(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094538
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】レール締結用ボルト緩み止めユニット
(51)【国際特許分類】
E01B 9/12 20060101AFI20220620BHJP
F16B 39/08 20060101ALI20220620BHJP
F16B 39/10 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
E01B9/12
F16B39/08
F16B39/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207484
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000216047
【氏名又は名称】鉄道軌材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 榮一
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボルトキャップと固定カバーとの相対位置を目視しながらボルトキャップに対して固定カバーを簡便に嵌挿しつつ締結用六角ボルトの緩みを抑制するレール締結用ボルト緩み止めユニットを提供する。
【解決手段】ボルトキャップ110が、締結ボルトFf1に形成された6つのボルト角部Ff1aと嵌合するキャップ内周側で等間隔に設けた12個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側で等間隔に設けた45個の係合突起部とを有し、固定カバー120が、ボルトキャップ110の係合突起部に係合する係合突起部の個数と同数の係合縦溝部を有し、ボルト嵌合用縦溝部の溝底位置を示すキャップ側識別印が、ボルト嵌合用縦溝部毎の近傍にそれぞれ形成され、隣接するキャップ側識別印が、異なった識別印であり、係合縦溝部の溝底位置を示すカバー側溝底識別印が、係合縦溝部の近傍に形成されている。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールをレール支承体に締結用六角ボルトで板バネクリップを介して固定するレール締結装置に用いて前記締結用六角ボルトに嵌合する環状のボルトキャップと該ボルトキャップを嵌挿して前記レールの長手方向で前記板バネクリップに係合する固定カバーとを備えたレール締結用ボルト緩み止めユニットであって、
前記ボルトキャップが、前記締結用六角ボルトに形成された6つのボルト角部と嵌合するキャップ内周側で等間隔に設けた6n(n=1、2、3・・・)個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側で等間隔に設けて前記ボルト嵌合用縦溝部の個数より多い奇数個の係合突起部と、該係合突起部の下端に設けた抜け止めフランジ部とを有し、
前記固定カバーが、前記ボルトキャップの係合突起部に係合する前記係合突起部の個数と同数の係合縦溝部と、前記板バネクリップに挟持状態で弾性係合する一対の係合爪片とを有し、
前記ボルトキャップに設けたボルト嵌合用縦溝部の溝底位置を示すキャップ側識別印が、前記ボルトキャップの上面における前記ボルト嵌合用縦溝部毎の近傍にそれぞれ形成され、
隣接する前記キャップ側識別印が、異なった識別印であり、
前記固定カバーに設けた係合縦溝部の溝底位置を示すカバー側識別印が、前記固定カバーの上面における前記係合縦溝部の近傍に形成されていることを特徴とするレール締結用ボルト緩み止めユニット。
【請求項2】
前記ボルトキャップの係合突起部が、該ボルトキャップの抜け止めフランジ部の上面から上方に鉛直に伸びるストレート部分と、該ストレート部分の上端から前記ボルトキャップの上面の外端まで前記ボルトキャップの中心軸に向かって傾斜する傾斜部分とから形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレール締結用ボルト緩み止めユニット。
【請求項3】
前記ボルトキャップの係合突起部と前記固定カバーの係合縦溝部との間には緩み止め用係合隙間が形成され、
前記締結用六角ボルトのボルト角部と前記ボルトキャップのボルト嵌合用縦溝部との間には緩み止め用嵌合隙間が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のレール締結用ボルト緩み止めユニット。
【請求項4】
前記ボルトキャップのボルト嵌合用縦溝部が、前記締結用六角ボルトのボルト角部に対して前記締結用六角ボルトの回動方向に遊嵌され、
前記ボルトキャップの係合突起部が、前記固定カバーの係合縦溝部に対して前記締結用六角ボルトの回動方向に遊嵌され、
前記固定カバーに対して遊嵌された前記ボルトキャップの回動角度範囲が、前記締結用六角ボルトに対して遊嵌された前記ボルトキャップの回動角度範囲より大きいことを特徴とする請求項3に記載のレール締結用ボルト緩み止めユニット。
【請求項5】
前記ボルトキャップに設けたボルト嵌合用縦溝部の1個と前記係合突起部の1個とが、平面視において同じ角度位置に配置され、
前記固定カバーに設けた係合縦溝部のうちの1個と該係合縦溝部の溝底位置を示すカバー側識別印とが、平面視において前記レールと平行な仮想直線上にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレール締結用ボルト緩み止めユニット。
【請求項6】
