(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094079
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】画像投影システムおよび画像投影方法
(51)【国際特許分類】
B60K 35/00 20060101AFI20220617BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20220617BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60J1/02 M
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206894
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】特許業務法人プロウィン特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】津田 俊明
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA34
2H199DA36
2H199DA43
2H199DA46
3D344AA21
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】様々な走行状況においても、背景と重ね合わせて投影される虚像の視認性を確保することが可能な画像投影システムおよび画像投影方法を提供する。
【解決手段】透光性の部材で構成された透過反射部と、透過反射部の内側面に対して画像情報を含んだ光を照射して表示画像を投影する画像投影部(10)と、透過反射部よりも外部の状況を外部画像として撮像する外部状況撮像部(50)と、外部画像における表示画像が投影される表示領域を特定する表示領域特定部(61)と、表示領域を含んだ判定領域を設定し、外部画像における判定領域内の画像を認識して分析する画像判定部(62)と、画像判定部の分析結果に基づいて画像情報を調整する画像調整部(63)を備える画像投影システム。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の部材で構成された透過反射部と、
前記透過反射部の内側面に対して画像情報を含んだ光を照射して表示画像を投影する画像投影部と、
前記透過反射部よりも外部の状況を外部画像として撮像する外部状況撮像部と、
前記外部画像における前記表示画像が投影される表示領域を特定する表示領域特定部と、
前記表示領域を含んだ判定領域を設定し、前記外部画像における前記判定領域内の画像を認識して分析する画像判定部と、
前記画像判定部の分析結果に基づいて前記画像情報を調整する画像調整部を備えることを特徴とする画像投影システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影システムであって、
前記表示領域および前記判定領域を複数備えることを特徴とする画像投影システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像投影システムであって、
前記画像判定部は、前記判定領域内の輝度情報を取得し、
前記画像調整部は、前記輝度情報に基づいて前記画像情報の輝度を調整することを特徴とする画像投影システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の画像投影システムであって、
前記画像判定部は、前記判定領域内の色調情報を取得し、
前記画像調整部は、前記色調情報に基づいて前記画像情報の色調を調整することを特徴とする画像投影システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の画像投影システムであって、
前記画像判定部は、判定期間内における前記判定領域内の複数の画像を分析することを特徴とする画像投影システム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像投影システムであって、
前記画像判定部は、前記画像情報に基づいて前記判定期間を設定することを特徴とする画像投影システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の画像投影システムであって、
外部の状況を状況情報として取得する状況取得部を備え、
前記画像判定部は、前記状況情報に基づいて前記判定期間を設定することを特徴とする画像投影システム。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載の画像投影システムであって、
前記外部状況撮像部は、可視光により可視光画像を撮像する可視光撮像部と、赤外光により赤外光画像を撮像する赤外光撮像部を備え、
前記外部画像は、前記可視光画像および前記赤外光画像を含むことを特徴とする画像投影システム。
【請求項9】
請求項8に記載の画像投影システムであって、
前記赤外光撮像部は、前記赤外光をパルス状に照射する赤外パルス光源を備え、
前記赤外パルス光源の発光終了から第1遅延時間が経過した後に、前記赤外光画像を撮像することを特徴とする画像投影システム。
【請求項10】
請求項9に記載の画像投影システムであって、
前記赤外光画像の撮像終了から第2遅延時間が経過した後に、前記可視光画像を撮像することを特徴とする画像投影システム。
【請求項11】
請求項8から10の何れか一つに記載の画像投影システムであって、
前記画像調整部は、前記赤外光画像の少なくとも一部を前記画像情報に重ね合わせることを特徴とする画像投影システム。
【請求項12】
請求項11に記載の画像投影システムであって、
前記画像判定部は、前記可視光画像と前記赤外光画像の差分に基づいて特徴領域を抽出し、前記画像調整部は前記特徴領域を前記画像情報に重ね合わせることを特徴とする画像投影システム。
【請求項13】
請求項8から12の何れか一つに記載の画像投影システムであって、
前記赤外光撮像部と前記可視光撮像部は、1つの画像センサー中に、可視光用サブピクセルと赤外光用サブピクセルを混在させて構成されることを特徴とする画像投影システム。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一つに記載の画像投影システムであって、
