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特開2022-9452改良モジュール型抗原移送分子及び動物におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009452
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】改良モジュール型抗原移送分子及び動物におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220106BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 39/35 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 39/385 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220106BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220106BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220106BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220106BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/005 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/37 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/74 20060101ALI20220106BHJP
   C07K 14/16 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
A61P31/00
A61P37/08
A61P17/00
A61P11/06
A61K39/35
A61K39/385
A61K47/64
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N15/31
C07K14/195
C07K14/005
C07K14/37
C07K14/435
C07K19/00
C07K14/74
C07K14/16
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021173721
(22)【出願日】2021-10-25
(62)【分割の表示】P 2019193302の分割
【原出願日】2016-09-27
(31)【優先権主張番号】15187810.5
(32)【優先日】2015-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100111501
【弁理士】
【氏名又は名称】滝澤 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェ ダニア-ビルテ
(72)【発明者】
【氏名】タメン ハラルド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA45
4C076AA95
4C076CC06
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA03
4C085BB03
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045CA11
4H045CA15
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
【課題】本発明は(単離)組換えタンパク質(改良MAT(iMAT)分子とも称される)に関する。本発明の根幹的目的は、医薬組成物(例えばワクチン)中の活性薬剤として有用な改良MAT分子、及び動物(ウマ類を除く)における前記改良MAT分子の対応する治療的及び/又は予防的使用を提供することである。
【解決手段】iMAT分子は少なくとも1つの移行モジュール、少なくとも1つの標的誘導モジュール及び少なくとも1つの抗原モジュールを含み、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基で置換されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良MAT(iMAT)分子であって、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である、少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である、少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記第二のモジュール、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なエピトープに由来するアミノ酸配列であり、iMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュール、
を含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とし、ウマ類を除く動物の1つ以上のアレルギーの予防及び/又は治療方法に使用するか、及び/又はウマ類を除く動物の1つ以上の感染症の予防及び/又は治療方法に使用するか、及び/又はウマ類を除く動物の1つ以上の感染症の伝播の予防方法に使用するか、及び/又はウマ類を除く動物の1つ以上の感染症の媒介生物による伝播の予防方法に使用するための、前記iMAT分子。
【請求項2】
少なくとも1つの抗原モジュールにおいて、全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換され、好ましくはiMAT分子全体において、全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されている、請求項1記載のiMAT分子。
【請求項3】
モジュールの全てが共有結合により互に連結され、かつ第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の隣接するモジュール間に追加のスペーサーモジュールが全く存在しない、請求項1又は2記載のiMAT分子。
【請求項4】
少なくとも1つの第二のモジュールがイヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ヤギ類及び/又はブタ類の種から選択されるインバリアント鎖又はその部分配列を含み、ただし前記少なくとも1つの第二のモジュールが、iMAT分子の細胞小器官への種特異的標的誘導を可能にするモジュールとして機能することを条件とし、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、請求項1から3のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項5】
少なくとも1つの第二のモジュールが、配列番号:4(イヌ類)又は配列番号:5(ネコ類)のアミノ酸配列又はそのフラグメントを含み好ましくは前記から成り、ただし前記フラグメントが細胞内輸送機能を保持することを条件とする、請求項1から3のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項6】
少なくとも1つの抗原モジュールが、ウマ類を除く動物においてアレルギーを引き起こす少なくとも1つのアレルゲンに由来する少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープ、好ましくはノミの咬傷に対する(好ましくはイヌ及び/又はネコの)アレルギー;ある種の食物成分に対する(好ましくはイヌ及び/又はネコの)アレルギー;(好ましくはイヌ及び/又はネコの)アトピー性皮膚炎;(好ましくはネコの)アレルギー性気道炎症及び/又は気道閉塞に由来する少なくとも1つのアレルゲンの好ましくは少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープを含む、請求項1から5のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項7】
少なくとも1つの抗原、好ましくは少なくとも1つのアレルゲンがDer f15アレルゲン(配列番号:11及び/又は18)である、請求項6記載のiMAT分子。
【請求項8】
少なくとも1つの抗原モジュールが、ウマ類を除く動物における1つ以上の感染症を引き起こす病原体の少なくとも1つの抗原に由来する少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープ、好ましくは、ウマ類を除く動物で1つ以上の感染症を引き起こす、カンピロバクター属(Campylobacter)、ディロフィラリア属(Dirofilaria)、エールリキア属(Ehrlichia)、リーシュマニア属(Leishmania)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、ボレリア属(Borrelia)、オルトブンヤウイルス属(Orthobunyavirus)、オルビウイルス属(Orbiviru)、フラビウイルス属(Flavivirus)、ロタウイルス属(Rotavirus)、コロナウイルス属(Coronavirus)、トリコフィトン属(Trichophyton)、ミクロスポルム属(Microsporum)、コオペリア属(Cooperia)、ハエモンクス属(Haemonchus)、オステルタギア属(Ostertagia)、トリコストロンギルス属(Trichostrongylus)、ディクチオカウルス属(Dictyocaulus)、メタストロンギルス属(Metastrongylus)、エイメリア属(Eimeria)、イソスポラ属(Isospora)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、ギアルジア属(Giardia)から選択される病原体の少なくとも1つの抗原の少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープを含み、好ましくは当該少なくとも1つの抗原モジュールがまた、ウマ類を除く動物で1つ以上の感染症の伝播に関与する媒介生物、好ましくは吸血昆虫、ハエ、ユスリカ、ダニ及び/又はカから選択される媒介生物の抗原であり得る、請求項1から5のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項9】
さらに少なくとも1つのタグモジュール、好ましくは少なくとも1つのHisタグを含み、前記少なくとも1つのタグモジュールが好ましくはN-末端及び/又はC-末端に存在し、より好ましくは、1つのタグモジュール、好ましくは1つのHisタグが1つのメチオニン残基の後のN-末端に存在する、請求項1から8のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項10】
少なくとも1つの第一のモジュールが、HIV-tat、VP22及び/又はアンテナペディアのアミノ酸配列又はその部分配列を含むか好ましくは前記から成り、ただし前記少なくとも1つの第一のモジュールが、細胞外空隙から細胞の内部へのiMAT分子の移行のためのモジュールとして機能することを条件とし、もっとも好ましくは前記少なくとも1つの第一のモジュールが配列番号:1を含む、好ましくは配列番号:1から成る、請求項1から9のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項11】
第三のモジュールが配列番号:14から23のいずれか1つを含む、好ましくは前記配列から成る、請求項1から10のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項12】
配列番号:24から83のいずれか1つを含む、好ましくは前記配列から成る、請求項1から11のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項13】
動物が、反芻獣(ウシ、ヤギ、ヒツジ、例えばウシ属(Bos)、ヤギ属(Cpra)及び/又はヒツジ属(Ovis)のメンバーを含む)、イヌ属(Canis)のメンバー(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ属(Felis)のメンバー(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ、並びにチーター及びオオヤマネコを含む他のネコ科の動物)、及び/又はイノシシ属(Sus)のメンバー(例えばブタ)から選択され、好ましくは当該動物がネコ及び/又はイヌから選択される、請求項1から12のいずれか1項記載のiMAT分子。
【請求項14】
アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子であって
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュールであって、前記第一のモジュールが配列番号:1を含む、より好ましくは配列番号:1から成る、前記少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与し、前記第二のモジュールが配列番号:4又は5を含む、より好ましくは配列番号:4又は5から成る、前記少なくとも1つの第二のモジュール、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なエピトープに由来するアミノ酸配列であり、当該iMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュール、
を含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とし、したがって当該第三のモジュールが好ましくは配列番号:14から23のいずれか1つを含むか又は前記配列から成る、前記アミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項15】
第二のモジュールが配列番号:4又は5から成る、請求項14に記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項16】
第三のモジュールが配列番号:14又は23のいずれか1つ、好ましくは配列番号:18から成る、請求項14又は15に記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項17】
モジュールの全てが互いに共有結合により連結され、さらに第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の隣接するモジュール間に付加されるスペーサーモジュールが全く存在しない、請求項14から16のいずれか1項記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項18】
さらに少なくとも1つのタグモジュール、好ましくは少なくとも1つのHisタグを含み、前記少なくとも1つのタグモジュールが好ましくはN-末端及び/又はC-末端に存在し、より好ましくは、1つのタグモジュール、好ましくは1つのHisタグが1つのメチオニン残基の後のN-末端に存在する、請求項14から17のいずれか1項記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項19】
アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:24-83のいずれか1つを含み好ましくは前記から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81のいずれか1つを含み好ましくは前記から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:25、28、31、34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82のいずれか1つを含み好ましくは前記配列から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:配列番号:26、29、32、35、38、41、44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83のいずれか1つを含み好ましくは前記配列から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:36(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:37(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:38(ネコDer f15 iMAT分子)、又は配列番号:57(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:58(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:59(イヌDer f15 iMAT分子)を含み好ましくは前記配列から成る、請求項14から18のいずれか1項記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項20】
アミノ酸配列/iMAT分子が、配列番号:66-83(ハイブリッド/モザイク様iMAT)のいずれか1つを含み好ましくは前記配列から成り、好ましくは前記アミノ酸配列/iMAT分子が、配列番号:66、69、72、75、78、81のいずれか1つ、より好ましくは配列番号:66又は配列番号:75、或いは配列番号:67、70、73、76、79、82のいずれか1つ、より好ましくは配列番号:67又は配列番号:76、或いは配列番号:68、71、74、77、80、83、より好ましくは配列番号:68又は配列番号:77を含み好ましくは前記配列から成る、請求項14から19のいずれか1項記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項21】
アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子であって、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュールであって、好ましくは前記第一のモジュールが配列番号:1を含む、より好ましくは配列番号:1から成る、前記少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与し、好ましくは前記第二のモジュールが配列番号:4又は5を含む、より好ましくは配列番号:4又は5から成る、前記少なくとも1つの第二のモジュール、
(iii)配列番号:7、8、9、10、11、12、84、85、86、87及び88から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せの少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列であり、iMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュール、
を含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする、前記アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子。
【請求項22】
抗原モジュールが、配列番号:10、11、84、85、86、87及び88から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せ(ハイブリッド1)の少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列であるか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せ(ハイブリッド2)の少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列であるか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:7、8、10及び11から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せ(ハイブリッド3)の少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列である、請求項21に記載のアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子。
【請求項23】
抗原モジュールが、配列番号:84に由来する骨格を土台とするアミノ酸配列であり、前記骨格配列中に埋め込まれた配列番号:91-96のペプチドの1つ以上の任意の組合せを含むか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:97-102のペプチドの2つ以上の任意の組合せに由来するアミノ酸配列であるか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:97、配列番号:98、配列番号:101及び配列番号:102のペプチドの2つ以上の任意の組合せに由来するアミノ酸配列である、請求項21又は22記載のアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子。
【請求項24】
配列番号:24から83のいずれか1つ、好ましくは配列番号:36(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:37(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:38(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:57(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:58(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:59(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:66(ネコハイブリッド1 iMAT)、配列番号:67(ネコハイブリッド1 iMAT)、配列番号:68(ネコハイブリッド1 iMAT)、配列番号:75(イヌハイブリッド1 iMAT)、配列番号:76(イヌハイブリッド1 iMAT)及び/又は配列番号:77(イヌハイブリッド1 iMAT)を含む、好ましくは前記配列から成るアミノ酸配列。
【請求項25】
請求項14又は24のいずれか1項記載のiMAT分子又はアミノ酸配列を含む、ワクチン又は免疫原性組成物又は医薬組成物。
【請求項26】
請求項14から24のいずれか1項記載のiMAT分子又はアミノ酸配列をコードする核酸。
【請求項27】
請求項26記載の核酸の少なくとも1つを含むベクター。
【請求項28】
請求項26記載の核酸の少なくとも1つ及び/又は請求項27に記載のベクターの少なくとも1つを含む、初代細胞又は細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は(単離)組換えタンパク質(改良MAT(iMAT)分子とも称される)に関し、このタンパク質は少なくとも1つの移行モジュール、少なくとも1つの標的誘導モジュール及び少なくとも1つの抗原モジュールを含み、前記では少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基で置換される。iMAT分子は、実質的に軽減された製造労力で生産することが可能であり、種特異的でより安全でかつ免疫学的に非常に有効である。そのような(単離)組換えタンパク質は、特にワクチンとして、例えばアレルギー及び/又は感染症の治療及び/又は予防、及び/又は動物(好ましくは反芻獣、ブタ、人間、イヌ及び/又はネコであるが、ただしウマ類を除く)の感染症の伝播の予防のために有用である。
【背景技術】
【0002】
Crameriらによる先行技術刊行物はより詳細に当該背景を記載している(Crameri et al., Allergy 2007, 62:197-206)。略記すれば、抗原提示細胞(APC)による抗原のプロセッシングは2つの異なるルートにより惹起される。細胞内に存在する抗原はMHCI(主要組織適合性複合体クラスI、MHCクラスI)分子によって細胞表面で提示され、一方、細胞外抗原はMHCII(主要組織適合性複合体クラスII、MHCクラスII)分子によって細胞表面で提示される。両メカニズムは抗原に対する宿主の免疫応答を開始させる。腫瘍組織適合性クラスII分子は、ペプチドをCD4+T細胞に提示する細胞表面糖タンパク質である。小胞体(ER)で、MHC-II分子はII型トランスメンブレンタンパク質(インバリアント鎖(Ii)と称される)と結合して、ペプチドがERでMHC-IIと結合するのを防ぐ。IiホモトリマーはERで3つのMHCクラスIIαβダイマーと結合し、これにより内因性ペプチドとクラスII分子との結合を防ぐ。IiのN-末端細胞質ドメインは標的誘導モチーフを含み、前記ドメインはERでのiIの保持をもたらすか又はクラスIIαβダイマーのゴルジ経由エンドソーム-リソソーム経路への標的誘導をもたらす。Iiのその後のタンパク分解性分解は、クラスIIαβダイマーと結合した小フラグメントCLIP(クラスII結合Iiペプチド(Class II associated Ii peptide))をペプチド結合溝に残留させる。クラスIIαβ/CLIP複合体とHLA-DM(クラスII関連αβダイマー)との特殊化区画内での相互作用はCLIPを遊離させ、クラスII分子が外因性タンパク質に由来するペプチドと結合することを可能にする。内因的に合成されるタンパク質(一般的にはMHC-II提示経路から除外される)は、Ii融合タンパク質として発現されるときには、ペプチド-MHC-II複合体として効率的に提示され得ることが示された。この特性は、Ii-cDNA融合ライブラリーをトランスフェクトした細胞株からMHC-II拘束抗原をコードする遺伝子のクローニングに利用される。MHC-IIプロセッシング及び提示経路を標的とする有効なアレルギーワクチンが、移行許容性Ii-アレルゲン融合物を用いて達成された。モジュール型抗原移行(MAT)技術と称されるこの概念は、以下から成る融合タンパク質に基づく:細胞外タンパク質を細胞内タンパク質に変換するTAT由来移行ペプチド、エンドソーム/リソソーム区画へ融合タンパク質を標的誘導するためのIiの最初の110アミノ酸、及び特異的な免疫応答を誘発するための抗原。
【0003】
免疫応答を調節するモジュール型抗原移送(MAT)分子、その関連構築物、方法及び使用を提供するという構想はWO2004/035793(米国ではUS2005/0281816)に開示されている。前記資料は、三部分分子(MAT分子)が細胞に抗原エピトープを導入し、したがってそのようなMAT分子によって調節されるべき免疫応答を決定するために有用であることを記載している。前記文献には多様な移行モジュール、標的誘導モジュールとともに抗原モジュールが記載されている。この技術及びその基礎をなす方法は、第一に抗原を細胞外空隙から標的細胞の細胞内空隙に効率的に搬送することを可能にし、第二に細胞の内部に到着後、抗原が細胞小器官に効率的に到達し続いて抗原提示のために処理されることを可能にする。一般的には、二段階プロセスを利用して、対象で標的誘導される効率的な免疫応答の調節をもたらすことができる。MAT分子の使用は例えば以下に開示されている:Martinez-Gomez JM et al. Allergy 2009, 64(1): 172-178;Rose H (Arb Paul Ehrlich Inst Bundesinstitut Impfstoffe Biomed Arzneim Langen Hess, 2009, 96, 319-327;及び最近の文献:Senti G et al. J Allergy Clin Immunol., 2012, 129(5): 1290-1296。このMAT技術に基づいて、主要なネコアレルゲンFe1d1をTAT由来タンパク質移行ドメイン及びヒト先端切詰めインバリアント鎖に融合しMHCクラスII経路へ標的誘導させた。免疫原性はマウスで判定され、一方、潜在的な安全性の問題は、ネコふけアレルギー患者の好塩基球反応性を基準にする適切な試験によって査定された。このモデル化合物の利用可能性が提示された。前記文献の中で、MAT分子は所望の免疫応答(すなわち減感作)の誘発で、通常のアレルゲン特異的免疫療法(SIT)における組み換えアレルゲン又はアレルゲン抽出物より安全で効率的であると期待されるということが記載されている。G. Sentiらによる最近の発表では、3回の注射後に耐性を誘発する、ヒトのネコふけアレルギーのためのリンパ管内免疫療法が記載された。その中で、MAT-Feld1によるヒトで最初の臨床試験が記載され、安全性及びわずかに3回のリンパ管内注射後にアレルゲン耐性誘発が示された。さらに別の従来技術は以下のとおりである。
【0004】
G. Gadermaierら(Molecular Immunology 2010, 47: 1292-1298)は、ヨモギ属(Artemisia)花粉アレルギーの免疫療法のためにArt v1のシステイン安定化折り畳みの標的誘導を記載している。前記著者らは、低アレルギー誘発性分子の作出を目的とする標的誘導Art v1の翻訳後修飾のために以下のように遺伝子操作アプローチを用いた:(i)デフェンシンドメインのジスルフィド架橋を位置指定変異誘導によって破壊し、(ii)変異構築物を非グリコシル化タンパク質の生成のために大腸菌(E. coli)で発現させた。しかしながら、その目的は、明らかに単にArt v1デフェンシンドメインの三次元折り畳みを操作し、ただ1つのシステイン残基をセリンに変更することによってIgE結合を停止させる(すなわち低アレルギー誘発性分子を作出する)ことであって、認識されるT細胞エピトープ(たとえそのようなものがシステイン残基を含んでいたとしても)は無傷のままであった。
第三回ウマアレルギー疾患に関するHavemeyerワークショップの報告(Holar, Iceland, June 2007, Veterinary Immunology and Immunotherapy 2008, 126: 351-361)は、昆虫咬傷過敏症(IBH)と再発性気道閉塞(RAO)の免疫学的及び遺伝的特徴に焦点が当てられた。このワークショップでは、IBHに対するSITの新規なアプローチ、とりわけウイルスベクター又はモジュール型抗原移行(MAT)分子と結合させたアレルゲンによるタンパク質ワクチンの使用が考察された。
2010年及び2011年のSIAF年次報告では、R.CrameriはIBHに罹患したウマのワクチン免疫のためにMAT技術の使用を報告している。
Zhaoら(Zhao et al., Int J Clin Exp Med 2015;8(4):6436-6443)は、WO 2004/035793で開示されたMAT構造物及び抗原モジュールとしてDer p1をコードするT細胞エピトープの3つのセグメントとのモザイク融合タンパク質を用いた実験の結果を報告した。彼らはこれらの配列を線状様式で再集合させて、タンパク質発現のための融合遺伝子を形成した。彼らは、当該構築物がDer p1タンパク質と比較してより強力なアレルギー誘発性(過アレルギー誘発性)を示すと記載している。
【0005】
