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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094168
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】移動設置式個室
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/12 20060101AFI20220617BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20220617BHJP
   F21V 33/00 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
E05B49/00 J
F21V33/00 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207038
(22)【出願日】2020-12-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブページへの掲載 開示日 :令和2年8月11日 URL :https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000061504.html
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】520493212
【氏名又は名称】株式会社ガジェットガレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山瀬 明宏
【テーマコード(参考)】
2E250
3K014
【Fターム(参考)】
2E250AA01
2E250BB08
2E250FF25
2E250FF36
2E250GG06
3K014AA01
(57)【要約】
【課題】病原体への感染機会を低減させる移動設置式個室を提供する。
【解決手段】
扉12を有して利用場所に搬入されて設置される個室であって、室内に設置されたUV-Cを照射する紫外線照射灯(35,36)と、照明灯と、室外に設置された前記紫外線照射灯の電源スイッチ62とを備えるとともに、前記室内の内面に光触媒を含むコーティング材が塗布され、前記光触媒は、前記照明灯からの可視光が照射されると酸化力を発生させる、移動設置式個室である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉を有して利用場所に搬入されて設置される個室であって、
室内にUV-Cを照射する紫外線照射灯と可視光を照射する照明灯とが設置され、
室外に前記紫外線照射灯の電源スイッチが設置され、
前記室内の内面に光触媒を含むコーティング材が塗布され、
前記光触媒は、前記照明灯からの可視光が照射されると酸化力を発生させる、
移動設置式個室。
【請求項2】
請求項1において、前記コーティング材が塗布されたフィルタを有する換気ファンと、前記フィルタに可視光又はUV-Cを照射する照射灯を備え、
当該照射灯は、前記換気ファンの通気経路上で、前記室内に可視光又はUV-Cを漏洩させない位置に設置されている、
移動設置式個室。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記室内において、前記紫外線照射灯からのUV-Cが直接照射されない領域にUV-Cを照射する紫外線照射灯を備えた移動設置式個室。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかにおいて、前記室内において、前記照明灯からの可視光が直接照射されない領域に可視光を照射する照明灯を備えた移動設置式個室。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、前記紫外線照射灯が点灯されると、所定時間後に当該紫外線照射灯の点灯を停止させるタイマーを備えた移動設置式個室。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかにおいて、室内に人感センサーと電源コンセントとが設置されているとともに、前記人感センサーが室内に人がいることを検知した場合、あるいは前記電源コンセントに負荷が接続されている場合、あるいは前記照明灯が点灯している場合に、前記紫外線照射灯の点灯を禁止する制御部を備えた移動設置式個室。
