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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022094558
(43)【公開日】2022-06-27
(54)【発明の名称】内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20220620BHJP
   F02M 26/10 20160101ALI20220620BHJP
   F02M 26/47 20160101ALI20220620BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
F02B37/24
F02M26/10 311
F02M26/47 B
F02B37/00 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020207510
(22)【出願日】2020-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池貝 潤
【テーマコード(参考)】
3G005
3G062
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA15
3G005FA04
3G005FA06
3G005FA35
3G005GA04
3G005GB81
3G005GD01
3G005GE08
3G005HA12
3G005JA06
3G005JA24
3G005JA26
3G005JA28
3G062AA05
3G062EA10
3G062ED08
3G062FA05
3G062GA23
(57)【要約】
【課題】EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を、過給域及び無過給域での定常状態に加えて過渡状態でも保障し、NOx発生量をより低減させることができる、内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】可変ノズルを備えたターボ過給機とEGRシステムとを有し、制御装置は、目標過給圧を算出する目標過給圧算出部と、過給圧が目標過給圧に近づくように閉度関連量を求める目標過給圧閉度関連量算出部と、目標EGR前後差圧を算出する目標EGR前後差圧算出部と、EGRシステムの前後差圧が目標EGR前後差圧に近づくように閉度関連量を求める目標差圧保障閉度関連量算出部と、目標過給圧閉度関連量と目標差圧保障閉度関連量の大きい方を最終目標閉度関連量として選択する閉度関連量選択部と、可変ノズルの閉度関連量が最終目標閉度関連量に近づくように可変ノズルの閉度を制御する可変ノズル制御量出力部とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ノズルを備えたターボ過給機と排気ガスの一部を排気系から吸気系へ再循環させるEGRシステムとを有する内燃機関システムを制御する内燃機関の制御装置であって、
前記可変ノズルは、排気管から前記ターボ過給機のタービンへ排気ガスを導く流路の閉度に関連する閉度関連量を調整可能であり、
前記制御装置には、前記閉度関連量に対するEGR前後差圧に関する特性が設定された閉度関連量・EGR前後差圧特性が、運転状態に応じて複数記憶されており、
前記制御装置は、
前記内燃機関の前記運転状態を検出可能であり、
前記運転状態に基づいて目標過給圧を算出する、目標過給圧算出部と、
過給圧が、前記目標過給圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた前記閉度関連量である目標過給圧閉度関連量を算出する、目標過給圧閉度関連量算出部と、
前記運転状態に基づいて排気ガスを再循環させるために必要となる前記EGRシステムの前後差圧である目標EGR前後差圧を算出する、目標EGR前後差圧算出部と、
前記運転状態に応じて抽出した前記閉度関連量・EGR前後差圧特性と前記目標EGR前後差圧とに基づいて、前記EGRシステムの前後差圧が、前記目標EGR前後差圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた前記閉度関連量である目標差圧保障閉度関連量を算出する、目標差圧保障閉度関連量算出部と、
前記目標過給圧閉度関連量と前記目標差圧保障閉度関連量との大きいほうを最終目標閉度関連量として選択する閉度関連量選択部と、
前記可変ノズルの前記閉度関連量が、前記最終目標閉度関連量に近づくようにフィードバック制御にて前記可変ノズルを制御する、可変ノズル制御量出力部と、
を有する、
内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記EGRシステムは、前記排気系から前記吸気系へと接続されたEGR流路を介して排気ガスの一部を前記排気系から前記吸気系へ再循環させており、
前記制御装置には、
EGRガス流量に対する前記EGR流路の圧力損失が設定されたEGRガス流量・圧力損失特性が記憶されており、
前記制御装置は、
前記目標EGR前後差圧算出部にて、前記運転状態に基づいて求めたEGRガス流量と、前記EGRガス流量・圧力損失特性に基づいて算出した圧力損失以上の圧力を前記目標EGR前後差圧に設定する、
内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記制御装置には、
前記目標EGR前後差圧の値として所定値が記憶されており、
前記制御装置は、
前記目標EGR前後差圧算出部にて、前記所定値以上の圧力を前記目標EGR前後差圧に設定する、
内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記制御装置には、
前記内燃機関の前記運転状態に対するEGR前後差圧が設定された運転状態・EGR前後差圧特性が記憶されており、
前記制御装置は、
前記目標EGR前後差圧算出部にて、前記運転状態と、前記運転状態・EGR前後差圧特性に基づいて算出したEGR前後差圧以上の圧力を前記目標EGR前後差圧に設定する、
内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記目標差圧保障閉度関連量算出部にて、前記EGRシステムの前後差圧が前記目標EGR前後差圧に近づくようにフィードバック制御にて前記目標差圧保障閉度関連量を求める際、前記可変ノズルの閉度が大きくなる側へフィードバック制御して求める、
