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特開2022-94129RCセグメントを含むプレキャスト部材の挿入型継手及びこれを備えるセRCグメントを含むプレキャスト部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094129
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】RCセグメントを含むプレキャスト部材の挿入型継手及びこれを備えるセRCグメントを含むプレキャスト部材
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20220617BHJP
   E21D 11/08 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
E21D11/04 A
E21D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020206974
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】520393428
【氏名又は名称】合同会社スペースK
(71)【出願人】
【識別番号】520493050
【氏名又は名称】日本地下開発エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】501122850
【氏名又は名称】株式会社アイ・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】金井 恭子
(72)【発明者】
【氏名】安 琳
(72)【発明者】
【氏名】下田 一美
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155CA01
2D155EB01
2D155GC04
2D155GD05
2D155KB04
2D155KB08
2D155KB09
(57)【要約】
【課題】隣接するセグメント同士を簡単な構造で確実に連結することができる安価な挿入型継手とこれを備えるセグメントを提供すること。
【解決手段】隣接する2つのセグメント1,101同士を連結するための挿入型継手20は、一方のセグメント101の接合部に埋設されたスリーブ24と、該スリーブ24を軸直角方向に横切る平行な2枚のバネ板25を備える雌継手22と、他方のセグメント1の接合面の雌部材22に対応する位置に突設され、その先端に雌継手22の2枚のバネ板25間の間隔δよりも大きな外径φDを有する頭部23Bが形成されたピン部材23を備える雄部材21を備える。また、セグメント1は、隣接する他のセグメントとの接合面の複数箇所に、挿入型継手20の雄継手21と雌継手22またはこれらの雄継手21と雌継手22の何れか一方が設けられている。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する2つのRCセグメントを含むプレキャスト部材同士を連結するための挿入型継手であって、
一方のプレキャスト部材の接合部に埋設されたスリーブと、該スリーブを軸直角方向に横切る平行な2枚のバネ板を備える雌継手と、
他方のプレキャスト部材の接合面の前記雌部材に対応する位置に突設され、その先端に前記雌継手の2枚の前記バネ板間の間隔よりも大きな外径を有する頭部が形成されたピン部材を備える雄部材と、
を備え、前記雄継手の前記ピン部材を前記雌継手の前記スリーブに挿入し、該ピン部材の頭部によって前記バネ板を押し広げて該頭部を前記バネ板を通過させることによって両プレキャスト部材同士を連結することを特徴とする挿入型継手。
【請求項2】
前記ピン部材の頭部先端に先細の円錐台状のテーパ面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の挿入型継手。
【請求項3】
前記各バネ板の前記スリーブ外へ突出する部分にゴムシールをそれぞれ被着したことを特徴とする請求項1または2に記載の挿入型継手。
【請求項4】
隣接する他のプレキャスト部材との接合面の複数箇所に、請求項1~3の何れかに記載された挿入型継手の前記雄継手と前記雌継手またはこれらの雄継手と雌継手の何れか一方が設けられていることを特徴とするRCセグメントを含むプレキャスト部材。
【請求項5】