【請求項7】
請求項6において、前記扉の開閉状態を検知する開閉センサーを備え、前記制御部は、当該開閉センサーにより前記扉が開いていることを検知すると、前記紫外線照射灯の点灯を禁止する移動設置式個室。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかにおいて、前記扉は、暗証コードを入力することによって解錠する電子錠を備える移動設置式個室。
【請求項9】
請求項8において、前記制御部は、前記紫外線照射灯の点灯時に前記電子錠を施錠状態にする移動設置式個室。
【請求項10】
請求項8又は9において、
通信ネットワークを介して外部のコンピュータと通信する通信部を備え、
前記制御部は、前記外部のコンピュータから、前記通信部を介して指定の暗証コードの設定要求を受け付けて、前記電子錠の暗証コードを書き換える、
移動設置式個室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動設置式個室に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の非特許文献1に記載されているように、面会室や少人数用の会議室、あるいは個人用のワークスペース等の用途に供される個室がある。この種の個室は、設置場所での材料の加工や施工が不要で、設置場所に搬入した製造済みの部材を組み立てるだけで完成する移動設置式となっている。そして、移動設置式個室の室内には、電源コンセント、照明灯、換気ファン等の設備を備え、設置場所の電源に接続するだけで、これらの設備が利用できるようになる。
【0003】
なお、以下の非特許文献2、3には、本発明に関連して、紫外線を用いた殺菌灯の仕様、及び紫外線による細菌やウイルスに対する殺菌、除菌、不活化効果等について記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】コクヨ株式会社、”WORKPOD”、[online]、[令和2年11月25日検索]、インターネット<URL:https://www.kokuyo-furniture.co.jp/products/office/workpod/>
【非特許文献2】パナソニック株式会社、”殺菌灯”、[online]、[令和2年11月25日検索]、インターネット<URL:https://www2.panasonic.biz/ls/lighting/plam/knowledge/document/0320.html>
【非特許文献3】東芝ライテック株式会社、”殺菌灯”、[online]、[令和2年11月25日検索]、インターネット<URL:https://www.tlt.co.jp/tlt/products/facility/facility_youto_bese_light/plant_sterilization/plant_sterilization.htm#tok>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
移動設置式個室は、出入り口となる扉以外は、実質的な開口部がなく、使用中は、その用途から扉が閉じられ、室内は密閉空間となる。それによって、室内の会話に対するプライバシーや秘匿性が確保される。しかし、移動設置式個室は、その用途から、不特定多数の利用者が入れ替わり立ち替わり利用する場合が多い。そのため、移動設置式個室の利用が、感染症の原因となるウイルスや細菌への感染機会に繋がる可能性がある。
【0006】
なお、上記非特許文献1に記載の移動設置式個室は、感染症対策に有効とされる室内全体の換気を短時間で行える換気ファンを備えている。しかしながら、移動設置式個室は、屋内に設置されることが多く、室内の換気により、汚染された空気を設置場所となる屋内に拡散させてしまう可能性がある。個室ユニットが屋外に設置されている場合であっても、室内の設備や壁面に感染者が触れれば、次の利用者に接触感染の機会を与えることになる。
【0007】
そこで本発明は、感染症の原因となるウイルスや細菌への感染機会を低減させる移動設置式個室を提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、扉を有して利用場所に搬入されて設置される個室であって、室内に設置されたUV-Cを照射する紫外線照射灯及び照明灯と、室外に設置された前記紫外線照射灯の電源スイッチとを備えるとともに、前記室内の内面に光触媒を含むコーティング材が塗布され、前記光触媒は、前記照明灯からの可視光が照射されると酸化力を発生させる、移動設置式個室である。
