(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094346
(43)【公開日】2022-06-24
(54)【発明の名称】光学的歯車測定の方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
G01B11/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021201813
(22)【出願日】2021-12-13
(31)【優先権主張番号】10 2020 133 309.9
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】504269327
【氏名又は名称】クリンゲルンベルク・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Klingelnberg GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】フィンケルデイ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】メルケルト,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファー,ヨーナス
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA51
2F065BB05
2F065CC05
2F065DD03
2F065FF41
2F065QQ23
2F065QQ33
2F065QQ34
2F065QQ41
2F065UU05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品の歯形の改良された光学式測定を可能にする方法及び装置を提供する。
【解決手段】光学式測定システム(18)によって部品(2)の歯形(4)を測定するステップであって、ここで測定点が検出されるステップと、前記測定点を評価するステップと、を含み、前記測定点を評価するステップは、前記測定点をフィルタリングによってフランクグループへグループ分けするステップと、前記フランクグループの前記測定点からプロフィールセグメントをモデル化するステップであって、各フランクグループに1つのプロフィールセグメントが割り当てられるステップと、前記プロフィールセグメントに基づいて前記歯形の1つ又は複数の幾何学的パラメータを決定するステップと、を少なくとも有する。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
部品(2)を提供するステップであって、前記部品(2)は所定の基準ジオメトリ(22)を備える歯形(4)を有するステップと、
測定装置(16)を提供するステップであって、前記測定装置(16)は光学式測定システム(18)を含むステップと、
前記光学式測定システム(18)によって前記部品(2)の前記歯形(4)を測定するステップであって、ここで測定点(20)が検出されるステップと、
前記測定点(20)を評価するステップと、を含み、
前記測定点(20)を評価するステップは、
前記測定点(20)をフィルタリングによってフランクグループ(26)へグループ分けするステップと、
前記フランクグループ(26)の前記測定点(20)からプロフィールセグメント(28、30)をモデル化するステップであって、1つのプロフィールセグメント(28、30)が各フランクグループ(26)に割り当てられるステップと、
前記プロフィールセグメント(28、30)に基づいて前記歯形の1つ又は複数の幾何学的パラメータを決定するステップと、
を少なくとも含む、方法。
【請求項2】
前記測定点をフィルタリングによってフランクグループにグループ分けするステップは、
前記測定点の半径方向フィルタリングをするステップであって、前記フランクグループの複数の前記測定点、特に前記フランクグループの全ての前記測定点が、所定の最小半径と所定の最大半径との間に位置する、ステップと、
前記測定点のプロフィール固有フィルタリングをするステップであって、前記フランクグループの複数の前記測定点、特に前記フランクグループの全ての前記測定点が、前記歯形の所定の基準ジオメトリから所定の距離を超えない最小距離にそれぞれ存在する、ステップと、
前記測定点の運動学的フィルタリングをするステップであって、前記フランクグループの複数の前記測定点、特に前記フランクグループの全ての前記測定点が、それぞれの前記測定点の検出時に、測定動作を実行する前記測定装置の機械軸の加速度の量が所定の閾値よりも小さいという条件を満たす、ステップと、
前記測定点の定性的フィルタリングをするステップであって、前記フランクグループの複数の前記測定点、特に前記フランクグループの全ての前記測定点が、それぞれの前記測定点の撮像中に、露光時間が所定の露光時間を下回らない、及び/又は輝度が所定の輝度を下回らないという条件を満たす、ステップと、
のうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定点をフィルタリングによってフランクグループにグループ分けするステップは、
フランクグループの数が歯形の歯の数の2倍に対応するかどうかをチェックするステップと、
それぞれのフランクグループの前記測定点の数が所定の最小数を超えているかどうかをチェックするステップと、
それぞれのフランクグループの前記測定点が所定の分布を有するかどうかをチェックするステップと、
のテストステップのうちの1つ又は複数を含み、
前記テストステップは特に前記モデル化の前に実行される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記フランクグループの前記測定点からのプロフィールセグメントの前記モデル化をするステップが、
少なくとも1つのプロフィールセグメントを高次の数学的非線形関数としてモデル化するステップと、
いくつかのプロフィールセグメントをそれぞれ高次の数学的非線形関数としてモデル化するステップと、
すべてのプロフィールセグメントをそれぞれ高次の数学的非線形関数としてモデル化するステップと、
のうちの1つを含み、
プロフィールセグメントは各フランクグループに割り当てられる、
請求項1-3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記フランクグループの前記測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、
