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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094377
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】注射器及び管理装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/30 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
A61M5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207207
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000103493
【氏名又は名称】オータックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230100022
【弁護士】
【氏名又は名称】山田 勝重
(74)【代理人】
【識別番号】100084319
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 智重
(74)【代理人】
【識別番号】100120204
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 巌
(72)【発明者】
【氏名】本橋 宣太郎
(72)【発明者】
【氏名】李 承志
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066FF02
4C066QQ32
4C066QQ48
4C066QQ54
4C066QQ72
4C066QQ78
4C066QQ82
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡便な操作により注射量の計測を可能とし、注入する注射薬の注射量、注射時間を管理可能とする。
【解決手段】注入シリンダは、軸線の方向の先端部側が注射筒部の薬液充填空間内に液密状態で配置され、後端部側が内部空間内に気密状態で配置され、かつ、後端面は、所定位置で固定された押圧シリンダの先端面に当接するように配置され、さらに、軸線の方向に沿って移動可能とされ、ギア部の回転操作によって、ストッパを、対象者への薬液の注射量に対応した位置に配置させるとともに、この回転操作に係る回転情報を検知部が検知し、解除部を操作することで、所定位置で固定されていた押圧シリンダの固定状態を解除することにより、弾性部材の弾性力にしたがって、押圧シリンダを、ストッパに当接するまで先端部側へ変位させることにより、注入シリンダを注射筒部の先端側へ変位させることで、注射筒部内に充填された薬液を対象者へ注入する
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する略円筒状の本体部と、
中心軸が前記本体部の中心軸の軸線に載るように、前記本体部内に配置された押圧シリンダと、
前記本体部の前記軸線の方向の先端部に設けられ、薬液充填空間を備える注射筒部と、
前記本体部内に設けられ、前記押圧シリンダを、前記軸線の方向において前記先端部側へ付勢する弾性部材と、
前記押圧シリンダを、前記本体部の前記軸線の方向の後端部の所定位置で解除可能に固定する押圧シリンダ固定機構と、
前記押圧シリンダ固定機構による固定状態を解除する解除部と、
前記本体部に対して前記軸線を中心として相対回転可能に設けられたギア部と、
前記本体部内に設けられ、前記ギア部の回転によって前記軸線に沿って移動可能とされ、前記内部空間内における、前記押圧シリンダの変位の範囲を規制するストッパと、
前記ギア部の回転角度及び回転方向を含む回転情報を検知する検知部と、
注入シリンダと、
を備える注射器であって、
前記注入シリンダは、前記軸線の方向の先端部側が前記注射筒部の前記薬液充填空間内に液密状態で配置され、後端部側が前記内部空間内に気密状態で配置され、かつ、後端面は、前記所定位置で固定された前記押圧シリンダの先端面に当接するように配置され、さらに、前記軸線の方向に沿って移動可能とされ、
前記ギア部の回転操作によって、前記ストッパを、対象者への薬液の注射量に対応した位置に配置させるとともに、この回転操作に係る前記回転情報を前記検知部が検知し、
前記解除部を操作することで、前記所定位置で固定されていた前記押圧シリンダの固定状態を解除することにより、前記弾性部材の弾性力にしたがって、前記押圧シリンダを、前記ストッパに当接するまで前記注射器の先端部側へ変位させることにより、前記注入シリンダを前記注射筒部の先端側へ変位させることで、前記注射筒部内に充填された前記薬液を前記対象者へ注入することを特徴とする注射器。
【請求項2】
前記ギア部は、その回転とともに、前記軸線を中心として回転する円環状の磁気部を備え、
前記検知部は、前記磁気部の回転による磁界分布の変化に基づいて、前記ギア部の前記回転情報を検知する請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記対象者に対して注入する前記薬液の量に応じて前記ストッパの位置が設定される請求項1又は請求項2に記載の注射器。
【請求項4】
外部機器との間で信号の送受信を可能とする通信部を備え、