【0009】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、病原体への感染機会を低減させる移動設置式個室が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る移動設置式個室の外観を示す図である。
図2】移動設置式個室の寸法を説明するための図である。図2(A)は移動設置式個室を前方から見たときの図であり、図2(B)は移動設置式個室を左方から見たときの図である。
図3】移動設置式個室の室内に設置された機器や装置の配置を示す図である。
図4】移動設置式個室の電気回路の一例を示す概略図である。
図5】上記電気回路の一部を詳細に示した図である。
図6】移動設置式個室に連係するオンライン予約システムのネットワーク構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
【0013】
また、以下では、病原性の細菌やウイルスを総称して「病原体」と称し、細菌が死滅したり、ウイルスが不活化したりすることを総称して「不活化する」と称する。細菌やウイルス等の病原体の不活化を目的とした作業や機器の動作を「消毒」と称する。
【0014】
===実施例===
<個室ユニットの基本構成>
図1は、実施例に係る移動設置式個室(以下、個室ユニット1)の外観図である。図1に示したように、個室ユニット1は、略直方体の外観を有し、一主面に扉12を有する。以下、この扉12が配置されている面を前面として前後方向を規定するとともに、前方から後方を見た状態で左右の各方向を規定することとする。また、上方と下方は、個室ユニット1を水平面に設置したときの重力落下方向に従うものとする。
【0015】
図1に示したように、個室ユニット1は、略直方体の箱状であり、前面と後面のコーナーにR部が形成されて、左右の側面がR部を介して滑らかに上面及び下面に連続する造形となっている。前面には、左右を三分割するように窓(11L,11C,11R)が設けられている。そして、左右中央の窓11Cの窓枠が扉12を兼ねている。
【0016】
扉12を構成する窓枠には、レバー式のドアノブ13と、暗唱番号式の電子錠14(例えば、Linkey:株式会社ユーエムイ製)が設けられている。また、左側の窓11Lの窓枠15には、室内の電気機器(照明灯等)の電源スイッチや個室ユニット1の稼働状態等を表示するディスプレイ等が集中配置された領域(以下、操作部16)が設けられている。
【0017】
室内には必要に応じて適宜な什器が設置される。図1に示した例では、室内後端にて天板が左右の壁面に架け渡された状態で固定された机21、及びキャスターを備えた二脚の椅子22が配置されている。
【0018】
図2は個室ユニット1のサイズに関する説明図である。図2(A)は、個室ユニット1を前方から見たときの平面図であり、図2(B)は、個室ユニット1を左方から見たときの側面図である。なお、図2(A)、図2(B)に示したように、室内から見て、床の裏側になる面(以下、床の裏面17)には、キャスター18が取り付けられており、略直方体状の個室ユニット1の本体の下端側は、下方から見ると床の裏面17を囲繞する矩形枠状となっている。そして、この矩形枠状の部分が、美観等の観点から、キャスター18が外方から見えないようにするためのカバー19となっている。
【0019】
個室ユニット1の外形サイズは、左右幅W1=1782mm、キャスター18を含めた上下高H1=2285mm カバー19の下端から天面までの個室ユニット1の本体部分の上下高H2=2270mm、前後長D=1200mmである。室内の広さは、左右幅W2=1600mmで、床面積が約2mである。また上下高H3=1900mmである。そして、実施例に係る個室ユニット1は、法規によって設置場所となるビルに備えられている自動消火装置(スプリンクラー等)の引き込み工事が免除される室内サイズとなっている。すなわち、実施例に係る個室ユニット1は、設置場所の天井に設けられたスプリンクラーの引き込み工事、火災検知機や非常放送用のスピーカー等を流用するための工事が不要となり、設置コストを低減させることができるものとなっている。
【0020】
<室内設備>