前記ボルトキャップが、前記締結用六角ボルトの6つのボルト角部と嵌合するキャップ内周側の12個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側の45個の係合突起部とを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレール締結用ボルト緩み止めユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール締結用ボルト緩み止めユニットに関し、特に、レールをレール支承体に締結用六角ボルトで板バネクリップを介して固定するレール締結装置のレール締結用ボルト緩み止めユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
PCまくらぎのようなコンクリート製まくらぎを用いる鉄道軌道では、鉄道レールは、レールの底部上面に係合する板バネクリップとこの板バネクリップをPCまくらぎに固定する締結用六角ボルトとを少なくとも備えたレール締結装置によってPCまくらぎに締結されているが、レールを通過する列車の振動が板バネクリップを介して締結用六角ボルトに加わり、この締結用六角ボルトが回動して緩みを惹起してレールに対する締結力が徐々に低下する。
このため、締結用六角ボルトの回動による緩みを抑止するボルト緩み止め装置が、締結用六角ボルトのボルト頭部に装着されている。
【0003】
このようなボルト緩み止め装置の具体例としては、締結用六角ボルトに冠着される円柱状の中空キャップ(ボルトキャップ)とこの中空キャップに嵌合されるロックばね(固定カバー)とで構成されているものが知られている。
この中空キャップの内周面には、締結用六角ボルトのボルト頭部と冠着する偶数本の係止溝が形成され、中空キャップの外周面には、ロックばねの係合穴と嵌合する奇数本の係止溝が形成されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したようなボルト緩み止め装置において、ロックばねが中空キャップに対して嵌合できなかった場合に、中空キャップを締結用六角ボルトから一度取り外して、冠着向きを変更して、再度中空キャップを締結用六角ボルトに冠着することになる。
この際、作業者は、締結用六角ボルトに対する中空キャップの冠着向きを記憶しておく必要があり、中空キャップに対するロックばねの嵌合作業に多大な熟練技能が要求されるなど、ロックばね取扱い上の厄介な問題があり、締結用六角ボルトの完全な緩み止めができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、ボルトキャップと固定カバーとの相対位置を目視しながらボルトキャップに対して固定カバーを簡便に嵌挿しつつ締結用六角ボルトの緩みを抑制するレール締結用ボルト緩み止めユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、レールをレール支承体に締結用六角ボルトで板バネクリップを介して固定するレール締結装置に用いて前記締結用六角ボルトに嵌合する環状のボルトキャップと該ボルトキャップを嵌挿して前記レールの長手方向で前記板バネクリップに係合する固定カバーとを備えた、レール締結用ボルト緩み止めユニットであって、前記ボルトキャップが、前記締結用六角ボルトに形成された6つのボルト角部と嵌合するキャップ内周側で等間隔に設けた6n(n=1、2、3・・・)個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側で等間隔に設けて前記ボルト嵌合用縦溝部の個数より多い奇数個の係合突起部と、該係合突起部の下端に設けた抜け止めフランジ部とを有し、前記固定カバーが、前記ボルトキャップの係合突起部に係合する前記係合突起部の個数と同数の係合縦溝部と、前記板バネクリップに挟持状態で弾性係合する一対の係合爪片とを有し、前記ボルトキャップに設けたボルト嵌合用縦溝部の溝底位置を示すキャップ側識別印が、前記ボルトキャップの上面における前記ボルト嵌合用縦溝部毎の近傍にそれぞれ形成され、隣接する前記キャップ側識別印が、異なった識別印であり、前記固定カバーに設けた係合縦溝部の溝底位置を示すカバー側識別印が、前記固定カバーの上面における前記係合縦溝部の近傍に形成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたレール締結用ボルト緩み止めユニットの構成に加えて、前記ボルトキャップの係合突起部が、該ボルトキャップの抜け止めフランジ部の上面から上方に鉛直に伸びるストレート部分と、該ストレート部分の上端から前記ボルトキャップの上面の外端まで前記ボルトキャップの中心軸に向かって傾斜する傾斜部分とから形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載されたレール締結用ボルト緩み止めユニットの構成に加えて、前記ボルトキャップの係合突起部と前記固定カバーの係合縦溝部との間には緩み止め用係合隙間が形成され、前記締結用六角ボルトのボルト角部と前記ボルトキャップのボルト嵌合用縦溝部との間には緩み止め用嵌合隙間が形成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載されたレール締結用ボルト緩み止めユニットの構成に加えて、前記ボルトキャップのボルト嵌合用縦溝部が、前記締結用六角ボルトのボルト角部に対して前記締結用六角ボルトの回動方向に遊嵌され、前記ボルトキャップの係合突起部が、前記固定カバーの係合縦溝部に対して前記締結用六角ボルトの回動方向に遊嵌され、前記固定カバーに対して遊嵌された前記ボルトキャップの回動角度範囲が、前記締結用六角ボルトに対して遊嵌された前記ボルトキャップの回動角度範囲より大きいことにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載されたレール締結用ボルト緩