内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変ノズルを備えたターボ過給機と、排気ガスの一部を排気系から吸気系へ再循環させるEGRシステムとを有する内燃機関システムを制御する、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両は、排気ガス中のNOxをより低減するために、排気ガスの一部を吸気系へ再循環し、燃焼温度を低下させてNOx発生量を低減させるEGRシステムを搭載している。一般的なEGRシステムは、排気マニホルドと吸気マニホルドを連通するEGR配管を有し、EGR配管に設けたEGR弁を用いてEGR配管の開度を調整してEGRガス流量を調整することで、排気ガスの一部を吸気系へ再循環させている。
【0003】
過給機を有していない自然吸気の内燃機関では、吸気マニホルド内の圧力は大気圧よりも低い負圧であり、排気マニホルド内の圧力は大気圧よりも高い正圧であるので、EGRガスは、EGR配管内を排気マニホルドの側から吸気マニホルドの側へと問題なく流れる。しかし、過給機を有する内燃機関では、吸気マニホルド内の圧力が大気圧よりも高い正圧となる場合があるので、EGRガスが排気マニホルドの側から吸気マニホルドの側へと流れない場合がある。EGRシステムの制御性を担保させるためには、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGR前後差圧(排気マニホルド内圧力と吸気マニホルド内圧力の圧力差)が必要である。そしてEGR前後差圧を担保させるためには、ターボ過給機の可変ノズルの閉度を適切な閉度に調整する必要がある(可変ノズルの閉度を大きく(開度を小さく)するほど、排気マニホルド内の圧力が上昇する)。
【0004】
例えば特許文献1に記載のターボチャージャの制御装置では、可変ノズルの開度(閉度)の変化に対して過給圧がほとんど変化しない無過給域(主に、アイドル回転数などの低回転・低負荷の領域)において、EGRの制御性を担保可能となるように可変ノズルの開度(閉度)を適切に調整している。これにより、内燃機関の無過給域において、EGRの制御性を担保している(EGRガスを再循環可能な一定以上のEGR前後差圧を保障している)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-157798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば図9は、横軸を時間、縦軸を内燃機関の回転数とした運転モードの一例を示している。この例では、時間T01にて内燃機関を始動してから、時間T14にて内燃機関を停止するまでの回転数の変化(例えば、走行と一時停止)の例を示している。そして図9中において運転状態Bはアイドリング回転数での定常状態(無過給域の定常状態)を示し、運転状態Aはアイドリング回転数よりも高い回転数での定常状態(過給域の定常状態)を示し、運転状態Cは回転数(及び過給圧)が変動している過渡状態(過給域の過渡状態及び無過給域の過渡状態)を示している。従来は、図9中の運転状態Aの場合のみ、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を保障していた。これに対して特許文献1に記載のターボチャージャの制御装置では、運転状態Aに加えて運転状態Bの場合も、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を保障できるようにしているが、運転状態Cの場合(過渡状態)については、保障できていない。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を、過給域及び無過給域での定常状態に加えて過渡状態でも保障し、NOx発生量をより低減させることができる、内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、可変ノズルを備えたターボ過給機と排気ガスの一部を排気系から吸気系へ再循環させるEGRシステムとを有する内燃機関システムを制御する内燃機関の制御装置である。前記可変ノズルは、排気管から前記ターボ過給機のタービンへ排気ガスを導く流路の閉度に関連する閉度関連量を調整可能であり、前記制御装置には、前記閉度関連量に対するEGR前後差圧に関する特性が設定された閉度関連量・EGR前後差圧特性が、運転状態に応じて複数記憶されている。そして前記制御装置は、前記内燃機関の前記運転状態を検出可能であり、前記運転状態に基づいて目標過給圧を算出する、目標過給圧算出部と、過給圧が、前記目標過給圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた前記閉度関連量である目標過給圧閉度関連量を算出する、目標過給圧閉度関連量算出部と、前記運転状態に基づいて排気ガスを再循環させるために必要となる前記EGRシステムの前後差圧である目標EGR前後差圧を算出する、目標EGR前後差圧算出部と、前記運転状態に応じて抽出した前記閉度関連量・EGR前後差圧特性と前記目標EGR前後差圧とに基づいて、前記EGRシステムの前後差圧が、前記目標EGR前後差圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた前記閉度関連量である目標差圧保障閉度関連量を算出する、目標差圧保障閉度関連量算出部と、前記目標過給圧閉度関連量と前記目標差圧保障閉度関連量との大きいほうを最終目標閉度関連量として選択する閉度関連量選択部と、前記可変ノズルの前記閉度関連量が、前記最終目標閉度関連量に近づくようにフィードバック制御にて前記可変ノズルを制御する、可変ノズル制御量出力部と、を有する、内燃機関の制御装置である。
【0009】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の制御装置であって、前記EGRシステムは、前記排気系から前記吸気系へと接続されたEGR流路を介して排気ガスの一部を前記排気系から前記吸気系へ再循環させており、前記制御装置には、EGRガス流量に対する前記EGR流路の圧力損失が設定されたEGRガス流量・圧力損失特性が記憶されている。そして前記制御装置は、前記目標EGR前後差圧算出部にて、前記運転状態に基づいて求めたEGRガス流量と、前記EGRガス流量・圧力損失特性に基づいて算出した圧力損失以上の圧力を前記目標EGR前後差圧に設定する、内燃機関の制御装置である。
