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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094288
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】建築物壁面の遮光装置
(51)【国際特許分類】
   E04F 10/08 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
E04F10/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113979
(22)【出願日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2020206718
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】598048244
【氏名又は名称】株式会社インデックス・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】斧山 晃一
【テーマコード(参考)】
2E105
【Fターム(参考)】
2E105AA01
2E105FF13
2E105FF32
(57)【要約】
【課題】季節ごとに変化する太陽光の照射角度の変化に対応可能な汎用性の高い建築物壁面に取り付ける遮光装置を提供する。
【解決手段】建築物壁面に少なくとも一部に雌ネジ部を形成した固定棒を埋設固定し、固定棒の前端部には遮光板の本体を支持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度で支持するように構成した支持機構としての前部機構を連設し、前部機構は先端を固定棒に連設固定するネジ締込ボルト部と、ネジ締込ボルト部の基端に設けたネジ締込ボルトヘッドとから構成すると共に、遮光板の上下方向略中央に形成したボルトヘッド用凹部にネジ締込ボルトヘッドを差込み、固定棒にネジ締込ボルト部を螺合して、遮光板を建築物壁面に下方膨出傾斜状に連設固定すると共に、一定の間隔を保持して多数の遮光板を同様の支持機構を介して建築物壁面に連設固定した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物壁面に少なくとも一部に雌ネジ部を形成した固定棒を埋設固定し、
固定棒の前端部には遮光板の本体を支持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度で支持するように構成した支持機構としての前部機構を連設し、
前部機構は先端を固定棒に連設固定するネジ締込ボルト部と、ネジ締込ボルト部の基端に設けたネジ締込ボルトヘッドとから構成すると共に、
遮光板の上下方向略中央に形成したボルトヘッド用凹部にネジ締込ボルトヘッドを差込み、固定棒にネジ締込ボルト部を螺合して、遮光板を建築物壁面に下方膨出傾斜状に連設固定すると共に、一定の間隔を保持して多数の遮光板を同様の支持機構を介して建築物壁面に連設固定したことを特徴とする建築物壁面の遮光装置。
【請求項2】
建築物壁面に少なくとも一部に雄ネジ部を形成した固定棒を突設固定し、
固定棒の前部と後部には遮光板の上下縁部を把持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度で支持するように構成した支持機構を連設し、
支持機構は、固定棒の前部に連設固定する前部機構と後部に連設固定する後部機構とよりなり、
前部機構は基端を固定棒に連設固定する前部ステーと前部ステーの先端に設けた斜め上方開口の略U状の前部挟持部とから構成すると共に、
後部機構は基端を固定棒に連設固定する後部ステーと後部ステーの先端に設けた斜め下方開口の略U状の後部挟持部とから構成し、
略U状の前部挟持部および後部挟持部の各開口部は互いに対向した状態とし各開口部内に遮光板の下縁部および上縁部を挟持させ、
