(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094232
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】金属のナノ粒子の集まりを有機化合物に分散したペーストを製造し、該ペーストを用い、基材ないしは部品の表面に導電層を形成する方法、ないしは、基材ないしは部品を接合する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/00 20060101AFI20220617BHJP
B22F 9/30 20060101ALI20220617BHJP
B22F 7/08 20060101ALI20220617BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220617BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220617BHJP
C07C 43/11 20060101ALN20220617BHJP
C07C 31/125 20060101ALN20220617BHJP
C07C 53/126 20060101ALN20220617BHJP
C07F 15/04 20060101ALN20220617BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B22F9/30
B22F7/08 C
H01B13/00 Z
H01B1/22 A
C07C43/11
C07C31/125
C07C53/126
C07F15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207152
(22)【出願日】2020-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【テーマコード(参考)】
4H006
4H050
4K017
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB90
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB90
4K017AA08
4K017BA03
4K017BA06
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4K017EK05
4K018BA04
4K018BA13
4K018BB05
4K018BD04
4K018BD10
4K018JA36
4K018KA33
5G301DA02
5G301DA07
5G301DA10
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属が析出する温度より沸点が高い有機化合物中で金属のナノ粒子を析出させてペーストを製造する方法を提供する。
【解決手段】金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させ、金属化合物の結晶の集まりを容器に析出させる。次に、容器に圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とを繰り返し、金属化合物の結晶をナノレベルに粉砕する。さらに、沸点が金属化合物の熱分解温度より高く、20℃における表面張力が30ダイン毎センチメートル以下である液体の有機化合物を、容器に充填する。さらに、液体の有機化合物に溶解ないしは混和する有機溶剤を、予め設定した粘度になるように、混合する混合割合を変えて混合し、予め設定した粘度を有するペーストを製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属のナノ粒子の集まりが有機化合物に分散されたペーストを製造する方法は、
メタノールに分散するが、メタノールに溶解しない第一の性質と、熱分解で金属を析出する第二の性質を兼備する金属化合物をメタノールに分散し、該金属化合物のメタノール分散液を作成する、さらに、該金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させ、前記金属化合物の結晶の集まりを析出させる、この後、該金属化合物の結晶の集まりを容器に充填し、該容器内の前記金属化合物の結晶の集まりの表面の全体を覆う板材を、該金属化合物の結晶の集まりの表面に被せ、さらに、該板材の表面全体に圧縮荷重を加え、前記容器内の前記金属化合物の結晶の集まりを粉砕する、さらに、前記板材に圧縮荷重を加える処理を停止した後に、前記容器に前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を加え、前記金属化合物の結晶の粉砕によって形成された前記容器内の空隙に、前記粉砕された金属化合物の結晶を移動させ、該容器内で前記粉砕された金属化合物の結晶の集まりを再配列させる、この後、前記板材の表面全体に再度前記圧縮荷重を加え、さらに、前記板材に圧縮荷重を加える処理を停止した後に、前記容器に再度前記3方向の衝撃加速度を加える、こうした前記圧縮荷重を加える処理と前記衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、前記板材に圧縮荷重を加えた際に、該板材に前記圧縮荷重に対する反発力が発生した時点で、前記金属化合物の結晶の粉砕が完了したと判断し、前記一対の処理を停止し、さらに、前記板材を前記容器から取り外す、この後、融点が15℃より低い第一の性質と、前記金属化合物が溶解及び分散しない第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第三の性質と、前記金属化合物の熱分解で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない第四の性質と、20℃における表面張力が30ダイン毎センチメートル以下である第五の性質とからなる5つの性質を兼備する液体の有機化合物を、前記金属化合物の結晶の集まりの重量より多い重量として秤量し、該秤量した液体の有機化合物を前記容器に充填して攪拌し、前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりが、前記液体の有機化合物に分散された懸濁液を前記容器内に作成する、この後、該容器を、前記粉砕された金属化合物の結晶を熱分解させる雰囲気に配置させ、さらに、前記粉砕された金属化合物の結晶が熱分解する温度に昇温する、この処理によって、金属のナノ粒子が前記液体の有機化合物に囲まれて析出し、前記容器内に、前記金属のナノ粒子の集まりが前記液体の有機化合物中に分散した構成からなるペーストが製造される、この後、該ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下からなる予め設定した粘度になるように、前記液体の有機化合物に溶解ないしは混和する第一の性質と、沸点が前記液体の有機化合物の沸点より低い第二の性質とを兼備する有機溶剤を、前記ペーストに混合する混合割合を変えて混合し、前記予め設定した粘度を有するペーストを前記容器内に製造する、金属のナノ粒子の集まりが有機化合物に分散されたペーストを製造する方法である。
【請求項2】
請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、基材ないしは部品の表面に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層を形成する方法は、
請求項1に記載した方法で製造したペーストを基材ないしは部品の表面に塗布し、該ペーストが有する粘度に応じた厚みからなる塗膜を、前記基材ないしは前記部品の表面に形成する、この後、該基材ないしは該部品を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記塗膜から、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを塗布した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層が、前記ペーストが有する粘度に応じた厚みからなる導電層として、前記基材ないしは前記部品の表面に形成される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、基材ないしは部品の表面に、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる導電層を形成する方法である。
【請求項3】
請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法は、
部品の一部を基材の表面に接触させ、請求項1に記載した方法で製造したペーストを、前記部品の一部が前記基材と接触する部位に滴下する、この後、該基材と該部品との双方を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品の一部が前記基材と接触する部位に形成され、該接合層によって、前記部品の一部が前記基材の表面に接合される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる接合層で、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
部品同士を接触させ、該部品同士が接触した部位に、請求項1に記載した方法で製造したペーストを滴下する、この後、該部品同士を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品同士が接触する部位に形成され、該接合層によって、前記部品同士が接合される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる接合層で部品同士を接合する方法である。
【請求項4】
請求項3に記載した部品を基材に接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法が、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と金属結合とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法であり、該部品を基材に接合する方法、ないしは、該部品同士を接合する方法は、
請求項1に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、請求項1に記載した金属化合物として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従って、前記強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、請求項1に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品の一部を基材の表面に接触させた部位に滴下する、この後、該基材と該部品との双方を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着し、該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品の一部が前記基材と接触する部位に形成される、この後、前記部品の一部が前記基材に接合された部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記金属結合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と金属結合とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品が前記基材に接合される、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、請求項1に記載した金属化合物として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、請求項1に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品同士が接触する部位に滴下する、この後、該部品同士を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品同士が接触する部位に形成される、この後、前記部品同士が接触する部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記金属結合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と金属結合とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、部品同士を接合する方法である。
【請求項5】
請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法は、
部品を基材に接合する双方の接合部位に、請求項1に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された前記部品を、該ペーストが塗布された前記基材に重ね合わせ、さらに、該部品の表面に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた前記部品と前記基材との双方を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記部品の表面に加える圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記金属のナノ粒子同士が接触し、さらに該金属のナノ粒子同士が接触した部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で前記金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として前記接合部位に形成され、該接合層によって、前記部品が前記基材に接合される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
基材同士を接合する双方の接合部位に、請求項1に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された双方の接合部位同士を重ね合わせ、さらに、該重ね合わされた基材同士の一方の基材に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた基材同士を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の基材に加える圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記金属のナノ粒子同士が接触し、さらに該金属のナノ粒子同士が接触した部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で前記金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として前記接合部位に形成され、該接合層によって、前記基材同士が接合される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、基材同士を接合する方法であり、
ないしは、
部品同士を接合する双方の接合部位に、請求項1に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された双方の接合部位同士を重ね合わせ、該重ね合わされた部品同士の一方の部品に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた部品同士を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の部品に加える圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記金属のナノ粒子同士が接触し、さらに該金属のナノ粒子同士が接触した部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で前記金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として前記接合部位に形成され、該接合層によって、前記部品同士が接合される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法である。
【請求項6】
請求項5に記載した部品を基材に接合する方法、ないしは、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法が、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法であり、該部品を基材に接合する方法、ないしは、該基材同士を接合する方法、ないしは、該部品同士を接合する方法は、
請求項1に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、請求項1に記載した金属化合物として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、請求項1に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品を基材に接合する双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された部品の接合部位を、該ペーストが塗布された基材の接合部位に重ね合わせ、前記部品の表面に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた前記部品と前記基材との双方を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記部品の表面に加えた圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた前記強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱で前記強磁性金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が前記接合部位に形成される、この後、前記部品を前記基材に重ね合わせ部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品が前記基材に接合される、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
請求項1に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、請求項1に記載した金属化合物として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、請求項1に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、基材同士を接合する双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された基材の双方の接合部位同士を重ね合わせ、該重ね合わされた基材の一方の基材に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた基材同士を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の基材に加えた圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱で前記強磁性金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が前記接合部位に形成される、この後、前記基材同士を接合する双方の接合部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記基材同士が接合される、基材同士を接合する方法であり、
ないしは、
請求項1に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、請求項1に記載した金属化合物として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、請求項1に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品同士を接合する双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された双方の接合部位同士を重ね合わせ、該重ね合わされた部品の一方の部品に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた部品同士を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の部品に加えた圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱で前記強磁性金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が前記接合部位に形成される、この後、前記部品同士を接合する双方の接合部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、部品同士を接合する方法である。
【請求項7】
請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法は、
部品同士を接合する双方の接合部位を隙間バメに加工し、該隙間バメに加工された双方の接合部位に、請求項1に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された一方の部品を、該ペーストが塗布された他方の部品に挿入し、該ペーストが塗布された双方の接合部位を重ね合わせる、この後、該重ね合わせた部品同士を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、該重ね合わせた前記部品同士の一方の部品を固定し、該重ね合わせた前記部品同士の他方の部品を回転させる、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、さらに該金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、前記他方の部品を回転することで発生したせん断応力が加わり、該せん断応力によって前記金属結合した金属のナノ粒子同士の結合部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱によって、前記金属結合した金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法である。
【請求項8】
請求項7に記載した部品同士を接合する方法が、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法であり、該部品同士を接合する方法は、
請求項1に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、請求項1に記載した金属化合物として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、請求項1に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品同士を接合する双方の接合部位が隙間バメに加工された該双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された一方の部品を、該ペーストが塗布された他方の部品に挿入し、該ペーストが塗布された前記双方の接合部位を重ね合わせる、この後、該重ね合わせた前記部品同士を、請求項1に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、該重ね合わせた前記部品同士の一方の部品を固定し、該重ね合わせた前記部品同士の他方の部品を回転させる、この処理によって、最初に前記塗布したペーストから、請求項1に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記他方の部品を回転することで発生したせん断応力が加わり、該せん断応力によって、前記強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着した磁気吸着部位に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱によって、前記磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が接合する、この後、前記部品同士を接合する双方の接合部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、請求項1に記載した方法で製造したペーストを用い、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法である。
【請求項9】
請求項1に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法は、
請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、無機物の分子ないしは無機物のイオンが配位子となって金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩で構成された無機金属化合物であり、請求項1に記載した液体の有機化合物が、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールに属する有機化合物であり、請求項1に記載した有機溶剤が、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、ないしは、芳香族炭化水素に属するいずれか1種類の有機溶剤であり、前記無機金属化合物を、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールに属する有機化合物を、請求項1に記載した液体の有機化合物として用い、前記ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、ないしは、芳香族炭化水素に属するいずれか1種類の有機溶剤を、請求項1に記載した有機溶剤として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従ってペーストを製造する、請求項1に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法。
【請求項10】
請求項1に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法は、
請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、オクチル酸金属化合物であり、請求項1に記載した液体の有機化合物がテトラエチレングリコールであり、請求項1に記載した有機溶剤が、エタノールないしはアセトンのいずれかの有機溶剤であり、前記オクチル酸金属化合物を、請求項1に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記テトラエチレングリコールを、請求項1に記載した液体の有機化合物として用い、前記エタノールないしは前記アセトンのいずれかの有機溶剤を、請求項1に記載した有機溶剤として用い、請求項1に記載したペーストを製造する方法に従ってペーストを製造する、請求項1に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解で金属を析出する金属化合物の結晶をナノサイズに粉砕し、該粉砕した結晶の集まりを、金属化合物の熱分解温度より高い沸点を持つ有機化合物に分散し、この後、該粉砕した結晶を熱分解し、金属のナノ粒子の集まりを有機化合物に分散させ、さらに、有機化合物に溶解する有機溶剤を、予め設定したペーストの粘度となる混合割合で混合し、予め設定した粘度を有するペーストを製造する。本ペーストを基材ないしは部品の表面に塗布し、有機化合物を気化させると、基材ないしは部品の表面に、ペーストの粘度に応じた厚みで、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層が形成される。つまり、ペーストからなる塗膜を有機化合物の沸点に昇温すると、金属のナノ粒子が析出した際の温度より高い温度にナノ粒子が昇温されてナノ粒子が活性化し、活性化したナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出したナノ粒子同士が接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層が、ペーストの粘度に応じた厚みで、基材ないしは部品の表面に形成される。また、ペーストを基材ないしは部品に塗布ないしは滴下すると、粘度に応じた厚みないしは量で、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が基材ないしは部品に形成される。接合層の接合力は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりの厚みないしは量に依存する。このため、厚みを厚くする、ないしは量を多くすることで、従来のハンダ付けやロウ付けにおけるロウ材として用いることができる。さらに、基材ないしは部品を、あるいは、基材同士ないしは部品同士を、金属結合した金属のナノ粒子の集まりを介して接合する接合剤として用いることができる。本発明のペーストは、用途に応じて予めペーストの粘度を設定し、接合力を担う接合層の厚みないしは量が、ペーストの粘度で変えられるため、接合層の接合力が変えられ、ペーストを用いる用途が広がる。なお、本発明において基材とは、部品を製作する際に用いる材料を基材と定義する。例えば、銅板を加工して銅部品を製造する場合は、銅部品を加工する際に用いる材料である銅板が基材になる。
