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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022009460
(43)【公開日】2022-01-14
(54)【発明の名称】併用療法のための患者の選択
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20220106BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220106BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 31/566 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 15/14 20060101ALI20220106BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220106BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
G01N33/574 A
G01N33/53 D
G01N33/543 597
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/4406
A61P11/00
A61P17/00
A61P35/04
A61P43/00 105
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/566
A61P15/14
A61K45/00
A61P35/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021173852
(22)【出願日】2021-10-25
(62)【分割の表示】P 2018511233の分割
【原出願日】2016-09-02
(31)【優先権主張番号】62/213,288
(32)【優先日】2015-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/219,612
(32)【優先日】2015-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514054683
【氏名又は名称】シンダックス ファーマシューティカルズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ピーター オルデントリッヒ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA36
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA47
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE03
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086DA09
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA47
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】併用療法のための患者の選択の提供。
【解決手段】本明細書では、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法による処置についてがん患者を選択する方法について記載する。特に、エンチノスタット併用療法による療法において、治療指標として、非がん細胞型の骨髄由来のサプレッサー細胞、例えば、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞を検査する方法が提供される。第2の治療剤は、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブおよびペンブロリズマブ;抗PD-L1抗体、例えばMPDL3280A;ならびにエキセメスタンであり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年9月2日に出願された米国仮出願番号第62/213,288号および2015年9月16日に出願された米国仮出願番号第62/219,612号の利益および優先権を主張しており、これら仮出願の各々の内容は、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
がん、腫瘍、腫瘍関連障害、および腫瘍性疾患の状態は重篤であり、また多くの場合、生命を脅かす状態である。これらの疾患および障害は、急速増殖性の細胞増殖により特徴付けられ、その処置に有効である治療剤の同定に向けられた研究努力の対象としてなおも存続している。そのような薬剤は、患者の生存を延ばし、新生物と関連した急速増殖性の細胞増殖を阻害するか、または新生物の退縮をもたらす。
【0003】
HDAC阻害剤(HDACi)は、クロマチンリモデリングおよび遺伝子発現調節を通じて、血液学的悪性疾患および固形悪性疾患における分化およびアポトーシスを促進する新興のクラスの治療剤である。HDACiの抗腫瘍効果は研究されてきたが、がん患者の全身性免疫に対するHDACiの影響は不明確なままである。
【0004】
例えば、抗腫瘍剤の有効性を向上させ、典型的には従来の処置に伴う副作用を低下させ、そして/または除去するために、複数の適応症におけるがん免疫療法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
一つの態様では、本明細書において、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法が提供される。この方法は、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞の数を測定することと、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:4の間にある場合に、前記併用療法を投与することとを含む。
【0006】
別の態様では、本明細書において、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法が提供される。この方法は、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料から得られた1つまたは複数の骨髄由来のサプレッサー細胞を第1の結合剤と接触させて、1つまたは複数の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体を生成することと、前記末梢血液試料から得られた1つまたは複数の末梢血液単核細胞を第2の結合剤と接触させて、1つまたは複数の第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体を生成することと、前記末梢血液試料中の、前記第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と前記第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との比を測定することと、第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との前記比が、1:200から1:4の間にある場合に、前記併用療法を投与することとを含む。
【0007】
別の態様では、本明細書において、患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞の数を測定することとを含み、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比が1:200から1:4の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を前記患者に投与することをさらに含む、前記方法が提供される。
【0008】
なお別の態様では、本明細書において、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性細胞の数を測定することと、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比が、1:100から99:1の間にある場合に、併用療法を投与することとを含む方法が提供される。
【0009】
別の態様では、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の末梢血液単核細胞の数を測定することと、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:1の間にある場合に、併用療法を投与することとを含む方法が提供される。
【0010】
さらに別の態様では、本明細書において、患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性細胞の数を測定することとを含み、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比が、1:100から99:1の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を前記患者に投与することをさらに含む方法が提供される。
【0011】
また本明細書において、患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の末梢血液単核細胞の数を測定することとを含み、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:1の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を患者に投与することをさらに含む方法が提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、
がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、
前記末梢血液試料中の骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞の数を測定することと、
骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:4の間にある場合に、前記併用療法を前記患者に投与することと
を含む前記方法。
(項目2)
エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、
がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、
前記末梢血液試料から得られた1つまたは複数の骨髄由来のサプレッサー細胞を第1の結合剤と接触させて、1つまたは複数の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体を生成することと、
前記末梢血液試料から得られた1つまたは複数の末梢血液単核細胞を第2の結合剤と接触させて、1つまたは複数の第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体を生成することと、
前記末梢血液試料中の、前記第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と前記第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との比を測定することと、
第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との前記比が、1:200から1:4の間にある場合に、前記患者に前記併用療法を投与することと
を含む前記方法。
(項目3)
患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、
がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、
前記末梢血液試料中の骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞の数を測定することと
を含み、
骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比が1:200から1:4の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を前記患者に投与すること
をさらに含む、前記方法。
(項目4)
前記末梢血液試料が、抗凝固剤で処置される、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記抗凝固剤が、EDTAまたはヘパリンである、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記骨髄由来のサプレッサー細胞の集団および前記PBMCの集団を測定することが、フローサイトメトリーにより実施される、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記骨髄由来のサプレッサー細胞の個数および前記PBMCの個数を測定することが、サイトスピンにより実施される、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記骨髄由来のサプレッサー細胞の集団が、細胞表面マーカーにより同定される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記細胞表面マーカーが、CD11b、CD33、およびCD40のうちの少なくとも1つである、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記末梢血液単核細胞の集団が、細胞表面マーカーにより同定される、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記細胞表面マーカーが、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRのうちの少なくとも1つである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記骨髄由来のサプレッサー細胞が、多形核MDSCである、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記多形核MDSCが、細胞表面マーカーにより同定される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記細胞表面マーカーが、CD15である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記骨髄由来のサプレッサー細胞が、単球MDSCである、項目1から7のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記単球MDSCが、細胞表面マーカーにより同定される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記細胞表面マーカーが、CD14である、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記比が、1:100から1:4の間にある、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記比が、1:50から1:4の間にある、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記比が、1:20から1:4の間にある、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記比が、1:10から1:4の間にある、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記比が、1:5から1:4の間にある、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記エンチノスタットが、経口投与される、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記エンチノスタットが、最初に投与される、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記エンチノスタットが、毎週投与される、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記エンチノスタットが、2週毎に投与される、項目1から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記第2の治療剤が、抗PD-1抗体である、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記抗PD-1抗体が、ペンブロリズマブである、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブである、項目27に記載の方法。
(項目30)
前記がんが、肺がんである、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記肺がんが、非小細胞性肺がん、扁平上皮癌、または大細胞癌である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記がんが、メラノーマである、項目28または29に記載の方法。
(項目33)
前記メラノーマが、転移性メラノーマである、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記第2の治療剤が、抗PD-L1抗体である、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記抗PD-L1抗体が、MPDL3280Aである、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記第2の治療剤が、エキセメスタンである、項目1から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記がんが、乳がんである、項目34から36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記第2の治療剤が、MPDL3280Aであり、前記乳がんが、三種陰性乳がんである、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記第2の治療剤が、エキセメスタンであり、前記乳がんが、ホルモン受容体陽性乳がんである、項目37に記載の方法。
(項目40)
前記抗PD-1抗体または前記抗PD-L1抗体が、輸液により投与される、項目27または34に記載の方法。
(項目41)
前記エキセメスタンが、経口投与される、項目36に記載の方法。
(項目42)
前記第1および第2の結合剤が、それぞれ独立して抗体である、項目2から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記第1および第2の結合剤が、細胞表面マーカーとそれぞれ独立して結合する、項目2から42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記第1の結合剤が結合した前記細胞表面マーカーが、CD11b、CD33、およびCD40のうちの少なくとも1つである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記第2の結合剤が結合した前記細胞表面マーカーが、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRのうちの少なくとも1つである、項目43に記載の方法。
(項目46)
エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、
がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、
前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、
前記末梢血液試料中の、CD14陽性細胞の数を測定することと、
CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比が、1:100から99:1の間にある場合に、併用療法を投与することと
を含む方法。
(項目47)
エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、
がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、
前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、
前記末梢血液試料中の末梢血液単核細胞の数を測定することと、
CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:1の間にある場合に、併用療法を投与することと
を含む方法。
(項目48)
患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、
がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、
前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、
前記末梢血液試料中の、CD14陽性細胞の数を測定することと
を含み、
CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比が、1:100から99:1の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を前記患者に投与すること