遮光板の略中央部には遮光板を支持機構に取り付ける際に遮光板と固定棒との干渉を回避するために長楕円形状の挿貫孔を形成したことを特徴とする建築物壁面の遮光装置。
【請求項3】
雄ネジ部を形成した固定棒の支持機構の基端は固定棒の各雄ネジ部に前後から締付けて挟持する緩み止めナットを螺合して固定することを特徴とする請求項2に記載の建築物壁面の遮光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビルなどの垂直壁面を有する建築物に太陽光が照射される際に夏季の太陽光の照射を可及的に遮断し、冬季の照射熱を保有することができるように構成した建築物壁面の遮光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルなどの建築物の垂直壁面には直接に太陽光が照射される。
しかも、季節により太陽光の遮光角度は変化してくる。
一年中の太陽光の変化に全対応するような遮光板を壁面に装着すると壁面全体を隠ぺいするように遮光板を装着する必要があり結果的には窓を隠ぺいすることになり、室内への採光機能が阻害される。
更には壁面に遮光板を装着するためにはステーやブラケットを突設固定しなければならず製造が複雑となり、しかも風雨に耐えうる強度を有したものであることが必要であり、そのために簡易に装着取はずしが可能で、かつ一定の強度で遮光機能を有する各種の機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-050020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、実際の遮光板の装着に際しては夏季や冬季のように太陽光の照射角度の大きな変化に常時対応する装着角度と遮光面積を有する遮光板が必要でありそのような遮光板構造は複雑となり高価であり、更にはコンクリートなどの硬化壁面に遮光板を強固に取り付けるための装着構造や器具や部材、工事が必要となる。特に高層ビル壁面に遮光板を装着するための工事を行う際には危険を伴い、しかも工事や装着部材も煩雑となってコスト的にも不利益となり遮光板装着の結果の有益性は認識できるものの普及できない要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様としては、建築物壁面に少なくとも一部に雌ネジ部を形成した固定棒を埋設固定し、固定棒の前端部には遮光板の本体を支持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度で支持するように構成した支持機構としての前部機構を連設し、前部機構は先端を固定棒に連設固定するネジ締込ボルト部と、ネジ締込ボルトの基端に設けたネジ締込ボルトヘッドとから構成すると共に、遮光板の上下方向略中央に形成したボルトヘッド用凹部にネジ締込ボルトヘッドを差込み、固定棒にネジ締込ボルト部を螺合して、遮光板を建築物壁面に下方膨出傾斜状に連設固定すると共に、一定の間隔を保持して多数の遮光板を同様の支持機構を介して建築物壁面に連設固定したことを特徴とする建築物壁面の遮光装置を提供せんとするものである。
【0006】
本発明の第2の態様としては、建築物壁面に少なくとも一部に雄ネジ部を形成した固定棒を突設固定し、固定棒の前部と後部には遮光板の上下縁部を把持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度で支持するように構成した支持機構を連設し、支持機構は、固定棒の前部に連設固定する前部機構と後部に連設固定する後部機構とよりなり、前部機構は基端を固定棒に連設固定する前部ステーと前部ステーの先端に設けた斜め下方開口の略U状の挟持部とから構成すると共に、後部機構は基端を固定棒に連設固定する後部ステーと後部ステーの先端に設けた斜め上方開口の略U状の挟持部とから構成し、各略U状の挟持部の開口部は互いに対向した状態とし各開口部内に遮光板の上下縁部を挟持させ、遮光板の略中央部には遮光板を支持機構に取り付ける際に遮光板と固定棒との干渉を回避するために長楕円形状の挿貫孔を形成したことを特徴とする建築物壁面の遮光装置である。