鉄筋コンクリート製であって、内部に埋設されたアンカーに前記板バネが取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のRCセグメントを含むプレキャスト部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一例として隣接する2つのRCセグメントを含むプレキャスト部材同士を連結するための挿入型継手、及びこれを備えるRCセグメントを含むプレキャスト部材に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの構築にはシールド工法が用いられることが多い。このシールド工法は、シールドマシンによって地下に掘削孔を掘進し、この掘削孔の内周面に複数のセグメントを組み立てて筒状壁体を構築する工法である。ここで、セグメントには、主に鉄筋コンクリート製の平面視長方形の円弧板状のRCセグメント(以下、単にセグメントという。)が使用されており、このセグメントを周方向に連結してセグメントリングを構成し、このセグメントリングをシールドマシンの掘進に応じてトンネル軸方向に連結することによってトンネル全体の履工を行っている。
【0003】
ところで、周方向に隣接するセグメント同士の連結とトンネル軸方向に隣接するセグメント同士の連結は、従来、ボルトによって行われていた。具体的には、セグメントの接合面の近傍に、隣接するセグメントの接合面同士を当接させた状態で互いに連通する孔部を有する継手板を埋め込んでおき、この継手板の孔部にボルトを挿通し、このボルトにナットを締め付けてセグメント同士を連結することが行われていた。或いは、隣接するセグメントの各々にナット部材であるインサート金具を埋め込んでおき、隣接するセグメントに貫通するボルトを締結してセグメント同士を連結することが行われていた。
【0004】
しかしながら、上記従来の連結構造によれば、極めて煩雑な作業を要するためにセグメントの連結に多くの時間と労力を要する他、ロボットなどを用いた自動化が困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、例えば特許文献1,2には、セグメント同士の連結をワンパスで簡単且つ確実に行うことができるセグメント継手が提案されている。
【0006】
すなわち、特許文献1,2には、セグメント同士を周方向に連結する継手(ピース間継手)として、隣接するセグメントの一方に設けられた雄継手と他方のセグメントに設けられた雌継手とで構成されるスライドロック型のものが提案されている。ここで、雄継手は、一方のセグメントの接合面に立設されたボルトやベース板、袋ナット、平ワッシャ、皿バネなどによって構成され、雌継手は、一方のセグメントにボルトを植設し、他方のセグメントの接合面のボルトに対応する箇所に埋設された係止部材やこれを固定する係止板などによって構成されている。
【0007】
而して、上述のように雄継手と雌継手によって構成されたスライドロック型継手(ピース間継手)は、一方のセグメントに設けられた雄継手のボルトの頭部を他方のセグメントの接合面に形成された凹部に差し込んだ状態で、一方のセグメントを他方のセグメントに対してスライドさせ、ボルトの頭部を他方のセグメントに設けられた雌継手の係止部材に形成された係止溝に係合させることによって、隣接するセグメント同士を周方向に連結する。
【0008】
他方、隣接するセグメントリングのセグメント同士をトンネル軸方向に連結する継手(リング間継手)として、一方のセグメントの接合部に設けられた雄継手と他方のセグメントの接合部に設けられた雌継手とで構成される挿入型のものが提案されている。ここで、雄継手は、一方のセグメントの接合面に立設された棒部材やこれを固定するベース部材、袋ナットなどによって構成され、雌継手は、他方のセグメントの接合部に埋設されたスリーブ(ホルダ金具)やクサビ材(バックアップ金具)などによって構成されている。
【0009】
而して、上述のように雄継手と雌継手によって構成された挿入型継手(リング間継手)は、一方のセグメントに設けられた雄継手の棒部材を他方のセグメントに設けられた雌継手のスリーブ(ホルダ金具)に挿入することによって、該棒部材がスリーブ内のクサビ部材(バックアップ部材)に係合し、両者間に発生する摩擦力によって両セグメントリングをトンネル軸方向に連結する。なお、棒部材の外周には、摩擦力を高めるためのノコ歯部(ノッチ)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-054795号公報