【0002】
本発明に先行して、本発明者は、個々の金属のナノ粒子が、有機化合物に取り囲まれて分散した懸濁液の製造に係る発明を、特願2020-178481(令和2年10月23日出願)として出願した。該先願では、金属化合物の個々の微細結晶を液体の有機化合物に取り囲んで微細結晶を分散した懸濁液を作成し、さらに、微細結晶を熱分解し、金属のナノ粒子の集まりを析出させ、この後、懸濁液を有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させ、懸濁液から有機化合物を気化させる。つまり、先願では、金属のナノ粒子が活性化し、ナノ粒子同士が凝集することを防ぐため、懸濁液を有機化合物の蒸気圧より低い圧力に減圧させ、懸濁液から有機化合物を気化させ、金属のナノ粒子の集まりを析出させた。このため、先願の有機化合物は、沸点が金属化合物の熱分解温度より30℃以内の温度だけ高い性質を持つ。
これに対し、本発明におけるペーストは導電層や接合層の形成に用いるため、基材や部品の材質に拘わらず、様々な材質の基材ないしは部品に塗布ないしは滴下したペーストが、基材ないしは部品に濡れる必要がある。このため、本発明における金属のナノ粒子を分散させる有機化合物は、20℃における表面張力が30ダイン毎センチメートル以下である。また、基材ないしは部品をペーストによって接合する際は、基材ないしは部品の重量に応じて、接合層の厚みないしは量を変え、接合力を変える必要がある。このため、20℃におけるペーストの粘度が20ミリパスカル秒以下の予め設定した粘度になるように、有機化合物に溶解する有機溶剤の混合割合を変え、ペーストを予め設定した粘度にした。さらに、本発明のペーストによって導電層や接合層を形成する場合は、ペーストに分散させた金属のナノ粒子を活性化させ、活性化した金属のナノ粒子の集まりを重なり合って析出させ、重なり合った金属のナノ粒子同士を接触部で金属結合させ、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層や接合層を形成する。このため、沸点が金属化合物の熱分解温度より高い有機化合物を金属のナノ粒子を分散させる媒体として用い、ペーストから有機化合物を気化させることで、金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度に昇温されて活性化し、活性化した金属のナノ粒子の集まりを重なり合って析出させた。
【背景技術】
【0003】
金属のナノ粒子を有機化合物に分散した従来の導電性ペーストは、有機化合物で覆われた金属のナノ粒子を用いている。このため、ナノ粒子を覆う有機化合物が気化する際に、ボイドが発生する。つまり、金属のナノ粒子同士が容易に凝集するため、金属のナノ粒子の集まりを、直接有機化合物に分散させることはできない。このため、有機化合物で覆われた金属のナノ粒子の集まりを用い、該金属のナノ粒子の集まりを有機化合物に分散した導電性ペーストを製造する。
例えば、特許文献1には、アミノ基を含有する有機化合物で保護され、平均粒子径が30-400nmである金属ナノ粒子と、高級脂肪酸で保護され、平均粒子径が1-5μmである金属粒子とが、有機溶剤と樹脂成分とに分散した導電性ペーストを製造し、該導電性ペーストを焼成し、厚みが30μm以上の配線板を形成することが記載されている。
実施例の記載に依れば、メディアン径が310nmに及ぶ銀のナノ粒子は、アルキルアミンで保護されている。次に、メディアン径が0.8μm、1μm、2.3μm、2.9μm、5μm、7μmである銀粒子を高級脂肪酸で保護する。さらに、銀ナノ粒子及び銀粒子と、有機溶剤と樹脂成分とに分散し、導電性ペーストを製造する。導電性ペーストを基板に印刷し、150℃で30分間熱処理し、膜厚は30μm以上の銀の膜を形成する。
つまり、アルキルアミンで被覆された金属のナノ粒子の集まりだけで、導電性ペーストを形成した場合には、前記したようにボイドが発生する。このため、メディアン径が大きく異なる銀粒子を高級脂肪酸で被覆し、銀粒子と銀のナノ粒子を併用することで、ボイドが発生しても、銀のナノ粒子が銀粒子同士を接合するため、銀が連続して接合した導電経路によって導電層が形成されると考える。
しかしながら、銀のナノ粒子を保護する有機化合物の沸点と、銀粒子を保護する高級脂肪酸と樹脂成分との沸点の記載がないため、150℃で30分間熱処理することで、析出した銀のナノ粒子同士が接合するのか、また、銀のナノ粒子が銀粒子に接合するのかが不明である。また、150℃で樹脂成分が完全に気化するかが不明である。また、膜厚が30μm以上と厚い配線板に、前記した複雑な工程によって、銀の粒子の集まりによって配線板を形成する意義が不明である。
また、特許文献2には、炭素数8-200のポリエチレンオキシド構造含有有機化合物が複合した金属ナノ粒子と、沸点150℃以上の有機溶媒とを含有することを特徴とする、ビア又はトレンチの充填に用いる導電性ペーストが記載されている。
特許文献2では、金属のナノ粒子の保護剤中の分散部位にアルキル鎖が存在する金属のナノ粒子を用いるため、導電性ペーストを焼成した際に、金属のナノ粒子を覆う有機化合物が気化し、有機化合物の気化に依る体積収縮率が大きいため、ボイドが発生する。この課題を解決するために、炭素数8-200のポリエチレンオキシド構造含有有機化合物で金属のナノ粒子を複合化し、さらに、沸点150℃以上の有機溶媒に分散させた。従って、特許文献1と同様に、既存の金属のナノ粒子を用いず、金属のナノ粒子が直接有機化合物に析出させることができれば、特許文献2に記載した技術は不要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-049735号公報
【特許文献2】特開2017-110295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、個々の金属のナノ粒子が有機化合物で覆われた金属のナノ粒子を用い、該金属のナノ粒子の集まりを分散した導電性ペーストを昇温して導電層を形成する際に、金属のナノ粒子を覆う有機化合物が気化し、該有機化物の気化によって、隣接する金属のナノ粒子の間にボイドが発生し、該ボイドの発生によって金属のナノ粒子同士が直接接合できず、金属のナノ粒子の集まりが連続して接合することで形成される導電経路が形成されない。このため、有機化合物で覆われた金属のナノ粒子の集まりを有機化合物に分散した導電性ペーストは、導電層を形成する原料にならない。
これに対し、金属のナノ粒子が析出する温度より沸点が高い有機化合物中に、金属のナノ粒子を直接析出させ、金属のナノ粒子の集まりを分散したペーストを製造する。つまり、金属のナノ粒子を析出するナノサイズの原料となる金属化合物を有機化合物中に分散させ、有機化合物中で原料を金属のナノ粒子に化学変化させ、金属のナノ粒子を析出させる。該ペーストを塗布した塗膜から有機化合物を気化する。この際、金属のナノ粒子の原料を化学変化させ、金属のナノ粒子が析出した温度より高い温度にペーストが昇温されたため、ペーストに分散されていた金属のナノ粒子が活性状態になる。従って、有機化合物が気化すると、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出する。さらに、活性状態の金属のナノ粒子同士が重なり合った接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、連続した導電経路を形成する。この結果、金属のナノ粒子の集まりからなる導電層が形成される。さらに、金属結合した金属のナノ粒子の集まりの厚みないしは量が自在に変えられれば、ペーストは導電層の形成に留まらず、ロウ材や接合剤としても使用できる。こうしたペーストを実現するには、次の7つの条件が必要になる。
第一に、金属のナノ粒子の原料の大きさは、ナノレベルと小さい。第二に、金属のナノ粒子の原料を、金属のナノ粒子が析出する温度より沸点が高い有機化合物に分散させる。第三に、有機化合物中で金属のナノ粒子を析出させ、該金属のナノ粒子を有機化合物に分散させる。第四に、析出した金属のナノ粒子は、有機化合物とは反応しない。いっぽう、ペーストの粘度が低くなるほど、ペーストを塗布した塗膜の厚みが薄くなり、塗膜から有機化合物を気化させると、金属のナノ粒子の集まりからなる導電層の厚みは薄くなる。しかし、導電層の厚みは、用途に応じた厚みが必要になり、塗膜の厚みが変えられることが必要になる。また、ペーストをロウ材や接合剤として用いる場合は、接合する基材や部品の重量に応じて接合力を変える必要があり、滴下したペーストの厚みが自在に変えられることが必要になる。従って、第五に、ペーストの粘度が自在に変えられる。いっぽう、ペーストから有機化合物を気化させると、金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出する。しかし、金属のナノ粒子が活性状態でなければ、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合しない。このため、第六に、ペーストから有機化合物を気化させると、金属のナノ粒子が活性状態になる。さらに、ペーストの濡れ性が優れていれば、基材や部品にペーストを塗布ないしは滴下すると、基材や部品の材質に拘わらず、塗膜ないしは液滴が、基材や部品に形成できる。このため、第七に、ペーストを構成する有機化合物の表面張力が小さい。これらの7つの条件を満たしたペーストが製造できれば、導電層を形成するペーストに留まらず、ハンダ付けやロウ付けにおけるロウ材として用いることができる。さらに、ペーストを接合部に塗布することで、基材ないしは部品を、あるいは、基材同士ないしは部品同士を、金属結合した金属のナノ粒子の集まりを介して接合する接合剤として用いることができる。
本発明の課題は、7つの条件を満たしたペーストを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における金属のナノ粒子の集まりが有機化合物に分散されたペーストを製造する方法は、
メタノールに分散するが、メタノールに溶解しない第一の性質と、熱分解で金属を析出する第二の性質を兼備する金属化合物をメタノールに分散し、該金属化合物のメタノール分散液を作成し、さらに、該金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させ、前記金属化合物の結晶の集まりを析出させる、この後、該金属化合物の結晶の集まりを容器に充填し、該容器内の前記金属化合物の結晶の集まりの表面の全体を覆う板材を、該金属化合物の結晶の集まりの表面に被せ、さらに、該板材の表面全体に圧縮荷重を加え、前記容器内の前記金属化合物の結晶の集まりを粉砕する、さらに、前記板材に圧縮荷重を加える処理を停止した後に、前記容器に前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を加え、前記金属化合物の結晶の粉砕によって形成された前記容器内の空隙に、前記粉砕された金属化合物の結晶を移動させ、該容器内で前記粉砕された金属化合物の結晶の集まりを再配列させる、この後、前記板材の表面全体に再度前記圧縮荷重を加え、さらに、前記板材に圧縮荷重を加える処理を停止した後に、前記容器に再度前記3方向の衝撃加速度を加える、こうした前記圧縮荷重を加える処理と前記衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、前記板材に圧縮荷重を加えた際に、該板材に前記圧縮荷重に対する反発力が発生した時点で、前記金属化合物の結晶の粉砕が完了したと判断し、前記一対の処理を停止し、さらに、前記板材を前記容器から取り外す、この後、融点が15℃より低い第一の性質と、前記金属化合物が溶解及び分散しない第二の性質と、沸点が前記金属化合物の熱分解温度より高い第三の性質と、前記金属化合物の熱分解で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない第四の性質と、20℃における表面張力が30ダイン毎センチメートル以下である第五の性質とからなる5つの性質を兼備する液体の有機化合物を、前記金属化合物の結晶の集まりの重量より多い重量として秤量し、該秤量した液体の有機化合物を前記容器に充填して攪拌し、前記金属化合物の粉砕された結晶の集まりが、前記液体の有機化合物に分散された懸濁液を前記容器内に作成する、この後、該容器を、前記粉砕された金属化合物の結晶を熱分解させる雰囲気に配置させ、さらに、前記粉砕された金属化合物の結晶が熱分解する温度に昇温する、この処理によって、金属のナノ粒子が前記液体の有機化合物に囲まれて析出し、前記容器内に、前記金属のナノ粒子の集まりが前記液体の有機化合物中に分散した構成からなるペーストが製造される、この後、該ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下からなる予め設定した粘度になるように、前記液体の有機化合物に溶解ないしは混和する第一の性質と、沸点が前記液体の有機化合物の沸点より低い第二の性質とを兼備する有機溶剤を、前記ペーストに混合する混合割合を変えて混合し、前記予め設定した粘度を有するペーストを前記容器内に製造する、金属のナノ粒子の集まりが有機化合物に分散されたペーストを製造する方法である。
【0007】
つまり、本製造方法によれば、次の6つの極めて簡単な処理を連続して実施すると、容器内に、10nm前後の大きさの金属のナノ粒子が液体の有機化合物に分散したペーストが製造される。このペーストは、5段落に記載した7つの条件を満たす。
第一の処理は、金属化合物を、最も汎用的な溶剤であるメタノールに分散するだけの処理である。第二の処理は、メタノール分散液からメタノールを気化するだけの処理である。第三の処理は、容器に充填した金属化合物の結晶の集まりに圧縮荷重を加える処理と、さらに、容器に3方向の衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返し、金属化合物の結晶の粉砕を進める処理である。第四の処理は、粉砕が進んだ結晶の集まりが充填された容器に、5つの性質を兼備する有機化合物を充填するだけの処理である。第五の処理は、粉砕が進んだ結晶を熱分解するだけの処理である。第六の処理は、ペーストに有機溶剤を混合するだけの処理である。
これら極めて簡単な6つの処理を連続して実施すると、金属のナノ粒子の集まりが、予め設定した粘度を有する有機化合物に分散されたペーストが容器内に製造される。
次に、各々の処理によって起こる現象と、各々の処理の効果とを説明する。
第一の処理において、熱分解で金属を析出する金属化合物を、最も汎用的な溶剤であるメタノールに分散すると、金属化合物が分子状態となってメタノールに分散する。これに対し、金属化合物がメタノールに溶解すると、金属化合物を構成する金属が金属イオンとなってメタノール中に溶出し、溶解した金属化合物は、溶解前の金属化合物に戻ることができない。このため、金属化合物のメタノール溶解液からメタノールを気化させると、溶解前の金属化合物の結晶が析出しない。従って、金属ナノ粒子の原料として、メタノールに溶解せず、メタノールに分散する金属化合物を用いる。つまり、金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化させると、分散前の金属化合物が、100nmより小さい金属化合物の結晶として析出する。なお、熱分解で金属を析出する金属化合物は、熱分解温度に達すると、金属化合物が無機物ないしは有機物と金属とに分解し、無機物ないしは有機物の気化が完了すると、金属が析出する。このため、金属化合物の熱分解で析出した金属は、不純物を一切含まない。
第二の処理において、金属化合物のメタノール分散液からメタノールを気化すると、100nmより小さい金属化合物の結晶が、該結晶の集まりとなって析出する。つまり、金属化合物のメタノール分散液において、金属化合物が分子状態となってメタノールに均一に分散しため、メタノールを気化させると、分散前の金属化合物が、100nmより小さい粒状の結晶として析出する。この粒状の結晶は、分子状態でメタノール中に分散した金属化合物が、結晶として析出したため、金属化合物の単分子が形成する結晶が集積した結晶の集まりである。従って、粒状の結晶に応力を加えると、結晶が容易に粉砕し、微細な結晶になる。いっぽう、結晶が微細になるほど、結晶に応力を加えることが難しくなり、結晶の微細化には限界がある。なお、気化したメタノールは回収機で回収し、メタノールとして再利用する。
第三の処理において、容器に充填した金属化合物の結晶の集まりに板材を被せ、金属化合物の結晶の集まりを板材で容器内に拘束し、該金属化合物の結晶の集まりに対し、板材を介して圧縮荷重を加える。この際、結晶の大きさが相対的に大きい結晶ほど粉砕されやすい。このため、相対的に大きい結晶が優先して粉砕され、圧縮荷重が加えられている間は、結晶の粉砕が進む。いっぽう、容器内の結晶の集まりには、結晶の粉砕によって空隙が形成され、圧縮荷重が加えられている間は、空隙を埋めるように結晶が移動するとともに、結晶の粉砕が進む。さらに、印加する圧縮荷重を停止した後に、容器に前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を繰り返し加える。この際、結晶は、板材で容器内に拘束されているため飛散せず、空隙を埋めるように結晶が強制的に移動させられ、結晶の集まりが容器内で再配列する。さらに、印加する衝撃加速度を停止した後に、再度、板材を介して結晶の集まりに圧縮荷重を加える。この際、より微細になった結晶の集まりに対し、前記した結晶の粉砕が進む。この後、再度、容器に3方向の衝撃加速度を繰り返し加え、微細になった結晶の集まりの再配列を進める。こうした圧縮荷重を加える処理と、3方向の衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を繰り返す。いっぽう、結晶が微細になるほど、圧縮荷重を加えも、結晶に圧縮応力を加えることが難しくなり、圧縮荷重による結晶の微細化には限界がある。結晶の微細化が限界になると、板材に圧縮荷重を加えても結晶が粉砕せず、板材に圧縮応力に対する反発力が発生する。この時点で、金属化合物の結晶の粉砕が完了したと判断し、前記した一対の処理を停止する。この結果、結晶の大きさは、結晶が析出した時点の大きさに比べ、1/5に近い20nm前後になる。なお、金属化合物の結晶が析出した際に、結晶の大きさにばらつきがあり、また、粉砕よってできた空隙の大きさにもばらつきがある。このため、粉砕が進んだ結晶の集まりの大きさにもばらつきがある。また、板材に加える圧縮荷重は、容器の大きさに応じて、10-100kg重に相当する圧縮荷重を加える。また、容器に加える衝撃加速度は、容器の大きさに応じて、0.3-1.0Gの衝撃加速度を加える。
第四の処理において、融点が15℃より低い第一の性質と、前記した金属化合物が溶解及び分散しない第二の性質と、沸点が前記した金属化合物の熱分解温度より高い第三の性質と、金属化合物の熱分解温度で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない第四の性質と、20℃における表面張力が30ダイン毎センチメートル以下である第五の性質からなる5つの性質を兼備する液体の有機化合物を、金属化合物の結晶の集まりの重量より多い重量として秤量し、該液体の有機化合物を容器に充填して攪拌すると、粉砕された結晶の集まりが液体の有機化合物に分散された懸濁液が、容器内に製造される。なお、有機化合物の重量を、金属化合物の結晶の集まりの重量より多い重量とし加え、懸濁液における粉砕された結晶の分散をしやすくした。
つまり、有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布ないしは滴下したペーストから有機化合物を気化させると、金属のナノ粒子が析出した際の温度より高い温度に金属のナノ粒子が昇温され、金属のナノ粒子が活性状態になり、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが、塗膜ないしは液滴に重なり合って析出し、重なり合った活性状態の金属のナノ粒子同士は接触部で金属結合する。このため、ペーストを塗布した後に有機化合物を気化すると、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、連続した導電経路を塗膜に形成する。あるいは、ペーストを塗布ないしは滴下した後に有機化合物を気化すると、塗膜ないしは滴下した液滴に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が形成される。
さらに、有機化合物は、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さい。なお、水の表面張力は20℃で73dyn/cmであり、有機化合物の表面張力の2倍より大きい。これに対し、金属の表面張力は大きく、鉄は1360dyn/cmで、シリコンは1240dyn/cmである。いっぽう、固体の中で合成樹脂の表面張力は最も小さく、24-47dyn/cmである。すなわち、合成樹脂の中でPTFE樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂で、フッ素樹脂の一種)の表面張力は最も小さく、24dyn/cmである。ちなみに、他のフッ素樹脂の種類であるポリビニルデンフルオライド樹脂の表面張力は33dyn/cmである。また、ポリエチレン樹脂は37dyn/cmで、ポリスチレン樹脂が40dyn/cmで、ポリ塩化ビニル樹脂が42dyn/cmで、PET樹脂が45dyn/cmで、ナイロン樹脂が47dyn/cmである。従って、有機化合物の表面張力は、殆どの固体の表面張力より小さい。このため、固体からなる基材ないしは部品に塗布ないしは滴下したペーストの接触角は小さく、ペーストは固体に濡れやすい。従って、ペーストは様々な材質の基材や部品に濡れ、ペーストを塗布ないしは滴下すれば、材質の制約を受けずに塗膜ないしは液滴が基材や部品に形成される。
第五の処理において、粉砕された金属化合物の結晶を熱分解し、金属のナノ粒子が液体の有機化合物に分散されたペーストを容器内に製造する。つまり、金属化合物が熱分解する温度に到達すると、液体の有機化合物で囲まれた金属化合物の粉砕された結晶が、最初に無機物の分子ないしは有機物の分子と金属分子とに分解する。次に、無機物の分子ないしは有機物の分子が気化熱を奪って気化する。この際、無機物ないしは有機物からなる気体の体積が爆発的に膨張し、気体分子が有機化合物を通過して、順次外界に吐き出る。つまり、無機物の分子ないしは有機物の分子の1モルが気化すると、無機物ないしは有機物からなる気体の体積は22.4リットルを占める。このため、無機物の分子ないしは有機物の分子の気化が始まると、液体の有機化合物で囲まれた無機物ないしは有機物からなる気体は、20nm前後の大きさから爆発的に膨張し、また、無機物ないしは有機物からなる気体の密度が有機化合物の密度より2桁小さいため、気体分子が有機化合物を通過して、順次外界に吐き出る。なお、無機物ないしは有機物からなる気体の密度が有機化合物の密度より2桁小さいため、無機物ないしは有機物からなる気体は、液体の有機化合物内に留まることはできない。さらに、無機物の分子ないしは有機物の分子の気化が完了した瞬間に、金属分子の集まりが10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子を形成し、該ナノ粒子が液体の有機化合物に囲まれて析出し、液体の有機化合物中にナノ粒子が分散したペーストが作成される。なお、金属化合物が熱分解する際に、懸濁液に含まれた沸点が金属化合物の熱分解温度より低い、水分、有機物、水酸化物などの不純物は、全て懸濁液から気化する。このため、金属のナノ粒子が、不純物を持たない液体の有機化合物に囲まれて析出し、真性な金属のナノ粒子として析出する。
いっぽう、真性な金属のナノ粒子は、析出した際は活性状態にあるが、液体の有機化合物とは化学反応を起こさず、析出後には液体の有機化合物で囲まれ、不活性で安定した金属のナノ粒子になる。なお、容器から気化した無機物ないしは有機物の気体は、回収機で回収し、有機化合物の原料として再利用する。
第六の処理において、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように予め設定し、液体の有機化合物に溶解ないしは混和し、かつ、沸点が液体の有機化合物の沸点より低い性質を兼備する有機溶剤を、予め設定した粘度になるように、有機溶剤の混合割合を変えてペーストに混合する。つまり、ペーストの粘度をペーストの用途に応じて変え、ペーストを塗布した塗膜の厚みを、用途に応じて変える。このため、有機溶剤と有機化合物が気化した後に、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる導電層の厚みは、ペーストの粘度に応じて変わる。これによって、導電層の用途によって、導電層の厚みが自在に変えられる。あるいは、ペーストを基材や部品に滴下し、ハンダ付けやロウ付けにおけるロウ材として用いる場合は、ペーストを塗布して導電層を形成する場合より、ペーストの粘度を高め、さらに、ロウ付けする部品の質量の大きさに応じて、ペーストの粘度を高めることで、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みと量とが、ペーストの粘度に応じて厚くないしは多くなり、接合力が大きい接合層でロウ付けする。また、ペーストを接合部に塗布ないしは滴下し、基材ないしは部品を、あるいは、基材同士ないしは部品同士を、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層で接合する場合も、接合する基材ないしは部品の質量の大きさに応じて、ペーストの粘度を高め、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みと量とが、ペーストの粘度に応じて厚くないしは多くし、接合力が大きい接合層で基材ないしは部品を接合する。このように、ペーストの用途と、ペーストを塗布ないしは滴下する相手の質量に応じて、ペーストの粘度を予め設定し、接合剤としての接合層の厚みないしは量を変え、接合剤の接合力を変える。これによって、ペーストの用途が広がる。さらに、ペーストを用いて形成する導電層や接合層は、塗布ないしは滴下したペーストを、有機化合物の沸点に昇温するだけの処理であるため、基材や部品の材質の制約を受けずに、導電層や接合層が基材や部品に形成できる。このため、ペーストを用いた導電層や接合層を形成する用途は広がる。
本発明のペーストは、前記した極めて簡単な6つの処理を連続して実施することで製造される。また、金属化合物と有機化合物と有機溶剤とは、いずれも汎用的な工業用の薬品である。このため、安価な費用で安価なペーストが製造され、製造したペーストは、様々な用途に用いられる。
【0008】
6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、基材ないしは部品の表面に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層を形成する方法は、
6段落に記載した方法で製造したペーストを基材ないしは部品の表面に塗布し、該ペーストが有する粘度に応じた厚みからなる塗膜を、前記基材ないしは前記部品の表面に形成する、この後、該基材ないしは該部品を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記塗膜から、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを塗布した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層が、前記ペーストが有する粘度に応じた厚みからなる導電層として、前記基材ないしは前記部品の表面に形成される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、基材ないしは部品の表面に、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる導電層を形成する方法である。
【0009】
つまり、6段落に記載した方法で製造したペーストを、基材ないしは部品の表面に塗布すると、ペーストの粘度に応じた膜厚からなる塗膜が形成される。すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを塗布すると、金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる塗膜が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さいため、塗布されたペーストは、基材ないしは部品の材質に拘わらず、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込む。