個室ユニット1は、上述した什器に加え、各種電気設備を備える。図3に、個室ユニット1の室内に設置された各種電気設備の配置を示した。図3は、個室ユニット1の室内を前方から見たときの図であり、室内の天井には、LEDを光源として点灯面が前後方向に帯状に延長する照明灯31、天井埋め込み型の換気ファン32、充電池を備えて停電時に点灯する非常灯33が配置されている。また、室内の壁面には、複数のコンセントを備えた電源タップ34、分電盤ボックス40等が設置されている。さらに、実施例に係る個室ユニット1は、室内を消毒し、病原体を不活化させる機能(以下、感染抑止機能)を備えている。
【0021】
<感染抑止機能>
個室ユニット1は、感染抑止機能の構成の一つとして、UV-C帯域(100nm~290nm)にある紫外線(以下、UV-C) を照射できる紫外線照射灯35を備えている。紫外線照射灯35としては、低圧水銀ランプやUV-C帯域に発光波長を有するLED等がある。本実施例では、波長253.7nmのUV-Cを照射する直管型の低圧水銀ランプからなる殺菌灯(例えば、GL-20:パナソニック株式会社製、GL20:東芝ライテック株式会社製)を備える。紫外線照射灯(以下、殺菌灯35)は、室内の天井の左右両端側に照明灯31と並行となるように、左右の壁面から60mmの位置に配置され、机21等、室内に固定された什器の陰になる領域を除けば、室内空間を含めた室内全体にUV-Cが照射されるように配置されている。
【0022】
また、実施例に係る個室ユニット1の室内には、常時固定されている什器として机21が設置されていることから、天井に設置されている殺菌灯35から見ると、椅子22が室内になくても、常に死角となる領域が存在する。そこで、本実施例では、室内の左右壁面において、床面から200mmの位置に、天井の殺菌灯35と同じ紫外線照明灯(以下、殺菌灯36)が前後方向に延長するように設置されている。それによって、天井と壁面の殺菌灯(35,36)が点灯すると、机21によって陰になっていた領域を含めた個室ユニット1の室内全体が消毒されるようになっている。さらに、壁面の殺菌灯36が室内の低い位置に設置されていることから、椅子22の座面よりも下方にもUV-Cが照射され、机21による死角とは別の死角についても十分に消毒することができるようになっている。いずれにしても、室内の適所に補助的な殺菌灯36を設置することで、天井の殺菌灯35からみて死角となる領域を消毒することができる。
【0023】
なお、殺菌灯(35,36)用の反射板には、アルミ板の表面に紫外線反射率に優れた専用の紫外線反射膜(例えば、Hi-UVC:岡本硝子株式会社製)が塗布された、95.6%のUV-C反射率を有するものを用いている。なお、殺菌灯(35,36)の特性、及びUV-Cによる細菌やウイルスの不活化作用等については、例えば、上記非特許文献1や2に記載されている。
【0024】
また、個室ユニット1において、病原体を不活化させるのに必要な紫外線量(mJ/cm)を室内の全領域に照射するためには、適切な位置に配置された殺菌灯(35,36)を適切な時間点灯することになる。すなわち、紫外線量は、その測定位置における紫外線照度(mW/cm)に照射時間(s)を乗じた値であり、殺菌灯(35,36)の紫外線出力(W)が一定であれば、室内の大きさに応じて照射時間を調整することで必要な紫外線量を得ることができる。本実施例では、主にsars-cov-2ウイルスの不活化を目的として、床面と壁面に3.8mJ/cm以上の紫外線量が照射されるように、それぞれが20Wの紫外線出力を有する4台の殺菌灯(35,36)を、一回の点灯機会に60秒間点灯させている。
【0025】
ところで、人体に有害なUV-Cを照射する殺菌灯(35,36)は、当然のことながら、利用者が室内にいないときに点灯することになる。言い換えれば、利用者が室内にいるときには、殺菌灯(35,36)による消毒ができない。そこで実施例に係る個室ユニット1では、利用者が室内にいるときであっても、室内が常時消毒されるように、室内の壁、床、天井、及び什器(机、椅子等)の表面に、酸化タングステン(WO)を用いた光触媒(例えば、ルネキャット(登録商標):東芝マテリアル株式会社製)を含むコーティング材(以下、光触媒コーティング材)が塗布されている。この光触媒は、可視光線を含む広い波長範囲の光が照射されると強い酸化力を発生し、細菌やウイルス等の病原体は、光が照射されている状態の光触媒膜に接触すると酸化分解され、これら病原体が不活化される。
【0026】