前記通信部は、前記解除部が操作されたときに、前記検知部が検知した前記回転角度を前記外部機器へ送信する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の注射器。
【請求項5】
請求項4に記載の注射器に対して相互に通信可能とする通信部と、
前記回転角度に基づいて、前記対象者へ注入された前記薬液の量を算出する演算部と、
前記対象者に対する前記薬液の注射に関する注射情報を記憶するとともに、前記演算部が算出した前記薬液の量を時刻情報に紐付けて記憶する記憶部と、
前記注射情報、並びに、前記演算部が算出した前記薬液の量、及び、これに紐付いた前記時刻情報に基づいて、次回の注射時刻及びこの注射の際の前記薬液の量を管理する管理部と、を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項6】
前記管理装置は、前記通信部、前記演算部、前記記憶部、及び、前記管理部にそれぞれ対応する機能を有する携帯情報端末で構成される請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記次回の注射時刻を通知する警告部を備える請求項5又は請求項6に記載の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者に対して薬液を注入するための針なしの注射器、及び、この注射器を用いた注射の管理を行う管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者においては、インスリン等の薬液を特殊な注射器により自己注射し、患者が血糖値をセルフコントロールする糖尿病療法が実施されている。この療法が採用される注射器には下記特許文献1に示すもののほか、従来から様々なタイプのものが存在し、多くのものは注射針が極めて細く、また注射薬に関してもバイタルと呼ばれる容器(5ml、10ml入り等)に収容されたものを処方箋に基づき患者が購入・保管(冷蔵庫に保存)し、注射時に患者が該バイタルに収容された注射薬を注射器に充填し、注射針を皮下に穿刺して自己注射する方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糖尿病患者によるインスリン等の自己注射に関しては、例えば公益社団法人日本糖尿病協会が注射方法のガイドを策定し、患者は購入した注射器により、医師が処方した注射薬を注射の度に注射器に充填し、こうしたガイドに基づき自己注射する方法が採られている。
【0005】
このように患者によりインスリン等の自己注射が行われる場合において、患者は必要な時間帯において自らの血糖値を計測し、一日のうち、どの時間帯にどの程度の量の注射薬(インスリン等)の注射を行うかについて自ら判断するようにしている。例えば食前・食後において血糖値を計測し、バイタル容器(5ml、10ml入り等)より注射器に充填された注射薬を必要な時間において必要な量、何回かに分けて注射し、血糖値を自らコントロールする療法が採られていた。ただ、こうした自己において注射薬の注射時間、注射量を都度記録することは非常に面倒なものとされている。
【0006】
そこで本発明は、簡便な操作により注射薬(薬液)の注射量を計測することを可能とし、該注射によって注入する注射薬の注射量、注射時間を管理可能とする注射器及び該注射器により注射する注射薬の管理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の注射器は、内部空間を有する略円筒状の本体部と、中心軸が本体部の中心軸の軸線に載るように、本体部内に配置された押圧シリンダと、本体部の軸線の方向の先端部に設けられ、薬液充填空間を備える注射筒部と、本体部内に設けられ、押圧シリンダを、軸線の方向において先端部側へ付勢する弾性部材と、押圧シリンダを、本体部の軸線の方向の後端部の所定位置で解除可能に固定する押圧シリンダ固定機構と、押圧シリンダ固定機構による固定状態を解除する解除部と、本体部に対して軸線を中心として相対回転可能に設けられたギア部と、本体部内に設けられ、ギア部の回転によって軸線に沿って移動可能とされ、内部空間内における、押圧シリンダの変位の範囲を規制するストッパと、ギア部の回転角度及び回転方向を含む回転情報を検知する検知部と、注入シリンダと、を備え、注入シリンダは、軸線の方向の先端部側が注射筒部の薬液充填空間内に液密状態で配置され、後端部側が内部空間内に気密状態で配置され、かつ、後端面は、所定位置で固定された押圧シリンダの先端面に当接するように配置され、さらに、軸線の方向に沿って移動可能とされ、ギア部の回転操作によって、ストッパを、対象者への薬液の注射量に対応した位置に配置させるとともに、この回転操作に係る回転情報を検知部が検知し、解除部を操作することで、所定位置で固定されていた押圧シリンダの固定状態を解除することにより、弾性部材の弾性力にしたがって、押圧シリンダを、ストッパに当接するまで先端部側へ変位させることにより、注入シリンダを注射筒部の先端側へ変位させることで、注射筒部内に充填された薬液を対象者へ注入することを特徴としている。
【0008】
本発明の注射器において、ギア部は、その回転とともに、軸線を中心として回転する円環状の磁気部を備え、検知部は、磁気部の回転による磁界分布の変化に基づいて、ギア部の回転情報を検知することが好ましい。
【0009】
本発明の注射器において、対象者に対して注入する薬液の量に応じてストッパの位置が設定されることが好ましい。
