(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094443
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20220620BHJP
H01L 33/62 20100101ALN20220620BHJP
【FI】
H01L33/48
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207329
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武藏 直樹
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA04
5F142AA05
5F142BA24
5F142CD01
5F142CD32
5F142CE08
5F142CE16
5F142CE22
5F142CE32
5F142CG04
5F142CG05
5F142DB02
5F142DB16
5F142FA03
5F142FA21
(57)【要約】
【課題】テカリの少ない発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
壁部と底部とを有する凹部を備えるパッケージ中間体と、前記凹部内に配置される発光素子と、前記凹部内に配置され前記発光素子を覆う封止部材と、を備える発光装置中間体であって、前記壁部の上面の少なくとも一部はシリコーン樹脂及びカーボンを含む黒色樹脂部材である発光装置中間体を準備する中間体準備工程と、
前記黒色樹脂部材の上面に、処理液としてフッ酸、バッファードフッ酸、フッ酸又はバッファードフッ酸と過酸化水の混合液のいずれかを配置し、前記黒色樹脂部材の表面の少なくとも一部を粗面部とする粗面化工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部と底部とを有する凹部を備えるパッケージ中間体と、前記凹部内に配置される発光素子と、前記凹部内に配置され前記発光素子を覆う封止部材と、を備える発光装置中間体であって、前記壁部の上面の少なくとも一部はシリコーン樹脂及びカーボンを含む黒色樹脂部材である発光装置中間体を準備する中間体準備工程と、
前記黒色樹脂部材の上面に、処理液としてフッ酸、バッファードフッ酸、フッ酸又はバッファードフッ酸と過酸化水の混合液のいずれかを配置し、前記黒色樹脂部材の表面の少なくとも一部を粗面部とする粗面化工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【請求項2】
壁部と底部とを有する凹部を備えるパッケージ中間体であって、前記壁部の上面の少なくとも一部はシリコーン樹脂及びカーボンを含む黒色樹脂部材であるパッケージ中間体を準備する中間体準備工程と、
前記黒色樹脂部材の上面に、処理液としてフッ酸、バッファードフッ酸、フッ酸又はバッファードフッ酸と過酸化水の混合液のいずれかを配置し、前記黒色樹脂部材の表面の少なくとも一部を粗面部とする粗面化工程と、
前記凹部内に発光素子を載置し、前記凹部内に配置され前記発光素子を覆う封止部材と配置する工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記壁部は、黒色ではない色の樹脂部材と、前記樹脂部材の上面であって、前記壁部の上面を構成する前記黒色樹脂部材と、を備える、請求項1又は請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置の製造方法の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
黒色の樹脂パッケージを用いた発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テカリの少ない発光装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の構成を含む。
壁部と底部とを有する凹部を備えるパッケージ中間体と、前記凹部内に配置される発光素子と、前記凹部内に配置され前記発光素子を覆う封止部材と、を備える発光装置中間体であって、前記壁部の上面の少なくとも一部はシリコーン樹脂及びカーボンを含む黒色樹脂部材である発光装置中間体を準備する中間体準備工程と、
前記黒色樹脂部材の上面に、処理液としてフッ酸、バッファードフッ酸、フッ酸又はバッファードフッ酸と過酸化水の混合液のいずれかを配置し、前記黒色樹脂部材の表面の少なくとも一部を粗面部とする粗面化工程と、