左フランクグループのプロフィールセグメントから左平均化補償プロフィールセグメントを作成し、左平均化補償プロフィールセグメントからの左フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントの偏差をチェックするステップと、
左フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントと、左フランクグループの別のプロフィールセグメントとの偏差をチェックするステップと、
右フランクグループのプロフィールセグメントから右平均化補償プロフィールセグメントを作成し、右平均化補償プロフィールセグメントからの右フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントの偏差をチェックするステップと、
右フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントと右フランクグループの別のプロフィールセグメントとの偏差をチェックするステップと、
左平均化補償プロフィールセグメントの、特定の基準ジオメトリからの偏差をチェックするステップと、
右平均化補償プロフィールセグメントの、特定の基準ジオメトリからの偏差をチェックするステップと、
所定の基準ジオメトリからの、及び/又は補償形状からの少なくとも1つのプロフィールセグメントの偏差をチェックするステップであり、前記補償形状は前記フランクグループの前記プロフィールセグメントから決定されるステップと、
第1の測定の歯形の歯の第1のプロフィールセグメントと、第2の測定の同じ歯形の第2のプロフィールセグメントとの偏差をチェックするステップと、
のうちの1つ又は複数を有する尤度チェックステップを含む、請求項1-4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
偏差が所定の閾値を超えた場合に、前記フィルタリングの調節、及び/又は測定パラメータの調節が行われる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのフランクグループ、いくつかのフランクグループ又は全てのフランクグループの三次元測定点が、特にプロフィールセグメントが作成される前に、二次元平面に投影され、前記測定点からのプロフィールセグメントの前記モデル化が、特に二次元プロフィールセグメントとして前記二次元平面内で実行される、又は
フランクグループの三次元プロフィールセグメント、いくつかのフランクグループの三次元プロフィールセグメント、またはすべてのフランクグループの三次元プロフィールセグメントが二次元平面に投影される、
請求項1-6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
歯ピッチが前記歯形の1つ又は複数の幾何学的パラメータの1つであり、前記歯ピッチがピッチ測定円上で決定される、及び/又は、
ピッチ偏差が前記歯形の1つ又は複数の幾何学的特徴の1つである、
請求項1-7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記測定点の取得の間、前記光学式測定システムに対して前記部品が連続的に移動される、及び/又は、
前記光学式測定システムの焦点直径が50マイクロメートル以下、特に20マイクロメートル以下である、及び/又は、
前記プロフィールセグメントに基づく前記歯形の1つ又は複数の幾何学的パラメータの決定が、触覚式測定の評価に類似して行われ、及び/又は前記触覚式測定の評価のための評価ソフトウェアで行われる、
請求項1-8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
測定装置を有し、ここで前記測定装置は光学式測定システムを含み、部品を保持するためのホルダを有し、請求項1-9のいずれか1つに記載の方法を実施するために適合された制御および評価ユニットを有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、以下の方法ステップを含む方法である。部品を提供するステップ。ここで部品は所定の基準ジオメトリ(nominal geometry)を有する歯形を有する;測定装置を提供するステップ。ここで測定装置は光学式測定システムを有する;光学式測定システムによって部品の歯形を測定するステップ。ここで測定点が検出される;測定点を評価するステップ。本発明は、さらに、このような方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学式測定システムは、触覚式測定システムの精度にますます近づきつつあり、しばしば触覚式測定システムよりもはるかに速く動作するため、歯車測定技術においてますますその重要性が増している。
【0003】
触覚式ピッチ測定は、歯車の解析および評価における標準的な測定作業の1つである。ここで、例えばインボリュート歯形の場合、インボリュート間の全ての距離は、全ての歯の左側及び全ての歯の右側で、それぞれの場合においてピッチ直径上及び予め定義された測定高さにおいて測定される。ピッチ測定は、ピッチ径ちょうどにおいて測定するポイントプロービングによるピッチ測定と、ピッチ径においてフランクラインのセクションを測定し、その後個々の測定点を平均化する測定方法の2つの触覚式測定方法に区別される。フランクラインを使用する場合、測定時間は長くなるが、より確実な測定結果が得られる。
【0004】
次に、測定結果は、歯形の基準ジオメトリの基準距離と比較され、例えば、VDE又は企業規格又はDIN、ISO又はAGMAのような一般規格に従って、評価される。逸脱した直径、すなわち直接ピッチ直径上にない直径、及び1つ又は複数の測定高さでの測定が可能である。
【0005】
触覚式ピッチ測定の測定時間は比較的長く、特にフランクラインに基づく測定では、フランクラインの各セクションを正確な直径と高さで各歯について測定する必要があるため、長くなる。触覚式プローブは、各歯のスペースに衝突することなく入り、それぞれの歯面(tooth flanks)に接触させ、各歯のスペースで2回の測定を完了しなければならない。歯のスペース内での測定終了後、プローブを後退させ、歯車を1歯分回転させ、次の歯のスペースにおいて測定される。
【0006】
