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特開2022-94395農薬用添加剤、及びそれを用いた農薬用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094395
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】農薬用添加剤、及びそれを用いた農薬用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/26 20060101AFI20220620BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220620BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20220620BHJP
   C08F 216/18 20060101ALI20220620BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20220620BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C08F220/26
C09K3/00 110B
A01N25/10
C08F216/18
C08L33/14
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207239
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】柴田 晃
(72)【発明者】
【氏名】中村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】兼中 翼
【テーマコード(参考)】
4H011
4J002
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4H011BC18
4H011BC19
4H011BC20
4H011DA02
4H011DH02
4J002BG071
4J002GA00
4J100AE18P
4J100AJ02R
4J100AL08Q
4J100AL09R
4J100BA05Q
4J100BA08P
4J100BA08Q
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA04
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA15
4J100JA64
4J127AA07
4J127BA151
4J127BB021
4J127BB101
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD221
4J127BE121
4J127BE12Y
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF271
4J127BF27Z
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG14Z
4J127CB121
4J127CB122
4J127CB153
4J127CC093
4J127CC133
4J127CC151
4J127CC152
(57)【要約】
【課題】
本発明は、安定し、高い拡展性能を発揮する農薬用添加剤を提供することを目的とする。
【解決手段】
一般式(1)で表される単量体(I)1~97重量%、一般式(2)で表される単量体(II)1~97重量%、不飽和モノカルボン酸系単量体(III)1~50重量%、および、単量体(I)~(III)と共重合可能なその他の単量体(IV)0~50重量%を構成単位として含むポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)を、含有することを特徴とする農薬用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体(I)1~97重量%、下記一般式(2)で表される単量体(II)1~97重量%、不飽和モノカルボン酸系単量体(III)1~50重量%、および、単量体(I)~(III)と共重合可能なその他の単量体(IV)0~50重量%を構成単位として含むポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)を、含有することを特徴とする農薬用添加剤。
【化1】
(式中、R1は、炭素原子数2~5のアルケニル基を表す。A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。R2は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【化2】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは、0~2の数を表す。A2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記単量体(II)が、一般式(2)中のn2が1~5である単量体(IIa)および一般式(2)中のn2が6~200である単量体(IIb)を含む、請求項1に記載の農薬用添加剤。
【請求項3】
前記単量体(II)が、一般式(2)中のn2が1であり、且つA2Oが炭素原子数3のオキシアルキレン基である単量体(IIa)’と、および一般式(2)中のn2が6~200である単量体(IIb)’とを含むことを特徴とする請求項1~2いずれかに記載の農薬用添加剤。
【請求項4】
前記単量体(II)中の単量体(IIa)および単量体(IIb)の重量比率(IIa)/(IIb)が、1/99~99/1である請求項2~3いずれかに記載の農薬用添加剤。
【請求項5】
前記不飽和モノカルボン酸系単量体(III)がアクリル酸またはその塩とメタクリル酸またはその塩とを含む請求項1~4のいずれかに記載の農薬用添加剤。
【請求項6】
前記ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で5,000~60,000である請求項1~5のいずれかに記載の農薬用添加剤。
【請求項7】
単量体(I)および単量体(III)を、または、単量体(I)、単量体(III)ならびに単量体(I)および(III)と共重合可能なその他の単量体(VI)を、共重合させることにより得られるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)を、さらに含むことを特徴とする請求項1~6いずれかに記載の農薬用添加剤。
【請求項8】
単量体(II)および単量体(III)を、または、単量体(II)、単量体(III)ならびに単量体(II)および(III)と共重合可能なその他の単量体(VII)を、共重合させることにより得られるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)を、さらに含むことを特徴とする請求項1~7いずれかに記載の農薬用添加剤。
【請求項9】
請求項1~8いずれかに記載の農薬用添加剤を含む、農薬用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水田などの農業場面においては、農薬の効果を発揮させやすくし、また残留農薬を少なくし安全性を高めるために、散布場所から拡展させることが好ましい。そのため、農薬を拡展性能のある拡展剤とともに散布することが行われている。
【0003】
そのような拡展剤としては、水と接触後その水面上で、農薬を投入地点からより広範囲に拡展させることが期待されており、よって、農薬の移動距離や、農薬が沈降する前に素早く分散させること、さらに水面上で凝集を起こさないことが重要である。