【特許文献2】特開2006-266024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1,2において提案されたセグメント継手は、構造が複雑で部品点数が多く、コストアップを招くという問題がある。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、隣接するセグメント同士を簡単な構造で確実に連結することができる安価な挿入型継手とこれを備えるセグメントを提供することにある。本発明の挿入型継手は、セグメントのみならずカルバートや舗装盤などの大型のプレキャスト部材の継手としても使用できる。以下の説明は、本発明を適用できるプレキャスト部材の代表例として、RCセグメント(以下、セグメントともいう。)について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、隣接する2つのセグメント同士を連結するための挿入型継手であって、一方のセグメントの接合部に埋設されたスリーブと、該スリーブを軸直角方向に横切る平行な2枚のバネ板を備える雌継手と、他方のセグメントの接合面の前記雌部材に対応する位置に突設され、その先端に前記雌継手の2枚の前記バネ板間の間隔よりも大きな外径を有する頭部が形成されたピン部材を備える雄部材と、を備え、前記雄継手の前記ピン部材を前記雌継手の前記スリーブに挿入し、該ピン部材の頭部によって前記バネ板を押し広げて該頭部を前記バネ板を通過させることによって両セグメント同士を連結することを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ピン部材の頭部先端に先細の円錐台状のテーパ面を形成したことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記各バネ板の前記スリーブ外へ突出する部分にゴムシールをそれぞれ被着したことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明に係るセグメントは、隣接する他のセグメントとの接合面の複数箇所に、請求項1~3の何れかに記載された挿入型継手の前記雄継手と前記雌継手またはこれらの雄継手と雌継手の何れか一方が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載のセグメントは、コンクリート製であって、内部に埋設されたアンカーに前記板バネが取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、挿入型継手の雄継手をピン部材のみで構成し、雌継手をスリーブとバネ板のみで構成することができるため、当該挿入型継手の構造が単純化してコストダウンが図られる。そして、雄継手のピン部材を雌継手のスリーブに挿入し、該ピン部材の頭部によってバネ板を押し広げて該頭部を前記バネ板を通過させることによって両セグメント同士をワンパスで簡単且つ確実に連結することができ、ロボットなどを用いた自動化が可能となって作業効率の向上と省力化を図ることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、ピン部材の頭部の先端には先細の円錐台状のテーパ面が形成されているため、該頭部が2枚のバネ板の間に容易に挿入嵌合し、頭部の通過に伴って2枚のバネ板が押し広げられて該頭部のバネ板の通過が許容される。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、ゴムシールによって、凝固前のコンクリートが差込孔からスリーブ内へと侵入するのを防ぐとともに、バネ板の位置ズレを防止することができる。ゴムシールは、コンクリートの侵入防止、バネ板の位置ズレ防止の機能に加え、オス型のピン部材挿入時にバネ板が、コンクリートに拘束されることなく、弾性変形を容易にすることを目的としている。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、隣接する2つのセグメントの接合面同士が当接するまで一方のセグメントを他方のセグメントに対してスライドさせることによって、挿入型継手のピン部材がスリーブに挿入されて該ピン部材の頭部が2枚のバネ板に係止されるため、両セグメント同士をワンパスで簡単且つ確実に連結することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、鉄筋コンクリート製のセグメント(RCセグメント)に埋設された補強用のアンカーによってピン部材がセグメントに確実且つ強固に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るセグメントの連結作業を示す部分斜視図である。
図2】本発明に係るセグメントの一部破断平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図3のB部拡大詳細図である。
