(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094188
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】キャリアテープ用リールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 75/18 20060101AFI20220617BHJP
B65H 75/14 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
B65H75/18 Z
B65H75/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207072
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】592256140
【氏名又は名称】兼子電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】兼子 敏
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA03
3F058AB01
3F058AC00
3F058BB11
3F058CA00
3F058DA05
3F058DB03
3F058DB05
3F058DC01
3F058DC04
(57)【要約】
【課題】キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることができる技術を提供すること。
【解決手段】第1側板の各第1フランジ部22および第2側板の第2フランジ部32は相互に重なっており、第1陥没部23の突出部23cが、対向する第2陥没部33の凹部33cに嵌合されている。相互に重ねられている突出部23c側の第1重複部23bと、凹部33c側の第2重複部33bとが陥没方向(図において下方)の外面32aから突出しており、さらに、相互に重ねられている第1陥没部23の第1基部23aおよび第2陥没部33の第2基部33aから外方に広がっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品が保持されたキャリアテープを捲回するための合成樹脂製のキャリアテープ用リールであって、
少なくとも前記キャリアテープの幅を隔てて相対向して配置された第1側板および第2側板を備えており、
前記第1側板には、
回転軸を挿通するための第1挿通孔と、
前記第1挿通孔の周囲に形成された第1フランジ部と、
前記第1フランジ部に形成された第1陥没部と、が形成されており、
前記第2側板には、
前記回転軸を挿通するための第2挿通孔と、
前記第2挿通孔の周囲に形成された第2フランジ部と、
前記第2フランジ部に形成された第2陥没部と、が形成されており、
前記第1フランジ部および前記第2フランジ部は相互に重なっており、
前記第1陥没部の突出部が前記第2陥没部の凹部に嵌合されていることを特徴とするキャリアテープ用リール。
【請求項2】
嵌合された前記第1陥没部の突出部および前記第2陥没部の凹部のうち、相互に重ねられている部分が陥没方向の外面から突出しており、さらに、相互に重ねられている前記第1陥没部および前記第2陥没部の各基部から外方に広がっていることを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープ用リール。
【請求項3】
前記第1陥没部が前記第1挿通孔の周囲に複数形成されており、
前記第2陥没部が前記第1陥没部と対向する位置の前記第2挿通孔の周囲に複数形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキャリアテープ用リール。
【請求項4】
部品が保持されたキャリアテープを捲回するための合成樹脂製のキャリアテープ用リールであって、
少なくとも前記キャリアテープの幅を隔てて相対向して配置された第1側板および第2側板を備えており、
前記第1側板には、
回転軸を挿通するための第1挿通孔と、
前記第1挿通孔の周囲に形成された第1フランジ部と、
前記第1フランジ部に形成された陥没部と、が形成されており、
前記第2側板には、
前記回転軸を挿通するための第2挿通孔と、
前記第2挿通孔の周囲に形成された第2フランジ部と、
前記第2フランジ部に形成されており、前記陥没部から突出した突出部の外径よりも小径に形成され嵌合孔と、が形成されており、
前記第1フランジ部および前記第2フランジ部は相互に重なっており、
前記陥没部の突出部が前記嵌合孔に嵌合されていることを特徴とするキャリアテープ用リール。
【請求項5】