このようなピッチ測定は、原理的には、はるかに短い測定時間で非接触光学式測定システムを用いて実施することができ、この場合、歯車は光学システムの前で連続的に回転し、隙間に入り込むことやフランク(flank:歯の側面)の触覚式プローブが不要である。しかしながら、触覚式測定の評価に用いられる既知の評価戦略は、光学式測定に関連して、逸脱した結果または改ざんされた結果を導く。これは、触覚式測定の記録された測定点と、光学式測定の記録された測定点が、特にその数と質に関して、互いに大きく異なるからである。
【0007】
触覚式測定システムは、例えば、特定の測定点ごとに非常に高い精度を有するので、幾何学的特徴を決定するためには、1つの測定点または数個の測定点で十分であることが多い。これに対照的に、光学式測定システムは、個々の測定点の精度はより低いが、著しく多くの測定点を検出する。
【0008】
加えて、光学式および触覚式測定システムは、測定される部品との相互作用に関して異なる。例えば
図1Aは、先端によって示されるところの10マイクロメートルくらいのレンジの表面構造を有する表面プロフィールPの測定を模式的に示している。この場合、光学式測定システムの集光ビームFSは、その焦点直径d
FSが例えば20マイクロメートルしかないため、表面プロフィールP内に測定する。これに対し、
図1Bによる同じ表面プロフィールPの触覚式測定では、センシングに用いられるセンシングボールKの直径d
Kが例えば500マイクロメートルと焦点直径d
FSの何倍も大きいため、平滑化または形態的フィルタリングが行われることになる。さらに、触覚式測定では、塵や浮遊粒子を検出しないが、光学式測定においてこれらは、測定される表面から遠く離れた測定点をもたらす可能性がある。
【0009】
したがって、触覚式測定システムの測定点の測定のために最適化された評価戦略は、光学式測定システムで記録された測定点に適用される限り、測定結果の逸脱または改竄につながる。このため、光学式と触覚式の測定結果を比較することは困難である。
【0010】
このような背景から、本発明は、部品の歯形の改良された光学式測定を可能にする方法及び装置を提供するという技術的課題に基づいており、特に触覚式測定の測定結果との相互比較性の向上が達成され得る。
【発明の概要】
【0011】
上述した技術的課題は、請求項1による方法および請求項10による装置によって解決される。本発明の更なる実施形態は、従属請求項及び以下の説明に説明される。
【0012】
第1の態様によれば、本発明は、以下の方法ステップを含む方法に関する。部品を提供するステップであって、部品は所定の基準ジオメトリを備える歯形を有する、ステップと、測定装置を提供するステップであって、測定装置は光学式測定システムを有する、ステップと、光学式測定システムによって部品の歯形を測定し、ここで測定点が検出されるステップと、測定点を評価するステップと、を含む方法に関する。この方法は、測定点の評価が、少なくとも以下のステップを含むことを特徴とする。フィルタリングによって測定点をフランクグループへグループ分けするステップと、フランクグループの測定点からプロフィールセグメントをモデル化するステップであって、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられるステップと、プロフィールセグメントに基づいて歯形の1つまたは複数の幾何学的パラメータを決定するステップと、を含む。
【0013】
測定点のフィルタリングとその結果のグループ分けにより、すべての測定点ではなく、測定点のサブセットのみが評価されるため、プロフィールセグメントのモデル化を改善することができる。したがって、モデル化されたプロフィールセグメントは、部品の実際の形状をより正確に反映し、歯形の1つまたは複数の幾何学的パラメータをより正確に決定することを可能にする。
【0014】
本文書において「プロフィールセグメント」の用語が使用される場合、それらは、歯形の歯のプロフィール方向及び/又はフランク方向に少なくとも部分的に延びることができる。特に、プロフィールセグメントは、歯形の歯のプロフィールライン及び/又はフランクラインを表してもよい。特に、プロフィールセグメントは、歯形の歯のプロフィールラインをマッピングしてもよい。特に、プロフィールセグメントは、歯形の歯のフランクラインをマッピングしてもよい。
【0015】
本文書において歯形について言及する場合、それは歯付き歯車のピニオンまたはホイールであってもよい。したがって、歯形は、トルクおよび速度の伝達および変換のために配置されてもよい。あるいは、歯形は、スプラインの一部であってもよい。
【0016】
歯形は、インボリュート歯形またはサイクロイド歯形であってもよい。歯形は、ラックアンドピニオン歯形またはワイルドハーバーノビコフ歯形であってもよい。
【0017】
フィルタリングによって測定点をフランクグループにグループ分けすることは、次の方法ステップを含んでもよい。すなわち、測定点の半径方向フィルタリング(radial filtering)をするステップであって、フランクグループの複数の測定点、特にフランクグループの全ての測定点が、所定の最小半径と所定の最大半径との間に位置する、フィルタリングステップを含んでもよい。このようにして、例えば、歯形のヘッド領域及び/又はルート領域は、歯形の1つ又は複数の幾何学的パラメータの決定のために考慮されるべきでない限り、マスキングで除外される、又は選別除外される、又は削除され得る。特に、最大半径は、歯形の先端円の半径よりも小さい場合がある。最小半径は、歯形のルート円の半径よりも大きい場合がある。
【0018】
フィルタリングによる測定点のフランクグループへのグループ分けは、代替的に又は追加的に、次の方法ステップを含んでもよい。すなわち、測定点のプロフィール固有フィルタリングステップであって、フランクグループの複数の測定点、特にフランクグループの全ての測定点が、歯形の所定の基準ジオメトリ(nominal geometry)から所定の距離を超えない最小距離にそれぞれ存在する、フィルタリングステップを含んでもよい。したがって、測定点について、歯溝の所定の基準ジオメトリに対する最小距離が所定の距離よりも大きい限り、その測定点は、マスキングで除外されるか、選別除外されるか、フランクグループに割り当てられないか、削除される。言い換えれば、基準ジオメトリのフランクの周りに帯(band)又は包絡線(envelope)を配置することができ、帯又は包絡線内のすべての測定点は、それぞれのフランクグループに割り当てられる。特に、プロフィール固有フィルタリングにより、例えば、ダスト、浮遊粒子、不純物などの擾乱変数(disturbance variables)に起因する測定点を選別除外したり、隠したり、削除したりすることが可能になる。