み止めユニットの構成に加えて、前記ボルトキャップに設けたボルト嵌合用縦溝部の1個と前記係合突起部の1個とが、平面視において同じ角度位置に配置され、前記固定カバーに設けた係合縦溝部のうちの1個と該係合縦溝部の溝底位置を示すカバー側識別印とが、平面視において前記レールと平行な仮想直線上にそれぞれ配置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載されたレール締結用ボルト緩み止めユニットの構成に加えて、前記ボルトキャップが、前記締結用六角ボルトの6つのボルト角部と嵌合するキャップ内周側の12個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側の45個の係合突起部とを有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明は、ボルトキャップが、締結用六角ボルトに形成された6つのボルト角部と嵌合するキャップ内周側に設けた6n(n=1、2、3・・・)個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側に設けてボルト嵌合用縦溝部の個数より多い奇数個の係合突起部とを有していることにより、締結用六角ボルトに対してボルトキャップを嵌め変えて締結用六角ボルトに対するボルトキャップの向きを変えることで、固定カバーの係合縦溝部に対するボルトキャップの係合突起部の位置が変化するため、締結用六角ボルトを締めたり緩めたりすることなく、ボルトキャップに対して固定カバーをスムーズに嵌挿して締結用六角ボルトの緩みを抑制することができる。
また、ボルトキャップに設けたボルト嵌合用縦溝部の溝底位置を示すキャップ側識別印が、ボルトキャップの上面におけるボルト嵌合用縦溝部毎の近傍に形成され、隣接するキャップ側識別印が、異なった識別印であり、固定カバーに設けた係合縦溝部の位置を示すカバー側識別印が、固定カバーの上面における係合縦溝部の近傍に形成されていることにより、ボルトキャップと固定カバーとを係合させようとしたときにボルトキャップの係合突起部と固定カバーの係合縦溝部とが係合しない状態であったとしても、締結用六角ボルトに対してボルトキャップを回動させた際に、固定カバーのカバー側識別印と正対するボルトキャップのキャップ側識別印が変化するため、締結用六角ボルトとボルトキャップとの相対位置の変化及びボルトキャップと固定カバーとの相対位置を作業者が容易に目視でき、ボルトキャップに対して固定カバーをスムーズに嵌挿することができる。
【0014】
請求項2に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットによれば、請求項1に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットが奏する効果に加えて、ボルトキャップの係合突起部が、このボルトキャップの抜け止めフランジ部の上面から上方に鉛直に伸びるストレート部分と、このストレート部分の上端からボルトキャップの上面の外端までボルトキャップの中心軸に向かって傾斜する傾斜部分とから形成されていることにより、締結用六角ボルトにボルトキャップを嵌合した状態で固定カバーを板バネクリップに係合させる際に、係合突起部の傾斜部分が固定カバーの係合縦溝部を誘導するとともにボルトキャップの抜け止めフランジ部が固定カバーに対して抜け止め作用を発揮するため、固定カバーを板バネクリップに係合させる際に、ボルトキャップに対して固定カバーをスムーズに嵌挿することができるとともにボルトキャップを固定カバーに対して確実に抜け止めすることができる。
【0015】
請求項3に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットによれば、請求項1または請求項2に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットが奏する効果に加えて、ボルトキャップの係合突起部と固定カバーの係合縦溝部との間には緩み止め用係合隙間が形成され、締結用六角ボルトのボルト角部とボルトキャップのボルト嵌合用縦溝部との間には緩み止め用嵌合隙間が形成されていることにより、締結用六角ボルトおよび固定カバーに対してボルトキャップが揺動自在となるため、締結用六角ボルトを締めたり緩めたりすることなく、ボルトキャップに対して固定カバーをスムーズに嵌挿して締結用六角ボルトの緩みを抑制することができる。
【0016】
請求項4に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットによれば、請求項3に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットが奏する効果に加えて、固定カバーに対して遊嵌されたボルトキャップの回動角度範囲が、締結用六角ボルトに対して遊嵌されたボルトキャップの回動角度範囲より大きいことにより、締結用六角ボルトに対するボルトキャップの回動角度範囲が、固定カバーに対するボルトキャップの回動角度範囲の範囲内であるため、締結用六角ボルトに対してボルトキャップがガタついていたとしても、ボルトキャップに対して固定カバーを確実に嵌挿することができる。
【0017】
請求項5に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットによれば、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットが奏する効果に加えて、ボルトキャップに設けたボルト嵌合用縦溝部の1個と係合突起部の1個とが、平面視において同じ角度位置に配置され、固定カバーに設けた係合縦溝部のうちの1個とこの係合縦溝部の溝底位置を示すカバー側識別印とが、平面視においてレールと平行な仮想直線上にそれぞれ配置されていることにより、板バネクリップの短手方向が仮想直線と平行になり、板バネクリップの短手方向には障害物が少ないため、作業者が固定カバーのカバー側識別印とボルトキャップのキャップ側識別印との位置関係を容易に把握することができる。
