(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094280
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】多孔質基板構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 28/00 20060101AFI20220617BHJP
C25D 11/18 20060101ALI20220617BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220617BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C23C28/00 C
C25D11/18 312
C25D11/18 A
B32B5/18
B32B9/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021076235
(22)【出願日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】109143994
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】黄 軍儒
(72)【発明者】
【氏名】紀 岩勳
(72)【発明者】
【氏名】張 秉宏
【テーマコード(参考)】
4F100
4K044
【Fターム(参考)】
4F100AA18A
4F100AA19
4F100AA19A
4F100AA19B
4F100AA21A
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4F100EH66
4F100GB56
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4K044AA03
4K044AA13
4K044AB03
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4K044BA12
4K044BA13
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4K044BB11
4K044BB13
4K044CA13
4K044CA17
4K044CA21
4K044CA24
4K044CA53
4K044CA62
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より高いガス透過性を有する多孔質基板構造およびその製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質基板構造は、基板100と、陽極酸化アルミニウム層106と、複合金属酸化物層108を含む。基板は、複数の細孔100a、106a、108aを有し、陽極酸化アルミニウム層は、基板上に配置されており、複合金属酸化物層は、陽極酸化アルミニウム層の上に配置されている。
【選択図】
図1-2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の細孔を有する基板と、
前記基板上に配置された陽極酸化アルミニウム層と、
前記陽極酸化アルミニウム層上に配置された複合金属酸化物層と、
を備える、多孔質基板構造。
【請求項2】
前記複合金属酸化物層の厚さは、3μm未満である、請求項1に記載の多孔質基板構造。
【請求項3】
前記複合金属酸化物層は、層状複合金属酸化物を備える、請求項1の多孔質基板構造。
【請求項4】
前記層状複合金属酸化物は、式1で表され、
式1は[MII
1-xMIII
x]Oyであり、
ここで、MIIは、Mg2+、Zn2+、Fe2+、Ni2+、Co2+、Cu2+またはLi+であり、MIIIはAl3+、Cr3+、Fe3+またはSc3+であり、xは0.2~0.33であり、yは0.7~2である、
請求項3に記載の多孔質基板構造。
【請求項5】
前記陽極酸化アルミニウム層の厚さは、3μmを超えない、請求項1に記載の多孔質基板構造。
【請求項6】
前記複数の細孔内に配置された充填粒子をさらに備え、前記充填粒子の材料は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、またはそれらの組み合わせを備える、請求項1に記載の多孔質基板構造。
【請求項7】
前記基板の前記材料は、ステンレス鋼またはセラミックを備える、請求項1に記載の多孔質基板構造。
【請求項8】
基板上に陽極酸化アルミニウム層を形成するステップであって、前記基板は複数の細孔を有する、ステップと、
前記陽極酸化アルミニウム層上に複合金属酸化物層を形成するステップと、
を含む、多孔質基板構造の製造方法。
【請求項9】
前記複合金属酸化物層の厚さは、3μm未満である、請求項8の製造方法。
【請求項10】
前記複合金属酸化物層を形成する方法は、
前記陽極酸化アルミニウム層上に複合金属水酸化物層を形成するステップと、
前記複合金属水酸化物層に焼成処理を施すステップと、
を含む、請求項8の製造方法。
【請求項11】
前記複合金属水酸化物層を形成するための方法は、無電解めっき、熱浸漬めっき、物理蒸着、化学蒸着、共沈法、または水熱法を含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記複合金属酸化物層は、層状複合金属酸化物を備える、請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