【0019】
半径方向フィルタリングとプロフィール固有フィルタリングの両方が実行されることが提供される場合がある。特に、プロフィール固有フィルタリングは、半径方向フィルタリングの後に実行される場合がある。
【0020】
また、プロフィール固有フィルタリングが半径方向フィルタリングの前に実行される場合がある。あるいは、プロフィール固有フィルタリング及び半径方向フィルタリングが少なくとも部分的に同時に実行される場合がある。
【0021】
フィルタリングによる測定点のフランクグループへのグループ分けは、代替的に又は追加的に、次の方法ステップを含んでもよい。すなわち、測定点の運動学的フィルタリング(kinematic filtering)をするステップであって、フランクグループの複数の測定点、特にフランクグループの全ての測定点が、それぞれの測定点の検出時に、測定動作を実行する測定装置の機械軸の加速度の量が所定の閾値よりも小さいという条件を満たす、運動学的フィルタリングステップを含んでもよい。特に、測定の開始時や終了時に、1つ以上の機械軸がより強く加速され、及び/又は、ジャーキングが発生している状態で検出された測定点は、このようにマスキングで除外される、又は選別除外される、又は削除され得る。言い換えれば、測定のランイン及び/又はランアウトをマスキングで除外する、又は選別除外する、又は削除することができる。したがって、特に、各測定点の検出時に、測定動作を行う機械軸の加速度量が所定の閾値よりも大きい測定点が、フランクグループに存在しないことになる。
【0022】
フィルタリングによる測定点のフランクグループへのグループ分けは、代替的に又は追加的に、次の方法ステップを含んでもよい。すなわち、測定点の定性的フィルタリング(qualitative filtering)ステップであって、フランクグループの複数の測定点、特にフランクグループの全ての測定点が、それぞれの測定点の撮像中に、露光時間が所定の露光時間を下回らない、及び/又は輝度(intensity)が所定の輝度を下回らないという条件を満たす、定性的フィルタリングステップを含んでもよい。このようにして、高い信頼性で撮像されなかった測定点はマスキングで除外される、又は選別除外される、又は削除され得る。
【0023】
特に、それぞれの測定点の撮像中に、輝度が所定の平均輝度を下回らないようにする場合がある。
【0024】
露光時間及び輝度は、例えば最も簡単な場合には積又は和又は商として、係数として算出することもでき、これにより、それぞれの測定点の画像の品質を評価することができる。特に、フランクグループの複数の測定点、特にフランクグループの全ての測定点が、それぞれの測定点の撮像中に、係数の所定の最小値を下回らない、又は係数が所定の範囲にあるという条件を満たす場合がある。
【0025】
フィルタリングによる測定点のフランクグループへのグループ分けは、次のテストステップを含む場合がある。すなわち、フランクグループの数が歯形の歯の数の2倍に対応するかどうかをチェックするステップである。フィルタリングが、歯の数の2倍に対応しない数のフランクグループを生成する場合、フィルタリングは調節されるべきである。これは、フィルタリング後、歯形の各歯面に対して、測定点を持つフランクグループがちょうど1つ割り当てられるべきという理由による。フィルタリングによって生成されたフランクグループの数が歯形の歯数の2倍に対応しない限り、フィルタリングを調節し、テストステップを再度実行してもよい。
【0026】
代替的又は追加的に、フィルタリングによる測定点のフランクグループへのグループ分けが、次のテストステップを含む場合がある。すなわち、それぞれのフランクグループの測定点の数が所定の最小数を超えているかどうかをチェックするステップである。特に、後続の、プロフィールセグメントのモデル化ステップは、それぞれのフランクグループに対して十分な数の測定点が存在する場合にのみ、有意義に実行することができる。それぞれのフランクグループの測定点の数が所定の最小数を下回る限り、測定は測定パラメータを変更して繰り返してもよく、測定点の数を再びチェックしてもよい。
【0027】
代替的又は追加的に、フィルタリングによる測定点のフランクグループへのグループ分けが、次のテストステップを含む場合がある。すなわち、それぞれのフランクグループの測定点が所定の分布を有するかどうかをチェックするステップである。したがって、隣接する点がどの程度、互いに最大距離を超えるか、及び/又は、互いに最小距離を下回るかをチェックすることができる。したがって、目的は、可能な限り均質な測定点分布を達成することである。分布が不均一すぎる場合は、測定パラメータを変更して測定を繰り返してもよく、分布を再びチェックしてもよい。
【0028】
前述のテストステップの1つ以上がモデル化前に実施される場合がある。これは、後続のモデル化ステップを改善し得る。
【0029】
方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が次の方法ステップのうちの1つを備え、各フランクグループにプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、少なくとも1つのプロフィールセグメントを高次の数学的非線形関数としてモデル化するステップ、または複数のプロフィールセグメントをそれぞれ高次の数学的非線形関数としてモデル化するステップ、またはすべてのプロフィールセグメントをそれぞれ高次の数学的非線形関数としてモデル化するステップである。
【0030】
したがって、曲線セグメント又はプロフィールセグメントは、等化計算、及び/又は補間計算によって測定点からモデル化することができ、これらの曲線セグメント又はプロフィールセグメントの各々は、高次の数学的非線形関数として記述され得る。
【0031】
本文書において、高次の非線形関数の用語は、具体的には2次関数、多項式関数、べき乗関数などを指す。適切な関数の選択は、歯形がどのタイプであるか、すなわち歯形がインボリュート歯形、サイクロイド歯形、ラックアンドピニオン歯形、又はワイルドハーバーノビコフ歯形のいずれであるかに依存する。
【0032】