をさらに含む方法。
(項目49)
患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、
がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、
前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、
前記末梢血液試料中の末梢血液単核細胞の数を測定することと
を含み、
CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:1の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を患者に投与すること
をさらに含む方法。
(項目50)
前記末梢血液試料が、抗凝固剤で処置される、項目46から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記抗凝固剤が、EDTAまたはヘパリンである、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することが、フローサイトメトリーにより実施される、項目46から51のいずれか
一項に記載の方法。
(項目53)
前記末梢血液単核細胞の集団が、細胞表面マーカーにより同定される、項目46から52のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記細胞表面マーカーが、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRのうちの少なくとも1つである、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記比が、1:50から99:1の間にある、項目46、48、および50から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記比が、1:20から99:1の間にある、項目46、48、および50から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記比が、1:10から99:1の間にある、項目46、48、および50から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
前記比が、1:5から99:1の間にある、項目46、48、および50から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記比が、1:50から1:4の間にある、項目47および49から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目60)
前記比が、1:20から1:4の間にある、項目47および49から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記比が、1:10から1:4の間にある、項目47および49から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記比が、1:5から1:4の間にある、項目47および49から54のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記エンチノスタットが、経口投与される、項目46から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記エンチノスタットが、最初に投与される、項目46から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
前記エンチノスタットが、毎週投与される、項目46から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目66)
前記エンチノスタットが、2週間毎に投与される、項目46から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
前記第2の治療剤が、抗PD-1抗体である、項目46から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記抗PD-1抗体が、ペンブロリズマブである、項目67に記載の方法。
(項目69)
前記抗PD-1抗体が、ニボルマブである、項目67に記載の方法。
(項目70)
前記がんが、肺がんである、項目68に記載の方法。
(項目71)
前記肺がんが、非小細胞性肺がん、扁平上皮癌、または大細胞癌である、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記がんが、メラノーマである、項目68または69に記載の方法。
(項目73)
前記メラノーマが、転移性メラノーマである、項目72に記載の方法。
(項目74)
前記第2の治療剤が、抗PD-L1抗体である、項目46から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目75)
前記抗PD-L1抗体が、MPDL3280Aである、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記第2の治療剤が、エキセメスタンである、項目46から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目77)
前記がんが、乳がんである、項目74から76のいずれか一項に記載の方法。
(項目78)
前記第2の治療剤が、MPDL3280Aであり、前記乳がんが、三種陰性乳がんである、項目32に記載の方法。
(項目79)
前記第2の治療剤が、エキセメスタンであり、前記乳がんが、ホルモン受容体陽性乳がんである、項目77に記載の方法。
(項目80)
前記抗PD-1抗体または前記抗PD-L1抗体が、輸液により投与される、項目67または74に記載の方法。
(項目81)
前記エキセメスタンが、経口投与される、項目76に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、ENCORE301トライアルに由来する選択された患者から得られた血液試料中のCD14+細胞数、CD14+HLA-DRHi単球細胞数、単球のMDSC細胞数、単球MDSC上のCD40発現、顆粒球MDSC細胞数、および単球MDSC上のCD40発現について、ベースラインから、エンチノスタットおよびエキセメスタン(EE)の組合せ、またはエキセメスタンおよびプラセボの組合せによる処置の15日目の間に生じた変化の百分率を表す。
【0013】
図2A図2は、エンチノスタットが、乳がん患者のCD14単球上でHLA-DR発現を増加させることを表す。(A)乳がん患者のPBMCにおいて、CD14単球(左側パネル)、CD14HLA-DRhi単球(赤色のボックス、右上側パネル)、およびCD14HLA-DRlow/neg単球(青色のボックス、右下側パネル)を分析するためのゲーティング戦略。単一のCD45生存細胞について最初にゲーティングした。(B)エキセメスタン+プラセボ(EP)群(n=14)およびエキセメスタン+エンチノスタット(EE)群(n=20)におけるベースラインからC1D15への単一のCD45生存PBMCの中のCD14HLA-DRhi単球の変化の%。CD14HLA-DRhi単球のレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に増加した(P=0.0004)。(C)EP群(n=14)およびEE群(n=20)において、ベースラインからC1D15へのCD14単球上のHLA-DR発現の変化(蛍光強度中央値、MFI)。CD14単球上のHLA-DR発現のレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に増加した(P=0.015)。(D)in vitroでのCD14単球上のHLA-DR発現。新鮮なPBMCを、DMSOまたはエンチノスタット(0.5μM)を用いて2日間培養した。左側のパネルは、DMSO(青色のヒストグラム)またはエンチノスタット(赤色のヒストグラム)を用いて培養したCD14単球上のHLA-DR発現の代表的なヒストグラムを示す。黒色のヒストグラムは、アイソタイプ対照を示す。右側のパネルは、DMSOまたはエンチノスタットを用いて培養したCD14単球上のHLA-DR発現レベルの差異を示す。各ラインは、異なる健常ドナーを表す(n=8、P=0.008)。蛍光強度中央値、MFI。
図2B-D】図2は、エンチノスタットが、乳がん患者のCD14単球上でHLA-DR発現を増加させることを表す。(A)乳がん患者のPBMCにおいて、CD14単球(左側パネル)、CD14HLA-DRhi単球(赤色のボックス、右上側パネル)、およびCD14HLA-DRlow/neg単球(青色のボックス、右下側パネル)を分析するためのゲーティング戦略。単一のCD45生存細胞について最初にゲーティングした。(B)エキセメスタン+プラセボ(EP)群(n=14)およびエキセメスタン+エンチノスタット(EE)群(n=20)におけるベースラインからC1D15への単一のCD45生存PBMCの中のCD14HLA-DRhi単球の変化の%。CD14HLA-DRhi単球のレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に増加した(P=0.0004)。(C)EP群(n=14)およびEE群(n=20)において、ベースラインからC1D15へのCD14単球上のHLA-DR発現の変化(蛍光強度中央値、MFI)。CD14単球上のHLA-DR発現のレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に増加した(P=0.015)。(D)in vitroでのCD14単球上のHLA-DR発現。新鮮なPBMCを、DMSOまたはエンチノスタット(0.5μM)を用いて2日間培養した。左側のパネルは、DMSO(青色のヒストグラム)またはエンチノスタット(赤色のヒストグラム)を用いて培養したCD14単球上のHLA-DR発現の代表的なヒストグラムを示す。黒色のヒストグラムは、アイソタイプ対照を示す。右側のパネルは、DMSOまたはエンチノスタットを用いて培養したCD14単球上のHLA-DR発現レベルの差異を示す。各ラインは、異なる健常ドナーを表す(n=8、P=0.008)。蛍光強度中央値、MFI。
【0014】
図3A図3は、エンチノスタットが、乳がん患者において、単球MDSCおよび顆粒球MDSCを減少させることを示す。(A)乳がん患者のPBMCのMDSC表現型を分析するためのゲーティング戦略。最初のゲーティングを単一のCD45生存細胞上で行った。系列(CD3、CD19、CD56)HLA-DRCD11bCD33細胞を、LinMDSCとして定義した。LinMDSCを、単球MDSC(LinHLA-DRCD11bCD33CD14細胞)と未成熟MDSC(LinHLA-DRCD11bCD33CD14細胞)とにさらに分割した。CD14CD11bCD33細胞を顆粒球MDSCとして定義した。(B)エキセメスタン+プラセボ(EP)群(n=14)およびエキセメスタン+エンチノスタット(EE)群(n=20)におけるベースラインからC1D15への単一のCD45生存PBMC中の単球MDSCの変化の%。単球MDSCのレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に低下した(P=0.002)。(C)EP群(n=14)およびEE群(n=20)におけるベースラインからへC1D15の単一のCD45生存PBMC中の顆粒球MDSCの変化の%。顆粒球MDSCのレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に低下した(P=0.029)。
図3B-C】図3は、エンチノスタットが、乳がん患者において、単球MDSCおよび顆粒球MDSCを減少させることを示す。(A)乳がん患者のPBMCのMDSC表現型を分析するためのゲーティング戦略。最初のゲーティングを単一のCD45生存細胞上で行った。系列(CD3、CD19、CD56)HLA-DRCD11bCD33細胞を、LinMDSCとして定義した。LinMDSCを、単球MDSC(LinHLA-DRCD11bCD33CD14細胞)と未成熟MDSC(LinHLA-DRCD11bCD33CD14細胞)とにさらに分割した。CD14CD11bCD33細胞を顆粒球MDSCとして定義した。(B)エキセメスタン+プラセボ(EP)群(n=14)およびエキセメスタン+エンチノスタット(EE)群(n=20)におけるベースラインからC1D15への単一のCD45生存PBMC中の単球MDSCの変化の%。単球MDSCのレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に低下した(P=0.002)。(C)EP群(n=14)およびEE群(n=20)におけるベースラインからへC1D15の単一のCD45生存PBMC中の顆粒球MDSCの変化の%。顆粒球MDSCのレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に低下した(P=0.029)。
【0015】
図4A-B】図4は、エンチノスタットが、乳がん患者において、MDSC上でCD40発現を低下させることを示す。(A)エキセメスタン+プラセボ(EP)群(n=14)およびエキセメスタン+エンチノスタット(EE)群(n=20)におけるベースラインからC1D15への単球MDSC上のCD40発現の変化(MFI)。単球MDSC上のCD40のレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に低下した(P=0.011)。(B)EP群(n=14)およびEE群(n=20)におけるベースラインからC1D15への顆粒球MDSC上のCD40発現の変化(MFI)。顆粒球MDSC上のCD40のレベルは、EP群と比較して、EE群において統計的に有意な低下を示さなかった(P=0.22)。(C)MDSCの絶対生存細胞数(上側パネル、単球MDSC;下段パネル、顆粒球MDSC)。新鮮なPBMC(PBMC2×10個/ウェル)を、IL-6(10ng/ml)およびGM-CSF(10ng/ml)を用いて培養した。5日目に、DMSOまたはエンチノスタット(0.5μM)を添加し、細胞を3~4日間培養した。各ラインは、異なる健常ドナーを表す(n=7;単球MDSC、P=0.004;顆粒球MDSC、P=0.004)。(D)単球MDSC(赤色のライン)、顆粒球MDSC(青色のライン)、および系列細胞(黒色のライン)における死細胞色素陽性細胞の百分率。新鮮なPBMC(PBMC2×10個/ウェル)を、IL-6およびGM-CSFを用いて培養し、次に、DMSOまたはエンチノスタット(0.5μM)を2または3日間添加し、次に細胞を収集し、LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stainおよび抗体で染色した。各集団(単球MDSC、顆粒球MDSC、および系列細胞)における死細胞色素陽性細胞の百分率を計算した。平均値±SDを示す(n=7)。死亡単球MDSCおよび死亡顆粒球MDSCの百分率は、エンチノスタットにより増加したが、死亡系列細胞の百分率は増加しなかった。単球MDSC、P=0.016;顆粒球MDSC、P=0.016;系列細胞(CD3、CD19、またはCD56)、P=0.7。
図4C-D】図4は、エンチノスタットが、乳がん患者において、MDSC上でCD40発現を低下させることを示す。(A)エキセメスタン+プラセボ(EP)群(n=14)およびエキセメスタン+エンチノスタット(EE)群(n=20)におけるベースラインからC1D15への単球MDSC上のCD40発現の変化(MFI)。単球MDSC上のCD40のレベルは、EP群と比較して、EE群において有意に低下した(P=0.011)。(B)EP群(n=14)およびEE群(n=20)におけるベースラインからC1D15への顆粒球MDSC上のCD40発現の変化(MFI)。顆粒球MDSC上のCD40のレベルは、EP群と比較して、EE群において統計的に有意な低下を示さなかった(P=0.22)。(C)MDSCの絶対生存細胞数(上側パネル、単球MDSC;下段パネル、顆粒球MDSC)。新鮮なPBMC(PBMC2×10個/ウェル)を、IL-6(10ng/ml)およびGM-CSF(10ng/ml)を用いて培養した。5日目に、DMSOまたはエンチノスタット(0.5μM)を添加し、細胞を3~4日間培養した。各ラインは、異なる健常ドナーを表す(n=7;単球MDSC、P=0.004;顆粒球MDSC、P=0.004)。(D)単球MDSC(赤色のライン)、顆粒球MDSC(青色のライン)、および系列細胞(黒色のライン)における死細胞色素陽性細胞の百分率。新鮮なPBMC(PBMC2×10個/ウェル)を、IL-6およびGM-CSFを用いて培養し、次に、DMSOまたはエンチノスタット(0.5μM)を2または3日間添加し、次に細胞を収集し、LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stainおよび抗体で染色した。各集団(単球MDSC、顆粒球MDSC、および系列細胞)における死細胞色素陽性細胞の百分率を計算した。平均値±SDを示す(n=7)。死亡単球MDSCおよび死亡顆粒球MDSCの百分率は、エンチノスタットにより増加したが、死亡系列細胞の百分率は増加しなかった。単球MDSC、P=0.016;顆粒球MDSC、P=0.016;系列細胞(CD3、CD19、またはCD56)、P=0.7。
【0016】
図5図5は、乳がん患者のPBMCにおけるT細胞サブセットを分析するためのゲーティング戦略を示す。(A)最初のゲーティングを、単一の生存細胞上で行った。CD4T細胞を、Treg(CD8CD4CD25hiFoxp3細胞)およびFoxp3CD4T細胞(CD8CD4Foxp3細胞)にさらに分割した。(B)CD8T細胞、Foxp3CD4T細胞、およびTregについて、免疫チェックポイント受容体の発現を評価した。PD-1(左側)、CTLA-4(中央)、およびTIM-3(右側)に関する代表的なヒストグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
併用療法についてがん患者を選択する従来のアプローチは、組織学または分子分析に関するがんの評価に依拠する。本開示は、エンチノスタットと第2の治療剤との併用療法について患者を選択するための予測および予後バイオマーカーとしての、がん患者から得られた生体試料中の非腫瘍性骨髄由来のサプレッサー細胞、例えば、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞のレベルに依拠する方法を提供する。
【0018】
一態様では、本開示は、患者から収集された末梢血液試料中で測定された、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比に基づき、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:4の間にある場合に、併用療法が投与される方法に関する。本明細書における別の態様では、患者から収集された末梢血液試料中で測定された、骨髄由来のサプレッサー細胞-第1の結合剤複合体と、末梢血液単核細胞-第2の結合剤複合体との比に基づき、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、複合体が、骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞を第1のおよび2の結合物質とそれぞれ接触させることにより形成され、ならびに骨髄由来のサプレッサー細胞-第1の結合剤複合体と末梢血液単核細胞-第2の結合剤複合体との比が1:200から1:4の間にある場合に、併用療法が投与される方法が提供される。別の態様では、患者から収集された末梢血液試料中で測定された、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比に基づき、患者のがんの診断および/または予測を提供する方法であって、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比が1:200から1:4の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を投与することをさらに含む方法がさらに提供される。
【0019】
なお別の態様では、本明細書において、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性細胞の数を測定することと、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比が、1:100から99:1の間にある場合に、併用療法を投与することとを含む方法が提供される。別の態様において、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法について患者を選択する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の末梢血液単核細胞の数を測定することと、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:1の間にある場合に、併用療法を投与することとを含む方法が提供される。なお別の態様において、本明細書において、患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性細胞の数を測定することとを含み、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比が、1:100から99:1の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を前記患者に投与することをさらに含む方法が提供される。別の態様において、本明細書において、患者におけるがんについて予後を提供する方法であって、がんと診断された前記患者から末梢血液試料を取得することと、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することと、前記末梢血液試料中の末梢血液単核細胞の数を測定することとを含み、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:1の間にある場合に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を患者に投与することをさらに含む方法が提供される。