前記嵌合孔から突出した前記突出部が、前記嵌合孔の外周縁から外方に広がっていることを特徴とする請求項4に記載のキャリアテープ用リール。
【請求項6】
前記陥没部が前記第1挿通孔の周囲に複数形成されており、
前記嵌合孔が前記陥没部と対向する位置の前記第2挿通孔の周囲に複数形成されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のキャリアテープ用リール。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のキャリアテープ用リールを製造する製造方法であって、
前記第1側板が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第1側板群と、前記第2側板が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第2側板群とを相互に対向させ、相互に対向する各第1側板および各第2側板をそれぞれ重ねる第1工程と、
前記第1工程により相互に重ねられた前記各第1側板および前記各第2側板を相互に押圧し、前記各第1側板の各第1陥没部の各突出部を対向する前記各第2側板の各第2陥没部の各凹部に嵌合するとともに、前記第1側板群および前記第2側板群を前記キャリアテープ用リール単位に切断する第2工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載のキャリアテープ用リールを製造する製造方法であって、
前記第1側板が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第1側板群と、前記第2側板が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第2側板群とを相互に対向させ、相互に対向する各第1側板および各第2側板をそれぞれ重ねる第1工程と、
前記第1工程により相互に重ねられた前記各第1側板および前記各第2側板を相互に押圧し、前記各第1側板の各陥没部の各突出部を対向する前記各第2側板の各嵌合孔に嵌合するとともに、前記第1側板群および前記第2側板群を前記キャリアテープ用リール単位に切断する第2工程と、
を有することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品が保持されたキャリアテープを捲回するためのキャリアテープ用リールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のキャリアテープ用リールの説明図であり、同図(A)は平面図、(B)は(A)の右側面図である。従来のキャリアテープ用リール60は、円板状に形成された第1側板70および第2側板80を備えている。第1側板70および第2側板80は、少なくともキャリアテープ(図示省略)の幅を隔てて相対向して配置されている。第1側板70の中心には、キャリアテープ用リール60を回転可能に軸支するための回転軸(図示省略)を挿通するための第1挿通孔73が貫通形成されており、第2側板80の中心には、上記回転軸を挿通するための第2挿通孔(図示省略)が貫通形成されている。第1側板70の第1挿通孔73の周囲には、第1フランジ72が形成されており、第2側板80の第2挿通孔の周囲には、第2フランジ82(
図6(B))が形成されている。キャリアテープ用リール60は、ポリスチレンにより形成されている。
第1フランジ72および第2フランジ82が相互に接触している接触部90は、溶着されている。
図6(A)において符号91は、溶着部位を示す。溶着部位91は、回転軸の半径方向に沿って所定間隔置きに複数形成されている。各溶着部位91は、公知の熱溶着装置によって熱溶着されている。このように、従来のキャリアテープ用リール60は、第1側板70および第2側板80の接触部を熱溶着することにより形成されている。また、キャリアテープ用リール60には、キャリアテープ用リール60に捲回される部品の識別番号などの情報が印刷されたラベル100が貼付されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来のキャリアテープ用リールは、第1側板70および第2側板80の接触部を熱溶着することにより形成されているため、製造工程において、各溶着部位91を冷却する時間を確保する必要があるため、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりが悪いという問題がある。
【0005】
そこで、本願発明は、上記の問題を解決するために創出されたものであって、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1発明)
