(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094320
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】長い1回のエコー時間のMRI収集からの体内位相マップを用いたB0磁場不均一性推定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
A61B5/055 374
A61B5/055 380
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021194564
(22)【出願日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】63/124,911
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/245,993
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516308401
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ギヨーム ダヴァル-フレロ
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン マシレ
(72)【発明者】
【氏名】マチルド リパート
(72)【発明者】
【氏名】ボリス マイユ
(72)【発明者】
【氏名】マリアッパン エス. ナダール
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル ヴィグノー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ チュウチュ
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB18
4C096AD12
4C096AD14
4C096DA06
4C096DA08
4C096DC04
(57)【要約】
【課題】高解像度でB0磁場不均一性を推定するために1回の収集を用い、収集にかかる時間を短縮し、エラーの原因を回避する。
【解決手段】MRデータを受信し、MRデータに変換を適用し、この適用の結果がMRデータの画像空間表現であり、MRデータの画像空間表現のラップされた位相マップを確定し、ラップされた位相マップに基づいてアンラップされた位相マップを取得し、アンラップされた位相マップをB0磁場マップにスケーリングし、MRデータに基づいてMR画像を再構成し、B0磁場ップに基づいてMR画像を補正し、MR画像を出力することにより、MRデータからMR(磁気共鳴)画像を生成する。スケーリングは、B0磁場不均一性に対する二次的なアーチファクト源によるMRデータへの作用を考慮しない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRデータからMR(磁気共鳴)画像を生成する方法であって、
プロセッサがMRデータを受信する過程と、
前記プロセッサが前記MRデータに変換を適用し、該適用の結果が前記MRデータの画像空間表現である、過程と、
前記プロセッサが、前記MRデータの前記画像空間表現のラップされた位相マップを確定する過程と、
前記プロセッサが、前記ラップされた位相マップに基づいて、アンラップされた位相マップを取得する過程と、
前記プロセッサが、前記アンラップされた位相マップをB0磁場マップにスケーリングし、該スケーリングが前記MRデータの位相に対するB0磁場不均一性の影響のみに基づいている、過程と、
前記プロセッサが前記MRデータに基づいてMR画像を再構成する過程と、
前記プロセッサが前記B0磁場マップに基づいて前記MR画像を補正する過程と、
前記プロセッサが前記MR画像を出力する過程とを含む、方法。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記MRデータの前記画像空間表現に仮想のコイル組み合わせ方を適用する過程をさらに含み、
前記ラップされた位相マップは、前記MRデータの前記画像空間表現に適用される前記仮想のコイル組み合わせ方に基づいて確定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記MRデータの前記画像空間表現に基づいて強度画像を確定する過程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記MRデータの前記画像空間表現に二乗和演算を適用する過程をさらに含み、
前記強度画像の前記確定は、前記MRデータの前記画像空間表現に適用される前記二乗和演算に基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アンラップされた位相マップの前記取得は、前記強度画像に基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記プロセッサが前記強度画像に基づいてマスク画像を生成する過程と、
前記プロセッサが前記マスク画像を前記B0磁場マップに適用する過程とさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記MRデータの位相に対する、加熱、動き、高周波パルス不均一性、コイル感度、及び渦電流の関与、又はこれらを組み合わせた関与は、前記スケーリングにおいて表現されない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記MRデータが臨床収集から受信され、
前記MR画像の前記補正は、該臨床収集のみの前記B0磁場マップに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アンラップされた位相マップの前記スケーリングは、ΔB0=φ/2πTEとする前記B0磁場マップの近似に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記MRデータが非直交型収集から取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも20msのエコー時間、約3Tの磁場強度、又はこれらの組み合わせで前記MRデータが取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記B0磁場不均一性の周波数領域を超える信号を除去するローパスフィルタを前記B0磁場マップに適用する過程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記変換が不均一変換である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