さらに、本実施例では、光触媒膜による不活化効果を増強させるために、室内の壁、床、天井が、光反射率の高い白色のメラミン化粧板で仕上げられている。もちろん、机21等の室内にある什器についても、その表面がメラミン加工されていてもよい。室内の椅子22等については、白色に着色すれば、より好ましい。
【0027】
上述した光触媒コーティング材は、換気ファン32を経由する室内から室外への通気経路にも塗布しておけば、より好ましい。個室ユニット1に設置された換気ファン32は、本体が室内の天井取り付けられ、ダクトを介して室内の空気を室外に排気するように構成されている。そして、本実施例では、換気ファン32における空気の吸い込み口に光触媒コーティング材が塗布されたフィルタが設置されている。
【0028】
また、換気ファン32のフィルタは、照明灯31や室内の殺菌灯(35,36)の照射領域外にあることから、実施例に係る個室ユニット1では、通気経路内においてフィルタへの照射が可能な位置に、室内のものとは別の殺菌灯(以下、換気用殺菌灯)が設置されている。この換気用殺菌灯は、室内にUV-Cが漏洩しない位置に配置され、換気ファン32の動作中に点灯するようになっている。したがって、実施例に係る個室ユニット1では、換気ファン32を介して室内から室外に排出される空気を消毒することができる。そして、実施例に係る個室ユニット1に設置されている換気ファン32は、約90秒で室内の空気を入れ替えることができ、利用者が室内に病原体を持ち込んだ場合であっても、利用開始から90秒間で室内を清浄な空間にすることができる。もちろん、換気用殺菌灯に代えて、光触媒コーティング材が塗布されたフィルタに可視光を照射する照明灯(以下、換気用照明灯)を設置してもよい。
【0029】
なお,換気ファン32には、室内の空気を室外に排気せず、室内の空気を、フィルタを介して循環させるように構成されているものもある。このような換気ファン32については、換気ファン32内を循環する空気の通気経路に換気用殺菌灯を配置することができる。換気用殺菌灯が内蔵されている換気ファン32も製品として提供されており、この種の換気ファン32を採用してもよい。あるいは、ダクト等の通気経路が室外から室内への給気用と、室内から室外への排気用とに仕切られ、給気と排気とを同時に行う換気ファン32もある。このような換気ファン32では、給気経路と排気経路の少なくとも一方の途上にフィルタを設置することができる。いずれにしても、換気ファン32の通気経路の途上に、コーティング材が塗布されたフィルタと、このフィルタにUV-Cや可視光を照射する換気用殺菌灯や換気用照明灯とを配置することで、室外や室内の空気の汚染を抑止することができる。
【0030】
このように、実施例に係る個室ユニット1は、人が利用していないときは、殺菌灯(35,36)を点灯させることで室内が消毒され、利用中は、照明灯31を点灯させることで、室内において、人の手が触れたり、飛沫が付着したりする可能性のある部位が常時消毒される。さらに、換気ファン32からの通気経路も確実に消毒される。そして、上述した感染抑止機能を備えた個室ユニット1によれば、面会、会議、ワークスペース等の用途に限らず、例えば、隔離が必要な感染症が疑われる患者用の診察室等としての利用も可能となる。この種の診察室は、一般的に、屋外に仮設された空調設備のないテント内等に設置されていたが、実施例に係る個室ユニット1であれば、空調設備が整った屋内に設置することも可能となる。
【0031】
<安全機構>
上述したように、UV-Cは人体に有害である。そこで、実施例に係る個室ユニット1では、利用者がUV-Cに暴露されないように様々な安全対策が施されている。例えば、室外の操作部16に殺菌灯(35,36)の電源スイッチが配設されており、室内の利用者が誤って殺菌灯(35,36)を点灯させることがないようにしている。さらに、実施例に係る個室ユニット1は、室内に利用者がいるときは、殺菌灯(35,36)を点灯できないようにする等、多重に安全対策を施すための高度な安全機構を備えている。
【0032】
具体的には、室内には、熱線センサー(例えば、「WTK24818」:パナソニック株式会社製)を用いた人感センサー37が設置され、人感センサー37が室内の利用者を検知している間は、殺菌灯(35,36)が点灯できないようになっている。また、照明灯31が点灯中、室内の電源タップ34が使用中、換気ファン32が動作中のいずれかにあるときは、利用者が室内にいるものとして、やはり殺菌灯(35,36)が点灯できないようになっている。そして、人感センサー37が室内の利用者を検知せず、かつ照明灯31が点灯していない場合に限り、殺菌灯(35,36)の点灯が可能となる。