上述した目的を達成するため、本願の第1発明に係るキャリアテープ用リールは、
部品が保持されたキャリアテープを捲回するための合成樹脂製のキャリアテープ用リール(10)であって、
少なくともキャリアテープの幅を隔てて相対向して配置された第1側板(20(
図1))および第2側板(30)を備えており、
第1側板(20)には、
回転軸を挿通するための第1挿通孔(27)と、
第1挿通孔(27)の周囲に形成された第1フランジ部(22(
図2))と、
第1フランジ部(22)に形成された第1陥没部(23)と、が形成されており、
第2側板(30)には、
回転軸を挿通するための第2挿通孔と、
第2挿通孔の周囲に形成された第2フランジ部(32)と、
第2フランジ部(32)に形成された第2陥没部(33(
図2))と、が形成されており、
第1フランジ部(22)および第2フランジ部(32)は相互に重なっており、
第1陥没部(23)の突出部(23c(
図2(B))が第2陥没部(33)の凹部(33c)に嵌合されていることを特徴とする。
【0007】
(第1発明の効果)
第1側板および第2側板は、第1側板の第1フランジ部に形成された第1陥没部の突出部が、第2側板の第2フランジ部に形成された第2陥没部の凹部に嵌合されることにより相互に接合されているため、第1側板および第2側板を熱溶着する必要が無く、熱溶着部位を冷却する時間を確保する必要が無いので、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることができる。
また、第1フランジ部および第2フランジ部は、それぞれ第1側板および第2側板において相対的に強度の高い部分であり、その強度の高い部分において相互に接合されるため、接合強度を高めることができる。
【0008】
(第2発明)
本願の第2発明に係るキャリアテープ用リールは、前述した第1発明に係るキャリアテープ用リール(10)において、
嵌合された第1陥没部(23)の突出部(23c(
図2(B))および第2陥没部(33)の凹部(33c)のうち、相互に重ねられている部分(23b,33b)が陥没方向の外面(32a)から突出しており、さらに、相互に重ねられている第1陥没部および第2陥没部の各基部(23a,33a)から外方に広がっていることを特徴とする。
【0009】
(第2発明の効果)
嵌合された第1陥没部の突出部および第2陥没部の凹部のうち、相互に重ねられている部分が陥没方向の外面から突出しており、さらに、相互に重ねられている第1陥没部および第2陥没部の各基部から外方に広がっているため、第1陥没部および第2陥没部が相互に外れることがなく、第1側板および第2側板を接合することができる。
つまり、第1側板および第2側板を接合するために接着テープや接着剤を使用しないため、使用しなくなったキャリアテープ用リールを合成樹脂製品の再生用原料にすることができるので、産業廃棄物として廃棄する必要がない。
しかも、キャリアテープ用リールに両面接着テープや接着剤を接着する工程が不要なため、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることもできる。
【0010】
(第3発明)
本願の第3発明に係るキャリアテープ用リールは、前述した第1発明または第2発明に係るキャリアテープ用リール(10)において、
第1陥没部(23)が第1挿通孔(27)の周囲に複数形成されており、
第2陥没部(33)が第1陥没部(23)と対向する位置の第2挿通孔の周囲に複数形成されていることを特徴とする。
【0011】
(第3発明の効果)
第1陥没部が第1挿通孔の周囲に複数形成されており、第2陥没部が第1陥没部と対向する位置の第2挿通孔の周囲に複数形成されているため、第1側板および第2側板は、回転軸の周囲の複数箇所において相互に接合された状態になり、回転軸の周囲の剛性を高めることができるので、キャリアテープ用リールが回転したときの回転振れによる振動を抑制することができる。
【0012】
(第4発明)
本願の第4発明に係るキャリアテープ用リールは、
部品が保持されたキャリアテープを捲回するための合成樹脂製のキャリアテープ用リール(10)であって、
少なくともキャリアテープの幅を隔てて相対向して配置された第1側板(20)および第2側板(30)を備えており、
第1側板(20)には、
回転軸を挿通するための第1挿通孔(27)と、
第1挿通孔(27)の周囲に形成された第1フランジ部(22)と、
第1フランジ部(22)に形成された陥没部(23(
図3))と、が形成されており、
第2側板(20)には、
回転軸を挿通するための第2挿通孔と、
第2挿通孔の周囲に形成された第2フランジ部(32)と、