【0010】
本発明の注射器において、外部機器との間で信号の送受信を可能とする通信部を備え、通信部は、解除部が操作されたときに、検知部が検知した回転角度を外部機器へ送信することが好ましい。
【0011】
本発明の管理装置は、上述の注射器に対して相互に通信可能とする通信部と、回転角度に基づいて、対象者へ注入された薬液の量を算出する演算部と、対象者に対する薬液の注射に関する注射情報を記憶するとともに、演算部が算出した薬液の量を時刻情報に紐付けて記憶する記憶部と、注射情報、並びに、演算部が算出した薬液の量、及び、これに紐付いた時刻情報に基づいて、次回の注射時刻及びこの注射の際の薬液の量を管理する管理部とを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明の管理装置は、通信部、演算部、記憶部、及び、管理部にそれぞれ対応する機能を有する携帯情報端末で構成されることが好ましい。
【0013】
本発明の管理装置において、次回の注射時刻を通知する警告部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、簡便な操作により薬液(注射薬)の注射量を計測することを可能とした注射器、及び、該注射によって対象者へ注入する薬液の注射量や注射時間を管理可能とした管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る注射器の構成を示す斜視図である。
図2】(a)、(b)、(c)は、図1の注射器の軸方向に沿った断面図である。
図3】(a)は図2(c)の後端部の拡大図、(b)は(a)の3B-3B’線における断面図である。
図4】(a)、(b)は、図1の注射器の軸方向に沿った断面図である。
図5】(a)は注入シリンダ、注射筒部、アダプタ、及び、薬液容器の関係を示す斜視図、(b)はアダプタを介して注入シリンダ及び注射筒部と、薬液容器と、を互いに連結した状態を示す断面図、(c)は(b)の状態から、注入シリンダ100を移動させて注射筒部内へ薬液を充填する状態を示す断面図である。
図6】(a)は先端部にアダプタが連結された状態の、注入シリンダ及び注射筒部を、注射器の本体内へ押入する前の状態を示す断面図、(b)は(a)の状態から注入シリンダの後端部側を注射器の内部空間に押入した状態を示す断面図、(c)は(b)の状態からアダプタを外した状態を示す断面図である。
図7】(a)は図6(c)の一部拡大図、(b)は(a)の状態からストッパを後端部側に引き上げた状態を示す断面図である。
図8】(a)は図7(b)の一部拡大斜視図、(b)は、注射器のグリップ部付近の外観構成を示す斜視図である。
図9】(a)は図1に示す注射器の後端部の外観構成を示す斜視図、(b)は(a)の後端部の軸線の方向に沿った断面図である。
図10】ギア部近傍の内部空間内の構成を示す断面図である。
図11】(a)は図6(c)の状態に対応する、軸線の方向に沿った断面図、(b)は(a)の状態から解除ボタン(解除部)を操作して注射を行った状態を示す断面図である。
図12】(a)、(b)、(c)、(d)は図11(b)に示す注射の次の注射の工程を示す、軸線の方向に沿った断面図である。
図13】注射器を含む管理装置の機能ブロック図である。
図14】注射器及び管理装置を用いた注射の流れを示すフローチャートである。
図15図14に続く流れを示すフローチャートである。
図16図15に続く流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る注射器及び管理装置について図面を参照しつつ詳しく説明する。
本実施形態に係る注射器10は、図1又は図2(a)、(b)、(c)に示すように、本体部20と、押圧シリンダ30と、グリップ部40と、弾性部材としてのコイルばね50と、押圧シリンダ固定機構60と、解除部としての解除ボタン70と、ギア部80と、ストッパ90と、注入シリンダ100と、注射筒部110と、を備える。図13に示すように、注射器10は、さらに、検知部120と、通信部130とを備える。
【0017】
ここで、図2(a)、(b)、(c)及び図4(a)、(b)は、注入シリンダ100を内部空間21内へ押入する前の状態を示している。図2においては、(a)の初期状態から、グリップ部40を、中心軸の軸線AXの周りに、D2側からD1側を見て反時計回りに回すことによって、押圧シリンダ30を後端側(D2側)へ引き上げていく過程を示しており、(c)では押圧シリンダ固定機構60によって、押圧シリンダ30の後端部のシリンダストッパ32が所定位置P1(図3(a)参照)に固定されている。図4においては、図2(c)に対応する状態から、グリップ部40を、中心軸の軸線AXの周りに、D2側からD1側を見て時計回りに回すことによって、押圧シリンダ30を先端側(D1側)へ下げた状態を示している。
【0018】
また、図12(a)、(b)、(c)、(d)は、図11(a)、(b)に示す注射の次の注射の工程を示す断面図であって、注射筒部110に残った薬液を注射する工程を示す。図12(a)では、前回の注射(図11(b))終了時の状態に対して、押圧シリンダ30を後端部12側(D2側)へ引き上げ、押圧シリンダ固定機構60に固定している。図12(b)から(c)では、ギア部80の回転によってストッパ90を薬液射出量に対応した位置まで下げている。そして、図12(c)は、解除ボタン70を操作することによって、対象となる部位Tに薬液を注射する状態を示している。
