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特開2022-94489コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料の製造方法、焙じ茶飲料及び焙じ茶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094489
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料の製造方法、焙じ茶飲料及び焙じ茶
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
A23F3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207405
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】592074175
【氏名又は名称】株式会社福寿園
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】谷口 良三
(72)【発明者】
【氏名】南口 雅和
(72)【発明者】
【氏名】馬場 拓也
(72)【発明者】
【氏名】竹内 陽子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一登
(72)【発明者】
【氏名】甚田 展宏
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB13
4B027FC01
4B027FC02
4B027FK18
4B027FP66
4B027FP72
4B027FP85
4B027FP90
(57)【要約】
【課題】コーヒー様香味を有し、1日に3杯飲んでもカフェインの推奨摂取量である400mgを超えないとなり、ミルクを添加するとコーヒー牛乳様の香味が得られる新しいタイプの焙じ茶飲料とその製造方法、並びに製造過程で得られる焙じ茶を提供する。
【解決手段】本来低カフェインの原料茶として、所定の成分含有率を満たす1番茶煎茶、1番茶茎茶、1番茶2番茶碾茶茎茶、及び秋番茶茎茶から選んだ2種類の茶を焙煎する工程と、焙煎された原料茶の焙じ茶を所定比率でブレンドして混合物の焙じ茶とする工程と、ブレンドされた混合物の焙じ茶をフィルタに入れて熱湯を分注しドリップ抽出する工程を経ることにより、カフェイン濃度が1.10mg/ml以下の抽出液を、コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料として製造する。ブレンドされた混合物の焙じ茶は、コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料を淹れるために用いる焙じ茶とすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー様香味の焙じ茶飲料の製造方法であって、
全窒素含有率5.4-0.2%以上でタンニン含有率12.5+0.2%以下でカフェイン含有率3.1+0.2%以下の1番茶煎茶、全窒素含有率4.3-0.2%以上でタンニン含有率10+0.2%以下でカフェイン含有率2.8+0.2%以下の1番茶茎茶、カフェイン含有率2.6+0.2%以下の1番茶2番茶碾茶茎茶、及び秋番茶茎茶から選択される2種類の茶を原料茶として焙煎し、当該原料茶の焙じ茶を得る焙煎工程と、
前記焙煎工程を経て得られた前記2種類の原料茶の焙じ茶を所定比率でブレンドし、焙じ茶混合物を得る第1ブレンド工程と、
前記第1ブレンド工程でブレンドされた前記焙じ茶混合物に熱湯を注ぎフィルタを通じて抽出し焙じ茶抽出液を得る第1抽出工程と、を経ることにより、
前記第1抽出工程で得られたカフェイン濃度が1.10mg/ml以下の焙じ茶抽出液を、コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料として製造することを特徴とする焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項2】
前記第1ブレンド工程において、ブレンドする前記2種類の原料茶の焙じ茶の組み合わせとして、質量割合で50~70%の1番茶煎茶の焙じ茶に対して50~30%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶又は50~30%の秋番茶茎茶の焙じ茶、質量割合で60~80%の1番茶茎茶の焙じ茶に対して40~20%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶又は40~20%の秋番茶茎茶の焙じ茶、若しくは質量割合で70~90%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶に対して30~10%の秋番茶茎茶の焙じ茶、の何れか一としている請求項1に記載の焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項3】
前記第1抽出工程において、前記焙じ茶混合物10gに対して80~100℃の熱湯150mlの割合で抽出し、前記焙じ茶混合物に対して前記熱湯を3分間で分注し前記フィルタを通じて抽出することにより前記焙じ茶抽出液を得ることとしている請求項1又は2の何れかに記載の焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項4】
コーヒー様香味の焙じ茶飲料の製造方法であって、
全窒素含有率5.4-0.2%以上でタンニン含有率12.5+0.2%以下でカフェイン含有率3.1+0.2%以下の1番茶煎茶、全窒素含有率4.3-0.2%以上でタンニン含有率10+0.2%以下でカフェイン含有率2.8+0.2%以下の1番茶茎茶、カフェイン含有率2.6+0.2%以下の1番茶2番茶碾茶茎茶、及び秋番茶茎茶から選択される2種類の茶を原料茶として焙煎し、当該原料茶の焙じ茶を得る焙煎工程と、
前記焙煎工程で焙煎された前記2種類の原料茶の焙じ茶にそれぞれ熱湯を注ぎフィルタを通じて抽出することにより各原料茶の焙じ茶抽出液を得る第2抽出工程と、
前記第2抽出工程で得られた前記2種類の原料茶の焙じ茶抽出液を所定比率でブレンドし、焙じ茶抽出液の混合液を得る第2ブレンド工程と、を経ることにより、
前記第2抽出工程で得られたカフェイン濃度が1.10mg/ml以下の焙じ茶抽出液の混合液を、コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料として製造することを特徴とする焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項5】