この後、塗膜が形成された基材ないしは部品を有機化合物の沸点に昇温する。有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層が、ペーストの粘度に応じた厚みで、基材ないしは部品の表面に形成される。いっぽう、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込んだペーストからも、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化し、表面の凹凸に金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合する。このため、表面の凹凸を埋めた金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、表面の凹凸のすぐ上に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、該接触した金属のナノ粒子同士は金属結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面と、該表面の凹凸とに、連続して形成される。いっぽう、基材ないしは部品の表面の凹凸に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりにアンカー効果が発生する。このため、基材ないしは部品の表面に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりは、一定の機械的強度を持って、基材ないしは部品の表面に結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる導電層が、基材ないしは部品の材質に拘わらず、基材ないしは部品の表面に形成される。
なお、基材ないしは部品を、有機化合物の沸点に昇温する際に、基材ないしは部品の表面に付着していた水分、水和物、水酸化物及び有機物がそれぞれの沸点に応じて順番に気化する。このため、基材ないしは部品の表面に付着した不純物を取り除く事前の洗浄処理は必要ない。また、金属のナノ粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込んで表面の凹凸を埋めるため、基材ないしは部品の表面に、酸化膜や水酸化膜が形成されていても、基材ないしは部品の表面に導電層を形成する。
以上に説明した導電層は、予め設定した粘度からなるペーストを塗布し、有機化合物を気化させるだけの処理で形成される。このため、基材ないしは部品の大きさや形状に拘わらず、必要となる大きさと厚みとからなる導電層が、基材ないしは部品の表面に形成され、金属のナノ粒子を構成する金属に準ずる導電性と熱伝導性を持つ。また、金属が、鉄、ニッケルないしはコバルトからなる強磁性金属の場合は、強磁性金属に準ずる導電性と熱伝導性に加え、強磁性の性質を持つ。いっぽう、導電層の表面は、金属のナノ粒子の大きさからなる10nm前後の凹凸を形成する。従って、導電層の表面は極めて平坦度が高く、平滑性に優れる。このため、摺動部材が導電層の表面に摺動すると、摺動部材は導電層の表面で滑る。従って、導電層は、摩擦係数が小さい潤滑被膜として作用する。このため、導電層は、摩耗速度が著しく遅く、寿命が長い潤滑被膜としての機能を兼備する。さらに、導電層の表面の平坦度が極めて高いため、導電層の表面は撥水性と防汚性を持つ。例えば、導電層を、電磁波シールドの膜や帯電防止の膜として使用する際は、電磁波シールド膜や帯電防止膜の表面に異物が付着しにくい。このように、本発明で製造したペーストは、導電性と熱伝導性のみならず、様な機能を兼備する層が、様々な用途に応じて形成できる。
【0010】
6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法は、
部品の一部を基材の表面に接触させ、6段落に記載した方法で製造したペーストを、前記部品の一部が前記基材と接触する部位に滴下する、この後、該基材と該部品との双方を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品の一部が前記基材と接触する部位に形成され、該接合層によって、前記部品の一部が前記基材の表面に接合される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる接合層で、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
部品同士を接触させ、該部品同士が接触した部位に、6段落に記載した方法で製造したペーストを滴下する、この後、該部品同士を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品同士が接触する部位に形成され、該接合層によって、前記部品同士が接合される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、金属結合した金属ナノ粒子の集まりからなる接合層で部品同士を接合する方法である。
【0011】
つまり、部品の一部を基材の表面に接触させ、6段落に記載した方法で製造したペーストを、部品が基材と接触する部位に滴下すると、ペーストの粘度に応じた大きさと厚みとからなる液滴が形成される。ないしは、部品同士を接触させ、6段落に記載した方法で製造したペーストを、部品同士が接触する部位に滴下すると、ペーストの粘度に応じた大きさと厚みとからなる液滴が形成される。
すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを滴下すると、金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる液滴が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さいため、滴下されたペーストは、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品が基材と接触する領域の全体を覆うとともに、接触部位に形成される僅かな空隙と、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸に入り込む。また、滴下したペーストは、部品同士が接触する領域の全体を覆うとともに、接触部位の僅かな空隙に入り込み、また、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に入り込む。
この後、液滴が形成された基材と部品を有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、ペーストの粘度に応じた大きさと厚みで、部品が基材と接触する領域の全体を覆うとともに、接触部位の空隙と、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸に入り込む。いっぽう、基材の表面の凹凸を埋めた金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、表面の凹凸のすぐ上の部品との接触部に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、該接触した金属のナノ粒子同士は金属結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、部品が基材と接触する部位と、接触部位の空隙と、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸とに、連続して形成される。従って、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品が基材と接触する部位に形成される。いっぽう、空隙に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりと、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、一定の機械的強度を持って、部品を基材に接合する。
ないしは、液滴が滴下された部品同士を有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、滴下したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、ペーストの粘度に応じた大きさと厚みで、部品同士が接触する部位の全体を覆うとともに、接触部位に形成される空隙と、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸とに形成される。いっぽう、部品同士が接触する部位に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、接触部位の空隙に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、また、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、接触した金属のナノ粒子同士は金属結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、部品同士が接触する部位と、接触部位の空隙と、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸とに、連続して形成される。いっぽう、空隙に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりと、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、部品同士の材質に拘わらず、部品同士が接触する部位に形成され、接合層によって部品同士が接合される。
本発明における部品を基材に接合させる事例の一つに、手作業で行うハンダ付けがある。従来のハンダ付けは、ハンダを液相化せずに、ハンダの濡れ現象を利用することで接合させるため、接着力は小さい。これに対し、本発明においては、金属のナノ粒子の金属結合を介して、部品を基材に接合させるため、接合力はハンダに依る接合力より大きい。また、3成分ないしは2成分の合金のハンダに比べ、ペーストは安価に製造できる。このように、ペーストは、従来のハンダより安価で、従来のハンダ付けより接合強度が高まる。なお、180℃程度の温度で熱分解する金属化合物を用いれば、鉛フリーハンダの融点より、熱分解温度が40℃近く低い。
なお、本発明における部品を基材に接合させる方法は、部品の一部を基材の表面に接触させ、部品が基材と接触する部位にペーストを滴下し、部品と基材とを有機化合物の沸点に昇温する処理であるため、部品を基材に接合させる事例は、手作業で行うハンダ付けだけに限定されない。
また、本発明における部品同士を接合させる事例の一つに、ロウ付けがある。従来のロウに依る接合は、融点が母材より低いロウを溶かし、接合する2つの母材の間に、溶けたロウを落とし、毛細管現象によって溶けたロウが母材の間に浸透拡散し、ロウが冷却して凝固することで2つの母材同士を接合する。ロウ付けは、ガスバーナーや工業炉によって、450℃より高いロウの融点に昇温してロウを溶かす。また、母材の材質によって、用いるロウが制限される。また、溶解させたロウを、時間をかけず母材の間に滴下させるため、また、母材を固定させてロウ付けを行うため、品質の高いロウ付けを実現するには、経験に基づくロウ付けが必要になる。さらに、接合強度を確保するには、予め接合部のさびなどの異物を除去し、その後洗浄する。この後、接合部にフラックスを添加し、フラックスが溶解した後に、ロウ棒を差し込み、ロウを流し込んだのちに、接合部を加熱し、接合部の全体にフラックスを拡散させ、母材が冷却する前に、フラックスを取り除くという複雑な処理を連続して行う。また、ロウ付け部にボイドが発生することがあるが、外観からボイドを発見することができない。いっぽう、真空状態でロウ付けすることで、ボイドの発生確率が下がるが、加工コストの観点から、真空状態でのロウ付けは現実的でない。
これに対し、本発明は、母材同士の材質の制約がない。また、ペーストを滴下し、昇温するだけの処理である。さらに、有機化合物を気化させる温度が、ロウ付けより200℃以上低い。また、ペーストを滴下し、ペーストを昇温する処理は極めて簡単な処理であり、処理を無人化することができる。このため、同一の接合強度で母材同士が接合できる。従って、本発明は、同一の条件で母材同士が接合でき、同じ品質で母材同士が接合できる。
なお、本発明における部品同士を接合させる方法は、部品同士を接触させ、部品同士が接触する部位にペーストを滴下し、部品同士を有機化合物の沸点に昇温する処理であるため、部品同士を接合させる事例は、ロウ付けだけに限定されない。
以上に説明したように、本発明においては、部品と基材とが接触する部位にペーストを滴下し、ないしは、部品同士が接触する部位にペーストを滴下し、有機化合物を気化するだけで、部品と基材とが異種材質であっても、ないしは、部品同士が異種材質であっても、部品を基材に、ないしは、部品同士を接合することができ、ペーストの接合範囲は広い。
また、接合する部品の質量に応じて、あるいは、接合する部品同士の質量に応じてペーストの粘度を変えると、部品を基材に接合する接合層の厚みと量とが、あるいは、部品同士を接合する接合層の厚みと量とが変えられ、接合層の接合強度が、部品の質量に応じて、あるいは、接合する部品同士の質量に応じて自在に変えられる。このため、部品の質量が大きく、大きな接合強度が必要な場合は、ペーストの粘度を相対的に高い粘度に設定する。
さらに、基材ないしは部品を、有機化合物の沸点に昇温する際に、基材ないしは部品の表面に付着していた水分、水和物、水酸化物及び有機物がそれぞれの沸点に応じて順番に気化する。このため、基材ないしは部品の表面に付着した不純物を取り除く事前の洗浄処理は必要ない。また、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さい金属のナノ粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込んで析出するため、基材ないしは部品の表面に、酸化膜や水酸化膜が形成されていても、金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合させる、ないしは、部品同士を接合させる。
【0012】
10段落に記載した部品を基材に接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法が、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と金属結合とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法であり、該部品を基材に接合する方法、ないしは、該部品同士を接合する方法は、
6段落に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、6段落に記載した金属化合物として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、前記強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、6段落に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品の一部を基材の表面に接触させた部位に滴下する、この後、該基材と該部品との双方を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着し、該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品の一部が前記基材と接触する部位に形成される、この後、該部品の一部が前記基材に接合された部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記金属結合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と金属結合とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品が前記基材に接合される、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、6段落に記載した金属化合物として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、6段落に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品同士が接触する部位に滴下する、この後、該部品同士を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温する、この処理によって、最初に前記滴下したペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストを滴下した部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として、前記部品同士が接触する部位に形成される、この後、前記部品同士が接触する部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記金属結合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と金属結合とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、部品同士を接合する方法である。
【0013】
つまり、6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物を用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属のナノ粒子の集まりが、6段落に記載した液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する。該ペーストを、部品が基材と接触する部位に滴下すると、接触する部位に液滴が形成される。また、該ペーストを、部品同士が接触する部位に滴下すると、接触する部位に液滴が形成される。
すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを滴下すると、金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる液滴が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さいため、滴下されたペーストは、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品が基材と接触する部位の全体を覆うとともに、接触部位に形成される僅かな空隙と、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸に入り込む。また、滴下したペーストは、部品同士が接触する部位の全体を覆うとともに、接触部位の僅かな空隙に入り込み、また、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に入り込む。
この後、液滴が形成された基材と部品を有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、重なり合った強磁性金属同士が磁気吸着し、磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が接触部位で金属結合し、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、ペーストの粘度に応じた大きさと厚みで、部品が基材と接触する部位の全体を覆うとともに、接触部位の空隙と、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸に形成される。いっぽう、基材の表面の凹凸を埋めた強磁性金属のナノ粒子の集まりが、表面の凹凸のすぐ上の部品との接触部に析出した強磁性金属のナノ粒子の集まりと磁気吸着し、該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士は接触部位で金属結合する。この結果、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品が基材と接触する部位と、接触部位の空隙と、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸とに、連続して形成される。従って、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品が基材と接触する部位に形成される。いっぽう、空隙に形成された磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりと、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、一定の機械的強度を持って、部品を基材に接合する。
さらに、部品の一部が基材に接合され部位に、強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加すると、全ての強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和し、全ての強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力が著しく増大する。いっぽう、強磁性金属のナノ粒子の集まりが一斉に析出する際に、強磁性金属のナノ粒子同士が金属結合する結合力は、金属のナノ粒子同士が接触した部位に限られる。これに対し、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力は、ナノ粒子の全体に作用する。このため、磁気吸引力は、金属のナノ粒子同士が金属結合する結合力より大きい。さらに、強磁性金属のナノ粒子が10nm前後と極めて小さく、飽和した磁化で磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着を引き剥がすのは難しい。このため、空隙に形成された磁気吸着と金属結合とによって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりと、部品が基材に接触する双方の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合とによって接合された強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用するアンカー効果が著しく増える。
ないしは、液滴が形成された部品同士を有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した強磁性金属のナノ粒子が磁気吸着し、磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が接触部位で金属結合し、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、ペーストの粘度に応じた大きさと厚みで、部品同士が接触する部位の全体を覆うとともに、接触部位の空隙と、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に形成される。いっぽう、部品同士が接触する部位に析出した強磁性金属のナノ粒子が、接触部位の空隙に析出した強磁性のナノ粒子と磁気吸着し、また、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に析出した強磁性のナノ粒子と磁気吸着し、該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士は接触部位で金属結合する。この結果、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品同士が接触する部位と、接触部位の空隙と、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸とに、連続して形成される。いっぽう、空隙に形成された磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりと、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、部品同士の材質に拘わらず、部品同士が接触する部位に形成される。この結果、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、一定の機械的強度を持って、部品同士を接合する。
さらに、部品同士が接合され部位に、強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加すると、強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和し、全ての強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力が著しく増大する。いっぽう、金属のナノ粒子の集まりが一斉に析出する際に、隣接する金属のナノ粒子同士が金属結合する結合力は、金属のナノ粒子同士が接触した部位に限られる。これに対し、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力は、ナノ粒子の全体に作用する。このため、磁気吸引力は、金属のナノ粒子同士が金属結合する結合力より大きい。さらに、強磁性金属のナノ粒子が10nm前後と極めて小さく、飽和した磁化で磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着を引き剥がすのは難しい。このため、空隙に形成された磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりと、部品同士が接触する双方の部品の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用するアンカー効果が著しく増える。
従って、10-11段落に記載した部品の一部を基材の表面に接触させ、部品が基材と接触する部位にペーストを滴下し、この後、活性化した金属のナノ粒子の集まりを重なり合って析出させ、析出した金属のナノ粒子同士が接触する部位で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで部品を基材に接合する場合より、ないしは、10-11段落に記載した部品同士が接触する部位にペーストを滴下し、この後、活性化した金属のナノ粒子の集まりを重なり合って析出させ、析出した金属のナノ粒子同士が接触する部位で金属結合する場合より、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用する磁気吸引力が、強磁性金属のナノ粒子同士の金属結合に基づく接合力に加算されるため、部品が基材により強固に接合する、ないしは、部品同士がより強固に接合する。
この結果、部品を基材に接合する、ないしは、部品同士を接合する接合力が、10-11段落に記載した事例より増大する。また、ペーストの表面張力が小さいため、部品と基材との材質に拘わらず、滴下したペーストの液滴が、部品と基材の双方の表面に形成され、磁気吸着と金属結合とで接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりによって、部品を基材に接合する、ないしは、部品同士を接合する。
さらに、基材ないしは部品を、有機化合物の沸点に昇温する際に、基材ないしは部品の表面に付着していた水分、水和物、水酸化物及び有機物がそれぞれの沸点に応じて順番に気化する。このため、基材ないしは部品の表面に付着した不純物を取り除く事前の洗浄処理は必要ない。また、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さい金属のナノ粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込んで析出するため、基材ないしは部品の表面に、酸化膜や水酸化膜が形成されていても、金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合させる、ないしは、部品同士を接合させる。
また、接合する部品の質量に応じて、あるいは、接合する部品同士の質量に応じてペーストの粘度を変える。これによって、部品を基材に接合する接合層の厚みと量とが、あるいは、部品同士を接合する接合層の厚みと量とが変えられ、接合層の接合強度が、部品の質量に応じて、あるいは、接合する部品同士の質量に応じて自在に変えられる。このため、部品の質量が大きく、大きな接合強度が必要な場合は、ペーストの粘度を相対的に高い粘度に設定する。
いっぽう、強磁性金属の磁気キュリー点は、鉄が770℃で、ニッケルが358℃で、コバルトが1131℃である。従って、強磁性金属の磁気キュリー点に近づかなければ、部品を基材に接合する、ないしは、部品同士を接合する磁気吸引力は変わらない。このため、部品ないしは基材が高温にさらされても、部品が基材に接合し続け、ないしは、部品同士が接合し続ける。
【0014】
6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法は、
部品を基材に接合する双方の接合部位に、6段落に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された部品を、該ペーストが塗布された基材に重ね合わせ、さらに、該部品の表面に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた前記部品と前記基材との双方を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記部品の表面に加える圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記金属のナノ粒子同士が接触し、さらに該金属のナノ粒子同士が接触した部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で前記金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として前記接合部位に形成され、該接合層によって、前記部品が前記基材に接合される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