【0033】
加えて、電子錠14の施錠状態を検知し、殺菌灯(35,36)の点灯中は電子錠14が施錠状態となり、解錠状態では、殺菌灯(35,36)が点灯しないようにすることもできる。例えば、殺菌灯(35,36)が点灯している最中は、電子錠14が施錠状態を維持したり、殺菌灯(35,36)の点灯時に解錠すると殺菌灯(35,36)が消灯したりする。それによって、殺菌灯(35,36)の点灯中に、利用者が室内に入れないようになる。なお、当然のことながら、個室ユニット1が備える窓は、室外にUV-Cが漏れないように、UV-Cを遮断する素材(ソーダガラス、ポリカーボネート等)でできている。
【0034】
<回路構成>
次に、上述した安全機構や、個室ユニット1が備える各種機器や装置を動作させるための電気的な回路構成について説明する。図4は、個室ユニット1における電気回路の一例を示す概略図である。個室ユニット1が備える機器や装置は、設置場所となる施設の電源(施設側電源50)から給電されることで動作する。図4に示したように、施設側電源50からの給電線51は、図中点線の枠で示した室内の分電盤ボックス40内の電気回路を経由して各機器や装置に接続される。
【0035】
分電盤ボックス40内には、一般的な分電盤が備えるブレーカー41(図中「BR」と表記)や連結アース端子台(以下、端子台42)等の構成に加え、上記安全機構の動作を実現させるための制御部となるプログラムリレー43(例えば、「ZEN-10C3AR-A-V2」:オムロン株式会社製)が設置されている。また、分電盤ボックス40内には、無線LANのアクセスポイントを介してインターネットに接続するとともに扉12に配設された電子錠14とBluetooth等の所定の通信インタフェースを介して接続する中継機44(例えば、「コンセント型ゲートウエイ」:株式会社ユーエムイ製)も収容されている。中継機44は、分電盤ボックス40内の電源タップ45(図中「TAP」と表記)により給電されて動作し、例えば、インターネットやLANに接続されたコンピュータからの遠隔操作により、電子錠14の施錠や解錠を行ったり、電子錠14の暗証番号の変更等を行ったり、外部のコンピュータに施錠状態を報告したりする。
【0036】
また、個室ユニット1の室外の操作部16(図中、鎖線枠内)には、照明灯31用の電源スイッチ(図中「照明灯SW」と表記、以下、照明灯スイッチ61)、殺菌灯(35,36)用の電源スイッチ(図中「殺菌灯SW」と表記、以下、殺菌灯スイッチ62)、及び表示装置60が配設されている。表示装置60は、液晶ディスプレイ(LCD)を備えたマイクロコンピュータ(例えば、「Wio Terminal」:Seeed Technology Co.,Ltd.製)で構成されて、例えば、安全機構の動作状態等をLCDに表示する機能を有する。表示装置60は、USBケーブル52(例えば、Type-C)により中継機44と接続され、中継機44から、このUSBケーブル52を介して給電される。また、表示装置60は、プログラムリレー43の出力側となる出力リレー端子とケーブル53(例えば、二線のAGW18)を介して接続されている。なお、表示装置60への給電経路は、中継器44を経由した経路に限らず、例えば、電源タップ45にUSB-ACアダプタを接続し、表示装置60は、このUSB-ACアダプタによって給電されることとしてもよい。
【0037】
図5にプログラムリレー43周辺の電気回路の構成をより具体的に示した。プログラムリレー43は、殺菌灯(35,36)の点灯状態に応じ、表示装置60に接続されている出力リレー端子間(46-46)を短絡又は開放する。表示装置60は、この出力リレー端子間(46-46)の短絡又は開放に応じ、殺菌灯(35,36)の点灯状態等を利用者に伝えるためのメッセージ等をLCDに表示する。
【0038】
なお、マイクロコンピュータで構成されている表示装置60に、中継機44と無線LAN等を介して無線通信する機能、あるいはUSBケーブル52を介して有線通信する機能を実装しておくこともできる。それによって、中継機44に対し、殺菌灯(35,36)の点灯時に、電子錠14に暗証番号が入力されても施錠状態を維持させたり、殺菌灯(35,36)の点灯終了時に電子錠14の解錠を許可させたりすることが可能となる。
【0039】