【0004】
そのような農薬用添加剤(拡展剤)には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル部を有するエーテル型の界面活性剤が使用されてきた。特許文献1は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル部を有するエーテル型の界面活性剤として、アルキルアルコールのアルキレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩のモノエステル塩とジエステル塩との混合物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-128605号公報 しかしながら、特許文献1では、リン酸エステル塩のモノエステル塩とジエステル塩の混合物の混合比により性能が安定しないことがあり、混合比が農薬用水面拡展剤の効果について改善の余地があった。さらに拡展性についても、より向上を望まれていた。
【0006】
そこで本発明は、安定し、高い拡展性能を発揮する農薬用添加剤を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意努力の結果、以下の構成により本発明の課題を解決するに至った。
〔1〕下記一般式(1)で表される単量体(I)1~97重量%、下記一般式(2)で表される単量体(II)1~97重量%、不飽和モノカルボン酸系単量体(III)1~50重量%、および、単量体(I)~(III)と共重合可能なその他の単量体(IV)0~50重量%を構成単位として含むポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)を、含有することを特徴とする農薬用添加剤。
【化1】
(式中、R1は、炭素原子数2~5のアルケニル基を表す。A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。R2は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【化2】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは、0~2の数を表す。A2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
〔2〕前記単量体(II)が、一般式(2)中のn2が1~5である単量体(IIa)および一般式(2)中のn2が6~200である単量体(IIb)を含む〔1〕に記載の農薬用添加剤。
〔3〕前記単量体(II)が、一般式(2)中のn2が1であり、且つA2Oが炭素原子数3のオキシアルキレン基である単量体(IIa)’と、および一般式(2)中のn2が6~200である単量体(IIb)’とを含むことを特徴とする〔1〕~〔2〕いずれかに記載の農薬用添加剤。
〔4〕前記単量体(II)中の単量体(IIa)および単量体(IIb)の重量比率(IIa)/(IIb)が、1/99~99/1である〔2〕~〔3〕いずれかに記載の農薬用添加剤。
〔5〕前記不飽和モノカルボン酸系単量体(III)がアクリル酸またはその塩とメタクリル酸またはその塩とを含む〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の農薬用添加剤。
〔6〕前記ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の重量平均分子量が、ポリエチレングリコール換算で5,000~60,000である〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の農薬用添加剤。
〔7〕単量体(I)および単量体(III)を、または、単量体(I)、単量体(III)ならびに単量体(I)および(III)と共重合可能なその他の単量体(VI)を、共重合させることにより得られるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)を、さらに含むことを特徴とする〔1〕~〔6〕いずれかに記載の農薬用添加剤。
〔8〕単量体(II)および単量体(III)を、または、単量体(II)、単量体(III)ならびに単量体(II)および(III)と共重合可能なその他の単量体(VII)を、共重合させることにより得られるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)を、さらに含むことを特徴とする〔1〕~〔7〕いずれかに記載の農薬用添加剤。
〔9〕〔1〕~〔8〕いずれかに記載の農薬用添加剤を含む、農薬用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、安定し、高い拡展性能を発揮する農薬用添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の農薬用添加剤は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)を含み、さらにポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)及び又はポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)を含有しても良い。
【0010】
<ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)>
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)(以下、(A)成分とも言う)は、一般式(1)で表される単量体(I)1~97重量%、一般式(2)で表される単量体(II)1~97重量%、不飽和モノカルボン酸系単量体(III)1~50重量%、(I)~(III)と共重合可能なその他の単量体(IV)0~50重量%を共重合させることにより得られる。前記共重合体は、単量体(I)に由来する構成単位、単量体(II)に由来する構成単位、単量体(III)、および単量体(IV)に由来する構成単位を必須の構成単位として有する。
【0011】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)を得る際の、各単量体の配合率は下記の通りである。単量体(I)の配合率は、1重量%~97重量%であり、好ましくは5重量%~97重量%であり、より好ましくは5重量%~90重量%である。単量体(II)の配合率は、1重量%~97重量%であり、好ましくは5重量%~97重量%であり、より好ましくは5重量%~90重量%である。単量体(III)の配合率は、1重量%~50重量%であり、好ましくは1重量%~40重量%であり、より好ましくは1重量%~30重量%である。単量体(IV)の配合率は、0重量%~50重量%であり、好ましくは0重量%~40重量%である。なお、上記配合率は、単量体(I)の配合率+単量体(II)の配合率+単量体(III)+単量体(IV)の配合率=100重量%としたときの配合率である。
【0012】
なお、共重合体中の各構成単位の含有量は、共重合反応に用いられる各構成単位を現わす単量体が全量反応したこととみなすことができ、反応時の単量体の添加量から得ることができる。後述する(B)成分/(C)成分も同様である。
【0013】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)において、単量体(I)の配合量に対す
単量体(II)の配合量の比率は、好ましくは10重量%~300重量%である。単量体(I)の配合量に対する単量体(III)の配合量の比率は、好ましくは1重量%~90重量%であり、より好ましくは1重量%~80重量%である。単量体(I)の配合量に対する単量体(IV)の配合量の比率は、好ましくは0重量%~30重量%であり、より好ましくは0重量%~20重量%である。