MR(磁気共鳴)撮像装置と、プロセッサと、命令を記憶するメモリとを含む医用撮像システムであって、
前記命令は、実行されると、
前記MR撮像装置からMRデータを受信し、
前記MRデータに変換を適用し、該適用の結果が前記MRデータの画像空間表現であり、
前記MRデータの前記画像空間表現のラップされた位相マップを確定し、
前記ラップされた位相マップに基づいてアンラップされた位相マップを取得し、
前記アンラップされた位相マップをB0磁場マップにスケーリングし、該スケーリングは、B0磁場不均一性に対する二次的なアーチファクト源による前記MRデータへの作用を無視し、
前記MRデータに基づいてMR画像を再構成し、
前記B0磁場マップに基づいて前記MR画像を補正し、
該MR画像を出力する、ように機能する、医用撮像システム。
【請求項15】
前記メモリに記憶される前記命令は、実行されると、
仮想のコイル組み合わせ方を前記MRデータの前記画像空間表現に適用し、前記ラップされた位相マップが前記MRデータの前記画像空間表現に適用される前記仮想のコイル組み合わせ方に基づいて確定される、ようにさらに機能する、請求項14に記載の医用撮像システム。
【請求項16】
前記メモリに記憶される前記命令は、実行されると、
前記MRデータの前記画像空間表現に基づいて強度画像を確定する、ようにさらに機能する、請求項14に記載の医用撮像システム。
【請求項17】
前記メモリに記憶される前記命令は、実行されると、
前記MRデータの前記画像空間表現に二乗和演算を適用し、前記強度画像が、前記MRデータの前記画像空間表現に適用される該二乗和演算に基づいて確定される、ようにさらに機能する、請求項16に記載の医用撮像システム。
【請求項18】
前記アンラップされた位相マップは、前記強度画像に基づいて取得される、請求項16に記載の医用撮像システム。
【請求項19】
前記メモリに記憶される前記命令は、実行されると、
前記強度画像に基づいてマスク画像を生成し、
該マスク画像を前記B0磁場マップに適用する、ようにさらに機能する、請求項18に記載の医用撮像システム。
【請求項20】
プロセッサ実行可能なプロセスステップを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であって、
前記プロセスステップをプロセッサにより実行するシステムが、
MR撮像装置から臨床MRデータを受信し、
前記臨床MRデータに変換を適用し、該適用の結果が前記臨床MRデータの画像空間表現であり、
前記臨床MRデータの前記画像空間表現のラップされた位相マップを確定し、
前記ラップされた位相マップに基づいてアンラップされた位相マップを取得し、
B0とエコー時間との間の線形関係に従って前記アンラップされた位相マップをB0磁場マップにスケーリングし、
前記臨床MRデータに基づいてMR画像を再構成し、
前記B0磁場マップに基づいて前記MR画像を補正し、
該MR画像を出力する、ように動作する、非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の主張]
本願は、2020年12月14日出願の米国仮出願63/124,911の優先権を主張する。この出願の内容はここに援用される。
【0002】
磁気共鳴画像法(MRI)のB0磁場不均一性の推定に関し開示する。
【背景技術】
【0003】
MRI(磁気共鳴画像法)が患者の画像を収集するために用いられるが、得られる画像の質は、様々なアーチファクトによって損なわれることがある。例えば、磁場(例えばB0磁場)の不均一は、ゆがみやぼやけのアーチファクトを引き起こす。画像収集のエコー時間(TE)が増加すると、アーチファクトはより深刻になる。
【0004】
アーチファクトを補正することにより画質を向上させることができる。例えば、B0磁場の不均一性の影響を理解することにより、不均一性によって生じるアーチファクトを減らすことができる。場合によっては、患者画像に加えてB0磁場マップが収集され、アーチファクトの補正に使用される。これらのアプローチはエラーを起こしやすく、重ねてのフルスキャンを必要とし、ただでさえ長い検査時間を増加させる。スキャンの解像度を落とし、これによりB0磁場マップの解像度を落として、長くなる検査時間を短くすると、十分なエラー補正能力が得られない結果となる。
【発明の概要】
【0005】
前置きとして、以下に説明する好ましい態様は、B0磁場不均一性を推定する方法とシステムを含む。高解像度でB0磁場不均一性を推定するために1回の収集を用い、収集にかかる時間を短縮し、エラーの原因を回避する。
【0006】
第1の態様は、MR(磁気共鳴)データからMR画像を生成する方法であり、この方法は、プロセッサがMRデータを受信する過程と、プロセッサがMRデータに変換を適用し、この適用の結果がMRデータの画像空間表現である、過程と、プロセッサが、MRデータの画像空間表現のラップされた(折り込んだ)位相マップを確定する過程と、プロセッサが、ラップされた位相マップに基づいてアンラップされた(復元された)位相マップを取得する過程と、プロセッサが、アンラップされた位相マップをB0磁場マップにスケーリングし、このスケーリングがMRデータの位相に対するB0磁場不均一性の影響のみに基づいている、過程と、プロセッサが、MRデータに基づいてMR画像を再構成する過程と、プロセッサが、B0磁場マップに基づいてMR画像を補正する過程と、プロセッサが、MR画像を出力する過程とを含む。
【0007】