しかしながら、従来技術に記載されたMAT分子を生成及び製造する時に大きな問題が生じた。特に、適正製造基準の下でMAT分子を製造するために下流プロセス(DSP)の開発で用いられる標準的方法を利用できなかった。MAT分子の均質な分子種を精製することは、明らかにそれらの変則的な物理化学的特性のために不可能であった。種々の分離原理(例えばサイズ排除クロマトグラフィー、RP-HPLC)を試験したが、いくつかの精製方法は従来技術で記載されたMAT分子に対して利用できなかった(本明細書の実施例4を参照)。一般的には組換えタンパク質の純度を決定するために利用される方法には、クロマトグラフィー分離(例えばRP-HPLC)及び電気泳動分離(例えばキャピラリーゾーン電気泳動、等電点分画法、還元又は非還元条件下のSDS-PAGE)が含まれる。さらに、これらの分析方法は、分子に特異的な改造を施すことなくMAT分子に適用することはできなかった。純度の査定のために、改造された固有のSDS-PAGE試験手順を開発しなければならなかった。この試験手順は、還元剤及びドデシル硫酸リチウム(LDS)によるサンプルの調製並びに75℃までの加熱を含み、電気泳動分離後に多数の再現性を示す鋭利なバンドを生じた。クマシーブルー色素による染色はゲルでの直線的な定量性反応(デンシトメトリー)を示した。MAT分子のアレルゲンモジュールの検出を可能にするモノクローナル抗体の使用によって、主要バンド及びいくつかの微小バンドが示された。さらに、最初のゲルから切り出したバンドを用いて第二のゲルに再ローディングした後、全てのバンドが最初のゲルと同じ位置に再現性をもって泳動した。驚くべきことに、見かけ上より小さい及びより大きい分子量を有するこれらのバンドの全てで、ゲルからバンドの切り出し、それらのトリプシン消化、及びそれに続く質量分析(ナノLC/ESI-MS-MS)によって、完全長のMAT分子が識別された。これらの実験から、SDS-PAGEにおけるMAT分子の種々の折り畳み変種の非定型的で変則的な行動態様を推断することができる(“ゲルシフト”)。さらにまた、MAT分子の全てのバッチで、このタンパク質のマルチマー型が検出され、前記をモノマー型から分離することは困難であった。
【0006】
例えば経済的側面及び規制上の要件のために、(i)MAT分子の製造プロセス及び(ii)純度決定の標準的分析方法に対するそれらの安定性を改善することが要求される。付け加えれば、固有の標的種(例えば反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコ)に対してMAT分子を適合させるために、MAT技術範囲内で免疫学的な標的誘導の改造が必要である。この種特異性は、哺乳動物種間でIiホモローグのアミノ酸配列に相違が存在するので前記iMAT分子で表されることが必要である(図10)。しかしながら、Ii融合タンパク質(iMAT)とMHCクラスIIαβサブユニットとの特にCLIP領域での適切な結合は、前記iMAT分子中の抗原に対する最適な免疫学的機能のために必要である。前記MHCクラスII分子との適切な結合は、iMAT中のIi配列が可能なかぎり本来のものと類似する場合に達成される。
付け加えれば、MAT分子は既知の主要なアレルゲンによって引き起こされるアレルギー(例えばFeld1によるヒトのネコふけアレルギー)で容易に利用される。しかしながら、臨床的環境(例えばアレルギー)で従来技術のMAT分子を利用することは困難であるように思われる(そのような場合には、例えば多様な非交差反応性アレルゲンが関与することが知られているが、当該アレルギーを引き起こすそのようなアレルゲンの重要性は不明である(すなわち主要アレルゲンは不明である))。さらにまた、従来技術は、融合タンパク質がタンパク質製造を妨げる一定のサイズを超えないように、2つ以上(例えば2、3、4、又は5以上)のアレルゲンをどのようにしてiMAT分子に埋め込むことができるかを記載していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根幹的目的は、医薬組成物(例えばワクチン)中の活性薬剤として有用な改良MAT分子、及び動物(ウマ類を除く)における前記改良MAT分子の対応する治療的及び/又は予防的使用を提供することであり、本発明は従来技術のこれら問題を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことには(単離)組換えタンパク質、好ましくは改良MAT(iMAT)分子を提供することによって解決され、
前記分子は、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である、少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である、少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシング済み抗原)ローディングに関与する、前記第二のモジュール、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なエピトープに由来するアミノ酸配列であり、iMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とし、動物(ウマ類を除く)の1つ以上のアレルギーの予防及び/又は治療方法に使用される、及び/又は動物(ウマ類を除く)の1つ以上の感染症の予防及び/又は治療方法に使用される、及び/又は動物(ウマ類を除く)の1つ以上の感染症の伝播の予防方法に使用される、及び/又は動物(ウマ類を除く)の1つ以上の感染症の媒介生物による伝播の予防方法に使用される。
その必要がある動物(ウマ類を除く)の対応する予防及び/又は治療方法、及び動物(ウマ類を除く)の予防及び/又は治療用医薬組成物/医薬の調製のための使用もまた本発明の範囲内であることが意図される。
【0009】
好ましくは、少なくとも1つの抗原モジュールにおいて、全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換される。より好ましくは、iMAT分子全体において、全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換される。好ましくは、全部ではないシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換される場合には、偶数個のシステイン残基がiMAT分子の全体中に残留する。
好ましくは、モジュールの全てが互いに共有結合によって連結され、場合によって第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の(場合によって全ての)隣接するモジュールの間で付加的スペーサーモジュールによって連結される。より好ましくは、モジュールの全てが互いに共有結合により連結され、第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の隣接モジュール間に付加的スペーサーモジュールは全く存在しない。
別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、配列番号:2又は3のアミノ酸配列の1つ以上と関連する、好ましくは配列番号:4又は5のアミノ酸配列の1つ以上を含むiMAT分子を提供することによって解決された。さらに別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、配列番号:14-23のアミノ酸配列の1つ以上を含むiMAT分子を提供することによって解決された。好ましい特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、配列番号:24-83のアミノ酸配列の1つ以上を含む、好ましくは前記配列から成るiMAT分子を提供することによって解決された。別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質を含むワクチン又は免疫原性組成物又は医薬組成物を提供することによって解決された。
【0010】
別の特徴では、本発明の根幹的目的は、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質、又は本明細書に開示し特許請求するワクチン若しくは免疫原性組成物若しくは医薬組成物を提供することによって解決され、これらは、動物において(好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)1つ以上のアレルギー、好ましくはノミの咬傷に対する好ましくはイヌ及び/又はネコのアレルギー、ある種の食物成分に対する好ましくはイヌ及び/又はネコのアレルギー、アトピー性皮膚炎(好ましくはイヌ及び/又はネコ)、アレルギー性気道炎症及び/又は気道閉塞(好ましくはネコ)の予防及び/又は治療方法に使用される。その必要がある動物(好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の対応する予防及び/又は治療方法、及び動物(好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の予防及び/又は治療用医薬組成物/医薬の調製のための使用もまた本発明の範囲内であることが意図される。
別の特徴では、本発明の根幹的目的は、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質、又は本明細書に開示し特許請求するワクチン若しくは免疫原性組成物若しくは医薬組成物を提供することによって解決され、これらは、動物(好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で1つ以上の感染症を予防及び/又は治療する方法で、及び/又は動物(好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で媒介生物(好ましくは吸血昆虫、ハエ、ユスリカ、ダニ及び/又はカ)による1つ以上の感染症の伝播を予防する方法に使用される。当該感染性病原体及び/又は感染症は以下から選択される1つ以上であり得る:カンピロバクター、フィラリア、エールリキア症、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、ボレリオ症、シュマーレンバーグ-、ブルータング-及び/又は西ナイルウイルス感染症、皮膚糸状菌症、及び/又はウイルス(例えばロタウイルス、コロナウイルス)及び/又は寄生生物(例えば蠕虫)及び/又は原生動物(例えばコクシジウム症、クリプトスポリジウム症)及び/又は前記の検出潜伏期による消化管及び/又は他の器官の感染症。その必要がある動物(好ましくは反芻獣、ブタ、人間、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の対応する予防及び/又は治療方法、及び動物(好ましくは反芻獣、ブタ、人間、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の予防及び/又は治療用医薬組成物/医薬の調製のための使用もまた本発明の範囲内であることが意図される。
さらに別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質をコードする核酸を提供することによって解決された。
さらに別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する少なくとも1つの核酸を含むベクターを提供することによって解決された。
さらにまた別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する少なくとも1つの核酸、及び/又は本明細書に開示し特許請求する少なくとも1つのベクターを含む初代細胞又は細胞株を提供することによって解決された。
【0011】
驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する本発明のiMAT分子は、それらを対応する従来技術のMAT分子より優れたものにする、以下のような物理化学的及び/又は免疫学的特徴を確かに有する:
(i)抗原モジュール、好ましくはiMAT分子全体における少なくとも1つのシステイン残基(好ましくは全てのシステイン残基)の異なるアミノ酸残基(前記アミノ酸残基は、最終的なiMAT分子の安定性を損なわないようにin silicoで選択された)による置換は、生物医薬品のための標準的精製手順の適用のためだけでなく標準的な分析方法のために本発明のiMAT分子を驚くほどに適切にする。
(ii)当該iMAT分子のモジュール(すなわち第一の移行モジュール、第二の標的誘導モジュール及び第三の抗原モジュール)の、前記モジュール間に一切の付加的スペーサーモジュールを含むことのない好ましい直接的共有結合(すなわち前記第一、第二及び/又は第三モジュールの2つ以上の隣接モジュール間に付加的スペーサーモジュールが全く存在しない)は、本発明のiMAT分子の優れた特徴以外にも寄与する。すなわち、三次元構造でより堅固であり、したがって立体的IgEエピトープを形成できないと考えられるそのようなiMAT分子は低アレルギー誘発性ですらある(実質的にアレルギー誘発性は全く存在しない)。
(iii)(準)N-末端又はC-末端のHisタグの好ましい存在は、免疫及び/又は免疫持続をモニターする代用マーカーとして用いることができる、本発明のiMAT分子をもたらす。なぜならば、そのようなタグモジュールは、場合によって移行モジュール由来の1つ以上の隣接アミノ酸残基と一緒になって利用されて、標的対象で特異的な免疫学的に検出可能なシグナル(例えば抗体)を誘発することができるからである(前記シグナルはiMAT分子の構造に対して特異的である(本明細書の実施例1参照))。付け加えれば、そのようなタグ分子の存在を利用して、本発明のiMAT分子を含むサンプルで例えば亜鉛又はコバルトチャージ固相を用いてタンパク質を分離し、したがって精製プロセス中に凝集させることなく本発明のiMAT分子生成の実現性をさらに改善することができる。(準)N-末端のHisタグが好ましい。
(iv)本発明のiMAT分子の少なくとも1つの標的誘導モジュールは、好ましくは種特異的である。すなわちそのようなiMAT分子のイヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ヤギ類又はブタ類への適用が意図される場合、標的誘導モジュールはしたがって例えばイヌバリアント鎖が選択される。本発明のiMAT分子のMHCクラスII分子に対するこの種特異的な標的誘導最適化結合特性は具合よく達成することができる。
【0012】
(v)本発明のiMAT分子の少なくとも1つの抗原モジュールは好ましくはアレルゲンである。これらは、食物及び/又はカビ(真菌類及び/又はその胞子)、花粉、ハウスダスト又は飼料ダニ(及び/又はその糞)及び/又はダニ、好ましくは花粉であって樹木、草、薬草、ブタクサに由来するもの、及び/又はアブラナ科の花粉、及び/又は真菌類及びその胞子であってアスペルギルス属(aspergillus)、アルテルナリア属(alternaria)、ボトリチス属(botrytis)、セルコスポラ属(cercospora)、クラドスポリウム属(cladosporium)、クルブラリア属(curvularia)、ドレクスレラ属(drechslera)、エウロチウム属(eurotium)、ヘルミントスポリウム属(helminthosporium)、エピコックム属(epicoccum)、エリシフェ/オイヂウム属(erysiphe/oidium)、フザリウム属(fusarium)、リキテイミア属(lichtheimia)、ニグロスポラ属(nigrospora)、ペニシリウム属(penicillium)、ペリコニア属(periconia)、ペロノスポラ属(peronospora)、ポリトリンキウム属(polythrincium)、サッカロポリスポラ属(saccharopolyspora)(以前はファエニア属(faenia)又はミクロポリスポラ属(micropolyspora)とも称された)、テルモアクチノミセス属(thermoactinomyces)、ステムフィリウム属(stemphylium)、トルラ属(torula)に属するもの、及び/又はダニ(又はその糞)であってアカルス属(acarus)、グリコファグス属(glycophagus)、チロファグス属(tyrophagus)、デルマトファゴイデス属(dermatophagoides)、エウログリフス属(euroglyphus)、レピドグリフス属(lepidoglyphus)、ブロミア属(blomia)に属するもの、及び/又はノミであってセラトフィルス属(Ceratophyllus)、クテノセファリデス属(Ctenocephalides)、プレクス属(Pulex)、アルカエオプシラ属(Archaeopsylla)に属するものに由来し得よう。本発明のiMAT分子の少なくとも1つの抗原モジュールは、より好ましくはデルマトファゴイデスのアレルゲンである。アレルゲンは以下の規準にしたがって選択できる:対象でアレルギーを引き起こす主要なアレルゲンが不明であるとき、本発明のiMAT分子の少なくとも1つの抗原モジュールは、本明細書の実施例5及び6に例示的にかつ詳細に記載するバイオインフォマティクスによるアプローチによって選択できる。前記手段によって、特にワクチンとして有用な改良iMAT分子を達成することができ、前記ワクチンは、動物(好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)のアレルギーの治療及び/又は予防に使用される。本発明のiMAT分子の少なくとも1つの抗原モジュールはまた、1つ以上の感染症に関与する病原体の抗原であり得る。前記病原体は、以下の属(カンピロバクター、ディロフィラリア(Dirofilaria)、エールリキア(Ehrlichia)、リーシュマニア(Leishmania)、トリパノソーマ(Trypanosoma)、ボレリア(Borrelia)、オルトブンヤウイルス(Orthobunyavirus)、オルビウイルス(Orbiviru)、フラビウイルス(Flavivirus)、ロタウイルス(Rotavirus)、コロナウイルス(Coronavirus)、トリコフィトン(Trichophyton)、ミクロスポルム(Microsporum));他の蠕虫類、例えばコオペリア(Cooperia)、ハエモンクス(Haemonchus)、オステルタギア(Ostertagia)、トリコストロンギルス(Trichostrongylus)、ディクチオカウルス(Dictyocaulus)、メタストロンギルス(Metastrongylus);及び/又は胃腸管蔓延性原生生物、例えばエイメリア(Eimeria)、イソスポラ(Isospora)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、ギアルジア(Giardia)に由来し得るが、寄生生物の場合には検出潜伏期の抗原もまた利用し得よう。本発明のiMAT分子の少なくとも1つの抗原モジュールはまた、1つ以上の感染症の伝播に関与する媒介生物の抗原(例えば唾液成分)であってもよい。前記媒介生物は、例えばカ科(Culicidae)、ヌカカ科(Ceratopogonidae)、フレボトミナエ科(Phlebotominae)、マダニ科(Ixodidae)、及び/又はトコジラミ科(Cimicidae)に属する。前記手段によって、特にワクチンとして有用な改良MAT分子を達成することができ、前記ワクチンは、動物(好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の感染症の伝播の予防に使用される。
(vi)ただ1つの前記iMAT分子に2つ以上のアレルゲンの配列モチーフを含む新規なiMAT分子(すなわちモザイク融合タンパク質)の生成が達成され得る。アレルゲンモジュールに埋め込まれるペプチド配列の選択は、バイオインフォマティクスツールにより検出される、関連する主要アレルゲンの全般的なアレルギー誘発性モチーフに基づく。このアプローチによって、そのようなiMAT分子のサイズを十分に小さく維持して、適切な発現系での効率的な生成を可能にすることができる。
【0013】
特に、本発明は、クロマトグラフィー分離技術に容易に適用できる可溶性の改善を示し、さらに安定性の改善を示す(単離)組換えタンパク質を提供する。加えて、本発明の(単離)組換えタンパク質は、好ましくは所望の免疫学的作用の誘発において高い活性及び有効性を示し、すなわち有利には、対象におけるアレルゲンに対する免疫応答の種特異的調節が、動物(より好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類は除く)で実現可能となり、アレルゲン特異的IgE媒介過敏性反応を種々の標的器官(例えば皮膚、呼吸器系及び/又は胃腸管系)で調節することができる。及び/又は、感染症の予防及び/又は治療及び/又は媒介生物による感染症の伝播の予防が、動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、人間、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で実現可能になる。
治療用アレルゲンのアレルギー誘発性は最も重要であり、これは有害事象を誘発する(例えばアナフィラキシーを引き起こす)潜在能力の目安である。従来のMAT分子に関しては、対応する自然のままのアレルゲンと比較してそのアレルギー誘発性について矛盾する結果が従来技術で報告されている。G. Sentiら(Senti G et al., J Allergy Clin Immunol. 2012, 129(5): 1290-1296)は、細胞性抗原刺激試験(CAST)アッセイとともに皮内及び真皮内試験でMAT-Fel d1の低アレルギー誘発性を示した。アレルゲンとFel d1含有MAT分子間における感受性の定量的相違は、それぞれ100倍、23倍及び16倍であった。MAT-Fel d1は明らかに低アレルギー誘発性であったが、ある程度のアレルギー誘発性は残存した。対照的に、Zhaoら(Zhao et al., Int J Clin Exp Med 2015; 8(4): 6436-6443)は、彼らのMAT-Der p1構築物は、自然のままのDer p1タンパク質と比較してより強力ですらあるアレルギー誘発性(過アレルギー誘発性)を示すことを記載している。驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する改良MAT分子の安全性はこの点で優れている。自然のままのアレルゲン(通常は強力なヒスタミン遊離を引き起こす)とは対照的に、本発明のiMAT分子は、驚くべきことに、ヒスタミン放出応答を実質的に全く示さない。したがって、iMAT分子は、従来技術で記載されたMAT分子と比較して安全性に関して卓越性を示す(上記参照)。
【0014】
従来技術のMAT分子とは対照的なiMAT分子のこの驚くべき安全性特性の帰結は、脱感作タンパク質として用いられるiMAT分子を病原体に対するワクチンと同様に用いることができるということである。古典的な治療用アレルゲンのような用量引上げは必要とされない。なぜならば、iMAT分子を含むワクチンは、アレルギー性有害事象についてアレルゲン特性を示さないからである。治療過程におけるiMAT分子の最初の注射用量は既に有効性のみを斟酌して選択され、潜在的なアレルギー性有害反応を斟酌する必要がないからである。前記を従来技術に記載されたMAT分子を用いて実施することは不可能であった。なぜならば、自然のままのアレルゲンと比較してMATのアレルギー誘発性は一定レベルにしか低下され得ないからである。しかしながら、従来技術に記載されたMAT分子はやはりアレルゲンであり、対称的にiMAT分子はアレルゲンではない。この改良特性の利点はより効果的な治療プログラム、例えば高い生物医薬品含有量による3回の皮下又はリンパ管内注射(例えば3回の1μgから100μg、好ましくは3回の10μgから50μgのiMATタンパク質)を可能にする。
iMAT分子のアレルギー誘発性の欠如は以下の事実によって説明できる:従来技術に記載されたMAT分子とは対照的に、リンカーアミノ酸残基(すなわち第一、第二及び/又は第三モジュール間のスペーサーモジュール)は、そのようなiMAT分子では異なるモジュールを分離するために用いられていない。ペプチド又はタンパク質リンカーによって結合される2つ以上の機能的ポリペプチドを含む操作された融合タンパク質では、リンカーはタンパク質の機能(例えば免疫系によるエピトープ認識)に重要であることは従来技術で公知である(Klein JS et al., Protein Eng Des Sel. 2014, 27(10): 325-330)。機能的ユニット間の分離距離は、エピトープの接近及びアビディティによる結合能力に強い影響を与え得る。本発明のiMAT分子(モジュール間、特に標的誘導ドメインと抗原モジュールとの間でアミノ酸残基リンカーが欠落している)はより堅固な構造をもたらし、アレルゲンモジュールの立体的エピトープは不正確な折畳みのために形成され得ないと想定される。抗体とその高親和性受容体による好塩基球の表面での架橋結合は、活性化及びヒスタミン遊離の誘発に必要である。しかしながら、不正確に折り畳まれたアレルゲンはそのような架橋を誘発することができないのかもしれない。したがって、第一、第二及び第三のモジュール間でスペーサーモジュールが付加されていないiMAT分子は立体的IgEエピトープを形成できず、本発明のiMAT分子を非アレルギー誘発性にする。したがって、具体的な実施態様では、本発明のiMAT分子は、第一、第二及び第三モジュール間に一切の付加的スペーサーモジュール又はリンカーを欠く。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】MAT-Fel d1(IVN201)の還元条件下SDS-PAGEを示す。A)最初のSDS-PAGE(10μgタンパク質/レーン、クマシー染色)及びB)ゲルAから切り出しSDS-PAGEに再ローディングしたバンドを用いたSDS-PAGE(銀染色)。
図1B】MAT-Fel d1(IVN201)の還元条件下SDS-PAGEを示す。A)最初のSDS-PAGE(10μgタンパク質/レーン、クマシー染色)及びB)ゲルAから切り出しSDS-PAGEに再ローディングしたバンドを用いたSDS-PAGE(銀染色)。
図2】Fel d1の還元条件下SDS-PAGEを示す(NuPAGE(商標)4-12% Bis-Trisゲル)。レーン1)マーカー(シーブループラス2(SeeBlue Plus2)前染色標準物)、レーン2)5μg Fel d1、レーン3) 5μg Fel d1。
図3A】RP-HPLC(0.1% TFA/アセトニトリルグラディエント)クロマトグラフィー図を示す。a)添加物のない自然のままのタンパク質(MAT-Fel d1)(左グラフ)、b)塩化グアニジニウムにDTTを加えて変性させたMAT-Fel d1(右グラフ)。
図3B】RP-HPLC(0.1% TFA/アセトニトリルグラディエント)クロマトグラフィー図を示す。a)添加物のない自然のままのタンパク質(MAT-Fel d1)(左グラフ)、b)塩化グアニジニウムにDTTを加えて変性させたMAT-Fel d1(右グラフ)。
図4】MAT-Fel d1分子及びそのカイトドゥリトル疎水性図表を示す。
図5】NuPAGE(商標)SDS-PAGE系(4-12% Bis-Trisゲル、1xMES泳動緩衝液、35分、200V)を示す。レーン1)リゾチーム、1μgタンパク質(ox.)、2)ページルーラー(PageRuler)前染色タンパク質ラダー、3)ヨードアセトアミド酸化MAT-Fel d1(5μg)(ox.)、4)iMAT-Cul o4(ox.)、5)ページルーラー前染色タンパク質ラダー、6)還元MAT-Fel d1(5μg)、7)還元iMAT-Cul o4、8)還元リゾチーム。
図6】RP-HPLC(0.1% TFA/アセトニトリルグラディエント)クロマトグラフィー図を示す。ピークは、添加物のない自然のままの(酸化された)タンパク質(iMAT-Cul o4)を表す。
図7】以下の実験の結果を示す:タンパク質及びAdju-Phos(商標)を室温で静かに30分撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション後、サンプルを3分間遠心分離し、続いてSDS-PAGEで分析した。レーン1)ページルーラー前染色タンパ質ラダー、2)iMAT-Cul o3上清、3)尿素中でのiMAT-Cul o3ペレット、4)iMAT-Cul o3上清、5)尿素中でのiMAT-Cul o3ペレット、6)空レーン、7)iMAT-Cul o2上清、8)尿素中でのiMAT-Cul o2ペレット、9)iMAT-Cul o2上清、10)尿素中でのiMAT-Cul o2ペレット、11)空レーン、12)iMAT-Cul o4上清、13)尿素中でのiMAT-Cul o4ペレット、14)iMAT-Cul o4上清、15)尿素中でのiMAT-Cul o4ペレット。2、3、7、8、12、13は凍結融解無しで4、5、9、10、14、15は2回の凍結融解後である。
図8】MAT分子とiMAT分子のそれぞれの融合タンパク質の一般部分(すなわちそれぞれの抗原モジュールを含まない部分)のカイトドゥリトル疎水性図表を示す。疎水性インデックスは、X軸のアミノ酸の位置に対してY軸上に示される。インデックスの正の数字は疎水性を示す。MAT分子と比較して、iMAT分子のグラフで疎水性図表の開始がシフトしているのは、iMAT分子におけるHisタグ及び1つメチオニン残基のN-末端の付加的存在とともにスペーサーモジュールが全く存在しないことによる。
図9a】デルマトファゴイデス属のアレルゲンにおける種、アレルゲン及びUniProtのアクセッション番号の確認例を示す。(a)D.プテロニシヌス(D. pteronyssinus)のアレルゲン、(b)D.ファリナエ(D. farinae)のアレルゲン。
図9b】デルマトファゴイデス属のアレルゲンにおける種、アレルゲン及びUniProtのアクセッション番号の確認例を示す。(a)D.プテロニシヌス(D. pteronyssinus)のアレルゲン、(b)D.ファリナエ(D. farinae)のアレルゲン。
図10】イヌ及びネコのインバリアント鎖のN-末端配列アラインメントを示す。CLIP配列にはグレーの陰影が施されている。
図11(1)】多重感作のウマ(ウマ1)における5濃度のiMAT-Cul o2及びiMAT-Cul o3とそれぞれのアレルゲンによるヒスタミン遊離試験(実施例2にアッセイの詳細)を示す。
図11(2)】多重感作のウマ(ウマ1)における5濃度のiMAT-Cul o2及びiMAT-Cul o3とそれぞれのアレルゲンによるヒスタミン遊離試験(実施例2にアッセイの詳細)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施態様をさらに詳細に述べる前に以下を特記しておく。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形“a”、“an”及び“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り対応する複数の対象語を含む。
特段に指定されなければ、本明細書で用いられる全ての技術用語及び学術用語は、本発明が属する業界の者が一般的に理解する意味と同じ意味を有する。全ての提示される範囲及び値は、特に指示がなければ又は当業者にとって特に公知でなければ1から5%で変動しうる。したがって“約”という用語は、本明細書及び特許請求の範囲から通常は省略された。本明細書に記載した方法及び材料と同様な又は等価のいずれの方法及び材料も本発明の実施又は試験で用いることができるが、好ましい方法、装置及び材料をこれらから述べる。本明細書に記載する全ての刊行物は、当該刊行物で報告される物質、賦形剤、担体及び方法論(本発明との関係で用いることが可能である)の説明及び開示の目的で参照によって本明細書に取り込まれる。前記のいずれも、本発明が先行発明を理由にそのような開示に先行する資格をもたないということを容認するものと解されるべきではない。
“単離された組換えタンパク質”、“組換えタンパク質”及び/又は“改良MAT(iMAT)”という用語は、本発明では互換的に用いられる。それらはいずれも同一の意味を有する。