基材同士を接合する双方の接合部位に、6段落に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された双方の接合部位同士を重ね合わせ、さらに、該重ね合わされた基材同士の一方の基材に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた基材同士を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の基材に加える圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記金属のナノ粒子同士が接触し、さらに該金属のナノ粒子同士が接触した部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で前記金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として前記接合部位に形成され、該接合層によって、前記基材同士が接合される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、基材同士を接合する方法であり、
ないしは、
部品同士を接合する双方の接合部位に、6段落に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された双方の接合部位同士を重ね合わせ、該重ね合わされた部品同士の一方の部品に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた部品同士を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の部品に加える圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記金属のナノ粒子同士が接触し、さらに該金属のナノ粒子同士が接触した部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で前記金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、前記ペーストが有する粘度に応じた量からなる接合層として前記接合部位に形成され、該接合層によって、前記部品同士が接合される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法である。
【0015】
最初に、隣接する金属のナノ粒子同士が摩擦熱で接合した該金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法を説明する。
部品を基材に接合する部位と、基材に部品が接合される部位とに、6段落に記載した方法で製造したペーストを塗布すると、双方の部位に塗膜が形成される。すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを塗布すると、金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる塗膜が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、ペーストが20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さいため、塗布されたペーストは、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品を基材に接合する領域の全体を覆うとともに、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に入り込む。
この後、ペーストが塗布された部品を、ペーストが塗布された基材に重ね合わせ、部品の表面に圧縮荷重を加え、部品と基材とを有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、ペーストの粘度に応じた厚みで、部品を基材に接合する領域の全体を覆うとともに、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に入り込む。
いっぽう、基材の表面の凹凸を埋めた金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、表面の凹凸のすぐ上の部品との接触部に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、該接触した金属のナノ粒子同士は金属結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合する全ての領域と、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸とに、連続して形成される。従って、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品を基材に接合する部位に形成される。いっぽう、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、一定の機械的強度を持って、部品を基材に接合する。
ところで、圧縮応力が部品に継続して加わっているため、部品を基材に接合する部位に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、また、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、圧縮応力が加わる。これによって、金属のナノ粒子同士の金属結合部に圧縮応力が加わり、結合部の体積が僅かであるため、金属結合部が優先して破壊し、金属のナノ粒子で埋められた領域を、金属結合から引き離された金属のナノ粒子が僅かに移動し、金属のナノ粒子同士が再度接触する。さらに、金属結合から引き離された金属のナノ粒子に圧縮応力が加わり、金属のナノ粒子が移動しようとするが、接触した金属のナノ粒子の集まりの存在が障害となって、金属のナノ粒子の移動が制止され、金属のナノ粒子同士が強固に接触する。従って、金属のナノ粒子同士の接触部の体積は、活性化した金属のナノ粒子の集まりが析出した際に、金属のナノ粒子同士が接触した体積に比べ大きい。この際、金属のナノ粒子同士の接触部に摩擦熱が発生し、摩擦熱で隣接する金属のナノ粒子同士が接合するが、摩擦熱による金属のナノ粒子同士の接合力は、活性化した金属のナノ粒子の集まりが析出した際に、金属のナノ粒子同士が金属結合した結合力より大きい。
この結果、基材ないしは部品の材質に拘わらず、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合する部位を埋め、また、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸を埋め、両者の金属のナノ粒子の集まりは、互いに接触する部位で摩擦接合する。また、表面の凹凸を埋めた摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりは、アンカー効果を発生する。この結果、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、部品と基材との材質の違いに拘わらず、部品を基材に接合する。
本発明の部品を基材に接合させる事例の一つとして、部品と基材とが互いに異なる材質からなる事例がある。すなわち、部品と基材との材質の組み合わせが、一方が鉄で、他方がアルミニウムからなる場合、あるいは、一方がアルミニウムで、他方が合成樹脂からなる場合、あるいは、一方がアルミニウムで、他方が炭素繊維強化プラスチックからなる場合、あるいは、一方が合成樹脂で、他方がセラミックスからなる場合などは、双方の融点ないしは軟化点が大きく異なる、あるいは、材料の構造、原子同士の結合構造が大きく異なるため、部品を基材に接合させることが難しい。
しかしながら、本発明の部品を基材に接合させる方法に依れば、部品と基材の材質の組み合わせの如何に拘わらず、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合することができる。
次に、隣接する金属のナノ粒子同士が摩擦熱で接合した該金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法を説明する。
基材同士を接合する双方の接合部位に、ないしは、部品同士を接合する双方の接合部位に、6段落に記載した方法で製造したペーストを塗布すると、双方の接合部位に塗膜が形成される。すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを塗布すると、金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる塗膜が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さいため、塗布されたペーストは、基材ないしは部品の材質に拘わらず、基材同士ないしは部品同士を接合する領域の全体を覆うとともに、重ね合わせた基材ないしは重ね合わせた部品の表面の凹凸に入り込む。
この後、ペーストが塗布された基材同士を重ね合わせ、ないしは、ペーストが塗布された部品同士を重ね合わせ、一方の基材ないしは一方の部品の表面に圧縮荷重を加え、基材ないしは部品を有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが重なり合って塗膜に析出し、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、ペーストの粘度に応じた厚みで、基材同士ないしは部品同士を接合する領域の全体を覆うとともに、重ね合わせた基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込んで形成される。
いっぽう、基材の表面の凹凸を埋めた金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、表面の凹凸のすぐ上の他方の基材との接触部に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、該接触した金属のナノ粒子同士は金属結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、基材同士を接合する接合部位と、双方の基材の表面の凹凸とに、連続して形成される。同様に、部品の表面の凹凸を埋めた金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、表面の凹凸のすぐ上の他方の部品との接触部に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、該接触した金属のナノ粒子同士は金属結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、基材同士を接合する全ての接合部位と、双方の基材の表面の凹凸とに、連続して形成される。同様に、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、部品同士を接合する全ての接合部位と、双方の部品の表面の凹凸とに、連続して形成される。これによって、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品同士ないしは基材同士を接合する部位に形成される。いっぽう、重ね合わせた基材ないしは部品の表面の凹凸に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、一定の機械的強度を持って、基材同士ないしは部品同士を接合する。
ところで、双方の基材ないしは双方の部品に、圧縮応力が継続して加わっているため、析出した金属のナノ粒子の集まりに圧縮応力が加わる。このため、金属のナノ粒子同士の金属結合部に圧縮応力が加わり、結合部の体積が僅かであるため、金属結合部が優先して破壊され、金属のナノ粒子で埋められた領域を、金属結合から引き離された金属のナノ粒子が僅かに移動し、金属のナノ粒子同士が改めて接触する。さらに、金属結合から引き離された金属のナノ粒子に圧縮応力が加わり、金属のナノ粒子が移動しようとするが、接触した金属のナノ粒子の集まりの存在が障害となって、金属のナノ粒子の移動が制止され、金属のナノ粒子同士が強固に接触する。従って、金属のナノ粒子同士の接触部の体積は、活性化された金属のナノ粒子が重なり合って析出した際に、金属のナノ粒子同士が接触した体積に比べ大きい。この際、金属のナノ粒子同士の接触部に摩擦熱が発生し、摩擦熱で金属のナノ粒子同士が接合するが、摩擦熱による金属のナノ粒子同士の接合力は、活性化された金属のナノ粒子が重なり合って析出した際に、金属のナノ粒子同士が金属結合した結合力より大きい。
この結果、部品同士ないしは基材同士を重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸を、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりが埋め、また、部品同士ないしは基材同士を重ね合わせた双方の部位を摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりが埋め、両者の金属のナノ粒子の集まりは、互いに接触する部位で摩擦接合する。また、重ね合わせた部品ないしは基材の表面の凹凸に形成された摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。このため、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、部品同士を、ないしは基材同士を強固に接合する。また、部品と基材との材質の違いに拘わらず、基材同士ないしは部品同士を接合する。
本発明の基材同士を接合する、ないしは、部品同士を接合する事例の一つとして、基材同士が、ないしは、部品同士が互いに異なる材質からなる事例がある。本発明の基材同士を接合させる方法に依れば、基材同士の材質の組み合わせの如何に拘わらず、ないしは、部品同士を接合させる方法に依れば、部品同士の材質の組み合わせの如何に拘わらず、金属のナノ粒子同士が摩擦熱で接合した該金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、基材同士を、ないしは、部品同士接合することができる。
以上に説明したように、本発明のペーストを、部品を基材に接合する部位に、基材同士を接合する部位に、ないしは、部品同士を接合する部位に塗布し、さらに、部品を基材に圧縮する、ないしは、一方の基材を圧縮し、ないしは、一方の部品を圧縮し、有機化合物を気化させることで、部品と基材とが、ないしは、基材同士が、ないしは、部品同士が、異種材質であっても、部品を基材に、ないしは、基材同士を、ないしは、部品同士が、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって接合され、ペーストの適応範囲がさらに広がる。
なお、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子同士の接合は、10-11段落に記載した金属結合で接合した金属のナノ粒子同士の接合より、接合部の体積が大きいため、10-11段落に記載した金属結合で接合した金属のナノ粒子同士の接合力より接合力が大きい。
さらに、基材ないしは部品を、有機化合物の沸点に昇温する際に、基材ないしは部品の表面に付着していた水分、水和物、水酸化物及び有機物がそれぞれの沸点に応じて順番に気化する。このため、基材ないしは部品の表面に付着した不純物を取り除く事前の洗浄処理は必要ない。また、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さい金属のナノ粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込んで析出するため、基材ないしは部品の表面に、酸化膜や水酸化膜が形成されていても、金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合させる、ないしは、部品同士を接合させる、ないしは、基材同士を接合させる。
また、接合する部品の質量に応じて、あるいは、接合する基材同士ないしは部品同士の質量に応じてペーストの粘度を変え、これによって、部品を基材に接合する接合層の厚みが、あるいは、基材同士ないしは部品同士を接合する接合層の厚みが変えられ、接合層の接合強度が、部品の質量に応じて、あるいは、接合する基材同士ないしは部品同士の質量に応じて自在に変えられる。このため、基材ないしは部品の質量が大きく、大きな接合強度が必要な場合は、ペーストの粘度を相対的に高い粘度に設定する。
【0016】
14段落に記載した部品を基材に接合する方法、ないしは、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法が、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品を基材に接合する方法、ないしは、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法であり、該部品を基材に接合する方法、ないしは、該基材同士を接合する方法、ないしは、該部品同士を接合する方法は、
6段落に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、6段落に記載した金属化合物として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、6段落に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品を基材に接合する双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された部品の接合部位を、該ペーストが塗布された基材の接合部位に重ね合わせ、前記部品の表面に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた前記部品と前記基材との双方を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記部品の表面に加えた圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた前記強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱で前記強磁性金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が前記接合部位に形成される、この後、前記部品を前記基材に重ね合わせ部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品が前記基材に接合される、部品を基材に接合する方法であり、
ないしは、
6段落に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、6段落に記載した金属化合物として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、6段落に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、基材同士を接合する双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された基材の双方の接合部位同士を重ね合わせ、該重ね合わされた基材の一方の基材に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた基材同士を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の基材に加えた圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱で前記強磁性金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が前記接合部位に形成される、この後、前記基材同士を接合する双方の接合部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記基材同士が接合される、基材同士を接合する方法であり、
ないしは、
6段落に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、6段落に記載した金属化合物として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、6段落に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品同士を接合する双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された双方の接合部位同士を重ね合わせ、該重ね合わされた部品の一方の部品に圧縮荷重を加える、この後、該圧縮荷重が加えられた部品同士を、前記液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、前記一方の部品に加えた圧縮荷重の印加を停止する、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記圧縮荷重による圧縮応力が加わり、該圧縮応力によって前記強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱で前記強磁性金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が前記接合部位に形成される、この後、前記部品同士を接合する双方の接合部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、部品同士を接合する方法である。
【0017】
最初に、磁気吸着と摩擦熱で強磁性金属のナノ粒子同士が接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層で、部品を基材に接合する方法を説明する。
6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物を用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属のナノ粒子が液体の有機化合物に分散したペーストを製造する。部品を基材に接合する部位と、基材に部品が接合する部位とに、ペーストを塗布すると、双方の接合部位に塗膜が形成される。すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる強磁性金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを塗布すると、強磁性金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、強磁性金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる塗膜が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さいため、塗布されたペーストは、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品を基材に接合する領域の全体を覆うとともに、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に入り込む。
この後、ペーストが塗布された部品を、ペーストが塗布された基材に重ね合わせ、部品の表面に圧縮荷重を加え、部品と基材とを有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着し、磁気吸着した強磁性金属同士が接触する部位で金属結合し、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が部品と基材の接合層に形成される。
いっぽう、基材の表面の凹凸を埋めたペーストが昇温されると、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、基材の表面の凹凸のすぐ上の部品との接触部に析出した強磁性のナノ粒子の集まりと磁気吸着し、磁気吸着した強磁性金属の接触部位が金属結合する。この結果、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合する全ての領域と、部品が接触する基材の表面の凹凸とに、連続して形成される。従って、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、基材ないしは部品の材質に拘わらず、部品を基材に接合する部位に形成される。いっぽう、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、一定の機械的強度を持って、部品を基材に接合する。
ところで、圧縮応力が部品に継続して加わっているため、部品を基材に接合する部位に形成された磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、また、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、圧縮応力が継続して加わる。これによって、強磁性金属のナノ粒子同士の接合部に圧縮応力が集中し、接合部から解離して強磁性金属のナノ粒子が移動しようとするが、接合した強磁性金属のナノ粒子で埋められているため移動できない。さらに、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子に圧縮応力が加わり、接合部に圧縮応力が加わる。この結果、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の接合部に加わった圧縮応力によって、接合部に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で強磁性金属のナノ粒子同士が接合する。いっぽう、圧縮応力が集中した接合部における強磁性金属のナノ粒子同士が接触する体積は、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子同士が接触する体積に比べ大きい。このため、摩擦熱によるナノ粒子同士の接合力は、磁気吸着と金属結合によって接合したナノ粒子同士の接合力より大きい。これによって、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子同士は、摩擦熱で強固に接合される。
この結果、摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合する部位を埋め、また、部品が接触する基材の表面の凹凸を埋め、さらに、両者の強磁性金属のナノ粒子の集まりは、互いに接触する部位で摩擦接合する。また、表面の凹凸を埋めた強磁性金属のナノ粒子の集まりは、アンカー効果を発生する。この結果、摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品と基材との材質の違いに拘わらず、部品を基材に接合する。
さらに、部品を基材に接合する部位に、強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加すると、全ての強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和し、全ての強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力が著しく増大する。いっぽう、摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の接合力は、強磁性金属のナノ粒子同士が接触した部位に限られる。これに対し、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力は、ナノ粒子の全体に作用する。このため、磁気吸引力は摩擦熱による接合力より大きい。さらに、強磁性金属のナノ粒子が10nm前後と極めて小さく、飽和した磁化で磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着を引き剥がすのは難しい。このため、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用する磁気吸引力によって、強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品と基材との材質の違いに拘わらず、部品を基材に強固に接合する。また、空隙に形成された強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用するアンカー効果が著しく増える。
従って、14-15段落に記載した摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合する場合より、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用する磁気吸引力が、摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりの接合力に加算されるため、14-15段落に記載した部品が基材に接合する事例より強固に接合する。これによって、部品と基材との材質に拘わらず、部品を基材に強固に接合する。