【0010】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の制御装置であって、前記制御装置には、前記目標EGR前後差圧の値として所定値が記憶されている。そして前記制御装置は、前記目標EGR前後差圧算出部にて、前記所定値以上の圧力を前記目標EGR前後差圧に設定する、内燃機関の制御装置である。
【0011】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明に係る内燃機関の制御装置であって、前記制御装置には、前記内燃機関の前記運転状態に対するEGR前後差圧が設定された運転状態・EGR前後差圧特性が記憶されている。そして前記制御装置は、前記目標EGR前後差圧算出部にて、前記運転状態と、前記運転状態・EGR前後差圧特性に基づいて算出したEGR前後差圧以上の圧力を前記目標EGR前後差圧に設定する、内燃機関の制御装置である。
【0012】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明~第4の発明のいずれか1つに係る内燃機関の制御装置であって、前記制御装置は、前記目標差圧保障閉度関連量算出部にて、前記EGRシステムの前後差圧が前記目標EGR前後差圧に近づくようにフィードバック制御にて前記目標差圧保障閉度関連量を求める際、前記可変ノズルの閉度が大きくなる側へフィードバック制御して求める、内燃機関の制御装置である。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、内燃機関の定常状態と過渡状態にかかわらず、過給圧が目標過給圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた目標過給圧閉度関連量と、EGRシステムの前後差圧が目標EGR前後差圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた目標差圧保障閉度関連量と、の大きいほうを最終目標閉度関連量として選択する。そして、可変ノズルの閉度関連量が、最終目標閉度関連量に近づくようにフィードバック制御にて可変ノズルの閉度を調整する。これにより、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を、過給域及び無過給域での定常状態に加えて過渡状態でも保障し、NOx発生量をより低減させることができる。
【0014】
第2の発明によれば、EGRガス流量に応じて目標EGR前後差圧を変更するので、より精度よく可変ノズルの閉度を調整することができる。
【0015】
第3の発明によれば、目標EGR前後差圧を所定値(固定値)とすることで、処理量及び処理時間が低減され、処理負荷が軽減される。
【0016】
第4の発明によれば、内燃機関の運転状態に応じて目標EGR前後差圧を変更するので、より精度よく可変ノズルの閉度を調整することができる。
【0017】
目標差圧保障閉度関連量を求める際、閉度が小さくなる側へのフィードバック制御にて求めてしまうと、目標過給圧へのフィードバック制御の応答が遅れる可能性があるので好ましくない。しかし第5の発明によれば、目標差圧保障閉度関連量を求める際、閉度が大きくなる側へのフィードバック制御にて求めるので、目標過給圧へのフィードバック制御の応答が遅れることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】内燃機関システム全体の概略構成の例を説明する図である。
図2】制御装置の処理の全体の概要を説明する制御ブロック図である。
図3図2に示す制御ブロック図に基づいた、制御装置の[全体処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図4図3に示すフローチャートの[第1目標ノズル閉度を算出]の詳細を説明するフローチャートである。
図5図3に示すフローチャートの[第2目標ノズル閉度を算出]の詳細を説明するフローチャートである。
図6】EGRガス流量・圧力損失特性の例を説明する図である。
図7】運転状態に応じた、閉度関連量・EGR前後差圧特性の例を説明する図である。
図8】目標過給圧の変動に対して、本実施の形態での実際の過給圧(実過給圧)の追従と、従来の実過給圧の追従の例と、本実施の形態での最終目標ノズル閉度と、従来の最終目標ノズル閉度の例を説明する図である。
図9】従来の制御にてEGRの制御性が担保される運転状態Aと、特許文献1の制御にてEGRの制御性が担保される運転状態A+運転状態Bと、本実施の形態にて説明した処理にてEGRの制御性が担保される運転状態A+運転状態B+運転状態Cの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[内燃機関システム1の概略構成の例(図1)]
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず図1を用いて、内燃機関システム1の概略構成の例について説明する。本実施の形態の説明では、内燃機関の例として、車両に搭載された内燃機関10(例えばディーゼルエンジン)を用いて説明する。
【0020】
以下、システム全体について、吸気側から排気側に向かって順に説明する。吸気管11Aの流入側には、エアクリーナ(図示省略)、吸気流量検出手段21(例えば、吸気流量センサ)が設けられている。吸気流量検出手段21は、内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また吸気流量検出手段21には、吸気温度検出手段28A(例えば、吸気温度センサ)、大気圧検出手段23(例えば、大気圧センサ)が設けられている。吸気温度検出手段28Aは、吸気流量検出手段21を通過する吸気の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。大気圧検出手段23は、周囲の大気圧に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0021】
吸気管11Aの流出側はコンプレッサ35の流入側に接続され、コンプレッサ35の流出側は吸気管11Bの流入側に接続されている。ターボ過給機30(過給機に相当)のコンプレッサ35は、排気ガスのエネルギーによって回転駆動されるタービン36にて回転駆動され、吸気管11Aから流入された吸気を吸気管11Bに圧送することで過給する。
【0022】