【0019】
図13に示すように、注射器10は、外部機器である管理装置140に対して相互に通信可能に構成され、管理装置140は、通信部141と、管理部142と、演算部143と、記憶部144と、表示部145と、入力部146と、警告部147とを備える。
【0020】
<注射器10>
注射器10を構成する部材は、滅菌が容易であり、抗菌性が高い材料で構成することが好ましい。また、注入シリンダ100及び注射筒部110は、薬液に対する耐久性を有する材料で構成され、さらに、使い捨て可能な材料で構成すると衛生上好ましい。さらにまた、注射器10は、全体として携帯性を有した軽量の材料で構成することが好ましい。
【0021】
図2に示すように、本体部20は、その中心軸の軸線AXに沿って延びる内部空間21を有する略円筒状を有している。ここで、以下の説明において、図1図2に示す、軸線AXの方向に沿ったD1方向の向き(図2(a)、(b)、(c)における下向き)を先端部11側、D2方向の向き(図2(a)、(b)、(c)における上向き)を後端部12側と称する。
【0022】
本体部20内には軸線AXの方向に沿って移動可能に筒状の押圧シリンダ30が配置されている。押圧シリンダ30は、その中心軸が本体部20の軸線AXに載るように配置されている。押圧シリンダ30の先端部31は、軸線AXの位置を中心とする円板状とされており、その先端面33は、内部空間21内に露出している。
【0023】
押圧シリンダ30の後端部側の所定位置には、軸線AXの位置から径方向に広がるフランジ状のシリンダストッパ32が設けられている。図3(a)に示すように、シリンダストッパ32の外縁には、径方向外側へ突出する突起部32aが設けられている。
【0024】
図1図2(a)、(b)、(c)に示すように、本体部20の後端部(D2側の端部)にはグリップ部40が設けられている。グリップ部40は、中心軸が軸線AXに沿って延びる中空円筒状をなしている。図4(a)、(b)に示すように、グリップ部40は、軸線AXを中心として回転可能とされた外筒部41と、外筒部41の内周面に沿って配置された内筒部42とを備える。内筒部42の外周面には、外筒部41の内周面に形成されたらせん溝部(不図示)と噛み合うらせん溝部(不図示)が形成されている。このため、外筒部D1方向)又は後端側へ(D2方向)へ内筒部42が移動する。
【0025】
内筒部42の内周面は、本体部20の内部空間21に連なる収容空間43を形成しており、この収容空間43内に押圧シリンダ30の後端部側が収容されている。
【0026】
収容空間43には、弾性部材としてのコイルばね50が収容されている。このコイルばね50は、押圧シリンダ30の外周面の周りに巻回されており、先端は押圧シリンダ30の先端部31に固定され、後端は内筒部42の後端側の内面に固定されている。
【0027】
押圧シリンダ30の先端側は内筒部42から延出しており、その延出量はコイルばね50の伸縮により変化する。一方、押圧シリンダ30の先端部31は、収容空間43の内径よりも大きな外径を有するため、内筒部42に対して押圧シリンダ30が相対的に後端部12側へ移動した場合において、先端部31が内筒部42に当接することにより押圧シリンダ30の相対的移動は規制される。よって、先端部31は、コイルばね50の伸縮状態に関わらず常に内筒部42の外側に位置する。このような構成により、コイルばね50は、押圧シリンダ30を、軸線AXの方向において先端部11側へ付勢することができる。
【0028】
図1図2(a)、(b)、(c)に示すように、グリップ部40の後端部には押圧シリンダ固定機構60が設けられている。図3(a)、(b)に示すように、押圧シリンダ固定機構60は、中空で略円筒状の筒状体61内に4つのスライドストッパ62が設けられた構成を有する。4つのスライドストッパ62は、筒状体61の内周面に対して、軸線AXに関して等角度間隔で設けられている。4つのスライドストッパ62は、筒状体61の内周面に固定された4つの押圧ばね63を介して、それぞれ配置されているため、筒状体61の内側へ、すなわち軸線AXへ近づく方向へそれぞれ付勢される。
【0029】
図3(b)に示すように、筒状体61には、軸線AXに沿った平面視において、4つのスライドストッパ62によって囲まれる略円形の空間64が形成されており、この空間64内に、解除部としての解除ボタン70の先端部71が挿入されている。解除ボタン70は、先端部71が先細の円柱状をなしており、筒状体61に対して、支持ばね72を介して設けられている。このため、解除ボタン70の後端面である操作面73は、支持ばね72の弾性力によって筒状体61の後端面から延出している(図9参照)。これに対し、支持ばね72の弾性力に抗して、操作面73を先端側(D1側)へ押すことにより、解除ボタン70を筒状体61の内側へ押し下げることができる。解除ボタン70の先端部71は、操作面73に近づくほど外径が大きくなる形状を有しているため、解除ボタン70を押し下げると、先端部71の傾斜形状にしたがって、4つのスライドストッパ62が、軸線AXに対する径方向に沿って押し広げられる。
【0030】
4つのスライドストッパ62は、押圧シリンダ30をD2方向に沿って上昇させることによっても、軸線AXに対する径方向に沿って押し広げられる。すなわち、まず、押圧シリンダ30を上昇させると、シリンダストッパ32の突起部32aが4つのスライドストッパ62に当接する。ここからさらに押圧シリンダ30を上昇させると、突起部32aが、解除ボタン70側(後端部12側、D2方向)に行くほど外径が小さくなるような傾斜面を有することにより、スライドストッパ62が押し広げられる。