次に、磁気吸着と摩擦熱で強磁性金属のナノ粒子同士が接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、基材同士を接合する方法、ないしは、部品同士を接合する方法を説明する。
6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物を用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属のナノ粒子が液体の有機化合物に分散したペーストを製造する。基材同士を接合する双方の接合部位に、ないしは、部品同士を接合する双方の接合部位に、ペーストを塗布すると、双方の接合部位に塗膜が形成される。すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる強磁性金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを塗布すると、強磁性金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、強磁性金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる塗膜が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、強磁性金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さいため、塗布されたペーストは、基材ないしは部品の材質に拘わらず、接合する領域の全体を覆い、また、部品を基材に重ね合わせた双方の部位の表面の凹凸に入り込む。
この後、ペーストが塗布された基材同士を重ね合わせ、ないしは、ペーストが塗布された部品同士を重ね合わせ、一方の基材ないしは一方の部品の表面に圧縮荷重を加え、基材同士ないしは部品同士を有機化合物の沸点に昇温する。これによって、有機溶媒が気化した後に、有機化合物が気化する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した強磁性金属のナノ粒子の集まりが磁気吸着し、磁気吸着した強磁性金属同士が接触する部位で金属結合し、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、基材同士ないしは部品同士を重ね合わせた部位に形成される。
いっぽう、基材ないしは部品の表面の凹凸を埋めたペーストが昇温されると、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した強磁性金属のナノ粒子の集まりが磁気吸着し、磁気吸着した強磁性金属同士が接触する部位で金属結合する。また、基材ないしは部品の表面の凹凸のすぐ上の基材ないしは部品との接触部に析出した強磁性のナノ粒子の集まりと磁気吸着し、磁気吸着した強磁性金属同士が接触する部位で強磁性金属同士が金属結合する。この結果、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、基材同士ないしは部品同士を重ね合わせた部位と、重ね合わせた部位の双方の表面の凹凸に、連続して形成される。この結果、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、基材ないしは部品の材質に拘わらず、基材同士ないしは部品同士を接合する部位に形成される。いっぽう、重ね合わせた双方の接合部位の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、一定の機械的強度を持って、基材同士ないしは部品同士を接合する。
ところで、圧縮応力が基材同士ないしは部品同士に継続して加わっているため、基材同士ないしは部品同士を重ね合わせた部位に形成された磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、また、重ね合わせた部位の双方の表面の凹凸に形成された磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、圧縮応力が継続して加わる。これによって、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子同士の接合部に圧縮応力が集中し、接合部から解離して強磁性金属のナノ粒子が移動しようとするが、接合した強磁性金属のナノ粒子で埋められているため移動できない。さらに、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子に圧縮応力が加わり、接合部に圧縮応力が加わる。この結果、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子の接合部に加わった圧縮応力によって、接合部に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で強磁性金属のナノ粒子同士が接合する。いっぽう、圧縮応力が集中した接合部における強磁性金属のナノ粒子同士が接触する体積は、磁気吸着と金属結合によって接合した強磁性金属のナノ粒子同士が接触する体積に比べ大きい。このため、摩擦熱による強磁性金属のナノ粒子同士の接合力は、磁気吸着と金属結合に依るナノ粒子同士の接合力より大きい。これによって、強磁性金属のナノ粒子同士は、摩擦熱で強固に接合される。
この結果、摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、基材同士ないしは部品同士を重ね合わせた部位を埋め、また、重ね合わせた部位の双方の表面の凹凸を埋め、さらに、両者の強磁性金属のナノ粒子の集まりは、互いに接触する部位で摩擦接合する。また、表面の凹凸を埋めた摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりは、アンカー効果を発生する。この結果、摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品と基材との材質の違いに拘わらず、基材同士ないしは部品同士を接合する。
さらに、基材同士ないしは部品同士を重ね合わせた部位に、強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加すると、全ての強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和し、全ての強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力が著しく増大する。いっぽう、摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子の接合部は、強磁性金属のナノ粒子同士が接触した部位に限られる。これに対し、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子に作用する磁気吸引力は、ナノ粒子の全体に作用する。このため、磁気吸引力は、摩擦熱による接合力より大きい。さらに、強磁性金属のナノ粒子が10nm前後と極めて小さく、飽和した磁化で磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着を引き剥がすのは難しい。このため、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用する磁気吸引力によって、強磁性金属のナノ粒子の集まりが、部品と基材との材質の違いに拘わらず、基材同士ないしは部品同士を強固に接合する。また、重ね合わせた部位の双方の表面の凹凸に形成された強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用するアンカー効果が著しく増える。
従って、14-15段落に記載した摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりが、基材同士ないしは部品同士を接合する場合より、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子の集まりに作用する磁気吸引力が、摩擦熱で接合したナノ粒子の集まりの接合力に加算され、14-15段落に記載した基材同士ないしは部品同士を接合する場合より強固に接合する。この結果、部品と基材の材質に拘わらず、基材同士ないしは部品同士がより強固に接合する。
さらに、基材ないしは部品を、有機化合物の沸点に昇温する際に、基材ないしは部品の表面に付着していた水分、水和物、水酸化物及び有機物がそれぞれの沸点に応じて順番に気化する。このため、基材ないしは部品の表面に付着した不純物を取り除く事前の洗浄処理は必要ない。また、基材ないしは部品の表面の凹凸より2桁小さい金属のナノ粒子の集まりが、基材ないしは部品の表面の凹凸に入り込んで析出するため、基材ないしは部品の表面に、酸化膜や水酸化膜が形成されていても、金属のナノ粒子の集まりが、部品を基材に接合させる、ないしは、部品同士を接合させる、ないしは、基材同士を接合させる。
また、接合する基材同士ないしは部品同士の質量に応じてペーストの粘度を変え、これによって、基材同士ないしは部品同士を接合する接合層の厚みが変えられ、接合層の接合強度が、接合する基材同士ないしは部品同士の質量に応じて自在に変えられる。このため、基材ないしは部品の質量が大きく、大きな接合強度が必要な場合は、ペーストの粘度を相対的に高い粘度に設定する。
なお、強磁性金属の磁気キュリー点は、鉄が770℃で、ニッケルが358℃で、コバルトが1131℃である。従って、強磁性金属の磁気キュリー点に近づかなければ、基材同士ないしは部品同士を接合する磁気吸引力は変わらない。このため、部品ないしは基材が高温にさらされても、基材同士ないしは部品同士が接合し続ける。
【0018】
6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法は、
部品同士を接合する双方の接合部位を隙間バメに加工し、該隙間バメに加工された双方の接合部位に、6段落に記載した方法で製造したペーストを塗布し、該ペーストが塗布された一方の部品を、該ペーストが塗布された他方の部品に挿入し、該ペーストが塗布された双方の接合部位を重ね合わせる、この後、該重ね合わせた部品同士を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、該重ね合わせた前記部品同士の一方の部品を固定し、該重ね合わせた前記部品同士の他方の部品を回転させる、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した金属のナノ粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、さらに該金属結合した金属のナノ粒子の集まりに、前記他方の部品を回転することでせん断応力が加わり、該せん断応力によって前記金属結合した金属のナノ粒子同士の結合部に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱によって、前記金属結合した金属のナノ粒子同士が接合し、該摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法である。
【0019】
つまり、部品同士を接合する双方の接合部位を隙間バメに加工し、双方の接合部位に、6段落に記載した方法で製造したペーストを塗布すると、双方の接合部位に塗膜が形成される。すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを塗布すると、金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる塗膜が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、部品同士を接合する双方の篏合部の表面の凹凸より3桁近く小さいため、塗布されたペーストは、双方の部品の材質に拘わらず、双方の接合領域の全体を覆うとともに、双方の接合部位の表面の凹凸に入り込む。
この後、ペーストが塗布された一方の部品を、ペーストが塗布された他方の部品に挿入し、ペーストが塗布された双方の接合部位を重ね合わせる。この際、隙間バメに加工した接合部位に部品が挿入され始めると、ペーストの塗膜同士が接触し、挿入する部品に形成された塗膜が、挿入方向とは反対方向に移動するが、部品の挿入が終わると、塗膜の移動は止まる。この結果、隙間バメの接合部位に形成されたペーストの塗膜は、隙間バメの篏合部の先端になるほど、塗膜の移動量が多く、塗膜の厚みは薄くなる。これに対し、隙間バメの篏合部の後端になるほど、塗膜の移動量が少なく、塗膜の厚みは厚くなる。この結果、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間は、塗膜で埋め尽くされる。
さらに、重ね合わせた部品同士を、有機化合物の沸点に昇温する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった金属のナノ粒子の集まりが重なり合って塗膜に析出し、析出した金属のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、ペーストの粘度に応じた厚みで、部品同士の接合部位の全体を覆うとともに、双方の接合部位の表面の凹凸に入り込む。この際、部品を挿入する際の塗膜の移動によって、隙間バメの篏合部の先端になるほど、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みは薄く、反対に、隙間バメの篏合部の後端になるほど、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みは厚くなる。このため、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間は、金属結合した金属のナノ粒子の集まりで埋め尽くされる。
いっぽう、双方の接合部位の表面の凹凸を埋めた金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、表面の凹凸のすぐ上の接合部位に析出した金属結合した金属のナノ粒子の集まりと接触し、金属のナノ粒子同士は接触部で金属結合する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、部品同士の接合部位の全体と、双方の接合部位の表面の凹凸に、連続して形成される。このため、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、双方の部品の材質に拘わらず、双方の接合部位の全体を覆う。いっぽう、双方の接合部位の表面の凹凸に形成されたナノ粒子の集まりに、アンカー効果が発生する。この結果、金属結合した金属のナノ粒子の集まりが、一定の機械的強度を持って、部品同士の接合部位を接合する。従って、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間ほど、部品同士を接合する接合力が大きい。これによって、部品同士が接合される。
さらに、重ね合わせた部品の一方の部品を固定し、他方の部品を回転させる。これによって、接合部位に形成された金属結合した金属のナノ粒子の集まりにせん断応力が加わり、金属結合部の体積が僅かであるため、金属結合部が優先して破壊され、金属結合から引き離された金属のナノ粒子が、金属のナノ粒子で埋められた領域を僅かに移動し、金属のナノ粒子同士が改めて接触する。さらに、金属結合から引き離された金属のナノ粒子に応力が加わり、金属のナノ粒子が移動しようとするが、金属のナノ粒子の集まりの存在が障害となって、金属のナノ粒子の移動が抑制され、金属のナノ粒子同士が強固に接触する。従って、金属のナノ粒子同士が接触する体積は、活性化した金属のナノ粒子が析出した際に、金属のナノ粒子同士が接触した体積に比べ大きい。この際、金属のナノ粒子同士の接触部に摩擦熱が発生し、摩擦熱で金属のナノ粒子同士が接合するが、金属のナノ粒子同士の接合力は、活性化した金属のナノ粒子が析出した際に、金属のナノ粒子同士が金属結合した結合力より大きい。従って、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間ほど、部品同士を接合する摩擦熱による接合力が大きい。これによって、部品同士が強固に接合される。
さらに、他方の部品を回転させると、金属のナノ粒子の摩擦熱による接合が増大する。この結果、隙間バメの篏合部の後端部付近の隙間は、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子で徐々に埋められる。いっぽう、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子が増えるほど、金属のナノ粒子の移動が困難になり、また、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりの接合力が増大する。これによって、他方の部品の回転が困難になり、部品の回転を停止する。従って、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりは、部品同士の篏合部で移動できず、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりが、接合部同士を強固に接合する。この結果、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、接合部を強固に接合する。
従って、狭い領域の篏合部に形成された摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりは、移動が困難になるほど強固に接合するため、14-15段落に記載した摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりで、部品同士を接合する場合より、部品同士の接合力が高まる。この結果、部品同士の材質の違いに拘わらず、部品同士をさらに強固に接合する。
本発明の部品同士を接合する事例の一つとして、部品同士が互いに異なる材質からなる事例がある。つまり、隙間バメで加工した接合部を、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層で接合するため、部品同士の材質の組み合わせの如何に拘わらず、部品同士接合することができる。このため、融点と軟化点とが大きく異なる、金属と合成樹脂との接合、合成樹脂とセラミックスとの接合ができる。また、融点が大きく異なる金属同士の接合ができる。
以上に説明したように、本発明のペーストを、隙間バメに加工した双方の部品の篏合部に塗布し、さらに、活性化した金属のナノ粒子の集まりを双方の接合部位に析出させ、さらに、一方の部品を固定し、他方の部品を回転させ、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりで、部品同士が強固に接合される。従って、隙間バメに加工した篏合部が異種材質であっても、部品同士を接合するペーストとして、本発明のペーストを用いることができ、ペーストの適応範囲がさらに広がる。
さらに、部品を有機化合物の沸点に昇温する際に、部品の表面に付着していた水分、水和物、水酸化物及び有機物がそれぞれの沸点に応じて順番に気化する。このため、部品の表面に付着した不純物を取り除く事前の洗浄処理は必要ない。また、部品の表面の凹凸より3桁近く小さい金属のナノ粒子の集まりが、部品の表面の凹凸に入り込んで析出するため、部品の表面に酸化膜や水酸化膜が形成されていても、金属のナノ粒子の集まりが、部品同士を接合させる。
また、接合する部品同士の質量に応じてペーストの粘度を変え、これによって、部品同士を接合する篏合部における接合層の厚みが変えられ、接合層の接合強度が、接合する部品同士の質量に応じて自在に変えられる。このため、部品の質量が大きく、大きな接合強度が必要な場合は、ペーストの粘度を相対的に高い粘度に設定する。
【0020】
18段落に記載した部品同士を接合する方法が、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法であり、該部品同士を接合する方法は、
6段落に記載した金属化合物が、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物であり、該金属化合物を、6段落に記載した金属化合物として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりが、6段落に記載した液体の有機化合物に分散された構成からなるペーストを製造し、該ペーストを、部品同士を接合する双方の接合部位が隙間バメに加工された該双方の接合部位に塗布し、該ペーストが塗布された一方の部品を、該ペーストが塗布された他方の部品に挿入し、該ペーストが塗布された前記双方の接合部位を重ね合わせる、この後、該重ね合わせた前記部品同士を、6段落に記載した液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、該重ね合わせた前記部品同士の一方の部品を固定し、該重ね合わせた前記部品同士の他方の部品を回転させる、この処理によって、最初に前記塗布されたペーストから、6段落に記載した有機溶剤が気化し、次いで前記液体の有機化合物が気化し、次に前記ペーストに分散していた強磁性金属のナノ粒子の集まりが活性化し、該活性化した強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って前記ペーストが塗布された部位に析出し、さらに該重なり合って析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに該磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子の集まりに、前記他方の部品を回転することで発生したせん断応力が加わり、該せん断応力によって、前記強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着した磁気吸着部位に摩擦熱が発生し、さらに該摩擦熱によって、前記磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が接合する、この後、前記部品同士を接合する双方の接合部位に、前記強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加し、該強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させる、この処理によって、前記摩擦熱で接合した強磁性金属のナノ粒子同士が飽和した磁化によって磁気吸着し、該強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、前記部品同士が接合される、6段落に記載した方法で製造したペーストを用い、強磁性金属のナノ粒子同士が磁気吸着と摩擦熱とによって接合した該強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する方法である。
【0021】
つまり、6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として、熱分解で鉄、ニッケル、ないしは、コバルトからなるいずれかの強磁性金属を析出する金属化合物を用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従って、強磁性金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散したペーストを製造する。いっぽう、部品同士を接合する双方の接合部位を隙間バメに加工し、双方の接合部位にペーストを塗布し、双方の接合部位に塗膜を形成する。すなわち、ペーストの20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度になるように設定され、殆ど質量を持たない10nm前後の大きさからなる金属のナノ粒子に、有機溶剤で希釈された有機化合物が粘度に応じた吸着力で吸着する。このため、ペーストを塗布すると、強磁性金属のナノ粒子が、有機溶剤で希釈された有機化合物から分離せず、強磁性金属のナノ粒子が有機溶剤で希釈された有機化合物に分散した、ペーストの構成からなる塗膜が形成される。また、ペーストは、表面張力が30dyn/cm以下と極めて小さく、かつ、20ミリパスカル秒以下の低粘度であり、さらに、強磁性金属のナノ粒子が10nm前後の大きさで、部品同士を接合する双方の接合部位の表面の凹凸より3桁近く小さいため、塗布されたペーストは、双方の部品の材質に拘わらず、双方の接合部位の全体を覆うとともに、双方の接合部位の表面の凹凸に入り込む。
この後、ペーストが塗布された一方の部品を、ペーストが塗布された他方の部品に挿入し、ペーストが塗布された双方の接合部位を重ね合わせる。この際、隙間バメに加工した接合部位に部品が挿入され始めると、ペーストの塗膜同士が接触し、挿入する部品に形成された塗膜が、挿入方向とは反対方向に移動するが、部品の挿入が終わると、塗膜の移動は止まる。この結果、隙間バメの接合部位に形成されたペーストの塗膜は、隙間バメの篏合部の先端になるほど、塗膜の移動量が多く、塗膜の厚みは薄くなる。これに対し、隙間バメの篏合部の後端になるほど、塗膜の移動量が少なく、塗膜の厚みは厚くなる。この結果、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間は、塗膜で埋め尽くされる。
さらに、重ね合わせた部品同士を、有機化合物の沸点に昇温する。有機化合物の沸点が金属化合物の熱分解温度より高いため、塗布したペーストから有機化合物の気化が完了すると、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子の集まりが重なり合って析出し、析出した強磁性金属のナノ粒子同士が互いに磁気吸着し、さらに、磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士が接触する部位で金属結合し、磁気吸着と金属結合で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層が、ペーストの粘度に応じた厚みで、部品同士の接合部位の全体を覆うとともに、双方の接合部位の表面の凹凸に入り込む。この際、部品を挿入する際の塗膜の移動によって、隙間バメの篏合部の先端になるほど、磁気吸着と金属結合で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みは薄く、反対に、隙間バメの篏合部の後端になるほど、磁気吸着と金属結合で接合した強磁性金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みは厚くなる。このため、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間は、磁気吸着と金属結合で接合した強磁性金属の集まりで埋め尽くされる。
この後、重ね合わせた一方の部品を固定し、重ね合わせた他方の部品を回転させる。これによって、磁気吸着と金属結合で接合した強磁性金属のナノ粒子同士の接合部にせん断応力が加わり、接合部の体積が僅かであるため、接合部が優先して破壊され、強磁性金属のナノ粒子で埋められた領域を、ナノ粒子同士の接合から引き離された強磁性金属のナノ粒子が僅かに移動し、強磁性金属のナノ粒子同士が改めて接触する。さらに、ナノ粒子同士の接合から引き離された強磁性金属のナノ粒子に応力が加わり、ナノ粒子が移動しようとするが、強磁性金属のナノ粒子の集まりの存在が障害となって、ナノ粒子の移動が抑制され、ナノ粒子同士が強固に接触し、接触部に摩擦熱が発生する。いっぽう、ナノ粒子同士の接合から強制的に引き離されたナノ粒子が移動させられ、ナノ粒子の移動が困難になった状態でナノ粒子に接触したため、接触部の体積は、活性状態になった強磁性金属のナノ粒子が重なり合って析出した際に、ナノ粒子同士が磁気吸着と金属結合で接合した接合部の体積に比べ大きく、摩擦熱によるナノ粒子同士の接合力は、磁気吸着と金属結合で接合したナノ粒子同士の接合力より大きい。従って、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間ほど、部品同士を接合する接合力が大きい。これによって、部品同士が接合される。
さらに、部品を回転させると、磁気吸着から引き離されたナノ粒子によるナノ粒子同士の接合が増大する。従って、隙間バメの篏合部の後端部付近の隙間は、摩擦熱で接合したナノ粒子で徐々に埋められる。いっぽう、摩擦熱で接合したナノ粒子が増えるほど、摩擦熱による接合力が大きいため、接合したナノ粒子の移動が困難になり、これによって、部品の回転が困難になり、部品の回転を停止する。このため、摩擦熱で接合したナノ粒子の集まりは、部品同士の接合部で移動できず、摩擦熱で接合したナノ粒子の集まりが、接合部同士を接合する。従って、隙間バメの篏合部の後端部に近い隙間ほど、部品同士を接合する接合力が大きい。この結果、摩擦熱で接合したナノ粒子の集まりが、接合部を強固に接合する。なお、ペーストは、表面張力が小さく、かつ、低粘度であり、さらに、強磁性金属のナノ粒子が10nm前後の大きさであるため、双方の部品の材質に拘わらず、摩擦熱で接合したナノ粒子の集まりが、双方の接合部位の全体を覆うとともに、双方の接合部位の表面の凹凸に入り込み、部品の材質に拘わらず、部品同士を接合する。