第2フランジ部(32)に形成されており、陥没部(23)から突出した突出部(23c(
図3))の外径よりも小径に形成され嵌合孔(33d)と、が形成されており、
第1フランジ部(22)および第2フランジ部(32)は相互に重なっており、
陥没部(23)の突出部(23c)が嵌合孔(33d)に嵌合されていることを特徴とする。
【0013】
(第4発明の効果)
第1側板および第2側板は、第1側板の第1フランジ部に形成された陥没部の突出部が、第2側板の第2フランジ部に形成された嵌合孔に嵌合されることにより相互に接合されているため、第1側板および第2側板を熱溶着する必要が無く、熱溶着部位を冷却する時間を確保する必要が無いので、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることができる。
また、第1フランジ部および第2フランジ部は、それぞれ第1側板および第2側板において相対的に強度の高い部分であり、その強度の高い部分において相互に接合されるため、接合強度を高めることができる。
【0014】
(第5発明)
本願の第5発明に係るキャリアテープ用リールは、前述した第4発明に係るキャリアテープ用リール(10)において、
嵌合孔(33d)から突出した突出部(23c)が、嵌合孔(33d)の外周縁(33e)から外方に広がっていることを特徴とする。
【0015】
(第5発明の効果)
嵌合孔から突出した突出部が、嵌合孔の外周縁から外方に広がっているため、突出部および嵌合孔が相互に外れることがなく、第1側板および第2側板を接合することができる。
つまり、第1側板および第2側板を接合するために接着テープや接着剤を使用しないため、使用しなくなったキャリアテープ用リールを合成樹脂製品の再生用原料にすることができるので、産業廃棄物として廃棄する必要がない。
しかも、キャリアテープ用リールに両面接着テープや接着剤を接着する工程が不要なため、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることもできる。
【0016】
(第6発明)
前述した目的を達成するため、本願の第6発明に係るキャリアテープ用リールは、前述した第4発明または第5発明に係るキャリアテープ用リール(10)において、
陥没部(23)が第1挿通孔(27)の周囲に複数形成されており、
嵌合孔(33d)が陥没部(23)と対向する位置の第2挿通孔の周囲に複数形成されていることを特徴とする。
【0017】
(第6発明の効果)
陥没部が第1挿通孔の周囲に複数形成されており、嵌合孔が陥没部と対向する位置の第2挿通孔の周囲に複数形成されているため、第1側板および第2側板は、回転軸の周囲の複数箇所において相互に接合された状態になり、回転軸の周囲の剛性を高めることができるので、キャリアテープ用リールが回転したときの回転振れによる振動を抑制することができる。
【0018】
(第7発明)
本願の第7発明に係る製造方法は、
前述した第1発明ないし第3発明のいずれか1つのキャリアテープ用リール(10)を製造する製造方法であって、
第1側板(20)が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第1側板群と、第2側板(30)が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第2側板群とを相互に対向させ、相互に対向する各第1側板(20)および各第2側板(30)をそれぞれ重ねる第1工程と、
第1工程により相互に重ねられた各第1側板(20)および各第2側板(30)を相互に押圧し、各第1側板(20)の各第1陥没部(23)の各突出部(23c)を対向する各第2側板(30)の各第2陥没部(33)の各凹部(33c)に嵌合するとともに、第1側板群および第2側板群をキャリアテープ用リール(10)単位に切断する第2工程と、
を有することを特徴とする。
【0019】
(第7発明の効果)
各第1側板および各第2側板の接合と、キャリアテープ用リール単位の切断とを同時に行うことができるため、キャリアテープ用リールの製造の歩留まりを良くすることができる。
【0020】
(第8発明)
本願の第8発明に係る製造方法は、
前述した第4発明ないし第7発明のいずれか1つのキャリアテープ用リール(10)を製造する製造方法であって、
第1側板(20)が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第1側板群と、第2側板(30)が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第2側板群とを相互に対向させ、相互に対向する各第1側板(20)および各第2側板(30)をそれぞれ重ねる第1工程と、
