(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094493
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】多層印刷配線板及び多層印刷配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207410
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】521386593
【氏名又は名称】リンクステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】山口 洋志
(72)【発明者】
【氏名】貫名 俊介
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA38
5E316AA41
5E316AA42
5E316BB02
5E316BB07
5E316BB11
5E316CC08
5E316CC32
5E316DD32
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG22
5E316HH06
(57)【要約】
【課題】スルーホールに接続する外層パッドを除去することで簡便にスルーホールのスタブを除去し高集積化対応できる、印刷配線板及び印刷配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】導体層と絶縁層とが交互に積層され、グラウンド層接続用スルーホールと、積層方向においてそれぞれ異なる位置に設けられた各導体層から構成され、それぞれがスルーホールに導通するように接続される各内層回路と、を備えてなる印刷配線板であって、樹脂が充填されたスルーホール及びスルーホールに導通するように接続された金属メッキされた外層パッドを備え、部品実装する面と逆面側には外層パッドを有さない多層印刷配線板。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層と絶縁層とが交互に積層され、グラウンド層接続用スルーホールと、積層方向においてそれぞれ異なる位置に設けられた各導体層から構成され、それぞれがスルーホールに導通するように接続される各内層回路と、を備えてなる多層印刷配線板であって、樹脂が充填されたスルーホール及び金属メッキされた外層パッドを備え、部品実装する面と逆面側にはスルーホールに導通するように接続された外層パッドを有さない多層印刷配線板。
【請求項2】
請求項1において、部品実装する面とは逆面側の外層パッドがエッチング除去されてなる多層印刷配線板。
【請求項3】
(a)必要な内層回路とプリプレグ及び、銅箔とを多層化積層した後に、所定位置にドリル穴明けを行い、外層及び穴内を金属メッキして電気接続してスルーホールを形成する工程と、
(b)金属メッキした前記スルーホールを樹脂で穴埋め充填する工程と、
(c)スルーホール穴埋め後に金属メッキをして外層パッドとなる部分にも金属メッキする工程と、
(d)外層をエッチングして外層パッドを形成する工程と、
(e)スタブ除去する外層パッドを除去する工程と、
(f)表層にソルダーレジストを形成する工程と、
を備える多層印刷配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層印刷配線板及び多層印刷配線板の製造方法に関し、特に、スルーホールに接続する外層パッドを除去することで簡便にスルーホールのスタブを除去し高集積化対応できる、多層印刷配線板及び多層印刷配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4には、電子機器等に用いられる印刷配線板の例が開示されている。これら印刷配線板では電子機器の高機能化に伴い多層化が行われており、内層の所定の導体層を外層電極等に接続するための端子としてスルーホールが形成され、その内周に導電メッキが施されている。しかしながら、スルーホールのメッキ部は所定の導体層までの距離よりも長くなってしまう部分(スタブ)を有するように形成されてしまうことから、これらスタブにより、インピーダンスの不整合等を引き起こしてしまうことがある。特に伝送に用いられる信号の周波数が高くなるにつれてこのような問題が顕著になりやすく、これらスタブを除去することが必要となってきている。
【0003】
特許文献2~4には、これらスタブを除去する方法が開示されている。特許文献2には、ドリルによるスタブ除去加工(バックドリル加工)において、簡易なテストパターンを設けることが開示されている。特許文献3には、スタブ除去のための穴明け深さを制御するための事前工程を不要とするバックドリル加工方法が開示されている。特許文献4には、製品内に内層検出クーポンを設けておき、これを利用してスタブを除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09-162550号公報
【特許文献2】特開2009-4585号公報
【特許文献3】特開2014-187153号公報