コンプレッサ35の上流側となる吸気管11Aには、コンプレッサ上流圧力検出手段24A(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ上流圧力検出手段24Aは、吸気管11A内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。コンプレッサ35の下流側となる吸気管11B(吸気管11Bにおけるコンプレッサ35とインタークーラ16との間の位置)には、コンプレッサ下流圧力検出手段24B(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ下流圧力検出手段24Bは、吸気管11B内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0023】
吸気管11Bには、上流側にインタークーラ16が配置され、インタークーラ16よりも下流側にスロットル装置47が配置されている。インタークーラ16は、コンプレッサ下流圧力検出手段24Bよりも下流側に配置されている。インタークーラ16とスロットル装置47との間には、吸気温度検出手段28B(例えば、吸気温度センサ)が設けられている。吸気温度検出手段28Bは、インタークーラ16にて温度が低下された吸気の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0024】
スロットル装置47は、制御装置50からの制御信号に基づいて吸気管11Bの開度を調整するスロットルバルブ47Vを駆動し、吸気流量を調整可能である。制御装置50は、スロットル開度検出手段47S(例えば、スロットル開度センサ)からの検出信号と目標スロットル開度に基づいて、スロットル装置47に制御信号を出力してスロットルバルブ47Vの開度を調整可能である。制御装置50は、アクセルペダル踏込量検出手段25からの検出信号に基づいて検出したアクセルペダルの踏込量と内燃機関10の運転状態等に基づいて目標スロットル開度を求める。
【0025】
アクセルペダル踏込量検出手段25は、例えばアクセルペダル踏込角度センサであり、アクセルペダルに設けられている。制御装置50は、アクセルペダル踏込量検出手段25からの検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出することが可能である。
【0026】
吸気管11Bの流出側は吸気マニホルド11Cの流入側に接続されており、吸気マニホルド11Cの流出側は内燃機関10の流入側に接続されている。また吸気管11Bにおけるスロットル装置47よりも下流側には(吸気マニホルド11Cには)、吸気マニホルド圧力検出手段24C(例えば圧力センサ)が設けられており、EGR配管13の流出側が接続されている。吸気マニホルド圧力検出手段24Cは、吸気マニホルド11Cに流入する直前の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。またEGR配管13の流出側(吸気管11Bとの接続部)からは、EGR配管13の流入側(排気管12Bとの接続部)から流入してきたEGRガスが、吸気管11B内に吐出される。
【0027】
内燃機関10は複数のシリンダ45A~45D(気筒)を有しており、インジェクタ43A~43Dが、それぞれのシリンダに設けられている。インジェクタ43A~43Dには、コモンレール41と燃料配管42A~42Dを介して燃料が供給されており、インジェクタ43A~43Dは、制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれのシリンダ45A~45D内に燃料を噴射する。コモンレール41には、燃料圧力検出手段73が設けられており、燃料ポンプ72によって目標燃料圧力に調整された燃料が充填されている。制御装置50は、燃料圧力検出手段73を用いて検出した燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように燃料ポンプ72を制御する。
【0028】
内燃機関10には、クランク角度検出手段22A、カム角度検出手段22B、クーラント温度検出手段28C等が設けられている。クランク角度検出手段22Aは、例えば回転センサであり、内燃機関10のクランクシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。カム角度検出手段22Bは、例えば回転センサであり、内燃機関10のカムシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。制御装置50は、クランク角度検出手段22Aとカム角度検出手段22Bからの検出信号に基づいて、各シリンダの工程及び回転角度等を検出することができる。またクーラント温度検出手段28Cは、例えば温度センサであり、内燃機関10内に循環されている冷却用クーラントの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0029】
内燃機関10の排気側には排気マニホルド12Aの流入側が接続され、排気マニホルド12Aの流出側には排気管12Bの流入側が接続されている。排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。
【0030】
排気管12Bの上流側には、EGR配管13の流入側が接続されている。EGR配管13は、EGR流路に相当しており、排気管12Bと吸気管11Bとを連通し、排気管12Bの排気ガスの一部を吸気管11Bに還流させる(排気ガスの一部を吸気に戻す)ことが可能である。またEGR配管13には、EGRクーラ15、EGR弁14が設けられている。制御装置50は、EGR弁14の開度を調整することで、EGR配管13内を流れるEGRガスの流量を調整可能である。
【0031】
また排気管12Bにおける上流側には(排気マニホルド12Aには)、排気マニホルド圧力検出手段26C(例えば圧力センサ)が設けられている。排気マニホルド圧力検出手段26Cは、排気マニホルド12A内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0032】
排気管12Bには、排気温度検出手段29が設けられている。排気温度検出手段29は、例えば排気温度センサであり、排気温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0033】
排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。タービン36には、タービン36へ導く排気ガスの流速を制御可能な(タービンへと排気ガスを導く流路の閉度に関連する閉度関連量を調整可能な)可変ノズル33が設けられており、可変ノズル33(過給圧調整装置)は、ノズル駆動手段31によって閉度(開度)が調整される。制御装置50は、ノズル閉度検出手段32(例えば、ノズル閉度センサ)からの検出信号と目標ノズル閉度(開度)に基づいて、ノズル駆動手段31に制御信号を出力して可変ノズル33の閉度(開度)を調整可能である。