本発明で“モジュール”という用語は、特定のアミノ酸配列、例えばポリペプチドの部分、ユニット又は一部分(通常は短いアミノ酸/ペプチド配列)であり、指定の機能を有するものを指す。本発明では“(単離)組換えタンパク質、好ましくは改良MAT(iMAT)分子の細胞外空隙から細胞の内部への移行を可能にするアミノ酸配列である、第一のモジュール”という用語(本明細書ではまた互換的に“移行モジュール”又は“移行配列”とも称される)は、積み荷分子(例えばアミノ酸配列、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質及び他のクラスの物質、例えば核酸又は医薬的に活性な成分(API))の細胞(特に真核細胞、より具体的には文献で公知のMHCクラスII分子を細胞表面に及び/又はMHCクラスI分子を細胞表面に発現する細胞)の内部への移送を促進する固有のアミノ酸配列を指す。移行モジュールの存在によって、前記積み荷分子の細胞内への侵入を促進することが可能である。
【0017】
移行モジュールとして有用なアミノ酸配列は従来技術に記載されている。例えば、US7,653,866は、HIV-tat分子又はタンパク質VP22(単純疱疹ウイルスに由来する)を含むいくつかの有用な移行配列を開示する。ある標的分子の細胞内部への侵入を促進するこの原理は、関連特許及び非特許文献の多様な研究に数多く記載されている。加えて、適切な移行配列には、ホメオタンパク質配列、ロイシンジッパー配列、アルギニンリッチ及び/又はリジンリッチ配列、及び分泌シグナル配列が存在しないにも関わらず分泌される多様な他のタンパク質又はポリペプチドが含まれる。特に有用なものは、ウイルスペプチド配列、例えばHIV転写アクチベータータンパク質(HIVtat)である。Tat配列又はTatペプチドは従来技術で既に記載され、多様な改変を含む。Tatペプチド配列について従来技術に記載されている変型は全て移行モジュールとして概ね適切である。他の例にはVP22とともにショウジョウバエ(drosophila)のホメオティックタンパク質アンテナペディアに由来するアンテナペディアペプチドが含まれる。加えて、他のホメオタンパク質を用いることもできる。適切なホメオタンパク質の多様な例が従来技術に記載されている。その他に、ロイシンジッパータンパク質、例えばヒトcFos-(139-164)、又はヒトcJun-(252-279)を用いることができる。さらにまた、アルギニンリッチ及び/又はリジンリッチペプチドが、移行モジュールとして適切であり、例えばHIV-1rev(34-50)又はウイルス若しくは酵母に由来する他のペプチド配列が含まれる。もちろん、ポリアルギニンリッチ及び/又はポリリジンリッチペプチドを合成により製造することができる。前記ポリアルギニンリッチ及び/又はポリリジンリッチペプチドはさらに別のアミノ酸を含むことができる。適切な例は関連する従来技術に記載されている。好ましい実施態様では、少なくとも1つの移行モジュールは、上記に示す、完全なタンパク質配列から成るものではないが、なお機能的な(すなわち細胞侵入を効果的に促進できる)最小配列の代わりとなるアミノ酸配列を含む(好ましくは前記アミノ酸配列から成る)。適切な最小配列は例えばアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:1)である。別の好ましい実施態様では、少なくとも1つの移行モジュールは、HIV-tat、VP22及び/又はアンテナペディア又は前記の部分配列を含むが(好ましくは前記配列から成るが)、ただしそのような少なくとも1つの移行モジュールが、細胞外空隙から細胞の内部への移行のためのモジュールとして機能することを条件とする。
【0018】
“(単離)組換えタンパク質、好ましくは改良MAT(iMAT)分子の細胞小器官(抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディグに関与する)への種特異的細胞内標的誘導を可能にする配列である第二のモジュール”という用語(本明細書ではまた“標的誘導モジュール”又は“標的誘導配列”と称される)は、本発明では、抗原プロセッシング及び/又はMHC分子の抗原ローディングに関与する細胞小器官への本明細書に開示及び特許請求される(単離)組換えタンパク質の細胞内移送を可能にする/促進する固有のアミノ酸配列を指す。
特に、そのような細胞小器官には小胞体、ゴルジ装置、トランスゴルジネットワーク、リソソーム、エンドソーム及びMHC II区画が含まれる。これらの細胞内小器官は、複数のプロセス、例えば抗原の移送及び/又はプロセッシング、MHC II分子の調製及び/又は抗原若しくはプロセッシング抗原ローディング、及び/又はそのような抗原をロードされたMHC II分子の細胞表面への移送に関与する。
多数の配列が従来技術で知られている。有用な標的誘導配列のもっともよく知られた例には、MHCクラスII分子のインバリアント鎖(Iiインバリアント鎖又はMHC IIガンマ鎖としてもまた知られている)が含まれる。インバリアント鎖の多様な変型が特許及び非特許文献に記載されている。本発明の好ましい実施態様では、インバリアント鎖は、免疫応答が調節されるべき種から、及び/又はiMAT分子が細胞内で標的誘導されるべき種から選択される。この種特異性は、哺乳動物種間でIiアミノ酸配列ホモローグに相違が存在するので前記iMAT分子で提示されることが必要である(図10)。しかしながら、Ii融合タンパク質(iMAT)とMHCクラスIIαβサブユニット(特にCLIP領域)との適切な結合は、前記iMAT分子中の抗原の最適な免疫学的機能のために肝要である。前記MHCクラスII分子との適切な結合は、iMAT中のIi配列が可能なかぎり本来のものと確かに類似するならば達成される。例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ又はブタのために好ましいインバリアント鎖はイヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ヤギ類又はブタ類のインバリアント鎖である。イヌ及びネコのためには、好ましいインバリアント鎖は、配列番号:2(イヌ類)及び配列番号:3(ネコ類)のアミノ酸配列又はそのフラグメントであるが、ただし前記フラグメントが細胞内移送機能を維持することを条件とする(例えば最初の110アミノ酸は図10に示される)。標的誘導配列の他の適切な例には、リソソーム膜タンパク質(標的誘導分子として適切な配列を含む)が含まれる。それらは、リソソームへの標的誘導を可能にする配列モチーフを有する、リソソームに存在する多数の膜タンパク質である。これらのタンパク質グループにはとりわけlamp1、lamp2、lamp3、limp II及びlapが含まれる。その他に、テトラスパンタンパク質が標的誘導モジュールとして従来技術で知られている。標的誘導特性を示す、付け加えられるタンパク質は、エンドソーム/リソソーム区画内で見出されうる。したがって、当業者は適切な標的誘導配列の決定の仕方を認識していよう。別の実施態様では、少なくとも1つの標的誘導モジュールは、イヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ヤギ類又はブタ類のインバリアント鎖又は前記のフラグメントを含むが(好ましくはそれらから成るが)、ただし前記フラグメントがそれらの細胞内移送機能を維持することを条件とする。好ましい実施態様では、少なくとも1つ標的誘導モジュールはイヌ類インバリアント鎖であり、好ましくは配列番号:4(イヌ類)から成る。さらに別の好ましい実施態様では、少なくとも1つ標的誘導モジュールはネコ類インバリアント鎖であり、好ましくは配列番号:5(ネコ類)から成る。
【0019】
“少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープに由来し、そのような(単離)組換えタンパク質、好ましくは改良MAT(iMAT)分子によって(対象、好ましくは動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で)調節される免疫応答の特異性を決定するアミノ酸配列である、抗原モジュールとして第三のモジュール”という用語(本明細書ではまた“抗原モジュール”又は“抗原配列”と互換的に称される)は、本発明では、対象(好ましくは動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く))におけるエピトープ/抗原に対する免疫応答の調節及び免疫応答の特異性の決定を可能にする特異的なアミノ酸配列を指す。
この文脈では、そのような抗原モジュールは、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン及び/又はアスパラギン酸)で置換される少なくとも1つのシステイン残基を含む。したがって、免疫応答は、当該抗原の未変更アミノ酸配列に暴露された対象(好ましくは動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く))の免疫応答と比較して相違する。
当該方法に基づけば抗原に関して制限は存在しない。例えば、当該方法を用いて、病原体(例えばウイルス、細菌、真菌類、寄生生物、原生動物など)に対する対象の免疫系を(すなわち非常に大雑把にワクチンとして)活性化することができる。付け加えれば、当該方法をそのような病原体に対して直接用いるだけでなく、宿主免疫系を活性化し、ウイルス、細菌、真菌類、寄生生物、原生動物などが関与する媒介生物による疾患の伝播を予防することができる。加えて、当該方法を用いて変性細胞(例えば腫瘍細胞など)に対して免疫系を活性化することができる。しかしながら、他方で、当該方法はまた、アレルゲン(例えば食物及び/又はエアロアレルゲン、例えばカビ(真菌類及び/又はその胞子)、花粉、動物の毛、ハウスダスト又は飼料ダニ(及び/又はその糞)、昆虫毒など)に由来するもの)に対して対象の免疫系の脱感作のために、又は例えば自己免疫反応(例えば関節炎、リウマチ症、糖尿病、SLE(全身性エリテマトーデス)など)が存在する場合に免疫系の標的誘導抑制のために、さらに移植拒絶反応の抑制にもまた用いることができる。明確に述べられていない、強すぎるか若しくは弱すぎる免疫反応に随伴するさらに別の疾患も同様に、本明細書に開示し特許請求するiMAT分子を用いて治療することができる。
【0020】
原則として、免疫応答を調節することができる全てのタイプの抗原を本発明の目的のために抗原モジュールとして用いることができる。これまでに知られている抗原及び将来発見される抗原の両方が適切である。いくつかの状況では、抗原はまた、現在の技術で公知の通常的な免疫方法では免疫応答をもたらさないが、本発明に記載する新規な方法の適用により対象で免疫応答をもたらす抗原でありうる。さらにまた、抗原という用語は、エピトープとしてもまた知られている1つの又は複数の抗原決定基を含む抗原フラグメントを包含する。したがって、抗原モジュールは、分子全体(例えばタンパク質)又は分子の部分(すなわち分子のフラグメント、例えばペプチド;このペプチドは少なくとも1つの抗原決定基又はエピトープを含む)でありうる。少なくとも1つの抗原決定基又はエピトープは当該抗原に対する免疫応答を引き起こすことができる。エピトープは、1つ又は2つ以上のアミノ酸又はペプチド又は免疫応答を引き起こすことができる他の構造(例えば糖構造、リン酸化アミノ酸など)又は前記の組み合わせを含むことができる。抗原は、連続エピトープ(すなわち立体構造に依存せず、例えば自然のままのタンパク質及び変性タンパク質に存在する)又は不連続エピトープ(すなわち立体構造に依存し、例えば自然のままの折り畳まれたタンパク質に存在するが変性タンパク質には存在しない)でありうる。タンパク質及びペプチドだけでなく、糖構造物、脂質(例えばリポ多糖類、リポテイコ酸)、及び細菌膜の他の構成物質(例えばCD1b結合物、例えば糖構造物及び脂質))、核酸(例えばCpGモチーフを含むDNA)、有機物質(例えばラテックス)又は本発明の目的のための抗原として医薬的に活性な物質もまた用いることができる。抗原は、可能なすべての生命形(例えば動物、植物、真菌類、寄生生物、単細胞又は多細胞微生物、ウイルス及び他の生命形)に由来し得る。抗原は、生物学的材料から単離されているか、組み換え抗原として調製されているか、又は合成によって(例えばペプチド合成によって)調製されていてもよい。合成により調製される抗原は、自然に存在するか、又は自然には存在せず化学合成によって入手できる物質でありうる。しかしながらいくつかの周囲状況で抗原として適切である天然には存在しない物質の例は、例えば医薬に存在する合成によって調製される物質、又は天然には存在しないアミノ酸配列を有する合成ペプチド、又はペプチド模倣物などである。天然に存在する抗原又は合成若しくは組み換え抗原は、個々の適用のためにより有利な特性をそれらに付与するために、分子生物学、酵素的、化学的及び/又は他の方法によって改変することができる。これらの有利な特性はとりわけ、抗原としてより高い若しくはより低い活性、抗原としてより広い若しくはより特異的な作用、親水性若しくは疎水性溶媒中でのより良好な可溶性、細胞膜に対する、細胞小器官の膜に対する、血液脳関門に対する、血液-CSF障壁などに対する抗原モジュールのより強い透過性、より長い若しくは短いin vivo又はin vitro半減期、より弱い若しくはより強い毒性、iMAT分子形として抗原を適用した後のin vivo若しくはin vitroにおける抗原のより良好な検出性などであり得る。付け加えれば、本発明の目的のために1つの抗原モジュールに複数の抗原を結合させることが可能である。このために、同一抗原が2つ以上のコピーとして抗原モジュールに存在するか、又は同じ抗原の例えば種々の変型を1つの抗原モジュール中で結合させることができる。抗原モジュール中で抗原(例えば抗原1)及び他の抗原(例えば抗原2)などを組合せることもまた可能である。さらに別の組み合わせ、例えば2つ以上のコピーの抗原1及び単一コピーの抗原2もまた抗原モジュール中で組み合わせることができる。付け加えれば、1つ以上の異なる及び/又は1つ以上の同一の抗原モジュールがiMAT分子に存在することもまた可能である。原則として、1つ以上の異なる抗原に由来する複数の抗原のただ1つの若しくは複数の、同一若しくは変化させたコピーの可能な全ての組合せを本発明の目的のために結合できることは想定内である。
【0021】
好ましい実施態様では、抗原モジュールは少なくとも1つの抗原(この場合、抗原はアレルゲンである)に由来する少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープを含む。少なくとも1つのエピトープが当該アレルゲンに対する免疫応答を引き起こすことができ、したがって、該エピトープは免疫応答を引き起こすことができる1つ又は2つ以上の構造(例えばペプチド)を含むことができる。エピトープは、当該アレルゲンの連続エピトープ又は不連続エピトープであり得る。エピトープは、好ましくは長さが少なくとも8アミノ酸であり、好ましくは長さが少なくとも10アミノ酸であり、より好ましくは長さが少なくとも13アミノ酸である。抗原モジュールは、少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープを含むが、2つ以上の完全な又は部分的エピトープもまた含むことができ、これらは互に同一でも異なっていてもよい。さらにまた、抗原モジュールは、当該少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープに隣接する追加のアミノ酸配列を含むことができる。エピトープは天然に存在するエピトープでも改変されたエピトープでもよく、そのアミノ酸配列の改変であるか又は1つ以上の翻訳後修飾によって改変される。
ある実施態様では、少なくとも1つの(第三の)抗原モジュールは、動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の1つ以上の感染症に関与する病原体の少なくとも1つの抗原に由来する少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープを含む。前記は、以下の属(カンピロバクター、ディロフィラリア、エールリキア、リーシュマニア、トリパノソーマ、ボレリア、オルトブンヤウイルス、オルビウイルス、フラビウイルス、ロタウイルス、コロナウイルス、トリコフィトン、ミクロスポルム;他の蠕虫類、例えばコオペリア、ハエモンクス、オステルタギア、トリコストロンギルス、ディクチオカウルス、メタストロンギルス;及び/又は胃腸管に蔓延する原生生物、例えばエイメリア、イソスポラ、クリプトスポリジウム、ギアルジアに由来し得るが、寄生生物の場合には検出潜伏期の抗原もまた利用し得よう。本発明のiMAT分子の少なくとも1つの抗原モジュールはまた、1つ以上の感染症の伝播に関与する媒介生物の抗原(例えば唾液成分)であってもよい。前記媒介生物は、例えばカ科、ヌカカ科、フレボトミナエ科、マダニ科、及び/又はトコジラミ科に属する。
【0022】
さらに別の好ましい実施態様では、少なくとも1つの(第三の)抗原モジュールは、動物(より好ましくは、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で1つ以上のアレルギーを引き起こす少なくとも1つのアレルゲンに由来する少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープを含む。このエピトープは以下に由来する少なくとも1つのアレルゲンの少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープであり得よう:食物及び/又はカビ(真菌類及び/又はその胞子)、花粉、ハウスダスト又は飼料ダニ(及び/又はその糞)、好ましくは樹木、牧草、草本の花粉、ブタクサ及び/又はアブラナの花粉、及び/又は以下の属の真菌類及び/又はその胞子(アスペルギルス、アルテルナリア、ボトリチス、セルコスポラ、クラドスポリウム、キュルブラリア、ドレクスレラ、エウロチウム、ヘルミントスポリウム、エピコックム、エリシフェ/オイジウム、フザリウム、リクテイミア、ニグロスポラ、ペニシリウム、ペリコニア、ペロノスポラ、ポリスリンシウム、サッカロポリスポラ(以前にはまたファエニア又はミクロポリスポラ)、テルモアクチノミセス、ステムフィリウム、トルラ)、及び/又は以下の属のダニ(又はその糞)(アカルス、グリコファグス、チロファグス、デルマトファゴイデス、エウログリフス、レピドグリフス、ブロミア)、及び/又は以下の属のノミ(セラトフィルス、クテノセファリデス、プレクス、アルカエオプシラ)。
好ましい実施態様では、このエピトープは、好ましくはダニ、より好ましくはデルマトファゴイデス属に由来する少なくとも1つのアレルゲンの少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープである。デルマトファゴイデス属のアレルゲンの例は、種、アレルゲン及びUNIPROTアクセッション番号を示す図9(9A及び9B)に示されている。
さらに別の好ましい実施態様では、少なくとも1つのアレルゲンは、配列番号:11(完全型)及び配列番号:18(iMAT型)のDer f15である。抗原モジュールの好ましい固有の配列は、配列番号:7-23、好ましくは配列番号:14-23(iMAT型)のアミノ酸配列である。
【0023】
本発明における“(単離)組換えタンパク質”及び/又は“iMAT分子”の関係で、“~によって調節される免疫応答”又は互換的に“免疫調節性免疫応答”という用語は、免疫原性及び/又は耐性誘発性免疫応答を指す。
“ハイブリッドiMAT”又は“iMATハイブリッド”又は“モザイク様iMAT”という用語は互換的に用いられる。これらの用語は、その第三のモジュールにおいて2つ以上の抗原に由来する2つ以上の完全な又は部分的エピトープ配列を含むiMAT分子を指す。好ましくは、前記抗原は、2つ以上のアレルゲン、より好ましくは異なるアレルゲンに由来する2つ以上の短いペプチド配列であり、前記は(対象、好ましくは動物において)そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する。
本発明における“アレルゲン”という用語は、別の状況では対象にとって無害であるはずの全ての感知される脅威を免疫系が撃退する、異常に激しい免疫応答を自然のままの形態で生じる抗原のタイプを指す。典型的には、これらの種類の反応はアレルギーとして知られる表現型をもたらす。従来技術で多様なアレルゲンタイプが記載され、食物、薬剤、動物の生成物又は天然若しくは合成物質が含まれる。好ましくは、あるタンパク質がその自然のままの形で、少なくとも5匹の対象(好ましくは動物、より好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で特異的なIgE応答を引き起こすとき、前記タンパク質はアレルゲンであると考えられる。念のため明記すると、“少なくとも1つのアレルゲンに由来する少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープを含む少なくとも1つの(第三の)抗原モジュール”の関係で“アレルゲン”はもはや自然のままの形である必要はなく、換言すれば本発明における“アレルゲン”という用語はまた、好ましくは本明細書に記載し特許請求する、iMAT分子の部分として自然のままではないアミノ酸配列をも明示的に指し、この配列は、少なくとも5つの対象(好ましくは動物、より好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で特異的なIgE応答をもはや引き起こさない。
【0024】
治療用アレルゲンの“アレルギー誘発性”という用語は、有害な事象(例えばアナフィラキシー)を誘発する潜在能力の大きさである。哺乳動物のアレルギーの例では、イヌのアレルギー誘発性を測定するアッセイをGriffinらが記載している(Griffin CE. Diagnosis of canine atopic dermatitis DOI: 10.1002/9781118738818.ch10)。前記資料は、アレルゲン惹起試験(特に皮膚を標的とする試験)としての手順でアレルゲン特異性IgE媒介過敏の測定を記載している。組換えアレルゲンの生物学的評価のために及び遺伝子操作の低アレルギー誘発性誘導体の検証のために、真皮内皮膚試験が用いられる。少量のアレルゲン溶液をイヌの真皮に直接的に注射投与することによって、イヌの真皮内試験を実施する。前記試験は、細いゲージ(27ゲージ)の注射針及び各部位の0.05から0.1mLの注射を用いて実施される。陽性反応は、紅斑、腫脹の存在、じんま疹の高さ及びサイズによって任意に解釈される。真皮内試験の利点は高い感度である。これは、試験がアレルギー誘発性の定量的測定をデリバーする場合に特に重要である。
本発明のiMAT分子を用いて前記Griffinらの試験を実施したとき、それらiMAT分子は、同じ試験に適用された対応する天然の自然のままのアレルゲンと比較して、例えばイヌ及びネコのような感作個体で陽性反応に達するにはアレルギー誘発性成分の10倍、100倍から1000倍又はそれ以上のモル濃度さえも示す。
【0025】
本明細書でまた“抗原決定基”と互換的に称される、“エピトープ”という用語は、本発明では、免疫系(B細胞又はT細胞)によって認識される抗原の部分を指す。エピトープは、それらが結合するMHC分子の手段によって抗原提示細胞の表面で提示される。
本明細書でまた“個体”及び/又は“生物”及び/又は“宿主”と互換的に称される“対象”という用語は、本発明では好ましくは動物及び/又は人間、例えば反芻獣、ブタ、より好ましくはイヌ及び/又はネコ(ただしウマ類を除く)を指す。本発明では“反芻獣”という用語は、ウシ、ヤギ及びヒツジを含む反芻する哺乳動物を包含する。したがってウシ属、ヤギ属及び/又はヒツジ属のメンバーは、互換的に“ウシ類”、“ヤギ類”及び/又は“ヒツジ類”の種と称される。本明細書で用いられる“動物”という用語には哺乳動物が含まれる。動物は以下から成る群から選択できる:反芻獣、又はイヌ属のメンバー(或いは互換的に“イヌ類”の種と称される)(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、又はネコ属のメンバー(或いは互換的に“ネコ類”の種と称される)(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ、及びチーター及びオオヤマネコを含む他のネコ類)、又はブタ(すなわちイノシシ属のメンバーで互換的に“ブタ類”の種と称される)。
“ペプチド”及び“タンパク質”という用語は、本発明では同等なものとして並列させて用いられる。本発明の目的のためには、ペプチド又はタンパク質は、ペプチド結合を介する少なくとも2つのアミノ酸の共有結合を意味する。“アミノ酸”及び“アミノ酸残基”という用語は本出願では等価なものとして用いられる(すなわち2つの用語の意味は同一である)。アミノ酸/アミノ酸残基及びペプチド/タンパク質という用語は、本出願ではあり得るもっとも広い定義で用いられる。この関係では、“組換えタンパク質”という用語は、遺伝子操作及び真核細胞系又は原核細胞系での発現によって入手できるポリペプチドを指す。加えて、前記用語は人工的(例えば固相)合成によって得られるポリペプチドを包含する。本明細書で用いられるように“異なるアミノ酸残基”という用語は、特段の指示がなければシステイン以外の公知のアミノ酸残基を指す。例えば、前記アミノ酸残基は、天然に存在するアミノ酸残基(例えばセリン又はイソロイシン)でありうる。
【0026】
本明細書で用いられるように、“線状形”という用語は、二次構造を欠く本発明のタンパク質を指す。そのようなタンパク質はしばしばランダムコイル構造を示すと考えられ、前記構造では、固定された関係だけがペプチド結合による隣接アミノ酸残基の結合である。好ましい実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質はモノマー形及び/又は線状形で存在する。
本明細書で用いられるように、“治療”という用語は、所望の臨床的結果(予防的及び/又は治療的処置を含む)を得るために、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質、及び/又は対応するワクチン及び/又は免疫原性組成物及び/又は医薬組成物を投与することを指す。本明細書で用いられるように、“免疫療法”という用語は、例えば予防的及び/又は治療的ワクチン免疫による、対象の治療的及び/又は予防的処置を指す。
本明細書で用いられるように、“1つ以上の感染症の伝播”に関連して“媒介生物”という用語は生きている生物を指し、本明細書では“生物学的ベクター”、“生物学的キャリアー”及び/又は“疾患キャリアー”という用語と互換的に用いられ、例えば吸血昆虫、ハエ、ユスリカ、ダニ及び/又はカである。
【0027】
さらにまた、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は付加される少なくとも1つのタグモジュールを含む。すなわち、1つ以上の異なる及び/又は同一のタグモジュールは、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質の部分であることが可能であり好ましい。タグモジュールは、短いペプチド(しばしば20アミノ酸まで)、又はアミノ酸を含まない官能基(例えばビオチン又はジゴキシゲニン)であり得る。適切なタグモジュールには周知で好ましいHisタグが含まれ、このタグは4から12以上のヒスチジン配列、好ましくは直に連続するヒスチジン残基、好ましくは連続する5、6又は7ヒスチジン残基を含む。他の適切なタグモジュールには、HA-タグ、FLAG-タグ、GST-タグ又はStrep-タグが含まれる。タグは、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質のどこにでも存在しうるが、好ましい実施態様では、タグは(単離)組換えタンパク質の(準)N-末端及び/又はC-末端に存在する。
タグ分子は、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質の単離に有用であり、加えて、そのような(単離)組換えタンパク質の存在のin vitro又はin vivo検出を可能にする。さらにまた、タグモジュールは、隣接モジュールに由来する又は別個のモジュールから空間的に離れたリンカーに由来する1つ以上の隣接アミノ酸残基と一緒に用いられて、標的対象で特異的な免疫学的に検出可能なシグナル(例えば抗体)を誘発することができる(前記シグナルは免疫及び/又は免疫持続期間の代用マーカーとして用いることができる)。本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質による免疫療法は、抗原特異的、好ましくはアレルゲン特異的免疫応答を標的対象で誘引し、前記免疫応答は、天然に存在する抗原(好ましくはアレルゲン)に暴露後の自然な免疫応答と質的に区別できない。したがって、抗原モジュールと結合する抗体は、iMAT誘発免疫調節作用の有効性のための代用マーカーという目的のためには適切ではない。この障害は、C-末端及び/又は(準)N-末端タグモジュールによって(場合によって隣接アミノ酸残基と一緒になって)得られる、固有の抗原特異的免疫学的シグナルを測定することによって排除できる。したがって、適切な代用マーカーを提供することが可能である。
好ましい実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質はさらに、少なくとも1つのタグモジュール、好ましくは少なくとも1つのHisタグを含み、ここで前記少なくとも1つのタグモジュールは、好ましくは(単離)組換えタンパク質のN-末端及び/又はC-末端に、より好ましくは1つのメチオニン残基の後ろのN-末端に存在する。
【0028】
さらにまた、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質のモジュール、すなわち少なくとも1つの移行モジュール、少なくとも1つの標的誘導モジュール及び少なくとも1つの抗原モジュールは、場合によって、モジュールの少なくとも2つの間に位置する1つ以上のスペーサーモジュールによって離れて配置される。スペーサーモジュールは特にペプチド配列又は有機分子であり得る。本発明の目的のために用いることができる多数のスペーサー分子が当業界で公知である。加えて、本発明の目的のために将来開発又は発見されるスペーサー分子を用いることもまた可能である。適切なスペーサーモジュールは、とりわけペプチドスペーサー、架橋剤、天然又は合成ポリマー、例えば核酸、置換若しくは非置換炭水化物などである。結合は、共有結合(好ましい)及び非共有結合の両方によって生じうる。スペーサーモジュールは、とりわけ、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質の種々のモジュールがそれらの機能性に関して互に有害な影響をもたないように、それらモジュールを互に間隔をあけて隔てる役割を有する。本発明の目的のために(単離)組換えタンパク質のモジュールは1つ以上のスペーサーモジュールによって結合させることができ、前記モジュールは化学的及び/又は酵素的反応によって(例えばプロテアーゼによって)切断できる。したがって、スペーサーモジュールによって連結される、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質のモジュールを要求に応じて互に分離することは可能である。好ましい実施態様では、しかしながら、特に、抗原モジュールが少なくとも1つのアレルゲンである少なくとも1つの抗原の少なくとも1つの完全な又は部分的エピトープに由来するアミノ酸配列の場合には、付加されるスペーサーモジュールは第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の隣接するモジュールの間に全く存在しない(すなわち付加されるスペーサーモジュールは全く存在しない)。
【0029】