前記透過反射部は、車両のウィンドシールドであることを特徴とする画像投影システム。
【請求項15】
透光性の部材で構成された透過反射部の内側面に対して画像情報を含んだ光を照射して表示画像を投影する画像投影工程と、
前記透過反射部よりも外部の状況を外部画像として撮像する外部状況撮像工程と、
前記外部画像における前記表示画像が投影される表示領域を特定する表示領域特定工程と、
前記表示領域を含んだ判定領域を設定し、前記外部画像における前記判定領域内の画像を認識して分析する画像判定工程と、
前記画像判定工程の分析結果に基づいて前記画像情報を調整する画像調整工程を備えることを特徴とする画像投影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影システムおよび画像投影方法に関し、特に車両内の運転者等に対して画像を表示する画像投影システムおよび画像投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の操舵や加減速などの運転操作の一部または全部をコンピュータが担う運転支援技術や自動運転技術の開発が進んでいる。また、車両の運転操作を人間が行う手動運転においても、車両に各種センサーや通信装置を複数搭載して車両の状態や周辺状況の情報を入手して、走行時の安全性や快適性を高める走行支援技術も開発されている。
【0003】
このような運転支援技術、自動運転技術または走行支援技術においては、車両の状態や周辺状況、コンピュータの運転操作状況など、得られた各種情報を運転者に計器類や表示装置を用いて提示している。従来から、各種情報を提示するためには車両内の計器類や表示装置に文字や画像を表示することが一般的であった。
【0004】
しかし、車両に備えられた計器類や表示装置で情報を提示すると、運転者が視線を走行方向前方から逸して計器類や表示装置を見る必要があるため好ましくない。そこで、車両の前方からの視線移動を小さくしながらも画像情報を提示するために、車両のウィンドシールドに画像を投影して、反射した光を視認させるHUD(Head Up Display)装置が提案されている(例えば特許文献1を参照)。
【0005】
従来のHUD装置では、画像投影部からウィンドシールド等の透明な部材を介して投影された虚像を視認し、実空間の背景と虚像が重ね合わされる。これにより運転者は、車両外部の実空間における対象物を視認しながらも、画像投影部から投影された各種情報(虚像)を同一の視野範囲内で視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のHUD装置では、背景と重ねて投影される虚像の視認性を確保するために、車両外部の明るさを光センサー等で測定し、外界の明るさに応じて画像投影部から照射する光の強度を制御している。これにより、虚像を投影する光の輝度を日中の明るい環境では高め、夜間の暗い環境では低下させることで、背景と虚像のコントラストを適切な範囲にコントロールしている。
【0008】
しかし、上述した従来のHUD装置では、路面上の明暗が切り替わる環境などにおいて、車両周囲と背景の明るさが必ずしも一致せず、視認性の低下が生じる可能性があった。例えば、日中走行において車両が暗いトンネル内を走行してトンネル出口に差し掛かる場合や、夜間走行において先行車両の後部を前照灯で照らしている場合、夜間の雨天走行中に対向車両の前照灯からの光が路面で反射する場合などには、車両周囲が暗いため画像投影部からの光強度が低下し、明るい背景と重ね合わされることで視認性を良好に保てなくなる。
【0009】
また、車両周囲と背景の明るさの差が小さい場合であっても、車両の走行状態によっては虚像を投影する光が背景との対比において目立たず、虚像の視認性が低下する可能性があった。例えば、雪道を走行している場合や、紅葉時期の落葉が路面に散在している場合、新緑の季節に山道を走行している場合、海岸沿いを走行している場合、濃霧中を走行している場合などには、虚像を重ねる領域や視界に入る背景の色調と類似した光での投影では、視認性を良好に保てなくなる。
【0010】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、様々な走行状況においても、背景と重ね合わせて投影される虚像の視認性を確保することが可能な画像投影システムおよび画像投影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影システムは、透光性の部材で構成された透過反射部と、前記透過反射部の内側面に対して画像情報を含んだ光を照射して表示画像を投影する画像投影部と、前記透過反射部よりも外部の状況を外部画像として撮像する外部状況撮像部と、前記外部画像における前記表示画像が投影される表示領域を特定する表示領域特定部と、前記表示領域を含んだ判定領域を設定し、前記外部画像における前記判定領域内の画像を認識して分析する画像判定部と、前記画像判定部の分析結果に基づいて前記画像情報を調整する画像調整部を備えることを特徴とする。
【0012】
このような本発明の画像投影システムでは、外部状況撮像部で外部画像を撮像し、判定領域内の画像を分析した結果に基づいて、表示画像を調整して画像投影部から投影するので、様々な走行状況においても、背景と重ね合わせて投影される虚像の視認性を確保することが可能となる。
【0013】
また本発明の一態様では、前記表示領域および前記判定領域を複数備える。
【0014】
また本発明の一態様では、前記画像判定部は、前記判定領域内の輝度情報を取得し、前記画像調整部は、前記輝度情報に基づいて前記画像情報の輝度を調整する。
【0015】
また本発明の一態様では、前記画像判定部は、前記判定領域内の色調情報を取得し、前記画像調整部は、前記色調情報に基づいて前記画像情報の色調を調整する。
【0016】
また本発明の一態様では、前記画像判定部は、判定期間内における前記判定領域内の複数の画像を分析する。
【0017】
また本発明の一態様では、前記画像判定部は、前記画像情報に基づいて前記判定期間を設定する。
【0018】