【0007】
本発明の第3の態様としては、雄ネジ部を形成した固定棒の支持機構の基端は固定棒の各雄ネジ部に前後から締付けて挟持する緩み止めナットを螺合して固定することを特徴とする建築物壁面の遮光装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、建築物壁面に少なくとも一部に雌ネジ部を形成した固定棒を埋設固定したことにより、壁面にドリルなどで固定孔を穿孔し、その内部に固定棒を埋設するだけで遮光板を取り付けるための取付準備作業が完了でき、結果的に遮光板の取付作業時間を短縮できる。
また、建築物壁面に埋設した固定棒の前端部に雌ネジ部を形成したことにより、遮光板を装着する支持機構としての前部機構を構成するネジ締込ボルトのネジ部を雌ネジ部に螺合するだけの簡単な作業で建築物壁面に遮光板を取り付けることができ、遮光板の取付作業時間を短縮できる。
また、遮光板に形成したネジ締込ボルト用凹部にボルトヘッドを差し込むため、ネジ締込ボルトヘッドが遮光板の前端部から突出することなく良好な外観を備えつつも建築物壁面に遮光板を設置固定できる。また、ネジ締込ボルトヘッドがネジ締込ボルト用凹部に挿入されているため、前部機構が風雨にさらされて腐食する虞を可及的に低減して遮光板の建築物壁面への固定状態を長期間維持できる。
また、遮光板を建築物壁面に対して下方膨出傾斜状に連設固定するため、建築物壁面に対して上方から傾斜状に照射される太陽光を効果的に反射して、建築物壁面への直射光を削減して建築物壁面が蓄熱することを防止できる。また、一定の間隔を保持して多数の遮光板を建築物壁面に連設固定したため、建築物壁面が完全に覆われることがなく、夏季においては建築物壁面に照射される太陽光を効率的に反射して建築物壁面への蓄熱を防止でき、冬季においては太陽光が建築物壁面に可及的に照射できるよう構成したことで建築物壁面に可能な限り蓄熱させることができる。
【0009】
本発明の第2の態様によれば、建築物壁面に少なくとも一部に雄ネジ部を形成した固定棒を突設固定したことにより、壁面にドリルなどで固定孔を穿孔するだけで良いため、取付け基部の作業が簡単である。
また、建築物壁面に突設した固定棒は少なくとも一部に雄ネジ部を形成したことにより、遮光板を装着する支持機構の基端部を螺合機構で連設固定することができるので、支持機構の取り付け位置や傾斜角度を建築物の外壁の状況に対応して調整することができ、外壁に対する遮光機能を最大に発揮できるような装着が可能となり、夏季は可及的に射光熱を遮りながら壁面と遮光板との間の間隙を流通する風流により建築物壁面の加熱上昇を防ぐことができると共に、冬季は可及的に傾斜した遮光板に略水平方向から射光して壁面間の間隙を介して壁面を加熱し蓄熱する効果がある。
【0010】
また、固定棒の前部と後部には遮光板の上下縁部を把持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度で支持するように構成した支持機構を連設し、支持機構は、固定棒の前部に連設固定する前部機構と後部に連設固定する後部機構とよりなり、前部機構は基端を固定棒に連設固定する前部ステーと前部ステーの先端に設けた斜め下方開口の略U状の挟持部とから構成すると共に、後部機構は基端を固定棒に連設固定する後部ステーと後部ステーの先端に設けた斜め上方開口の略U状の挟持部とから構成し、各略U状の挟持部の開口部は互いに対向した状態とし各開口部内に遮光板の上下縁部を挟持させたので、壁面に突設した固定棒に支持機構を介して遮光板を傾斜して強固に固定することができる。また、遮光板の上下縁部を対向する略U状の挟持部の開口部間に挟持させることができるため簡単な構造にもかかわらず支持強度を向上して取付けることができ、取付け、取り外しの作業も容易にかつ確実に行える効果がある。
また、遮光板の略中央部には遮光板を支持機構に取り付ける際に遮光板と固定棒との干渉を回避するために長楕円形状の挿貫孔を形成したので、遮光板を外壁一面に敷設しても固定棒と干渉せず遮光機能を十分に発揮することができる効果がある。