本方法は、プロセッサが、仮想のコイル組み合わせ方をMRデータの画像空間表現に適用する過程を含むことができる。ラップされた位相マップは、MRデータの画像空間表現に適用された仮想のコイル組み合わせ方に基づいて確定することができる。本方法は、プロセッサが、MRデータの画像空間表現に基づいて強度画像を確定する過程を含むことができる。本方法は、プロセッサが、MRデータの画像空間表現に二乗和演算を適用する過程を含むことができる。強度画像の確定は、MRデータの画像空間表現に適用された二乗和演算に基づくものとできる。アンラップされた位相マップの取得は、強度画像に基づくものとできる。本方法は、プロセッサが、強度画像に基づいてマスク画像を生成する過程と、プロセッサが、マスク画像をB0磁場マップに適用する過程とを含むことができる。MRデータの位相に対する、加熱、動き、高周波パルス不均一性、コイル感度、及び渦電流の関与、又はこれらが組み合わさった関与は、スケーリングにおいて表現されない。MRデータは臨床収集から受信され、MR画像の補正は、その臨床収集だけのB0磁場マップに基づく。アンラップされた位相マップのスケーリングは、ΔB0=φ/2πTEとするB0磁場マップの近似に基づくものとすることができる。MRデータは、非直交型(non-Cartesian)の収集方式から取得され得る。MRデータは、少なくとも20msのエコー時間、約3Tの磁場強度、又はこれらの組み合わせで取得することができる。本方法は、さらに、プロセッサが、B0磁場不均一性の周波数領域を超える信号を除去するローパスフィルタをB0磁場マップに適用する過程を含むことができる。変換は不均一変換であり得る。
【0008】
第2の態様は医用撮像システムであり、MR(磁気共鳴)撮像装置と、プロセッサと、メモリとを含む。メモリは実行可能な命令を記憶し、該命令は、MR撮像装置からMRデータを受信し、MRデータに変換を適用し、この適用の結果がMRデータの画像空間表現であり、MRデータの画像空間表現のラップされた位相マップを確定し、ラップされた位相マップに基づいてアンラップされた位相マップを取得し、アンラップされた位相マップをB0磁場マップにスケーリングし、このスケーリングは、B0磁場マップに対する二次的なアーチファクト源によるMRデータへの作用を無視し、MRデータに基づいてMR画像を再構成し、B0磁場マップに基づいてMR画像を補正し、MR画像を出力する、ように機能する。
【0009】
本システムのメモリは、仮想のコイル組み合わせ方をMRデータの画像空間表現に適用するように機能する命令を記憶することができる。ラップされた位相マップは、MRデータの画像空間表現に適用された仮想のコイル組み合わせ方に基づいて確定される。本システムのメモリは、MRデータの画像空間表現に基づいて強度画像を確定するように機能する命令を記憶することができる。本システムのメモリは、二乗和演算をMRデータの画像空間表現に適用するように機能する命令を記憶することができる。強度画像は、MRデータの画像空間表現に適用された二乗和演算に基づいて確定される。アンラップされた位相マップは、強度画像に基づいて取得される。本システムのメモリは、強度画像に基づいてマスク画像を生成し、該マスク画像をB0磁場マップに適用するように機能する命令を記憶することができる。
【0010】
第3の態様は、プロセッサ実行可能なプロセスステップを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体であり、プロセッサがプロセスステップを実行するシステムは、MR撮像装置から臨床MRデータを受信し、臨床MRデータに変換を適用し、この適用の結果が臨床MRデータの画像空間表現であり、MRデータの画像空間表現のラップされた位相マップを確定し、ラップされた位相マップに基づいてアンラップされた位相マップを取得し、アンラップされた位相マップをB0とエコー時間との間の線形関係に従ってB0磁場マップにスケーリングし、臨床MRデータに基づいてMR画像を再構成し、B0磁場マップに基づいてMR画像を補正し、MR画像を出力する。
【0011】
本発明は特許請求の範囲によって定義され、本欄は、特許請求の範囲を限定するものではない。本発明のさらなる態様及び利点については、好適な実施形態と併せて以下において説明し、個別に又は組み合わせて請求され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
構成要素及び図面は、必ずしも等倍ではなく、むしろ、本発明の原理を説明するべく強調されている。さらに、図面において、同一の参照符号は、各図を通して同様のものを指している。
【
図1】MR(磁気共鳴)画像を生成する方法の実施形態を例示する。
【
図2】B0磁場マップに基づく補正を伴う画像の再構成に関するフローチャートの実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
B0磁場の患者起因の不均一性は、画像収集においてゆがみやぼやけなどのアーチファクトを引き起こす可能性がある。アーチファクトは、例えば、磁化率強調撮像(SWI)及び/又はT2*グラジエントエコー(GRE)撮像の場合など、長いエコー時間での収集に関してより顕著である。
【0014】
SWIは、静脈血に対する感度がより高いため、高解像度脳静脈造影(例えば、外傷性脳損傷の診断)に用いられる。磁化率情報を強調するために、SWIで長いエコー時間(例えば20~40ms)が用いられる。しかしながら、長いエコー時間で収集されたSWIデータは、幾何学的なゆがみ及び画像のぼやけといった、増幅されたオフ共鳴のアーチファクトを含み得る。オフ共鳴アーチファクトを補正することで、SWIの採用を広げられる。
【0015】
さらに、アーチファクトは、経時的な撮像勾配に影響を及ぼすことで、リードアウト方向にわたって蓄積される。(SWI及び/又はT2*GREで使用される)非直交型(non-Cartesian)サンプリングパターンでは、その蓄積によってデータにおけるアーチファクトの深刻度が増す。非直交型サンプリングパターンは、例えば圧縮センシング再構成で使用した場合に、より良好な空間解像度とより迅速な収集を可能にする。アーチファクトを補正することにより、非直交型サンプリングパターンの採用を広げられる。
【0016】
一部の例では、不均一性に起因するアーチファクトがB0磁場に関する情報に基づいて補正される。アーチファクトを補正する方法の中には、患者に関する主要な臨床収集に加えて追加の低解像度MR収集を利用してB0磁場マップ(ΔB0)を確定する過程を含むものもあり、これは、別々のエコー時間を使用した全部で2つのボリュメトリック収集を必要とする。
【0017】
別々のエコー時間(例:TE1とTE2、TE1>TE2)で収集した2つのボリュームのそれぞれのボクセルにおける位相マップ(φ1とφ2)からΔB0を求めるには、以下の式を用いる。
φ1=φ0+2π×ΔB0×TE1
φ2=φ0+2π×ΔB0×TE2
変形して
ΔB0=(φ1-φ2)/(2π×(TE1-TE2))
【0018】