前記第2ブレンド工程において、ブレンドする2種類の前記原料茶の焙じ茶抽出液の組み合わせとして、質量割合で50~70%の1番茶煎茶の焙じ茶抽出液に対して50~30%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液又は50~30%の秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液、質量割合で60~80%の1番茶茎茶の焙じ茶抽出液に対して40~20%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液又は40~20%の秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液、若しくは質量割合で70~90%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液に対して30~10%の秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液、の何れか一としている請求項3に記載の焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項6】
前記第2抽出工程において、前記2種類の原料茶の焙じ茶10gに対して80~100℃の熱湯150mlの割合で抽出し、前記各焙じ茶に対して前記熱湯を3分間で分注し前記フィルタを通じて抽出することにより前記原料茶の焙じ茶抽出液を得ることとしている請求項請求項4又は5の何れかに記載の焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項7】
前記焙煎工程の前工程として、前記原料茶である各茶種を1~6mmの長さにカットするカット工程を含み、
前記焙煎工程において、カットされた原料をドラム火入れ機に投入し、焙煎温度をドラム鉄板温度で210℃±20℃に設定し、焙煎時間を、1番茶煎茶では12.5~20分間、1番茶茎茶では10~20分間、1番茶2番茶碾茶茎茶では10~20分間、秋番茶茎茶では10~20分間に設定している請求項1乃至6の何れかに記載の焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項8】
前記第1抽出工程で得た前記焙じ茶抽出液、又は前記第2ブレンド工程で得た前記焙じ茶抽出液の混合液に、所定割合のミルクを添加するミルク添加工程を含み、コーヒー牛乳様の香味を有する焙じ茶飲料を得る請求項1乃至7の何れかに記載の焙じ茶飲料の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れに記載の焙じ茶飲料の製造方法により製造されることを特徴とする焙じ茶飲料。
【請求項10】
請求項1に記載の焙じ茶飲料の製造方法において、前記第1ブレンド工程後に混合物として得られたものであることを特徴とする焙じ茶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー様香味を呈する焙じ茶飲料の製造方法と、その製法による焙じ茶焙じ茶飲料、並びに熱湯抽出前の焙じ茶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国内では、コーヒー(レギュラーコーヒーとインスタントコーヒー合計)の消費量は、470,213t(全日本コーヒー協会統計資料,2018年)であり、統計が取られた年は異なるものの、緑茶の消費量86,672t(令和元年度茶関係資料 公益社団法人 日本茶業中央会,2019年)の約5.4倍に上っている。緑茶の消費を伸ばす観点で、コーヒーが緑茶よりもこれほど多く消費されているのかという理由を、次のように検討した。
【0003】
(1)レギュラーコーヒーの抽出方法は、ペーパーフィルタを使うドリップ抽出であり、緑茶の急須を使った掩茶方法と同様に手間をかけて抽出しているため、緑茶の淹れ方に手間がかかることが原因ではない。(2)日本食品標準成分表2015年版7訂(文部科学省ホームページより)によるとカフェインの含有量は、コーヒーでは0.06g/10g/150ml/熱湯であり、玉露では0.16g/10g/60ml/60℃/2.5分、抹茶では3.2g/粉末、煎茶では0.02g/10g/430ml/90℃/1分とされており、緑茶の種類によってはコーヒー以上にカフェインが含まれていることから、カフェイン含有量の多少が緑茶の消費量を抑制している理由とはいえない。(3)コーヒーには嗜好性の高い濃厚な香味と酸味と香ばしさがある一方で、緑茶では玉露や抹茶に濃厚な旨味とまろやかさがあるが、濃厚な香味と酸味と香ばしさを訴求した焙じ茶はこれまでのところ見られない。(4)朝食にパン食が多くなり、それに合う飲料として、コーヒーや、ミルクを加えたマイルドなコーヒーの需要が高い一方で、緑茶の香味は米食に合うが、濃厚で香ばしくミルクを加えてもパン食に合う緑茶は見受けられない。このような検討から、上記の(3)及び(4)に着目すると、コーヒーのような濃厚で香ばしい香味の緑茶を開発することが、緑茶の需要を伸ばす方法として有望であると考えられた。
【0004】
これまでのところ、コーヒー様香味を主たる課題とした焙じ茶リーフの製造技術は、緑茶及びその製造方法の技術分野においては見当たらないが、緑茶飲料の香ばしさを求めた低カフェインに関する技術として、特許文献1には、焙煎香が際立ち、渋味のコクがありながらもあっさりとした味わいを備える「容器詰め焙じ茶飲料」が開示されている。この焙じ茶飲料は、カフェイン濃度が90ppm未満となるように熱水シャワーを使って低カフェイン化した茶葉を使用し、非還元糖/還元糖の比率を5~15、没食子酸の濃度を20~80ppm、pHを5.5~6.3の範囲としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-155878号公報
【0006】
ところで、厚生労働省ホームページに示された「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてのQ&A」や、農林水産省ホームページに示された「カフェインの過剰摂取について」における「各国におけるカフェインの摂取に関する注意喚起等」によると、カナダ保健省、米国保健福祉省(DHHS)及び農務省(USDA)、欧州食品安全機関(EFSA)では、大人のカフェインの最大1日当たり摂取量を400mgが目安であるとされている。そこで、本発明者らは、カフェインの最大1日当たり摂取量を目安として用い、1日に3杯飲んでも最大で400mg程度となるカフェイン含有量に制御したコーヒー様香味の焙じ茶を開発することが、緑茶の消費量拡大に寄与するものと考えられた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、全窒素含有率が高い上級煎茶を低温域で長時間焙煎を行い、それを濃厚に抽出すると、深煎りコーヒーのような酸味、焙煎の香ばしさ、コク味が得られることを数多くの火入れ実験の中で希少に経験してきている。また、秋番茶茎茶を低温域で長時間焙煎し、濃厚に抽出すると、浅煎りのコーヒー豆様の香味が得られることを数多くの火入れ実験で希少に経験してきた。このような経験を通じて、焙じ茶でコーヒー様の香味が引き出すことができれば、増加しているコーヒー需要のなかで、緑茶の需要増が期待できるものと考えられた。そこで、これらの経験を生かし、茶種を組み合わせてコーヒー様香味を呈する焙じ茶飲料の製造方法を究明することとした。