【0014】
以下、まず単量体(I)について説明する。
【0015】
単量体(I)は、下記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノアルケニルエーテルである。
【0016】
【化3】
【0017】
(式中、R1は、炭素原子数2~5のアルケニル基を表す。A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。R2は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【0018】
一般式(1)中のR1は、炭素原子数2~5のアルケニル基を表す。該アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは3~5である。R1としては、アリル基、メタリル基、3-メチル-3-ブテン-1-オールの残基等を例示することができるが、これらに限定されない。
【0019】
一般式(1)中のA1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)、オキシブチレン基(ブチレングリコール)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)が好ましい。
【0020】
上記「同一若しくは異なって」とは、一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合(n1が2以上の場合)、それぞれのA1Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)およびオキシブチレン基(ブチレングリコール)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール)とが混在する態様、またはオキシエチレン基(エチレングリコール)とオキシブチレン基(ブチレングリコール)とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基(エチレングリコール)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール)とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。オキシエチレン基とオキシプロピレン基が混在する場合、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の平均付加モル数の比率は、オキシエチレン基の平均付加モル数/オキシプロピレン基の平均付加モル数=50~99.9%/50~0.1%であることが好ましい。
【0021】
一般式(1)中のn1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。n1は、1~70であることが好ましく、5~70であることがより好ましく、5以上50未満であることがさらに好ましく、5~40であることが特に好ましい。平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているアルキレングリコール単位のモル数の平均値を意味する。
【0022】
これにより、水面上で適度な立体反発性を示すことができるようになるため、特に農薬と併用した際の水面拡展性を良好に得ることができる。
【0023】
一般式(1)中のR2は、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。炭素原子数が大きくなると、拡展性が十分発揮されないおそれがあるため、R2は水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0024】
単量体(I)の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~200モル付加する方法が挙げられる。
【0025】
単量体(I)としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノアリルエーテル、および3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。単量体(I)としては、これらのうち1種若しくは2種以上を用いることができる。親水性および疎水性のバランスがよいので、単量体(I)は、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールモノアリルエーテル、および3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物を含むことが好ましく、これらのいずれかであることが好ましく、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、および3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加物であることがより好ましい。単量体(I)のオキシアルキレン基(ポリアルキレングリコール)の平均付加モル数は、1~70であることが好ましく、5~70であることがより好ましく、5以上50未満であることがさらに好ましく、5~40であることが特に好ましい。なお、本明細書において「(ポリ)」は、その直後の置換基の数が1個または2個以上であることを意味する。
【0026】
単量体(I)は、一般式(1)で表される単量体1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
単量体(II)は、下記一般式(2)で表される。
【0028】
【化4】
【0029】
(式中、R3、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは、0~2の数を表す。A2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)
【0030】
一般式(2)中のR3、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1
~3のアルキル基を表す。
【0031】
一般式(2)中のA2Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)、オキシブチレン基(ブチレングリコール)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)が好ましい。このうち、AOは単組原子数3であるオキシプロピレン基を含むことが、より好ましい。
【0032】
上記「同一若しくは異なって」とは、一般式(2)中にA2Oが複数含まれる場合(n2が2以上の場合)、それぞれのA2Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(2)中にA2Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)およびオキシブチレン基(ブチレングリコール)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール)とが混在する態様、またはオキシエチレン基(エチレングリコール)とオキシブチレン基(ブチレングリコール)とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基(エチレングリコール)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール)とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0033】