【0031】
スライドストッパ62の内周面には、径方向外側へ凹むように形成された溝部62aが設けられている。上述のように、スライドストッパ62を押し広げながら押圧シリンダ30を上昇させ、溝部62aの位置に到達すると、シリンダストッパ32の突起部32aが溝部62aに嵌まり、押圧シリンダ30はこの位置P1(所定位置、図3(a))で固定される。この固定状態は、使用者が外側から解除ボタン70を押し下げ、解除ボタン70によってシリンダストッパ32に下向き(D1方向)の力を与えることで、突起部32aを溝部62aから外すことにより解除される。
【0032】
図2(a)、(b)、(c)に示すように、本体部20の先端側(D1方向)にはギア部80が設けられている。ギア部80は、中心軸が軸線AXに沿って延びる中空円筒状をなしており、軸線AXを中心として、本体部20に対して相対回転可能とされている。
【0033】
ギア部80の内側にはストッパ90が配置されている。ストッパ90は、中心軸が軸線AXに沿って延びる中空円筒状をなしている。これにより、ギア部80及びストッパ90の内側において、先端側は本体部20の内部空間21に連なり、後端側はグリップ部40の収容空間43に連なる内部空間81が形成される。
【0034】
ストッパ90の外周面には、ギア部80の内周面に形成されたらせん溝部(不図示)と噛み合うらせん溝部(不図示)が形成されている。このため、ギア部80を回転させると、その回転方向にしたがって、軸線AXの方向に沿って、先端側へ(D1方向)又は後端側へ(D2方向)へストッパ90が移動する(図7(a)、(b)参照)。ストッパ90は、内周面の直径が押圧シリンダ30の先端部31の外径よりも小さく設定されているため、押圧シリンダ30を先端側(D1側)へ移動させたとき、ストッパ90に当接することによって押圧シリンダ30の位置が規制される。
【0035】
押圧シリンダ30の移動によって、押圧シリンダ30の先端面33に当接配置された注入シリンダ100(後述)が移動する。このため、ストッパ90によって、押圧シリンダ30の移動範囲を規制することで、押圧シリンダ30に当接したまま移動する注入シリンダ100の移動範囲も規制されるため、注入シリンダ100の移動によって射出される薬液の量を規定することができる。図8(b)に示すように、本体部20の外周面には、カウンタ22が設けられており、ギア部80の回転量に応じて表示される数値が変化する。この数値の変化により、対象者は、薬液の予定射出量を認識するこができる。
【0036】
図8(a)に示すように、ギア部80の先端側の底面には、磁気部として、軸線AXの位置を中心とする円環状の磁性ディスク82が固定されている。この磁性ディスク82は、ギア部80とともに軸線AXを中心として回転する。磁性ディスク82は、発生する磁界の分布が回転によって変化するように磁性を分布させている。例えば、軸線AXに関して等角度間隔で磁極が異なるように構成されている。
【0037】
磁性ディスク82のD1側(先端部11側)には、磁気の変化を検知可能な検知部120(エンコーダ)が設けられている。検知部120は、ギア部80の回転とともに磁性ディスク82が回転したときに、回転方向と回転角度に応じて変化する磁界分布(回転情報)を検知するものであって、ホール素子その他の磁気センサを用いることができる。検知結果は、制御部121へ出力される(図13参照)。
【0038】
図10に示すように、ギア部80の近傍の内部空間21には、軸線AXに直交するように配置された円環状の基板23が設けられている。この基板23上には、軸線AXを挟んで、発光ダイオード122(LED)とフォトトランジスタ123とが配置されている。発光ダイオード122は、制御部121からの制御信号にしたがって、中心軸の軸線AX側へ向けて検査光を出射し、注入シリンダ100を透過した透過光がフォトトランジスタ123に入射する。123による検知信号は、図13に示すように、制御部121に入力される。
【0039】
発光ダイオード122とフォトトランジスタ123とが互いに対向する領域には、後述するように、中心軸の軸線AXの方向に沿って注入シリンダ100が挿入され、中心軸の軸線AXの方向に沿って移動可能とされている。注入シリンダ100において、略円柱状の本体部101の外周面には、中心軸の軸線AXを中心とする溝部101aが設けられている。溝部101aは、中心軸の軸線AXの方向において、一定の間隔で凸部と凹部が形成されている。発光ダイオード122から出射された検査光は、溝部101aの凸部と凹部の形状の違いにより、フォトトランジスタ123で検知される結果が異なる。さらに、制御部121は、解除ボタン70の操作からのフォトトランジスタ123の検知信号の時間変化により、溝部101aの凸部と凹部と検知信号の変化との関係に基づいて、注入シリンダ100の本体部101の移動距離(溝部101aの凸部と凹部の数)を算出することができる。これにより、ストッパ90の位置によって予め定められた量の薬液が射出されか否かを確認することができる。
【0040】
図5(b)と図6(a)、(b)、(c)に示すように、注入シリンダ100は、略円筒状の本体部101と、本体部101から延びる円筒状の先頭部102とを備える。本体部101と先頭部102は同じ軸を中心として延びており、本体部101は外周面に溝部101aを有し、先頭部102は、溝部101aの凹部よりも小さい外径を有する。