【0008】
このような焙じ茶飲料、及び熱湯抽出前の焙じ茶を開発するに際して、緑茶を原料として、コーヒーの淹れ方と同じペーパーフィルタ等のフィルタを使ったドリップ抽出を行い、カフェインが推奨値程度に制御され、苦渋味が少なく濃厚な香味とローストした香ばしさと穏やかな酸味のコーヒー様の香味があり、ミルクを加えるとマイルドな乳香味のあるコーヒー牛乳様の香味が得られる焙じ茶飲料とその製造方法を課題とした。また焙じ茶飲料及びその製造方法の開発に伴って、熱湯で抽出する前の段階の焙じ茶も同時に得ることができる。カフェイン含有量は、上述したようにカフェイン1日当たりの目安として世界主要国の保健機関により「健康な成人で400mg/日」が目安として示されていることを参考に、これを1日最大摂取量として、本発明の焙じ茶を1日3杯飲用してもカフェイン摂取量が400mg程度となる範囲である1杯当たりのカフェイン含有量として概ね133mgを基準とし、標準的な焙じ茶の抽出後の液量の最大量120mlで割ったカフェイン濃度である概ね1.10mg/ml程度を上限値となるように検討することとした。
【0009】
すなわち、コーヒー様香味の焙じ茶飲料の開発条件としては、コーヒーに代えて日常的に飲むことができる緑茶飲料としての焙じ茶飲料の開発を主たる目的とし、(A)3杯飲んだ場合のカフェイン摂取量が最大で400mg程度に収まる焙じ茶飲料となるように、1杯あたりのカフェイン濃度が最大で1.10mg/ml程度であること、(B)緑茶原料で、コーヒー様の濃厚な香味とローストした香ばしさと穏やかな酸味があり、緑茶特有の苦渋味が少ない焙じ茶飲料であること、(C)家庭で焙じ茶を淹れることも想定し、試験段階としてはペーパーフィルタ等のフィルタを使ったドリップ抽出方法で淹れてコーヒー様香味がある焙じ茶飲料であること、(D)ミルクを加えるとマイルドな乳香味が得られる焙じ茶飲料であること、を目指す開発条件とすることとした。
【0010】
このような観点から検討すると、特許文献1に開示された焙じ茶飲料の製造方法では、低カフェイン処理を施した状態の茶葉を用い、各種成分の含有量も一定の割合になるように調整して焙じ茶飲料を製造していることから、製造工数や製造コストが増加するものと考えられ、日常的にコーヒーに代えて常飲することを目的とした焙じ茶飲料とするには価格的に見合わない可能性があると考えられ、そもそもコーヒー様の濃厚な香味の焙じ茶を作ることを目標としていない。
【0011】
そこで本発明者らは、焙煎することで単独でも濃厚な香味等が得られるがカフェイン含有量が比較的多い茶種と、本来低カフェインである茶種とを組み合わせてカフェイン含有量を規定値以下に制御しつつ、上述した(A)~(D)の条件を満たすようなコーヒー様香味を有する焙じ茶飲料の製造方法と、その方法により得られる焙じ茶を提供することを目的とし、次のような手法により研究することとした。
【0012】
まず、焙じ茶のコーヒー様香味の有無を確認するための試験として、緑茶の多くの茶種及び品質毎に粒度を一定に揃えてカットし、低温長時間火入れで焙じ茶を作り、ドリップ抽出方法により得られた抽出液について官能審査をしたところ、コーヒー様香味がある茶種と品質があることが解った。次に、茶種・品質の選定として、ドリップ抽出においてコーヒー様香味のある茶種と品質、濃厚に抽出しても苦渋味が少ない茶種と品質を選定した。さらに、最適火入れ程度を検討するに際しては、ドリップ抽出においてコーヒー様香味を最高に引き出すための焙煎の程度を、火入れ時間を変えて試作し、ドリップ抽出液の官能審査と成分分析により選択した。抽出液の分析にあたっては、ドリップ抽出液のBrix、pH、カフェイン量、カテキン量を分析し、コーヒー様香味をもつ抽出液を選定した。焙煎した原料茶の焙じ茶をブレンドする方法についても、ドリップ抽出において、カフェイン濃度が概ね1.10mg/ml以下に抑制され、かつコーヒー様香味を引き出すためのブレンド方法とブレンド割合を検討し、さらにミルクを加えた時にマイルドな乳香味のあるコーヒー牛乳様の香味が得られる焙じ茶を選択した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のような研究結果として得られた本発明に係るコーヒー様香味を有する焙じ茶飲料の製造方法のうち、第1の製造方法は、全窒素含有率5.4-0.2%以上でタンニン含有率12.5+0.2%以下でカフェイン含有率3.1+0.2%以下の1番茶煎茶、全窒素含有率4.3-0.2%以上でタンニン含有率10+0.2%以下でカフェイン含有率2.8+0.2%以下の1番茶茎茶、カフェイン含有率2.6+0.2%以下の1番茶2番茶碾茶茎茶、及び秋番茶茎茶から選択される2種類の茶を原料茶として焙煎し、各原料茶の焙じ茶を得る焙煎工程と、焙煎工程を経て得られた2種類の原料茶の焙じ茶を所定比率でブレンドして焙じ茶混合物を得る第1ブレンド工程と、この第1ブレンド工程でブレンドされた焙じ茶混合物に熱湯を注ぎフィルタを通じて抽出し焙じ茶抽出液を得る第1抽出工程とを経て、得られたカフェイン濃度が1.10mg/ml以下の焙じ茶抽出液を、コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料として製造することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係るコーヒー様香味を有する焙じ茶飲料の製造方法のうち、第2の製造方法は、全窒素含有率5.4-0.2%以上でタンニン含有率12.5+0.2%以下でカフェイン含有率3.1+0.2%以下の1番茶煎茶、全窒素含有率4.3-0.2%以上でタンニン含有率10+0.2%以下でカフェイン含有率2.8+0.2%以下の1番茶茎茶、カフェイン含有率2.6+0.2%以下の1番茶2番茶碾茶茎茶、及び秋番茶茎茶から選択される2種類の茶を原料茶として焙煎し、各原料茶の焙じ茶を得る焙煎工程と、焙煎工程で焙煎された2種類の原料茶の焙じ茶にそれぞれ熱湯を注ぎフィルタを通じて抽出することにより各原料茶の焙じ茶抽出液を得る第2抽出工程と、第2抽出工程で得られた2種類の原料茶の焙じ茶抽出液を所定比率でブレンドし、焙じ茶抽出液の混合液を得る第2ブレンド工程とを経て、得られたカフェイン濃度が1.10mg/ml以下の焙じ茶抽出液の混合液を、コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料として製造することを特徴とするものである。
【0015】
焙煎工程で得られた2種類の原料茶の焙じ茶を、第1の製造方法ではそのまま混合してブレンドして得られる焙じ茶混合物を熱湯抽出するか、第2の製造方法ではそれぞれ熱湯抽出して各原料茶の焙じ茶抽出物を得てからブレンドするか、という順序の前後に第1の製造方法と第2の製造方法とで違いあるが、焙じ茶混合物のブレンド比率と焙じ茶抽出液の混合液のブレンド比率を同等にした場合には、最終的に得られる焙じ茶飲料におけるコーヒー様の香味は同程度となることを研究により確認することができており、発明としての本質に違いはない。