また本発明の一態様では、外部の状況を状況情報として取得する状況取得部を備え、前記画像判定部は、前記状況情報に基づいて前記判定期間を設定する。
【0019】
また本発明の一態様では、前記外部状況撮像部は、可視光により可視光画像を撮像する可視光撮像部と、赤外光により赤外光画像を撮像する赤外光撮像部を備え、前記外部画像は、前記可視光画像および前記赤外光画像を含む。
【0020】
また本発明の一態様では、前記赤外光撮像部は、前記赤外光をパルス状に照射する赤外パルス光源を備え、前記赤外パルス光源の発光終了から第1遅延時間が経過した後に、前記赤外光画像を撮像する。
【0021】
また本発明の一態様では、前記赤外光画像の撮像終了から第2遅延時間が経過した後に、前記可視光画像を撮像する。
【0022】
また本発明の一態様では、前記画像調整部は、前記赤外光画像の少なくとも一部を前記画像情報に重ね合わせる。
【0023】
また本発明の一態様では、前記画像判定部は、前記可視光画像と前記赤外光画像の差分に基づいて特徴領域を抽出し、前記画像調整部は前記特徴領域を前記画像情報に重ね合わせる。
【0024】
また本発明の一態様では、前記赤外光撮像部と前記可視光撮像部は、1つの画像センサー中に、可視光用サブピクセルと赤外光用サブピクセルを混在させて構成される。
【0025】
また本発明の一態様では、前記透過反射部は、車両のウィンドシールドである。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の画像投影方法は、透光性の部材で構成された透過反射部の内側面に対して画像情報を含んだ光を照射して表示画像を投影する画像投影工程と、前記透過反射部よりも外部の状況を外部画像として撮像する外部状況撮像工程と、前記外部画像における前記表示画像が投影される表示領域を特定する表示領域特定工程と、前記表示領域を含んだ判定領域を設定し、前記外部画像における前記判定領域内の画像を認識して分析する画像判定工程と、前記画像判定工程の分析結果に基づいて前記画像情報を調整する画像調整工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、様々な走行状況においても、背景と重ね合わせて投影される虚像の視認性を確保することが可能な画像投影システムおよび画像投影方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影システムの構成を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態に係る画像投影システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る画像投影システムにおいて外部状況撮像部50が撮像した外部画像と表示領域の関係を示す模式図である。
【
図4】第1実施形態に係る画像投影方法の手順について説明するフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る画像投影システムにおける判定領域と表示領域の関係を示す模式図であり、
図5(a)は判定領域52内に設けた複数の表示領域53a~53cを示し、
図5(b)は表示領域53a~53cに対応したサブ判定領域54a~54cを示している。
【
図6】第4実施形態に係る画像投影システムの構成を示す模式図である。
【
図7】第4実施形態に係る画像投影システムの構成を示すブロック図である。
【
図8】第4実施形態に係る画像投影システムにおける判定領域と表示領域の関係を示す模式図であり、
図8(a)は可視光画像における判定領域52aを示し、
図8(b)は赤外光画像における判定領域52bを示し、
図8(c)は可視光画像と赤外光画像の比較画像52cを示し、
図8(d)は背景と虚像40を重ね合わせた搭乗者eの視点画像52dを示している。
【
図9】第4実施形態に係る画像投影方法の手順について説明するフローチャートである。
【
図10】第4実施形態におけるパルス発光と撮像について説明するタイミングチャートであり、
図10(a)は赤外パルス光源50cの発光タイミングを示し、
図10(b)は赤外光撮像部50bの撮像タイミングを示し、
図10(c)は可視光撮像部50aの撮像タイミングを示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影システムの構成を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係る画像投影システムの構成を示すブロック図である。
【0030】
図1,2に示すように本実施形態の画像投影システムでは、画像投影部10と、投影光学部20と、透過反射部30と、外部状況撮像部50と、情報処理部60を備えて、虚像40を投影して空間上に結像する。また情報処理部60は、画像投影部10および外部状況撮像部50との間で情報通信可能に接続されている。
【0031】
画像投影部10は、情報処理部60から画像情報を含んだ信号が供給されることで画像情報を含んだ光を照射して、所定位置に虚像40を結像する装置である。画像投影部10から照射された光は、投影光学部20に入射する。画像投影部10としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、マイクロLED表示装置、レーザ光源を用いたプロジェクター装置等が挙げられる。
【0032】
投影光学部20は、所定の焦点距離だけ離れた位置に焦点を有する光学部材である。画像投影部10から照射された光は、投影光学部20で反射されて透過反射部30に到達する。
図1では、投影光学部20として平面反射鏡と凹面ミラーを用い、画像投影部10からの光を透過反射部30に反射する例を示しているが、投影光学部20として透過型レンズを用いるとしてもよい。また
図1では、画像投影部10から照射された光が平面反射鏡と凹面ミラーの投影光学部20に直接到達する例を示しているが、さらに多くの平面反射鏡等や複数の凹面鏡を用いて反射光を投影光学部20に到達させるとしてもよい。
【0033】