図5】スライドロック型継手の雄継手の斜視図である。
図6図3のC部拡大詳細図である。
図7】スライドロック型継手の雌継手の斜視図である。
図8図2のD部拡大詳細図である。
図9図8のE-E線拡大断面図である。
図10図2のF部拡大詳細図である。
図11図10のG-G線拡大断面図である。
図12図11のH-H線拡大断面図である。
図13】(a)~(c)はスライドロック型継手によるセグメントの周方向の連結要領をその工程順に示す部分平面図である。
図14図13(c)のI-I線拡大断面図である。
図15】(a)~(c)は本発明に係る挿入型継手によるセグメントのトンネル軸方向の連結要領をその工程順に示す部分側断面図である。
図16図15(b)のJ-J線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本発明に係るセグメントの連結作業を示す部分斜視図であり、同図は、シールド工法によってトンネルを構築する場合において掘削孔の内周面に複数のセグメントを組み立てて筒状壁体を構築している状態を示している。
【0026】
図1において、100は既に全周に亘って複数のセグメント101を連結して組み立てられたセメントリングであり、このセメントリング100の後方(不図示のシールドマシンによる掘進方向とは逆方向であって、図1の手前方向)において、複数のセグメント1(1A)を周方向及びトンネル軸方向に連結することによって次のセグメントリング(不図示)が組み立てられる。
【0027】
ここで、セグメント1の構成を図2及び図3に基づいて説明する。
【0028】
すなわち、図2は本発明に係るセグメントの一部破断平面図、図3図2のA-A線断面図であり、本発明に係るセグメント1は、コンクリート(プレキャストコンクリート)によって平面視長方形の円弧状板に成形されたものであって、周方向に隣接する他のセグメント(図1に示すセグメント1Aと不図示のセグメント)との周方向両端の短辺側の長方形の接合面1a,1bの幅方向2箇所(図2の上下2箇所)には、本発明に係るスライドロック型継手10を構成する雄継手11と雌継手12がそれぞれ設けられている。具体的には、セグメント1の一方(図2の左側)の接合面1a(図1に示すセグメント1Aとの接合面)の2箇所(図2の上下)には雄継手11と雌継手12が設けられ、他方(図2の右側)の接合面1bの2箇所(図2の上下)には、雌継手12と雄継手11が設けられている。つまり、セグメント1の接合面1a,1bにおいては、雄継手11と雌継手12がトンネル軸方向(図2の上下方向)において互い違いに設けられている。
【0029】
そして、各雄継手11と各雌継手12は、セグメント1に埋設された平面視U字状の補強用のアンカー2,3の端部にそれぞれ取り付けられている。ここで、各アンカー2,3は、セグメント1の厚さ方向に2段(図3の上下)に亘って埋設されている。
【0030】
なお、本実施の形態では、セグメント1の接合面1a,1bの2箇所に雄継手11と雌継手12を交互に設けたが、一方の接合面1aの2箇所に雄継手11(または雌継手12)を設け、他方の接合面1bの2箇所に雌継手12(または雄継手11)をそれぞれ設けても良く、雄継手11と雌継手12の数は2つに限らず、3つ以上であっても良い。
【0031】
ここで、雄継手11の構成の詳細を図4及び図5に基づいて説明する。
【0032】
図4図3のB部拡大詳細図、図5は雄継手の斜視図であり、雄継手11は、I型部材、具体的にはI型鋼11Aによって構成されている。このI型鋼11Aは、図5に示すように、中央部の細いウェブ部11aと、該ウェブ部11aの長手方向両端のフランジ部11bを備えており、フランジ部11bの幅b1はウェブ部11aの幅b2よりも大きく設定されている(b1>b2)。そして、この雄継手11を構成するI型鋼11Aは、図4に示すように、その一部がセグメント1に埋設され、残りの先端部が接合面1b(1a)から突出している。ここで、I型鋼11Aは、図5に示すように、鋼板をI型に打ち抜いて得られた複数枚(図示例では、3枚)の打ち抜き片11A1を積層し、これらの打ち抜き片11A1を溶接によって一体化することによって構成され、このようにすることによって所定厚さの雄継手11(I型鋼11A)が簡単且つ安価に製造される。
【0033】
次に、雌継手12の構成の詳細を図6及び図7に基づいて説明する。
【0034】
