該髪束Sの上面SFから下面SBに向けて次第に毛髪2の量が少なくなるようにカットすることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウィッグ表面の毛髪の劣化を防止するとともに、見映えをキープすることが可能なウィッグのヘアカット方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係るフルウィッグ全体を示した斜視図である。
図2】本実施の形態に係る部分ウィッグ全体を示した斜視図である。
図3】本実施の形態に係る毛髪をカットするブロックの説明図であって、(A)はフルウィッグについての説明図、(B)は部分ウィッグについての説明図である。
図4】本実施の形態に係る毛髪をカットするブロックの説明図である。
図5】本実施の形態に係る第1カットの説明図であって、(A)は背面図であり、(B)は側面図である。
図6】本実施の形態に係る第1カットによるカット内容の模式図であり、(A)は側面図であり、(B)は(A)の拡大図である。
図7】本実施の形態に係る第1カットの説明図であって、(A)は第1カットで髪束をカットする際のハサミの動きを示した図であり、(B)は第1カットに用いるハサミの説明図である。
図8】本実施の形態に係る第1カットの説明図であって、(A)及び(B)はカット後の状態図である。
図9】本実施の形態に係る第2カットの説明図であって、(A)は背面図であり、(B)は側面図である。
図10】本実施の形態に係る第2カットによるカット内容の模式図である。
図11】本実施の形態に係る第2カットの説明図であって、(A)は髪束をカットする際のハサミの動きを示した図であり、(B)はカット後の髪束の状態を示す模式図であり、(C)は第2カットに用いるハサミの説明図である。
図12】本実施の形態に係る第2カットの説明図であって、(A)は髪束をカットする際のハサミの動きを示した図であり、(B)はカット後の髪束の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るウィッグのヘアカット方法について図1図13を参照しつつ説明する。
【0013】
(ウィッグの構成)
まずは、ウィッグについて説明する。本実施の形態に係るウィッグは、頭部全体(すなわち、前頭部、頭頂部、側頭部、後頭部の全て)を覆うようにして着用するタイプのウィッグW1(いわゆるフルウィッグ)である。
【0014】
フルウィッグW1は、図1図3(A)に示すように、主に、ベース部1と毛髪2とから構成されている。ベース部1は、例えば、シルクやナイロン等の材質からなるネット状の部材であって、フルウィッグW1を着用した際に頭部を覆うものである。また、本実施の形態におけるフルウィッグW1のベース部1は、着用した際に前頭部、頭頂部、側頭部及びこめかみの高さ位置よりも上側の後頭部を覆う第1ベース部1Aと、こめかみの高さ位置よりも下側の後頭部を覆う第2ベース部1Bとから構成されている。そして、フルウィッグW1を着用した際には、着用者の地毛が、網目を通してベース部1の表面(ベース部1における、頭部に接触する面と反対側の面。以下、同様)に突出可能となっている。また、ベース部1には、特に図示しないが、フルウィッグW1の取り付け位置を調節するための調節部等が設けられている。
【0015】
毛髪2は、例えば、化学繊維等により人工的に作られた多数の人工毛であって、ベース部1の表面に取り付けられている(植えられている)。なお、人工毛ではなく、人毛(天然毛)により構成してもよい。
【0016】
なお、後述するヘアカット方法を適用可能なウィッグの種類としては、フルウィッグW1に限定されるものではなく、図2に示すような頭部の一部分を覆うようにして着用するタイプの部分ウィッグW2(ピースウィッグともいう)であってもよい。部分ウィッグW2も、上述のフルウィッグW1と同様に、部分ウィッグW2を着用した際に頭部を覆うベース部3と複数の人工毛からなる毛髪4とから構成されている。
なお、本実施の形態における部分ウィッグW2のベース部3は、着用した際に前頭部、頭頂部、側頭部及びこめかみの高さ位置よりも上側の後頭部を覆うもの(すなわち、上述のフルウィッグW1の第1ベース部1Aに対応するもの)となっている(図3(B)参照)。
【0017】
(ウィッグのヘアカット方法)
ついで、ウィッグの毛髪をカットするヘアカット方法について説明する。
本実施の形態に係るウィッグのヘアカット方法は、主に、ウィッグの毛髪にボリューム感を出すための第1のカット方法(以下、第1カットともいう)、及び、主に、ウィッグの毛髪をウィッグ着用者の地毛となじませるための第2のカット方法(以下、第2カットともいう)からなる。