第1工程により相互に重ねられた各第1側板(20)および各第2側板(30)を相互に押圧し、各第1側板(20)の各陥没部(23)の各突出部(23c)を対向する各第2側板(30)の各嵌合孔(33d)に嵌合するとともに、第1側板群および第2側板群をキャリアテープ用リール(10)単位に切断する第2工程と、
を有することを特徴とする。
【0021】
(第8発明の効果)
各第1側板および各第2側板の接合と、キャリアテープ用リール単位の切断とを同時に行うことができるため、キャリアテープ用リールの製造の歩留まりを良くすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のキャリアテープ用リールおよびその製造方法によれば、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るキャリアテープ用リールの説明図であり、(A)は平面図、(B)は右側面図である。
【
図2】(A)は
図1に示すキャリアテープ用リールの第1フランジ部の拡大図であり、(B)は(A)のA-A矢視断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るキャリアテープ用リールにおける接合部分の断面図である。
【
図6】従来のキャリアテープ用リールの説明図であり、(A)は平面図、(B)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〈第1実施形態〉
本発明の第1実施形態に係るキャリアテープ用リールおよびその製造方法について図を参照しつつ説明する。
[キャリアテープ用リールの構造]
本発明の実施形態に係るキャリアテープ用リールの構造について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るキャリアテープ用リール10は、円板形状に形成された第1側板20および第2側板30を備えている。第1側板20および第2側板30は、少なくともキャリアテープ(図示省略)の幅を隔てて相対向して配置されている。本実施形態では、キャリアテープ用リール10は、PET(ポリエチレンテレフタラート)により形成されている。第1側板20の中心には、キャリアテープ用リール10の回転軸(図示省略)を挿通するための第1挿通孔27が形成されている。第1挿通孔27の周囲には、複数の第1フランジ部22が突出形成されている。
【0025】
本実施形態では、各第1フランジ部22は、第1挿通孔27の中心、つまり、第1側板20の回転中心と同軸状に配置されている。本実施形態では、第1フランジ部22は、第1側板20の回転中心と同軸状の円周を4等分した各領域にそれぞれ配置されており、計4つの第1フランジ部22が形成されている。また、第1側板20には、キャリアテープ用リール10を検出するためのセンサが検出用に用いるための複数のセンサ孔24が貫通形成されている。また、第1側板20には、バーコードやQRコード(登録商標)などの情報コード25が印刷されている。情報コード25は、キャリアテープ用リール10に捲回されたキャリアテープに保持される部品を識別するための情報である。本実施形態では、キャリアテープ用リール10は、黒色に形成されており、白色の情報コード25が印刷されている。また、第1側板20には、キャリアテープ用リール10の識別情報などが刻印されている。
【0026】
第2側板30は第1側板20と同一の形状に形成されており、第2側板30の中心には、キャリアテープ用リール10の回転軸(図示省略)を挿通するための第2挿通孔(図示省略)が形成されている。第2挿通孔の周囲には、複数の第2フランジ部32が突出形成されている。本実施形態では、各第2フランジ部32は、第2挿通孔の中心、つまり、第2側板30の回転中心と同軸状に配置されている。本実施形態では、第2フランジ部32は、第2側板30の回転中心と同軸状の円周を4等分した各領域にそれぞれ配置されており、計4つの第2フランジ部32が形成されている。
【0027】
第1側板20の各第1フランジ部22には、第1陥没部23が形成されている。本実施形態では、1つの第1フランジ部22のうち、円周方向の両端に第1陥没部23が1つずつ形成されている。また、各第1陥没部23は、それぞれ第1側板20の板面と平行に切断した際の形状(横断面形状)が円形に形成されている。同様に、第2側板30の各第2フランジ部32には、第2陥没部33(
図2(B))が形成されており、本実施形態では、1つの第2フランジ部32のうち、円周方向の両端に第2陥没部33が1つずつ形成されている。各第2陥没部33は、それぞれ第2側板30の板面と平行に切断した際の形状(横断面形状)が円形に形成されている。