【0016】
上述した原料茶について、1番茶煎茶は茶期が1番茶の煎茶葉であり、1番茶茎茶は1番茶の選別過程で得られる茎茶であり、1番茶2番茶碾茶茎茶は1番茶及び2番茶の碾茶の選別過程で得られる茎茶であり、秋番茶茎茶は秋番茶の茎茶である。このなかから、1番茶煎茶、1番茶茎茶については、単独で焙煎し焙じ茶としてドリップ抽出することによりコーヒーのような香味を呈した原料茶から、全窒素含有率、タンニン含有率、カフェイン含有率を絞り込み、本発明に適した原料茶とした。同様に、1番茶2番茶碾茶茎茶については、焙じ茶とした場合に本発明に適した原料茶のカフェイン含有率を絞り込んで、本発明に適した原料茶とした。秋番茶茎茶については、本来のカフェイン含有率の低さと、焙じ茶とした場合のコーヒーのような香ばしさや濃厚さ、酸味を呈する抽出液が得られることから、原料茶の1種として選定した。すなわち、これらの原料茶の候補から、単独で焙煎して得た焙じ茶を熱湯抽出すると深煎りコーヒーのような酸味、焙煎の香ばしさ、コク味が得られるもののカフェイン含有率が高すぎる茶種と、カフェイン含有率が低い茶種を適切に組み合わせることで、本発明において目的とするコーヒー様香味を有する焙じ茶が得られるようにしている。
【0017】
このような本発明の製造方法による焙じ茶飲料は、従来の茶飲料にはなかったコーヒー様の香味、すなわち濃厚な香味と酸味と香ばしさを有しており、日常的にコーヒーを飲んでいる消費者にもコーヒーの代わりに飲んでもらうことができるものであり、緑茶の消費量を向上させることができるものである。特に、本発明の製造方法により得られる焙じ茶飲料は、抽出液としてカフェイン濃度が1.10mg/ml以下であり、1杯の焙じ茶の抽出量が120mlであるとすると、1杯当たりのカフェイン摂取量が最大132mgであることから、1日に3杯飲んでも推奨の目安とされているカフェイン摂取量400mgを超えることがなく、安心して飲むことができるものである。このように、本発明は、カフェイン含有率が高い茶種と低い茶種を複数焙煎し、それをブレンドして抽出する方法、又は抽出してからブレンドする方法により、コーヒー様の香味を有する焙じ茶飲料を得るという製造方法は従来には行われておらず、全く新しい製法による新規且つ有益な焙じ茶飲料を提供するものである。
【0018】
本発明の焙じ茶飲料の製造方法においては、焙煎工程の前工程として原料茶である各茶種を1~6mmの長さにカットするカット工程を経るものとして、焙煎工程において、カットされた原料茶をドラム火入れ機に投入し、焙煎温度をドラム鉄板温度で210℃±20℃に設定し、焙煎時間を、1番茶煎茶では12.5~20分間、1番茶茎茶では10~20分間、1番茶2番茶碾茶茎茶では10~20分間、秋番茶茎茶では10~20分間に設定することが好適である。後述する通り、実験の結果、本発明に適した焙じ茶飲料の製造方法としては、3mm程度の長さにカットした原料を用い、これを焙煎する際には、ドラム火入れ機内で上記のような所定の温度範囲とし、各原料茶種に応じた時間で焙煎することが、コーヒー様香味を呈する焙じ茶飲料の製造に最適であることが分かった。
【0019】
特に第1の製造方法において、コーヒー様香味の良好な焙じ茶飲料を製造するためには、第1ブレンド工程において、焙煎工程を経た次のような2種類の茶種の組み合せとすることが望ましい。具体的には、(a)質量割合で50~70%の1番茶煎茶の焙じ茶に対して、(a-1)50~30%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶、又は(a-2)50~30%の秋番茶茎茶の焙じ茶、(b)質量割合で60~80%の1番茶茎茶の焙じ茶に対して、(b-1)40~20%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶、又は(b-2)40~20%の秋番茶茎茶の焙じ茶、(c)質量割合で70~90%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶に対して、30~10%の秋番茶茎茶の焙じ茶、という組合せが好適である。なお、1番茶煎茶の焙じ茶と1番茶茎茶をブレンドしたものも採用することができるが、これらの茶種の香味が近似していることから、いずれか一方の茶種を50%以内の質量割合とし、残りを他方の茶種とすればよい。
【0020】
一方、第2の製造方法を採用する場合に、コーヒー様香味の良好な焙じ茶飲料を製造するためには、第2ブレンド工程において、第2抽出工程を経た2種類の原料茶の焙じ茶抽出液を次のようなブレンドの組み合わせとすることが望ましい。すなわち、(a’)質量割合で50~70%の1番茶煎茶の焙じ茶抽出液に対して、(a’-1)50~30%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液、又は(a’-2)50~30%の秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液、(b’)質量割合で60~80%の1番茶茎茶の焙じ茶抽出液に対して、(b’-1)40~20%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液、又は(b’-2)40~20%の秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液、若しくは(c’)質量割合で70~90%の1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液に対して30~10%の秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液、という組合せとすることが好適である。なお、1番茶煎茶の焙じ茶抽出液と1番茶茎茶の焙じ茶抽出液をブレンドして焙じ茶抽出液の混合物とすることも可能であるのは、第1の製造方法において上述したことと同じ理由による。
【0021】
また、本発明の焙じ茶飲料の製造に際して、小規模の製造の際には、第1抽出工程又は第2抽出工程で用いるフィルタには、コーヒー抽出用のペーパーフィルタ又はネルフィルタ、若しくは微細な間隙を有するステンレス網フィルタが適しており、抽出に際しては、原料茶の焙じ茶又はその混合物10gに対して150mlの割合となる80~100℃の熱湯を3分間で分注し、熱湯によるドリップ抽出をすることによって、高いコーヒー様香味を有する焙じ茶飲料を約120mlの割合で得ることができる。一方、工場規模での製造の際には、例えば大型の抽出容器の底部に配置できる適宜のフィルタを用い、その上に原料茶の焙じ茶又はその混合物を層状に詰めて熱湯でシャワー抽出するような構成を採用すればよく、抽出に用いる焙じ茶(又は焙じ茶混合物)と熱湯の量の比率や抽出時間等の条件は、設備等の状況に合わせて適宜に設定するとよい。
【0022】