ここでは、フルウィッグW1の毛髪2を上述のカット方法によりカットする場合を例として説明するが、部分ウィッグW2の毛髪4をカットする場合にも、上述のカット方法を採用することができる。
なお、以下の説明では、フルウィッグW1を単にウィッグWというものとし、フルウィッグW1について付した符号を用いて説明を行う。また、必要に応じて、フルウィッグW1及び部分ウィッグW2のそれぞれについて説明を行う場合がある。
【0018】
第1カット及び第2カットでは、図3(A)及び(B)に示すように、概ねの目安として、ウィッグを複数のブロックに区分けし、ブロックごとにカットを行う。
【0019】
具体的には、フルウィッグW1をカットする場合には、図3(A)に示すように、フルウィッグW1を、上述の第1ベース部1Aに対応する上段部100、上述の第2ベース部1Bの上側半分に対応する中段部200、上述の第2ベース部1Bの下側半分に対応する下段部300の3段に区分けするとともに、図4に示すように、上段部100の全周を18個のブロックに区分けし、中段部200の右側部から左側部までを9個のブロックに区分けし、下段部300の右側部から左側部までを9個のブロックに区分けした上で、ブロックごとにカットを行う。すなわち、フルウィッグW1については、全36個のブロックそれぞれごとにカットを行う。
【0020】
また、部分ウィッグW2をカットする場合には、図3(B)に示すように、部分ウィッグW2のベース部3の全周を18個のブロックに区分けした上で、ブロックごとにカットを行う(図4参照)。すなわち、部分ウィッグW2については、全18個のブロックそれぞれごとにカットを行う。
【0021】
なお、カットを行うブロックの区分けの仕方は、上記の内容に限定されるものではなく、上下方向の区分け数(すなわち、段の数)、及び、周方向の区分け数は、フルウィッグW1や部分ウィッグW2の大きさ、形状等に応じて設定することができる。
【0022】
また、第1カット及び第2カットでは、カットを行うブロックにおいて、指で複数本の毛髪2を挟む(摘まむ)ことにより構成される髪束Sを形成しながら、この髪束Sに対してカットを行っていく。具体的には、カットを行うブロックの位置やカット手法(第1カット、第2カット)等に応じて、2本の指を横向きにした状態で毛髪2を挟むことにより構成される横幅のある髪束S(一般に横スライスと呼ばれる)、又は、2本の指を縦向きにした状態で毛髪2を挟むことにより構成される縦幅のある髪束S(一般に縦スライスと呼ばれる)を形成し、この髪束Sに対してカットを行う。なお、本実施の形態では、第1カットは上述の横スライスに対して行うのが望ましく、第2カットは上述の縦スライスに対して行うのが望ましいが、縦スライスに対して第1カットを行ってもよいし、横スライスに対して第2カットを行ってもよい。
【0023】
(第1カットの概要)
第1カットでは、対向する2つの刃が互いに他方へ向けて緩やかに湾曲した形状(すなわち、2つの刃が笹刃形状)となっており、かつ刃の長さが短いハサミH1を用いてカットを行う。なお、ハサミH1に限定されることなく、2つの刃が直刃形状のハサミ等、他のハサミを用いて第1カットを行ってもよい。
【0024】
また、第1カットでは、図4及び図6(A)に示すように、第1カットの対象とするブロック(ボリュームを出したいブロック)が、フルウィッグW1の上段部100のいずれか又は部分ウィッグW2のいずれかである場合には、着用した際に頭頂部に対応する部分の中心Cから2cm程の範囲L内の毛髪2を除いて、上側から下側に向かって4つの髪束Sを形成し、各髪束Sに対してカットを行う。すなわち、上記範囲L内の毛髪2に対しては第1カットを行わない。
また、第1カットの対象とするブロックが、フルウィッグW1の中段部200のいずれか又は下段部300のいずれかである場合には、上側から下側に向かって2つの髪束Sを形成し、各髪束Sに対してカットを行う。
なお、各ブロックにおいて形成する髪束Sの数は、上記の内容に限定されるものではなく、ブロックの大きさ等に応じて自由に設定することができる。
【0025】
そして、第1カットでは、後述するように、髪束Sに対して当該髪束Sの下面SB側からハサミH1を入れることから、髪束Sの下面SBに対してハサミH1を入れやすいようにするために、指で挟んだ髪束Sを斜め上方に引っ張り上げた状態とする(図6(B)等参照)。髪束Sを引っ張り上げる角度については、髪束Sの下面SBに対してハサミH1を入れやすくなっていれば特に限定されるものではないが、例えば、中段部200の髪束Sに関しては、ベース部1と直交する線に対して約15度程度斜め上方に引っ張り上げ(図6(B)参照)、上段部100の髪束Sに関しては、中段部200の髪束Sよりも引っ張り上げる角度を小さくし、下段部300の髪束に関しては、中段部200の髪束Sよりも引っ張り上げる角度を大きくすることができる。