【0020】
一部の実施形態では、前記末梢血液試料が、抗凝固剤で処置される。一部の実施形態では、前記抗凝固剤が、EDTAまたはヘパリンである。一部の実施形態では、前記末梢血液試料中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数を測定することが、フローサイトメトリーにより実施される。一部の実施形態では、前記末梢血液単核細胞の集団が、細胞表面マーカーにより同定される。一部の実施形態では、前記細胞表面マーカーが、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRのうちの少なくとも1つである。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比は、1:50から99:1の間にある。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比は、1:20から99:1の間にある。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比は、1:10から99:1の間にある。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血単核細胞との比は、1:5から99:1の間にある。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血単核細胞との比は、1:50から1:4の間にある。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血単核細胞との比は、1:20から1:4の間にある。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血単核細胞との比は、1:10から1:4の間にある。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血単核細胞との比は、1:5から1:4の間にある。
【0021】
一部の実施形態では、前記エンチノスタットは、経口投与される。一部の実施形態では、前記エンチノスタットは、最初に投与される。一部の実施形態では、前記エンチノスタットは、毎週投与される。一部の実施形態では、前記エンチノスタットは、2週間毎に投与される。一部の実施形態では、前記エンチノスタットは、5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、前記エンチノスタットは、5mgの用量で毎週投与される。一部の実施形態では、前記エンチノスタットは、5mgの用量で2週間毎に投与される。
【0022】
一部の実施形態では、前記第2の治療剤が、抗PD-1抗体である。一部の実施形態では、前記抗PD-1抗体が、ペンブロリズマブである。一部の実施形態では、前記抗PD-1抗体が、ニボルマブである。一部の実施形態では、前記がんが、肺がんである。一部の実施形態では、前記肺がんが、非小細胞性肺がん、扁平上皮癌、または大細胞癌である。一部の実施形態では、前記がんが、メラノーマである。一部の実施形態では、前記メラノーマが、転移性メラノーマである。一部の実施形態では、前記第2の治療剤が、抗PD-L1抗体である。一部の実施形態では、前記抗PD-L1抗体が、MPDL3280Aである。一部の実施形態では、前記第2の治療剤が、エキセメスタンである。一部の実施形態では、前記がんが、乳がんである。一部の実施形態では、前記第2の治療剤が、MPDL3280Aであり、前記乳がんが、三種陰性乳がんである。一部の実施形態では、前記第2の治療剤が、エキセメスタンであり、前記乳がんが、ホルモン受容体陽性乳がんである。一部の実施形態では、前記抗PD-1抗体または前記抗PD-L1抗体が、輸液により投与される。一部の実施形態では、前記エキセメスタンが、経口投与される。
【0023】
本明細書に記載されている開示を理解しやすくするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0024】
本明細書で使用する場合、「異常な細胞増殖」とは、正常細胞の異常増殖および異常細胞の増殖を含む、正常な調節機構と独立した細胞増殖(例えば、接触阻害の喪失)を意味する。
【0025】
「新生物」とは、本明細書に記載されている場合、自律的増殖および体細胞変異により、正常な細胞とは区別される、異常な、未調節の、および無秩序な細胞の増殖である。腫瘍性細胞が増殖および分裂する際には、その遺伝子変異および増殖特性が子孫細胞に受け継がれる。新生物または腫瘍は、腫瘍性細胞の蓄積である。一部の実施形態では、新生物は、良性である場合もあれば、悪性である場合もある。
【0026】
「転移」とは、本明細書で使用する場合、リンパ管または血管を経由する腫瘍細胞の拡散を指す。また、転移は、漿膜腔(serous cavity)、またはクモ膜下腔もしくは他の腔を通じて、直接広がることによる腫瘍細胞の移動を指す。転移プロセスを通じて、腫瘍細胞が身体の他の部位に移動すると、当初の出現部位から離れた領域に新生物がもたらされる。
【0027】
本明細書で議論される場合、「血管形成」が腫瘍形成および転移において顕著である。血管新生因子が、いくつかの固形腫瘍、例えば横紋筋肉腫、網膜芽細胞腫、ユーイング肉腫、神経芽細胞腫、および骨肉腫と関連することが判明した。腫瘍は、栄養分を提供し、細胞の老廃物を取り除く血液供給無くして増殖することはできない。血管形成が重要である腫瘍として、固形腫瘍、例えば腎細胞癌、肝細胞癌、および良性腫瘍、例えば聴神経腫瘍、および神経線維腫が挙げられる。血管形成は、血液由来の腫瘍、例えば白血病と関連している。血管形成は、白血病を起こす骨髄の異常において役割を果たすと考えられている。血管形成を防止すれば、がん性腫瘍の増殖や腫瘍の存在に起因して生じた被験体への損傷を止め得る。
【0028】
用語「被験体」とは、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、またはマウスを含むがこれらに限定されない動物を指す。用語「被験体」および「患者」は、例えば哺乳動物被験体、例えばヒト被験体と関連して、本明細書で交換可能に使用される。
【0029】
用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、および「処置(treatment)」は、障害、疾患、もしくは状態;または障害、疾患、もしくは状態と関連した1つもしくは複数の症状の緩和または抑制;あるいは障害、疾患、または状態そのものの原因(複数可)の緩和または根絶を含むことを意味する。
【0030】
用語「治療有効量」とは、投与したとき、処置される障害、疾患、または状態の1つまたは複数の症状の発症を防止する、またはそのような症状をある程度緩和するのに十分である化合物の量を指す。また、用語「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師、または臨床医によって求められる細胞、組織、システム、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発するのに十分である化合物の量を指す。
【0031】
用語「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」、「生理学的に許容される担体」、または「生理学的に許容される賦形剤」とは、薬学的に許容される物質、組成物、またはビヒクル、例えば液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または被包材料を指す。各成分は、医薬製剤の他の成分との適合性の意味で、「薬学的に許容され」なければならない。また、過剰の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなく、ヒトおよび動物の組織または臓器との接触した使用に適し、合理的な利益/リスク比と釣り合わなければならない。Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第21版; Lippincott Williams & Wilkins: Philadelphia、PA、2005年;Handbook of Pharmaceutical Excipients、第5版;Roweら編、The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2005年;およびHandbook of
Pharmaceutical Additives、第3版;AshおよびAsh編、Gower Publishing Company:2007年;Pharmaceutical Preformulation and Formulation、Gibson編、CRC Press LLC: Boca Raton、FL、2004年を参照。
【0032】
用語「医薬組成物」とは、本明細書に開示の化合物と、他の化学成分、例えば希釈剤または担体との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を促進する。化合物を投与する複数の技法が、経口、注射、エアゾール、非経口、および局所投与を含め、当技術分野に存在するが、これらに限定されない。また、医薬組成物は、化合物を、無機酸または有機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等と反応させることによって得ることができる。
【0033】
用語「lo/陰性」とは、細胞上の細胞表面マーカーの発現について記載するために使用されるとき、未染色の対照細胞に対して、細胞上の細胞表面マーカーの発現の低いレベルから非存在のレベルに対応する。発現の低いレベルから非存在のレベルとは、未染色の対照細胞に対して、約1倍の増加、約2倍の増加、約3倍の増加、約4倍の増加、約5倍の増加、約6倍の増加、約7倍の増加、約8倍の増加、約9倍の増加、約10倍の増加であり得、約11倍の増加、約12倍の増加、約13倍の増加、約14倍の増加、約15倍の増加、約16倍の増加、約17倍の増加、約18倍の増加、約19倍の増加、または約20倍の増加であり得る。発現の低いレベルから非存在のレベルとは、約1倍の増加から約2倍の増加、約2倍の増加から約3倍の増加、約3倍の増加から約4倍の増加、約4倍の増加から約5倍の増加、約5倍の増加から約6倍の増加、約6倍の増加から約7倍の増加、約7倍の増加から約8倍の増加、約8倍の増加から約9倍の増加、約9倍の増加から約10倍の増加、約10倍の増加から約11倍の増加、約11倍の増加から約12倍の増加、約12倍の増加から約13倍の増加、約13倍の増加から約14倍の増加、約14倍の増加から約15倍の増加、約15倍の増加から約16倍の増加、約16倍の増加から約17倍の増加、約17倍の増加から約18倍の増加、約18倍の増加から約19倍の増加、または約19倍の増加から約20倍の増加であり得る。
【0034】
がん、腫瘍、腫瘍関連障害、および腫瘍性疾患の状態は重篤であり、多くの場合、生命を脅かす状態である。これらの疾患および障害は、急速増殖性の細胞増殖により特徴付けられ、その処置に有効である治療剤の同定に向けられた研究努力の対象としてなおも存続している。そのような薬剤は、患者の生存期間を延ばし、新生物と関連した急速増殖性の細胞増殖を阻害するか、または新生物の退縮をもたらす。
【0035】
HDAC阻害剤は、クロマチンリモデリングおよび遺伝子発現調節を通じて、血液学的悪性疾患および固形悪性疾患における分化およびアポトーシスを促進する新たなクラスの治療剤である。いくつかのHDAC阻害剤が同定されており、これには、ベンズアミド(エンチノスタット)、短鎖脂肪酸(すなわち、フェニル酪酸ナトリウム);ヒドロキサム酸(すなわち、スベロイルアニリドヒドロキサミン酸およびトリコスタチン(thrichostatin)A);2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシ-デカノイル部分を含有する環状テトラペプチド(すなわち、トラポキシンA)、および2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシ-デカノイル部分を有さない環状ペプチド(すなわち、FK228)が含まれる。エンチノスタットは、複数種の固形腫瘍および血液のがんにおいて臨床試験が実施されたベンズアミドHDAC阻害剤である。エンチノスタットは、急速に吸収され、約100時間の半減期を有し、重要なこととして、ヒストンアセチル化の変化が、エンチノスタット投与後の数週間にわたり持続する。
【0036】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、骨髄由来のサプレッサー細胞は、エフェクター抗腫瘍T細胞活性を遮断し、免疫回避を促進するものと考えられている。骨髄由来のサプレッサー細胞は、乳がん患者で増加し、転移性の疾患を有する患者において、最高レベルの循環性骨髄由来のサプレッサー細胞が存在する。転移性乳がんの状況において、対症的全身治療後の末梢血骨髄由来のサプレッサー細胞の平均レベルよりも高い患者ほど、全生存期間は短かった。乳がんのアジュバント化学療法の状況において、循環性骨髄由来のサプレッサー細胞のレベルが低下すると、臨床的有効性の向上と相関することが明らかにされている。乳がんのマウスモデルにおける機能試験により、骨髄由来のサプレッサー細胞が枯渇または不活性化すれば、抗腫瘍性免疫応答の発生により、腫瘍増殖および進行が抑えられることが見出された。
【0037】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、骨髄由来のサプレッサー細胞が枯渇すると腫瘍に対する免疫応答が生じることにより、がんを処置するように作用し得るものと考えられる。
骨髄由来のサプレッサー細胞
【0038】
骨髄由来のサプレッサー細胞は、先天免疫および適応免疫を阻害する未成熟骨髄細胞の不均質な集団である。骨髄由来のサプレッサー細胞は、アルギニンの枯渇、反応性窒素および酸素種の生成、ならびに阻害性サイトカインの分泌を含む機構を通じて、先天免疫および適応免疫を阻害し得る。
【0039】
骨髄由来のサプレッサー細胞は、細胞表面マーカーCD33およびCD11bを一般的に発現し、ならびにHLA-DRの発現は低下している(HLA-DR lo/陰性)。骨髄由来のサプレッサー細胞の非限定的な例として、単球系骨髄由来のサプレッサー細胞(M-MDSC)および多形核骨髄由来のサプレッサー細胞(PMN-MDSC)が挙げられる。M-MDSCは、細胞表面マーカーCD14を発現し、HLA-DR lo/陰性であり、ヒトでは細胞表面マーカーCD15を発現しない。PMN-MDSCは、細胞表面マーカーCD14を発現しないが、ヒトでは細胞表面マーカーCD15を発現する。
【0040】
骨髄由来のサプレッサー細胞は、免疫賦活細胞、例えばTリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、および樹状細胞(DC)の阻害を引き起こす。反対に、骨髄由来のサプレッサー細胞は、免疫サプレッサー細胞、例えばT2Tリンパ球、T調節細胞(Treg)、および腫瘍関連のマクロファージ(TAM)に対して刺激性であり得る。骨髄由来のサプレッサー細胞は、MDSCの増殖を促進するサイトカイン、例えばIL-6も分泌し得る。骨髄由来のサプレッサー細胞が増殖すると、必須アミノ酸、例えばTリンパ球の生存に必要なアルギニンおよびシステインの封鎖を引き起こす可能性がある。骨髄由来のサプレッサー細胞は、Tリンパ球に対して強力な毒性を有する活性酸素種、例えば一酸化窒素の生成を通じて免疫を阻害する。
【0041】
ヒストンデアセチラーゼ
HDACは、少なくとも18種類の酵素を含むファミリーであり、3クラスにグループ化される(クラスI、II、およびIII)。クラスIのHDACには、HDAC1、2、3、および8が含まれるが、これらに限定されない。クラスIのHDACは核に見出され得るが、転写制御リプレッサーと関係すると考えられている。クラスIIのHDACには、HDAC4、5、6、7、および9が非限定的に含まれ、細胞質および核の両方に見出され得る。クラスIIIのHDACは、NAD依存性タンパク質であると考えられており、サーチュインファミリーのタンパク質のメンバーが含まれるが、これらに限定されない。サーチュインタンパク質の非限定的な事例として、SIRT1~7が挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「選択的HDAC」とは、HDACの3クラスすべてとは相互作用しないHDAC阻害剤を指す。
【0042】
HDAC阻害剤
HDAC阻害剤は、汎HDAC阻害剤と選択的HDAC阻害剤とに、おおむね分類され得る。公知のHDAC阻害剤には多くの構造的多様性が認められるものの、共通した特徴も共有する:酵素活性部位と相互作用する部分、および活性部位に至るチャネル内側に位置する側鎖。これは、ヒドロキサメート基が活性部位と相互作用すると考えられているヒドロキサメート、例えばSAHAと共に認められ得る。デプシペプチドの場合、ジスルフィド結合が細胞内で還元されると、4-炭素アルケニル鎖に結合した遊離型チオール基(活性部位と相互作用する)が作り出されると考えられている。HDAC阻害剤間の差異は、活性部位に対して反対側のチャネル端部にあるHDACチャネルの縁と相互作用するという点にある。HDAC阻害剤とチャネルの縁との間のこの相互作用こそが、SAHA等の汎HDAC阻害剤とデプシペプチド等の選択的HDAC阻害剤との間で、HDACの選択性について認められた一部の差異を、少なくともある程度説明すると考えられている。特に好ましいHDAC阻害剤は、エンチノスタットである。エンチノスタットは、化学名N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イル)メトキシカルボニルアミノ-メチル]-ベンズアミド、および以下に示す化学構造を有する。
【化1】
【0043】
プログラム細胞死-1(PD-1)
PD-1は、受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーに属するT細胞調節因子のCD28ファミリーのメンバーである細胞表面受容体である。ヒトPD-1遺伝子は、染色体2q37に位置し、また完全長PD-1 cDNAは、288個のアミノ酸残基を有するタンパク質をコードし、マウスPD-1と60%の相同性を有する。同遺伝子は、胸腺の発生中にCD4CD8(ダブルネガティブ)胸腺細胞上に存在し、長期抗原曝露後に、TおよびB細胞等の成熟した造血細胞、NKT細胞、および単球における活性化の際に発現する。
【0044】
いかなる理論にも縛られるつもりはないが、リガンドPD-L1のPD-1への結合は、エフェクター抗腫瘍T細胞活性を下方調節し、免疫回避を容易にすることが予期される。これは、PD-1/PD-L1発現と、胃癌、卵巣癌、肺癌および腎臓癌などの数種の腫瘍タイプにおける予後不良との関連の発見によって裏付けられている。PD-1は、黒色腫において腫瘍浸潤性Tリンパ球により優勢に発現されることが報告されている。
【0045】
PD-1-特異的抗体によりPD-1を遮断するin vitro試験では、IFN-γ-分泌性抗原特異的細胞の頻度の増加を含む、メラノーマ特異抗原に対する細胞傷害性T細胞応答が増強することが示された。
【0046】
いずれの理論にも拘束されるものではないが、PD-1を標的とすれば、がんに対する有効な治療戦略として作用し得るものと考えられる。
【0047】
PD-1を臨床的に標的とする主たる方法は、PD-1またはPD-L1の機能を阻害する遺伝子工学的に作出されたモノクロナール抗体の開発によるものであった。
【0048】
PD-L1はまた、B7-1(CD80)に結合することも示されており、これもT細胞増殖およびサイトカイン産生を抑制する相互作用であるが、がんにおけるPD-L1:PD-1およびPD-L1:B7-1経路の正確な相対的寄与率は不明確なままである。現在開発中のPD-1標的化薬剤は、両方の経路を阻害する。しかしながら、PD-1およびB7-1の結合部位は隣接しているがオーバーラップしていないため、一方または他方を特異的に標的化する薬剤が開発される可能性がある。
【0049】
がん細胞は、それらの表面上で高い発現レベルのPD-L1を駆動させて、腫瘍微小環境に浸潤するあらゆるT細胞上で阻害性PD-1受容体を活性化させ、効果的にそれらの細胞をスイッチオフすることができる。実際に、PD-L1発現レベルの上方調節が、多くの様々ながんタイプで実証されており(例えば、黒色腫[40%~100%]、NSCLC[35%~95%]、および多発性骨髄腫[93%])、高レベルのPD-L1発現は、不良な臨床転帰との関連が示されている。さらに、腫瘍浸潤T細胞は、正常な組織に浸潤するT細胞より有意に高いレベルのPD-1を発現することが示されている。腫瘍微小環境は、インターフェロン-ガンマ(IFNγ)などの炎症促進性サイトカインを分泌して、それらが腫瘍で発現された高レベルのPD-L1に確実に応答できるように腫瘍浸潤T細胞上でのPD-1の発現を上方調節する可能性があると考えられる。
【0050】
ペンブロリズマブ