本方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントをモデル化するステップは、次の方法ステップによる尤度(plausibility)チェックを有する場合があり、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、左フランクグループのプロフィールセグメントから左平均化補償(left averaged compensation)プロフィールセグメントを作成し、左平均化補償プロフィールセグメントからの左フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントの偏差をチェックするステップである。したがって、左平均化補償プロフィールセグメントは、左フランクグループのすべてのプロフィールセグメントを平均化または重ね合わせることによって形成されてもよい。偏差が所定の閾値を超える場合、フィルタリングの調節及び/又は測定パラメータの調節が実行されてもよい。
【0033】
測定パラメータは、特に、測定動作を行う機械軸の軸位置、軸速度、軸加速度、及び/又は光学式測定装置のパラメータ、例えば露光時間、走査周波数、照明強度、測定角度、焦点径等である。
【0034】
代替的に又は追加的に、方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、次の方法ステップによる尤度チェックを有する場合があり、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、左フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントと、左フランクグループの別のプロフィールセグメントとの偏差をチェックするステップである。偏差が所定の閾値を超える場合、フィルタリングの調節及び/又は測定パラメータの調節が実行されてもよい。
【0035】
代替的に又は追加的に、本方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、次の方法ステップによる尤度チェックを有する場合があり、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、右フランクグループのプロフィールセグメントから右平均化補償プロフィールセグメントを作成し、右平均化補償プロフィールセグメントからの右フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントの偏差をチェックするステップである。したがって、右平均化された補償プロフィールセグメントは、右フランクグループのすべてのプロフィールセグメントを平均化または重ね合わせることによって形成されてもよい。偏差が所定の閾値を超える場合、フィルタリングの調節及び/又は測定パラメータの調節が実行されてもよい。
【0036】
代替的に又は追加的に、方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、次の方法ステップによる尤度チェックを有する場合があり、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、右フランクグループの少なくとも1つのプロフィールセグメントと右フランクグループの別のプロフィールセグメントとの偏差をチェックするステップである。偏差が所定の閾値を超える場合、フィルタリングの調節及び/又は測定パラメータの調節が実行されてもよい。
【0037】
代替的に又は追加的に、方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、次の方法ステップによる尤度チェックを有する場合があり、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、左平均化補償プロフィールセグメントの、所定の基準ジオメトリからの偏差をチェックするステップである。偏差が所定の閾値を超える場合、フィルタリングの調節及び/又は測定パラメータの調節が実行されてもよい。
【0038】
代替的に又は追加的に、方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、次の方法ステップによる尤度チェックを有する場合があり、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、右平均化補償プロフィールセグメントの、所定の基準ジオメトリからの偏差をチェックするステップである。偏差が所定の閾値を超える場合、フィルタリングの調節及び/又は測定パラメータの調節が実行されてもよい。
【0039】
代替的に又は追加的に、方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、次の方法ステップによる尤度チェックを有する場合があり、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、所定の基準ジオメトリからの、及び/又は補償形状からの少なくとも1つのプロフィールセグメントの偏差をチェックするステップであり、補償形状はフランクグループのプロフィールセグメントから決定される。例えば、補償形状は、最小二乗法を使用してフランクグループのプロフィールセグメントから決定されたものであってよい。偏差が所定の閾値を超える場合、フィルタリングの調節及び/又は測定パラメータの調節が実行されてもよい。
【0040】
代替的に又は追加的に、方法の一実施形態によれば、フランクグループの測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、次の方法ステップによる尤度チェックを有し、ここで各フランクグループにはプロフィールセグメントが割り当てられる。すなわち、第1の測定の歯形の歯の第1のプロフィールセグメントと、第2の測定の同じ歯形の第2のプロフィールセグメントとの偏差をチェックするステップである。すなわち、1つまたは複数の歯が2回、または1回より多く測定またはモデル化される限り、モデルが閉じているかどうか、すなわちモデルをそれ自体に繰り返しマッピングできるかどうかをチェックしてもよい。
【0041】
方法の一実施形態によれば、少なくとも1つのフランクグループ、複数のフランクグループ又は全てのフランクグループの三次元測定点が、特にプロフィールセグメントが作成される前に、二次元平面に投影され、測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が、特に二次元プロフィールセグメントとして二次元平面内で実行される場合がある。
