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特開2022-94184車両用ブレーキ液圧発生装置及び車両用ブレーキ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094184
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】車両用ブレーキ液圧発生装置及び車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 11/16 20060101AFI20220617BHJP
   B60T 11/04 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B60T11/16 B
B60T11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207066
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深見 翔
【テーマコード(参考)】
3D047
【Fターム(参考)】
3D047BB32
3D047BB33
3D047BB34
3D047BB41
3D047CC08
3D047FF17
3D047FF22
3D047HH10
(57)【要約】
【課題】一例として、ペダルが踏み込まれる方向において小型化可能な車両用ブレーキ液圧発生装置を得る。
【解決手段】実施形態に係る車両用ブレーキ液圧発生装置は、ハウジングと、前記ハウジングに少なくとも部分的に収容されて当該ハウジングに対して往復運動可能なピストンと、を有し、前記ハウジングと前記ピストンとの相対的な移動により前記ハウジングの内部の空間の容積が変化する、マスタシリンダと、ペダルを有し、前記ハウジングと前記ピストンとが相対的に往復運動する移動方向に対して平行な又は斜めに傾いた回転軸まわりに回転可能な、操作部材と、前記回転軸まわりに回転する前記操作部材と、前記移動方向に相対移動する前記ハウジング及び前記ピストンのうち少なくとも一方と、の間で機械的に力を伝達可能とする伝達部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに少なくとも部分的に収容されて当該ハウジングに対して往復運動可能なピストンと、を有し、前記ハウジングと前記ピストンとの相対的な移動により前記ハウジングの内部の空間の容積が変化する、マスタシリンダと、
ペダルを有し、前記ハウジングと前記ピストンとが相対的に往復運動する移動方向に対して平行な又は斜めに傾いた回転軸まわりに回転可能な、操作部材と、
前記回転軸まわりに回転する前記操作部材と、前記移動方向に相対移動する前記ハウジング及び前記ピストンのうち少なくとも一方と、の間で機械的に力を伝達可能とする伝達部と、
を備えた車両用ブレーキ液圧発生装置。
【請求項2】
前記回転軸が前記移動方向と平行である、請求項1の車両用ブレーキ液圧発生装置。
【請求項3】
前記伝達部は、前記マスタシリンダ及び前記操作部材の少なくとも一方に設けられた方向変換部を有し、
前記方向変換部は、前記移動方向及び前記回転軸のうち少なくとも一方に対して斜めに傾いた傾斜面を有し、前記マスタシリンダに設けられた場合に、回転する前記操作部材に前記傾斜面を押されることで前記ハウジングと前記ピストンとを前記移動方向に相対的に移動させ、前記操作部材に設けられた場合に、当該操作部材の回転に伴って前記傾斜面で前記ハウジング又は前記ピストンを前記移動方向に押す、
請求項1又は請求項2の車両用ブレーキ液圧発生装置。
【請求項4】
前記ハウジングを前記移動方向に移動可能に保持するレール、
をさらに備え、
前記ハウジング及び前記ピストンはそれぞれ、前記レールに対して前記移動方向に移動可能である、
請求項1乃至請求項3のいずれか一つの車両用ブレーキ液圧発生装置。
【請求項5】
前記ハウジングを車両の車体に対して固定可能な固定装置、
をさらに備えた請求項1乃至請求項3のいずれか一つの車両用ブレーキ液圧発生装置。
【請求項6】
前記マスタシリンダ及び前記操作部材を保持する保持部材、
をさらに備えた請求項1乃至請求項5のいずれか一つの車両用ブレーキ液圧発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一つの車両用ブレーキ液圧発生装置、を備えた車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用ブレーキ液圧発生装置及び車両用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧系のマスタシリンダにペダルのような操作部材が連結された液圧発生装置が知られている。例えば、ペダルは、車両の運転手に踏み込まれると、回転軸まわりに回転する。回転したペダルは、リンクを介して、マスタシリンダのピストンを直線的に移動させる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-117315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、ペダルの回転軸と、マスタシリンダの移動方向とが直交している。すなわち、マスタシリンダの長手方向(軸線方向)が、ペダルが踏み込まれる方向と平行になるように配置されている。このため、車両の前後方向において液圧発生装置が大型化してしまう。
【0005】
そこで、本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ペダルが踏み込まれる方向において小型化可能な車両用ブレーキ液圧発生装置と、当該車両用ブレーキ液圧発生装置を備えた車両用ブレーキ装置と、を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る車両用ブレーキ液圧発生装置は、一例として、ハウジングと、前記ハウジングに少なくとも部分的に収容されて当該ハウジングに対して往復運動可能なピストンと、を有し、前記ハウジングと前記ピストンとの相対的な移動により前記ハウジングの内部の空間の容積が変化する、マスタシリンダと、ペダルを有し、前記ハウジングと前記ピストンとが相対的に往復運動する移動方向に対して平行な又は斜めに傾いた回転軸まわりに回転可能な、操作部材と、前記回転軸まわりに回転する前記操作部材と、前記移動方向に相対移動する前記ハウジング及び前記ピストンのうち少なくとも一方と、の間で機械的に力を伝達可能とする伝達部と、を備える。よって、一例としては、操作部材のペダルが踏み込まれる方向は、マスタシリンダの長手方向(軸線方向)と直交又は斜めに交差する。従って、ブレーキ液圧発生装置は、操作部材のペダルが踏み込まれる方向において小型化されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るブレーキ装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、第1の実施形態のマスタシリンダユニットを示す斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態のマスタシリンダユニットを示す断面図である。