さらに、部品同士を接合する部位に、強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和する磁界を印加すると、全ての強磁性金属のナノ粒子の磁化が飽和し、全てのナノ粒子に作用する磁気吸引力が著しく増大する。いっぽう、摩擦熱でナノ粒子同士が接合した接合力は、ナノ粒子同士が摩擦で接触した部位に限られる。これに対し、磁化が飽和したナノ粒子に作用する磁気吸引力は、ナノ粒子の全体に作用する。このため、磁気吸引力は、摩擦熱による結合力より大きい。さらに、ナノ粒子が10nm前後と小さいため、飽和した磁化で磁気吸着した強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着を引き剥がすのは難しい。
従って、18-19段落に記載した部品同士の篏合部において、摩擦熱で接合したナノ粒子の集まりが部品同士を接合する場合より、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子の集まりの磁気吸引力が、摩擦熱で接合したナノ粒子の集まりの接合力に加算されるため、18-19段落に記載した事例より部品同士が強固に接合する。この結果、部品同士の材質の違いに拘わらず、部品同士をさらに強固に接合する。
なお、強磁性金属の磁気キュリー点は、鉄が770℃で、ニッケルが358℃で、コバルトが1131℃である。従って、強磁性金属の磁気キュリー点に近づかなければ、部品同士が接合する磁気吸引力は変わらない。このため、部品が高温にさらされても、部品同士が接合し続ける。
さらに、部品を有機化合物の沸点に昇温する際に、部品の表面に付着していた水分、水和物、水酸化物及び有機物がそれぞれの沸点に応じて順番に気化する。このため、部品の表面に付着した不純物を取り除く事前の洗浄処理は必要ない。また、部品の表面の凹凸より3桁近く小さい金属のナノ粒子の集まりが、部品の表面の凹凸に入り込んで析出するため、部品の表面に酸化膜や水酸化膜が形成されていても、金属のナノ粒子の集まりが、部品同士を接合させる。
また、接合する部品同士の質量に応じてペーストの粘度を変え、これによって、部品同士を接合する篏合部における接合層の厚みが変えられ、接合層の接合強度が、接合する部品同士の質量に応じて自在に変えられる。このため、部品の質量が大きく、大きな接合強度が必要な場合は、ペーストの粘度を相対的に高い粘度に設定する。
【0022】
6段落に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法は、
6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、無機物の分子ないしは無機物のイオンが配位子となって金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩で構成された無機金属化合物であり、6段落に記載した液体の有機化合物が、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールに属する有機化合物であり、6段落に記載した有機溶剤が、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、ないしは、芳香族炭化水素に属するいずれか1種類の有機溶剤であり、前記無機金属化合物を、6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記第1級アルコールに属する有機化合物を、6段落に記載した液体の有機化合物として用い、前記有機溶剤を、6段落に記載した有機溶剤として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従ってペーストを製造する、6段落に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法である。
【0023】
最初に、無機物からなる分子ないしは無機物からなるイオンが配位子となって、金属イオンに配位結合した金属錯イオンを有する無機塩からなる無機金属化合物を、還元雰囲気で熱処理すると、最初に配位結合部が分断され、無機物と金属とに分解する。さらに昇温すると、無機物が気化熱を奪って気化し、180-220℃の温度範囲で無機物の気化が完了して金属が析出する。
つまり、無機金属化合物を構成するイオンの中で、分子の中央に位置する金属イオンが最も大きく、金属イオンと配位子との距離が最も長い。この無機金属化合物を還元雰囲気で熱処理すると、金属イオンが配位子と結合する配位結合部が最初に分断され、金属と無機物とに分解する。さらに温度が上がると、無機物が気化熱を奪って気化し、無機物の気化が完了すると金属が析出し、熱分解を終える。金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属が析出する温度の中で最も低い。また、無機金属化合物は、メタノールに10重量%近く分散し、メタノールに溶解しない。このため、金属錯イオンを有する無機塩からなる無機金属化合物は、6段落に記載した金属化合物として、用いることができる。
すなわち、無機物からなる分子ないしは無機物からなるイオンが配位子になって、金属イオンに配位結合する金属錯イオンは、他の金属錯イオンに比べて合成が容易である。このような金属錯イオンとして、アンモニアNH3が配位子となって金属イオンに配位結合するアンミン金属錯イオン、水H2Oが配位子となって金属イオンに配位結合するアクア金属錯イオン、水酸基OH-が配位子となって金属イオンに配位結合するヒドロキソ金属錯イオン、塩素イオンCl-が、ないしは塩素イオンCl-とアンモニアNH3とが配位子となって金属イオンに配位結合するクロロ金属錯イオンなどがある。さらに、このような金属錯イオンを有する塩化物、硫酸塩、硝酸塩などの無機塩からなる無機金属化合物は、合成が容易で、無機塩の分子量が小さいため、180-220℃の温度範囲で無機物の気化が完了し金属を析出する。金属が析出する温度は、金属化合物の熱分解で金属を析出する温度の中で最も低い。こうした無機金属化合物は、汎用的な工業用の薬品である。
次に、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールに属する有機化合物は、6段落に記載した、融点が15℃より低い第一の性質と、前記した無機金属化合物が溶解及び分散しない第二の性質と、沸点が前記した無機金属化合物の熱分解温度より高い第三の性質と、前記した無機金属化合物の熱分解で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない第四の性質と、20℃における表面張力が30ダイン毎センチメートル以下である第五の性質からなる5つの性質を兼備する。
すなわち、炭素原子の数が8からなる第1級アルコールは、示性式がCH3(CH2)7OHからなるn-オクタンで、融点が-16℃で、沸点が195℃で、20℃における粘度が7.3ミリパスカル秒で、20℃における表面張力が27.5ダイン毎センチメートルで、密度が0.83g/cm3で、分子量が130g/モルからなる有機化合物である。n-オクタンは、前記した無機金属化合物に溶解及び分散せず、また、前記した無機金属化合物の熱分解で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない。従って、n-オクタンは、6段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。
また、炭素原子の数が9からなる第1級アルコールは、示性式がCH3(CH2)8OHからなるn-ノナンで、融点が-7℃で、沸点が215℃で、20℃における粘度が10.8ミリパスカル秒で、24℃における表面張力が28ダイン毎センチメートルで、密度が0.83g/cm3で、分子量が144g/モルからなる有機化合物である。n-ノナンは、前記した無機金属化合物に溶解及び分散せず、また、前記した無機金属化合物の熱分解で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない。従って、n-ノナンは、6段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。
さらに、炭素原子の数が10からなる第1級アルコールは、示性式がCH3(CH2)10OHからなるn-デカンで、融点が6.4℃で、沸点が233℃で、20℃における粘度が14.5ミリパスカル秒で、20℃における表面張力が29ダイン毎センチメートルで、密度が0.83g/cm3で、分子量が158g/モルからなる有機化合物である。n-デカンは、前記した無機金属化合物に溶解及び分散せず、また、前記した無機金属化合物の熱分解で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない。従って、n-デカンは、6段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。
いっぽう、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、ないしは、芳香族炭化水素に属する有機溶剤は、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールに属する有機化合物に溶解ないしは混和し、沸点が前記した第1級アルコールに属する有機化合物の沸点より低い。このため、6段落に記載した、液体の有機化合物に溶解ないしは混和し、かつ、沸点が液体の有機化合物の沸点より低い、2つの性質を兼備する有機溶剤である。なお、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールはいずれも、20℃における粘度が20ミリパスカル秒以下の粘度であるが、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、ないしは、芳香族炭化水素に属する有機溶剤に溶解ないしは混和させることで、さらに低粘度の有機化合物になる。
以上に説明した無機金属化合物と、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールと、ジエチルエーテル、アセトン、エタノール、ないしは、芳香族炭化水素に属する有機溶剤は、いずれも汎用的な工業用薬品である。また、6段落に記載したペーストを製造する方法は、極めて簡単な6つの処理を連続して実施して製造する。従って、安価な工業用薬品を用い、極めて簡単な6つの処理を連続して実施することで、安価なペーストが製造できる。
【0024】
6段落に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法は、
6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物が、オクチル酸金属化合物であり、6段落に記載した液体の有機化合物がテトラエチレングリコールであり、6段落に記載した有機溶剤が、エタノールないしはアセトンのいずれかからなる有機溶剤であり、前記オクチル酸金属化合物を、6段落に記載した熱分解で金属を析出する金属化合物として用い、前記テトラエチレングリコールを、6段落に記載した液体の有機化合物として用い、前記エタノールないしはアセトンのいずれかからなる有機溶剤を、6段落に記載した有機溶剤として用い、6段落に記載したペーストを製造する方法に従ってペーストを製造する、6段落に記載した金属のナノ粒子の集まりが液体の有機化合物に分散されたペーストを製造する方法である。
【0025】
最初に、オクチル酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するオクチル酸金属化合物は、金属イオンが最も大きいイオンであり、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つオクチル酸金属化合物を、大気雰囲気で熱処理すると、オクチル酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、オクチル酸と金属とに分離する。オクチル酸が飽和脂肪酸から構成され、炭素原子が水素原子に対して過剰となる不飽和構造を持たないため、オクチルが気化熱を奪って気化し、気化が完了すると金属が析出する。また、オクチル酸金属化合物は、メタノールに10重量%近く分散し、メタノールに溶解しない。このため、2つの特徴を兼備するオクチル酸金属化合物は、6段落に記載した金属化合物として用いることができる。
なお、オクチル酸金属化合物は、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物に属する有機金属化合物である。2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物の中で、オクチル酸の沸点は228℃と最も低いため、大気雰囲気の290℃で熱分解が完了し、金属を析出する。なお、2つの特徴を兼備するカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物の他に、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、ラウリン酸の沸点は296℃で、ステアリン酸の沸点は376℃であり、オクチル酸の沸点より高いため、熱分解が完了して金属を析出する温度は、オクチル酸金属化合物より高い。従って、オクチル酸金属化合物は、有機金属化合物の中で最も低い熱分解温度で金属を析出する。
つまり、オクチル酸は、分岐構造の飽和脂肪酸であり、示性式がCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHで示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。分岐構造の飽和脂肪酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点が228℃と低い。これに対し、ラウリン酸とステアリン酸は、直鎖構造の飽和脂肪酸であり、沸点が分岐構造の飽和脂肪酸より高い。
なお、オクチル酸とカプリル酸(オクタン酸とも言う)とは、同一の分子式C8H16O2であるが、分子構造が異なる異性体である。つまり、オクチル酸は前記したように分岐構造を持つ脂肪酸である。いっぽう、カプリル酸は直鎖構造を持つ脂肪酸で、示性式はCH3(CH2)6COOHである。従って、オクチル酸金属化合物とカプリル酸金属化合物とは、同一の分子式であるが、オクチル酸とカプリル酸とが分子構造が異なるため、オクチル酸金属化合物とカプリル酸金属化合物とは分子構造が異なる。すなわち、カプリル酸金属化合物は、カプリル酸が電離して生じるアニオンであるカルボキシラートアニオンに、金属イオンが配位結合するため、カプリル酸金属化合物は、大気雰囲気での熱分解で金属酸化物を析出する。つまり、カプリル酸金属化合物は、最も大きいイオンである金属イオンにカルボキシラートイオンが近づいて配位結合するため、金属イオンと、カルボキシラートイオンを構成する酸素イオンとの距離は短くなる。これによって、酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカプリル酸金属化合物は、カプリル酸の沸点を超えると、酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカプリル酸とに分解する。さらに昇温すると、カプリル酸が気化熱を奪って気化し、カプリル酸の気化が完了した直後に、金属酸化物が析出する。
また、オクチル酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な有機酸であるオクチル酸を、強アルカリと反応させるとオクチル酸アルカリ金属化合物が生成され、オクチル酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるオクチル酸金属化合物が合成される。従って、オクチル酸金属化合物は、最も安価な有機金属化合物である。このため、23-24段落で説明した無機金属化合物より熱処理温度が高いが、無機金属化合物より安価な有機金属化合物である。
次に、テトラエチレングリコールは、示性式がHO(CH2CH2O)3CH2CH2OHであり、融点が-9.4℃で、沸点が328℃で、20℃における粘度が58ミリパスカル秒で、20℃における表面張力が18.8ダイン毎センチメートルで、密度が1.12g/cm3で、分子量が194g/モルからなる有機化合物である。また、テトラエチレングリコールは、オクチル金属化合物に溶解及び分散せず、また、オクチル酸金属化合物の熱分解で析出する金属のナノ粒子と化学反応を起こさない。従って、テトラエチレングリコールは、6段落に記載した5つの性質を兼備する有機化合物である。
いっぽう、エタノールないしはアセトンは、テトラエチレングリコールに溶解ないしは混和し、沸点がテトラエチレングリコールの沸点より低い。このため、6段落に記載した、液体の有機化合物に溶解ないしは混和し、かつ、沸点が液体の有機化合物の沸点より低い、2つの性質を兼備する有機溶剤である。なお、テトラエチレングリコールは、20℃における粘度が58ミリパスカル秒で、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールの粘度に比べて高いが、エタノールないしはアセトンに溶解ないしは混和させることで、20℃における粘度が、20ミリパスカル秒以下の粘度に低下させることができる。
以上に説明したオクチル酸金属化合物と、テトラエチレングリコールと、エタノール及びアセトンは、いずれも汎用的な工業用薬品である。また、6段落に記載したペーストを製造する方法は、極めて簡単な6つの処理を連続して実施する方法である。従って、安価な工業用薬品を用い、極めて簡単な6つの処理を連続して実施することで、安価なペーストが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】銅のナノ粒子の集まりがn-オクタンに分散したペーストを拡大して図示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態1
本実施形態は、22-23段落に記載した無機金属化合物に関わる。6段落に記載した金属化合物は、メタノールに分散し、メタノールに溶解しない第一の性質と、熱分解で金属を析出する第二の性質を兼備する。ここでは金属を銅とし、銅化合物を例にして説明する。
最初に、メタノールに分散する第一の性質を持つ銅化合物を説明する。塩化銅、硫酸銅、硝酸銅などの無機銅化合物はメタノールに溶解し、銅イオンが溶出してしまい、多くの銅イオンが銅微粒子の析出に参加できなくなる。また、酸化銅、塩化銅、硫化銅などの無機銅化合物は、最も汎用的な溶剤であるメタノール類に分散しない。このため、これらの無機銅化合物は、メタノールに分散する性質を持つ銅化合物でない。
いっぽう、銅化合物は銅を析出する第二の性質を持つ。銅化合物から銅が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。さらに、銅化合物の熱分解温度が低ければ、銅が安価に析出する。従って、熱分解温度が低い銅化合物は、銅微粒子の原料になる。このような銅化合物に、無機物からなる分子ないしは無機物からなるイオンが配位子となって銅イオンに配位結合する銅錯イオンを有する無機塩からなる無機銅化合物がある。つまり、配位子が低分子量で、配位子の数が少なく、無機銅化合物を形成する無機物の分子量が小さいため、熱分解する温度は低い。さらに、こうした無機銅化合物は分子量が小さいため、他の銅錯イオンからなる銅化合物より合成が容易で安価である。
無機銅化合物を構成する分子の中で、銅イオンが最も大きい。ちなみに、銅原子の二重結合の共有結合半径は115pmで、窒素原子の単結合の共有結合半径の71pmで、酸素原子の単結合の共有結合半径は63pmである。このため、配位子が銅イオンに配位結合する配位結合部の距離が最も長い。従って、還元雰囲気の熱処理では、最初に配位結合部が分断され、銅と無機物とに分解し、無機物の気化が完了した後に銅が析出する。
このような無機銅化合物からなる銅錯塩として、アンモニアNH3が配位子となって銅イオンに配位結合するテトラアンミン銅イオン[Cu(NH3)4]2+やヘキサアンミン銅イオン[Cu(NH3)6]2+を有する銅錯塩や、塩素イオンCl-が配位子になって銅イオンに配位結合するテトラクロロ銅イオン[CuCl4]2-を有する銅錯塩は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他の銅錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易で安価である。こうした銅錯イオンを有する無機銅化合物からなる銅錯塩は、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、180-200℃で熱分解が完了する。さらに、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銅錯塩に、テトラアンミン銅硝酸塩[Cu(NH3)4](NO3)2や、テトラアンミン銅硫酸塩[Cu(NH3)4]SO4がある。
さらに、熱分解でニッケルを析出する無機ニッケル化合物からなるニッケル錯体として、アンモニアNH3が配位子となってニッケルイオンに配位結合するヘキサアンミンニッケルイオン[Ni(NH3)6]2+からなるニッケル錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他のニッケル錯イオンを有する錯体に比べて合成が容易で安価である。こうしたニッケル錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯塩は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると配位結合部位が最初に分断され、180-200℃で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このようなニッケル錯塩として、例えば、ヘキサアンミンニッケル塩化物[Ni(NH3)6]Cl2がある。
また、無機金化合物からなる銀錯体として、アンモニアNH3が配位子となって銀イオンに配位結合するジアンミン銀イオン[Ag(NH3)2]+を有する銀錯体と、シアン化物イオンCN-が配位子となって銀イオンに配位結合するジシアノ銀イオン[Ag(CN)2]-を有する銀錯体は、配位子が低分子量で、配位子の数が少ないため、他の銀錯イオンを有する銀錯体に比べて、合成が容易で安価に製造できる。こうした銀錯イオンを有する無機金属化合物からなる錯塩は、無機物の分子量が小さいため、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、180-200℃で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。このような銀錯塩として、例えば、テトラアンミン銅硝酸塩[Ag(NH3)2]Cl、硫酸ジアンミン銀[Ag(NH3)2]2SO4、硝酸ジアンミン銀[Ag(NH3)2]NO3などが存在する。
さらに、熱分解で白金を析出する白金錯イオンを有する無機白金化合物として、アンミン錯体であるジアンミン白金塩化物[Pt(NH3)2]Cl2、テトラアンミン白金塩化物[Pt(NH3)4]Cl2、テトラアンミン白金酢酸塩[Pt(NH3)4](CH3COO)2、テトラアンミン白金硫酸塩[Pt(NH3)4](SO4)2、ペンタアンミンクロロ白金塩化物[PtCl(NH3)5]Cl3や、クロロ錯体であるテトラクロロ白金酸アンモニウム(NH4)2[PtCl4]、ジクロロジアンミン白金[PtCl2(NH3)2]がある。180-200℃で熱分解が完了する。これら無機白金化合物は、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、180-200℃で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。
また、熱分解でロジウムを析出するロジウム錯イオンを有する無機ロジウム化合物として、アンミン錯体であるペンタアンミンクロロロジウム塩化物[RhCl(NH3)5]Cl2、ヘキサアンミンロジウム塩化物[Rh(NH3)6]Cl3、ヘキサアンミンロジウム硝酸塩[Rh(NH3)6](NO3)3や、クロロ錯体であるヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(NH4)3[RhCl6]などのロジウム錯塩がある。これら無機ロジウム化合物は、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、180-200℃で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。
さらに、熱分解でルテニウムを析出するルテニウム錯イオンを有する無機ルテニウム化合物として、アンミン錯体であるヘキサアンミンルテニウム塩化物[Ru(NH3)6]Cl3、ヘキサアンミンルテニウム硫酸塩[Ru(NH3)6](SO4)3、ヘキサアンミンルテニウム硝酸塩[Ru(NH3)6](NO3)3、クロロペンタアンミンルテニウム塩化物[Ru(NH3)5Cl]Cl2などのルテニウム塩がある。これら無機ルテニウム化合物は、還元性雰囲気で熱処理すると、配位結合部位が最初に分断され、180-200℃で熱分解が完了する。また、メタノールに10重量%近くの分散濃度まで分散する。
以上に説明したように、無機金属化合物からなる錯塩は、配位子が低分子量で、配位子の数が少なく、無機金属化合物を形成する無機物の分子量が小さいため、熱分解温度が最も低く、合成が容易で最も安価な金属錯塩である。従って、無機金属化合物からなる錯塩は、金属ナノ粒子の原料になる。
【0028】
実施形態2
本実施形態は、24―25段落に記載したカルボン酸金属化合物に関わる。6段落に記載した金属化合物は、メタノールに分散し、メタノールに溶解しない第一の性質と、熱分解で金属を析出する第二の性質を兼備する。ここでは金属をニッケルとし、ニッケル化合物を例にして説明する。
最初に、メタノールに分散する第一の性質を持つニッケル化合物を説明する。硫酸ニッケルと塩化ニッケルはメタノールに溶解し、ニッケルイオンが溶出し、多くのニッケルイオンがニッケルの析出に参加できなくなる。また、水酸化ニッケルと酸化ニッケルはメタノールに分散しない。このため、無機ニッケル化合物はメタノールに分散しない。
有機ニッケル化合物は、熱分解でニッケルを析出する。有機ニッケル化合物からニッケルが析出する化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり有機ニッケル化合物を昇温するだけで、熱分解によってニッケルが析出する。さらに、有機ニッケル化合物の合成が容易でれば、有機ニッケル化合物が安価に製造できる。これらの性質を兼備する有機ニッケル化合物にカルボン酸ニッケル化合物がある。
つまり、カルボン酸ニッケル化合物の組成式は、RCOO-Ni-COORで表わせられる。Rは炭化水素で、この組成式はCmHnである(ここでmとnは整数)。カルボン酸ニッケル化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置するニッケルイオンNi2+が最も大きい物質になる。従って、ニッケルイオンNi2+とカルボキシル基を構成する酸素イオンO―とが共有結合する場合は、ニッケルイオンNi2+と酸素イオンO―との距離が最大になる。この理由は、ニッケルの共有結合半径は110pmであり、酸素の単結合の共有結合半径は63pmであり、炭素の二重結合の共有結合半径は67pmであることによる。このため、ニッケルイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸ニッケル化合物は、カルボン酸の沸点において、結合距離が最も長いニッケルイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、ニッケルとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にニッケルが析出する。こうしたカルボン酸ニッケル化合物として、オクチル酸ニッケル、ラウリン酸ニッケル、ステアリン酸ニッケルなどがある。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が低いほど低い温度で熱分解が始まり、飽和脂肪酸の分子量が小さいほど飽和脂肪酸の気化が進み、ニッケルが析出する温度は低い。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点は高い。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃で、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。従って、長鎖構造の飽和脂肪酸の分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸ニッケル化合物は、熱分解温度が相対的に低い。なお、ラウリン酸ニッケルは大気雰囲気の360℃で熱分解が完了し、ステアリン酸ニッケルは大気雰囲気の430℃で熱分解が完了する。
いっぽう、飽和脂肪酸が分岐鎖構造の飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点が低くなり、ニッケルが析出する温度も低くなる。さらに、分岐鎖構造の飽和脂肪酸は極性を持ち、分岐鎖構造の飽和脂肪酸からなるカルボン酸ニッケル化合物も極性を持ち、相対的に高い割合で極性物質であるアルコールに分散する。こうした分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は示性式がCH3(CH2)3CH(C2H5)COOHで示され、CHでCH3(CH2)3とC2H5とのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、オクチル酸ニッケルはカルボン酸ニッケル化合物の中で最も低い温度で熱分解する。ちなみに、オクチル酸ニッケルは、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了してニッケルが析出し、メタノールに10重量%近くまで分散する。