【0041】
図6(b)、(c)に示すように、注入シリンダ100は、注射器10の内部空間21内に配置される。内部空間21内において、本体部101の後端面103は、内部空間21内において押圧シリンダ30先端面33に当接するように配置され、先頭部102は、注射器10の先端部11から外部へ延出する。注入シリンダ100は、押圧シリンダ30に当接しているため、押圧シリンダ30を先端部11側(D1側)へ移動すると、押圧シリンダ30とともに移動する。このとき、本体部101は内部空間21の内周面に対して気密状態を維持しながら、中心軸の軸線AXの方向に沿って移動する。
【0042】
図5(b)と図6(a)、(b)、(c)に示すように、注入シリンダ100の先頭部102は、円筒状の注射筒部110の内部の薬液充填空間111内に配置され、液密状態で注射筒部110の中心軸の方向に沿って移動可能とされている。
【0043】
注射筒部110の薬液充填空間111への薬液の充填を行う際には、図5(a)に示すように、注射筒部110を、アダプタ200を介して薬液容器210に接続する。図5(b)に示すように、アダプタ200内には、注入シリンダ100の先頭部102の先端部104と、薬液容器210と、の間で薬液の流通を可能とする中空の針部201が設けられている。アダプタ200に注射筒部110を螺合することにより、針部201と先端部104の内部の空間同士が気密状態で連通し、さらに、アダプタ200を薬液容器210に螺合することにより針部201の先端が薬液容器210内に充填された薬液内へ到達する。これにより、針部201を介して、先端部104の内部の空間と薬液容器210内とが連通する。
【0044】
図5(b)に示すように先端部104の内部の空間と薬液容器210内とが連通した状態から、図5(c)に示すように先端部104がアダプタ200から離れる方向に、注入シリンダ100を移動させると、注射筒部110の薬液充填空間111が負圧となるために、薬液容器210から薬液が薬液充填空間111へ吸い上げられる。注入シリンダ100の先端部104を注射筒部110内の所定位置まで移動させることにより、注射筒部110の薬液充填空間111内へ薬液が一定量充填される。
【0045】
以上のように一定量の薬液が充填されると、薬液容器210が外される。そして、アダプタ200と注射筒部110が連結された状態の注入シリンダ100は、図6(a)に示すように、後端面103から、注射器10の内部空間21内へ押入され、図6(b)に示すように、後端面103が押圧シリンダ30の先端面33に当接する位置に配置される。さらに、図6(c)に示すように、アダプタ200が外されて、ギア部80の回転操作を経て、解除ボタン70を操作することによって、注射筒部110内の薬液が所定量射出される。
【0046】
<管理装置140>
次に、図13を参照しつつ、管理装置140に関して説明する。管理装置140は、注射器10の通信部130との間で相互に送受信可能とする通信部141を備える。これらの通信部130、141は、想定される通信距離、コスト等を考慮して、無線と有線で、適宜任意の通信規格を適用できる。例えば、個人が注射器10と管理装置140を有する場合には、比較的近距離で用いられるため、ブルートゥース(登録商標)を用いることが好ましい。
【0047】
管理装置140は、管理部142と入力部146とを備え、この管理部142は、通信部141、演算部143、及び、記憶部144に関する制御のほか、注射情報、並びに、演算部が算出した薬液の量、及び、これに紐付いた時刻情報に基づいて、次回の注射時刻及びこの注射の際の薬液の量を管理し、これらの情報は記憶部144に保存される。
【0048】
上記注射情報は、対象者が入力部146を操作することによって入力され、記憶部144に記憶される。注射情報には、例えば、対象者の年齢、性別、身長、体重、薬液の種類、薬液の1日当たりの投与予定量、1日当たりの投与回数、1回当たりの投与予定量及びこれに対応するカウンタ22における数値の変化量、並びに、投与予定時刻が含まれる。
【0049】
注射器10の検知部120による検知結果は、制御部121の制御によって、通信部130から、管理装置140の通信部141へ送信される。送信された検知結果は、演算部143において、検知結果としての磁界分布の変化に基づいて、ギア部80の回転方向と回転角度を算出し、これらの回転方向と回転角度から、射出された薬液の量、すなわち対象者へ注入された薬液の量を算出する。この算出結果は記憶部144に保存されるとともに、表示部145に表示される。
【0050】
警告部147は、例えば、注射後に、次回の注射時刻を通知する警告を行う。また、ギア部80の回転角度から算出される、薬液の予定射出量と、記憶部144に記憶された注射情報とを比較して、注射情報において予定されている予定射出量に対して、所定割合、例えば±10%、以上の差異が見られる場合は、ギア部80における回転の設定を見直すように表示部145に警告のメッセージを表示させる。これにより、ギア部80の誤操作による、薬液の投与量の誤りを事前に防止することが可能となる。
【0051】
警告部147による警告は、例えばアラーム音の発生により行う。また、管理部142に対して警告信号を出力し、これに基づいて、表示部145においてアラーム表示を行わせることもできる。
【0052】