図4図4は、第1の実施形態のペダルが踏み込まれたマスタシリンダユニットを示す断面図である。
図5図5は、第2の実施形態に係るマスタシリンダユニットを示す断面図である。
図6図6は、第3の実施形態に係るマスタシリンダユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係るブレーキ装置10の構成を示す模式図である。ブレーキ装置10は、自動車のような車両1に搭載される。なお、ブレーキ装置10は、他の車両に搭載されても良い。ブレーキ装置10は、車両用ブレーキ装置の一例である。本実施形態のブレーキ装置10は、例えば、油圧ブレーキである。なお、ブレーキ装置10におけるエネルギーの伝達媒体は、油に限られず、気体又は他の液体であっても良い。
【0010】
図1に示すように、ブレーキ装置10は、加圧部11と、液路12,13と、アクチュエータ14と、前輪Wfを制動するホイールシリンダ15,16と、後輪Wrを制動する17,18と、ブレーキECU(electronic control unit)19とを有する。本実施形態において、前輪Wfが駆動輪であり、後輪Wrが非駆動輪である。ブレーキ装置10は、さらに、回生制御部及び電源装置を有する。
【0011】
加圧部11は、液路12を通じて前輪Wfのホイールシリンダ15,16に接続される。加圧部11は、液路13を通じて後輪Wrのホイールシリンダ17,18に接続される。加圧部11は、ホイールシリンダ15~18を加圧可能に構成される。
【0012】
アクチュエータ14は、加圧部11とホイールシリンダ15~18との間に設けられる。アクチュエータ14は、第1の液圧出力部14aと、第2の液圧出力部14bとを有する。第1の液圧出力部14aは、液路12に設けられ、ホイールシリンダ15,16の圧力を調整する。第2の液圧出力部14bは、液路13に設けられ、ホイールシリンダ17,18の圧力を調整する。
【0013】
アクチュエータ14は、いわゆるESC(electric stability control)アクチュエータであり、ホイールシリンダ15~18の液圧を個別に調整することができる。アクチュエータ14は、ブレーキECU19の制御に応じて、例えばABS(anti-lock braking system)制御、横滑り防止制御、及びトラクションコントロールのような種々の制御を行う。
【0014】
加圧部11は、液路12,13の一部と、マスタシリンダユニット21と、電動シリンダ22と、リザーバ23と、連通路24と、ブレーキ液供給路25と、連通制御弁26と、マスタカット弁27と、を有する。マスタシリンダユニット21は、車両用ブレーキ液圧発生装置の一例である。
【0015】
マスタシリンダユニット21は、マスタシリンダ31と、操作部材32とを有する。マスタシリンダ31は、リザーバ23に接続され、操作部材32の操作量に応じて機械的にアクチュエータ14の第1の液圧出力部14aにブレーキ液を供給する。
【0016】
マスタシリンダユニット21は、第1の液圧出力部14aを通じてホイールシリンダ15,16を加圧可能に構成されている。マスタシリンダユニット21には、ストロークシミュレータ34及びシミュレータカット弁35が設けられている。ストロークシミュレータ34は、操作部材32の操作に対して反力(負荷)を発生させる。シミュレータカット弁35は、ノーマルクローズ型の電磁弁である。
【0017】
電動シリンダ22は、リザーバ23に接続されている。電動シリンダ22は、液路12を介してホイールシリンダ15,16の液圧を調整し、液路13を通じてホイールシリンダ17,18の液圧を調整する。電動シリンダ22は、シリンダ22aと、電気モータ22bと、ピストン22cと、出力室22dと、付勢部材22eと、を有する。
【0018】
電気モータ22bは、回転運動を直線運動に変換する直動機構22fを介してピストン22cに接続されている。電動シリンダ22は、シリンダ22a内に単一の出力室22dが形成されているシングルタイプの電動シリンダである。
【0019】
ピストン22cは、電気モータ22bの駆動によりシリンダ22a内をシリンダ22aの長手方向(軸線方向)に摺動する。出力室22dは、シリンダ22aとピストン22cにより区画されており、ピストン22cの移動により容積が変化する。出力室22dは、リザーバ23及びアクチュエータ14に接続されている。出力室22dとリザーバ23とは、ピストン22cが初期位置のときに連通する。
【0020】
液路12は、マスタシリンダ31と第1の液圧出力部14aとを接続する。液路13は、電動シリンダ22と第2の液圧出力部14bとを接続している。連通路24は、液路12と液路13とを接続している。
【0021】
連通制御弁26は、連通路24に設けられたノーマルクローズ型の電磁弁である。連通制御弁26は、電動シリンダ22による第1の液圧出力部14aへのブレーキ液の供給を許可又は禁止する。
【0022】
マスタカット弁27は、液路12のうち、液路12と連通路24との接続部12aと、マスタシリンダユニット21との間に設けられたノーマルオープン型の電磁弁である。マスタカット弁27は、マスタシリンダユニット21から第1の液圧出力部14aへのブレーキ液の供給を許可又は禁止する。ブレーキ液供給路25は、リザーバ23と電動シリンダ22とを接続している。リザーバ23は、ブレーキ液を貯留し、内部の圧力は大気圧に保たれている。
【0023】
加圧部11は、ストロークセンサ37と、圧力センサ38,39とをさらに有する。ストロークセンサ37は、操作部材32のストロークを検出する。圧力センサ38は、マスタシリンダ31の液圧(マスタ圧)を検出する。圧力センサ39は、電動シリンダ22の出力液圧を検出する。
【0024】
加圧部11は、操作部材32の操作により発生する液圧と、制御により発生させる液圧とが液圧的に分離されたバイワイヤ構成を形成可能に構成される。ブレーキECU19は、例えば、イグニッションがオンされ、又は電気自動車において車両1が起動されると、加圧部11をバイワイヤモードに切り替える。
【0025】
バイワイヤモードでは、連通制御弁26が開弁され、マスタカット弁27が閉弁され、シミュレータカット弁35が開弁される。ブレーキECU19は、バイワイヤモードにおいて、目標制動力及び実回生制動力に基づいて、目標液圧制動力を設定する。ブレーキECU19は、目標液圧制動力に基づいて、電動シリンダ22を制御する。