前記層状複合金属酸化物は、式1で表され、
式1は[MII
1-xMIII
x]Oyであり、
ここで、MIIはMg2+、Zn2+、Fe2+、Ni2+、Co2+、Cu2+またはLi+であり、MIIIはAl3+、Cr3+、Fe3+またはSc3+であり、xは0.2~0.33であり、yは0.7~2である、
請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記陽極酸化アルミニウム層の厚さは、3μmを超えない、請求項8に記載の製造方法。
【請求項15】
前記陽極酸化アルミニウム層を形成する方法は、
前記基板上にアルミニウム層を形成するステップと、
前記アルミニウム層を陽極酸化するステップと、
を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項16】
前記基板上にアルミニウム層を形成する方法は、真空蒸着法または無電解めっき法を含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記アルミニウム層を形成する前に、前記複数の細孔に充填粒子を充填するステップをさらに含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記基板の前記材料は、ステンレス鋼またはセラミックを備える、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多孔質基板構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスの物質移動におけるパラジウム膜の特性のため、水素ろ過用の多孔質基板の表面にパラジウム膜が形成される。パラジウム膜の表面上で水素ガス分子を解離させ、膜を透過させることによって、水素分子は他のガス分子から分離され得る。一般的には、パラジウム膜の厚さが水素ろ過性能の指標として使用される。言い換えると、パラジウム膜の水素透過性を高めるためには、パラジウム膜の密度を高めるために、パラジウム膜の厚さを減らし、膜の欠陥を可能な限り減らさなければならない。
【0003】
加えて、多孔質基板の表面を改質し、例えば改質層を形成することで、必要な密度を有するパラジウム膜の厚さを減らし得る。しかし、多孔質基板上の改質層の厚さが大きすぎる場合、改質層の密着性が不十分となり得、多孔質基板から改質層が剥がれ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多孔質基板の表面を改質する技術は、多孔質基板上に改質層を形成するステップを含み、それゆえ、必要な密度を有するパラジウム膜の厚さを減らし得る。しかし、多孔質基板上の改質層の厚さが大きすぎる場合、改質層の密着性が不十分となり得、多孔質基板から改質層が剥がれ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の多孔質基板構造は、基板と、陽極酸化アルミニウム層と、複合金属酸化物層と、を備える。基板は、複数の細孔を有する。陽極酸化アルミニウム層は、基板上に配置されている。複合金属酸化物層は、陽極酸化アルミニウム層上に配置されている。
【0006】
本開示の多孔質基板構造の製造方法は、以下の工程を含む。陽極酸化アルミニウム層は基板上に形成され、基板は複数の細孔を有する。複合金属酸化物層は、陽極酸化アルミニウム層上に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
上記に基づき、本開示では、多孔質基板と改質層(複合金属酸化物層)との間に陽極酸化アルミニウム層が配置されているため、同じ平坦度の条件では改質層(複合金属酸化物層)の厚さがより薄くなり得、より高いガス流量を有し得る。すなわち、本開示の多孔質基板構造は、より高いガス透過性を有し得る。
【0008】
前述の内容をより理解しやすくするために、図面を伴ったいくつかの実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、図開示の一実施形態による多孔質基板構造の製造方法の概略断面図である。
図1Bは、本開示の一実施形態による多孔質基板構造の製造方法の概略断面図である。
図1Cは、本開示の一実施形態による多孔質基板構造の製造方法の概略断面図である。
図1Dは、本開示の一実施形態による多孔質基板構造の製造方法の概略断面図である。
【
図2】
図2Aは、複合金属酸化物層が基板上に直接形成されている多孔質基板構造の断面画像である。
図2Bは、本開示の一実施形態の多孔質基板構造の断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳細に説明するが、実施形態は本開示の範囲を限定するものではない。また、図面は説明目的のためのみのものであり、本来の寸法で描かれてはいない。以下の説明では、理解しやすいように、同じ要素は同じ参照番号で表す。
【0011】
本文中で言及されている「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は、すべてオープンエンドの用語であり、すなわち「~を含むが、~に限定されない」という意味である。
【0012】