このように得られた焙じ茶飲料には、所定割合のミルクを添加する工程を追加することで、コーヒー牛乳のような香味が得られるマイルドな焙じ茶飲料とすることができる。これにより、ブラックコーヒー様の香味を有する焙じ茶飲料だけでなく、コーヒー牛乳(ミルクコーヒー)様の香味を有する焙じ茶飲料の提供が可能となり、コーヒーに代わる緑茶飲料のバリエーションを広げることができる。
【0023】
以上のような製造方法により得られる本発明の焙じ茶飲料は、これまでになかったコーヒー様香味を有する緑茶系飲料として、コーヒーに代わる嗜好品として日常的に飲むことができ、1日に3杯(1杯あたり120ml)飲んでもカフェイン摂取量が400mgまでという目安の推奨量を満たすものであり、緑茶の新たな需要を起こし、緑茶の消費量を増やすことができるものである。
【0024】
また、第1の製造方法において焙じ茶飲料を熱湯抽出する前の段階の焙じ茶は、上述した焙じ茶飲料の製造方法のうち、焙煎工程と第1ブレンド工程を経ることで焙じ茶混合物として得られるものである。このような焙じ茶は、コーヒー様香味の焙じ茶飲料の工場での生産時の材料として利用することができる上に、コーヒー様香味の焙じ茶(乾燥物)として市販することで、家庭等でもフィルタで抽出すれば容易にコーヒー様香味の焙じ茶飲料を作って飲むことができるものである。
【発明の効果】
【0025】
以上に述べたように、本発明によれば、比較的高品質(高カフェイン)な茶種と低カフェイン茶種の2種類をそれぞれ焙煎し、それをブレンドして熱湯で抽出することによって、あるいは焙煎後に熱湯で抽出した後にブレンドすることによって、コーヒーのような香ばしさや濃厚さといった香味を備えた焙じ茶飲料を得ることができ、その焙じ茶飲料のカフェイン濃度が1日に3杯飲んでも推奨される上限の400mgを超えない程度のものである。そのため、コーヒーに代えて飲むことができる緑茶として、新たな緑茶の需要を喚起することができるものであり、斬新な緑茶及び緑茶飲料、並びにその製造方法を市場に提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態として第1の製造方法による焙じ茶飲料、焙じ茶の製造工程を示す図。
図2】同実施形態で用いた原料茶候補の成分と焙煎条件を一覧表として示す図。
図3】同実施形態における原料茶候補の焙じ茶の抽出液に対する官能評価と成分分析の測定結果を一覧表として示す図。
図4】同実施形態において原料茶候補から選ばれた原料茶の成分を一覧表として示す図。
図5】同実施形態における原料茶について焙煎時間を変更して作成した焙じ茶の抽出液に対する官能評価と成分分析の測定結果を一覧表として示す図。
図6】同実施形態において2種類の原料茶のブレンド比率を変更して作成した焙じ茶の官能評価とカフェイン濃度の測定結果を一覧表として示す図。
図7】同実施形態に基づいて行った本発明の一実施例における官能評価及び成分評価の結果を一覧表として示す図。
図8】本発明の他の実施形態として第2の製造方法による焙じ茶飲料の製造工程を示す図。
図9】第2の製造方法と第1の製造方法におけるブレンドタイミングの違いに基づき、第2ブレンド工程におけるブレンド比率の検討条件と香味評価の結果を一覧表として示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1の製造方法>
図1に本発明の第1の製造方法に基づいて示すスキームの通り、本実施形態のコーヒー様香味を有する焙じ茶飲料3、及び焙じ茶2(原料茶1を焙煎して焙じ茶とし、熱湯で抽出する前の乾燥状態のもの)の製造方法は、4種類の原料茶(荒茶)1から選択した2種類を粒度が3mmとなるように切断するカット工程S1、カットされた2種類の原料茶1をそれぞれ焙煎して原料茶の焙じ茶を作成する焙煎工程S2、焙煎された原料茶1(原料茶1の焙じ茶)から得られた焙じ茶2を適切な割合でブレンドする第1ブレンド工程S3、ブレンドされた所定量の焙じ茶2をフィルタに入れて所定量、所定温度の熱湯で所定時間抽出する第1抽出工程S4を経ることにより得られる。第1ブレンド工程S3で得られた2種類の原料茶1から作られた焙じ茶(焙じ茶混合物)2は、コーヒー様香味を有する飲料としての焙じ茶を淹れることができる乾燥状態の焙じ茶2として、袋詰めするなどして市販や卸売することができるものである。また、第1抽出工程S4で得られた焙じ茶抽出液である焙じ茶飲料3は、コーヒー(ブラックコーヒー)様の香味を有するものであり、容器詰めの緑茶飲料として市販や卸売することや、店頭販売等も可能なものである。さらに、この焙じ茶飲料3には、所定量のミルクを添加するミルク添加工程S5を経ることで、コーヒー牛乳様の香味を有する焙じ茶飲料3Mとして、容器詰めの市販や卸売、あるいは店頭販売等も可能なものである。
【0028】
<原料茶の選定と焙煎条件>
原料茶を選定するにあたって、10種類の荒茶を候補とした。原料茶候補の荒茶の全窒素とタンニン値、カフェイン値(何れも含有率を%で表している)を、近赤外線分析装置(静岡製機製「茶成分分析計 INSTALAB600」)を使って測定した結果及び製造設定を図2に一覧表として示す。同図の通り、全窒素含有率の違いによる原料茶としての適否を調べるため、茶葉の候補には、まず1番茶(煎茶)については、全窒素含有率が異なる3種類として、全窒素含有率5.4%の1番茶煎茶(図中、「1番茶N5.4」と表記。以下同じ)、同5.0%の1番茶煎茶(1番茶N5.0)、同4.8%の1番茶煎茶(1番茶N4.8)を用いた。他の茶葉(煎茶)の候補としては、全窒素含有率4.7%の2番茶煎茶(2番茶N4.7)、全窒素含有率4.0%の3番茶煎茶(3番茶N4.0)、全窒素含有率3.5%の秋番茶(秋番茶N3.5)を用いた。茎茶の候補としては、1番茶茎茶(全窒素含有率4.3%)、2番茶茎茶(全窒素含有率3.2%)、1番茶2番茶碾茶茎茶(全窒素含有率3.9%)、秋番茶茎茶(全窒素含有率2.4%)を用いた。ここで、煎茶の候補としての1番茶には、比較的高品質なものを選定しているが、あまりに高品質すぎるとカフェイン含有率が高いため、全窒素含有率が5.4%以下のものに限定して選択した。2番茶と3番茶には、その茶期において高品質な茶葉を選択し、秋番茶には、一般的に流通しているものを選択した。また、各茎茶には、一般的に流通量が多いものを選択した。
【0029】
荒茶を焙煎してコーヒー様香味を引き出すための粒度は、粗すぎると抽出濃度が低くなることや焙じ火入れが中心まで届かずに表面と中心との均一性が図れず、その一方で細かすぎると火入れ時に細かい粒子から焦げが生じ均一性が図れない。実験の結果、焙煎時のカット粒度の範囲は1~6mmが好ましく、3mmが最も好ましいことが判明した。そこで、カット工程S1では、中粒の3mmのカット粒度を選択して、粉の発生が少ないホーライ社製粉砕機、篩目開き3mmを使用した。
【0030】