【0026】
本実施形態において、マスタシリンダユニット21は、車両1の車室1a内に配置される。車室1aは、車両1の運転手及び搭乗者が搭乗する空間であり、例えばシート及びステアリングホイールが配置される。一方、電動シリンダ22、リザーバ23、連通路24、ブレーキ液供給路25、連通制御弁26、マスタカット弁27、ストロークシミュレータ34、及びシミュレータカット弁35は、車両1のエンジンルーム1bに収容される。なお、加圧部11の部品の配置はこの例に限られない。例えば、マスタシリンダ31の一部がエンジンルーム1bに位置しても良い。また、リザーバ23が車室1aに配置されても良い。
【0027】
図2は、第1の実施形態のマスタシリンダユニット21を示す斜視図である。図3は、第1の実施形態のマスタシリンダユニット21を示す断面図である。マスタシリンダユニット21は、上述のマスタシリンダ31及び操作部材32と、図3に示す保持部材41及び固定装置42を有する。
【0028】
各図面に示されるように、本明細書において、便宜上、X軸、Y軸及びZ軸が定義される。X軸とY軸とZ軸とは、互いに直交する。X軸は、車両1の左右方向に延びている。Y軸は、車両1の前後方向に延びている。Z軸は、車両1の上下方向に延びている。
【0029】
さらに、本明細書において、X方向、Y方向及びZ方向が定義される。X方向は、X軸に沿う方向であって、X軸の矢印が示す+X方向(右方向)と、X軸の矢印の反対方向である-X方向(左方向)とを含む。Y方向は、Y軸に沿う方向であって、Y軸の矢印が示す+Y方向(前方向)と、Y軸の矢印の反対方向である-Y方向(後方向)とを含む。Z方向は、Z軸に沿う方向であって、Z軸の矢印が示す+Z方向(上方向)と、Z軸の矢印の反対方向である-Z方向(下方向)とを含む。
【0030】
マスタシリンダ31は、ハウジング51とピストン52とを有する。ハウジング51は、シリンダとも称され得る。ハウジング51は、シリンダ部55と、ガイド部56とを有する。
【0031】
シリンダ部55は、有底の円筒状に形成される。本実施形態において、シリンダ部55は、X方向に延びている。なお、シリンダ部55は、他の方向に延びていても良い。-X方向におけるシリンダ部55の端部55aは、塞がれている。一方、+X方向におけるシリンダ部55の端部55bは、開放されている。
【0032】
ガイド部56は、-Z方向におけるシリンダ部55の端部に接続されている。ガイド部56は、X-Y平面上に広がる略四角形の板状に形成されている。本実施形態において、ガイド部56は、X方向に延びている。
【0033】
X方向において、ガイド部56は、シリンダ部55よりも長い。ガイド部56は、+X方向におけるシリンダ部55の端部55bを越えて+X方向に突出するように延びている。なお、シリンダ部55及びガイド部56の長さは、この例に限られない。
【0034】
図2に示すように、ガイド部56は、X軸と直交する断面において、略台形状に形成されている。すなわち、Y方向におけるガイド部56の長さは、シリンダ部55に近づくに従って短くなる。なお、ガイド部56の形状は、この例に限られない。
【0035】
図3に示すように、ピストン52は、+X方向におけるシリンダ部55の端部55bを通り、シリンダ部55の内部に少なくとも部分的に収容される。ピストン52は、略円柱状に形成される。本実施形態において、ピストン52は、X方向に延びている。
【0036】
シリンダ部55の円筒状の内周面55cと、ピストン52とは、軸心Axc上に同心に配置される。軸心Axcは、シリンダ部55の内周面55cと、ピストン52との、共通の中心であり、X方向に延びている。
【0037】
ピストン52は、シリンダ部55の内周面55cに少なくとも部分的に接触し、又は僅かな隙間を介して面している。ピストン52は、内周面55cに対してX方向に摺動可能である。言い換えると、ピストン52は、シリンダ部55に対して相対的に、軸方向Daに往復運動(reciprocate)可能である。軸方向Daは、軸心Axcに沿う方向であり、移動方向の一例である。本実施形態において、軸方向Daは、X方向である。なお、軸方向Daは、X方向と異なっていても良い。
【0038】
シリンダ部55の内部に、油室58が設けられる。油室58は、ハウジングの内部の空間の一例である。油室58は、例えば、-X方向におけるピストン52の端部52aと、シリンダ部55の内周面55c及び底面55dとにより規定(形成、区画)される空間である。底面55dは、円筒状のシリンダ部55の底に位置し、ピストン52に向く。
【0039】
油室58に、作動油が導入されている。マスタシリンダ31の油室58は、例えば、第1の液圧出力部14a、リザーバ23、マスタカット弁27、及びシミュレータカット弁35に接続されている。
【0040】
ハウジング51とピストン52との軸方向の相対的な移動により、油室58の容積が変化する。例えば、ピストン52が底面55dに近づくことで、油室58の容積が減少し、油室58内の作動油の圧力が上昇する。シリンダ部55の内周面55cと、ピストン52と、の間に、例えばシールが設けられる。これにより、ハウジング51とピストン52との間の隙間から作動油が漏れることが抑制される。
【0041】
図2に示すように、操作部材32は、ペダル32aを有する。ペダル32aは略板状に形成され、車両1の運転手から踏み込み操作を受ける。操作部材32は、ペダル32aが受けた踏み込み操作に応じて、回転軸Axrまわりに回転する。
【0042】
回転軸Axrは、操作部材32の回転運動の中心となる仮想的な直線である。本実施形態における操作部材32の回転運動は、一つの回転軸Axrを有し、円形の軌道を描く。しかし、回転軸Axrの回転運動は、複数の回転軸Axrを有し、例えば楕円状の軌道を描いても良い。この場合、複数の回転軸Axrは略平行となる。
【0043】
本実施形態における操作部材32は、ペダル32aの端部に回転軸Axrが配置される。しかし、操作部材32はこの例に限られない。操作部材32は、ペダル32aに連結されたアームを有し、当該アームの端部に回転軸Axrを有しても良い。
【0044】
本実施形態における操作部材32は、いわゆるオルガン式の操作部材であり、回転軸Axrが操作部材32の下方の端部に設けられる。ペダル32aは、車両1の運転手から、踏み下ろす操作を受ける。なお、操作部材32は、この例に限られない。操作部材32は、回転軸Axrが操作部材32の上方の端部に設けられた、いわゆる吊り下げ式の操作部材であっても良い。
【0045】
上述のように、ペダル32aは、車両1の運転手から踏み込み操作を受ける。具体的には、ペダル32aは、運転手の足から略+Y方向に押される。ペダル32aが受ける力の方向は、回転軸Axrまわりに回転する方向(周方向)の成分を含む。このため、ペダル32aが踏み込み操作を受けると、操作部材32が回転軸Axrまわりに回転する。