【0026】
そして、図7(A)に示すように、引っ張り上げた状態の髪束Sの下面SBにおいて、髪束Sの根元S1から毛先S4方向に第1の長さD1離れた位置である第1カット開始位置S3の下方から刃先を頭部方向へ向けた状態でハサミH1を入れ、当該第1カット開始位置S3から髪束Sの上面SF方向に第2の長さD2離れ、かつ、髪束Sの毛先S4方向に第3の長さD3離れた位置である第1カット終了位置S5に至るまで、刃先を開閉させつつハサミH1を下方から上方へ突き上げるようにしながらスライドさせて、髪束Sをカットしていく。
また、このとき、ハサミH1の刃の開閉範囲を変更させながらカットを行うとともに、刃の向きを調節しながら、髪束SのカットラインCS1(切断面)が階段状となるようにカットを行う(図7(A)参照)。
【0027】
ここで、本実施の形態では、第1の長さD1をおよそ1cm~2cmとしている。すなわち、髪束Sの根元S1から毛先S4方向におよそ1cm~2cm離れた位置が第1カット開始位置S3となり、この位置の下方からハサミH1が入ることとなる(図7(A)参照)。
上記位置からカットされることにより、髪束Sのうち、根元S1から第1の長さD1までの範囲における毛髪2は、カットされることなくそのまま残ることとなる(図6(B)、図7(A)等参照)。
【0028】
また、本実施の形態では、第2の長さD2を、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWの約3/4の長さとしており、第3の長さD3を、第1カット開始位置S3から髪束Sの毛先S4までの長さSH1の約1/6の長さとしている(図6(B)参照)。具体的には、例えば、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWが約6cmであれば、第2の長さD2は約4.5cmとなり、第1カット開始位置S3から髪束Sの毛先S4までの長さSH1が約24cmであれば、第3の長さD3は約4cmとなる。
【0029】
上述のようにしたことで、第1カット開始位置S3から、髪束Sの上面SF方向に上記長さSWの約3/4離れ、かつ、髪束Sの毛先S4方向に上記長さSH1の約1/6離れた位置が第1カット終了位置S5となり、第1カット開始位置S3から第1カット終了位置S5までのカットラインCS1は、上面SF方向に進むに連れて次第に毛先S4方向に傾斜するようなラインとなる(図6(A)及び(B)、図7(A)等参照)。
これにより、髪束Sのうち、下面SBから上面SFまでの範囲における下面SBから約3/4の毛髪2がカットされ、当該範囲における上面SFから約1/4の毛髪2はカットされることなくそのまま残る(すなわち、毛先S4方向の長さは変わらずそのまま残る)こととなる(図6(B)、図7(A)等参照)。
また、髪束Sのうち、第1カット開始位置S3から第1カット終了位置S5までの範囲における上記カットラインCS1よりも毛先S4側の毛髪2がカットされ、上記カットラインCS1よりも根元S1側の毛髪2はカットされることなくそのまま残ることとなる(図6(A)及び(B)、図7(A)等参照)。
【0030】
また、本実施の形態では、第1カット開始位置S3から第1カット終了位置S5に向けて、刃の開閉範囲を次第に小さくしながらカットを行う。具体的には、カット開始時の第1カット開始位置S3の近傍においては、2つの刃を全開にした状態(以下、100%の開状態ともいう)から概ね半開にした状態(以下、50%の開状態ともいう)までの範囲でハサミH1を開閉してカットを行う(図7(A)、(B)(1)及び(B)(2)等参照)。また、第1カット開始位置S3から第1カット終了位置S5までの中間位置の近傍においては、50%の開状態から2つの刃を約1/4程度開いた状態(以下、25%の開状態ともいう)までの範囲でハサミH1を開閉してカットを行う(図7(A)、(B)(2)及び(B)(3)等参照)。また、第1カット終了位置S5の近傍においては、25%の開状態から2つの刃を閉じた状態(以下、0%の開状態ともいう)までの範囲でハサミH1を開閉してカットを行う(図7(A)及び(B)(2)等参照)。
【0031】
(第1カットによる作用効果)
上述のような第1カットにより髪束Sをカットすると、図8に示すように、カットされることなくそのまま残っている髪束Sの上面SFから約1/4の毛髪2(以下、毛髪A1ともいう)は、自重により、毛先S4方向に進むに連れて垂れ下がった状態となる。また、この髪束Sよりも上方に毛髪2があれば、この毛髪2(以下、毛髪A2ともいう)も、上記と同様に、毛先S4方向に進むに連れて垂れ下がった状態となる。