【0018】
請求項6に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットによれば、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に係る発明のレール締結用ボルト緩み止めユニットが奏する効果に加えて、ボルトキャップが、締結用六角ボルトの6つのボルト角部と嵌合するキャップ内周側の12個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側の45個の係合突起部とを有していることにより、締結用六角ボルトに対してボルトキャップを回動させて締結用六角ボルトに対するボルトキャップの向きを変えることで、固定カバーの係合縦溝部に対するボルトキャップの係合突起部の位置が変化するため、締結用六角ボルトを締めたり緩めたりすることなく、ボルトキャップに対して固定カバーをスムーズに嵌挿して締結用六角ボルトの緩みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニットが組み込まれたレール締結装置の設置形態を示す斜視図。
【
図2A】
図1に示すレール締結用ボルト緩み止めユニットを示す斜視図。
【
図2B】
図1に示すレール締結用ボルト緩み止めユニットの斜視分解図。
【
図5】
図1のV方向から見たレール締結用ボルト緩み止めユニットの平面図。
【
図6A】ボルトキャップを固定カバーに嵌挿できない状態を示す平面図。
【
図6B】ボルトキャップを固定カバーに嵌挿できる状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、レールをレール支承体に締結用六角ボルトで板バネクリップを介して固定するレール締結装置に用いて締結用六角ボルトに嵌合する環状のボルトキャップとこのボルトキャップを嵌挿してレールの長手方向で板バネクリップに係合する固定カバーとを備えたレール締結用ボルト緩み止めユニットであって、ボルトキャップが、締結用六角ボルトに形成された6つのボルト角部と嵌合するキャップ内周側で等間隔に設けた6n(n=1、2、3・・・)個のボルト嵌合用縦溝部と、キャップ外周側で等間隔に設けてボルト嵌合用縦溝部の個数より多い奇数個の係合突起部と、この係合突起部の下端に設けた抜け止めフランジ部とを有し、固定カバーが、ボルトキャップの係合突起部に係合する係合突起部の個数と同数の係合縦溝部と、板バネクリップに挟持状態で弾性係合する一対の係合爪片とを有し、ボルトキャップに設けたボルト嵌合用縦溝部の溝底位置を示すキャップ側識別印が、ボルトキャップの上面におけるボルト嵌合用縦溝部毎の近傍にそれぞれ形成され、隣接するキャップ側識別印が、異なった識別印であり、固定カバーに設けた係合縦溝部の溝底位置を示すカバー側識別印が、固定カバーの上面における係合縦溝部の近傍に形成され、ボルトキャップと固定カバーとの相対位置を目視しながらボルトキャップに対して固定カバーを簡便に嵌挿しつつ締結用六角ボルトの緩みを抑制するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【実施例0021】
以下、
図1乃至
図6Bに基づいて、本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット100を説明する。
【0022】
<1.レール締結用ボルト緩み止めユニットの周辺構造>
まず、
図1乃至
図2Bに基づいて、本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット100の周辺構造について説明する。
ここで、
図1は、本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニットが組み込まれたレール締結装置の設置形態を示す斜視図であり、
図2Aは、
図1に示すレール締結用ボルト緩み止めユニットを示す斜視図であり、
図2Bは、
図1に示すレール締結用ボルト緩み止めユニットの斜視分解図である。
【0023】
すなわち、本実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100は、
図1に示すように、レール締結装置Fに組み込まれている。
このレール締結装置Fは、
図1および
図2Bに示すように、路盤G上に設置されたレール支承体であるまくらぎSにレールRを固定するものである。
また、このレール締結装置Fは、
図2Bに示すように、レールRの底部上面をレール設置面SAに向けてレールRの両側でそれぞれ押圧する一対の板バネクリップFcと、この板バネクリップFcをまくらぎSに固定するクリップ固定手段Ffと、まくらぎS上に載置されて板バネクリップFcを接触保持するバネ受台Fpとを備えている。
【0024】
そして、クリップ固定手段Ffは、板バネクリップFcの上部に形成される長孔(不図示)に挿通される締結ボルト(締結用六角ボルト)Ff1と、この締結ボルトFf1が挿通され締結ボルトFf1と板バネクリップFcとの間に介在する座金Ff2とから構成されている。
また、締結ボルトFf1は、まくらぎSに設けた雌ねじ孔(不図示)に螺着自在であり、締結ボルトFf1をこの雌ねじ孔に螺着させることで板バネクリップFcがまくらぎSに固定される。
さらに、この締結ボルトFf1は、平面視において正六角形であり、
図2に示すようなボルト角部Ff1aを6つ有している。