【0046】
保持部材41は、マスタシリンダ31及び操作部材32を保持する。すなわち、マスタシリンダ31と操作部材32とは、保持部材41を介して互いに連結されている。このため、マスタシリンダユニット21は、一つのモジュール部品として扱われることができる。保持部材41は、ベースプレート61と、ヒンジ62とを有する。
【0047】
ベースプレート61は、X-Y平面上に広がる略四角形の板状に形成される。図3に示すように、ベースプレート61は、略+Z方向に向く上面61aと、略-Z方向に向く下面61bとを有する。さらに、ベースプレート61にレール65が設けられる。
【0048】
レール65は、ベースプレート61の一部に設けられる。レール65は、ベースプレート61の上面61aから窪んだ凹面65aを有する。凹面65aは、ベースプレート61の上面61aに開口する溝65bを形成する。溝65bは、X方向に延びる有底の窪みである。Y方向における溝65bの長さは、上面61aに近づくに従って短くなる。
【0049】
溝65bに、ハウジング54のガイド部56が嵌め込まれる。レール65の凹面65aは、Y方向及びZ方向におけるガイド部56の移動と、ガイド部56の回転と、を制限する。一方、凹面65aは、X方向におけるガイド部56の移動を許容する。すなわち、レール65は、ハウジング51をX方向(軸方向Da)に移動可能に保持する。これにより、ハウジング51及びピストン52はそれぞれ、レール65に対して軸方向Daに移動することができる。
【0050】
図2に示すように、ヒンジ62は、例えば、レール65から-Y方向に離間した位置で、ベースプレート61の上面61aに設けられる。ヒンジ62は、操作部材32を回転軸Axrまわりに回転可能に保持する。
【0051】
本実施形態において、回転軸Axrは、軸心Axcから略-Y方向に離間した位置でX方向に延びている。すなわち、回転軸Axrは、ハウジング51とピストン52とが相対的に往復運動する軸方向Daに対して平行に配置される。なお、回転軸Axrは、軸方向Daに対して斜めに傾いていても良い。例えば、軸方向Daは、回転軸Axrに対して前方(+Y方向)、後方(-Y方向)、上方(+Z方向)、又は下方(-Z方向)に斜めに傾いても良い。
【0052】
図3に示すように、固定装置42は、レール71と、スライダ72と、ストッパ73を有する。レール71は、車両1の車体1cに固定され、Y方向に延びている。スライダ72は、ベースプレート61の下面61bに固定されている。スライダ72は、車体1cに対してY方向に移動可能に、レール71に保持される。
【0053】
ストッパ73は、例えばスライダ72に取り付けられる。ストッパ73は、スライダ72がレール71に対して移動することを制限する。また、ストッパ73は、例えば車両1の運転手の操作に応じて、スライダ72の移動の制限を解除する。ストッパ73は、例えば、爪、バネ、及びレバーのような種々の部品を有する。
【0054】
固定装置42は、マスタシリンダ31、操作部材32、及び保持部材41を、解除可能に、車体1cに固定することができる。このため、固定装置42は、マスタシリンダ31、操作部材32、及び保持部材41のY方向における位置を調整することができる。なお、固定装置42は、マスタシリンダ31、操作部材32、及び保持部材41を、位置調整不可能に車体1cに固定しても良い。
【0055】
マスタシリンダユニット21は、伝達部80をさらに有する。伝達部80は、回転軸Axrまわりに回転する操作部材32と、軸方向Daに相対移動するハウジング51及びピストン52と、の間で機械的(力学的)に力を伝達可能とする。言い換えると、伝達部80は、当接又は連結した部品間の力の伝達を通じて、操作部材32と、ハウジング51及びピストン52と、の間で力を伝達させる。
【0056】
伝達部80は、操作部材32の回転をハウジング51及びピストン52の直動に変換することができる。反対に、伝達部80は、ハウジング51及びピストン52の直動を操作部材32の回転に変換することもできる。
【0057】
伝達部80は、回転楔81と、第1の直動楔82と、第2の直動楔83とを有する。回転楔81、第1の直動楔82、及び第2の直動楔83はそれぞれ、方向変換部の一例である。なお、伝達部80は、楔に限らず、カム、リンク、ギヤ、又は他の力を機械的に伝達可能な機構を有しても良い。
【0058】
回転楔81は、操作部材32に設けられる。回転楔81は、操作部材32の一部である。このため、回転楔81は、操作部材32と一体に、回転軸Axrまわりに回転することができる。回転楔81は、例えば、操作部材32のペダル32aから、略+Y方向に突出している。なお、回転楔81は、この例に限られない。回転楔81は、二つの傾斜面81a,81bを有する。
【0059】
二つの傾斜面81a,81bは、略鏡面対象に形成され、-Z方向へ向かって先細るように延びている。傾斜面81a,81bはそれぞれ、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。
【0060】
傾斜面81aは、+X方向におけるピストン52の端部52bに、斜めに向く。傾斜面81aは、傾斜面81bよりも、ピストン52の端部52bに近い。傾斜面81aは、-Z方向における傾斜面81aの端が、+Z方向における傾斜面81aの端よりも端部52bから遠くなるように、軸方向Da及び回転軸Axrに対して斜めに傾いている。
【0061】
傾斜面81bは、+Z方向における傾斜面81bの端が、-Z方向における傾斜面81bの端よりもピストン52の端部52bから遠くなるように、軸方向Da及び回転軸Axrに対して斜めに傾いている。傾斜面81aと傾斜面81bとは、軸方向Da(回転軸Axr)に対して相反する方向に傾斜している。例えば、傾斜面81aが軸方向Daに対して-30°傾いている場合、傾斜面81bは軸方向Daに対して30°傾いている。なお、傾斜面81a,81bの傾斜角度はこの例に限られない。
【0062】
傾斜面81a,81bの少なくとも一部は、回転軸Axrから略+Y方向に離間している。傾斜面81a,81bは、軸心Axcの延長線上に位置する。なお、傾斜面81a,81bは、軸心Axcから離間していても良い。この場合、操作部材32が回転軸Axrまわりに回転することで、傾斜面81a,81bは軸心Axcの延長線上まで移動し、又は軸心Axcを横切ることができても良い。
【0063】
第1の直動楔82は、マスタシリンダ31のハウジング51に設けられる。このため、第1の直動楔82は、ハウジング51と一体に、ピストン52及びレール65に対して軸方向Daに移動することができる。
【0064】