【特許文献4】特開2017-98433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した印刷配線板では、スタブ除去をするのに1穴毎にドリル加工で行うため、穴数に比例して加工時間が長くなり製造リードタイムにも影響を及ぼしていた。また、高集積化対応のためにスルーホール径とバックドリル径を小径化すると、先に形成したスルーホールを狙ってバックドリル加工するため、加工深さの長い場合はドリルが曲がってしまい加工途中で内層回路とドリルが接触して断線の原因になる可能性もあった。ドリルが小径化するとドリルが折損するリスクも高くなり、歩留にも影響を及ぼすことがある。更に、バックドリル径を見込んで内層クリアランス径をバックドリルの無い場合よりも拡大することや、バックドリル径と干渉しないように配線経路を回避する設計が必要となる場合もある。印刷配線板の高集積化が要求される場合は、これらバックドリルによる設計制限によって配線や層数などが収容できずに高集積化要求に対応できない可能性もあり、設計制限の少ないスタブ除去加工が望まれてきている。
【0006】
本発明は、スルーホールに接続する外層パッドを除去することで比較的容易に高集積化対応できる、多層印刷配線板及び多層印刷配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
[1]導体層と絶縁層とが交互に積層され、グラウンド層接続用スルーホールと、積層方向においてそれぞれ異なる位置に設けられた各導体層から構成され、それぞれがスルーホールに導通するように接続される各内層回路と、を備えてなる多層印刷配線板であって、樹脂が充填されたスルーホール及びスルーホールに導通するように接続された金属メッキされた外層パッドを備え、部品実装する面と逆面側には外層パッドを有さない多層印刷配線板。
[2]上記[1]において、部品実装する面と逆面側の外層パッドがエッチング除去されてなる多層印刷配線板。
[3](a)必要な内層回路とプリプレグ及び、銅箔とを多層化積層した後に、所定位置にドリル穴明けを行い、外層及び穴内を金属メッキして電気接続してスルーホールを形成する工程と、(b)金属メッキした前記スルーホールを樹脂で穴埋め充填する工程と、
(c)スルーホール穴埋め後に金属メッキをして外層パッドとなる部分にも金属メッキする工程と、(d)外層をエッチングして外層パッドを形成する工程と、(e)スタブ除去する外層パッドをエッチングして除去する工程と、(f)表層にソルダーレジストを形成する工程と、を備える多層印刷配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、不要な外層パッドをエッチングで除去するため、信号の低伝送損失化が容易であり、外層パッド部のみを除去するため、除去後のスタブ残り量のばらつきを抑え、穴数に比例したバックドリル加工や不要な外層パッドへの金属メッキが必要ないため、低コストである。高集積化に優れ、一般的なスタブ除去に比べて比較的容易に、効率良く信号の伝送損失の小さい多層印刷配線板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の多層印刷配線板の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】
図2の(a)~(f)は、本発明の多層印刷配線板を得るための製造プロセスの一例を示す概略の模式断面図である。
【
図3】本発明の多層印刷配線板の電気特性(伝送損失)の評価用基板の概略を示す模式断面図である。
【
図4】本発明の多層印刷配線板の電気特性(伝送損失)の評価用基板のパターンを示す平面図である。
【
図5】本発明の多層印刷配線板の電気特性(伝送損失)を外層パッドの有無で測定した結果(Sパラメータ)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付すものとする。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
(多層印刷配線板)
本実施形態の多層印刷配線板は、導体層と絶縁層とが交互に積層されてなる多層印刷配線板であって、グラウンド層接続用スルーホールと、積層方向においてそれぞれ異なる位置に設けられた各導体層から構成され、それぞれがスルーホールに導通するように接続される各内層回路と、を備えている。この印刷配線板では、スタブ除去する側のランドは残存させないように設計されている。
【0012】
図1は、本実施形態の多層印刷配線板の一例を示す模式断面図である。
図1に示した多層印刷配線板100は、導体層(内層の信号層1、内層グラウンド層又は電源層2)と絶縁層(プリプレグ)及び外層銅箔3とが多層化積層されて形成されている。多層印刷配線板100は、穴内に金属メッキ4を備えるとともに穴埋め充填材5で充填されているスルーホールを有し、スルーホールの部品実装する面側には蓋メッキ6が施されてスルーホールに導通する外層パッドが形成されており、スルーホールの部品実装する面と逆面側には外層パッドがエッチング除去されてスルーホールから穴埋め充填材が突出した穴埋め充填材突出部7を有する。多層印刷配線板100の表層には、外層パッド部分に開口部を有するソルダーレジスト8が形成されている。