【0034】
タービン36の上流側となる排気管12Bには、タービン上流圧力検出手段26A(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン上流圧力検出手段26Aは、排気管12B内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。タービン36の下流側となる排気管12Cには、タービン下流圧力検出手段26B(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン下流圧力検出手段26Bは、排気管12C内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0035】
排気管12Cの流出側には排気浄化装置61が接続されている。例えば内燃機関10がディーゼルエンジンの場合、排気浄化装置61には、酸化触媒、微粒子捕集フィルタ、選択式還元触媒等が含まれている。
【0036】
車速検出手段27は、例えば車両速度検出センサであり、車両の車輪等に設けられている。車速検出手段27は、車両の車輪の回転速度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0037】
制御装置50は、CPU51、RAM52、記憶装置53、タイマ54等を有している。制御装置50(CPU51)は、上述した種々の検出手段からの検出信号が入力され、上述した種々のアクチュエータへの制御信号を出力する。なお、制御装置50の入出力は、上記の検出手段やアクチュエータに限定されるものではない。また、各部の温度や圧力等はセンサを搭載せずに推定計算により算出しても良い。制御装置50は、上記の検出手段を含めた各種の検出手段からの検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出可能であり、運転状態に基づいて上記のアクチュエータを含む各種のアクチュエータを制御する。記憶装置53は、例えばFlash-ROM等の記憶装置であり、内燃機関の制御や自己診断等を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。また制御装置50(CPU51)は、目標過給圧算出部51A、目標過給圧閉度関連量算出部51B、目標EGR前後差圧算出部51C、目標差圧保障閉度関連量算出部51D、閉度関連量選択部51E、可変ノズル制御量出力部51F等を有しているが、これらの詳細については後述する。
【0038】
制御装置50は、内燃機関10の運転状態に基づいて、EGR率等を算出し、算出したEGR率等に基づいてEGR弁14の開度を調整し、排気管12B(排気マニホルド12A)からEGR配管13、EGRクーラ15、EGR弁14を経由させて、排気ガスの一部を吸気管11B(吸気マニホルド11C)へ再循環させる(排気系から吸気系へ再循環させる)。なお、このとき、EGR配管13の上流側(排気マニホルド12Aの側)の圧力と、EGR配管13の下流側(吸気マニホルド11Cの側)の圧力と、の圧力差であるEGR前後差圧が所定差圧以上でなければ、EGRガスは再循環しない。過給機を有する内燃機関システムでは、過給状態によっては、EGR前後差圧が所定差圧未満となり、EGRガスが再循環しない場合が発生する。これを回避するため、本実施の形態にて説明する制御装置50は、以下に説明する処理を実行する。
【0039】
[制御ブロック(図2)]
次に図2を用いて、制御装置50の処理に関する制御ブロックについて、各制御ブロックを順に説明する。なお、図2中において符号BAを付与して点線にて囲った、制御ブロックB21、B22、B23、B24、B31が、従来の制御ブロックに対して追加した制御ブロックである。
【0040】
制御ブロックB11は、内燃機関の運転状態が入力され、運転状態に基づいた目標過給圧を算出して制御ブロックB12へ出力する。
【0041】
制御ブロックB12は、目標過給圧と、ノズル閉度(ノズル閉度検出手段32を用いて検出した可変ノズル33の閉度)と、吸気マニホルド内圧力(吸気マニホルド圧力検出手段24Cを用いて検出)とが入力され、過給圧(吸気マニホルド内圧力)が目標過給圧に近づくようにフィードバック制御にて求めたノズル閉度(閉度関連量に相当)である第1目標ノズル閉度(目標過給圧閉度関連量に相当)を算出して制御ブロックB31と制御ブロックB24へ出力する。
【0042】
制御ブロックB21は、内燃機関の運転状態が入力され、運転状態に基づいたEGRガス流量を算出して制御ブロックB22へ出力する。
【0043】
制御ブロックB22は、予め記憶装置53に記憶されているEGRガス流量・圧力損失特性と、EGRガス流量とが入力され、目標EGR前後差圧を算出して制御ブロックB24へ出力する。
【0044】
制御ブロックB23は、予め記憶装置53に記憶されている複数の閉度関連量・EGR前後差圧特性と、内燃機関の運転状態とが入力され、運転状態に応じた閉度関連量・EGR前後差圧特性を抽出して制御ブロックB24へ出力する。
【0045】
制御ブロックB24は、目標EGR前後差圧と、抽出した閉度関連量・EGR前後差圧特性と、ノズル閉度と、吸気マニホルド内圧力と、排気マニホルド内圧力と、第1目標ノズル閉度とが入力され、EGR前後差圧が目標EGR前後差圧に近づくようにフィードバック制御にて求めたノズル閉度(閉度関連量に相当)である第2目標ノズル閉度(目標差圧保障閉度関連量に相当)を算出して制御ブロックB31へ出力する。
【0046】
制御ブロックB31は、第1目標ノズル閉度と第2目標ノズル閉度が入力され、第1目標ノズル閉度と第2目標ノズル閉度の大きなほうを選択して最終目標ノズル閉度(最終目標閉度関連量に相当)として制御ブロックB41へ出力する。
【0047】
制御ブロックB41は、最終目標ノズル閉度と、ノズル閉度とが入力され、ノズル閉度が最終目標ノズル閉度に近づくようにフィードバック制御にて求めた制御量(最終目標ノズル閉度に基づいた制御量であり、例えば電動モータ(ノズル駆動手段31)を駆動するPMW出力信号)を出力する。
【0048】
[制御装置50の処理手順(図3図7)]
次に図3図7に示すフローチャート等を用いて、上述した制御ブロックに基づいた制御装置50の処理手順の例について説明する。制御装置50(CPU51)は、例えば所定時間間隔(数[ms]~数10[ms]間隔)にて、図3に示す[全体処理]を起動し、ステップS010に処理を進める。