【0025】
以上の説明で明らかなように、レール締結装置Fは、レールRをまくらぎSに締結ボルトFf1で板バネクリップFcを介して固定するものである。
したがって、
図1および
図2Aに示す本実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100は、このレール締結装置Fの締結ボルトFf1の緩み止めを行うためのものである。
【0026】
<2.本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット>
次に、
図2A乃至
図5に基づいて、本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット100について説明する。
図3Aは、
図2Bに示すボルトキャップの平面図であり、
図3Bは、
図3AのIIIB-IIIB断面図であり、
図4Aは、
図2Bに示す固定カバーの平面図であり、
図4Bは、
図4AのIVB-IVB断面図であり、
図5は、
図1のV方向から見たレール締結用ボルト緩み止めユニットの平面図である。
【0027】
本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット100は、
図2Aおよび
図2Bに示すように、締結ボルトFf1に嵌合する環状のボルトキャップ110と、このボルトキャップ110を嵌挿してレールRの長手方向で板バネクリップFcに係合する固定カバー120とから構成されている。
【0028】
<2.1.ボルトキャップ>
図3Aおよび
図3Bに基づいて、ボルトキャップ110について説明する。
まず、ボルトキャップ110は、キャップ内周側で等間隔に設けられた12個のボルト嵌合用縦溝部111と、キャップ外周側で等間隔に設けられた45個の係合突起部112と、この係合突起部112の下端に設けられてボルトキャップの110の底面を形成する抜け止めフランジ部113とを有している。
【0029】
ここで、上述したボルト嵌合用縦溝部111は、締結ボルトFf1のボルト角部Ff1aと嵌合し、
図3Aに示すように、ボルトキャップ110に12個形成されている。
また、ボルト嵌合用縦溝部111は、
図3Aに示すように、平面視でV字状となっており、
図3Bに示すように、鉛直方向(上下方向)に形成されている。
【0030】
他方、係合突起部112は、後述する固定カバー120の係合縦溝部122と係合し、
図3Aに示すように、ボルトキャップ110に45個同形状で形成されている。
また、係合突起部112は、
図3Aに示すように、平面視で台形状となっている。
そして、係合突起部112は、
図3Bに示すように、ボルトキャップ110の抜け止めフランジ部113の上面から上方に鉛直に伸びるストレート部分112aと、このストレート部分112aの上端からボルトキャップの上面114の外端114aまでボルトキャップ110の中心軸Cに向かって傾斜する傾斜部分112bとから形成されている。
【0031】
そして、ストレート部分112aは、平面視で台形状であり、鉛直方向において、同一形状となっている。
傾斜部分112bも、平面視で台形状であるが、ストレート部分112aとは異なり、鉛直上方に向かって相似縮小している。
【0032】
抜け止めフランジ部113は、円環状であり、
図3Aに示すように、係合突起部112のストレート部分112aと当接するボルトキャップ110の突起外接仮想円POの直径よりも大径となっている。
【0033】
さらに、ボルトキャップ110の上面114には、キャップ側識別印114bが形成されている。
このキャップ側識別印114bは、ボルト嵌合用縦溝部111の溝底111aを示すものであり、ボルト嵌合用縦溝部111毎の溝底111a近傍にそれぞれ形成されている。
本実施例において、キャップ側識別印114bは、「A」、「X」、「V」、「T」の順番で、ボルト嵌合用縦溝部111に形成されている。
すなわち、隣接するキャップ側識別印114bは、異なった識別印となっている。
【0034】
このように形成されたボルトキャップ110において、ボルト嵌合用縦溝部111の1個と係合突起部112の1個とが、
図3Aに示すように、平面視において同じ角度位置Yに配置されている。
具体的には、
図3Aに示すように、「A」のキャップ側識別印114bが形成されたボルト嵌合用縦溝部111の溝底111aと平面視における係合突起部112の幅方向の中心とが、同一仮想直線L1上に位置している。
【0035】
<2.2.固定カバー>
次に、
図4Aおよび
図4Bに基づいて、固定カバー120について説明する。
固定カバー120は、
図4Aに示すように、矩形状の部材であり、ボルトキャップ110を嵌挿する開口121が中心に形成されている。
ここで、この開口121の中心と固定カバー120の中心とは、平面視において一致している。
また、固定カバー120は、開口121、すなわち、カバー内周側に等間隔に設けられた45個の係合縦溝部122と、カバー外周側に設けられた1対の係合爪片123とを有している。
【0036】
そして、係合縦溝部122は、ボルトキャップ110の係合突起部112に係合し、
図4Aに示すように、45個、すなわち、ボルトキャップ110の係合突起部112の個数(45個)と同数、および、同形状で形成されている。
したがって、固定カバー120は、左右方向(前後方向(レールRの長手方向)と直交する方向)に対称となっている。
【0037】
さらに、前述した係合縦溝部122の溝底122aは、
図4Aに示すように、円弧状になっており、すべての係合縦溝部122の溝底122aは、1つの仮想円上に配置されている。
【0038】
また、係合爪片123は、
図4Aおよび
図4Bに示すように、開口121を中心として前後方向で対向する位置に2つ設けられている。