また、本文中で「ある値~別の値(a value to another value)」と表現される範囲は、範囲内のすべての値を1つずつ明細書に記載することを避けるための要約表現方法である。それゆえ、特定の数値範囲の記録は、その数値範囲内の任意の数値と、同様にその数値範囲内の任意の数値で定義されるより小さな数値範囲とを対象としている。
【0013】
また、本文中で言及されている「上(on)」や「下(under)」などの方向性のある用語は、単に図面を参照するために用いられているだけであり、本開示を限定するものではない。
【0014】
図1A~1Dは、本開示の一実施形態による多孔質基板構造の製造方法を示す概略断面図である。本開示の実施形態の多孔質基板構造は、ガスを通過させることが可能であり、分離ガス(例えば、水素濾過)などのガス処理に適用される。
【0015】
図1Aを参照すると、基板100が提供されている。なお、本実施形態では、基板100の材料は多孔質ステンレス鋼であり得るが、本開示はこれに限定されない。他の実施形態では、基板100の材料は多孔質セラミックであり得る。基板100は、ガスを透過させるための複数の細孔100aを有している。細孔100aの孔径は、例えば、1μm~30μmである。なお、基板100は、筒状の基板またはシート状の基板であり得るが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0016】
そして、実際の需要に応じて、充填粒子102は細孔100aに充填され得る。このように、細孔100aが比較的大きな孔径を有するとき、細孔100a内に充填粒子102を充填することで、細孔100aの孔径が小さくなり得、続いて基板100上に形成される層が細孔100a内に沈み込んで、層の表面に凹凸が生じたり細孔100aを塞いだりすることを防ぎ得る。加えて、細孔100aに充填粒子102を充填することにより、細孔100aの孔径の不均一性を改善し得る。
【0017】
充填粒子102の材料は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、またはこれらの組み合わせである。なお、充填粒子102が細孔100aを完全に充填し得ないという前提の下、本開示では、充填粒子102の粒径を限定していない。
【0018】
加えて、細孔100aの孔径が比較的小さいときは、続いて基板100上に形成される層が細孔100a内に沈むのは容易でないため、細孔100a内に充填粒子102を充填する必要がない。
【0019】
図1Bを参照すると、基板100上には、アルミニウム層104が形成されている。アルミニウム層104の厚さは、例えば、3μmを超えない。アルミニウム層104の形成方法は、例えば、真空蒸着法や無電解めっき法などである。
【0020】
図1Cを参照すると、アルミニウム層104に陽極酸化を行って、陽極酸化アルミニウム(AAO)層106を形成する。陽極酸化後、形成された陽極酸化アルミニウム層106は、それを貫通する複数の細孔106aを有する。細孔106aは、基板100および細孔100aをガスの透過のために露出させる。本開示の実施形態では、アルミニウム層104の厚さが3μmを超えないので、例えば、陽極酸化によって陽極酸化アルミニウム層106が形成された後に、細孔106aが陽極酸化アルミニウム層106を貫通し得る。アルミニウム層104の厚さが3μmを超えると、形成された細孔106aは陽極酸化アルミニウム層106を貫通し得ない。その結果、ガスが陽極酸化アルミニウム層106および基板100を透過し得ない。
【0021】
加えて、陽極酸化後、アルミニウム層104は、表面が平坦で高い多孔率を有する陽極酸化アルミニウム層106に変換される。したがって、陽極酸化アルミニウム層106は、その上に後から形成される層の平坦性を改善するために、基板100の改質層として使用され得る。本実施形態では、細孔100aが比較的大きい孔径を有するとき、充填粒子102が細孔100a内に充填されているため、アルミニウム層104が細孔100a内に沈むことが防止される。そのため、アルミニウム層104は、平坦な表面を有し得、細孔100aを塞ぎ得ない。このようにして、形成された陽極酸化アルミニウム層106はより高い表面平坦性を有し得、ガスは陽極酸化アルミニウム層106および基板100を効果的に透過し得る。
【0022】
図1Dを参照すると、陽極酸化アルミニウム層106上に複合金属酸化物層108が形成され、本開示の実施形態の多孔質基板構造10が形成されている。複合金属酸化物層108には、ガスを透過させるための細孔108aを有する。本開示の実施形態では、複合金属酸化物層108の材料は、複合金属酸化物を含む。一実施形態では、複合金属酸化物は、例えば、リチウムアルミニウム酸化物であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、複合金属酸化物は、式1で表され得る層状複合金属酸化物であり得、式1は[M
II
1-xM
III
x]O
yであり、ここで、M
IIはMg
2+、Zn
2+、Fe
2+、Ni
2+、Co
2+、Cu
2+またはLi
+であり、M
IIIはAl
3+、Cr
3+、Fe
3+またはSc
3+であり、xは0.2~0.33であり、yは0.7~2である。加えて、本開示の実施形態では、複合金属酸化物層108の形成方法は、例えば、以下の工程を含む。陽極酸化アルミニウム層106上に層状複合水酸化物(LDH)層(図示せず)を形成する。その後、複合金属水酸化物層を焼成して複合金属酸化物層を得る。陽極酸化アルミニウム層106上に複合金属水酸化物層を形成する方法は、無電解めっき、溶融めっき、物理的気相成長法、化学的気相成長法、共沈法、水熱法のいずれでもあり得るが、本開示はこれに限定されるものではない。複合金属水酸化物は、複合金属酸化物の前駆体であり、高温処理(焼成処理など)によって複合金属酸化物に変換され得る。加えて、焼成工程の温度は約300°C~500°Cである。