【0011】
また、遮光板を支持機構に取り付ける角度は建築物の壁面の向きや面積によって垂直壁面に対して一定角度、例えば約30度とすることにより、夏季や冬季の季節による太陽光の照射角度の変化に対しても対応でき、各季節による太陽光の照射角度の変化があっても年中確実に太陽光を受け止めて遮光機能を果たし、また、冬季の壁面への蓄熱機能を果すことができることになり、このように太陽光の照射角度に応じて遮光板の傾斜角度をその都度調整する必要もなく常時一定の傾斜角度を形成しておくだけで夏季も冬季も太陽の照射角度に対応して遮光と保熱機能果たすことができ、簡便な取付構造にもかかわらず有効な遮光保熱効果を奏することができる。
【0012】
また、支持機構の基端は固定棒の各雄ネジ部に前後から締付けた緩み止めナットを介して固定したので、確実に遮光板を支持することができ、ナットの緩みによる不慮の事故を防止することができる効果がある。
【0013】
また、遮光板の略中央部には遮光板を支持機構に取り付ける際に遮光板と固定棒との干渉を回避するために挿貫孔を形成したことにより、広い面積の遮光板にもかかわらず固定棒に確実に遮光板を装着することができると共に、長楕円形状の挿貫孔の孔形状を利用して遮光板の傾斜角度を一定範囲内に自在に変更することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施例に係る建築物壁面の遮光装置を複数配設した状態を示す模式的な図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る建築物壁面の遮光装置を建築物壁面に装着した状態を示す模式的な側面図である。
図3】本発明の第2の実施例に係る建築物壁面の遮光装置の遮光板を垂直壁面に装着した状態の斜視説明図である。
図4】本発明の第2の実施例に係る建築物壁面の遮光装置の遮光板を垂直壁面に装着した状態の断面説明図であり、太陽光線の入射角度と共に記載している。
図5】本発明の第2の実施例に係る建築物壁面の遮光装置の遮光板の設置形態を変形した状態を示す模式図である。
図6】本発明の第2の実施例に係る建築物壁面の遮光装置の支持機構を示す説明図である。
図7】本発明の第2の実施例に係る建築物壁面への太陽光と遮光板の照射及び傾斜角度の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の要旨は、建築物壁面に少なくとも一部に雌ネジ部を形成した固定棒を埋設固定し、固定棒の前端部には遮光板の本体を支持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度、例えば垂直壁面に対して約15度の下り勾配の傾斜角度を保持して支持するように構成した支持機構としての前部機構を連設し、前部機構は先端を固定棒に連設固定するネジ締込ボルトと、ネジ締込みボルトの基端に設けたネジ締込ボルトヘッドとから構成すると共に、遮光板の上下方向略中央に形成したボルトヘッド用凹部にネジ締込ボルトヘッドを差込み、固定棒にネジ締込ボルトを螺合して、遮光板を建築物壁面に下方膨出傾斜状に連設固定すると共に、一定の間隔を保持して多数の遮光板を形成したことを特徴とする建築物壁面の遮光装置に関する。
【0016】
また、建築物壁面に少なくとも一部に雄ネジ部を形成した固定棒を突設固定し、固定棒の前部と後部には遮光板の上下縁部を把持して遮光板を垂直壁面に対し一定傾斜角度、例えば垂直壁面に対して約120度の下り勾配の傾斜角度を保持して支持するように構成した支持機構を連設し、支持機構は、固定棒の前部に連設固定する前部機構と後部に連設固定する後部機構とよりなり、前部機構は基端を固定棒に連設固定する前部ステーと前部ステーの先端に設けた斜め下方開口の略U状の挟持部とから構成すると共に、後部機構は基端を固定棒に連設固定する後部ステーと後部ステーの先端に設けた斜め上方開口の略U状の挟持部とから構成し、各略U状の挟持部の開口部は互いに対向した状態とし各開口部内に遮光板の上下縁部を挟持させ、遮光板の略中央部には遮光板を支持機構に取り付ける際に遮光板と固定棒との干渉を回避するために長楕円形状の挿貫孔を形成したことを特徴とする建築物壁面の遮光装置に関する。