ここで、上記髪束Sのうち、カットラインCS1よりも根元S1側の毛髪2(以下、毛髪A3ともいう)はそのまま残っていることから、この毛髪A3が毛髪A1や毛髪A2を根元S1部分において支持する(押し上げる)状態となる。また、カットラインCS1は階段状となっていることから、段の角部が垂れ下がった毛髪A1や毛髪A2をより支持(押し上げる)こととなる。これにより、第1カットを行ったブロックにおいてボリューム感を出すことができる。
また、フルウィッグW1の表面側(上面側)に位置する毛髪A3についてはカットを行わないことから、フルウィッグW1の表面側(上面側)に位置する毛髪2の劣化を防止することができるとともに、ハサミH1によるカットした断面がフルウィッグW1の表面側(上面側)に表出しないため、見映えをキープすることができる。
【0032】
(第1カットの変形例)
なお、第1の長さD1については、およそ1cm~2cmに限定されるものではなく、毛髪2のボリューム感を出したい範囲等に応じて自由に決定することができる。
例えば、上述の実施の形態よりもボリューム感を出したい範囲を広くしたい場合には、第1の長さD1を上述の実施の形態の値よりも長く(例えば、およそ3cm~5cm等)し、ボリューム感を出したい範囲を狭くしたい場合には、第1の長さD1を上述の実施の形態の値よりも短く(例えば、およそ0.5cm~1cm等)してもよい。
【0033】
また、第2の長さD2についても、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWの約3/4の長さに限定されるものではなく、出したいボリューム感の量に応じて自由に決定することができる。
具体的には、毛髪A1(カットされることなくそのまま残っている髪束Sの上面SFから第2の長さD2の毛髪2)の量が多ければ自重が大きくなり、毛髪A3が毛髪A1や毛髪A2を押し上げにくくなるため、ボリューム感が出づらい。これに対して、毛髪A1の量が少なければ自重が小さくなり、毛髪A3が毛髪A1や毛髪A2を押し上げやすくなるため、ボリューム感が出やすい。したがって、例えば、出したいボリューム感の量を上述の実施の形態よりも多くしたい場合には、第2の長さD2を上述の実施の形態よりも長く(例えば、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWの約4/5の長さ等)してもよいし、出したいボリューム感の量を上述の実施の形態よりも少なくしたい場合には、第2の長さD2を上述の実施の形態よりも短く(例えば、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWの約2/3の長さ等)してもよい。
【0034】
また、第3の長さD3についても、第1カット開始位置S3から髪束Sの毛先S4までの長さSH1の約1/6の長さに限定されるものではなく、毛髪A2の垂れ下がり方(カット後のウィッグWのシルエット)の態様に応じて自由に決定することができる。
具体的には、カットラインCS1が髪束Sの根元S1から近ければ、毛髪A2が垂れ下がりやすくなりシャープなシルエットとなる。これに対して、カットラインCS1が髪束Sの根元S1から遠ければ、毛髪A2が垂れ下がりにくくなり丸いシルエットとなる。したがって、例えば、上述の実施の形態よりもシャープなシルエットとしたい場合には、第3の長さD3を上述の実施の形態よりも短く(例えば、第1カット開始位置S3から髪束Sの毛先S4までの長さSH1の約1/10の長さ等)してもよいし、上述の実施の形態よりも丸いシルエットとしたい場合には、第3の長さD3を上述の実施の形態よりも長く(例えば、第1カット開始位置S3から髪束Sの毛先S4までの長さSH1の約1/3の長さ等)してもよい。
【0035】
また、カットラインCS1は階段状となっていたが、これに限定されるものではなく、平坦にしてもよい。このようにしても、第1カットを行ったブロックにおいてボリューム感を出すことができる。
なお、上記変形例は矛盾の生じない範囲で互いに組み合わせてもよい。
【0036】
(第2カットの概要)
第2カットでは、対向する2つの刃の一方が直線形状(すなわち、直刃形状)であって、他方が複数のスリットを有する櫛刃形状となっており、スリットの数に応じた本数の毛髪2がカットされる(間引かれる)ハサミH2(いわゆるスキバサミ、セニング)を用いてカットを行う(図11(C)参照)。本実施の形態では、刃を入れた毛髪2のうち、50%の毛髪2がカットされる(例えば、10本の毛髪2に対して刃を入れた場合に5本の毛髪2がカットされる)ようにスリットが設けられているハサミH2を使用している。