【0023】
本開示の実施形態では、複合金属酸化物層108の厚さは、3μm未満である。詳細にいうと、基板100上に陽極酸化アルミニウム層106が形成されているため、より薄い複合金属酸化物層を用いて改質効果を達成し得、基板100上の複合金属酸化物層108の密着性を向上させ得る。その結果、表面の平坦性を向上させるために厚さが過剰になることで接着力が不十分になり、複合金属酸化物層108の剥離が起こり得るという問題を回避するために、複合金属酸化物層108の厚さを3μm未満に減らし得る。また、複合金属酸化物層108の厚さを薄くすると、ガスの処理量もまた向上し得る。
【0024】
また、陽極酸化アルミニウム層106は平坦な表面を有しているので、陽極酸化アルミニウム層106上に形成される複合金属酸化物層108もまた平坦な表面を有し得る。このようにして、複合金属酸化物層108を基板100の改質層として用いられ得、続いて形成される層は、より少ない欠陥および高い密度を有し得る。
【0025】
本開示の実施形態では、多孔質基板構造10は、細孔100aを有する基板100と、細孔106aを有する陽極酸化アルミニウム層106と、細孔108aを有する複合金属酸化物層108とを含む。そのため、多孔質基板構造10は、気体を通過させることが可能であり得、気体の分離(例えば、水素濾過)などの気体処理に適用され得る。以下、多孔質基板構造10の構造およびガス透過特性についてさらに説明する。
【実施例0026】
(実施例1)
【0027】
多孔質ステンレス鋼管(PSS、Pall Accusep filter、P/N:7CC6L465236235SC02)の表面の細孔をアルミナ粒子で充填する。ここで、アルミナ粒子の平均粒子サイズは10μmである。次に、アルミナ粒子を充填したステンレス鋼管を表面蒸着用の真空蒸着装置に配置する。アルミニウムインゴット1gを真空蒸着装置のキャビティ内のターゲットステージに配置し、真空ポンプを用いてキャビティ内の圧力を1×10-4torr未満にする。蒸発のためにステンレス鋼管を回転させて、ターゲットステージを加熱して、ステンレス鋼管の表面に非常に薄いアルミニウム層(3μm未満)を形成する。次に、アルミニウム層を有するステンレス鋼管を陽極酸化して、表面に陽極酸化アルミニウム層を有するステンレス鋼管を得る。
【0028】
AlLi金属間化合物粉末(Liの含有量は、AlLi金属間化合物の総重量に基づいて約18重量%~21重量%である)を1000mLの純水に入れる。次に、窒素を導入し、曝気し、攪拌して、AlLi金属間化合物粉末の一部を水と反応させて溶解させる。次に、不純物を濾過して、Li+およびAl3+を含有する透明な塩基性溶液を得る。ここで、pH値は約11.0~12.3である。
【0029】
陽極酸化アルミニウム層上に、連続相を有する層状リチウム含有水酸化アルミニウム層がコーティングされるように、陽極酸化アルミニウム層を有するステンレス鋼パイプを、Li+およびAl3+を含有する塩基性溶液に約2時間浸漬し、その後乾燥させる。次に、ステンレス鋼管を500°Cで2時間焼成して、陽極酸化アルミニウム層上に層状リチウムアルミニウム酸化物層を形成し、ここで、層状リチウムアルミニウム酸化物層の厚さは約2.9μmであり、多孔質基板構造を得る。
【0030】
(比較例1)
【0031】
陽極酸化アルミニウム層を形成しないこと以外は実施例1と同様の方法で、多孔質基板構造を形成する。比較例1では、リチウムアルミニウム酸化物層の厚さは約6.4μmである。
【0032】
図2Aは、比較例1の多孔質基板構造の断面画像である。
図2Bは、実施例1の多孔質基板構造の断面画像である。
図2Aおよび
図2Bから、複合金属酸化物層と基板との間に陽極酸化アルミニウム層が配置されているとき、複合金属酸化物層は必要な平坦性(表面での最大高低差が2.8μm)の下でより厚さが薄くなり得、複合金属酸化物層が基板から剥離するのを効果的に防ぎ得ることがわかる。
【0033】
さらに、実施例1および比較例1(金属酸化物層が基板上に直接形成されている)の多孔質基板構造について、ガス透過性を試験した。結果を表1に示す。
【0034】
(ガス透過性試験)
【0035】
測定する多孔質基板構造をテストチャンバー内に設置した後、テストチャンバー内に窒素ガスを導入し、その圧力値を圧力計でモニターする。テストチャンバーの開放端から流れ出る窒素をフローメーターで測定し、特定の圧力における窒素流量を算出する。
【0036】
【0037】
実施例1では、多孔質基板と改質層(複合金属酸化物層)との間に陽極酸化アルミニウム層が配置されているため、改質層(複合金属酸化物層)は、同じ平坦度条件下であればより薄い厚さを有し得、より高いガス流量を有し得ることが、
図2A、
図2Bおよび表1からわかる。すなわち、実施例1の多孔質基板構造は、より高いガス透過性を有し得る。
【0038】
当業者であれば、本開示の範囲や精神から逸脱することなく、開示された実施形態に様々な修正や変形を加えることができることは明らかであろう。以上のことから、本開示は、以下の請求項およびその均等物の範囲内であれば、修正および変形を含むことを意図している。