【0028】
図1(B)に示すように、第1側板20の各第1フランジ部22および第2側板30の第2フランジ部32は相互に重なっており、
図2(B)に示すように、各第1陥没部23の各突出部23cが、対向する各第2陥没部33の各凹部33cに嵌合されている。また、嵌合された第1陥没部23の突出部23cおよび第2陥没部33の凹部33cのうち、相互に重ねられている突出部23c側の第1重複部23bと、凹部33c側の第2重複部33bとが陥没方向(図において下方)の外面32aから突出しており、さらに、相互に重ねられている第1陥没部23の第1基部23aおよび第2陥没部33の第2基部33aから外方に広がっている。図示の例では、第1側板20の第1陥没部23が第2側板30の方向に突出しているため、第2側板30の表面が外面32aに相当する。
なお、
図2(B)に示す例では、第1陥没部23および第2陥没部33の相互に重ねられている部分のうち、外面32aから突出した部分がキノコ状を呈しているが、さらに扁平な形状を呈するように第1陥没部23および第2陥没部33を相互に嵌合することもできる。換言すると、第1陥没部23および第2陥没部33が相互に扁平状に潰れており、第2重複部33bが外面32aに接触している形状でも良い。
【0029】
[キャリアテープ用リールの製造方法]
次に、本実施形態に係るキャリアテープ用リールの製造方法について図を参照しつつ説明する。
(第1工程)
第1側板20が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第1側板群と、第2側板30が真空成形または圧空成形により連続成形されて成る合成樹脂製の第2側板群とを相互に対向させ、相互に対向する各第1側板20および各第2側板30をそれぞれ重ねる。
図5は、相互に重ねられた第1側板群および第2側板群により構成された側板群200を示す。側板群200において、各キャリアテープ用リール10の外周に対応する部分には、切断予定線201が設定されている。
【0030】
(第2工程)
次に、第1工程により相互に重ねられた各第1側板20および各第2側板30を相互に押圧し、各第1側板20の各第1陥没部23の各突出部23cを対向する各第2側板30の各第2陥没部33の各凹部33cに嵌合するとともに、第1側板群および第2側板群をキャリアテープ用リール10単位に切断する。相互に重ねられた各第1側板20および各第2側板30を相互に押圧する装置としては、各第1側板20および各第2側板30のうち、剛性の高い部分を相互に押圧する押圧部材を進退駆動する装置を用いる。例えば、相対的に剛性の高い各第1フランジ部22の内側の底部周縁、あるいは、各第1陥没部23の周縁を押圧する押圧部材を備えた装置を用いる。また、平面状に載置した第2側板群に向けて第1側板群を平行に移動させて押圧することにより、各第1陥没部23を相対向する各第2陥没部33に嵌合することができる。
【0031】
このとき、第1陥没部23に押圧用の部材などを挿入しなくても嵌合することができる。これは、第1側板および第2側板がPETにより形成されており、PS(ポリスチレン)と比較すると、嵌合により変形し易く、変形した部分の肉が嵌合方向および外方に広がり易いために、大きな押圧力を必要としないからだと推測される。
第1側板群および第2側板群をキャリアテープ用リール10単位に切断する装置としては、トムソン刃を備えた切断装置を用いる。トムソン刃は、切断予定線201の形状を有する。
図5に示す例では、側板群200は、計6個のキャリアテープ用リール10を切断して得られる構成になっており、切断装置は、計6個のトムソン刃を備えている。つまり、本実施形態に係る製造方法では、キャリアテープ用リール10を1回の工程において多数個取りすることができる。
【0032】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態に係るキャリアテープ用リール10によれば、第1側板20および第2側板30は、第1側板20の第1フランジ部22に形成された第1陥没部23の突出部23cが、第2側板30の第2フランジ部32に形成された第2陥没部33の凹部33cに嵌合されることにより相互に接合されているため、第1側板20および第2側板30を熱溶着する必要が無く、熱溶着部位を冷却する時間を確保する必要が無いので、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることができる。
また、前述した第1実施形態によれば、第1フランジ部22および第2フランジ部32は、それぞれ第1側板20および第2側板30において相対的に強度の高い部分であり、その強度の高い部分において相互に接合されるため、接合強度を高めることができる。