φ0項は、加熱、動き、高周波パルス不均一性、コイル感度、及び渦電流など、B0磁場を越える他のソースの位相に対する作用を加える。B0磁場マップはB0磁場の不均一性を示しており、不均一性によって生じるアーチファクトを補正することを可能にする。しかし、追加収集が、患者に対する総検査時間を増やすことになる。さらに、この方法は、患者がB0磁場マップ収集と臨床収集との間で動いてしまった場合、補正にエラーを生じやすい。
【0019】
1回のエコー収集のみ(例えば、患者からの収集だけ)に基づいてB0磁場マップを近似することによって、追加収集が回避され及び/又は検査時間が短縮される。B0磁場マップは、1回の収集(例えばSWI収集)からの位相画像だけに基づいて近似される。B0磁場マップの確定に2回の収集を用いる場合、2回目の収集はより低い解像度である。1回の収集を用いてB0磁場マップを推定するのであれば、高い空間解像度、スキャン間の動きに対するロバスト性、及び画像再構成時間への最小限の影響により利益を得られる。
【0020】
一部の例では、追加収集を避けるために、ΔB0磁場マップが臨床収集から推定される。例えば、グラジエントベースの方法又はグリッドサーチ法を用いることができる。しかしながら、これらの方法には、B0磁場の推定が不十分、補正性能が不十分、長い推定時間という課題がある。
【0021】
臨床収集からB0磁場マップを推定する別の方法は、(1回の収集から)観測された位相の主成分がΔB0とTEに線形的に関係するという原理に基づいている。一部の例では、非ΔB0項(例えば、加熱、動き、高周波パルス不均一性、コイル感度、及び渦電流などの、B0磁場不均一性に対する二次的なエラー源)の相対的影響は、有意(重大)ではない。長いエコー時間の場合、位相マップに関与する二次的発生源は、B0不均一性によって起きる関与に比べて無視できると考えられる。例えば、3Tの磁場強度及び20ms以上のエコー時間での収集といった条件がSWI収集に適している。0.6mm等方性で生成される推定されたB0磁場マップは、1回の収集から3分以内に推定され、2回目の収集から確定されるB0磁場マップと比較して、アーチファクト補正に関し同等の性能を提供する。したがって、診断又は臨床目的で患者の画像を再構成し形成するために使用される収集は、B0磁場マップの推定にも使用される。
【0022】
上述のように、φ0項は、加熱、動き、高周波パルス不均一性、コイル感度、及び渦電流などの二次的発生源によって引き起こされるアーチファクトの作用を加える。例えば、渦電流は、適切に設計され及び/又は較正されたMRスキャナでは弱い。これらのアーチファクトの二次的発生源は、ある種の撮像パラメータ(例えば、中間磁場強度での長いTE)に対して無視されるので、B0磁場マップは次のように近似される。
ΔB0=φ/2πTE
【0023】
大きな(まとまった)動きなどの画像アーチファクトのさらなる発生源は、無視できない場合があり、B0磁場マップ補正を超える他の技術によって補正される。RF磁場の放出及び受信によって引き起こされる画像アーチファクトは、それぞれ個別に制限され補正可能である。全体として、φ0項に対するこれらの関与は、2πTEΔB0(B0磁場不均一性の作用)よりも15~20倍程度低く、例えば少なくとも20msのTEで3Tである。したがって、φ0項を取り除くことができると共に、それに応じてB0磁場マップの近似が実施され得る。
【0024】
φ0項を考慮せずにB0磁場マップを近似することは、医療従事者、患者、病院に顕著な利益をもたらす。例えば、近似後のB0磁場マップは、2回の収集からB0磁場マップを確定する場合と同等の性能で、追加の収集を使わずに取得できる。一例では、2分43秒の2回の収集からB0磁場マップが確定される一方、2分55秒の1回の臨床収集からB0磁場マップが近似される。さらに、近似後のB0磁場マップは、2回の収集から確定されたB0磁場マップで得られる補正と同等の画像補正を生成することができる(一例を
図5に示す)。加えて、近似後のB0磁場マップの解像度は対応する収集と同じであり、2回収集B0磁場マップと比較して、より高い忠実度の補正を可能にする。2回収集方式を用いて高解像度のB0磁場マップを確定する場合、収集時間がよりいっそう長くなる。実際、2回収集B0磁場マップ確定の解像度と収集時間との間の兼ね合いは、実用上では非常に低い解像度のB0磁場マップにつながり、このために、画像再構成に際してのアーチファクト補正が不十分となる。ここに開示されているように、1回の収集を使用してB0磁場マップを近似することは、これらの側面をそれぞれ改善する。
【0025】
一つの適用例において、医用画像スキャナと再構成ワークフローとは、1回収集方式を使用して遡及的B0磁場近似を提供し、臨床収集時にB0磁場補正が実施されなかった過去の画像収集を補正する。本願は、長いエコー時間での収集であるけれども臨床撮像時にΔB0が収集されない/収集されなかったΔB0アーチファクトにセンシティブなシーケンスに顕著な利益をもたらす。
【0026】
図1は、磁気共鳴画像を生成する方法を説明している。より多くの、より少ない、又は異なる過程も実行され得る。場合によっては、過程109、過程111、過程113、及び/又は過程121の1つ以上を省略してもよい。過程は、図示とは異なる順序でも実施可能である。例えば、過程107及び/又は過程111は、過程103から直接進むことができる。別の例では、過程119は、過程115から直接進むことができる。別の例では、過程123は、過程119から直接進むことができる。別の例では、過程121は、過程103の一部として実施可能であるし、過程103から直接進むことも可能である。メモリと接続するプロセッサは、過程の1つ以上を実行するように構成される。例えば、
図6のプロセッサ603とメモリ605は、
図1の過程の1つ以上を実行するように構成される。過程について、追加の、異なる、又は代替の側面が以下に
図2と関連して説明される。
【0027】
過程101において、MRデータを受信する。MRデータは、MR撮像デバイスなどの医用撮像装置から受信することができる。MRデータは、B0磁場マップを確定するために実施される追加の収集ではなくて、臨床MR収集において生成される。臨床収集は、患者組織の撮像に適したパラメータをもつ収集である。例えば、臨床収集は、B0磁場を観察するためにその次に行われる収集に比べて、長いエコー時間を有する。このように、B0磁場マップは、重ねての収集ではなくて、臨床収集MRデータのみに基づいて近似される。MRデータは、