【0017】
また、支持機構の基端は固定棒の各雄ネジ部に前後から締付ける緩み止めナットを介して固定することを特徴とする建築物壁面の遮光装置に関する。
【0018】
本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1は、第1の実施例にかかる遮光装置を垂直壁面に装着した状態を示す模式的な正面図である。図2は、第1の実施例にかかる遮光装置を垂直壁面に装着した状態を示す模式的な端面図である。
【0019】
本発明の遮光装置を装着する建築物壁面Aは垂直に形成されており外壁はモザイク壁面であったりコンクリート壁面であったりする。
【0020】
(第1の実施例)
図1に示すように、ビル等の建築物壁面Aの所定位置にドリル等で穿孔し、穿孔した孔中に雌ネジ部1aを有する固定棒1の前端部を建築物壁面Aの垂直壁面A´と面一となるように埋設固定している。
【0021】
雌ネジ部1aは、固定棒1の前端部内側に螺刻しており、支持機構としての前部機構aと螺合している。
【0022】
前部機構aは、建築物壁面Aに遮光板Mを固定するための部材である。支持機構としての前部機構aは、先端を固定棒1に螺合するネジ締込ボルト部3bと、ネジ締込ボルト部3bの基端に設けたネジ締込ボルトヘッド3cで構成している。
【0023】
前部機構aは、遮光板Mのボルトヘッド用凹部M3にネジ締込ボルトヘッド3cを挿通しつつ、先端側のネジ締込ボルト部3bを後述のさや管M5に挿通して固定棒1の雌ネジ部1aに螺合することにより建築物壁面Aの垂直壁面A´に遮光板Mを固定している。
【0024】
遮光板Mは、建築物壁面Aに照射される太陽光の照射光量を調整するための部材である。遮光板Mは、ボルトヘッド用凹部M3と、ボルトヘッド用凹部M3の前端上部に上方に向けて傾斜状に延設した上半部MUと、ボルトヘッド用凹部M3の前端下部に下方に向けて傾斜状に延設した下半部MLと、ボルトヘッド用凹部M3の後端部に後方に延設したさや管M5と、を有する。
【0025】
ボルトヘッド用凹部M3は、図2に示すように、略水平に形成した上壁M3aと、上壁M3aよりも前端部を前方に突出形成した下壁M3bと、上下壁の後端部を垂直に連結した底壁M3cとで断面視略コ字形状に構成している。
【0026】
ボルトヘッド用凹部M3の上壁M3a前端部には、上方に向けて傾斜状に上半部MUを延設している。上半部MUは、略方形状の板体であり、上壁M3aとの連結部分である基端部から上端部に向かうに連れてボルトヘッド用凹部M3の底壁M3c側に傾斜するように構成している。すなわち、上半部MUは、鉛直面に対して後方に傾斜した上方後退形状に構成しており、その傾斜角度は、略15°としている。これにより、上半部MUは、夏季において、太陽光Lの照射方向に対して傾斜状態となり、建築物壁面Aに照射される太陽光Lが当該遮光板Mで遮光されて建築物壁面Aが蓄熱することを防止することができる。
【0027】
また、ボルトヘッド用凹部M3の下壁M3b前端部には、上半部MUと略同一形状の下半部MLを下方に向けて傾斜状に延設している。下半部MLは、上半部MUと同様に略方形状の板体であり鉛直面に対して前方側に傾斜した下方膨出傾斜状に構成しており、その傾斜角度は、上半部MUと同様に略15°としている。これにより、下半部MLは、夏季において、上半部MU同様に太陽光Lを遮光して建築物壁面Aが蓄熱することを防止できる。
【0028】
また、上半部MUおよび下半部MLを略同一の傾斜角度を有する板体に形成したことにより、上半部MU及び下半部MLが略同一の傾斜平面を形成し、夏季における建築物壁面Aに対する太陽光Lの直射光による照射面積を減少して、建築物壁面Aが蓄熱することを可及的に低減できる。
【0029】