【0042】
「三次元測定点」に言及する場合、これは、3つの空間座標値がそれぞれの測定点に割り当てられることを意味し、例えば直交座標系x-y-zにおけるx値、y値及びz値である。二次元平面への投影の手段により、これらの値の1つがすべての測定値について等しくなり、したがってすべての測定値について同じ値を持つ。投影のために、歯形の既知の基準ジオメトリ、例えば螺旋角などを考慮することができ、投影平面が例えばプロフィール部または面部に対応するように、及び/または測定点が基準ジオメトリの割り当てられたフランクラインに沿って投影されるようにする。
【0043】
代替的に、フランクグループの三次元プロフィールセグメント、複数のフランクグループの三次元プロフィールセグメント、またはすべてのフランクグループの三次元プロフィールセグメントが二次元平面に投影される場合がある。
【0044】
歯ピッチが歯形の1つ以上の幾何学的パラメータの1つであり、歯ピッチがピッチ測定回路上で決定される場合もあり、及び/又はピッチ偏差が、ピッチ単一偏差、ピッチ総偏差、ピッチジャンプ等の歯形の1つ以上の幾何学的パラメータの1つである場合がある。
【0045】
測定点が記録されている間、部品が光学式測定システムに対して相対的に移動される場合がある。特に、部品は、軸を中心に回転させることができる。特に、光学式測定システムが静止している間、及び/又は1つ以上の直線軸によって変位している間、部品は軸を中心に回転させることができる。
【0046】
測定点の検出の間、光学式測定システムに対して部品が連続的に移動される場合がある。特に、光学式測定システムが静止している間、及び/又は1つ以上の直線軸によって変位させられている間、部品は軸を中心に連続的に回転されてもよい。
【0047】
光学式測定システムの焦点直径が50ミクロン以下、特に20ミクロン以下である場合がある。
【0048】
光学式測定システムは、光学的距離測定のために設定されたポイントセンサを有してもよい。特に、個々の測定点は、ポイントセンサによって次々と測定することができる。個々の測定点は、ポイントセンサによって、さらなる測定点から独立して別個に記録することができる。すなわち、ポイントセンサによって、特に、さらなる測定点を取得することなく、単一の測定点を取得することが可能であり得る。各個別の測定点には、3つの空間座標値、すなわち、例えば直交座標系x-y-zにおけるx値、y値、z値を割り当てることが可能である。
【0049】
光学的距離測定用のポイントセンサが深さ方向の分解能を有する場合がある。
【0050】
例えば、光軸に沿った深さ測定範囲においてポイントセンサの光軸に沿って見ると、深さ、すなわち光軸に沿った光学的にプローブされた表面又は歯面の間の距離は、所定の座標系、例えば所定の座標系の原点又はレンズ等の位置等の別の幾何学的基準点への距離、で測定することができる。距離測定が光軸に沿って一次元的に行われ、三次元的な測定値が光学式測定システムの位置に基づいて計算されるという場合もあり得る。
【0051】
すなわち、ポイントセンサの光軸に沿って見ると、数センチメートル又は数ミリメートルの深さ測定範囲において、又は1ミリメートル未満の深さ測定範囲において、光学的にプローブされた表面又は歯面の間の距離を、特定の座標系、例えば所望の1座標系の原点への距離又はレンズ等の位置等の別の幾何学的基準点への距離、の光軸に沿って測定することが可能である。ポイントセンサからの距離情報を使用して、光学ポイントセンサを搭載した座標測定機の軸位置に関する情報を備えて、特に三次元の測定点を生成することができる。距離測定は光軸に沿った一次元的な測定であってもよく、三次元座標は光学式測定器の位置に基づいて計算される。
【0052】
ポイントセンサは、次の測定原理のうちの1つに従って動作し得る。すなわち、レーザー三角測量、共焦点距離測定または共焦点-色彩(confocal-chromatic)距離測定、干渉距離測定、倍周波コウム分光法(comb spectroscopy)または同様の原理である。
【0053】
光学式測定システムが、光学的距離測定のための単一ポイントセンサを有する場合がある。
【0054】
光学式測定システムが、光学的距離測定のために2つ以上のポイントセンサを有する場合がある。
【0055】
ポイントセンサが、線に沿って並ぶ、または行と列に格子状に配置される場合がある。1つ又は複数のポイントセンサが、以下に列挙する測定原理の1つに従って動作する場合がある。すなわち、レーザー三角測量、共焦点又は共焦点-色彩距離測定、干渉距離測定、倍周波コウム分光法又は同様の原理である。したがって、各ポイントセンサは、特に、光学的距離測定のために上述した方法で設定され、特に、光軸に沿った深さ分解能を有する。ポイントセンサは、同時に測定値を記録することができる。
【0056】
特に、光学式測定システムは、カメラを有していない。特に、光学式測定システムは、二次元撮像のためのカメラを有していない。
【0057】
特に、画像または画素解析または画像処理によって測定点を作成するために、カメラが使用されない場合がある。特に、画像又は画素解析又は画像処理による測定点の取得のために、二次元撮像用のカメラは使用されない。
【0058】
測定点は、特に、歯システムのそれぞれの歯面において、それぞれの歯面のエッジ領域からある距離を置いて記録される。
【0059】
光学式測定システムの光軸が、歯面上の測定点の取得中に歯面との角度を90°に等しくない角度で囲む場合がある。言い換えれば、測定点を起点とする歯面の法線が光軸と平行に配向しない場合がある。
【0060】
歯幅、すなわち歯筋(tooth trace)の方向に沿って、それぞれの歯面に複数の測定点が記録される場合がある。歯幅に沿って、すなわち歯筋の方向に、いくつかの測定点が、それぞれの歯フランク上の個々の測定点として記録され、歯筋の方向の第1の個々の測定点が、歯筋の方向の第2の個々の測定点の前に記録される場合がある。
【0061】
歯面という用語とフランクという用語は、ここでは同義的に使用される。
【0062】
プロフィールセグメントに基づく歯形の1つ以上の幾何学的パラメータの決定が、触覚式測定の評価に類似して行われ、及び/又は触覚式測定を評価するための評価ソフトウェアで行われる場合がある。したがって、フィルタリング及びモデル化は、特に、触覚式測定用に最適化された評価アルゴリズムを、光学式測定の結果に対して適用することを可能にする。