本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質の個々のモジュールの所望されるどのような編成も概ね可能である。各モジュールは(単離)組換えタンパク質で1回以上存在できる。最小限の要件は、少なくとも1つの移行モジュール、少なくとも1つの標的誘導モジュール及び少なくとも1つの抗原モジュールの存在である。付加されるモジュール(例えばタグモジュール、スペーサーモジュールなど)は場合によって存在しうるが、存在することは必要とされない。全てのモジュールが、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質で1回以上存在することができる。モジュールが2回以上存在する場合には、それらは同一コピーの形で存在しても、又は1つのモジュールの異なる形が各事例で単一コピーとして若しくは2つ以上のコピーとして存在してもよい。同じクラスのモジュール(例えばHisタグモジュール及びビオチンタグモジュール)で完全に異なるモジュールが、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質で存在することもまた可能である。両モジュールは当該(単離)組換えタンパク質で機能的に同じ役割(タグモジュール)を果たすが、それらの分子構造に関して共通のものを有する必要はない。好ましい実施態様では、1つのモジュールの2つ以上のコピーが本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質に存在することが可能である。すなわち、同一又は異なる抗原モジュールの2つ以上のコピーが存在しうる。また別には、(単離)組換えタンパク質は、対象で免疫応答を調節するために2つの異なる抗原モジュールを含むことができる。
【0030】
組換えタンパク質の抗原モジュールの2つ以上の同一コピーは、例えば、関連抗原に対して強化された免疫応答を引き起こすことができる。2つ以上の異なる抗原モジュールは、例えば1つの(単離)組換えタンパク質内で一緒にされて2つ以上の異なる抗原に対する免疫応答を同時に調節することができる。2つ以上の移行モジュールを本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質中で用いることができる。例えば、Tat配列及びVP22配列を利用して移行をより効率的にすることができる。なぜならば、(単離)組換えタンパク質の移行はより広域の異なる細胞タイプ又は組織タイプで効率的に生じるからである。例えば2つ以上のタグモジュール(例えばHis-タグ及びFLAG-タグ)を1つの(単離)組換えタンパク質で用いることもまた可能である。そのような事例では、例えばHis-タグは組換えタンパク質の単離に用いられ、例えばFLAG-タグは(単離)組換えタンパク質の検出に利用される。2つ以上の異なる標的誘導モジュール(例えばMHC II分子のインバリアント鎖由来の配列及びさらに別の標的誘導モジュールとしてマンノース6-リン酸基)を1つの(単離)組換えタンパク質で用いることが可能である。例えばインバリアント鎖はMIICへの標的誘導モジュールとして機能し、マンノース6-リン酸基はリソソームへの標的誘導を媒介し、したがって抗原提示効率又は抗原提示細胞により提示される種々の抗原エピトープの全体的な数を増加させることが可能である。加えて、本発明のiMAT分子は、同一又は異なる種に由来する2つ以上の異なるインバリアント鎖を包含でき、したがって本発明のタンパク質を異なる種で用いることを可能にする。
【0031】
本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質内の個々のモジュールの位置は、少なくとも1つの移行モジュール、少なくとも1つの標的誘導モジュール及び少なくとも1つの抗原モジュールが存在する限り所望にしたがって変動しうる。(単離)組換えタンパク質のモジュールの全て又はいくつかは線状連続編成モジュールの形態で存在するのではなく、環状若しくは分枝モジュール構造又は他のデンドリマーの形態で、又は線状及び/又は分枝状及び/又は環状及び/又はデンドリマー分子部分の組み合わせとして存在することもまた可能である。発現ベクターの商業的供給業者が存在し、前記業者は、これらのメカニズムによって環状融合タンパク質を調製することを可能にする特異的なベクターを供給する(例えばIMPACTTM-TWIN系(New England Biolabs, Beverly, MA, USA))。分枝モジュールは例えばペプチドを合成することによって調製でき、前記ペプチド合成では、ポリL-リジンから出発し、新しいリジン残基がその後に続くリジン残基の各々の両遊離アミノ基に付加される。この方法では、実質的に任意の分枝度を有するペプチド構造を作出することが可能である。前記分枝ペプチドの基本構造上に続いて例えば移行モジュール及び/又は標的誘導モジュールを合成することが可能である。さらに別のモジュールを線状、環状若しくは分枝状ペプチドの基本構造上にタンパク質連結によって結合させることもまた可能である。ペプチド合成の間に例えばビオチン基をペプチド基本構造に導入することもまた可能であり、続いてモジュールをこれらのビオチン基に例えばストレプトアビジン、Strep-タグ系を介して又はPinPointTM系(それぞれ、IBA GmbH, Gottingen, Germany及びPromega Biosciences Inc., San Louis Obispo, CA, USA)を介して付加することができる。このようにして付加されたモジュールを続いて非共有結合によりペプチドの基本構造に結合させる。
本発明のiMAT分子の抗原モジュールは、本明細書の実施例5及び6で例示的かつ詳細に記載するバイオインフォマティクスによるアプローチで選択できる。前記手段によって、iMAT分子は、例えばアレルギー疾患の治療及び/又は予防のためのワクチンとして特異的に有用とすることができ、前記アレルギー疾患は、対象(好ましくは動物、より好ましくはイヌ及び/又はネコ(ただしウマ類を除く))で種々の標的器官(例えば皮膚、呼吸器系とともに胃腸管系)におけるアレルゲン特異的IgE媒介過敏反応の関与に根差す、例えばアトピー性皮膚炎(AD)、食物アレルギー及び/又はアレルギー性喘息である。
好ましい実施態様では、(単離)組換えタンパク質は、配列番号:24から83のアミノ酸配列の1つ以上に関連するか、前記を含むか、好ましくは前記配列から成る。
本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、対象の治療及び/又は予防を特異的に目指す方法で特に有用であり、それらの動物(より好ましくはイヌ及び/又はネコ(ただしウマ類を除く))は、種々の標的器官(例えば皮膚、呼吸器系とともに胃腸管系)におけるアレルゲン特異的IgE媒介過敏反応の関与に根差すアレルギー疾患を罹患する。
【0032】
獣医医学では、アレルギーは特にコンパニオン動物の分野でもっとも重要である。イヌ及びネコは、そのような疾患(例えばイヌアトピー性皮膚炎又はネコアトピー性皮膚炎又はネコ喘息)に罹患する。
イヌ又はネコのアトピー性皮膚炎(AD)は、遺伝的素因を有する炎症性及び掻痒性のアレルギー性皮膚疾患と定義され、特徴的な臨床的特色を有する。前記は最も一般的には環境性アレルゲンに対するIgE抗体を随伴する。アトピー性表現型は、IgE媒介皮膚疾患、食物アレルギー、又は“アトピー様皮膚炎”(ALD)を有する動物で認めることができる。ALDは、特徴的なADの特色を有するがIgE抗体試験で陰性のイヌの掻痒性皮膚疾患と定義される。ネコアトピー性皮膚炎はイヌアトピー性皮膚炎と多くの類似性を有する。イヌアトピー性皮膚炎の共通の臨床徴候には以下が含まれる:季節性又は非季節性掻痒症歴、外耳炎、再発性及び慢性炎症性皮膚炎(特に腋窩、鼠径部、及び屈筋の皮膚表面に発する)、再発する細菌感染、顔面を擦る及び/又は脚舐め及び甘噛み(chewing)。
ADの病因及び病理は複雑であり、遺伝的素因、正常な皮膚バリアー機能の障害、及び免疫学的異常が関与する。ADの動物は、環境中のアレルゲンに感作される遺伝的素因を有すると考えられる。アレルゲンは、皮膚、呼吸管又はGI管から吸入又は吸収されるとき、アレルゲン特異的IgE生成を惹起するタンパク質である。これらのアレルゲン特異的IgE分子はそれら自身を組織のマスト細胞又は好塩基球にそのような細胞上のFcε受容体を介して付着させる。プライミングされたこれらの細胞が特異的なアレルゲンに再び接触するとき、マスト細胞の脱顆粒化が、タンパク質分解酵素、ヒスタミン、ブラジキニン及び他の血管作用性アミンの放出をもたらし炎症(紅斑、浮腫及び掻痒)に至る。皮膚がイヌ及びネコで主要な標的器官であるが、鼻炎及び喘息もまた罹患動物の約15%で発生し得る。
【0033】
ダニは、例えばイヌ及びネコのアレルギー疾患、例えば皮膚炎及び喘息の主要原因として知られている。通常的には、アレルギーの原因物質をアレルギー疾患の治療薬剤として使用する脱感作療法は、もっとも重要な基本的治療方法とみなされる。特に、脱感作療法は、回避が困難な例えば吸入アレルゲンのような抗原によって誘発される、例えば花粉症、ハウスダストアレルギー、及び真菌類アレルギーのような疾患のために広く実施される。しかしながら、脱感作療法は、感作抗原の作用による有害事象(特にアナフィラキシー)のリスクを伴い、したがって安全な治療用抗原(例えばiMAT分子)の投与が求められる。
ダニのアレルギー疾患に関しては、以下と関連のあるいくつかの種が記載されている:デルマトファゴイデス・プテロニシヌス、デルマトファゴイデス・ファリナエ、エウログリフス・マイネイ(Euroglyphus maynei)、デルマトファゴイデス・シボネイ(Dermatophagoides siboney)、デルマトファゴイデス・ミクロセラス(Dermatophagoides microceras)、レピドグリフス・デストラクター(Lepidoglyphus destructor)、ブロミア・トロピカリス(Blomia tropicalis)、チロファグス・プトレセンチアエ(Tyrophagus putrescentiae)、グリコファグス・ドメスチクス(Glycophagus domesticus)、アカルス・シロ(Acarus siro)。しかしながら、2つのタイプのダニ、デルマトファゴイデス・プテロニシヌス及びデルマトファゴイデス・ファリナエが、ハウスダスト中の主要アレルゲン供給源と報告された(Thomas, WR. et al., Chang Gung Med J 2004; 27:563-569)。主要なダニアレルゲンがこれらのダニから分画された。デルマトファゴイデスに属する種のグループ1及び2アレルゲンは、80%のアレルギー患者で高力価のIgE及びTh2サイトカインを誘発する。アレルゲンDer p3、5、6、7及び8は、IgEを約50%の患者で通常は低力価で誘発する。92/98 kDaのパラミオシン(グループ11)アレルゲンは80%のアレルゲン患者のIgEと結合し、98及び60 kDAのキチナーゼ酵素(Der f15及び18)は約70%及び54%のアレルギー対象のIgEと結合し、さらにアレルギーのイヌの重要なアレルゲンである(McCall C et al., Vet Immunol Immunopath 2001;78: 231-247)。一般的には、多様な環境性アレルゲン(例えば草本、樹木、雑草の花粉、ハウスダスト、埃や貯蔵庫ダニ及びカビ及び/又はカビの胞子)だけでなく表皮抗原及び昆虫抗原が、イヌのアトピー性皮膚炎におけるイヌの感作に寄与していると報告されている(Hill et al. Vet Immunol Immunopathol, 2001;81(3-4):169-186)。
【0034】
上記に記載したように、アトピー表現型はまた、食物アレルギー(多くの臨床所見を有する過敏症)によってもまた誘発され得る。胃腸管の変化(例えば胃腸炎、下痢又は嘔吐)の他に、食物過敏はしばしば、掻痒性皮膚炎及び/又は顔面及び首の皮膚病、兵士皮膚炎、全身性落屑又は対称性脱毛症として動物で出現する。特にネコでは、好酸球性肉芽腫の実体の全てがある種の食物アレルゲンに対する過敏症の結果であり得る。もっとも一般的な食物アレルゲンは肉、ミルク、魚に由来するが、ダイズ及び/又はより一般的には缶詰食品及びドライフードにも由来する。特に後者では、添加物及び/又は貯蔵庫ダニに対するアレルギーの関与が報告されている(Guaguere E et al. EJCAP, 2009, 19 (3), 234-241;Jackson HA, EJCAP, 2009, 19 (3), 230-233)。これまでのところ、獣医の治療選択肢は、対症療法(例えばコルチコイド治療)及び/又は応答食物の排除に限定されている。しかしながら、食餌の栄養バランスに有害な影響を与えないように配慮する必要がある。より最近では、加水分解タンパク質を含む食餌を利用することができる。タンパク質は分解され、したがってアレルギー誘発性は低下する。これらは有効であり耐容性は良好である。しかしながら、これらの食餌は高価過ぎる傾向がありあまり美味ではなく、動物のコンプライアンスの主要な制限となり得る。食物アレルギーの動物(好ましくはイヌ及び/又はネコ)を治療するアレルゲン特異的免疫療法はまだ適用されていない。
さらに別の実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、アレルギー性気道炎症及び/又は閉塞(アレルギー性喘息)を罹患するネコの治療及び/又は予防を特異的に目指す方法として特に有用である。ネコは、偶発的に好酸球性気道炎症及び気道過反応性(人間のアレルギー性喘息に非常に類似する)を発症する。すなわち、ネコのアレルギー性喘息は、下部気道の慢性炎症性疾患であり、急性の生命に関わる臨床徴候を示すことがある。典型的な治療は一時しのぎの治療のみ(例えば気管支拡張剤及び/又はコルチコステロイド)を含むが、これまでのところ原因治療は利用可能ではない。Carol Reinero周辺の大学グループのいくつかのパイロット試験は、ネコの人為的バミューダグラスアレルギー喘息動物モデルにおけるアレルゲン特異的免疫療法を目指している。
ネコのアレルギー喘息は複雑な疾患であるが、空気媒介アレルゲンへの明瞭な暴露が病因において中心的役割を果たしている。臨床寛解はエアロアレルゲンへの暴露を排除することによって達成できる。ただし、ネコアレルギー喘息の始動に関与する主要な抗原はこれまで明確には特定されていない。多数の潜在的因子がネコの生息環境に存在し、それらは、例えば花粉、カビ、ネコ用トイレの砂、香水、ルームフレッシュナー、カーペット消臭剤、ヘアースプレー、エーロゾルクリーナー又はタバコの煙である。血清又は真皮内皮膚試験を用いてスクリーニングしたとき、室内飼いの自然発生アレルギーを有するネコは人間のアレルギー喘息に関連する同じアレルゲンの多く(すなわち主としてハウスダスト及び貯蔵庫ダニ及び/又は花粉)に対してIgE反応性を示した(Prost C, Rev Fr Allergol Immunol Clin, 2008, 48 (5), 409-413)。
【0035】
さらに別の実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、ノミの咬傷によって引き起こされるAD(FAD)を罹患するネコ及び/又はイヌの治療及び/又は予防を特異的に目指す方法で特に有用である。
FADは、イヌ及びネコでノミの蔓延によって引き起こされるもっとも重篤な皮膚アレルギーの1つである。FADは即時型及び遅延型過敏症の両方の所見を有することができる。典型的には、FADに感受性を有する動物の即時型過敏応答には、ノミ咬傷部位のじんま疹形成が含まれる。そのようなじんま疹は、痂皮を有する丘疹に発達し、遅延型過敏症に代表的である。ノミ咬傷に対する過敏性反応は、遺伝的素因を有する動物とともに以前のノミ咬傷暴露によって感作された動物で生じ得る。さらにまた、ノミの咬傷は、宿主の紅斑、丘疹、痂皮及び脱毛症の炎症性刺激の結果としてひっかき傷に関連する二次感染を引き起こし得る。以前の研究では、ペットはノミ咬傷に対し一度アレルギーになると、当該ペットはノミ咬傷に対して脱感作されることはほとんどないことが見出された。したがって、ノミを排除する以外に、当該動物の苦痛の緩和は困難な課題となる。この疾患の従来の治療法には、脱感作療法又はいくつかのタイプの薬理学的介入が含まれる。しかしながら、これらの治療的アプローチはそれぞれいくつかの欠点を有する。例えば、抗ヒスタミン薬は、眠気、口内乾燥、排尿困難、便秘を亢進するが、一方、伝統的な脱感作療法は生命に関わるアナフィラキシーショックを引き起こす可能性がある。これらの治療方法の他の欠点は、高い再発の可能性及び長期治療が必要なことである。したがって、新規で有効な治療的アプローチが必要とされ、望ましくない有害反応を克服するために開発されねばならない。FADの有効な治療は、達成が不可能でないとしても困難であった。FADはノミ蔓延地域では約15%のネコ及びイヌが罹患し、その頻度は毎年増加している。地域として、効果的なノミの制御が全ての動物の治療に必要である。ある治療研究者は、ノミアレルゲンを用いる動物の脱感作を提唱している。しかしながら、ノミアレルゲンの信頼できる、範囲が明確な調製物がそのような治療には必要である。これまでノミ丸ごとの抗原調製物がFADの動物の診断及び脱感作に用いられている。しかしながら、利用可能な市販のノミ丸ごと抽出物はほんの微量部分として唾液タンパク質を含み、それらの明確なアレルゲン含有量は予測不能であり、したがって有用性に限界がある。先行技術の米国特許US 7,629,446とともにMcDermottらの論文(McDermott MJ et al., Molecular Immunology 2000, 37: 361-375)は、FADの主要抗原としてアレルゲンCte f1の発見を記載している。前記論文で、彼らは、ノミの唾液タンパク質、Cte f1(ノミアレルギーのイヌ及びネコの主要なアレルゲン)のcDNAのクローニング及び特徴を記載している。自然のままのCte f1は、分子量が18kDaでpIは9.3と算出された。質量分析は、自然のままの分子は翻訳後修飾がないこと及び16システインの全てが分子内ジスルフィド結合に必要であることを示している。しかしながら、同じ論文で、著者らは当該組換えタンパク質のいくつかのアイソフォームを示している。分泌タンパク質中の16のシステインがこれらのアイソフォームの出現をもたらし、このことは、GMP条件下でのそのような生成物の精製及び製造を困難にするか、むしろ不可能にする。
【0036】
イヌをノミ咬傷に対して実験的に感作した研究では、Cte f1は主要なアレルゲンである。真皮内皮膚試験及び固相ELISAで抗原として大腸菌生成rCte f1を用いたとき、実験的に感作したこれらFADのイヌの100%でIgEを検出できる。加えて、感作した14匹のイヌの血清を用いて実施した競合ELISAは、3つの別個の実験系(大腸菌、P.パストリス(P. pastoris)、バキュロウイルス感染昆虫細胞)で生成されたrCte f1は、自然のままのCte f1に対する抗原特異的IgEの結合の約95%を阻害できることを示した。
Cte f1を含む免疫治療アプローチの治療潜在能力はJinら(Jin J. et al., Vaccine 28 (2010) 1997-2004)によって示された。彼らは、DNAワクチン及びその同系コードタンパク質抗原(Cte f1)による同時共同免疫は、ネズミモデルで動物をFADから防御する潜在能力を有することを報告した。さらにまた、彼らは、その実験でノミの蔓延後に確立したFADを治療するために前記プロトコルを臨床的に試験した。彼らは、2回の共同免疫後にこれらのFADネコで皮膚炎治療の改善を示すデータを提示した。
システインを他のアミノ酸残基で置換した改変Cte f1配列を含むiMAT分子を抗原モジュールとして、ネコ又はイヌのインバリアント鎖のどちらかと一緒にiMAT分子に加えて、最適化させた種特異的免疫調節作用を達成することができる。驚くべきことに、これらの分子は、(i)適切な発現系での効率的な組換えタンパク質生成を可能にし、(ii)非改変Cte f1と比較して、はるかに高濃度でマスト細胞は活性化されるので、安全性に関して実質的にリスクを低下させ、さらに(iii)わずかに3回の注射後に、持続的な免疫学的効果及び長期持続性の臨床改善を誘発する。
さらに別の実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、細菌によって引き起こされる感染症を罹患する動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で、治療及び/又は予防を特異的に目指す方法で特に有用である。グラム陰性細菌、カンピロバクターは、家畜化動物(例えばイヌ、ネコ、ブタ、反芻獣)の胃腸炎のもっとも一般的な細菌性原因である。臨床徴候は、ほとんどの場合若い哺乳動物でより重篤である。腸炎の他に、多様な種で流産及び不妊が報告されている。感染は主として摂取を介し、侵入に際して、細菌は、多様なコロニー形成及び病毒性決定基の発現により宿主の防衛に打ち勝つ必要がある。多数のこれら決定基は、抗原性表面タンパク質又は外膜タンパク質であり、それらと例えば胃腸管の上皮細胞との相互作用はコロニー形成のために、すなわち宿主の感染のために必須である。
【0037】
この医療課題を解決するために、本明細書に開示し特許請求する、カンピロバクター症専用の(単離)組換えタンパク質中の少なくとも1つの抗原モジュールは、カンピロバクター属する種に由来する抗原、例えばフラゲリン(表面暴露タンパク質(CadF及びPEB1))又は他の表面タンパク質から選択できる。改良MAT分子は、例えばカンピロバクター症の治療及び/又は予防のためのワクチンとして特に有用であり得る。本発明の治療は、子へのiMAT分子の投与を含むことができ、及び/又は妊娠母体の治療を含むことができる。
さらに別の実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、ウイルスによって引き起こされる感染症を罹患する動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で、治療及び/又は予防を特異的に目指す方法で特に有用である。例えば、西ナイルウイルス(WNV)は、カが伝播する正のRNA鎖ウイルスであり、フラビウイルス科(Flaviviridae)のフラビウイルス属の日本脳炎ウイルス血清型群に分類される。WNVは西ナイル熱とも称される症候群の原因因子である。鳥類はその天然の保菌宿主であり、WNVは自然界で蚊-鳥-蚊の伝播サイクルで維持される。しかしながら、ヒト、ウマ、イヌ、ネコが反芻獣とともに感受性を有すると記載されている。大半のWNV感染は臨床症状が潜伏性であるが(WNVは潜在的に神経侵襲ウイルスである)、髄膜炎及び脳炎を引き起こすことがある。動物ではWVNはしばしば認識されないが、WNVによって引き起こされる重篤な神経学的徴候(不全麻痺、運動失調、横臥及び筋肉攣縮を含む)のために動物は安楽死させられることがあり、一方、他の動物は軽度から重度の灰白質脳脊髄炎を示す。
さらに別の実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、媒介生物(例えば吸血昆虫、ハエ、ユスリカ、ダニ及び/又はカ)による動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の感染症の伝播の予防を特異的に目指す方法で特に有用である。
病原体は節足動物の唾液とともに哺乳動物宿主の皮膚に送り込まれ、当該唾液は多様な生物活性分子を含む。これらの唾液成分は止血及び免疫応答を変化させることができ、病原体の感染誘発能力に寄与し得る。吸血節足動物の唾液腺に感染性微生物が存在すること自体が唾液組成を変化させる(例えば感染したカではアピラーゼ又は抗トロンビナーゼの濃度が変化する)。媒介生物に随伴する成分又は唾液の成分は、例えば血管活性を変化させ、及び/又は宿主の免疫応答を調節することが可能で、感染症の伝播に決定的に重要であり得る。節足動物の唾液成分に対する宿主のワクチン免疫は、サシチョウバエの唾液タンパク質及びリーシュマニアに属する種の伝播について示されたようにウイルスの伝播を妨害することができる。これらのワクチンはしかしながら今日まで前臨床研究を合格していない(WHO PD-VAC 2014 - Status of Vaccine Research and Development of Vaccines for Leishmaniasis)。節足動物唾液抗原は、本発明のiMAT分子の抗原モジュール中で利用するために良好に適合し、動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で媒介生物による感染性病原体(例えばウイルス、真菌類及び/又は寄生生物及び/又はそれらの検出潜伏期)の伝播を予防するために宿主の免疫系を活性化するワクチンとして特に有用であり得る。
【0038】
さらに別の実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、真菌類によって引き起こされる感染症を罹患する動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の治療及び/又は予防を特異的に目指す方法で特に有用である。皮膚糸状菌症又は白癬は、動物及び人間で発生する、毛及び皮膚表層角化細胞層の真菌類の感染である。動物好性又は土壌生息性皮膚糸状菌に属するミクロスポルム属又はトリコフィトン属のいくつかの種は、哺乳動物で臨床的感染症を引き起こすことができる。当該真菌類及び/又はその胞子の多様な表面抗原は、本発明のiMAT分子の抗原モジュール中で利用するために良好に適合し、動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で、例えば皮膚糸状菌症を治療及び/又は予防するためのワクチンとして特に有用であり得る。
さらに別の実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、寄生生物によって引き起こされる感染症を罹患する動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の治療及び/又は予防を特異的に目指す方法で特に有用である。哺乳動物に感染する寄生生物は世界中に遍在しかつ臨床的に重要である。反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコにとって脅威となる主要な寄生生物は、例えばコオペリア、ハエモンクス、オステルタギア、トリコストロンギルス、ディクチオカウルス、メタストロンギルスである。駆虫剤耐性のレベルの増加が寄生生物で世界的に報告されている。原生動物(例えばクリプトスポリジウム)については、宿主での寄生生物の蔓延及び/又は繁殖を一貫して阻害する薬剤はほとんどない。主として新生獣又は若い哺乳動物が罹患し、結果は先天性及び後天性免疫応答に依存する。
成熟寄生生物由来抗原は検出潜伏期の抗原とともに、本発明のiMAT分子の抗原モジュール中で用いられる別の例であり、動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)で、例えば寄生生物の感染を治療及び/又は予防するためのワクチンとして特に有用であり得る。本発明の治療は、子へのiMAT分子の投与を含むことができ、及び/又は妊娠母体の治療を含むことができる。
【0039】
特に免疫応答をイヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ヤギ類又はブタ類の種で調節する場合には、少なくとも1つの標的誘導モジュールは好ましくはそれぞれのインバリアント鎖である。
好ましい実施態様では、少なくとも1つの標的誘導モジュールは配列番号:2又は4のイヌインバリアント鎖である。別の好ましい実施態様では、少なくとも1つの標的誘導モジュールは配列番号:3又は5のネコインバリアント鎖である。
有益な実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質はモノマー型で存在する。なぜならば、例えば組換えアレルゲンは、特に封入体を介して生成される場合は凝集物を形成する傾向があるからである。少なくとも1つの、好ましくは全てのシステイン残基を(単離)組換えタンパク質の配列全体において置換することによって、好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン及び/又はアスパラギン酸で置換することによって、分子間ジスルフィド結合形成を防ぎ、したがって一切の凝集、特に分子間及び/又は分子内の本来ではない一切の結合を回避することが可能である。すなわち、システイン残基を完全に欠く(単離)組換えタンパク質は凝集しない。結果として、当該タンパク質は改善された標的誘導及びMHC提示を容易に発現及び表示する。さらにまた、そのようなシステインの存在しない、例えばアレルゲンの変種(前記アレルゲンでは野生型アレルゲンのアミノ酸配列のシステイン残基は単独で又は組合せて変異されてある)は、対応する野生型アレルゲンと比較してIgE活性の低下を示し、同時にTリンパ球に対して実質的にそのままの反応性を有し、したがって低アレルギー誘発性である。
本発明はしたがってそのような低アレルギー誘発性アレルゲン変種に関し、前記アレルゲンは、例えばノミ咬傷、ある種の食物成分、及び/又はアトピー性皮膚炎、及び/又はアレルギー性気道炎症及び/又は閉塞を、動物で(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがただしウマ類を除く)引き起こし、当該変種では、野生型アレルゲンのシステイン残基は単独で又は組合せて変異されてある。
さらにまた、本発明のiMAT分子を含むサンプルで、例えば亜鉛又はコバルト付加固相を用いてタンパク質を分離するためにタグモジュールが存在することは、精製プロセス中に凝集を生じることなく融合タンパク質を生成する可能性をさらに改善する。典型的には、タグモジュールは、連続する5から6ヒスチジン残基のポリヒスチジンタグを含む。
【0040】
本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は医薬組成物中で有用である。例えば、(単離)組換えタンパク質はワクチンで使用される。したがって、本発明は、本明細書に開示し特許請求する1つ以上の(単離)組換えタンパク質を含むワクチン組成物を提供する。そのようなワクチン組成物は、種々の標的器官(例えば皮膚、呼吸器系及び胃腸管系)におけるアレルゲン特異的IgE媒介過敏性反応の関与に根差すアレルギー疾患に罹患する動物で(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがただしウマ類を除く)治療的及び/又は予防的に用いることができるか、或いはそのようなワクチンは、病原体(例えばウイルス、真菌類、及び/又は寄生生物及び/又はそれらの検出潜伏期)によって誘発される感染症に罹患する動物で(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがただしウマ類を除く)治療的及び/又は予防的に用いることができる。付け加えれば、当該方法はそのような病原体に向けられるだけでなく、宿主の免疫系を活性化して、媒介生物(例えば吸血昆虫、ハエ、ユスリカ、ダニ及び/又はカ)による疾患の伝播もまた防ぐことができる。