なお、第2カットで使用するハサミは、50%の毛髪2がカットされるものに限定されず、例えば、25%の毛髪2がカットされるようなものや、75%の毛髪2がカットされるようなものとしてもよい。
【0037】
また、第2カットでは、特に図示していないが、第2カットの対象とするブロック(ウィッグの毛髪をウィッグ着用者の地毛となじませたいブロック)が、フルウィッグW1の上段部100のいずれか又は部分ウィッグW2のいずれかである場合には、着用した際に頭頂部に対応する部分の中心Cから2cm程の範囲L内の毛髪2を除いて1の髪束Sを形成し、当該髪束Sに対してカットを行う。すなわち、上記範囲L内の毛髪2に対しては第2カットを行わない。
また、第2カットの対象とするブロックが、フルウィッグW1の中段部200のいずれか又は下段部300のいずれかである場合には、特に所定の範囲の毛髪2を除くことなく1の髪束Sを形成し、当該髪束Sに対してカットを行う。
なお、各ブロックにおいて形成する髪束Sの数は、上記の内容に限定されるものではなく、ブロックの大きさ等に応じて自由に設定することができる。
【0038】
そして、第2カットでは、後述するように、髪束Sに対して当該髪束Sの下面SB側からハサミH1を入れることから、髪束Sの下面SBに対してハサミH1を入れやすいようにするために、指で挟んだ髪束Sを引っ張った状態とする(図10等参照)。具体的には、ベース部1と直交するように髪束Sを引っ張る。なお、第1カットと同様に、髪束Sは、カットするブロックに応じた角度だけ斜め上方に引っ張り上げるようにしてもよい。
【0039】
そして、図10図11(A)に示すように、第2カットでは、引っ張った状態の髪束Sの下面SBにおいて複数の第2カット開始位置(第2-1カット開始位置S8、第2-2カット開始位置S11、第2-3カット開始位置S14)を定め、各第2カット開始位置の下方から、下面SBと刃とのなす角度(以下、入刃角度ともいう)が所定の大きさとなるように刃先をベース部1方向に向けた状態で、刃の開いたハサミH2を入れ、カットラインの終端が各第2カット開始位置に対応する第2カット終了位置(第2-1カット終了位置S9、第2-2カット終了位置S12、第2-3カット終了位置S15)に至るまで刃を閉じていくことで、髪束Sをカットする。
このように、本実施の形態における第2カットでは、髪束Sの複数の箇所においてカットが行われるため、複数のカットラインが形成されることとなる(図11(A)及び(B)参照)。
また、第2カットでは、各第2カット開始位置においてハサミH2を入れた角度を変えることなく、対応する第2カット終了位置まで刃を閉じていくようにすることで、各第2カット開始位置から対応する第2カット終了位置までのカットライン(カットラインCS2、カットラインCS3、カットラインCS4)が平坦となるようにカットを行う(図11(A)及び(B)等参照)。
【0040】
ここで、本実施の形態では、第2カット開始位置として、第2-1カット開始位置S8、第2-2カット開始位置S11、第2-3カット開始位置S14の計3か所を定めている。
また、髪束Sにおける根元S1から毛先S4までのうち、毛先S4から第4の長さD4の毛髪2を除いた部分の長さSH2をおよそ三等分した位置を、根元S1に近い方からそれぞれ、第2-1カット開始位置S8、第2-2カット開始位置S11、第2-3カット開始位置S14と定めており(図10図11(A)等参照)、根元S1に近い第2カット開始位置から順に(すなわち、第2-1カット開始位置S8→第2-2カット開始位置S11→第2-3カット開始位置S14という順に)上記カットを行う。
【0041】
また、本実施の形態では、第4の長さD4をおよそ1cm~2cmとしている。例えば、髪束Sにおける根元S1から毛先S4までの長さがおよそ20cmであった場合には、髪束Sの根元S1からおよそ6cm離れた位置が第2-1カット開始位置S8となり、髪束Sの根元S1からおよそ12cm離れた位置(第2-1カット開始位置S8からおよそ6cm離れた位置)が第2-2カット開始位置S11となり、髪束Sの根元S1からおよそ18cm離れた位置(第2-2カット開始位置S11からおよそ6cm離れた位置)が第2-3カット開始位置S14となり、各第2カット開始位置の下方から、刃を開いた状態のハサミH2が入ることとなる(図11(A)等参照)。
そして、このようにすることで、第2カットでは、髪束Sにおける毛先S4から第4の長さD4までの範囲においてはハサミH2が入らない。すなわち、この範囲においてはハサミH2の刃による切断面が生じない。