図2のk空間データ201のようなk空間データである。
【0028】
一部の例では、MRデータは、SWIその他の長いエコー時間(例えば20ms以上)のプロセスに従って収集される。MRデータは、直交(Cartesian)座標系又は非直交(non-Cartesian)座標系で収集される。一例において、MRデータは、少なくとも20msのエコー時間及び/又は約3Tの磁場強度で取得される。別の例では、エコー時間が30msである。また別の例では、磁場強度が例えば1.5Tなど3T未満である。他の例では、磁場強度が例えば7Tなど3Tよりも大きい。
【0029】
過程103において、随伴変換がMRデータに適用される(例えば、随伴変換203)。変換は、入力としてk空間MRデータを受信する。この変換を適用した結果がMRデータの画像空間表現となる。一例では、変換は、不等間隔高速フーリエ変換(NUFFT)である。k空間からオブジェクト又は画像空間を再構成する際に使用される他の変換を使用することができる。
【0030】
過程105において、仮想のコイル組み合わせ方が、MRデータの画像空間表現(変換)に適用される(例えば、組み合わせ205)。仮想のコイル組み合わせ方は、MRデータのMR信号受信にコイルのアレイを使用する場合に適用することができる。一部の例では、過程107において確定されるラップされた位相マップ(例えば、ラップされた位相マップ207)が、仮想のコイル組み合わせ方に基づいて確定される。他の例では、別の組み合わせ方を用いて、MRデータの画像空間表現からラップされた位相マップを確定する。仮想のコイル組み合わせ方は、MRデータを収集するために使用されるMRコイルの挙動を記述する。このようにして、仮想のコイル組み合わせ方は、磁気共鳴信号の位相に関する情報を画像空間表現から取得することを可能にする。画像空間表現から確定されるラップされた位相マップ(例えば、仮想のコイル組み合わせ方又は別の組み合わせ方の適用で)は、位相情報を集める又は表現する。信号の位相は例えば-πから+πの範囲に拘束されるので、ラップされた位相の「ラップされた」という表現が使われる。ラップされた位相マップにおいて、測定された位相の値が範囲外の場合、その値は範囲内に収まるように修正される。位相情報を範囲内にラッピングする結果が、
図2、
図3、
図4の位相マップにおいて鮮明な局所コントラスト帯域によって示されている。
【0031】
コイルを1つ使用してMRデータを収集する場合、ラップされた位相マップはMRデータから直接確定される。例えば、ラップされた位相マップは、仮想のコイル組み合わせ方などの組み合わせ方を適用せずとも取得される。
【0032】
過程109において、二乗和手法(例えば、手法209)が、MRデータの画像空間表現に適用される。一部の例では、過程111において確定される強度画像(例えば、強度画像211)は、二乗和手法、又はMRデータの画像空間表現に適用される他の手法に基づく。強度画像は、MRデータ収集のボクセルから受信されたMR信号の強さを表現するか示す。このように強度画像は、ラップされた位相マップに加えて、MRデータの画像空間表現の別の側面を示す。
【0033】
過程113において、マスク画像(例えば、マスク画像213)が、強度画像に基づいて生成される。マスク画像は、臨床判定及び/又は再構成画像の修正で不適切な又は好ましくない撮像ボリュームの一部を除去する。例えば、脳組織又は脈管構造が具体的対象である場合、マスク画像は、頭蓋骨のような目標とは関係のないオブジェクトを表現するMRデータの部分を除去する。
【0034】
過程115において、アンラップされた位相マップが(例えば、アンラッピング215によって)生成される。アンラップされた位相マップは、少なくともラップされた位相マップに基づいて、一部の例ではラップされた位相マップと強度画像とに基づいて、取得される。例えば、ラップされた位相マップは、先に推定された画像の強度によって重み付けしたポアソン方程式を解くことによって、アンラップされる。ポアソン方程式を解くことにより、例えば-πから+πの範囲に拘束されていない位相の値を求めることができる。アンラッピング処理により、位相の値は、指定範囲に拘束されないものとして確定されるので、位相の局所的及び全体的な分散が、より正確により詳細に示される。拘束を外した位相の値により、結果として得られるB0磁場マップに基づいて正確な補正が可能になる。
【0035】
過程117において、マスク画像が、位相アンラップされた位相マップに(例えば、アンラッピング215において又はその一部として)適用される。アンラップされた位相マップにマスク画像を適用すると、アンラップされた位相マップの好ましくない部分や不適切な部分が除去される。このように、強度画像(マスク画像の基礎)を使用して、B0磁場マップを作成するために使用する位相情報に焦点を合わせることができる。
【0036】
過程119において、アンラップされた位相マップをスケーリングして、B0磁場マップ(例えば、B0磁場マップ221)を取得する。スケーリングは、例えば、スケーリング217に関して説明してあるように進められる。上述したように、MRデータのアーチファクトは、B0磁場の不均一性と二次的発生源によって引き起こされる。しかし、MRデータのアーチファクトに対するB0磁場不均一性の関与のみに焦点を当てることによって、B0磁場マップは、MRデータのボクセルに関する位相の値と臨床収集のエコー時間との間の線形関係に基づいて確定される。エコー時間に基づいて、各ボクセルがボクセルに関する位相の値に従って「スケーリング」され、ボクセルにおけるB0磁場に関する局所値が与えられる。ボクセルにおけるB0磁場の値は、B0=φ/2πTEに従って求めることができる。B0磁場マップは、各ボクセル(又は少なくとも対象のボクセル)に関する局所B0値を組み合わせることによって確定される。
【0037】
過程121において、フィルタがB0磁場マップに適用される(例えば、フィルタ219に関して説明されるように進行する)。フィルタは、例えばローパスフィルタである。フィルタは、B0磁場不均一性によるMRデータへの関与を保ちながら、B0磁場マップにおける磁化率によるMRデータへの関与を除去する。例えば、磁化率の関与はスペクトル領域の1つの区域に分布し、フィルタは、当該磁化率関与を除去すると同時に該領域の区域の外の信号を除去する。B0磁場マップにおける磁化率の関与を除去することにより、B0不均一性による関与のみが再構成画像から除去され、磁化率は補正画像中に存在する。
【0038】