一般式(2)中のn2は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。n2は、1~70であることが好ましく、5~70であることがより好ましく、5以上50未満であることがさらに好ましく、5~40であることが特に好ましい。平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているアルキレングリコール単位のモル数の平均値を意味する。
【0034】
単量体(II)は、一般式(2)で表される単量体1種類であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。単量体(II)は、オキシアルキレン基の平均付加モル数が異なる2種の単量体(IIa)および(IIb)の組み合わせを含むことが好ましく、当該組み合わせであることが好ましい。これにより、農薬用添加剤に添加して長時間経過しても優れた拡展性を発揮することができる。単量体(IIa)の平均付加モル数n2a(一般式(2)中のn2)が1~5であることが好ましく、さらに好ましくは1~3であり、特に好ましくは1である。単量体(IIb)の平均付加モル数n2b(一般式(2)中のn2)が6~200であることが好ましく、6~100であることがより好ましく、さらに好ましくは6~70である。
【0035】
単量体(II)が単量体(IIa)および(IIb)である場合、それぞれの重量比率(合計を100重量%とする)は、(IIa)/(IIb)が(1~99)/(99~1)であることが好ましく、(10~90)/(90~10)であることがより好ましい。
【0036】
一般式(2)中のXは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。炭素原子数が大きくなると、農薬組成物の拡展性が十分発揮されないおそれがあるため、Xは水素または炭素原子数1~10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
【0037】
単量体(II)としては、例えば、(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタアクリレート」を意味する)等の不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物が挙げられる。また例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレートなどの、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。単量体(II)としては、これらのうち1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることができるが、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシプロピルアクリレート)およびメトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートのうち少なとも1種を用いることがより好ましい。(ポリ)アルキレングリコールの平均付加モル数は1~50であることが好ましい。単量体(IIa)が(ポリ)アルキレングリコールである場合、単量体(IIa)としての(ポリ)アルキレングリコールの付加モル数は、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましい。単量体(IIb)が(ポリ)アルキレングリコールである場合、単量体(IIb)としての(ポリ)アルキレングリコールの付加モル数は、6~100であることが好ましく、6~70であることがより好ましい。
【0038】
不飽和モノカルボン酸系単量体(III)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のカルボン酸類、およびこれらの塩(例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩)を挙げることができる。不飽和モノカルボン酸系単量体(III)は、これらのうちの1種または2種以上であればよく、中でも、アクリル酸またはその塩、メタクリル酸またはその塩が好ましく、アクリル酸またはその塩およびメタクリル酸またはその塩を含むことがより好ましく、アクリル酸またはその塩およびメタクリル酸またはその塩であることが更に好ましい。アクリル酸またはその塩とメタクリル酸またはその塩の2種を併用する場合、アクリル酸またはその塩(III-1)とメタクリル酸またはその塩(III-2)を用いる際の比率(合計を100重量%)は、(III-1)/(III-2)が(1%~99%)/(99%~1%)である。
【0039】
単量体(III)は1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0040】
単量体(IV)は、単量体(I)、(II)および(III)からなる群から選ばれる1または2以上の単量体と共重合可能な単量体であれば特に限定されない。なお、単量体(IV)は、単量体(I)および単量体(II)および単量体(III)を含まない。
【0041】
単量体(IV)としては、下記のもの等を例示することができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることが可能である;
【0042】
一般式(IV-1):
【0043】
【化5】
【0044】
で示されるジアリルビスフェノール類、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位アリル置換物;
【0045】
一般式(IV-2):
【0046】
【化6】
【0047】
で示されるモノアリルビスフェノール類、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3位アリル置換物;
【0048】
一般式(IV-3):
【0049】
【化7】
【0050】
で示されるアリルフェノール;
【0051】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;
上記アルコールまたはアミンに、炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、上記不飽和ジカルボン酸類との、ハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;
マレアミド酸と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
炭素原子数1~30のアルコールに炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2~18のアルキレンオキシドの1~500モル付加物類;
【0052】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4-(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;
メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン等のビニル芳香族類;
1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;
ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等のジエン類;