【0063】
第2の態様によれば、本発明は、測定装置を有し、測定装置が光学式測定システムを含み、部品を保持するためのホルダを有し、本発明による方法を実施するために適合された制御および評価ユニットを有する装置に関する。
【0064】
測定装置は、座標測定装置とすることができる。座標測定装置は、測定前及び/又は測定中及び/又は測定後に、測定される部品と光学式測定装置との間の相対移動を実施するために、数値的に制御された軸を有することができる。
【0065】
座標測定装置は、測定中に測定される部品をそれ自身の軸を中心に回転させるために、回転軸を有することができる。
【0066】
座標測定装置は、測定される部品に対して光学式測定システムを移動させるために、少なくとも1つの直線軸、2つ以上の直線軸、3つ以上の直線軸、又はちょうど3つの直線軸を有することができる。
【0067】
光学的測定システムに加えて、座標測定装置は、測定用プローブで部品に触れて触覚式に測定するために、触覚式測定システムを有することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
本発明は、例示的な実施形態を示す図面を参照しながら、以下により詳細に説明される。図面は、各場合において、模式的に示される。
【0069】
【
図3E】
図3Eは、
図3Dの光学式測定の測定点のプロフィール固有フィルタリング前の模式図である。
【
図3F】
図3Fは、プロフィール固有フィルタリングの
図3Dの光学式測定の2つのフランクグループの測定点の模式図である。
【
図3G】
図3Gは、基準ジオメトリを有する2つのフランクグループのモデル化されたプロフィールセグメントの模式図である。
【
図3H】
図3Hは、モデル化されたプロフィールセグメントの概要図である。
【
図3I】
図3Iは、基準ジオメトリおよび補償形状を備えたモデル化されたプロフィールセグメントの概要図である。
【
図3J】
図3Jは、半径方向フィルタリング後、およびプロフィール固有フィルタリング後の
図3Dの光学式測定のフランクグループの測定点の概要図である。
【
図4A】
図4Aは、左プロフィールセグメントの、左平均化補償プロフィールセグメントに対する偏差の模式図である。
【
図4B】
図4Bは、右プロフィールセグメントの、右平均化補償プロフィールセグメントに対する偏差の模式図である。
【
図4C】
図4Cは、左プロフィールセグメントの、別の左プロフィールセグメントに対する偏差の模式図である。
【
図4D】
図4Dは、右プロフィールセグメントの、別の右プロフィールセグメントに対する偏差の模式図である。
【
図4E】
図4Eは、左平均化補償プロフィールセグメントの、基準ジオメトリからの偏差の模式図である。
【
図4F】
図4Fは、右平均化補償プロフィールセグメントの、基準ジオメトリからの偏差の模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に係る方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図2Aは、歯形4を有する部品2を示している。部品2は、インボリュート歯形4を有するヘリカル平歯車(helical spur gear)2である。歯形4の歯ピッチは、ヘリカルギア2において測定される。この目的のために、左フランク10のフランクライン部8と右フランク14のフランクライン12が、歯形4の各歯6上で測定される。例示的に、隣接する2つの歯6の左フランク10上のフランクライン部8と右フランク14上のフランクライン部12とが示されている。
【0071】
平歯車4は、光学式測定システム18を有する測定装置16によって測定される(ステップ(I))。測定中、平歯車2は、特に直交座標系x-y-zのz軸に平行に整列させることができるそれ自身の軸を中心に連続的に回転する。他の直交座標系または極座標系も使用できることは明らかである。
【0072】
z軸を中心とする回転に加えて、z方向に直線的な相対移動が起こり、その結果、破線で示された測定経路が生じ、この経路は、測定すべき全ての歯6のフランクライン部8、12をカバーする。これにより、光学式測定システム18は、各歯の歯先、歯面及び歯ルートを含む完全な歯形プロフィールを測定する。
【0073】
したがって、複数の測定点20が取得され、ここで、測定点20は、横断面としてみた
図3Aに示されている。
図3Bは、横断面における歯の測定点20の拡大図であり、歯形4の所定の基準ジオメトリ22の断面がプロフィール線22の形態で示されている。複数の測定点20の個々の測定点24は、x値、y値およびz値、すなわち直交座標系x-y-zに従った空間におけるその位置によって定義されている。
【0074】
次のステップでは、測定点20をフィルタリングによりフランクグループ26にグループ分けする(ステップ(II))。
【0075】
図3C及び3Dは、測定点20の半径方向フィルタリングを示し、フランクグループ26の全ての測定点20は、最小半径を有する所定の円R
MINと最大半径を有する所定の円R
MAXとの間に配置される。円R
MINの半径は、歯形4のルート円FKの半径よりも大きい。また、円R
MAXの半径は、歯形4の先端円KKの半径よりも小さい。さらに、ピッチ円TKが描かれている。
【0076】
測定点に
図3Cに示す半径方向フィルタリングを適用すると、R
MINとR
MAXで囲まれたフィルタ帯域外の測定点はすべて選別除外される、又はマスキングで除外される、又は削除され得る。半径方向フィルタリング後に残った測定点20が、
図3Dに示されている。より明確にするために、R
MINとR
MAXの間に位置しない基準プロフィール22のそれらの領域もまたマスキングで除外される。
【0077】
この半径方向フィルタリングは、連続(contiguous)測定部26とも呼ばれ得るフランクグループ26の数を既に定義している。半径方向フィルタリングの結果は、
図3Jにさらに示されており、この図には、歯形4のすべての歯6に対するフランクグループ26が示されており、ここでは、2つのフランクグループ26のみに参照符号が付与されている。
【0078】