過程123において、MR画像がMRデータから再構成される(例えば、
図2のセクションCの再構成及び/又は再構成223の再構成に従って)。画像再構成プロセスは、B0磁場マップを推定するために使用されるのと同じMRデータ、k空間MRデータから進められる。非フーリエ演算などの変換が、k空間データを画像空間とするために使用される。再構成される画像は、B0磁場不均一性などの様々な発生源からのアーチファクトに影響される。アーチファクトは、過程125におけるように、再構成画像にB0磁場マップを適用することによって補正される。補正の出力は、例えば、補正ボリューム225である。ボクセルにおける局所B0磁場値を用いて、同一ボクセルにおける再構成画像の磁気強度を重み付けすることができる。この重み付けを通して、ボクセルにおける観測値をスケーリングし、撮像ボリューム全体にわたって均一でないB0磁場の影響を除去する。
【0039】
過程127において、MR画像が出力される。MR画像は、1つ以上のあて先へ出力される。例えば、MR画像は、ストレージデバイス(メモリ605又は他のリポジトリなど)、MRシステム、及び/又はディスプレイ(ディスプレイ611など)に送られる。再構成されたMR画像は、ボリュームを再構成して再構成ボリュームから画像をボリュームレンダリングするなど、再フォーマットされる。
【0040】
図2は、B0磁場マップに基づく補正で画像を再構成するフローチャートを示している。
図1の各過程は、
図2の過程の、追加の、異なる、又は代替の側面も記述する。セクションAにおいて、臨床MR収集によるk空間データ201から位相マップが取得される。セクションBにおいて、収集時のB0磁場の不均一性を表すB0磁場マップを近似するように、位相マップをスケーリングし、一部の例では、フィルタを適用する。セクションCにおいて、画像(例えば、三次元画像)がMRデータから再構成され、近似されたB0磁場マップに基づいて補正される。
【0041】
k空間データ201(例えば、臨床収集からのMRデータ)が、例えば過程101に関して説明するように、受信される。セクションAで始まり、例えば、過程103、過程105、過程107、過程109、及び/又は過程111の1つ以上に関して説明するように、密度補償されたk空間データ201の随伴203を計算することによって、強度画像211及び/又はラップされた位相マップ207が取得される。随伴NUFFT203が示されているが、他の変換(離散フーリエ変換、高速フーリエ変換、部分(高速)フーリエ変換など)も使用され得る。さらに、仮想のコイル組み合わせ方205及び二乗和演算209が示されているが、MRデータ内のコイルチャンネルに関する他の組み合わせ方(適応コイル組み合わせ又は磁化率マップなど)及び他の演算を、それぞれ使用することもできる。
【0042】
セクションBにおいて、推定(近似)されたB0磁場マップ221が、アンラッピング215、スケーリング217、及び/又はローパスフィルタ219によって生成される。アンラッピング215を通して、アンラップされた位相マップは、例えば、過程115に関して説明するように、ラップされた位相マップ207から確定される。ラップされた位相マップは、先に推定された画像211の強度によって重み付けされたポアソン方程式を解くことによって、アンラップ215される。随伴203で推定された強度画像211及び関連するマスク213が、位相アンラッピングアルゴリズム215の重み付け及び安定化のために使用される。セクションBのアンラッピング過程215は、ラップされた位相マップ207、強度画像211、及び一部の例でマスク画像213を入力として受信するが、別のアンラッピング手法215を使用してもよい。一例において、強度画像211及び/又はマスク画像213を用いることなく、ラップされた位相マップをアンラップするアンラッピング手法215を使用する。例えば、ラプラスの方法や、Speedy rEgion-Growing Algorithm for Unwrapping Estimated Phase method(SEGUE)を、ラップされた位相マップ207をアンラップするために適用することができる。
【0043】
アンラップされた位相マップは、ボクセルに関するB0の値と、ボクセルに関する位相の値と、k空間データ201収集のエコー時間との間の関係に基づいて、線形的にスケーリング217される。例えば、ボクセルに関するB0磁場の値は、B0=φ/2πTEに従って求めることができる。高周波をフィルタリングするために、ハニングフィルタなどのローパスフィルタ219を、スケーリング後のB0磁場マップに適用することができる。ローパスフィルタ219は、SWIの対象である再構成及び補正画像225におけるMRデータへの磁化率関与の抑制を妨げる。結果的に得られるB0磁場マップ221の近似を用いて、k空間データ201から再構成された画像においてアーチファクトを補正する。
【0044】
セクションCにおいて、k空間MRデータ201に基づいて画像を再構成223する。再構成223は、過程123に関して説明するように進められる。一部の例では、非フーリエ演算を用いて、k空間MRデータ201からMR画像を再構成する。ただし、再構成画像はアーチファクトを受けやすい。アーチファクトは、画像空間の中で、
図1の1つ以上の過程に従って推定されるB0磁場マップのような推定されたB0磁場マップ221を適用することによって、補正される。補正後、補正された撮像ボリューム225が取得される。
【0045】
SWIについては、SW画像を得るために、補正後のボリューム225に対して追加のステップ231が実施される。一例をあげると、補正後のボリューム225に基づいて、例えば、
図1の過程103、過程105、及び過程107、そして
図2の要素203、要素205、及び要素207に関して説明するように、さらなる位相画像を確定することができる。フィルタがこのさらなる位相画像に適用され、低周波数(例えば、過程121及び要素219に関して説明するように)を除去し、磁化率による位相画像への高周波関与を保持する。ボクセル値の乗算(例えば4~5倍)に基づいて、フィルタ後のさらなる位相画像からマスクを作成し、これを補正ボリューム225の強度画像に適用する。このプロセスを通してSWI画像が取得される。
【0046】
最小値投影227が、処理ステップ231を経て補正画像ボリューム225から確定されるフィルタ後のさらなる位相画像に適用され、補正されたSW画像229が生成される。
【0047】