透過反射部30は、外部からの光を透過するとともに、搭乗者eの方向に投影光学部20から到達した光を反射する部材である。画像投影システムを車両用情報表示装置に用いる場合には、車両のウィンドシールドを透過反射部30として用いることができる。ウィンドシールドとは別にコンバイナーを用意して、コンバイナーを透過反射部30として用いてもよい。また、ヘルメットのシールドや、ゴーグルや眼鏡を透過反射部30として用いてもよい。
【0034】
虚像40は、透過反射部30で反射された光が搭乗者eに到達した際に、空間中に結像されたように視認される空中立体像である。虚像40が結像される位置は、画像投影部10から照射された光が、投影光学部20と透過反射部30で反射された後に搭乗者e方向に進行する際の拡がり角度によって決まる。
【0035】
外部状況撮像部50は、透過反射部30を介して搭乗者eの反対側(外部)の状況を外部画像として撮像する装置である。外部状況撮像部50の構成は限定されず、CCD(Charge Coupled Device)センサーやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等の公知の撮像装置を用いることができる。外部状況撮像部50が撮像する外部画像としては、輝度や色を判別できる程度に詳細な諧調表現が可能なカラー画像であることが好ましい。
【0036】
外部状況撮像部50が撮像する方向は、搭乗者eが透過反射部30越しに視認する外部方向であり、例えば車両の進行方向(前方)である。また、外部状況撮像部50が搭載される位置としては、車両の前面や車室内などが挙げられるが、搭乗者eの視線方向に近い撮像範囲で撮像することが好ましく、搭乗者eの頭上や透過反射部30の上部近傍、車両のダッシュボード上などが好ましい。また、外部状況撮像部50は、情報処理部60との間で情報通信を行う情報通信手段を備えており、撮像した外部画像の情報を情報処理部60に伝達する。
【0037】
図1に示したように、本実施形態の画像投影システムでは、画像投影部10から投影光学部20に向けて画像情報を含んだ光を照射する。画像投影部10から出射した光は、投影光学部20および透過反射部30の内側面で反射され、搭乗者eの目に入射する。このとき、透過反射部30から反射した光が搭乗者eに向かって拡がることで、搭乗者eは透過反射部30より遠い位置に虚像40が結像されているように視認する。また搭乗者eは、視線の延長上にある背景についても虚像40が重ね合わされた状態で視認する。同時に、外部状況撮像部50は透過反射部30の外部を外部画像として撮像し、情報処理部60に外部画像のデータを送信する。また、後述するように情報処理部60では外部画像に基づいて、画像投影部10から投影する画像を調整して視認性を向上させる。
【0038】
情報処理部60は、各種情報を所定の手順に従って処理する部分であり、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)とメモリ、外部記憶装置、各種インターフェースを備えるコンピュータである。
図2に示すように、情報処理部60は、表示領域特定部61と、画像判定部62と、画像調整部63と、状況取得部64を備えている。これらの各部は、情報処理部60のメモリと外部記憶装置に記録されたプログラムに基づいて、CPUが情報処理を行うことで実現される。また、情報処理部60は、画像投影部10および外部状況撮像部50との間で情報通信を行う情報通信手段を備えている(図示省略)。
【0039】
表示領域特定部61は、画像投影部10が撮像した外部画像を取得し、外部画像中において表示画像(虚像40)が重ね合わせて投影される領域を表示領域として特定する部分である。ここで表示領域特定部61が表示領域を特定する方法としては、外部状況撮像部50の撮像範囲と、搭乗者eの視点位置からの視野角との対応関係から求めることができる。より詳しくは、透過反射部30において画像投影部10からの光が照射される位置を照射位置とし、予め想定していた搭乗者eの視点位置から照射位置を結んだ直線を視線ベクトルとして算出する。また、外部状況撮像部50の搭載位置と透過反射部30の相対的な位置関係を予め記録しておき、外部状況撮像部50の撮像範囲と視線ベクトルから搭乗者eが視認する背景と外部画像内での位置を算出し、表示領域を特定する。
【0040】
画像判定部62は、表示領域を含んだ判定領域を設定し、外部画像における判定領域内の画像を認識して分析する部分である。搭乗者eは表示画像と背景を重ね合わせて視認するため、虚像40が重ね合わされる表示領域よりも広い範囲を判定領域とする。画像判定部62は、外部画像における判定領域内の画像から輝度と色調について分析し、輝度情報と色調情報として取得する。取得した輝度情報および色調情報は、画像調整部63に伝達される。輝度情報および色調情報の分析については後述する。
【0041】
画像調整部63は、画像判定部62の分析結果に基づいて画像情報を調整する部分である。画像判定部62が分析した輝度情報および色調情報に基づいて、画像投影部10から照射される表示画像の画像情報において輝度または色調を調整する。ここで、画像情報の調整とは、画像投影部10が照射する光の光量を増減することや、画像投影部10から照射される光の経路にカラーフィルターを挿入するなどの物理的な調整であってもよい。また、画像情報のデジタルデータに画像処理を施し、輝度やコントラスト、色調の変更、画像の合成をするとしてもよい。
【0042】
状況取得部64は、外部の状況を状況情報として取得し、各部に伝達する部分である。状況取得部64が取得する外部の状況としては、車両の走行速度、天候状況、車両の位置情報、注意喚起対象物の存在、交通情報等が挙げられる。また、これらの状況を取得する手段としては、車速センサー、GPS(Global Positioning System)装置、無線通信手段、ナビゲーションシステム、外部画像の画像認識等が挙げられる。
【0043】
図3は、第1実施形態に係る画像投影システムにおいて、外部状況撮像部50が撮像した外部画像と表示領域の関係を示す模式図である。
図3では、外部状況撮像部50が撮像した外部画像51を示し、外部画像51内での判定領域52を実線枠で示している。また、判定領域52内に複数の表示領域53a,53b,53cが設けられており、各表示領域53a,53b,53cに表示画像の虚像40としてアイコンが投影されている。
【0044】