第1の直動楔82は、ガイド部56に設けられ、シリンダ部55から+X方向に離間している。第1の直動楔82は、傾斜面82aを有する。傾斜面82aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。
【0065】
傾斜面82aは、回転楔81の傾斜面81bに面する。傾斜面82aは、回転楔81の傾斜面81bと略平行に形成される。傾斜面82aは、回転楔81の傾斜面81bに当接している。これにより、回転楔81及び第1の直動楔82は、操作部材32とハウジング51との間で機械的(力学的)に力を伝達することができる。なお、傾斜面82aと傾斜面81bとの間に、他の部品が介在しても良い。
【0066】
第2の直動楔83は、マスタシリンダ31のピストン52に設けられる。このため、第2の直動楔83は、ピストン52と一体に、ハウジング51及びレール65に対して軸方向Daに移動することができる。
【0067】
第2の直動楔83は、+X方向におけるピストン52の端部52bに設けられる。なお、第2の直動楔83は、ピストン52から取り外し可能であっても良い。第2の直動楔83は、第1の直動楔82と、ピストン52の端部52bと、の間に位置する。第2の直動楔83は、傾斜面83aを有する。傾斜面83aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。
【0068】
傾斜面83aは、回転楔81の傾斜面81aに面する。傾斜面83aは、回転楔81の傾斜面81aと略平行に形成される。傾斜面83aは、回転楔81の傾斜面81aに当接している。これにより、回転楔81及び第2の直動楔83は、操作部材32とピストン52との間で機械的(力学的)に力を伝達することができる。なお、傾斜面83aと傾斜面81aとの間に、他の部品が介在しても良い。
【0069】
回転楔81の傾斜面81a,81bは、第1の直動楔82の傾斜面82aと、第2の直動楔83の傾斜面83aと、の間に位置する。回転楔81は、-Z方向に移動することで、第1の直動楔82の傾斜面82aと、第2の直動楔83の傾斜面83aと、を互いに離間するように押すことができる。反対に、第1の直動楔82の傾斜面82aと、第2の直動楔83の傾斜面83aとは、互いに近づくことで、回転楔81を+Z方向に押すことができる。
【0070】
図4は、第1の実施形態のペダル32aが踏み込まれたマスタシリンダユニット21を示す断面図である。例えば、車両1の運転手が操作部材32のペダル32aを略+Y方向に踏み込むことで、操作部材32が回転軸Axrまわりに回転する。これにより、図4に示すように、回転楔81が略-Z方向に移動するように回転軸Axrまわりに回転する。
【0071】
回転楔81が略-Z方向に移動することで、回転楔81の傾斜面81bは、ハウジング51に設けられた第1の直動楔82の傾斜面82aを+X方向(軸方向Da)に押す。すなわち、回転楔81は、操作部材32の回転に伴って、傾斜面81bでハウジング51を+X方向(軸方向Da)に押す。言い換えると、第1の直動楔82は、回転する操作部材32に設けられた回転楔81に傾斜面82aを押されることで、ハウジング51を+X方向(軸方向Da)に移動させる。ハウジング51は、レール65に沿って車体1cに対して移動することができる。
【0072】
また、回転楔81が略-Z方向に移動することで、回転楔81の傾斜面81aは、ピストン52に設けられた第2の直動楔83の傾斜面83aを-X方向(軸方向Da)に押す。すなわち、回転楔81は、操作部材32の回転に伴って、傾斜面81aでピストン52を-X方向(軸方向Da)に押す。言い換えると、第2の直動楔83は、回転する操作部材32に設けられた回転楔81に傾斜面83aを押されることで、ピストン52を-X方向(軸方向Da)に移動させる。
【0073】
上述のように、操作部材32の回転に応じて、ハウジング51が+X方向に移動し、ピストン52が-X方向に移動する。これにより、ピストン52がシリンダ部55の底面55dに近づき、油室58の容積が減少し、油室58内の液圧が上昇する。
【0074】
運転手がペダル32aの踏み込み操作を解除すると、油室58内の液圧が、ハウジング51を-X方向に移動させ、ピストン52を+X方向に移動させる。これにより、第1の直動楔82の傾斜面82a及び第2の直動楔83の傾斜面83aは、回転楔81を略+Z方向に押す。これにより、操作部材32が踏み込み操作と反対方向に回転し、初期位置へ戻る。
【0075】
上述のように、軸心Axcと、傾斜面81a,81bの少なくとも一部とは、回転軸Axrから略+Y方向に離間している。また、ペダル32aのうち運転手が踏み込む部分と回転軸Axrとの間の距離は、軸心Axcと回転軸Axrとの間の距離よりも、一般的には長い。このため、レバー比により、傾斜面81a,81bがハウジング51及びピストン52を押す力が大きくなる。
【0076】
以上説明された第1の実施形態に係るブレーキ装置10において、操作部材32は、回転軸Axrまわりに回転可能である。伝達部80は、回転軸Axrまわりに回転する操作部材32と、軸方向Daに相対移動するハウジング51及びピストン52のうち少なくとも一方と、の間で機械的に力を伝達可能とする。操作部材32の回転軸Axrは、ハウジング51とピストン52とが相対的に往復運動する軸方向Daに対して平行又は斜めに傾いている。これにより、操作部材32のペダル32aが踏み込まれる略+Y方向は、マスタシリンダ31の軸方向Daと略直交又は斜めに交差する。従って、マスタシリンダユニット21は、操作部材32が踏み込まれるY方向において小型化されることができ、例えば車両1の車室1a内に容易に配置可能となる。また、マスタシリンダ31は、軸心Axcが運転手に向くことを抑制でき、車両1の衝突時における安全性を向上できる。
【0077】
回転軸Axrは、軸方向Daと平行である。これにより、操作部材32が踏み込まれる略+Y方向は、マスタシリンダ31の軸方向Daと直交する。従って、マスタシリンダユニット21は、操作部材32が踏み込まれるY方向において小型化されることができ、例えば車両1の車室1a内に容易に配置可能となる。
【0078】
伝達部80は、マスタシリンダ31又は操作部材32に設けられた回転楔81、第1の直動楔82、及び第2の直動楔83を有する。回転楔81、第1の直動楔82、及び第2の直動楔83は、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いた傾斜面81a,81b,82a,83aを有する。マスタシリンダ31に設けられた第1の直動楔82及び第2の直動楔83は、回転する操作部材32に傾斜面82a,83aを押されることでハウジング51とピストン52とを軸方向Daに相対的に移動させる。操作部材32に設けられた回転楔81は、操作部材32の回転に伴って傾斜面81a,81bでハウジング51又はピストン52を軸方向Daに押す。これにより、伝達部80は、リンクやハーネスを有した複雑な構造が不要となり、簡素化可能となる。