【0053】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;
(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;
ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;
メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類;および、
ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン-ビス-(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
【0054】
単量体(VI)は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0055】
単量体(VI)は、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位アリル置換物を含むことが好ましく、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位アリル置換物であることが好ましい。
【0056】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)を得るにあたり、必要に応じて、単量体(I)、単量体(II)、単量体(III)および単量体(IV)以外の単量体を用いてもよい。
【0057】
本発明において、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)は、それぞれの所定の単量体を、公知の方法によって共重合させて製造することができる。該方法としては、例えば、溶媒中での重合、塊状重合などの重合方法が挙げられる。
【0058】
溶媒中での重合において使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;
酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。原料単量体および得られる共重合体の溶解性の面から、水および低級アルコールからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。
【0059】
溶媒中で共重合を行う場合は、各単量体と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよいし、各単量体の混合物と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよいし、単量体の一部または全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0060】
共重合に使用し得る重合開始剤は、水溶媒中で共重合を行う際には例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物が挙げられる。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩などの促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類あるいはケトン類等の溶媒中で共重合を行う際には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどのパーオキサイド;クメンパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリルなどの芳香族アゾ化合物などが重合開始剤として使用できる。この際、アミン化合物などの促進剤を併用することもできる。さらに、水-低級アルコール混合溶剤中で共重合を行う場合には、前述の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して使用することができる。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等重合条件によって適宜異なるが、通常50~120℃の範囲で行われる。
【0061】
また、共重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整することができる。使用される連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、および、2-メルカプトエタンスルホン酸などの既知のチオール系化合物:亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の分子量調整のためには、それぞれを得るための単量体として、さらに連鎖移動性の高い単量体(V)を用いることも有効である。連鎖移動性の高い単量体(V)としては、例えば(メタ)アリルスルホン酸(塩)系単量体が挙げられる。単量体(V)の配合率は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)において、通常は20重量%以下であり、10重量%以下であることが好ましい。なお、上記配合率は、(A)については単量体(I)の配合率+単量体(II)由来の配合率+単量体(III)の配合率+単量体(IV)の配合率=100重量%としたときの配合率である。
【0062】
共重合体を得る際に水溶媒中で共重合する場合、重合時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となるが、これを適当なpHに調整してもよい。重合の際にpHの調整が必要な場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いてpHの調整を行うことができる。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等から、リン酸を用いることが好ましい。しかし、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するためには、pH2~7で重合を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はないが、NaOH、Ca(OH)2などのアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合前の単量体に対して行ってもよいし、重合後の共重合体溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに共重合体に対してpH調整を行ってもよい。
【0063】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の重量平均分子量は、5,000以上であることが好ましく、6,000以上であることがより好ましく、6,500以上であることが更に好ましい。これにより、拡展性が十分発揮される。重量平均分子量の上限は、60,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることが更に好ましい。これにより、セメント粒子の凝集作用が抑制され、作業性を良好にすることができる。重量平均分子量は、5,000~60,000であることが好ましく、6,000~50,000であることがより好ましく、6,500~30,000であることが更に好ましい。
【0064】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.2以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましい。上限は、3.0以下であることが好ましく、2.50以下であることがより好ましい。分子量分布は、1.2~3.0の範囲であることが好ましく、1.25~2.50であることがより好ましい。
