(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094404
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】結束部材締付具及びこれを用いた被結束部材の結束方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20220620BHJP
B25B 25/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
E04G21/12 105E
B25B25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207256
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【弁理士】
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
【テーマコード(参考)】
3C031
【Fターム(参考)】
3C031BB21
(57)【要約】
【課題】番線による各鉄筋の確実な結束作業を簡単かつ迅速に行うことができる番線締付具及びこれを用いた各鉄筋の結束方法を提供する。
【解決手段】電動インパクトドライバーに一側端部が装着される軸部12の他側端に、その軸部12の軸線方向と略直交する直交軸の両端にそれぞれフック21,22を有するフック部2を設ける。2本の鉄筋A,Bの交差部Kにおいて当該各鉄筋A,Bに跨るようにヘアピン状に折り曲げた番線3を掛け渡す。フック部2の一方のフック21をヘアピン状の番線3の折り曲げ部31に挿通させかつ他方のフック22をヘアピン状の番線3の両端32,32付近に係止させた状態で、電動インパクトドライバーの回転に伴い番線3の折り曲げ部31と両端32,32付近とを互いに捩じり合わせて各鉄筋A,Bを結束する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被結束部材が互いに交差する交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した結束部材の長手方向端部同士を互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束する際に動力回転工具に装着して使用される結束部材締付具本体を備えた結束部材締付具であって、
前記各被結束部材に跨るように掛け渡される結束部材としては、その長手方向略中間部がヘアピン状に折り曲げられたものが用いられている一方、
前記結束部材締付具本体は、
前記動力回転工具に一側端部が装着される軸部と、
前記軸部の他側端に設けられ、当該軸部の軸線方向と略直交する方向へ延びる直交軸の両端にそれぞれフックを有するフック部と、
を備えており、
前記フック部は、その直交軸の一端のフックを前記各被結束部材に跨るように掛け渡された結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部に挿通させかつ前記直交軸の他端のフックを前記結束部材の長手方向他端側の両端付近に係止させた状態で、前記動力回転工具の回転に伴い前記結束部材の折り曲げ部と両端付近とを互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束するようにしていることを特徴とする結束部材締付具。
【請求項2】
前記フック部は、前記軸部の軸線方向から見て両端に互いに逆向きとなる略半円弧状のフックを有した状態で略S字状を呈している請求項1に記載の結束部材締付具。
【請求項3】
前記結束部材としては、加工の容易な番線が適用されている請求項1又は請求項2に記載の結束部材締付具。
【請求項4】
複数の被結束部材が交差する交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した結束部材の長手方向端部同士を互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束する際に動力回転工具に装着して使用される結束部材締付具を用いた被結束部材の結束方法であって、
前記各被結束部材に跨るように掛け渡される結束部材としては、その長手方向略中間部がヘアピン状に折り曲げられたものが用いられている一方、
前記動力回転工具に一側端部が装着される軸部と、前記軸部の他側端に設けられ、当該軸部の軸線方向と略直交する方向へ延びる直交軸の両端にそれぞれフックを有するフック部と、を備えた結束部材締付具本体を具備し、
前記ヘアピン状に折り曲げた結束部材を、前記各被結束部材が交差する交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した後、
前記フック部の直交軸の一端のフックを前記結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部に挿通させるとともに、前記直交軸の他端のフックを前記結束部材の長手方向他端側の両端付近に係止させてから、