管理装置140は、専用の装置のほか、例えば、携帯情報端末やパーソナルコンピュータ(PC)に専用のソフトウェア(アプリケーション、アプリ)を適用することで構成することができる。携帯情報端末、例えばスマートフォン、としては、通信部141、管理部142、演算部143、記憶部144、表示部145、入力部146、及び、警告部147にそれぞれ対応する機能を有するものを用いることができる。
【0053】
つづいて、図14図16を参照して、注射器10と管理装置140を用いた処理の流れの一例について説明する。図14図16の左側のステップS11~S29は注射器10における処理を示し、右側のステップS41~S53は、管理装置140(スマートフォン、PC等)における処理を示している。
【0054】
管理装置140においては、アプリ(ソフトウエア)を起動し(ステップS41)、入力部146の操作によって、注射情報として、必要なインスリン注射量、必要な注射回数を設定する(ステップS42)。また、入力部146の操作によって、使用者(対象者)の生活スタイルに合わせた、注射時刻のアラーム通知設定を行う(ステップS43)。この設定としては、例えば、就業している対象者が、その注射時間として、その休み時間や就業の前後の時間を設定する場合が挙げられる。
【0055】
一方、注射器10側の操作としては、グリップ部40を回転させることによって、押圧シリンダ30を引き上げ、押圧シリンダ固定機構60によって押圧シリンダ30を固定する(ステップS11)。
【0056】
また、本体部20には挿入していない状態の注射筒部110に薬液容器210から、薬液としてのインスリンを全量吸入する(ステップS12)。この吸入は、まず、図5(a)に示すように、注入シリンダ100が内部に挿入された注射筒部110を、アダプタ200に螺合し、さらに、アダプタ200に薬液容器210を螺合する。これによって、注射筒部110は、針部201を介して、薬液容器210と連通する(図5(b))。この状態から、注入シリンダ100を、薬液容器210から遠ざかる方向へ引き上げることによって、薬液充填空間111内へインスリンが吸入される。このように吸入が完了すると、薬液容器210はアダプタ200から外される。
【0057】
以上の、ステップS11~12、及び、S41~43の後、管理装置140は待機モードとなる(ステップS44)。その後、上記ステップS43で設定された注射時刻になると、アラームによる通知が行われる(ステップS45)。また、管理装置140側の通信部141のブルートゥース(登録商標)がオン状態に設定される。
【0058】
上記ステップS45の通知に対応して対象者が注射器10を起動すると(ステップS13)、通信部130のブルートゥース(登録商標)がオン状態となり(ステップS14)、管理装置140との間で、ブルートゥース(登録商標)による通信が可能な状態となる(ステップS15、S46)。これにより、管理装置140では、注射器10の電源がオン状態となったことが、アプリにおいて検知される(ステップS47)。
【0059】
対象者は、上記ステップS13の注射器10の起動後に、上記ステップS12でインスリンを吸入した注射筒部110と、これに連結された注入シリンダ100及びアダプタ200とが一体となったままの状態(図6(a)参照)で、注入シリンダ100を注射器10の本体部20の内部空間21へ押入する(図6(b))。ここで、押圧シリンダ30は、シリンダストッパ32が押圧シリンダ固定機構60で固定された後に、グリップ部40の回転によって注射待機位置まで引き下げられており(図4(b)と同じ状態)、注入シリンダ100は、その後端面103が押圧シリンダ30の先端面33に当接する位置に配置される(図6(b))。この後に、図6(c)に示すように、アダプタ200が外された状態とされる。
【0060】
ここで、内部空間21への注入シリンダ100の挿入は、上記ステップS44の待機モードにおいて行っても良い。また、ギア部80の回転後で解除ボタン70の操作前に、注入シリンダ100を内部空間21内へ挿入してもよい。
【0061】
次に、対象者は、薬液の射出量の設定のために、ギア部80を回転操作する。ギア部80の回転量は、そのときに注射するインスリンの量に合わせて設定され、回転量に対応するカウンタ22の数字の変化量が表示部145に表示される。対象者は、表示部145に表示された数だけ、カウンタ22に表示される数字が変化するようにギア部80の回転操作を行う。このときの具体的な処理手順は次の通りである。
【0062】
まず、上記ステップS12で薬液容器210から注射筒部110内へインスリンを全量吸入し、この状態を維持して、注入シリンダ100を押圧シリンダ30に当接する位置まで、内部空間21へ押入する。この状態からギア部80を回転させることなく注射を行う場合(ステップS16でNO)、注射筒部110内のインスリンが100%(初期値)射出される(ステップS48)。これに対して、ギア部80を回転させると、回転させた分だけ押圧シリンダ30及び注入シリンダ100の移動量が小さくなるため、射出されるインスリンの量も小さくなる。
【0063】
ギア部80が回転すると(ステップS16でYES)、ギア部80とともに磁性ディスク82が回転(ステップS17)し、磁性ディスク82の回転方向と回転角度に応じて周囲の磁界分布が変化する。
【0064】
磁性ディスク82の回転による磁界分布の変化は、検知部120(ロータリーエンコーダ)の磁気センサによって検知され(ステップS18)、管理装置140へ送信される。