【0079】
レール65は、ハウジング51を軸方向Daに移動可能に保持する。ハウジング51及びピストン52はそれぞれ、レール65に対して軸方向Daに移動可能である。これにより、マスタシリンダユニット21は、例えば、操作部材32の回転に伴ってハウジング51及びピストン52の両方を互いに近づけるように移動させることができる。従って、マスタシリンダユニット21は、操作部材32の回転量に対する油室58の容積の変化を大きくすることができる。例えば、マスタシリンダユニット21は、ハウジング51が固定されている場合に比べ、操作部材32の回転量に対する油室58の容積の変化を二倍にすることができる。
【0080】
保持部材41は、マスタシリンダ31及び操作部材32を保持する。これにより、マスタシリンダユニット21は、マスタシリンダ31、操作部材32、及び保持部材41を含む一つのモジュールとして扱われることができる。従って、例えば、マスタシリンダユニット21は、車両1の車体1cに容易に取り付けられることができ、車両1の組み立てを容易にできる。
【0081】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、図5を参照して説明する。なお、以下の複数の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0082】
図5は、第2の実施形態に係るマスタシリンダユニット21を示す断面図である。図5に示すように、第2の実施形態の伝達部80は、回転楔81、第1の直動楔82、及び第2の直動楔83の代わりに、第1の回転楔91と、第2の回転楔92と、第1の直動楔93と、第2の直動楔94とを有する。第1の回転楔91、第2の回転楔92、第1の直動楔93、及び第2の直動楔94はそれぞれ、方向変換部の一例である。
【0083】
第1の回転楔91及び第2の回転楔92は、操作部材32に設けられる。第1の回転楔91及び第2の回転楔92は、操作部材32の一部である。このため、第1の回転楔91及び第2の回転楔92は、操作部材32と一体に、回転軸Axrまわりに回転することができる。
【0084】
第1の回転楔91と第2の回転楔92とは、X方向に互いに離間した位置で、操作部材32のペダル32aから略+Y方向に突出している。なお、第1の回転楔91及び第2の回転楔92は、この例に限られない。X方向において、マスタシリンダ31は、第1の回転楔91と第2の回転楔92との間に位置する。なお、マスタシリンダ31の配置はこの例に限られない。
【0085】
第1の回転楔91は、傾斜面91aを有する。傾斜面91aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。傾斜面91aは、+X方向におけるピストン52の端部52bに、斜めに向く。傾斜面91aは、-Z方向における傾斜面91aの端が、+Z方向における傾斜面91aの端よりも端部52bから遠くなるように、軸方向Da及び回転軸Axrに対して斜めに傾いている。
【0086】
第2の回転楔92は、傾斜面92aを有する。傾斜面92aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。傾斜面92aは、-X方向におけるシリンダ部55の端部55aに、斜めに向く。傾斜面92aは、-Z方向における傾斜面92aの端が、+Z方向における傾斜面92aの端よりも端部55aから遠くなるように、軸方向Da及び回転軸Axrに対して斜めに傾いている。
【0087】
傾斜面91aと傾斜面92aとは、軸方向Da(回転軸Axr)に対して相反する方向に傾斜している。例えば、傾斜面91aが軸方向Daに対して-30°傾いている場合、傾斜面92aは軸方向Daに対して30°傾いている。なお、傾斜面91a,92aの傾斜角度はこの例に限られない。
【0088】
傾斜面91a,92aの少なくとも一部は、回転軸Axrから略+Y方向に離間している。傾斜面91a,92aは、軸心Axcの延長線上に位置する。なお、傾斜面91a,92aは、軸心Axcから離間していても良い。この場合、操作部材32が回転軸Axrまわりに回転することで、傾斜面91a,92aは軸心Axcの延長線上まで移動し、又は軸心Axcを横切ることができても良い。
【0089】
第1の直動楔93は、マスタシリンダ31のハウジング51に設けられる。このため、第1の直動楔93は、ハウジング51と一体に、ピストン52及びレール65に対して軸方向Daに移動することができる。
【0090】
第1の直動楔93は、-X方向におけるシリンダ部55の端部55aに設けられる。なお、第1の直動楔93は、ハウジング51から取り外し可能であっても良い。第1の直動楔93は、傾斜面93aを有する。傾斜面93aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。
【0091】
傾斜面93aは、第2の回転楔92の傾斜面92aに面する。傾斜面93aは、第2の回転楔92の傾斜面92aと略平行に形成される。傾斜面93aは、第2の回転楔92の傾斜面92aに当接している。これにより、第2の回転楔92及び第1の直動楔93は、操作部材32とハウジング51との間で機械的(力学的)に力を伝達することができる。なお、傾斜面93aと傾斜面92aとの間に、他の部品が介在しても良い。
【0092】
第2の直動楔94は、マスタシリンダ31のピストン52に設けられる。このため、第2の直動楔94は、ピストン52と一体に、ハウジング51及びレール65に対して軸方向Daに移動することができる。
【0093】
第2の直動楔94は、+X方向におけるピストン52の端部52bに設けられる。なお、第2の直動楔94は、ピストン52から取り外し可能であっても良い。第2の直動楔94は、傾斜面94aを有する。傾斜面94aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。
【0094】
傾斜面94aは、第1の回転楔91の傾斜面91aに面する。傾斜面94aは、第1の回転楔91の傾斜面91aと略平行に形成される。傾斜面94aは、第1の回転楔91の傾斜面91aに当接している。これにより、第1の回転楔91及び第2の直動楔94は、操作部材32とピストン52との間で機械的(力学的)に力を伝達することができる。なお、傾斜面94aと傾斜面91aとの間に、他の部品が介在しても良い。
【0095】
第1の回転楔91及び第2の回転楔92は、-Z方向に移動することで、第1の直動楔93の傾斜面93aと、第2の直動楔94の傾斜面94aと、を互いに近づくように押すことができる。反対に、第1の直動楔93の傾斜面93aと、第2の直動楔94の傾斜面94aとは、互いに離間することで、第1の回転楔91及び第2の回転楔92を+Z方向に押すことができる。