ここで外部画像51は、上述したように搭乗者eが透過反射部30越しに視認する背景との対応が算出されており、外部画像51内における表示領域53a,53b,53cの位置と、搭乗者eが視認する背景と虚像40の重ね合わせが一致している。したがって、搭乗者eが透過反射部30越しに視認する背景と虚像40は、
図3に示した模式図と同様になる。
【0045】
搭乗者eは、透過反射部30越しに車両の前方を見ており、前方の路面や路肩の状況を視認している。このとき、視線がより集中するのは搭乗位置の正面または透過反射部30(ウィンドシールド)の中央近傍となる。したがって、画像判定部62が設定する判定領域52は、表示領域53a,53b,53cを含み、搭乗者eの正面および透過反射部30の中央付近まで含めた領域となる。本実施形態では、画像調整部が判定領域の輝度情報や色調情報に基づいて画像情報を調整して、判定領域内に重ね合わせて結像させることで、虚像40の視認性が向上する。
【0046】
図4は、本実施形態に係る画像投影方法の手順について説明するフローチャートである。本実施形態の画像投影システムでは、情報処理部60が起動して外部記憶装置に記録されたプログラムをメモリに読み込み、CPUで情報処理を行うことで、表示領域特定部61、画像判定部62、画像調整部63、状況取得部64の機能が実行される。また、画像投影部10、外部状況撮像部50およびその他の各種装置と情報処理部60の間が接続されて、各部の駆動制御と情報通信が行われる。
【0047】
ステップS1は、外部状況撮像部50が透過反射部30よりも外部の状況を外部画像として撮像する外部状況撮像工程である。情報処理部60は、外部状況撮像部50を駆動制御して外部の状況を撮像して外部画像を取得する。外部画像を取得した後にステップS2に移行する。
【0048】
ステップS2は、画像投影部10から画像情報を含んだ光を照射して、所定位置に虚像40を結像させる画像投影工程である。ここで画像情報には、画像をデジタルデータに変換した情報と、輝度や色調に関する補正データを含んでいる。画像投影部10は、画像情報に含まれる画像のデジタルデータに基づいて画像形状を作成し、補正データの輝度や色調に基づいて照射する光の輝度や色調を制御する。これにより、画像情報に応じた光の強度と色調で、画像投影部10から虚像40を構成する光が照射される。画像投影部10が虚像40を投影する光を照射した後にステップS3に移行する。
【0049】
ステップS3は、外部画像において表示画像が重ね合わせて投影される領域を表示領域として特定する表示領域特定工程である。上述したように、表示領域特定部61は、外部状況撮像部50の撮像範囲と搭乗者eの視野角の対応関係から、外部画像における表示領域を求める。外部状況撮像部50の撮像範囲は、外部状況撮像部50の取り付け位置とレンズの光軸方向から算出して予め記録しておくとしてもよく、外部画像に含まれる車両の一部を画像認識等で抽出し、取り付け位置と画像認識した車両の一部との相対的位置関係から算出するとしてもよい。表示領域特定部61が外部画像において表示領域を特定した後にステップS4に移行する。
【0050】
ステップS4は、外部画像において表示領域を含む判定領域を設定し、判定領域内の画像を認識して分析する画像判定工程である。画像判定部62は、外部画像において表示領域を包含する広い領域を判定領域として設定し、判定領域内の画像を分析して判定領域の輝度情報と色調情報を取得する。ここで判定領域の設定は、予め透過反射部30における所定領域に対応する領域を判定領域として記録してもよく、状況取得部64が取得した状況に基づいて画像判定部62が設定するとしてもよい。
図3に示した例では、搭乗者eの視線が集中しやすい搭乗者eの正面と透過反射部30の中央領域を含むように判定領域が設定されている。
【0051】
画像判定部62による輝度情報と色調情報の取得方法としては、判定領域内に含まれる画像の画素毎に輝度と色を特定し、判定領域全域での平均値を算出して輝度情報と色調情報とする方法が挙げられる。または、判定領域全域で画素の輝度と色調をランク分けし、該当する画素数が最も多いランクを輝度情報と色調情報とするなどが挙げられる。また、判定領域内の画像を機械学習により画像認識して輝度情報と色調情報を算出するとしてもよい。画像判定部62が判定領域内の輝度情報と色調情報を取得した後にステップS5に移行する。
【0052】
ステップS5は、画像判定工程での分析結果に基づいて、画像投影部10から投影される虚像40の画像情報を調整する画像調整工程である。画像調整部63は、画像判定部62が判定領域を分析して取得した輝度情報と色調情報に基づいて、画像投影部10で投影する画像情報を調整する。これにより
図3で示した例では、判定領域52の全体の輝度と色調を把握して、輝度と色調に応じて視認性が高い虚像40の重ね合わせができる。ここで判定領域52は、車両周囲の明るさや色調ではなく、実際に搭乗者eが視認している外部の背景と略一致しているため、現実の走行状況に応じて虚像40の視認性を確保することが可能である。
【0053】
一例としては、判定領域の輝度情報を10段階評価に分類し、表示領域53a,53b,53cに重ね合わされる虚像40の光強度を調整し、輝度情報に対応したコントラストでの虚像40の投影を行うことが挙げられる。また別の例としては、判定領域の色調情報を色相図や色度図で分類し、補色となる色で虚像40の投影を行うなどが挙げられる。
【0054】
また、通常時には警告色である赤色や黄色、視感度が高い緑色で虚像40の投影を行い、判定領域の色調情報が赤色や黄色、緑色である場合に、背景と虚像40が同系色とならないように他の色での投影に切り替えるなどが挙げられる。また、判定領域の色調と虚像40の表示色を予め対応付けて記録しておき、雪道で判定領域の色調情報が白である場合には赤色で投影し、紅葉や夕焼け時で色調情報が赤やオレンジの場合には緑色や青色で投影するなどでもよい。
【0055】
画像調整部63が画像投影部10から投影される画像情報を調整し、虚像40の輝度または色調を変更した後にステップS6に移行する。
【0056】
ステップS6は、虚像40の投影を継続するかを判断する投影継続判断工程である。投影を継続する場合にはステップS1に移行し、継続しない場合には画像投影部10からの虚像40の投影を止めて終了する。
【0057】