ペンブロリズマブは、安定化させるために操作されたFc領域を有するヒトIgG4免疫グロブリン分子上にグラフト化された高親和性マウス抗PD-1由来の可変領域からなる、ヒト化モノクロナールIgG4抗PD-1抗体である。前臨床抗腫瘍活性が、複数の腫瘍型の動物モデルにおいて実証されている。ヒト初回、第I相用量漸増試験を、進行した難治性の悪性腫瘍を有する患者において、用量レベル1、3、および10mg/kgにおいて、初回、および4週間後、次に2週間毎に静脈内投与して実施した。認められた最大毒性は、グレード2の掻痒であり、薬物関連のグレード3またはそれよりも高い有害事象(AE)は認められなかった。したがって、最大耐用量には到達しなかった。半減期は、13.6~21.7日であり、用量との関連性は明確ではなかった。患者4例において多少の腫瘍退化が生じた。次に、この試験を、非ランダム化コホートにおいて、2週間毎に10mg/kgまたは3週間毎に2もしくは10mg/kgでペンブロリズマブを受ける患者について拡大した;合計135例のメラノーマを有する患者が参加した。登録には、事前のイピリムマブを受けた患者48例が含まれたが、免疫関連の重度有害事象(irAE)を経験することはなかった。患者の79%は、いくつかのAEを有したが、皮膚発疹または掻痒、疲労、下痢、腹痛、および肝機能障害を含む、重度(グレード3または4)の薬物関連の毒性を有した患者は13%にすぎなかった。最高頻度(23%)の重度毒性は、最高用量(2週間毎に10mg/kg)を受けた患者に認められたのに対して、用量がそれほど高くないコホートでは<10%であった。自己免疫的と思われるAEとして、線維性肺炎、腎臓損傷、肝炎、下痢、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、および副腎機能不全の孤立した事例が含まれた。免疫関連の応答基準に基づく奏効率(ORR)は、38%(117例中44例)であり、さらなる患者8例が未確認の応答を経験した。合計77%が、24週間にわたり疾患が安定した患者8例を含め、ある程度の腫瘍退縮を認めた。大部分の応答は、12週目の初回放射線学的評価時までに立証された。無増悪生存期間中央値は、7ヶ月まで伸びた。応答性腫瘍の生検は、CD8T細胞による密な浸潤を示した。事前にイピリムマブに曝露しても、有効性または毒性転帰に明らかな影響は有さないと思われた。
【0051】
MPDL3280A
MPDL3280Aは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を最小化することによって効能および安全性を最適化するように設計された、操作された結晶化可能断片(Fc)ドメインを含有するヒト抗PD-L1 mAbである。いかなる具体的な理論にも縛られるつもりはないが、この構造は、有効な抗腫瘍免疫応答に必要な活性化T細胞のADCCが媒介する枯渇を最小化しながら、PD-1/PD-L1相互作用の阻害を可能にすると理解されている。
【0052】
MPDL3280Aは、局所進行性または転移性の固形腫瘍を有する患者での第I相試験において評価されている。これまで合計175人の患者が採用されてきた。抗体を、単一の薬剤として、127日の期間中央値において≦1、3、10、15、および20mg/kgの漸増用量で投与した。2つの拡大コホート;扁平上皮または非扁平NSCLCを有する85人の患者のコホート(そのうち53人が効能について評価可能であった)および45人の転移性黒色腫患者のコホート(そのうち35人が効能について評価可能であった)の結果も報告されている。両方のコホートにおいて、3週間毎に1年まで、≦1、10、15、および25mg/kgのMPDL3280Aの用量を投与した。MPDL3280Aは、持続的応答を実証し、十分に忍容された;有効性のデータを表1にまとめる。NSCLCコホート中の85人の患者のうち、55%が少なくとも3回の先行療法で強い強度で前処置を受けており、81%が喫煙者または元喫煙者であり、19%が喫煙未経験者であった。24週のPFS率は、扁平上皮細胞NSCLCでは44%、非扁平上皮細胞NSCLCでは46%であった。
【0053】
エキセメスタン
エキセメスタンは、乳がんを処置するために使用される薬物である。エキセメスタンは、アロマターゼ阻害剤として知られている薬物のクラスのメンバーである。一部の乳がんは、増殖するためにホルモンを必要とする。ホルモン受容体陽性乳がんとして知られているそれらのがんは、エストロゲン受容体(ER)またはプロゲステロン受容体(PR)を発現し、したがってER陽性またはPR陽性乳がんと呼ばれる。エストロゲンの主要供給源は、閉経前の女性では卵巣であるが、一方、閉経後の女性の場合、身体のエストロゲンのほとんどは、末梢組織、例えば乳房脂肪組織および脳内で、アロマターゼ酵素がアンドロゲンをエストロゲンに変換することにより産生される。エキセメスタンは、閉経後の女性において、手術または放射線に加えてER陽性乳がんで使用されるアロマターゼ阻害剤である。エキセメスタンは、不可逆性の経口ステロイド系アロマターゼ不活化剤であり、天然基質のアンドロステンジオンと構造的に関連する。エキセメスタンは、アロマターゼ酵素に対する偽の基質として作用し、処理を受けてアロマターゼ活性部位に不可逆的に結合する中間体となり、自殺的阻害によりアロマターゼを遮断する。
【化2】
【0054】
エキセメスタンは、タモキシフェンを2~3年受けた初期のER陽性乳がんを有する閉経後の女性のアジュバント処置のために適応される。被験体は、合計5年連続のアジュバントホルモン療法を完了するためにエキセメスタンに切替える。また、エキセメスタンは、疾患がタモキシフェン療法後に進行した閉経後の女性において、進行した乳がんの処置にも適応される。1日当たり25mgで、2~3年間行われるアジュバント療法の経口エキセメスタンは、ER陽性または受容体の状態が不明の初期段階乳がんを有する閉経後の女性の処置において、5年連続のアジュバントタモキシフェンよりも一般的に有効であった。また、1日当たりの25mgのエキセメスタンは、閉経後の女性における初期段階乳がんの一次アジュバント療法においても有効である。
【0055】
肺がん
肺がんは、米国内および世界全体のいずれにおいても、女性および男性の主たるがん死亡原因である。肺がんは、女性の主たるがん死亡原因として、乳がんを凌駕する。2014年の米国内では、158,040名が肺がんによって死亡すると予測され、結腸および直腸のがん、乳がん、ならびに前立腺がんによる死亡数の合計を上回る。最初期段階において診断された肺がんの生存率は高めで、およそ49%が5年またはそれより長く生存するものの、身体の他の部位に広がった肺がんと診断された者では、約2%が診断から5年後に生存するに過ぎない。
【0056】
正常細胞が制御無しにその成長および増殖を引き起こす変換を受けたときに、がんが生ずる。細胞は、それが発生した周辺組織と異なる塊または腫瘍を形成する。腫瘍は、健常細胞から酸素、栄養分、および空間を奪うので、かつ浸潤し、正常組織が機能する能力を破綻または低下させるので危険である。
【0057】
大半の肺腫瘍は悪性である。これは、腫瘍がその周辺の健康な組織に浸潤し、それを破壊し、身体全体を通じて広がる可能性があることを意味する。腫瘍は、近隣のリンパ節に、または血流を通じて他の臓器に広がる可能性がある。このプロセスは転移と呼ばれる。肺がんが転移したとき、肺内の腫瘍は原発腫瘍と呼ばれ、身体の他の部分の腫瘍は、続発性腫瘍または転移性腫瘍と呼ばれる。
【0058】
一部の肺内の腫瘍は、身体内の別の場所にあるがんからの転移である。肺は、転移の一般的な部位である。この場合には、がんは、肺がんとはみなされない。例えば、前立腺がんが血流により肺に広がった場合には、それは肺内の転移性前立腺がん(続発性のがん)であり、肺がんとは呼ばれない。
【0059】
肺がんは、異なる種類の腫瘍の群を含む。肺がんは、全症例の約95%を占める2つの主要な群に通常分割される。群への分割は、がんを構成する細胞の種類に基づく。2つの主要な種類の肺がんが、顕微鏡下で観察したときの腫瘍の細胞サイズにより特徴付けられる。それらは、小細胞肺がん(SCLC)および非小細胞肺がん(NSCLC)と呼ばれる。NSCLCには、いくつかの腫瘍のサブタイプが含まれる。SCLCはあまり一般的ではないが、より急速に増殖し、NSCLCよりも転移する可能性が高い。多くの場合、SCLCは、がんと診断されたときに身体の他の部分にすでに広がっている。約5%の肺がんが、カルチノイド腫瘍、リンパ腫等を含む稀な細胞型を有する。本明細書で使用する場合、用語「肺がん」には、SCLC、NSCLC、カルチノイド腫瘍、リンパ腫、およびその様々なサブタイプが含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
骨髄由来のサプレッサー細胞は、肺がんにおいていくつかの重要な機能を有する。前臨床的には、マウスモデルにより、骨髄由来のサプレッサー細胞と肺腫瘍は、疾患の発端および進行の過程で共進化することが実証されている。臨床的NSCLCでは、循環性骨髄由来のサプレッサー細胞の数は、全生存と逆に相関することが明らかにされている。M-MDSCは、活性酸素種を生成し、T細胞の増殖を阻害し、インターフェロン-γ(IFN-γ)を分泌することが明らかにされている。循環性骨髄由来のサプレッサー細胞のレベルおよびその活性の上昇は、治療応答と逆の相関を示し、NSCLCの再発と正に相関する。
【0061】
非小細胞肺がん
NSCLCは、小細胞癌(燕麦細胞癌)型に該当しない肺のがんである。用語「非小細胞肺がん」は、様々な種類の気管支原性癌(気管支の内層に起因する癌)に適用される。特別な種類のNSCLCの例として、腺癌、扁平上皮癌、および大細胞がん(すなわち、大細胞未分化癌)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
腺癌は、臓器の内層または内面に発現するがんである。腺癌は、最も一般的な種類の肺がんであり、肺がんの全症例の30%~40%を占める。腺癌のサブタイプは、気管支肺胞細胞癌と呼ばれ、胸部X線では肺炎様の外観を呈する。
【0063】
扁平上皮癌は、扁平上皮細胞において始まるがんである。扁平上皮細胞(squamos cell)は、顕微鏡下では魚鱗のように見える、薄く扁平な細胞である。扁平上皮細胞は、身体の中空臓器の内層である皮膚の表面、および気道および消化管の通路を形成する組織内に見出される。扁平上皮癌は、これらの組織のいずれにも発生し得る。扁平上皮癌は、2番目に最も一般的な種類の肺がんであり、全症例の約30%を占める。
【0064】
大細胞癌は、扁平上皮または腺の成熟のエビデンスを示さない。したがって、これらの腫瘍では、多くの場合、すべての他の可能性が排除される場合、既定により診断が下される。これらの腫瘍は、生検前には、その診断を示唆するようなあらゆる診断上の特徴を欠く。これらは、急速に増殖し、早期に転移する傾向を有し、喫煙と強く関連する。大細胞腫瘍は、通常、大型で、かさ高く、境界明瞭な、灰色がかったピンク色の塊であり、広範な出血および壊死を伴う。これらは、一般的に中心壊死を有するが、稀に空洞形成する。これらは、中央から末梢の肺領域中に存在する傾向を有する。これらは、区域気管支または亜区域気管支を含めて局所的に広がる場合もある。大細胞癌の改変体として、巨細胞癌がある。このサブタイプは特に侵襲的であり、予後も極めて不良である。これらの腫瘍は、大型の末梢性の塊として一般的に存在し、局所的な壊死性成分を有する。これらの腫瘍は、直接広がらない限り、太い気道とは関係しない。大細胞がんは、肺がんの全症例の10%~20%を占める。
【0065】
メラノーマ
メラノーマは、メラニン色素を作製する細胞であり、神経堤に由来するメラニン形成細胞の悪性腫瘍である。大半のメラノーマは皮膚に発生するが、粘膜表面またはぶどう膜を含む、神経堤細胞が移動する他の部位にも生ずる可能性がある。ぶどう膜メラノーマは、発生数、予後因子、分子的特徴、および処置において、皮膚のメラノーマとは顕著に異なる。
【0066】
2014年の米国内では、9,710名がメラノーマにより死亡すると予測され、新規症例数は76,100例に登ると見積もられた。皮膚がんは、米国内で診断が下された最も一般的な悪性疾患であり、毎年、2百万人において3.5百万個のがんが診断されている。メラノーマは、皮膚がんのうち5%未満を占めるに過ぎないが、最も多くの死亡を引き起こす。発生数は、過去40年間にわたり増加している。高齢の男性が最も高いリスクに晒されている;ただし、メラノーマが25~29歳の若年成人における最も一般的ながんであり、15~29歳の若年者における2番目に最も一般的ながんである。眼のメラノーマが、最も一般的な眼のがんであり、毎年、およそ2,000症例が診断を下される。
【0067】
メラノーマは、主として成人に生ずるが、症例の50%超が、皮膚の見かけ上正常な領域に発生する。メラノーマは粘膜表面やぶどう膜を含む、あらゆる場所に生ずる可能性があるが、女性では、メラノーマは、四肢により一般的に生じ、また男性では、体幹または頭頸部上に最も一般的に生ずる。
【0068】
予後は、原発性および転移性の腫瘍の特徴により影響を受ける。最も重要な予後因子として、メラノーマの厚さまたは浸潤レベル、1ミリメーター当たりの有糸分裂として定義された分裂指数、原発部位における潰瘍形成または出血、マクロ転移およびミクロ転移の特質を備えた関係する局部リンパ節の数、全身転移、部位-非内臓 対 肺 対 他のすべての内臓部位、血清乳酸脱水素酵素レベルの上昇が挙げられるが、これらに限定されない。いずれの理論にも拘束されるものではないが、腫瘍浸潤リンパ球の存在は、潜在的な予後因子であり得ると考えられる。
【0069】
骨髄由来のサプレッサー細胞は、メラノーマにおいていくつかの重要な臨床的相関を有することが明らかにされている。臨床では、循環性M-MDSCおよびPMN-MDSCのレベルは、悪性メラノーマにおける疾病負荷と正に相関する。後期段階メラノーマ(段階3~4)を有する患者は、より高レベルの循環性M-MDSCを有する。M-MDSCの循環レベルは、進行したメラノーマにおける全生存と逆に相関する。M-MDSCの循環レベルは、進行したメラノーマを有する患者における活性化抗原特異的Tリンパ球のレベル低下と逆に相関する。M-MDSCおよびPMN-MDSCの活性化の低下は、イピリムマブ(ipilumimab)で処置されたメラノーマ患者における治療応答の改善と正に相関する。イピリムマブ処置は、循環性PMN-MDSCのレベルを低下させることも示されている。
乳がん
【0070】
乳がんは、乳房組織から発症するがんである。乳がんの兆候として、乳房内のしこり、乳房形状の変化、皮膚の陥凹形成、乳首からの液漏出、または皮膚の鱗状の紅斑を挙げることができる。疾患が遠隔転移した患者において、骨痛、リンパ節腫脹、呼吸困難、または黄疸を認める場合がある。乳がんの転帰は、癌型、疾患の範囲、および被験体の年齢に応じて変化する。世界的には、乳がんは、女性におけるがんの主要タイプであり、全症例の25%を占める。2012年には、1億6800万件の症例、および522,000件の死亡が生じた。先進国でより一般的であり、男性よりも女性において100倍超より一般的である。乳がんは、いくつかの評定システムにより分類される。これらのシステムのそれぞれは、予後を左右する可能性があり、処置にも影響を及ぼし得る。乳がんは、通常、その組織学的外観により主に分類される。ほとんどの乳がんは、腺管または小葉の内壁を覆う上皮に由来し、これらのがんは、腺管癌または小葉癌として分類される。非浸潤性の癌腫は、低グレードのがん性または前がん状態の細胞が、特定の組織コンパートメント、例えば乳腺管内で、周辺組織への浸潤を伴わずに増殖することである。対照的に、浸潤癌は、最初の組織コンパートメントにそれ自体を限局させない。
【0071】
TNMシステムを使用する乳がんのステージ分類は、腫瘍(T)のサイズ、腫瘍が隣接したリンパ節(N)まで広がっているかどうか、および腫瘍が身体のより遠隔部位に転移(M)しているかどうかに基づく。より大きなサイズ、節浸潤、および転移は、より大きなステージ番号およびより不良な予後を有する。主たるステージは、ステージ0、ステージ1~3、およびステージ4である。ステージ0は、前がんまたはマーカー状態、すなわち非浸潤性腺管癌(DCIS)または非浸潤性小葉癌(LCIS)である。ステージ1~3は、乳房または局部リンパ節内に留まる。ステージ4は、予後があまり好ましくない転移がんである。
【0072】
乳がん細胞は、その表面上ならびにその細胞質および核内に受容体を有する。化学的メッセンジャー、例えばホルモンは、受容体に結合するが、これは細胞において変化を引き起こす。乳がん細胞は、3つの重要な受容体:エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2を有する場合と、有さない場合がある。これより、乳がんは、ホルモン受容体陽性乳がんまたはER-/PR陽性乳がん、HER2陽性乳がん、およびER、PR、およびHER2について陰性である三種陰性乳がんに分割される。
【0073】
骨髄由来のサプレッサー細胞は、乳がんにおいていくつかの重要な臨床的相関を有することが示されている。乳がんの前臨床モデルでは、骨髄由来のサプレッサー細胞のレベルは、腫瘍サイズと正の相関し、T細胞と逆に相関する。臨床では、循環性骨髄由来のサプレッサー細胞のベースラインレベルは、転移性乳がんにおける疾病負荷、転移拡散、および生存率の低下と相関する。循環性骨髄由来のサプレッサー細胞のベースラインレベルは、HER2陰性乳がんにおけるアジュバント化学療法に対する応答と相関することが示されており、レベルの増加は化学療法に対するより不良な応答を示す。
ホルモン受容体陽性乳がん
【0074】
ホルモン、例えばエストロゲンおよびプロゲステロンは、ホルモン受容体陽性であるがんの増殖を促進する。乳がん3例のうち約2例は、ホルモンのエストロゲン(ER陽性乳がん)またはプロゲステロン(PR陽性乳がん)に対する受容体を含有するので、ホルモン受容体陽性である。これらの乳がんは、増殖に関してホルモンに依存するので、療法は、乳がん細胞のエストロゲンレベルを低下させるか、またはエストロゲン活性を停止させるように設計されてきた。
【0075】
エストロゲン活性を停止させる療法の非限定的な例として、タモキシフェン、トレミフェン、およびフルベストラントが挙げられる。タモキシフェンは、エストロゲンが乳がん細胞内でエストロゲン受容体に結合するのを遮断する。タモキシフェンは、乳房細胞内で抗エストロゲンのように作用するが、子宮および骨等のその他の組織内ではエストロゲンのように機能する。タモキシフェンは、いくつかの組織内ではエストロゲンのように作用するが、別の組織内では抗エストロゲンのように作用するので、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)と呼ばれる。トレミフェンは、転移性乳がんの処置について承認されている別のSERMである。フルベストラントは、エストロゲン受容体を最初に遮断し、その分解を引き起こすきっかけとなる薬物である。フルベストラントは、身体全体を通じて抗エストロゲンのように作用するので、SERMではない。その他のホルモン療法後、例えば、タモキシフェンが効かなくなった後に、フルベストラントが、転移性乳がんを処置するために使用される。
【0076】
アロマターゼ阻害剤(AI)は、閉経後の女性において、エストロゲン産生を遮断するように機能する。アロマターゼ阻害剤は、脂肪組織および脳で生成したアンドロゲンを変換するアロマターゼを遮断することにより作動する。アロマターゼ阻害剤の非限定的な例として、レトロゾール、アナストロゾール、およびエキセメスタンが挙げられる。
【0077】
三種陰性乳がん
三種陰性乳がんは、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、またはHER-2遺伝子を発現しない腫瘍によって特徴付けられ、これらのがんは内分泌療法または他の利用可能な標的化薬剤に応答しないことから、重要な臨床的課題の1つである。三種陰性乳がんにおける転移可能性は、他の乳がんサブタイプの転移可能性に類似しているが、これらの腫瘍は、より短い再発および死亡までの期間中央値を伴う。したがって、1つの重要な目標は、特定の薬剤に対して差次的な応答性を有するサブタイプの異なる処置アプローチに関して、三種陰性疾患を有する患者の高いおよび低いリスクのサブセットを確実に選択するための予後因子およびマーカーを同定することである。しかしながら、信頼できる予後マーカーは見つけにくく、マーカーの有用性は一貫性がない。例えば、上皮増殖因子受容体(EGFR)が研究されているが、予後に関する標準的アッセイまたはEGFR発現レベルのカットオフについて未だ一致が見られない。同様に、三種陰性のステータスは、時には基底様乳がんの代用として使用されるため、特異的な基底試験マーカーが調査されている。実際に、ER/PRおよびHER-2陰性を使用して基底様乳がんを有する患者を集めるように設計された試験は、三種陰性集団に近いものしか提供できず、時にはCK5/6、EGFRステータス等のようなより特異的なインジケーターを使用して再分析されるが、それでも不一致に見舞われる。
【0078】
化学療法が三種陰性乳がん処置の頼みの綱であり続けているが、たとえ顕著な臨床上の進歩がなされたとしても、なお数年以内に重要な制限を克服する必要がある。現在の三種陰性疾患の処置戦略としては、アントラサイクリン、タキサン、イキサベピロン、白金剤、および生物学的薬剤が挙げられる。つい最近になって、三種陰性乳がんにおける治療メカニズムとしてEGFR阻害が提唱されているが、ここでも結果は一貫していない。また、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼおよびアンドロゲン受容体を標的化する薬剤もこれらの患者またはそれらのサブセットにおいて提唱されており、進行中の試験から、三種陰性疾患におけるこれらの薬剤の価値に関して確定的な指針がもたらされると予想される。三種陰性乳がんは、明らかに、ERおよびHER-2発現の両方の観点から別個の臨床サブタイプであるが、さらなる下位分類が必要である。今のところ、三種陰性乳がんの決定的な弱点を標的化する、明確な、証明済みの有効な単一の薬剤はない。
【0079】
三種陰性乳がんの様々なサブタイプとしては、基底様TNBC(基底様1および2(BL-1、BL-2)、免疫調節(IM))および間葉系幹細胞様三種陰性乳がん(MSL)、および管腔アンドロゲン受容体(LAR)サブタイプが挙げられる。
【0080】