【0049】
ステップS010にて制御装置50は、内燃機関の運転状態を検出してステップS020へ処理を進める。なお、内燃機関の運転状態には、上述した各種の検出手段を用いて検出した流量、温度、圧力、回転数等や、各種のアクチュエータの動作状態等がある。
【0050】
ステップS020にて制御装置50は、[第1目標ノズル閉度(目標過給圧閉度関連量)を算出]する処理を実行してステップS030へ処理を進める。なお[第1目標ノズル閉度を算出]する処理(図4)の詳細については後述する。
【0051】
ステップS030にて制御装置50は、[第2目標ノズル閉度(目標差圧保障圧閉度関連量)を算出]する処理を実行してステップS040へ処理を進める。なお[第2目標ノズル閉度を算出]する処理(図5)の詳細については後述する。
【0052】
ステップS040にて制御装置50は、第1目標ノズル閉度が第2目標ノズル閉度以上であるか否かを判定する。制御装置50は、第1目標ノズル閉度が第2目標ノズル閉度以上である場合(Yes)はステップS050Aへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS050Bへ処理を進める。
【0053】
ステップS050Aへ処理を進めた場合、制御装置50は、最終目標ノズル閉度(最終目標閉度関連量に相当)へ第1目標ノズル閉度を記憶し、ステップS060へ処理を進める。
【0054】
ステップS050Bへ処理を進めた場合、制御装置50は、最終目標ノズル閉度(最終目標閉度関連量に相当)へ第2目標ノズル閉度を記憶し、ステップS060へ処理を進める。
【0055】
ステップS040、S050A、S050Bの処理を実行している制御装置50(CPU51)は、第1目標ノズル閉度(目標過給圧閉度関連量)と第2目標ノズル閉度(目標差圧保障閉度関連量)との大きいほうを最終目標ノズル閉度(最終目標閉度関連量に相当)として選択する、閉度関連量選択部51E(図1参照)に相当している。またステップS040、S050A、S050Bは、図2に示す制御ブロックB31に相当している。
【0056】
ステップS060へ処理を進めた場合、制御装置50は、ノズル閉度が最終目標ノズル閉度に近づくように(閉度関連量が最終目標閉度関連量に近づくように)フィードバック制御にて求めた制御量(ノズル駆動手段31への制御量であり、例えば電動モータ(ノズル駆動手段31)を駆動するPMW出力信号)を出力し、図3に示す処理を終了する。
【0057】
ステップS060の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、ノズル閉度(閉度関連量)が、最終目標ノズル閉度(最終目標閉度関連量)に近づくようにフィードバック制御にて可変ノズル33の閉度を制御する、可変ノズル制御量出力部51F(図1参照)に相当している。またステップS060は、図2に示す制御ブロックB41に相当している。
【0058】
[第1目標ノズル閉度を算出(図4)]
次に図4を用いて、図3に示すフローチャートのステップS020の[第1目標ノズル閉度(目標過給圧閉度関連量)を算出]する処理の詳細を説明する。図3に示すフローチャートのステップS020の処理を実行する際、制御装置50は、図4に示すステップS110へ処理を進める。
【0059】
ステップS110にて制御装置50は、内燃機関の運転状態に基づいて目標過給圧を算出し、ステップS120へ処理を進める。例えば記憶装置53には、内燃機関の回転数と、燃料噴射量とに応じて目標過給圧が設定された目標過給圧特性が記憶されている。制御装置50は、運転状態として検出した回転数と燃料噴射量と、目標過給圧特性とに基づいて目標過給圧を算出して記憶する。
【0060】
ステップS110の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、内燃機関の運転状態に基づいて目標過給圧を算出する、目標過給圧算出部51A(図1参照)に相当している。またステップS110は、図2に示す制御ブロックB11に相当している。
【0061】
ステップS120にて制御装置50は、目標過給圧と、(現在の)吸気マニホルド内圧力と、(現在の)ノズル閉度と、に基づいて、過給圧(吸気マニホルド内圧力)が目標過給圧に近づくようにフィードバック制御にてノズル閉度を算出し、求めたノズル閉度を第1目標ノズル閉度(目標過給圧閉度関連量)として記憶し、図4に示す処理を終了して図3に示すステップS030へ処理を戻す。
【0062】
ステップS120の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、過給圧が目標過給圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた、(可変ノズルの閉度に関連する)閉度関連量である第1目標ノズル閉度(目標過給圧閉度関連量)を算出する、目標過給圧閉度関連量算出部51B(図1参照)に相当している。またステップS120は、図2に示す制御ブロックB12に相当している。
【0063】
[第2目標ノズル閉度を算出(図5)]
次に図5を用いて、図3に示すフローチャートのステップS030の[第2目標ノズル閉度(目標差圧保障閉度関連量)を算出]する処理の詳細を説明する。図3に示すフローチャートのステップS030の処理を実行する際、制御装置50は、図5に示すステップS210へ処理を進める。
【0064】
ステップS210にて制御装置50は、内燃機関の運転状態に基づいてEGRガス流量を算出してステップS220へ処理を進める。例えば制御装置50は、吸気流量、吸気温度、過給圧、回転数、燃料噴射量、排気温度、EGR弁の開度等に基づいてEGRガス流量(EGR配管13を流れるガスの流量)を算出する。またステップS210は、図2に示す制御ブロックB21に相当している。
【0065】
ステップS220にて制御装置50は、記憶装置53に記憶されているEGRガス流量・圧力損失特性(図6参照)と、EGRガス流量とに基づいて目標EGR前後差圧を算出し、ステップS230へ処理を進める。図6に示すEGRガス流量・圧力損失特性は、予め実際の車両を用いた実験やシミュレーション等にて計測された特性であり、EGRガス流量に対して、図1に示すEGR配管13の流入口(排気マニホルド12A(排気管12B)との接続部)からEGR配管13の流出口(吸気マニホルド11C(吸気管11B)との接続部)に至る経路の圧力損失(圧損)を示している。例えば図6に示すEGRガス流量・圧力損失特性では、EGRガス流量が「QR1」の場合、圧力損失は「PR1」であるので、EGR前後差圧(上述したEGR配管13の流入口での圧力と、EGR配管13の流出口での圧力との差)がPR1以上でなければEGRガスが流れない(再循環しない)。例えば制御装置50は、EGRガス流量と、EGRガス流量・圧力損失特性とに基づいて求めた圧力損失に、適宜設定したマージン圧力ΔPを加算して、圧力損失以上の圧力を目標EGR前後差圧とする。