この状態で、前記動力回転工具を回転させ、この回転に伴い、前記結束部材の折り曲げ部と両端付近とを互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束するようにしたことを特徴とする結束部材締付具を用いた被結束部材の結束方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の被結束部材が互いに交差する交差部において当該各被結束部材を結束する結束部材締付具及びこれを用いた被結束部材の結束方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の被結束部材が交差する交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した結束部材の長手方向端部同士を互いに捩じり合わせて各被結束部材を結束する際に電動インパクトドライバーやエアードライバーなどの動力回転工具に装着して使用される結束部材締付具本体を備えた結束部材締付具は知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、各被結束部材に跨るように掛け渡される結束部材は、その長手方向略中間部がヘアピン状に折り曲げられている一方、結束部材締付具本体は、動力回転工具に基端部が装着される軸部と、この軸部の先端に設けられたフックを有するフック部とを備えている。そして、フック部は、そのフックを各被結束部材に跨るように掛け渡された結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部に挿通させた状態で、動力回転工具の回転に伴い結束部材の折り曲げ部を当該結束部材の長手方向他端側の両端に対し巻き付けるように互いに捩じり合わせて各被結束部材を結束するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、前記従来の結束部材締付具では、各被結束部材に跨るように掛け渡される結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部がフック部のフックに挿通されているものの、結束部材の長手方向他端側の両端はフリーな状態となるため、動力回転工具の回転に伴い結束部材の折り曲げ部を当該結束部材の長手方向他端側の両端に対し巻き付けるのが難しく、結束部材の長手方向一端側及び他端側を互いに捩じり合わせて各被結束部材を結束する作業を確実に行えないことがある。
【0006】
しかも、結束部材の長手方向一端側及び他端側を互いに捩じり合わせられない失敗時に結束部材を取り外す必要があり、その作業が非常に煩わしいものとなり、各被結束部材を結束する作業に時間を要することになる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、結束部材による各被結束部材の結束作業を簡単かつ確実に行うことができる上、失敗時に結束部材を取り外す煩わしい作業を不要にして各被結束部材の結束作業を迅速に行うことができる結束部材締付具及びこれを用いた被結束部材の結束方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、複数の被結束部材が互いに交差する交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した結束部材の長手方向端部同士を互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束する際に動力回転工具に装着して使用される結束部材締付具本体を備えた結束部材締付具を前提とする。更に、前記各被結束部材に跨るように掛け渡される結束部材として、その長手方向略中間部がヘアピン状に折り曲げられたものを用いている。一方、前記結束部材締付具本体に、前記動力回転工具に一側端部が装着される軸部と、前記軸部の他側端に設けられ、当該軸部の軸線方向と略直交する方向へ延びる直交軸の両端にそれぞれフックを有するフック部と、を設ける。そして、前記フック部は、その直交軸の一端のフックを前記各被結束部材に跨るように掛け渡された結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部に挿通させかつ前記直交軸の他端のフックを前記結束部材の長手方向他端側の両端付近に係止させた状態で、前記動力回転工具の回転に伴い前記結束部材の折り曲げ部と両端付近とを互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束するようにしたことを特徴としている。
【0009】
また、前記フック部は、前記軸部の軸線方向から見て両端に互いに逆向きとなる略半円弧状のフックを有した状態で略S字状を呈していてもよい。
【0010】
更に、前記結束部材として、加工の容易な番線を適用することがこのましい。
【0011】
また、前記目的を達成するため、本発明では、複数の被結束部材が交差する交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した結束部材の長手方向端部同士を互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束する際に動力回転工具に装着して使用される結束部材締付具を用いた被結束部材の結束方法を前提とする。更に、前記各被結束部材に跨るように掛け渡される結束部材として、その長手方向略中間部がヘアピン状に折り曲げられたものを用いる。一方、前記動力回転工具に一側端部が装着される軸部と、前記軸部の他側端に設けられ、当該軸部の軸線方向と略直交する方向へ延びる直交軸の両端にそれぞれフックを有するフック部と、を備えた結束部材締付具本体を具備する。そして、前記ヘアピン状に折り曲げた結束部材を、前記各被結束部材が交差する交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡す。その後、前記フック部の直交軸の一端のフックを前記結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部に挿通させるとともに、前記直交軸の他端のフックを前記結束部材の長手方向他端側の両端付近に係止させる。それから、この状態で、前記動力回転工具を回転させ、この回転に伴い、前記結束部材の折り曲げ部と両端付近とを互いに捩じり合わせて前記各被結束部材を結束するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上、要するに、各被結束部材に跨るように掛け渡されるヘアピン状の結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部をフック部の直交軸の一端のフックに挿通する一方、当該結束部材の長手方向他端側の両端付近をフック部の直交軸の他端のフックに係止させている。このため、動力回転工具の回転に伴いヘアピン状の結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部及び長手方向他端側の両端が互いに巻き付けられ、当該結束部材の長手方向一端側及び他端側を互いに捩じり合わせて各被結束部材の結束作業を簡単かつ確実に行うことができる。