【0065】
管理装置140においては、時間経過に対する磁界分布の変化を示すパルス信号におけるパルスをカウントし(ステップS19)、カウント数に基づいて、ギア部80の回転方向と回転角度を算出する(ステップS20)。このように算出された回転方向と回転角度(回転角度位置データ)は、管理装置140側へ送信される(ステップS21、S49)。
【0066】
以上の工程が終了すると、注射器10内の発光ダイオード122(LED)が発光を開始(ステップS22)し、発光ダイオード122からの検索光はフォトトランジスタ123で受光される(ステップS23)。
【0067】
なお、発光ダイオード122の発光は、解除ボタン70の操作の直前に、管理装置140の入力部146を操作することによって、発光ダイオード122の発光を指示する信号を注射器10側へ出力し、これに応じて発光ダイオード122を発光させるようにしてもよい。
【0068】
次に、注射器10の注射筒部110を注射する部位T(図11(b)参照)に当てた状態で、解除ボタン70を押す操作を行う(ステップS24)。この操作によって、押圧シリンダ固定機構60による固定状態が解除され、押圧シリンダ30が先端部104側へ移動する(ステップS25)。押圧シリンダ30の移動にともなって、これに当接している注入シリンダ100も移動(ステップS25)し、注射筒部110内の薬液が射出され、注射が行われる。
【0069】
上記ステップS25における、注入シリンダ100の移動により、発光ダイオード122からの検査光が注入シリンダ100を透過した透過光がフォトトランジスタ123に入射する。この透過光の光量は、注入シリンダ100に設けた溝部101aの凹凸形状に応じて変化しており、フォトトランジスタ123では、透過光の光量の変化を検知する(ステップS26)。
【0070】
フォトトランジスタ123が検知した透過光の光量変化の結果は、管理装置140へ送信される(ステップS27、S50)。管理装置140の演算部143は、フォトトランジスタ123による検知結果と、検知部120による検知結果とに基づいて。射出された薬液の量を算出し、射出された時刻とともに記憶部144に保存する(ステップS51)。
【0071】
上記ステップS51で算出された射出薬液量は、表示部145に表示される。表示部145には、射出薬液量の確認後に注射器10の電源を切ることを促す旨が表示される。これにしたがって注射器10がオフ状態となると、注射器10の通信部130(ブルートゥース(登録商標))もオフ状態となり(ステップS29)、管理装置140との間の通信が切断される(ステップS52)。そして、管理装置140では、次回のアラーム時刻まで待機するアプリ待機モードに移行する(ステップS53)
【0072】
以下に変形例について説明する。
上述の実施形態では、磁気部として磁性ディスク82をギア部80に設けたが、ギア部80の回転によって磁界分布が変化すればこれ以外の構成であってもよい。例えば、ギア部80自体を、軸線AXに関して等角度間隔で磁極を異ならせるようにした磁性体で構成してもよい。
【0073】
上記実施形態では、磁性ディスク82の回転による磁界の分布を検知部120で検知していたが、これに代えて、光学的な手段によって検知してもよい。例えば、磁性ディスク82の代わりに、軸線AXに関して等角度間隔で光学特性、例えば、反射率、透過率、色を異ならせた光学式ディスクを用い、発光部からの検査光が光学式ディスクに到達することで生じる光学的特性の変化を検知するようにしてもよい。これにより、磁界を発生する装置を用いることができない場合にも用いることが可能となる。
【0074】
上記実施形態では、注射器10と管理装置140とをブルートゥース(登録商標)(登録商標)で送受信可能としていたが、これらをピアトゥピア(Peer to Peer)の方式で通信可能とし、注射器10側の検知データをコード信号として送受信すると、通信容量を小さく抑えることができるため、注射器10側の通信部130を小型で低コストのものにすることが可能となる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 注射器
11 注射器の先端部
12 注射器の後端部
20 本体部
21 内部空間
22 カウンタ
23 基板
30 押圧シリンダ
31 押圧シリンダの先端部
32 シリンダストッパ
32a 突起部
33 押圧シリンダの先端面
40 グリップ部
41 外筒部
42 内筒部
43 収容空間
50 コイルばね
60 押圧シリンダ固定機構
61 筒状体
62 スライドストッパ
62a 溝部
63 押圧ばね
64 空間
70 解除ボタン
71 解除ボタンの先端部
72 支持ばね
73 操作面
80 ギア部
81 内部空間
82 磁性ディスク
90 ストッパ
100 注入シリンダ
101 本体部
101a 溝部
102 先頭部
103 後端面
104 先端部
110 注射筒部
111 薬液充填空間
120 検知部
121 制御部
122 発光ダイオード(LED)
123 フォトトランジスタ
130 通信部
140 管理装置
141 通信部
142 管理部
143 演算部
144 記憶部
145 表示部
146 入力部
147 警告部
200 アダプタ
201 針部
210 薬液容器
AX 中心軸の軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16