【0066】
なお、図6に示すEGRガス流量・圧力損失特性を用いてEGRガス流量に応じた圧力損失を求める代わりに、EGRガス流量・圧力損失特性における最大流量QRmxの場合の圧力損失である最大圧力損失PRmx(最大圧力損失PRmx+マージン圧力ΔP)を所定値として、目標EGR前後差圧としてもよい。この場合、最大圧力損失PRmxである所定値が、記憶装置53に記憶されており、制御装置50は、最大圧力損失PRmx以上の圧力(所定値以上の圧力であり、最大圧力損失PRmx+マージン圧力ΔP)を、目標EGR前後差圧に設定する。なお、最大流量QRmxは、対象車両の内燃機関を運転した場合に、最大となるEGRガス流量である。
【0067】
また、図6に示すEGRガス流量・圧力損失特性を用いてEGRガス流量に応じた圧力損失を求める代わりに、内燃機関の運転状態に対するEGR前後差圧が設定された運転状態・EGR前後差圧特性を記憶装置53に記憶しておいてもよい。例えば、内燃機関の運転状態として、内燃機関の回転数Neと、燃料噴射量Qを用い、回転数Neと燃料噴射量Qに応じたEGR前後差圧が設定された、運転状態・EGR前後差圧特性(図示省略)が、記憶装置53に記憶されている。この場合、制御装置50は、内燃機関の運転状態と、運転状態・EGR前後差圧特性に基づいて算出したEGR前後差圧以上の圧力(算出したEGR前後差圧+マージン圧力ΔP)を、目標EGR前後差圧に設定する。
【0068】
ステップS220の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、運転状態に基づいて排気ガスを再循環させるために必要となるEGRシステムの前後差圧である目標EGR前後差圧を算出する、目標EGR前後差圧算出部51C(図1参照)に相当している。またステップS220は、図2に示す制御ブロックB22に相当している。
【0069】
ステップS230にて制御装置50は、排気マニホルド内圧力(排気マニホルド圧力検出手段26Cを用いて検出した圧力)-吸気マニホルド内圧力(吸気マニホルド圧力検出手段24Cを用いて検出した圧力)が、目標EGR前後差圧以上であるか否かを判定する。制御装置50は、排気マニホルド内圧力-吸気マニホルド内圧力が目標EGR前後差圧以上である場合(Yes)はステップS280に処理を進め、そうでない場合(No)はステップS240へ処理を進める。
【0070】
ステップS240へ処理を進めた場合、制御装置50は、運転状態に応じた閉度関連量・EGR前後差圧特性を抽出してステップS250へ処理を進める。閉度関連量・EGR前後差圧特性は、図7に示すように、閉度関連量(ノズル閉度)に対するEGR前後差圧に関する特性が設定されて、運転状態(例えば内燃機関の回転数[Ne1、Ne2・・Nen]と、燃料噴射量[Q1、Q2・・Qm])に応じて複数用意されており、制御装置50の記憶装置53に複数記憶されている。それぞれの閉度関連量・EGR前後差圧特性は、横軸がノズル閉度(閉度関連量)、縦軸が圧力(EGR前後差圧に関する特性)とされている。図7に示す例では、閉度関連量としてノズル閉度、EGR前後差圧に関する特性として排気マニホルド内圧力(図7中で実線にて示す特性)と吸気マニホルド内圧力(図7中で一点鎖線にて示す特性)が、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等によって求められて設定されている。例えば運転状態(回転数Ne、燃料噴射量Q)が、(回転数=Ne1、燃料噴射量=Q1)の場合、制御装置50は、運転状態(Ne1、Q1)に対応する閉度関連量・EGR前後差圧特性を抽出する。
【0071】
ステップS250にて制御装置50は、抽出した閉度関連量・EGR前後差圧特性と目標EGR前後差圧とに基づいて目標差圧発生ノズル閉度を算出してステップS260へ処理を進める。例えば抽出した閉度関連量・EGR前後差圧特性が図7に示す「運転状態(Ne1、Q1)」の特性であり、現在のノズル閉度が「V1」である場合、制御装置50は、排気マニホルド内圧力-吸気マニホルド内圧力(EGR前後差圧)は「ΔP1」であることを認識する。このEGR前後差圧である「ΔP1」が目標EGR前後差圧未満である場合、EGRガスは流れない(再循環しない)。そこで制御装置50は、現在のノズル閉度「V1」よりも閉度を大きくしていった場合のEGR前後差圧が目標EGR前後差圧以上となるノズル閉度を求める。例えば図7に示す「運転状態(Ne1、Q1)」の閉度関連量・EGR前後差圧特性では、ノズル閉度が「Vtg2」以上の場合のEGR前後差圧「ΔP2」が目標EGR前後差圧以上となる場合、制御装置50は、ノズル閉度「Vtg2」を目標差圧発生ノズル閉度として求める。
【0072】
ステップS260にて制御装置50は、目標差圧発生ノズル閉度と、(現在の)吸気マニホルド内圧力と、(現在の)ノズル閉度と、に基づいて、ノズル閉度が目標差圧発生ノズル閉度に近づくように(EGR前後差圧が目標EGR前後差圧に近づくように)フィードバック制御にてノズル閉度を算出し、求めたノズル閉度を第2目標ノズル閉度(目標差圧保障閉度関連量)として記憶し、図5に示す処理を終了して図3に示すステップS040へ処理を戻す。
【0073】
ステップS240、S250、S260の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、運転状態に応じて抽出した閉度関連量・EGR前後差圧特性と目標EGR前後差圧とに基づいて、EGRシステムの前後差圧(EGR配管13における排気マニホルド12Aの側であるEGRガスの流入口の圧力と、EGR配管13における吸気マニホルド11Cの側であるEGRガスの流出口の圧力と、の圧力差)が、目標EGR前後差圧に近づくようにフィードバック制御にて求めた閉度関連量である目標差圧保障閉度関連量を算出する、目標差圧保障閉度関連量算出部51D(図1参照)に相当している。
【0074】