したがって、本発明の好ましい実施態様では、例えばデルマトファゴイデスに属するダニへの暴露に応答して引き起こされるアトピー性皮膚炎及び/又はアレルギー喘息を治療及び/又は予防するために、対象(例えば動物、より好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)のためのワクチンが提供される。本発明のさらに別の実施態様では、例えばカビ(真菌類及び/又はその胞子)、花粉、ハウスダスト又は飼料ダニ(及び/又はその糞)に応答して引き起こされるアレルギー喘息を治療及び/又は予防するために、対象(例えば動物、より好ましくはネコであるがウマ類を除く)のためのワクチンが提供される。本発明のさらに別の実施態様では、例えば以下が関与する感染症を予防するために、対象(例えば動物、より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)のためのワクチンが提供される:カンピロバクター属、ディロフィラリア属、エールリキア属、リーシュマニア属、トリパノソーマ属、ボレリア属、オルトブンヤウイルス属、オルビウイルス属、フラビウイルス属、ロタウイルス属、コロナウイルス属、トリコフィトン属、ミクロスポルム属;他の蠕虫類、例えばコオペリア属、ハエモンクス属、オステルタギア属、トリコストロンギルス属、ディクチオカウルス属、メタストロンギルス属;及び/又は胃腸管蔓延性原生生物、例えばエイメリア属、イソスポラ属、クリプトスポリジウム属、ギアルジア属(寄生生物の場合には検出潜伏期由来の抗原もまた利用し得よう)。付け加えれば、ワクチンは、宿主の免疫系を活性化して媒介生物によって引き起こされる疾患の伝播を予防するために提供することができ、前記媒介生物は、例えばクリシダエ科(Culicidae)、セラトポゴニダエ科(Ceratopogonidae)、フレボトミナエ科(Phlebotominae)、イクソディダエ科(Ixodidae)及び/又はシミシダエ科(Cimicidae)、及び/又は他の吸血昆虫に属する。
【0041】
(単離)組換えタンパク質の医薬組成物(例えばワクチン型)は、好ましくは舌下投与、皮下及び/又は皮内注射、リンパ節への注射、及び/又は経粘膜、特に胃腸管又は呼吸器系の粘膜を介する投与のために設計される。本発明の好ましい実施態様では、医薬組成物は非経口的に投与される。
本発明のiMAT分子を医薬として又はワクチンとして用いて、例えばアレルギー疾患を改変することができる。例えば、アトピー性皮膚炎及び/又はアレルギー喘息はそのようなiMAT分子によって治療できる。デルマトファゴイデス属のダニに由来する、アトピー性皮膚炎及び/又はアレルギー喘息を引き起こすアレルゲンを含む組換えiMAT分子の少量(1つ以上の抗原モジュール単独の重量に関して1から1000μg)を例えば1から5回皮下に、皮内に又は直接リンパ節に注射し、当該疾患の予防及び/又は臨床症状の緩和に至る強力で長期間持続する免疫応答をネコ及び/又はイヌで誘発することができる。
ある好ましい実施態様では、本発明のiMAT分子は少なくとも1つのアジュバントと組み合わせて投与される。アジュバントには以下の1つ以上が含まれる(ただしこれらに限定されない):ミョウバン、BCG、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、脂質エマルジョン、脂質又はポリマー性ナノ粒子又はミクロ粒子、ミセル、リポソーム、サポニン、脂質A、又はムラミルジペプチド、細菌生成物、ケモカイン、サイトカイン及びホルモン、キトサン、デンプン、アルギン酸塩、セルロース誘導体(例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、核酸又は核酸構築物。これら組成物の1つ以上を添加して免疫応答を強化又は改変することができる。また別には、iMAT分子をアジュバント無しで又は水性型で投与することもできる。
iMAT分子は、約1μgから1000μg(この用量及び以下の用量は1つ以上の抗原モジュール単独の重量に関する)の用量で、より好ましくは約10μgから約100μgの用量で、さらに好ましくは約20μgから約50μgの用量で投与できるが、ただし最適用量は、注射される抗原(好ましくはアレルゲン)、対象の重量、対象の免疫系などにしたがって変動しうる。多くの事例で効果的な治療は1回の投与で達成できる。いくつかの実施態様では、治療は1から15回の投与を含む。好ましい実施態様では、治療は1から5回の投与、より好ましくは1から3回の投与を含む。最初の治療のためには、投与は周期的に、例えば数日にわたって、1カ月若しくは1年に1回又は2回、又は1年に数回でありうる。免疫応答の維持のために、投与は数カ月から数年の間隔で実施できる。
本発明の好ましい実施態様では、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質は、リンパ節内投与のために設計される。リンパ節への直接投与の過程で、対応するリンパ節を注射手順の間に例えば超音波によって可視化し、注射針の位置及びリンパ節の変化(例えば腫脹)をモニターすることができる。下顎リンパ節、腋窩リンパ節、鼠径リンパ節及び/又は膝窩リンパ節への注射が、超音波誘導位置測定及び注射の容易さゆえに好ましい。
【0042】
糞及びダニ虫体全体から同定されたダニ由来タンパク質のいくつかが、イヌ及び/又はネコでIgE反応性並びに病理学的な皮膚及び呼吸器反応を誘発することは公知である(Allergome (www.allergome.org))。したがって、関連するアレルゲンの大半が特異的免疫療法のための医薬に含まれる場合にのみ治療は成功しうると予測される。しかしながら、驚くべきことに、本発明のiMAT分子の1つ、2つ、3つ又は4つだけで(各々が例えばダニの異なる抗原モジュール又は複数のエピトープのモザイク様構築物を含む)、罹患対象の免疫調節及び/又は臨床的改善を誘発するために十分である(ただし、そのようなiMAT分子は1から5回皮下、皮内及び/又はリンパ節に直接注射される)。
好ましい実施態様では、ただ1つのiMAT分子が用いられ、動物(より好ましくはイヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)の種々の標的器官(例えば皮膚、呼吸器系及び/又は胃腸管系)におけるアレルゲン特異的IgE媒介過敏性反応の治療的効果の誘発及び/又はその発達の予防に十分である。感染症の予防及び/又は治療、及び/又は媒介生物による感染症伝播の予防が、動物で(好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)達成できる。別の好ましい実施態様では、2つ、3つ又は4つのiMAT分子の組み合わせが、同時投与、連続投与及び/又は時系列的組み合わせによる共同投与の手段によって利用される。
好ましい実施態様では、ただ1つのiMAT分子が用いられ、動物(より好ましくは反芻獣、ブタ、イヌ及び/又はネコであるがウマ類を除く)における感染症(例えばウイルス、真菌類、及び/又は寄生生物及び/又はそれらの検出潜伏期のものによって誘発される)の治療的効果の誘発及び/又は予防及び/又は伝播の予防、及び/又はそのような感染症の例えば吸血昆虫、ハエ、ユスリカ、ダニ及び/又はカによる伝播の予防のために十分である。別の好ましい実施態様では、2つ、3つ又は4つのiMAT分子の組み合わせが、同時投与、連続投与及び/又は時系列的組み合わせによる共同投与の手段によって利用される。
【0043】
本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質の熱力学的評価にしたがえば、安定性はシステイン変異(すなわち種々のアミノ酸残基による置換)によって影響される。例えば、置換はCysのSerへの置換でありうる。しかしながら、安定性は、Serアミノ酸以外の異なるアミノ酸を用いたときより高くなり所望の安定性及び可溶性を達成できる。すなわち、第一の選択はCysのSerによる置換でありうるが、不安定な場合には、Ser以外の他のアミノ酸残基でCysを置換するべきである。
標的誘導される配列でシステイン残基の代わりに入れ替えられる安定なアミノ酸残基を選択するために、三工程アプローチが選択される:
1.末端6ヒスチジンタグ、iMAT配列及び問題のタンパク質の一次アミノ酸配列を含む標的誘導されるタンパク質の三次元構造を造形する。造形は自然のままの配列及びシステイン置換により実施できる。
2.単一点置換(例えばシステイン残基の異なるアミノ酸残基(例えばSer及び/又はIle)による置換)に基づいてタンパク質の安定性を反復決定し、さらに利用可能な三次元構造の全てを分析することによって採点して安定な入れ替えを決定する。
3.工程1及び2を繰り返すことによって、安定化構造を再造形し、安定性を実証する。
【0044】
三次元タンパク質構造は分子レベルにおけるタンパク質の機能の理解に極めて重要であり、多くの種々のタイプの生物学的実験(例えば位置指定変異導入)の合理的設計に非常に重要である。しかしながら、構造的な特徴を有するタンパク質の数は、既知のタンパク質配列の数と比較して少ない。あるタンパク質配列(標的)に対して既知の構造を有する相同なタンパク質(鋳型)を同定することが可能である。これらの事例では、相同性造形は、タンパク質の3Dモデルをその一次アミノ酸配列から作出するために選択される方法であることが立証された。相同性モデルの構築は以下の4つの主要な工程を含む:(1)構造鋳型の同定、(2)標的配列と鋳型構造とのアラインメント、(3)モデルの構築、及び(4)モデルの質の評価。これらの工程は、満足な造形結果が達成されるまで繰り返すことができる。正確なホモローグモデルを決定できない場合には、一次構造(アミノ酸配列)からタンパク質構造を決定するコンピュータによるアプローチが用いられる。“デノボ(de novo)”又は“アブイニショ(ab initio)”な方法は、物理学的原理に基づき、折り畳みプロセスを模倣しようとする。そのような方法は、多数の立体構造の実例を示す必要があり、最小値の自由エネルギーの構造を同定するために非常に正確なエネルギー関数を要求する。多くの方法がこれらの記載された原理の組み合わせを用いている。
タンパク質の安定性におけるアミノ酸置換の影響について相応に正確な概算を提供するコンピュータツールの利用可能性は、広範囲な応用に際して決定的に重要である。特に、そのようなツールは、改変タンパク質の作出をもっぱら目指すタンパク質の操作及び設計の促進及び支援に潜在能力を有する。
タンパク質の安定性は、折り畳みが解除され、さらに迅速に可逆的に再度折り畳まれるタンパク質の熱力学的安定性という観点で考えることができる。これらの事例では、タンパク質の安定性は、折り畳み状態と非折り畳み状態との間のGibbs自由エネルギーの差である。安定性に影響を与える唯一の因子は折り畳み状態及び非折り畳み状態の相対的自由エネルギーである。折り畳み自由エネルギーの差が大きければ大きいほどさらにより大きな正の値であればあるほど、タンパク質は変性に対してより安定となる。折り畳み自由エネルギーの差は典型的には小さく、球形タンパク質については5-15kcal/molの規模である。しかしながら、他方では、タンパク質の安定性は、過酷な温度又は溶媒条件に耐えるタンパク質の特性とみなすことができる。これは熱力学的安定性に関係するが、折り畳み/非折り畳みの可逆性又は不可逆性(動力学的安定性)にもまた関係する。
【0045】
タンパク質中の単一位置置換によって引き起こされる熱力学的安定性の変化を予測するために、いくつかの異なるアプローチを適用して、タンパク質の構造及び機能におけるそのような置換の影響を調べることができる(Pires DE et al., Bioinformatics 2014, 30(3):335-342)。そのようなアプローチは、1つの単独タンパク質のアミノ酸配列から置換の影響を理解しようとするもの、及び広範囲の構造情報を探索するものに大雑把に分類することができる。構造を基準とするアプローチは典型的には、置換によるタンパク質の安定性の変化又は実際の自由エネルギーの値の変化(ΔΔG)の方向を予測しようとする。
各々特定のタンパク質及びその対応するモデルについての結果を、採点系(用いられるモデルにおける発生及びタンパク質の安定性における自由エネルギー変化(ΔΔG)を基準にして入れ替えを等級分けする)を用い、特定の置換の出現数に関して統計的に解析し、それによって入力構造及び可能な入れ替えの中でもっとも強い脱安定化残基(もし存在するならば)を決定する。採点は、各モデルの問題の各位置でもっとも低いΔΔG(ΔΔG<0)を決定し、対応する線形値及び累積ΔΔGの値を潜在的な各入れ替え位置に割り当てることによって計算し、続いて結果を査定してモデル間での一貫性を決定する。計算したタンパク質モデルは異なる品質(正確な三次元構造を予測する確率)を有するので、重み係数を提供してより正確なモデルに由来する結果を優先させることができる。有意な(ΔΔGに基づく)脱安定化残基(もし存在するならば)に置換される。すなわち新規なモデルが作出され、定常状態に達するまで解析が繰り返される。加えて、主成分分析を介してxyz座標を解析することによって作出モデルを査定して、個々の位置でのアミノ酸入れ替えによる潜在的な構造的折り畳みの誤りが決定される。
【0046】
さらにまた別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、予め定めたアミノ酸配列においてそのアミノ酸配列の安定化を可能にするアミノ酸置換を同定する方法を提供することによって解決され、この方法は以下の工程を含む:
(i)標的誘導される予め定めたアミノ酸配列の三次元/四次元構造を造形する工程、
(ii)単一点置換(例えばシステイン残基の異なるアミノ酸(好ましくはセリン及び/又はイソロイシン残基)による置換)に基づいてタンパク質の安定性を反復して決定する工程、及びタンパク質の安定性に基づく自由エネルギー変化(ΔΔG)の採点系を用い、全ての利用可能なアミノ酸配列の三次元/四次元構造を解析することによって安定化置換を決定する工程、
(iii)アミノ酸配列の三次元/四次元構造を再造形する工程並びに(ii)及び(iii)の工程を定常状態が達成されるまで繰り返すことによってその安定性を計算する工程。
さらにまた別の特徴では、本発明の根幹的目的は、驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質を提供することによって解決され、ここでその完全又は部分的なアミノ酸配列は、本明細書に開示し特許請求する予め定めたアミノ酸配列でアミノ酸置換を同定する方法によって安定化された(本明細書の実施例5及び6を参照されたい)。
【0047】
配列
以下のタンパク質配列を詳述し、本発明でこれにより開示する(aa又はAAはアミノ酸の略語である)。
配列番号:1は、本発明の1つの移行モジュールのための適切な最小アミノ酸配列に関し、このアミノ酸配列は、なお機能的であり、すなわち細胞進入を効果的に促進することができる->TAT配列。
配列番号:2-5 インバリアント鎖(完全配列及び110aa)
配列番号:2は、完全なイヌインバリアント鎖のアミノ酸配列に関する。>gi|545496086|Canis_lupus_familiaris|XP_536468.5|、予想:HLAクラスII組織適合抗原ガンマ鎖アイソフォームX1[Canis lupus familiaris(カニス・ルプス・ファミリアリス)]
配列番号:3は、完全なネコインバリアント鎖のアミノ酸配列に関する。>gi|410949651|Felis_catus|XP_003981534.1|、予想:HLAクラスII組織適合抗原ガンマ鎖アイソフォーム[Felis catus(フェリス・カツス)]
配列番号:4は、イヌインバリアント鎖アミノ酸配列の最初の110aaに関する。
配列番号:5は、ネコインバリアント鎖アミノ酸配列の最初の110aaに関する。
配列番号:6は22aaのN-末端マーカーに関する。
配列番号:7-13 アレルゲン、完全配列
配列番号:7は、完全なDer f1アレルゲンアミノ酸配列に関する。>Q58A71 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のDer f1アレルゲンプレプロ酵素。
配列番号:8は、完全なDer f2アレルゲンアミノ酸配列に関する。>Q00855 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のダニグループ2アレルゲンDer f2(アレルゲンDer fII)。
配列番号:9は、完全なDer f23アレルゲンアミノ酸配列に関する。>A0A088SAW7 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のDer f23アレルゲン。
配列番号:10は、完全なDer f18pアレルゲンアミノ酸配列に関する。>Q86R84 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)の60kDaアレルゲンDer f18p。
配列番号:11は、完全なDer f15アレルゲンアミノ酸配列に関する。>Q9U6R7 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)の98kDa HDMアレルゲン(Der f15アレルゲン)(グループ15アレルゲンDer f15)。
配列番号:12は、完全なZen 1タンパク質アレルゲンアミノ酸配列に関する。>I7HDR2 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のZen 1タンパク質。
配列番号:13は、完全なCte f1アレルゲンアミノ酸配列に関する。>Q94424 クテノセファリデス・フェリス(ネコノミ)の唾液抗原1(FS-I)(アレルゲンCte f1)。
【0048】
配列番号:14-20 アレルゲン、IMAT型(短)
配列番号:14は、Der f1アレルゲンアミノ酸配列のiMAT型(短)に関する。
配列番号:15は、Der f2アレルゲンアミノ酸配列のiMAT型(短)に関する。
配列番号:16は、Der f23アレルゲンアミノ酸配列のiMAT型(短)に関する。
配列番号:17は、Der f18pアレルゲンアミノ酸配列のiMAT型(短)に関する。
配列番号:18は、Der f15アレルゲンアミノ酸配列のiMAT型(短)に関する。
配列番号:19は、Zen 1タンパク質アレルゲンアミノ酸配列のiMAT型(短)に関する。
配列番号:20は、Cte f1アレルゲンアミノ酸配列のiMAT型(短)に関する。
配列番号:21-23 ハイブリッド1、2及び3-IMAT型(短)由来のアレルゲン
配列番号:21はiMAT型(短)ハイブリッド1アレルゲンに関する。
配列番号:22はiMAT型(短)ハイブリッド2アレルゲンに関する。
配列番号:23はiMAT型(短)ハイブリッド3アレルゲンに関する。
配列番号:24-44 ネコ用iMAT(N-末端若しくはC-末端に6ヒスチジン有り又は6ヒスチジン無し/メチオニン(IMAT_純粋)
配列番号:24は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f1 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:25は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f1 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:26は、タグの無いDer f1 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:27は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f2 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:28は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f2 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:29は、タグの無いDer f2 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:30は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f23 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:31は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f23 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:32は、タグの無いDer f23 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:33は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f18p iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:34は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f18p iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:35は、タグの無いDer f18p iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:36は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f15 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:37は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f15 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:38は、タグの無いDer f15 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:39は、N-末端6ヒスチジンタグを有するZen 1タンパク質iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:40は、C-末端6ヒスチジンタグを有するZen 1タンパク質iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:41は、タグの無いZen 1タンパク質iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:42は、N-末端6ヒスチジンタグを有するCte f1タンパク質iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:43は、C-末端6ヒスチジンタグを有するCte f1タンパク質iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:44は、タグの無いCte f1タンパク質iMAT分子(ネコ)に関する。
【0049】
配列番号:45-65 イヌ用iMAT(N-末端若しくはC-末端に6ヒスチジン有り又は6ヒスチジン無し/メチオニン(IMAT_純粋)
配列番号:45は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f1 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:46は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f1 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:47は、タグの無いDer f1 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:48は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f2 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:49は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f2 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:50は、タグの無いDer f2 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:51は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f23 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:52は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f23 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:53は、タグの無いDer f23 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:54は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f18p iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:55は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f18p iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:56は、タグの無いDer f18p iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:57は、N-末端6ヒスチジンタグを有するDer f15 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:58は、C-末端6ヒスチジンタグを有するDer f15 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:59は、タグの無いDer f15 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:60は、N-末端6ヒスチジンタグを有するZen 1タンパク質iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:61は、C-末端6ヒスチジンタグを有するZen 1タンパク質iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:62は、タグの無いZen 1タンパク質iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:63は、N-末端6ヒスチジンタグを有するCte f1タンパク質iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:64は、C-末端6ヒスチジンタグを有するCte f1タンパク質iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:65は、タグの無いCte f1タンパク質iMAT分子(イヌ)に関する。
【0050】
配列番号:66-74 ネコ用ハイブリッド/モザイク様iMAT(N-末端若しくはC-末端6ヒスチジン有り又は6ヒスチジン無し/メチオニン(IMAT_純粋)
配列番号:66は、N-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド1 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:67は、C-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド1 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:68は、タグの無いハイブリッド1 iMAT分子(ネコ)(配列番号:1、配列番号:5及び配列番号:21から成る)に関する。
配列番号:69は、N-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド2 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:70は、C-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド2 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:71は、タグの無いハイブリッド1 iMAT分子(ネコ)(配列番号:1、配列番号:5及び配列番号:22から成る)に関する。
配列番号:72は、N-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド3 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:73は、C-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド3 iMAT分子(ネコ)に関する。
配列番号:74は、タグの無いハイブリッド3 iMAT分子(ネコ)(配列番号:1、配列番号:5及び配列番号:23から成る)に関する。
配列番号:75-83 イヌ用ハイブリッド/モザイク様iMAT(N-末端若しくはC-末端6ヒスチジン有り又は6ヒスチジン無し/メチオニン(IMAT_純粋)
配列番号:75は、N-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド1 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:76は、C-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド1 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:77は、タグの無いハイブリッド1 iMAT分子(イヌ)(配列番号:1、配列番号:4及び配列番号:21から成る)に関する。
配列番号:78は、N-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド2 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:79は、C-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド2 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:80は、タグの無いハイブリッド1 iMAT分子(イヌ)(配列番号:1、配列番号:4及び配列番号:22から成る)に関する。
配列番号:81は、N-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド3 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:82は、C-末端6ヒスチジンタグを有するハイブリッド3 iMAT分子(イヌ)に関する。
配列番号:83は、タグの無いハイブリッド3 iMAT分子(イヌ)(配列番号:1、配列番号:4及び配列番号:23から成る)に関する。
【0051】
配列番号:84-88 非重複ハイブリッドアレルゲン
配列番号:84は、A1KXC1_DERFA DFP1(UNIPROTデータベース)に関する。
配列番号:85は、A0A088SAS1_DERFA Der f 28アレルゲン(UNIPROTデータベース)に関する。
配列番号:86は、B7U5T1_DERFA Der f 6アレルゲン(UNIPROTデータベース)に関する。
配列番号:87は、T2B4F3_DERPT LytFM(UNIPROTデータベース)に関する。
配列番号:88は、A7XXV2_DERFA Der f 2アレルゲン(UNIPROTデータベース)に関する。
配列番号:89-90 その他の配列
配列番号:89は、N-末端6ヒスチジンを有するCul o2 iMAT分子に関する。
配列番号:90は、N-末端6ヒスチジンを有するCul o3 iMAT分子に関する。
配列番号:91-102 ハイブリッドのペプチド構成要素