【0065】
なお、本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算する公知の方法にて測定できる。
【0066】
GPCの測定条件として特に限定はないが、例として以下の条件を挙げることができる。後段の実施例における重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH-pak SB-806HQ、SB-8
04HQ、SB-802.5HQ
溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
検量線;ポリエチレングリコール基準
【0067】
(A)成分は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)1種類であってもよいし、互いに異なるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0068】
本発明の農薬用添加剤は、上述する構成の(A)成分が加水分解性を有するため、高い水面拡展性を有しつつ、加水分解した構成単位がさらに拡展性を発揮するため、拡展性をより効果的に発揮できる。
【0069】
<ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)>
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)(以下、(B)成分とも言う)は、一般式(1)で表される単量体(I)および不飽和モノカルボン酸系単量体(III)を、または、単量体(I)、単量体(III)ならびに(I)および(III)と共重合可能なその他の単量体(VI)を、共重合させることにより得られる。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)は、単量体(II)を共重合させない点でポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)および(C)と区別できる。単量体(I)および単量体(III)のそれぞれの例および好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)にて説明した単量体(I)および(III)のそれぞれの例および好ましい例と同じである。
【0070】
単量体(VI)は、単量体(I)および(III)と共重合可能であればよく、単量体(II)と共重合可能でも良いし、単量体(I)~(III)以外の単量体と共重合可能でもよい。単量体(VI)の例および好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)にて説明した単量体(IV)の例および好ましい例と同様である。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)の製造方法の例および好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の製造方法の例および好ましい例と同様である。
【0071】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)を得る際の各単量体の配合率は、下記の通りである。単量体(I)の配合率は、好ましくは40重量%~97重量%、より好ましくは50重量%~97重量%、更に好ましくは60重量%~97重量%である。単量体(III)の配合率は、好ましくは1重量%~60重量%、より好ましくは1重量%~50重量%、更に好ましくは1重量%~40重量%である。単量体(VI)の配合率は、好ましくは0重量%~50重量%、より好ましくは0重量%~40重量%、更に好ましくは0重量%~30重量%である。
【0072】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)において、単量体(I)の配合量に対する単量体(III)の配合量の比率は、好ましくは1重量%~70重量%であり、より好ましくは5重量%~70重量%であり、更に好ましくは5重量%~60重量%である。単量体(I)の配合量に対する単量体(VI)の配合量の比率は、好ましくは0重量%~50重量%であり、より好ましくは0重量%~40重量%であり、更に好ましくは0重量%~30重量%である。
【0073】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)の重量平均分子量は、5,000~60,000であることが好ましく、6,000~50,000であることがより好ましい。
【0074】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)の分子量分布(Mw/Mn)は1.2~3.0の範囲であることが好ましく、1.25~2.5であることがより好ましい。
【0075】
(B)成分は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)1種類であってもよいし、互いに異なるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(B)2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0076】
(B)成分を含有することにより、本発明の農薬用添加剤は、より良好な拡展性を発揮することができる。
【0077】
本発明の農薬用添加剤が(B)成分を含有する場合、その含有割合は、(A)成分に対して1重量%~99重量%であることが好ましく、5重量%~95重量%であることがより好ましく、10重量%~90重量%であることが更に好ましい。
【0078】
<ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)>
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)(以下、(C)成分とも言う)は、一般式(2)で表される単量体(II)および不飽和モノカルボン酸系単量体(III)を、または、単量体(II)、単量体(III)ならびに単量体(II)および(III)と共重合可能なその他の単量体(VII)を、共重合させることにより得られるポリカルボン酸系共重合体またはその塩である。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)は単量体(I)を共重合させない点でポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)および(B)と異なる。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)において、単量体(II)および単量体(III)のそれぞれの例および好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)にて説明した単量体(II)および(III)のそれぞれの例および好ましい例と同じである。
【0079】
単量体(VII)は、単量体(II)および(III)と共重合可能であればよく、単量体(II)と共重合可能でもよいし、単量体(I)~(III)以外の単量体と共重合可能でもよい。単量体(VII)の例および好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)にて説明した単量体(IV)の例および好ましい例と同様である。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)の製造方法の例および好ましい例は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)の例および好ましい例と同様である。