PD-L1は、腎細胞癌、膵臓がん、卵巣がん、胃がん、食道がん、および肝細胞癌などの多くのがんで発現される。調査によれば、50%(乳がん研究で評価した44種の腫瘍のうち22種)でPD-L1の発現が確認された。15種(34%)において、発現は腫瘍上皮に限定されたが、それに対して18種(41%)において腫瘍浸潤リンパ球で確認された。さらに、PD-L1の腫瘍内発現は、高い組織学的グレードおよび陰性ホルモン受容体のステータスに関連することが見出された。別の研究でも、以前の研究と一致して、TNBC腫瘍のおよそ20%がPD-L1を発現することがあった。これらのTNBC腫瘍の大多数(95%)がグレード3であった。
【0081】
いかなる具体的な理論にも縛られるつもりはないが、腫瘍がPD-L1発現を駆動させることができる可能性のあるメカニズムは、腫瘍形成性のシグナル伝達経路によるという仮説が立てられる。これは、PTEN損失がPD-L1発現増加に関連することが観察された膠芽腫で最初に実証され、PI3K経路の関与が示唆される。PTEN損失はTNBCで一般的に見られるため、PTENとPD-L1発現との関係を研究で調査した。>5%のPD-L1発現がある乳がん組織マイクロアレイに含まれるTNBC腫瘍のおよそ50%において、PTEN染色の損失が観察された。同様に、TNBC細胞株のパネルにおいて、PTEN損失を示す2つの例示的な細胞株、MDA-MB-468およびBT-549は、高い細胞表面におけるPD-L1発現を有していたことが見出された。まとめると、これらのデータから、TNBCには、PD-L1調節の複数のメカニズムが存在する可能性があることが示唆された。
【0082】
併用療法について患者を選択する方法
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞を測定して、がんと診断された患者に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法の投与を決定することを含む。一部の実施形態では、方法は、骨髄由来のサプレッサーと末梢血液単核細胞との比が1:200から1:4の間にある場合に、併用療法について患者を選択することをさらに含む。
【0083】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞を測定し、CD14陽性細胞を測定し、または末梢血液単核細胞を測定して、がんと診断された患者に、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法の投与を決定することを含む。一部の実施形態では、方法は、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と末梢血液単核細胞との比が、1:200から1:1の間にある場合に、併用療法について患者を選択することをさらに含む。一部の実施形態では、方法は、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞とCD14陽性細胞との比が、1:100から99:1の間にある場合に、併用療法について患者を選択することをさらに含む。
【0084】
第2の治療剤の非限定的な例として、抗PD-1抗体、例えば、ニボルマブおよびペンブロリズマブ;抗PD-L1抗体、例えばMPDL3280A;ならびにエキセメスタンが挙げられる。がんの非限定的な例として、乳がん、例えば、ホルモン受容体陽性乳がんおよび三種陰性乳がん;肺がん、例えば、非小細胞性肺がん、扁平上皮癌、および大細胞癌;ならびにメラノーマ、例えば、転移性メラノーマが挙げられる。一部の実施形態では、第2の治療剤はMPDL3280Aであり、がんは乳がんである。一部の実施形態では、第2の治療剤はMPDL3280Aであり、乳がんは三種陰性乳がんである。一部の実施形態では、第2の治療剤はエキセメスタンであり、がんは乳がんである。一部の実施形態では、第2の治療剤はエキセメスタンであり、乳がんはホルモン受容体陽性乳がんである。
【0085】
一部の実施形態では、エンチノスタットおよびエキセメスタンは、経口投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、経口投与され、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、輸液により投与される。輸液の非限定的な例として、皮下輸液、静脈内輸液、腹腔内輸液、および浸透圧ポンプによる輸液が挙げられる。
【0086】
一部の実施形態では、エンチノスタットは、併用療法において最初に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、毎週投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、2週毎に投与される。
【0087】
エンチノスタット、エキセメスタン、抗PD-1抗体、または抗PD-L1抗体は、約毎日、約2日毎に、約3日毎に、約4日毎に、約5日毎に、約6日毎に、約毎週、約2週毎に、約3週毎に、約4週毎に、約毎月、約5週毎に、約6週毎に、約7週毎に、約8週毎に、または約2ヶ月毎に投与可能である。エンチノスタット、エキセメスタン、抗PD-1抗体、または抗PD-L1抗体は、約毎日~約2日毎に、約2日毎~約3日毎に、約3日毎~約4日毎に、約4日毎~約5日毎に、約5日毎~約6日毎に、約6日毎~約毎週、約毎週~約2週毎に、約2週毎~約3週毎に、約3週毎~約4週毎に、約4週毎~約毎月、約毎月~約5週毎に、約5週毎~約6週毎に、約6週毎~約7週毎に、約7週毎~約8週毎に、または約8週毎~約2ヶ月毎に投与可能である。
【0088】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞は循環性であり、末梢血液試料を取得することにより、末梢血液中でそれぞれ測定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞、CD14陽性細胞、および末梢血液単核細胞は、循環性であり、末梢血液試料を取得することにより末梢血液中でそれぞれ測定される。一部の実施形態では、末梢血液試料は、抗凝固剤で処置される。一部の実施形態では、末梢血液試料は、抗凝固剤含有容器内に収集される、または移される。抗凝固剤の非限定的な例として、ヘパリン、ヘパリンナトリウム、シュウ酸カリウム、EDTA、およびクエン酸ナトリウムが挙げられる。一部の実施形態では、末梢血液試料は、赤血球溶解剤で処置される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞は、組織生検中で測定される。
【0089】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞の数は、末梢血液試料中で測定され、末梢血液単核細胞に対する骨髄由来のサプレッサー細胞の百分率が決定される。一部の実施形態では、末梢血液試料から得た1つまたは複数の骨髄由来のサプレッサー細胞は、第1の結合剤と接触して、1つまたは複数の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体を生成する。一部の実施形態では、末梢血液試料由来の1つまたは複数の末梢血液単核細胞は、第2の結合剤と接触して、1つまたは複数の第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体を生成する。一部の実施形態では、末梢血液試料中の、第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体に対する第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体の百分率が測定される。
【0090】
一部の実施形態では、末梢血液単核細胞に対する骨髄由来のサプレッサー細胞の百分率、または末梢血液試料中もしくは組織生検中の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体および第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体の百分率が、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を投与するために患者を選択するのに利用される。
【0091】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサーもしくは末梢血液単核細胞の百分率、または末梢血液試料中もしくは組織生検中の、第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体および第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体の百分率は、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.6%、少なくとも約0.7%、少なくとも約0.8%、少なくとも約0.9%、少なくとも約1%、少なくとも約1.1%、少なくとも約1.2%、少なくとも約1.3%、少なくとも約1.4%、少なくとも約1.5%、少なくとも約1.6%、少なくとも約1.7%、少なくとも約1.8%、少なくとも約1.9%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約24%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%または少なくとも約50%である。
【0092】
一部の実施形態では、末梢血液単核細胞に対する骨髄由来のサプレッサー細胞の百分率、または末梢血液試料もしくは組織生検骨髄由来のサプレッサー細胞中の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体および第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体の百分率は、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約0.3%、約0.3%~約0.4%、約0.4%~約0.5%、約0.5%~約0.6%、約0.6%~約0.7%、約0.7%~約0.8%、約0.8%~約0.9%、約0.9%~約1%、約1%~約1.1%、約1.1%~約1.2%、約1.2%~約1.3%、約1.4%~約1.5%、約1.5%~約1.6%、約1.6%~約1.7%、約1.7%~約1.8%、約1.8%~約1.9%、約1.9%~約2%、約2%~約3%、約3%~約4%、約4%~約5%、約5%~約6%、約6%~約7%、約7%~約8%、約8%~約9%、約9%~約10%、約10%~約11%、約11%~約12%、約12%~約13%、約13%~約14%、約14%~約15%、約15%~約16%、約16%~約17%、約17%~約18%、約18%~約19%、約19%~約20%、約20%~約21%、約21%~約22%、約22%~約23%、約23%~約24%、約24%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%または約45%~約50%である。
【0093】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞の数は、末梢血液試料中で測定され、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比が決定される。一部の実施形態では、末梢血液試料から得た1つまたは複数の骨髄由来のサプレッサー細胞は、第1の結合剤と接触して、1つまたは複数の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体を生成する。一部の実施形態では、末梢血液試料から得た1つまたは複数の末梢血液単核細胞は、第2の結合剤と接触して、1つまたは複数の第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体を生成する。一部の実施形態では、末梢血液試料中の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との比が測定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比、または第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との比は、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を投与するために患者を選択するために利用される。
【0094】
一部の実施形態では、第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との比は、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を投与するために患者を選択するために利用される。
【0095】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比、または末梢血液試料中もしくは組織生検中の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との比は、1:10000、1:5000、1:4000、1:3000、1:2000、1:1000、1:500、1:400、1:300、1:250、1:200、1:150、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:49、1:48、1:47、1:46、1:45、1:44、1:43、1:42、1:41、1:40、1:39、1:38、1:37、1:36、1:35、1:34、1:33、1:32、1:31、1:30、1:29、1:28、1:27、1:26、1:25、1:24、1:23、1:22、1:21、1:20、1:19、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2または1:1である。
【0096】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比、または末梢血液試料中もしくは組織生検中の第1の結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体と第2の結合剤-末梢血液単核細胞複合体との比は、1:10000~1:5000、1:5000~1:4000、1:4000~1:3000、1:3000~1:2000、1:2000~1:1000、1:1000~1:500、1:500~1:400、1:400~1:300、1:300~1:200、1:200~1:100、1:100~1:90、1:90~1:80、1:80~1:70、1:70~1:60、1:60~1:50、1:50~1:49、1:49~1:48、1:48~1:47、1:47~1:46、1:46~1:45、1:45~1:44、1:44~1:43、1:43~1:42、1:42~1:41、1:41~1:40、1:40~1:39、1:39~1:38、1:38~1:37、1:37~1:36、1:36~1:35、1:35~1:34、1:34~1:33、1:33~1:32、1:32~1:31、1:31~1:30、1:30~1:29、1:29~1:28、1:28~1:27、1:27~1:26、1:26~1:25、1:25~1:24、1:24~1:23、1:23~1:22、1:22~1:21、1:21~1:20、1:20~1:19、1:19~1:18、1:18~1:17、1:17~1:16、1:16~1:15、1:15~1:14、1:14~1:13、1:13~1:12、1:12~1:11、1:11~1:10、1:10~1:9、1:9~1:8、1:8~1:7、1:7~1:6、1:6~1:5、1:5~1:4、1:4~1:3、1:3~1:2または1:2~1:1である。
【0097】
一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりの骨髄由来のサプレッサー細胞の数が決定される。単位体積の非限定的な例として、ピコリットル(pL)、ナノリットル(nL)、マイクロリットル(μL)、ミリリットル(mL)、デシリットル(dL)、およびリットル(L)が挙げられる。一部の実施形態では、末梢血液試料から得たいくつかの骨髄由来のサプレッサー細胞は、結合剤と接触して、単位体積当たり、いくつかの結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体を生成する。一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりの骨髄由来のサプレッサー細胞または結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体の数が、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を投与するために患者を選択するために利用される。一部の実施形態では、生体試料は末梢血液試料である。
【0098】
一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりの骨髄由来のサプレッサー細胞または結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体は、単位体積当たり約1個、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個、約7個、約8個、約9個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約60個、約70個、約80個、約90個、約100個、約150個、約200個、約250個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約600個、約700個、約800個、約900個、約1000個、約1500個、約2000個、約2500個、約3000個、約3500個、約4000個、約4500個、約5000個、約6000個、約7000個、約8000個、約9000個、約10000個、約15000個、約20000個、約25000個、約30000個、約35000個、約40000個、約45000個、約50000個、約60000個、約70000個、約80000個、約90000個または約100000個である。
【0099】
一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりの骨髄由来のサプレッサー細胞または結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞複合体は、単位体積当たり約1個~約2個、約2個~約3個、約3個~約4個、約4個~約5個、約5個~約6個、約6個~約7個、約7個~約8個、約8個~約9個、約9個~約10個、約10個~約15個、約15個~約20個、約20個~約25個、約25個~約30個、約30個~約35個、約35個~約40個、約40個~約45個、約45個~約50個、約50個~約60個、約60個~約70個、約70個~約80個、約80個~約90個、約90個~約100個、約100個~約150個、約150個~約200個、約200個~約250個、約250個~約300個、約300個~約350個、約350個~約400個、約400個~約450個、約450個~約500個、約500個~約600個、約600個~約700個、約700個~約800個、約800個~約900個、約900個~約1000個、約1000個~約1500個、約1500個~約2000個、約2000個~約2500個、約2500個~約3000個、約3000個~約3500個、約3500個~約4000個、約4000個~約4500個、約4500個~約5000個、約5000個~約6000個、約6000個~約7000個、約7000個~約8000個、約8000個~約9000個、約9000個~約10000個、約10000個~約15000個、約15000個~約20000個、約20000個~約25000個、約25000個~約30000個、約30000個~約35000個、約35000個~約40000個、約40000個~約45000個、約45000個~約50000個、約50000個~約60000個、約60000個~約70000個、約70000個~約80000個、約80000個~約90000個または約90000個~約100000個である。
【0100】
一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞、CD14陽性細胞、および末梢血液単核細胞の数が、末梢血液試料中で測定され、そしてCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞、CD14陽性細胞、および末梢血液単核細胞の百分率が決定される。
【0101】
一部の実施形態では、CD14陽性細胞または末梢血液単核細胞に対するCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の百分率が、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を投与するために患者を選択するために利用される。
【0102】
一部の実施形態では、末梢血液試料中または組織生検中のCD14陽性細胞または末梢血液単核細胞に対するCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の百分率は、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約0.6%、少なくとも約0.7%、少なくとも約0.8%、少なくとも約0.9%、少なくとも約1%、少なくとも約1.1%、少なくとも約1.2%、少なくとも約1.3%、少なくとも約1.4%、少なくとも約1.5%、少なくとも約1.6%、少なくとも約1.7%、少なくとも約1.8%、少なくとも約1.9%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約24%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%または少なくとも約99%である。