以上に説明したように、カルボキシル基を構成する酸素イオンがニッケルイオンに共有結合する第一の特徴と、飽和脂肪酸からなるカルボン酸で構成される第二の特徴を兼備するオクチル酸ニッケルは、熱分解でニッケルを析出する安価な工業用薬品である。
なお、オクチル酸銅Cu(C7H15COO)2は熱分解で銅を析出し、オクチル酸アルミニウムAl(C7H15COO)3は熱分解でアルミニウムを析出し、オクチル酸鉄Fe(C7H15COO)3は熱分解で鉄を析出し、オクチル酸亜鉛Zn(C7H15COO)2は熱分解で亜鉛を析出し、オクチル酸コバルトCo(C7H15COO)2は熱分解でコバルトを析出し、オクチル酸マンガンMn(C7H15COO)2は熱分解でマンガンを析出し、オクチル酸錫Sn(C7H15COO)2は熱分解で錫を析出し、オクチル酸カルシウムCa(C7H15COO)2は熱分解でカルシウムを析出し、オクチル酸カリウムK(C7H15COO)は熱分解でカリウムを析出し、オクチル酸リチウムLi(C7H15COO)は熱分解でリチウムを析出する。
【0029】
実施例1
本実施例は、23段落に記載したn-オクタンに、銅のナノ粒子を分散させたペーストを作成する。銅のナノ粒子の原料として、27段落に記載したテトラアンミン銅硝酸塩を用いた。
テトラアンミン銅硝酸塩(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)の250g(1モルに相当する)を3.3Lのメタノールに分散して攪拌し、テトラアンミン銅硝酸塩のメタノール分散液を作成した。この後、テトラアンミン銅硝酸塩のメタノール分散液を65℃に昇温し、メタノール分散液からメタノールを気化させ、テトラアンミン銅硝酸塩の結晶を析出させた。この後、テトラアンミン銅硝酸塩の結晶の集まりを10cm×10cm×3cmの容器に充填し、テトラアンミン銅硝酸塩の結晶の集まりに10cm×10cm×1cmの板材を被せ、板材の上に10kgの重りを載せた。この後、一旦重りを板材から取り除き、容器に0.4Gからなる前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を順番に5回ずつ加えた。再度、板材に重りを載せ、この後、再度3方向の衝撃加速度を加えた。こうした重りに依る圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を3回繰り返した後に、再度板材に重りを載せたが、板材が全く沈まなかったため、圧縮荷重によるテトラアンミン銅硝酸塩の結晶の粉砕が完了したと判断し、一対の処理を停止し、板材を容器から取り除いた。
さらに、n-オクタン(例えば、富士フィルム和光純薬株式会社の製品)の430ccを容器に充填して攪拌し、テトラアンミン銅硝酸塩の結晶の集まりがn-オクタンに分散されたペーストを作成した。この後、容器をアンモニア雰囲気の熱処理装置に配置し、180℃に5分間放置させた後に、容器を熱処理装置から取り出した。
この後、容器内の試料の一部を取り出し、試料を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100ボルトからの極低加速電圧による表面観察が可能で、導電性の被膜を形成せずに直接表面が観察できる。
試料の表面からの反射電子線について、900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料には、10nm前後の大きさの粒状のナノ粒子が分散されていた。次に、反射電子線の900-1000ボルトの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によってナノ粒子の材質を観察した。濃淡が認められないため、ナノ粒子は同一の元素から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、ナノ粒子を構成する元素を分析した。銅原子のみが存在することから、ナノ粒子は銅のナノ粒子である。従って、作成したペーストは、銅のナノ粒子の集まりがn-オクタンに分散したペーストである。
図1に、銅のナノ粒子の集まりがn-オクタンに分散したペーストを拡大して図示した。1は銅のナノ粒子で、2はn-オクタンである。
【0030】
実施例2
本実施例は、実施例1で作成したペーストをエタノールで希釈し、20℃における粘度を、6.0ミリパスカル秒に低下させる。このため、実施例1で作成したペーストに、114ccのエタノールを加え、実施例1で作成したペーストをエタノールで希釈した。
【0031】
実施例3
本実施例は、実施例1で作成したペーストをエタノールで希釈し、20℃における粘度を、7.0ミリパスカル秒に低下させる。このため、実施例1で作成したペーストに、23ccのエタノールを加え、実施例1で作成したペーストをエタノールで希釈した。
【0032】
実施例4
本実施例は、実施例2で作成したペーストを用い、銅のナノ粒子の集まりからなる被膜を形成する。このため、実施例2で作成したペーストを、銅箔が接着されていないガラスエポキシ基板(株式会社トキワの製品)の表面に塗布し、さらに、ガラスエポキシ基板を、大気雰囲気で195℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-オクタンを気化させた。
この後、ガラスエポキシ基板の表面に形成された被膜の複数個所を、表面抵抗計によって表面抵抗を測定した(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST-4)。表面抵抗値は1×103Ω/□であったため、金属に近い表面抵抗を有した。
さらに、被膜の複数個所の摩擦係数を測定装置(島津製作所の卓上形精密万能試験器オートグラフAGS-Xからなる摩擦係数測定装置)を用い、静止摩擦係数と動摩擦係数を測定した。静止摩擦係数が0.09±0.01で、動摩擦係数が0.08±0.01であった。いずれの摩擦係数も極めて小さい。さらに、被膜とガラスエポキシ基板との結合力を、JIS Z0237に規定された粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、400gの荷重に耐えた。このため、被膜は、一定の結合力で基板に結合されていた。
さらに、被膜の表面を、実施例1で用いた電子顕微鏡で観察した。表面は、8-12nmからなる銅のナノ粒子の集まりが形成され、隣接するナノ粒子が互いに接触部位で接合していた。また、被膜の側面を、電子顕微鏡で観察した。銅のナノ粒子の20個前後重なり合って積層し、0.2μm前後の厚みの被膜を形成していた。
【0033】
実施例5
本実施例は、実施例3で作成したペーストを用い、銅のナノ粒子の集まりからなる被膜を形成する。このため、実施例3で作成したペーストを、実施例4で用いた銅箔が接着されていないガラスエポキシ基板の表面に塗布し、さらに、ガラスエポキシ基板を、大気雰囲気で195℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-オクタンを気化させた。
この後、実施例4と同様に、ガラスエポキシ基板の表面に形成された被膜の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は実施例4より小さかった。
さらに、実施例4と同様に、被膜の複数個所の静止摩擦係数と動摩擦係数を測定した。静止摩擦係数と動摩擦係数との双方は、実施例4に近い値であった。
さらに、被膜の表面を、実施例1で用いた電子顕微鏡で観察した。実施例4と同様に、表面は、8-12nmからなる銅のナノ粒子の集まりが形成され、隣接する銅のナノ粒子が互いに接触部位で接合していた。また、被膜の側面は、銅のナノ粒子の24個前後重なり合って積層し、0.24μm前後の厚みの被膜を形成し、実施例4より被膜の厚みが増大した。
実施例4と実施例5の結果から、銅のナノ粒子の集まりからなる被膜の厚みは、ペーストの粘度に応じて増大し、この結果、被膜の導電性が増えることが分かった。
【0034】
実施例6
本実施例は、実施例2で作成したペーストを用いて、600ボルト用の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルからなる配線用の電線の先端部分の銅からなる導体に、銅からなる端子板を接合する。このため、銅の端子板と銅の導体とを接触させ、該接触部に実施例2で作成したペーストを滴下させ、銅の端子板と銅の導体を、窒素雰囲気で195℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-オクタンを気化させた。
この後、銅の端子板と銅の導体との結合力を、引張試験機(株式会社イマダの製品)で測定した結果、200Nの接合強度を持った。従って、銅の端子板と銅の導体とを接触部に、金属結合した銅のナノ粒子の集まりからなる接合層が形成され、該接合層によって、銅の端子板と銅の導体とが接合された。
本実施例は部品同士を接合する一例である。電線同士或いは電線と各種端子板との接合についても、接合部にペーストを滴下し、その後、銅のナノ粒子を分散させる有機化合物をペーストから気化すれば、活性化した銅のナノ粒子の集まりが析出し、銅のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、銅のナノ粒子の集まりからなる接合層を介して接合される。
【0035】
実施例7
本実施例は、実施例2で作成したペーストを用いて、実施例4で用いた銅箔が接着されていないガラスエポキシ基板に、金属結合した銅のナノ粒子の集まりを介して、銅箔を接合させる。銅箔は12μmの厚みからなり、ラミネート面の表面粗さは最大高さRzが4.5μmのもの(三井金属株式会社の製品3EC-3)を用いた。
ガラスエポキシ基板の表面に実施例2で作成したペーストを塗布し、銅箔のラミネート面にも実施例2で作成したペーストを塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、また、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を、大気雰囲気で195℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-オクタンを気化させた。
この後、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を、実施例4で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、実施例4より粘着力が大きい600gの荷重に耐えた。このため、銅のナノ粒子の集まりからなる接合層は、一定の結合力で板材に結合されていた。
なお、実施例7においてガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が、実施例4における結合力よりが大きくなった理由は、実施例7において圧縮荷重を加え、ガラスエポキシ基板と銅箔とを結合たしことに依る。
いっぽう、合成樹脂と金属とを接着剤によって接着させる以外の方法で両者を接合する方法は、金属の融点が合成樹脂の軟化点より著しく高く、例えば、低融点のアルミニウムでも、融点が660℃と高いため、金属を酸化処理やアルカリ処理などの化学処理、レーザー処理やプラズマ処理などの物理処理によって金属の表面を荒らし、この後、合成樹脂を射出成形やインサート成形によって、金属と合成樹脂とを接合する。本実施例では、金属の表面を荒らす処理は不要である。さらに、金属と合成樹脂との材質の組み合わせの制約がない。このため、安価な費用で汎用的に、金属と合成樹脂とが接合できる。
また、本実施例は基材同士を接合する一例である。基材同士を接合する処理の多くは、接合面の異物を除去し、さらに、洗浄し、接合面を化学的な処理ないしは物理的な処理で活性化させ、活性化した接合面同士を接合させる。このような接合方法として、例えば、CB(Chmical Bonding)処理に依って接合面を活性化させて接合面同士を接合する化学的接合や、スパッタリングやイオンビームの照射によって接合面を活性化させて接合同士を接合する常温接合がある。本実施例では、こうした特殊な接合面の事前処置は不要になる。
【0036】
実施例8
本実施例は、23段落に記載したn-ノナンに、ニッケルのナノ粒子を分散させたペーストを作成する。ニッケルのナノ粒子の原料として、27段落に記載したヘキサアンミンニッケル塩化物を用いた。
ヘキサアンミンニッケル塩化物(例えば、富士フィルム和光純薬株式会社の製品)の232g(1モルに相当する)を3.3Lのメタノールに分散して攪拌し、ヘキサアンミンニッケル塩化物のメタノール分散液を作成した。この後、ヘキサアンミンニッケル塩化物のメタノール分散液を65℃に昇温し、メタノール分散液からメタノールを気化させ、ヘキサアンミンニッケル塩化物の結晶を析出させた。この後、ヘキサアンミンニッケル塩化物の結晶の集まりを10cm×10cm×3cmの容器に充填し、ヘキサアンミンニッケル塩化物の結晶の集まりに10cm×10cm×1cmの板材を被せ、板材の上に10kgの重りを載せた。この後、一旦重りを板材から取り除き、容器に0.4Gからなる前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を順番に5回ずつ加えた。再度、板材に重りを載せ、この後、再度3方向の衝撃加速度を加えた。こうした重りに依る圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を3回繰り返した後に、再度板材に重りを載せたが、板材が全く沈まなかったため、圧縮荷重によるヘキサアンミンニッケル塩化物の結晶の粉砕が完了したと判断し、一対の処理を停止し、板材を容器から取り除いた。
さらに、n-ノナン(例えば、富士フィルム和光純薬株式会社の製品)の430ccを容器に充填して攪拌し、テトラアンミン銅硝酸塩の結晶の集まりがn-ノナンに分散されたペーストを作成した。この後、容器を水素雰囲気の熱処理装置に配置し、200℃に5分間放置させた後に、容器を熱処理装置から取り出した。
この後、容器内の試料の一部を取り出し、試料を実施例1で用いた電子顕微鏡で観察した。試料の表面からの反射電子線について、900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。10nmの大きさからなる粒状のナノ粒子が分散されていた。次に、反射電子線の900-1000ボルトの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によってナノ粒子の材質を観察した。濃淡が認められないため、ナノ粒子の集まりは同一の元素から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、ナノ粒子を構成する元素を分析した。ニッケル原子のみが存在することから、ナノ粒子はニッケルのナノ粒子である。従って、作成したペーストは、ニッケルのナノ粒子の集まりがn-ノナンに分散したペーストである。
【0037】
実施例9
本実施例は、実施例8作成したペーストをエタノールで希釈し、20℃における粘度を、6.0ミリパスカル秒に低下させる。このため、実施例8で作成したペーストに、430ccのエタノールを加え、実施例7で作成したペーストをエタノールで希釈した。
【0038】
実施例10
本実施例は、実施例9で作成したペーストを用いて、実施例6と同様に、600ボルト用の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルからなる配線用の電線の先端部分の銅からなる導体に、銅からなる端子板を接合する。このため、実施例9で作成したペーストを、銅の端子板と銅の導体との接触部に滴下させ、銅の端子板と銅の導体を、窒素雰囲気で215℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-ノナンを気化させた。
この後、銅の端子板と銅の導体との結合力を、実施例6で用いた引張試験機で測定した結果、実施例6と同様に、200Nの接合強度を持った。つまり、実施例10で用いたペーストの粘度が、実施例6で用いたペーストの粘度と同等であるため、金属のナノ粒子の材質が異なっても、銅の端子板と銅の導体とを接合する接合層の厚みが変わらないため、また、金属のナノ粒子の大きさが同等であるため、実施例10における銅の端子板と銅の導体との結合力が、実施例6における銅の端子板と銅の導体との結合力と同等になった。
さらに、銅の端子板と銅の導体との接触部に、ヘルムホルツコイル・磁界発生装置(例えば、日本ユニバーサル電気株式会社の製品)によって、直流磁界を加えた。この後、再度、銅の端子板と銅の導体との結合力を、引張試験機で測定した結果、引張強度は400Nに増大した。
この結果から、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、銅の端子板と銅の導体との接合強度が倍増した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、銅の端子板と銅の導体との結合力が増大した。
本実施例は部品同士を接合する一例であるが、強磁性金属のナノ粒子の集まりが分散したペースト用い、滴下したペーストから有機化合物を気化させ、この後、強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させることで、部品同士を接合する接合力が高まめることができる。
【0039】
実施例11
本実施例は、実施例9のペーストを用い、実施例7と同様に、ガラスエポキシ基板に銅箔を接合させる。このため、ガラスエポキシ基板の表面に実施例9で作成したペーストを塗布し、銅箔のラミネート面にも実施例9で作成したペーストを塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、また、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を、大気雰囲気で215℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-ノナンを気化させた。
この後、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を、実施例4で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、実施例7と同等の600gの荷重に耐えた。つまり、金属のナノ粒子が銅からニッケルに材質が替わっても、ペーストの粘度が同等で、さらに、加えた圧縮荷重も同等であるため、また、金属のナノ粒子の大きさが同等であるため、金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の結合力は変わらなかった。
さらに、ガラスエポキシ基板に銅箔を接合させた部位に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。この後、再度、粘着力の試験方法に基づいてガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を測定した結果、結合力は1kgに増大した。この結果から、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が増大した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が増大した。
本実施例は基材同士を接合する一例であるが、実施例10と同様に、強磁性金属のナノ粒子の集まりが分散したペースト用い、滴下したペーストから有機化合物を気化させ、この後、強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させることで、基材同士を接合する接合力を高めることができる。
【0040】
実施例12
本実施例は、実施例9で作成したペーストを用いて、ポリイミドフィルムの両面の各々に、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりを介して、銅箔を接合させる。ポリイミドフィルムは、厚みが12.5μmのもの(例えば、東レ・デュポン株式会社の製品カプトン)を用いた。なお、ポリイミドフィルムは、大気中で400℃に近い耐熱性を持つ。銅箔は実施例7で用いた銅箔である。
実施例9で作成したペーストを、ポリイミドフィルムの両面と、2枚の銅箔のラミネート面とに塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、一方の銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、さらに、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を大気雰囲気で215℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-ノナンを気化させた。
この後、ポリイミドフィルムと銅箔との結合力を、実施例2で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、600gの荷重に耐えた。このため、ポリイミドフィルムと銅箔が、ニッケルのナノ粒子の集まりを介して結合された。なお、実施例7と実施例11とにおいて、ガラスエポキシ基板と銅箔とを接合した際に、粘着力は実施例12と同じ600gの荷重であった。つまり、接合する基材の材質が異なっても、また、接合媒体であるナノ粒子の材質が異なっても、ペーストの粘度が同等で、さらに、接合する際に加えた圧縮荷重が同じであったため、また、ナノ粒子の大きさが同等であったため、同等の粘着力を持った。
さらに、ポリイミドフィルムの両面に銅箔のラミネート面が結合された部位の全体に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。再度、粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、粘着力が1000gまで増えた。このため、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、ポリイミドフィルムと銅箔との接合強度が著しく増えた。
本実施例は基材同士を接合する他の実施例であるが、実施例11と同様に、強磁性金属のナノ粒子の集まりが分散したペースト用い、滴下したペーストから有機化合物を気化させ、この後、強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させることで、基材同士を接合する接合力を高めることができる。
【0041】
実施例13
本実施例は、実施例8で作成したペーストの粘度が、20℃において9.0ミリパスカル秒になるように、実施例8で作成したペーストに100ccのエタノールを加えた。
【0042】
実施例14
本実施例は、実施例13で作成したペーストを用いて、実施例10と同様に、600ボルト用の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルからなる配線用の電線の先端部分の銅からなる導体に、銅からなる端子板を接合する。このため、実施例13で作成したペーストを、銅の端子板と銅の導体との接触部に滴下させ、銅の端子板と銅の導体を、窒素雰囲気で215℃に昇温し、ペーストからエタノールとn-ノナンを気化させた。
この後、銅の端子板と銅の導体との結合力を、実施例10で用いた引張試験機で測定した結果、300Nの接合強度を持った。つまり、本実施例で用いたペーストの粘度が、実施例10のペーストの粘度より高いため、ペーストの粘度の増大に応じて、銅の端子板と銅の導体との接合部の体積が増大し、銅の端子板と銅の導体との結合力が増大した。
さらに、実施例10と同様に、銅の端子板と銅の導体との接触部に、直流磁界を加えた。この後、再度、銅の端子板と銅の導体との結合力を、引張試験機で測定した結果、引張強度は600Nに増大した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、銅の端子板と銅の導体との結合力が2倍に増大した。
本実施例は部品同士を接合する実施例の一例であるが、強磁性金属のナノ粒子の集まりが分散したペースト用い、さらに、用いるペーストの粘度を高めることで、部品同士を接合する接合力を高まめることができる。
【0043】
実施例15
本実施例は、24段落に記載したテトラエチレングリコールに、銅のナノ粒子を分散させたペーストを作成する。銅のナノ粒子の原料として、28段落に記載したオクチル酸銅を用いた。
オクチル酸銅(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)の350g(1モルに相当する)を5Lのメタノールに分散して攪拌し、オクチル酸銅のメタノール分散液を作成した。この後、オクチル酸銅のメタノール分散液を65℃に昇温し、メタノール分散液からメタノールを気化させ、オクチル酸銅の結晶を析出させた。この後、オクチル酸銅の結晶の集まりを10cm×10cm×3cmの容器に充填し、オクチル酸銅の結晶の集まりに10cm×10cm×1cmの板材を被せ、板材の上に10kgの重りを載せた。この後、一旦重りを板材から取り除き、容器に0.4Gからなる前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を順番に5回ずつ加えた。再度、板材に重りを載せ、この後、再度3方向の衝撃加速度を加えた。こうした重りに依る圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を3回繰り返した後に、再度板材に重りを載せたが、板材が全く沈まなかったため、圧縮荷重によるオクチル酸銅の結晶の粉砕が完了したと判断し、一対の処理を停止し、板材を容器から取り除いた。
さらに、テトラエチレングリコール(例えば、富士フィルム和光純薬株式会社の製品)の400ccを容器に充填して攪拌し、オクチル酸銅の結晶の集まりがテトラエチレングリコールに分散されたペーストを作成した。この後、容器を大気雰囲気の熱処理装置に配置し、290℃に1分間放置させた後に、容器を熱処理装置から取り出した。
この後、容器内の試料の一部を取り出し、試料を実施例1で用いた電子顕微鏡で観察した。試料の表面からの反射電子線について、900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料には、10nm前後の大きさからなる粒状のナノ粒子が分散されていた。次に、反射電子線の900-1000ボルトの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によってナノ粒子の材質を観察した。濃淡が認められないため、ナノ粒子の集まりは同一の元素から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、ナノ粒子を構成する元素を分析した。銅原子のみが存在することから、ナノ粒子は銅のナノ粒子である。従って、作成した試料は、銅のナノ粒子の集まりがテトラエチレングリコールに分散したペーストである。
【0044】
実施例16
本実施例は、実施例15で作成したペーストの粘度が20℃で6.0ミリパスカル秒になるように、実施例15で作成したペーストに4306ccのエタノールを加え、銅のナノ粒子がテトラエチレングリコールのエタノール希釈液に分散したペーストを作成した。
【0045】
実施例17
本実施例は、実施例15で作成したペーストの粘度が20℃で10.0ミリパスカル秒になるように、実施例15で作成したペーストに2100ccのエタノールを加え、銅のナノ粒子がテトラエチレングリコールのエタノール希釈液に分散したペーストを作成した。
【0046】
実施例18
本実施例は、実施例16で作成したペーストを用い、銅のナノ粒子の集まりからなる被膜を形成する。このため、実施例16で作成したペーストを、実施例4で用いた銅箔が接着されていないガラスエポキシ基板の表面に塗布し、さらに、ガラスエポキシ基板を、窒素雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、実施例4と同様に、ガラスエポキシ基板の表面に形成された被膜の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計によって測定した。表面抵抗値は実施例4に近い数値であった。
さらに、実施例4と同様に、被膜の複数個所の静止摩擦係数と動摩擦係数を測定した。静止摩擦係数と動摩擦係数との双方は、実施例4に近い値であった。
さらに、被膜の表面を、実施例1で用いた電子顕微鏡で観察した。実施例4と同様に、表面は、8-12nmからなる銅のナノ粒子の集まりが形成され、隣接するナノ粒子が互いに接触部位で接合していた。また、被膜の側面を、電子顕微鏡で観察した。銅のナノ粒子の20個前後重なり合って積層し、0.2μm前後の厚みの被膜を形成していた。
実施例4と実施例18の結果から、銅のナノ粒子を分散させる有機化合物が異なっていても、ペーストの粘度が同じであれば、銅のナノ粒子の大きさが同等であるため、同等の性質を持つ銅の被膜が形成されることが分かった。
【0047】
実施例19
本実施例は、実施例17で作成したペーストを用いて、実施例14と同様に、600ボルト用の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルからなる配線用の電線の先端部分の銅からなる導体に、銅からなる端子板を接合する。このため、実施例17で作成したペーストを、銅の端子板と銅の導体との接触部に滴下させ、銅の端子板と銅の導体を、窒素雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、銅の端子板と銅の導体との結合力を、実施例10で用いた引張試験機で測定した結果、400Nの接合強度を持った。つまり、本実施例で用いたペーストの粘度が、実施例14のペーストの粘度より高いため、ペーストの粘度の増大に応じて、銅の端子板と銅の導体との接合部の体積が増大し、銅の端子板と銅の導体との結合力が増大した。