なお、図5に示したように、実施例に係る個室ユニット1では、各機器や装置への通電経路の途上の適所にノイズフィルタ(例えば、RSHN-2016L:TDKラムダ株式会社製)が介在している。そして、通電経路は、大きく三つの経路(54~56)に分かれている。一つ目の経路は、照明灯31、換気ファン32、室内の電源タップ34(図中、「TAP」と表記)への経路54であり、二つ目の経路は、UV-Cを用いた消毒動作中に点灯させる殺菌灯(35,36)への経路55である。そして、三つ目の経路は、常時通電させておく必要がある、非常灯33や中継機44に給電する電源タップ45への経路56である。したがって、実施例に係る個室ユニット1における回路構成では、換気ファン32の動作と室内の電源タップ34への給電が照明灯スイッチ61の接続/遮断に連動する。すなわち、照明灯31を点灯することで、自動的に、照明灯31が点灯中、換気ファン32が稼働中、及び電源タップ34が使用中という、殺菌灯(35,36)の点灯を禁止する状態となる。
【0040】
上記回路構成において、プログラムリレー43は、照明灯スイッチ61が接続されると殺菌灯(35,36)への給電を遮断する。もちろん、照明灯31、換気ファン32、室内の電源タップ34のそれぞれに個別にスイッチを設け、いずれかのスイッチが接続されている場合に殺菌灯(35,36)への給電経路を遮断するようにプログラムリレー43を設定してもよい。また、プログラムリレー43は、タイマー機能を備え、殺菌灯(35,36)への給電経路を施設側電源50に接続すると、所定時間後(例えば、60秒後)に当該接続状態を遮断するように設定されている。
【0041】
なお、照明灯31、換気ファン32,及び電源タップ34を連動させず、照明灯スイッチ61とは別に、換気ファン32の電源スイッチを設置するとともに、プログラムリレー43が、照明灯31、換気ファン32、及び電源タップ34の状態として、照明灯31が点灯していること、換気ファン32が稼働中であること、及び電源タップ34のコンセントに負荷が接続されていることを個別に検知し、何れかの状態を検知すると、殺菌灯(35,36)への通電経路55を遮断するように設定してもよい。
【0042】
<個室ユニットの利用方法>
利用者が上述した感染症抑止機能と安全機構とを備えた個室ユニット1を利用する際には、例えば、利用者が室内に入るのに先立って、操作部16に配設されている殺菌灯スイッチ62を操作し、室内を所定時間消毒する。消毒の終了を表示装置60等によって確認したならば、操作部16の照明灯スイッチ61を操作して室内の照明灯31を点灯させたり、換気ファン32を稼働させたりする。次いで、暗唱番号により電子錠14を解錠して個室ユニットの利用を開始する。
【0043】
また、上述したように、実施例に係る個室ユニット1は、通信機能を備えた中継機44を介して電子錠14の施錠状態や暗証番号の変更を遠隔操作によって設定できるようになっている。そこで、個室ユニット1をオンライン予約システムに連係させてもよい。図6は、個室ユニット1に連係するオンライン予約システム100のネットワーク構成を示す図である。オンライン予約システム100は、インターネット103に接続された、個室ユニット1の利用サービスを提供する事業者等が設置したコンピュータからなる管理サーバー101と、利用者が操作するスマートフォンやパーソナルコンピュータ等の利用者端末102と、一つ以上の個室ユニット1とを連係させる。
【0044】
図6に示したネットワーク構成において、利用者が所望の日時に個室ユニット1を利用するためには、例えば、管理サーバー101が、個室ユニット1の空き室状況を管理し、各個室ユニット1の予約状況を、Webページ等を介して利用者端末102に表示させる。利用者は、利用者端末102を操作して、自身の連絡先(例えば、メールアドレス)と利用日時とを管理サーバー101に伝えて個室ユニット1の利用予約をする。
【0045】
管理サーバー101は、利用者端末102より、利用者が所定の個室ユニット1に対する利用予約を受け付けると、予約された利用日時にのみ有効な暗証番号を生成し、その暗証番号を電子メールや、予約を受け付けたWebページ等を介して利用者に伝える。
【0046】
管理サーバー101は、予約日時が到来すると、利用者が予約した個室ユニット1の中継機44に、電子錠14の暗証番号を利用者に伝えたものに書き換えるように要求する。中継機44は、当該要求に従って電子錠14の暗証番号を書き換える。