次に、フランクグループ26の数が歯形4の歯の数の2倍に相当するかどうかがチェックされ、ここでの歯の数は18に等しい(ステップ(III))。本実施例では、36個のフランクグループが生成されているので、フランクグループ26の数は歯数の2倍に相当することがチェックにより判明する。したがって、半径方向フィルタリングのチェックは合格であり、半径方向フィルタリングを調節する必要はない。したがって、歯形の個々の左フランクおよび個々の右フランクは、それぞれ1つのフランクグループ26および1つの連続測定部26に関連する。
【0079】
さらに、それぞれのフランクグループのそれぞれが十分な数の測定点を有し、それぞれのフランクグループのこれらの測定点が十分に均等に分布しているかどうかをチェックする(ステップ(III))。
【0080】
次のステップでは、プロフィール固有フィルタリングが実行され、それぞれのフランクグループ26のすべての測定点20が、歯形4の所定の基準ジオメトリ22に対して、所定の距離を超えないそれぞれの最小距離を有している。これは、
図3E及び
図3Fを参照して後述するように、フランクグループ26の各々が再びフィルタリングされることを意味する(ステップ(IV))。
【0081】
図3E及び
図3Fに従って、各フランクグループ26について、線P+及びP-によって囲まれた帯域内に存在しないそれらの測定点20が選別除外されるかマスキング除外されるか削除され、ここでP+及びP-は目標プロフィールの実質的にオフセットしたプロフィール線である。
図3Fは、プロフィール固有フィルタリングを適用した後のフランクグループ26を示す。
【0082】
さらに、測定点20の運動学的フィルタリングが行われ、フランクグループ26の全ての測定点20が、それぞれの測定点20の検出時に、測定動作を行う測定装置16の機械軸Aの加速度の量が所定の閾値よりも小さいという条件を満たし、機械軸Aは回転を行うスピンドル軸Aであり、スピンドル軸Aはz軸に沿って延びて部品2を搭載する(ステップ(IV))。
【0083】
加えて、測定点20の定性的フィルタリングを行い、フランクグループ26の全ての測定点20が、それぞれの測定点24の撮像中に所定の露光時間及び/又は所定の輝度を下回らないという条件を満足する(ステップ(IV))。
【0084】
次に、各フランクグループ26について、プロフィールセグメント28、30が高次の数学的非線形関数としてそれぞれの場合にモデル化され、左フランク10のプロフィールセグメントはプロフィールセグメント28として指名され、右フランク14のプロフィールセグメントはプロフィールセグメント30として指名される(
図3G、
図3H)。上記の方法で、プロフィールセグメント28、30は、測定された歯面を表すために、各高さzについて作成され得る(ステップ(V))。
【0085】
代替的に又は追加的に、全てのフランクグループの三次元的に定義された測定点が、フィルタリングの前に二次元平面に投影され、二次元平面における測定点からのプロフィールセグメントのモデル化が二次元プロフィールセグメントとして行われる場合がある。計測点をフランクラインに沿って二次元平面に投影することで、触覚式測定に応じた平均化を行うことができる。
【0086】
プロフィールセグメント28、30に基づく歯形の1つ以上の幾何学的パラメータの決定は、触覚式測定の評価に類似して実施することができ、特に、フランクライン8、12及び歯形の他の幾何学的パラメータに基づいて歯ピッチを決定するために触覚式測定を評価するための評価ソフトウェアによって実施することができる(ステップ(vi))。
【0087】
代替的または追加的に、フランクライン8、12それぞれは、前述の方法を用いたフィルタリングとモデル化によって直接生成することができる。
【0088】
歯形の幾何学的パラメータの評価及び決定の前に、以下の方法ステップの1つ以上を使用して、モデル化されたプロフィールセグメントの尤度チェックを実行することができる。
【0089】
左フランクグループ26のプロフィールセグメント28から左平均化補償プロフィールセグメント280を作成し、左フランクグループ26の少なくとも1つのプロフィールセグメント28の左平均化補償プロフィールセグメント280からの偏差をチェックするステップ(
図4A)。
【0090】
右フランクグループ26のプロフィールセグメント30から右平均化補償プロフィールセグメント300を作成し、右フランクグループ26の少なくとも1つのプロフィールセグメント30の右平均化補償プロフィールセグメント300からの偏差をチェックするステップ(
図4B)。
【0091】
左フランクグループ26の少なくとも1つのプロフィールセグメント28の、左フランクグループ26の別のプロフィールセグメント28からの偏差をチェックするステップ(
図4C)。
【0092】
右フランクグループ26の少なくとも1つのプロフィールセグメント30と、右フランクグループ26の別のプロフィールセグメント30からの偏差をチェックするステップ(
図4D)。
【0093】
左平均化補償プロフィールセグメント280の所定の基準ジオメトリからの偏差をチェックし、右平均化補償プロフィールセグメント300の所定の基準ジオメトリからの偏差をチェックするステップ(
図4E;
図4F)。
【0094】
少なくとも1つのプロフィールセグメント28、30の、所定の基準ジオメトリ22からの、及び/又は補償形状400からの偏差をチェックするステップであって、ここで補償形状400は、フランクグループ26のプロフィールセグメント28、20から決定されている(
図3I)。
図3Iの模式的表示では、基準ジオメトリ22と補償形状400は一致するように描かれているが、実際には正確に一致するわけではない。
【符号の説明】
【0095】
2 部品
4 歯形
6 歯
8 フランクライン部
10 左フランク
12 フランクライン部
14 右フランク
16 測定装置
18 光学式測定システム
20 測定点
22 基準ジオメトリ
24 測定点
26 フランクグループ
28 プロフィールセグメント
30 プロフィールセグメント
280 左平均化補償プロフィールセグメント
300 右平均化補償プロフィールセグメント
400 補償形状
A 機械軸
P 表面プロフィール
FS 集光ビーム
K センシングボール
dFS 集光ビームの焦点直径
dK センシングボールの直径
TK ピッチ円
FK ルート円
KK 先端円
RMIN 半径方向フィルタリングの最小半径を有する円
RMAX 半径方向フィルタリングの最大半径を有する円
P+ プロフィール固有フィルタリングの第一の限界
P- プロフィール固有フィルタリングの第二の限界
x x軸
y y軸
z z軸
【外国語明細書】