【0042】
また、本実施の形態では、最初にカットを行う第2-1カット開始位置S8では、入刃角度R1をおよそ60度としているとともに、第2-1カット開始位置S8から上記入刃角度R1でカットを進めていった際に形成されるカットラインCS2の終端が所定の高さ位置となる位置を第2-1カット終了位置S9としている(図11(A)参照)。具体的には、上記カットラインCS2の終端の高さ位置が、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWのおよそ3/4の長さとなる位置を第2-1カット終了位置S9としている。
例えば、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWがおよそ6cmであれば、第2-1カット開始位置S8からベース部1方向へ向けて斜め上方およそ60度の入刃角度R1で進んでいき、第2-1カット開始位置S8からの高さ方向の長さが約4.5cmとなった位置が第2-1カット終了位置S9となる(図11(A)等参照)。
そして、上記第2-1カット開始位置S8から第2-1カット終了位置S9まで、上記入刃角度R1(およそ60度)でカットすることにより、髪束Sのうち、第2-1カット終了位置S9の高さ位置よりも上側の毛髪2(以下、毛髪B1ともいう)、及び、ベース部1方向に向けておよそ60度の角度で傾斜するカットラインCS2よりも根元S1側の毛髪2(以下、毛髪B2ともいう)は、カットされることなくそのまま残ることとなる(図11(B)等参照)。
また、上述のように、ハサミH2でカットを行うと、刃を入れた毛髪2の50%がカットされる(間引かれる)ことから、カットラインCS2よりも毛先S4側の毛髪2(以下、毛髪B3ともいう)の量は、このカットを行う前の50%となる。
【0043】
また、本実施の形態では、2番目にカットを行う第2-2カット開始位置S11では、入刃角度R2をおよそ45度としているとともに、第2-2カット開始位置S11から上記入刃角度R2でカットを進めていった際に形成されるカットラインCS3の終端が所定の高さ位置となる位置を第2-2カット終了位置S12としている(図11(A)参照)。具体的には、上記カットラインCS3の終端の高さ位置が、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWのおよそ5/8の長さとなる位置を第2-2カット終了位置S12としている。
例えば、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWがおよそ6cmであれば、第2-2カット開始位置S11からベース部1方向へ向けて斜め上方およそ45度の入刃角度R2で進んでいき、第2-2カット開始位置S11からの高さ方向の長さが約3.75cmとなった位置が第2-2カット終了位置S12となる(図11(A)等参照)。
そして、上記第2-2カット開始位置S11から第2-2カット終了位置S12まで、上記入刃角度R2(およそ45度)でカットすることにより、髪束Sのうち、第2-2カット終了位置S12の高さ位置よりも上側の毛髪2、及び、ベース部1方向に向けておよそ45度の角度で傾斜するカットラインCS3よりも根元S1側の毛髪2は、カットされることなくそのまま残ることとなる(図11(B)等参照)。すなわち、毛髪B1、毛髪B2、毛髪B3のうち第2-2カット終了位置S12の高さ位置よりも上側の毛髪2(以下、毛髪B3-1ともいう)、及び、毛髪B3のうちカットラインCS3よりも根元S1側の毛髪2(以下、毛髪B3-2ともいう)は、カットされることなくそのまま残る。
また、毛髪B3のうちカットラインCS3よりも毛先S4側の毛髪2(以下、毛髪B4ともいう)の量は、このカットを行う前の50%となる。すなわち、毛髪B4は、最初の第2-1カット開始位置S8におけるカットを行う前の25%となる。
【0044】
また、本実施の形態では、最後にカットを行う第2-3カット開始位置S14では、入刃角度R3をおよそ30度としているとともに、第2-3カット開始位置S14から上記入刃角度R3でカットを進めていった際に形成されるカットラインCS4の終端が所定の高さ位置となる位置を第2-3カット終了位置S15としている(図11(A)参照)。具体的には、上記カットラインCS4の終端の高さ位置が、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWのおよそ1/2の長さとなる位置を第2-3カット終了位置S15としている。