一例において、セクションA及びセクションBの過程は、B0磁場不均一性を超える発生源からの画像アーチファクトに対する関与を考慮することなく、B0磁場マップ221を推定するために実行される。この例では、B0磁場マップは、127秒で完了する随伴計算、31秒で完了する仮想のコイル組み合わせ方によるコイル組み合わせ、5秒で完了する強度画像からのマスク生成、合わせて12秒で完了する位相アンラッピング、フィルタリング、スケーリングという、3分以内で近似される。
【0048】
図3、
図4、
図5は、位相マップ、収集されたB0磁場マップ、推定されたB0磁場マップ、及びB0磁場マップに従って補正した画像の例と比較を図示したものである。
図3、
図4、及び
図5の例において、MRデータは、2人のボランティアについてSWI画像ボリュームとして収集したものであり、3T(Siemens Healthineers PrismaFIT, Erlangen, Germanyを使用)で、64チャンネルヘッド/ネックコイルアレイを用い、3D Spherical Stack-of-SPARKLING sampling patternを使用した。MRデータは次のパラメータで収集された:収集時間(TA)=5min、0.6mm等方解像度、視野(FOV)=240mm、スライス数=208、TE=20ms、緩和時間(TR)=50ms、Bw=33Hz/px。追加の参照B0磁場マップを次のパラメータで収集した:TA=2min43s、FOV=240mm、2mm等方解像度、TE1=4.92ms、TE2=7.38ms。参照B0磁場マップは、1回収集のB0磁場マップの性能を比較することができるベースラインとして使う。
【0049】
画像再構成(例えば、
図4に示される画像について)は、ウェーブレット領域における軟判定しきい値処理正則化を用い、3Dにおいて反復的に実行される。補正非フーリエ演算を予め計算した密度補償と共に使用した。チャンネルは、二乗和(例えば、過程109及び/又は過程111に関して説明されるように)及び仮想コイル(例えば、過程105及び/又は過程107に関して説明されるように)を用いて再組み合わせされる。再構成は、収集された又は推定された磁場マップのいずれかを用いて、補正なしと補正ありとで実施する。SWI最小値投影は16mm以上で適用した。すべての後処理は、2560-core Quadro P5000 GPUと16GBのGDDR5 VRAMを用いて実施している。
【0050】
図3において、横列1と横列2を通して2人の患者それぞれに関連した画像が示されている。縦列Aは位相マップを示し、縦列Bは2回収集法に基づくB0位相マップを示し、縦列C、縦列D、縦列Eは、1回の臨床収集から推定されたB0磁場マップを示す。縦列C、縦列D、及び縦列EのB0マップは、過程115及び要素215に関して述べた複数のアンラッピング手法など、別々のアンラッピングアルゴリズムに従って推定されている。少なくともアンラップされた位相マップ207と強度画像211に基づくアンラッピング手法を用いた縦列Cの推定されたB0マップは、縦列Dと縦列EのB0マップよりもエラー補正の性能が向上していることを示している。
【0051】
図4において、横列1、横列2、横列3、横列4にある位相マップは、
図5の横列1、横列2、横列3、横列4にある画像に相当する。
図4の縦列Aは補正なしのSW画像を示し、
図5の縦列Aの画像に相当する。
図4の縦列Bは参照B0磁場マップで補正したSW画像を示し、そして縦列Cは推定されたB0磁場マップで補正したSW画像を示している。
【0052】
図5において、横列1、横列2、横列3、及び横列4は、MRデータから再構成された異なるSW画像を示す。縦列Aはアーチファクト補正を適用していない画像を示し、縦列Bは参照B0磁場マップ(例えば、2回収集から確定されたB0磁場マップ)で補正した画像を示す。縦列Cは縦列Aの画像と縦列Bの画像との間の絶対差を示しており、ベースラインのB0磁場マップに関する補正の範囲を観察できるようにしている。縦列Dは、臨床収集だけで推定したB0磁場マップを用いて補正した画像を示し、縦列Eは、縦列Aの画像と縦列Dの画像との間の絶対差を示しており、推定されたB0磁場マップに関する補正の範囲を観察できるようにしている。
図5中の矢印は、縦列A、縦列B、縦列Dの画像に存在するSW画像の微妙な特徴を強調している。
【0053】
図3から分かるように(例えば、縦列B、縦列C、縦列D、及び縦列E)、アンラッピング(例えば、過程115に関して説明するように実施される)は、収集されたB0磁場マップと比較して、B0磁場マップの内部領域でより大きな一貫性を提供する。しかし、
図4の縦列Bに示されている位相マップは(例えば、
図4の縦列Cに示されている位相マップと比較した場合に)、位相が負にラップされる(中心から始まり、位相値が+πにラップされるまで-πへ下がる)ために、収集されたB0磁場マップのB0値が高すぎることを示唆している。その結果、不均一性の作用が過大補償される。
図4の縦列Cに示された補正画像に用いてある推定されたB0磁場マップは、より良好な補償を生み出している。結果として得られる
図5中のSW画像は、参照B0マップ(
図5の縦列Cに示されている)と提案に係るB0磁場マップ近似手法(
図5の縦列Eに示されている)との間の同等の補正を示す。
【0054】
中間磁場(例えば、3T)で長いエコー時間(例えば、20ms以上)の例において、1回の位相画像(1回の臨床収集から確定される)を使用して、B0磁場マップを迅速且つ効率的に推定することができ、追加のΔB0収集を使用して取得されるB0磁場マップで実行される補正と同等の性能をもってオフレゾナス(オフ共鳴)アーチファクトの補正が可能になる。1回収集のB0磁場推定は、2回収集手法の持続時間に相当する持続時間をもつことがある。しかしながら、1回収集のB0磁場推定は、B0磁場が、スキャン間の動きに対するより強いロバスト性及びより高い解像度をもってオフライン(例えば、コンピュータ上で、そして追加の画像収集なしで)で推定されることから、有利である。一つの例において、随伴コール(例えば、過程103に関して説明するように)中にローパスフィルタ(例えば、過程121に関して説明する)を適用することによって、B0磁場マップを推定する期間をさらに短縮することができる。
【0055】