ステップS280へ処理を進めた場合、制御装置50は、第1目標ノズル閉度を第2目標ノズル閉度(目標差圧保障閉度関連量)として記憶し、図5に示す処理を終了して図3に示すステップS040へ処理を戻す。ステップS280は、第2目標ノズル閉度に大きな値が残ったまま更新されないと、図3に示すステップS040、S050Bにて更新されていない第2目標ノズル閉度が最終目標ノズル閉度として選択され続けることを防止する。またステップS230、S240、S250、S260、S280は、図2に示す制御ブロックB24に相当している。
【0075】
[本実施の形態にて説明した処理による動作波形の例(図8)]
次に図8を用いて、目標過給圧の変動に対する、可変ノズルの閉度であるノズル閉度の追随状態の例、及び実際の過給圧の追随状態の例について説明する。図8に示すように、制御装置50は、目標過給圧がより高い圧力へと変動した場合、ノズル閉度をより大きくさせて、実際の過給圧が、目標過給圧に近づくように追従させる。
【0076】
[従来の処理]
従来の処理では、目標過給圧の変動に追従するように、フィードバック制御にて図8に示す「第1目標ノズル閉度」を求めている。そして、この「第1目標ノズル閉度」を最終目標ノズル閉度に設定し、ノズル閉度が、この最終目標ノズル閉度(この場合、第1目標ノズル閉度)となるようにノズル駆動手段を制御する。このため、従来の実際の過給圧は、図8中に「従来の実過給圧」で示すような追従となる。しかし、図8では表現できていないが、例えば時間Ta~時間Tbの期間では、EGR前後差圧が目標EGR前後差圧未満であり、EGR弁を開いているにもかかわらずEGRガスが流れない(再循環しない)場合があった。
【0077】
[本実施の形態の処理]
本実施の形態にて説明した処理では、第1目標ノズル閉度ではEGR前後差圧が目標EGR前後差圧未満となる時間Ta~時間Tbの期間において、EGR前後差圧が目標EGR前後差圧以上となる第2目標ノズル閉度が算出される。また第2目標ノズル閉度は、EGR前後差圧が目標EGR前後差圧以上である場合は、第1目標ノズル閉度と同じノズル閉度とされている。そして第1目標ノズル閉度と第2目標ノズル閉度の大きい方が最終目標ノズル閉度に設定され、ノズル閉度が、この最終目標閉度関連量(本実施の形態の最終目標ノズル閉度)となるようにノズル駆動手段を制御する。このため、図8に示すように、例えば目標過給圧が高くなるように変動した際、目標過給圧に向けて追従する過渡時であって時間Ta~時間Tbの期間で第1目標ノズル閉度ではEGR前後差圧が目標EGR前後差圧未満である場合、目標EGR前後差圧以上となる第2目標ノズル閉度が採用される。この制御は、過渡時、定常時にかかわらず実行されるので、常にEGR前後差圧を目標EGR前後差圧以上とすることができる。
【0078】
[本実施の形態にて説明した処理による効果(図9)]
例えば図9は、横軸を時間、縦軸を内燃機関の回転数とした運転モードの一例を示している。この例では、時間T01にて内燃機関を始動してから、時間T14にて内燃機関を停止するまでの回転数の変化(例えば、走行と一時停止)の例を示している。そして図9中において運転状態Bはアイドリング回転数での定常状態(無過給域の定常状態)を示し、運転状態Aはアイドリング回転数よりも高い回転数での定常状態(過給域の定常状態)を示し、運転状態Cは回転数(及び過給圧)が変動している過渡状態(過給域の過渡状態及び無過給域の過渡状態)を示している。従来は、図9中の運転状態Aの場合のみ、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を保障していた。これに対して特許文献1に記載のターボチャージャの制御装置では、運転状態Aに加えて運転状態Bの場合も、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を保障できるようにしているが、運転状態Cの場合(過渡状態)については、保障できていない。そして本実施の形態にて説明した処理を実行する制御装置50は、運転状態Aと、運転状態Bと、運転状態Cの場合において、EGRガスを再循環可能な一定以上のEGRの前後差圧を保障できるようにしており、過給域及び無過給域での定常状態に加えて過渡状態でもEGRの前後差圧を保障し、NOx発生量をより低減させることができる。
【0079】
本発明の内燃機関の制御装置50は、本実施の形態で説明した構成、処理手順(制御ブロック、フローチャート)等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0080】
また、本発明の内燃機関の制御装置は、ディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジンにも適用することが可能である。
【0081】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(より小さい)(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 内燃機関システム
10 内燃機関
11A、11B 吸気管
11C 吸気マニホルド
12A 排気マニホルド
12B、12C 排気管
13 EGR配管
14 EGR弁
15 EGRクーラ
16 インタークーラ
21 吸気流量検出手段
22A クランク角度検出手段
22B カム角度検出手段
23 大気圧検出手段
24A コンプレッサ上流圧力検出手段
24B コンプレッサ下流圧力検出手段
24C 吸気マニホルド圧力検出手段
25 アクセルペダル踏込量検出手段
26A タービン上流圧力検出手段
26B タービン下流圧力検出手段
26C 排気マニホルド圧力検出手段
27 車速検出手段
28A、28B 吸気温度検出手段
28C クーラント温度検出手段
29 排気温度検出手段
30 ターボ過給機
31 ノズル駆動手段
32 ノズル閉度検出手段
33 可変ノズル
35 コンプレッサ
36 タービン
41 コモンレール
43A~43D インジェクタ
45A~45D シリンダ
47 スロットル装置
47S スロットル開度検出手段
47V スロットルバルブ
50 制御装置
51 CPU
51A 目標過給圧算出部
51B 目標過給圧閉度関連量算出部
51C 目標EGR前後差圧算出部
51D 目標差圧保障閉度関連量算出部
51E 閉度関連量選択部
51F 可変ノズル制御量出力部
53 記憶装置
61 排気浄化装置
72 燃料ポンプ
73 燃料圧力検出手段
B11、B12、B21、B22、B23、B24、B31、B41 制御ブロック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9