図6図3のC部拡大詳細図、図7は雌継手の斜視図であり、雌継手12は、V型部材によって構成されており、このV型部材は、雄継手11を構成するI型鋼11Aを2つ組み合わせて構成されている。すなわち、雌継手12を構成するV型部材は、図5に示すI型鋼11Aを2つ用意し、両I型鋼11Aの一端のフランジ部11b同士を溶接によって連結してV字状に構成されている。ここで、雌継手(V型部材)12においては、2つのI型鋼11Aの開いた側の各フランジ部11b間の距離Lは、I型鋼11Aのウェブ部11aの幅b2(図5参照)よりも若干大きく設定されている(L>b2)。また、雌継手(V型部材)12には、2つのI型鋼11Aによって囲まれるV型空間Sが形成されているが、このV型空間Sの最大幅Wは、雄継手11を構成するI型鋼11Aのフランジ部11bの幅b1よりも若干大きく設定されている(W>b1)。
【0035】
そして、雌継手12は、図6に示すように、その全体がセグメント1に埋設されているが、図2に示すように、セグメント1の接合面1a,1bの雌継手12に隣接する箇所には、雄継手11(I型鋼11A)の先端部を受け入れるための矩形の凹部4が形成されている。
【0036】
他方、図2に示すように、セグメント1のトンネル軸方向に隣接する他のセグメント101(図1参照)との接合面(長辺側の接合面)1cとその反対側の接合面1dの長さ方向(図2の左右方向)3箇所(長さ方向中央とその左右の計3箇所)には、本発明に係る挿入型継手20を構成する雄継手21と雌継手22がそれぞれ設けられている。
【0037】
ここで、挿入型継手20を構成する雄継手21の構成の詳細を図8及び図9に基づいて説明する。
【0038】
図8図2のD部拡大詳細図、図9図8のE-E線拡大断面図であり、挿入型継手20を構成する雄継手21は、一部がセグメント1に埋設されたピン部材23によって構成されており、該ピン部材23の先端部分は、セグメント1の接合面1cから所定長さだけ突出している。そして、このピン部材23のセグメント1に埋設された部分の後端部には、雄ネジ23aが刻設されており、この雄ネジ23aがセグメント1に埋設された補強用のアンカー5の先端部に形成された雌ネジ5aに螺着されることによって、ピン部材23がアンカー5に強固に取り付けられている。
【0039】
また、ピン部材23の先端部には、軸部23Aの外径φdよりも大きな外径φD(>φd)を有する円錐台状の頭部23Bが一体に形成されており、この頭部23Bの先端には先細状のテーパ面23bが形成されている。
【0040】
次に、挿入型継手20を構成する雌継手22の構成の詳細を図10図12に基づいて以下に説明する。
【0041】
図10図2のF部拡大詳細図、図11図10のG-G線拡大断面図、図12図11のH-H線拡大断面図であり、雌継手22は、図10及び図11に示すように、セグメント1の接合面1dの近傍に埋設された金属製のスリーブ24と、図12に示すように、スリーブ24を軸直角方向に横切る平行な上下2枚の平板状のバネ板25を備えている。具体的には、図12に示すように、スリーブ24の長手方向中間位置の上下左右には、該スリーブ24の中心に向かって開口する差込孔24aがそれぞれ形成されており、上方の相対向する左右の差込孔24aには、上側のバネ板25がスリーブ24を横切って差し込まれて固定されている。同様に、スリーブ24の下方の相対向する左右の差込孔24aには、下側のバネ板25がスリーブ24を横切って差し込まれて固定されている。スリーブ24の後端部はアンカー機能を持たせるためラッパ状に拡開し、スリーブ内にセメントミルクが侵入しないように拡開部にゴム製等の栓27が詰めてある。
【0042】
ここで、2枚のバネ板25の間隔δは、雄継手21を構成するピン部材23の頭部23Bの外径φD(図9参照)よりも小さく設定されている(δ<φD)。なお、各バネ板25は、バネ性を有する弾性変形可能なバネ鋼によってそれぞれ構成されている。
【0043】
また、図12に示すように、各バネ板25のスリーブ24外へ突出する部分には、ゴムシール26がそれぞれ被着されている。なお、ゴムシール26は、凝固前のコンクリートが差込孔24aからスリーブ24内へと侵入するのを防ぐとともに、バネ板25の位置ズレを防止する機能を果たす。ゴムシール26は、コンクリートの侵入防止、バネ板25の位置ズレ防止の機能に加え、オス型のピン部材23の挿入時にバネ板25が、コンクリートに拘束されることなく、弾性変形を容易にすることを目的としている。
【0044】
ところで、挿入型継手20を構成する雄継手21(ピン部材23)と雌継手22(スリーブ24とバネ板25)の数は3つに限らず、複数であれば任意である。また、本実施の形態では、セグメント1の一方の接合面1cに雄継手21のピン部材23のみを突設し、他方の接合面1dに雌継手22のスリーブ24のみを埋設したが、各接合面1c,2dにピン部材23とスリーブ24の双方をそれぞれ設けても良い。
【0045】