また、ボルトヘッド用凹部M3の底壁M3cには、遮光板Mの長手方向に沿って遮光板固定用孔M4を複数穿設している。遮光板固定用孔M4は、図2に示すように、略円形状に穿設されている。遮光板固定用孔M4は、底壁M3cの上下幅よりも直径を小さく形成している。これにより、底壁M3cは、遮光板固定用孔M4の上下に一定幅の押圧部M3c1、M3c2を有し、当該押圧部M3c1、M3c2をネジ締込ボルトヘッド3cの背面で建築物壁面A側に押圧できるように構成している。
【0030】
押圧部M3c1、M3c2の背面側には、底壁M3cに直交するようにさや管M5を後方に延設している。さや管M5は、円筒形状に形成された部材であり、遮光板Mを取り付ける建築物壁面Aからの離間距離を維持するための位置決め部材であるとともに、円筒形態の内部に挿通する前部機構aが風雨にさらされることを防止して内部に挿通した前部機構aが腐食することを防止するための部材である。
【0031】
さや管M5は、遮光板固定用孔M4近傍の底壁M3cの背面に水平状に延設している。さや管M5は、一定長に形成されており、その内部空間にネジ締込ボルト部3bを挿通している。
【0032】
これにより、さや管M5は、遮光板Mを建築物壁面Aに固定するための前部機構aが風雨にさらされて腐食する虞を低減できる。
【0033】
また、さや管M5は、一定長の円筒状に形成しているため、建築物壁面Aから一定の距離に遮光板Mの上半部MUおよび下半部MLを固定することができる。すなわち、建築物壁面Aの垂直壁面A´と、前部機構aのネジ締込ボルトヘッド3cにより、さや管M5を挟持するだけで建築物壁面Aから一定距離離間して遮光板Mを固定し、建築物壁面Aに照射される太陽光Lの光量を所望の光量に調整できる。
【0034】
このように構成した遮光板Mは、図1に示すように、支持機構としての前部機構aを介して建築物壁面Aに多数連設固定している。また、上下に配設した遮光板Mは、上下方向に一定距離離間した状態で建築物壁面Aに固定している。すなわち、上側に位置する遮光板Mの下半部MLと、下側に位置する遮光板Mの上半部MUの間は、一定距離離間しており、正面視において建築物壁面Aの垂直壁面A´が露出するように固定している。これにより、太陽光Lの照射高度が低い冬季において、遮光板Mで太陽光Lが遮光される面積を減少して建築物壁面Aに太陽光Lの直射光が照射されるように構成している。
【0035】
このように建築物壁面の遮光装置を構成することにより、季節による太陽光の照射角度の違いに応じて遮光板の傾斜角度を変更するための可変装置を使用することなく、当該遮光板Mを建築物壁面Aから一定距離離間した状態で固定するだけで建築物壁面Aに照射される太陽光Lの光量を調整できる。すなわち、本発明の建築物壁面の遮光装置を建築物壁面Aの垂直壁面A´に設置することにより、夏季はできるだけ太陽光Lが建築物壁面Aに照射されることを防止して建築物壁面Aが蓄熱することを防止でき、また、冬季はできるだけ太陽光Lが建築物壁面Aに照射されるように構成して建築物壁面Aに太陽光Lの照射エネルギーを蓄熱して建築物全体を効率的に暖めることができる。
【0036】
(第2の実施例)
図3は、第2の実施例にかかる遮光装置を垂直壁面に装着した状態を示す斜視図であり、図4は、第2の実施例にかかる遮光装置を垂直壁面に装着した状態の断面説明図であり、太陽光線の入射角度と共に記載している。図5は、第2の実施例にかかる遮光板の設置形態を変形した状態を示す説明図である。図6は、第2の実施例にかかる遮光板の他の支持形態を示す一部拡大説明図である。図7は、第2の実施例にかかる建築物壁面への季節ごとの太陽光の照射角度を示す模式図である。
【0037】
図3に示すように、ビル等の建築物壁面Aの所定位置にドリル等で穿孔し、孔中に少なくとも一部に雄ネジ部2を形成した固定棒1´を突設固定している。
【0038】
雄ネジ部2は固定棒1´の前後端部に至る全長に形成するか特定の前部と後部にそれぞれ形成する。
なお、建築物壁面Aは垂直に形成されており、外壁はモザイク壁面であったりコンクリート壁面であったりする。
【0039】