を備える発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
以上により、テカリの少ない発光装置を得ることが可能な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】実施形態1に係る発光装置の製造方法によって得られる発光装置の一例を示す模式斜視図である。
【
図2A】実施形態1に係る発光装置の製造方法を説明するための模式斜視図である。
【
図2C】
図2BのIIC-IIC線における模式断面図である。
【
図3A】実施形態1に係る発光装置の製造方法を説明するための模式案面図である。
【
図3B】実施形態1に係る発光装置の製造方法を説明するための模式案面図である。
【
図4A】実施形態2に係る発光装置の製造方法によって得られる発光装置の一例を示す模式斜視図である。
【
図4B】
図4AのIVB-IVB線における模式断面図である。
【
図5A】実施形態3に係る発光装置の製造方法によって得られる発光装置の一例を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。また、各部材は、例えば硬化の前後において、あるいは、切断の前後等において、状態や形状等が異なる場合であっても同じ名称を用いる場合がある。
【0009】
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態において説明する内容は、他の実施の形態にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0010】
処理液によって処理される前の状態のものを「中間体」と称する。つまり、発光装置中間体を処理液で処理することで、発光装置を得ることができる。また、パッケージ中間体を処理液で処理することで、パッケージを得ることができる。
【0011】
発光装置中間体又はパッケージ中間体は、黒色樹脂部材を有する。黒色樹脂部材は、シリコーン樹脂及びカーボンを含む。そして、処理液としてフッ酸、バッファードフッ酸、フッ酸又はバッファードフッ酸と過酸化水の混合液のいずれかと、黒色樹脂部材とを反応させる。これにより、黒色樹脂部材の表面の少なくとも一部を粗面化された粗面部とすることができる。黒色樹脂部材の粗面部は、粗面化される前の黒色樹脂部材に比してテカリが低減されている。
【0012】
黒色樹脂部材は、処理液と反応する材料を含み、具体的には、フェニルシリコーン又はジメチルシリコーン等のポリシロキサン結合を含むシリコーン系樹脂を含む。そして、黒色樹脂部材の一部が、処理液と反応してシロキサン結合が切断されることで、粗面化された粗面部となる。粗面部の表面は、面粗さRaが0.1μm~1.0μm程度の微細な凹凸を含む面である。粗面化される前の黒色樹脂部材の表面は、平坦な面であり、面粗さRaは0.1μmよりも小さい。
【0013】
粗面部は、面粗さのほかに、フーリエ変換赤外分光測定法(FT-IR法)等の分析方法によって分析することができる。詳細には、FT-IR法で得られる吸光スペクトルにおいて、1000~1200cm-1の範囲に出現するスペクトルで比較することができる。この範囲において、粗面化される前の黒樹脂部では高い値を示し、粗面化された後の黒樹脂部(つまり粗面部)はそれよりも低い値を示す。
【0014】
黒色樹脂部材は、その表面の少なくとも一部が粗面部とされる。これにより、発光装置に照射される外光を散乱させ、テカリを低減することができる。
【0015】
<実施形態1>
図1A及び
図1Bは、実施形態1に係る発光装置の製造方法で得られる発光装置100を示す。発光装置100は、凹部を備えるパッケージ10と、凹部内に配置される発光素子17と、を備える。凹部は、パッケージ10の壁部15と底部16とによって規定される。壁部の上面の少なくとも一部は、黒色樹脂部材11である。黒色樹脂部材11の表面の少なくとも一部は、粗面化された粗面部Rである。
【0016】
実施形態1に係る発光装置100の製造方法は、主として以下の工程を備える。
(1-1)壁部と底部とを有する凹部を備えるパッケージ中間体と、凹部内に配置される発光素子と、凹部内に配置され発光素子を覆う封止材と、を備え、壁部の上面の少なくとも一部はシリコーン樹脂及びカーボンを含む黒色樹脂部材である発光装置中間体を準備する中間体準備工程と、
(1-2)黒色樹脂部材の上面に、処理液としてフッ酸、バッファードフッ酸、フッ酸又はバッファードフッ酸と過酸化水の混合液のいずれかを配置し、黒色樹脂部材の表面の少なくとも一部を粗面部とする粗面化工程と、