【0013】
しかも、結束作業を簡単かつ確実に行えることから、ヘアピン状の結束部材の長手方向一端側及び他端側を互いに捩じり合わせられない失敗時に当該結束部材を取り外す煩わしい作業を不要にして、各被結束部材の結束作業を迅速に行うことができる。
【0014】
また、フック部が、軸部の軸線方向から見て両端に互いに逆向きとなる略半円弧状のフックを有した状態で略S字状を呈していることで、各被結束部材に跨るように掛け渡されるヘアピン状の結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部と、当該結束部材の長手方向他端側の両端付近とをフック部の半円弧状の各フックの回転に伴って確実に係止することができる。
【0015】
更に、結束部材として加工の容易な番線を適用することで、各フックに係止されたヘアピン状の結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部及び当該結束部材の長手方向他端側の両端付近を、動力回転工具の回転に伴い互いにスムーズに巻き付けて円滑に捩じり合わせることができる。
【0016】
また、各被結束部材の交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡したヘアピン状の結束部材の長手方向一端側の折り曲げ部にフック部の一端のフックを挿通させかつ、当該結束部材の長手方向他端側の両端付近に他端のフックを係止させた状態で、動力回転工具の回転に伴いヘアピン状の結束部材の折り曲げ部と両端付近とを互いに捩じり合わせる被結束部材の結束方法によれば、ヘアピン状の結束部材による確実な各被結束部材の結束作業を簡単かつ迅速に行える被結束部材の結束方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る結束部材締付具を動力回転工具に装着した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の結束部材締付具を正面から見た正面図である。
【
図4】
図1の結束部材締付具を背面から見た背面図である。
【
図5】
図1の結束部材締付具を右側方から見た右側面図である。
【
図6】
図1の結束部材締付具を左側方から見た左側面図である。
【
図7】
図1の結束部材締付具を上方から見た平面図である。
【
図8】
図1の結束部材締付具を下方から見た底面図である。
【
図9】
図1の結束部材締付具により捩じり合わせられる結束部材を各被結束部材に跨るように掛け渡す前の状態を示す斜視図である。
【
図10】
図9の結束部材であって、(a)は結束部材を上方から見た平面図、(b)は結束部材を正面から見た正面図、(c)は結束部材を下方から見た底面図、(d)は結束部材を右側方から見た右側面図、(e)は結束部材を左側方から見た左側面図をそれぞれ示している。
【
図11】
図9の結束部材を被結束部材の交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した状態を示す斜視図である。
【
図12】
図9の結束部材を被結束部材の交差部において当該各被結束部材に跨るように掛け渡した状態を正面から示す正面図である。
【
図13】
図11の結束部材を被結束部材の交差部において結束部材締付具により捩じり合わせる直前の状態を示す斜視図である。
【
図14】
図12の結束部材を被結束部材の交差部において結束部材締付具により捩じり合わせる直前の状態を示す正面図である。
【
図15】
図13の結束部材を被結束部材の交差部において結束部材締付具により捩じり合わせ始めた状態を示す斜視図である。
【
図16】
図14の結束部材を被結束部材の交差部において結束部材締付具により捩じり合わせ始めた状態を示す正面図である。
【
図17】
図15の結束部材を被結束部材の交差部において捩じり合わせ終えた結束完了状態を示す斜視図である。
【
図18】
図16の結束部材を被結束部材の交差部において捩じり合わせ終えた結束完了状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係る結束部材締付具としての番線締付具を動力回転工具としての電動インパクトドライバーに装着した状態を示す斜視図、
図2は
図1の番線締付具の斜視図をそれぞれ示している。
【0020】
図1及び
図2に示すように、Xは電動インパクトドライバーであって、この電動インパクトドライバーXは、番線締付具1の番線締付具本体10を脱着自在に装着する筒状のホルダX1を備えている。このホルダX1は、電動インパクトドライバーXの本体ケースX0より若干前方へ突設され、その本体ケースX0内に収容された、図示しない電動モータの駆動軸にクラッチを介して連結されている。
【0021】
また、ホルダX1には、番線締付具本体10を装着、つまり番線締付具本体10の軸部12(後述する)を嵌入する断面略正六角形状の嵌入孔X2が設けられている。電動インパクトドライバーXの本体ケースX0の下部には充電式のバッテリパック(図示せず)が内蔵されており、このバッテリパックを電源として電動モータが起動する。