【0103】
一部の実施形態では、末梢血液試料中または組織生検中のCD14陽性細胞または末梢血液単核細胞に対するCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の百分率は、約0.1%~約0.2%、約0.2%~約0.3%、約0.3%~約0.4%、約0.4%~約0.5%、約0.5%~約0.6%、約0.6%~約0.7%、約0.7%~約0.8%、約0.8%~約0.9%、約0.9%~約1%、約1%~約1.1%、約1.1%~約1.2%、約1.2%~約1.3%、約1.4%~約1.5%、約1.5%~約1.6%、約1.6%~約1.7%、約1.7%~約1.8%、約1.8%~約1.9%、約1.9%~約2%、約2%~約3%、約3%~約4%、約4%~約5%、約5%~約6%、約6%~約7%、約7%~約8%、約8%~約9%、約9%~約10%、約10%~約11%、約11%~約12%、約12%~約13%、約13%~約14%、約14%~約15%、約15%~約16%、約16%~約17%、約17%~約18%、約18%~約19%、約19%~約20%、約20%~約21%、約21%~約22%、約22%~約23%、約23%~約24%、約24%~約25%、約25%~約30%、約30%~約35%、約35%~約40%、約40%~約45%、約45%~約50%、約50%~約60%、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約90%、約90%~約95%、約95%~約96%、約96%~約97%、約97%~約98%または約98%~約99%である。
【0104】
一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞、CD14陽性細胞、および末梢血液単核細胞の数は、末梢血液試料中で測定され、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と、CD14陽性細胞または末梢血液単核細胞のいずれかとの比が決定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と、CD14陽性細胞または末梢血液単核細胞のいずれかとの比が、エンチノスタットおよび第2の治療剤を含む併用療法を投与するために患者を選択するために利用される。
【0105】
一部の実施形態では、末梢血液試料中または組織生検中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と、CD14陽性細胞または末梢血液単核細胞のいずれかとの比は、1:10000、1:5000、1:4000、1:3000、1:2000、1:1000、1:500、1:400、1:300、1:250、1:200、1:150、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:49、1:48、1:47、1:46、1:45、1:44、1:43、1:42、1:41、1:40、1:39、1:38、1:37、1:36、1:35、1:34、1:33、1:32、1:31、1:30、1:29、1:28、1:27、1:26、1:25、1:24、1:23、1:22、1:21、1:20、1:19、1:18、1:17、1:16、1:15、1:14、1:13、1:12、1:11、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、9:1、19:1、24:1、97:1、49:1または99:1である。
【0106】
一部の実施形態では、末梢血液試料中または組織生検中の、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞と、CD14陽性細胞または末梢血液単核細胞のいずれかとの比は、1:10000~1:5000、1:5000~1:4000、1:4000~1:3000、1:3000~1:2000、1:2000~1:1000、1:1000~1:500、1:500~1:400、1:400~1:300、1:300~1:200、1:200~1:100、1:100~1:90、1:90~1:80、1:80~1:70、1:70~1:60、1:60~1:50、1:50~1:49、1:49~1:48、1:48~1:47、1:47~1:46、1:46~1:45、1:45~1:44、1:44~1:43、1:43~1:42、1:42~1:41、1:41~1:40、1:40~1:39、1:39~1:38、1:38~1:37、1:37~1:36、1:36~1:35、1:35~1:34、1:34~1:33、1:33~1:32、1:32~1:31、1:31~1:30、1:30~1:29、1:29~1:28、1:28~1:27、1:27~1:26、1:26~1:25、1:25~1:24、1:24~1:23、1:23~1:22、1:22~1:21、1:21~1:20、1:20~1:19、1:19~1:18、1:18~1:17、1:17~1:16、1:16~1:15、1:15~1:14、1:14~1:13、1:13~1:12、1:12~1:11、1:11~1:10、1:10~1:9、1:9~1:8、1:8~1:7、1:7~1:6、1:6~1:5、1:5~1:4、1:4~1:3、1:3~1:2、1:2~1:1、1:1~2:1、2:1~3:1、3:1~4:1、4:1~9:1、9:1~19:1、19:1~24:1、24:1~97:1、97:1~49:1または49:1~99:1である。
【0107】
一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりのCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数が決定される。単位体積の非限定的な例として、ピコリットル(pL)、ナノリットル(nL)、マイクロリットル(μL)、ミリリットル(mL)、デシリットル(dL)、およびリットル(L)が挙げられる。一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりのCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数が、エンチノスタットと第2の治療剤とを含む併用療法を投与するために患者を選択するために利用される。一部の実施形態では、生体試料は末梢血液試料である。
【0108】
一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりのCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数は、単位体積当たり約1個、約2個、約3個、約4個、約5個、約6個、約7個、約8個、約9個、約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約35個、約40個、約45個、約50個、約60個、約70個、約80個、約90個、約100個、約150個、約200個、約250個、約300個、約350個、約400個、約450個、約500個、約600個、約700個、約800個、約900個、約1000個、約1500個、約2000個、約2500個、約3000個、約3500個、約4000個、約4500個、約5000個、約6000個、約7000個、約8000個、約9000個、約10000個、約15000個、約20000個、約25000個、約30000個、約35000個、約40000個、約45000個、約50000個、約60000個、約70000個、約80000個、約90000個または約100000個である。
【0109】
一部の実施形態では、生体試料の単位体積当たりのCD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞の数は、単位体積当たり約1個~約2個、約2~約3個、約3個~約4個、約4個~約5個、約5個~約6個、約6個~約7個、約7個~約8個、約8個~約9個、約9個~約10個、約10個~約15個、約15個~約20個、約20個~約25個、約25個~約30個、約30個~約35個、約35個~約40個、約40個~約45個、約45個~約50個、約50個~約60個、約60個~約70個、約70個~約80個、約80個~約90個、約90個~約100個、約100個~約150個、約150個~約200個、約200個~約250個、約250個~約300個、約300個~約350個、約350個~約400個、約400個~約450個、約450個~約500個、約500個~約600個、約600個~約700個、約700個~約800個、約800個~約900個、約900個~約1000個、約1000個~約1500個、約1500個~約2000個、約2000個~約2500個、約2500個~約3000個、約3000個~約3500個、約3500個~約4000個、約4000個~約4500個、約4500個~約5000個、約5000個~約6000個、約6000個~約7000個、約7000個~約8000個、約8000個~約9000個、約9000個~約10000個、約10000個~約15000個、約15000個~約20000個、約20000個~約25000個、約25000個~約30000個、約30000個~約35000個、約35000個~約40000個、約40000個~約45000個、約45000個~約50000個、約50000個~約60000個、約60000個~約70000個、約70000個~約80000個、約80000個~約90000個または約90000個~約100000個である。
【0110】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞、CD14陽性細胞、および/または末梢血液単核細胞は、フローサイトメトリー、マスサイトメトリー、サイトスピン、または免疫組織化学を使用して測定される。
【0111】
フローサイトメトリーは、細胞を液体の流れの中で懸濁させ、電子検出装置に細胞を通過させることによって、細胞計測、セルソーティング、およびバイオマーカーの検出において使用される、レーザーに基づく技術である。フローサイトメトリーは、1秒間当たり最大数千個の粒子について、その物理的および化学的特徴の同時マルチパラメトリック解析を可能にする。
【0112】
マスサイトメトリーは、細胞の同一性および機能を決定するための誘導結合プラズマ質量分析に基づく質量分析技術である。この技術では、結合剤は、同位体として純粋な希土類元素でタグ化されている。これらの結合剤は、次にタグ細胞およびその構成成分に適用される。細胞は噴霧され、そして多原子希土類元素タグをイオン化させるアルゴンプラズマレーザーを通じて送られる。イオン化したタグ化細胞は、次に飛行時間型質量分析計により分析される。マスサイトメトリーの長所として、フローサイトメトリーではスペクトルオーバーラップにより限界が生じてしまうが、その限界を克服する能力が挙げられる。
【0113】
サイトスピンは、細胞染色および細胞計測のための塗抹として、懸濁細胞をガラススライド上で遠心分離する技術である。低粘度培地中に存在する濃縮した細胞懸濁物は、塗抹調製物としての優良候補となる。希薄な培地中に存在する希薄な細胞懸濁物は、細胞遠心分離を通じたサイトスピンの調製物として最適である。高粘度培地中に存在する細胞懸濁物は、スワブ調製物として試験するのに最適である。これらの調製物で共通する点として、細胞全体がスライド表面上に存在することが挙げられる。免疫組織化学は、生物学的組織中の抗原と特異的に結合する抗体の原理を利用することにより、組織切片の細胞内の抗原を検出するための組織学的染色の一種である。抗体-抗原相互作用の可視化は、いくつかの方法で実現可能である。抗体は、発色反応を触媒し得る酵素、例えばペルオキシダーゼに結合し得る。あるいは、抗体は、蛍光物質、例えばフルオレセインまたはローダミンにタグ化され得る。
【0114】
一部の実施形態では、フローサイトメトリー、マスサイトメトリー、サイトスピン、または免疫組織化学が、細胞、例えば骨髄由来のサプレッサー細胞または末梢血液単核細胞を検出するために使用される。一部の実施形態では、フローサイトメトリー、マスサイトメトリー、サイトスピン、または免疫組織化学には、結合剤-骨髄由来のサプレッサー細胞、および結合剤-末梢血液単核細胞複合体を形成する結合剤の使用が含まれる。一部の実施形態では、結合剤は、細胞表面マーカーにより骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞を同定するために使用される。一部の実施形態では、結合剤は抗体である。
【0115】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞または末梢血液単核細胞と結合する結合剤の数は、少なくとも約1、少なくとも約2、少なくとも約3、少なくとも約4、少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約16、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175または少なくとも約200である。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞または末梢血液単核細胞と結合する結合剤の数は、約1~約2、約2~約3、約3~約4、約4~約5、約5~約6、約6~約7、約7~約8、約8~約9、約9~約10、約10~約11、約11~約12、約12~約13、約14~約15、約15~約16、約16~約20、約20~約30、約30~約40、約40~約50、約50~約60、約60~約70、約70~約80、約80~約90、約90~約100、約100~約125、約125~約150、約150~約175または約175~約200である。
【0116】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞および末梢血液単核細胞、M-MDSC、またはPMN-MDSCは、細胞表面マーカーにより同定される。骨髄由来のサプレッサー細胞を同定する細胞表面マーカーの非限定的な例として、CD11b、CD33、およびCD40が挙げられる。末梢血液単核細胞を同定する細胞表面マーカーの非限定的な例として、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRが挙げられる。M-MDSCは、CD14と組み合わせた骨髄由来のサプレッサー細胞マーカーの任意の組合せにより同定され得る。PMN-MDSCは、CD15と組み合わせた骨髄由来のサプレッサー細胞マーカーの任意の組合せにより同定され得る。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞、末梢血液単核細胞、M-MDSC、またはPMN-MDSCは、結合剤と接触して、細胞-結合剤複合体を形成する。結合剤は、上記細胞表面マーカーのいずれか、または任意のこれらの組合せと結合する。
【0117】
一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bにより同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bにより同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bにより同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bにより同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bにより同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD33により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD40により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD40により同定され、末梢血液単核細胞が、CD14により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD40により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD40により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD40により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bおよびCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞が、CD11bおよびCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bおよびCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bおよびCD33により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bおよびCD33により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、骨髄由来のサプレッサー細胞がCD11bおよびCD33により同定され、末梢血液単核細胞が、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRにより同定される。
【0118】
一部の実施形態では、M-MDSCがCD11bおよびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD11bおよびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD11bおよびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD11bおよびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD11bおよびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD40およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD40およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD40およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD40およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCがCD40およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、M-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、M-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、M-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD14により同定され、末梢血液単核細胞が、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRにより同定される。
【0119】
一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD11bおよびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD11bおよびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD11bおよびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD11bおよびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD11bおよびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD40およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD40およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD40およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD40およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCがCD40およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33およびCD15により同定され、末梢血液単核細胞が、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRにより同定される。
【0120】