原料茶候補を焙煎し焙じ茶を作る際には、試験用として横山式4Kg型ドラム焙じ機を使用し、原料茶候補の投入量を300gとして、ドラム設定温度は焙じ香味が発揚する低温域の160℃とした。ここで、ドラム設定温度は、燃焼ガス排気温度を計測し、雰囲気温度はドラム内空間温度を計測している。ドラム設定温度が160℃より低温では、焙じ香が発生しにくくコーヒー様香味に到達せず、160℃より高温では茶が膨れ短時間で軽い焙じ香味が発生し、コーヒー様の重厚な香ばしさが発揚しにくいことが実験を通じて判明した。ドラム設定温度を160℃としたときのドラム鉄板温度を放射温度計で計測すると平均210℃±20℃であった。なお、大量生産時には、通常の茶葉ドラム火入れ機を用い、ドラムの茶葉との接触表面温度を制御すれば良い。この試験を通じて、焙煎時間は通常の焙じ茶よりも低温で長時間をかけて焙煎することで、コーヒー様香味を発揚し易くなることが分かった。また、茶品質により火入れ時間が異なるため、本茶は全窒素含有率5.4%の1番茶煎茶(1番茶N5.4)の焙じ茶の色沢を、茎茶焙じ茶は1番茶茎茶の焙じ茶の色沢を標準に調整した。
【0031】
このように焙煎して焙じ茶とした原料茶候補について、コーヒー様香味を発揚する焙じ茶に適した茶種と品質を選定するため、各原料茶候補の焙じ茶(図中では、原料茶の名称の後に「焙じ茶」を付して称する)を実際に熱湯でドリップ抽出し、官能評価と成分分析を行った。ドリップ抽出の方法として、200mlビーカー上に茶漉しネットカップを付けてコーヒーフィルタ(ボンテール社製、「コーヒーフィルター ブラウン」)を乗せ、そのコーヒーフィルタに10gの原料茶候補の焙じ茶を入れ、30mlの熱湯(90℃)を注いで30秒蒸らし、その後30秒毎に30mlの熱湯を5回に分けて分注し、合計3分で抽出することによって焙じ茶抽出液を得る、という方法(10g/150ml/90℃/3分)を採用した。比較のため、コーヒー粉末(小川珈琲社製「プレミアムブレンド 2020.12.19」)を対象として、同様に抽出した。なお、フィルタには、コーヒーフィルタとして利用されている一般的なペーパーフィルタの他に、ネルフィルタや微細な間隙のあるステンレス網フィルタを用いてもよい。
【0032】
原料茶の焙じ茶抽出液と、比較としてのコーヒーの抽出液に対する官能評価と成分分析の測定結果を図3に示す。官能評価では、コーヒーの抽出液を標準として、各原料茶の焙じ茶抽出液の水色、香味を経験豊富な5名によって評価した。成分分析では、Brix、pH、カフェイン濃度、カテキン濃度を計測した。Brix計はATAGO社製の「RX-DD7α-Tea」、pHメータはカスタム社製「pH-6600」、カフェイン濃度とカテキン濃度の分析は島津製作所社製の液体クロマトグラフをそれぞれ使用した。
【0033】
官能評価と成分分析の結果から、まず、全窒素含有率5.0%以上の1番茶煎茶の焙じ茶抽出液に上質感のあるコーヒー様香味があることを確認し、本実施形態の焙じ茶及び焙じ茶飲料の原料として適していると判断された。1番茶煎茶の好ましい成分範囲は、図2の成分分析結果から、全窒素含有率が5.4-0.2%以上、タンニン含有率が12.5+0.2%以下、カフェイン含有率が3.1+0.2%以下とした。1番茶煎茶でも全窒素含有率が5.0%よりも低下すると、カテキン含有量が多く苦渋味が強くなり適さなくなることが分かった。2番茶煎茶、3番茶煎茶の各焙じ茶抽出液では、より苦渋味が強くなりコーヒー飲用と同等の濃度では飲用に適さなかった。秋番茶の焙じ茶は、特有の硬葉味を感じコーヒー様香味の原料には適さなかった。1番茶茎茶の焙じ茶抽出液は、渋味が少なくシャープな味わいと甘さがあり、僅かに上質なコーヒー様香味があることを確認し、本実施形態の焙じ茶の原料として適していると判断された。1番茶茎茶の好ましい成分範囲は、全窒素含有率が4.3-0.2%以上、タンニン含有率が10+0.2%以下、カフェイン含有率が2.8+0.2%以下とした。なお、茶葉の含有量が少ないほどカフェイン含有率が低下するため、茎茶には茶葉の含有が少ないことが好ましいが、20質量%以内で茶葉が含まれていることは許容される。2番茶茎茶の焙じ茶抽出液は、コーヒーの豆様の香味をやや感じるが、渋味が強くなり濃厚に引用するには適さないとして除外した。1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液は、淡白な味わいと青茎臭が残ったが、渋味が少なくコーヒー豆様の香味が僅かにあり、焙煎を強めることでコーヒー豆様香味の発揚が期待でき、本実施形態の焙じ茶及び焙じ茶飲料の原料として適していると判断され、好ましい成分範囲は、カフェインが2.6+0.2%以下とした。1番茶2番茶碾茶茎茶における1番茶碾茶茎茶と2番茶碾茶茎茶の比率は、2番茶碾茶茎に渋味や雑味があるため、1番茶碾茶茎を2番茶碾茶茎よりも多く使用するのが好ましいといえる。秋番茶茎茶の焙じ茶は、コーヒー豆様の香味を強く感じ、タンニンやカフェインが少なく高濃度でも飲用でき、成分範囲は特定しなくとも、本実施形態の焙じ茶の原料として用いることができることが分かった。なお、近赤外分析装置の機種間誤差が発生し、規定値以上の品目については-0.2%、既定値以下の品目については+0.2の測定誤差は許容されるものとした。
【0034】
また、官能評価の結果から、コーヒー香味にはコーヒーの特有の深煎り~浅煎りのローストした香ばしさ、酸味、コク味を表すコーヒー様香味と、中煎り~浅煎りコーヒーで味わえる少し青さのあるコーヒー豆様の香味があり、1番茶煎茶の焙じ茶抽出液や1番茶茎茶の焙じ茶抽出液にはコーヒー様香味があり、1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液、秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液にはコーヒー豆様の香味があることが分かった。以下、コーヒー様の香味と、コーヒー豆様香味を区別して表現する。以上の結果から、上述したコーヒー様香味の焙じ茶及び焙じ茶飲料を作るために限定される荒茶の茶種と成分範囲(近赤外線分析値)をまとめ、図4に一覧表として示す。
【0035】
<原料茶の抽出液の分析>
原料茶として適していると判断された全窒素含有率5.4%の1番茶煎茶、1番茶茎茶、1番茶2番茶碾茶茎茶及び秋番茶茎について、コーヒー様香味を最大限引き出すための焙じ火入れ(焙煎)程度を求めるため、ドラム設定温度を160℃、ドラム鉄板温度を210℃±20℃として、ドラム焙煎時間を8分~30分まで変化させて弱火~強火を作った。それをドリップ抽出方法により抽出して焙じ茶抽出液を作成し、コーヒー様香味及びコーヒー豆様の香味の有無強弱を官能審査により評価し、Brix、pHを計測し、カフェイン濃度、カテキン濃度を分析した。その結果を図5に示す。官能審査で香味をコーヒー様香味が強い「〇」評価だけに絞り込み、精度を高くした。背景をグレーとした「〇」評価のうち、背景を濃いめのグレーとしたものは、「最適」と評価されるものである。なお、官能評価は官能評価に優れた5名の合意とした。また、比較対象として、コーヒー抽出液と、各原料茶種の粉砕品の抽出液を用いた。
【0036】