次に、以上のようにスライドロック型継手10と挿入型継手20が設けられた図2及び図3に示すセグメント1をこれに隣接する図1に示すセグメント1Aに周方向に連結するとともに、図1に示すセグメントリング100のセグメント101にトンネル軸方向に連結する要領を図13図16に基づいて以下に説明する。
【0046】
図13(a)~(c)は本発明に係るスライドロック型継手によるセグメントの周方向の連結要領をその工程順に示す部分平面図、図14図13(c)のI-I線拡大断面図、図15(a)~(c)は挿入型継手によるセグメントのトンネル軸方向の連結要領をその工程順に示す部分側断面図、図16図13(b)のJ-J線拡大断面図である。
【0047】
以下においては、図1に示すセグメント1をこれに隣接するセグメント1Aに周方向に連結するとともに、既に構築されたセグメントリング100のセグメント101にセグメント1をトンネル軸方向に連結する場合について説明する。
【0048】
セグメント1のセグメント1Aへの周方向の連結は、スライドロック継手10によってなされ、同セグメント1のセグメント101へのトンネル軸方向の連結は、挿入型継手20によってなされるが、このセグメント1の周方向とトンネル軸方向の連結は、以下のようにワンパスで同時に簡単且つ確実になされる。
【0049】
すなわち、図13(a)に示すように、セグメント1の一方の接合面(図13の左端面)1a側に設けられたスライドロック継手10の雄継手11の接合面1aから突出する先端部(I型鋼11Aのフランジ部11b)の位置をセグメント1Aの接合面1Aaに開口する凹部4の位置に合わせるとともに、セグメント1Aの接合面1Aaに設けられたスライドロック型継手10の雄継手11の先端突出部(I型鋼11Aのフランジ部11b)の位置を当該セグメント1の接合面1aに開口する凹部4の位置に合わせる。
【0050】
次に、上記状態からセグメント1を図13(a)の矢印a方向(周方向)にスライドさせて図13(b)に示すように両セグメント1,1Aの接合面1a,1Aa同士を接合させる。このとき、両セグメント1,1Aの雄継手11の先端突出部(I型鋼11Aのフランジ部11b)は、各セグメント1,1Aの凹部4に嵌り込むため、両セグメント1,1Aの接合面1a,1Aa同士の接合が可能となる。また、図13(b)に示すように両セグメント1,1Aの接合面1a,1Aa同士が接合すると、セグメント1の一方の接合面1cに設けられた挿入型継手20の雄継手21を構成するピン部材23とセグメント101の一方の接合面101aに設けられた挿入型継手20の雌継手22を構成するスリーブ24の位置が周方向(図13(b)の左右方向)において一致する。
【0051】
上記状態からセグメント1を図13(b)の矢印b方向(図の上方)にその接合面1aがセグメント101の接合面101aに当接するまでスライドさせると、周方向に隣接する2つのセグメント1,1Aのスライドロック型継手10の雄継手11の先端突出部(I型鋼11Aのフランジ部11b)が各セグメント1,1Aの凹部4内をそれぞれ同方向に摺動し、図14に示すように、各雄継手11の先端突出部(I型鋼11Aのフランジ部11b)が各雌継手12を構成するV型部材のV型空間Sに挿入嵌合するため、セグメント1がこれに隣接するセグメント1Aに周方向に確実に連結される。
図13(a)~図13(c)のスライドロック型継手10の設置状態において、セグメント1をセグメント1Aに対しジャッキで押し込みスライドさせる時、セグメント1,1A同士が楔効果で密着するように、雄継手11、雌継手21共に一例として1:20の傾きを付けている。楔効果を得るための傾きは前記数値に限られるものではない。
【0052】
ここで、前述のように雌継手12を構成するV型部材の開き側のフランジ部11b間の間隔L(図7参照)は、雄継手11を構成するI型部材(I型鋼11A)のウェブ部11aの幅b2(図5参照)よりも若干大きく設定されているため(L>b2)、雌継手(V型部材)12の開き側のフランジ部11b間の隙間に、雄継手11を構成するI型部材(I型鋼11A)のウェブ部11aが挿入嵌合される。また、前述のように雌継手12を構成するV型部材に形成されるV型空間Sの最大幅W(図7参照)は、雄継手11を構成するI型部材(I型鋼11A)のフランジ部11bの幅b1(図5参照)よりも若干大きく設定されているため(W>b1)、図13(c)及び図14に示すように、雄継手11を構成するI型部材(I型鋼11A)のフランジ部11bの雌継手12のV型空間Sへの挿入嵌合が可能となる。
【0053】