例えば、髪束Sの下面SBから上面SFまでの長さSWがおよそ6cmであれば、第2-3カット開始位置S14からベース部1方向へ向けて斜め上方およそ30度の入刃角度R3で進んでいき、第2-3カット開始位置S14からの高さ方向の長さがおよそ3cmとなった位置が第2-3カット終了位置S15となる(図11(A)等参照)。
そして、上記第2-3カット開始位置S14から第2-3カット終了位置S15まで、上記入刃角度R3(およそ30度)でカットすることにより、髪束Sのうち、第2-3カット終了位置S15の高さ位置よりも上側の毛髪2、及び、ベース部1方向に向けておよそ30度の角度で傾斜するカットラインCS4よりも根元S1側の毛髪2は、カットされることなくそのまま残ることとなる(図11(B)等参照)。すなわち、毛髪B1、毛髪B2、毛髪B3-1、毛髪B3-2、毛髪B4のうち第2-3カット終了位置S15の高さ位置よりも上側の毛髪2(以下、毛髪B4-1ともいう)、及び、毛髪B4のうちカットラインCS4よりも根元S1側の毛髪2(以下、毛髪B4-2ともいう)は、カットされることなくそのまま残る。
また、毛髪B4のうちカットラインCS4よりも毛先S4側の毛髪2(以下、毛髪B5ともいう)の量は、このカットを行う前の50%となる。すなわち、毛髪B5は、2番目の第2-2カット開始位置S11におけるカットを行う前の25%、最初の第2-1カット開始位置S8におけるカットを行う前の12.5%となる。
【0045】
(第2カットによる作用効果)
上述のような第2カットによれば、根元S1から毛先S4へ向かうに連れて、各第2カット終了位置(第2-1カット終了位置S9、第2-2カット終了位置S12、第2-3カット終了位置S15)の高さ位置が次第に低くなるとともに、各カットライン(カットラインSC2、カットラインSC3、カットラインSC4)の傾斜が次第に緩やかになる。
そして、上述のような第2カットにより髪束Sをカットすると、図11(B)及び図13に示すように、髪束Sの根元S1から毛先S4方向へ進むに連れて、かつ、髪束Sの上面SFから下面SB方向へ進むに連れて、次第に毛髪2の量が少なくなる。これにより第2カットによりカットされた髪束Sは、根元S1から毛先S4方向へ進むに連れて、髪束Sのうち相対的に上側に位置する毛髪2が、その重さにより、髪束Sのうち相対的に下側に位置する毛髪2を押し下げることとなる。すると、フルウィッグW1を着用した際に網目を通してベース部1の表面に突出した地毛と、上述のように押し下げられた毛髪2とが互いに接触しやすくなり、毛先S4側においてはウィッグ着用者の地毛とフルウィッグW1の毛髪2とが混在した状態、すなわち、ウィッグ着用者の地毛とフルウィッグW1の毛髪2とがなじんだ状態となる。
これにより、第2カットを行ったブロックにおいては、フルウィッグW1の毛髪2がウィッグ着用者の地毛と離れ、浮いたような不自然な状態となるのを防止することができ、自然な見映えとすることができる。
また、髪束Sの毛先S4から第4の長さD4までの範囲においてはハサミH2の刃による切断面が生じないことから、フルウィッグW1の毛髪2の毛先の劣化を防止することができる。さらに、フルウィッグW1の表面側(上面側)に位置する毛髪B1についてはカットを行わないことから、フルウィッグW1の表面側(上面側)に位置する毛髪2の劣化を防止することができるとともに、ハサミH2によるカットした断面がフルウィッグW1の表面側(上面側)に表出しないため、上述のような自然な見映えをキープすることができる。
【0046】
(第2カットの変形例)
なお、第4の長さD4については、およそ1cm~2cmに限定されるものではなく、地毛と毛髪2とをなじませたい範囲等に応じて自由に決定することができる。
例えば、毛先S4近傍において地毛と毛髪2とをなじませたい範囲を上述の実施の形態よりも広くしたい場合には、第4の長さD4を上述の実施の形態よりも長く(例えば、およそ3cm~4cm等)し、なじませたい範囲を上述の実施の形態よりも狭くしたい場合には、第4の長さD4を上述の実施の形態よりも短く(例えば、およそ0.5cm~1cm等)してもよい。
【0047】
また、第2カットにおいてカットを行う箇所については、第2-1カット開始位置S8、第2-2カット開始位置S11、第2-3カット開始位置S14の3か所に限定されるものではなく、カット後のスタイル等に応じて自由に決定することができる。
例えば、髪束Sの根元S1に最も近い第2-1カット開始位置S8からのカットを行わず、第2-2カット開始位置S11及び第2-3カット開始位置S14からのカットのみを行った場合には、毛髪B2(髪束Sの根元S1側においてカットされずにそのまま残る毛髪2)の量が多くなるため、カット後はフルウィッグW1の毛髪2が浮き上がりにくく重い印象を与えるスタイルとなる。