【0096】
例えば、車両1の運転手が操作部材32のペダル32aを略+Y方向に踏み込むことで、操作部材32が回転軸Axrまわりに回転する。これにより、第1の回転楔91及び第2の回転楔92が、略-Z方向に移動するように回転軸Axrまわりに回転する。
【0097】
第2の回転楔92が略-Z方向に移動することで、第2の回転楔92の傾斜面92aは、ハウジング51に設けられた第1の直動楔93の傾斜面93aを+X方向(軸方向Da)に押す。すなわち、第2の回転楔92は、操作部材32の回転に伴って、傾斜面92aでハウジング51を+X方向(軸方向Da)に押す。言い換えると、第1の直動楔93は、回転する操作部材32に設けられた第2の回転楔92に傾斜面93aを押されることで、ハウジング51を+X方向(軸方向Da)に移動させる。ハウジング51は、レール65に沿って車体1cに対して移動することができる。
【0098】
また、第1の回転楔91が略-Z方向に移動することで、第1の回転楔91の傾斜面91aは、ピストン52に設けられた第2の直動楔94の傾斜面94aを-X方向(軸方向Da)に押す。すなわち、第1の回転楔91は、操作部材32の回転に伴って、傾斜面91aでピストン52を-X方向(軸方向Da)に押す。言い換えると、第2の直動楔94は、回転する操作部材32に設けられた第1の回転楔91に傾斜面94aを押されることで、ピストン52を-X方向(軸方向Da)に移動させる。
【0099】
上述のように、操作部材32の回転に応じて、ハウジング51が+X方向に移動し、ピストン52が-X方向に移動する。これにより、ピストン52がシリンダ部55の底面55dに近づき、油室58の容積が減少し、油室58内の作動油の圧力が上昇する。
【0100】
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態について、図6を参照して説明する。図6は、第3の実施形態に係るマスタシリンダユニット21を示す断面図である。図6に示すように、第3の実施形態の保持部材41は、レール65の代わりに、ブラケット101を有する。
【0101】
ブラケット101は、ベースプレート61の上面61aから突出している。ブラケット101は、例えば、Y-Z平面上に広がる板状に形成される。ブラケット101に、挿通孔105と、複数の固定孔106とが設けられる。挿通孔105及び固定孔106は、ブラケット101をX方向に貫通する。
【0102】
ブラケット101に、ハウジング51が固定される。例えば、+X方向におけるシリンダ部55の端部55bが、ブラケット101に接触する。固定孔106を通る複数のネジ108が、シリンダ部55をブラケット101に固定する。なお、ネジ108によるネジ止めの代わりに、溶接又は接着剤により、シリンダ部55がブラケット101に固定されても良い。なお、第3の実施形態において、ハウジング51のガイド部56は省略されている。
【0103】
上述のように、ハウジング51が保持部材41に固定される。このため、固定装置42は、ハウジング51を車体1cに対して固定することができる。固定装置42は、ハウジング51が車体1cに対してX方向(軸方向Da)に移動することを制限する。なお、固定装置42は、ストッパ73を車両1の運転手の操作されることで、スライダ72及びハウジング51をY方向に移動させることができる。
【0104】
ピストン52は、ブラケット101の挿通孔105を通って、シリンダ部55の内部に少なくとも部分的に収容される。ピストン52は、ブラケット101に固定されたシリンダ部55に対して、軸方向Daに往復運動可能である。
【0105】
第3の実施形態の伝達部80は、回転楔81、第1の直動楔82、及び第2の直動楔83の代わりに、回転楔111と直動楔112とを有する。回転楔111及び直動楔112はそれぞれ、方向変換部の一例である。
【0106】
回転楔111は、操作部材32に設けられる。回転楔111は、操作部材32の一部である。このため、回転楔111は、操作部材32と一体に、回転軸Axrまわりに回転することができる。回転楔111は、例えば、操作部材32のペダル32aから、略+Y方向に突出している。なお、回転楔111は、この例に限られない。
【0107】
回転楔111は、傾斜面111aを有する。傾斜面111aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。傾斜面111aは、+X方向におけるピストン52の端部52bに、斜めに向く。傾斜面111aは、-Z方向における傾斜面111aの端が、+Z方向における傾斜面111aの端よりも端部52bから遠くなるように、軸方向Da及び回転軸Axrに対して斜めに傾いている。
【0108】
傾斜面111aは、軸心Axcの延長線上に位置する。なお、傾斜面111aは、軸心Axcから離間していても良い。この場合、操作部材32が回転軸Axrまわりに回転することで、傾斜面111aは軸心Axcの延長線上まで移動し、又は軸心Axcを横切ることができても良い。
【0109】
直動楔112は、マスタシリンダ31のピストン52に設けられる。このため、直動楔112は、ピストン52と一体に、ハウジング51に対して軸方向Daに移動することができる。
【0110】
直動楔112は、+X方向におけるピストン52の端部52bに設けられる。なお、直動楔112は、ピストン52から取り外し可能であっても良い。直動楔112は、傾斜面112aを有する。傾斜面112aは、軸方向Da及び回転軸Axrのうち少なくとも一方に対して斜めに傾いている。
【0111】
傾斜面112aは、回転楔111の傾斜面111aに面する。傾斜面112aは、回転楔111の傾斜面111aと略平行に形成される。傾斜面112aは、回転楔111の傾斜面111aに当接している。これにより、回転楔111及び直動楔112は、操作部材32とピストン52との間で機械的(力学的)に力を伝達することができる。なお、傾斜面112aと傾斜面111aとの間に、他の部品が介在しても良い。
【0112】
回転楔111は、-Z方向に移動することで、直動楔112の傾斜面112aを、シリンダ部55の底面55dに向かって押すことができる。反対に、直動楔112の傾斜面112aは、底面55dから遠ざかることで、回転楔111を+Z方向に押すことができる。
【0113】
例えば、車両1の運転手が操作部材32のペダル32aを略+Y方向に踏み込むことで、操作部材32が回転軸Axrまわりに回転する。これにより、回転楔111が略-Z方向に移動するように回転軸Axrまわりに回転する。
【0114】
回転楔111が略-Z方向に移動することで、回転楔111の傾斜面111aは、ピストン52に設けられた直動楔112の傾斜面112aを-X方向(軸方向Da)に押す。すなわち、回転楔111は、操作部材32の回転に伴って、傾斜面111aでピストン52を-X方向(軸方向Da)に押す。言い換えると、直動楔112は、回転する操作部材32に設けられた回転楔111に傾斜面112aを押されることで、ピストン52を-X方向(軸方向Da)に移動させる。