上述したように、本実施形態の画像投影システムおよび画像投影方法では、外部状況撮像部50で外部画像を撮像し、判定領域内の画像を分析した結果に基づいて、表示画像を調整して画像投影部10から投影する。これにより、搭乗者eが実際に視認している視界範囲での背景と虚像40の重ね合わせを把握し、様々な走行状況においても、背景と重ね合わせて投影される虚像40の視認性を確保することが可能である。
【0058】
また、判定領域の輝度情報または色調情報に対応して、画像投影部10から投影される虚像40の画像情報を調整することで、様々な状況にリアルタイムで適切に虚像40の投影を制御可能であり、より虚像40の視認性を高めることができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る画像投影システムにおいて外部状況撮像部50が撮像した外部画像と表示領域の関係を示す模式図であり、
図5(a)は判定領域52内に設けた複数の表示領域53a~53cを示し、
図5(b)は表示領域53a~53cに対応したサブ判定領域54a~54cを示している。
【0060】
図5(a)(b)に示したように、本実施形態では判定領域52中に複数の表示領域53a~53cが存在しており、それぞれの表示領域53a~53cに対応した位置とサイズでサブ判定領域54a~54cを設定する。ここでは判定領域52の内部にサブ判定領域54a~54cが含まれる例を示しているが、判定領域52の外部に表示領域53a~53cおよびサブ判定領域54a~54cを設けるとしてもよい。
【0061】
サブ判定領域54a~54cは、表示領域53a~53cに対応した位置に設定されており、それぞれが表示領域53a~53cを内包するように設定されている。また、判定領域52とサブ判定領域54a~54cは排他的に用いられるものではなく、各々独立して画像判定部62で設定されて分析される対象である。
【0062】
本実施形態では、ステップS4の画像判定工程において、画像判定部62が各表示領域53a~53cに対応したサブ判定領域54a~54cと、全ての表示領域53a~53cを含む判定領域52を設定する。また画像判定部62は、判定領域52およびサブ判定領域54a~54cの各々について輝度情報と色調情報を取得する。
【0063】
また、ステップS5の画像調整工程において、画像調整部63は、画像判定部62が判定領域を分析して取得したサブ判定領域54a~54cの各々の輝度情報と色調情報に基づいて、表示領域53a~53cの各々の画像情報を調整する。このとき画像調整部63は、表示画像(虚像40)の画像処理によって表示領域53a~53cの画像情報を個別に調整することが好ましい。
【0064】
一例としては、各領域の輝度情報に基づいて、背景が表示領域53a,53bでは暗いが表示領域53cでは明るい場合には、表示領域53a,53bよりも表示領域53cで輝度が高くなるように画像処理を行う。また、各領域の色調情報に基づいて、背景の色調が表示領域53a,53b,53cで異なっている場合には、それぞれの表示領域53a,53b,53cの色調を変えるように画像処理を行う。また、サブ判定領域54a~54cにおける輝度情報と色調情報を単独で用いるのではなく、判定領域52も含めて複数の輝度情報と色調情報を関連付けて画像情報の調整をするとしてもよい。
【0065】
本実施形態では、複数のサブ判定領域54a~54cの各々において輝度と色調を把握して、各表示領域53a~53cで個別に輝度と色調を調整することで、様々な走行状況においても、背景と重ね合わせて投影される虚像40の視認性を確保することが可能である。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態では、画像投影部10が撮像した1枚の外部画像に基づいて画像情報の調整を行ったが、本実施形態では複数枚の外部画像を撮像して画像情報の調整を行う点が異なっている。
【0067】
本実施形態では、ステップS1の外部状況撮像工程において、外部状況撮像部50は単位時間あたりに複数枚の外部画像を撮像する。例えば1秒間に5枚撮像や3秒間に20枚撮像など、単位時間と撮像枚数は限定されない。ステップS2の画像投影工程と、ステップS3の表示領域特定工程は、第1実施形態と同様である。
【0068】
ステップS4の画像判定工程では、第1実施形態と同様に画像判定部62は複数枚の外部画像について判定領域を設定し、予め定められた判定期間内に撮像された複数の外部画像の各々について、判定領域内の画像を分析して代表となる輝度情報および色調情報を取得する。例えば、外部画像の1枚毎に判定領域から輝度情報と色調情報を取得し、過去1秒間に取得された輝度情報と色度情報の平均値を代表とする方法が挙げられる。
【0069】
ステップS5の画像調整工程では、画像判定工程で取得された代表の輝度情報と色調情報に基づいて、画像情報の調整と画像投影部10からの光照射が行われる。ステップS6の投影継続判断工程も第1実施形態と同様に実行する。
図4では、ステップS2として画像投影工程を外部状況撮像工程の後に実行する例を示したが、ステップS5の画像調整工程後に画像投影工程を実行するとしてもよい。また、他の工程についても実行する順序を適宜入れ替えるとしてもよい。
【0070】
本実施形態の画像投影システムおよび画像投影方法では、判定期間に撮像された複数枚の外部画像から代表となる輝度情報および色調情報を取得しているため、判定期間における移動平均値で緩やかな変化で画像情報の調整を実施できる。これにより、例えば並木道を走行している際に路面に樹木の影が点在しているような、判定領域内の背景が一時的に急激に変化する状況などにおいて、虚像40の輝度や色調が急激に変化することを抑制できる。
【0071】
虚像40の輝度や色調が急激に変化すると、搭乗者eには虚像40が明滅しているように視認され、却って視認性が低下してしまう。したがって、判定期間内に撮像された複数の外部画像に基づいて画像情報の調整を行うことで、より一層、様々な状況で適切に虚像40の画像情報を調整することができ、虚像40の視認性を高めることができる。
【0072】
(第3実施形態の変形例)
第3実施形態では、判定期間を予め定めておいたが、判定期間を条件に応じて可変に設定するとしてもよい。例えば、複数枚の外部画像において、輝度情報と色調情報の変化周期を算出して、変化周期に応じて判定期間を設定するとしてもよい。