そして、例えば、前髪(すなわち、前頭部側の毛髪2)については、浮き上がってしまうと額が露出しやすくなるため、重い印象を与えるスタイルとすることが望まれる場合がある。したがって、重い印象を与えるスタイルとしたい場合には、第2-2カット開始位置S11及び第2-3カット開始位置S14の計2か所からのカットのみを行うようにしてもよい(図12(A)及び(B)等参照)。
【0048】
また、第2-1カット開始位置S8、第2-2カット開始位置S11、第2-3カット開始位置S14の計3か所のみならず、4か所以上においてカットを行ってもよいし、1か所においてのみカットを行ってもよい。カットする箇所が多くなると、毛先S4方向に向かうに連れてより毛髪2の量が変化しやすくなり、毛先S4側の毛髪2が地毛となじみやすくなる。これに対して、カットする箇所が少なくなると、毛髪2の量が変化しにくくなり、毛先S4側の毛髪2が地毛となじみにくくなる。
【0049】
また、本実施の形態では、隣り合う第2カット開始位置の間隔がほぼ等しくなるように、各第2カット開始位置が設けられていたが、これに限定されるものではなく、隣り合う第2カット開始位置の間隔は異なるようにしてもよい。
例えば、毛先S4方向に向かうに連れて、隣り合う第2カット開始位置の間隔が次第に長くなるようにしてもよい。より具体的には、本実施の形態のように、第2-1カット開始位置S8、第2-2カット開始位置S11、第2-3カット開始位置S14の計3か所の第2カット開始位置を定めた場合には、第2-1カット開始位置S8と第2-2カット開始位置S11との間隔よりも、第2-2カット開始位置S11と第2-3カット開始位置S14との間隔の方が長くなるようにしてもよい。このようにしたときには、毛先S4側の毛髪2が押し下げられやすくなり、毛髪2が地毛となじみやすくなる。
【0050】
また、例えば、毛先S4方向に向かうに連れて、隣り合う第2カット開始位置の間隔が次第に短くなるようにしてもよい。より具体的には、本実施の形態のように、第2-1カット開始位置S8、第2-2カット開始位置S11、第2-3カット開始位置S14の計3か所の第2カット開始位置を定めた場合には、第2-1カット開始位置S8と第2-2カット開始位置S11との間隔よりも、第2-2カット開始位置S11と第2-3カット開始位置S14との間隔の方が短くなるようにしてもよい。このようにした場合には、毛先S4側の毛髪2が押し下げられにくくなり、毛髪2が地毛となじみにくくなる。
【0051】
また、各第2カット終了位置の高さ位置についても、上記内容に限定されるものではない。
例えば、本実施の形態における各第2カット終了位置の高さ位置よりも高くなるようにしてもよい。このようにした場合には、カットされないでそのまま残る毛髪B1等、髪束Sの上部の髪の量が少なくなるため、毛髪2が地毛となじみにくくはなるものの、全体的に軽い印象を与えるスタイルとすることができる。
また、本実施の形態における各第2カット終了位置の高さ位置よりも低くなるようにしてもよい。このようにした場合には、カットされないでそのまま残る毛髪B1等、髪束Sの上部の髪の量が多くなるため、より毛髪2が地毛となじみやすくすることができる。
【0052】
また、各第2カット開始位置における入刃角度についても、上記内容に限定されるものではない。
例えば、本実施の形態の各第2カット開始位置における入刃角度よりも大きくなるようにしてもよい。このようにした場合には、各カットラインの傾斜が急になるため、シャープなシルエットとすることができる。
また、本実施の形態の各第2カット開始位置における入刃角度よりも小さくなるようにしてもよい。このようにした場合には、各カットラインの傾斜がより緩やかになるため、丸いシルエットとすることができる。
なお、上記変形例は矛盾の生じない範囲で互いに組み合わせてもよい。
【0053】
また、本発明を上述の実施の形態で説明したが、これに限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得る範囲内において、変形、変更、及び各構成要件の組み合わせの変更などを行なうことが可能である。
【符号の説明】
【0054】
W1 フルウィッグ
W2 部分ウィッグ
S 髪束
図1
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図4
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図6
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図12