【0013】
上記の多層印刷配線板では、スタブ除去を行うスルーホールの外層パッドをエッチングで除去することで、スタブ除去による内層グラウンド層や電源層のクリアランス径の拡大及び、内層配線層の配線経路の回避が不要となるため、設計制限を最小化して高集積化対応できる。また、バックドリル時のドリル折損のリスクもなく、外層パッドを一括で除去できるため、穴数に比例することなく安定した製造リードタイムで生産することができる。
【0014】
(多層印刷配線板の製造方法)
次に、本発明の一実施形態の多層印刷配線板の製造方法について説明する。
多層化積層した基板に貫通穴明けを行い、金属メッキしてスルーホールを形成して、スルーホール内に樹脂を充填して硬化した後、外層回路を形成する。この時、部品実装等で必要な外層パッドは残して、スルーホールを介した逆面側の実装等に使用しない不要な外層パッドは除去或いは形成しない。必要に応じて、その後の工程において、ソルダーレジストを形成してもよい。
上記の製造方法により作製された多層印刷配線板は、スタブとなる外層パッドが無いため、信号の伝送損失の低減が可能となる。
【0015】
以下、本発明の多層印刷配線板の製造方法の好ましい一実施形態について、図面を参照して説明する。
図2(a)に示すように、工程(a)では、必要な内層回路とプリプレグ及び、銅箔とを多層化積層した後に、所定位置にドリル穴明けを行い、外層及び穴内を金属メッキして電気接続する。
図2(b)に示すように、工程(b)では、金属メッキした前記スルーホールを樹脂で穴埋め充填する。
図2(c)に示すように、工程(c)では、スルーホール穴埋め後に金属メッキをして外層パッドとなる部分にも金属メッキする。
図2(d)に示すように、工程(d)では、外層をエッチングして外層パッドを形成する。
図2(e)に示すように、工程(e)では、スタブ除去する外層パッドをエッチングして除去する。
図2(f)に示すように、工程(f)では、表層にソルダーレジストを形成する。
【実施例0016】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0017】
(実施例)
(評価用基板の作製)
評価用基板は
図3に示す信号配線の特性インピーダンスはストリップ配線で50Ωとなるように設計した構造である。作製方法は、銅張積層板(昭和電工マテリアルズ株式会社製:MCL-I-671、基材厚さ0.2mm、0.5oz銅箔(厚さ18μm))に必要な内層回路をエッチング法により形成した両側にプリプレグ(昭和電工マテリアルズ株式会社製:GIA-671N、厚さ0.03mm)を加熱・加圧により積層した後、接着シート(昭和電工マテリアルズ株式会社製:ASU01、厚さ0.07mm)をラミネートして必要な配線パターンをワイヤ(日立金属株式会社製:HAWD(K)0.08)を使って布線して、UV処理(300mJ)と熱処理(150℃,30分)を行った後にプリプレグ(昭和電工マテリアルズ株式会社製:GIA-671N,厚さ0.03mm)を介して銅箔(日本電解株式会社製:18μm銅箔)を加圧・加熱により積層した後に必要な回路を形成して布線基板を作製する。その一方で、銅張積層板(昭和電工マテリアルズ株式会社製:MCL-I-671、基材厚さ0.2mm、0.5oz銅箔(厚さ18μm))に必要な内層回路をエッチング法により形成した内層回路基板を2枚作製する。その後、布線基板を断面方向の中心になるようにして両側にプリプレグ(昭和電工マテリアルズ株式会社製:GIA-671N、厚さ0.03mm)を介して内層回路基板を配置して加熱・加圧して多層化積層した後、ドリル径0.3mm(ユニオンツール株式会社製:UC0.3)で、信号配線と接続させる穴と内層回路(GND)と接続させる穴を明けて金属メッキを行い電気接続させた後に、穴内に穴埋め充填材(太陽インキ製造株式会社製:THP100DX1)を充填して硬化、表面研磨整面した後に、蓋メッキ(金属メッキ)を行った後に、表層の必要な導体層を残してエッチング除去した。この時、SMAコネクタを実装する面とは逆面側のスルーホールに導通する外層パッドも除去して評価用基板を作製した。
【0018】
(伝送損失の測定)
上記の評価用基板を使って、基板の片面側にSMAコネクタ(Molex社製:SMA)を実装して、ネットワークアナライザ(Agilent Technologies社製:Network Analyzer E8363B)と接続して、温度25℃/湿度60%の測定環境で周波数20GHzまでの伝送損失を測定した。
測定結果を表1及び
図5に示す。
【0019】
(比較例)
SMAコネクタを実装する面とは逆面側のスルーホールに導通する外層パッドを除去しないこと以外は実施例と同様にして、伝送損失測定用の評価用基板を作製して、伝送損失を測定した。
測定結果を表1及び
図5に示す。
【0020】
【0021】
表1及び
図5に示したように、本実施形態の多層印刷配線板では、スタブとなる部品実装する面と逆面側の外層パッドを除去することにより、信号の伝送損失を低減することができた。