図4に示すように、建築物壁面Aからは水平方向に固定棒1´が突設されており、固定棒1´の少なくとも二か所には雄ネジ部2を形成し、この雄ネジ部2に後述する支持機構a´bを固定棒1´に螺合連設している。
【0040】
固定棒1´の雄ネジ部2に連設する支持機構a´bは、図4に示すように、建築物壁面Aに遮光板Mを傾斜して配設するための遮光板Mの支持構造により構成されている。固定棒1´の前部と後部に形成した雄ネジ部2、2には、遮光板Mの上下縁部M1、M2を把持して遮光板Mを垂直壁面A´に対し一定傾斜角度で支持するための支持機構a´bが螺合連設されている。
【0041】
すなわち、支持機構a´bは、建築物壁面Aに水平に突設された固定棒1´の前部と後部に連設固定するための前部機構a´と後部機構bとよりなる。
【0042】
前後部の支持機構a´b(前部機構a´および後部機構b)は、図4に示すように、固定棒1´に垂直に連設した前部ステー3および後部ステー4と、前部ステー3の下端と後部ステー4の上端を一定角度でステーの伸延方向に折曲してその終端部を略コ字状に折曲し、前後それぞれに前部挟持部5と後部挟持部6を形成している。
【0043】
このように支持機構a´bにおける前部機構a´と後部機構bは、終端において遮光板Mの下縁部M1と上縁部M2を連設支持する前部ステー3と後部ステー4が設けられている。前部機構a´は、基端を固定棒1´に連設固定した前部ステー3の先端に形成した斜め上方開口の略U状の前部挟持部5からなり、後部機構bは基端を固定棒1´に連設固定した後部ステー4の先端に形成した斜め下方開口の略U状の後部挟持部6とからなる。
【0044】
略U状の前部挟持部5の開口部7と略U状の後部挟持部6の開口部8は、図4に示すように、互いに対向して形成されており、遮光板Mの下縁部M1と上縁部M2を嵌入して遮光板Mを傾斜状に支持固定している。
【0045】
また、遮光板Mの略中央部には、遮光板Mを支持機構a´bに取り付ける際に遮光板Mと固定棒1´との干渉を回避するために、図3に示すように、長楕円形状の挿貫孔mを形成している。
【0046】
また、図7に示すように、遮光板Mは支持機構a´bに取り付ける角度を垂直壁面A´に対して略120度の下り勾配の傾斜角度とすることにより四季の太陽光線の変化に対応できるように構成している。すなわち、夏至、冬至、春分、秋分の各季節による太陽光Lの変化のいずれにも傾斜状に配設した遮光板Mが光線遮断機能と保熱機能を果たすように構成している。
【0047】
遮光板Mの傾斜角度による太陽光Lの遮断機能と保熱機能について詳細に説明する。
太陽光Lは、図7に示すように、夏至と冬至によって照射角度が変化する。夏至における太陽光Lの入射角度γは78.4度であり、冬至における太陽光Lの入射角度γは31.6度である(図4参照)。
かかる入射角度γで垂直壁面A´に照射される太陽光Lは、垂直壁面A´に対して約120度の下り勾配の傾斜角度を有する遮光板Mにより遮光される。
【0048】
図7に示すように、78.4度で入射する夏至の太陽光Lは、約120度の下り勾配で一定の長さを有する遮光板Mにより遮光される。その際に生起される遮光板Mの影は、建築物1階分の高さのうち一定の高さを占める影長さとなる。
【0049】
また、遮光板Mの長さは影長に係るものである。
従って、遮光板Mにより形成される建築物壁面Aへの影長は、遮光板Mの傾斜角度αと先端までの長さβとの相関関係によって決定される。
【0050】
この相関関係を図7によって説明すると、図7の上半分に図示している夏至の入射光(γ=78.4度)では建築物壁面Aの1階分の約半分に影が形成される傾斜角度αと長さβとしている。そのため、夏至時には、建築物壁面Aの1階分壁面に上下二枚の遮光板Mを取付ければ1階分壁面全体に影が形成される。
また、かかる遮光板Mの傾斜角度αと長さβとすれば、冬至においては図7の下側に図示している冬至の太陽光入射角度(γ=31.6度)に示すように二枚の遮光板Mによる影長さは建築物壁面Aに短く形成される。そのため、冬至における太陽光Lは、ほとんどが建築物壁面Aに照射され地上に反射することとなり、建築物壁面Aが照射された太陽光Lの太陽熱を吸収して加温され室内を暖気できる。