配列番号:91は、配列番号:10に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:92は、配列番号:85に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:93は、配列番号:88に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:94は、配列番号:86に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:95は、配列番号:87に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:96は、配列番号:11に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:97は、配列番号:7に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:98は、配列番号:10に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:99は、配列番号:12に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:100は、配列番号:9に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:101は、配列番号:11に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
配列番号:102は、配列番号:8に由来するハイブリッドのペプチド部分に関する。
ハイブリッド/モザイク様iMAT分子
本発明の具体的な特徴では、2つ以上のアレルゲンの構成要素(アミノ酸配列/エピトープ)が抗原モジュールに含まれる場合には、iMAT分子はさらに改善される。この目的のために、記載したバイオインフォマティクスによる選別アプローチ(実施例5)の基本原理を異なる態様で適用することが可能である。アレルゲンデータベースで見いだされたアレルゲンペプチドのヒット数を基準にして完全なアレルゲンを選別する代わりに、アレルゲンのいくつかでもっとも豊富なペプチドのみを用いて、iMAT抗原モジュールを操作する(例えば実施例6を参照されたい)。したがって、そのようなiMAT分子はいくつかのアレルゲンを起源とするペプチドの抗原モジュールから成る。これは、1つの単一iMAT分子が標的誘導する免疫学的プロフィールの幅を広げることを可能にし、したがって薬剤の開発にとって有益である。ハイブリッドiMAT分子の操作でのさらに別の工程として、TAT及び標的誘導ドメイン、並び場合によってHisタグが添加される。最後に、実施例5及び6に記載するように、システイン残基はもっとも安定性の高い残基で入れ替えられる。
【0052】
ハイブリッド1
あるタンパク質前駆体が、上位ランキングペプチドに一致する前駆体タンパク質のリストから選択され、他の抗原に由来する他の上位ランキングペプチド(配列番号:10、11、85、86、87、88)を埋め込むためのスキャフォールドタンパク質(配列番号:84)として用いられる。シグナルペプチド配列をスキャフォールドタンパク質から除去する。場合によって、追加の隣接N-又はC-末端アミノ酸をスキャフォールドタンパク質の本来の配列内に挿入し、下記に記載するようにスキャフォールドタンパク質の本来の配列の部分を入れ替える。
以下のタンパク質の構成要素がハイブリッド1の構築に用いられる:
配列番号:84(A1KXC1_DERFA DFP1 OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ)
配列番号:10(Q86R84_DERFA 60kDaアレルゲンDer f18p OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ GN=Der f 18 PE=2 SV=1)
配列番号:85(A0A088SAS1_DERFA Der f28アレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ PE=2 SV=1)
配列番号:88(A7XXV2_DERFA Der f2アレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ PE=4 SV=1)
配列番号:86(B7U5T1_DERFA Der f6アレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエPE=2 SV=1)
配列番号:87(T2B4F3_DERPT LytFM OS=デルマトファゴイデス・プテロニシヌス GN=lytFM PE=4 SV=1)
配列番号:11(Q9U6R7_DERFA 98kDa HDMアレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ PE=2 SV=1)
ハイブリッド1の骨格:
配列番号:84(A1KXC1 18-400、下記の入れ替え部分無し)
[配列番号:84 AA 39-52のための入れ替え1]:
配列番号:10(Q86R84_AA 97-110)すなわちGNAKAMIAVGGSTM(配列番号:91)
[配列番号:84 AA 261-274のための入れ替え2]
配列番号:85(A0A088SAS1_AA 611-624)すなわちMMKIYQQQQQQHHP(配列番号:92)
[配列番号:84 AA 234-246のための入れ替え3]
配列番号:88(A7XXV2_AA 48-61)すなわちFLVYIHIANNEIKK(配列番号:93)
[配列番号:84 AA 53-65のための入れ替え4]
配列番号:86(B7U5T1_AA 166-178)すなわちIVDGDKVTIYGWG(配列番号:94)
[配列番号:84 AA 276-289のための入れ替え5]
配列番号:87(T2B4F3_AA 134-147)すなわちREENIWSDHIANVA(配列番号:95)
[配列番号:84 AA 203-216のための入れ替え6]
配列番号:11(Q9U6R7_AA 469-482)すなわちTPTTPTPAPTTSTP(配列番号:96)
実施例5及び6に記載した生物工学プロセスを用いてシステイン残基をもっとも安定性の高い残基で入れ替えた後、配列番号:21が得られた。ハイブリッド1の骨格は配列番号:84のアミノ酸配列によって構成される。ハイブリッド1抗原モジュールのさらに別の成分、配列番号:91-96は、配列番号:84に由来する骨格配列に埋め込まれる。ハイブリッド1抗原モジュールのさらに別の成分、配列番号:91-96は、(上記に記載した入れ替え順序と比較して)任意の順序/異なる順序で編成され得る。上記に記載した抗原/アレルゲンを土台にしたいずれのそのような再編ペプチド順序も本発明で想定される。
【0053】
ハイブリッド2
完全なアレルゲン及び/又は上位ランキングペプチドを選択し、一緒にスプライシングして、下記に記載するあるiMAT分子のためのアレルゲンモジュールを入手する。
以下のタンパク質の構成要素を用いて、指定した具体的順序でハイブリッド2を構築する(ここで部分1はN-末端である)。さらに別の部分を下記の順序にしたがって先の部分のC-末端に付加する。ハイブリッド2の場合には、前記は5つのさらに別の部分である。全体で6つの部分が存在する。
部分1:配列番号:7(Q58A71 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のDer f1アレルゲンプレプロ酵素AA 99-321)すなわちTSACRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVAATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQQNGVVEERSYPYVAREQQCRRPNSQHYGISNYCQIYPPDVKQIREALTQTHTAIAVIIGIKDLRAFQHYDGRTIIQHDNGYQPNYHAVNIVGYGSTQGVDYWIVRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIM(配列番号:97)。
部分2:配列番号:10(Q86R84 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)の60kDaアレルゲンDer f18p AA 277-304)すなわちFTQTDGFLSYNELCVQIQAETNAFTITR(配列番号:98)。
部分3:配列番号:12(I7HDR2 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のZen 1タンパク質 AA 181-220)すなわちEPTTPTPEPTTKTPEPTTKTPEPSTPTPEPTTKTPEPTTK(配列番号:99)。
部分4:配列番号:9(A0A088SAW7 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のDer f23アレルゲン AA 22-91)すなわちDIDHDDDPTTMIDVQTTTVQPSDEFECPTRFGYFADPKDPCKFYICSNWEAIHKSCPGNTRWNEKELTCT(配列番号:100)。
部分5:配列番号:11(Q9U6R7 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)の98kDa HDMアレルゲン(Der f15アレルゲン)(グループ15アレルゲンDer f15)AA 437-463)すなわちSPTTPTTTPSPTTPTTTPSPTTPTTTP(配列番号:101)。
部分6:配列番号:8(Q00855 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のダニグループ2アレルゲンDer f2(アレルゲンDer fII)(アレルゲンDer f2)AA 18-146)すなわちDQVDVKDCANNEIKKVMVDGCHGSDPCIIHRGKPFTLEALFDANQNTKTAKIEIKASLDGLEIDVPGIDTNACHFMKCPLVKGQQYDIKYTWNVPKIAPKSENVVVTVKLIGDNGVLACAIATHGKIRD(配列番号:102)。
実施例5及び6に記載した生物工学プロセスを用いてシステイン残基をもっとも安定性の高い残基で入れ替えた後、配列番号:22が得られた。しかしながら、ハイブリッド2抗原モジュールの上記のペプチド成分は、(上記に記載した入れ替え順序と比較して)任意の順序/異なる順序で編成することができる。上記に記載した抗原/アレルゲンを土台にしたいずれのそのような再編ペプチド順序も本発明で想定される。
【0054】
ハイブリッド3
以下のタンパク質の構成要素を用いて、指定した具体的順序でハイブリッド3を構築する(ここで部分1はN-末端である)。さらに別の部分を下記の順序にしたがって先の部分のC-末端に付加する。ハイブリッド3の場合には、前記は4つのさらに別の部分である。全体で5つの部分が存在する。
部分1:配列番号:7(Q58A71 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のDer f1アレルゲンプレプロ酵素AA 99-321)すなわちTSACRINSVNVPSELDLRSLRTVTPIRMQGGCGSCWAFSGVAATESAYLAYRNTSLDLSEQELVDCASQHGCHGDTIPRGIEYIQQNGVVEERSYPYVAREQQCRRPNSQHYGISNYCQIYPPDVKQIREALTQTHTAIAVIIGIKDLRAFQHYDGRTIIQHDNGYQPNYHAVNIVGYGSTQGVDYWIVRNSWDTTWGDSGYGYFQAGNNLMMIEQYPYVVIM(配列番号:97)。
部分2:配列番号:10(Q86R84 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)の60kDaアレルゲンDer f18p AA 277-304)すなわちFTQTDGFLSYNELCVQIQAETNAFTITR(配列番号:98)。
部分3:配列番号:11(Q9U6R7 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)の98kDa HDMアレルゲン(Der f15アレルゲン)(グループ15アレルゲンDer f15)AA 437-463)すなわちSPTTPTTTPSPTTPTTTPSPTTPTTTP(配列番号:101)。
部分4:配列番号:8(Q00855 デルマトファゴイデス・ファリナエ(アメリカハウスダストダニ)のダニグループ2アレルゲンDer f2(アレルゲンDer fII)(アレルゲンDer f2)AA 18-146)すなわちDQVDVKDCANNEIKKVMVDGCHGSDPCIIHRGKPFTLEALFDANQNTKTAKIEIKASLDGLEIDVPGIDTNACHFMKCPLVKGQQYDIKYTWNVPKIAPKSENVVVTVKLIGDNGVLACAIATHGKIRD(配列番号:102)。
実施例5及び6に記載した生物工学プロセスを用いてシステイン残基をもっとも安定性の高い残基で入れ替えた後、配列番号:23が得られた。しかしながら、ハイブリッド3抗原モジュールの上記のペプチド成分は、(上記に記載した入れ替え順序と比較して)任意の順序/異なる順序で編成することができる。上記に記載した抗原/アレルゲンを土台にしたいずれのそのような再編ペプチド順序も本発明で想定される。
【0055】
本発明のさらに別の具体的な特徴
本発明はアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子に関し、前記アミノ酸配列/iMAT分子は
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)に由来するアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、
少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とし、動物で(ウマ類を除く)1つ以上のアレルギーを予防及び/又は治療する方法に使用する、及び/又は動物で(ウマ類を除く)1つ以上の感染症を予防及び/又は治療する方法に使用する、及び/又は動物で(ウマ類を除く)1つ以上の感染症の伝播を予防する方法に使用する、及び/又は動物で(ウマ類を除く)媒介生物による1つ以上の感染症の伝播を予防する方法に使用するための分子である。
本発明は、(ウマ類を除く)動物の1つ以上のアレルギーの予防及び/又は治療方法、及び/又は(ウマ類を除く)動物の1つ以上の感染症の予防及び/又は治療方法、及び/又は(ウマ類を除く)動物の1つ以上の感染症の、好ましくは媒介生物による伝播の予防方法に関し、前記方法は、アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子の治療的に有効な量を投与する工程を含み、前記アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子は、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)に由来するアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、
少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする。
具体的な特徴では、当該少なくとも1つの抗原モジュールの全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されている。好ましくは、iMAT分子全体にわたって全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されている。
【0056】
さらに別の特徴では、そのようなモジュールの全てが、互いに、場合によって付加されたスペーサーモジュールによって2つ以上の隣接モジュール間で、場合によってそのような第一、第二及び/又は第三のモジュール間の全てで共有結合される。好ましい特徴では、そのようなモジュールの全てが互いに共有結合により連結され、かつそのような第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の隣接モジュール間に付加スペーサーモジュールは全く存在しない。
別の特徴では、少なくとも1つの第二のモジュールは、イヌ類、ネコ類、ウシ類、ヒツジ類、ヤギ類及び/又はブタ類の種から選択されるインバリアント鎖、又はその部分配列を含み、ただし、そのような少なくとも1つの第二のモジュールが、iMAT分子の細胞小器官(抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する)への種特異的な細胞内標的誘導を可能にするモジュールとして機能的であることを条件とする。好ましいイヌインバリアント鎖配列は配列番号:2である。好ましいネコインバリアント鎖配列は配列番号:3である。
好ましい特徴では、少なくとも1つの第二のモジュールは、配列番号:4(イヌ類)又は配列番号:5(ネコ類)のアミノ酸配列を含むか、好ましくは前記アミノ酸配列から成る。配列番号:4及び5は、それぞれ配列番号:2及び3のインバリアント鎖の110アミノ酸残基を表す。
別の好ましい特徴では、少なくとも1つの第二のモジュールは、配列番号:4(イヌ類)若しくは配列番号:5(ネコ類)のアミノ酸配列又はそのフラグメントを含むか、好ましくは前記から成り、ただしそのようなフラグメントがそれらの細胞内移行機能を維持することを条件とする。
【0057】
さらに別の特徴では、少なくとも1つの抗原モジュールは、(ウマ類を除く)動物でアレルギーを引き起こす少なくとも1つのアレルゲンに由来する、少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)を含み、好ましくはイヌ及び/又はネコの好ましくはノミ咬傷に対するアレルギー、好ましくはイヌ及び/又はネコのある種の食物成分に対するアレルギー、好ましくはイヌ及び/又はネコのアトピー性皮膚炎、好ましくはネコのアレルギー性気道炎症及び/又は閉塞に由来する少なくとも1つのアレルゲンの好ましくは少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)を含む。
好ましい特徴では、そのような少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)は、配列番号:11又は18のDer f15アレルゲンである。好ましい特徴では、そのような少なくとも1つの抗原モジュールは配列番号:18を含むか、好ましくは配列番号:18から成る。
具体的な特徴では、そのような少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)は、食物及び/又はカビ(真菌類及び/又はその胞子)、花粉、ハウスダスト又は飼料ダニ(及び/又はその糞)及び/又はノミに由来し、好ましくは、花粉は樹木、草、薬草、ブタクサ由来及び/又はアブラナ科の花粉であり、及び/又は真菌類及び/又はその胞子はアスペルギルス属、アルテルナリア属、ボトリチス属、セルコスポラ属、クラドスポリウム属、クルブラリア属、ドレクスレラ属、エウロチウム属、ヘルミントスポリウム属、エピコックム属、エリシフェ/オイヂウム属、フザリウム属、リクテイミア属、ニグロスポラ属、ペニシリウム属、ペリコニア属、ペロノスポラ属、ポリトリンキウム属、サッカロポリスポラ属(以前はファエニア属又はミクロポリスポラ属)、テルモアクチノミセス属、ステムフィリウム属、トルラ属(torula)に属し、及び/又はダニ(又はその糞)はアカルス属、グリコファグス属、チロファグス属、デルマトファゴイデス属、エウログリフス属、レピドグリフス属、ブロミア属(blomia)に属し、及び/又はノミはセラトフィルス属、クテノセファリデス属、プレクス属、アルカエオプシラ属に属し、より好ましくはデルマトファゴイデス属のアレルゲンである。
なお別の具体的な特徴では、少なくとも1つの抗原モジュールは、(ウマ類を除く)動物で1つ以上の感染症を引き起こす病原体の少なくとも1つの抗原に由来する少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)を含み、好ましくはカンピロバクター属、ディロフィラリア属、エールリキア属、リーシュマニア属、トリパノソーマ属、ボレリア属、オルトブンヤウイルス属、オルビウイルス属、フラビウイルス属、ロタウイルス属、コロナウイルス属、トリコフィトン属、ミクロスポルム属;コオペリア属、ハエモンクス属、オステルタギア属、トリコストロンギルス属、ディクチオカウルス属、メタストロンギルス属;エイメリア属、イソスポラ属、クリプトスポリジウム属、ギアルジア属から選択される、(ウマ類を除く)動物で1つ以上の感染症を引き起こす病原体の少なくとも1つの抗原の少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)を含み、ここで、好ましくは当該少なくとも1つの抗原モジュールはまた、(ウマ類を除く)動物で1つ以上の感染症の伝播に関与する媒介生物の抗原、好ましくは吸血昆虫、ハエ、ユスリカ、ダニ及び/又はカから選択される媒介生物の唾液成分から選択される抗原であり得る。
【0058】
好ましい特徴では、iMAT分子は、さらに少なくとも1つのタグモジュール(好ましくは少なくとも1つのHisタグ)を含む。好ましくは、そのような少なくとも1つのタグモジュールはN-末端に存在する。別の好ましい具体的な特徴では、そのような少なくとも1つのタグモジュールはC-末端に存在する。別の好ましい具体的な特徴では、そのような少なくとも1つのタグモジュールはN-末端及びC-末端に存在する。具体的な好ましい特徴では、iMAT分子は、1つのタグモジュール(好ましくはHisタグ)を1つのメチオニン残基の後のN-末端に含む。別の具体的な好ましい特徴では、iMAT分子にタグモジュールは存在しない。
さらに別の特徴では、少なくとも1つの第一のモジュールは、HIV-tat、VP22及び/又はアンテナペディア又はそのフラグメントを含むか、好ましくはそれらから成るが、ただしそのような少なくとも1つの第一のモジュールが、当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行のためのモジュールとしての機能的であることを条件とし、前記第一のモジュールはもっとも好ましくはアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:1)である。
別の特徴では、iMAT分子はモノマー型及び/又は線状型で存在する。
さらに別の特徴では、少なくとも1つの第三のモジュールは、配列番号:14から23のいずれか1つを含むか、又は前記配列から成る。好ましい特徴では、iMAT分子は、配列番号:24から83のアミノ酸配列の1つ以上を含むか、好ましくは前記配列から成る。
具体的に好ましいiMAT分子は、配列番号:36(ネコDer f15 iMAT分子)又は配列番号:57(イヌDer f1 iMAT分子)を含むか、好ましくは前記配列から成る。さらに別の好ましいiMAT分子(N-末端Hisタグを含む)は、配列番号:24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81から成る群から選択される。さらに別の好ましいiMAT分子(C-末端Hisタグを含む)は、配列番号:25、28、31、34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82から成る群から選択される。さらに別の好ましいiMAT分子(Hisタグを含まない)は、配列番号:26、29、32、35、38、41、44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83から成る群から選択される。さらに別の好ましいiMAT分子は配列番号:66-83から成る群から選択される。さらに別の好ましいiMAT分子は、配列番号:66、69、72、75、78、81(N-末端Hisタグを含む)である。配列番号:66及び/又は75が特に好ましい.さらに別の好ましい具体的なiMAT分子は67、70、73、76、79、82(C-末端Hisタグを含む)である。配列番号:67及び/又は76が特に好ましい。さらに別の好ましい具体的なハイブリッドiMAT分子は配列番号:68、71、74、77、80、83(Hisタグを含まない)である。配列番号:68及び/又は77が特に好ましい。
さらに別の特徴では、動物は、反芻獣(ウシ、ヤギ、ヒツジ、例えばウシ属、ヤギ属及び/又はヒツジ属のメンバーを含む)、イヌ属のメンバー(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ属のメンバー(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ、並びにチーター及びオオヤマネコを含む他のネコ科の動物)、及び/又はイノシシ属(Sus)のメンバー(例えばブタ)から成る群から選択され、好ましくは、動物はネコ及び/又はイヌから選択される。
【0059】
本発明はアミノ酸配列に関し、前記配列は、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール(好ましくは、前記第一のモジュールは配列番号:1を含み、より好ましくは配列番号:1から成る)、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール(好ましくは、前記第二のモジュールは配列番号:4又は5を含み、より好ましくは配列番号:4又は5から成る)、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)に由来するアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、
少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする。第三のモジュールは、好ましくは配列番号:14から23のいずれか1つを含み、より好ましくは配列番号:14から23のいずれか1つから成る。
本発明は改良MAT(iMAT)分子に関し、前記iMAT分子は、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール(好ましくは、前記第一のモジュールは配列番号:1を含み、より好ましくは配列番号:1から成る)、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール(好ましくは、前記第二のモジュールは配列番号:4又は5を含み、より好ましくは配列番号:4又は5から成る)、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)に由来するアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする。第三のモジュールは、好ましくは配列番号:14から23のいずれか1つを含み、より好ましくは配列番号:14から23のいずれか1つから成る。
【0060】
具体的な特徴では、少なくとも1つの抗原モジュールの全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換される。好ましくは、iMAT分子全体において、全てのシステイン残基が、異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換される。
さらに別の特徴では、そのようなモジュールの全てが、互いに、場合によって2つ以上の隣接するモジュールの間で、場合によってそのような第一、第二及び/又は第三のモジュールの全ての間で、付加的スペーサーモジュールによって共有結合される。より好ましくは、そのようなモジュールの全てが互いに共有結合により連結され、そのような第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の隣接モジュール間に付加的スペーサーモジュールは全く存在しない。
別の好ましい特徴では、少なくとも1つの第二のモジュールは、配列番号:4(イヌ類)若しくは配列番号:5(ネコ類)のアミノ酸配列又はそのフラグメントを含むか、好ましくは前記配列またはそのフラグメントから成るが、ただしそのようなフラグメントがそれらの細胞内移送機能を保持することを条件とする。配列番号:4及び5は、それぞれ配列番号:2及び3のインバリアント鎖の110アミノ酸残基を表す。より好ましい特徴では、少なくとも1つの第二のモジュールは、配列番号:4(イヌ類)又は配列番号:5(ネコ類)のアミノ酸配列を含むか、好ましくは前記アミノ酸配列から成る。
さらに別の特徴では、少なくとも1つの抗原モジュールは、(ウマ類を除く)動物でアレルギーを引き起こす少なくとも1つのアレルゲンに由来する、少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)を含み、好ましくはイヌ及び/又はネコの好ましくはノミ咬傷に対するアレルギー、好ましくはイヌ及び/又はネコのある種の食物成分に対するアレルギー、好ましくはイヌ及び/又はネコのアトピー性皮膚炎、好ましくはネコのアレルギー性気道炎症及び/又は閉塞に由来する少なくとも1つのアレルゲンの好ましくは少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ)を含む。
具体的な特徴では、そのような少なくとも1つの抗原は配列番号:11又は18のアミノ酸配列を含む。好ましい特徴では、そのような少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)は、配列番号:11又は18のDer f15アレルゲンである。別の好ましい特徴では、そのような少なくとも1つの抗原モジュールは配列番号:18を含むか、好ましくは配列番号:18から成る。
さらに別の好ましい特徴では、iMAT分子は、配列番号:24から83の1つのアミノ酸配列(配列番号:24から83の代替物の1つ)を含むか、好ましくは前記アミノ酸配列から成る。さらに別の好ましい特徴では、iMAT分子は、配列番号:36-38(ネコDer f15 iMAT分子)のいずれか1つ、もっとも好ましくは配列番号:36を含むか、好ましくは前記配列から成る。或いは、iMAT分子は、配列番号:57-59(イヌDer f15 iMAT分子)のいずれか1つ、もっとも好ましくは配列番号:57を含むか、好ましくは前記配列から成る。
【0061】
好ましい特徴では、iMAT分子は少なくとも1つのタグモジュール、好ましくは少なくとも1つのHisタグを含む。好ましくは、そのような少なくとも1つのタグモジュールはN-末端に存在する。具体的な好ましい特徴では、iMAT分子は、1つのタグモジュール(好ましくは1つのHisタグ)を1つのメチオニン残基の後のN-末端に含む。N-末端Hisタグを有する好ましいiMAT分子は、配列番号:24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81のいずれか1つを含むか好ましくは前記配列から成る。
別の具体的な好ましい特徴では、そのような少なくとも1つのタグモジュールはC-末端に存在する。別の具体的な好ましい特徴では、そのような少なくとも1つのタグモジュールはN-末端及びC-末端に存在する。C-末端Hisタグを有する好ましいiMAT分子は、配列番号:25、28、31、34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82のいずれか1つを含むか好ましくは前記配列から成る。
別の具体的な好ましい特徴では、タグモジュールは存在しない。Hisタグを全く含まない好ましいiMAT分子は、配列番号:26、29、32、35、38、41、44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83のいずれか1つを含むか好ましくは前記配列から成る。