この一対の係合爪片123は、
図4Bに示すように、上下方向(開口121の開口方向)に設けられており、板バネクリップFcに挟持状態で弾性係合自在となっている。
【0039】
さらに、固定カバー120の上面124には、「A」というカバー側溝底識別印(カバー側識別印)124a、および、「V」というカバー側頂点識別印124bが形成されている。
【0040】
そして、前述したカバー側溝底識別印124aは、係合縦溝部122の溝底122aの位置を示すものであり、平面視において、係合縦溝部122の溝底122a近傍かつ前側の係合爪片123の近傍に形成されている。
より具体的には、固定カバー120に設けた係合縦溝部122のうちの1個と、この係合縦溝部122の溝底122a位置を示すカバー側溝底識別印124aとは、平面視においてレールRと平行な仮想直線L2上にそれぞれ配置されている。
【0041】
また、カバー側頂点識別印124bは、
図4Aに示すように、開口121を挟んで、カバー側溝底識別印124aと対向する位置(後側の係合爪片123の近傍)に形成されていると共に、ボルトキャップ110の隣り合う係合突起部112の間に形成される係合凹部115と係合する係合頂部125の頂点125a近傍に形成されている。
なお、係合頂部125の断面形状は、上下方向に同一形状であり、係合頂部125の先端は、
図4Aに示すように、平面視において丸みを帯びている。
【0042】
<2.3.ボルトキャップと固定カバーとの配置関係>
次に、
図5に基づいて、本実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100がレール締結装置Fに組み込まれている状態におけるボルトキャップ110と固定カバー120との配置関係について説明する。
【0043】
図5に示すように、本実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100がレール締結装置Fに組み込まれている状態において、ボルトキャップ110の係合突起部112と固定カバー120の係合縦溝部122との間には緩み止め用係合隙間C1が形成されている。
すなわち、ボルトキャップ110の係合突起部112は、固定カバー120の係合縦溝部122に対して締結ボルトFf1の回動方向Dに遊嵌されている。
【0044】
また、本実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100がレール締結装置Fに組み込まれている状態において、締結ボルトFf1のボルト角部Ff1aとボルトキャップ110のボルト嵌合用縦溝部111との間には、緩み止め用嵌合隙間C2が形成されている。
すなわち、ボルトキャップ110のボルト嵌合用縦溝部111は、締結ボルトFf1のボルト角部Ff1aに対して締結ボルトFf1の回動方向Dに遊嵌されている。
【0045】
このように構成された本実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100において、固定カバー120に対して遊嵌されたボルトキャップ110の回動角度範囲は、締結ボルトFf1に対して遊嵌されたボルトキャップ110の回動角度範囲より大きくなっている。
【0046】
<3.レール締結用ボルト緩み止めユニットの組み込み方法>
次に、
図6A乃至
図6Bに基づいて、本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット100をレール締結装置Fに組み込む方法について説明する。
図6Aは、ボルトキャップを固定カバーに嵌挿できない状態を示す平面図であり、
図6Bは、ボルトキャップを固定カバーに嵌挿できる状態を示す平面図である。
【0047】
締結ボルトFf1にボルトキャップ110を嵌合した状態でボルトキャップ110を固定カバーに嵌挿しようとした際に、
図6Aに示すように、ボルトキャップ110の係合突起部112と固定カバー120の係合縦溝部122とが平面視において重ならず、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌挿できない場合がある。
この場合、ボルトキャップ110を締結ボルトFf1から外して、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bを
図6Aの状態から1つ変更する(「A」から「T」に)ようにボルトキャップ110を回転させて、締結ボルトFf1に対して嵌合し直す。
このとき、
図6Bに示すように、ボルトキャップ110の係合突起部112と固定カバー120の係合縦溝部122とが平面視において重なり、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌挿できるようになる。
【0048】
ここで、まくらぎSがPCまくらぎである場合、締結ボルトFf1と螺合するためにまくらぎSには雌ねじが形成された埋込栓(不図示)が埋め込まれている。
この埋込栓は、絶縁のためにナイロン等の合成樹脂製であることが多く、樹脂成型の都合上、埋込栓の雌ねじのピッチがJISで規定されるボルトのねじ山のピッチよりも間隔が広くなっている。
したがって、PCまくらぎに用いる締結ボルトでは、締結ボルトを締めたり緩めたりすると、軸力(すなわち、板バネクリップによるレールの締結力)が変動しやすい。
よって、PCまくらぎに使用する場合において、締結ボルトにレール締結用ボルト緩み止めユニットを組み込む場合、締結ボルト自体を回動させることは保線の都合上好ましくない。
そこで、本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット100を用いることにより、締結ボルトを回動させることなく、締結ボルトの緩み止めを実現することができる。