一部の実施形態では、PMN-MDSC細胞が、CD11bおよび細胞表面にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよび細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11および細胞上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11b14および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSC細胞が、CD11bおよび細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSC細胞が、CD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD33および細胞表面上CD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD40および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD40および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD40および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核球がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD40および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD40および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、PMN-MDSCが、CD11bおよびCD33および細胞表面上にCD14が存在しないことにより同定され、末梢血液単核細胞が、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRにより同定される。
【0121】
一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞、CD14陽性細胞、および末梢血液単核細胞が、細胞表面マーカーにより同定される。末梢血液単核細胞を同定する細胞表面マーカーの非限定的な例として、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRが挙げられる。
【0122】
一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞が、CD14および低レベルのHLA-DRまたはその不存在により同定され、末梢血液単核細胞がCD3により同定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞が、CD14および低レベルのHLA-DRまたはその不存在により同定され、末梢血液単核細胞がCD14により同定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞が、CD14および低レベルのHLA-DRまたはその不存在により同定され、末梢血液単核細胞がCD19により同定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞が、CD14および低レベルのHLA-DRまたはその不存在により同定され、末梢血液単核細胞がCD56により同定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞が、CD14および低レベルのHLA-DRまたはその不存在により同定され、末梢血液単核細胞がHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞が、CD14および低レベルのHLA-DRまたはその不存在により同定され、末梢血液単核細胞が、CD3、CD14、CD19、CD56、およびHLA-DRにより同定される。一部の実施形態では、CD14陽性かつHLA-DR-(lo/陰性)細胞が、CD14および低レベルのHLA-DRまたはその不存在により同定され、CD14陽性細胞がCD14により同定される。
【0123】
さらなる療法
三種陰性乳がんのための、本明細書に開示の療法と併用して有利に採用され得る、利用可能なさらなる処置として、非限定的に、アジュバント療法としての放射線療法、化学療法、抗体療法、およびチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0124】
放射線療法は、がん細胞を殺傷するかまたはがん細胞が増殖するのを防ぐために、高エネルギーX線または他の種類の放射線を使用するがん処置である。化学療法は、細胞を殺傷することにより、または細胞が分裂するのを停止させることにより、がん細胞の増殖を停止させる薬物を使用するがん処置である。化学療法が、経口により摂取されるか、または血管もしくは筋肉に注射される場合、薬物は血流に進入し、全身にわたり、がん細胞に到達することができる(全身化学療法)。化学療法が、脊柱、臓器、または体腔、例えば腹部に直接施される場合、薬物は、そのような領域内のがん細胞に主に影響を及ぼす(局所化学療法)。化学療法を与える方法は、処置されるがんの型および病期に依存する。
【0125】
肺がんを処置するために、異なる化学療法剤が当技術分野において公知である。肺がんを処置するために使用される細胞毒性剤(cytoxic agent)として、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標)、Paraplat(登録商標))、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)、Platinol-Aq(登録商標))、クリゾチニブ(例えば、Xalkori(登録商標))、エトポシド(例えば、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標))、リン酸エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標))、塩酸ゲムシタビン(例えば、Gemzar(登録商標))、ゲムシタビン-シスプラチン、メトトレキサート(例えば、Abitrexate(登録商標)、Folex(登録商標)、Folex Pfs(登録商標)、Methotrexate Lpf(登録商標)、Mexate(登録商標)、Mexate-Aq(登録商標))、パクリタキセル(例えば、Taxol(登録商標))、ペメトレキセド二ナトリウム(例えば、Alimta(登録商標))、および塩酸トポテカン(例えば、Hycamtin(登録商標))が挙げられる。
【0126】
メラノーマを処置するために、アルデスロイキン(例えば、Proleukin(登録商標))、ダブラフェニブ(例えば、Tafinlar(登録商標))、ダカルバジン(例えば、DTIC-Dome(登録商標))、組換えインターフェロンアルファ-2b(例えば、Intron(登録商標)A)、イピリムマブ(例えば、Yervoy(登録商標))、ペンブロリズマブ(例えば、Keytruda(登録商標))、トラメチニブ(例えば、Mekinist(登録商標))、ニボルマブ(例えば、Opdivo(登録商標))、ペグインターフェロンアルファ-2b(例えば、Pegintron(登録商標)、Sylatron(登録商標))、ベムラフェニブ(例えば、Zelboraf(登録商標))を含む、異なる薬剤が当技術分野において公知である。
【0127】
モノクロナール抗体療法は、一種類の免疫系細胞から、研究室内で作成された抗体を使用するがん処置である。これらの抗体は、がん細胞が増殖するのを支援し得るがん細胞上の物質、または正常な物質を同定することができる。抗体は、物質に結合するか、がん細胞を殺傷するか、がん細胞が増殖するのを遮断するか、またはがん細胞が広がるのを防ぐ。モノクロナール抗体は、輸液により与えられる。モノクロナール抗体は、単独で、または薬物、毒素、もしくは放射性物質をがん細胞に直接運ぶために使用することができる。また、モノクロナール抗体は、アジュバント療法として、化学療法と組み合わせても使用される。
【0128】
本明細書に開示の組成物および療法と有利に組み合わせることができる、さらなる実例的な処置として、ラパチニブ単独、あるいはカペシタビン、ドセタキセル、エピルビシン、エポチロンA、B、もしくはD、酢酸ゴセレリン、パクリタキセル、パミドロネート、ベバシズマブ、またはトラスツズマブと組み合わせたラパチニブを含むが、これらに限定されない薬剤の投与を非限定的に挙げることができる。
【0129】
一部の実施形態では、さらなる療法は、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ラパチニブ、カペシタビン、トラスツズマブ、ベバシズマブ、ゲムシタビン、エリブリン、またはnab-パクリタキセルのうちの1つまたは複数を、被験体に投与することを含む化学療法を含む。
【0130】
経口製剤
本明細書に記載されている薬学的な有効成分を含有する経口製剤は、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、香錠、カシェ剤、ペレット、薬用チューインガム、顆粒、バルク粉末、発泡性または非発泡性の粉末または顆粒、液剤、エマルジョン、懸濁剤、液剤、オブラート、散布剤(sprinkle)、エリキシル剤、シロップ剤、口腔用形態(buccal form)、および経口液体を含む、任意の慣習的に使用される経口形態を含み得る。カプセル剤は、活性化合物(複数可)と、不活性な充填剤または希釈剤、例えば薬学的に許容されるデンプン(例えば、トウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカのデンプン)、糖、人工甘味料、粉末化セルロース、例えば結晶および微結晶セルロース、フラワー、ゼラチン、ガム等との混合物を含有してよい。有用な錠剤製剤は、従来の圧縮法、湿式造粒法または乾式造粒法により作製され得るが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ラウリル硫酸ナトリウム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、アルギン酸、アカシアガム、キサンタンガム、クエン酸ナトリウム、複合ケイ酸塩、炭酸カルシウム、グリシン、デキストリン、スクロース、ソルビトール、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、タルク、乾燥デンプン、および粉末化された糖を含むが、これらに限定されない、薬学的に許容される希釈剤、結着剤(binding agent)、滑沢剤、崩壊剤、表面改質剤(surface modifying agent)(界面活性剤を含む)、懸濁化剤または安定化剤を利用する。一部の実施形態では、表面改質剤として、非イオン性および陰イオン性の表面改質剤が挙げられる。例えば、表面改質剤として、ポロキサマー188、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、コロイド状二酸化ケイ素、ホスフェート、ドデシル硫酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびトリエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の経口製剤は、活性化合物(複数可)の吸収を変化させるために、標準的な遅延放出型または限時放出型(time release)の製剤を利用し得る。また、経口製剤は、必要に応じて、適する可溶化剤または乳化剤を含有する水または果汁中の有効成分を投与することから構成される場合もある。
【0131】
経口投与
本明細書に記載されているように、本明細書に記載されている併用療法は、同時に与えることができるか、または互い違いのレジメン(staggered regimen)で与えることができ、エンチノスタットが、化学療法の過程で、EGFR阻害剤とは異なる時期に与えられる。この時期的な相違は、2つの化合物の投与間で、数分間、数時間、数日間、数週間の範囲、またはそれより長い範囲に及ぶ可能性がある。したがって、併用という用語は、同時に、または単一の用量として投与されることを必ずしも意味しないが、各成分は、所望の処置期間内に投与される。また、薬剤は、異なる経路によって投与され得る。化学療法レジメンとして一般的なように、化学療法の過程は、数週間後に反復されてもよく、2つの化合物の投与について、同一の時間枠に従ってもよく、また患者の応答に基づき修正を加えてもよい。
【0132】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、経口投与用の固体、半固体、または液体の剤形で提供され得る。本明細書で使用する場合、経口投与として、口腔、舌側、および舌下投与が挙げられる。適する経口剤形として、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、香錠、カシェ剤、ペレット、薬用チューインガム、顆粒、バルク粉末、発泡性または非発泡性の粉末、または顆粒、液剤、エマルジョン、懸濁剤、液剤、オブラート、散布剤、エリキシル剤、およびシロップ剤が挙げられるが、これらに限定されない。有効成分(複数可)に加えて、医薬組成物は、結合剤、充填剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤(glidant)、着色剤、色素移動阻害剤(dye-migration inhibitor)、甘味料、および矯味矯臭剤を含むが、これらに限定されない1つまたは複数の薬学的に許容される担体または賦形剤を含有してよい。
【0133】
結合剤または造粒剤(granulator)は、錠剤に粘着性を付与し、圧縮後に錠剤が無傷のままであることを確実にする。適する結合剤または造粒剤として、デンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、およびアルファ化デンプン(例えば、STARCH 1500);ゼラチン;糖、例えばスクロース、グルコース、デキストロース、糖蜜、およびラクトース;天然および合成ガム、例えばアカシア、アルギン酸、アルギネート、トチャカの抽出物、パンワールガム、ガッチゴム、イサゴールハスク(isabgol husk)の漿剤、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム、カラマツアラビノガラクタン(larch arabogalactan)、粉末化されたトラガント、およびグアーガム;セルロース、例えばエチルセルロース、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);微結晶セルロース、例えばAVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corp.、Marcus Hook、PA);およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適する充填剤として、タルク、炭酸カルシウム、微結晶セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、およびその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。結合剤または充填剤は、本明細書において提供される医薬組成物中に、約50重量%~約99重量%存在し得る。
【0134】
適する希釈剤として、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、および粉末化された糖が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の希釈剤、例えばマンニトール、ラクトース、ソルビトール、スクロース、およびイノシトールは、十分な量で存在する場合、一部の圧縮錠剤に、咀嚼により口内で崩壊可能にする特性を付与し得る。そのような圧縮錠剤は、咀嚼可能な錠剤として使用することができる。
【0135】
適する崩壊剤として、寒天;ベントナイト;セルロース、例えばメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース;木質生成物(wood product);天然のスポンジ;陽イオン交換樹脂;アルギン酸;ガム、例えばグアーガムおよびビーガムHV;かんきつ類の髄質(citrus pulp);架橋セルロース、例えばクロスカルメロース;架橋ポリマー、例えばクロスポビドン;架橋デンプン;炭酸カルシウム;微結晶セルロース、例えばデンプングリコール酸ナトリウム;ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium);デンプン、例えばトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、およびアルファ化デンプン;粘土;アライン(align);ならびにその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において提供される医薬組成物内の崩壊剤の量は、製剤の種類によって変化し、当業者にとって容易に識別可能である。本明細書において提供される医薬組成物は、約0.5重量%~約15重量%、または約1重量%~約5重量%の崩壊剤を含有し得る。
【0136】
適する滑沢剤として、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;鉱油;軽油(light mineral oil);グリセリン;ソルビトール;マンニトール;グリコール、例えばベヘン酸グリセリルおよびポリエチレングリコール(PEG);ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油を含む水添植物油;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;ラウリン酸エチル;寒天;デンプン;リコポディウム(lycopodium);シリカまたはシリカゲル、例えばAEROSIL(登録商標)200(W.R.Grace Co.、Baltimore、MD)およびCAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co.of Boston、MA);ならびにその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書において提供される医薬組成物は、約0.1重量%~約5重量%の滑沢剤を含有し得る。
【0137】
適する流動促進剤として、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co.of Boston、MA)、およびアスベストを含まないタルクが挙げられる。着色剤として、任意の承認済みの認可された水溶性FD&C色素、およびアルミナ水和物に懸濁した水不溶性FD&C色素、およびレーキ顔料、ならびにその混合物が挙げられる。レーキ顔料は、水溶性色素を重金属の水和酸化物に吸着させた組合せであり、その結果、不溶性形態の色素が生ずる。矯味矯臭剤として、植物、例えば果物から抽出される天然の着香剤、および口当たりのよい味覚を生じる化合物、例えばペパーミントおよびサルチル酸メチルの合成ブレンドが挙げられる。甘味料として、スクロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、および人工甘味料、例えばサッカリンおよびアスパルテームが挙げられる。適する乳化剤として、ゼラチン、アカシア、トラガント、ベントナイト、および界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(TWEEN(登録商標)80)、およびトリエタノールアミンオレエートが挙げられる。懸濁化剤および分散剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガント、ビーガム、アカシア、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドンが挙げられる。防腐剤として、グリセリン、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸(benzoic add)、安息香酸ナトリウム、ならびにアルコールが挙げられる。湿潤剤として、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート、およびポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。溶媒として、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、およびシロップが挙げられる。エマルジョンで利用される非水性液体の例としては、鉱油および綿実油が挙げられる。有機酸として、クエン酸および酒石酸が挙げられる。二酸化炭素供給源としては、重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0138】
多くの担体および賦形剤が、同一の製剤内であっても、いくつかの機能を担い得ると理解すべきである。
【0139】
さらなる実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、圧縮錠剤、すりこみ錠剤、咀嚼可能なロゼンジ、速溶性錠剤、多重圧縮錠剤、または腸溶性コーティング錠剤、糖コーティングもしくはフィルムコーティングされた錠剤として提供され得る。腸溶性コーティング錠剤は、胃酸の作用に耐性であるが、腸内で溶解または崩壊し、したがって胃の酸性環境から有効成分を保護する物質でコーティングされた圧縮錠剤である。腸溶性コーティングとして、脂肪酸、脂肪、フェニルサリチレート、ワックス、シェラック、アンモニア含有シェラック、およびセルロースアセテートフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。糖コーティング錠剤は、不快な味または臭気を隠蔽し、錠剤を酸化から保護する上で有益であり得る糖コーティングで囲まれた圧縮錠剤である。フィルムコーティング錠剤は、水溶性物質の薄層またはフィルムで覆われた圧縮錠剤である。フィルムコーティングとして、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、およびセルロースアセテートフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。フィルムコーティングは、糖コーティングと同じ一般的特徴を付与する。多重圧縮錠剤は、2以上の圧縮サイクルにより作製される圧縮錠剤であり、層状化錠剤、およびプレスコーティング錠剤または乾燥コーティング錠剤が含まれる。
【0140】