上述の要領でセグメント1とこれに隣接するセグメント1Aとの周方向の連結がスライドロック型継手10によってなされると同時に、セグメント1とこれに隣接するセグメント101とのトンネル軸方向の連結が挿入型継手20によって以下の要領にしたがってなされる。
すなわち、図13(b)に示すように、挿入型継手20の雄継手21のセグメント1の接合面1cから突出する3つのピン部材23とセグメント101の接合面101aに開口する雌継手22の3つのスリーブ24の周方向の位置が一致した状態で、前述のようにセグメント1をその接合面1cがセグメント101の接合面101aに当接するまで図示矢印b方向(上方)にスライドさせると、各ピン部材23が図15(a)に示すように各スリーブ24にそれぞれ挿入される。
【0054】
そして、各ピン部材23の大径の頭部23Bが図15(b)に示すように各スリーブ24を横切って設けられた上下2枚のバネ板25の位置まで移動すると、前述のように、この頭部23Bの外径φD(図9参照)はバネ板25の間隔δ(図11及び図12参照)よりも大きく設定されているため(φD>δ)、この頭部23Bが上下2枚のバネ板25の間を通過する際には、図15(b)及び図16に示すように、上下2枚のバネ板25がそれぞれ上下に膨らむように弾性変形してピン部材23の頭部23Bの通過を許容する。ここで、ピン部材23の頭部23Bの先端には先細の円錐台状のテーパ面23bが形成されているため、該頭部23Bが上下2枚のバネ板25の間に容易に挿入嵌合し、頭部23Bの通過に伴って上下2枚のバネ板25が押し広げられる。
【0055】
そして、ピン部材23の頭部23Bが上下2枚のバネ板25の間を通過すると、各バネ板25は、図15(c)に示すように、弾性復元力によって元の平板の状態に戻るため、ピン部材23の頭部23Bの端面が上下2枚のバネ板25の端面に係合してピン部材23のスリーブ24からの抜けが確実に防がれる。このため、セグメント1がこれに隣接する他のセグメント101にトンネル軸方向に簡単且つ確実に連結される。
【0056】
以上のように、本実施の形態においては、セグメント1を図15(a)~(c)に示す要領にしたがって位置決め及びスライドさせるだけの簡単な操作(ワンパス)によって、該セグメント1をスライドロック型継手10によって他のセグメント1Aに周方向に確実に連結することができると同時に、同セグメント1を挿入型継手20によって他のセグメント101にトンネル軸方向に確実に連結することができる。
【0057】
而して、本実施の形態では、本発明に係る挿入型継手20の雄継手21をピン部材23のみで構成し、雌継手22をスリーブ24とバネ板25のみで構成したため、当該挿入型継手20の構造が単純化してコストダウンを図ることができる。そして、雄継手21のピン部材23を雌継手22のスリーブ24に挿入し、該ピン部材23の頭部23Bによって上下2枚のバネ板25を押し広げて該頭部23Bを2枚のバネ板25を通過させることによって両セグメント1,101同士をワンパスで簡単且つ確実に連結することができ、ロボットなどを用いた自動化が可能となって作業効率の向上と省力化を図ることができる。この場合、ピン部材23の頭部23Bの先端には先細の円錐台状のテーパ面23bが形成されているため、該頭部23Bが2枚のバネ板25の間に容易に挿入嵌合し、頭部23Bの通過に伴って2枚のバネ板25が押し広げられて該頭部23Bのバネ板25の通過が許容される。
【0058】
以上の説明は、シールド工法によるトンネルの構築において形成された掘削孔の内周面を覆う複数のコンクリート製セグメントと、これらのセグメントをトンネル軸方向に連結するための挿入型継手に対して本発明を適用した形態について説明したが、本発明は、カルバート用の平板状のコンクリート製セグメントや道路舗装用のコンクリート製舗装版などのプレキャスト部材、或は鉄製セグメントなど他の任意のセグメント及びこれを連結するための挿入型継手に対しても同様に適用可能である。
【0059】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 セグメント
1a~1d セグメントの接合面
5 アンカー
10 スライドロック型継手
11 スライドロック型継手の雄継手
12 スライドロック型継手の雌継手
20 挿入型継手
21 挿入型継手の雄継手
22 挿入型継手の雌継手
23 ピン部材
23A ピン部材の軸部
23B ピン部材の頭部
23a ピン部材の雄ネジ
23b 頭部のテーパ面
24 スリーブ
25 バネ板
26 ゴムシール
φd ピン部材の軸部の外径
φD ピン部材の頭部の外径
δ バネ板間の間隔
図1
図2
図3
図4
図5
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図16