【0033】
(2)さらに、前述した第1実施形態に係るキャリアテープ用リール10によれば、嵌合された第1陥没部23の突出部23cおよび第2陥没部33の凹部33cのうち、相互に重ねられている突出部23c側の第1重複部23bと、凹部33c側の第2重複部33bとが陥没方向の外面32aから突出しており、さらに、相互に重ねられている第1陥没部23の第1基部23aおよび第2陥没部33の第2基部33aから外方に広がっているため、第1陥没部23および第2陥没部33が相互に外れることがなく、第1側板20および第2側板30を接合することができる。
つまり、第1側板20および第2側板30を接合するために接着テープや接着剤を使用しないため、使用しなくなったキャリアテープ用リール10を合成樹脂製品の再生用原料にすることができるので、産業廃棄物として廃棄する必要がない。
しかも、キャリアテープ用リール10に両面接着テープや接着剤を接着する工程が不要なため、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることもできる。
【0034】
(3)さらに、前述した第1実施形態に係るキャリアテープ用リール10によれば、第1陥没部23が第1挿通孔27の周囲に複数形成されており、第2陥没部33が第1陥没部23と対向する位置の第2挿通孔の周囲に複数形成されているため、第1側板20および第2側板30は、回転軸の周囲の複数箇所において相互に接合された状態になり、回転軸の周囲の剛性を高めることができるので、キャリアテープ用リール10が回転したときの回転振れによる振動を抑制することができる。
【0035】
(4)さらに、前述した第1実施形態に係る製造方法によれば、各第1側板20および各第2側板30の接合と、キャリアテープ用リール10単位の切断とを同時に行うことができるため、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることができる。
(5)さらに、キャリアテープ用リール10は黒色に形成されており、白色の情報コード25が印刷されているため、従来のように情報が印刷されたラベル100を貼付する必要がないので、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることができる。また、キャリアテープ用リール10を合成樹脂製品の再生用原料にするときにラベル100を剥がす手間を省くことができる。
(6)上述したように、第1実施形態によれば、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることができる技術を提供することができる。
【0036】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態について図を参照しつつ説明する。
本実施形態に係るキャリアテープ用リールは、嵌合構造以外は、前述した第1実施形態のキャリアテープ用リール10と同じ構造であるため、同じ構造については説明を省略し、同じ符号を用いる。
図3に示すように、第1側板20の各第1フランジ部22には、陥没部23がそれぞれ形成されており、第2側板30の各第2フランジ部32には、嵌合孔33dがそれぞれ形成されている。本実施形態では、第1実施形態における第2陥没部33が第2側板30の第2フランジ部32には形成されておらず、第2陥没部33に代えて嵌合孔33dが形成されている。
【0037】
各陥没部23は、それぞれ第1側板20の板面と平行に切断した際の形状(横断面形状)が円形に形成されている。また、各嵌合孔33dは、それぞれ第2側板30の板面を平面視した際の形状(平面形状)が円形に形成されている。また、各嵌合孔33dは、陥没部23から突出した突出部23cの外径よりも小径に形成されている。また、各嵌合孔33dから突出した突出部23cが、嵌合孔33dの外周縁33eから外方に広がっている。つまり、各嵌合孔33dから突出した突出部23cが、嵌合孔33dの外周縁33eに係止された状態になっている。
本実施形態に係るキャリアテープ用リール10は、前述した第1実施形態の製造方法と同じ製造方法により製造する。
【0038】
[第2実施形態の効果]
(1)上述した第2実施形態に係るキャリアテープ用リール10によれば、第1側板20および第2側板30は、第1側板20の第1フランジ部に形成された陥没部の突出部が、第2側板の第2フランジ部に形成された嵌合孔に嵌合されることにより相互に接合されているため、第1側板および第2側板を熱溶着する必要が無く、熱溶着部位を冷却する時間を確保する必要が無いので、キャリアテープ用リールを製造するときの歩留まりを良くすることができる。