錠剤剤形は、粉末形態、結晶形態、または顆粒形態の有効成分を単独で、あるいは有効成分を結合剤、崩壊剤、制御放出型ポリマー、滑沢剤、希釈剤または着色料を含む、本明細書に記載されている1つもしくは複数の担体または賦形剤と組み合わせて調製され得る。矯味矯臭剤および甘味料は、咀嚼可能な錠剤およびロゼンジを形成する上で特に有用である。
【0141】
本明細書で提供される医薬組成物は、ゼラチン、メチルセルロース、デンプン、またはアルギン酸カルシウムから作製可能な軟質カプセル剤または硬質カプセル剤として提供され得る。硬質ゼラチンカプセルは、乾燥充填カプセル(DFC)としても知られており、一方が他方の上をスライドする2つのセクションから構成され、したがって有効成分を完全に封入する。軟質弾性カプセル(SEC)は、柔らかく球形のシェル、例えばゼラチンシェルであり、グリセリン、ソルビトール、または類似するポリオールの添加により可塑化される。軟質ゼラチンシェルは、微生物の増殖を防止する防腐剤を含有してよい。適する防腐剤は、メチルおよびプロピルパラベン、ならびにソルビン酸を含む、本明細書に記載されているような防腐剤である。本明細書において提供される液体、半固体、および固体剤形は、カプセル内に被包され得る。適する液体および半固体剤形として、プロピレンカーボネート、植物油、またはトリグリセリドにおける液剤および懸濁剤が挙げられる。そのような液剤を含有するカプセル剤は、米国特許第4,328,245号、同第4,409,239号、および同第4,410,545号の記載に従い調製可能である。カプセル剤は、有効成分の溶解を改変または維持するために、当業者に公知であるようにコーティングすることも可能である。
【0142】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、エマルジョン、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、およびシロップ剤を含む、液体および半固体の剤形で提供され得る。エマルジョンは、一方の液体が他方の液体全体にわたり、小球体の形態で分散している二相系であり、水中油型または油中水型であり得る。エマルジョンは、薬学的に許容される非水性液体または溶媒、乳化剤、および防腐剤を含み得る。懸濁剤は、薬学的に許容される懸濁化剤および防腐剤を含み得る。アルコール水溶液は、薬学的に許容されるアセタール、例えば低級アルキルアルデヒド(用語「低級」とは、1から6個の間の炭素原子を有するアルキルを意味する)のジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール;および1つまたは複数のヒドロキシル基、例えばプロピレングリコールおよびエタノールを有する水混和性溶媒を含み得る。エリキシル剤は、甘くされた透明な含水アルコール溶液である。シロップ剤は、糖、例えば、スクロースの濃縮水溶液であり、防腐剤を含有してもよい。液体剤形の場合、例えば、ポリエチレングリコールの溶液は、投与のための測定に便利なように、十分な量の薬学的に許容される液体担体、例えば、水で希釈され得る。
【0143】
他の有用な液体および半固体の剤形として、本明細書において提供される有効成分(複数可)、および1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテルを含み、350、550、および750がポリエチレングリコールのおよその平均分子量を表す、ジアルキル化されたモノ-またはポリ-アルキレングリコールを含有する剤形が挙げられるが、これらに限定されない。これらの製剤は、1つまたは複数の酸化防止剤、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、亜硫酸水素塩、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオジプロピオン酸、およびそのエステル、ならびにジチオカーバメートをさらに含み得る。
【0144】
経口投与のために本明細書において提供される医薬組成物は、リポソーム、ミセル、ミクロスフェア、またはナノシステムの形態でも提供され得る。ミセル型の剤形は、米国特許第6,350,458号の記載に従い調製可能である。
【0145】
他の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、液体剤形に再構成される非発泡性または発泡性の顆粒および粉末として提供され得る。非発泡性顆粒または粉末で使用される薬学的に許容される担体および賦形剤は、希釈剤、甘味料、および湿潤剤を含み得る。発泡性の顆粒または粉末において使用される薬学的に許容される担体および賦形剤は、有機酸および二酸化炭素供給源を含み得る。
【0146】
着色剤および矯味矯臭剤は、上記剤形のいずれにおいても使用することができる。
【0147】
本明細書において提供される医薬組成物は、遅延式、持続式、パルス式、制御式、標的化式、およびプログラム式の放出形態を含む、即時型または改変型の放出剤形として製剤化され得る。
【0148】
さらなる実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、所望の治療作用を損なわない他の有効成分、または所望の作用を補完する物質と共に製剤化され得る。
【0149】
本明細書で引用されたすべての刊行物および特許文書は、そのような刊行物または文書のそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれることを、具体的かつ個別に明示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文書の引用は、そのいずれかが関連する先行技術であるとの承認を意図するものではなく、刊行物および特許文書の内容または日付に対する何らかの承認にも該当しない。本開示は、書面による明細としてここに記載されているが、本開示は、様々な実施形態で実践可能であること、ならびに上記説明および下記の実施例は説明を目的としたものであり、下記の特許請求の範囲の限定でもないものと、当業者は認識する。
【実施例0150】
(実施例1)
エンチノスタットによる骨髄由来のサプレッサー細胞の調節
血液試料を、ENCORE301臨床トライアルに登録した一連の患者49例から取得したが、そのすべての患者は、進行性のホルモン受容体陽性乳がんを有し、非ステロイド系アロマターゼ阻害剤を投与しても進行した。患者27例が、エキセメスタンおよびエンチノスタット(「EE」)を受け、22例が、エキセメスタンおよびプラセボ(「EP」)を受けた。血液試料を、サイクル1の第1日目(C1D1;治療前)、C1D2、C1D8、およびC1D15に、バイオマーカー分析用として取得した。これらの患者試料のうち、34例(EEの20例およびEPの14例)を、循環性免疫サブセットについて分析した。細胞集団は、下記の表面マーカーに基づき、その場合、「X-」とはマーカーXについて陰性を意味し、「X+」とはマーカーXについて陽性を意味し、「Xlow/-」とはマーカーXが低レベルであることまたはその不存在を意味し、および「Xhi」とはマーカーXの高レベル発現を意味する:
【0151】
骨髄由来のサプレッサー細胞:CD3-、CD19-、CD56-、HLA-DR-、CD11b+、CD33+。
【0152】
PMN-MDSC:CD14-、CD11b+、CD33+。
【0153】
M-MDSC:CD3-、CD19-、CD56-、HLA-DR-、CD11b+、CD33+、CD14+。
【0154】
未成熟のMDSC:CD3-、CD19-、CD56-、HLA-DR-、CD11b+、CD33+、CD14-。
【0155】
CD8+T細胞:CD4-、CD8+、Foxp3-。
【0156】
CD4+T細胞:CD8-、CD4+、Foxp3-。
【0157】
reg:CD4+、CD8-、CD25hi、Foxp3+。
【0158】
3集団について単球を分析した:(1)CD14+;(2)CD14+、HLA-DRhi;および(3)CD14+、HLA-DRlow/-。PD-1、CTLA-4、およびTIM-3を、CD8+T細胞、CD4+T細胞、およびTreg上で測定し、CD40を骨髄由来のサプレッサー細胞上で測定した。
【0159】
すべての比較を、C1D1の時点とC1D15の時点との間で、EEおよびEP処置群において実施した。PMN-MDSCの場合、EE処置は、-14.67%の変化を引き起こした一方、EP処置は、+20.56%の変化を引き起こした。M-MDSCの場合、EE処置は-62.3%の変化を引き起こした一方、EP処置は+1.97%の変化を引き起こした。未成熟のMDSCの場合、EE処置は、-20.9%の変化を引き起こした一方、EP処置は、-15.0%の変化を引き起こした。骨髄由来のサプレッサー細胞、M-MDSC、PMN-MDSC、および未成熟の骨髄由来のサプレッサー細胞では、CD40のレベルは、EP処置群と比較して、EE処置群において低下した。HLA-DR+単球の場合、EE処置は、+34.1%の変化を引き起こした一方、EP処置は、-11.38%の変化を引き起こした。単球上では、HLA-DRのレベルは、EE処置群において+16.3%、およびEP処置群では-4.7%であった。
【0160】
(実施例2)
エンチノスタット併用療法によるCD14-HLA-DR(lo/陰性)骨髄由来のサプレッサー細胞の調節
クラスIのHDAC阻害剤(HDACi)であるエンチノスタットは、非ステロイド系アロマターゼ阻害剤を投与しても進行した進行性のホルモン受容体陽性乳がんを対象として、エンチノスタット+エキセメスタン(「EE」)とエキセメスタン+プラセボ(「EP」)とを比較するENCORE301、ランダム化、プラセボ対照、第II相トライアルにおいて有望な活性を示した。ENCORE301は、一次無増悪生存率エンドポイントを満たし、EE群について全生存(OS)エンドポイントにおいて8.3ヶ月の中央値の改善を示した。これらの結果に基づき、エンチノスタットには、画期的治療薬指定が認可され、そしてEPに対してEEを比較する第III相トライアル、E2112が現在登録中である。新規の前臨床研究から、エンチノスタットは調節性T細胞(Treg)および骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)を含む免疫サプレッサー細胞に対して免疫調節効果を有し、免疫チェックポイント遮断剤と組み合わせて、免疫原性マウス腫瘍をある程度消滅可能であることが示唆される。この活性は、MSDCの低下により媒介されることが明らかにされた(Kimら、PNAS、2014年、111巻:11774~9頁)。これ
らの結果は、そのようなクラス1のHDAC酵素であるエンチノスタットの選択的標的により説明され得るが、同酵素は、Tregの分化および活性化において役割を演じていることが明らかにさている(Shenら、PLoS One、2012年、7巻:e30815;Wang
ら、JCI、2015年、125巻:1111~1123頁)、およびMDSC(Younら、Nat. Immunol、2013年、14巻:211~220頁)。
【0161】
これらのデータに基づき、ENCORE301の乳がん患者から得た血液試料中の免疫サブセットについて、分析を実施した。
【0162】
ENCORE301に登録した患者130例を代表する患者49例のサブセット(EEの27例およびEPの22例)から、サイクル1の第1日目(C1D1;治療前)、C1D2、C1D8、およびC1D15に、バイオマーカー分析用として血液を収集した。これら49例のうち、患者34例(EEの20例およびEPの14例)から得たC1D1およびC1D15の試料が、循環性免疫サブセットのさらなる分析用として利用可能であった。無増悪生存率(PFS)に関する臨床転帰が、患者34例において、EE(エンチノスタット+エキセメスタン)の患者について4.9ヶ月、(エキセメスタン+プラセボ)について1.8ヶ月、そのハザード比(HR)は0.62ヶ月であることが判明し、全生存(OS)は、EEについて28.1ヶ月、EPについて20.3ヶ月、そのHRは0.62ヶ月であることが判明し、ならびにベースライン時の人口統計学は包括解析母集団と一致した。
【0163】
C1D15とベースラインにおけるサブセットの百分率変化を、下記の表面マーカーに基づき評価した:Lin-MDSC(lin;CD3、CD19、CD56)-HLA-DR-CD11b+CD33+)、顆粒球MDSC(CD14-CD11b+CD33+)、単球のMDSC(Lin-HLA-DR-CD11b+CD33+CD14+)、未成熟のMDSC(Lin-HLA-DR-CD11b+CD33+CD14-)、CD8+T細胞(CD4-CD8+)、Foxp3-CD4+T細胞(CD8-CD4+Foxp3-)、およびTreg(CD4+CD8-CD25hiFoxp3+)。単球を3集団:CD14+、CD14+HLA-DRhi、およびCD14+HLA-DR-低い/陰性について分析した。さらに、PD-1、CTLA-4、およびTIM-3をT細胞サブセット上で測定し、CD40をMDSC上で測定した。
【0164】
前臨床データと整合して、顆粒球MDSC(-14.67%と+20.56%、P=0.03)、および単球MDSC(-62.3%と+1.97%、P=0.002)の低下がEEに認められた。興味深いことに、MDSC媒介型の免疫抑制に必要とされる共刺激受容体CD40も、すべてのMDSCサブセットにおいて下方制御されていた。エンチノスタットは、CD8+T細胞とCD4+T細胞との比に有意に影響を及ぼさなかった、またはT細胞サブセット上のCTLA-4、PD-1、もしくはTIM-3の発現を変化させなかった。単球上のHLA-DRの発現低下は、がんにおける不良な予後と関連した。エンチノスタット媒介型の免疫調節性効果と整合して、HLA-DR+単球の数(34.1%と-11.38%、P=0.0004)、および単球上のHLA-DR発現のレベル(16.3%と-4.7%;P=0.015)の増加が認められた。C1D15の免疫細胞変化とこの患者の部分集団における臨床転帰との間で、相関は識別されなかった。
【0165】
結果を、下記の表1に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
さらに、図1に認められるように、HLA-DR単球の場合、EE処置は、+34.1%の変化を引き起こした一方、EP処置は、-11.38%の変化を引き起こした。単球上では、HLA-DRレベルは、EE処置群において+16.3%、およびEP処置群において-4.7%であった。より多くのデータを図2~5に示す。方法および結果は、Tomitaらの「The interplay of epigenetic therapy and immunity in locally
recurrent or metastatic estrogen receptor-positive breast cancer: Correlative analysis of ENCORE 301, a randomized, placebo-controlled phase
II trial of exemestane with or without entinostat」、ONCOIMMUNOLOGY、Taylor and Francis Online、2016年にも記載されており、その全内容は、本明細書によりそのまま参照により組み込まれる。
【0168】
まとめとして、ENCORE301において、エキセメスタンと組み合わせたエンチノスタットで処置されたER+乳がん患者から得られた血液試料に由来するデータは、患者における、免疫抑制MDSCのHDACi媒介型の低下、および免疫担当CD14+HLA-DRHI単球の増加に関する第1のエビデンスをもたらした。これらの所見は、ENCORE301のEEで認められたOSの改善を一部説明し、エンチノスタットと免疫チェックポイント遮断薬との組合せ試験計画に対する強力な根拠を提供し得る。
【0169】
エンチノスタットで処置された患者におけるMDSCの低下は、MDSCの低下を通じて、免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍活性を増強するエンチノスタットの能力を実証する、最近公表された前臨床研究(Kimら、PNAS、2014年)と整合する。組合せの安
全性および臨床的有用性を明確にするために、NSCLCおよびメラノーマを対象として、ペンブロリズマブと組み合わせたエンチノスタットの第I相b/II相トライアルが開始されている。
【0170】
TNBCを対象として、アテゾリズマブと組み合わせたエンチノスタットの第I相b/II相トライアルが計画されている。
【0171】
さらなる前臨床および臨床試験が、エンチノスタットの免疫調節活性をさらに探索するために進行中である。
(実施例3)
エキセメスタンとのエンチノスタット併用療法のための患者選択
【0172】
エキセメスタンと組み合わせたエンチノスタットによる処置を目的として患者を選択するために、末梢血液試料を患者から採取する。患者は、転移性のホルモン受容体陽性乳がんを有すると診断された閉経後の女性であって、非ステロイド系アロマターゼ阻害剤による治療期間中に進行した女性である。末梢血液試料5ミリリットル(mL)をEDTA採血チューブに採取し、それを氷上で急速に冷却する。血液試料を、コニカルチューブに移し、そして赤血球溶解バッファー15mLで稀釈し、そして室温で10分間インキュベートする。赤血球の溶解物を、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)30mLで稀釈することによりクエンチする。細胞懸濁物を、400×g、4℃で5分間遠心分離し、そして上清を廃棄する。ペレットをPBS、5mL中で再懸濁し、そして新しいコニカルチューブに移す。再懸濁した試料を、フィコール(登録商標)5mLで沈降させる。細胞を、遠心機のブレーキをかけずに400×gで20分間遠心分離する。PBSとフィコール(登録商標)層との界面で有核細胞を採取して新品のコニカルチューブに入れる。
【0173】
オリジナルの血液採取量と等しい容積を、新品のコニカルチューブ内のペレットに添加して細胞を洗浄する。細胞懸濁物を、400×g、4℃で5分間遠心分離し、そして上清を廃棄する。細胞を、オリジナルの血液採取量と等しい容積の、1%ウシ血清アルブミンおよび0.5%EDTA(染色バッファー)を含むPBS中で再懸濁する。生存細胞を次に血球計算機を使用して計測する。細胞懸濁物を400×g、4℃で5分間遠心分離し、上清を廃棄し、そして細胞を染色バッファー中で、1mL当たり細胞約10個の細胞濃度に再懸濁し、そして一定分量1mLを、新しいチューブに移す。
【0174】
第1の試験では、下記の抗体を再懸濁した細胞に添加する:FITC結合抗CD11b;PE結合抗CD33;PerCP-Cy(商標)5.5結合抗CD14;ならびにAPC結合抗CD3、抗CD19、抗CD56、および抗HLA-DR。第2の試験では、下記の抗体を再懸濁した細胞に添加する:FITC結合抗CD14;PE結合抗HLA-DR;ならびにAPC結合抗CD3、抗CD19、および抗CD56。第3の試験では、下記の抗体を再懸濁した細胞に添加する:FITC結合抗CD14およびPE結合抗HLA-DR。対照試料は、未染色細胞および蛍光色素抗体の各セットのうちの1つが除去された染色細胞を含む。細胞を遮光して露光を最低限に抑え、そして室温で20分間放置する。400×g、4℃で5分間遠心分離することにより、染色した細胞を染色バッファー中で2回洗浄し、上清を廃棄し、そして同容積の染色バッファー中に再懸濁する。染色した細胞を、次にフローサイトメーターで使用するためにポリプロピレンチューブに移す。
【0175】
チューブ毎にフローサイトメトリーデータ取得を自動で行うCytomics FC500フローサイトメーター上で、フローサイトメトリーを実施する。自動測定を行った後、バックグラウンド蛍光(未染色試料を使用)および蛍光色素補償(個別に除去された蛍光色素試料を使用)の両方について、試料を補正する。第1の試験では、次に、抗体-細胞複合体を、CD11b、CD33陽性、およびCD3、CD19、CD56、HLA-DR陰性により同定される骨髄由来のサプレッサー細胞、ならびにCD3、CD14、CD19、CD56、HLA-DR陽性、およびCD11b、CD33陰性により同定される末梢血液単核細胞について計測した。抗体-細胞複合体に関するこれらの数値が、骨髄由来のサプレッサー細胞と末梢血液単核細胞との比を計算するために使用される。この療法では、患者が1:100から1:1の間の比を有する場合、骨髄由来のサプレッサー細胞数増加の存在を示唆し、患者はエンチノスタットとエキセメスタンとを用いた併用療法のために選択される。第2の試験では、CD14陽性かつHLA-DR-lo/陰性細胞が、CD14陽性、HLA-DRの低発現または陰性、ならびにCD3、CD19、およびCD56陰性により同定される。末梢血液単核細胞は、CD3、CD19、CD56、およびHLA-DR陽性により同定される。これらの数値が、CD14陽性かつHLA-DR-lo/陰性細胞と末梢血液単核細胞との比を計算するために使用される。この療法では、患者が1:200から1:1の間の比を有する場合、CD14陽性かつHLA-DR-lo/陰性細胞数増加の存在を示唆し、患者はエンチノスタットとエキセメスタンとを用いた併用療法のために選択される。第3の試験では、CD14陽性かつHLA-DR-lo/陰性細胞が、CD14陽性、およびHLA-DRの低発現または陰性により同定される。CD14陽性細胞は、HLA-DR発現とは独立してCD14陽性により同定される。これらの数値は、CD14陽性かつHLA-DR-lo/陰性細胞とCD14陽性細胞との比を計算するために使用される。この療法では、患者が1:100から99:1の間の比を有する場合、CD14陽性かつHLA-DR-lo/陰性細胞数増加の存在を示唆し、患者はエンチノスタットとエキセメスタンとを用いた併用療法のために選択される。
【0176】
本発明は、その詳細な説明と共に記載されてきたが、上記説明は、本発明を説明するように意図されており、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定する意図を有さない。その他の態様、長所、および修正も、特許請求の範囲内である。
図1
図2A
図2B-D】
図3A
図3B-C】
図4A-B】
図4C-D】
図5
【外国語明細書】