【0047】
===その他の実施例===
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0048】
個室ユニット1の室内に、天井の照明灯31に加え、当該照明灯31から見て死角となる位置に可視光を照射するための別の照明灯を設置してもよい。それによって、個室ユニット1の利用中に、天井の照明灯31から見て死角となる領域も消毒される。
【0049】
実施例に係る個室ユニット1では、透明の窓(11L,11C,11R)が設置されて、外方から室内の状態を確認することができるようになっていたが、診察室、更衣室、授乳室等の用途に対応して、窓(11L,11C,11R)をすりガラス状にしたり、スモークフィルムを貼着したりして、外方から室内が見えないようにすることもできる。
【0050】
実施例に係る個室ユニット1の形状は、略直方体に限らず、球形、筒状等、適宜な外観に変更することが可能である。殺菌灯(35,36)や照明灯31の数、形態(直管型、電球型等)、取り付け位置等は、室内の什器(21,22)の数や配置、室内の内面形状等に応じて適宜に変更可能である。
【0051】
実施例に係る個室ユニット1は、消防設備の設置が免除されるサイズとなるように設計されていたが、条例や個室ユニット1のサイズ、あるいは設置場所での要求に応じ、防災設備を付加してもよい。あるいは、屋内に防音室を施工する場合等と同様に、設置場所の防災設備を利用できるように天井側の構造を変更することも可能である。
【0052】
上記実施例の構成の一部について、他の構成の追加や削除、置換をすることが可能である。例えば、プログラムリレー43、表示装置60、中継機44を、それぞれ、同様の機能を有する他の機器に置換してもよい。プログラムリレー43、表示装置60、中継機44は、個別の機器で構成されていたが、これらの機器の機能の一部や全てが一つの機器に統合されていてもよい。
【0053】
個室ユニット1は、利用者が入れ替わるごとに確実に室内が消毒されるように構成されていてもよい。例えば、サムターンが回転される等して電子錠14が室内側から施錠や解錠されたことを検知するように個室ユニット1を構成しておく。個室ユニット1は、室内側からの解錠と扉12の開閉とを検知すると、利用者が退出したと判断し、電子錠14を施錠する。そして、次の利用者が消毒作業を行わない限り電子錠14を解錠させないようにする。
【0054】
電子錠14を解錠するための暗証コードは、キー入力される暗証番号に限らず、磁気カードに記録されたコード、QRコード、或いはスマートフォンやICカードに記録されたコード等であってもよい。そして、電子錠14は、これらの暗証コードの入力装置として、磁気カードリーダー、カメラ、近距離無線通信装置(例えば、Bluetooth,NFC(Near Field Communication)を用いた通信装置等)を備えていることとしてもよい。電子錠14は、複数の方式で暗唱コードを読み込めるようになっていてもよい。
【0055】
人感センサー37は、熱線センサーを用いたものに限らない。例えば、カメラによって撮影した映像を画像認識技術によって室内の利用者の有無を判別することもできる。
【0056】
人感センサー37に加え、静電センサーやリミットスイッチ等を用いて扉12の開閉状態を検知する開閉センサーを設けてもよい。そして、個室ユニット1は、その開閉センサーにより扉12が開いていることが検知されると、点灯中の殺菌灯(35,36)を消灯させたり、消灯中の殺菌灯(35,36)の点灯させないようにしたりして、殺菌灯(35,36)の点灯を禁止するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 移動設置式個室(個室ユニット)、11L,11C,11R 窓、12 扉、
13 ドアノブ、14 電子錠、16 操作部、 31 照明灯、32 換気ファン、
34,45 電源タップ、35,36 紫外線照射灯(殺菌灯)、
37 人感センサー、40 分電盤ボックス、42 連結アース端子台(端子台)、
43 プログラムリレー、44 中継機、60 表示装置、
61 照明灯の電源スイッチ(照明灯スイッチ)、
62 殺菌灯の電源スイッチ(殺菌灯スイッチ)、100 オンライン予約システム、101 管理サーバー、102 利用者端末 103 インターネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6