さらに別の特徴では、少なくとも1つの第一のモジュールは、HIV-tat、VP22及び/又はアンテナペディア又はその部分配列を含むか、好ましくは前記配列から成るが、ただしそのような少なくとも1つの第一のモジュールが、当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行のためのモジュールとしての機能的であることを条件とし、もっとも好ましくはアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:1)である。
別の特徴では、iMAT分子はモノマー型及び/又は線状型で存在する。
【0062】
さらに別の具体的な特徴では、iMAT分子はハイブリッドiMAT分子(モザイク様iMAT分子)である。好ましくは、そのようなハイブリッドiMAT分子は配列番号:21-23のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より具体的には、そのようなハイブリッドiMAT分子は、配列番号:66-83のいずれか1つのアミノ酸配列を含むか、好ましくは前記アミノ酸配列から成る。
本発明はさらにまた、配列番号:24から83のアミノ酸配列の1つ以上を含むか、好ましくは前記アミノ酸配列から成るアミノ酸配列に関する。本発明はさらにまた、配列番号:24から83のアミノ酸配列の1つ以上を含むか、好ましくは前記アミノ酸配列から成るiMAT分子に関する。
本発明はさらにまた、配列番号:24から83から成る群から選択される1つ以上のアミノ酸配列を含むか、好ましくは前記アミノ酸配列から成るアミノ酸配列/iMAT分子に関する。具体的に好ましいアミノ酸配列/iMAT分子は、配列番号:36(ネコDer f15 iMAT分子)又は配列番号:57(イヌDer f1 iMAT分子)を含むか、好ましくは前記配列から成る。さらに別の好ましいアミノ酸配列/iMAT分子(N-末端Hisタグを含む)は、配列番号:24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81から成る群から選択される。さらに別の好ましいアミノ酸配列/iMAT分子(C-末端Hisタグを含む)は、配列番号:25、28、31、34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82から成る群から選択される。さらに別の好ましいアミノ酸配列/iMAT分子(Hisタグを含まない)は、配列番号:26、29、32、35、38、41、44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83から成る群から選択される。さらに別の好ましいアミノ酸配列/iMAT分子(ハイブリッド/モザイク様iMAT)は配列番号:66-83から成る群から選択される。さらに別の好ましいハイブリッドiMAT分子は、配列番号:66、69、72、75、78、81(N-末端Hisタグを含む)である。さらに別の好ましいハイブリッドiMAT分子は67、70、73、76、79、82(C-末端Hisタグを含む)である。さらに別の好ましいハイブリッドiMAT分子は配列番号:68、71、74、77、80、83(Hisタグを含まない)である。
【0063】
本発明はアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子に関し、前記アミノ酸配列/iMAT分子は、(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール(好ましくは、前記第一のモジュールは配列番号:1を含み、より好ましくは配列番号:1から成る)、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール(好ましくは、前記第二のモジュールは配列番号:4又は5を含み、より好ましくは配列番号:4又は5から成る)、及び
(iii)配列番号:7、8、9、10、11、12、84、85、86、87及び88から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せの少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ配列)に由来するアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする。
好ましい特徴では、当該抗原モジュールは、配列番号:10、11、12、84、85、86、87及び88から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せの少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ配列)に由来するアミノ酸配列(ハイブリッド1)である。
具体的な特徴では、抗原モジュールは、配列番号:7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せの少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ配列)に由来するアミノ酸配列(ハイブリッド2)である。
具体的な特徴では、抗原モジュールは、配列番号:7、8、10及び11から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せの少なくとも1つの完全な又は部分的なアミノ酸配列(好ましくはエピトープ配列)に由来するアミノ酸配列(ハイブリッド3)である。
【0064】
したがって、本発明は具体的にはアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子に関し、前記アミノ酸配列/iMAT分子は、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール(好ましくは、前記第一のモジュールは配列番号:1を含み、より好ましくは配列番号:1から成る)、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール(好ましくは、前記第二のモジュールは配列番号:4又は5を含み、より好ましくは配列番号:4又は5から成る)、及び
(iii)配列番号:84に由来する骨格配列に(任意の順序で)埋め込まれた配列番号:91-96を含む前記骨格を土台とするアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする。
好ましい特徴では、第三のモジュールの配列番号:84に由来する骨格内のペプチド配列の順序は、配列番号:91、その後に配列番号:92、その後に配列番号:93、その後に配列番号:94、その後に配列番号:95、その後にN-末端から始まる配列番号:96が続く。最も好ましい特徴では、第三のモジュールは配列番号:21を含み、好ましくは配列番号:21から成る。
本発明のさらに別の具体的な特徴は、配列番号:84に由来する骨格に埋め込まれる配列番号:91-96のペプチドの任意のさらに別の組合せ及び順序に関する。
【0065】
したがって、本発明はさらにアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子に関し、前記前記アミノ酸配列/iMAT分子は
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール(好ましくは、前記第一のモジュールは配列番号:1を含み、より好ましくは配列番号:1から成る)、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール(好ましくは、前記第二のモジュールは配列番号:4又は5を含み、より好ましくは配列番号:4又は5から成る)、及び
(iii)配列番号:97-102のペプチドの2つ以上の任意の組合せ(任意の順序)に由来するアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする。好ましい特徴では、第三のモジュール内のペプチド配列の順序は、配列番号:97、その後に配列番号:98、その後に配列番号:99、その後に配列番号:100、その後に配列番号:101、その後にN-末端から始まる配列番号:102が続く。もっとも好ましい特徴では、第三のモジュールは配列番号:22を含み、好ましくは配列番号:22から成る。
さらに別の特徴では、第三のモジュール内のペプチド配列の順序は、配列番号:99、その後に配列番号:98、その後に配列番号:102、その後に配列番号:100、その後に配列番号:101、その後にN-末端から始まる配列番号:97が続く。本発明のさらに別の特徴は、配列番号:97-102のペプチドの任意のさらに別の組合せ及び順序に関する。
【0066】
したがって、本発明は加えてアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子に関し、前記アミノ酸配列/iMAT分子は、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュール(好ましくは、前記第一のモジュールは配列番号:1を含み、より好ましくは配列番号:1から成る)、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与する、前記少なくとも1つの第二のモジュール(好ましくは、前記第二のモジュールは配列番号:4又は5を含み、より好ましくは配列番号:4又は5から成る)、及び
(iii)配列番号:97、配列番号:98、配列番号:101、配列番号:102のペプチドの2つ以上の任意の組合せ(任意の順序)に由来するアミノ酸配列であり、そのようなiMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュールを含み、少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする。好ましい特徴では、第三のモジュール内のペプチド配列の順序は、配列番号:97、その後に配列番号:98、その後に配列番号:101、その後にN-末端から始まる配列番号:102が続く。もっとも好ましい特徴では、第三のモジュールは配列番号:23を含み、好ましくは配列番号:23から成る。
さらに別の具体的な特徴では、第三のモジュール内のペプチド配列の順序は、配列番号:102、その後に配列番号:98、その後に配列番号:101、その後にN-末端から始まる配列番号:97が続く。本発明のさらに別の特徴は、配列番号:97、98、101及び102のペプチドの任意のさらに別の組合せ及び順序に関する。
本発明はさらに、発明のアミノ酸配列/iMAT分子を含むワクチン又は免疫原性組成物又は医薬組成物に関する。
本発明はさらにまた本発明のアミノ酸/iMAT分子をコードする核酸に関する。
加えて、本発明は本発明の少なくとも1つの核酸を含むベクターに関する。
さらにまた、本発明は、本発明の少なくとも1つの核酸及び/又は本発明の少なくとも1つのベクターを含む初代細胞又は細胞株に関する。
加えて本発明は、以下の工程を含む改良MAT分子を特定する方法に関する:
a)iMAT分子のアレルゲンモジュールとしてタンパク質を選択する工程、及び
b)前記アレルゲンを用いて、熱力学的に安定でありかつタンパク質工学によって効率的に生成できるiMAT分子を構築する工程。
具体的には本発明は、以下の工程を含む改良MAT分子を特定する方法に関する:
a)iMAT分子のアレルゲンモジュールとしてタンパク質を選択する工程であって、前記タンパク質はアレルゲンであり、したがって罹患対象で過敏性を引き起こす高い潜在能力を有し、したがって耐性誘発のための標的となることができる、前記工程、及び
b)前記アレルゲンを用いて、熱力学的に安定でありかつタンパク質工学によって効率的に生成でき、さらに加えて十分な品質(すなわち、実体、純度、及び有効性)を担保するために標準的な方法で分析できるiMAT分子を構築する工程。
【0067】
当該方法の具体的な特徴では、工程a)は以下を含む:
-公知のアレルゲン誘発性タンパク質に対する与えられたタンパク質に由来するペプチドの局所相同性検索に基づいてアレルゲンを選択する、
-公開データベース(例えばUNIPROT)からアレルギー誘発特性を有すると疑われるタンパク質のアミノ酸配列を読み出す、
-当該読み出したデータセット内の配列相同性の分析によって重複性を決定する、
-高度ホモローグ配列対応物を除外する(残留する配列は、その後の分析のために高確率で有効な抗原の規準配列データベースとして機能する、
-タンパク質をin silicoで6から15アミノ酸(一アミノ酸シフトによる)の長さのペプチドに切断する、
-タンパク質及び対応するペプチドの局所ペアワイズアラインメントを実施する、
-与えられたタンパク質の自己アラインメントスコアを1に設定し、それにしたがって対応するペプチドのヒットをアラインメントすることによって、得られたアラインメントヒットの等級を決定する、
-各ペプチドについて与えられた閾値を超えるアラインメントヒット数を数える、
-アレルギー誘発特性が不明のタンパク質配列のランダムに作成したデータベースに対して局所ペアワイズアラインメントを比較する、
-ヒットの等級を決定しヒット数を数える、
-アレルゲンの結果のカウントから“非アレルギータンパク質”のカウントを差し引く、-全ての対応するペプチドのヒット数に基づき各タンパク質について累積ヒットスコアを
計算する、
-最高カウントを有するタンパク質をiMAT抗原モジュール候補として選択する。
当該方法の具体的な特徴では、工程b)は、予め定めたアミノ酸配列でそのような配列の安定化を可能にするアミノ酸置換を特定する工程を含み、好ましくは以下の工程を含む:
(i)標的誘導される予め定めたアミノ酸配列の三次元/三次構造を造形する、
(ii)単一点置換(例えばシステイン残基の異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン及び/又はイソロイシン残基)による置換)によりタンパク質安定性を反復決定し、さらにタンパク質安定性自由エネルギー変化(ΔΔG)に基づく系を採点して、全ての利用可能な三次元/三次アミノ酸配列構造を分析することによって安定化置換を決定する、
(iii)置換済みの三次元/三次アミノ酸配列構造を再造形し、さらに工程(ii)及び(iii)を定常状態に達するまで繰り返すことによってその安定性を計算する。
実施例
以下の実施例は本発明をさらに詳述するために供されるが、本明細書に開示される本発明の範囲を制限するものと解されるべきではない。
【実施例0068】
免疫/免疫持続期間の代用マーカー
本明細書に開示及び特許請求される(単離)組換えタンパク質の動物、例えば反芻獣、ブタ、より好ましくはイヌ及び/又はネコ(ウマ類を除く)への投与は、当該抗原モジュールに存在するアレルゲン及び/又はエピトープに対し免疫学的応答を生じる。加えて、C-又はN-末端タグ(例えばHISタグ)、TATモジュールは、標的対象で固有の製品特異的免疫学的シグナル(例えば抗体又はT細胞応答)(免疫又は免疫持続期間の代用マーカーとして用いられうる)を検出するために、隣接モジュール由来の隣接アミノ酸残基と一緒に利用できる。この代用マーカーは、治療特異的免疫学的パラメータとして、投与後の免疫若しくは免疫調節又は免疫持続期間若しくは免疫調節持続期間の査定を可能にする。したがって、本発明の(単離)組換えタンパク質によって始動される免疫応答の特異的なインジケーターは、末端タグ(場合によって隣接アミノ酸残基と一緒になって)特異的抗体(例えばIgG抗体)の誘発である。前記とはまた別に或いは前記に加えて、インジケーターは、スペーサーと本明細書に開示し特許請求する1つのモジュールの接合部又は2つのモジュール間の接合部に特異的な抗体の誘発である。
アレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎を罹患するか、又はそのリスクがあるイヌを予防的又は治療的に処置するために、単一のiMAT分子(例えば配列番号:57(N-末端に6ヒスチジンタグを有するイヌDer f15 iMAT分子))又は配列番号:45、51、54、57、60、63、66、69、72から選択される1つ又はいくつかのiMAT分子の組合せ(本発明の異なる抗原モジュールを含む)が用いられる。そのようなイヌでは、上記iMAT分子は実施例3に記載するように投与される。これらのiMAT処置イヌから採取した血液の血清サンプルで、当該iMATタンパク質のN-末端に対するiMAT処置時の抗体生成に関する免疫応答、より具体的には特異的IgGを測定することができる。測定は標準的なELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)技術を用い、したがって十分な量の配列番号:6を含む合成ペプチドがELISAプレート表面に被覆される。続いて処置動物の血清サンプルをそのようなプレート上でインキュベートし、IgGと前記ペプチドの特異的結合を二次ビオチン化抗体(それぞれネコ又はイヌIgGに特異的)によって検出し、続いて基質として対応する検出系(例えばストレプトアビジン-ペルオキシダーゼ及び3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB))を適用する。そのようなELISA試験により、iMATにより引き起こされる免疫の開始とともに免疫の持続期間が決定され時間の経過にしたがって観察される。治療的ワクチン処置計画(すなわちブースター注射の回数及びスケジュール)がこの代用パラメータによって臨床進行中に決定される。
【実施例0069】
低アレルギー誘発性
治療用アレルゲンのアレルギー誘発性は極めて重要であり、有害事象を誘発する(例えばアナフィラキシーを引き起こす)潜在性の目安である。哺乳動物について例示すれば、アレルゲン特異的IgE媒介過敏が、アレルゲン惹起試験(特に皮膚を標的とする試験)としての工程で研究されている(Griffin CE. Diagnosis of canine atopic dermatitis DOI: 10.1002/9781118738818.ch10)。真皮内皮膚試験が、組換えアレルゲンの生物学的評価のために及び遺伝子操作の低アレルギー誘発性誘導体の検証のために用いられた。
イヌの真皮内試験は、少量のアレルゲン溶液をイヌの真皮内に直接的に注射投与することによって実施される。これは、細いゲージ(27ゲージ)の注射針により各部位に0.05から0.1mLの注射で通常実施される。陽性反応は、紅斑、腫脹の存在、じんま疹の高さ及びサイズによって恣意的に解釈される。
真皮内試験の利点は高い感度である。これは、試験が低アレルギー誘発性の定量的測定を提供する場合に特に重要である。前記試験で、当該MAT分子は、同じ試験に適用された対応する天然の自然のままのアレルゲンと比較して、例えばイヌ及びネコのような感作個体で陽性反応に達するためにアレルギー誘発性成分の10倍、100倍から1000倍又はそれ以上のモル濃度さえも示す。
MAT分子に関しては、対応する自然のままのアレルゲンと比較してMAT分子のアレルギー誘発性について矛盾する結果が従来技術で報告されている。G. Sentiらは、細胞抗原刺激試験(CAST)だけでなく真皮内及び皮内試験でもMAT-Fel d1の低アレルギー誘発性を示した(Senti G et al., J Allergy Clin Immunol. 2012, 129(5): 1290-1296)。アレルゲンとFeld1を含むMAT分子との間の感受性における定量的な差は、それぞれ100倍、23倍及び16倍であった。MAT-Feld1は明らかに低アレルギー誘発性であったが、ある程度のアレルギー誘発性は残っていた。対照的に、Zhaoら(Zhao et al. Int J Clin Exp Med 2015;8(4):6436-6443)は、自然のままのDer p1タンパク質と比較して、彼らのMAT-Der p1構築物はより強力なアレルギー誘発性(過アレルギー誘発性)を示すことを記載した。
驚くべきことに、本明細書に開示し特許請求する改良MAT分子は、これに関して明瞭な卓越性を示す。本発明にしたがって製造したCulo2及びCulo3を抗原モジュールに含む2つのiMATの安全性をそれぞれ試験する。これらのアレルゲンに感作されかつ昆虫咬傷(IBH)に罹患するウマの新鮮採取血液を下記に記載するようにヒスタミン遊離試験(HRT)で用いる。図11に示すように、自然のままのアレルゲンは強いヒスタミン遊離を引き起こすが、一方、驚くべきことに2つの別個のiMAT分子(iMAT-Culo3及びiMAT-Culo2)は実質的に全く応答を示さない。したがって、iMAT分子は、従来技術に記載のMAT分子と比較して安全性に関して明瞭な卓越性を示す(上記参照)。
【0070】
ヒスタミン遊離試験(HRT):対象の新しく採取した血液を用意して、本明細書に開示し特許請求する(単離)組換えタンパク質/iMAT分子に対する好塩基球反応性を試験する。略記すれば、iMAT分子及び/又は組換えアレルゲンの10倍希釈シリーズ(例えば10nMから0.001nMの範囲の最終アレルゲン濃度)をpH7.4のPIPES緩衝液(AppliChem, Darmstadt, Germany)で調製する。Na-EDTA凝固阻止血液から得た洗浄赤血球及び白血球を個々の希釈液とともに37℃で1時間インキュベートする。氷上で20分インキュベートすることによって反応を停止させ、遊離ヒスタミンを含む上清を遠心分離後に各サンプルから収集する。最大ヒスタミン含有量は血球を水浴中で10分間煮沸することによって入手する(最大遊離)。遊離緩衝液と洗浄血球とのインキュベーションを陰性コントロールとして供する(偶発的遊離)。ヒスタミン濃度は、製造業者の指示にしたがい競合RIA(LDN Nordhorn, Germany)を用いて決定される。
また別のもう1つの好塩基球活性化試験は細胞抗原刺激試験CAST(商標)ELISAであり、これはまたin vitroアレルギー惹起試験とみなすことができる。前記アッセイを製造業者(Buhlmann Laboratories AG, Allschwil, Switzerland)の指示にしたがい実施する。CAST(商標)では、アレルギーの対象の血液から得られた沈降白血球をサイトカインIL-3で同時にプライミングし、さらにiMAT分子及び/又は組換えアレルゲンで刺激する。とりわけ好塩基球が、アレルギー媒介物質、スルフィドロイコトリエンLTC4並びにその代謝物LTD4及びLTE4を生成する。これらの新しく合成されたスルフィドロイコトリエン(sLT)を続いてELISA試験(酵素結合免疫吸着アッセイ)で測定する。
iMAT分子の有害事象誘発潜在能力(例えば投与の副作用としてアナフィラキシーの惹起)を、iMAT分子(アレルゲンを含む)の作用を対応する組換えアレルゲン単独の作用と比較することによりこれらのアッセイを用いてin vitroで評価することができる。
好塩基球の脱顆粒の減少、例えば組換えアレルゲンと比較してiMAT分子によるヒスタミン及び/又はスルフィドロイコトリエンの遊離の減少は、有害作用の潜在性がiMAT分子でより低いこと、すなわちiMAT分子のより良好な安全性プロフィールを示す。
対象での1型アレルギー反応のためのin vitro惹起試験として、前記HRT(又はCAST(商標))を用いることができる。アレルゲン特異的ヒスタミン遊離は、それぞれのアレルゲンの好塩基球活性化に対する関連性を示し、したがって対象のアレルゲン特異的感作のための定量的パラメータとして用いることができる。
【0071】
アレルゲン特異的IgE媒介過敏を罹患する対象が、iMAT-抗原モジュール中に関連アレルゲンを含む対応するiMAT分子で処置されるならば、アレルゲンに関連する有害な作用は生じないと期待できる。このことは、iMATタンパク質を適用する脱感作療法を生命に関わる疾患の治療に特にふさわしくする。
MAT分子とは対照的に、iMAT分子のこの驚くべき安全性特性の結果は、脱感作タンパク質として用いられるiMAT分子を病原体に対するワクチンと同様に用いることができるということである。iMAT分子を含むワクチンはアレルギー性有害事象に関してアレルゲン特性を示さないので、古典的な治療用アレルゲンのような用量増加を必要としない。治療過程でiMAT分子の初回注射用量は有効性のみを考慮してそれまでに選択することができ、潜在的なアレルギー性有害反応を斟酌する必要がない。このようなことは従来技術のMAT分子の使用では実施できない。なぜならば、自然のままのアレルゲンと比較して、MATのアレルギー誘発性は一定レベルに低下させられているだけだからである。しかしながらMAT分子はなおアレルゲンであり、対照的にiMAT分子はそうではない。この改良された特性の利点はより有効な治療レジメンを可能にする(例えば、高含量生物製剤による皮下又はリンパ節内の3回注射、例えばiMATタンパク質の1μgから100μgを3回、好ましくは10μgから50μgを3回)。
iMAT分子のアレルギー誘発性欠如は、従来技術に記載のMAT分子とは対照的に、そのようなiMAT分子では別個のモジュールの分離にリンカーアミノ酸残基(すなわち第一、第二及び/又は第三モジュール間のスペーサーモジュール)が用いられないという事実によって説明できる。ペプチド又はタンパク質リンカーによって結合される2つ以上の機能的ポリペプチドを含むように操作される融合タンパク質は、当該タンパク質の機能(例えば免疫系によるエピトープ認識)のために重要であることが従来技術で知られている(Klein JS et al., Protein Eng Des Sel. 2014, 27(10): 325-330)。機能的ユニット間の分離距離は、エピトープへの接近及びアビジチーによる結合能力に強い影響を与えることができる。モジュール間、特に標的誘導ドメインと抗原モジュール間のアミノ酸残基リンカーの欠如がより不撓性の構造をもたらすならば、アレルゲンモジュールの立体的エピトープは不正確な折り畳みのために形成され得ない。その高親和性受容体によって好塩基球表面に結合される抗体(例えばIgE)の架橋が活性化及びヒスタミン遊離の誘発に必要である。しかしながら、不正確に折り畳まれたアレルゲンはそのような架橋を誘発できない可能性がある。したがって、リンカーを欠くiMAT分子は立体的IgEエピトープを形成し得ず、そのことはiMAT分子を非アレルギー誘発性にする。
【実施例0072】
イヌ及び/又はネコのアトピー性皮膚炎の治療用ワクチン/予防
本発明の1つの単一iMAT分子又は異なる抗原モジュールを含むiMAT分子組合せを用いて、アトピー性皮膚炎(AD)を罹患する又はそのリスクを有するイヌ及び/又はネコを予防的に又は治療的に処置する。
第一の例では、配列番号:36(Der f15)のiMAT分子がアトピー性皮膚炎を罹患するネコの膝窩リンパ節に投与される。第二の例では、配列番号:66(ハイブリッド1)のiMAT分子がアトピー性皮膚炎を罹患するネコの膝窩リンパ節に投与される。第三の例では、配列番号:57(Der f15)のiMAT分子がアトピー性皮膚炎を罹患するイヌの膝窩リンパ節に投与される。第四の例では、配列番号:81(ハイブリッド3)のiMAT分子がアトピー性皮膚炎を罹患するイヌの膝窩リンパ節に投与される。
各事例で、罹患動物のリンパ節の上の毛を刈り取り外科手術の準備をした。触診及び/又は誘導用超音波を用い、25G注射針をリンパ節に挿入する。注射iMAT分子はアジュバントに吸着される。アジュバントは、例えばリン酸アルミニウム(Adju-Phos(商標), Brenntag Biosector, Denmark)から成る。iMAT分子ストックは、例えば375μg/mLタンパク質濃度のバイアル中の凍結溶液で(各バイアルは500μLを含む)、使用前に解凍される。
iMAT分子溶液を解凍した後、当該溶液の400μLを例えば200μLのアジュバントと混合する。前記最終処方物をリンパ節内注射前に室温に例えば60分間放置し、当該iMAT分を例えばAdju-Phos(商標)に吸着させ、前記混合物の例えば50μL(12.5μgのiMAT分子を含む)を500μLの注射器にリンパ節注射のために移した。前記調製物をまず初めに、各注射及びiMAT分子毎に10μgから50μg(1つ以上の抗原分子の質量についてのみ)の間の用量で典型的には0日目、28日目及び56日目に投与する。
処置期間を通して及び/又はその後、ADの治療又は予防の有効性が、掻痒症、皮膚病巣及び投薬スコアの定量的、半定量的又は定性的査定によって臨床的に精査される(Hobi S, Mueller RS; Tierarztliche Praxis. Ausgabe K, Kleintiere/ Heimtiere 2014, 42(3):167-173)。これらの臨床パラメータは、治療介入の開始前の個々のイヌ及び/又はネコの臨床徴候と比較される。また別には、処置されなかったか又はプラセボで処置されたAD罹患イヌ及び/又はネコとの比較は、AD臨床徴候に対するiMAT分子によって媒介される処置及び/又は予防の有効性を提示することができる。
【0073】
また別に或いは前記に加えて、ある種のデルマトファゴイデス属のアレルゲンによる皮内誘発試験を前記イヌ及び/又はネコで用いることができる。応答(即時及び/又は後期反応性)の低下は、iMAT分子投与による治療及び/又は予防の効果を示す。さらにまた、免疫系の異なる構成要素の変調がモニターされる。例えば、アレルゲン特異的IgE及びIgG抗体力価の変化は治療及び/又は予防の効果を示す。IgEレベルの変化とは別に、イヌ及び/又はネコをそのようなiMAT分子で処置したときに、驚くべきことにアレルゲン特異的IgGの増加が認められる。これらの抗体は、IgE媒介アナフィラキシーをin vivoで阻止し、好塩基球及びマスト細胞による炎症媒介物質のアレルゲン誘発遊離だけでなくT細胞へのIgE媒介アレルゲン提示もまた阻害するように思われる。アレルゲンに特異的に結合するiMAT誘発IgG抗体の中で、いくつかのアレルゲン特異的サブタイプは重要な“防御的”役割をIgE媒介抗原提示の阻害によって果たすと提唱されている(なぜならば、それらサブタイプはアレルゲン特異的IgE抗体と競合し、CD4+T細胞の活性化を防ぐことができる)。さらにまた、分泌されるIgGサブセットはマスト細胞及び好酸球の顕著な減少を促進し、炎症媒介物質の遊離の減少を伴う。
アレルゲン特異的免疫療法は免疫系の種々の構成要素を変調させることができる。細胞性改変は、アレルゲン誘発T細胞増殖の減少(アレルゲン特異的T細胞の末梢性耐性の誘発を示す)及びIFN-γ生成の増加とともにTh1反応により促進される抗原特異的Th2優勢免疫応答の低下から成る。この免疫学的切替えの協調に必要な重要細胞は不均質なT細胞集団(調節性T細胞(Treg)と称される)である。アレルゲン免疫療成功のための細胞レベルにおける必須要件は1型Treg細胞の末梢誘発である。抗原認識に特異的な1型Treg細胞に関する機能研究は、1型Treg細胞によるTh1及びTh2応答の改変はほとんどサイトカインIL-10(免疫抑制特性を有する)の分泌に依存することを明らかにした。実際、IL-10は特異的アレルゲンに対する末梢T細胞の増殖応答を阻害し、T細胞アネルギーの誘発に中心的な役割を果たす。in vitroでは、IL-10は調節性因子FoxP3の発現を強化し、好酸球機能を調節し、マスト細胞によって放出される前炎症性媒介物質を減少させる。
前記iMAT分子媒介免疫療法の傑出した臨床有効性の別の可能なマーカーは、アレルゲン特異的T細胞の数及び性質の変化の検出である。例えば、Bet v1テトラマー染色実験によれば、循環するカバノキ花粉特異的CD4+T細胞のレベル及び特徴をSITの前後で潜在的に比較することができる。最近、形質転換増殖因子(TGF)-βもまたSITの成功で重要なサイトカインであることが認識された。多くの作用がその関連性の説明となり得る。前記は、例えば特異的Th1、Th2及びTh17細胞の抑制、FoxP3の誘発、並びにTregの抑制性機能である。加えて、TGF-βはランゲルハンス細胞でのFcεRI発現をダウンレギュレートし、IgE合成を抑制する。これらの免疫学的に関連するT細胞媒介免疫応答は、Nuttalらの論文に記載されたように、末梢血の単球細胞(PBMC)培養及びそのサイトカイン検出を利用するex vivo実験で測定できる(T.J. Nuttall et al., Veterinary immunology and Immunopathology 84 (2002) 143-150)。
【実施例0074】
本発明のiMAT分子と従来技術のMAT分子(WO 2004/035793(米国ではUS 2005/0281816に該当する))との比較