【0080】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)を得る際の各単量体の配合率は、下記の通りである。単量体(II)の配合率は、好ましくは40重量%~97重量%、より好ましくは50重量%~97重量%、更に好ましくは60重量%~97重量%である。単量体(III)の配合率は、好ましくは1重量%~60重量%、より好ましくは1重量%~50重量%、更に好ましくは1重量%~40重量%である。単量体(VII)の配合率は、好ましくは0重量%~50重量%、より好ましくは0重量%~40重量%、更に好ましくは0重量%~30重量%である。
【0081】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)において、単量体(II)の配合量に対する単量体(III)の配合量の比率は、好ましくは1重量%~70重量%であり、より好ましくは5重量%~70重量%であり、更に好ましくは5重量%~60重量%である。単量体(II)の配合量に対する単量体(VII)の配合量の比率は、好ましくは0重量%~50重量%であり、より好ましくは0重量%~40重量%であり、更に好ましくは0重量%~30重量%である。
【0082】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)の重量平均分子量は、5,000~60,000であることが好ましく、6,000~50,000であることがより好ましい。
【0083】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)の分子量分布(Mw/Mn)は1.2~3.0の範囲であることが好ましく、1.25~2.5であることがより好ましい。
【0084】
(C)成分は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)1種類であってもよいし、互いに異なるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(C)2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0085】
(C)成分を含有することにより、本発明の農薬用添加剤は、より良好な拡展性を得ることができる。
【0086】
本発明の農薬用添加剤が(C)成分を含有する場合、その含有割合は、成分(A)に対して1重量%~99重量%であることが好ましく、5重量%~95重量%であることがより好ましく、10重量%~90重量%であることが更に好ましい。
【0087】
成分(A)、(B)および(C)を構成する各単量体(I)~(IV)は、それぞれ独立であり、同じであってもよいし別個であってもよい。
【0088】
本発明の農薬用添加剤において、(A)成分の含有形態に制限はなく、(A)成分をそのまま含んでいてもよいし、(A)成分を溶媒に溶解させた溶液、分散させた分散液、懸濁させた懸濁液として配合されていてもよい。また、必要に応じて含まれる(B)および(C)成分も、(A)成分の溶液、分散液または懸濁液に含まれていてもよい。分散液は、市販の分散剤をあわせて含んでいてもよい。本発明の農薬用添加剤が(B)成分および/または(C)成分を含む場合、(A)成分の溶液、分散液または懸濁液と、(B)成分および/または(C)成分を、溶媒に溶解させた溶液、分散させた分散液、懸濁させた懸濁液とを別途に調製し、これらを配合して農薬組成物を調製してもよい。
【0089】
<任意成分>
本発明の農薬用添加剤は、本発明の効果を損なわない限り、上記共重合体に加えて任意成分を含んでもよい。任意成分としては、崩壊剤、その他の分散剤、キレート剤、洗浄剤、凝集剤、増粘剤、安定剤、展着剤、保水剤、保護コロイド剤、結合剤、吸水性樹脂等が挙げられる。
【実施例0090】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、物性値等の測定方法は、別途記載がない限り、上記に記載した測定方法である。実施例中、特に断りの無い限り、「%」は、重量%を示し、「部」は、重量部を示す。
【0091】
[実施例1]
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水291部、及びポリエチレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数10)7部を投入し、攪拌しながら反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、メタクリル酸4部、アクリル酸0.1部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数25個)22部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート36部、及び水33部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム1部、及び水44部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を100℃に保持した状態でさらに1時間反応させることにより共重合体aの水溶液を得た。この液を30%NaOH水溶液でpH4に調整し、農薬用添加剤1とした。液中の共重合体は重量平均分子量22,000、Mw/Mn2.10であった。
【0092】
[実施例2]
炭酸カルシウム82部、ベントナイト15部、共重合体aを固形分量で3部となるように混合し、適度に加水し均一に練り混ぜた。得られた混錬物を直径3mm,長さ5mmに切り出した後、105℃,30分さらに50℃,一晩乾燥させ、粒状の農薬用添加剤2とした。
【0093】
[比較例1]
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水198部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、アクリル酸(AA)72部、水酸化ナトリウム12部及び水129部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム4部、及び水37部の攪拌混合液を、各々2時間かけて100℃に保持した反応容器に連続滴下した。温度を100℃に保持した状態で1時間重合反応を行った。その後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、70℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH8に中和すると同時に加水することで、濃度20%の共重合体bの水溶液を調整し、農薬用添加剤3を得た。液中の共重合体は重量平均分子量15,200、Mw/Mn1.66であった
【0094】
[比較例2]
炭酸カルシウム82部、ベントナイト15部、共重合体bを固形分量で3部となるように混合し、適度に加水し均一に練り混ぜた。得られた混錬物を直径3mm,長さ5mmに切り出した後、105℃,30分さらに50℃,一晩乾燥させ、粒状の農薬用添加剤4とした。
【0095】
<水面拡展性試験>
縦10cm、横40cmのプラスチック容器に硬度0.4の蒸留水を十分に張り、ステアリン酸カルシウム粉末1gをプラスチック容器中央付近の水面に一塊となるように浮かべた。
その後、農薬用添加剤1~4をそれぞれプラスチック容器の端部に添加し、0-10分までのステアリン酸カルシウム粉末の水面上の移動距離から拡散能力(cm)と停止時間(sec)を測定した。
【0096】
【表1】