【0073】
また、虚像40として投影する画像情報の内容に基づいて、判定期間を設定するとしてもよい。例えば、虚像40として投影する画像を緊急性でランク分けしておき、ランクに応じて判定期間を設定する。搭乗者eに対して迅速に情報提示する必要性が高い画像を投影する場合には、判定期間を短くして瞬時に虚像40の視認性を向上させることが好ましい。
【0074】
また、状況取得部64から外部の状況を状況情報として取得し、状況情報に基づいて判定期間を設定するとしてもよい。例えば、状況取得部64として車速センサーを用い、状況情報として車両の走行速度を取得し、走行速度に応じて判定期間を設定する。これにより、高速走行時には判定期間を短くして画像情報の調整を即時に反映し、低速走行時には判定期間を長くして緩やかに画像情報の調整を行うことができる。
【0075】
本変形例では、判定期間を条件に応じて可変に設定するため、状況の変化に柔軟に対応して、虚像40の視認性を高めることができる。
【0076】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について
図6~
図10を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図6は、本実施形態に係る画像投影システムの構成を示す模式図である。
図7は、本実施形態に係る画像投影システムの構成を示すブロック図である。
【0077】
図6,7に示すように本実施形態の画像投影システムでは、画像投影部10と、投影光学部20と、透過反射部30と、外部状況撮像部50と、情報処理部60を備えて、虚像40を投影して空間上に結像する。また情報処理部60は、画像投影部10および外部状況撮像部50との間で情報通信可能に接続されている。本実施形態では、外部状況撮像部50が可視光撮像部50aと、赤外光撮像部50bと、赤外パルス光源50cとを備えている。
【0078】
可視光撮像部50aは、透過反射部30を介して外部の状況を可視光で撮像し、可視光画像を取得する撮像装置である。赤外光撮像部50bは、透過反射部30を介して外部の状況を赤外光で撮像し、赤外光画像を取得する撮像装置である。可視光撮像部50aおよび赤外光撮像部50bの構成は限定されず、CCDセンサーやCMOSセンサー等の公知の撮像装置を用いることができる。
【0079】
図6では、可視光撮像部50aと赤外光撮像部50bを別体で設けた例を示しているが、CCDセンサーやCMOSセンサー等の1つの画像センサー中に、可視光用サブピクセルと赤外光用サブピクセルを混在させるとしてもよい。具体的には、1画素に4つ以上のサブピクセルを設け、3つのサブピクセルにはRGBのカラーフィルターを配置し、1つにはカラーフィルターを配置しない構成としてもよい。これにより、RGBカラーフィルターを設けたサブピクセルで可視光撮像部50aを構成し、カラーフィルターを設けないサブピクセルで赤外光撮像部50bを構成することができ、一つの画像センサーで可視光画像と赤外光画像を撮像することが可能となる。
【0080】
赤外パルス光源50cは、パルス状に赤外光を発光する光源装置である。赤外パルス光源50cの構成は限定されないが、波長幅とパルス幅が小さいパルス光を良好に発光するためには、赤外レーザ光源をパルス駆動することが好ましい。
【0081】
本実施形態では、赤外パルス光源50cが赤外パルス光を外部に向けて発光することで、赤外光撮像部50bは反射してきた赤外パルス光により赤外光画像を撮像できる。可視光撮像部50aでは、通常の撮像と同様に自然光や前照灯の可視光を受光して可視光画像を撮像できる。外部状況撮像部50は、可視光画像と赤外光画像を含めた外部画像を情報処理部60に伝達する。
【0082】
図8は、本実施形態に係る画像投影システムにおける判定領域と表示領域の関係を示す模式図であり、
図8(a)は可視光画像における判定領域52aを示し、
図8(b)は赤外光画像における判定領域52bを示し、
図8(c)は可視光画像と赤外光画像の比較画像52cを示し、
図8(d)は背景と虚像40を重ね合わせた搭乗者eの視点画像52dを示している。
図9は、本実施形態に係る画像投影方法の手順について説明するフローチャートである。
図10は、本実施形態におけるパルス発光と撮像について説明するタイミングチャートであり、
図10(a)は赤外パルス光源50cの発光タイミングを示し、
図10(b)は赤外光撮像部50bの撮像タイミングを示し、
図10(c)は可視光撮像部50aの撮像タイミングを示している。本実施形態の画像投影方法は以下の手順でステップS11から実行される。
【0083】
ステップS11は、赤外パルス光源50cから外部に赤外パルス光を照射する赤外パルス発光工程である。
図10(a)に示したように、情報処理部60は、赤外パルス光源50cを制御して所定パルス幅の赤外光を外部に照射し、ステップS12に移行する。
【0084】
ステップS12は、赤外光撮像部50bで赤外光画像を撮像する赤外画像撮像工程である。
図10(b)に示したように情報処理部60は、赤外パルス光源50cの発光終了からΔT1(第1遅延時間)が経過したタイミングで赤外光撮像部50bにシャッター制御の信号を送り、背景で反射してきた赤外光で赤外光画像を撮像する。赤外光画像の撮像後にステップS13に移行する。
【0085】
ステップS13は、可視光撮像部50aで可視光画像を撮像する可視光画像撮像工程である。
図10(c)に示したように情報処理部60は、赤外光撮像部50bの赤外光画像撮像終了からΔT2(第2遅延時間)が経過したタイミングで可視光撮像部50aにシャッター制御の信号を送り、背景で反射してきた可視光で可視光画像を撮像する。可視光画像の撮像後にステップS14に移行する。なお、ΔT1(第1遅延時間)とΔT2(第2遅延時間)は同じ時間であってもよい。また、ΔT2(第2遅延時間)を設けず、可視光画像の撮像中に赤外光画像の撮像を実行するとしてもよい。
【0086】
ステップS12で撮像した赤外光画像とステップS13で撮像した可視光画像は、情報処理部60に伝達され、可視光画像と赤外光画像を含めた外部画像として情報処理が行われる。ここで、ステップS11からステップS13までは、外部画像に含まれる赤外光画像と可視光画像を撮像する工程であるため、本願発明における外部状況撮像工程に相当している。