MATタンパク質の純度査定のために、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)試験の手順を確立した(Thompson J et al., J Biol Chem 2002, 277: 34310-34331)。前記方法(還元剤、ドデシル硫酸リチウム(LDS)及び75℃の加熱によるサンプル調製を含む)は、電気泳動分離後に再現性のある複数のシャープなバンドを生じた。クマシーブルー染色は、200から1000ngのタンパク質を添加したゲルで直線状の定量的な(デンシトメトリー)特色を示す。モノクローナル抗体を用い、アレルゲンモジュールとしてFel d1を有するMAT分子(MAT-Fel d1)中のアレルゲンを検出したとき、主要バンド及び13のマイナーバンドはいずれもMAT-Fel d1タンパク質を含むことが示された。小バンドは、ゲルに再ローディングした後も最初のゲルと同じ位置に泳動する(図1)。PAGE前のサンプル調製のためのいくつかの異なる方法(例えば異なる温度及び緩衝液組成プロトコル)でも同じバンドパターンを生じた。
各バンドをゲルから切り出し、トリプシンで消化し、続いて質量分析で分析した後に、これらのバンドの全てで、完全長の(完全な)MAT-Fel d1タンパク質及び宿主細胞タンパク質のわずかな痕跡の存在を示すことができた(nanoLC/ESI-MS)。これらの実験から、SDS-PAGEにおけるMAT-Fel d1の例えば種々の折り畳み変種の変則的特色(ゲルシフト)を結論することができる。このことは、分析調製物中のMAT-Fel d1は、生物製剤分子として、特に臨床用及び/又は市販用生物製剤の製造のためには適切でないことを意味する。なぜならば、その純度は、標準的な方法(例えばSDS-PAGE)ではなく上記で説明した改変手順でのみ決定し得るからである。MAT-Fel d1分子のこのゲルシフト現象とは対照的に、Fel d1はしたがってSDS-PAGEでそのような変則的特色を示さない(図2、レーン2及び3)。Fel d1は予想される分子量(19.6kD)の単一のシャープなバンドを示す。
さらに別の変則的な特色はRP-HPLC分析で観察できる。この分析方法では、タンパク質の自然のままの立体構造でもカオトロピック及び還元条件によって誘発される変性型でも、MAT-Fel d1の単一ピークは認められない(図3)。しかしながら、GMP認定の生物製剤製造のためには、市場の薬剤調製物にはただ1つのアイソフォームが存在することが必須である。SDS-PAGE及びRP-HPLC分析におけるこれらの観察は、アミノ酸配列に基づく物理化学的特性によって説明できる。カイトドゥリトル疎水性図表(Kyte J, Doolittle RF, Journal of Molecular Biology 1982, 157(1), 105-132)の分析は、この変則的な態様の原因となり得る隣り合う極度に疎水性及び親水性ドメインを明らかにする。
特に、融合タンパク質の標的誘導ドメインの疎水性領域は膜タンパク質のトランスメンブレンセグメントと類似する(トランスメンブレンセグメントがそのような変則的特色を生じることは当業界で公知である(Rath A et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2009, 106(6): 1760-1765))。分子式の分子量とは相関性を示さないSDS-PAGEでの泳動(“ゲルシフト”と称される)は、膜タンパク質で共通するようである。前記が意味することは、分子の自然のままの2D-又は3D-構造に依拠しないで分子をひたすらその分子量にしたがって分離するというSDS-PAGE手法の前提条件はこれらの事例には当てはまらないということである。上記に引用した研究(PNASの論文)で、著者らは、へリックス状膜タンパク質の変則的ゲル移動性を精査している。彼らは、ヒトの嚢胞性線維症の膜コンダクタンス制御因子(CFTR)のトランスメンブレンセグメント3及び4に由来する野生型及び変異へリックス-ループ-へリックス(疾患表現型残基置換を含む)のライブラリーを用いた。彼らが見出したことは、これらのヘアピンは、SDS-PAGEにおける実際の分子式の分子量に対してマイナス10%からプラス30%の割合で泳動し、タンパク質1gにつき3.4から10gのSDSの比率で洗剤をローディングするということであった。彼らはさらに、変異体のゲルシフトはヘアピンのSDSローディング能力の変化及びヘアピンのヘリックス性に強い相関性を有することを示し、ゲルシフトの態様は洗剤結合の変化に起因することを提示した。いくつかの事例では、SDSによる弁別的な溶媒和は、タンパク質-洗剤接触をタンパク質-タンパク質接触で置き換えることによりもたらされる可能性があり、洗剤結合及び折畳みは密接に連携していることを示唆する。
【0075】
MAT及びiMATタンパク質のSDS-PAGE(図5)は、そのRP-HPLC分析(図3及び6)とともにそれぞれ泳動パターン又は溶出における実質的な相違を明らかにしてみせる。MAT-Fel d1の酸化型は、SDS-PAGEゲルで単一のシャープバンドを示さないが(レーン3)、MAT-Fel d1の実際の32.2kDより大きい及び小さい見かけの分子量を有するいくつかの拡散したバンドを示す。対照的に、1例としてクリコイデス・オブソレツス(culicoides obsoletus)アレルゲンの抗原モジュールを有するiMAT分子(iMAT-Cul o4)は、酸化条件下で単一のシャープなバンド(M=41.6kD)を示す。RP-HPLCクロマトグラムもまた単一ピークを示す(図6)。還元条件下では、MAT-Fel d1はSDS-PAGEでほぼ公知の分子量で泳動する主バンドを明らかにして見せたが、加えて、図1に記載するいくつかのマイナーバンド(MAT-Fel d1の完全な配列を含むことが判明している)もまた出現する(図5、レーン6)。これは属性であり、MAT-Fel d1の変則的な特色である。加えて、還元条件下のMAT-Fel d1のRP-HPLCクロマトグラム(図3、右グラフ)は、MAT-Fel d1の少なくとも3つの異なるアイソフォームを示す。対照的に、iMAT分子は、SDS-PAGE(図5、レーン7)とともにRP-HPLC(図6)でただ1つのアイソフォームの明確な指標である特徴を明らかにして見せる。還元条件は、MAT分子のジスルフィド架橋の切断を生じる。したがって還元条件下では、MAT及びiMAT分子は、もしジスルフィド架橋がMAT分子の変則的特色の唯一の原因であるならば同様な態様を示すはずである。しかしながら、実際はそうではなく、MAT分子の変則的なゲルシフト及びRP-HPLCでのアイソフォームの出現は還元条件下でも存在する。しかしながら、iMAT分子はそのようなゲルシフトを示さず、RP-HPLCクロマトグラムではこのタンパク質の自然のままの(酸化された)形のピークを示す。さらにまた、MAT及びiMAT分子のカイトドゥリトル疎水図表は、Hisタグ、TAT及び標的誘導ドメインの配列をカバーするN-末端でほぼ同一である(図8)。したがって、当業者は、従来技術の不利益を克服するために、システイン残基が他の残基で置換された従来技術のMAT分子を構築しようとは思わないであろう。
iMAT分子は、下記実施例5に記載する“バイオインフォマティクス操作”によって構築され、組換え発現技術によって大腸菌で生成できる。例として、図7に示す3つのiMAT分子は、二回の凍結融解後に緩衝液(20mMクエン酸、1Mアルギニン、pH 6.0)中で安定であり、アジュバントとしてのAdju-Phos(商標)(Brenntag, Denmark)に吸着させることができ、したがってiMAT分子はワクチンとして用いることができる。このタンパク質は同じ緩衝液系で分解することなくAdju-Phos(商標)から脱離する(図7)。
【実施例0076】
iMAT分子の“バイオインフォマティクス操作”:抗原モジュール用タンパク質の選択及び完全iMAT分子の最適化
例えば、iMAT技術を用いてアレルギー性疾患を有するイヌ及び/又はネコを効果的に治療するために、さらにまた以下のように推奨することができる:
a)iMAT分子中のアレルゲンモジュールとしてのタンパク質の選択(前記タンパク質は、アレルゲンであり、したがって罹患対象で過敏を引き起こす高い潜在性を有し、したがって耐性誘発のための標的となり得る)、及び
b)前記アレルゲンを含むiMAT分子の構築(前記iMAT分子は、熱力学的に安定であり、タンパク質工学によって効率的に生成でき、加えて、標準的な方法で分析して十分な品質(すなわち実体、純度及び有効性)を担保できる)。
これらの要件を満たすために、本発明のiMAT分子に含まれるべきアレルゲンを選択するためにバイオインフォマティクスによる選別が選択される。選別の目的は、(i)与えられたアレルギー疾患で関連を有すると期待される1つ以上のアレルゲンを選択すること(すなわちアレルギー疾患を罹患する個体の大半がそれぞれのアレルゲンに対して感作される)、及び(ii)アレルゲンの特徴の線状エピトープを含む確率がもっとも高いアレルゲン(すなわち公表されたアレルゲンのペプチド配列と相同な多数の短いペプチド配列(7から13アミノ酸残基)を含む)を選択すること。
医薬調製物のために適切な抗原を選択するために、公知のアレルゲンに対する局所配列アラインメントに基づく相同性比較が選択される。抗体認識のためのエピトープ検出(大半が立体的エピトープ)はしばしば機能的分析(例えばペプチドマイクロアレイ)によって達成されるか、又はT細胞エピトープ(線状エピトープ)についてはMHC分子とのペプチド結合の確率を計算することによって達成される。iMAT技術の治療原理は、とりわけエンドサイトーシス及びエンドソーム中の酸依存性プロテアーゼによる分解とそれに続くMHCクラスII結合及び抗原提示を基礎に置く。
【0077】
アレルゲン選別のために異なるアプローチ(非実験的であるがバイオインフォマティクスによるアプローチ)が選択される。これは、公知のアレルギー誘発性タンパク質(その大半がヒトでアレルギーをもたらすことが知られている)に対する与えられたタンパク質由来ペプチドの局所相同性検索に基づく。アレルギー誘発性特性を有すると思われるタンパク質のアミノ酸配列を公開データベース(例えばUNIPROT)から読み出し、読み出しに用いたデータベース内での配列相同性分析によって重複性を決定する。高度ホモローグ配列対応物を除外し、得られた残留配列は、その後の分析のために確率の高い有効な抗原の規準配列データベースとして機能する。高いアレルギー誘発潜在性を有すると推定されるタンパク質を決定するために、一アミノ酸シフトを用いてタンパク質をin silicoで6から15アミノ酸の長さのペプチドに切断する。次に、前記基準配列データベースに対して例えばデルマトファゴイデスのタンパク質及び対応するペプチドの局所ペアワイズアラインメントを実施する。前記に続いて、与えられたタンパク質の自己アラインメントスコアを1に設定し、それにしたがって対応するペプチドのアラインメントヒットによって得られたアラインメントヒットの等級を決定する。その後、与えられた閾値を超えるアラインメントヒットの数を各ペプチドについて数え、さらにアレルギー誘発特性が不明のタンパク質配列のランダムに作成したデータベースに対して局所ペアワイズアラインメントによって比較し、続いて等級を決定しヒット数を数える。得られた“非アレルギー性タンパク質”カウントをアレルゲンの結果のカウントから差し引き、全ての対応するペプチドのヒット数に基づき各タンパク質について累積ヒットスコアを計算する。最高カウントを有するタンパク質をiMAT抗原モジュール候補として選別する。選別アレルゲンの各々を別々のiMAT分子に抗原モジュールとして組み込み、続いて、三次元タンパク質構造の反復造形及び一アミノ酸置換後の自由エネルギーの変化の計算によって、完全なiMAT分子を熱力学的安定性について最適化する。物理化学的特性及び安定性は、一次アミノ酸配列内での種々のアミノ酸残基の置換によって影響を受ける。
ここに記載した分析(抗原検索及び造形)の結果を、薬物生成及び適用に適切なiMATアミノ酸配列に変換する。具体的な例では、このバイオインフォマティクス操作によるアプローチによって、Zen 1及びDer f15は、デルマトファゴイデス・ファリナエ種のダニに由来するタンパク質によって引き起こされるアレルギー疾患のアトピー性皮膚炎と関連することが認定される。さらにまた、バイオインフォマティクスによる分析は、システイン残基が他のアミノ酸によって置換された安定なiMAT分子を明らかにしてみせる。そのような安定なiMAT分子の例は配列番号:39(イヌZen 1)及び配列番号:57(イヌDer f15)である。
【実施例0078】
本発明のモザイク様iMAT分子の構築
本発明のiMAT分子は、2つ以上のアレルゲンの構成要素が抗原モジュールに含まれるならばさらに改善されると期待される。この目的のために、上記に記載したバイオインフォマティクスによる選別アプローチ(実施例5)の基本原理を異なる仕方で適用できる。アレルゲンデータベースで見いだされたアレルゲンペプチドのヒット数に基づく完全なアレルゲンを選別する代わりに、アレルゲンでもっとも豊富ないくつかのペプチドのみを用いてiMAT抗原モジュールを操作作出する。したがって、そのようなiMAT分子はいくつかのアレルゲンに由来するペプチドの抗原モジュールから成る。これは、その標的アレルギープロフィールに関して単一iMAT分子の幅を広げることを可能にし、薬剤開発に有益である。
そのようなモザイク様iMAT分子を適格にする短いペプチド配列を見つけるために、例えばデルマトファゴイデスに由来するタンパク質を上記に記載の相同性比較によって分析する。略記すれば、ペプチドの長さが6-15アミノ酸残基を有する、in silico切断タンパク質を、アレルゲン関連タンパク質の基準配列データベース及び非アレルギー関連タンパク質のランダムデータベースに対して局所アラインメントを実施する。基準データベース内で見いだされる各ペプチドについて有意な相同性の相違の数を決定する。続いて、基準データベースのサイズの3倍のランダムデータベースと局所アラインメントを実施し、偽陽性ヒットを減少させる。各ペプチド長について残りの相同性を有する上位のもの(例えば10パーセンタイル)は、モザイク様iMAT分子又はハイブリッドアレルゲン含有iMAT分子の構築のための土台として供するために特に適切である。モザイク様iMAT分子を構築するために、タンパク質前駆体が、上位ランキングペプチド包埋用スキャフォールドタンパク質として(例えば上位ランキングペプチドに一致する前駆体タンパク質リストから)選択される。シグナルペプチド配列をスキャフォールドタンパク質から除去し、上位ランキングペプチド(場合によって隣接するN-又はC-末端アミノ酸を有する)をスキャフォールドタンパク質の本来の配列に挿入するか、又はスキャフォールドタンパク質の本来の配列の部分と入れ替えることができる。挿入又は入れ替えのための位置は、類似性アラインメント又は対応する前駆体タンパク質中の当該ペプチドの参照位置を用いて決定される。次の工程として、Hisタグ、TAT及び標的誘導ドメインが付加される。最後にシステイン残基を上記に記載したもっとも安定化させる残基に入れ替える。
具体的な例(ハイブリッド1)では、このバイオインフォマティクス操作によるアプローチによって、デルマトファゴイデス・ファリナエ種のダニに由来するタンパク質により引き起こされるアレルギー疾患のアトピー性皮膚炎では以下の配列の組合せが適切であると認定される:配列番号:84(A1KXC1_DERFA DFP1 OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ)、配列番号:10(Q86R84_DERFA 60kDaアレルゲンDer f 18p OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ GN=Der f18 PE=2 SV=1)、配列番号:85(A0A088SAS1_DERFA Der f28アレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ PE=2 SV=1)、配列番号:88(A7XXV2_DERFA Der f2アレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ PE=4 SV=1)、配列番号:86(B7U5T1_DERFA Der f6アレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ PE=2 SV=1)、配列番号:87(T2B4F3_DERPT LytFM OS=デルマトファゴイデス・プテロニシヌス GN=lytFM PE=4 SV=1)、配列番号:11(Q9U6R7_DERFA 98kDa HDMアレルゲン OS=デルマトファゴイデス・ファリナエ PE=2 SV=1)。さらにまた、バイオインフォマティクス分析は、システインが他のアミノ酸によって置換された安定なiMAT分子を明らかにする。そのような安定なモザイク様iMAT分子の例は、配列番号:75(イヌハイブリッド1)及び配列番号:66(ネコハイブリッド1)である。
【実施例0079】
治療用ワクチン/ネコのアレルギー喘息の予防
本発明の1つの単一iMAT分子又は異なる抗原モジュールを含むiMAT分子の組合せを用いて、アレルギー喘息を罹患するか又はそのリスクがあるネコを治療的に又は予防的に処置することができる。本発明のiMAT分子を実施例3に記載するようにネコに投与する。
既知のアレルギー喘息歴を有する成獣ネコを実験に含むであろう(すなわち、ネコは痙攣性咳エピソード、喘鳴及び呼気性呼吸困難の臨床徴候を示すことが報告された)。気管支肺胞洗浄液(BALF)を処置開始前及び処置中(例えば2、3及び6カ月)/処置後に収集する。BALFを細胞学的試験及び有核細胞計測のために用いる。ネコを例えばケタミンHClの静注により鎮静にさせる。気管内チューブを通して例えば7Frポリプロピレンカテーテルを静かに挿入することによって、気管支肺胞洗浄液を収集する。抵抗を感じたときに、カテーテルを通して20mLまでの温かい滅菌食塩水で洗浄し、手動吸引によって回収する。遠心分離及び再懸濁後に、収集BALF細胞の塗抹細胞検査を実施し、有意な数の好酸球が存在すればネコ喘息の診断が確認される。弁別的細胞計測によってBALF中の好酸球の割合(%)を定量的に判定できる。
また別に或いは前記に加えて、真皮内誘発試験、皮膚プリック試験又はBALF若しくは血清のアレルゲン特異的IgE及び/又はIgG決定を、ある種の組換えアレルゲンを利用して前記ネコでモニターできる(Norris et al., Vet Immunol Immunopathol. 2003, 96(3-4): 119-127)。応答(即時及び/又は後期反応性)の低下及び/又は抗体力価の変化は、当該iMAT分子による処置の治療及び/又は予防効果を示す。
呼吸数のような臨床徴候及び呼吸努力/困難測定スコアを用いる。前記“呼吸スコア系”は例えばエーロゾルチャレンジ応答でも用いることができる。簡単に記せば、閉鎖チャンバー内で意識を回復し自発呼吸するネコを、種々の時間及び/又は種々の濃度のエーロゾル化組換えアレルゲンに暴露する。また別には、気道過敏の定量的測定を麻酔ネコで実施してもよい。呼吸流量計測定を基準時及び気管支誘発プロトコル(例えばメタコリン及び/又は選択組換えアレルゲンに対する肺耐性の用量応答)で実施することができる。
したがって、治療期間を通して及び/又は治療後に、アレルギー喘息の治療又は予防有効性が定量的、半定量的又は定性的査定によって臨床的に精査される。パラメータを個々のネコで治療介入開始前の重篤度と比較することができる。また別には、無処置又はプラセボ処置アレルギー喘息ネコの比較によって、ネコアレルギー喘息の臨床徴候のiMAT分子による治療及び/又は予防の有効性が示される。
【実施例0080】
治療用ワクチン/ネコ及び/又はイヌのノミアレルギーの予防
本発明の1つの単一iMAT分子又は異なる抗原モジュールを含むiMAT分子の組合せを用いて、ノミアトピー性皮膚炎を罹患するか又はそのリスクがあるネコ及び/又はイヌを治療的に又は予防的に処置することができる。
第一の例では、配列番号:42(ネコCte f1)のiMAT分子がノミアトピー性皮膚炎を罹患するか又はそのリスクがあるネコの膝窩リンパ節に投与される。第二の例では、配列番号:63(イヌCte f1)のiMAT分子がノミアトピー性皮膚炎を罹患するか又はそのリスクがあるイヌの膝窩リンパ節に投与される。さらに別の処置の詳細は上記の実施例3に記載されている。
前記iMAT処置の有効性は、皮内試験(IDT)、T細胞分析、及びノミアレルゲン特異的IgE及びIgGの測定(Gerber ,J.D. Vaccine 1990-12 8(6):536-542)によって、処置ネコ及び/又はイヌでJinらの記載にしたがってiMAT処置の前及び後で判定される(Jin J et al., Vaccine 28 (2010) 1997-2004)。皮内試験(IDT)は、文献のプロトコルにしたがって実施される(DeBoer, D.J., Hillier, A. Veterinary Immunology and Immunopathology 2001, 81 (3-4), 271-276)。最後の免疫から4週間後に、ノミ抽出物の100μgを含む100μLのPBSをネコ及び/又はイヌの胸部側面の皮内に注射する。ヒスタミンを陽性コントロールとして、BSAを無関係刺激物質として、食塩水を陰性コントロールとして用いる。皮膚の反応水疱のサイズをマーカーペンでマークし、チャレンジから20分以内にマイクロメーターで垂直方向及び水平方向で測定する。結果は3つの測定値の平均として計算する。応答(即時及び/又は後期反応性)の低下、及び/又は抗体力価の変化、又はTh1若しくはTregにより歪曲されるT細胞応答は、iMAT分子処置の治療及び/又は予防効果を示す。
【0081】
参考文献
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11(1)】
図11(2)】
【配列表】
2022009452000001.app
【手続補正書】
【提出日】2021-11-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子であって
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュールであって、前記第一のモジュールが配列番号:1を含む、より好ましくは配列番号:1から成る、前記少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与し、前記第二のモジュールが配列番号:4又は5から成る、前記少なくとも1つの第二のモジュール、及び
(iii)少なくとも1つの抗原(好ましくは少なくとも1つのアレルゲン)の少なくとも1つの完全な又は部分的なエピトープに由来するアミノ酸配列であり、当該iMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュール、
を含み、
少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とし、したがって当該第三のモジュールが好ましくは配列番号:14から23のいずれか1つを含むか又は前記配列から成る、前記アミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項2】
第三のモジュールが配列番号:14又は23のいずれか1つ、好ましくは配列番号:18から成る、請求項に記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項3】
モジュールの全てが互いに共有結合により連結され、さらに第一、第二及び/又は第三のモジュールの2つ以上の隣接するモジュール間に付加されるスペーサーモジュールが全く存在しない、請求項1または2に記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項4】
さらに少なくとも1つのタグモジュール、好ましくは少なくとも1つのHisタグを含み、前記少なくとも1つのタグモジュールが好ましくはN-末端及び/又はC-末端に存在し、より好ましくは、1つのタグモジュール、好ましくは1つのHisタグが1つのメチオニン残基の後のN-末端に存在する、請求項からのいずれか1項記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項5】
アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:24-83のいずれか1つを含み好ましくは前記から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81のいずれか1つを含み好ましくは前記から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:25、28、31、34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64、67、70、73、76、79、82のいずれか1つを含み好ましくは前記配列から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:配列番号:26、29、32、35、38、41、44、47、50、53、56、59、62、65、68、71、74、77、80、83のいずれか1つを含み好ましくは前記配列から成り、或いは前記アミノ酸配列/iMAT分子が配列番号:36(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:37(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:38(ネコDer f15 iMAT分子)、又は配列番号:57(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:58(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:59(イヌDer f15 iMAT分子)を含み好ましくは前記配列から成る、請求項からのいずれか1項記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項6】
アミノ酸配列/iMAT分子が、配列番号:66-83(ハイブリッド/モザイク様iMAT)のいずれか1つを含み好ましくは前記配列から成り、好ましくは前記アミノ酸配列/iMAT分子が、配列番号:66、69、72、75、78、81のいずれか1つ、より好ましくは配列番号:66又は配列番号:75、或いは配列番号:67、70、73、76、79、82のいずれか1つ、より好ましくは配列番号:67又は配列番号:76、或いは配列番号:68、71、74、77、80、83、より好ましくは配列番号:68又は配列番号:77を含み好ましくは前記配列から成る、請求項からのいずれか1項記載のアミノ酸配列/iMAT分子。
【請求項7】
アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子であって、
(i)当該iMAT分子の細胞外空隙から細胞内部への移行を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第一のモジュールであって、好ましくは前記第一のモジュールが配列番号:1を含む、より好ましくは配列番号:1から成る、前記少なくとも1つの第一のモジュール、
(ii)当該iMAT分子の細胞小器官への種特異的細胞内標的誘導を可能にするアミノ酸配列である少なくとも1つの第二のモジュールであって、当該細胞小器官が、抗原のプロセッシング及び/又はMHC分子の抗原(好ましくはプロセッシングされた抗原)ローディングに関与し、好ましくは前記第二のモジュールが配列番号:4又は5を含む、より好ましくは配列番号:4又は5から成る、前記少なくとも1つの第二のモジュール、
(iii)配列番号:7、8、9、10、11、12、84、85、86、87及び88から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せの少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列であり、iMAT分子によって調節される免疫応答の特異性を決定する、抗原モジュールとして少なくとも1つの第三のモジュール、
を含み、
少なくとも当該抗原モジュールにおいて、少なくとも1つのシステイン残基が異なるアミノ酸残基(好ましくはセリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、メチオニン、及び/又はアスパラギン酸)で置換されていることを特徴とする、前記アミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子。
【請求項8】
抗原モジュールが、配列番号:10、11、84、85、86、87及び88から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せ(ハイブリッド1)の少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列であるか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せ(ハイブリッド2)の少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列であるか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:7、8、10及び11から成る群から選択される2つ以上の抗原の任意の組合せ(ハイブリッド3)の少なくとも1つの完全な又は部分的アミノ酸配列、好ましくはエピトープに由来するアミノ酸配列である、請求項に記載のアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子。
【請求項9】
抗原モジュールが、配列番号:84に由来する骨格を土台とするアミノ酸配列であり、前記骨格配列中に埋め込まれた配列番号:91-96のペプチドの1つ以上の任意の組合せを含むか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:97-102のペプチドの2つ以上の任意の組合せに由来するアミノ酸配列であるか、又は当該抗原モジュールが、配列番号:97、配列番号:98、配列番号:101及び配列番号:102のペプチドの2つ以上の任意の組合せに由来するアミノ酸配列である、請求項又は記載のアミノ酸配列/改良MAT(iMAT)分子。
【請求項10】
配列番号:24から83のいずれか1つ、好ましくは配列番号:36(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:37(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:38(ネコDer f15 iMAT分子)、配列番号:57(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:58(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:59(イヌDer f15 iMAT分子)、配列番号:66(ネコハイブリッド1 iMAT)、配列番号:67(ネコハイブリッド1 iMAT)、配列番号:68(ネコハイブリッド1 iMAT)、配列番号:75(イヌハイブリッド1 iMAT)、配列番号:76(イヌハイブリッド1 iMAT)及び/又は配列番号:77(イヌハイブリッド1 iMAT)を含む、好ましくは前記配列から成るアミノ酸配列。
【請求項11】
請求項又は10に項記載のiMAT分子又はアミノ酸配列を含む、ワクチン又は免疫原性組成物又は医薬組成物。
【請求項12】
請求項から10のいずれか1項記載のiMAT分子又はアミノ酸配列をコードする核酸。
【請求項13】
請求項12記載の核酸の少なくとも1つを含むベクター。
【請求項14】
請求項12記載の核酸の少なくとも1つ及び/又は請求項13に記載のベクターの少なくとも1つを含む、初代細胞又は細胞株。
【外国語明細書】