【0115】
上述のように、操作部材32の回転に応じて、ピストン52が-X方向に移動する。これにより、ピストン52がシリンダ部55の底面55dに近づき、油室58の容積が減少し、油室58内の作動油の圧力が上昇する。
【0116】
以上説明された第3の実施形態のブレーキ装置10において、固定装置42は、ハウジング51を車両1の車体1cに対して固定可能である。これにより、マスタシリンダユニット21は、簡素化可能となる。
【0117】
以上の第1乃至第3の実施形態において、伝達部80は、傾斜面81a,81b,91a,92a,111aと、傾斜面82a,83a,93a,94a,112aとの摺動により、操作部材32の回転と、ハウジング51及びピストン52の直動とを相互に変換する。しかし、伝達部80は、傾斜面81a,81b,91a,92a,111aと、傾斜面82a,83a,93a,94a,112aとの一方を有し、他方を省略しても良い。
【0118】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る車両用ブレーキ液圧発生装置は、一例として、ハウジングと、前記ハウジングに少なくとも部分的に収容されて当該ハウジングに対して往復運動可能なピストンと、を有し、前記ハウジングと前記ピストンとの相対的な移動により前記ハウジングの内部の空間の容積が変化する、マスタシリンダと、ペダルを有し、前記ハウジングと前記ピストンとが相対的に往復運動する移動方向に対して平行な又は斜めに傾いた回転軸まわりに回転可能な、操作部材と、前記回転軸まわりに回転する前記操作部材と、前記移動方向に相対移動する前記ハウジング及び前記ピストンのうち少なくとも一方と、の間で機械的に力を伝達可能とする伝達部と、を備える。よって、一例としては、操作部材のペダルが踏み込まれる方向は、マスタシリンダの長手方向と直交又は斜めに交差する。従って、ブレーキ液圧発生装置は、操作部材のペダルが踏み込まれる方向において小型化されることができ、例えば車両の車室内に容易に配置可能となる。
【0119】
上記車両用ブレーキ液圧発生装置では、一例として、前記回転軸が前記移動方向と平行である。よって、一例としては、操作部材が踏み込まれる方向は、マスタシリンダの長手方向と直交する。従って、ブレーキ液圧発生装置は、操作部材のペダルが踏み込まれる方向において小型化されることができ、例えば車両の車室内に容易に配置可能となる。
【0120】
上記車両用ブレーキ液圧発生装置では、一例として、前記伝達部は、前記マスタシリンダ及び前記操作部材の少なくとも一方に設けられた方向変換部を有し、前記方向変換部は、前記移動方向及び前記回転軸のうち少なくとも一方に対して斜めに傾いた傾斜面を有し、前記マスタシリンダに設けられた場合に、回転する前記操作部材に前記傾斜面を押されることで前記ハウジングと前記ピストンとを前記移動方向に相対的に移動させ、前記操作部材に設けられた場合に、当該操作部材の回転に伴って前記傾斜面で前記ハウジング又は前記ピストンを前記移動方向に押す。よって、一例としては、伝達部は、リンクやハーネスを有した複雑な構造が不要となり、簡素化可能となる。
【0121】
上記車両用ブレーキ液圧発生装置は、一例として、前記ハウジングを前記移動方向に移動可能に保持するレール、をさらに備え、前記ハウジング及び前記ピストンはそれぞれ、前記レールに対して前記移動方向に移動可能である。よって、一例としては、ブレーキ液圧発生装置は、例えば、操作部材の回転に伴ってハウジング及びピストンの両方を互いに近づけるように移動させることができる。従って、ブレーキ液圧発生装置は、操作部材の回転量に対するハウジングの内部の空間の容積の変化を大きくすることができる。
【0122】
なお、他の例として、前記ハウジング及び前記ピストンのうち前記ピストンを前記レールに対して移動しないようベースプレートに固定するなどして前記ハウジングのみ前記レールに対して前記移動方向に移動可能に構成しても良い。この場合であっても、ペダル操作に基づく前記ハウジングの移動によって前記ハウジングの内部の空間の容積を変化させることができる。
【0123】
上記車両用ブレーキ液圧発生装置は、一例として、前記ハウジングを車両の車体に対して固定可能な固定装置、をさらに備える。よって、一例としては、ブレーキ液圧発生装置は、簡素化可能となる。
【0124】
上記車両用ブレーキ液圧発生装置は、一例として、前記マスタシリンダ及び前記操作部材を保持する保持部材、をさらに備える。よって、一例としては、ブレーキ液圧発生装置は、マスタシリンダ、操作部材、及び保持部材を含む一つのモジュールとして扱われることができる。従って、例えば、ブレーキ液圧発生装置は、車両の車体に容易に取り付けられることができ、車両の組み立てを容易にできる。
【0125】
以上説明された少なくとも一つの実施形態に係る車両用ブレーキ装置は、一例として、上記車両用ブレーキ液圧発生装置、を備える。よって、一例としては、ブレーキ装置は、ブレーキ液圧発生装置を操作部材が踏み込まれる方向において小型化することができ、車両の車室内にブレーキ液圧発生装置を容易に配置することができる。
【0126】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態および変形例はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態や変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各実施形態や各変形例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。
【符号の説明】
【0127】
1…車両、1c…車体、10…ブレーキ装置(車両用ブレーキ装置)、21…マスタシリンダユニット(車両用ブレーキ液圧発生装置)、31…マスタシリンダ、32…操作部材、32a…ペダル、41…保持部材、42…固定装置、51…ハウジング、52…ピストン、58…油室(空間)、65…レール、80…伝達部、81…回転楔(方向変換部)、82…第1の直動楔(方向変換部)、83…第2の直動楔(方向変換部)、91…第1の回転楔(方向変換部)、92…第2の回転楔(方向変換部)、93…第1の直動楔(方向変換部)、94…第2の直動楔(方向変換部)、111…回転楔(方向変換部)、112…直動楔(方向変換部)、81a,81b,82a,83a,91a,92a,93a,94a,111a,112a…傾斜面、Axr…回転軸、Da…軸方向(移動方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6