【0022】
図3は
図1の番線締付具1を正面から見た正面図、
図4は
図1の番線締付具1を背面から見た背面図をそれぞれ示している。また、
図5は
図1の番線締付具1を右側方から見た右側面図、
図6は
図1の番線締付具1を左側方から見た左側面図をそれぞれ示している。更に、
図7は
図1の番線締付具1を上方から見た平面図、
図8は
図1の番線締付具1を下方から見た底面図をそれぞれ示している。
【0023】
図3~
図8に示すように、番線締付具本体10は、電動インパクトドライバーXの嵌入孔X2に嵌入により装着される嵌入部11を基端部(
図2では右端部)に有する軸部12と、この軸部12の先端(
図2では左端)に設けられ、当該軸部12の軸線m方向と略直交する方向へ延びる直交軸nの両端にそれぞれフック21,22を有するフック部2と、を備えている。
【0024】
軸部12の嵌入部11は、電動インパクトドライバーXのホルダX1の嵌入孔X2に嵌入されるように略正六角柱状に形成されている。嵌入部11の軸線m方向略中間部には、環状の凹部13が設けられている。この凹部13には、ホルダX1の嵌入孔X2に嵌装された係止ボール(図示せず)が番線締付具本体10を装着した際に係止され、ホルダX1の嵌入孔X2からの番線締付具本体10の不慮の離脱を規制するようにしている。
【0025】
嵌入部11よりも先端側となる軸部12の軸線m方向略中間部には、軸部12よりも若干拡径された略円柱形状の拡径部14が設けられている。フック部2は、軸部12の先端(拡径部14よりも先端側)に一体的に設けられている。また、フック部2は、軸部12の軸線m方向から見て両端に互いに逆向きとなる略半円弧状のフック21,22を有した状態で略S字状を呈している。この場合、両フック21,22は、番線締付具本体1が所定回り(
図3では反時計回り)に回転するため、それぞれ回転方向下流側向きに開口している。
【0026】
そして、番線締付具本体10は、被結束部材としての2本の鉄筋A,B(後述する)が互いに略90°の角度で交差する交差部Kにおいて当該各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡された結束部材としての番線3を捩じり合わせて各鉄筋A,Bを結束する際に用いられる。
【0027】
図9は
図1の番線締付具1により捩じり合わせられる結束部材としての番線3を各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡す前の状態を示す斜視図を示している。また、
図10は
図9の番線3であって、(a)は番線3を上方から見た平面図、(b)は番線3を正面から見た正面図、(c)は番線3を下方から見た底面図、(d)は番線3を右側方から見た右側面図、(e)は番線3を左側方から見た左側面図をそれぞれ示している。
【0028】
図9及び
図10に示すように、番線3は、所定(例えば40cm)の長さのものが用いられている。そして、各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡される番線としては、その長手方向略中間部がヘアピン状に折り曲げられた半分の長さ(例えば20cm)のものが用いられる。この場合、番線3は、加工の容易ななまし鉄線(例えば8番線)が適用され、工具などを用いることなく人の手により曲げるなどの簡易変形が可能とされている。
【0029】
各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡されるように折り曲げられたヘアピン状の番線3は、その長手方向一端側(
図10の(a)~(c)では右端側)に折り曲げ部31が、長手方向他端側(
図10の(a)~(c)では左端側)に両端32,32がそれぞれ位置している。また、このヘアピン状の番線3は、折り曲げ部31の近傍において斜め方向に傾斜する傾斜部33,33を有して折り曲げ部31側と両端32,32側とが互いにほぼ平行に延び、折り曲げ部31側と両端32,32側とに傾斜部33,33を挟んで高低差が生じている。
【0030】
次に、各鉄筋A,Bが交差する交差部Kにおいて番線締付具1を用いて各鉄筋A,Bを番線3により結束する手順の一例を
図11~
図18に基づいて説明する。なお、番線締付具本体10が装着される電動インパクトドライバーXについては図示省略している。
【0031】
図11は
図9の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて当該各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡した状態を示す斜視図、
図12は
図9の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて当該各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡した状態を正面から示す正面図をそれぞれ示している。
【0032】
先ず、
図11及び
図12に示すように、ヘアピン状の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて当該各鉄筋A,Bに跨るようにたすき状に掛け渡す。
【0033】
図13は
図11の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて番線締付具1により捩じ合わせる直前の状態を示す斜視図、
図14は
図12の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて番線締付具1により捩じり合わせる直前の状態を示す正面図をそれぞれ示している。
【0034】
次いで、
図13及び