【0049】
なお、
図6Aおよび
図6Bで示した例は、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bを、
図6Aの状態から1つ変更(「A」から「T」に変更)した例であったが、締結ボルトFf1の締結度合いによっては、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bを1つ変更しても、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌挿できないこともある。
この場合、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bを、
図6Aの状態から2つ変更(「A」から「V」に変更)させてもよいし、固定カバー120の前後方向の向きを変えてもよい(この場合、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bを「A」から「V」に変更したのと同様の効果が得られる。)。
【0050】
すなわち、
図6Aの状態のように、ボルトキャップ110を僅かに左回転させれば、固定カバー120を嵌挿できると判断される場合は、キャップ側識別印114bの左隣りのキャップ側識別印を固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに近い位置になるように(
図6Aに示した例の場合は、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bが「A」から「T」となるように)ボルトキャップ110を締結ボルトFf1に対して嵌合し直せば、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌挿できるようになる。
また、逆にボルトキャップ110を僅かに右回転させれば、固定カバー120を嵌挿できると判断される場合は、キャップ側識別印114bの右隣りのキャップ側識別印を固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに近い位置になるように(
図6Aに示した例の場合は、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bが「A」から「X」となるように)ボルトキャップ110を締結ボルトFf1に対して嵌合し直せば、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌挿できるようになる。
更に、ボルトキャップ110を大幅に回転させると、固定カバー120を嵌挿できると判断される場合は、固定カバー120の前後方向を入れ替えることで、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに対するキャップ側識別印114bが2つ分変更される(すなわち、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aに最も近いボルトキャップ110のキャップ側識別印114bが「A」から「V」になる)ため、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌合し直せば、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌挿できるようになる。
【0051】
<4.レール締結用ボルト緩み止めユニット100が奏する効果>
以上説明した本発明の第1実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100によれば、ボルトキャップ110は、締結用六角ボルトである締結ボルトFf1の6つのボルト角部Ff1aと嵌合するキャップ内周側の12個のボルト嵌合用縦溝部111と、キャップ外周側の45個の係合突起部112とを有していることにより、締結ボルトFf1に対してボルトキャップ110を回動させるように嵌め変えて締結ボルトFf1に対するボルトキャップ110の向きを変えることで、固定カバー120の係合縦溝部122に対するボルトキャップ110の係合突起部112の位置が変化するため、締結ボルトFf1を締めたり緩めたりすることなく、ボルトキャップ110に対して固定カバー120をスムーズに嵌挿して締結ボルトFf1の緩みを抑制することができる。
また、ボルトキャップ110に設けたボルト嵌合用縦溝部111の溝底111aの位置を示すキャップ側識別印114bは、ボルトキャップ110の上面におけるボルト嵌合用縦溝部111毎の近傍に形成され、隣接するキャップ側識別印114bは、異なった識別印であり、固定カバー120に設けた係合縦溝部122の位置を示すカバー側識別印であるカバー側溝底識別印124aは、固定カバー120の上面における係合縦溝部122の近傍に形成されていることにより、ボルトキャップ110と固定カバー120とを係合させようとしたときにボルトキャップ110の係合突起部112と固定カバー120の係合縦溝部122とが係合しない状態であったとしても、締結ボルトFf1に対してボルトキャップ110を回動させた際に、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aと正対するボルトキャップ110のキャップ側識別印114bが変化するため、締結ボルトFf1とボルトキャップ110との相対位置の変化及びボルトキャップ110と固定カバー120との相対位置を作業者が容易に目視でき、ボルトキャップ110に対して固定カバー120をスムーズに嵌挿することができる。