この結果から、原料茶としての1番茶煎茶の焙じ茶とその抽出液については、160℃で15~20分の焙煎で、最適の評価が得られたのは15分焙煎したものであり、シャープで濃厚でコク味とやや渋味があるコーヒー様香味が得られた。1番茶茎茶の焙じ茶とその抽出液については、160℃で12.5~15分の焙煎で、最適の評価が得られたのは15分焙煎したものであり、濃厚で苦渋味が少なくコク味がありシャープで香ばしいコ―ヒー様香味が得られた。1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶とその抽出液については、160℃で12.5~15分の焙煎で、最適の評価が得られたのは15分焙煎したものであり、苦渋味が少なく甘香ばしさがあり、碾茶の茎味が薄いコーヒー豆様を感じさせる香味が得られた。秋番茶茎茶の焙じ茶とその抽出液については、160℃で12.5~15分の焙煎で、最適の評価が得られたのは12.5分焙煎したものであり、苦渋味が少なく甘香ばしさがあり、秋番茶茎茶の茎味が薄いコーヒー豆様を感じさせる香味が得られた。
【0037】
<第1ブレンド工程におけるブレンド比率の検討>
以上の結果を踏まえ、各原料茶種のカフェインが制御されたコーヒー様(コーヒー豆様)香味を有する焙じ茶の最適な配合比率を次のようにして調べた。すなわち、各原料茶種の焙じ茶毎の配合比率を種々に変更し、ドリップ抽出した時の抽出液の官能審査結果、及びミルクを5%加えた時のマイルドな乳香味の評価、算出によるカフェイン濃度を図6に一覧表として示す。図6(1)は、1番茶煎茶の焙じ茶に1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶、又は秋番茶茎茶の焙じ茶に各種の比率でブレンドした場合の各焙じ茶混合物の抽出液の評価、図6(2)は、1番茶茎茶の焙じ茶に1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶、又は秋番茶茎茶の焙じ茶に各種の比率でブレンドした場合の各焙じ茶混合物の抽出液の評価、図6(3)は、1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶に秋番茶茎茶の焙じ茶に各種の比率でブレンドした場合の各焙じ茶混合物の抽出液の評価をそれぞれ示している。なお、官能評価は官能評価に優れた5名の合意とした。背景をグレーとした「〇」評価のうち、背景を濃いめのグレーとしたものは、「最適」と評価されるものである。官能審査結果及びミルクを加えた時の評価でどちらかでも「×」又は「△」としたブレンド割合品は不適合として除外し、範囲精度を高めた。
【0038】
焙じ茶抽出液である焙じ茶飲料の1日当たりのカフェイン摂取量は、400mgを上限とし、それを1日に3杯飲用するとして、1杯当たり133mgのカフェイン摂取量に設定した。ペーパーフィルタを使った茶10g/150ml/熱湯/3分の条件で分注した茶抽出液量は約115mlであったので、最大抽出液量を120mlとして、カフェイン濃度は100mg/120ml=1.10mg/mlを上限とし、図5に示した各原料茶種の焙煎時間範囲中のカフェイン最大値に各茶種の焙じ茶のブレンド割合を掛け合わせて算出した。
【0039】
この結果から、カフェイン濃度が概ね1.10mg/ml以下に制御され、コーヒー様(コーヒー豆様)香味のある焙じ茶抽出液及びミルクを加えた時のマイルドな乳香味がある2種類の焙じ茶のブレンド割合の範囲としては、次のように結論付けられた。1番茶煎茶の焙じ茶に対する1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶の適切な配合率範囲は50~30%であり、最適には40%であった。1番茶煎茶の焙じ茶に対する秋番茶茎茶の焙じ茶の適切な配合率範囲は50~30%であり、最適には40%であった。1番茶茎茶の焙じ茶に対する1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶の適切な配合率範囲は40~20%であり、最適には30%であった。1番茶茎茶の焙じ茶に対する1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶の適切な配合率範囲は40~20%であり、最適には20%であった。1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶に対する秋番茶茎茶の焙じ茶の適切な配合率範囲は30~10%であり、最適には10%であった。なお、1番茶煎茶の焙じ茶と1番茶茎茶の焙じ茶は香味が近似していることから、どちらかを主体とした場合、他方を50%以内の割合でブレンドしてもよく、また、1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶と秋番茶茎茶の焙じ茶は香味が近似していることから、どちらかを主体とした場合、他方を50%以内の割合でブレンドしてもよい、ということも分かった。
【実施例0040】
本発明の実施例として、上述した図6に示した各原料茶種の最適ブレンド割合に従って、原料茶種から選択した2種類をブレンドして焙じ茶混合物を作成し、ペーパーフィルタを使ってドリップ抽出し焙じ茶抽出液を得て、官能評価及びミルクを5%加えた香味評価を行った。官能評価は官能評価に優れた5名の合意とした。また、抽出液のBrix、pH、抽出液量を計測し、カフェイン濃度は液体クロマトグラフにより分析した結果を図7に一覧表として示す。本実施例の以上の結果から、次のように考察することができた。
【0041】
まず、1番茶煎茶の焙じ茶に1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶、及び秋番茶茎茶の焙じ茶を配合した焙じ茶混合物の抽出液の評価結果によると、シャープな、コク味のある、濃厚さを感じるコーヒー様香味があり、ミルクを5%加えると、マイルドな乳香味のコーヒー牛乳様の香味が得られた。Brixは1.295~1.494で濃厚なコーヒー様香味があり、pHは5.16~5.25でコーヒーよりも温和な酸味があり、抽出液量は120ml以内であった。カフェイン濃度は0.797~1.07mg/mlであり、1.10mg/ml以下に制御された。
【0042】
次に、1番茶茎茶の焙じ茶に1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶、及び秋番茶茎茶の焙じ茶を配合した焙じ茶混合物の抽出液の評価結果によると、香ばしさ、コク味のある、濃厚さ、調和を感じるコーヒー様香味がありミルクを5%加えると、マイルドな乳香味のコーヒー牛乳様の香味が得られた。Brixは1.385~1.612で濃厚なコーヒー様香味があり、pHは5.27~5.38でコーヒーよりも温和な酸味があり、抽出液量は120ml以内であった。カフェイン濃度は0.658~0.852mg/mlであり、1.10mg/ml以下に制御された。
【0043】
最後に、1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶に秋番茶茎茶の焙じ茶を配合した焙じ茶混合物の抽出液の評価結果によると、軽く香ばしいコーヒー様香味があり、ミルクを加えると、軽くマイルドな乳香味のコーヒー牛乳様の香味が得られた。Brixは1.015~1.063で飲み易く薄めのコーヒー様香味があり、pHは4.99~5.05でコーヒーよりもやや温和な酸味があり、抽出液量は120ml以内であった。カフェイン濃度は0.362~0.398mg/mlであり、1.10mg/ml以下に制御された。この焙じ茶飲料はカフェイン濃度が薄いので、飲む回数を増やすことも許容される。