を備える。
【0017】
(1-1:中間体準備工程)
まず、発光装置中間体100Aを準備する。
図2A~
図2Cに示すように、発光装置中間体100Aは、最終的に発光装置となる複数の発光装置中間体100Aを含む集合体として準備することができる。発光装置中間体100Aの集合体を処理液で処理することで発光装置の集合体を形成し、その後に切断することで、個片化された複数の発光装置を得ることができる。なお、発光装置中間体100Aは、あらかじめ個片化された状態のものを準備してもよい。その場合は、処理液で処理後の個片化工程を省略することができる。
【0018】
発光装置中間体100Aは、壁部15と底部16で規定される凹部を備えるパッケージ中間体10Aと、発光素子17と、封止部材19と、を備える。パッケージ中間体10Aは、絶縁性の黒色樹脂部材11と、導電部材12とで構成される。凹部の壁部15は黒色樹脂部材11で構成されている。つまり、壁部15の上面は、黒色樹脂部材11で構成されている。また、凹部の底部16の上面(底面)は、正負一対の電極となる2つの導電部材12と、2つの導電部材12の間の黒色樹脂部材11とで構成される。
【0019】
発光素子17は、各凹部内において、一方の導電部材12の上に、接合部材を介して載置されている。発光素子17は、導電性のワイヤ18によって、一対の導電部材12にそれぞれ電気的に接続されている。封止部材19は、各凹部内に配置され、発光素子17及びワイヤ18を被覆している。封止部材19は、壁部15の内側面の全面と接している。
【0020】
(1-2:粗面化工程)
次に、
図3Aに示すように、壁部15の上面である黒色樹脂部材11の上面に、処理液Lを配置する。処理液Lを配置する方法は、印刷、ポッティング、スプレー、浸漬処理、ミスト処理等が挙げられる。これにより、
図3Bに示すように、黒色樹脂部材11の上面を粗面化して粗面部Rを形成することができる。
【0021】
封止部材19がシリコーン樹脂を含まない樹脂、例えばエポキシ樹脂等の場合は、発光装置中間体100Aの上面の全面、つまり、壁部15の上面と封止部材19の上面とを含む領域に、処理液Lを配置することができる。シリコーン樹脂を含まないため、封止部材19の上面は粗面化されず、壁部15の上面のみが粗面化される。
【0022】
封止部材19がシリコーン樹脂を含む場合は、封止部材19の上面にマスクを配置しておくことが好ましい。また、壁部15の上面を部分的に粗面化する場合も、粗面化をしない部分をマスクで覆うことができる。これにより、所望の領域を粗面化することができる。
【0023】
次に、凹部間に位置する壁部15を切断する。これにより、
図1A等に示すようなテカリが低減された発光装置100を得ることができる。
【0024】
<実施形態2>
図4A及び
図4Bは、実施形態2に係る発光装置の製造方法で得られる発光装置200を示す。発光装置200では、パッケージ20の壁部15が、黒色ではない色の樹脂部材13と、樹脂部材13上に配置された黒色樹脂部材14と、を備える点において実施形態1と異なる。その他の構成は同じである。樹脂部材13としては、例えば白色樹脂等が挙げられる。
【0025】
このような発光装置200を得る工程は、基本的には実施形態1と同じである。つまり、準備する発光装置中間体の壁部15が、黒色以外の色の壁部15のと、その上面に黒色樹脂部材14を備える点が異なっており、その他の工程は、実施形態1と同じである。これにより、
図4A及び
図4Bに示すような、壁部15の上面を構成する黒色樹脂部材14の表面の少なくとも一部を粗面部Rとすることができる。これにより、テカリが低減された発光装置200を得ることができる。
【0026】
<実施形態3>
図5A及び
図5Bは、実施形態3に係る発光装置の製造方法で得られる発光装置300を示す。発光装置300は、凹部を備えるパッケージ30と、凹部内に配置される発光素子17と、を備える。凹部は、パッケージ10の壁部15と底部16とによって規定される。実施形態3では、壁部15の上面及び内側面が黒色樹脂部材11である。ここでは、壁部15全体が黒色樹脂部材11である例を示しているが、実施形態2のように、壁部が黒色でない色の樹脂部材13であり、その上面及び内側面に黒色樹脂部材14が配置された構造としてもよい。
【0027】
そして、実施形態3では、壁部15の上面及び内側面の黒色樹脂部材11が粗面部Rである。さらに、凹部の底部の上面(底面)に位置する黒色樹脂部材11の少なくとも一部も粗面部Rであってもよい。
【0028】