すなわち、本実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100は、ボルトキャップ110にキャップ側識別印114bが形成され、固定カバー120にカバー側溝底識別印124aおよびカバー側頂点識別印124bが形成され、隣接するキャップ側識別印114bが、異なった識別印であるため、カバー側溝底識別印124aまたはカバー側頂点識別印124bを基準にして、ボルトキャップ110を締結ボルトFf1に対して角度を変えて嵌合させることで、締結ボルトFf1を締める、または、緩めることなく、固定カバー120をボルトキャップ110に嵌挿することができる。
【0052】
また、ボルトキャップ110の係合突起部112は、このボルトキャップ110の抜け止めフランジ部113の上面から上方に鉛直に伸びるストレート部分112aと、このストレート部分112aの上端からボルトキャップ110の上面の外端までボルトキャップ110の中心軸Cに向かって傾斜する傾斜部分112bとから形成されていることにより、締結ボルトFf1にボルトキャップ110を嵌合した状態で固定カバー120を板バネクリップFcに係合させる際に、係合突起部112の傾斜部分112bが固定カバー120の係合縦溝部122を誘導するとともにボルトキャップ110の抜け止めフランジ部113が固定カバー120に対して抜け止め作用を発揮するため、固定カバー120を板バネクリップFcに係合させる際に、ボルトキャップ110に対して固定カバー120をスムーズに嵌挿するとともにボルトキャップ110を固定カバー120に対して確実に抜け止めすることができる。
【0053】
また、ボルトキャップ110の係合突起部112と固定カバー120の係合縦溝部122との間には緩み止め用係合隙間C1が形成され、締結ボルトFf1のボルト角部Ff1aとボルトキャップ110のボルト嵌合用縦溝部111との間には緩み止め用嵌合隙間C2が形成されていることにより、締結ボルトFf1および固定カバー120に対してボルトキャップ110が揺動自在となるため、締結ボルトFf1を締めたり緩めたりすることなく、ボルトキャップ110に対して固定カバー120をスムーズに嵌挿して締結ボルトFf1の緩みを抑制することができる。
また、固定カバー120に対して遊嵌されたボルトキャップ110の回動角度範囲は、締結ボルトFf1に対して遊嵌されたボルトキャップ110の回動角度範囲より大きいことにより、締結ボルトFf1に対するボルトキャップ110の回動角度範囲が、固定カバー120に対するボルトキャップ110の回動角度範囲の範囲内であるため、締結ボルトFf1に対してボルトキャップ110がガタついていたとしても、ボルトキャップ110に対して固定カバー120を確実に嵌挿することができる。
【0054】
また、ボルトキャップ110に設けたボルト嵌合用縦溝部111の1個と係合突起部112の1個とが、平面視において同じ角度位置Yに配置され、固定カバー120に設けた係合縦溝部122のうちの1個とこの係合縦溝部122の溝底122a位置を示すカバー側溝底識別印124aとが、平面視においてレールRと平行な仮想直線L2上にそれぞれ配置されていることにより、板バネクリップFcの短手方向が仮想直線L2と平行になり、板バネクリップFcの短手方向には障害物が少ないため、作業者が固定カバー120のカバー側溝底識別印124aとボルトキャップ110のキャップ側識別印114bとの位置関係を容易に把握することができる。
【0055】
<変形例>
以上、本発明の第1実施例であるレール締結用ボルト緩み止めユニット100について説明したが、本発明は、上述した第1実施例に限定されるものではない。
【0056】
例えば、上述した第1実施例のレール締結用ボルト緩み止めユニット100においてボルト嵌合用縦溝部111は、ボルトキャップ110に12個形成されていたが、ボルトキャップに形成されるボルト嵌合用縦溝部の個数は、12個に限定されるものでなく、ボルト嵌合用縦溝部の個数は、6n(n=1、2、3・・・)個であれば、如何なる個数であってもよい。
【0057】
例えば、上述した第1実施例においてボルトキャップ110の係合突起部112は、ボルトキャップ110に45個形成されていたが、ボルトキャップに形成される係合突起部の個数は、45個に限定されるものでない。
具体的には、係合突起部の個数は、ボルト嵌合用縦溝部の個数より多く、奇数個であれば、いかなる個数であってもよい。
【0058】
例えば、ボルトキャップ110に形成されるキャップ側識別印114bは、隣接するキャップ側識別印が異なっていれば、如何なる形状(文字、図形等)であってもよい。
また、ボルトキャップ110へのキャップ側識別印114bの形成方法は、刻印、印刷、レーザー加工等、いかなる方法であってもよい。
【0059】
例えば、上述した第1実施例において固定カバー120の係合縦溝部122の溝底122aは、円弧状であり、すべての係合縦溝部122の溝底122aが1つの仮想円上に配置されていたが、係合縦溝部の溝底の形状は、これに限定されるものではなく、固定カバー120の係合頂部125のような平面視で丸みを帯びた形状であってもよい。
【0060】
例えば、固定カバー120に形成されるカバー側溝底識別印124aおよびカバー側頂点識別印124bは、互いに形状が異なっていれば、如何なる形状(文字、図形等)であってもよい。
また、固定カバー120へのカバー側溝底識別印124aおよびカバー側頂点識別印124bの形成方法は、ボルトキャップ110のキャップ側識別印114bと同様に、刻印、印刷、レーザー加工等、いかなる方法であってもよい。
【0061】
例えば、上述した第1実施例では、固定カバー120のカバー側溝底識別印124aを基準にしてボルトキャップ110を回動させていたが、固定カバー120のカバー側頂点識別印124bを基準にしてボルトキャップ110を回動させてもよい。