【0044】
以上のような本発明の実施形態及び実施例の結果に基づくと、全窒素含有率5.4%の1番茶煎茶、1番茶茎茶、1番茶2番茶碾茶茎茶、及び秋番茶茎茶から選択した2種類の原料茶をブレンドし、それを焙煎して焙じ茶混合物として熱湯で抽出して焙じ茶抽出液を得ることで、1杯120mlを1日に3杯飲んでも総カフェイン摂取量が400mgという推奨値を超えない範囲とすることができるコーヒー様の香味を有する焙じ茶飲料が得られ、ミルクを添加すればコーヒー牛乳様の焙じ茶飲料が得られること、また、熱湯抽出前の状態であればコーヒー豆様香味を有する焙じ茶を得ることができることが明らかとなった。このことから、本発明は、コーヒーやコーヒー牛乳に代えて日常的に飲むことができる緑茶飲料としての焙じ茶飲料、2種類の原料茶から得られた焙じ茶の混合物としての焙じ茶を市場に提供することができるものである。
【0045】
<第2の製造方法>
以上の実施形態及び実施例では、2種類の原料茶1からカット工程S1及び焙煎工程S2を経た各原料茶1の焙じ茶を、第1ブレンド工程S3で2種類の焙じ茶混合物として第1抽出工程S4を経ることにより焙じ茶飲料3となる焙じ茶抽出液を得るという製造工程について説明したが、図8に示すような本発明の第2の製造方法に基づくスキームの通り、第1の製造方法と同様のカット工程S1、焙煎工程S2の後に、2種類の原料茶1の焙じ茶を個別に熱湯抽出して焙じ茶抽出液3’を得る第2抽出工程S3’、この2種類の焙じ茶抽出液3’を所定比率でブレンドして焙じ茶抽出液の混合液3Aを得る第2ブレンド工程S4’を経て、この焙じ茶抽出液の混合液3Aを焙じ茶飲料(以下、この焙じ茶飲料は焙じ茶抽出液の混合液3Aと同符号を用いる。)として製造することによっても、第1の製造方法により得られる焙じ茶飲料3と同様の焙じ茶飲料3Aを得ることも可能である。さらに第2の製造方法でも、焙じ茶抽出液の混合液3Aに対してミルクを加えるミルク添加工程S5を行って、コーヒー牛乳様の香味を有する焙じ茶飲料3Mを製造することもできる。
【0046】
<第2ブレンド工程におけるブレンド比率の検討>
本発明における第1の製造方法により得られた焙じ茶飲料3と第2の製造方法により得られた焙じ茶飲料3Aの香味を比較することで、第2の製造方法における第2ブレンド工程第2ブレンド工程S4’での2種類の焙じ茶抽出液3’の適切なブレンド比率を検討した。すなわち、この検討では、2種類の原料茶の焙じ茶をブレンドしてから熱湯抽出する場合(第1の製造方法。抽出のタイミングが「ブレンド後」)と、2種類の原料茶の焙じ茶を熱湯抽出してからその抽出液をブレンドする場合(第2の製造方法。抽出のタイミングが「ブレンド前」)とで、最終的に得られる焙じ茶飲料のコーヒー様香味に違いがあるかどうかを確認した。
【0047】
その確認として、同一の原料茶を用い、抽出前に第1ブレンド工程S3を行う場合のブレンド比率と、抽出後に第2ブレンド工程S4’を行う場合のブレンド比率を同等とした条件で、それぞれの焙じ茶飲料(3,3A)の香味評価を行った。図9に、検討条件と香味評価の結果の1つを一覧表として示す。すなわち、第2の製造方法として抽出のタイミングがブレンド前の場合については、全窒素含有率5.4%の1番茶煎茶の焙じ茶抽出液を主体としてブレンド比率を50~70%の範囲で変化させ、それに対して1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶抽出液、秋番茶茎茶の焙じ茶抽出液をそれぞれ50~30%で混合して焙じ茶抽出液の混合液とすることで、各焙じ茶飲料を作成した。一方、第1の製造方法として抽出のタイミングがブレンド後の場合については、1番茶煎茶の焙じ茶を主体としてブレンド比率を50~70%の範囲で変化させ、それに対して1番茶2番茶碾茶茎茶の焙じ茶、秋番茶茎茶の焙じ茶をそれぞれ50~30%で混合して焙じ茶混合物を作り、それを熱湯抽出することで、各焙じ茶飲料を作成した。抽出方法は、上述した実施の形態と同じく、ペーパーフィルタを使った茶10g/150ml/熱湯/3分の条件で分注により行った。図9に示した香味評価の通り、1番茶煎茶の焙じ茶抽出液を配合元として他の焙じ茶抽出液をブレンドした場合と、1番茶煎茶の焙じ茶を配合元として他の焙じ茶をブレンドした混合物を抽出した場合とで、何れのブレンド比率においても同じ香味評価が得られ、いずれもコーヒー様香味が確認できた。他の茶種の組み合わせでも同じ結果が得られたことから、所定の焙じ茶抽出液又は焙じ茶及び配合比率において得られるコーヒー様香味は、ブレンドタイミングによる影響を受けないと考えられる。以上の結果から、本発明の第2の製造方法で得られる焙じ茶飲料は、2種類の原料茶の焙じ茶抽出液をブレンドする比率と、第1の製造方法で得られる焙じ茶飲料における2種類の原料茶の焙じ茶をブレンドする比率を同等とすれば、同程度のコーヒー様香味を有する焙じ茶飲料として製造することができるものであることが確認された。なお、どちらの方法で作った焙じ茶飲料でも、原料茶の焙じ茶のブレンド比率又は原料茶の焙じ茶抽出液のブレンド比率が同じ場合、両者のカフェイン濃度はほぼ同じであった。したがって、本発明においては、ブレンドの工程と抽出の工程の順序を入れ替えても、同品質のコーヒー様香味を有する焙じ茶飲料を製造することが可能である。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態及び実施例に限定されるものではない。特に、上述の実施形態と実施例は、試験レベルの小規模で焙じ茶飲料を製造する方法(又は家庭レベルで焙じ茶を淹れる方法にも適用可能)について説明しているが、工場生産時には、本発明の第1の製造方法又は第2の製造方法の範囲において、適宜に規模を拡大して焙じ茶飲料の製造をすればよい。その際に用いる抽出用のフィルタには、製造装置に対応した適宜のものを採用すればよく、抽出時の焙じ茶(焙じ茶混合物を含む)と熱湯の割合や抽出方法(抽出時間や分注の採否)は、必ずしも実験レベルのものと一致していなくても本発明の範囲に含まれる。また、本発明においては、コーヒー様香味を有する焙じ茶飲料には、ミルク以外にも、必要であれば適宜の添加物を加えることも可能である。その他、原料茶のカット方法やサイズ、焙煎条件等についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…原料茶
2…焙じ茶(焙じ茶混合物)
3…焙じ茶飲料(焙じ茶抽出液、コーヒー様香味)
3’…焙じ茶抽出液
3A…焙じ茶飲料(焙じ茶抽出液の混合液、コーヒー様香味)
3M …焙じ茶飲料(コーヒー牛乳様香味)
S1…カット工程
S2…焙煎工程
S3…第1ブレンド工程
S4…第1抽出工程
S5…ミルク添加工程
S3’…第2抽出工程
S4’…第2ブレンド工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9