【0051】
上記のように遮光板Mの傾斜角度αと長さβと太陽光Lの入射角度γとの相関関係によって夏至と冬至の太陽光Lの照射により建築物壁面Aに形成される影長が変化する。夏季は、建築物壁面Aに照射される太陽光Lを遮光板Mで遮光して建築物壁面Aが加温されることを抑制し、また、冬季は建築物壁面Aに照射される太陽光Lが遮光板Mで遮光されないようにすることで建築物壁面Aの垂直壁面A´のほぼ全面に太陽光Lが照射されて建築物壁面Aが太陽光Lの太陽熱を吸収して室内を暖気できる。
【0052】
また、挿貫孔mは、固定棒1´に傾斜して取付ける遮光板Mの取付角度を調整する際の遮光板Mの逃げのスペースとなる。
【0053】
すなわち、遮光板Mは夏季において太陽光を遮光して建築物に対する太陽光の加熱照射を少なくすると共に、冬季において太陽光の蓄熱効率を高めることができるように構成しており、そのためには建築物の設置状況に応じて遮光板Mの取付状況、例えば傾斜角度を変更できるように構成しておく。
【0054】
そのためには、固定棒1´を挿貫した挿貫孔mの長楕円形状を利用して遮光板Mの傾斜角度を変更調整するものであり、かかる挿貫孔mを利用した遮光板Mの傾斜角度の調整は、具体的には、前部機構a´と後部機構bの前部ステー3および後部ステー4の規格長さを選択することにより、所望の傾斜角度に遮光板Mを調整できる。
【0055】
すなわち、前部ステー3と後部ステー4の長さが長尺なものを使用すれば遮光板Mの傾斜角度は大きくなり、反対に前部ステー3と後部ステー4の長さが短尺なものを使用すれば遮光板Mの傾斜角度は小さくなる。
【0056】
遮光板Mの上下縁部M1、M2を挟持する各略U状の開口部7、8も遮光板Mの傾斜角度に対応して開口傾斜角度を一定に規制する。なお、略U字状の開口部7、8は、U字折曲部を直角折曲状とする場合や図6に示す半円弧状とする場合があり、半円弧状とすることにより遮光板Mを上下で支持する嵌着応力をより高めて確実な遮光板Mの支持が可能となる。
【0057】
また、支持機構a´bの基端は固定棒1´の各雄ネジ部2、2に緩み止めナット12、13を介して固定している。
【0058】
緩み止めナット12、13としては固定棒1´に2個のナットを螺合してそのナットの間に固定棒1´を挿貫した前部ステー3と後部ステー4の基部を挟持している。
【0059】
前部ステー3および後部ステー4の基部は扁平にして固定棒1´を挿通する挿通孔3a、4aを形成しており、従って、前部ステー3および後部ステー4は、固定棒1´と2個のナット間によって固定されている。
なお、必要により遮光板Mの素材は軽量の樹脂素材のボードを使用すると共に遮光した建物の窓からビル等の外方が透視できるように内方からは透過可能で太陽光が直接に当たる外方面は反射機能を果たす一方向透過性のマジックガラスやマジックボードの素材を用いることもできる。
【0060】
また、太陽光線が最も当たる方向は一年中南側の建築物南側壁面であることが多く遮光装置を装着するのは建築物の南側が最も効果的である
【0061】
本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更した構成、公知発明及び上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更した構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0062】
1、1´ 固定棒
1a 雌ネジ部
2 雄ネジ部
3 前部ステー
3a 挿通孔
3b ネジ締込ボルト部
3c ネジ締込ボルトヘッド
4 後部ステー
4a 挿通孔
5 前部挟持部
6 後部挟持部
7、8 開口部
12、13 緩み止めナット
A 建築物壁面
A´ 垂直壁面
M 遮光板
a、a´ 前部機構
b 後部機構
a´b 支持機構
m 挿貫孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7