【0087】
図8(a)に示すように、可視光画像は可視光を可視光撮像部50aで受光して撮像されたものであるため、背景からの可視光が不十分である領域(図中左側)で鮮明な外部画像が得られない場合がある。単に露出不足である場合には、外部画像の露出補正を行うことも可能であるが、雨や濃霧などの気象条件によっては背景を撮像できず補正が不可能となる。また、露出補正で得られる画像ではノイズが増加するため鮮明な画像を得にくい。
【0088】
それに対して
図8(b)に示した赤外光画像では、赤外パルス光源50cから照射したパルス光の反射を撮像しているので、パルス光の照射から反射光が戻ってくるまでの時間で赤外光撮像部50bのシャッターを切ることで、背景を鮮明に撮像することができる。また、赤外パルス光源50cの発光から複数のタイミングで赤外光撮像部50bのシャッターを切り、得られた複数の画像を重ね合わせることで、異なる距離の背景を鮮明に赤外光画像として撮像することができる。
【0089】
ステップS14は、画像投影部10から画像情報を含んだ光を照射して、所定位置に虚像40を結像させる画像投影工程である。虚像40を投影した後にステップS15に移行する。ステップS15は、外部画像において表示画像が重ね合わせて投影される領域を表示領域として特定する表示領域特定工程である。本実施形態では、後述する画像判定工程および特徴領域抽出工程で抽出した比較画像52cに基づいて、投影する虚像40の照射位置と内容が決まるため、虚像40が投影され得る領域を予め表示領域として設定しておく。表示領域特定部61が外部画像において表示領域を特定した後にステップS16に移行する。
【0090】
ステップS16は、外部画像において表示領域を含む判定領域を設定し、判定領域内の画像を認識して分析する画像判定工程である。本実施形態では、虚像40を照射する可能性がある領域を表示領域としているため、画像判定部62は表示領域の全域を判定領域として設定し、ステップS17に移行する。
【0091】
ステップS17は、可視光画像と赤外光画像の差分に基づいて特徴領域を抽出する特定領域抽出工程である。搭乗者eが実際に視認している背景は、可視光画像として撮像されたものと同等であるため、搭乗者eは可視光が不十分な領域の背景を認識できない。また、赤外光画像はモノクロ画像として取得されるため、背景から注意喚起する対象を搭乗者eが認識しにくい。そこで本実施形態では、画像判定部62が、
図8(a)の可視光画像における判定領域52aと、
図8(b)の赤外光画像における判定領域52bを比較して分析を行う。
【0092】
図8(c)は、判定領域52a,52bにおいて、可視光画像と赤外光画像を比較し、差分を特徴領域55として抽出した比較画像52cである。比較画像52cには、可視光画像と赤外光画像の両方で撮像された背景部分は取り除かれ、差分である特徴領域55のみが含まれる。画像判定部62が、比較画像52cと特徴領域55を取得した後に、ステップS18に移行する。
【0093】
ステップS18は、画像判定工程および特徴領域抽出工程での分析結果に基づいて、画像投影部10から投影される虚像40の画像情報を調整する画像調整工程である。画像調整部63は、画像判定部62が抽出した特徴領域55を画像情報に重ね合わせて合成し、画像投影部10から投影する。また、画像判定部62は、可視光画像の判定領域52aについて第1実施形態と同様に輝度情報および色調情報を取得しておき、画像調整部63は特徴領域55の輝度および色調を調整するとしてもよい。
【0094】
このとき、特徴領域55の照射位置は、赤外光画像中における位置と可視光画像における位置と搭乗者eからの視界位置が一致するように設定する。これにより
図8(d)に示したように、搭乗者eの視点位置からの視点画像52dは、背景に特徴領域55を重ね合わせたものとなり、可視光だけでは視認が困難な対象物を搭乗者eに提示することができる。また、現実の背景と重ね合わせた特徴領域55の虚像40について、輝度や色調を調整することで、赤外光画像をそのまま投影するよりも視認性を向上させることができる。
【0095】
ステップS19は、虚像40の投影を継続するかを判断する投影継続判断工程である。投影を継続する場合にはステップS1に移行し、継続しない場合には画像投影部10からの虚像40の投影を止めて終了する。
図9では、ステップS14として画像投影工程を可視光画像撮像工程の後に実行する例を示したが、ステップS18の画像調整工程後に画像投影工程を実行するとしてもよい。また、他の工程についても実行する順序を適宜入れ替えるとしてもよい。
【0096】
上述したように、本実施形態の画像投影システムおよび画像投影方法では、外部状況撮像部50で可視光画像と赤外光画像を含む外部画像を撮像し、判定領域内の画像を分析して得られた特徴領域55に基づいて、表示画像を調整して画像投影部10から投影する。これにより、視聴者eが肉眼で目視ができない対称についても、背景と虚像40を重ね合わせて提示することができる。
【0097】
また、判定領域の輝度情報または色調情報に対応して、画像投影部10から投影される虚像40の画像情報を調整することで、様々な状況にリアルタイムで適切に虚像40の投影を制御可能であり、より虚像40の視認性を高めることができる。
【0098】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の
変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて
得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
10…画像投影部
20…投影光学部
30…透過反射部
40…虚像
50…外部状況撮像部
60…情報処理部
50a…可視光撮像部
50b…赤外光撮像部
50c…赤外パルス光源
51…外部画像
52,52a,52b…判定領域
52c…比較画像
52d…視点画像
53a~53c…表示領域
54a~54c…サブ判定領域
55…特徴領域
61…表示領域特定部
62…画像判定部
63…画像調整部
64…状況取得部