また、前述した第2実施形態に係るキャリアテープ用リール10によれば、第1フランジ部22および第2フランジ部32は、それぞれ第1側板20および第2側板30において相対的に強度の高い部分であり、その強度の高い部分において相互に接合されるため、接合強度を高めることができる。
【0039】
(2)さらに、前述した第2実施形態に係るキャリアテープ用リール10によれば、嵌合孔33dから突出した突出部23cが、嵌合孔33dの外周縁33eから外方に広がっているため、突出部および嵌合孔が相互に外れることがなく、第1側板20および第2側板30を接合することができる。
つまり、第1側板20および第2側板30を接合するために接着テープや接着剤を使用しないため、使用しなくなったキャリアテープ用リール10を合成樹脂製品の再生用原料にすることができるので、産業廃棄物として廃棄する必要がない。
しかも、キャリアテープ用リール10に両面接着テープや接着剤を接着する工程が不要なため、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることもできる。
【0040】
(3)さらに、前述した第2実施形態に係るキャリアテープ用リール10によれば、陥没部23が第1挿通孔27の周囲に複数形成されており、嵌合孔33dが陥没部23と対向する位置の第2挿通孔の周囲に複数形成されているため、第1側板20および第2側板30は、回転軸の周囲の複数箇所において相互に接合された状態になり、回転軸の周囲の剛性を高めることができるので、キャリアテープ用リール10が回転したときの回転振れによる振動を抑制することができる。
【0041】
(4)さらに、前述した第2実施形態に係る製造方法によれば、各第1側板20および各第2側板30の接合と、キャリアテープ用リール10単位の切断とを同時に行うことができるため、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることができる。
(5)上述したように、第2実施形態によれば、キャリアテープ用リール10を製造するときの歩留まりを良くすることができる技術を提供することができる。
【0042】
〈他の実施形態〉
(1)
図4に示すように、第1押圧部材41および第2押圧部材51を使用して、第1陥没部23および第2陥没部33を相互に嵌合することもできる。第1押圧部材41の先端面(図では下端面)は、押圧方向(図では下方)に向けて膨らんだ球面に形成されており、第2押圧部材51の先端面(図で上端面)は、押圧方向(図では下方)に向けて凹んだ凹面、つまり、第1押圧部材41の先端面と嵌合する形状に形成されている。第1陥没部23の突出部23cおよび第2陥没部33の凹部33cが相互に重なった状態において、第2押圧部材51の先端を第2陥没部33の底部外側と対向する位置に配置し、第1押圧部材41の先端を第1陥没部23の内部に挿入し、第1陥没部23の突出部23cを第2陥没部33の凹部33cに圧接する。
【0043】
すると、図示のように、相互に重ねられている突出部23c側の第1重複部23bと、凹部33c側の第2重複部33bとが陥没方向の外面32aから突出し、さらに、相互に重ねられている第1陥没部23の第1基部23aおよび第2陥没部33の第2基部33aから外方に広がる。これにより、第1陥没部23および第2陥没部33が相互に外れることがなく、第1側板20および第2側板30を接合することができる。
また、第1側板20および第2側板30を製造するときに第1陥没部23および第2陥没部33を形成せず、相互に重なった第1フランジ部22および第2フランジ部32を上記の第1押圧部材41および第2押圧部材51によって押圧することにより、第1陥没部23および第2陥没部33が相互に嵌合された状態にすることもできる。
【0044】
(2)第1陥没部23および第2陥没部33の横断面形状は、それぞれ楕円でも良いし、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形でも良い。また、第1フランジ部22および第2フランジ部32の数は、それぞれ4個に限定されるものでは無く、2個、3個、5個以上でも良い。また、1つの第1フランジ部22に形成する第1陥没部23および1つの第2フランジ部32に形成する第2陥没部33の数もそれぞれ2個に限定されるものはな無く、1個、または、3個以上でも良い。
【符号の説明】
【0045】
10 キャリアテープ用リール
20 第1側板
22 第1フランジ部
23 第1陥没部
23a 第1基部
23b 第1重複部
23c 突出部
27 第1挿通孔
30 第2側板
32 第2フランジ部
33 第2陥没部
33a 第2基部
33b 第2重複部
33c 凹部
200 側板群
201 切断予定線