図14に示すように、電動インパクトドライバーXの嵌入孔X2に番線締付具本体10の嵌入部11を装着した軸部12のフック部2の一方のフック21を、各鉄筋A,Bに掛け渡したヘアピン状の番線3の折り曲げ部31(長手方向一端側)に挿通させる。一方、フック部2の他方のフック22をヘアピン状の番線3の両端32,32(長手方向他端側)付近に係止、つまりフック部2の他方のフック22の回転方向下流側にヘアピン状の番線3の両端32,32を位置付けることで、フック部2が回転した際に他方のフック22をヘアピン状の番線3の両端32,32に対し係止可能な状態にしておく。
【0035】
図15は
図13の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて番線締付具1により捩じり合わせ始めた状態を示す斜視図、
図16は
図14の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて番線締付具1により捩じり合わせ始めた状態を示す正面図をそれぞれ示している。
【0036】
その後、一方のフック21をヘアピン状の番線3の折り曲げ部31に挿通させ、かつ他方のフック22をヘアピン状の番線3の両端32,32に対し係止可能な状態で、電動インパクトドライバーXを回転させる。この回転に伴い、番線3の折り曲げ部31と両端32,32付近とがフック部2のフック21,22により互いに捩じり合わせられる。
【0037】
図17は
図15の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて捩じり合わせ終えた結束完了状態を示す斜視図、
図18は
図16の番線3を各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて捩じり合わせ終えた結束完了状態を示す正面図をそれぞれ示している。
【0038】
しかる後、
図17及び
図18に示すように、番線3の折り曲げ部31と両端32,32付近とを電動インパクトドライバーXの回転により各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて捩じり合わせ終えると、番線3の折り曲げ部31と両端32,32付近とからフック部2のフック21,22を離脱させ、交差部Kにおいて各鉄筋A,Bの結束を完了する。
【0039】
したがって、本実施の形態では、各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡されるヘアピン状の番線3の長手方向一端側の折り曲げ部31をフック部2の一方のフック21に挿通する一方、番線3の長手方向他端側の両端32,32付近をフック部2の他方のフック22に係止させるようにしている。このため、電動インパクトドライバーXの回転に伴いヘアピン状の番線3の長手方向一端側の折り曲げ部31及び長手方向他端側の両端32,32が互いに巻き付けられ、ヘアピン状の番線3の長手方向一端側及び他端側を互いに捩じり合わせて各鉄筋A,Bの結束作業を簡単かつ確実に行うことができる。
【0040】
しかも、結束作業を簡単かつ確実に行えることから、ヘアピン状の番線3の長手方向一端側及び他端側を互いに捩じり合わせられない失敗時に番線3を取り外す煩わしい作業を不要にして、各鉄筋A,Bの結束作業を迅速に行うことができる。
【0041】
また、フック部2が、軸部12の軸線m方向から見て両端に互いに逆向きとなる略半円弧状のフック21,22を有した状態で略S字状を呈しているので、各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡されるヘアピン状の番線3の長手方向一端側の折り曲げ部31と、当該番線3の長手方向他端側の両端32,32付近とをフック部2の半円弧状の各フック21,22の回転に伴って確実に係止することができる。
【0042】
更に、各鉄筋A,Bを結束する結束部材として加工の容易な番線3が適用されているので、各フック21,22に係止されたヘアピン状の番線3の長手方向一端側の折り曲げ部31及び番線3の長手方向他端側の両端32,32付近を、電動インパクトドライバーXの回転に伴い互いにスムーズに巻き付けて円滑に捩じり合わせることができる。
【0043】
また、各鉄筋A,Bの交差部Kにおいて当該各鉄筋A,Bに跨るように掛け渡したヘアピン状の番線3の長手方向一端側の折り曲げ部31にフック部2の一方のフック21を挿通させかつ、当該番線3の長手方向他端側の両端付近に他端のフックを係止させた状態で、電動インパクトドライバーXの回転に伴いヘアピン状の番線3の折り曲げ部31と両端32,32付近とを互いに捩じり合わせる各鉄筋A,Bの結束方法によれば、ヘアピン状の番線3による各鉄筋A,Bの確実な結束作業を簡単かつ迅速に行える各鉄筋A,Bの結束方法を提供することができる。
【0044】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、結束部材として、加工の容易ななまし鉄線よりなる番線3(例えば8番線)を適用したが、これに限定されるものではなく、その他の太さの異なる番線はもちろんのこと、工具などを用いることなく人の手により曲げるなどの簡易変形が可能な線材であればなんでもよく、材質の異なる線材であってもよい。
【0045】
また、前記実施の形態では、2本の鉄筋A,Bを交差部Kにおいて結束したが、3本以上の鉄筋などの被結束部材が交差する交差部において当該各被結束部材が結束されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 番線締付具(結束部材締付具)
10 番線締付具本体(結束部材締付具本体)
12 軸部
2 フック部
21,22 フック
3 番線(結束部材)
31 折り曲げ部
32 両端
A,B 鉄筋(被結束部材)
K 交差部
X 電動インパクトドライバー(動力回転工具)
m 軸線
n 直交軸