図6は、医用撮像システム601の実施例を示している。システム601は、プロセッサ603、メモリ605、ネットワークアダプタ607、イメージセンサ(医用撮像デバイス)609、及びディスプレイ611を備える。イメージセンサ609、ディスプレイ611、プロセッサ603、及びメモリ605は、医用撮像デバイス、コンピュータ、サーバ、ワークステーション、又は患者画像データを画像処理するためのその他のシステムの一部であってもよい。
【0056】
追加して、別の、又はより少なくコンポーネントを提供することもできる。例えば、イメージセンサ609は、システム601から離れていてもよい。画像再構成及び/又はB0磁場マップ推定は、システム601又はローカルデバイスにおけるスタンドアロンのアプリケーションとして、又はネットワーク(例えばクラウド)アーキテクチャに展開されたサービスとして、適用される。別の例として、ユーザ入力デバイス(例えば、キーボード、ボタン、スライダ、ダイアル、トラックボール、マウス、又は他のデバイス)が、患者画像データのユーザ操作のために提供される。
【0057】
プロセッサ603は、コントローラ、コントロールプロセッサ、汎用プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ、三次元データプロセッサ、グラフィック処理ユニット、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ、人工知能プロセッサ、デジタル回路、アナログ回路、その組み合わせ、又は画像データを処理するために現在知られているもしくは将来開発される他のデバイスである。このプロセッサ603は、1つのデバイス、複数のデバイス、又はデバイスのネットワークである。複数のデバイスの場合、処理の並列分割又は直列分割が使用され得る。プロセッサ603は、ここに説明した様々な過程を行うための記憶された命令、ハードウエア、及び/又はファームウエアに従って作動するか、又は、それらによって構成される。例えば、
図1及び
図2の過程は命令として記憶され、
図1及び2の過程を実行するようにプロセッサ603を構成する。
【0058】
メモリ605は、外部ストレージデバイス、RAM、ROM、データベース、及び/又はローカルメモリ(例えば、ソリッドステートドライブやハードドライブ)とすることができる。命令及び他のデータには、同じ又は別の非一時的コンピュータ可読媒体を使用することができる。メモリ605は、データベース管理システム(DBMS)を使用して実現することができ、ハードディスク、RAM、又はリムーバブルメディアなどのメモリに常駐させることができる。加えて又は代替的に、メモリ605はプロセッサ603に内蔵してもよい(例えばキャッシュ)。メモリ605は、MRデータ、位相マップ、強度画像、B0磁場マップ、再構成画像、及び/又はコンピュータプログラム命令を記憶することができる。メモリ605に記憶されたデータは、プロセッサ603又は別のプロセッサによってアクセス可能であり、検索可能である。
【0059】
MR画像生成成、MR画像補正、及び/又はB0磁場推定プロセスを実行するための命令、方法、及び/又はここに説明する技術は、キャッシュ、バッファ、RAM、リムーバブルメディア、ハードドライブ、又はその他のコンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ605)などの非一時的コンピュータ可読記憶媒体又はメモリで提供される。コンピュータ可読記憶媒体は、様々なタイプの揮発性及び不揮発性記憶媒体を含む。図面に例示し又はここに説明する機能、過程、又は技術は、コンピュータ可読記憶媒体に記憶された1つ以上の命令のセットに応答して実行される。これら機能、過程、又は技術は、命令セット、記憶媒体、プロセッサ、又は処理構想の具体的なタイプには依存せず、単独で又は組み合わせで作動するソフトウェア、ハードウェア、集積回路、ファームウェア、マイクロコード、その他同様のものによって実行される。
【0060】
一実施例において、命令は、ローカル又はリモートのシステムで読み出すために、リムーバブルメディアデバイスに保存される。他の実施例では、命令は、例えばコンピュータネットワークで転送できるように、遠隔の場所に保存される。また、別の実施例では、命令は、所定のコンピュータ、CPU、GPU、又はシステムに保存される。図面に示されたシステムを構成するコンポーネント及び方法ステップにはソフトウェアで実装されるものもあるので、システムコンポーネント間(又はプロセスステップ間)の実際の接続は、実施例のプログラム方式次第で異なる。
【0061】
ネットワークアダプタ607は、1つ以上の有線又は無線ネットワークと通信する。アダプタ607を介して、システム601とネットワーク上の他のコンピュータとの間でデータを送受信することができる。例えば、MRデータは、アダプタ607を介して、リモートのコンピュータ、リモートのストレージ、又はリモートのMR撮像システムから収集される。別の例では、MR画像が、アダプタ607を介してリモートのコンピュータへ送られる(保存や追加処理のためなど)。
【0062】
医用撮像デバイス609は、MR撮像装置であり得る。例えば、医用撮像デバイスは、撮像ボリュームに適用された磁場に基づいてデータを記録する。医用撮像デバイス609は1つ示されているが、それ以上の数の医用撮像デバイス609を提供してあってもよい。医用撮像デバイス609は患者を受け入れる。これにより、MRデータは、撮像ボリューム内の患者の磁気共鳴に関する情報を含む。医用撮像デバイス609によって収集されたMRデータは保存される。例えば、画像データは、メモリ605か、又は、システム601から遠隔のストレージに記憶される。
【0063】
ディスプレイ611は、CRT、LCD、プロジェクタ、プラズマ、プリンタ、タブレット、スマートフォン、又は、患者の履歴データなどの出力を表示するために現在知られているか将来開発され得るその他のディスプレイデバイスである。一部の例では、ディスプレイ611は、視覚又は視聴覚出力を提示することができる。
【0064】
本発明を様々な実施の形態を通して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更及び改造を実施できることは当然である。以上の詳細な説明は、限定を意図しているのではなく例示として解されることを目的としたものであり、当然ながら、本発明の思想及び範囲を定めることを目的としているのは、全ての等価のものを含む特許請求の範囲である。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】