本実施例は部品同士を接合する実施例であるが、用いるペーストの粘度を高めることで、部品同士を接合する接合層の厚みが厚くなり、部品同士の接合力が高まる。
【0048】
実施例20
本実施例は、実施例17で作成したペーストを用いて、実施例7と同様に、実施例4で用いた銅箔が接着されていないガラスエポキシ基板に、金属結合した銅のナノ粒子の集まりを介して、実施例7で用いた銅箔を接合させる。
ガラスエポキシ基板の表面に実施例17で作成したペーストを塗布し、銅箔のラミネート面にも実施例17で作成したペーストを塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、また、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を、窒素雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を、実施例4で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、900gの荷重に耐えた。この結合力の値は、実施例7におけるガラスエポキシ基板と銅箔との結合力の1.5倍である。つまり、銅のナノ粒子の集まりが有機化合物に分散したペーストの20℃における粘度が、実施例7では6.0ミリパスカル秒であるのに対し、本実施例では10.0ミリパスカル秒である。このため、摩擦熱で接合した銅のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが、ペーストの粘度に応じて増大し、この結果、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が増大した。
本実施例は基材同士を接合する実施例であるが、用いるペーストの粘度を高めることで、基材同士を接合する接合層の厚みが厚くなり、基材同士の接合力が高まる。
【0049】
実施例21
本実施例は、実施例17のペーストを用いて、実施例12と同様に、ポリイミドフィルムの両面に2枚の銅箔を接合する。このため、実施例17で作成したペーストを、ポリイミドフィルムの両面と、2枚の銅箔のラミネート面とに塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、一方の銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、さらに、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を大気雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、ポリイミドフィルムと銅箔との結合力を、実施例2で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、1kgの荷重に耐えた。このため、ポリイミドフィルムと銅箔とが、銅のナノ粒子の集まりを介して結合された。つまり、実施例12では、ニッケルのナノ粒子の集まりが有機化合物に分散したペーストの20℃における粘度が6.0ミリパスカル秒である。これに対し、本実施例では、銅のナノ粒子の集まりが有機化合物に分散したペーストの20℃における粘度が10.0ミリパスカル秒である。このため、摩擦熱で接合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが、ペーストの粘度に応じて増大し、この結果、ポリイミドフィルムと銅箔との結合力が増大した。
【0050】
実施例22
本実施例は、金属のパイプをジョイントするSUS304からなるソケットに、銅のナノ粒子の集まりを介して、ソケットの内径と同一の外径を持つアルミニウムからなるパイプを接合する。なお、SUS304のソケットの内径と、アルミニウムのパイプの外径とは、隙間バメの篏合状態に事前に加工した。
このため、実施例16のペーストを、SUS304のソケットの内面と、アルミニウムのパイプが接合する面とに塗布し、アルミニウムからなるパイプを、SUS304のソケットに挿入した。この試料を大気雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。この後、ソケットを治具で固定し、パイプを反発力が強まるまで回転させた。
この後、ソケットとパイプとの結合力を、実施例4で用いた引張試験機で測定した結果、500Nの接合強度を持った。このため、銅のナノ粒子の集まりが、一定の結合力でソケットとパイプとを結合した。つまり、ソケットを固定しパイプを回転させると、双方の接合部位に析出した銅のナノ粒子の集まりにおいて、隣接する銅のナノ粒子同士が接触する部位に摩擦熱が発生し、該摩擦熱で隣接する銅のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、該金属結合した銅のナノ粒子の集まりによって、双方の接合部位が接合された。
なお、SUS304の融点が1400-1450℃で、アルミニウムの融点が660℃である。また、SUS304の熱伝導率が16.7W/mKで、アルミニウムの熱伝導率が204W/mKである。このように、融点と熱伝導率が著しく異なる物質同士を溶接で接合すること困難である。しかし、本実施例に依れば、摩擦熱で隣接する銅のナノ粒子同士が接触部で金属結合し、該金属結合した銅のナノ粒子の集まりによって、双方の接合部位が接合されるため、融点と熱伝導率が著しく異なる異種金属同士の接合が可能になる。また、金属結合した銅のナノ粒子の集まりで、異種金属同士を接合するため、従来の溶接に依る接合のように、接合部の酸化被膜を除去する事前処理は不要になる。
【0051】
実施例23
本実施例は、24段落に記載したテトラエチレングリコールに、ニッケルのナノ粒子を分散させたペーストを作成する。ニッケルのナノ粒子の原料として、28段落に記載したオクチル酸ニッケルを用いた。
オクチル酸ニッケル(例えば、日本化学産業株式会社の製品)の345g(1モルに相当する)を5Lのメタノールに分散して攪拌し、オクチル酸ニッケルのメタノール分散液を作成した。この後、オクチル酸ニッケルのメタノール分散液を65℃に昇温し、メタノール分散液からメタノールを気化させ、オクチル酸ニッケルの結晶を析出させた。この後、オクチル酸ニッケルの結晶の集まりを10cm×10cm×3cmの容器に充填し、オクチル酸ニッケルの結晶の集まりに10cm×10cm×1cmの板材を被せ、板材の上に10kgの重りを載せた。この後、一旦重りを板材から取り除き、容器に0.4Gからなる前後、左右、上下の3方向の衝撃加速度を順番に5回ずつ加えた。再度、板材に重りを載せ、この後、再度3方向の衝撃加速度を加えた。こうした重りに依る圧縮荷重を加える処理と衝撃加速度を加える処理とからなる一対の処理を3回繰り返した後に、再度板材に重りを載せたが、板材が全く沈まなかったため、圧縮荷重によるオクチル酸ニッケルの結晶の粉砕が完了したと判断し、一対の処理を停止し、板材を容器から取り除いた。
さらに、テトラエチレングリコール(例えば、富士フィルム和光純薬株式会社の製品)の400ccを容器に充填して攪拌し、オクチル酸ニッケルの結晶の集まりがテトラエチレングリコールに分散されたペーストを作成した。この後、容器を大気雰囲気の熱処理装置に配置し、290℃に1分間放置させた後に、容器を熱処理装置から取り出した。
この後、容器内の試料の一部を取り出し、試料を実施例1で用いた電子顕微鏡で観察した。試料の表面からの反射電子線について、900-1000ボルトの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料には、10nm前後の大きさからなる粒状のナノ粒子が分散されていた。次に、反射電子線の900-1000ボルトの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によってナノ粒子の材質を観察した。濃淡が認められないため、ナノ粒子の集まりは同一の元素から形成されていることが分かった。さらに、特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、ナノ粒子を構成する元素を分析した。ニッケル原子のみが存在することから、ナノ粒子はニッケルのナノ粒子である。
【0052】
実施例24
本実施例は、実施例23で作成したペーストの粘度が20℃で6.0ミリパスカル秒になるように、実施例23で作成したペーストに4306ccのエタノールを加え、ニッケルのナノ粒子がテトラエチレングリコールのエタノール希釈液に分散したペーストを作成した。
【0053】
実施例25
本実施例は、実施例23で作成したペーストの粘度が20℃で10.0ミリパスカル秒になるように、実施例23で作成したペーストに2100ccのエタノールを加え、ニッケルのナノ粒子がテトラエチレングリコールのエタノール希釈液に分散したペーストを作成した。
【0054】
実施例26
本実施例は、実施例24のペーストを用い、実施例10と同様に、600ボルト用の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルからなる配線用の電線の先端部分の銅からなる導体に、銅からなる端子板を接合する。このため、実施例24で作成したペーストを、銅の端子板と銅の導体との接触部に滴下させ、銅の端子板と銅の導体を、窒素雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、銅の端子板と銅の導体との結合力を、実施例6で用いた引張試験機で測定した結果、実施例6と実施例10と同様に、200Nの接合強度を持った。銅の端子板と銅の導体との結合力は、実施例6と実施例10と同等の結合力を持った。つまり、金属のナノ粒子を分散させる有機化合物が異なっていても、また、ナノ粒子の金属の材質が異なっていても、ペーストの粘度が同じであれば、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが同等であるため、また、金属のナノ粒子の大きさが同等であるため、同等の結合力で銅の端子板と銅の導体とが接合される。
さらに、銅の端子板と銅の導体との接触部に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。この後、再度、銅の端子板と銅の導体との結合力を、引張試験機で測定した結果、引張強度は400Nに増大した。
この結果から、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、銅の端子板と銅の導体との接合強度が倍増した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、銅の端子板と銅の導体との結合力が増大した。この結合力も、実施例10における結合力と同等の値である。つまり、ニッケルのナノ粒子を分散させる有機化合物が異なっていても、ペーストの粘度が同じであれば、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが同等であるため、また、ニッケルのナノ粒子の大きさが同等であるため、ニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力も同等になる。
【0055】
実施例27
本実施例は、実施例24のペーストを用い、実施例11と同様に、ガラスエポキシ基板に銅箔を接合させる。このため、ガラスエポキシ基板の表面に実施例24で作成したペーストを塗布し、銅箔のラミネート面にも実施例24で作成したペーストを塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、また、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を、窒素雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を、実施例4で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、実施例11と同等の600gの荷重に耐えた。つまり、ニッケルのナノ粒子を分散させる有機化合物が異なっていても、ペーストの粘度が同じであれば、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが同等であるため、また、ニッケルのナノ粒子の大きさが同等であるため、同等の結合力でガラスエポキシ基板が銅箔に接合されることが分かった。
さらに、ガラスエポキシ基板に銅箔を接合させた部位に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。この後、再度、粘着力の試験方法に基づいてガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を測定した結果、結合力は1kgに増大した。この結果から、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が増大した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が増大した。
この結合力も、実施例11における結合力と同等の値である。つまり、ニッケルのナノ粒子を分散させる有機化合物が異なっていても、ペーストの粘度が同じであれば、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが同等であるため、また、ニッケルのナノ粒子の大きさが同等であるため、ニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力も同等になる。
【0056】
実施例28
本実施例は、実施例24のペーストを用い、実施例12と同様に、ポリイミドフィルムの両面に、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりを介して、2枚の銅箔を接合させる。
実施例24で作成したペーストを、ポリイミドフィルムの両面と、2枚の銅箔のラミネート面とに塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、一方の銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、さらに、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を大気雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、ポリイミドフィルムと銅箔との結合力を、実施例2で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、実施例12と同等の600gの荷重に耐えた。つまり、ニッケルのナノ粒子を分散させる有機化合物が異なっていても、ペーストの粘度が同じであれば、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが同等であるため、また、ニッケルのナノ粒子の大きさが同等であるため、同等の結合力でポリイミドフィルムが銅箔に接合されることが分かった。
さらに、ポリイミドフィルムの両面に銅箔のラミネート面が結合された部位の全体に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。再度、粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、粘着力が実施例12と同等の1kgの荷重に耐えた。このため、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、ポリイミドフィルムと銅箔との接合強度が著しく増えた。つまり、ニッケルのナノ粒子を分散させる有機化合物が異なっていても、ペーストの粘度が同じであれば、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みが同等であるため、また、ニッケルのナノ粒子の大きさが同等であるため、ニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力も同等になる。
【0057】
実施例29
本実施例は、実施例24のペーストを用いて、ソケットとパイプとの篏合部の寸法と加工条件とが実施例22で用いたソケットとパイプと同等であるソケットとパイプを用い、実施例22と同様に、SUS304からなるソケットに、ニッケルのナノ粒子の集まりを介して、アルミニウムからなるパイプを接合する。このため、実施例24のペーストを、SUS304のソケットの内面と、アルミニウムのパイプが接合する面とに塗布し、アルミニウムからなるパイプを、SUS304のソケットに挿入した。さらに、大気雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。この後、ソケットを治具で固定し、パイプを反発力が強まるまで回転させた。
この後、ソケットとパイプとの結合力を、実施例4で用いた引張試験機で測定した結果、実施例22と同等の500Nの接合強度を持った。このため、ニッケルのナノ粒子の集まりが、一定の結合力でソケットとパイプとを結合した。つまり、ペーストの粘度が実施例22と同等で、ソケットとパイプとの結合する接合層の厚みが変わらないため、さらに、ソケットとパイプとの篏合部の寸法と加工条件とが実施例22と同等で、また、ソケットを停止し、パイプを回転させる条件が同等であるため、ソケットとパイプの接合部のニッケルのナノ粒子の集まりに同等の剪断力が発生し、また、金属のナノ粒子の大きさが同等であるため、ナノ粒子の材質が異なっても、接合強度は実施例22と同等であった。
さらに、SUS304のソケットとアルミニウムのパイプとの接合部に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。この後、再度、引張試験機でソケットとパイプとの結合力を測定した結果、結合力は1000Nに増大した。この結果から、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、SUS304のソケットとアルミニウムのパイプとの結合力が2倍に増大した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、SUS304のソケットとアルミニウムのパイプとの結合力が増大した。従って、部品同士の接合において、強磁性金属のナノ粒子が分散されたペーストを用い、強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させ、ナノ粒子同士の磁気吸着力を発現させることで、部品同士の接合力が高まる。
【0058】
実施例30
本実施例は、実施例25のペーストを用い、実施例14と同様に、600ボルト用の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルからなる配線用の電線の先端部分の銅からなる導体に、銅からなる端子板を接合する。このため、実施例25で作成したペーストを、銅の端子板と銅の導体との接触部に滴下させ、銅の端子板と銅の導体を、窒素雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、銅の端子板と銅の導体との結合力を、実施例10で用いた引張試験機で測定した結果、実施例14より大きな400Nの接合強度を持った。つまり、本実施例で用いたペーストの粘度が、実施例14のペーストの粘度より高いため、ペーストの粘度の増大に応じて、銅の端子板と銅の導体との接合部の体積が増大し、銅の端子板と銅の導体との結合力が増大した。
さらに、実施例14と同様に、銅の端子板と銅の導体との接触部に、直流磁界を加えた。この後、再度、銅の端子板と銅の導体との結合力を、引張試験機で測定した結果、引張強度は800Nに増大した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、銅の端子板と銅の導体との結合力が2倍に増大した。従って、部品同士の接合において、強磁性金属のナノ粒子が分散されたペーストを用い、強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させ、ナノ粒子同士の磁気吸着力を、ナノ粒子同士の金属結合力に加算するのが有効である。
【0059】
実施例31
本実施例は、実施例25のペーストを用い、実施例7と同様に、実施例4で用いた銅箔が接着されていないガラスエポキシ基板に、金属結合したニッケルのナノ粒子の集まりを介して、実施例7で用いた銅箔を接合させる。
ガラスエポキシ基板の表面に実施例25で作成したペーストを塗布し、銅箔のラミネート面にも実施例25で作成したペーストを塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、また、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を、窒素雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を、実施例4で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、900gの荷重に耐えた。この結合力の値は、実施例20におけるガラスエポキシ基板と銅箔との結合力と同等である。つまり、本実施例で用いたペーストの粘度が、実施例20で用いたペーストの粘度と同等であるため、金属のナノ粒子の材質が異なっても、ガラスエポキシ基板と銅箔とを接合する接合層の厚みが変わらないため、また、金属のナノ粒子の大きさが同等であるため、本実施例におけるガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が、実施例20結合力と同等になった。
さらに、ガラスエポキシ基板に銅箔を接合させた部位に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。この後、再度、粘着力の試験方法に基づいてガラスエポキシ基板と銅箔との結合力を測定した結果、結合力は1.4kgの荷重に耐えた。この結果から、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が増大した。つまり、ニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、ガラスエポキシ基板と銅箔との結合力が増大した。従って、基材同士をさらに強固に接合させる手段として、強磁性金属のナノ粒子が分散されたペーストを用い、強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させ、ナノ粒子同士の磁気吸着力を、ナノ粒子同士の金属結合力に加算するのが有効である。
【0060】
実施例32
本実施例は、実施例25のペーストを用い、実施例12と同様に、ポリイミドフィルムの両面に2枚の銅箔を接合する。このため、実施例25で作成したペーストを、ポリイミドフィルムの両面と、2枚の銅箔のラミネート面とに塗布し、塗布面同士を重ね合わせた。さらに、一方の銅箔の上に、銅箔と同じ形状の板材を載せ、さらに、板材の上に20kgの重りを載せ、試料を大気雰囲気で330℃に昇温し、ペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた。
この後、ポリイミドフィルムと銅箔との結合力を、実施例2で行った粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、1kgの荷重に耐えた。このため、ポリイミドフィルムと銅箔とが、銅のナノ粒子の集まりを介して結合された。この結合力は、実施例21における結合力と同等である。つまり、金属のナノ粒子が銅からニッケルに材質が替わっても、ペーストの粘度が同等で、さらに、加えた圧縮荷重も同等であるため、また、金属のナノ粒子の大きさが同等であるため、金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の結合力は変わらなかった。
さらに、ポリイミドフィルムの両面に銅箔のラミネート面が結合された部位の全体に、実施例10で用いたヘルムホルツコイル・磁界発生装置によって、直流磁界を加えた。再度、粘着力の試験方法に基づいて測定した結果、粘着力が1500gの荷重に耐えた。つまり、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、ポリイミドフィルムと銅箔との粘着力が1.5倍に増えた。
これに対し、実施例28では、塗布面からペーストからエタノールとテトラエチレングリコールを気化させた後において、ポリイミドフィルムと銅箔との粘着力が、600gの荷重に耐え、接合部に析出したニッケルのナノ粒子の磁化を飽和させると、1000gの荷重に耐えた。従って、基材同士の粘着力を増やすには、用いるペーストの粘度を増大し、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層の厚みを増やすことで、基材同士の粘着力が増大する。さらに、強磁性金属からなるナノ粒子の集まりによって接合層を形成すれば、強磁性金属のナノ粒子の磁化を飽和させ、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着力が、金属結合した金属のナノ粒子の集まりの結合力に加算されるため、さらに基材同士の粘着力を増える。
【0061】
以上に、12からなるペーストを作成する実施例を説明したが、ペーストの作成はこれら12の実施例に限定されない。すなわち、ナノ粒子の金属は、銅とニッケルに限定されず、27段落と28段落に記載した様々な金属化合物を用いることで、銅とニッケル以外の金属からなるナノ粒子が析出できる。また、ナノ粒子を分散させる有機化合物は、n-オクタン、n-ノナン、ないしは、テトラエチレングリコールに限定されず、23段落に記載した炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールを用いることができる。また、ペーストの20℃における粘度は、6、7、10ミリパスカル秒に限定されず、22段落と24段落に記載したジエチルエーテル、アセトン、エタノール、ないしは、芳香族炭化水素に属する有機溶剤を、炭素原子の数が8-10からなる第1級アルコールに混合すれば、有機溶剤の混合割合に応じてペーストの粘度が変えられる。従って、ペーストの作成は、12の実施例に限定されない。
また、金属のナノ粒子の集まりからなる被膜を形成する実施例として、銅のナノ粒子の集まりからなる3つの被膜の形成を実施例で説明した。金属のナノ粒子の集まりからなる被膜の形成は、これらの実施例に限定されない。すなわち、27段落と28段落に記載した様々な金属化合物を用いることで、銅以外の金属からなる被膜が形成できる。また、被膜を形成生する際に用いるペーストの粘度を変えることで、金属のナノ粒子の集まりからなる被膜の厚みは自在に変えられる。従って、金属のナノ粒子の集まりからなる被膜の形成は、銅のナノ粒子の集まりからなる3つの実施例に限定されない。
さらに、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士を接合する実施例として、600ボルト用の架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルからなる配線用の電線の先端部分の銅からなる導体に、銅からなる端子板を接合する実施例を説明した。また、SUS304からなるソケットに、ソケットの内径と同一の外径を持つアルミニウムからなるパイプを接合する実施例を説明した。部品同士を接合する事例は、これらの実施例に限定されない。すなわち、部品同士を接触させ、接触部位にペーストを滴下し、その後、ペーストを構成する有機溶剤と有機化合物とを気化させれば、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、部品同士が接合される。従って、部品同士を接合する事例は、これらの実施例に限定されない。
また、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、基材同士を接合する実施例として、ガラスエポキシ基板に銅箔を接合させる事例と、ポリイミドフィルムの両面に2枚の銅箔を接合する事例を実施例として説明したが、基材同士の接合は、これらの実施例に限定されない。すなわち、基材同士を接合する接合面にペーストを塗布し、ペーストが塗布された双方の接合部位同士を重ね合わせ、さらに、一方の基材に圧縮荷重を加え、この後、基材同士を液体の有機化合物の沸点に昇温し、さらに、一方の基材に加える圧縮荷重の印加を停止することによって、金属結合した金属のナノ粒子の集まりからなる接合層によって、基材同士が接合される。従って、基材同士の接合は、これらの実施例に限定されない。
さらに、金属のナノ粒子として、強磁性金属であるニッケルのナノ粒子を用い、部品同士を接合する際に、ないしは、基材同士を接合する際に、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合で結合した結合部に、ニッケルのナノ粒子の磁化が飽和する磁界を加えることで、磁化が飽和したニッケルのナノ粒子同士の磁気吸着力が、ニッケルのナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、結合部の結合力が増大することを、実施例で説明した。同様に、鉄ないしはコバルトからなる強磁性金属のナノ粒子を用いることで、磁化が飽和した強磁性金属のナノ粒子同士の磁気吸着力が、強磁性金属のナノ粒子同士が金属結合した結合力に加算され、結合部の結合力が増大する。
【符号の説明】
【0062】
1 銅のナノ粒子 2 n-オクタン