実施形態3では、中間体準備工程が、発光素子及び封止部材を備えないパッケージ中間体を準備する工程であり、そのパッケージ中間体に対して粗面化工程を行う点において実施形態1及び実施形態2と異なる。そのため、得られる発光装置300において、パッケージ30は壁部15の上面だけでなく、凹部の内側面の黒色樹脂部材11の表面にも粗面部Rを備えることができる。これにより、
図5A等に示すようなテカリが低減された発光装置300を得ることができる。
【0029】
以下、各部材について詳説する。
【0030】
(パッケージ/パッケージ中間体)
パッケージは、壁部と底部とを有する凹部を備える。壁部の上面の少なくとも一部は、シリコーン樹脂及びカーボンを含む黒色樹脂部材である。黒色樹脂部材は、壁部の上面の全面であることが好ましい。パッケージを構成する樹脂の全てを黒色樹脂部材とすることができる。また、パッケージを構成する樹脂のうち、壁部の上面のみが黒色樹脂部材であってもよい。
【0031】
パッケージを構成する樹脂の全てが黒色樹脂部材の場合、パッケージは、射出成形、トランスファ成形等で形成することができる。また、壁部の上面のみが黒色樹脂部材の場合は、黒色樹脂部材以外の材料からなる壁部の上面に、印刷、スプレー、射出成形、トランスファ成形、圧縮成形、貼り合わせ等で黒色樹脂部材を形成することができる。また、黒色樹脂部材以外の材料からなる壁部の外側面にも、黒色樹脂部材を形成することができる。これらのパッケージ又はパッケージ中間体は、上述の方法で形成するほか、購入して準備してもよい。
【0032】
黒色樹脂部材は、樹脂部材として、フェニルシリコーン、又は、ジメチルシリコーンを主として含む。黒色樹脂部材は、これらの樹脂部材中に、黒粒子としてカーボンを含む。カーボンの含有量は、例えば、1重量%~50重量%とすることができる。
【0033】
樹脂部材は、明度が3以下である範囲において、光拡散物質又は蛍光体を含んでいてもよい。光拡散物質としては、例えばSiO2、TiO2、Al2O3、ZnO等の微粒子が挙げられる。蛍光体としては、例えばセリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce);セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce);ユウロピウムおよび/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(CaO-Al2O3-SiO2);ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)2SiO4);βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体、SCASN系蛍光体等の窒化物系蛍光体;KSF系蛍光体(K2SiF6:Mn);硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体などが挙げられる。
【0034】
(発光装置/発光装置の中間体)
発光装置は、パッケージと、発光素子と、を備える。さらに、発光装置は、封止部材、接合部材、ワイヤ等を備えることができる。
【0035】
発光装置の発光素子は、半導体積層体と、正負一対の電極とを含む。発光素子は、可視光又は紫外光を発光可能である。発光素子は、可視光として、青色から赤色までを発光可能である。半導体積層体は、例えばInxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)を含むことができる。
【0036】
半導体積層体は、上述のような発光色を発光可能な発光層を、少なくとも1つ備えることができる。例えば、半導体積層体は、n型半導体層と、p型半導体層との間に1つの発光色を発光可能な発光層を含むことができる。
【0037】
発光装置の接合部材は、光学部材と発光素子とを接合させる部材である。例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の透光性の熱硬化性の樹脂材料等を用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
100、200、300…発光装置
100A、…発光装置中間体
10、20、30…パッケージ
10A…パッケージ中間体
11……黒色樹脂部材
12…導電部材
13…樹脂部材
14…黒色樹脂部材
15…壁部
16…底部
R…粗面部
17…発光素子
18…ワイヤ
19…封止部材
N…ノズル
L…処理液(フッ酸等)